説明

構造部材表面の被覆性能評価方法及び被覆性能評価装置

【課題】水に含まれる不純物の影響を受けないで構造部材の表面に施された被覆の性能を精度良く評価することができる構造部材表面の被覆性能評価方法を提供する。
【解決手段】表面被覆する対象部材と同じ鋼種の半径500μmの細線に、同じ表面被覆を施し、表面被覆対象部位の近傍に当該細線を設置し、当該細線の抵抗を測定することにより、当該細線の腐食速度を求める。プラント運転期間中に表面被覆を再施工時期を把握することができる。これにより、表面被覆の準備に伴うプラント定期検査期間の延長を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造部材表面の被覆性能評価方法及び被覆性能評価装置に係り、特に、沸騰水型原子力プラントに適用するのに好適な炉構造部材表面の被覆性能評価方法及び被覆性能評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子力プラントにおいて、原子炉内に設置される炉内構造物または原子炉に接続される配管の応力腐食割れの抑制、及び定期検査時の作業員の放射線被ばくの低減は、プラント稼働率向上の観点から重要な課題である。この課題に対する解決手段として、炉内構造物の表面及び原子炉に接続される配管の内面に被覆(皮膜)を施すことが、特開平7−311296号公報、特開平10−90482号公報及び特開2006−38483号公報に開示されている。
【0003】
特開平7−311296号公報は、原子炉内の炉水に貴金属を含む溶液を注入することにより、炉内構造物の表面または原子炉に接続される配管の内面に貴金属を付着させ、さらに、水素を炉水に注入することにより、炉内構造物またはその配管の応力腐食割れを抑制する方法を記載している。特開平10−90482号公報は、炉内構造物または原子炉に接続される配管の腐食を抑制する方法を記載している。この方法では、酸化チタンを含む溶液を炉水に注入することによって、炉内構造物及びその配管に酸化チタンを付着させ、原子炉で生じる放射線及び可視光により、炉内構造物及び配管の腐食を抑制する。特開2006−38483号公報は、放射線被ばくの低減方法を記載している。この低減方法は、2価の鉄イオン、酸化剤及びpH調整剤を含む皮膜形成液を、皮膜形成対象の、原子炉に接続された配管内に供給し、この配管の内面にフェライト皮膜を形成する。配管内面にフェライト皮膜を形成することによって配管内面へのCo−60等の放射性核種の付着を抑制して、定期検査時の作業員の放射線被ばくを低減する。
【0004】
炉内構造物の表面及び配管の内面に施された被覆(貴金属膜、酸化チタン膜及びフェライト皮膜等)の性能は、表面に存在する被覆量が一定量以上ある場合に効果を発揮すると考えられる。その被覆による応力腐食割れの抑制及び放射線被ばくの低減のためには、構造部材表面の被覆量を一定量以上に維持する必要がある。すなわち、プラント運転中における構造部材表面の被覆量を把握する必要がある。
【0005】
原子力プラントの構造部材表面の被覆量を把握する従来方法として、原子力プラントの停止中に炉内構造物の表面または原子炉に接続される配管の内面の被覆を掻き取り、その表面の被覆量を求める方法がある。構造部材表面の被覆量を把握する他の従来方法として、原子力プラント運転中に隔離できる配管内に試験片を設置し、原子力プラントの運転中にその試験片を定期的に取り出して表面の被覆量を求める方法がある。
【0006】
特開昭62−165146号公報は、腐食酸化皮膜監視装置を記載している。この腐食酸化皮膜監視装置は、沸騰水型原子炉の一次系配管の内面に形成された、放射性核種が取り込まれた腐蝕酸化皮膜量を検出する。腐食酸化皮膜監視装置は、測定対象である一次系配管内にある間隔で配置された一対の試験片を有し、これらの試験片に低電圧装置により一定の交流電圧を印加し、一対の試験片間に流れる電流の変化に基づいて試験片の抵抗の変化を求め、この抵抗の変化に基づいて試験片に形成された腐食酸化皮膜量を求める。一対の試験片は、沸騰水型原子炉の構造部材である一次系配管と同一性状(材質及び表面処理状態が同一)になっている。
【0007】
特開2008−256596号公報は、腐食速度測定装置を記載している。この腐食速度測定装置は一対の棒状電極を有しており、これらの棒状電極は測定対象物である構造物に用いる金属で作成されている。ある間隔で配置された一対の棒状電極間に電圧(または電流)を付加して棒状電極の電気抵抗を測定し、電気抵抗に基づいて、腐食速度と反比例の関係にある分極抵抗を算出する。得られた分極抵抗から腐食速度を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−311296号公報
【特許文献2】特開平10−90482号公報
【特許文献3】特開2006−38483号公報
【特許文献4】特開昭62−165146号公報
【特許文献5】特開2008−256596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特開昭62−165146号公報に記載された一対の試験片が一次系配管の水中に配置されている関係上、試験片の電気抵抗を算出するために試験片間に流れる電流を測定する必要がある。この電流の測定値は、一対の試験片間に存在する水に含まれる不純物の影響を受ける。
【0010】
特開2008−256596号公報に記載された腐食速度測定装置でも、棒状電極の電気抵抗を測定している。このため、一対の棒状電極を水中に配置した場合には、一対の棒状電極間に存在する水を介して一対の棒状電極間に流れる電流が計測される。この計測される電流は、特開昭62−165146号公報と同様に、一対の棒状電極間に存在する水に含まれる不純物の影響を受ける。
【0011】
このため、特開昭62−165146号公報に記載された一対の試験片または特開2008−256596号公報に記載された一対の棒状電極を用いて、原子力プラント、例えば、沸騰水型原子力プラントの炉内構造物の表面に施された被覆の量及び原子炉に接続された配管の内面に施された被覆の量を測定する場合には、炉水に含まれる不純物(種類及び濃度)の影響を受けて、被覆の量を精度良く測定することができない。
【0012】
本発明の目的は、水に含まれる不純物の影響を受けないで構造部材の表面に施された被覆の性能を精度良く評価することができる構造部材表面の被覆性能評価方法及び被覆性能評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、原子力プラントの、表面に被覆を施した構造部材に取り付けられた被覆性能評価装置の、表面にその被覆を施した0.5μm〜500μmの範囲内の半径を有する細線に、構造部材に接触する水に接触させた状態で電流を流し、その被覆を施した細線を流れる電流及び細線の電圧を測定し、測定された電流及び電圧に基づいてその被覆を施した細線の電気抵抗を求め、得られた電気抵抗に基づいて求められた、その被覆を施した細線の腐食速度を用いて、被覆性能評価装置が取り付けられた構造部材の表面の被覆の性能を評価することにある。
【0014】
表面に被覆を施した0.5μm〜500μmの範囲内の半径を有する細線を流れる電流は細線に接触する水に含まれる不純物の影響を受けない。測定された、細線を流れる電流及び細線の電圧を用いて求めた細線の電気抵抗により求められる、被覆を施した細線の腐食速度の精度が向上する。このため、細線に接触する水に含まれる不純物の影響を受けないで構造部材の表面に施された被覆の性能を精度良く評価することができる。なお、0.5μm〜500μmの範囲内の半径を有する細線を用いているので、細線の腐食を検出する感度が向上する。この検出感度の向上によって、細線付近に存在する構造部材の皮膜性能の劣化を速やかに検知することができる。
【0015】
表面に被覆を施した0.5μm〜500μmの範囲内の半径を有する細線と、この細線の両端に接続された電流検出器と、細線の電圧を測定する電圧検出器と、電流検出器で測定された電流及び電圧検出器で測定された電圧に基づいて、被覆を施した細線の電気抵抗を求め、得られた電気抵抗に基づいて被覆を施した細線の腐食速度を求める演算装置とを備えることによっても、上記の目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、水に含まれる不純物の影響を受けないで構造部材の表面に施された被覆の性能を精度良く評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の被覆性能評価装置のセンサ部の構成図である。
【図2】実施例1の被覆性能評価装置の計測部の構成図である。
【図3】実施例1の被覆性能評価装置を設置した沸騰水型原子力プラントの構成図である。
【図4】図1に示す細線表面の被覆により腐食電位が変化する場合における構造部材表面の被覆性能評価の概要を示す説明図であり、(a)は腐食電位と腐食速度の関係を示す特性図、(b)は時間の経過による腐食電位の変化を示す特性図である。
【図5】図1に示す細線表面の被覆により腐食電位が変化しない場合における構造部材表面の被覆性能評価の概要を示す説明図であり、(a)は腐食電位と腐食速度の関係を示す特性図、(b)は時間の経過による腐食電位の変化を示す特性図である。
【図6】被覆性能評価装置に設けられた細線の半径と検出腐食量下限の関係を示す特性図である。
【図7】実施例1の被覆性能評価装置に設けられた細線の表面に被覆を施す方法の一例を示す説明図である。
【図8】実施例1の被覆性能評価装置に設けられた細線の表面に被覆を施す方法の他の例を示す説明図である。
【図9】本発明の他の実施例である実施例2の被覆性能評価装置のセンサ部の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明者らは、水に含まれる不純物の影響を受けないで構造部材の表面に施された被覆の性能を精度良く評価することができる構造部材表面の被覆性能評価方法について、種々の検討を行った。この検討の結果、発明者らは、原子力プラントの、測定対象である構造部材と同じ材質で構造部材に施した被覆と同じ被覆を施した細線をその構造部材の位置で構造部材に接触する水と接触するように配置し、その細線の電気抵抗を求めて細線の腐食速度を求め、さらに、その腐食速度に基づいて構造部材表面の被覆の性能を評価することが望ましいことを見出した。
【0019】
細線を用いた腐食速度の測定の原理を説明する。表面に被覆を施した細線に設定した電流を供給して、電圧を測定する。オームの法則により電気抵抗Rを求める。表面に被覆を施した細線の比抵抗ρ、細線の長さl及び、細線の半径rは、(1)式の関係がある。なお、細線の半径rは細線の金属母材の平均的な半径である。
【0020】
【数1】

【0021】
(1)式を基にして求めた、初期における細線の金属母材の平均的な半径をr及び時間tでのその金属母材の平均的な半径をrとしたとき、腐食量Wは(2)式で表される。また、時間t1における細線の金属母材の平均的な半径をrt1、及び時間t2における細線の金属母材の平均的な半径をrt2としたとき、より腐食速度ΔWt1−t2は(3)式で表される。
【0022】
W=r−r …(2)
ΔWt1−t2=(rt1−rt2)/(t−t) …(3)
次に、(3)式を用いて算出された腐食速度を基に、細線表面に施された被覆の性能評価方法を、図4及び図5を用いて説明する。
【0023】
図4は、細線表面の被覆により腐食電位が変化する場合における細線表面の被覆性能評価の概要を示している。原子力プラントの炉内構造物及び原子炉に接続される配管の材料として用いられているステンレス鋼は、図4(a)に示すように、腐食電位の変化に伴い腐食速度が変化することが知られている。例えば、図4(a)に示すように、ステンレス鋼製の細線表面が被覆されている状態が腐食電位E、細線表面が被覆されていない状態が腐食電位Eであるとすると、細線表面の被覆量(被覆の厚み)が原子力プラントの運転の経過に伴い減少したとき、細線の腐食電位がEからEに低下する。これに伴って細線の腐食速度がΔWからΔWまで増加する。図4(b)は細線の腐食速度の時間変化を示している。細線表面の被覆量が十分あって腐食電位がEに維持される時間tまでは腐食速度ΔWが一定である。細線表面の被覆量が不足し始めると細線の腐食速度が増加し、時間tで細線表面に施された被覆の効果が失われて、腐食速度がΔWまで増加する。以上のように、細線表面の被覆によって腐食電位が変化する場合は、細線の腐食速度の変化を調べることにより、細線表面の被覆の性能を評価することができる。
【0024】
図5は、細線表面の被覆により腐食電位が変化しない場合における細線表面の被覆性能評価の概要を示している。例えば、図5(a)のように、ステンレス鋼製の細線表面の被覆により、細線の腐食速度の腐食電位依存性がline Cからline Dに変化するとき、細線の腐食電位が同じEであっても、細線の腐食速度は、細線表面の被覆が効果を発揮する場合の腐食速度ΔWからその被覆の効果が失われた時点での腐食速度ΔWに増加する。図5(b)に細線の腐食速度の時間変化を示す。細線表面の被覆量が十分あって腐食電位がEに維持される時間tまでは腐食速度ΔWが一定である。細線表面の被覆量が不足し始めると腐食速度が増加し、時間tで細線表面に施された被覆の効果失われて、腐食速度がΔWまで増加する。以上のように、細線表面の被覆によって腐食電位が変化しない場合においても、細線の腐食速度の変化を調べることにより、細線表面の被覆の性能を評価することができる。
【0025】
細線の腐食速度の変化を検知するためには、表面に被覆を施した細線の半径を500μm以下にする必要がある。図6に、細線の半径と検出腐食量下限の関係を示す。炉内構造物または原子炉に接続される配管が原子力プラント運転時に曝される水(炉水)の温度は280℃程度である。このため、280℃において細線を長さ1cmとして抵抗測定精度が0.1%とした場合に対して細線の半径を計算した。280℃でのステンレス鋼の腐食量は0.5μmであり、腐食量下限をその二分の一以下にするためには、細線の半径を500μm以下にする必要がある。より好ましくは、細線の半径を100μm以下にして、腐食量下限をステンレス鋼の腐食量の十分の一以下にする。これにより、腐食速度の変化を速やかに検知できる。なお、細線の半径は0.5μm以上にする。このため、細線の半径は、0.5μm〜500μmの範囲にし、好ましくは0.5μm〜100μmの範囲にする。半径が0.5μm〜500μmの範囲に存在する細線を用いることによって、細線、換言すれば、細線付近の構造部材の腐食の検出感度を向上させることができる。この検出感度の向上は、被覆性能の劣化の探知感度(被覆性能が劣化し始めてから、それに気が付くまでの期間)の向上をもたらす。このため、検出感度が高いほど、被覆性能の劣化を速やかに検知することができる。
【0026】
皮膜性能の評価とは、図4に示すように腐食速度がΔWからΔWに増加すること、図5に示すように腐食速度がΔWからΔWに増加すること、換言すれば、腐食速度が増加することを把握することである。
【0027】
細線の腐食速度の変化を検知するためには、表面に被覆を施した細線に接続するリード線の半径をその細線の半径の1.4倍以上、より好ましくは10倍以上にする。これにより、リード線が腐食することにより生じる電気抵抗の変化の影響を二分の一以下あるいは百分の一以下にすることができる。細線に接続するリード線として、異種金属接触腐食を防止するために、細線と同じ材質にすることが望ましい。また、炉内構造物または原子炉に接続される配管を流れる炉水に直接曝露されるのを防止するために、リード線を、四フッ化エチレン樹脂、ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂、ポリイミド樹脂などの樹脂で被覆するか、またはアルミナ及びジルコニアなどの無機絶縁材で被覆することが望ましい。
【0028】
以上の検討結果を反映した、本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0029】
本発明の好適な一実施例である実施例1の構造部材表面の被覆性能評価方法を以下に説明する。
【0030】
本実施例の構造部材表面の被覆性能評価方法に用いられる構造部材表面の被覆性能評価装置1を、図1及び図2を用いて説明する。被覆性能評価装置1は、筺体2、細線3、リード線4,5、定電流測定装置6及び定電圧測定装置7を備えている。筺体2及び細線3は被覆性能評価装置1のセンサ部を構成し、定電流測定装置6及び定電圧測定装置7は被覆性能評価装置1の計測部を構成する。
【0031】
リード線4及び5が細線3の両端に接続される。細線3が金属で作成された筺体2の外側に配置され、リード線4及び5が筺体2を貫通して設けられる。リード線4が二箇所で筺体2を貫通している。1つの貫通部でリード線4を取り囲む電気絶縁体8Aが筺体2に取り付けられ、他の貫通部でリード線4を取り囲む電気絶縁体8Bが筺体2に取り付けられる。また、リード線5も二箇所で筺体2を貫通している。1つの貫通部でリード線5を取り囲む電気絶縁体9Aが筺体2に取り付けられ、他の貫通部でリード線5を取り囲む電気絶縁体9Bが筺体2に取り付けられる。定電流測定装置6及び定電圧測定装置7は、並列に配置されてリード線4及び5にそれぞれ接続される(図2参照)。筺体2が、かしめまたは溶接により、原子力プラントである沸騰水型原子力プラントの原子炉に接続される配管10に取り付けられる。このとき、細線3は、配管10内に配置され、配管10内を流れる炉水に接触する。
【0032】
電気絶縁体8A,8B,9A,9Bは、リード線4及び5または細線3が、配管10(または炉内構造物)と電気的に接続されることを防止する。配管10内を流れる高温の炉水と接触する電気絶縁体8A,9Aは、高温の炉水中でも使用できる樹脂(四フッ化エチレン樹脂、ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂、ポリイミド樹脂など)及び無機絶縁材(アルミナ、ジルコニアなど)のいずれかで作成することが望ましい。リード線4及び5の高温の炉水に接触される部位は、その炉水と直接接触しないように絶縁材で被覆することが望ましい。この絶縁材としては、樹脂(四フッ化エチレン樹脂、ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂、ポリイミド樹脂など)及び無機絶縁材(アルミナ、ジルコニア)のいずれかを使用する。リード線4が電気絶縁体8Aに、リード線4が電気絶縁体8Bに、電気絶縁体8Aが筐体2に及び電気絶縁体8Bが筐体2に、それぞれ、かしめまたはロウ付けにより取り付けられる。また、リード線5が電気絶縁体9Aに、リード線5が電気絶縁体9Bに、電気絶縁体9Aが筐体2に及び電気絶縁体9Bと筐体2に、それぞれ、かしめまたはロウ付けにより取り付けられる。
【0033】
被覆性能評価装置1が設置される沸騰水型原子力プラントの構成を、図3を用いて説明する。
【0034】
沸騰水型原子力プラントは、原子炉11、原子炉格納容器17、タービン19、再循環系及び原子炉浄化系を備えている。原子炉格納容器17内に設置された原子炉11は、原子炉圧力容器12を有し、原子炉圧力容器12内に複数の燃料集合体(図示せず)を装荷した炉心13を配置している。2系統の再循環系は、それぞれ、再循環系配管15及び再循環系配管15に設けられた再循環ポンプ14を有する。原子炉圧力容器12に接続された主蒸気配管18が、タービン19に接続される。タービン19に連絡される復水器20が、給水ポンプ22を設けた給水配管21により原子炉圧力容器12に接続される。水素注入装置17が給水配管21に接続される。
【0035】
原子炉浄化系は、再循環系配管15に接続された浄化系配管23を有し、ポンプ24及び浄化装置25を浄化系配管23に設けている。浄化系配管23が給水配管21に接続される。原子炉圧力容器12の底部に接続されたドレン配管26が、浄化系配管23に接続される。貴金属注入装置18が浄化装置25の下流で浄化系配管23に接続される。
【0036】
被覆性能評価装置1である複数の被覆性能評価装置1A,1B,1C及び1Dが、沸騰水型原子力プラントの該当箇所に設置される。被覆性能評価装置1Aのセンサ部が再循環系配管15に、被覆性能評価装置1Cのセンサ部がドレン配管26に、及び被覆性能評価装置1Dのセンサが浄化系配管23に、それぞれ、設けられる。被覆性能評価装置1Bのセンサ部は、原子炉圧力容器12内に設置された炉内計装管16内に設置される。
【0037】
沸騰水型原子力プラントの運転中、原子炉圧力容器12内で炉心13の周囲に形成されたダウンカマ16内の炉水が、再循環ポンプ14の駆動により再循環系配管15内に流入し、原子炉圧力容器12内に設置されたジェットポンプ(図示せず)に供給される。ジェットポンプから吐出された炉水は、炉心13に供給される。この炉水は、燃料集合体に含まれた核燃料物質の核分裂で発生する熱によって加熱され、一部の炉水が蒸気になる。蒸気は、原子炉圧力容器12内で炉心13の上方に設置された気水分離器及び蒸気乾燥器で分離されて、主蒸気配管18を通してタービン19に供給される。発電機(図示せず)が連結されたタービン19がその蒸気によって回転される。発電機も回転するので、電力が発生する。
【0038】
タービン19から排気された蒸気は、復水器20で凝縮されて水になる。この水は、給水として、給水ポンプ22で昇圧され、復水器20から給水配管21を通って原子炉圧力容器12に供給される。再循環系配管15内を流れる炉水の一部は、浄化系配管23内に流入し、浄化系配管23に設けられた浄化装置25で浄化される。浄化された炉水は、浄化系配管23及び給水配管21により原子炉圧力容器12に戻される。
【0039】
気水分離器で蒸気と分離された炉水は、ダウンカマ16内に導かれて給水配管21で供給される給水と混合され、ジェットポンプにより炉心13に供給される。沸騰水型原子力プラントの運転中において、水素注入装置27から給水配管21に注入された水素は、給水と共に原子炉圧力容器12内に導かれ、炉水に注入される。また、沸騰水型原子力プラントの運転中で、そのプラントの起動時(または定格運転の初期)に、貴金属(白金及びパラジウム等)を含む溶液が、浄化装置25の下流において貴金属注入装置18から浄化系配管23内を流れる炉水に注入される。貴金属を含む炉水が、給水配管21を通って原子炉圧力容器12内に導かれる。供給された炉水に含まれる貴金属は、炉心13を取り囲む炉心シュラウド等の炉内構造物の表面に付着し、その表面に貴金属の被覆(皮膜)を形成する。再循環系配管15の内面、ドレン配管26の内面、さらには、浄化系配管23の内面にも貴金属の被覆(皮膜)を形成する。この貴金属注入により、被覆性能評価装置1A,1B,1C及び1Dのそれぞれの細線3の金属母材表面(以下、単に、細線3の表面という)にも貴金属の被覆が形成される。各細線3は、該当する被覆性能評価装置1のセンサ部が設置される構造部材(再循環系配管15及び炉内計装管16等)の材質と同じであり、各細線3の半径は100μmである。各細線3表面への被覆の形成は、該当する被覆性能評価装置1のセンサ部が設置される構造部材表面への被覆の形成と同じ条件で行われる。このため、各細線3の表面に施される貴金属の被覆量は、該当する被覆性能評価装置1のセンサ部が設置される構造部材の表面に施される貴金属の被覆量と実質的に同じである。貴金属注入装置18から貴金属を含む溶液の炉水への注入は、所定時間経過後に停止される。
【0040】
被覆性能評価装置1A,1B,1C及び1Dのそれぞれによる該当する構造部材表面の被覆性能評価を、図1及び図2に示す被覆性能評価装置1を用いて説明する。定電流測定装置6で発生する定電流(直流電流)が、リード線4、細線3及びリード線5を通して流れる。定電流測定装置6は、電流計(図示せず)を有し、この電流計で測定される電流に基づいて発生する直流電流を定電流である所定の電流値に調節している。電圧測定装置7が、表面に貴金属の被覆が施された細線3の電圧を測定する。定電流測定装置6の電流計で測定された電流の値、及び電圧測定装置7で測定した電圧が、コンピュータである演算装置(図示せず)に入力される。演算装置は、時間tで測定された電流および電圧の各値を用いて、オームの法則から時間tでの細線3の電気抵抗Rを求める。演算装置は、この電気抵抗Rを(1)式に代入して時間tでの細線3の金属母材の半径rt1を算出する。さらに、演算装置は、時間tで測定された電流および電圧の各値を用いて、オームの法則から時間tでの細線3の電気抵抗Rを求める。演算装置は、この電気抵抗Rを(1)式に代入して時間tでの細線3の金属母材の半径rt2を算出する。演算装置は、算出した半径rt1を(2)式の半径rに代入して時間tでの細線3の腐食量Wt1を求め、算出した半径rt2を(2)式の半径rに代入して時間tでの細線3の腐食量Wt2を求める。また、演算装置は、時間t及びt、及び算出した半径rt1及びrt2を(3)式に代入して腐食速度ΔWt1−t2を算出する。演算装置は、算出した細線3の金属母材の半径rt1及びrt2、細線3の腐食量Wt1及びWt2及び細線3の腐食速度ΔWt1−t2を表示装置に出力し、これらの情報が表示装置に表示される。時間がt2からt、t、t、……、tと経過し、それぞれの時間t(nは整数)における細線3の金属母材の半径rtn、細線3の腐食量Wtn及び細線3の腐食速度ΔWt(n−1)−tnが算出されて表示装置に表示される。
【0041】
細線3の表面全体が貴金属の被覆で覆われている状態では、時間tが経過しても腐食速度ΔWt(n−1)−tnが一定の値に維持され、細線3の腐食量Wtnは0である。細線3表面に施された貴金属の被覆量が減少し、細線3表面が炉水に接触する状態になったとき、細線3の腐食速度ΔWt(n−1)−tnが急激に増加し、やがて、増加した状態で細線3の腐食速度ΔWt(n−1)−tnが一定に維持される。腐食速度ΔWt(n−1)−tnが増加したとき、細線3表面の貴金属の被覆が消失していると判断できる。これは、細線3が配置された近傍の構造部材表面の貴金属の被覆も消失していると推定できる。腐食速度ΔWt(n−1)−tnが増加し始めた以降では、炉水に接触する細線3の金属母材が腐食するため、細線3の腐食量Wtnも増加する。
【0042】
もし、沸騰水型原子力プラントの運転中に、細線3の腐食速度ΔWt(n−1)−tnが増加したときには、貴金属注入装置28から貴金属を含む溶液を、浄化系配管23内を流れる炉水に注入すればよい。これにより、構造部材及び細線3の表面に貴金属の被覆が施され、腐食速度ΔWt(n−1)−tnが減少する。
【0043】
本実施例は、半径100μmの細線3の両端に接続されたリード線4,5を通して電流を流しているので、特開昭62−165146号公報及び特開2008−256596号公報のように、一対の試験片の相互間及び一対の棒状電極の相互間に炉水が存在することが生じないので、細線3を流れる直流電流は炉水に含まれる不純物(種類及び濃度)の影響を受けない。このため、求められた細線3の腐食速度ΔWt(n−1)−tnの精度が向上するので、炉水に含まれる不純物の影響を受けないで構造部材の表面に施された被覆の性能を精度良く評価することができる。
【0044】
本実施例は、沸騰水型原子力プラントの運転中において、構造部材表面に施された貴金属被覆の性能を評価することができる。このため、その運転中に細線3の腐食速度ΔWt(n−1)−tnが増加して構造部材表面の貴金属の被覆の消失が推定されたときには、前述したように、貴金属注入装置28から貴金属を含む溶液を炉水に注入することにより、構造部材の表面に貴金属の被覆を形成することができる。これは、構造部材の応力腐食割れの抑制に貢献する。
【0045】
本実施例の被覆性能評価装置1は、特開2008−256596号公報のように、一対の電極相互間に水が存在する構成を有しない細線3を設けているので、特開2008−256596号公報の図12に記載された電気化学抵抗測定の等価回路を作成する必要がなく、電圧測定装置7により細線3の電圧を容易に測定することができる。このため、細線3表面に施された被覆、すなわち、細線3付近に存在する、沸騰水型原子力プラントの構造部材の表面に施された被覆の性能を短時間に評価することができる。また、特開2008−256596号公報のように、分極抵抗を求めないので、構造部材の表面に施された被覆の性能をさらに短時間に評価することができる。
【0046】
また、本実施例は、0.5μm〜500μmの範囲内の半径を有する細線3、例えば、半径100μmの細線3を用いているので、細線3表面の貴金属被覆が消失した後では、細線3の腐食の検出感度を向上させることができる。これは、細線3の横断面積が小さいため、腐食による細線3の金属母材の横断面積の減少割合が大きくなるためである。その検出感度の向上は、貴金属被覆性能の劣化の探知感度の向上をもたらす。このため、検出感度が高いほど、貴金属被覆性能の劣化を速やかに検知することができる。貴金属被覆の性能劣化が検知されたとき、前述したように、貴金属注入を再開し、構造部材の表面に貴金属被覆を、再度、速やかに形成することができるため、構造部材の応力腐食割れを抑制し、被ばく低減に貢献できる。
【0047】
本実施例では、被覆性能評価装置1のセンサ部を、再循環系配管15、炉内計装管16、浄化系配管23及びドレン配管26に設置しているが、再循環系配管15、浄化系配管23及びドレン配管26にそれぞれ接続されたサンプリング配管(図示せず)に設置しても良い。被覆性能評価装置1Dのように原子炉格納容器17の外に被覆性能評価装置1を設置すると、沸騰水型原子力プラント運転中にも被覆性能評価装置1をメンテナンスすることができる。
【実施例2】
【0048】
本発明の他の実施例である実施例2の構造部材表面の被覆性能評価方法を以下に説明する。本実施例の構造部材表面の被覆性能評価方法も、図1及び図2に示す実施例1で用いた被覆性能評価装置1を用いる。実施例1では、被覆性能評価装置1の細線3表面への被覆(貴金属の被覆)の形成を、被覆性能評価装置1のセンサ部を沸騰水型原子力プラントの構造部材に取り付けた後で沸騰水型原子力プラントの運転中に行っている。本実施例では、被覆性能評価装置1の細線3表面への被覆の形成を、沸騰水型原子力プラントの運転停止中に行う。このように、本実施例は、被覆性能評価装置1の細線3の表面への被覆の形成時期が実施例1と異なっている。この点を除けば、本実施例は実施例1と同じである。本実施例の被覆性能評価装置1の細線3の表面には、特開2006−38483号公報に記載されたフェライト皮膜が形成される。
【0049】
被覆性能評価装置1の細線3の表面へのフェライト皮膜(被覆)の形成について説明する。再循環系配管15に設置される被覆性能評価装置1A及び浄化系配管23に設置される被覆性能評価装置1D等のように、内面にフェライト皮膜が形成される、プラントの構造部材である配管に設置される被覆性能評価装置では、センサ部をその配管に取り付けた状態で細線3の表面への被覆であるフェライト皮膜の形成が、配管内面へのフェライト皮膜の形成と同時に行われる。このフェライト皮膜の形成には、図7に示す皮膜形成装置30が用いられる。
【0050】
皮膜形成装置30は、循環配管31、循環ポンプ32、薬液注入装置33及び薬剤浄化装置34を備えている。循環配管31には、弁37、循環ポンプ32、弁38及び弁39が、上流よりこの順序で設置されている。薬液注入装置33が循環ポンプ32と弁38の間で循環配管31に接続される。薬液注入装置33は、特開2006−38483号公報に記載されているように、鉄(II)注入装置、酸化剤注入装置及びpH調整剤注入装置を有する。弁38をバイパスする配管35が、循環配管31に接続される。弁40、薬剤浄化装置34及び弁41が配管35に設けられる。弁40が薬剤浄化装置34の上流に配置され、弁41が薬剤浄化装置34の下流に配置される。弁42が設けられた給排水配管36が、弁40と薬剤浄化装置34の間で配管41に接続される。
【0051】
表面に被覆が施されていない細線3を有する、被覆性能評価装置1のセンサ部が、再循環系配管15に取り付けられる。そのセンサ部の細線3が再循環系配管15内に配置される。沸騰水型原子力プラントの運転が停止されている沸騰水型原子力プラントの定期検査期間中に、皮膜形成装置30の循環配管31が、特開2006−38483号公報に記載されているように、被覆性能評価装置1のセンサ部が取り付けられた再循環系配管15に接続される。
【0052】
弁37,38,39,40,41,42を開いて、系統水を給排水配管36から被覆形成対象である再循環系配管15、循環配管31及び配管35に補給する。系統水の補給が終了した後、弁40,41,42を閉じる。循環ポンプ32を駆動して、系統水を、循環配管31及び再循環系配管15で形成される閉ループを循環させる。薬液注入装置33、すなわち、鉄(II)注入装置、酸化剤注入装置及びpH調整剤注入装置のそれぞれから循環配管31内に薬液を注入し、鉄(II)イオン、過酸化水素及びヒドラジンを含むpH7.0の皮膜形成液が循環配管31内で生成され、この皮膜形成液が、循環配管31を通して再循環系配管15に供給される。そして、皮膜形成液が循環配管31に戻され、薬液注入装置33から各薬液が戻された皮膜形成液に注入される。このような皮膜形成液が閉ループを循環する間に、再循環系配管15の内面にフェライト皮膜が形成され、同時に、再循環系配管15に取り付けられた被覆性能評価装置1の細線3の表面にもフェライト皮膜が形成される。
【0053】
再循環系配管15の内面に形成されたフェライト皮膜の量が所定量に達したとき、弁40,41を開けて弁38を閉じることにより、皮膜形成液を薬液浄化装置34導く。薬液浄化装置34が皮膜形成液を浄化する。皮膜形成液の浄化が終了したとき、循環ポンプ32を停止し、弁42を開けて浄化された皮膜形成液を給排水配管36に排水する。その後、循環配管31が再循環系配管15から取り外される。
【0054】
浄化系配管23に取り付けられた被覆性能評価装置1Dの細線3の表面へのフェライト皮膜の形成が、皮膜形成装置30の循環配管31を浄化系配管23に接続して浄化系配管23の内面にフェライト皮膜を形成するときに行われる。
【0055】
原子炉圧力容器12内の炉内構造物の表面には、フェライト皮膜が形成されないので、被覆性能評価装置1Dのセンサ部が、細線3の表面にフェライト皮膜が形成されていない状態で、原子炉圧力容器12内に設置された、炉内構造物である炉内計装管16に設置される。
【0056】
皮膜形成装置30がフェライト皮膜を内面に形成した配管から取り外され、沸騰水型原子力プラントの定期検査が終了した後、沸騰水型原子力プラントの運転が開始される。実施例1と同様に、沸騰水型原子力プラントに設置された各被覆性能評価装置1により、細線3表面の被覆(フェライト皮膜)の性能が評価される。
【0057】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
【0058】
沸騰水型原子力プラントの運転後に、実施例1と同様に、炉水に貴金属注入を行うと、再循環系配管15に設置された被覆性能評価装置1Aの細線3及び浄化系配管23に設置された被覆性能評価装置1Dの細線3では、細線3の表面にフェライト皮膜が形成されているので、このフェライト皮膜の表面に貴金属皮膜が形成される。一方、炉内計装管16に設置された被覆性能評価装置1Bの細線3では、表面にフェライト皮膜が形成されていないので、その細線3の表面に貴金属皮膜が形成される。
【0059】
被覆性能評価装置1のセンサ部を、再循環系配管15ではなく、再循環系配管15に接続された皮膜形成装置30の循環配管31に設置してもよい(図8参照)。この場合には、被覆性能評価装置1の細線3が循環配管31内に配置される。沸騰水型原子力プラントが停止された状態で、循環配管31を通して再循環系配管15に供給される皮膜形成液が、循環配管31内に配置した細線3の表面にも接触するので、再循環系配管15の内面にフェライト皮膜が形成されるとき、細線3の表面にもフェライト皮膜が形成される。再循環系配管15の内面へのフェライト皮膜の形成が終了した後、皮膜形成装置30が再循環系配管15から取り外され、被覆性能評価装置1も循環配管31から取り外される。その後、定期検査の期間中において、この被覆性能評価装置1のセンサ部が再循環系配管15の所定の位置に取り付けられる。細線3が再循環系配管15内に配置される。
【実施例3】
【0060】
本発明の他の実施例である実施例3の構造部材表面の被覆性能評価方法を以下に説明する。本実施例の構造部材表面の被覆性能評価方法は、図9に示す被覆性能評価装置1Eが用いられる。
【0061】
被覆性能評価装置1Eは、実施例1で用いられる被覆性能評価装置1において筐体2を筺体2A,2Bに替えた構成を有する。被覆性能評価装置1Eの他の構成は被覆性能評価装置1と同じである。細線3の一端に接続されたリード線4が筺体2Aを貫通して設けられ、細線3の他端に接続されたリード線5が筺体2Bを貫通して設けられる。リード線4のそれぞれの貫通部で筺体2Aに取り付けられた電気絶縁体8A,8Bが、リード線4の周囲を取り囲んでいる。リード線5のそれぞれの貫通部で筺体2Bに取り付けられた電気絶縁体9A,9Bが、リード線5の周囲を取り囲んでいる。筺体2A,2Bが配管10に取り付けられ、細線3が配管10内に配置される。定電流測定装置6及び定電圧測定装置7が、被覆性能評価装置1と同様に、リード線4,5に接続される。
【0062】
被覆性能評価装置1Eを用いた本実施例の構造部材表面の被覆性能評価方法も、実施例1と同様に、被覆性能評価装置1Eにおいて、細線3の金属母材の半径rtn、細線3の腐食量Wtn及び細線3の腐食速度ΔWt(n−1)−tnが算出されて表示装置に表示され、構造尾部材表面に施された被覆の性能評価が行われる。
【0063】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
【0064】
実施例1,2及び3のそれぞれの構造部材表面の被覆性能評価方法及びその被覆性能評価装置は、沸騰水型原子力プラント以外にも、加圧水型原子力プラントを含む、水を冷却材として使用する原子力プラント、さらに、火力プラントにも適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1,1A,1B,1C,1D,1E…被覆性能評価装置、2,2A,2B…筺体、3…細線、4,5…リード線、6…定電流測定装置、7…電圧測定装置、8A,8B,9A,9B…電気絶縁体、10…配管、11…原子炉、12…原子炉圧力容器、13…炉心、15…再循環系配管、16…炉内計装管、19…タービン、21…給水配管、23…浄化系配管、25…浄化装置、26…ドレン配管、27…水素注入装置、28…貴金属注入装置、30…皮膜形成装置、31…循環配管、32…循環ポンプ、33…薬液注入装置、34…薬剤浄化装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力プラントの、表面に被覆を施した構造部材に取り付けられた被覆性能評価装置の、表面に前記被覆を施した0.5μm〜500μmの範囲内の半径を有する細線に、前記構造部材に接触する水に接触させた状態で電流を流し、
前記被覆を施した前記細線を流れる電流及び前記細線の電圧を測定し、
前記電流及び前記電圧に基づいて前記被覆を施した細線の電気抵抗を求め、
得られた前記電気抵抗に基づいて求められた、前記被覆を施した前記細線の腐食速度を用いて、前記被覆性能評価装置が取り付けられた前記構造部材の表面の前記被覆の性能を評価することを特徴とする構造部材表面の被覆性能評価方法。
【請求項2】
前記細線として0.5μm〜100μmの範囲内の半径を有する細線を用いる請求項1に記載の構造部材表面の被覆性能評価方法。
【請求項3】
前記構造部材及び前記細線のそれぞれの表面への前記被覆の形成が、前記原子力プラントの運転中に行われる請求項1または2に記載の構造部材表面の被覆性能評価方法。
【請求項4】
前記構造部材及び前記細線のそれぞれの表面への前記被覆の形成が、前記原子力プラントの運転停止中に行われる請求項1または2に記載の構造部材表面の被覆性能評価方法。
【請求項5】
表面に被覆を施した0.5μm〜500μmの範囲内の半径を有する細線と、前記細線の両端に接続された電流検出器と、前記細線の電圧を測定する電圧検出器と、前記電流検出器で測定された電流及び前記電圧検出器で測定された電圧に基づいて前記被覆を施した細線の電気抵抗を求め、得られた前記電気抵抗に基づいて前記被覆を施した前記細線の腐食速度を求める演算装置とを備えたことを特徴とする被覆性能評価装置。
【請求項6】
前記細線が0.5μm〜100μmの範囲内の半径を有している請求項5に記載の被覆性能評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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