説明

構造スリット部分の内装構造

【課題】地震時に内部壁が動いても内装材の形状が保持できる低コストの構造スリット部分の内装構造を提供する。
【解決手段】建物の窓開口部2の構造スリット部分4の内装構造10であって、窓サッシ12をスリット4の一方側の壁20に固定し、窓サッシ12の上下に配置した内装材裏当て金物24を一方側の壁20に固定し、スリット4の一方側に配置される内装材34を裏当て金物24に固定するとともに、スリット4の他方側に配置される内装材36を裏当て金物24に固定しないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート建物などの窓開口部に設けられる構造スリット部分の内装構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物躯体に設けられるスリット目地部分を内装材で遮蔽するとともに、この部分に働く変形応力に追従できるようにした内装構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図7に示すように、特許文献1の構造は、軽量気泡コンクリート板50、50の間に形成した目地部52(スリット部分)と、目地部52に充填したバックアップ材54とシーリング材56とを有し、軽量気泡コンクリート板50の表面に設けた特殊粘弾性板58を含む接着層60に、タイル62(内装材)を貼り付けたものである。これにより、目地部52に働く変形応力に追従するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−61040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の従来の特許文献1の構造を窓開口部の構造スリット部分に適用する場合には、目地部の接着層に特殊粘弾性板を設ける必要があるので、作業コストや材料コストが増大するおそれがある。このため、窓開口部周りの内部壁が地震等で動いた後において、壁表面の内装材の形状保持が可能な低コストの構造の開発が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、地震時に内部壁が動いても内装材の形状が保持できる低コストの構造スリット部分の内装構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に係る構造スリット部分の内装構造は、建物の窓開口部の構造スリット部分の内装構造であって、窓サッシをスリットの一方側の壁に固定し、窓サッシの上下に配置した内装材裏当て金物を前記一方側の壁に固定し、スリットの一方側に配置される内装材を前記裏当て金物に固定するとともに、スリットの他方側に配置される内装材を前記裏当て金物に固定しないようにしたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る構造スリット部分の内装構造は、上述した請求項1において、スリットの一方側の内装材と他方側の内装材との目地部分に目地カバーを設置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、建物の窓開口部の構造スリット部分の内装構造であって、窓サッシをスリットの一方側の壁に固定し、窓サッシの上下に配置した内装材裏当て金物を前記一方側の壁に固定し、スリットの一方側に配置される内装材を前記裏当て金物に固定するとともに、スリットの他方側に配置される内装材を前記裏当て金物に固定しないようにしたので、地震時に壁が動くと、スリットの一方側の内装材は裏当て金物を介して壁に追従して動く一方、スリットの他方側の内装材はこの壁と追従して動かない。そして、地震の揺れが収まると復元力で壁は元の位置に戻り、スリットの一方側の内装材もこの壁に追従して元の位置に戻る。これにより、スリットの一方側と他方側の双方の内装材の相対位置は元の状態に保たれる。したがって、地震時に内部壁が動いても内装材の形状が保持できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明に係る構造スリット部分の内装構造の実施例を示す上側の平面断面図である。
【図2】図2は、本発明に係る構造スリット部分の内装構造の実施例を示す下側の平面断面図である。
【図3】図3は、本発明に係る構造スリット部分の内装構造の正面図である。
【図4】図4は、裏当て金物を示す斜視図である。
【図5】図5は、ブラケットを示す斜視図である。
【図6】図6は、目地カバーの設置状況を示す図である。
【図7】図7は、従来の内装構造の一例を示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る構造スリット部分の内装構造の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
図1は、構造スリット部分の内装構造の実施例を示す上側の平面断面図、図2は下側の平面断面図、図3は正面図である。図1は、図3のA−A線に沿った断面図、図2は、図3のB−B線に沿った断面図に相当する。
【0013】
図1および図3に示すように、本発明に係る構造スリット部分の内装構造10は、鉄筋コンクリート建物などの窓開口部2の構造スリット4部分の内装構造である。窓開口部2の側縁には窓サッシ12が設けてある。
【0014】
窓サッシ12の建具額縁縦部12aは、スリット4内のブランケット16を介して壁20(スリットの一方側の壁)に固定されている。より具体的には、額縁縦部12aはL字型部材14に接続され、このL字型部材14は、略L字状のブラケット16の切片16bにアンカーボルト18aで固定されている。ブランケット16の平板16aは、アンカーボルト18bを介して壁20の側部20aに固定されている。なお、ブランケット16の周りの空間にはロックウールなどからなる耐火材22aが設けてあり、額縁縦部12aと壁20との間はシール材22bによってシールされている。また、壁20の屋内側の内装面20bの表面には、吹き付けウレタンなどからなる断熱材22cが設けてある。
【0015】
また、図2および図3に示すように、額縁縦部12aの上側と下側には内装材裏当て金物24が配置してある。ただし、図3には、額縁縦部12aの下側の裏当て金物24のみが示してある。スリット4内には、図2に示すように、屋外側から順に、シール材22b、ポリスチレンフォームなどからなる板状断熱材22d、ロックウールなどからなる耐火材22aが充填してある。また、内装面20bおよびスリット4を挟んで他方側の壁30の内装面30aの表面には、吹き付けウレタンなどからなる断熱材22cが設けてある。なお、スリット4は、図2に示すような構造に限るものではなく、いわゆる構造スリット材等の市販製品を用いて構成してもよい。
【0016】
裏当て金物24は、固定部材26aに溶接してあり、アンカーボルト32を介して壁20の内装面20bに固定してある。また、裏当て金物24は、屋内側に配置した中間部材26bに4本のビス28で固定してある。なお、この裏当て金物24は窓サッシ12(図1および図3を参照)と溶接されるが、図1に示すように、溶接部が屋内側から見えないように予め工場溶接することが好ましい。
【0017】
また、スリット4の一方側に配置される内装材34は、裏当て金物24の外面に固定された中間部材26bに対して図示しない接着剤等により固定してある。一方、スリット4の他方側に配置される内装材36は裏当て金物24や中間部材26bに固定していない。
【0018】
裏当て金物24は、図3および図4に示すように、溝型断面部24aとL字型断面部24bとこのL字型断面部24bに溶接されたL字型部材24cとからなる。また、ブラケット16は、図5の斜視図に示すように、アンカーボルトを挿入可能な長溝38を有する平板16aと、長孔40を有する切片16bとからなる略L字型の部材である。
【0019】
上記構成の動作および作用について説明する。
地震等によって壁20が動くと、内装材34は中間部材26bおよび裏当て金物24を介して壁20と追従して動く。一方、内装材36は裏当て金物24や中間部材26bに固定していないので、壁20と追従して動かない。そして、地震等の揺れが収まると復元力で壁20は元の位置に戻り、内装材34もこの壁20に追従して元の位置に戻る。これにより、双方の内装材34、36の相対位置は元の状態に保たれる。したがって、地震時に内部壁が動いても内装材の形状が保持できる。また、額縁縦部12aも壁20の動きに追従して変位することから、壁20への一体性が確保され、壁の破壊を招くおそれはない。
【0020】
また、図6に示すように、内装材34、36の目地部分42に目地カバー44を設置することにより、裏当て金物24や中間部材26bを目隠しすることができる。この目地カバー44を、可撓性樹脂やゴムなどの変形追従性を有する材料で構成すれば、地震時などに目地部分42が多少動いてもその変形を吸収することができる。
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、建物の窓開口部の構造スリット部分の内装構造であって、窓サッシをスリットの一方側の壁に固定し、窓サッシの上下に配置した内装材裏当て金物を前記一方側の壁に固定し、スリットの一方側に配置される内装材を前記裏当て金物に固定するとともに、スリットの他方側に配置される内装材を前記裏当て金物に固定しないようにしたので、地震時に壁が動くと、スリットの一方側の内装材は裏当て金物を介して壁に追従して動く一方、スリットの他方側の内装材はこの壁と追従して動かない。そして、地震の揺れが収まると復元力で壁は元の位置に戻り、スリットの一方側の内装材もこの壁に追従して元の位置に戻る。これにより、スリットの一方側と他方側の双方の内装材の相対位置は元の状態に保たれる。したがって、地震時に内部壁が動いても内装材の形状が保持できる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
以上のように、本発明に係る構造スリット部分の内装構造は、鉄筋コンクリート建物などの構造スリット部分の内装構造に有用であり、特に、窓開口部に設けられる構造スリット部分の内装構造に適している。
【符号の説明】
【0023】
2 窓開口部
4 構造スリット
10 構造スリット部分の内装構造
12 窓サッシ
20 壁(スリットの一方側の壁)
16 ブラケット
18a,18b,32 アンカーボルト
24 内装材裏当て金物
34 内装材(スリットの一方側に配置される内装材)
36 内装材(スリットの他方側に配置される内装材)
42 目地部分
44 目地カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の窓開口部の構造スリット部分の内装構造であって、
窓サッシをスリットの一方側の壁に固定し、
窓サッシの上下に配置した内装材裏当て金物を前記一方側の壁に固定し、
スリットの一方側に配置される内装材を前記裏当て金物に固定するとともに、スリットの他方側に配置される内装材を前記裏当て金物に固定しないようにしたことを特徴とする構造スリット部分の内装構造。
【請求項2】
スリットの一方側の内装材と他方側の内装材との目地部分に目地カバーを設置したことを特徴とする請求項1に記載の構造スリット部分の内装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−225003(P2012−225003A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91516(P2011−91516)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】