説明

構造物の点検装置

【課題】本発明は、橋梁等の構造物についてどの位置を撮影した画像か容易に特定することができる構造物の点検装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】点検台車20に上下動可能に取り付けた垂直ロッド60を介して水平アーム70を点検対象物1の下方に配置し、水平アーム70上を走行する走行台車150に立設した保持アーム80に撮影カメラ140を取り付ける。そして、保持アーム80を回動させるとともに撮影カメラ140を上下方向に回動させて撮影方向を設定して点検対象物1の下面の点検箇所を撮影する。その際に、保持アーム80に固定された角度表示板及び水平アーム70上の走行台車150の停止位置を示す目盛を撮影カメラ140により撮影することで、点検箇所の撮影画像に関連付けて撮影カメラ140の撮影位置及び撮影方向に関する撮影画像を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁等の下面又は建造物等の床下などの直接目視点検することが困難な構造物の部位を撮影カメラにより撮影して点検する構造物の点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁や建造物の老朽化に伴い強度の劣化が近年問題となっており、例えば、道路の橋梁については、既存の橋梁のうち1950年代から1973年代までの高度成長期に築造されたものが多く、これらの橋梁の架け替えや補強が必要となってきている。
【0003】
こうした橋梁に関しては、定期点検を数年に一度行なう必要があり、点検の際に橋梁管理カルテを作成・更新していく業務が行われている。しかしながら、橋梁の点検では、橋梁の下面側の床版、橋桁、支承及び橋脚といった部位や橋桁の間の空間に設置された水道管等の添架設備など目視点検が困難な箇所を点検しなければならず、そのため点検作業にトラッククレーンや点検足場といった大掛かりな設備が必要であった。
【0004】
こうした大掛かりな設備は作業日数がかかる上に点検コスト負担が大きいため、点検箇所を撮影カメラを用いて撮影する点検装置が提案されている。例えば、特許文献1では、高架構造物の下面に水平方向に延在する水平アームを設け、その先端部にテレビカメラを取り付けて高架構造物の下面を撮影するようにした点検装置が記載されている。また、特許文献2では、橋梁上面に小型の台車ユニットを置き、そこから固定アームにて橋梁の高欄を越えて垂直アームにより支持された水平アームを橋梁の下面に延在し、その先端から元部まで移動可能に撮影ユニットを設け、撮影ユニットを移動させて橋梁の下面の撮影を行いその撮影画像を橋梁上面の台車ユニットに設置されたモニタで確認する点検装置が記載されている。また、特許文献3では、GPS位置情報に基づいて構造物の点検位置を特定して点検記録を行うシステムが記載されている。
【特許文献1】特開2001−20224号公報
【特許文献2】特開2003−119722号公報
【特許文献3】特開2007−280282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2では、橋梁等の構造物の下面をカメラで撮影することができるものの点検記録する場合にどの位置を撮影した画像か後日確認することが難しい。また、特許文献3では、GPSにより点検位置を特定できるようにしているが、橋梁等の構造物の下面ではGPSの電波が届きにくい場合が多く点検位置を特定しにくいといった問題がある。
【0006】
特に、橋梁管理カルテを作成・更新していく場合に、橋梁のどの位置を撮影した画像か特定できないと前回の点検記録との対比判断を精度よく行うことができない。
【0007】
そこで、本発明は、橋梁等の構造物についてどの位置を撮影した画像か容易に特定することができる構造物の点検装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る構造物の点検装置は、点検対象物の下方において撮影カメラを移動させる移動手段と、前記移動手段に設けられるとともに前記撮影カメラを回動させる回動手段と、前記撮影カメラの撮影位置又は撮影方向に関する標識を表示する表示手段と、前記撮影カメラにより前記点検対象物を下方から撮影するとともに前記標識を撮影するように前記回動手段を制御する撮影制御手段とを備えていることを特徴とする。さらに、前記表示手段は、前記回動手段の垂直回動角度及び水平回動角度を示す標識を表示することを特徴とする。さらに、前記表示手段は、前記移動手段による前記撮影カメラの移動位置を示す標識を表示することを特徴とする。さらに、前記表示手段は、前記点検対象物にレーザ光を照射して所定の基準位置を示す標識を表示することを特徴とする。さらに、前記撮影カメラの可動範囲を見渡せる位置に設けられるとともに前記標識を撮影する補助カメラを備えていることを特徴とする。さらに、前記撮影カメラにより撮影された前記点検対象物の部位に関する撮影画像を当該撮影時の前記標識に関する撮影画像に関連付けて記憶する記憶手段を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記のような構成を有することで、撮影カメラの撮影位置又は撮影方向に関する標識を表示して、撮影カメラにより点検対象物を下方から撮影するとともに標識を撮影するので、点検対象物を撮影した際の撮影位置及び撮影方向が撮影画像として記録しておくことができ、点検箇所を正確に特定することが可能となる。
【0010】
点検装置で様々な構造物を撮影する場合、それぞれの構造物により点検箇所は変化するため撮影位置及び撮影方向も変化するが、点検箇所毎の撮影位置又は撮影方向に関する標識を表示して撮影画像として記録しておくことで、点検箇所の撮影画像を容易に特定することができる。
【0011】
また、次の点検の際に前回撮影した標識に基づいて撮影カメラの撮影位置及び撮影方向を設定すれば同じ点検箇所を容易に撮影することができ、橋梁管理カルテを更新する場合に前回の撮影画像と正確に対比判断を行うことが可能となる。
【0012】
点検対象物の下方に撮影カメラを移動させる場合、例えばアーム部材を連結して用いるとアーム部材の撓み等により撮影カメラの位置誤差が生じやすいが、同じ構成の点検装置を用いて数年毎の点検作業を行えば毎回の点検時において同じ位置誤差が生じるので、撮影された標識に基づいて点検箇所を正確かつ容易に特定することができる。
【0013】
また、表示手段が回動手段の垂直回動角度及び水平回動角度を示す標識を表示することで、当該標識を撮影した撮影画像により撮影カメラの回動位置を正確に特定することができる。そして、表示手段が移動手段による撮影カメラの移動位置を示す標識を表示することで、当該標識を撮影した撮影画像により撮影カメラの移動位置を正確に特定することができる。
【0014】
また、表示手段が点検対象物にレーザ光を照射して所定の基準位置を示す標識を表示することで、当該標識とともに点検箇所や異常個所を撮影した撮影画像により基準位置から点検箇所や異常個所の位置を精度よく特定することができる。
【0015】
また、撮影カメラの可動範囲を見渡せる位置に設けられるとともに標識を撮影する補助カメラを備えていることで、撮影カメラの動きを補助カメラの撮影した映像から確認することができるため撮影カメラの移動や回動動作の操作性を向上させることができ、また補助カメラの標識に関する撮影画像から撮影カメラの撮影位置又は撮影方向を正確に特定することができる。
【0016】
また、撮影カメラにより撮影された点検対象物の部位に関する撮影画像を当該撮影時の標識に関する撮影画像に関連付けて記憶する記憶手段を備えていることで、点検対象物の撮影画像を撮影した部位の位置に関する標識とともに読み出すことができ、点検対象物の部位毎の点検結果を分析する場合に好都合であり、点検対象物の平面図に撮影画像をマッピング処理する場合にも標識を撮影した撮影画像に基づいて簡単に処理することができる。また、撮影された標識を照合することで同じ部位の撮影画像を容易に抽出して対比判断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明に係る実施形態に関する正面図である。点検装置は、橋梁等の点検対象物1の上面に設置された点検台車20と、点検台車20に設けられた台車支柱40及び台車水平アーム50を介して上下方向にスライド可能に取り付けられた垂着ロッド60と、垂直ロッド60の下端部に水平方向に沿って取り付けられた水平アーム70と、水平アーム70の長手方向に走行可能に取り付けられた走行台車150と、走行台車150に保持アーム80を介して取り付けられた撮影カメラ140と、垂直ロッド60の下端側に取り付けられた補助カメラ130とを備えている。
【0019】
図2は、点検台車20の部分に関する一部拡大正面図である。点検台車20は、自在キャスター30を底面に取り付けており、手押し自走が可能となっている。また、点検台車20を所定位置に移動させた後クランプ31を用いて点検台車20全体をジャッキアップさせ、点検作業を行う位置において移動しないように設置される。
【0020】
点検台車20には、垂直ロッド60とは反対側にウエイトアーム22が設けられており、その先端にバランスウエイト23を取り付けている。点検台車20の垂着ロッド60側には、水平アーム70、走行台車150及び撮影カメラ140等の重量が加わるが、バランスウエイト23を取り付けることで、点検台車20の重量バランスをとることができ、安定した状態で点検作業を行うことが可能となる。
【0021】
該点検台車20の上面に垂直に立設された台車支柱40は、垂直ロッド60とは反対側の側面に補強部材21が固定されており、台車支柱40の内部には上下方向に伸縮可能な伸縮支柱41を収納している。伸縮支柱41は、台車支柱40に取り付けられた昇降用ウインチ120により上下方向に移動して台車水平アーム50の高さ調整をすることができる。
【0022】
台車支柱40の伸縮支柱41の上部には、筒状のアーム保持ユニット51が取り付けられており、アーム保持ユニット51内には台車水平アーム50が水平方向に沿ってスライド可能に保持されている。台車水平アーム50は、手押しによって水平方向にスライドさせて垂直ロッド60の水平方向の取付位置を調整することができる。
【0023】
また、台車水平アーム50は断面円形状に形成されており、アーム保持ユニット51内で回動可能に保持されている。そのため、点検台車20が傾斜面に設置された場合でも、台車水平アーム50を回動させて垂直ロッド60を上下方向に設定することができる。アーム保持ユニット51には、係合ピン53が挿着される係合穴が形成されており、アーム保持ユニット51の係合穴に係合ピン53を挿着固定することで、係合ピン53の先端が台車水平アーム50を圧接して所定の回動位置に固定することができる。台車水平アーム50の端部には、ストッパ52が設けられており、台車水平アーム50のスライド動作時の抜け落ちを防止する。
【0024】
台車水平アーム50の端部には、筒状のロッド保持ユニット65が取り付けられており、ロッド保持ユニット内には垂直ロッド60が上下方向に沿ってスライド可能で回動可能に保持されている。垂直ロッド60は、分割ロッド部材61〜64を連結して構成されており、必要な長さに応じて連結する分割ロッド部材の本数を変えることができる。
【0025】
ロッド保持ユニット65には昇降用ウインチ110が取り付けられており、昇降用ウインチ110を手動により作動させることで垂直ロッド60を上下方向に移動させて任意の位置に固定することができる。垂直ロッド60の下端部が点検対象物1の下方に位置するように高さ調整される。垂直ロッド60の上端側にはストッパ66が取り付けられており、ロッド保持ユニット65からの抜け落ちを防止する。ロッド保持ユニット65の下端には垂直ロッド60の回動位置を固定するストッパ67が設けられており、ストッパ67には垂直ロッド60の回動角度を表示する角度表示板が取り付けられている。
【0026】
垂直ロッド60の下端部には、水平方向に沿って水平アーム70が取り付けられている。水平アーム70は、分割アーム部材71〜75を連結して構成されており、必要な長さに応じて連結する分割アーム部材の本数を変えることができる。分割アーム部材72に垂直ロッド60が固定されており、分割アーム部材73〜75が点検対象物1の下方に延設されている。分割アーム部材71は、点検対象物1とは反対側に延設されており、その先端にはバランスウエイト76が取り付けられている。
【0027】
水平アーム70は、垂直ロッド60の下端部における取付位置を支点とした片持ち梁構造となっているため、点検対象物1の下方に配置される部分が長くなって撓みやすくなる。そこで、水平アーム70の取付位置の両側にテンションワイヤ90及び100を垂直ロッド60との間に張架している。
【0028】
水平アーム70を点検対象物1の下方に設置する場合には、垂直ロッド60を回動して水平アーム70を点検対象物の側部に沿った状態に設定し、昇降用ウインチ110により垂直ロッド60を下方に移動する。そして、ストッパ67の角度表示板を確認しながら垂直ロッド60を回動して水平アーム70を点検対象物1の下方に回動させる。この場合、水平アーム70の回動角度は、点検対象物1の設計図等に基づいて予め決めておくとよい。
【0029】
図3は、水平アーム70の上面に取り付けられた走行台車150に関する正面図である。走行台車150は、水平アーム70の分割アーム部材75の上部において両側に突出形成されたレール部75aを走行する車輪151を備えており、走行台車150の前後には走行ガイド152が取り付けられている。車輪151は、図示せぬ駆動モータにより回転駆動されるようになっており、点検対象物1の上面に設置された制御装置により駆動モータを遠隔操作することで、水平アーム70の上面において走行台車150を走行させて任意の位置に停止させることができる。水平アーム70の端部にはストッパ77が突設されており、走行台車150が水平アーム70の上面から外れて落下しないようになっている。
【0030】
また、水平アーム70の上面には、後述するように距離表示用の目盛が表示されており、走行台車150の停止位置が確認できるようになっている。なお、走行台車150の停止位置は、走行動作に用いる駆動モータの駆動回転動作に基づいて制御装置において算出することもできる。
【0031】
水平アーム70の側面には、複数のスケール表示ポインタ170が等間隔で配置されている。図4は、スケール表示ポインタ170の支持部分に関する側面図(図4(a))及び平面図(図4(b))である。スケール表示ポインタ170は、上面から可視光のレーザ光線が照射するレーザポインタで、その上端側において水平アーム70から側方に突設された支持部材171に回動自在に軸支されている。回動軸172は、水平方向に沿って水平アーム70の長手方向に直交する方向に設定されており、図4(c)に示すように、水平アーム70の長手方向に沿った平面内で回動することができる。そのため、水平アーム70が撓んだり、傾斜した場合でもスケール表示ポインタ170は常時鉛直方向に沿って設定されるようになる。
【0032】
スケール表示ポインタ170はこのように取り付けられているため、上方に照射されたレーザ光線は常に点検対象物1の下面にほぼ等間隔で照射ポイントを表示するようになる。照射ポイントが水平方向にほぼ等間隔で配列されて表示されるので、撮影カメラで撮影する際の水平方向の距離を確認する場合の基準位置として用いることができる。また、照射ポイントとともに点検箇所を撮影すれば、撮影された照射ポイントを参考に撮影画像の位置を精度よく特定することができる。
【0033】
走行台車150のほぼ中央部には保持アーム80が立設されており、保持アーム80の上端には撮影カメラ140を備えるカメラユニット141が取り付けられている。保持アーム80の長さは、例えば、橋梁等の点検対象物の場合には橋桁の桁高に応じて設定する。複数種類の長さの保持アームを揃えておき、点検対象物に応じて長さを選択するようにすればよい。また、保持アーム80に公知の伸縮可能な構造を用いて点検対象物に応じて長さを調整するようにしてもよい。
【0034】
カメラユニット141は、下端部が保持アーム80に取付固定されており、上端側に設けられた軸支部142を介して撮影カメラ140が上下方向に回動可能に取り付けられている。カメラユニット141の下端側には駆動モータ143が取り付けられており、駆動モータ143の回転駆動力が歯車等の駆動伝達機構を介して撮影カメラ140を上下方向に回動させて任意の回動位置に停止させることができる。
【0035】
撮影カメラ140の上部には方向表示ポインタ144が固定されている。方向表示ポインタ144は、撮影カメラ140の撮影方向と一致する方向にレーザ光線を照射するように設定されており、点検対象物1の下面にレーザ光線が照射されて撮影方向を示す照射ポイントが表示されるようになる。
【0036】
図5は、走行台車150に関する平面図である。保持アーム80は、その中心軸を中心に走行台車150に回動可能に軸支されており、走行台車150に設けられた駆動モータにより回動するようになっている。保持アーム80の下端部には水平回動角度表示板81が固定されており、走行台車150の上面には水平回動角度表示板81の角度位置を示す矢印表示体82が設けられている。水平回動角度表示板81の中心は保持アーム80の回動中心軸と一致するように設定されている。保持アーム81が回動すると水平回動角度表示板81も同じように回動するため、矢印表示体82が指示する目盛が保持アーム80の水平方向の回動角度として表示されるようになる。
【0037】
また、水平方向の回動角度については、駆動モータにエンコーダを取り付けて回動角度を電気的に読み取るようにしてもよい。電気的に読み取られた回動角度は、例えば、後述するディスプレイに表示された橋梁のレイアウト上に撮影位置を表示するのに用いるとよい。
【0038】
走行台車150が走行する水平アーム70の上面には、長手方向に距離を示す目盛78が表示されており、走行台車150の停止位置が確認できるようになっている。
【0039】
走行台車150の4つの辺部には、それぞれ位置表示ポインタ160が取り付けられている。位置表示ポインタ160は、上面からレーザ光線を照射するようになっており、スケール表示ポインタ170と同様に支持部材に回動軸を介して回動自在に設けられている。
【0040】
位置表示ポインタ160は常に鉛直方向に沿って上方にレーザ光線を照射して点検対象物1の下面に4つの照射ポイントを表示する。この場合、4つの照射ポイントで囲まれた矩形状の領域は、走行台車150の位置を鉛直方向に点検対象物1の下面に投影した領域を示すことになる。そして、表示された矩形状の領域における対角線の交点が撮影カメラ140の中心位置を鉛直方向に投影した中心ポイントとなる。
【0041】
位置表示ポインタ160の照射ポイントにより設定される中心ポイントと方向表示ポインタ144の照射ポイントとの位置関係に基づいて撮影カメラ140で撮影した撮影画像の位置情報の精度を向上させることができる。また、保持アーム80の回動動作による水平回動角度及び駆動モータ143の回動動作による垂直回動角度に基づいて撮影カメラ140の撮影方向が精度よく決定できるため、決定された回動角度により撮影カメラ140の撮影画像を精度よく解析することが可能となる。
【0042】
図6は、カメラユニット141に関する側面図である。撮影カメラ140の側面には垂直回動角度表示板145が取り付けられており、その中心が撮影カメラ140の回動中心軸と一致するように設定されている。また、垂直回動角度表示板145の中心に一端を回動自在に軸支された矢印表示体146が設けられており、矢印表示体146は重力により常に鉛直方向下向きになっている。撮影カメラ140が回動すると垂直回動角度表示板145も同じように回動するため、矢印表示体146が指示する目盛が撮影カメラ140の垂直方向の回動角度として表示されるようになる。
【0043】
また、垂直方向の回動角度については、駆動モータにエンコーダを取り付けて回動角度を電気的に読み取るようにしてもよい。電気的に読み取られた回動角度は、例えば、後述するディスプレイに表示された橋梁のレイアウト上に撮影位置を表示するのに用いるとよい。
【0044】
橋梁等の橋桁の間に保持アーム80を設置する場合には、保持アーム80の上端に取り付けたカメラユニット141が橋桁に接触しない高さまで水平アーム70を下降させた後水平アーム70を水平方向に所定角度回動させて橋梁の下方に設置し、保持アーム80が橋桁の間に配置されるようにする。そして、水平アーム70を上昇させることで、保持アーム80を橋桁の間に設置することができる。
【0045】
垂直ロッド60の下端側には補助カメラ130が取り付けられており、補助カメラ130の撮影方向は水平アーム70の長手方向に沿って設定され走行台車150及びカメラユニット141が見渡せる位置に設置されている。そのため、水平アーム70を回動してカメラユニット141を橋桁の間に配置する場合に、補助カメラ130が撮影した映像を見ながら操作すれば正確にカメラユニット141を配置することができる。
【0046】
図7は、点検装置を制御する制御装置10に関する概略ブロック構成図である。制御装置10は、走行台車150の走行動作を制御する走行制御部10a、保持アーム80及びカメラユニット141の回動動作を行って撮影カメラ140の撮影動作を制御する撮影制御部10b、撮影された画像を処理する画像処理部10c及び液晶パネル等のディスプレイ13に画像表示するための処理を行う表示処理部10dを備えている。
【0047】
記憶部11は、点検対象物の設計データ等の設定データを記憶する設定テーブル11a、撮影画像を記憶する画像DB11b及び撮影した点検箇所に関する位置情報を記憶する位置情報DB11cを備えている。
【0048】
上述したように水平アーム70を手動操作により下降させて点検対象物1の下方に回動させる場合には、撮影制御部10bが補助カメラ130を制御して撮影しながら行われる。その際に、表示処理部10dが補助カメラ130で撮影した撮影画像をディスプレイ13に表示するように制御する。
【0049】
水平アーム70を下降させた後、操作者は補助カメラ130の撮影画像を見ながら操作入力部12を操作し、走行制御部10aにより走行台車150に設けられた走行駆動部14を制御する。走行駆動部14は、走行台車150を水平アーム70の上面において走行動作させて保持アーム80が橋桁の間に対応する位置に走行台車150を位置決めする。そして、水平アーム70を手動操作により上昇させて保持アーム80を橋桁の間に設置する。
【0050】
保持アーム80を橋桁の間に設置した後、操作入力部12を操作して、撮影制御部10bが水平回動部15及び垂直回動部16を制御し撮影カメラ140を所定の撮影方向に設定する。水平回動部15は保持アーム80を回動させて撮影カメラ140を水平方向に回動させ、駆動モータ143を備えた垂直回動部16は撮影カメラ140を上下方向に回動させる。
【0051】
撮影方向を設定する際に、撮影制御部10bは、撮影カメラ140を制御して撮影し、表示制御部10dは撮影カメラ140の撮影画像をディスプレイ13に表示するように制御する。その際に補助カメラ130の撮影画像を分割画面に表示するようにしてもよい。また、設定テーブル11aから点検対象物1の設計データを読み出して点検対象物1の橋桁等のレイアウトを併せて表示することもできる。
【0052】
撮影カメラ140の映像から点検箇所を特定した後、撮影制御部10bにより点検箇所を撮影して画像DB11bに撮影画像を記憶する。また、画像処理部10cは、撮影画像における方向表示ポインタ144、位置表示ポインタ160及びスケール表示ポインタ170の照射ポイントの位置データや水平回動部15及び垂直回動部16の回動角度データに基づいて点検に必要な画像補正や画像調整等の画像処理を行う。そして、得られた点検箇所の位置データを位置情報DB11cに記憶する。
【0053】
その際に、撮影制御部10bにより撮影カメラ140を下方の水平回動角度表示板81を撮影する位置に回動させて撮影動作を行なう。得られた撮影画像には、図5に示すように、水平回動角度表示板81の他に水平アーム70の上面に表示された距離を示す目盛78が含まれているため、撮影画像により点検箇所の撮影位置に関する走行台車150の停止位置及び撮影カメラ140の水平回動角度を容易に確認することができる。
【0054】
次に、撮影制御部10bにより保持アーム80を回動させて補助カメラ130に垂直回動角度表示板145が対向する位置に設定し、補助カメラ130により垂直回動角度表示板145を撮影する。
【0055】
図8に示すように、水平回動角度表示板81及び垂直回動角度表示板145は、撮影カメラ140の撮影方向を正確に表示するので、撮影カメラ140の撮影位置又は撮影方向に関する標識である表示板や目盛を撮影したこうした撮影画像を点検箇所に関する撮影画像と関連付けて画像DB11bに記憶しておく。
【0056】
以上のような撮影動作を橋桁の間の必要な点検箇所で行なった後、いったん水平アーム70を下降させて撮影カメラ140を橋桁よりも下方に移動させ、走行制御部10aにより走行台車150を走行動作させて次の橋桁の間に対応する位置に保持アーム80が設置されるように位置決めし、水平アーム70を上昇させて保持アーム80を次の橋桁の間に配置する。そして、上述した撮影動作を繰り返し行なうことで、水平アーム70に沿った点検ラインで点検箇所の撮影を行うことができる。
【0057】
水平アーム70の配置は、点検対象物1の設計データ等に基づいて予め位置決めされているため、撮影の際に得られた水平アーム70における位置情報に基づいて点検対象物1全体における撮影位置を特定することができる。したがって、表示処理部11dは、点検対象物1のレイアウトを表示し、表示されたレイアウトに対応して点検箇所の撮影画像を表示させることができる。
【0058】
また、点検箇所を撮影した際の撮影カメラ140の撮影位置又は撮影方向に関する標識である表示板や目盛に関する撮影画像を合せて表示することで、水平アーム70上の走行台車150の停止位置や回動角度を容易に確認することができる。そのため、同じ点検箇所を数年に一度点検する場合には、前回撮影した表示板や目盛を表示させ撮影カメラや補助カメラの撮影画像を見ながら位置合せすることで、同じ点検箇所に対して撮影カメラを短時間で正確に位置合せすることができる。そして、同じ点検箇所の撮影画像が得られることで、パターンマッチング等の画像処理を行ってひび割れ等の進み具合をチェックすることができ、橋梁管理カルテの更新作業を効率よく行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る実施形態に関する正面図である。
【図2】点検台車の部分に関する一部拡大正面図である。
【図3】水平アームの上面に取り付けられた走行台車に関する正面図である。
【図4】スケール表示ポインタの支持部分に関する側面図、平面図及び動作説明図である。
【図5】走行台車に関する平面図である。
【図6】カメラユニットに関する側面図である。
【図7】点検装置を制御する制御装置に関する概略ブロック構成図である。
【図8】撮影カメラと回動角度表示板との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0060】
1 点検対象物
10 制御装置
20 点検台車
40 台車支柱
50 台車水平アーム
60 垂直ロッド
70 水平アーム
78 目盛
80 保持アーム
81 水平回動角度表示板
130 補助カメラ
140 撮影カメラ
141 カメラユニット
144 方向表示ポインタ
145 垂直回動角度表示板
150 走行台車
160 位置表示ポインタ
170 スケール表示ポインタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
点検対象物の下方において撮影カメラを移動させる移動手段と、前記移動手段に設けられるとともに前記撮影カメラを回動させる回動手段と、前記撮影カメラの撮影位置又は撮影方向に関する標識を表示する表示手段と、前記撮影カメラにより前記点検対象物を下方から撮影するとともに前記標識を撮影するように前記回動手段を制御する撮影制御手段とを備えていることを特徴とする構造物の点検装置。
【請求項2】
前記表示手段は、前記回動手段の垂直回動角度及び水平回動角度を示す標識を表示することを特徴とする請求項1に記載の点検装置。
【請求項3】
前記表示手段は、前記移動手段による前記撮影カメラの移動位置を示す標識を表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の点検装置。
【請求項4】
前記表示手段は、前記点検対象物にレーザ光を照射して所定の基準位置を示す標識を表示することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の点検装置。
【請求項5】
前記撮影カメラの可動範囲を見渡せる位置に設けられるとともに前記標識を撮影する補助カメラを備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の点検装置。
【請求項6】
前記撮影カメラにより撮影された前記点検対象物の部位に関する撮影画像を当該撮影時の前記標識に関する撮影画像に関連付けて記憶する記憶手段を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の点検装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−275385(P2009−275385A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126418(P2008−126418)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(308015522)ジビル調査設計株式会社 (3)
【Fターム(参考)】