説明

様々なフッ化原料、非晶質シリカ及び硫酸を用いたテトラフルオロシランの連続式製造方法

本発明は、様々なフッ化原料と非晶質シリカ(SiO)及び硫酸を用いたテトラフルオロシラン(SiF)の連続式製造方法に関する。本発明によれば、テトラフルオロシランの収率を高めることができ、低コストで環境に優しくテトラフルオロシランを連続製造できる。さらに、反応時に発生するフッ化水素の量を最小化し、装置の腐食を最小化することができ、SiFと水の混合ガスである反応生成物を、高温でHSOスクラバーに通過させ、水を除去し、凝結された水とSiFの副反応によるシリカゲル及びヘキサフルオロケイ酸の発生を防止し得ることによって、配管の目詰まりやSiFの収率低下を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々なフッ化原料、非晶質シリカ(SiO)及び硫酸(HSO)を用いたテトラフルオロシラン(SiF)の連続式製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、硫酸と反応してフッ化水素(HF)を発生させることができるフッ化物原料物質(i)、非晶質シリカ(ii)及び硫酸(iii)を単一反応器内で反応させた後、得られたガス状生成物をHSOスクラバー(H2SO4 Scrubber)に通過させることによる、テトラフルオロシランの製造方法に関する。本発明によれば、テトラフルオロシランの収率を高めることができ、フッ化水素ではない様々なフッ化原料を使用することによって、低コストで環境に優しくテトラフルオロシランを連続製造できる。さらに、反応時に発生するフッ化水素(即ち、フッ化水素酸)の量を最小化して、装置の腐食を最小化することができ、そして、テトラフルオロシラン(SiF)と水の混合ガスである反応生成物を高温でHSOスクラバーに通過させ、水を除去して、凝結された水とSiFの副反応によるシリカゲル及びヘキサフルオロケイ酸(HSiF)の発生を防止し得ることによって、配管の目詰まりやSiFの収率低下を防止できる。
【背景技術】
【0002】
テトラフルオロシラン(SiF)は、石英(quartz)を基にした光フィーバーのフッ素ドープ試薬、半導体リソフラフィーのためのフォトマスク原料として半導体製造産業で、および半導体製造のための化学蒸着(CVD)で用いられている。電子部品の高集積、高性能化によって、その純度が重要視されている。近年、太陽電池用ポリシリコン製造のための基礎原料であるモノシラン(SiH)の前駆体等として、テトラヒドロフランは、その需要が増大しつつある非常に重要な基礎原料となっている。
【0003】
テトラフルオロシランを製造する方法には、通常的にリン酸肥料の製造時に副産物として生じるヘキサフルオロケイ酸(HSiF)濃縮物を硫酸との加熱脱水反応で製造するか(国際公開第2005/030642号)、又はヘキサフルオロケイ酸から製造したヘキサフルオロケイ酸塩(MSiF、ここで、M=Na、K)固体を熱分解反応して製造する方法(米国特許第2,615,872号)が知られている。しかし、このような従来の方法は、リン酸肥料製造時の副産物として生じるヘキサフルオロケイ酸などを熱分解しているので、テトラフルオロシラン製造のスケールアップのためには、リン酸肥料プロセスを変更するか、又はスケールアップしなければならない。
【0004】
米国特許第4,382,071号は、硫酸に溶かしたフッ化水素をシリカと反応させて、テトラフルオロシランを製造する方法を提案している。しかし、この方法は、出発物質としてフッ化水素を用いるため、フッ化水素を事前に製造しなければならないという短所がある。
【0005】
米国特許第6,770,253号は、300℃以上の高温反応条件で、金属ケイ素(metallurgical silicon、Si)とフッ化水素(HF)を反応させて、テトラフルオロシランを製造する方法を提案している。しかしこの方法は、高価な金属ケイ素(Si)粉末を使用しているため、製造コストが高いという短所がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/030642号
【特許文献2】米国特許第2,615,872号
【特許文献3】米国特許第4,382,071号
【特許文献4】米国特許第6,770,253号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決するためのものであり、フッ化水素の製造とテトラフルオロシランの製造を単一反応器内で連続式に遂行することができ、これにより、テトラフルオロシランの収率を高めることができ、未反応フッ化水素の量が最小化され、装置の腐食を最小化できて、低コストで環境に優しくテトラフルオロシランを製造でき、また水とSiFとの副反応によるシリカゲル及びヘキサフルオロケイ酸(HSiF)の発生を防止することによって、配管の目詰まりやSiFの収率低下を防止できるテトラフルオロシランの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、(1)硫酸と反応してフッ化水素(HF)を発生させることができるフッ化物原料物質(i)、非晶質シリカ(ii)及び硫酸(iii)を単一反応器内で反応させる工程、及び(2)得られた工程(1)のガス状生成物をHSOスクラバーに通過させる工程を含むテトラフルオロシランの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法によれば、フッ化物原料物質と硫酸との反応で生じるフッ化水素が、非晶質シリカと効率的に反応して、テトラフルオロシランに転換される量を最大化することができる。また、反応生成物から水が効率的に除去されるため、水とSiFとの反応の副産物であるシリカゲル及びヘキサフルオロケイ酸(HSiF)の生成が防止され、プロセス中の配管の目詰まり及びSiFの収率低下が生じない。また、優れた反応効率によって未反応のフッ化水素の量を最小化することよって、それによる装置腐食から安全に運転することができる。さらに、本発明の方法では、フッ化物原料物質としてモノシラン製造時に発生する副産物である四フッ化アルミニウムナトリウム(NaAlF)などを用いることができ、またシリカも、他の産業プロセスの副産物、例えばシリカヒューム、カレット、硅藻土、カオリン、ヒュームドシリカ、フライアッシュ、スラグ、活性白土、シリカゲルなどを原料として用いることができる。従って、本発明の方法は、環境適合性及び経済の観点から、より好ましい条件下で運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るテトラフルオロシランの製造方法を連続式に行うためのロータリーキルン反応装置の一具体例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のテトラフルオロシランの製造方法では、フッ化物原料物質として、硫酸と反応してフッ化水素(HF)を発生させることができる原料が用いられる。このようなフッ化物原料物質の例としては、四フッ化アルミニウムナトリウム(NaAlF、sodium aluminum tetrafluoride)、チオライト(NaAl14・2AlF、chiolite)、氷晶石(NaAlF、cryolite)、フッ化カルシウム(CaF、calcium fluoride)、フッ化ナトリウム(NaF、sodium fluoride)、フッ化アルミニウム(AlF、aluminum fluoride)など、およびこれらの混合物が挙げられる。前記フッ化物原料物質のそれぞれは、下記反応式に従い、硫酸と反応してフッ化水素を発生させる。
【0012】
反応式(1)
NaAlF+2HSO→4HF+NaAl(SO
【0013】
反応式(2)
CaF+HSO→2HF+CaSO
【0014】
反応式(3)
NaAl14・2AlF+10HSO→20HF+5NaAl(SO
【0015】
反応式(4)
NaAlF+3HSO→6HF+NaAl(SO
【0016】
反応式(5)
2NaF+HSO→2HF+NaSO
【0017】
反応式(6)
2AlF+3HSO→6HF+Al(SO
【0018】
即ち、硫酸との反応時、四フッ化アルミニウムナトリウムは硫酸アルミニウムナトリウム(NaAl(SO、反応式(1))に、フッ化カルシウムは硫酸カルシウム(CaSO、反応式(2))に、チオライトは硫酸アルミニウムナトリウム(NaAl(SO、反応式式(3))に、単斜晶系に属するものとして知られた氷晶石は硫酸アルミニウムナトリウム(NaAl(SO、反応式(4))に、フッ化ナトリウムは硫酸ナトリウム(NaSO、反応式(5))に、そしてフッ化アルミニウムは硫酸アルミニウム(Al(SO、反応式(6))に転換されて、フッ化水素を生成する。
【0019】
本発明のテトラフルオロシランの製造方法において、フッ化物原料物質の純度は、重量を基準に、90%以上(例えば90〜99%)であり、好ましくは93%以上(例えば93〜99%)、より好ましくは95%以上(例えば95〜99%)である。フッ化物原料物質の粒度は10〜2,000μmが適切であり、好ましくは40〜1,700μm、より好ましくは50〜1,500μmである。
【0020】
前記フッ化物原料物質の中の四フッ化アルミニウムナトリウム化合物として、下記反応式(7)のようにテトラフルオロシラン(SiF)ガスを四水素化アルミニウムナトリウム(NaAlH、sodium aluminum tetrahydride)還元剤で反応させ、モノシランを製造する過程で発生される副産物、又は下記反応式(8)のように三フッ化アルミニウム(AlF)とフッ化ナトリウム(NaF)との混合物を、好ましくは高温で、機械的に粉砕して製造される生成物を用いることができる。
【0021】
反応式(7)
SiF+NaAlH→SiH+NaAlF
【0022】
反応式(8)
AlF+NaF→NaAlF
【0023】
本発明のテトラフルオロシランの製造方法では、ケイ素原料として非晶質形態のシリカが用いられる。このような非晶質シリカの例としては、フェロシリコンとシリコン金属の生産過程で生成されるガス物質を収集し、ろ過して得られるマイクロシリカ粒子であるシリカヒューム;ガラス製造プロセスから発生し、通常壊れるか、廃棄されるカレット(Cullet);硅藻体から構成される軟質の岩石と土壌の一種である硅藻土(Diatomaceous earth);主としてカオリナイト(Kaolinite)とハロイサイト(Halloysite)からなり、炭酸及び水による化学的風化作用を通して長石から生成されたカオリン(Kaolin);四塩化ケイ素などの熱分解反応によって製造されたヒュームドシリカ(Fumed Silica);微粉炭を燃焼するボイラーの煙道ガスから集塵機で採取した石炭殻であるフライアッシュ(Fly Ash):鉱石から金属を取り除いた残り物であるスラグ(Slag);多孔性物質であり、また吸着剤として使用される活性白土(Activated Clay);シリカゲル(Silica Gel);など、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0024】
本発明のテトラフルオロシランの製造方法において、非晶質シリカ原料内のSiOの含量は、重量を基準に、通常25〜100%であり、コンクリート材によってかなり変わることがある。
【0025】
シリカヒュームのSiO含量は、通常80〜99重量%、好ましくは85〜99重量%、より好ましくは90〜99重量%であり、粒度は、通常10〜500μm、好ましくは20〜300μm、より好ましくは50〜200μmである。
【0026】
硅藻土のSiO含量は、通常80〜99重量%、好ましくは85〜99重量%であり、粒度は、通常10〜2,000μm、好ましくは30〜1,700μm、より好ましくは50〜1,500μmである。
【0027】
カレットのSiO含量は、通常60〜90重量%、好ましくは80〜90重量%であり、粒度は、通常10〜2,000μm、好ましくは10〜1,500μm、より好ましくは10〜1,000μmである。
【0028】
カオリンのSiO含量は、通常60〜90重量%、好ましくは70〜90重量%、より好ましくは80〜90重量%であり、粒度は、通常10〜1,000μm、好ましくは10〜800μm、より好ましくは50〜700μmである。
【0029】
ヒュームドシリカのSiO含量は、通常60〜100重量%、好ましくは70〜100重量%、より好ましくは80〜100重量%であり、粒度は、通常10〜500μm、好ましくは10〜300μm、より好ましくは50〜200μmである。
【0030】
フライアッシュのSiO含量は、通常60〜90重量%、好ましくは70〜90重量%、より好ましくは80〜90重量%であり、粒度は、通常10〜500μm、好ましくは10〜300μm、より好ましくは50〜200μmである。
【0031】
スラグの場合、鉄スラグ、銅スラグまたはこれらの両方を用いてもよい。スラグのSiO含量は、通常20〜40重量%、好ましくは25〜40重量%、より好ましくは30〜40重量%であり、粒度は、通常10〜500μm、好ましくは10〜300μm、より好ましくは50〜200μmである。
【0032】
活性白土のSiO含量は、通常50〜90重量%、好ましくは60〜90重量%、より好ましくは65〜90重量%であり、粒度は、通常10〜500μm、好ましくは10〜300μm、より好ましくは50〜200μmである。
【0033】
シリカゲルのSiO含量は、通常50〜100重量%、好ましくは60〜100重量%、より好ましくは65〜100重量%であり、粒度は、通常10〜2,000μm、好ましくは30〜1,700μm、より好ましくは50〜1,500μmである。
【0034】
本発明のテトラフルオロシランの製造方法において、使用される硫酸の純度は80〜100%の範囲である。硫酸の使用量は、上述したフッ化物原料物質との反応に必要な理論当量の1〜5倍、好ましくは1〜3倍、より好ましくは1〜2倍である。
【0035】
本発明のテトラフルオロシランの製造方法は、通常、ロータリーキルン反応器内で連続式に行われる。反応の効率を増大させるために、キルン反応器の前にニーダー反応器を追加するか、又はキルン反応器の内部空間が二重管構造を有するように設計してもよい。内部スクリューは、嵩高い固体を粉砕および分散させるために設置してもよく、それによって反応性を増大させることができる。反応は、硫酸とフッ化物原料物質とが反応して、フッ化水素を発生させる第1反応ステップ、及び発生したフッ化水素と連続に投入されるシリカとが反応してテトラフルオロシランを生成する第2反応ステップからなる2ステップ機構を有する。第1反応ステップの例としては、前記反応式(1)〜反応式(6)などのように様々なフッ化化合物を用いた反応が挙げられる。第2反応ステップは、下記反応式(9)のようにキルン内で発生したHFとシリカ(SiO)原料との反応を含む。
【0036】
反応式(9)
4HF+SiO→SiF+2H
【0037】
第1反応ステップにより、キルン内で発生したHFガスは、キルン外に排出される前に、シリカ(SiO)原料と反応して、SiFに転換されなければならない。このため本発明では、HFとの反応性に優れた非晶質シリカ、即ち、シリカヒューム、カレット、硅藻土、カオリン、ヒュームドシリカ、フライアッシュ、スラグ、活性白土、シリカゲルなどを使用する。
【0038】
キルン反応器内部の反応温度は、150〜800℃、好ましくは200〜700℃、より好ましくは250〜600℃であり、反応で発生したガスを円滑に移送するために、最低−1,000mmHOのキルン反応器内部の運転圧力で反応を行う。運転圧力の上限は特に制限されず、大気圧以上で反応を行うことができる。
【0039】
前記第2反応ステップ後に、SiF、水及び少量のHFガスを含む発生したガス生成物は、硫酸(HSO)スクラバーに通されて、水とHFが除去され、純粋なSiF生成物が得られる。精製されたSiFは、次いで貯蔵タンクに移送され、その中で保存される。本発明の一具体例によると、HSOスクラバーは、好ましくは10℃〜150℃、より好ましくは10℃〜100℃の温度条件下で運転される。反応器から出た、SiF、水蒸気(HO)及び少量のHFの高温混合ガスであるガス生成物は、反応器からHSOスクラバーまで、露点(Dew Point)以上の温度(好ましくは100℃以上、例えば100℃〜200℃)を保持した状態で移送されるのが好ましい。移送時の温度が露点以下になる場合、水蒸気の凝結により水分が生じ、この水分がSiFと反応して、シリカゲルやHSiFを発生させて、配管の目詰まり及びテトラフルオロシランの損失による収率低下を招くことがあるからである(それぞれ、下記反応式(10)及び(11))。
【0040】
反応式(10)
SiF(g)+2HO(l)→SiO(s,シリカゲル)+4HF(g)
【0041】
反応式(11)
2HF(aq)+SiF(g)→HSiF(aq)
【0042】
本発明の一具体例では、連続式にテトラフルオロシランガスを製造するための反応器として図1に示されるようなロータリーキルン(Rotary Kiln)反応装置を使用する。本発明では、フッ化物原料物質と非晶質シリカなどの固体原料はスクリューを用いて反応器に投入され(フロー1)、同時に硫酸は定量ポンプを用いてロータリーキルン反応器に連続投入される(フロー2)。また、反応器内部には内部スクリュー(B)を取り付けて、キルン内の固体反応物質を循環させ、反応物質が塊状になることを抑制し、それによって反応効率を増大させることができる。生産されたテトラフルオロシランは、図1に示されるように硫酸投入口側を通して反応器の外部に放出され(フロー3)、フッ化物原料物質はスルフェート化合物に転換され、固体排出スクリューを用いて反応器から排出される(フロー5)。水、テトラフルオロシラン及び少量のHFの混合ガスである、反応によって生成したガス物質は、HSOスクラバー(E)へ移送される。HSOスクラバーで、水とフッ化水素(HF)が硫酸に溶けて除去される。HSOスクラバーを経て精製されたテトラフルオロシランガスは、貯蔵タンクに移送される(フロー4)。水とフッ化水素をHSOスクラバー内で除去することによって、テトラフルオロシランがヘキサフルオロケイ酸及びシリカゲルなどに変わることが防止されるため、本発明は、テトラフルオロシランの損失を無くすという長所を有している。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例によって本発明を詳細に説明する。しかし、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0044】
[実施例1]
図1に示されるようなロータリーキルン反応器を用いて、テトラフルオロシランを連続製造した。反応器はLPGバーナーを用いて直火で温度を昇温し、固体原料は使用前に、内部温度350℃のか焼炉で30分間乾燥した。
【0045】
乾燥された四フッ化アルミニウムナトリウム原料6.87kg/hrとSiO含量90%のシリカヒューム原料3.66kg/hrを、配管1を介して反応器に投入し、同時に濃度98%の硫酸10.7kg/hrを配管2を介して投入した。
【0046】
反応器には、原料の円滑な撹拌のために、内部スクリューを取り付けた。反応物の投入後、直ぐにテトラフルオロシランガスが発生した。配管3を介して放出されるガスはHSOスクラバーを通過させた後、捕集した。反応を12時間保持した後、HSOスクラバーおよび最終貯蔵タンクからサンプリングした生成物を分析した。分析結果を下記表1に示す。
【0047】
[実施例2〜5]シリカヒュームを用いたテトラフルオロシランの製造
実施例2〜5では、下記表1に示された通りにフッ化物原料物質を変更した。シリカ原料としては、SiO含量90%のシリカヒュームを3.66kg/hrで用いた。製造装置及び手順は、実施例1のものと同じであった。12時間の反応後、発生したガスを実施例1と同様にして分析した。分析結果を下記表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
[実施例6〜10]硅藻土を用いたテトラフルオロシランの製造
実施例6〜10では、下記表2に示されるようにフッ化物原料物質を変更した。シリカ原料としては、SiO含量88%の硅藻土を3.74kg/hrで用いた。製造装置及び手順は、実施例1のものと同じであった。12時間の反応後、発生したガスを実施例1と同様にして分析した。分析結果を下記表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
[実施例11〜15]カレットを用いたテトラフルオロシランの製造
実施例11〜15では、下記表3に示されるようにフッ化物原料物質を変更した。シリカ原料として、SiO含量71%のカレットを4.63kg/hrで用いた。製造装置及び手順は、実施例1のものと同じであった。12時間の反応後、発生したガスを実施例1と同様にして分析した。分析結果を下記表3に示す。
【0052】
【表3】

【0053】
[実施例16〜20]カオリンを用いたテトラフルオロシランの製造
実施例16〜20では、下記表4に示されるようにフッ化物原料物質を変更した。シリカ原料としては、SiO含量80%のカオリンを4.11kg/hrで用いた。製造装置及び手順は、実施例1のものと同じであった。12時間の反応後、発生したガスを実施例1と同様にして分析した。分析結果を下記表4に示す。
【0054】
【表4】

【0055】
[実施例21〜25]ヒュームドシリカを用いたテトラフルオロシランの製造
実施例21〜25では、下記表5に示されるようにフッ化物原料物質を変更した。シリカ原料としては、SiO含量98%リンヒュームドシリカを3.29kg/hrで用いた。製造装置及び手順は、実施例1のものと同じであった。12時間の反応後、発生したガスを実施例1と同様にして分析した。分析結果を下記表5に示す。
【0056】
【表5】

【0057】
[実施例26〜30]フライアッシュを用いたテトラフルオロシランの製造
実施例26〜30では、下記表6に示されるようにフッ化物原料物質を変更した。シリカ原料としては、SiO含量54%のフライアッシュを6.09kg/hrで用いた。製造装置及び手順は、実施例1のものと同じであった。12時間の反応後、発生したガスを実施例1と同様にして分析した。分析結果を下記表6に示す。
【0058】
【表6】

【0059】
[実施例31〜35]スラグを用いたテトラフルオロシランの製造
実施例31〜35では、下記表7に示されるようにフッ化物原料物質を変更した。シリカ原料としては、SiO含量35%のスラグを9.40kg/hrで用いた。製造装置及び手順は、実施例1のものと同じであった。12時間の反応後、発生したガスを実施例1と同様にして分析した。分析結果を下記表7に示す。
【0060】
【表7】

【0061】
[実施例36〜40]活性白土を用いたテトラフルオロシランの製造
実施例36〜40では、下記表8に示されるようにフッ化物原料物質を変更した。シリカ原料としては、SiO含量75%の活性白土を4.39kg/hrで用いた。製造装置及び手順は、実施例1のものと同じであった。12時間の反応後、発生したガスを実施例1と同様にして分析した。分析結果を下記表8に示す。
【0062】
【表8】

【0063】
[実施例41〜45]シリカゲルを用いたテトラフルオロシランの製造
実施例41〜45では、下記表9に示されるようにフッ化物原料物質を変更した。シリカ原料としては、SiO含量90%のシリカゲルを3.66kg/hrで用いた。製造装置及び手順は、実施例1のものと同じであった。12時間の反応後、発生したガスを実施例1と同様にして分析した。分析結果を下記表9に示す。
【0064】
【表9】

【0065】
[比較例1〜5]粒度が約100μmである結晶シリカを用いたテトラフルオロシランの製造
実施例1のシリカヒュームの代りに、粒度が約100μmであり、SiO含量が98%以上である結晶シリカを、シリカ原料として用いた。下記表10に示されるような多様なフッ化物原料物質と結晶シリカを配管1を介して投入し、同時に濃度98%の硫酸を配管2を介して10.7kg/hrで投入した。12時間の反応後、発生したガスを実施例1と同様に分析した。テトラフルオロシランガスの収率は、下記表10に示されるように30〜35%であった。
【0066】
【表10】

【0067】
[比較例6〜10]粒度が約20μmである結晶シリカを用いたテトラフルオロシランの製造
比較例1の粒度が約100μmである結晶シリカを粉砕して、約20μmの粒度にした後、粒度が約20μmである得られた結晶シリカを、シリカ原料として用いた。製造装置及び手順は、比較例1のものと同じであった。12時間の反応後、発生したガスを実施例1と同様に分析した。テトラフルオロシランガスの収率は、下記表11に示されるように35〜40%であった。
【0068】
【表11】

【0069】
前記表1〜11により、本発明の実施例1〜45ではテトラフルオロシランガスが高い収率で製造されたが、比較例1〜10ではテトラフルオロシランガスが低い収率で製造されたことがわかる。また、本発明の実施例では、カレットやシリカヒュームのように、他の産業プロセスの廃棄物又は副産物を原料として使用して、環境に優しく経済的なプロセスでテトラフルオロシランを製造することができた。
【符号の説明】
【0070】
A:固体原料(シリカ、フッ化化合物)の投入用のスクリュー
B:内部スクリュー
C:内部スクリューのスペーサ
D:固体排出用のスクリュー
E:HSOスクラバー
1:フッ化化合物及びシリカの投入用の配管
2:硫酸の投入用の配管
3:テトラフルオロシラン、水及びHFの混合ガスの放出用の配管
4:水除去後のSiFの放出用の配管
5:固体スルフェート化合物の排出用の配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)硫酸と反応してフッ化水素(HF)を発生させることができるフッ化物原料物質(i)、非晶質シリカ(ii)及び硫酸(iii)を単一反応器内で反応させる工程、及び
(2)得られた工程(1)のガス状生成物をHSOスクラバーに通過させる工程、
を含む、テトラフルオロシランの製造方法。
【請求項2】
フッ化物原料物質は、四フッ化アルミニウムナトリウム、チオライト、氷晶石、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム、フッ化アルミニウム及びこれらの混合物よりなる群から選択される請求項1に記載のテトラフルオロシランの製造方法。
【請求項3】
四フッ化アルミニウムナトリウムは、テトラフルオロシランガスを四水素化アルミニウムナトリウム還元剤と反応させてモノシランを製造する過程で発生される副産物、又は三フッ化アルミニウムとフッ化ナトリウムとの混合物を機械的に粉砕して製造される生成物である請求項2に記載のテトラフルオロシランの製造方法。
【請求項4】
非晶質シリカは、カレット、硅藻土、シリカヒューム、カオリン、ヒュームドシリカ、フライアッシュ、スラグ、活性白土、シリカゲルおよびこれらの混合物よりなる群から選択される請求項1に記載のテトラフルオロシランの製造方法。
【請求項5】
反応器が、ロータリーキルン反応器である請求項1に記載のテトラフルオロシランの製造方法。
【請求項6】
反応温度は150〜800℃であり、反応器運転圧力は最低−1,000mmHOである請求項1に記載のテトラフルオロシランの製造方法。
【請求項7】
SOスクラバーの運転温度は10〜150℃である請求項1に記載のテトラフルオロシランの製造方法。
【請求項8】
ガス状生成物が、反応器からHSOスクラバーまで露点以上の温度を保持したまま移送される請求項1に記載のテトラフルオロシランの製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−519651(P2012−519651A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519483(P2012−519483)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際出願番号】PCT/KR2010/006136
【国際公開番号】WO2011/155666
【国際公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【出願人】(507310879)ケーシーシー コーポレーション (9)
【Fターム(参考)】