説明

極細径不織布からなるセパレータ

【課題】耐熱性、耐薬品性、絶縁性に加え、抵抗が低く、電解質の保液性に優れ、取り扱い性に優れる、極細径繊維不織布セパレータを提供する。
【解決手段】アラミド繊維で構成される不織布よりなる電気化学デバイス用のセパレータであって、X線回折から求めた該アラミド繊維ポリマーの結晶化度が55%以下、もしくは結晶サイズが30Å以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばリチウムイオン二次電池もしくはアルミ電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタのような電気化学デバイス内において、正極材と負極材を隔離し、電解液中の電解質もしくはイオンを通過させるセパレータおよびそのセパレータを用いてなる電池ならびにコンデンサ、キャパシタ等の電気化学デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池、アルミ電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタは、携帯電子機器や大型機器の電源、充放電用素子として既に実用化されているが、さらなる小型化、軽量化、高容量化、また、長期使用にも耐えることが大きく期待されている。この期待に応えるためには、部材、例えば電極間の隔壁材料であるセパレータに関しても、技術・品質向上の期待が著しい。
【0003】
セパレータに要求される一般的特性として、(1)電極材の隔離、(2)電解液を保持した状態では良好な電解質・イオン透過性、(3)電気絶縁性、(4)電解液に対する化学的・電気的安定性、(5)十分な機械的強度、(6)電解液に対する十分な濡れ性および電解液の十分な保持性、を挙げることができる。加えて、電気化学デバイスの小型化、軽量化に対する期待から、セパレータとしては、薄膜化しても前述の要求特性を兼ね備えている必要がある。
【0004】
従来、リチウムイオン二次電池用セパレータとしては、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン系ポリマーを用いて製膜された多孔質シート(特許文献1:特開昭63−273651号公報)、同ポリオレフィン系ポリマー繊維を用いてシート化した不織布(特許文献2:特開2001−11761号公報)、ナイロン繊維を用いてシート化した不織布(特許文献3:特開昭58−147956号公報)が広く使用されている。この種のセパレータは1層または複数層重ねて、あるいはロール状に巻いて電池内に用いられる。
【0005】
これらの多孔質シートおよび不織布はセパレータとして良好な物性を有しているが、電気自動車用のリチウムイオン二次電池等に要求される高容量化や大出力化には必ずしも十分に対応することができるものではない。すなわち、電池の高容量化・大出力化に対して、より抵抗が低いセパレータ材料が求められている。また、より安全性が求められる用途に対して、耐熱性に優れ、高温下での化学的安定性に優れたセパレータ材料が求められている。
【0006】
これら課題を解決するために、パラ型アラミドフィブリッドを含む繊維シートからなるセパレータ(特許文献4:特開2007−242584号公報)等、耐熱性に優れたフィブリッドまたは短繊維を用いたセパレータが提案されている。これらのセパレータはアラミドフィブリッドを含むことから耐熱性は大きく向上するが、電池の高容量化・大出力化のためにセパレータに求められるイオン透過性や、工程時間短縮・電池のドライアップ低減のために求められる電解液の保液性は十分なものではなかった。
【0007】
また、繊維径5μm以下の耐熱性繊維を含むことを特徴とするセパレータ(特許文献5:特開2006−59717号公報)が提案されているが、実施例には湿式抄造法で作製したポリイミド不織布シート、いわゆる短繊維から抄造した「紙」の実施例が示されているのみである。
【0008】
また、特許文献6(国際公開第2005/057689号パンフレット)には、熱処理後の内部抵抗値(=マクミラン数×厚さ)の増加率が25%以内であることを特徴とする、電気電子部品用セパレータが示されている。ただし、耐熱性の指標のみが示されており、セパレータを構成する織布、不織布、紙等を構成する繊維の結晶化度や繊維径等については何ら規定されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭63−273651号公報
【特許文献2】特開2001−11761号公報
【特許文献3】特開昭58−147956号公報
【特許文献4】特開2007−242584公報
【特許文献5】特開2006−59717号公報
【特許文献6】国際公開第2005/057689号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、耐熱性、耐薬品性、絶縁性に加え、抵抗が低く、電解質の保液性に優れ、取り扱い性に優れる、極細径繊維不織布セパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定の繊維径ならびに特定の結晶化度もしくは結晶サイズを有するアラミド繊維を主たる構成成分とした、不織布セパレータを用いることにより、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
かくして本発明によれば、
アラミド繊維を含む不織布よりなる電気化学デバイス用のセパレータであって、X線回折から求めた該アラミド繊維の結晶化度が55%以下もしくは結晶サイズが30Å以下であることを特徴とするセパレータ、
及び、
上記セパレータを含む、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ、アルミ電解コンデンサ、及びリチウムイオンキャパシタ、
が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のセパレータは、アラミド繊維よりなるため耐熱性に優れ、極細繊維径化が容易であることから、緻密で短絡を抑制できる。加えて不織布構造により抵抗が低く、かつ電解液の保液性に優れることから、電池の大容量化、高出力化に有利である。
また、特定の結晶化度、あるいは結晶サイズを有することにより、電解液保液性が高く、例えばリチウム二次電池用等のセパレータとして使用した場合、サイクル特性に優れる等の利点がある。さらには、しなやかさを有し、折り曲げがしやすい等、セパレータとして使用する際に取り扱いやすい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において、セパレータを構成する繊維に用いられるアラミドポリマーは、耐熱性、難燃性、耐薬品性、絶縁性に優れており、1種又は2種以上の2価の芳香族基が直接アミド結合により連結されているポリマーであって、該芳香族基は2個の芳香環が酸素、硫黄又はアルキレン基で結合されたものであってもよい。また、これらの2価の芳香族基には、メチル基やエチル基などの低級アルキル基、メトキシ基、クロルキなどのハロゲン基等が含まれていてもよい。さらには、これらアミド結合は限定されず、パラ型、メタ型のどちらでもよい。
【0015】
かかるアラミドポリマーとしては、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、コポリパラフェニレン−3,4’オキシジフェニレン−テレフタルアミド、ポリメタフェニレンイソフタルアミド、ポリメタフェニレンテレフタルアミドなどが好ましく選択される。
【0016】
本発明のセパレータは、アラミドポリマーを含むため耐熱性が高い。よって、例えばリチウムイオン電池用セパレータとして用いた場合、異常発熱によって電池内部温度が200℃以上の高温になっても、セパレータが収縮することなく、セパレータ収縮による電極間ショートを防止することができる。電気二重層キャパシタ用等、活性炭中の水分乾燥が重要な用途に用いた場合、素子乾燥温度を上げることができるため、効率良く乾燥することができる。また、従来よりも高温で使用できる電気化学デバイスを作製することができる。
【0017】
本発明のセパレータは不織布構造を有することによって、従来リチウムイオン二次電池用セパレータとして利用されているポリオレフィン微多孔膜に比べて通気性が高く、したがってイオン伝導度が高くなり、低抵抗性のセパレータとなる。すなわち、出力密度、エネルギー密度の高い、ハイレート放電に適するリチウムイオン二次電池、あるいは従来よりも低抵抗あるいは低背化した電気二重層キャパシタ等を作製することができる。
【0018】
また、不織布構造を有することによって電解液保液性が高くなり、電解液含浸時間短縮による工程時間が短縮できる。また、電解液のドライアップ速度低減によるデバイスのサイクル特性向上、耐久性向上、安全性向上が期待できる。
【0019】
前記不織布の製造方法としては、紡糸と直結で不織布として製造する方法、短繊維とフィブリッドを乾式ブレンドした後、気流を利用してシートを形成する乾式抄造法、あるいは短繊維とフィブリッドをいったん水中に分散させて抄紙機にかけて製造する湿式抄造法等が挙げられる。紡糸と直結で不織布として製造する方法の場合、連続繊維による絡み合いによって破断面の毛羽立ちが少ないセパレータとすることができるため好ましい。
【0020】
本発明のセパレータを構成するアラミド繊維の繊維径は、セパレータの細孔径を小さくするため、また、薄葉化を可能とするため、5μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましい。微細繊維からなることによって、薄葉でも短絡防止性に優れたセパレータとすることができる。
【0021】
本発明のセパレータを構成するアラミド繊維は、アラミドポリマー溶液の紡糸によって得ることができる。細径アラミド繊維の好適な製造方法としては、ポリマー溶液をバーストさせ細繊化する爆裂紡糸技術(国際公開第2002/052070号パンフレット)をアラミドポリマーに適用する方法、一般に溶融性ポリマーで行われているメルトブロー技術を改良し効果的に細繊化する技術(US6013223号公報)を、アラミドポリマーの溶液紡糸に適用する方法、特開2005−200779号公報、特開2006−336173号公報記載のエレクトロスピニング法等が挙げられる。
【0022】
上記紡糸条件の中から適切な範囲を選択し、また、不織布の後処理条件を適切な範囲から選択し、結晶化度を最適な範囲に調整することにより、セパレータに適した不織布とすることができる。具体的には、紡糸時の繊維の延伸倍率を適切な範囲から選択する、あるいは不織布の熱処理条件を適切な範囲から選択することによって、アラミド繊維の結晶化度を55%以下、あるいは結晶サイズを30Å以下とした場合、特に取り扱い性、保液性に優れた不織布とすることができる。
【0023】
結晶化度が55%より高い、あるいは結晶サイズが30Åより大きく成長したアラミド繊維からなる不織布の場合、電気化学デバイス製造時に他の部材と積層した際、あるいはリチウムデンドライド発生時等に、一部に応力集中が起こりやすく、セパレータとして長期間使用した場合、マイクロショートが起こりやすいものと思われる。
【0024】
また、アラミド繊維の結晶化度が55%より低い場合、電解液との親和性がより高まるため、電解液のドライアップをさらに低減することができるものと思われる。また本発明のセパレータは結晶化度を特定の範囲とすることにより、しなやかさを有し、折り曲げがしやすい等、セパレータとして使用する際に取り扱いやすい。
【0025】
本発明のセパレータはアラミドポリマー以外のポリマーからなる繊維ならびに無機材料を含んだ複合体でも良い。
例えば、アラミドポリマー以外のポリマーとして、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、塩化ビニル、ポリフェニレンサルファイド、全芳香族ポリエステル、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリアミド、半芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、メラミン、ポリベンゾイミダゾール、ポリケトン(ポリエーテルエーテルケトン等)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、その他フルオロポリマー、セルロース、セルロース変性体(カルボキシメチルセルロース等)等を挙げることができる。
【0026】
また、無機材料として、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、チタン酸バリウム、アルミナ−シリカ複合酸化物、炭化ケイ素、ジルコニア、ガラス等のほか、タルク、モンモリロナイトなどの粘土微粒子、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカなどの鉱物資源由来物質あるいはそれらの人造物等を挙げることができる。
【0027】
本発明のセパレータは、単層構造であっても、上記ポリマーならびに無機材料を含む層とアラミドポリマーからなる層からなる多層構造であってもよい。
他成分を複合する、あるいは他成分との多層構造体とすることにより、セパレータの強度を増す等の効果を得ることができる。上記の他成分がポリオレフィンである場合には、リチウムイオン二次電池などの電気化学デバイスにおいて電気化学反応が暴走する温度領域(100〜160℃程度)で、ポリオレフィンが溶融するため、電極間の絶縁性が高まり、異常な電気化学反応を抑制することができる。
【0028】
本発明のセパレータの厚みは、電気化学デバイスの種類や用途によって適宜選択されるが、5〜200μ mであることが好ましく、10〜100μ mであることがより好ましく、15〜80μmであることがさらに好ましい。また、空隙率は30〜80%であることが好ましく、50〜75%であることがより好ましい。ここで空隙率とは、坪量M(g/cm2)、厚さT(μm)、ポリマー密度D(g/cm3)より、下記式にて算出した値である。
空隙率(%)=[1−(M/T)/D]×100
【0029】
セパレータの厚さ、ならびに空隙率がかかる範囲にあることで、電解液保液性と、低抵抗性のバランスのとれたセパレータとすることができる。
セパレータの目付、すなわち単位面積の重量としては、電極間の隔壁として機能する範囲であれば特に制限されるものではないが、通常、4〜160g/m2であることが好ましく、8〜80g/m2であることがより好ましく、10〜65g/m2であることがさらに好ましい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。実施例における各項目は次の方法で測定した。
【0031】
<固有粘度(IV)>
ポリマーをNMPに100mg/20 mLで溶解し、オストワルド粘度計を用い30
℃で測定した。
【0032】
<平均繊維径>
得られた繊維から任意にサンプリングし、繊維50本について、走査型電子顕微鏡JS
M6330F(JEOL社製)にて観察および測長を行い、平均繊維径を算出した。なお
観察は、3,000倍の倍率で行った。
【0033】
<厚み>
小野測器 ディジタルリニアゲージDG−925(測定端子部の直径1cm)を用い、任意に選択した20箇所において厚さを測定し、平均値を求めた。
【0034】
<目付>
JIS L1906の単位面積当たりの重量試験方法に準じて測定を行った。
【0035】
<透気度(ガーレー)>
JIS L1906の通気性試験方法(ガーレー形法)準じて測定を行った。
【0036】
<毛羽立ちの観察>
セパレータをカットした時の断面を指で軽く擦った時の繊維の脱落及び/又は毛羽立ちの有無を、目視ならびに顕微鏡にて観察した。
【0037】
<結晶化サイズ、結晶化度測定>
X線回折装置(D8 DISCOVER with GADDS Super Speed、Bruker AXS社製)を用い、2θ=10〜40°の範囲の測定を行った。なおこの際、試料の全方向のプロファイルを測定した。Hindelehら(A.M.Hideleh and D.J.Johnson,Polymer,19,27(1978))の方法に従い、市販のメタアラミドの全方位回折曲線を基にピーク分離し、分離後の最も強度の大きいピーク(ポリメタフェニレンイソフタルアミドの場合、2θ=23.5°付近)の半値幅から、下記に示すScherrerの式により、結晶サイズ(単位:Å)を算出した。
結晶サイズ=Kλ/(β×cosθ)
(ここで、Kは定数で0.94、λは使用X線の波長で1.54Å(CuKα線)、βは反射プロフィールのラジアン単位の半価幅で実測値をβM、装置定数をβEとして、β=βM−βEから求めた。θは回折線のブラッグ角である。)
また結晶化度は、上記分離後の結晶性ピーク強度の、全ピーク強度に対する割合から求めた。なお、結晶性ピークは、高度に結晶化されている市販のアラミド繊維の回折強度曲線のピーク位置を基準とした。
【0038】
<液体吸い上げ高さ>
JIS−L1907に規定されている吸水速度測定法(バイレック法)に準じて、プロピレンカーボネートの1分後の吸い上げ高さの測定を行った。
【0039】
<電池評価試験>
正極活物質としてLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2(平均粒径6μm)を89重量%、導電剤としてグラファイトを6重量%、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンを5重量%の割合とし、さらに分散用溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを加えて混合して、ペースト状スラリーを作製した。このスラリーを正極集電体となるアルミニウム箔(厚さ15μm)に塗布し、乾燥後、ローラープレス機で圧縮成型を行い、正極を形成した。
また、負極活物質としてグラファイト(平均粒径20μm)を90重量%、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンを10重量%の割合とし、さらに分散用溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを加えて混合して、ペースト状スラリーを作製した。このスラリーを負極集電体となる電解銅箔(厚さ10μm)に塗布し、乾燥後、ローラープレス機で圧縮成型を行い、負極を形成した。
ついで上記のようにして形成した正極および負極を、所定のサイズ(約30mm×約60mm)に打ち抜き、各実施例及び比較例のセパレータを介して積層し、タブを接着、外装を施して積層体を作製した。この積層体を80℃、8時間減圧乾燥した。この積層体に、プロピレンカーボネート30重量%とエチルメチルカーボネート70重量%の混合溶媒に1mol/Lの濃度でLiPFを添加した電解液を注入した。その後外装材の注液口のシールを行って、単層ラミネートセルを作製した。なお、電極乾燥後の作業は、露点−50℃以下のドライボックス中で行った。
【0040】
試験1(インピーダンス測定):
上述のようにして作製した単層ラミネートセルについて、20℃において、充電電圧4.2V、充電時間17時間の条件で満充電を行った。その後、3.8Vに充電調整し、ACインピーダンス測定を行った。測定は、測定周波数1kHz、印加電圧10mVの条件で行った。
対照品(ポリプロピレン微多孔質膜、Celgard社製)に比べて、インピーダンスが同等である場合を△、低い場合を○とした。
【0041】
試験2(サイクル特性):
上述のようにして作製した単層ラミネートセルについて、20℃において、充電電圧4.2V、充電時間1.5時間の条件で充電を行い、その後、放電を行った。このサイクルを繰り返し行い、初回の充電容量に対する200回目の充電容量保持率を求めた。
容量保持率が85%以上の場合を○、85%未満80%以上の場合を△、80%未満の場合を×とした。
【0042】
<電気二重層キャパシタ評価試験>
粒状活性炭、カーボンブラック、及びバインダーとしてポリフッ化ビニリデンのN−メチル−2−ピロリドン溶液を混合して混練を行い、ペースト状スラリーを作製した。また、集電体としてアルミ箔、セパレータとして各実施例及び比較例のセパレータ、及び電解液としてテトラエチルアンモニウム・テトラフルオロボレート((CN・BF)をプロピレンカーボネートに溶解させたものを用意した。
これら材料からコインセル型の電気二重層キャパシタを作製し、それらの内部抵抗を測定した。対照品(セルロース紙、ニッポン高度紙製)に比べて、内部抵抗が低い場合を○とした。
【0043】
[実施例1〜6、9]
特公昭47−10863号公報記載の方法に準じた界面重合法により製造した固有粘度
(IV)=1.35のポリメタフェニレンイソフタルアミド粉未20重量部を、−10℃
に冷却したジメチルアセトアミド(DMAc)80重量部中に懸濁させ、スラリー状にした後、45℃まで昇温して溶解させ、透明なポリマー溶液を得た。
上記のポリマー溶液を、ギアポンプを使って特願2009−194917の紡糸装置に供給し、紡糸温度35℃として紡糸を行った。凝固液として水を使用し、吐出後のポリマー溶液に吹き付け、ポリマー溶液を固化させて連続繊維を得た。また紡糸装置の下方に補足ベルトを設置し、連続繊維を積層しつつベルトの搬送速度を調整することによって、表1記載の繊維径の不織布を得た。
得られた不織布を金属製カレンダーロールにて温度250℃(線圧設定50kg/cm)として熱処理した。上下ロール間のクリアランスを設けることによって任意に線圧調整し、表1、表2の厚さのセパレータを得た。
【0044】
[実施例7]
凝固液として水/DMAc混合液(混合比率50/50)を使用して不織布を作製した以外は、実施例と同様に不織布を作製し、同様の熱処理を行ってセパレータを得た。
【0045】
[実施例8]
実施例1で得られたセパレータを固定し、250℃で10分間熱処理を行った。熱処理の方法は、特開2007−84956に準じて行った。
【0046】
[比較例1]
実施例5で得られたセパレータを固定し、実施例8と同様に250℃で60分間熱処理を行った。
【0047】
[比較例2]
実施例1において、吐出後のアラミド繊維を延伸することによって、延伸繊維からなる不織布を作製した。なお、延伸の方法は、凝固糸状を40℃の30重量%NMP水溶液からなる延伸浴中にて3.4倍に延伸し、引き続き70℃の温水中に約50秒浸漬し、次いで表面温度130℃のローラーに沿わせて乾燥処理した後、表面温度340℃の熱板にて1.00倍に熱処理する方法で行った。
【0048】
[比較例3]
ポリプロピレン微多孔質膜(セルガードTM2400、Celgard社製)を用い、セパレータとしての性能評価を行った。
【0049】
[比較例4]
セルロース製セパレータ(TF4050、ニッポン高度紙工業製)を用い、セパレータとしての性能評価を行った。
電池特性評価に使用したセパレータの基礎特性、電池特性(サイクル特性)評価結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
キャパシタ評価に使用したセパレータの基礎特性、キャパシタ特性(キャパシタ抵抗)評価結果を表2に示す。
【0052】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によるセパレータは、耐熱性、耐薬品性、絶縁性加え、抵抗が低く、電解質の保液性に優れるため、大容量化、高出力化、あるいは低背化が求められる電気化学素子に対して極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラミド繊維を含む不織布よりなる電気化学デバイス用のセパレータであって、X線回折から求めた該アラミド繊維の結晶化度が55%以下もしくは結晶サイズが30Å以下であることを特徴とするセパレータ。
【請求項2】
アラミド繊維の結晶サイズが22Å以下である請求項1記載のセパレータ。
【請求項3】
アラミド繊維が、連続繊維の形状で不織布に含まれる請求項1記載のセパレータ。
【請求項4】
アラミド繊維が、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維である請求項1記載のセパレータ。
【請求項5】
アラミド繊維が、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維である請求項1記載のセパレータ。
【請求項6】
アラミド繊維が、コポリパラフェニレン−3,4’オキシジフェニレン−テレフタルアミド繊維である請求項1記載のセパレータ。
【請求項7】
連続繊維の平均繊維径が5μm以下である請求項1から6のいずれか1項に記載のセパレータ
【請求項8】
連続繊維の平均繊維径が2μm以下である請求項1から6のいずれか1項に記載のセパレータ。
【請求項9】
連続繊維の平均繊維径が1μm以下である請求項1から6のいずれか1項に記載のセパレータ。
【請求項10】
厚みが5μm以上、200μm以下である請求項1から9のいずれか1項に記載のセパレータ。
【請求項11】
空隙率が30%以上、80%以下である請求項1から9のいずれか1項に記載のセパレータ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のセパレータを含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか1項に記載のセパレータを含むことを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか1項に記載のセパレータを含むことを特徴とするアルミ電解コンデンサ。
【請求項15】
請求項1から11のいずれか1項に記載のセパレータを含むことを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。

【公開番号】特開2012−9165(P2012−9165A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141579(P2010−141579)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】