説明

構造体

【課題】 壁に沿って配設されるダクトと、ダクトを囲う開口部を有しダクトの一端部を収容した状態に壁に設置される箱体とを有する構造体に関し、ダクトと箱体の設置位置ずれを許容しつつダクトと開口部との間の隙間を埋める。
【解決手段】 壁に沿って配設されるダクトと、ダクトを囲う開口部を有しダクトの一端部を収容した状態に壁に設置される箱体と、本体の開口部の縁からその開口部に露出してダクトを取り囲む、箱体に遊びを持って設置されたカバー部材とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、壁に沿って配設されるダクトと、ダクトを囲う開口部を有しダクトの一端部を収容した状態に壁に設置される箱体とを有する構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の、ダクトと箱体とを有する構造体が、様々な分野で多用されている。例えば、その箱体には電子部品が収容され、ダクトには、その箱体に収容された電子部品への電力供給用のケーブルやその電子部品との間の信号通信用のケーブルが挿通される。
【0003】
上記の構造体の場合、ケーブルが挿通されたダクトが壁に配設され、そのダクトの一端から外に露出したケーブルと箱体内の電子部品が接続されて、その箱体が、その箱体内にダクトの一端部を収容した状態に壁に設置される。その箱体には、ダクトが通る開口部が形成されている。ただし、ダクトの設置位置ずれや箱体の設置位置ずれが大きいため、ダクトや箱体の設置位置がずれてもダクトがその開口部に配置されるように、その開口部はダクトの外形よりもかなり大きな寸法に形成される。このため、その開口部にはダクトとの間にかなり大きな隙間が生じ、外観上好ましくない。また、その隙間からゴミや虫などの異物が侵入して内部の電子回路等に損傷を与えるおそれがあり、さらにその隙間から棒状の異物を差し込むなどのいたずらを誘発するおそれもある。一方、小さ目の寸法の開口を形成すると、ダクトと箱体の設置位置ずれが許容されず設置工事が難しくなり、また、場合によっては設置時に箱体を破損させてしまうおそれがある。
【0004】
ここで、コード等を取り出す取出口にその取出口を開閉するスライド蓋を設置する構造が提案されている。
【0005】
また、配管具本体の立上り部を挿通するために壁板に穿孔する壁貫通孔の形状を穿孔容易な形状にできるわん曲配管具が提案されている。
【0006】
しかしながら、これらの提案は、ダクトと箱体とを有する上記の構造体の開口部に形成される隙間を埋める構造ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−211031号公報
【特許文献2】特開平11−341644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本件開示の構造体の課題は、ダクトと箱体の設置位置ずれを許容しつつダクトと開口部との間の隙間を埋めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本件開示の構造体は、ダクトと、箱体と、カバー部材とを有する。
【0010】
ここで、このダクトは、壁に沿って配設されるダクトである。
【0011】
また、箱体は、ダクトを囲う開口部を有しダクトの一端部を収容した状態に壁に設置される箱体である。
【0012】
さらにカバー部材は、開口部の縁からその開口部に露出してダクトを取り囲む、箱体に遊びを持って設置されたカバー部材である。
【発明の効果】
【0013】
本件開示の構造体は、上記カバー部材を有するため、ダクトと開口部との間の隙間が埋められる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】比較例の構造体の設置手順を示す模式図である。
【図2】比較例の構造体の設置手順を示す模式図である。
【図3】壁に設置された状態の、比較例の構造体の斜視図である。
【図4】図3に示す円R1の部分の拡大斜視図である。
【図5】実施形態の構造体の、壁に設置された状態を示す斜視図である。
【図6】図5に示す円R2の部分の拡大斜視図である。
【図7】本体の斜視図である。
【図8】本体の開口部の斜視図である。
【図9】本体の開口部を角度を変えて示した斜視図である。
【図10】本体の開口部を本体の内側から見て示した斜視図である。
【図11】カバー部材を組み込んだ状態の、本体の開口部を本体の内側から見て示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、先ずは、比較例としての構造体を説明し、その後で実施形態の構造体について説明する。
【0016】
図1,図2は、比較例の構造体の設置手順を示す模式図である。図1,図2に示す構造体100は、筒状のメタルモール10と、箱型の本体20とを有する。ここで、本体20には、開口部21が形成されている。
【0017】
この構造体100を壁に設置するにあたっては、先ず、図1に示すように、メタルモール10が壁300に沿って配設される。
【0018】
本体20には、例えば電子部品(不図示)が搭載されている。また、メタルモール10には、その電子部品に接続されるケーブル(不図示)が挿通されていてそのメタルモール10の一端(ここでは下端)から食み出している。
【0019】
次に、そのケーブルと本体20内の電子部品が接続され、本体20が図2に示すように壁300に設置される。この設置にあたっては、本体20は、メタルモール10が開口部21に入り込んで、そのメタルモール10の一端部(図1,図2に示す例ではメタルモール10の下端部)を本体20内に収容した状態に設置される。
【0020】
図3は、壁に設置された状態の、比較例の構造体の斜視図である。また図4は、図3に示す円R1の部分の拡大斜視図である。
【0021】
メタルモール10や本体20は、壁300への設置作業を容易にするために、かなり大きな設置位置誤差を許容している。このため、開口部21は、メタルモール10と本体20の相対的な設置位置がかなり大きくずれてもメタルモール10が開口部21を通過できるように、開口部21は、メタルモール10の外形寸法よりもかなり大きな寸法に形成されている。このため、メタルモール10と開口部21の壁面との間には、図4に示すようにかなり大きな隙間Sが形成される。この隙間Sの存在は、外観上好ましくなく、また、美観の問題にとどまらず、その隙間Sからゴミや虫などの異物の侵入を許し内部の電子部品をショートさせて破損させてしまうおそれもある。さらには、その隙間Sから異物を差し込むなどのいたずらを誘発するおそれもある。
【0022】
比較例の構造体に関する以上の説明を踏まえ、次に実施形態の構造体を説明する。
【0023】
図5は、実施形態の構造体の、壁に設置された状態を示す斜視図である。また、図6は、図5に示す円R2の部分の拡大斜視図である。さらに図7は、本体の斜視図、図8は、本体の開口部の斜視図、図9は、本体の開口部を角度を変えて示した斜視図である。
【0024】
図5に示すように、この構造体200は、図2に示す比較例の構造体100と同様、壁300に設置されている。この構造体200は、メタルモール30と、本体40と、カバー部材50とを有する。
【0025】
メタルモール30は、図2に示す構造体100を構成するメタルモール10と同一の形状を有する筒状の部材である。このメタルモール30は、本件にいうダクトの一例に相当する。
【0026】
また、本体40は、全体の形状は図2に示す構造体100の本体20と同様であるが、開口部41に、カバー部材50を保持する構造を有する。その構造の詳細は後述する。
【0027】
本体40の開口部41は、図2に示す構造体100の本体20の開口部21と同様、メタルモール30を囲う形状を有する。この本体40は、その開口部41を通るメタルモール30の一端部(ここでは下端部)を収容した状態に壁300に設置されている。この本体40は、本件にいう箱体の一例に相当する。
【0028】
カバー部材50は、図7〜図9に示すように、開口部51(後述する図10,図11を合わせて参照)を有し、本体40に遊びをもって設置された部材である。このカバー部材50は、本体40の開口部41の縁からその開口部41の内側に露出してメタルモール30を取り囲んでいる。
【0029】
図2に示す構造体100と同様、この構造体200を構成する本体40には電子部品が収容されており、メタルモール30には、本体40に収容された電子部品に接続されるケーブルが挿通されている。
【0030】
図10は、本体の開口部を本体の内側から見て示した斜視図である。この図10には、本体に組み込む前のカバー部材も示されている。図11は、カバー部材を組み込んだ状態の、本体の開口部を本体の内側から見て示した斜視図である。
【0031】
カバー部材50は、図10に示すように、開口部51を有する。この開口部51は、メタルモール30の断面形状に合った形状を有する。すなわち、このカバー部材50の開口部51は、開口部51との間にほとんど隙間を生じさせることなく、開口部51にメタルモール30が嵌まり込む形状を有する。
【0032】
このカバー部材50は、本体40の開口部41に装着されるが、このカバー部材50の両側部501には、本体40の開口部41の奥に装着される底部502から先端部503に向かって、厚みが徐々に増したテーパ部504が形成され、途中で階段状に厚みを減じる段部505が形成され、それ以降は厚みが変化しない平坦部506が形成されている。
【0033】
一方、本体40の開口部41には、その両側部の、カバー部材50の差込み方向(図10に示す矢印方向)の入口側に、溝411が形成されている。この溝411は、差込み方向途中までであって、それより深い部分には、片持ち形状のばね片412が形成されている。この溝411は、カバー部材50をこの溝411に受け入れたときに、カバー部材50が左右に遊びを持つ深さを有する。左右のばね片412は、差し込まれたカバー部材50を両側から押さえる役割りを担っている。
【0034】
また、本体40の開口部41は、その底部中央にも溝413が形成され、その溝413の両側にも、ばね片414が形成されている。溝413は、差し込まれてきたカバー部材50の底部を支持する溝であり、ばね片414は、そのカバー部材50を差込み方向(図10の矢印方向)とは逆の抜け方向に押し返す役割りを担っている。
【0035】
カバー部材50は、本体40の開口部41に、図10に示す矢印方向に差し込まれるが、その差込みの際、カバー部材50の両側部501に設けられたテーパ部504により本体40の開口部41の溝411が弾性的に広げられる。そして、テーパ部504が溝411よりも奥側にまで差し込まれると溝411は元の形状に戻る。このとき、カバー部材50の底部は本体40の開口部41の底部の溝413に入り込む。このカバー部材50は、底部のばね片414により抜け方向に押されるが、溝411を形成している壁部415にカバー部材50の段部505が突き当たり、カバー部材50が開口部41から抜けない構造となっている。
【0036】
ここで、このカバー部材50は、差込み方向に押すと段部505と壁部415との間に隙間ができる。すなわち、このカバー部材50は、開口部41に、差込み方向についても遊びを持って装着される。
【0037】
また、カバー部材50の開口部51は、上述の通りメタルモール30の断面形状に合った形状を有する。これに対し、本体40の開口部41は、カバー部材50の開口部51よりも左右方向および奥方向の両方向について広い形状を有する。したがって、このカバー部材50は、本体40の開口部41に図11に示すように装着された状態で、その本体40の開口部41の縁からその開口部41の内側に食み出た状態となる。
【0038】
本体40にカバー部材50を装着し、そのカバー部材50を装着した状態の本体40を図5に示すように壁300に設置する。すると、メタルモール30と本体40との間に設置位置ずれがあってもカバー部材50がその設置位置ずれに応じて移動し、そのカバー部材50によってメタルモール30と本体40の開口部41との間の隙間が埋められる。これにより、外観の美観が保たれ、さらに虫やゴミ等の異物の進入が避けられ、隙間に物を差し込もうとするいたずらの誘発が抑えられる。
【0039】
尚、上記実施形態の構造体200では、本体40の開口部41に、カバー部材50の底部を弾性的に持ち上げるばね片414だけでなく、そのカバー部材50を左右から弾性的に押えるばね片412が設けられているが、カバー部材50を左右から押えるばね片412はなくてもよい。また、メタルモール30と本体50の壁への設置位置ずれは、主には壁300に沿った方向の位置ずれであって、壁300に対し垂直な方向についての位置ずれは比較的小さい。したがって、カバー部材50の開口部51の奥行きを、メタルモール30の、壁300からの高さ寸法に適合した寸法に形成しておくことにより、カバー部材50の底部を持ち上げるばね片414がなくても隙間を小さく抑えることが可能である。
【符号の説明】
【0040】
10,30 メタルモール
20,40 本体
21,41,51 開口部
50 カバー部材
100,200 構造体
300 壁
411,413 溝
412,414 ばね片
501 側部
502 底部
503 先端部
504 テーパ部
505 段部
506 平坦部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁に沿って配設されるダクトと、
前記ダクトを囲う開口部を有し該ダクトの一端部を収容した状態に該壁に設置される箱体と、
前記開口部の縁から該開口部に露出して前記ダクトを取り囲む、前記箱体に遊びを持って設置されたカバー部材とを有することを特徴とする構造体。
【請求項2】
前記カバー部材を前記ダクトに向かって弾性的に付勢して該カバー部材を該ダクトに押し当てる弾性体を有することを特徴とする請求項1記載の構造体。
【請求項3】
前記箱体が、電子部品を収容する箱体であり、前記ダクトが、該箱体に収容された電子部品に接続されるケーブルが挿通されるダクトであることを特徴とする請求項1又は2記載の構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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