様々な面積を有する回折ゾーンを備えた擬調節IOL
一態様において、少なくとも1つの光学表面を有するオプティックと、前記表面の一部分の上で上記オプティックの光学軸の周りに配置された複数の環状の回折構造と、を備えている3焦点眼用レンズを提供する。これらの回折ゾーンの内の少なくとも2つが異なる面積を有し、中焦点を作り出すために上記回折ゾーンの近焦点及び遠焦点における光エネルギープロファイルの広がりを引き起こす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、多焦点眼用レンズ、特に3焦点眼内レンズ(IOLs)のような3焦点眼用レンズに関する。
【0002】
本出願は、2006年2月9日に出願された米国特許出願第11/350,497号に対する米国特許法第119条の下における優先権を主張し、この出願の全体の内容が参照されて本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
白内障、近視、遠視、又は乱視のような視覚の疾患を正すための複数の眼用レンズが利用可能である。例えば、眼内レンズ(InteraOcular Lens:IOL)が、取り除かれた自然レンズの失われた光学的能力を補償するために白内障手術の間に、患者の眼の中に組み込まれ得る。必須の光学的能力を提供するものの、IOLsは自然レンズによって得られうる調節(例えば、様々な距離におけるものに焦点を合わす能力)を備えていない。しかし、多焦点IOLsは、ある程度の調節(pseudo− accommodation:擬調節としても知られる)を備え得ることが知られている。例えば、短焦点及び遠焦点を提供可能である2焦点回折IOLsが利用できる。
【0004】
また、3焦点眼用レンズが、短焦点及び遠焦点と同様に中焦点を提供することに関して知られている。しかしながら、そのような従来の3焦点レンズは、数多くの欠点に悩まされる。例えば、それらは、短焦点及び/又は遠焦点の劣化を犠牲にして、中焦点を提供している。
【0005】
従って、一層良くされた多焦点眼用レンズ及び特に3焦点眼用レンズが、必要とされている。また、患者の眼に組み込まれて自然レンズと置換し得る眼内レンズ(IOLs)の形のような多焦点レンズが必要とされている。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、近視力及び遠視力と同様に中視力を提供する3焦点眼内レンズ(IOLs)のような回折眼用レンズに一般に方向付けられる。本発明の眼用レンズは回折構造を利用して近視力、中視力及び遠視力に対応する3つの焦点領域に入射光を方向づける。例えば、眼用レンズは、様々な面積を有する複数の回折ゾーンを含み、これらのゾーンによって作り出される近焦点及び遠焦点における光エネルギープロファイルの広がりを引き起こし、それによって中視力を作り出す。ある場合には、回折ゾーンの面積の間の最大の差が、例えば約75%〜約200%の範囲になり得る。
【0007】
本発明の一態様において、少なくとも1つの光学表面を有するオプティックと、その表面の一部分上で上記オプティックの光学軸の周りに配置された複数の回折ゾーンと、を含む3焦点眼用レンズが開示される。これらの回折ゾーンの内の少なくとも2つが異なる面積を有し、中焦点を作り出すために上記回折ゾーンの近焦点及び遠焦点における光エネルギープロファイルの広がりを引き起こす。一例として、上記回折ゾーンは入射光エネルギーの少なくとも約25%を、又は、好ましくは入射光エネルギーの少なくとも約28%を、上記近焦点及び遠焦点のそれぞれの中に方向付け、一方、入射光エネルギーの少なくとも約10%を上記中焦点に対して方向付けることができる。また、上記光学表面は、上記遠焦点に対応する屈折能力を作り出すためのベース曲面によって特徴付けられる参照輪郭を含むことができる。ここで用いられるように”回折ゾーン”という言葉は、同一又は選択されたアポダイゼーションに従って繰り返されて、上記表面上に配置された回折パターンを作り出す、1つ又は複数の回折構造を有する表面のある領域をいう。
【0008】
関連した態様において、回折ゾーンは、上記光学軸からの増加する距離の関数として増加する面積を示す。例えば、回折ゾーンは環状のゾーンとして形成されることができ、ゾーンの半径の2乗は下記の関係によって決定される。
【0009】
【数1】
【0010】
ここで、iはゾーン番号を示し、ri2はそのゾーンの2乗半径を示し、fは上記遠焦点と比較した上記近焦点の追加能力を示し、λは設計波長を示し、g(i)は一定でないiの関数を示す。
【0011】
一例として、関数g(i)は下記のように決定され得る。
【0012】
【数2】
【0013】
ここで、iは上記ゾーン番号を示し、a及びbは2つの調整パラメータであり、fは上記近焦点の焦点距離を示す。一例として、aは約0.1λ〜0.3λの間の範囲にあって良く、bは1.5λ〜2.5λの範囲にあって良く、ここでλは設計波長を示す。
【0014】
他の態様において、本発明は、ベース参照曲面によって特徴付けられる表面を有するオプティックと、上記ベース参照曲面の一部分の上で上記オプティックの光学軸の周りに重ね合わされた複数の環状の回折構造と、を備えている3焦点眼用レンズを提供する。複数の上記回折構造は様々な幅を示して、近視力、中視力及び遠視力をまとめて提供する。
【0015】
関連する態様において、上記回折構造は上記光学軸からの増加する距離の関数として、増加する幅を示す。一例として、上記回折構造の幅は、上記光学軸から外側に放射状に、線形又は非線形状に増加し得る。一例として、ある実施形態では、上記幅は、上記構造の幅における最大の百分率の差が約75%〜約200%に及ぶように線形に増加する。
【0016】
他の態様において、少なくとも1つの光学表面と、その表面上に配置された少なくとも2つの回折ゾーンとを有する多焦点眼用レンズが開示される。回折ゾーンの内の1つは、ゾーンらが近視力、中視力及び遠視力をまとめて提供するように約75%〜約200%の範囲にあるファクタだけ、他のゾーンの面積よりも大きな面積を有する。
【0017】
更に、本発明の理解が、以下に簡単に説明される添付の図面と共に、下記の詳細な説明を参照することによって、得られうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、一般に、近視力、中視力及び遠視力を提供する眼内レンズのような3焦点眼用レンズに向けられている。本発明の3焦点眼用レンズは、従来の3焦点レンズによって通常得られる視覚的能力と比較して、中視力に対して高められた視覚的能力を有利に提供し、一方、そのような従来のレンズの近視力及び遠視力能力を維持しており、及び多くの場合超えている。下記に論じる実施形態において、本発明の3焦点レンズの様々な態様が眼内レンズに関連して述べられる。しかしながら、本発明の原理がコンタクトレンズのような他の眼内レンズの製作に同様に適用され得ることが理解されるべきである。
【0019】
図1A及び1Bを参照して、本発明の一実施形態による3焦点眼用レンズ10は、前方光学表面14及び後方光学表面16を有するオプティック(optic)12を含む。この実施形態において、非対称な表面も用いることができるけれども、前方及び後方光学表面は光学軸18に対して対称に配置されている。また、例示のレンズ10は、患者の眼の中における自身の配置のための放射状に延びる固定部材又はハプティクス(haptics)を含む。オプティック12は任意の生物学的適合性材料から形成され得る。そのような材料のいくつかの例は、レンズの所定の適用に対して必要な屈折率を有する軟らかいアクリル、シリコン、ハイドロジェル又は他の生物学的適合性重合体材料を制限することなく含む。また、固定部材20はポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン及びその他同類のもののような適当な重合体材料から形成され得る。表面14、16は概ね凸型として描かれているが、どちらの表面も凹型の形状を有していても良い。代わりに、表面14,16は平凸型又は平凹型レンズを提供するように選択され得る。”眼内レンズ”という用語及びその省略であるIOLは、自然のレンズを置き換えるためにか、又は、さもなくば自然のレンズが取り除かれるか取り除かれないかに関わらず視覚を議論するために眼の中に埋め込まれたレンズを述べるべく、ここでは同じ意味に用いられる。
【0020】
前方表面14は、選択された屈折能力を提供し且つその上に複数の回折構造24が重ね合わされているベース曲面22(点線によって描かれている)によって特徴付けられる。図2において模式的に示されるように、回折構造24は、下記に詳細に述べるように、入射光を複数の回折次数に回折する複数の同心の環状の回折ゾーン26を形成するように特徴付けられ得る。回折ゾーン26は、回折構造を欠いている周辺部分28によって取り囲まれた表面の一部分内に閉じ込められている。言い換えると、回折ゾーンは、前方表面の周辺部分がベース曲面によって決定される屈折能力のみを提供するような先端を切ったような形をしている。この実施形態において、回折ゾーンは2つの回折パターンによって特徴付けられており、それらの一方はここでは3焦点パターンと呼ばれ、他方は2焦点パターンと呼ばれる。より具体的には、3焦点回折パターンを形成する同心ゾーン26a、26b、26cは、協同して入射光を主に3つの回折次数に方向付ける(ここでは、回折次数”+1”、”0”及び”−1”と呼ばれる)。回折次数+1に方向付けられる光は近焦点を形成するように収束し、一方、回折次数0及び−1へ方向付けられる光ビームは、それぞれ、中及び遠(遠方)焦点を形成するように収束する。3焦点パターンを形成する回折ゾーンは、より高い次数にも光を回折することが理解されるべきである。しかしながら、3焦点パターンは入射光の大きなパーセント、例えば約60%以上、を上記3つの次数に回折する。
【0021】
この例の実施形態において、入射光を主に2つの回折次数(例えば、”0”及び”+1”の次数)に回折する環状の回折ゾーン26d、26e、26f、26g、26h、26iは2焦点回折パターンを形成する。2焦点パターンの第0次に回折される光は、3焦点パターンの−1次に回折される光の収束によって作り出される上記遠方焦点と実質的に一致する焦点に収束する。そして、2焦点パターンの+1の回折次数に回折される光は、3焦点パターンの+1次に回折される光の収束によって作り出される上記近焦点と実質的に一致する焦点に収束する。3焦点パターンと同様に、2焦点パターンも光をより高い次数に回折する。
【0022】
しかしながら、2焦点パターンは入射光エネルギーの大部分を、例えば60%以上を、上記0及び−1次に回折する。
【0023】
更に、前方表面のベース曲面によって提供される屈折焦点は、回折パターンによって作り出される遠焦点に実質的に対応する。即ち、レンズの屈折能力は遠視力に対するレンズの性能に寄与する。
【0024】
図1Bにおいて模式的に示されるように、この例の実施形態において、3焦点回折ゾーンは実質的に長方形の回折構造(ステップ)によって形成されており、これらの回折構造はそれらのゾーン境界において実質的に一様なステップ高さによって互いに分離されている。一例として、設計波長におけるステップ高さは下記の関係に従って決定され得る。
【0025】
【数3】
【0026】
ここで、λは設計波長(例えば550nm)であり、aは様々な次数に関連している回折効率を制御するために調整され得るパラメータを示す。一例として、aとして2.5が選択できる。n2はオプティックの屈折率であり、n1はレンズを取り囲んでいる媒体の屈折率を示す。取り囲んでいる媒体が1.336の屈折率を有する液体の体液である実施形態において、オプティックの屈折率(n2)は1.55に選択できる。上記式によって提供されるステップ高さは一例に過ぎず、他のステップ高さもまた利用され得る。
【0027】
その一方、この例の実施形態における2焦点回折ゾーンは、複数の鋸歯状の回折構造によって形成されており、回折構造はそれぞれのゾーン境界において一様でないステップ高さによって互いに分離されている。より具体的には、2焦点パターンのゾーン境界におけるステップ高さは、光学軸からのそれらの距離が増加するにつれて漸次減少する。言い換えると、2焦点回折構造の境界におけるステップ高さは、開口サイズの関数として近焦点及び遠焦点に回折される光エネルギーの割合を変更するように、”アポダイズ(apdize)”されている(例えば、開口サイズが増加すると、より多くの光エネルギーが遠焦点に回折される)。一例として、2焦点回折パターンの各ゾーン境界におけるステップ高さは下記の関係に従って決定され得る。
【0028】
【数4】
【0029】
ここで、λは設計波長(例えば550nm)であり、aは様々な次数に関連している回折効率を制御するために調整され得るパラメータを示す。一例として、aとして2.5が選択できる。n2はオプティックの屈折率であり、n1はレンズがその中に置かれている媒体の屈折率を示しており、fapodizeは、スケーリング関数を表わし、その値は、光学軸とレンズの前方表面との交点からの増加する半径距離の関数として減少する。一例として、スケーリング関数は下記の関係によって決定され得る。
【0030】
【数5】
【0031】
ここで、riはi番目のゾーンの半径距離を示し、routは最後の2焦点回折ゾーンの外側の半径を示す。
【0032】
また、2004年12月1日に出願され且つ通し番号11/000770を有する”アポダイズされた非球面回折レンズ”と題された係属中の特許出願に開示されているこれらのような他のアポダイゼーションスケーリング関数が利用され得る。この出願は参照されてこの明細書に組み込まれる。更に、回折構造は、上述した形状とは異なる幾何学的形状を有することができる。
【0033】
3焦点及び2焦点パターンの回折パターンが分けられて上述されていたけれども、2つのパターンは、近視力、中視力及び遠視力それぞれを提供するための近焦点、中焦点及び遠焦点を協同して作り出す。図3に模式的に示されるように、各焦点において、光エネルギーは、焦点の点において最大を示し、その点の両側において減少するプロファイルに従って分布している。各焦点の点に関連している回折エネルギープロファイルの幅(例えば、Full−Width at Half Maximum)は、焦点深度に関連した尺度を提供する。ある実施形態では、中焦点距離に向けられた入射光エネルギーと比較した近焦点及び遠焦点領域のそれぞれに方向付けられた入射光エネルギーの割合(例えば、実質的に平行な入射光線の形で)は、約1.4〜約4の範囲にあって良い。一例として、近焦点及び遠焦点それぞれと関連している回折効率は約28%〜約38%の範囲にあって良い。一方、中焦点に関連している回折効率は約10%〜約28%の範囲にある。
【0034】
図2を再び参照して、この実施形態において、3焦点回折パターンは光学軸からこの軸からの距離(半径)Rまで延出しており、一方、2焦点回折パターンは距離Rからより大きな半径距離R’(前方表面の半径R”よりは小さい)まで延出している。つまり、小さい開口(瞳)サイズに対して、レンズの近、中及び遠視力の特性は、3焦点回折パターンによって主に決定される。開口(瞳)サイズが増加するにつれて、レンズの特性は2焦点回折パターンによって主に決定される。この実施形態において、開口サイズが増加すると、中焦点に対して方向付けられる光エネルギーと比較して、近焦点及び遠焦点に対して方向付けられる光エネルギーの割合が増加する。更に、上述したように、開口サイズが増加すると、2焦点回折ゾーンのステップ高さのアポダイゼーションは、近焦点と比較して、遠焦点に対して方向付けられる光エネルギーの増加をもたらす。他の値を用いることもできるけれども、一般に、3焦点パターンの半径(R)が約1〜約1.5mmの範囲にあり、2焦点パターンの半径(R’)が約1.5〜約2mmの範囲にあると共に、オプティックの半径(R”)は約2.5〜約3.5mmの範囲に選択される。更に、ここでは明快さのために少数の環状のゾーンしか描かれていないが、3焦点及び2焦点パターンそれぞれにおける環状のゾーンの数は、一般に約3〜約30の範囲にあってよく、追加能力の増加に基づいてそれ以上でも良い。
【0035】
遠焦点に関連している光学的能力は、例えば、約6〜約34ジオプタの範囲にあって良い。中焦点は約1.5〜約4.5ジオプタの範囲にある追加能力を提供でき、近焦点は約3〜約9ジオプタの範囲にある追加能力を提供できる。
【0036】
そのように、上記3焦点IOLレンズ10は、例えば、およそ無限遠から約4メートル(m)までの遠方の範囲における見る物体に対して遠視力を、及び、それよりも近い距離、例えば約0.4m、における見る物体に対する近視力を、提供する。追加して、IOL10は、例えば約0.4〜4mの範囲(ある実施形態では約0.4m〜約1mの範囲)の距離における見る物体に対して中視力を提供する。言い換えると、上記3焦点眼用レンズは、3つの距離領域に対してある程度の調節(通常、擬調節と呼ばれる)を有利に提供する。更なる説明のために、図4Aに模式的に示されるように、3焦点IOLが患者の眼の中に埋め込まれると、眼の角膜と、IOLの近、中及び遠能力との結合した能力が、患者の近、中及び遠方距離の領域内にそれぞれ位置付けられている物体A,B,Cから発する光を網膜の上に焦点を合わせることを許容する。
【0037】
ある実施形態において、本発明の3焦点眼用レンズは、遠、中及び近視力に対応する3つの焦点領域をまとめて提供するようにレンズの表面に配置された、異なる追加能力を提供する、2つの2焦点パターンを含む。一例として、図4Bは、本発明の他の実施形態による3焦点レンズ15の前方表面13の一部分の上に配置された2つの異なる2焦点パターンから形成された複数の回折ゾーン11を模式的に示す。前実施形態と同様に、前方表面は、各パターンの第0次回折次数に対応する遠焦点能力を提供するベース輪郭(図示せず)によって特徴付けられている。より具体的には、内側の回折ゾーン11a、11b、11cは、ある選択された追加能力、例えば約3〜約9ジオプタの範囲の追加能力、を提供する2焦点パターンを形成し、一方、回折ゾーン11d、11e、11f、11gは、異なる追加能力、例えば約1.5〜約4.5ジオプタの範囲の追加能力、を提供する別の2焦点パターンを形成する(回折ゾーンは説明の目的のためのみに示されており、必ずしも縮尺通りには描かれてはいない)。この実施形態において、内側の2焦点パターンは、外側の2焦点パターンよりも高い追加能力を示しているけれども、他の実施形態では、外側のパターンがより大きな追加能力を提供する。更に、少数の回折ゾーンのみが示されているけれども、多くの実施形態において、各パターンにおける回折ゾーンの数は、約3〜約30又は任意の他の適切な数の範囲にわたることができる。ゾーン境界におけるステップ高さは、一様又は非一様であることができ、例えば上述した様に選択され得る。各ゾーンの追加能力は、そのゾーン境界(即ち、下記の関係に従うパターンにおける各回折ゾーンの半径距離)の位置を選択することによって設定され得る。
【0038】
【数6】
【0039】
ここで、iはゾーン番号(i=0は中央ゾーンを示す)を示し、λは設計波長を示し、fは追加能力を示す。
【0040】
この例の実施形態において、外側の2焦点パターンは内側の2焦点パターンよりも大きな追加能力を示す。例えば、外側及び内側の2焦点パターンは、それぞれ、それらの+1の回折次数に対応する約4D及び約2Dの追加能力を提供し得る。しかしながら、2つのパターンの第0次回折次数は、実質的に一致し、約6〜約34ジオプタの範囲にある選択された能力(オプティックの表面の曲率及びその屈折率に基づく)によって特徴付けられる遠焦点領域に向けて入射光を方向づける。図5Cに模式的に示すように、外側のパターンは遠焦点A1及び近焦点A2を提供し、一方、内側のパターンは遠焦点B1(実質的にA1と一致する)及び近焦点B2を提供する。それ故、2つのパターンは遠、中及び近焦点をまとめて提供し、内側及び外側パターンの上記焦点は、それぞれ、近及び中視力を提供する。
【0041】
図5A及び5Bは、前方表面34及び後方表面36を有するオプティック32を含む本発明の他の実施形態による3焦点眼用レンズ30、例えばIOL、を模式的に描く。前方表面34の参照輪郭は、遠焦点を提供するように適合されるベース曲面38によって特徴付けられる。前方表面34は、更に、オプティックの光学軸44の周りに対称に配置された複数の微視的な回折構造42によって形成された複数の環状の回折ゾーン40を含む。前実施形態と同様に、オプティックは生物学的適合性材料から形成でき、更に、レンズは眼の中に自身の固定を容易にするハプティクス(図示せず)を含むことができる。更に、この実施形態における表面14、16は概ね凹型であるけれども、他の実施形態では、表面の湾曲は平凸又は平凹型レンズを提供するように選択され得る。
【0042】
各環状の回折ゾーンはステップによって隣のゾーンから分離されている(例えば、ステップ50は第2ゾーンを第3ゾーンから分離している)。ステップはゾーンにおける半径方向の境界に配置されている。他の実施形態ではステップ高さは、例えば上述したようにアポダイズされ得るけれども、この実施形態において、ステップ高さは実質的に一様である。
【0043】
回折ゾーンが実質的に一様な面積を有する従来の回折レンズとは違って、この実施形態では、回折ゾーンの面積が、制御された方法で、光学軸44からの距離の関数として変化する。この変化は、近焦点及び遠焦点を実質的に維持する一方で中視力を提供するように、回折ゾーンの2つの回折次数によって作り出される近焦点及び遠焦点における光エネルギープロファイルを十分に広げるように設計されている。例えば、図5Bを参照して、この実施形態において、環状の回折ゾーン40の面積は、光学軸からの増加する距離の関数として漸次増加する。例えば、2つの回折ゾーンの面積の間の最大差(例えば、最も外側のゾーン及び最も内側のゾーンの面積における差は、約75%以上、例えば約200%までになり得る)。
【0044】
回折ゾーン面積の変化は、そのゾーン番号の関数として各ゾーンの2乗半径を選択することによって実行される。ゾーンは、下記に述べる様に、光学軸から外側に放射状に連続的に番号付けられている。一例として、図6は、本発明の3焦点眼用レンズのこの実施形態で用いられる異なる関係(グループB)と共に、ゾーンの2乗半径(ri2はi番目のゾーンの2乗半径を示す)と通常従来の回折レンズにおいて用いられるゾーン番号との間の関係(グループA)を対比するグラフを提供する。このグラフにおいて示されるように、3焦点レンズでは、ゾーンの2乗半径がゾーン番号の関数として選択された非線形な変化度合いを示し、一方、一様な回折面積を有するレンズのゾーンの2乗半径は、それぞれのゾーン番号の関数として線形に変化する。これは、より多くのエネルギーを中焦点領域の中に転換するように、レンズによって回折される光の干渉パターンを修正する。
【0045】
より具体的には、本実施形態では、ゾーン境界の半径位置は下記の関係に従って決定され得る。
【0046】
【数7】
【0047】
ここで、iはゾーン番号(i=0は中央ゾーンを示す)を示し、λは設計波長を示し、fは近焦点の焦点距離を示し、g(i)は一定ではない関数を示す。
【0048】
この実施形態において、関数g(i)は下記の関係に従って決定される。
【0049】
【数8】
【0050】
ここで、iはゾーン番号を示し、a及びbは2つの調整パラメータであり、fは近焦点の焦点距離を示す。一例として、aは約0.1λ〜約0.3λの範囲にあって良く、bは約1.5λ〜約2.5λの範囲にあって良い、ここでλは設計波長である。
【0051】
上述したように、光学軸からの距離の関数としての回折ゾーンの面積の変化は、回折した光の一部を中視力を提供するための中焦点領域の中へ収束させる。例えば、約10%〜約28%の範囲にある回折した光の部分が中焦点領域に方向付けられる。
【0052】
一例として、図7は、上記実施形態の3焦点眼用レンズによって提供される中視覚に対する視力の向上を模式的に説明する2つの図(C及びD)を表わす。より具体的には、グラフC(点線)は、環状の回折ゾーンが一様な面積を有する従来の回折レンズの近焦点及び遠焦点間の光エネルギーの分布を示す。比較して、グラフDは、少なくとも2つ以上の回折ゾーンが一様でない面積を有している本発明の一実施形態による眼用レンズにおける光エネルギーの分布を模式的に示す。グラフCとグラフDとの比較は、一様でない面積を備えた回折ゾーンを有する本発明の眼用レンズの実施形態が、中視力に対する視力のかなりの向上をもたらすことを示しており、一方、近視力及び遠視力における視覚的能力を実質的に維持している。一例として、多くの実施形態において、中焦点における回折効率が約10%〜約28%の範囲にあると共に、近焦点及び遠焦点のそれぞれにおける回折効率が約28%〜約38%の範囲にあって良い。
【0053】
前実施形態と同様に、遠焦点と関連している光学能力は、約3〜約9ジオプタの範囲にある追加能力を提供する近焦点と共に、例えば約6〜約34ジオプタの範囲にあって良い。更に、中焦点は、例えば遠焦点と比較して約1.5〜約4.5ジオプタの範囲にある追加能力を提供できる。
【0054】
上記3焦点レンズの機能は、光学軸からの半径距離の2乗の関数として、2つの回折ゾーンにわたる多焦点回折レンズの3つの回折次数(即ち、+1、0、及び−1)と関連している光学的位相の遅れ(OPD)を描いている図8に示されるダイアグラムを考慮することによって、おそらくより理解できる。+1及び−1と関連している位相の遅れは、半径距離の2乗がゼロから第1の回折ゾーンと第2の回折ゾーンとの境界に対応する値(ここではZB12として指示される)まで変化する時、実質的に線形に変化し、一方、第0次と関連している位相の遅れは実質的に一定である。ゾーン境界において、各次数に関連している光学的位相は不連続性を示す。示されてはいないけれども、同様の位相の不連続性が第2回折ゾーンと第3回折ゾーンとの境界(ZB23で指示される)等において生じる。ゾーン境界が各回折ゾーンを横切る光学的位相変化πに対応する2乗半径位置に配置される場合、第0次に回折される光エネルギーは実質的に消滅する。言い換えると、レンズは事実上2つの回折次数(近焦点及び遠焦点)だけを提供する。しかしながら、本発明の多くの実施形態において、1つ又は複数の回折ゾーン境界の2乗半径の位置は、回折ゾーンを横切る光学的位相の変化がπよりも小さい(例えば、それはπ/4)ように選択される。このことは、回折された光エネルギーの一部分が第0次に収束する結果となり、中視力を提供する。
【0055】
ある実施形態において、3焦点眼用レンズによって提供される遠方視力は、大きな開口に対して収差補正により高められる(例えば、直径において約3mmよりも大きい開口サイズ、ある実施形態では収差補正は小さい開口サイズに対しても利用され得るが)。そのような収差補正は、例えば、もしピンボケの光が中焦点領域における光を増加する結果として遠焦点に現れるならば、そのピンボケの光の埋め合わせをできる。例えば、前方表面のベース輪郭(曲面)は、大きな開口に対して特に顕著である球面収差の影響を低減するためにある程度の非球面性を有するように選択され得る。本発明の実施に際して用いるために適切なそのような非球面プロファイルのいくつかの例が、上述した同時係属中の”アポダイズされた回折レンズ”と題される米国特許出願の中に開示されている。
【0056】
一例として、レンズの光学軸からの半径距離(R)の関数としての前方表面の非球面プロファイルが下記の関係によって特徴付けられ得る。
【0057】
【数9】
【0058】
ここで、zは、表面に垂直な軸(z)、例えば光学軸、に平行な表面のダレ(sag)を示し、cは表面の頂点における曲率を示し、ccは円錐係数を示し、Rは表面の半径方向の位置を示し、adは第4次の変形係数を示し、aeは第6次の変形係数を示す。
【0059】
当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく様々な変形が上記実施形態に対してなされることを理解するだろう。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1A】本発明の一実施形態による3焦点眼用レンズの模式的断面図である。
【図1B】ベース輪郭上に重ね合わされた多数の回折構造を有している、図1Aのレンズのオプティックにおける前方表面の模式的断面図である。
【図2】回折構造によって形成された複数の環状のゾーンが描かれた図1A及び図1Bの回折レンズの正面図である。
【図3】本発明の一実施形態による3焦点眼用レンズの近、中及び遠焦点領域における光学能力の一例の分布を示す。
【図4A】本発明の一実施形態による3焦点IOLレンズが埋め込まれている眼の網膜の上における近、中及び遠の物体から発する光の合焦を模式的に描く。
【図4B】パターンが近視力、中視力及び遠視力をまとめて提供するように選択された異なる追加能力を備えた内側及び外側の2焦点回折パターンを有する本発明の他の実施形態による3焦点眼用レンズの模式的正面図である。
【図4C】図4Bに示されたレンズの個々の2焦点パターンの近焦点及び遠焦点における光エネルギープロファイルと共に、結合されたパターンによってまとめて提供される近焦点、中焦点及び遠焦点におけるエネルギープロファイルを模式的に描く。
【図5A】一様でない面積を備えた回折ゾーンを有する本発明の他の実施形態による3焦点眼用レンズの模式的断面図である。
【図5B】図5Aの眼用レンズの正面図である。
【図6】2つのレンズの回折ゾーンの2乗半径の間の関係を対比する2つの模式的グラフを示しており、一方においては回折ゾーンが一様な面積を示しており、他方においてはそれらが一様でない面積を示す。
【図7】本発明の一実施形態による3焦点眼用レンズによって提供される中視覚に対する視力の向上を説明する2つの模式的グラフを示す。
【図8】レンズの光学軸からの2乗半径距離の関数として2つの回折次数にわたる多焦点回折眼用レンズの3つの回折次数に関連している光学的位相の遅れ(OPD)を描く。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、多焦点眼用レンズ、特に3焦点眼内レンズ(IOLs)のような3焦点眼用レンズに関する。
【0002】
本出願は、2006年2月9日に出願された米国特許出願第11/350,497号に対する米国特許法第119条の下における優先権を主張し、この出願の全体の内容が参照されて本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
白内障、近視、遠視、又は乱視のような視覚の疾患を正すための複数の眼用レンズが利用可能である。例えば、眼内レンズ(InteraOcular Lens:IOL)が、取り除かれた自然レンズの失われた光学的能力を補償するために白内障手術の間に、患者の眼の中に組み込まれ得る。必須の光学的能力を提供するものの、IOLsは自然レンズによって得られうる調節(例えば、様々な距離におけるものに焦点を合わす能力)を備えていない。しかし、多焦点IOLsは、ある程度の調節(pseudo− accommodation:擬調節としても知られる)を備え得ることが知られている。例えば、短焦点及び遠焦点を提供可能である2焦点回折IOLsが利用できる。
【0004】
また、3焦点眼用レンズが、短焦点及び遠焦点と同様に中焦点を提供することに関して知られている。しかしながら、そのような従来の3焦点レンズは、数多くの欠点に悩まされる。例えば、それらは、短焦点及び/又は遠焦点の劣化を犠牲にして、中焦点を提供している。
【0005】
従って、一層良くされた多焦点眼用レンズ及び特に3焦点眼用レンズが、必要とされている。また、患者の眼に組み込まれて自然レンズと置換し得る眼内レンズ(IOLs)の形のような多焦点レンズが必要とされている。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、近視力及び遠視力と同様に中視力を提供する3焦点眼内レンズ(IOLs)のような回折眼用レンズに一般に方向付けられる。本発明の眼用レンズは回折構造を利用して近視力、中視力及び遠視力に対応する3つの焦点領域に入射光を方向づける。例えば、眼用レンズは、様々な面積を有する複数の回折ゾーンを含み、これらのゾーンによって作り出される近焦点及び遠焦点における光エネルギープロファイルの広がりを引き起こし、それによって中視力を作り出す。ある場合には、回折ゾーンの面積の間の最大の差が、例えば約75%〜約200%の範囲になり得る。
【0007】
本発明の一態様において、少なくとも1つの光学表面を有するオプティックと、その表面の一部分上で上記オプティックの光学軸の周りに配置された複数の回折ゾーンと、を含む3焦点眼用レンズが開示される。これらの回折ゾーンの内の少なくとも2つが異なる面積を有し、中焦点を作り出すために上記回折ゾーンの近焦点及び遠焦点における光エネルギープロファイルの広がりを引き起こす。一例として、上記回折ゾーンは入射光エネルギーの少なくとも約25%を、又は、好ましくは入射光エネルギーの少なくとも約28%を、上記近焦点及び遠焦点のそれぞれの中に方向付け、一方、入射光エネルギーの少なくとも約10%を上記中焦点に対して方向付けることができる。また、上記光学表面は、上記遠焦点に対応する屈折能力を作り出すためのベース曲面によって特徴付けられる参照輪郭を含むことができる。ここで用いられるように”回折ゾーン”という言葉は、同一又は選択されたアポダイゼーションに従って繰り返されて、上記表面上に配置された回折パターンを作り出す、1つ又は複数の回折構造を有する表面のある領域をいう。
【0008】
関連した態様において、回折ゾーンは、上記光学軸からの増加する距離の関数として増加する面積を示す。例えば、回折ゾーンは環状のゾーンとして形成されることができ、ゾーンの半径の2乗は下記の関係によって決定される。
【0009】
【数1】
【0010】
ここで、iはゾーン番号を示し、ri2はそのゾーンの2乗半径を示し、fは上記遠焦点と比較した上記近焦点の追加能力を示し、λは設計波長を示し、g(i)は一定でないiの関数を示す。
【0011】
一例として、関数g(i)は下記のように決定され得る。
【0012】
【数2】
【0013】
ここで、iは上記ゾーン番号を示し、a及びbは2つの調整パラメータであり、fは上記近焦点の焦点距離を示す。一例として、aは約0.1λ〜0.3λの間の範囲にあって良く、bは1.5λ〜2.5λの範囲にあって良く、ここでλは設計波長を示す。
【0014】
他の態様において、本発明は、ベース参照曲面によって特徴付けられる表面を有するオプティックと、上記ベース参照曲面の一部分の上で上記オプティックの光学軸の周りに重ね合わされた複数の環状の回折構造と、を備えている3焦点眼用レンズを提供する。複数の上記回折構造は様々な幅を示して、近視力、中視力及び遠視力をまとめて提供する。
【0015】
関連する態様において、上記回折構造は上記光学軸からの増加する距離の関数として、増加する幅を示す。一例として、上記回折構造の幅は、上記光学軸から外側に放射状に、線形又は非線形状に増加し得る。一例として、ある実施形態では、上記幅は、上記構造の幅における最大の百分率の差が約75%〜約200%に及ぶように線形に増加する。
【0016】
他の態様において、少なくとも1つの光学表面と、その表面上に配置された少なくとも2つの回折ゾーンとを有する多焦点眼用レンズが開示される。回折ゾーンの内の1つは、ゾーンらが近視力、中視力及び遠視力をまとめて提供するように約75%〜約200%の範囲にあるファクタだけ、他のゾーンの面積よりも大きな面積を有する。
【0017】
更に、本発明の理解が、以下に簡単に説明される添付の図面と共に、下記の詳細な説明を参照することによって、得られうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、一般に、近視力、中視力及び遠視力を提供する眼内レンズのような3焦点眼用レンズに向けられている。本発明の3焦点眼用レンズは、従来の3焦点レンズによって通常得られる視覚的能力と比較して、中視力に対して高められた視覚的能力を有利に提供し、一方、そのような従来のレンズの近視力及び遠視力能力を維持しており、及び多くの場合超えている。下記に論じる実施形態において、本発明の3焦点レンズの様々な態様が眼内レンズに関連して述べられる。しかしながら、本発明の原理がコンタクトレンズのような他の眼内レンズの製作に同様に適用され得ることが理解されるべきである。
【0019】
図1A及び1Bを参照して、本発明の一実施形態による3焦点眼用レンズ10は、前方光学表面14及び後方光学表面16を有するオプティック(optic)12を含む。この実施形態において、非対称な表面も用いることができるけれども、前方及び後方光学表面は光学軸18に対して対称に配置されている。また、例示のレンズ10は、患者の眼の中における自身の配置のための放射状に延びる固定部材又はハプティクス(haptics)を含む。オプティック12は任意の生物学的適合性材料から形成され得る。そのような材料のいくつかの例は、レンズの所定の適用に対して必要な屈折率を有する軟らかいアクリル、シリコン、ハイドロジェル又は他の生物学的適合性重合体材料を制限することなく含む。また、固定部材20はポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン及びその他同類のもののような適当な重合体材料から形成され得る。表面14、16は概ね凸型として描かれているが、どちらの表面も凹型の形状を有していても良い。代わりに、表面14,16は平凸型又は平凹型レンズを提供するように選択され得る。”眼内レンズ”という用語及びその省略であるIOLは、自然のレンズを置き換えるためにか、又は、さもなくば自然のレンズが取り除かれるか取り除かれないかに関わらず視覚を議論するために眼の中に埋め込まれたレンズを述べるべく、ここでは同じ意味に用いられる。
【0020】
前方表面14は、選択された屈折能力を提供し且つその上に複数の回折構造24が重ね合わされているベース曲面22(点線によって描かれている)によって特徴付けられる。図2において模式的に示されるように、回折構造24は、下記に詳細に述べるように、入射光を複数の回折次数に回折する複数の同心の環状の回折ゾーン26を形成するように特徴付けられ得る。回折ゾーン26は、回折構造を欠いている周辺部分28によって取り囲まれた表面の一部分内に閉じ込められている。言い換えると、回折ゾーンは、前方表面の周辺部分がベース曲面によって決定される屈折能力のみを提供するような先端を切ったような形をしている。この実施形態において、回折ゾーンは2つの回折パターンによって特徴付けられており、それらの一方はここでは3焦点パターンと呼ばれ、他方は2焦点パターンと呼ばれる。より具体的には、3焦点回折パターンを形成する同心ゾーン26a、26b、26cは、協同して入射光を主に3つの回折次数に方向付ける(ここでは、回折次数”+1”、”0”及び”−1”と呼ばれる)。回折次数+1に方向付けられる光は近焦点を形成するように収束し、一方、回折次数0及び−1へ方向付けられる光ビームは、それぞれ、中及び遠(遠方)焦点を形成するように収束する。3焦点パターンを形成する回折ゾーンは、より高い次数にも光を回折することが理解されるべきである。しかしながら、3焦点パターンは入射光の大きなパーセント、例えば約60%以上、を上記3つの次数に回折する。
【0021】
この例の実施形態において、入射光を主に2つの回折次数(例えば、”0”及び”+1”の次数)に回折する環状の回折ゾーン26d、26e、26f、26g、26h、26iは2焦点回折パターンを形成する。2焦点パターンの第0次に回折される光は、3焦点パターンの−1次に回折される光の収束によって作り出される上記遠方焦点と実質的に一致する焦点に収束する。そして、2焦点パターンの+1の回折次数に回折される光は、3焦点パターンの+1次に回折される光の収束によって作り出される上記近焦点と実質的に一致する焦点に収束する。3焦点パターンと同様に、2焦点パターンも光をより高い次数に回折する。
【0022】
しかしながら、2焦点パターンは入射光エネルギーの大部分を、例えば60%以上を、上記0及び−1次に回折する。
【0023】
更に、前方表面のベース曲面によって提供される屈折焦点は、回折パターンによって作り出される遠焦点に実質的に対応する。即ち、レンズの屈折能力は遠視力に対するレンズの性能に寄与する。
【0024】
図1Bにおいて模式的に示されるように、この例の実施形態において、3焦点回折ゾーンは実質的に長方形の回折構造(ステップ)によって形成されており、これらの回折構造はそれらのゾーン境界において実質的に一様なステップ高さによって互いに分離されている。一例として、設計波長におけるステップ高さは下記の関係に従って決定され得る。
【0025】
【数3】
【0026】
ここで、λは設計波長(例えば550nm)であり、aは様々な次数に関連している回折効率を制御するために調整され得るパラメータを示す。一例として、aとして2.5が選択できる。n2はオプティックの屈折率であり、n1はレンズを取り囲んでいる媒体の屈折率を示す。取り囲んでいる媒体が1.336の屈折率を有する液体の体液である実施形態において、オプティックの屈折率(n2)は1.55に選択できる。上記式によって提供されるステップ高さは一例に過ぎず、他のステップ高さもまた利用され得る。
【0027】
その一方、この例の実施形態における2焦点回折ゾーンは、複数の鋸歯状の回折構造によって形成されており、回折構造はそれぞれのゾーン境界において一様でないステップ高さによって互いに分離されている。より具体的には、2焦点パターンのゾーン境界におけるステップ高さは、光学軸からのそれらの距離が増加するにつれて漸次減少する。言い換えると、2焦点回折構造の境界におけるステップ高さは、開口サイズの関数として近焦点及び遠焦点に回折される光エネルギーの割合を変更するように、”アポダイズ(apdize)”されている(例えば、開口サイズが増加すると、より多くの光エネルギーが遠焦点に回折される)。一例として、2焦点回折パターンの各ゾーン境界におけるステップ高さは下記の関係に従って決定され得る。
【0028】
【数4】
【0029】
ここで、λは設計波長(例えば550nm)であり、aは様々な次数に関連している回折効率を制御するために調整され得るパラメータを示す。一例として、aとして2.5が選択できる。n2はオプティックの屈折率であり、n1はレンズがその中に置かれている媒体の屈折率を示しており、fapodizeは、スケーリング関数を表わし、その値は、光学軸とレンズの前方表面との交点からの増加する半径距離の関数として減少する。一例として、スケーリング関数は下記の関係によって決定され得る。
【0030】
【数5】
【0031】
ここで、riはi番目のゾーンの半径距離を示し、routは最後の2焦点回折ゾーンの外側の半径を示す。
【0032】
また、2004年12月1日に出願され且つ通し番号11/000770を有する”アポダイズされた非球面回折レンズ”と題された係属中の特許出願に開示されているこれらのような他のアポダイゼーションスケーリング関数が利用され得る。この出願は参照されてこの明細書に組み込まれる。更に、回折構造は、上述した形状とは異なる幾何学的形状を有することができる。
【0033】
3焦点及び2焦点パターンの回折パターンが分けられて上述されていたけれども、2つのパターンは、近視力、中視力及び遠視力それぞれを提供するための近焦点、中焦点及び遠焦点を協同して作り出す。図3に模式的に示されるように、各焦点において、光エネルギーは、焦点の点において最大を示し、その点の両側において減少するプロファイルに従って分布している。各焦点の点に関連している回折エネルギープロファイルの幅(例えば、Full−Width at Half Maximum)は、焦点深度に関連した尺度を提供する。ある実施形態では、中焦点距離に向けられた入射光エネルギーと比較した近焦点及び遠焦点領域のそれぞれに方向付けられた入射光エネルギーの割合(例えば、実質的に平行な入射光線の形で)は、約1.4〜約4の範囲にあって良い。一例として、近焦点及び遠焦点それぞれと関連している回折効率は約28%〜約38%の範囲にあって良い。一方、中焦点に関連している回折効率は約10%〜約28%の範囲にある。
【0034】
図2を再び参照して、この実施形態において、3焦点回折パターンは光学軸からこの軸からの距離(半径)Rまで延出しており、一方、2焦点回折パターンは距離Rからより大きな半径距離R’(前方表面の半径R”よりは小さい)まで延出している。つまり、小さい開口(瞳)サイズに対して、レンズの近、中及び遠視力の特性は、3焦点回折パターンによって主に決定される。開口(瞳)サイズが増加するにつれて、レンズの特性は2焦点回折パターンによって主に決定される。この実施形態において、開口サイズが増加すると、中焦点に対して方向付けられる光エネルギーと比較して、近焦点及び遠焦点に対して方向付けられる光エネルギーの割合が増加する。更に、上述したように、開口サイズが増加すると、2焦点回折ゾーンのステップ高さのアポダイゼーションは、近焦点と比較して、遠焦点に対して方向付けられる光エネルギーの増加をもたらす。他の値を用いることもできるけれども、一般に、3焦点パターンの半径(R)が約1〜約1.5mmの範囲にあり、2焦点パターンの半径(R’)が約1.5〜約2mmの範囲にあると共に、オプティックの半径(R”)は約2.5〜約3.5mmの範囲に選択される。更に、ここでは明快さのために少数の環状のゾーンしか描かれていないが、3焦点及び2焦点パターンそれぞれにおける環状のゾーンの数は、一般に約3〜約30の範囲にあってよく、追加能力の増加に基づいてそれ以上でも良い。
【0035】
遠焦点に関連している光学的能力は、例えば、約6〜約34ジオプタの範囲にあって良い。中焦点は約1.5〜約4.5ジオプタの範囲にある追加能力を提供でき、近焦点は約3〜約9ジオプタの範囲にある追加能力を提供できる。
【0036】
そのように、上記3焦点IOLレンズ10は、例えば、およそ無限遠から約4メートル(m)までの遠方の範囲における見る物体に対して遠視力を、及び、それよりも近い距離、例えば約0.4m、における見る物体に対する近視力を、提供する。追加して、IOL10は、例えば約0.4〜4mの範囲(ある実施形態では約0.4m〜約1mの範囲)の距離における見る物体に対して中視力を提供する。言い換えると、上記3焦点眼用レンズは、3つの距離領域に対してある程度の調節(通常、擬調節と呼ばれる)を有利に提供する。更なる説明のために、図4Aに模式的に示されるように、3焦点IOLが患者の眼の中に埋め込まれると、眼の角膜と、IOLの近、中及び遠能力との結合した能力が、患者の近、中及び遠方距離の領域内にそれぞれ位置付けられている物体A,B,Cから発する光を網膜の上に焦点を合わせることを許容する。
【0037】
ある実施形態において、本発明の3焦点眼用レンズは、遠、中及び近視力に対応する3つの焦点領域をまとめて提供するようにレンズの表面に配置された、異なる追加能力を提供する、2つの2焦点パターンを含む。一例として、図4Bは、本発明の他の実施形態による3焦点レンズ15の前方表面13の一部分の上に配置された2つの異なる2焦点パターンから形成された複数の回折ゾーン11を模式的に示す。前実施形態と同様に、前方表面は、各パターンの第0次回折次数に対応する遠焦点能力を提供するベース輪郭(図示せず)によって特徴付けられている。より具体的には、内側の回折ゾーン11a、11b、11cは、ある選択された追加能力、例えば約3〜約9ジオプタの範囲の追加能力、を提供する2焦点パターンを形成し、一方、回折ゾーン11d、11e、11f、11gは、異なる追加能力、例えば約1.5〜約4.5ジオプタの範囲の追加能力、を提供する別の2焦点パターンを形成する(回折ゾーンは説明の目的のためのみに示されており、必ずしも縮尺通りには描かれてはいない)。この実施形態において、内側の2焦点パターンは、外側の2焦点パターンよりも高い追加能力を示しているけれども、他の実施形態では、外側のパターンがより大きな追加能力を提供する。更に、少数の回折ゾーンのみが示されているけれども、多くの実施形態において、各パターンにおける回折ゾーンの数は、約3〜約30又は任意の他の適切な数の範囲にわたることができる。ゾーン境界におけるステップ高さは、一様又は非一様であることができ、例えば上述した様に選択され得る。各ゾーンの追加能力は、そのゾーン境界(即ち、下記の関係に従うパターンにおける各回折ゾーンの半径距離)の位置を選択することによって設定され得る。
【0038】
【数6】
【0039】
ここで、iはゾーン番号(i=0は中央ゾーンを示す)を示し、λは設計波長を示し、fは追加能力を示す。
【0040】
この例の実施形態において、外側の2焦点パターンは内側の2焦点パターンよりも大きな追加能力を示す。例えば、外側及び内側の2焦点パターンは、それぞれ、それらの+1の回折次数に対応する約4D及び約2Dの追加能力を提供し得る。しかしながら、2つのパターンの第0次回折次数は、実質的に一致し、約6〜約34ジオプタの範囲にある選択された能力(オプティックの表面の曲率及びその屈折率に基づく)によって特徴付けられる遠焦点領域に向けて入射光を方向づける。図5Cに模式的に示すように、外側のパターンは遠焦点A1及び近焦点A2を提供し、一方、内側のパターンは遠焦点B1(実質的にA1と一致する)及び近焦点B2を提供する。それ故、2つのパターンは遠、中及び近焦点をまとめて提供し、内側及び外側パターンの上記焦点は、それぞれ、近及び中視力を提供する。
【0041】
図5A及び5Bは、前方表面34及び後方表面36を有するオプティック32を含む本発明の他の実施形態による3焦点眼用レンズ30、例えばIOL、を模式的に描く。前方表面34の参照輪郭は、遠焦点を提供するように適合されるベース曲面38によって特徴付けられる。前方表面34は、更に、オプティックの光学軸44の周りに対称に配置された複数の微視的な回折構造42によって形成された複数の環状の回折ゾーン40を含む。前実施形態と同様に、オプティックは生物学的適合性材料から形成でき、更に、レンズは眼の中に自身の固定を容易にするハプティクス(図示せず)を含むことができる。更に、この実施形態における表面14、16は概ね凹型であるけれども、他の実施形態では、表面の湾曲は平凸又は平凹型レンズを提供するように選択され得る。
【0042】
各環状の回折ゾーンはステップによって隣のゾーンから分離されている(例えば、ステップ50は第2ゾーンを第3ゾーンから分離している)。ステップはゾーンにおける半径方向の境界に配置されている。他の実施形態ではステップ高さは、例えば上述したようにアポダイズされ得るけれども、この実施形態において、ステップ高さは実質的に一様である。
【0043】
回折ゾーンが実質的に一様な面積を有する従来の回折レンズとは違って、この実施形態では、回折ゾーンの面積が、制御された方法で、光学軸44からの距離の関数として変化する。この変化は、近焦点及び遠焦点を実質的に維持する一方で中視力を提供するように、回折ゾーンの2つの回折次数によって作り出される近焦点及び遠焦点における光エネルギープロファイルを十分に広げるように設計されている。例えば、図5Bを参照して、この実施形態において、環状の回折ゾーン40の面積は、光学軸からの増加する距離の関数として漸次増加する。例えば、2つの回折ゾーンの面積の間の最大差(例えば、最も外側のゾーン及び最も内側のゾーンの面積における差は、約75%以上、例えば約200%までになり得る)。
【0044】
回折ゾーン面積の変化は、そのゾーン番号の関数として各ゾーンの2乗半径を選択することによって実行される。ゾーンは、下記に述べる様に、光学軸から外側に放射状に連続的に番号付けられている。一例として、図6は、本発明の3焦点眼用レンズのこの実施形態で用いられる異なる関係(グループB)と共に、ゾーンの2乗半径(ri2はi番目のゾーンの2乗半径を示す)と通常従来の回折レンズにおいて用いられるゾーン番号との間の関係(グループA)を対比するグラフを提供する。このグラフにおいて示されるように、3焦点レンズでは、ゾーンの2乗半径がゾーン番号の関数として選択された非線形な変化度合いを示し、一方、一様な回折面積を有するレンズのゾーンの2乗半径は、それぞれのゾーン番号の関数として線形に変化する。これは、より多くのエネルギーを中焦点領域の中に転換するように、レンズによって回折される光の干渉パターンを修正する。
【0045】
より具体的には、本実施形態では、ゾーン境界の半径位置は下記の関係に従って決定され得る。
【0046】
【数7】
【0047】
ここで、iはゾーン番号(i=0は中央ゾーンを示す)を示し、λは設計波長を示し、fは近焦点の焦点距離を示し、g(i)は一定ではない関数を示す。
【0048】
この実施形態において、関数g(i)は下記の関係に従って決定される。
【0049】
【数8】
【0050】
ここで、iはゾーン番号を示し、a及びbは2つの調整パラメータであり、fは近焦点の焦点距離を示す。一例として、aは約0.1λ〜約0.3λの範囲にあって良く、bは約1.5λ〜約2.5λの範囲にあって良い、ここでλは設計波長である。
【0051】
上述したように、光学軸からの距離の関数としての回折ゾーンの面積の変化は、回折した光の一部を中視力を提供するための中焦点領域の中へ収束させる。例えば、約10%〜約28%の範囲にある回折した光の部分が中焦点領域に方向付けられる。
【0052】
一例として、図7は、上記実施形態の3焦点眼用レンズによって提供される中視覚に対する視力の向上を模式的に説明する2つの図(C及びD)を表わす。より具体的には、グラフC(点線)は、環状の回折ゾーンが一様な面積を有する従来の回折レンズの近焦点及び遠焦点間の光エネルギーの分布を示す。比較して、グラフDは、少なくとも2つ以上の回折ゾーンが一様でない面積を有している本発明の一実施形態による眼用レンズにおける光エネルギーの分布を模式的に示す。グラフCとグラフDとの比較は、一様でない面積を備えた回折ゾーンを有する本発明の眼用レンズの実施形態が、中視力に対する視力のかなりの向上をもたらすことを示しており、一方、近視力及び遠視力における視覚的能力を実質的に維持している。一例として、多くの実施形態において、中焦点における回折効率が約10%〜約28%の範囲にあると共に、近焦点及び遠焦点のそれぞれにおける回折効率が約28%〜約38%の範囲にあって良い。
【0053】
前実施形態と同様に、遠焦点と関連している光学能力は、約3〜約9ジオプタの範囲にある追加能力を提供する近焦点と共に、例えば約6〜約34ジオプタの範囲にあって良い。更に、中焦点は、例えば遠焦点と比較して約1.5〜約4.5ジオプタの範囲にある追加能力を提供できる。
【0054】
上記3焦点レンズの機能は、光学軸からの半径距離の2乗の関数として、2つの回折ゾーンにわたる多焦点回折レンズの3つの回折次数(即ち、+1、0、及び−1)と関連している光学的位相の遅れ(OPD)を描いている図8に示されるダイアグラムを考慮することによって、おそらくより理解できる。+1及び−1と関連している位相の遅れは、半径距離の2乗がゼロから第1の回折ゾーンと第2の回折ゾーンとの境界に対応する値(ここではZB12として指示される)まで変化する時、実質的に線形に変化し、一方、第0次と関連している位相の遅れは実質的に一定である。ゾーン境界において、各次数に関連している光学的位相は不連続性を示す。示されてはいないけれども、同様の位相の不連続性が第2回折ゾーンと第3回折ゾーンとの境界(ZB23で指示される)等において生じる。ゾーン境界が各回折ゾーンを横切る光学的位相変化πに対応する2乗半径位置に配置される場合、第0次に回折される光エネルギーは実質的に消滅する。言い換えると、レンズは事実上2つの回折次数(近焦点及び遠焦点)だけを提供する。しかしながら、本発明の多くの実施形態において、1つ又は複数の回折ゾーン境界の2乗半径の位置は、回折ゾーンを横切る光学的位相の変化がπよりも小さい(例えば、それはπ/4)ように選択される。このことは、回折された光エネルギーの一部分が第0次に収束する結果となり、中視力を提供する。
【0055】
ある実施形態において、3焦点眼用レンズによって提供される遠方視力は、大きな開口に対して収差補正により高められる(例えば、直径において約3mmよりも大きい開口サイズ、ある実施形態では収差補正は小さい開口サイズに対しても利用され得るが)。そのような収差補正は、例えば、もしピンボケの光が中焦点領域における光を増加する結果として遠焦点に現れるならば、そのピンボケの光の埋め合わせをできる。例えば、前方表面のベース輪郭(曲面)は、大きな開口に対して特に顕著である球面収差の影響を低減するためにある程度の非球面性を有するように選択され得る。本発明の実施に際して用いるために適切なそのような非球面プロファイルのいくつかの例が、上述した同時係属中の”アポダイズされた回折レンズ”と題される米国特許出願の中に開示されている。
【0056】
一例として、レンズの光学軸からの半径距離(R)の関数としての前方表面の非球面プロファイルが下記の関係によって特徴付けられ得る。
【0057】
【数9】
【0058】
ここで、zは、表面に垂直な軸(z)、例えば光学軸、に平行な表面のダレ(sag)を示し、cは表面の頂点における曲率を示し、ccは円錐係数を示し、Rは表面の半径方向の位置を示し、adは第4次の変形係数を示し、aeは第6次の変形係数を示す。
【0059】
当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく様々な変形が上記実施形態に対してなされることを理解するだろう。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1A】本発明の一実施形態による3焦点眼用レンズの模式的断面図である。
【図1B】ベース輪郭上に重ね合わされた多数の回折構造を有している、図1Aのレンズのオプティックにおける前方表面の模式的断面図である。
【図2】回折構造によって形成された複数の環状のゾーンが描かれた図1A及び図1Bの回折レンズの正面図である。
【図3】本発明の一実施形態による3焦点眼用レンズの近、中及び遠焦点領域における光学能力の一例の分布を示す。
【図4A】本発明の一実施形態による3焦点IOLレンズが埋め込まれている眼の網膜の上における近、中及び遠の物体から発する光の合焦を模式的に描く。
【図4B】パターンが近視力、中視力及び遠視力をまとめて提供するように選択された異なる追加能力を備えた内側及び外側の2焦点回折パターンを有する本発明の他の実施形態による3焦点眼用レンズの模式的正面図である。
【図4C】図4Bに示されたレンズの個々の2焦点パターンの近焦点及び遠焦点における光エネルギープロファイルと共に、結合されたパターンによってまとめて提供される近焦点、中焦点及び遠焦点におけるエネルギープロファイルを模式的に描く。
【図5A】一様でない面積を備えた回折ゾーンを有する本発明の他の実施形態による3焦点眼用レンズの模式的断面図である。
【図5B】図5Aの眼用レンズの正面図である。
【図6】2つのレンズの回折ゾーンの2乗半径の間の関係を対比する2つの模式的グラフを示しており、一方においては回折ゾーンが一様な面積を示しており、他方においてはそれらが一様でない面積を示す。
【図7】本発明の一実施形態による3焦点眼用レンズによって提供される中視覚に対する視力の向上を説明する2つの模式的グラフを示す。
【図8】レンズの光学軸からの2乗半径距離の関数として2つの回折次数にわたる多焦点回折眼用レンズの3つの回折次数に関連している光学的位相の遅れ(OPD)を描く。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの光学表面を有するオプティックと、
前記オプティックの光学軸の周りに配置された複数の回折ゾーンであって、前記回折ゾーンの内の少なくとも2つが異なる面積を有し、中焦点を作り出すために前記回折ゾーンの近焦点及び遠焦点における光エネルギープロファイルの広がりを引き起こす、複数の回折ゾーンと、
を備えている多焦点眼用レンズ。
【請求項2】
前記回折ゾーンが、前記光学軸からの増加する距離の関数として増加する面積を示す請求項1記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項3】
前記回折ゾーンが、前記光学軸からの半径(ri)によって特徴付けられる環状のゾーンを有しており、前記ゾーンの半径の2乗が下記の関係によって決定され、
【数1】
ここで、iはゾーン番号を示し、ri2はそのゾーンの2乗半径を示し、fは前記遠焦点と比較した前記近焦点の追加能力を示し、λは設計波長を示し、g(i)は一定でないiの関数を示す請求項1記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項4】
g(i)が下記の関係によって決定され、
【数2】
ここで、iは前記ゾーン番号を示し、a及びbは2つの調整パラメータを示し、fは前記近焦点の焦点距離を示す請求項3記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項5】
前記調整パラメータaが、約0.1λ〜約0.3λの範囲にある請求項4記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項6】
前記調整パラメータbが、約1.5λ〜約2.5λの範囲にある請求項5記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項7】
前記オプティックが、入射光エネルギーの少なくとも約25%を前記近焦点及び遠焦点のそれぞれに向けて方向付ける請求項1記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項8】
前記オプティックが、入射光エネルギーの少なくとも約10%を前記中焦点に向けて方向付ける請求項7記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項9】
前記オプティックが、入射光エネルギーの少なくとも約28%を前記近焦点及び遠焦点のそれぞれに向けて方向付ける請求項7記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項10】
前記光学表面が、前記遠焦点に対応する屈折能力を作り出すベース曲面によって特徴付けられる請求項1記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項11】
前記近焦点が、前記遠焦点と比較して、約3〜約9ジオプタの範囲にある追加能力によって特徴付けられる請求項1記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項12】
ベース参照曲面によって特徴付けられる表面を有するオプティックと、
前記ベース参照曲面の一部分の上で前記オプティックの光学軸の周りに重ね合わされた複数の環状の回折構造と、
を備えており、
複数の前記回折構造は様々な幅を示して、近視力、中視力及び遠視力をまとめて提供する多焦点眼用レンズ。
【請求項13】
前記回折構造は、前記光学軸からの増加する距離の関数として増加する幅を示す請求項12記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項14】
前記ベース参照曲面は、前記遠視力に対応する屈折能力を提供する請求項12記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項15】
2つの環状の回折構造の幅の間の最大差の百分率は、約75%〜約200%の範囲にある請求項12記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項16】
前記遠視力及び中視力は約20/20視力を提供し、前記中視力は約20/30視力を提供する請求項12記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項17】
前記近視力が、約3〜約9ジオプタの範囲にある追加能力を提供する請求項12記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項18】
前記中視力が、約1.5〜約4.5ジオプタの範囲にある追加能力を提供する請求項12記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項19】
前記幅が、前記光学軸からの距離の関数として線形に増加する請求項13記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項20】
前記幅が、前記光学軸からの距離の関数として非線形に増加する請求項13記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項21】
前記ベース参照曲面が非球面である請求項13記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項22】
少なくとも1つの光学表面を有するオプティックと、
前記表面上に配置された少なくとも2つの回折ゾーンであって、前記回折ゾーンの内の1つは、前記回折ゾーンらが近視力、中視力及び遠視力をまとめて提供するように、約75%〜約200%の範囲にあるファクタだけ、他のゾーンの面積よりも大きな面積を有する2つの回折ゾーンと、
を有している多焦点眼用レンズ。
【請求項1】
少なくとも1つの光学表面を有するオプティックと、
前記オプティックの光学軸の周りに配置された複数の回折ゾーンであって、前記回折ゾーンの内の少なくとも2つが異なる面積を有し、中焦点を作り出すために前記回折ゾーンの近焦点及び遠焦点における光エネルギープロファイルの広がりを引き起こす、複数の回折ゾーンと、
を備えている多焦点眼用レンズ。
【請求項2】
前記回折ゾーンが、前記光学軸からの増加する距離の関数として増加する面積を示す請求項1記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項3】
前記回折ゾーンが、前記光学軸からの半径(ri)によって特徴付けられる環状のゾーンを有しており、前記ゾーンの半径の2乗が下記の関係によって決定され、
【数1】
ここで、iはゾーン番号を示し、ri2はそのゾーンの2乗半径を示し、fは前記遠焦点と比較した前記近焦点の追加能力を示し、λは設計波長を示し、g(i)は一定でないiの関数を示す請求項1記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項4】
g(i)が下記の関係によって決定され、
【数2】
ここで、iは前記ゾーン番号を示し、a及びbは2つの調整パラメータを示し、fは前記近焦点の焦点距離を示す請求項3記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項5】
前記調整パラメータaが、約0.1λ〜約0.3λの範囲にある請求項4記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項6】
前記調整パラメータbが、約1.5λ〜約2.5λの範囲にある請求項5記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項7】
前記オプティックが、入射光エネルギーの少なくとも約25%を前記近焦点及び遠焦点のそれぞれに向けて方向付ける請求項1記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項8】
前記オプティックが、入射光エネルギーの少なくとも約10%を前記中焦点に向けて方向付ける請求項7記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項9】
前記オプティックが、入射光エネルギーの少なくとも約28%を前記近焦点及び遠焦点のそれぞれに向けて方向付ける請求項7記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項10】
前記光学表面が、前記遠焦点に対応する屈折能力を作り出すベース曲面によって特徴付けられる請求項1記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項11】
前記近焦点が、前記遠焦点と比較して、約3〜約9ジオプタの範囲にある追加能力によって特徴付けられる請求項1記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項12】
ベース参照曲面によって特徴付けられる表面を有するオプティックと、
前記ベース参照曲面の一部分の上で前記オプティックの光学軸の周りに重ね合わされた複数の環状の回折構造と、
を備えており、
複数の前記回折構造は様々な幅を示して、近視力、中視力及び遠視力をまとめて提供する多焦点眼用レンズ。
【請求項13】
前記回折構造は、前記光学軸からの増加する距離の関数として増加する幅を示す請求項12記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項14】
前記ベース参照曲面は、前記遠視力に対応する屈折能力を提供する請求項12記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項15】
2つの環状の回折構造の幅の間の最大差の百分率は、約75%〜約200%の範囲にある請求項12記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項16】
前記遠視力及び中視力は約20/20視力を提供し、前記中視力は約20/30視力を提供する請求項12記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項17】
前記近視力が、約3〜約9ジオプタの範囲にある追加能力を提供する請求項12記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項18】
前記中視力が、約1.5〜約4.5ジオプタの範囲にある追加能力を提供する請求項12記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項19】
前記幅が、前記光学軸からの距離の関数として線形に増加する請求項13記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項20】
前記幅が、前記光学軸からの距離の関数として非線形に増加する請求項13記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項21】
前記ベース参照曲面が非球面である請求項13記載の多焦点眼用レンズ。
【請求項22】
少なくとも1つの光学表面を有するオプティックと、
前記表面上に配置された少なくとも2つの回折ゾーンであって、前記回折ゾーンの内の1つは、前記回折ゾーンらが近視力、中視力及び遠視力をまとめて提供するように、約75%〜約200%の範囲にあるファクタだけ、他のゾーンの面積よりも大きな面積を有する2つの回折ゾーンと、
を有している多焦点眼用レンズ。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2009−526275(P2009−526275A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554513(P2008−554513)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/061906
【国際公開番号】WO2007/092949
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/061906
【国際公開番号】WO2007/092949
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)
【Fターム(参考)】
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