説明

楽器用調律器

【課題】表示器の照明に係わる操作を全く必要としない楽器用調律器を提供する。
【解決手段】
楽器音の基本周期を計測し、この基本周期を手掛りに最も近い基準周期を持つ音名を決定し、この音名の基準周期と計測した基本周期とを比較し、入力中の楽音のピッチ誤差を求め表示する楽器用調律器において、無入力状態が或る時間継続すると表示器の照明を消灯する自動消灯機能に加えて、音名を決定できる音の入力が所定時間以上継続すると表示器の照明を自動点灯する点灯制御手段を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は楽器用調律器に関し、特に使い勝手のよい楽器用調律器を提供しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
楽器用調律器は一般に例えば特許文献1に開示されるようにマイクロコンピュータで構成され、マイクロコンピュータにより調律しようとする楽器音の基本周期を検出する基本周期検出手段と、ピッチ誤差算出手段とを備え、調律しようとする楽器の音のピッチ誤差を表示する。ピッチ誤差表示器は液晶表示器を用いる例が多く、読み取りの視認性を高めるためにバックライトと呼ばれる表示照明灯付の液晶表示器が用いられる。
表示照明灯は電力表示が大きいため、一般には所定時間継続して入力信号が存在しない場合は表示照明灯を消灯状態に制御し、無駄な電力消費を回避する自動消灯機能を備えている。
【特許文献1】特開2003−099034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したように、従来より楽器用調律器に備えられているピッチ誤差表示器には表示照明灯が付設され、更に、無入力状態が所定の時間継続すると、この表示照明灯を自動的に消灯状態に制御する消灯制御手段が設けられている。この消灯機能は、電力消費量を可及的に小さくしようとする目的には有効であるものの、使い難くなってしまう欠点がある。
つまり、わずかな時間無音状態にする毎に表示照明灯が消灯されてしまうから、次に調律しようとする音を発する場合には必ず照明灯を点灯させる操作が要求される。この操作は楽器の奏者が楽器を操作する傍ら行なわなければならないため、楽器の奏者としては面倒な作業が強いられる。
【0004】
一方、表示照明灯の自動消灯機能を外せばその面倒な作業から開放されるが、その場合は表示照明灯が点灯のまま放置されるため、電力消費量が多く、電池が短時間で寿命切れとなる。
この発明の目的は、電力消費量も少なくでき、点灯状態に復帰させるための作業も必要としない、使い勝手のよい楽器用調律器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明による楽器用調律器は調律すべき音の基本周期を計測し、計測した基本周期から音名を決定し、音名に与えられている基準周期と計測した基本周期とを比較し、調律すべき音のピッチ誤差を算出し、この算出結果を表示照明灯を備えた表示器に表示する構成の楽器用調律器において、音名決定が不能な状態が所定の時間継続したことを検出し、表示照明灯を消灯状態に制御する消灯制御手段と、音名の決定が可能な状態が所定の時間継続したことを検出し、表示照明灯を点灯状態に制御する点灯制御手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明による楽器用調律器によれば、無音状態或は音名の決定が不能な音が入力された状態が所定の時間継続したがために表示照明灯が消灯されても、その消灯状態で音名の決定が可能な音を入力することにより、その音の継続を点灯制御手段が検出し、その検出出力により表示照明灯を点灯状態に制御する。
この結果楽器の奏者は調律器に全く手を触れることなく、必要時にのみ表示照明灯が点灯したピッチ誤差表示器を視認することができる。従って電力消費が少なく、更に使い勝手のよい楽器用調律器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
この発明による楽器用調律器は全てをハードウェアによって構成することも可能であるが、最も簡素に実現するにはマイクロコンピュータによって調律器を構成し、マイクロコンピュータに調律器を構成するための各手段と、消灯制御手段及び点灯制御手段とを構成するためのプログラムをインストールし、インストールしたプログラムをマイクロコンピュータに備えたCPUで解読し、実行させることにより消灯制御手段及び点灯制御手段を備えた調律器として機能させる実施形態が最良である。
【実施例1】
【0008】
図1にこの発明による楽器用調律器の概略の構成を示す。図中100はこの発明による楽器用調律器を示す。この発明による楽器用調律器100は、マイクロコンピュータ10と、マイクロホン20、飽和増幅器30、操作スイッチ群40、表示器50、表示照明灯点滅用スイッチ60と、電源70とを備えて構成される。表示器50はピッチ誤差表示器51と音名表示器52とを備える。
マイクロホン20は調律しようとする楽器の音をとらえ、電気信号に変換する。飽和増幅器30はマイクロホン20が出力する電気信号を飽和増幅し、矩形波に変換する。矩形波はマイクロコンピュータ10を構成する入力ポート14に入力される。
【0009】
マイクロコンピュータ10は既によく知られているように中央演算処理装置11と、ROMと呼ばれる読み出し専用メモリ12と、RAMと呼ばれる書き替え可能なメモリ13と、入力ポート14、出力ポート15とによって構成される。
この実施例では読み出し専用メモリ12にプログラムをインストールし、読み出し専用メモリ12にインストールしたプログラムによって基本周期検出手段12−1、音名決定手段12−2、ピッチ誤差算出手段12−3、消灯制御手段12−4、点灯制御手段12−5を構成した場合を示す。この場合、書き替え可能なメモリはプログラムの実行中に生じる各種のパラメータ等を記憶することに用いられる。
【0010】
基本周期検出手段12−1は入力ポート14に入力される矩形波のゼロクロス点の時間間隔を計測し、規則性のある最長の周期を検出する。検出した最長の周期がマイクロホンでとらえられている楽器音の基本周期である。楽器音の基本周期が計測されると、音名決定手段12−2が起動され、基本周期検出手段12−1が計測した基本周期を参照表に記憶した各音名の基準周期と照合し、検出した基本周期に最も近い周期を持つ音名を抽出し、入力中の楽器音の音名を決定する。
【0011】
音名が決定されると、ピッチ誤差算出手段12−3が起動される。ピッチ誤差算出手段12−3は、決定した音名の基準周期と、検出された周期とを比較し、入力中の楽器音のピッチ誤差を算出する。ピッチ誤差値はピッチ誤差表示器51に出力され、ピッチ誤差値を表示する。これと共に音名表示器52には音名決定手段12−2が決定した音名を表示する。
【0012】
入力中の音が跡絶え、数分(2〜3分程度)を経過すると消灯制御手段12−4が起動され、表示照明灯点滅用スイッチ60に例えばL理論の消灯制御信号を出力し、表示器50に備えたバックライトへの電力の供給を遮断し、消灯状態に制御する。表示器50のバックライトを点灯させるには従来は操作スイッチ群40に備えた点灯スイッチを押下操作しなければならなかった。
【0013】
この発明ではマイクロコンピュータ10に点灯制御手段12−5を設け、この点灯制御手段12−5を設け、この点灯制御手段12−5により点灯の条件が揃った時点で表示器50の照明を自動点灯させる。ここで点灯の条件とは音名の決定が可能な状態が或る時間例えば2〜3秒程度継続するか、又はピッチ誤差を確定可能な状態が或る時間継続した時点を点灯の条件とする。
【0014】
この継続時間を計時する方法としては、マイクロコンピュータ10が所定の周期で動作していることから、点灯制御手段12−5は例えば音名決定手段12−2が同一音名を継続して出力する回数又はピッチ誤差算出手段に12−3が同一の値に近いピッチ誤差を算出する回数を計数し、その計数値が所定値に達した時点で点灯の条件を満たすものと判定し、表示照明灯点滅用スイッチ60にH論理の点灯制御信号を出力し、表示照明灯点滅用スイッチ60をオンの状態に制御し、表示器50に備えたバックライトを点灯させる。
【0015】
従って、この発明による楽器用調律器100によれば入力中の音が跡絶えた時点から、所定の時間が経過した時点で表示器50の照明が消灯状態に制御された状態に維持されている状態において、マイクロホン20に音名を決定できる音が継続して入力されるか又はピッチ誤差を確定できる(ピッチ誤差を算出することができる)音が所定時間継続して入力されると、自動的に表示器50は照明が点灯し、ピッチ誤差を読み取り易い状態に切替えられる。
【0016】
図2に自動点灯機能を付加した場合の消灯制御手段12−4と、点灯制御手段12−5を構成するためのプログラムの概要を示す。
ステップSP1で音名決定とピッチ誤差算出を実行する。
ステップSP2で音名の決定値が有るか否かを判定する。音名の決定値が存在する場合はステップSP3に進む。
ステップSP3では点灯カウンタ(プログラムによって構成されるカウンタ)の計数値を+1し、消灯カウンタの計数値をリセットする。
ステップSP4では点灯カウンタの値が所定値、例えば「5」以上であるか否かを判定する。判定結果が「5」以上であればステップSP5に進む。「5」以下である場合はステップSP1に戻り、再び音名決定とピッチ誤差値を算出する。
【0017】
ステップSP5では点灯制御を実行し、表示器50の照明を点灯させる。
一方、ステップSP2において、音名の決定値が無と判定された場合はステップSP6に分岐する。
ステップSP6では消灯カウンタの計数値を+1し、点灯カウンタの計数値をリセットする。
ステップSP7では消灯カウンタの計数値が所定値、例えば「5」以上であるか否かを判定する。消灯カウンタの計数値が所定値以上に達している場合はステップSP8に進み、消灯制御を実行する。ステップSP7で消灯カウンタの計数値が所定値未満であった場合はステップSP1に戻り再度音名決定とピッチ誤差の算出を実行する。
【0018】
以上説明したようにこの発明による楽器用調律器によれば自動消灯機能に加えて、自動点灯機能を備えたから、調律器を実用するに当って、表示器の照明に係わる点灯及び消灯の操作を行わなくても、音が無くなれば自動的に消灯し、音が入力されれば自動的に点灯するから、表示が読み難い等の不都合は生じないことの外に、消費電力も抑えられ使い勝手のよい楽器用調律器を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
オーケストラ或いはブラスバンド等の楽団の練習時に活用される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の一実施例を説明するためのブロック図。
【図2】図1に示した実施例をマイクロコンピュータで実現するためのプログラムの概要を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0021】
10 マイクロコンピュータ 20 マイクロホン
11 中央演算処理装置 30 飽和増幅器
12 読み出し専用メモリ 40 操作スイッチ群
12−1 基本周期検出手段 50 表示器
12−2 音名決定手段 51 ピッチ誤差表示器
12―3 ピッチ誤差算出手段 52 音名表示器
12−4 消灯制御手段 60 表示照明灯点滅用スイッチ
12−5 点灯制御手段 70 電源
13 書き替え可能メモリ
14 入力ポート
15 出力ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調律すべき音の基本周期を計測し、計測した基本周期から音名を決定し、音名に与えられている基準周期と計測した基本周期とを比較し、上記調律すべき音のピッチ誤差を算出し、この算出結果を表示照明灯を備えた表示器に表示する構成の楽器用調律器において、
音名決定が不能な状態が所定の時間継続したことを検出し、表示照明灯を消灯状態に制御する消灯制御手段と、
音名の決定が可能な状態が所定の時間継続したことを検出し、表示照明灯を点灯状態に制御する点灯制御手段と、
を備えることを特徴とする楽器用調律器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−96697(P2008−96697A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278369(P2006−278369)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000130329)株式会社コルグ (111)
【Fターム(参考)】