説明

極板包装装置

【課題】
本発明は、セパレータで袋状に包装された極板を連続してスピーディに製造することができ、ひいては電池セルの製造効率を向上させることが可能な極板包装装置の提供を目的とする。
【解決手段】
搬送部100が極板Kを一対の積層ドラム部200の隙間230まで搬送するとともに、それと同期して前記一対の積層ドラム部200が所定の形状に形成されたセパレータSを周面に貼り付けながら当該隙間230まで搬送する。そして、積層ドラム部200に同期して極板Kを略水平状態で前方に搬送しながら、積層ドラム部200の回転に従って極板Kの両側面にセパレータSを順次積層したあと、極板Kの両縁部を溶着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極または負極の極板をセパレータで袋状に包装する極板包装装置、およびそれを利用した電池セル製造装置、並びに極板包装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用電池、太陽電池、電子機器用電池など各種電池において、積層型の電池が使用されるようになっている。この積層型電池は、正極の極板、セパレータ、負極の極板、セパレータの順に交互に積層されて構成される。
【0003】
この正極の極板、セパレータ、負極の極板の積層に際しては数々の積層装置が提案されているが、中でも特許文献1が知られている。これは、第1コンベアが負極の極板を並べた状態で搬送するとともに、第2コンベアが、セパレータで包装された正極の極板を並べた状態で搬送する。そして、揺動装置が、揺動しながら、第3コンベア上において前記負極の極板と、セパレータで包装した正極の極板2を交互に積載する。すなわち、正極または陰極のいずれか一方の極板を予めセパレータで包装し、その包装した極板と、対極の極板とを順次積層していく。
【0004】
このとき、セパレータで包装された極板を順次搬送してくる必要があることから、それに応じて事前に極板をセパレータで順次包装しなければならないが、このような極板包装装置としては例えば特許文献2〜5が知られている。
【0005】
特許文献2、3には、1枚のセパレータを、連続した一枚の極板を介して2つ折にした連続した一枚のセパレータの両縁部を溶着する装置が開示されている。また、特許文献4には、連続した一枚の帯状の極板を略水平状態に搬送してき、極板の両側の面に一対のローラを介して連続した一枚のセパレータを接着したあと、乾燥する装置が開示されている。また、特許文献5には、所定形状に形成された正極又は負極の極板を連続した一枚のセパレータで袋状に包装する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−101366号公報
【特許文献2】特公昭62−31786号公報
【特許文献3】特開平10−106588号公報
【特許文献4】特開平10−275628号公報
【特許文献5】特開2009−9919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、いずれの装置も、一枚の連続した極板(特許文献5は所定形状の極板)の両側面に、一枚の連続したセパレータを貼り合わせて溶着したあと、所定の電池セルの形状にカッティングするものであるため、セパレータで袋状に包装された極板を一つ製造するのに時間がかかるという問題があった。このため後工程において極板を積層するに際して支障をきたすことになり、全体として電池セルの製造効率が良いものではなかった。
【0008】
本発明は、上述の技術的背景に鑑みてなされたものであって、セパレータで袋状に包装された極板を連続してスピーディに製造することができ、ひいては電池セルの製造効率を向上させることが可能な極板包装装置、並びに電池セル製造装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、正極または負極の極板をセパレータで袋状に包装する極板包装装置であって、所定の形状に形成された極板を搬送する搬送部と、互いに平行に対向する態様で配置され、所定形状に形成されたセパレータを周面に貼り付けながら搬送する一対の積層ドラム部と、正極または負極の極板を包装したセパレータの縁部を溶着する溶着部とを備え、前記搬送部が前記極板を前記一対の積層ドラム部の間まで搬送するとともに、それと同期して前記一対の積層ドラム部が所定の形状に形成されたセパレータを周面に貼り付けながら前記一対の積層ドラム部の間まで搬送し、前記一対の積層ドラム部の間において、前記積層ドラム部の回転と同期して極板が接線方向に搬送される過程で、前記積層ドラム部の周面に貼り付けられたセパレータが前記積層ドラム部の回転に従って極板の両側面に順次積層され、溶着部によりセパレータの縁部が溶着されることを特徴とする。これによれば、積層ドラム部の回転を利用しながら、所定形状に形成された極板の両側面に、所定形状に形成されたセパレータを積層するため、セパレータに袋状に包装された極板を連続してスピーディに製造することができる。
【0010】
また、前記積層ドラム部の周辺部にセパレータカッターが設けられ、該セパレータカッターは一枚の連続したセパレータを積層ドラム部の周面に貼り付けた状態で所定形状に切り出すのが好ましい。これによればセパレータを積層ドラム部の周面に巻き付けた状態で所定形状に切り出すため、セパレータに袋状に包装された極板をより一層連続してスピーディに製造することができる。
【0011】
また、前記積層ドラム部の周辺部に送出ローラ部が設けられ、該送出ローラ部はセパレータを送り出しながら積層ドラム部の周面に貼り付けるのが好ましい。これによれば積層ドラム部にセパレータを巻き付ける動作を制御し易くなる。
【0012】
また、前記送出ローラ部においてセパレータを固定することにより該セパレータを前記積層ドラム部の周面上で滑らせることによって、セパレータの搬送を極板の搬送に同期させるのが好ましい。これによれば、積層ドラム部にセパレータを巻き付ける動作を制御することにより、極板の搬送とセパレータの搬送とのタイミングを同期させることができる。
【0013】
また、前記積層ドラム部の周面に空気吸引孔が形成されており、該空気吸引孔から空気を吸引することによりセパレータを周面に貼り付けるのが好ましい。これによればセパレータを積層ドラム部の周面に簡単かつ確実に貼り付けることができる。
【0014】
また、前記搬送部は、極板を搬送する搬送装置と、該搬送装置上の極板の上面を吸着して前記一対の積層ドラム部の間まで搬送する吸着装置とを備えるのが好ましい。これによれば極板を積層ドラム部の隙間まで簡単かつ確実に搬送することができる。しかも、吸着装置により極板を姿勢や位置を制御するものとすれば、搬送装置上で横ずれや斜めずれが生じた場合でも適正な姿勢及び位置で積層ドラム部の隙間に受け渡すことができる。
【0015】
また、前記搬送部は、前記搬送装置により搬送されてきた極板を検知する極板検知装置が設けられているのが好ましい。これによれば搬送されてくる極板の位置や状態を認識することができる。
【0016】
また、前記溶着部は、セパレータを挟み込む構造となされ、極板の両側面にセパレータを積層し始めたときに、セパレータの先端部を挟み込みながら把持して、積層ドラム部の回転と同期しながら引き出したあと、セパレータの縁部を挟み込んで溶着するのが好ましい。これによれば、例えばセパレータが静電気を帯びるなどして積層ドラム部の間を通過したあともそのまま積層ドラム部の周面に貼り付くことを防止できる。また後工程に必要な溶着部を使用しているため、別途装置を設ける必要がない。さらに把持している間に溶着部により溶着するものとすれば電池セル要素の先端部を仮溶着することができる。
【0017】
前記溶着部は、セパレータの縁部を長さ方向に沿って点溶着するのが好ましい。これによればセパレータの縁部を簡単かつ確実に仮溶着することができる。
【0018】
また、前記溶着部は、セパレータを挟み込みながら回転するヒートローラ構造となされ、前記積層ドラム部の回転と同期しながら回転し、セパレータの縁部を順次挟み込んで溶着してもよい。これによれば極板の両側面にセパレータを積層すると同時に、セパレータの縁部を溶着することができる。
【0019】
また、本発明に係る電池セル製造装置は、請求項1から請求項10のいずれかに記載の極板包装装置により製造された、セパレータにより袋状に包装された正極又は負極と、それと対極の負極又は正極の極板、あるいはそれと対極のセパレータにより袋状に包装された負極又は正極の極板とを交互に積層して電池セルを製造することを特徴とする。これによればセパレータで袋状に包装された極板と、それと対極の極板、あるいはそれと対極のセパレータにより袋状に包装された負極又は正極の極板とを交互に積層することにより、電池セルを効率的に製造することができる。
【0020】
また、本発明に係る極板包装方法は、正極または負極の極板をセパレータで袋状に包装する極板包装方法であって、一対の積層ドラム部を互いに平行に対向する態様で配置し、前記極板を前記一対の積層ドラム部の間まで搬送するとともに、それと同期して所定の形状に形成されたセパレータを前記一対の積層ドラム部の周面に貼り付けながら該一対の積層ドラム部の間まで搬送し、前記一対の積層ドラム部の間において、前記積層ドラム部の回転と同期して極板を接線方向に搬送する過程で、前記積層ドラム部の周面に貼り付けられたセパレータを前記積層ドラム部の回転に従って極板の両側面に順次積層し、セパレータの縁部を溶着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、積層ドラム部の回転を利用しながら、所定形状に形成された極板の両側面に、所定形状に形成されたセパレータを積層するため、セパレータに袋状に包装された極板を連続してスピーディに製造することができる。このため後工程において電池セルを製造するに際して、セパレータで袋状に包装された極板を連続して順次供給することができるため、電池セルの製造効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本装置の概略構成図である。
【図2】本装置のローラ部の(a)溶着前の状態、(b)溶着後の状態を示す概略正面図である。
【図3】(a)セパレータ、(b)極板、(c)電池セル要素の平面図である。
【図4】本装置の電気的構成を示す図である。
【図5】本装置による極板包装方法の工程を示す第1の図である。
【図6】本装置による極板包装方法の工程を示す第2の図である。
【図7】本装置による極板包装方法の工程を示す第3の図である。
【図8】本装置による極板包装方法の工程を示す第4の図である。
【図9】本装置による極板包装方法の工程を示す第5の図である。
【図10】第2の実施形態に係る本装置による極板包装方法の工程を示す図である。
【図11】第3の実施形態に係る本装置による極板包装方法の工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に本発明の一実施形態に係る極板包装装置(以下、本装置という)ついて図面を参照しつつ説明する。
【0024】
本装置は、図1に示すように、所定形状に形成された極板Kを搬送する搬送部100と、該搬送部100の搬送方向に設けられた積層ドラム部200と、該積層ドラム部200の搬送方向の両側に設けられた溶着部300を備えてなる。
【0025】
前記搬送部100には、極板Kを略水平状態に搬送してくるコンベア110が設けられている。このコンベア110は、搬送方向の前後に設けられた第1回転軸111および第2回転軸112を介してサクションベルト113が無端状態に巻架されている。そして、第1回転軸111および第2回転軸112が図1の右回りに回転すると、サクションベルト113の上側が前方(図1の右方向)に移動して、それに伴ってコンベア110に載置された極板Kが前方に向けて縦並びに移動する。なお、本実施形態では、極板Kを略水平状態に搬送するものとしてコンベア110を使用したが、その他の搬送装置を使用してもよい。
【0026】
また、サクションベルト113には複数の空気吸引孔113aが設けられており、該空気吸引孔113aから空気を吸引することにより、極板Kをコンベア110上の所定位置に固定している。
【0027】
なお、極板Kは、図3(a)に示すように、コンベア110で搬送される前に所定形状に形成されている。これは予め所定形状にカットした極板Kをコンベア110上に載置して搬送してもよいし、あるいは一枚の連続した極板Kをコンベア110に載置したあと所定形状にカットしてもよい。
【0028】
前記搬送部100であって、コンベア110の上方には吸着装置120が設けられている。この吸着装置120は、図示略の駆動装置に接続された装置本体121と、該装置本体121の下部に設けられた吸着ヘッド122とからなり、図示略の駆動装置の動作に従って上下左右に移動し得るようになっている。
【0029】
この吸着装置120は、コンベア110の所定位置に極板Kが搬送されてくると、垂直に下降して吸着ヘッド122により極板Kを吸着し、そのまま極板Kの略水平状態を維持したまま上昇したあと、前記積層ドラム部200の方向(図1の右方向)に移動することにより、極板Kをコンベア110から積層ドラム部200の隙間230まで搬送する。
【0030】
なお、コンベア110上を搬送されてきた極板Kは、時折、搬送方向の両側に横にずれていたり、斜めにずれている場合がある。このとき吸着装置120は、その極板Kの搬送過程において横や斜めのずれを適正な姿勢に修正しながら移動するようになっている。これにより極板Kを適正な姿勢の状態で積層ドラム部200の隙間230に搬送することができる。
【0031】
前記搬送部100であって、吸着装置120の上方にはセンサカメラ130が設けられている。このセンサカメラ130は、コンベア110上を搬送されてきた極板Kを撮影するものである。具体的には、センサカメラ130は、極板Kが所定位置まで搬送されてきたときに極板Kを撮影し、その撮影画像により極板Kの位置や状態を認識して、制御装置50に所定の信号を送るようになっている。そして、所定の信号を受け取った制御装置50が図示略の駆動装置を制御することにより、吸着装置120が下降して極板Kを吸着したあと、適宜、極板Kの搬送過程において横や斜めのずれを適正な姿勢に修正しながら積層ドラム部200の隙間230に搬送する。
【0032】
なお、本実施形態では、カメラ130により極板Kの位置や状態を認識するものとしたが、その他の簡易なセンサにより例えば極板Kの先端部を検知することにより、極板Kの位置を認識するものとしてもよい。
【0033】
前記搬送部100であって、前記積層ドラム部200の後方の近傍位置には支承部140が設けられている。この支承部140は、複数のローラ群からなり、吸着装置120により搬送されてきた極板Kを支承するとともに、積層ドラム部200の隙間230に送り出すものである。
【0034】
また、支承部140は、通常時では左斜め方向に下降した状態となっており(図1参照)、吸着装置120から極板Kを受け渡されるとき、上昇して略水平状態となって極板Kを支承する(図7(a)参照))。また、支承部140は、終端部分においてローラが上下方向に対向する態様で設けられており、極板Kを両側から挟み込むようになっている。
【0035】
したがって、吸着装置120により極板Kが搬送されてくると、まず極板Kの先端部を支承部140の終端のローラにより両側から挟み込んだあと、その他のローラが上昇して略水平状態とって極板Kを支承する。そして、支承部140により極板Kを支承したあとは、吸着装置120の吸着ヘッド122から極板Kが解放されて、支承部140の右回りの回転により極板Kをローラ200の隙間230に順次送り出していく。
【0036】
前記積層ドラム部200は、円柱状に形成された上下一対の積層ドラム210、220からなる。この上下一対の積層ドラム210、220は、搬送方向に直交しながら、所定の隙間230を空けて互いに平行に対向する態様で配置されている。また、積層ドラム210、220は、セパレータSの両縁部が積層ドラム210、220の両端部からはみ出すような長さに形成されている。
【0037】
この前記積層ドラム部200は、上下一対の上側および下側積層ドラム210、220が前記隙間230において搬送方向の前方に向けて同方向に回転するようになっている。すなわち、上側に位置する上側積層ドラム210は、図1の左回りに回転することにより、周面に貼り付けられたセパレータSを隙間230まで搬送する。また、下側に位置する下側積層ドラム220は、図1の右回りに回転することにより、周面に貼り付けられたセパレータSを隙間230まで搬送する。なお、上側および下側積層ドラム210、220は、図示略の駆動モータにより駆動し、その駆動モータは制御装置50により回転制御されている。
【0038】
また、前記積層ドラム部200は、この上下一対の積層ドラム210、220の周面に複数の空気吸引孔210a、220aが形成されており、それら空気吸引孔210a、220aから空気を吸引することにより、セパレータSを上下一対の積層ドラム210、220の周面に吸着固定させる。
【0039】
また、前記積層ドラム部200は、その隙間230において、積層ドラム部200の回転と同期して略水平状態に搬送されてきた極板Kの両側面に、積層ドラム部200の回転に従ってセパレータSを順次積層していく。
具体的に説明すると、上述のように吸着装置120により極板Kが積層ドラム部200の隙間230まで搬送され、極板Kの先端部が積層ドラム部200の隙間230に到達する。また、その極板Kの搬送と同期するようにして、各積層ドラム部200が回転してセパレータSが積層ドラム部200の隙間230まで搬送され、セパレータSの先端部が積層ドラム部200の隙間230に到達する。そして、積層ドラム部200の隙間230に到達したセパレータSの先端部同士が貼り合わされる。このあと、積層ドラム部200に同期して支承部140により極板Kが略水平状態で前方に搬送され、その搬送過程において積層ドラム部200の周面に貼り付けられたセパレータSが前記積層ドラム部200の回転に従って極板の両側面に順次積層される。なお、このとき、後述するように溶着部300によりセパレータSの先端部を把持して前方に引き出すようになっている。
【0040】
また、前記積層ドラム部200の前方の斜め上方及び斜め下方には、円柱状に形成された小型の送出ローラ部240が設けられている。この送出ローラ部240は、前後一対の送出ローラ241,242からなり、セパレータSの搬送方向に沿って、所定の隙間を空けて互いに対向する態様で配置されている。そして、この送出ローラ部240は、図示略のセパレータローラから送られてきた一枚の連続したセパレータSを当該隙間に挟み込みながら、制御部50の命令を受けて所定のタイミングで前記積層ドラム部200に送り出すようになっている。なお、この送出ローラ部240によるセパレータSの送出タイミングについては後述する。
【0041】
また、前記積層ドラム部200の上方および下方には、それぞれセパレータカッター250が設けられている。このセパレータカッター250は、積層ドラム部200の周面に貼り付けられたセパレータSを所定形状に切り出すものである。具体的には、セパレータSが前記積層ドラム部200の周面に貼り付けられながら所定位置まで搬送されると、セパレータカッター250が制御部50の命令を受けて鉛直に下降し、先端に設けられた刃によりセパレータSを図3(b)に示すような所定形状に切り出す。
【0042】
このように本実施形態では、ローラに一枚の連続したセパレータSを貼り付けたあと、その搬送過程において積層ドラム部200の周面上で所定形状に切り出すようになっているため、セパレータSを所定形状に別途切り出す必要がなくなり、セパレータSをスピーディに供給することができる。なお、切り出されたあとのセパレータSの破片S’は、図7(a)に示すように、別途、カッター用吸着ヘッド251により取り除かれて、装置内に残存しないようになっている。
【0043】
前記溶着部300は、極板Kの両側面に積層されたセパレータSの両縁部を溶着するものである。この溶着部300は、上下一対の溶着機310、320からなり、それぞれ積層ドラム部200の中心部より前方の両縁部に1組ずつ設けられている。
【0044】
この溶着部300における上下の溶着機310、320は、対応する面に長さ方向に沿って複数の突起310a、320aが設けられており、これら突起310a、320aにおいてセパレータSを溶着するようになっている。このため溶着されたあとのセパレータSは、図3(c)に示すように、その両縁部が長さ方向に沿って複数の溶着点mが形成されることになる。このようにセパレータSの両縁部を複数の溶着点mとすることにより仮溶着の状態とすることができる。
【0045】
また、溶着部300は、通常時では上下方向に所定の間隔を空けた状態で配置されており、上下の溶着機310、320を近接方向に移動せしめ、そのセパレータSの両縁部の先端部分のみを把持する。そして、溶着部300は、セパレータSの先端部分を把持した状態のまま、回転ローラの回転と同期しながら前方に移動する。そして、セパレータSで袋状に包装された極板K(以下、電池セル要素Dという)が所定位置まで搬送されると、再び上下一対の溶着機310、320を離間方向に開くとともに、再び後方に移動したあと、近接方向に閉じて電池セル要素DのセパレータSの両縁部を挟み込んで各溶着点mにて溶着する。そして、溶着部300は、セパレータSの両縁部を挟み込んだまま所定位置まで搬送したあと、溶着機310、320が再び離間方向に開いて電池セル要素Dを開放する。
【0046】
なお、前記積層ドラム部200の前方位置には、図10に示すように、第2コンベア400が設けられている。この第2コンベア400は、極板Kの両側面にセパレータSが積層された電池セル要素Dを載置して、溶着部300により解放されたあとに所定位置まで搬送するようになっている。
【0047】
次に本装置による極板包装方法について図5〜図9を参照しつつ説明する。
【0048】
(1)所定形状に形成された極板Kをコンベア110上に載置して前方に向けて縦並びに搬送する。また、送出ローラ部240は図示略のセパレータローラから送られてきた一枚の連続したセパレータSを隙間に挟み込みながら前記積層ドラム部200に送り出す。但し、このときセパレータSの先端部は、積層ドラム部200の最上部または最下部に位置した状態である(図5(a))。
【0049】
(2)極板Kを所定位置まで搬送すると、カメラ130が極板Kを撮影することにより極板Kの位置や状態を認識して、制御装置50に所定の信号を送る。また、送出ローラ部240はセパレータSを隙間に挟み込みながら固定した状態を維持しており、前記積層ドラム部200はセパレータSの内面上を滑りながら回転している(図5(b))。
【0050】
(3)所定の信号を受け取った制御装置50は、図示略の駆動装置を制御して吸着装置120を下降させて極板Kを吸着する。また、送出ローラ部240は図示略のセパレータローラから送られてきた一枚の連続したセパレータSをその隙間に挟み込みながら順次送り出し、これにより積層ドラム部200に貼り付けられたセパレータSは積層ドラム部200の回転に従って搬送されていく(図5(c))
【0051】
(4)吸着装置120は極板Kの略水平状態を維持したまま上昇したあと、前記積層ドラム部200の方向(図1の右方向)に移動することにより、極板Kをコンベア110から積層ドラム部200の隙間230まで搬送する。また、送出ローラ部240は一枚の連続したセパレータSをその隙間に挟み込みながら順次送り出し、これにより積層ドラム部200に貼り付けられたセパレータSは積層ドラム部200の回転に従って隙間230まで搬送されていく(図6(a)〜(c))。
【0052】
(5) 吸着装置120により極板Kが搬送されてくると、まず極板Kの先端部を支承部140の終端のローラにより両側から挟み込んだあと、その他のローラが上昇して略水平状態となって極板Kを支承する。また、セパレータカッター250が制御部50の命令を受けて鉛直に下降し、先端に設けられた刃によりセパレータSを図3(b)に示すような所定形状に切り出す(図7(a))。
【0053】
(6)吸着装置120の吸着ヘッド122から極板Kが解放されて、支承部140の右回りの回転により極板Kをローラの隙間230に順次送り出していく。また所定形状に切り出されたセパレータSは積層ドラム部200の回転に従って前記積層ドラム部200の隙間230に向かって搬送されていく(図7(b))。
【0054】
(7)積層ドラム部200の隙間230においてセパレータSの先端部同士が貼り合わされた後、極板Kの先端部の両側面にセパレータSが積層される。そして、上下の溶着機310、320を近接方向に移動せしめ、そのセパレータSの両縁部の先端部のみを挟み込んで把持する。なお、吸着装置120はコンベア110上の元の位置まで戻っている(図7(c))。
【0055】
(8)溶着部300は、セパレータSの先端部分を把持した状態のまま、積層ドラム部200の回転と同期しながら前方に移動して、セパレータSを引き出すようにして前方に搬送する。このとき、積層ドラム部200に同期して支承部140により極板Kが略水平状態で前方に搬送され、その搬送過程において積層ドラム部200の周面に貼り付けられたセパレータSが積層ドラム部200の回転に従って極板Kの両側面に順次積層される。
【0056】
(9)極板Kの両側面にセパレータSが積層された電池セル要素Dが所定位置まで搬送されると、上下一対の溶着機310、320を離間方向に開くとともに、再び後方に移動する(図8(b))。
【0057】
(10)溶着部300は近接方向に閉じて電池セル要素DのセパレータSの両縁部を挟み込みながら把持し、突起310a、320aにより溶着する(図8(c))。このとき図3(c)に示すように、セパレータSの両縁部が複数箇所mで点溶着されており、極板KがセパレータSに袋状に包装された状態となる。
【0058】
(11)溶着部300は、セパレータSの両縁部を把持したまま極板Kを所定位置まで搬送したあと、離間方向に開いて電池セル要素Dを開放するとともに、第2コンベア400に載置して所定位置までさらに搬送する(図9(a)(b))。
【0059】
なお、後工程において、正極又は負極の極板KがセパレータSで袋状に包装された電池セル要素Dと、それと対極の負極又は正極の極板K、あるいはそれと対極のセパレータにより袋状に包装された負極又は正極の極板Kとを交互に積層することにより電池セルを製造する。
【0060】
図10は、第2の実施形態に係る本装置による極板包装方法の工程を示す図である。この実施形態では、溶着部300における上下一対の溶着機510、520の溶着面が平坦に形成されている。これによりセパレータSの両縁部の長さ方向にわたって帯状に溶着することができる。なお、本実施形態では、第1の実施形態のようにセパレータSの先端部を把持して引き出すことはせずに、積層ドラム部200の隙間230からセパレータSがほぼ露出した状態で両縁部を溶着する。
【0061】
図11は、第3の実施形態に係る本装置による極板包装方法の工程を示す図である。この実施形態では、溶着部は、セパレータSを上下方向から挟み込みながら回転するヒートローラ610、620となされ、積層ドラム部200の回転と同期しながら回転し、セパレータSの両縁部を順次挟み込んで溶着する。
【0062】
なお、図10および図11において、同一の装置及び部材については同一の符号を付して、その説明を省略することとする。
【0063】
なお、上記各実施形態は、積層ドラム部200の上下一対の積層ドラム210、220の間に所定の隙間を空けるものとしたが、積層ドラム210、220の間が互いに接して隙間がない状態であってもよい。また、積層ドラム部200の一方もしくは両方が極板Kの厚みに応じて追従する懸架方式としてもよい。
【0064】
また、搬送部100において極板Kを略水平状態に搬送するものとしたが、その他の方向で搬送してもよい。
【0065】
また、積層ドラム部200において上側及び下側積層ドラム210、220を上下に配置したが、その他の方向に配置してもよい。この場合、極板Kは積層ドラム210、220の間の接線方向(上側および下側積層ドラム210、220の中心を結ぶ直線に直交する方向)に沿って搬送される。例えば、積層ドラムを左右に配置した場合、極板Kは上方又は下方から垂直に搬送されることになる。
【0066】
また、溶着部300において溶着機310、320を上下に配置したが、その他の方向に配置してもよい。例えば、積層ドラムを左右に配置して、極板Kを上方又は下方から垂直に搬送する場合、溶着機310、320も左右に配置するのがよい。
【0067】
また、溶着部300はセパレータSの両縁部全体を溶着するものとしたが、セパレータSの両縁部の一部のみを溶着するものとしてもよい。
【0068】
また、溶着部300はセパレータSの先端部を把持して引き出したあと、セパレータSの両縁部の全体を溶着するように1回の動作で溶着を完了したが、この動作を複数回繰り返すものとしてもよい。すなわち、溶着部300はセパレータSの先端部を把持して引き出したあと、1回目はセパレータSの両縁部の一部(例えば先端部に近い2点)のみで点溶着を行い、その状態でセパレータSを引き出す。そして、溶着部300は再び素早く後方に戻って、2回目はセパレータSの両縁部の次の一部(例えば次の2点)のみで点溶着を行い、その状態でセパレータSを引き出す。そして、溶着部300は再び素早く後方に戻って、3回目はセパレータSの両縁部のさらに次の一部(例えばさらに次の2点)のみで点溶着を行い、その状態でセパレータSを引き出す。このように溶着部300がセパレータSの両縁部を複数回にわたって溶着することにより、セパレータSの両縁部を精度良く溶着することができる。
【0069】
また、セパレータカッター250により一枚の連続したセパレータSを積層ドラム部200の周面に貼り付けた状態で所定形状に切り出すものとしたが、あらかじめ所定形状に切り出されたセパレータSを積層ドラム部200に貼り付けて搬送してもよい。
【0070】
また、支承部140は、その全てをローラからなるものとしたが、フラットな部材など、その他の部材で構成してもよい。ただ、極板Kを積層ドラム部200の隙間230に正確に送るためには、支承部140の終端部分は極板Kを挟み込んで送るためのローラ構造であるのが好ましい。
【0071】
また、極板Kの両縁部を溶着するものとしたが、一方側縁部のみを溶着するなど、その他の縁部を溶着してもよい。
【0072】
また、図3に示すように、極板Kを縦並びに搬送するものとしが、横並び(図3に示す極板Kを平面方向90度に回転させた状態の並び)に搬送するなど、その他の方向の並びで搬送してもよい。
【0073】
また、上述の構成に限定させるものではなく、種々設計変更が可能である。要は、積層ドラム部200の回転を利用しながら、所定形状に形成された極板Kの両側面に、所定形状に形成されたセパレータSを積層していくものであればよい。
【符号の説明】
【0074】
100…搬送部
110…コンベア
111…第1回転軸
112…第2回転軸
113…サクションベルト
113a…空気吸引孔
120…吸着装置
121…装置本体
122…吸着ヘッド
130…センサカメラ
140…支承部
200…積層ドラム部
210…上側積層ドラム
210a…空気吸引孔
220…下側積層ドラム
220a…空気吸引孔
230…隙間
240…送出ローラ部
250…セパレータカッター
251…カッター用吸着ヘッド
300…溶着部
310…上側溶着機
320…下側溶着機
400…第2コンベア
401…第1回転軸
402…第2回転軸
403…サクションベルト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極または負極の極板をセパレータで袋状に包装する極板包装装置であって、
所定の形状に形成された極板を搬送する搬送部と、
互いに平行に対向する態様で配置され、所定形状に形成されたセパレータを周面に貼り付けながら搬送する一対の積層ドラム部と、
正極または負極の極板を包装したセパレータの縁部を溶着する溶着部とを備え、
前記搬送部が前記極板を前記一対の積層ドラム部の間まで搬送するとともに、それと同期して前記一対の積層ドラム部が所定の形状に形成されたセパレータを周面に貼り付けながら前記一対の積層ドラム部の間まで搬送し、
前記一対の積層ドラム部の間において、前記積層ドラム部の回転と同期して極板が接線方向に搬送される過程で、前記積層ドラム部の周面に貼り付けられたセパレータが前記積層ドラム部の回転に従って極板の両側面に順次積層され、溶着部によりセパレータの縁部が溶着されることを特徴とする極板包装装置。
【請求項2】
前記積層ドラム部の周辺部にセパレータカッターが設けられ、該セパレータカッターは一枚の連続したセパレータを積層ドラム部の周面に貼り付けた状態で所定形状に切り出す請求項1に記載の極板包装装置。
【請求項3】
前記積層ドラム部の周辺部に送出ローラ部が設けられ、該送出ローラ部はセパレータを送り出しながら積層ドラム部の周面に貼り付ける請求項1または請求項2に記載の極板包装装置。
【請求項4】
前記送出ローラ部においてセパレータを固定することにより該セパレータを前記積層ドラム部の周面上で滑らせることによって、セパレータの搬送を極板の搬送に同期させる請求項3に記載の極板包装装置。
【請求項5】
前記積層ドラム部の周面に空気吸引孔が形成されており、該空気吸引孔から空気を吸引することによりセパレータを周面に貼り付ける請求項1から請求項4のいずれかに記載の極板包装装置。
【請求項6】
前記搬送部は、極板を搬送する搬送装置と、該搬送装置上の極板の上面を吸着して前記一対の積層ドラム部の間まで搬送する吸着装置とを備える請求項1から請求項5のいずれかに記載の極板包装装置。
【請求項7】
前記搬送部は、前記搬送装置により搬送されてきた極板を検知する極板検知装置が設けられている請求項6に記載の極板包装装置。
【請求項8】
前記溶着部は、セパレータを挟み込む構造となされ、極板の両側面にセパレータを積層し始めたときに、セパレータの先端部を挟み込みながら把持して、積層ドラム部の回転と同期しながら引き出したあと、セパレータの縁部を挟み込んで溶着する請求項1から請求項7のいずれかに記載の極板包装装置。
【請求項9】
前記溶着部は、セパレータの縁部を点溶着する請求項1から請求項8のいずれかに記載の極板包装装置。
【請求項10】
前記溶着部は、セパレータを挟み込みながら回転するヒートローラ構造となされ、前記積層ドラム部の回転と同期しながら回転し、セパレータの縁部を順次挟み込んで溶着する請求項1から請求項9のいずれかに記載の極板包装装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載の極板包装装置により製造された、セパレータにより袋状に包装された正極又は負極と、それと対極の負極又は正極の極板、あるいはそれと対極のセパレータにより袋状に包装された負極又は正極の極板とを交互に積層して電池セルを製造することを特徴とする電池セル製造装置。
【請求項12】
正極または負極の極板をセパレータで袋状に包装する極板包装方法であって、
一対の積層ドラム部を互いに平行に対向する態様で配置し、
前記極板を前記一対の積層ドラム部の間まで搬送するとともに、それと同期して所定の形状に形成されたセパレータを前記一対の積層ドラム部の周面に貼り付けながら該一対の積層ドラム部の間まで搬送し、前記一対の積層ドラム部の間において、前記積層ドラム部の回転と同期して極板を接線方向に搬送する過程で、前記積層ドラム部の周面に貼り付けられたセパレータを前記積層ドラム部の回転に従って極板の両側面に順次積層し、セパレータの縁部を溶着することを特徴とする極板包装方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−113994(P2012−113994A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262748(P2010−262748)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000141886)株式会社京都製作所 (83)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】