極細同軸ケーブルアセンブリの作製方法及び極細同軸ケーブルアセンブリ
【課題】製造時間の短縮が図れ、耐屈曲特性を製品ごとに均一とすることが可能な極細同軸ケーブルアセンブリの作製方法を提供する。
【解決手段】複数の極細同軸ケーブル3を平行に配して両端末3a,3bを揃え、端末の一方3aに第1の接続部4aを、端末の他方3bに第2の接続部4bを配してなる構造体5と、伸縮可能な管状体1とを用意し、管状体1の中空部1bに対してその一方の開口部1cから治具2を挿入し、中空部1bの径が大きくなるように拡げる工程、中空部1bの径を拡げた状態を保持したまま、極細同軸ケーブル3は中空部1bを通過するように、中空部1bの一方の開口部1cから他方の開口部1dに向かって、構造体5を中空部1bに挿入する工程及び治具2を中空部1bから外した際に、管状体1が収縮することを利用し、第1の接続部4aと第2の接続部4bとが露呈するように、極細同軸ケーブル3を管状体1で被覆する工程を有する。
【解決手段】複数の極細同軸ケーブル3を平行に配して両端末3a,3bを揃え、端末の一方3aに第1の接続部4aを、端末の他方3bに第2の接続部4bを配してなる構造体5と、伸縮可能な管状体1とを用意し、管状体1の中空部1bに対してその一方の開口部1cから治具2を挿入し、中空部1bの径が大きくなるように拡げる工程、中空部1bの径を拡げた状態を保持したまま、極細同軸ケーブル3は中空部1bを通過するように、中空部1bの一方の開口部1cから他方の開口部1dに向かって、構造体5を中空部1bに挿入する工程及び治具2を中空部1bから外した際に、管状体1が収縮することを利用し、第1の接続部4aと第2の接続部4bとが露呈するように、極細同軸ケーブル3を管状体1で被覆する工程を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は極細同軸ケーブルアセンブリの作製方法に係り、より詳しくは、製造時間の短縮が図れ、複数回の屈曲に対して耐久性の向上が図れる極細同軸ケーブルアセンブリの作製方法及び極細同軸ケーブルアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話に代表される電子機器の小型化、軽量化及び多機能化が急速に進展している。これに伴い、捻回機構を伴う携帯電話では、高い屈曲特性を有した極細同軸ケーブルを使用する機会が増えてきている。また、近年の携帯TVの発展により、携帯機器の構造は複雑化しており、配線するスペースも減少している。
【0003】
現在、極細同軸ケーブルを使用したハーネスは約40芯以上のケーブルが使用されているが、図6(a)に示すように、これらのケーブル103の端末にコネクタ104を接続する場合、フラット形状で接続し、極細同軸ケーブルアセンブリ100が得られる。しかし、個々のケーブル103は個別に動くため、図6(b)に示すようにケーブル103がばらばらとなってしまう。例えば携帯電話等の携帯電子機器に複数の極細同軸ケーブルを組み込む際は、極細同軸ケーブルの配線スペースは狭く、複雑である。そのため、従来の極細同軸ケーブルアセンブリを用いたものでは、ケーブル同士が絡み合い、携帯電子機器の配線として適用することが困難であった。そこで、携帯電話等の携帯電子機器でケーブルアセンブリを使用する場合、図7に示すように、極細同軸ケーブルアセンブリ110は、テープ111で極細同軸ケーブル113を束ねる構造とすることで、図8に示すように、携帯電話200の配線として使用されている。
【0004】
テープ111で極細同軸ケーブル113を束ねる際は、耐屈曲特性を考慮して、薄い(約60μm以下)四フッ化エチレン樹脂製多孔質膜を使用した結束方法が一般的である。
例えば、図9に示すように特許文献1に開示された極細同軸ケーブルアセンブリ120では、ケーブル123にテープ121を巻きつけることで、ケーブル123の結束と保護とがなされている。
また、例えば図10に示すように、特許文献2に開示された極細同軸ケーブルアセンブリ130では、ケーブル133にテープ131を巻きつけることにより、ケーブル133の結束と保護とがなされている。また、ケーブル133が捻られる部分133aにはテープ133をつけない構成とし、耐屈曲特性の向上を図っている。
【0005】
このように、従来の製造方法では、ケーブルを束ねるものとしてテープ材料が使用され、図11に示すようにこのテープ111が複数の極細同軸ケーブル113にスパイラル状に巻かれて、これら複数の極細同軸ケーブル113が結束されている。この際、テープ111が薄いことと、結束される各極細同軸ケーブル113が柔らかいため、人手によるテープ巻きが一般的である。そのため、作業工数がかかるため、コストアップの原因となる。
図12は、従来の極細同軸ケーブルアセンブリ110に屈曲が生じている際の様子を模式的に示した図である。図12(a)は、屈曲した従来の極細同軸ケーブルアセンブリを模式的に示した全体図、図12(b)は、図12(a)におけるαの拡大図であり、結束部内を模式的に示した図、図12(c)は、図12(a)に示すα部分において、極細同軸ケーブルの長手方向に垂直な断面図である。図12(b)に示してある通り、従来のテープ巻きされた極細同軸ケーブル113には、捩れた部分が生じてしまう。
まスパイラル状にテープ巻きされた従来の極細同軸ケーブルアセンブリ110は、図12(c)に示すようにテープ111と接触する極細同軸ケーブル束の最外部の極細同軸ケーブル113bはテープ111に固定されてしまう。そのため、図12(a)及び図12(b)に示すように、屈曲部や接続部4(4a,4b)近傍で、極細同軸ケーブルの屈曲状態が自然な曲がり方ならず、屈曲を繰り返すことによりストレスが蓄積される。携帯電話等の携帯電子機器では、一般的に10万回から20万回の屈曲耐久特性が求められる。テープをスパイラル状に極細同軸ケーブルに巻く従来の方法は、主に手作業で行われていたため、テープの巻き状態を均一とすることが難しく、また、テープと極細同軸ケーブルとが接着されてしまうため、仮に不均一にテープが巻かれた場合、テープの状態に応じて極細同軸ケーブルがよじれ、得られる極細同軸ケーブルの耐久特性が不均一となる虞があった。
【特許文献1】特開2007−220495号公報
【特許文献2】特開2007−144139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、製造時間の短縮が図れ、極細同軸ケーブルアセンブリの耐屈曲特性を製品ごとに均一とすることが可能な極細同軸ケーブルアセンブリの作製方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の極細同軸ケーブルアセンブリの製造方法は、複数の極細同軸ケーブルを平行に配して両端末を揃え、前記端末の一方に第1の接続部を、前記端末の他方に第2の接続部を配してなる構造体と、伸縮可能な管状体とを用意し、前記管状体の中空部に対してその一方の開口部から治具を挿入し、該中空部の径が大きくなるように拡げる工程と、前記中空部の径を拡げた状態を保持したまま、前記極細同軸ケーブルは前記中空部を通過するように、前記中空部の一方の開口部から他方の開口部に向かって、前記構造体を前記中空部に挿入する工程と、前記治具を前記中空部から外した際に、前記管状体が収縮することを利用し、前記第1の接続部と前記第2の接続部とが露呈するように、前記極細同軸ケーブルを前記管状体で被覆する工程と、を有することを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の極細同軸ケーブルアセンブリの製造方法は、請求項1において、前記治具は、前記管状体の長手方向において、前記中空部の径を拡げる部位を有していることを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の極細同軸ケーブルアセンブリの製造方法は、請求項1または2において、前記管状体として、シリコンゴム製チューブを用いることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4に記載の極細同軸ケーブルアセンブリは、平行に配された複数の極細同軸ケーブルが両端末にて揃えられ、前記端末の一方に第1の接続部が、前記端末の他方に第2の接続部が配されてなる構造体と、前記構造体において、前記第1の接続部及び前記端末の一方並びに前記第2の接続部及び前記端末の他方を除いた領域を、束ねて被覆する伸縮可能な管状体とからなる極細同軸ケーブルアセンブリであって、前記極細同軸ケーブルに変形が生じた際に、前記管状体の中空部内において、各極細同軸ケーブルはその軸方向に自由度を有することを特徴とする。
本発明の請求項5に記載の極細同軸ケーブルアセンブリは、請求項4において、前記管状体がシリコンゴムを含むことを特徴とする。
本発明の請求項6に記載の極細同軸ケーブルアセンブリは、請求項5において、前記管状体の厚さが0.05mm以上0.2mm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、伸縮可能な管状体に構造体を挿入するだけで極細同軸ケーブルアセンブリを作製することができる。そのため、従来のテープをスパイラル状に極細同軸ケーブルに巻いていた製造方法と比べ製造時間の短縮が図れる。また、製造過程で極細同軸ケーブルに生じるよじれが抑制され、耐久特性の均一化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を、図面を参照して詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0011】
図1は、本発明の極細同軸ケーブルアセンブリの製造方法を模式的に示した図である。
まず、図1(a)に示すように、伸縮可能な管状体1と構造体5とを用意する。
伸縮可能な管状体1としては、例えばシリコンゴム製のチューブや天然ゴム等を用いることができる。シリコンゴム製のチューブは、耐熱性と柔軟性をもつ点であることから、好ましい。ここで、シリコンゴム製のチューブ(シリコンゴムからなる管状体1)とは、シリコンゴム含有率が80%以上100%以下のものをいう。
管状体1の内径は、挿入される極細同軸ケーブル3のサイズや本数により適宜調節して用意することができる。
【0012】
また管状体1の厚さは、管状体1の材質や極細同軸ケーブル3のサイズや本数、適用する電子機器等に応じて適宜調節されるが、例えば管状体1がシリコンゴム製のチューブである場合、その厚さは、0.05mm以上0.2mm以下が好ましい。厚さが0.05mm未満であると、極細同軸ケーブルアセンブリ10に屈曲が複数回生じた際に、管状体1に損傷が生じやすくなる。また、製造工程において管状体1の中空部1bの径が大きくなるように拡げた際に、管状体1に損傷が生じやすくなり、歩止りが低下する虞がある。また、電子機器の筐体との擦れにて損傷を生じやすくなる。
一方、管状体1の厚さが0.2mmを超えると、得られる極細同軸ケーブルアセンブリの屈曲特性が低下する虞がある。また、中空部1bの径が大きくなるように拡げる際に、より大きな力が必要とされ、作業性が低下する虞がある。また、図1の接続部4aや4bを通すことができなくなる虞がある。
【0013】
構造体5は、平行に配された複数の極細同軸ケーブル3が両端末3a,3bにて揃えられ、端末の一方3aに第1の接続部4aが、端末の他方3bに第2の接続部4bが配されてなる。
【0014】
第1の接続部4a及び第2の接続部4bとしては、従来、携帯電子機器で用いられていたものであれば特に限定されず用いることができる。
極細同軸ケーブル3としては、従来、携帯電子機器で用いられていたものであれば特に限定されず用いることができる。例えば、単心線や撚り線等からなる中心導体と、その外周を覆う絶縁体と、絶縁体の外側に同軸状に配される外部導体と、その外側を被覆する外皮によって構成される。外部導体は、横巻き、編組構造などで構成することができる。
極細同軸ケーブル3は、同軸ケーブルのうち中心導体のサイズがAWG36以下のケーブルであることが好ましく、AWG42〜50の範囲のケーブルであることがより好ましい。例えば、AWG46からAWG42のもの(外径が0.2〜0.3mm程度のもの)が挙げられる。なお、AWGとは、米国ワイヤーゲージ(American Wire Gauge)の略称であり、同軸ケーブルの業界で広く用いられている規格である。
【0015】
次に、図1(b)に示すように、管状体1の中空部1bに対してその一方の開口部1cから治具2を挿入し、図1(c)に示すように、中空部1bの径が大きくなるように治具2を用いて管状体1の中空部1bを拡げる。この際、中空部の径が例えば10mm程度となるように中空部1bを開いておくと、次の工程で構造体5を挿入する際に容易となる。なお、中空部1bの他方の開口部1dに治具2を挿入し、中空部1bの径が大きくなるように治具2を用いて管状体1の中空部1bを拡げてもよい。
【0016】
治具2としては、管状体1の長手方向、特に長手方向全域で、中空部1bの径を拡げる部位2aを有していることが好ましい。次の工程で、簡便に構造体5を中空部1bに挿入することが可能となる。このような治具2としては、例えばピンセットが挙げられる。
【0017】
次に、図1(d)に示すように、中空部1bの径を拡げた状態を保持したまま、極細同軸ケーブル3は中空部1bを通過するように、中空部1bの一方の開口部1cから他方の開口部1dに向かって、構造体5を中空部1bに挿入する。なお、中空部1bの他方の開口部1dから一方の開口部1cに向かって、構造体5を中空部1bに挿入してもよい。
その後、治具2を管状体1の中空部1bから外すことで、伸縮していた管状体1が収縮し、図1(e)に示すように、極細同軸ケーブル3が管状体1で被覆される。この際、構造体5において、第1の接続部4aと、端末の一方3aと、第2の接続部と、端末の他方3bとを除いた領域を、管状体1で被覆するようにする。
【0018】
このように本発明の極細同軸ケーブルアセンブリ10の作製方法は、構造体5を管状体1に挿入するだけで作製することができるため、従来のようにテープを極細同軸ケーブルにスパイラル状に巻きつけて作製するより、製造時間の短縮化を図ることが可能となる。
また、テープをスパイラル状に極細同軸ケーブルに巻く従来の方法は、主に手作業で行われていたため、テープの巻き状態を均一とすることが難しく、また、テープと極細同軸ケーブルとが接着されてしまうため、仮に不均一にテープが巻かれた場合、テープの状態に応じて極細同軸ケーブルがよじれ、得られる極細同軸ケーブルの耐久特性が不均一となる虞があった。これに対し、本発明の製造方法によれば、管状体1に構造体5を挿入することで得られるため、管状体1内で極細同軸ケーブル3が自由度高く動くことができる。そのため、本発明の製造方法によれば、製造過程で極細同軸ケーブルに生じるよじれが抑制され、耐久特性の均一化を図ることが可能となる。
【0019】
図2は、本発明の極細同軸ケーブルアセンブリを模式的に示した図である。図2(a)は、極細同軸アセンブリを示し、図2(b)は、極細同軸アセンブリを曲げた際の様子を模式的に示している。
本発明の極細同軸アセンブリ10は、平行に配された複数の極細同軸ケーブル3が両端末3a,3bにて揃えられ、端末の一方3aに第1の接続部4aが、端末の他方3bに第2の接続部4bが配されてなる構造体5と、構造体5において、第1の接続部4a及び端末の一方3a並びに第2の接続部4b及び端末の他方3bを除いた領域を、束ねて被覆する伸縮可能な管状体1とから概略構成されている。また、極細同軸ケーブル3に変形が生じた際に、管状体1の中空部1b内において、各極細同軸ケーブル3はその軸方向に自由度を有する構成となっている。構造体5及び管状体1に関しては、上述したとおりである。
【0020】
本発明の極細同軸ケーブルアセンブリ10は、各極細同軸ケーブル3が管状体1と接着固定されていないため、図2に示すように極細同軸ケーブルアセンブリ10に屈曲が生じた際に、管状体1内に配された極細同軸ケーブル3は、管状体1内部(中空部1b)でその軸方向に移動可能である。そのため、極細同軸ケーブルの屈曲箇所に、応力が集中し難い。ゆえに、屈曲耐久性の向上が図れ、長期にわたり使用が可能となる。
【0021】
本発明の極細同軸ケーブルアセンブリ10は、屈曲耐久性に優れているため、回路を有する複数の筐体がスライド可能に接合され、これらの筐体内の回路同士を極細同軸ケーブル等の電線によって電気的に接続してなる電子機器、特に、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistants)などのモバイル端末機器、および該電子機器の筐体間配線に用いることが可能である。
【0022】
図3は、本発明の極細同軸アセンブリを搭載した電子機器30の一例を模式的に示した図である。図3(a)は斜視図、図3(b)は上面図、図3(c)は側面図である。
図3に示す電子機器30は、第1の筐体31と第2の筐体32とが、その互いに対向する対向面31a,32aに沿って所定のスライド方向Dに往復移動可能に取り付けられ、第1の筐体31と第2の筐体32との間には、それぞれの端末3a,3bに接続部4a,4bが形成された極細同軸ケーブルアセンブリ10が配線され、第1の接続部4aは第1の筐体31に、第2の接続部4bは第2の筐体32に、それぞれ連結される。具体的には、それぞれの筐体31,32の内部に回路(図示せず)が収容され、回路に接続された回路側接続部と、極細同軸ケーブルアセンブリ10の接続部4a,4bとを接続することで、第1の筐体31内の回路と第2の筐体32内の回路とが極細同軸ケーブルアセンブリ10を介して接続される。回路側接続部と極細同軸ケーブルアセンブリ10の接続部4a,4bとの接続は、コネクタや半田付け等、適宜の手法を用いることができる。ここで、スライド移動の態様は、例えば往復直線移動である。
【0023】
極細同軸ケーブルアセンブリ10は、その長手方向の中央部に形成された屈曲部Fを介して折り返され、屈曲部Fは、第1の筐体31と第2の筐体32との対向面31a,32a同士の間に収容されている。本発明の極細同軸ケーブルアセンブリ10は、耐屈曲特性に優れているため、第1の筐体31と第2の筐体32との対向面31a,32a同士の間隙Tが例えば3mm、屈曲部Fの曲率半径が例えば4mmとなる場合でも、極細同軸ケーブルの損傷や断線が抑制され、電子機器30の長寿命化を図ることができる。
【0024】
第1の接続部4aと第2の接続部4bとは、スライド方向Dに並んで配置され、第1の接続部4aから屈曲部Fに向かう方向と、第2の接続部4bから屈曲部Fに向かう方向とのうち、いずれか一方がスライド方向Dに沿う同一の方向であり、他方がスライド方向Dに対し、垂直な方向である。
なお、図3では第1の接続部4aから屈曲部Fに向かう方向が、スライド方向Dに対して垂直な方向であり、第2の接続部4bから屈曲部Fに向かう方向が、スライド方向Dに沿う同一の方向の場合を示しているが、第1の接続部4aから屈曲部Fに向かう方向が、スライド方向Dに沿う同一方向であり、第2の接続部4bから屈曲部Fに向かう方向が、スライド方向Dに対し、垂直な方向であってもよい。
回路側の接続部が筐体31,32の内部に収容されている場合は、第1の接続部4aおよび第2の接続部4bも筐体31,32の内部に配置される。このため、筐体31,32には、極細同軸ケーブルアセンブリ10が挿入される開口部(図示せず)を設けることができる。第1の接続部4aの位置を、第2の接続部4bからスライド方向Dと直交する方向(図3(b)の左右方向)にずらす(図3(b)中、W部分)ことで、屈曲部Fにおいて各極細同軸ケーブルの湾曲形状が横方向に広がり、曲率半径を拡大することができる。この際、例えばWを16mmとすることで、上述した対向面31a,32a同士の間隙Tが3mm、屈曲部Fの曲率半径が4mmとなる電子機器に適用することができる。このように、第1の筐体31と第2の筐体32との距離が狭い電子機器30であっても、本発明の極細同軸ケーブルを適用することが可能である。特に本発明の極細同軸ケーブルは、対屈曲特性に優れているため、電子機器30を長期にわたり使用することが可能である。
【0025】
電子機器30を構成する筐体の個数は2個に限らず、3個以上であっても良い。例えば筐体の個数が3個である場合に、第1の筐体と第2の筐体との間の筐体間配線として、あるいは第2の筐体と第3の筐体との間の筐体間配線として、本発明の製造方法で得られた極細同軸ケーブルアセンブリが用いられても良い。
【実施例】
【0026】
<実施例>
管状体としてとして、厚さ0.1mm、内径2.0mm、外径2.2mmのシリコンゴムチューブを用意した。また、同軸ケーブルとして外径が0.29mmの40芯のもの(AWG42)を用意した。次に、同軸ケーブルの一端を第1の接続部に接続し、同軸ケーブルの他端を第2の接続部に接続して構造体を作製した。その後、シリコンゴムチューブにピンセットを挿入して中空部を拡げ、該中空部に構造体を通した。次に、ピンセットを中空部から外していき、シリコンゴムチューブの収縮により極細同軸ケーブルをシリコンゴムチューブで被覆し、図2に示すようなハーネス配線状態とした。これを実施例1の極細同軸ケーブルアセンブリとした。
【0027】
<比較例>
テープで極細同軸ケーブルを結束したこと以外は実施例と同様に作製し、これを比較例の極細同軸ケーブルアセンブリとした。
【0028】
上記で作製した実施例と比較例の極細同軸ケーブルアセンブリを、図3に示すような電子機器にそれぞれ搭載し、スライド耐久試験として、スライドを10万回行い、耐久テストを行った。その結果を図4及び図5に示す。なお、実施例、比較例ともに、5サンプルずつ作製し、スライド耐久試験を行った。
図4は、10万回のスライドを行った際に、極細同軸ケーブルに損傷が生じたときのスライド回数を示している。なお、損傷が生じなかったものは、スライド回数が10万回となっている。図4より、比較例では5つの電子機器中、3つの電子機器(サンプル2,4,5)では10万回を達成できたが、うち2つの電子機器(サンプル1,3)では8万回程度で極細同軸ケーブルに損傷が生じていた。一方、実施例の極細同軸ケーブルアセンブリを適用した電子機器では、5サンプル(サンプル6〜10)とも10万回のスライド耐久試験に合格した。
また、図5は、スライド耐久試験を終えた際の実施例及び比較例における極細同軸ケーブルアセンブリの画像である。図5(a)は比較例における極細同軸ケーブルアセンブリの写真であり、図5(b)は、実施例における極細同軸ケーブルアセンブリの写真である。図5より、比較例の極細同軸ケーブルアセンブリにおいては、全てでテープ結束部のダメージが確認できたが、実施例のシリコンゴムチューブを用いて作製された極細同軸ケーブルアセンブリでは、極細同軸ケーブルの結束部(シリコンゴムチューブ)にダメージは観察されなかった。
以上より、本発明によれば、耐久性の向上が図れ、製造時間の短縮が可能な極細同軸ケーブルアセンブリの製造方法を提供することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、スライド構造の筐体等を備える携帯電子機器や捻回機構を伴う電子機器の内部配線に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の極細同軸ケーブルアセンブリの製造方法を模式的に示した工程図である。
【図2】本発明の製造方法で得られた極細同軸ケーブルアセンブリを屈曲させた際の様子を模式的に示した図である。
【図3】本発明の製造方法で得られた極細同軸ケーブルアセンブリを適用した電子機器を模式的に示した図である。
【図4】実施例と比較例における屈曲耐久試験の結果を示したグラフである。
【図5】屈曲耐久試験後の実施例及び比較例の画像である。
【図6】従来の、極細同軸ケーブルの端末に接続部を接続した際の様子を模式的に示した図である。
【図7】例えば携帯電話に、極細同軸ケーブルアセンブリを適用した際の様子を模式的に示した図である。
【図8】従来の極細同軸ケーブルの一例を模式的に示した図である。
【図9】従来の極細同軸ケーブルの他の一例を模式的に示した図である。
【図10】従来の極細同軸ケーブルの他の一例を模式的に示した図である。
【図11】テープをスパイラル状に巻いた際の極細同軸ケーブルアセンブリを示した画像である。
【図12】テープをスパイラル状に巻いた従来の極細同軸ケーブルアセンブリに屈曲が生じた際の様子を示した図である。
【符号の説明】
【0031】
1 管状体、1b 中空部、1c 一方の開口部、1d 他方の開口部、2 治具、3 極細同軸ケーブル、3a 一方の端末、3b 他方の端末、4a 第1の接続部、4b 第2の接続部、5 構造体、10 極細同軸ケーブルアセンブリ、30 電子機器、31 第1の筐体、32 第2の筐体、31a,32a 対向面。
【技術分野】
【0001】
本発明は極細同軸ケーブルアセンブリの作製方法に係り、より詳しくは、製造時間の短縮が図れ、複数回の屈曲に対して耐久性の向上が図れる極細同軸ケーブルアセンブリの作製方法及び極細同軸ケーブルアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話に代表される電子機器の小型化、軽量化及び多機能化が急速に進展している。これに伴い、捻回機構を伴う携帯電話では、高い屈曲特性を有した極細同軸ケーブルを使用する機会が増えてきている。また、近年の携帯TVの発展により、携帯機器の構造は複雑化しており、配線するスペースも減少している。
【0003】
現在、極細同軸ケーブルを使用したハーネスは約40芯以上のケーブルが使用されているが、図6(a)に示すように、これらのケーブル103の端末にコネクタ104を接続する場合、フラット形状で接続し、極細同軸ケーブルアセンブリ100が得られる。しかし、個々のケーブル103は個別に動くため、図6(b)に示すようにケーブル103がばらばらとなってしまう。例えば携帯電話等の携帯電子機器に複数の極細同軸ケーブルを組み込む際は、極細同軸ケーブルの配線スペースは狭く、複雑である。そのため、従来の極細同軸ケーブルアセンブリを用いたものでは、ケーブル同士が絡み合い、携帯電子機器の配線として適用することが困難であった。そこで、携帯電話等の携帯電子機器でケーブルアセンブリを使用する場合、図7に示すように、極細同軸ケーブルアセンブリ110は、テープ111で極細同軸ケーブル113を束ねる構造とすることで、図8に示すように、携帯電話200の配線として使用されている。
【0004】
テープ111で極細同軸ケーブル113を束ねる際は、耐屈曲特性を考慮して、薄い(約60μm以下)四フッ化エチレン樹脂製多孔質膜を使用した結束方法が一般的である。
例えば、図9に示すように特許文献1に開示された極細同軸ケーブルアセンブリ120では、ケーブル123にテープ121を巻きつけることで、ケーブル123の結束と保護とがなされている。
また、例えば図10に示すように、特許文献2に開示された極細同軸ケーブルアセンブリ130では、ケーブル133にテープ131を巻きつけることにより、ケーブル133の結束と保護とがなされている。また、ケーブル133が捻られる部分133aにはテープ133をつけない構成とし、耐屈曲特性の向上を図っている。
【0005】
このように、従来の製造方法では、ケーブルを束ねるものとしてテープ材料が使用され、図11に示すようにこのテープ111が複数の極細同軸ケーブル113にスパイラル状に巻かれて、これら複数の極細同軸ケーブル113が結束されている。この際、テープ111が薄いことと、結束される各極細同軸ケーブル113が柔らかいため、人手によるテープ巻きが一般的である。そのため、作業工数がかかるため、コストアップの原因となる。
図12は、従来の極細同軸ケーブルアセンブリ110に屈曲が生じている際の様子を模式的に示した図である。図12(a)は、屈曲した従来の極細同軸ケーブルアセンブリを模式的に示した全体図、図12(b)は、図12(a)におけるαの拡大図であり、結束部内を模式的に示した図、図12(c)は、図12(a)に示すα部分において、極細同軸ケーブルの長手方向に垂直な断面図である。図12(b)に示してある通り、従来のテープ巻きされた極細同軸ケーブル113には、捩れた部分が生じてしまう。
まスパイラル状にテープ巻きされた従来の極細同軸ケーブルアセンブリ110は、図12(c)に示すようにテープ111と接触する極細同軸ケーブル束の最外部の極細同軸ケーブル113bはテープ111に固定されてしまう。そのため、図12(a)及び図12(b)に示すように、屈曲部や接続部4(4a,4b)近傍で、極細同軸ケーブルの屈曲状態が自然な曲がり方ならず、屈曲を繰り返すことによりストレスが蓄積される。携帯電話等の携帯電子機器では、一般的に10万回から20万回の屈曲耐久特性が求められる。テープをスパイラル状に極細同軸ケーブルに巻く従来の方法は、主に手作業で行われていたため、テープの巻き状態を均一とすることが難しく、また、テープと極細同軸ケーブルとが接着されてしまうため、仮に不均一にテープが巻かれた場合、テープの状態に応じて極細同軸ケーブルがよじれ、得られる極細同軸ケーブルの耐久特性が不均一となる虞があった。
【特許文献1】特開2007−220495号公報
【特許文献2】特開2007−144139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、製造時間の短縮が図れ、極細同軸ケーブルアセンブリの耐屈曲特性を製品ごとに均一とすることが可能な極細同軸ケーブルアセンブリの作製方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の極細同軸ケーブルアセンブリの製造方法は、複数の極細同軸ケーブルを平行に配して両端末を揃え、前記端末の一方に第1の接続部を、前記端末の他方に第2の接続部を配してなる構造体と、伸縮可能な管状体とを用意し、前記管状体の中空部に対してその一方の開口部から治具を挿入し、該中空部の径が大きくなるように拡げる工程と、前記中空部の径を拡げた状態を保持したまま、前記極細同軸ケーブルは前記中空部を通過するように、前記中空部の一方の開口部から他方の開口部に向かって、前記構造体を前記中空部に挿入する工程と、前記治具を前記中空部から外した際に、前記管状体が収縮することを利用し、前記第1の接続部と前記第2の接続部とが露呈するように、前記極細同軸ケーブルを前記管状体で被覆する工程と、を有することを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の極細同軸ケーブルアセンブリの製造方法は、請求項1において、前記治具は、前記管状体の長手方向において、前記中空部の径を拡げる部位を有していることを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の極細同軸ケーブルアセンブリの製造方法は、請求項1または2において、前記管状体として、シリコンゴム製チューブを用いることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4に記載の極細同軸ケーブルアセンブリは、平行に配された複数の極細同軸ケーブルが両端末にて揃えられ、前記端末の一方に第1の接続部が、前記端末の他方に第2の接続部が配されてなる構造体と、前記構造体において、前記第1の接続部及び前記端末の一方並びに前記第2の接続部及び前記端末の他方を除いた領域を、束ねて被覆する伸縮可能な管状体とからなる極細同軸ケーブルアセンブリであって、前記極細同軸ケーブルに変形が生じた際に、前記管状体の中空部内において、各極細同軸ケーブルはその軸方向に自由度を有することを特徴とする。
本発明の請求項5に記載の極細同軸ケーブルアセンブリは、請求項4において、前記管状体がシリコンゴムを含むことを特徴とする。
本発明の請求項6に記載の極細同軸ケーブルアセンブリは、請求項5において、前記管状体の厚さが0.05mm以上0.2mm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、伸縮可能な管状体に構造体を挿入するだけで極細同軸ケーブルアセンブリを作製することができる。そのため、従来のテープをスパイラル状に極細同軸ケーブルに巻いていた製造方法と比べ製造時間の短縮が図れる。また、製造過程で極細同軸ケーブルに生じるよじれが抑制され、耐久特性の均一化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を、図面を参照して詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0011】
図1は、本発明の極細同軸ケーブルアセンブリの製造方法を模式的に示した図である。
まず、図1(a)に示すように、伸縮可能な管状体1と構造体5とを用意する。
伸縮可能な管状体1としては、例えばシリコンゴム製のチューブや天然ゴム等を用いることができる。シリコンゴム製のチューブは、耐熱性と柔軟性をもつ点であることから、好ましい。ここで、シリコンゴム製のチューブ(シリコンゴムからなる管状体1)とは、シリコンゴム含有率が80%以上100%以下のものをいう。
管状体1の内径は、挿入される極細同軸ケーブル3のサイズや本数により適宜調節して用意することができる。
【0012】
また管状体1の厚さは、管状体1の材質や極細同軸ケーブル3のサイズや本数、適用する電子機器等に応じて適宜調節されるが、例えば管状体1がシリコンゴム製のチューブである場合、その厚さは、0.05mm以上0.2mm以下が好ましい。厚さが0.05mm未満であると、極細同軸ケーブルアセンブリ10に屈曲が複数回生じた際に、管状体1に損傷が生じやすくなる。また、製造工程において管状体1の中空部1bの径が大きくなるように拡げた際に、管状体1に損傷が生じやすくなり、歩止りが低下する虞がある。また、電子機器の筐体との擦れにて損傷を生じやすくなる。
一方、管状体1の厚さが0.2mmを超えると、得られる極細同軸ケーブルアセンブリの屈曲特性が低下する虞がある。また、中空部1bの径が大きくなるように拡げる際に、より大きな力が必要とされ、作業性が低下する虞がある。また、図1の接続部4aや4bを通すことができなくなる虞がある。
【0013】
構造体5は、平行に配された複数の極細同軸ケーブル3が両端末3a,3bにて揃えられ、端末の一方3aに第1の接続部4aが、端末の他方3bに第2の接続部4bが配されてなる。
【0014】
第1の接続部4a及び第2の接続部4bとしては、従来、携帯電子機器で用いられていたものであれば特に限定されず用いることができる。
極細同軸ケーブル3としては、従来、携帯電子機器で用いられていたものであれば特に限定されず用いることができる。例えば、単心線や撚り線等からなる中心導体と、その外周を覆う絶縁体と、絶縁体の外側に同軸状に配される外部導体と、その外側を被覆する外皮によって構成される。外部導体は、横巻き、編組構造などで構成することができる。
極細同軸ケーブル3は、同軸ケーブルのうち中心導体のサイズがAWG36以下のケーブルであることが好ましく、AWG42〜50の範囲のケーブルであることがより好ましい。例えば、AWG46からAWG42のもの(外径が0.2〜0.3mm程度のもの)が挙げられる。なお、AWGとは、米国ワイヤーゲージ(American Wire Gauge)の略称であり、同軸ケーブルの業界で広く用いられている規格である。
【0015】
次に、図1(b)に示すように、管状体1の中空部1bに対してその一方の開口部1cから治具2を挿入し、図1(c)に示すように、中空部1bの径が大きくなるように治具2を用いて管状体1の中空部1bを拡げる。この際、中空部の径が例えば10mm程度となるように中空部1bを開いておくと、次の工程で構造体5を挿入する際に容易となる。なお、中空部1bの他方の開口部1dに治具2を挿入し、中空部1bの径が大きくなるように治具2を用いて管状体1の中空部1bを拡げてもよい。
【0016】
治具2としては、管状体1の長手方向、特に長手方向全域で、中空部1bの径を拡げる部位2aを有していることが好ましい。次の工程で、簡便に構造体5を中空部1bに挿入することが可能となる。このような治具2としては、例えばピンセットが挙げられる。
【0017】
次に、図1(d)に示すように、中空部1bの径を拡げた状態を保持したまま、極細同軸ケーブル3は中空部1bを通過するように、中空部1bの一方の開口部1cから他方の開口部1dに向かって、構造体5を中空部1bに挿入する。なお、中空部1bの他方の開口部1dから一方の開口部1cに向かって、構造体5を中空部1bに挿入してもよい。
その後、治具2を管状体1の中空部1bから外すことで、伸縮していた管状体1が収縮し、図1(e)に示すように、極細同軸ケーブル3が管状体1で被覆される。この際、構造体5において、第1の接続部4aと、端末の一方3aと、第2の接続部と、端末の他方3bとを除いた領域を、管状体1で被覆するようにする。
【0018】
このように本発明の極細同軸ケーブルアセンブリ10の作製方法は、構造体5を管状体1に挿入するだけで作製することができるため、従来のようにテープを極細同軸ケーブルにスパイラル状に巻きつけて作製するより、製造時間の短縮化を図ることが可能となる。
また、テープをスパイラル状に極細同軸ケーブルに巻く従来の方法は、主に手作業で行われていたため、テープの巻き状態を均一とすることが難しく、また、テープと極細同軸ケーブルとが接着されてしまうため、仮に不均一にテープが巻かれた場合、テープの状態に応じて極細同軸ケーブルがよじれ、得られる極細同軸ケーブルの耐久特性が不均一となる虞があった。これに対し、本発明の製造方法によれば、管状体1に構造体5を挿入することで得られるため、管状体1内で極細同軸ケーブル3が自由度高く動くことができる。そのため、本発明の製造方法によれば、製造過程で極細同軸ケーブルに生じるよじれが抑制され、耐久特性の均一化を図ることが可能となる。
【0019】
図2は、本発明の極細同軸ケーブルアセンブリを模式的に示した図である。図2(a)は、極細同軸アセンブリを示し、図2(b)は、極細同軸アセンブリを曲げた際の様子を模式的に示している。
本発明の極細同軸アセンブリ10は、平行に配された複数の極細同軸ケーブル3が両端末3a,3bにて揃えられ、端末の一方3aに第1の接続部4aが、端末の他方3bに第2の接続部4bが配されてなる構造体5と、構造体5において、第1の接続部4a及び端末の一方3a並びに第2の接続部4b及び端末の他方3bを除いた領域を、束ねて被覆する伸縮可能な管状体1とから概略構成されている。また、極細同軸ケーブル3に変形が生じた際に、管状体1の中空部1b内において、各極細同軸ケーブル3はその軸方向に自由度を有する構成となっている。構造体5及び管状体1に関しては、上述したとおりである。
【0020】
本発明の極細同軸ケーブルアセンブリ10は、各極細同軸ケーブル3が管状体1と接着固定されていないため、図2に示すように極細同軸ケーブルアセンブリ10に屈曲が生じた際に、管状体1内に配された極細同軸ケーブル3は、管状体1内部(中空部1b)でその軸方向に移動可能である。そのため、極細同軸ケーブルの屈曲箇所に、応力が集中し難い。ゆえに、屈曲耐久性の向上が図れ、長期にわたり使用が可能となる。
【0021】
本発明の極細同軸ケーブルアセンブリ10は、屈曲耐久性に優れているため、回路を有する複数の筐体がスライド可能に接合され、これらの筐体内の回路同士を極細同軸ケーブル等の電線によって電気的に接続してなる電子機器、特に、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistants)などのモバイル端末機器、および該電子機器の筐体間配線に用いることが可能である。
【0022】
図3は、本発明の極細同軸アセンブリを搭載した電子機器30の一例を模式的に示した図である。図3(a)は斜視図、図3(b)は上面図、図3(c)は側面図である。
図3に示す電子機器30は、第1の筐体31と第2の筐体32とが、その互いに対向する対向面31a,32aに沿って所定のスライド方向Dに往復移動可能に取り付けられ、第1の筐体31と第2の筐体32との間には、それぞれの端末3a,3bに接続部4a,4bが形成された極細同軸ケーブルアセンブリ10が配線され、第1の接続部4aは第1の筐体31に、第2の接続部4bは第2の筐体32に、それぞれ連結される。具体的には、それぞれの筐体31,32の内部に回路(図示せず)が収容され、回路に接続された回路側接続部と、極細同軸ケーブルアセンブリ10の接続部4a,4bとを接続することで、第1の筐体31内の回路と第2の筐体32内の回路とが極細同軸ケーブルアセンブリ10を介して接続される。回路側接続部と極細同軸ケーブルアセンブリ10の接続部4a,4bとの接続は、コネクタや半田付け等、適宜の手法を用いることができる。ここで、スライド移動の態様は、例えば往復直線移動である。
【0023】
極細同軸ケーブルアセンブリ10は、その長手方向の中央部に形成された屈曲部Fを介して折り返され、屈曲部Fは、第1の筐体31と第2の筐体32との対向面31a,32a同士の間に収容されている。本発明の極細同軸ケーブルアセンブリ10は、耐屈曲特性に優れているため、第1の筐体31と第2の筐体32との対向面31a,32a同士の間隙Tが例えば3mm、屈曲部Fの曲率半径が例えば4mmとなる場合でも、極細同軸ケーブルの損傷や断線が抑制され、電子機器30の長寿命化を図ることができる。
【0024】
第1の接続部4aと第2の接続部4bとは、スライド方向Dに並んで配置され、第1の接続部4aから屈曲部Fに向かう方向と、第2の接続部4bから屈曲部Fに向かう方向とのうち、いずれか一方がスライド方向Dに沿う同一の方向であり、他方がスライド方向Dに対し、垂直な方向である。
なお、図3では第1の接続部4aから屈曲部Fに向かう方向が、スライド方向Dに対して垂直な方向であり、第2の接続部4bから屈曲部Fに向かう方向が、スライド方向Dに沿う同一の方向の場合を示しているが、第1の接続部4aから屈曲部Fに向かう方向が、スライド方向Dに沿う同一方向であり、第2の接続部4bから屈曲部Fに向かう方向が、スライド方向Dに対し、垂直な方向であってもよい。
回路側の接続部が筐体31,32の内部に収容されている場合は、第1の接続部4aおよび第2の接続部4bも筐体31,32の内部に配置される。このため、筐体31,32には、極細同軸ケーブルアセンブリ10が挿入される開口部(図示せず)を設けることができる。第1の接続部4aの位置を、第2の接続部4bからスライド方向Dと直交する方向(図3(b)の左右方向)にずらす(図3(b)中、W部分)ことで、屈曲部Fにおいて各極細同軸ケーブルの湾曲形状が横方向に広がり、曲率半径を拡大することができる。この際、例えばWを16mmとすることで、上述した対向面31a,32a同士の間隙Tが3mm、屈曲部Fの曲率半径が4mmとなる電子機器に適用することができる。このように、第1の筐体31と第2の筐体32との距離が狭い電子機器30であっても、本発明の極細同軸ケーブルを適用することが可能である。特に本発明の極細同軸ケーブルは、対屈曲特性に優れているため、電子機器30を長期にわたり使用することが可能である。
【0025】
電子機器30を構成する筐体の個数は2個に限らず、3個以上であっても良い。例えば筐体の個数が3個である場合に、第1の筐体と第2の筐体との間の筐体間配線として、あるいは第2の筐体と第3の筐体との間の筐体間配線として、本発明の製造方法で得られた極細同軸ケーブルアセンブリが用いられても良い。
【実施例】
【0026】
<実施例>
管状体としてとして、厚さ0.1mm、内径2.0mm、外径2.2mmのシリコンゴムチューブを用意した。また、同軸ケーブルとして外径が0.29mmの40芯のもの(AWG42)を用意した。次に、同軸ケーブルの一端を第1の接続部に接続し、同軸ケーブルの他端を第2の接続部に接続して構造体を作製した。その後、シリコンゴムチューブにピンセットを挿入して中空部を拡げ、該中空部に構造体を通した。次に、ピンセットを中空部から外していき、シリコンゴムチューブの収縮により極細同軸ケーブルをシリコンゴムチューブで被覆し、図2に示すようなハーネス配線状態とした。これを実施例1の極細同軸ケーブルアセンブリとした。
【0027】
<比較例>
テープで極細同軸ケーブルを結束したこと以外は実施例と同様に作製し、これを比較例の極細同軸ケーブルアセンブリとした。
【0028】
上記で作製した実施例と比較例の極細同軸ケーブルアセンブリを、図3に示すような電子機器にそれぞれ搭載し、スライド耐久試験として、スライドを10万回行い、耐久テストを行った。その結果を図4及び図5に示す。なお、実施例、比較例ともに、5サンプルずつ作製し、スライド耐久試験を行った。
図4は、10万回のスライドを行った際に、極細同軸ケーブルに損傷が生じたときのスライド回数を示している。なお、損傷が生じなかったものは、スライド回数が10万回となっている。図4より、比較例では5つの電子機器中、3つの電子機器(サンプル2,4,5)では10万回を達成できたが、うち2つの電子機器(サンプル1,3)では8万回程度で極細同軸ケーブルに損傷が生じていた。一方、実施例の極細同軸ケーブルアセンブリを適用した電子機器では、5サンプル(サンプル6〜10)とも10万回のスライド耐久試験に合格した。
また、図5は、スライド耐久試験を終えた際の実施例及び比較例における極細同軸ケーブルアセンブリの画像である。図5(a)は比較例における極細同軸ケーブルアセンブリの写真であり、図5(b)は、実施例における極細同軸ケーブルアセンブリの写真である。図5より、比較例の極細同軸ケーブルアセンブリにおいては、全てでテープ結束部のダメージが確認できたが、実施例のシリコンゴムチューブを用いて作製された極細同軸ケーブルアセンブリでは、極細同軸ケーブルの結束部(シリコンゴムチューブ)にダメージは観察されなかった。
以上より、本発明によれば、耐久性の向上が図れ、製造時間の短縮が可能な極細同軸ケーブルアセンブリの製造方法を提供することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、スライド構造の筐体等を備える携帯電子機器や捻回機構を伴う電子機器の内部配線に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の極細同軸ケーブルアセンブリの製造方法を模式的に示した工程図である。
【図2】本発明の製造方法で得られた極細同軸ケーブルアセンブリを屈曲させた際の様子を模式的に示した図である。
【図3】本発明の製造方法で得られた極細同軸ケーブルアセンブリを適用した電子機器を模式的に示した図である。
【図4】実施例と比較例における屈曲耐久試験の結果を示したグラフである。
【図5】屈曲耐久試験後の実施例及び比較例の画像である。
【図6】従来の、極細同軸ケーブルの端末に接続部を接続した際の様子を模式的に示した図である。
【図7】例えば携帯電話に、極細同軸ケーブルアセンブリを適用した際の様子を模式的に示した図である。
【図8】従来の極細同軸ケーブルの一例を模式的に示した図である。
【図9】従来の極細同軸ケーブルの他の一例を模式的に示した図である。
【図10】従来の極細同軸ケーブルの他の一例を模式的に示した図である。
【図11】テープをスパイラル状に巻いた際の極細同軸ケーブルアセンブリを示した画像である。
【図12】テープをスパイラル状に巻いた従来の極細同軸ケーブルアセンブリに屈曲が生じた際の様子を示した図である。
【符号の説明】
【0031】
1 管状体、1b 中空部、1c 一方の開口部、1d 他方の開口部、2 治具、3 極細同軸ケーブル、3a 一方の端末、3b 他方の端末、4a 第1の接続部、4b 第2の接続部、5 構造体、10 極細同軸ケーブルアセンブリ、30 電子機器、31 第1の筐体、32 第2の筐体、31a,32a 対向面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の極細同軸ケーブルを平行に配して両端末を揃え、前記端末の一方に第1の接続部を、前記端末の他方に第2の接続部を配してなる構造体と、伸縮可能な管状体とを用意し、
前記管状体の中空部に対してその一方の開口部から治具を挿入し、該中空部の径が大きくなるように拡げる工程と、
前記中空部の径を拡げた状態を保持したまま、前記極細同軸ケーブルは前記中空部を通過するように、前記中空部の一方の開口部から他方の開口部に向かって、前記構造体を前記中空部に挿入する工程と、
前記治具を前記中空部から外した際に、前記管状体が収縮することを利用し、前記第1の接続部と前記第2の接続部とが露呈するように、前記極細同軸ケーブルを前記管状体で被覆する工程と、
を有することを特徴とする極細同軸ケーブルアセンブリの作製方法。
【請求項2】
前記治具は、前記管状体の長手方向において、前記中空部の径を拡げる部位を有していることを特徴とする請求項1に記載の極細同軸ケーブルアセンブリの作製方法。
【請求項3】
前記管状体として、シリコンゴム製チューブを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の極細同軸ケーブルアセンブリの作製方法。
【請求項4】
平行に配された複数の極細同軸ケーブルが両端末にて揃えられ、前記端末の一方に第1の接続部が、前記端末の他方に第2の接続部が配されてなる構造体と、前記構造体において、前記第1の接続部及び前記端末の一方並びに前記第2の接続部及び前記端末の他方を除いた領域を、束ねて被覆する伸縮可能な管状体とからなる極細同軸ケーブルアセンブリであって、
前記極細同軸ケーブルに変形が生じた際に、前記管状体の中空部内において、各極細同軸ケーブルはその軸方向に自由度を有することを特徴とする極細同軸ケーブルアセンブリ。
【請求項5】
前記管状体がシリコンゴムを含むことを特徴とする請求項4に記載の極細同軸ケーブルアセンブリ。
【請求項6】
前記管状体の厚さが0.05mm以上0.2mm以下であることを特徴とする請求項5に記載の極細同軸ケーブルアセンブリ。
【請求項1】
複数の極細同軸ケーブルを平行に配して両端末を揃え、前記端末の一方に第1の接続部を、前記端末の他方に第2の接続部を配してなる構造体と、伸縮可能な管状体とを用意し、
前記管状体の中空部に対してその一方の開口部から治具を挿入し、該中空部の径が大きくなるように拡げる工程と、
前記中空部の径を拡げた状態を保持したまま、前記極細同軸ケーブルは前記中空部を通過するように、前記中空部の一方の開口部から他方の開口部に向かって、前記構造体を前記中空部に挿入する工程と、
前記治具を前記中空部から外した際に、前記管状体が収縮することを利用し、前記第1の接続部と前記第2の接続部とが露呈するように、前記極細同軸ケーブルを前記管状体で被覆する工程と、
を有することを特徴とする極細同軸ケーブルアセンブリの作製方法。
【請求項2】
前記治具は、前記管状体の長手方向において、前記中空部の径を拡げる部位を有していることを特徴とする請求項1に記載の極細同軸ケーブルアセンブリの作製方法。
【請求項3】
前記管状体として、シリコンゴム製チューブを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の極細同軸ケーブルアセンブリの作製方法。
【請求項4】
平行に配された複数の極細同軸ケーブルが両端末にて揃えられ、前記端末の一方に第1の接続部が、前記端末の他方に第2の接続部が配されてなる構造体と、前記構造体において、前記第1の接続部及び前記端末の一方並びに前記第2の接続部及び前記端末の他方を除いた領域を、束ねて被覆する伸縮可能な管状体とからなる極細同軸ケーブルアセンブリであって、
前記極細同軸ケーブルに変形が生じた際に、前記管状体の中空部内において、各極細同軸ケーブルはその軸方向に自由度を有することを特徴とする極細同軸ケーブルアセンブリ。
【請求項5】
前記管状体がシリコンゴムを含むことを特徴とする請求項4に記載の極細同軸ケーブルアセンブリ。
【請求項6】
前記管状体の厚さが0.05mm以上0.2mm以下であることを特徴とする請求項5に記載の極細同軸ケーブルアセンブリ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−27509(P2010−27509A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190060(P2008−190060)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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