標本撮像装置
【課題】 染色標本の染色に関する異常を検出することが可能な標本撮像装置を提供する。
【解決手段】
標本撮像装置1は、染色された血球細胞を含む血液塗抹標本を撮像し、血液塗抹標本に含まれる血液細胞に関する血球画像を取得する顕微鏡ユニット2と、顕微鏡ユニット2により得られる血球画像に基づいて、血液塗抹標本の染色に関する異常を検出する画像処理ユニット3と、を備える。
【解決手段】
標本撮像装置1は、染色された血球細胞を含む血液塗抹標本を撮像し、血液塗抹標本に含まれる血液細胞に関する血球画像を取得する顕微鏡ユニット2と、顕微鏡ユニット2により得られる血球画像に基づいて、血液塗抹標本の染色に関する異常を検出する画像処理ユニット3と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染色標本を撮像し、撮像することにより得られた画像に基づいて、染色標本の染色に関する異常又は撮像部に関する異常を検出する標本撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、染色された血液塗抹標本を顕微鏡で拡大して撮像し、得られた撮像画像を解析して血球の分類及び計数等を行う標本撮像装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、同一検体について、普通染色(メイギムザ染色)を施した標本を撮像した画像から白血球、赤血球の分類を行い、超生体染色を施した標本を撮像した画像から網赤血球計数を行い、ペルオキシダーゼ染色を施した標本を撮像した画像から異常白血球検出を行う細胞分類装置が開示されている。かかる細胞分類装置は、全染色標本のデータが正常範囲に入っていれば、この検体を正常検体グループに分類し、同一検体の各種染色データが正常範囲に入らなければ、異常血球が検出されたか否か、又は不明球がある値以上存在するか否か等で精密分析を必要とするか否かを判定する。また、この細胞分類装置は、正常とも異常とも判断しかねる混在領域にあるような疑陽性検体については、さらに分析精度を上げるための精密な自動再検査を実施する。
【特許文献1】特開昭62−135767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような標本撮像装置にあっては、血液塗抹標本の染色が正常に行われていなければ、血球の分類及び計数等を正常に行うことができない。しかしながら、特許文献1に開示されている細胞分類装置にあっては、染色異常によって染色標本のデータに異常が発生している場合に、かかる染色標本のデータの異常が染色異常によるものであることを特定することはできない。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、染色標本の染色に関する異常を検出することが可能な標本撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の標本撮像装置は、染色された細胞を含む染色標本を撮像し、前記染色標本に含まれる細胞に関する細胞画像を取得する撮像部と、前記撮像部により得られる細胞画像に基づいて、前記染色標本の染色に関する異常を検出する染色異常検出手段と、を備える。
【0007】
この態様においては、前記標本撮像装置が、前記染色標本の染色に関する異常の検出に用いられる基準値を記憶する記憶部をさらに備え、前記染色異常検出手段が、前記細胞画像に基づいて細胞の特徴を示す特徴値を取得し、前記基準値と前記特徴値とを比較することにより、前記染色標本の染色に関する異常を検出するように構成されていることが好ましい。
【0008】
また、上記態様においては、前記撮像部が、所定の色成分の輝度を含む細胞画像を取得するように構成されており、前記染色異常検出手段が、前記特徴値として、前記細胞画像の細胞部分における所定の色成分の輝度に関する情報を取得するように構成されていることが好ましい。
【0009】
また、上記態様においては、前記標本撮像装置が、染色された血液細胞を含む前記染色標本から白血球を検出する白血球検出手段をさらに備え、前記撮像部が、前記白血球検出手段により検出された白血球に関する細胞画像を取得するように構成されていることが好ましい。
【0010】
また、上記態様においては、前記標本撮像装置が、前記細胞画像に含まれる白血球を複数の種類に分類する血球分類手段をさらに備え、前記染色異常検出手段が、前記血球分類手段により所定の種類に分類された白血球に基づいて、前記染色標本の染色に関する異常を検出するように構成されていることが好ましい。
【0011】
また、上記態様においては、前記血球分類手段が、前記細胞画像に含まれる白血球を、好中球を含む複数の種類に分類するように構成されており、前記染色異常検出手段が、前記血球分類手段により好中球と分類された前記細胞画像に含まれる白血球に基づいて、前記染色標本の染色に関する異常を検出するように構成されていることが好ましい。
【0012】
また、上記態様においては、前記標本撮像装置が、前記細胞画像に含まれる白血球の核の領域を識別する核識別手段をさらに備え、前記染色異常検出手段が、前記核識別手段により核と識別された領域に基づいて前記特徴値を取得し、取得された前記特徴値に基づいて、前記染色標本の染色に関する異常を検出するように構成されていることが好ましい。
【0013】
また、上記態様においては、前記撮像部が、複数の細胞画像を取得するように構成されており、前記染色異常検出手段が、前記複数の細胞画像のそれぞれに基づいて、複数の前記特徴値を取得し、取得された複数の前記特徴値と前記記憶部に記憶されている前記基準値とに基づいて、前記染色標本の染色に関する異常を検出するように構成されていることが好ましい。
【0014】
また、上記態様においては、前記染色異常検出手段が、取得された複数の前記特徴値の平均値を取得し、取得された平均値と前記記憶部に記憶されている前記基準値とを比較することにより、前記染色標本の染色に関する異常を検出するように構成されていることが好ましい。
【0015】
また、上記態様においては、前記標本撮像装置が、前記撮像部により得られる細胞画像に基づいて、前記撮像部に関する異常を検出する撮像異常検出手段をさらに備えることが好ましい。
【0016】
また、上記態様においては、前記標本撮像装置が、表示部と、前記染色異常検出手段により前記染色標本の染色に関する異常が検出された場合に、前記染色標本の染色に関する異常が発生したことを示す染色異常発生情報を前記表示部に表示させる表示制御手段と、をさらに備えることが好ましい。
【0017】
本発明の他の態様の標本撮像装置は、染色された染色標本を撮像し、前記染色標本に含まれる細胞に関する細胞画像を取得する撮像部と、前記撮像部により得られる細胞画像に基づいて、前記撮像部に関する異常を検出する撮像異常検出手段と、を備える。
【0018】
この態様においては、前記撮像部が、光源を具備し、前記撮像異常検出手段が、前記撮像部により得られる細胞画像に基づいて、前記光源に関する異常を検出するように構成されていることが好ましい。
【0019】
また、上記態様においては、前記撮像異常検出手段が、前記細胞画像における細胞以外の領域に関する特徴値を取得し、取得された特徴値に基づいて、前記撮像部に関する異常を検出するように構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る標本撮像装置によれば、染色標本の染色に関する異常を検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0022】
本実施の形態は、染色された血液塗抹標本を顕微鏡により拡大して撮像し、得られた血球画像を処理することにより、血液塗抹標本の染色に関する異常を検出する標本撮像装置である。
【0023】
[標本撮像装置の構成]
図1は、本実施の形態に係る標本撮像装置の構成を示すブロック図である。なお、図1は装置の構成を模式的に示すものであり、分かり易くするためにセンサ及びスライドカセット等の配置が実際とは若干異なっている。例えば、図1では、WBC検出用のセンサとオートフォーカス用のセンサとが上下に配置されているが、実際には後出する図2に示されるように、両センサは略同一平面内に配置されている。
【0024】
標本撮像装置1は、オートフォーカスにより焦点が合わされた血液塗抹標本の拡大画像を撮像する顕微鏡ユニット2と、撮像された画像を処理して血液中の白血球の分類を行い、当該白血球の分類毎の計数を行う画像処理ユニット3と、この画像処理ユニット3に接続されており、撮像された画像及び分析結果等を表示する血球画像表示ユニット4とを備えている。なお、前記画像処理ユニット3と血球画像表示ユニット4とは、別体とせずに、両者を一体化してもよい。また、標本撮像装置1の近傍には、図示しない塗抹標本作製装置(例えば、シスメックス社製の塗抹標本作製装置SP−1000i)が配置されており、この塗抹標本作製装置によって作製された血液塗抹標本が顕微鏡ユニット2に自動的に供給されるように構成されている。
【0025】
<顕微鏡ユニット2の構成>
図2は、顕微鏡ユニット2の一部を示す斜視図である。顕微鏡ユニット2は、XYステージ21上に載置されたスライドガラス5にうすく引き伸ばされて塗布された血液の像を拡大する顕微鏡のレンズ系の一部を構成する対物レンズ22を備えている。標本(上面に血液が塗抹されたスライドガラス5)を保持する前記XYステージ21は、XYステージ駆動回路23(図1参照)により駆動制御される駆動部(図示せず)により前後左右(X方向及びY方向)に移動自在とされる。また、前記対物レンズ22は、対物レンズ駆動回路24により駆動制御される駆動部(図示せず)により上下(Z方向)に移動自在とされている。
【0026】
スライドガラス5は、複数枚積み重ねられた状態でスライドカセット25内に収容されており、このスライドカセット25は、カセット搬送駆動回路26により駆動制御される搬送部(図示せず)によって搬送される。前記XYステージ21には、スライドガラス5の長手方向の両端付近2箇所を把持し得るチャック部27(図2参照)が、所定位置に停止している前記スライドカセット25内に収容されているスライドガラス5に対して進退自在に設けられている。そして、前記チャック部27をスライドカセット25に向けて進出させ、当該チャック部27先端部に形成されている開閉自在の爪部27aの開閉操作によりスライドガラス5を把持し、ついでチャック部27を後退させることにより、スライドカセット25からスライドガラス5を引き出して、XYステージ21の所定の位置に配置することができる。
【0027】
図1に戻り、スライドガラス5の下方には光源であるランプ28が配設されており、このランプ28からの光は、スライドガラス5上の血液を通過し、さらに光路上に配置されたハーフミラー29及び干渉フィルタ210を経由して、複数の画素が一列に並んだオートフォーカス用のラインセンサ211、複数の画素が一列に並んだ白血球(WBC)検出用のセンサ212、及びCCDカメラ213に入射する。白血球検出用のセンサ212には、FPGA又はASIC等で構成された白血球検出部214が接続され、センサ212の出力信号が白血球検出部214に与えられるようになっている。また、オートフォーカス用のセンサ211には、FPGA又はASIC等で構成されたフォーカス算定部215が接続され、センサ211の出力信号がフォーカス算定部215に与えられるようになっている。センサ212の入射光に応じた出力信号に基づいて、白血球検出部214により白血球の検出が行われ、またセンサ211の入射光に応じた出力信号に基づいて、フォーカス算定部215でオートフォーカスの動作に用いられる情報が算定され、かかる情報に基づいてオートフォーカスの動作が行われる。
【0028】
また、顕微鏡ユニット2は、制御部216及び通信インタフェース217,218を備えている。制御部216はCPU及びメモリを備え、XYステージ駆動回路23、対物レンズ駆動回路24、カセット搬送駆動回路26、白血球検出部214、フォーカス算定部215、通信インタフェース217及び218にそれぞれ通信可能に接続されており、かかる制御部216がメモリに記憶された制御プログラムを実行することにより、上述した各機構が制御されるようになっている。
【0029】
通信インタフェース217は、Ethernet(登録商標)インタフェースである。かかる通信インタフェース217は、通信ケーブルを介して画像処理ユニット3にデータ通信可能に接続されている。また、通信インタフェース218は、A/D変換器213aを介してCCDカメラ213に接続されており、また通信ケーブルを介して画像処理ユニット3に接続されている。CCDカメラ213から出力された画像信号(アナログ信号)は、A/D変換器213aによりA/D変換され、A/D変換器213aから出力された画像データ(デジタルデータ)が通信インタフェース218に与えられ、画像処理ユニット3へ送信される。
【0030】
また、顕微鏡ユニット2は、2次元バーコードリーダ219を備えている。スライドガラス5のフロスト部には、検体IDを示す2次元バーコードが印字されており、顕微鏡ユニット2に導入されたスライドガラス5の2次元バーコードが、2次元バーコードリーダ219により読み取られる。このようにして読み取られた検体IDは、制御部216に与えられる。
【0031】
<画像処理ユニット3の構成>
次に、画像処理ユニット3の構成について説明する。図3は、画像処理ユニット3の構成を示すブロック図である。画像処理ユニット3は、コンピュータ3aによって実現される。図3に示すように、コンピュータ3aは、本体31と、画像表示部32と、入力部33とを備えている。本体31は、CPU31a、ROM31b、RAM31c、ハードディスク31d、読出装置31e、入出力インタフェース31f、通信インタフェース31g、及び画像出力インタフェース31jを備えており、CPU31a、ROM31b、RAM31c、ハードディスク31d、読出装置31e、入出力インタフェース31f、通信インタフェース31g、通信インタフェース31h、通信インタフェース31i、及び画像出力インタフェース31jは、バス31kによって接続されている。
【0032】
CPU31aは、RAM31cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するような画像処理プログラム34aを当該CPU31aが実行することにより、コンピュータ3aが画像処理ユニット3として機能する。
【0033】
ROM31bは、マスクROM、PROM、EPROM、又はEEPROM等によって構成されており、CPU31aに実行されるコンピュータプログラム及びこれに用いるデータ等が記録されている。
【0034】
RAM31cは、SRAMまたはDRAM等によって構成されている。RAM31cは、ハードディスク31dに記録されている画像処理プログラム34aの読み出しに用いられる。また、CPU31aがコンピュータプログラムを実行するときに、CPU31aの作業領域として利用される。
【0035】
ハードディスク31dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU31aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。後述する画像処理プログラム34aも、このハードディスク31dにインストールされている。
【0036】
さらにハードディスク31dには、血球画像を保存するための血球画像フォルダ35が設けられている。かかる血球画像フォルダ35には、検体毎にフォルダが設けられており、さらにそのフォルダ内に後述するようにして得られた血球画像が格納される。検体毎に設けられた各フォルダには、検体IDを含むフォルダ名が付けられており、検体IDから対応するフォルダを特定することが可能となっている。また、この血球画像フォルダ35は血球画像表示ユニット4との共有設定がなされており、血球画像表示ユニット4から当該血球画像フォルダ35に格納されているファイルにアクセスすることが可能となっている。
【0037】
また、ハードディスク31dには、検体に関する情報を格納するための検体データベースDB1と、画像処理によって白血球を分類した結果を格納するための血球データベースDB2とが設けられている。図4Aは、検体データベースDB1の構造を示す模式図であり、図4Bは、血球データベースDB2の構造を示す模式図である。検体データベースDB1には、検体IDを格納する検体フィールドF11と、図示しない多項目自動血球分析装置による分析の結果、白血球スキャッタグラム異常と判定されたか否かを示す情報(白血球スキャッタグラム異常フラグ)、NRBC(有核赤血球)スキャッタグラム異常と判定されたか否かを示す情報(NRBCスキャッタグラム異常フラグ)、好中球減少異常と判定されたか否かを示す情報(好中球減少異常フラグ)等、各種の異常と判定された情報を格納するためのフィールドF12、F13、F14、…と、標本撮像装置1による測定日を格納するためのフィールドF15と、染色異常か否かを示す情報(染色異常フラグ)を格納する染色異常フィールドF16と、ランプ光量異常か否かを示す情報(ランプ光量異常フラグ)を格納する光量異常フィールドF17とが含まれている。白血球スキャッタグラム異常フィールドF12、NRBCスキャッタグラム異常フィールドF13、好中球減少異常フィールドF14、染色異常フィールドF16、光量異常フィールドF17等の異常を示す情報を格納するフィールドには、異常が発生していない場合には「0」が、異常が発生している場合には「1」が格納される。なお、図を簡単にするため省略しているが、検体データベースDB1には、多項目自動血球分析装置による分析結果(白血球数、赤血球数等)の数値データを格納するためのフィールドも設けられている。また、検体データベースDB1には、患者氏名を格納するフィールド、病棟を特定する情報を格納するフィールド、年齢を格納するフィールド、顕微鏡ユニット2による白血球カウント数Nを格納するフィールド等も設けられている。
【0038】
血球データベースDB2は、検体毎に設けられており、各血球データベースDB2には、検体IDを示すデータが含まれている。これにより、検体IDから対応する血球データベースDB2を特定することが可能である。かかる血球データベースDB2には、白血球を特定する白血球IDを格納する白血球IDフィールドF21と、白血球の分類結果を格納する種類フィールドF22と、分類不能であった白血球を特定するための情報を格納する再確認対象フィールドF23とが設けられている。再確認対象フィールドF23には、白血球分類が正常に行われている場合には「0」が、分類不能であり、再確認の対象とされる場合には「1」が格納される。
【0039】
読出装置31eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体34に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体34には、コンピュータを画像処理ユニット3として機能させるための画像処理プログラム34aが格納されており、コンピュータ3aが当該可搬型記録媒体34から画像処理プログラム34aを読み出し、当該画像処理プログラム34aをハードディスク31dにインストールすることが可能である。
【0040】
なお、前記画像処理プログラム34aは、可搬型記録媒体34によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ3aと通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記画像処理プログラム34aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ3aがアクセスして、当該コンピュータプログラムをダウンロードし、これをハードディスク31dにインストールすることも可能である。
【0041】
また、ハードディスク31dには、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のマルチタスクオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施の形態に係る画像処理プログラム34aは当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0042】
入出力インタフェース31fは、例えばUSB,IEEE1394,又はRS-232C等のシリアルインタフェース、SCSI,IDE,又はIEEE1284等のパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース31fには、キーボード及びマウスからなる入力部33が接続されており、ユーザが当該入力部33を使用することにより、コンピュータ3aにデータを入力することが可能である。また、入出力インタフェース31fには、顕微鏡ユニット2に設けられたCCDカメラ213が接続されており、CCDカメラ213の撮像により得られた画像を取り込むことが可能である。
【0043】
通信インタフェース31g,31hは、それぞれEthernet(登録商標)インタフェースである。通信インタフェース31gはLANを介して血球画像表示ユニット4に接続されている。コンピュータ3aは、通信インタフェース31gにより、所定の通信プロトコルを使用して当該LANに接続された血球画像表示ユニット4及び図示しないホストコンピュータとの間でデータの送受信が可能である。また、通信インタフェース31hは、通信ケーブルを介して顕微鏡ユニット2の通信インタフェース217とデータ通信可能に接続されている。
【0044】
通信インタフェース31iは、通信ケーブルを介して顕微鏡ユニット2の通信インタフェース218とデータ通信可能に接続されている。これにより、CCDカメラ213による撮像画像が通信インタフェース31iにより受信されるようになっている。
【0045】
画像出力インタフェース31jは、LCDまたはCRT等で構成された画像表示部32に接続されており、CPU31aから与えられた画像データに応じた映像信号を画像表示部32に出力するようになっている。画像表示部32は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0046】
<血球画像表示ユニット4の構成>
血球画像表示ユニット4は、コンピュータにより構成されている。また、かかる血球画像表示ユニット4は、画像処理ユニット3とLANを介して接続されており、画像処理ユニット3のハードディスク31dに設けられた血球画像フォルダ35内の血球画像を読み出し、表示することが可能である。
【0047】
図5は、血球画像表示ユニット4の構成を示すブロック図である。血球画像表示ユニット4は、コンピュータ4aによって実現される。図5に示すように、コンピュータ4aは、本体41と、画像表示部42と、入力部43とを備えている。本体41は、CPU41a、ROM41b、RAM41c、ハードディスク41d、読出装置41e、入出力インタフェース41f、通信インタフェース41g、及び画像出力インタフェース41hを備えており、CPU41a、ROM41b、RAM41c、ハードディスク41d、読出装置41e、入出力インタフェース41f、通信インタフェース41g、及び画像出力インタフェース41hは、バス41iによって接続されている。
【0048】
ハードディスク41dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU41aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。後述する血球画像表示プログラム44aも、このハードディスク41dにインストールされている。
【0049】
読出装置41eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体44に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体44には、コンピュータを血球画像表示ユニット4として機能させるための血球画像表示プログラム44aが格納されており、コンピュータ4aが当該可搬型記録媒体44から血球画像表示プログラム44aを読み出し、当該血球画像表示プログラム44aをハードディスク41dにインストールすることが可能である。
【0050】
入出力インタフェース41fは、例えばUSB,IEEE1394,SAS,SATA,又はRS-232C等のシリアルインタフェース、SCSI,IDE,又はIEEE1284等のパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース41fには、キーボード及びマウスからなる入力部43が接続されており、ユーザが当該入力部43を使用することにより、コンピュータ4aにデータを入力することが可能である。
【0051】
通信インタフェース41gは、Ethernet(登録商標)インタフェースである。通信インタフェース41gはLANを介して画像処理ユニット3に接続されている。コンピュータ4aは、通信インタフェース41gにより、所定の通信プロトコルを使用して当該LANに接続された画像処理ユニット3及び図示しないホストコンピュータとの間でデータの送受信が可能である。
【0052】
なお、血球画像表示ユニット4のその他の構成は、上述した画像処理ユニット3の構成と同様であるので、その説明を省略する。
【0053】
[標本撮像装置の動作]
次に、本実施の形態に係る標本撮像装置1の動作について説明する。
【0054】
<血球画像の登録動作>
まず、標本撮像装置1が血球を撮像し、血球画像を記憶する血球画像の登録動作について説明する。標本撮像装置1の動作に先立ち、血液塗抹標本の作製が行われる。標本撮像装置1の近傍に配置された血液塗抹標本作製装置は、採血管に収容された検体を吸引し、この検体をスライドガラスに滴下して引き延ばし、当該スライドガラスを染色液に浸すことにより、血液塗抹標本を作製する。なお、血液塗抹標本作製装置によって標本に対して施される染色は、メイグリュンワルドギムザ染色(メイギムザ染色)、ライトギムザ染色、又はライト単染色とされる。このようにして作製された血液塗抹標本(スライドガラス5)は、血液塗抹標本作製装置から顕微鏡ユニット2へ自動供給される。
【0055】
図6は、血球画像の登録動作における顕微鏡ユニット2の動作手順を示すフローチャートであり、図7A及び図7Bは、血球画像の登録動作における画像処理ユニット3の動作手順を示すフローチャートである。顕微鏡ユニット2は、血液塗抹標本作製装置1からスライドガラス5を受け付けると、これを図示しないセンサによって検出する(ステップS11)。制御部216により実行される制御プログラムはイベントドリブン型のプログラムであり、顕微鏡ユニット2の制御部216においては、血液塗抹標本作製装置1からスライドガラス5を受け付けるイベントが発生すると、ステップS12の処理が呼び出される。
【0056】
ステップS12において、制御部216は、受け付けたスライドガラス5を収容するスライドカセット25を所定のバーコード読み取り位置まで搬送させ、2次元バーコードリーダ219に検体バーコードを読み取らせる(ステップS12)。次に、制御部216は、ステップS2において取得した検体IDを通信インタフェース217に画像処理ユニット3へ送信させる(ステップS13)。
【0057】
顕微鏡ユニット2から送信された検体IDは、画像処理ユニット3の通信インタフェース31hにより受信される(図7AのステップS21)。画像処理ユニット3のCPU31aにより実行される画像処理プログラム34aはイベントドリブン型のプログラムであり、CPU31aにおいては、検体IDを受信するイベントが発生すると、ステップS22の処理が呼び出される。
【0058】
ステップS22において、CPU31aは、通信インタフェース31gに、受信した検体IDを含むオーダ要求データをホストコンピュータへ送信させる(ステップS22)。ホストコンピュータから送信されるオーダには、検体ID、患者氏名、患者性別、病棟情報、コメント、多項目自動血球分析装置の分析結果(白血球数、赤血球数等の数値データ)、多項目自動血球分析装置により検出された各種の異常情報(白血球スキャッタグラム異常フラグ、NRBCスキャッタグラム異常フラグ、好中球減少異常フラグ、好中球増加異常フラグ、単球増加異常フラグ、好酸球増加異常フラグ、好塩基球増加異常フラグ、白血球減少異常フラグ、白血球増加異常フラグ、赤芽球増加異常フラグ等)、及び白血球のカウント数Nのデータが含まれている。CPU31aは、オーダ受信を待機し(ステップS23においてNO)、オーダを受信すると(ステップS23においてYES)、通信インタフェース31hにより、かかるオーダに含まれる顕微鏡ユニット2による白血球のカウント数Nを含む測定開始指示データを顕微鏡ユニット2へ送信し(ステップS24)、解析した血球画像の数を示す変数iに1をセットする(ステップS25)。
【0059】
ここで、顕微鏡ユニット2は、測定開始指示データを待機している(図6のステップS14においてNO)。画像処理ユニット3から送信された測定開始指示データが、顕微鏡ユニット2の通信インタフェース217により受信された場合には(ステップS14においてYES)、制御部216は、スライドカセット25を所定位置まで搬送させ、所定位置に停止しているスライドガラス5をチャック部27に把持させ、次いでチャック部27を後退させることによりスライドカセット25からスライドガラスを引き出させ、XYステージ21の所定の位置(撮像位置)にセットさせる(ステップS15)。また、制御部216は、撮像回数を示す変数jに1をセットする(ステップS16)。
【0060】
次いで、スライドガラス5に塗布された血液中の白血球の検出が行われる(ステップS17)。この検出は前述したセンサ212を用いて行われる。センサ212はラインセンサであり、その視野は400μm程度である。図8は、白血球検出におけるスライドガラス上の検体のスキャニングのパターンを説明する図である。制御部216は、センサ212がスライドガラス5上を略ジグザグ状に長手方向の一端から他端に向けてスキャンするように、前記XYステージ21がX方向及びY方向に移動させる(図8参照)。前記略ジグザグ状の走査の、スライドガラス5長手方向の間隔Dは、検出漏れを防ぎつつ走査効率を上げるという観点より、通常、300〜500μm程度であり、また、前記走査のスライドガラス5幅方向の寸法Hは、スライドガラス5の幅が一般に26mm程度であることから、通常、14〜18mm程度である。
【0061】
赤血球は光の赤色成分をあまり吸収しないが、白血球の核は光の赤色成分を多く吸収することから、この赤色成分を検出することにより白血球と赤血球とを容易に区別することができる。図9Aは、ラインセンサ212の視野を説明する図であり、図9Bは、ラインセンサ212の信号波形を示す図である。図9Aにおいては、ラインセンサ212の視野V内に白血球WBCが存在する場合を示しており、この場合、ラインセンサ212により検出された信号の赤色成分は、図9Bに示されるように、白血球WBCが存在する箇所において基準値S以下となる。この現象を利用して、血液中の白血球を検出することができる。なお、信号の赤色成分が基準値S以下となる幅Wを検出することで、この信号を発する部分が白血球の核であるか否かのチェックが行われる。
【0062】
次いで、制御部216は、オートフォーカス動作を実行する(ステップS18)。図2に示すように、スライドガラス5及び対物レンズ22を通過した光は、プリズムミラー29aにより方向変換され、さらにハーフミラー29によってCCDカメラ213に向かう光と、センサ211、212に向かう光とに分けられる。オートフォーカス用のラインセンサ211は、2つのラインセンサ211a及び211bから構成されている。
【0063】
図2に示すように、2つのオートフォーカス用のラインセンサ211a、211bのうち一方のラインセンサ211aは、合焦位置(焦点が合っている位置)よりも前側(光路上対物レンズに近づく側)に配置されており、他方のラインセンサ211bは合焦位置よりも後側(光路上対物レンズから離れる側)に配置されている。そして、かかる2つのラインセンサの出力信号の差分積分値に基づいて、対物レンズの焦点がスライドガラス上の検体に合うように、対物レンズの位置が調節される。
【0064】
次に、制御部216は、通信インタフェース218にCCDカメラ213の画像の取り込み及び送信を指示し、これにより、ステップS17で検出された白血球の画像が取り込まれ(ステップS19)、かかる血球画像が画像処理ユニット3へ送信される(ステップS110)。その後、制御部216は、要求された白血球のカウント数に到達したか否か、即ち、j≧Nであるか否かを判定し(ステップS111)、j<Nの場合には(ステップS111においてNO)、jを1インクリメントし(ステップS112)、処理をステップS17に戻し、再度白血球の検出を実行する。一方、ステップS111においてj≧Nの場合には(ステップS111においてYES)、制御部216は、処理を終了する。
【0065】
上記のステップS25の後、CPU31aは、血球画像の受信を待機している(図7AのステップS26においてNO)。顕微鏡ユニット2から送信された血球画像が、画像処理ユニット3の通信インタフェース31hにより受信された場合には(ステップS26においてYES)、CPU31aは、受信した血球画像をハードディスク31dに記憶する(ステップS27)。ステップS27の処理においては、受信した血球画像に対応する白血球IDが生成され、その白血球IDを含むファイル名の画像データとして、前記血球画像が記憶される。次に、CPU31aは、血球画像の補正処理を行う(ステップS28)。かかる補正処理においては、血球画像の背景部分(血球像以外の部分)の輝度の平均値が所定値(例えば、225)になるように、血球画像の全画素のRGB成分の輝度値が線形補正される。このような補正後の血球画像は、補正前の血球画像とは別にハードディスク31dに記憶される(ステップS29)。この補正後の血球画像も、白血球IDを含むファイル名(補正前の血球画像とは異なるファイル名)が付けられる。
【0066】
次に、CPU31aは、補正後の血球画像における細胞質及び核の領域を特定する(ステップS210)。図10Aは、補正後の血球画像の一例を示す図である。図10Aに示すように、補正後の血球画像6Aには、白血球像61が含まれている。染色された白血球においては、核及び細胞質が異なる色を呈する。また、白血球の核及び細胞質の色は、赤血球及び背景の色ともそれぞれ異なっている。したがって、ステップS210の処理では、白血球像61のRGB値を利用して、白血球像61に含まれる核の領域61a及び細胞質の領域61bが特定される。
【0067】
次に、CPU31aは、補正後の血球画像に基づき白血球の各種特徴パラメータを算出する(ステップS211)。この特徴パラメータとしては、画像の色信号(G、B、R)に基づいて求めることができる白血球の核の面積、核数、凹凸、色調、及び濃度(むら)、白血球の細胞質の面積、色調、及び濃度(むら)、並びに前記核と細胞質との面積比及び濃度比などをあげることができる。
【0068】
次に、CPU31aは、取得した特徴パラメータを用いて、白血球の種類を分類する(ステップS212)。具体的には、例えば白血球のいくつかの特徴パラメータについて、順次、各パラメータについて予め定めておいた判定基準値と比較することで、白血球の種類を除々に絞り込んでいくことができる。このようにして、撮像された白血球は、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、好中球(桿状、分葉状)といった成熟白血球の分類、芽球、幼若顆粒球、異型リンパ球といった未熟白血球の分類、赤芽球の分類がなされる。
【0069】
上記のように、本実施の形態に係る標本撮像装置1にあっては、血球画像の色情報を利用して白血球の分類が行われる。したがって、血液塗抹標本に染色異常が発生している場合には、正常に染色された場合とは異なる色の白血球像を含む血球画像が得られることとなる。また、ランプの光量低下が発生している場合には、上記の補正処理によって染色の影響を受けない背景部分が特定の輝度値となるように補正され、ランプ光量が正常な場合とは異なる色の白血球像を含む血球画像が得られることとなる。
【0070】
このことを図を用いて説明する。図10Aは、正常な染色が行われた場合の補正後の血球画像の例を示す図であり、図10Bは、染色異常が発生している場合の補正後の血球画像の例を示す図である。メイギムザ染色、ライトギムザ染色、及びライト単染色を実施したときにおいて、正常な染色が行われた場合の血球画像6Aと、染色異常が発生している場合の血球画像6Bとでは、特に核領域の色が異なっており、染色異常の場合の血球画像6Bの核領域62aは、正常な染色が行われた場合の血球画像6の核領域61aに比べて色が淡い。また、図10A及び図10Bには示していないが、過度に染色されることにより、核領域の色が正常染色の場合の核領域よりも濃くなり、これによって正常な分類が行われないこともある。したがって、核領域61aの特定の色成分(本実施の形態においては緑成分)の輝度値が正常範囲内に収まっていない場合に、染色異常が発生していると判断することができる。
【0071】
図11Aは、正常なランプ光量における撮像により得られた補正前の血球画像の例を示す図であり、図11Bは、ランプ光量の低下が生じているときの撮像により得られた補正前の血球画像の例を示す図である。正常なランプ光量における補正前の血球画像6Cと、ランプ光量異常が発生している場合の補正前の血球画像6Dとでは、特に背景領域の輝度が異なっている。この背景領域は、染色の影響を受けないが、ランプ光量の影響を受ける領域である。ランプ光量異常が発生している場合の血球画像6Dの背景領域63は、ランプ光量異常が発生していない場合の血球画像6Cの背景領域64に比べて輝度が低い。したがって、補正前血球画像の背景領域の特定の色成分(本実施の形態においては緑成分)の輝度値が基準値より低い場合に、ランプ光量異常が発生していると判断することができる。
【0072】
上記のような染色異常及びランプ光量異常を検出するために、本実施の形態においては画像処理ユニット3が以下の処理を実行する。まず、CPU31aは、補正前の血球画像における背景領域、即ち、補正前の血球画像のうち血球領域以外の領域の各画素のG値(緑成分の輝度値)を取得し、取得したG値の平均値を算出し、得られた値(以下、「背景G値」という。)をRAM31cに記憶する(ステップS213)。
【0073】
次に、CPU31aは、ステップS212における分類の結果、この血球画像に係る白血球が好中球と分類されたか否かを判定する(ステップS214)。当該白血球が好中球と分類された場合には(ステップS214においてYES)、補正後の血球画像における白血球の核の領域の各画素のG値を取得し、取得したG値の平均値を算出し、得られた値(以下、「核G値」という。)をRAM31cに記憶する(ステップS215)。CPU31aは、この後、ステップS216へと処理を進める。
【0074】
一方、ステップS214において、この血球画像に係る白血球が好中球と分類されなかった場合には(ステップS214においてNO)、CPU31aは、ステップS216へと処理を移す。
【0075】
ステップS216において、CPU31aは、要求された白血球のカウント数に到達したか否か、即ち、i≧Nであるか否かを判定し(ステップS216)、i<Nの場合には(ステップS216においてNO)、iを1インクリメントし(ステップS217)、処理をステップS26に戻し、再度血球画像の受信を待機する。
【0076】
一方、ステップS216においてi≧Nの場合には(ステップS216においてYES)、CPU31aは、RAM31cに記憶された背景G値の平均値(以下、「平均背景G値」という。)BAを算出し(ステップS218)、また、RAM31cに記憶された核G値の平均値(以下、「平均核G値」という。)NAを算出する(ステップS219)。
【0077】
次に、CPU31aは、平均背景G値BAが所定の基準値TBより大きいか否かを判定し(ステップS220)、平均背景G値BAが基準値TB以下である場合には(ステップS220においてNO)、RAM31cに設けられたランプ光量異常のフラグに1をセットし(ステップS221)、画像表示部32にランプ光量異常の発生を通知するためのエラー画面を表示し(ステップS222)、ステップS224へと処理を移す。
【0078】
図12Aは、ランプ光量異常の発生を通知するためのエラー画面を示す図である。ランプ光量異常が発生した場合には、図12Aに示すようなエラー画面E1が表示される。エラー画面E1には、エラー情報を表示するエラーリスト表示領域81と、そのエラーに対処するための詳細情報を表示する詳細情報表示領域82と、画面を閉じるために使用されるOKボタン83とが含まれている。ランプ光量異常の場合のヘルプ画面E1には、エラーリスト表示領域81に「ランプ光量不足異常」と表示され、詳細情報表示領域82に「1)ランプの交換時期です。サービスマンに連絡してください。」というメッセージが表示される。
【0079】
一方、平均背景G値BAが基準値TBより大きい場合には(ステップS220においてYES)、CPU31aは、ランプ光量異常のフラグに0をセットし(ステップS223)、ステップS224へと処理を移す。
【0080】
ステップS224において、CPU31aは、平均核G値NAが所定の下限基準値TN1より大きく、且つ、所定の上限基準値TN2より小さいか否かを判定し(ステップS224)、平均核G値NAが下限基準値TN1以下であるか、又は、平均核G値NAが上限基準値TN2以上である場合には(ステップS224においてNO)、RAM31cに設けられた染色異常のフラグに1をセットし(ステップS225)、画像表示部32に染色異常の発生を通知するためのエラー画面を表示し(ステップS226)、ステップS228へと処理を移す。
【0081】
図12Bは、染色異常の発生を通知するためのエラー画面を示す図である。染色異常が発生した場合には、図12Bに示すようなエラー画面E2が表示される。エラー画面E1と同様に、エラー画面E2には、エラー情報を表示するエラーリスト表示領域81と、そのエラーに対処するための詳細情報を表示する詳細情報表示領域82と、画面を閉じるために使用されるOKボタン83とが含まれている。染色異常の場合には、エラーリスト表示領域81に「染色異常」と表示され、詳細情報表示領域82に「1)スライドの塗抹標本が正常であるか確認してください。」「2)再度測定する場合は、カセットにスライドを挿入し、連携ユニットに挿入してください。」というメッセージが表示される。
【0082】
上記のようなエラー画面E1,E2は、ユーザによる入力部43の操作によって、OKボタン83が選択された場合に、表示が終了される。
【0083】
一方、平均核G値NAが下限基準値TN1より大きく、且つ、上限基準値TN2より小さい場合には(ステップS224においてYES)、CPU31aは、染色異常のフラグに0をセットし(ステップS227)、ステップS228へと処理を移す。
【0084】
ステップS228において、CPU31aは、上述のようにして得られた検体に関する情報及び分類結果をハードディスク31dの検体データベースDB1及び血球データベースDB2に登録し(ステップS228)、処理を終了する。
【0085】
<血球画像の表示動作>
図13Aは、血球画像の表示動作における血球画像表示ユニット4の初期動作の手順を示すフローチャートであり、図13Bは、血球画像の表示動作における画像処理ユニット3の検体情報送信動作の手順を示すフローチャートである。ユーザは、コンピュータ4aの入力部43を操作することにより、血球画像表示プログラム44aの実行を指示する。コンピュータ4aのCPU41aは、この指示を受け、血球画像表示プログラム44aを実行する。これにより、コンピュータ4aが血球画像表示ユニット4として機能する。
【0086】
血球画像表示プログラム44aの起動直後は、ユーザ名及びパスワードの入力を促すログイン入力画面が表示される(図13AにおけるステップS31)。このログイン入力画面においてユーザがユーザ名及びパスワードを入力する(ステップS32)。血球画像表示ユニット4のCPU41aにより実行される血球画像表示プログラム44aはイベントドリブン型のプログラムであり、CPU41aにおいては、ユーザ名及びパスワードの入力を受け付けるイベントが発生すると、ステップS33の処理が呼び出される。
【0087】
ステップS33において、CPU41aは、ユーザ認証処理を実行する。かかるユーザ認証が失敗した場合には(ステップS34においてNO)、CPU41aは、処理を終了する。上記のログイン処理によるユーザ認証が成功した場合には(ステップS34においてYES)、CPU41aは、通信インタフェース41gに、その日が測定日とされている検体情報の要求データを画像処理ユニット3へ送信させる(ステップS35)。
【0088】
血球画像表示ユニット4から送信された要求データは、画像処理ユニット3の通信インタフェース31hにより受信される(図13BのステップS41)。CPU31aにおいては、前記要求データを受信するイベントが発生すると、ステップS42の処理が呼び出される。
【0089】
ステップS42において、CPU31aは、測定日がその日である検体情報を、検体データベースDB1から取得する(ステップS42)。次に、CPU231aは、通信インタフェース31gに、取得した検体情報を血球画像表示ユニット4へ送信させ(ステップS43)、処理を終了する。
【0090】
血球画像表示ユニット4のCPU41aは、検体情報の要求データを送信した後、検体情報の受信を待機する(図13AのステップS36においてNO)。画像処理ユニット3から送信された検体情報が、血球画像表示ユニット4の通信インタフェース41gにより受信された場合には(ステップS36においてYES)、測定進捗画面(図示せず)を表示し(ステップS37)、処理を終了する。かかる測定進捗画面では、複数の検体に関する検体情報がリスト表示される。かかる検体情報のリストには、「染色異常」及び「ランプ光量異常」の領域が設けられており、染色異常が検出された検体の染色異常の領域には、染色異常発生を示す印が表示され、ランプ光量異常が検出された検体のランプ光量異常の領域には、ランプ光量異常を示す印が表示される。また、この測定進捗画面においては、ユーザがリスト表示されている検体情報の1つを選択することが可能であり、1つの検体情報を選択した上で所定の操作(例えば、マウスの左ボタンのダブルクリック)を行うことにより、この検体に関する血球画像の表示指示を与えることが可能である。
【0091】
図14Aは、血球画像の表示動作における血球画像表示ユニット4の画像表示動作の手順を示すフローチャートであり、図14Bは、血球画像の表示動作における画像処理ユニット3の血球画像送信動作の手順を示すフローチャートである。血球画像表示ユニット4では、測定進捗画面が表示されている状態において、上記のように1つの検体に関する血球画像の表示指示を受け付けるイベントが発生すると(ステップS51)、ステップS52の処理が呼び出される。
【0092】
ステップS52において、CPU41aは、通信インタフェース41gに、指示を受けた検体の検体IDを含む血球画像送信要求データを画像処理ユニット3へ送信させる(ステップS52)。
【0093】
血球画像表示ユニット4から送信された要求データは、画像処理ユニット3の通信インタフェース31hにより受信される(図14BのステップS61)。CPU31aにおいては、前記要求データを受信するイベントが発生すると、ステップS62の処理が呼び出される。
【0094】
ステップS62において、CPU31aは、前記検体IDに対応する血球データベースDB2から、分類結果情報を取得する(ステップS62)。この分類結果情報には、白血球を特定する白血球IDと、白血球の分類結果の種類(単球、好中球、好塩基球、好酸球、リンパ球等)と、分類不能か否かを示す情報とが含まれている。また、分類結果情報においては、白血球の種類情報又は分類不能情報に白血球IDが対応付けられている。即ち、分類結果情報は、白血球IDから、その白血球の種類が何であるか、又は、その白血球が分類不能であったかを特定可能な情報とされている。
【0095】
次に、CPU31aは、通信インタフェース31gに、取得した分類結果情報を血球画像表示ユニット4へ送信させる(ステップS63)。
【0096】
血球画像表示ユニット4のCPU41aは、分類結果情報の要求データを送信した後、分類結果情報の受信を待機する(図14AのステップS53においてNO)。画像処理ユニット3から送信された分類結果情報が、血球画像表示ユニット4の通信インタフェース41gにより受信された場合には(ステップS53においてYES)、例えば、特定の種類の白血球の画像のみを表示する等の表示条件にしたがって、その分類結果情報に含まれる白血球IDから表示すべき血球画像に対応する白血球IDを特定し(ステップS54)、通信インタフェース41gに、特定した白血球IDを含む画像送信要求データを画像処理ユニット3へ送信させる(ステップS55)。なお、ステップS54においては、1又は複数の白血球IDが特定され、上記画像送信要求データには、特定された全ての白血球IDが含まれる。
【0097】
画像処理ユニット3のCPU31aは、分類結果情報を送信した後、画像送信要求データの受信を待機する(図14BのステップS64においてNO)。血球画像表示ユニット4から送信された要求データが、画像処理ユニット3の通信インタフェース31hにより受信された場合には(ステップS64においてYES)、CPU31aは、ハードディスク31dの血球画像フォルダ35の中の前記検体IDに対応するフォルダから、画像送信要求データに含まれる白血球IDに対応する血球画像(補正後の血球画像)を読み出し(ステップS65)、通信インタフェース31gに、読み出した血球画像を血球画像表示ユニット4へ送信させ(ステップS66)、処理を終了する。
【0098】
血球画像表示ユニット4のCPU41aは、画像送信要求データを送信した後、血球画像の受信を待機する(図14AのステップS56においてNO)。画像処理ユニット3から送信された血球画像が、血球画像表示ユニット4の通信インタフェース41gにより受信された場合には(ステップS56においてYES)、血球画像レビュー画面を表示し(ステップS57)、処理を終了する。
【0099】
図15は、血球画像レビュー画面の一例を示す図である。血球画像レビュー画面7には、1又は複数の血球画像を表示する血球画像表示領域71と、患者情報を表示する患者情報表示領域72と、分類された血球の種類毎に、計数結果を表示するカウント値表示領域73と、多項目自動血球分析装置による分析結果を表示する分析結果表示領域74とが含まれている。血球画像表示領域には、受信された血球画像を縮小した画像が一覧表示される。各縮小画像には、血球種が文字列(単球は「MONO」、好中球は「NEUT」、好酸球は「EO」、好塩基球は「BASO」、リンパ球は「LYMP」等)で表示される。
【0100】
以上のような構成とすることにより、スライドガラス5の染色異常を検出することが可能となり、染色異常により血球の分類不良が生じた場合に、その分類不良の原因が染色異常であることを特定することが可能となる。また、本実施の形態に係る標本撮像装置にあっては、撮像に用いられるランプの光量異常を検出することが可能であり、ランプ光量異常により血球の分類不良が生じた場合に、その分類不良の原因がランプ光量異常であることを特定することが可能となる。撮像用のランプは、経時的に劣化して徐々に光量が落ちたり、突然発光しなくなったりする消耗部品である。したがって、ランプ光量異常を検出することで、ユーザが適時にランプの交換を行うことができる。
【0101】
また、白血球の血球画像において、核領域の各画素のG値(核G値)は、その白血球の特徴を示しており、正常に染色された白血球の血球画像と、染色異常の白血球の血球画像とでは、かかる核G値が異なっている。したがって、このような核G値を用いることにより、精度よく染色異常の検出を行うことが可能となる。
【0102】
また、白血球は核を含んでおり、メイギムザ染色、ライトギムザ染色、及びライト単染色では、白血球の核が主に染色される。したがって、白血球を検出し、検出された白血球の血球画像を取得し、染色による影響が大きく現れる白血球の血球画像を染色異常の検出に用いることにより、精度よく染色異常の検出を行うことができる。
【0103】
また、白血球には、単球、好中球、好酸球、好塩基球、及びリンパ球の種類があり、種類が異なる白血球では、その核の形態が異なり、核の染色の状態も異なる。したがって、特定の種類の白血球(好中球)の血球画像に基づいて染色異常を検出することにより、精度よく染色異常の検出を行うことが可能となる。
【0104】
また、本実施の形態に係る標本撮像装置1においては、好中球の血球画像を用いて染色異常の検出を行っている。健常者の血液中に含まれる白血球の中では好中球が最も数が多いため、このように好中球の血球画像を用いることで、他の種類の血球画像を用いる場合に比べて安定して染色異常の検出を行うことが可能となる。
【0105】
また、本実施の形態に係る標本撮像装置1においては、白血球の核の領域を血球画像から識別し、この核の領域に基づいて染色異常の検出を行っている。上記のように、メイギムザ染色、ライトギムザ染色、及びライト単染色では、白血球の核が主に染色されるため、血球画像の中の核の領域から取得した核G値に基づいて染色異常を検出することにより、精度よく染色異常の検出を行うことが可能となる。
【0106】
また、本実施の形態に係る標本撮像装置1においては、血球画像の核の領域の複数の画素から特徴値である核G値を取得し、複数の血球画像の核G値に基づいて染色異常の検出を行っている。核の領域に含まれる複数の画素の核G値には、突発的に他の画素よりも高い値又は低い値を示すものが存在することがある。したがって、上記のように複数の核G値を用いることで、正確な染色異常の検出を安定して行うことができる。
【0107】
また、本実施の形態に係る標本撮像装置1においては、取得された複数の核G値の平均値に基づいて染色異常の検出を行っている。同一検体の白血球の核G値が、正規分布に従うことが分かっているような場合、平均値を用いることで比較的変動が少なく、母集団(同一検体中の白血球の核G値)の特徴を表す値として用いることができる。
【0108】
また、本実施の形態に係る標本撮像装置1においては、血球画像の背景領域に基づいて、撮像に用いられるランプの光量異常を検出する。血球画像の背景領域は、染色によって受ける影響が少なく、また、ランプが一定の光量を発している場合には、複数の血球画像における背景領域は同程度の輝度に保たれる。したがって、かかる背景領域(血球以外の領域)を用いることにより、正確にランプの光量異常を検出することができる。
【0109】
また、スライドガラス5の染色異常が検出された場合には、上述したヘルプ画面によって染色異常の発生がユーザに通知されるため、ユーザが血液塗抹標本作製装置の装置状態又は染色液を確認することで迅速にかかる異常に対処することが可能となり、早期に染色異常を解消することが可能となる。
【0110】
また、ランプの光量異常が検出された場合には、上述したヘルプ画面によってランプ光量異常の発生がユーザに通知されるため、ユーザがランプ交換を実施したり、サービスマンに連絡することでかかる異常に対処することが可能となり、早期にランプ光量異常を解消することが可能となる。
【0111】
(その他の実施の形態)
なお、上述した実施の形態においては、血液塗抹標本を撮像して血球画像を取得する標本撮像装置について述べたが、これに限定されるものではない。人体から採取した組織を薄くスライスしてスライドガラスに貼り付け、染色液により染色することによって得られた標本を撮像し、細胞像を含む細胞画像を取得する標本撮像装置としてもよい。
【0112】
また、上述した実施の形態においては、標本の染色異常と、撮像に用いられるランプの光量異常とのそれぞれを検出可能な構成について述べたが、これに限定されるものではない。標本の染色異常を検出可能であるが、ランプ光量異常を検出することができない構成としてもよいし、ランプ光量異常を検出可能であるが、標本の染色異常を検出することができない構成としてもよい。
【0113】
また、上述した実施の形態においては、平均核G値NAが所定の下限基準値TN1より大きく、且つ、所定の上限基準値TN2より小さい場合に、染色異常と判定する構成について述べたが、これに限定されるものではない。上限基準値を設けず、平均核G値NAが下限基準値TN1以下である場合に、染色異常と判定する構成としてもよい。
【0114】
また、上述した実施の形態においては、血球画像の核の領域のG値を平均した平均核G値を染色の特徴を示す特徴パラメータとして用いて、染色異常を検出する構成について述べたが、これに限定されるものではない。平均核G値ではなく、血球画像の核の領域のB値又はR値を平均した値を特徴パラメータとして用いて染色異常を検出する構成としてもよいし、血球画像の核の領域に含まれる1つの画素のG値、B値又はR値を特徴パラメータとして用いて染色異常を検出する構成としてもよい。
【0115】
また、上述した実施の形態においては、血球画像の背景の領域のG値を平均した平均背景G値をランプ光量の特徴を示す特徴パラメータとして用いて、ランプ光量異常を検出する構成について述べたが、これに限定されるものではない。平均背景G値ではなく、血球画像の背景の領域のB値又はR値を平均した値を特徴パラメータとして用いてランプ光量異常を検出する構成としてもよいし、血球画像の背景の領域に含まれる1つの画素のG値、B値又はR値を特徴パラメータとして用いてランプ光量異常を検出する構成としてもよい。
【0116】
また、上述した実施の形態においては、好中球の血球画像を用いて、染色異常を検出する構成について述べたが、これに限定されるものではない。好中球ではなく、単球、好酸球、好塩基球、リンパ球等の他の種類の白血球の血球画像を用いて、染色異常を検出する構成としてもよい。ただし、健常者の血液中に含まれる白血球の中では好中球が最も数が多いため、好中球の血球画像を用いることで、他の種類の血球画像を用いる場合に比べて安定して染色異常の検出を行うことが可能となる。また、赤血球全体が染色液により染色されることから、血球画像の赤血球領域を用いて染色異常を検出する構成とすることもできる。
【0117】
また、上述した実施の形態においては、コンピュータが画像処理プログラムを実行することにより、画像処理ユニット3として機能して、染色異常及びランプ光量異常の検出を行う構成について述べたが、これに限定されるものではない。画像処理プログラムと同様の処理を実行することが可能なFPGA又はASIC等の専用ハードウェアにより、染色異常及びランプ光量異常の検出処理を実行する構成としてもよい。
【0118】
また、上述した実施の形態においては、画像処理ユニット3とは独立して設けられた血球画像表示ユニット4によって、血球画像及び染色異常又はランプ光量異常の通知情報を表示する構成について述べたが、これに限定されるものではない。画像処理ユニット3の機能と血球画像表示ユニット4の機能とを併せて具備する1つの装置によって、染色異常及びランプ光量異常を検出し、また、血球画像及び染色異常又はランプ光量異常の通知情報を表示する構成としてもよい。
【0119】
また、上述した実施の形態においては、血球画像に基づいて白血球の分類を行った後に、染色異常及びランプ光量異常の検出を行う構成について述べたが、これに限定されるものではない。染色異常及びランプ光量異常の検出を行った後に、白血球の分類を行う構成としてもよい。また、この場合には、染色異常又はランプ光量異常が検出された場合に、その血球画像による白血球分類の処理を実行しない構成とすることも可能である。これにより、染色異常又はランプ光量異常により正常に白血球分類が行えないと推定できる場合に、白血球分類を行うことがなく、効率的に標本撮像装置を動作させることができる。
【0120】
また、上述した実施の形態においては、補正後の血球画像を用いて染色異常の検出を行う構成について述べたが、これに限定されるものではない。血球画像のゲイン補正の程度、即ち、補正における血球画像の各画素の輝度値の変化量に応じて基準値(閾値)を定め、補正前の血球画像の核の領域の特定の色成分(例えば緑)の輝度値を前記基準値と比較し、基準値以下となった場合には染色異常と判定する構成としてもよい。つまり、補正量が大きい場合には、補正前の血球画像はその全体において輝度値が低いため、基準値を低く設定し、補正量が小さい場合には、補正前の血球画像はその全体において輝度値が高いため、基準値を高く設定する。これにより、補正前の血球画像を用いても、適切に染色異常の検出を行うことが可能となる。
【0121】
また、上述した実施の形態においては、単一のコンピュータ3aにより画像処理プログラム34aの全ての処理を実行する構成について述べたが、これに限定されるものではなく、上述した画像処理プログラム34aと同様の処理を、複数の装置(コンピュータ)により分散して実行する分散システムとすることも可能である。
【0122】
また、上述した実施の形態においては、単一のコンピュータ4aにより血球画像表示プログラム44aの全ての処理を実行する構成について述べたが、これに限定されるものではなく、上述した血球画像表示プログラム44aと同様の処理を、複数の装置(コンピュータ)により分散して実行する分散システムとすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の標本撮像装置は、染色標本を撮像し、撮像することにより得られた画像に基づいて、染色標本の染色に関する異常又は撮像部に関する異常を検出する標本撮像装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】実施の形態に係る標本撮像装置の構成を示すブロック図。
【図2】実施の形態に係る顕微鏡ユニットの一部を示す斜視図。
【図3】実施の形態に係る画像処理ユニットの構成を示すブロック図。
【図4A】実施の形態に係る検体データベースの構造を示す模式図。
【図4B】実施の形態に係る血球データベースの構造を示す模式図。
【図5】実施の形態に係る血球画像表示ユニットの構成を示すブロック図。
【図6】血球画像の登録動作における顕微鏡ユニットの動作手順を示すフローチャート。
【図7A】血球画像の登録動作における画像処理ユニットの動作手順を示すフローチャート(前半)。
【図7B】血球画像の登録動作における画像処理ユニットの動作手順を示すフローチャート(後半)。
【図8】白血球検出におけるスライドガラス上の検体のスキャニングのパターンを説明する図。
【図9A】白血球検出用のラインセンサの視野を説明する図。
【図9B】白血球検出用のラインセンサの信号波形を示す図。
【図10A】正常な染色が行われた場合の補正後の血球画像の例を示す図。
【図10B】染色異常が発生している場合の補正後の血球画像の例を示す図。
【図11A】正常なランプ光量における撮像により得られた補正前の血球画像の例を示す図。
【図11B】ランプ光量の低下が生じているときの撮像により得られた補正前の血球画像の例を示す図。
【図12A】ランプ光量異常の発生を通知するためのエラー画面を示す図。
【図12B】染色異常の発生を通知するためのエラー画面を示す図。
【図13A】血球画像の表示動作における血球画像表示ユニットの初期動作の手順を示すフローチャート。
【図13B】血球画像の表示動作における画像処理ユニットの検体情報送信動作の手順を示すフローチャート。
【図14A】血球画像の表示動作における血球画像表示ユニットの画像表示動作の手順を示すフローチャート。
【図14B】血球画像の表示動作における画像処理ユニットの血球画像送信動作の手順を示すフローチャート。
【図15】血球画像レビュー画面の一例を示す図。
【符号の説明】
【0125】
1 標本撮像装置
2 顕微鏡ユニット
213 CCDカメラ
214 白血球検出部
216 制御部
217,218 通信インタフェース
3 画像処理ユニット
3a コンピュータ
31a CPU
31b ROM
31c RAM
31d ハードディスク
31g,31h,31i 通信インタフェース
32 画像表示部
34a 画像処理プログラム
35 血球画像フォルダ
4 血球画像表示ユニット
4a コンピュータ
41 本体
41a CPU
41b ROM
41c RAM
41d ハードディスク
41g 通信インタフェース
41h 画像出力インタフェース
42 画像表示部
44a 血球画像表示プログラム
5 スライドガラス
6A,6B,6C,6D 血球画像
61 白血球像
61a,62a 核領域
61b 細胞質領域
63,64 背景領域
7 血球画像レビュー画面
71 血球画像表示領域
75 ヘルプボタン
81 エラーリスト表示領域
82 詳細情報表示領域
DB1 検体データベース
DB2 血球データベース
E1,E2 ヘルプ画面
【技術分野】
【0001】
本発明は、染色標本を撮像し、撮像することにより得られた画像に基づいて、染色標本の染色に関する異常又は撮像部に関する異常を検出する標本撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、染色された血液塗抹標本を顕微鏡で拡大して撮像し、得られた撮像画像を解析して血球の分類及び計数等を行う標本撮像装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、同一検体について、普通染色(メイギムザ染色)を施した標本を撮像した画像から白血球、赤血球の分類を行い、超生体染色を施した標本を撮像した画像から網赤血球計数を行い、ペルオキシダーゼ染色を施した標本を撮像した画像から異常白血球検出を行う細胞分類装置が開示されている。かかる細胞分類装置は、全染色標本のデータが正常範囲に入っていれば、この検体を正常検体グループに分類し、同一検体の各種染色データが正常範囲に入らなければ、異常血球が検出されたか否か、又は不明球がある値以上存在するか否か等で精密分析を必要とするか否かを判定する。また、この細胞分類装置は、正常とも異常とも判断しかねる混在領域にあるような疑陽性検体については、さらに分析精度を上げるための精密な自動再検査を実施する。
【特許文献1】特開昭62−135767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような標本撮像装置にあっては、血液塗抹標本の染色が正常に行われていなければ、血球の分類及び計数等を正常に行うことができない。しかしながら、特許文献1に開示されている細胞分類装置にあっては、染色異常によって染色標本のデータに異常が発生している場合に、かかる染色標本のデータの異常が染色異常によるものであることを特定することはできない。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、染色標本の染色に関する異常を検出することが可能な標本撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の標本撮像装置は、染色された細胞を含む染色標本を撮像し、前記染色標本に含まれる細胞に関する細胞画像を取得する撮像部と、前記撮像部により得られる細胞画像に基づいて、前記染色標本の染色に関する異常を検出する染色異常検出手段と、を備える。
【0007】
この態様においては、前記標本撮像装置が、前記染色標本の染色に関する異常の検出に用いられる基準値を記憶する記憶部をさらに備え、前記染色異常検出手段が、前記細胞画像に基づいて細胞の特徴を示す特徴値を取得し、前記基準値と前記特徴値とを比較することにより、前記染色標本の染色に関する異常を検出するように構成されていることが好ましい。
【0008】
また、上記態様においては、前記撮像部が、所定の色成分の輝度を含む細胞画像を取得するように構成されており、前記染色異常検出手段が、前記特徴値として、前記細胞画像の細胞部分における所定の色成分の輝度に関する情報を取得するように構成されていることが好ましい。
【0009】
また、上記態様においては、前記標本撮像装置が、染色された血液細胞を含む前記染色標本から白血球を検出する白血球検出手段をさらに備え、前記撮像部が、前記白血球検出手段により検出された白血球に関する細胞画像を取得するように構成されていることが好ましい。
【0010】
また、上記態様においては、前記標本撮像装置が、前記細胞画像に含まれる白血球を複数の種類に分類する血球分類手段をさらに備え、前記染色異常検出手段が、前記血球分類手段により所定の種類に分類された白血球に基づいて、前記染色標本の染色に関する異常を検出するように構成されていることが好ましい。
【0011】
また、上記態様においては、前記血球分類手段が、前記細胞画像に含まれる白血球を、好中球を含む複数の種類に分類するように構成されており、前記染色異常検出手段が、前記血球分類手段により好中球と分類された前記細胞画像に含まれる白血球に基づいて、前記染色標本の染色に関する異常を検出するように構成されていることが好ましい。
【0012】
また、上記態様においては、前記標本撮像装置が、前記細胞画像に含まれる白血球の核の領域を識別する核識別手段をさらに備え、前記染色異常検出手段が、前記核識別手段により核と識別された領域に基づいて前記特徴値を取得し、取得された前記特徴値に基づいて、前記染色標本の染色に関する異常を検出するように構成されていることが好ましい。
【0013】
また、上記態様においては、前記撮像部が、複数の細胞画像を取得するように構成されており、前記染色異常検出手段が、前記複数の細胞画像のそれぞれに基づいて、複数の前記特徴値を取得し、取得された複数の前記特徴値と前記記憶部に記憶されている前記基準値とに基づいて、前記染色標本の染色に関する異常を検出するように構成されていることが好ましい。
【0014】
また、上記態様においては、前記染色異常検出手段が、取得された複数の前記特徴値の平均値を取得し、取得された平均値と前記記憶部に記憶されている前記基準値とを比較することにより、前記染色標本の染色に関する異常を検出するように構成されていることが好ましい。
【0015】
また、上記態様においては、前記標本撮像装置が、前記撮像部により得られる細胞画像に基づいて、前記撮像部に関する異常を検出する撮像異常検出手段をさらに備えることが好ましい。
【0016】
また、上記態様においては、前記標本撮像装置が、表示部と、前記染色異常検出手段により前記染色標本の染色に関する異常が検出された場合に、前記染色標本の染色に関する異常が発生したことを示す染色異常発生情報を前記表示部に表示させる表示制御手段と、をさらに備えることが好ましい。
【0017】
本発明の他の態様の標本撮像装置は、染色された染色標本を撮像し、前記染色標本に含まれる細胞に関する細胞画像を取得する撮像部と、前記撮像部により得られる細胞画像に基づいて、前記撮像部に関する異常を検出する撮像異常検出手段と、を備える。
【0018】
この態様においては、前記撮像部が、光源を具備し、前記撮像異常検出手段が、前記撮像部により得られる細胞画像に基づいて、前記光源に関する異常を検出するように構成されていることが好ましい。
【0019】
また、上記態様においては、前記撮像異常検出手段が、前記細胞画像における細胞以外の領域に関する特徴値を取得し、取得された特徴値に基づいて、前記撮像部に関する異常を検出するように構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る標本撮像装置によれば、染色標本の染色に関する異常を検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0022】
本実施の形態は、染色された血液塗抹標本を顕微鏡により拡大して撮像し、得られた血球画像を処理することにより、血液塗抹標本の染色に関する異常を検出する標本撮像装置である。
【0023】
[標本撮像装置の構成]
図1は、本実施の形態に係る標本撮像装置の構成を示すブロック図である。なお、図1は装置の構成を模式的に示すものであり、分かり易くするためにセンサ及びスライドカセット等の配置が実際とは若干異なっている。例えば、図1では、WBC検出用のセンサとオートフォーカス用のセンサとが上下に配置されているが、実際には後出する図2に示されるように、両センサは略同一平面内に配置されている。
【0024】
標本撮像装置1は、オートフォーカスにより焦点が合わされた血液塗抹標本の拡大画像を撮像する顕微鏡ユニット2と、撮像された画像を処理して血液中の白血球の分類を行い、当該白血球の分類毎の計数を行う画像処理ユニット3と、この画像処理ユニット3に接続されており、撮像された画像及び分析結果等を表示する血球画像表示ユニット4とを備えている。なお、前記画像処理ユニット3と血球画像表示ユニット4とは、別体とせずに、両者を一体化してもよい。また、標本撮像装置1の近傍には、図示しない塗抹標本作製装置(例えば、シスメックス社製の塗抹標本作製装置SP−1000i)が配置されており、この塗抹標本作製装置によって作製された血液塗抹標本が顕微鏡ユニット2に自動的に供給されるように構成されている。
【0025】
<顕微鏡ユニット2の構成>
図2は、顕微鏡ユニット2の一部を示す斜視図である。顕微鏡ユニット2は、XYステージ21上に載置されたスライドガラス5にうすく引き伸ばされて塗布された血液の像を拡大する顕微鏡のレンズ系の一部を構成する対物レンズ22を備えている。標本(上面に血液が塗抹されたスライドガラス5)を保持する前記XYステージ21は、XYステージ駆動回路23(図1参照)により駆動制御される駆動部(図示せず)により前後左右(X方向及びY方向)に移動自在とされる。また、前記対物レンズ22は、対物レンズ駆動回路24により駆動制御される駆動部(図示せず)により上下(Z方向)に移動自在とされている。
【0026】
スライドガラス5は、複数枚積み重ねられた状態でスライドカセット25内に収容されており、このスライドカセット25は、カセット搬送駆動回路26により駆動制御される搬送部(図示せず)によって搬送される。前記XYステージ21には、スライドガラス5の長手方向の両端付近2箇所を把持し得るチャック部27(図2参照)が、所定位置に停止している前記スライドカセット25内に収容されているスライドガラス5に対して進退自在に設けられている。そして、前記チャック部27をスライドカセット25に向けて進出させ、当該チャック部27先端部に形成されている開閉自在の爪部27aの開閉操作によりスライドガラス5を把持し、ついでチャック部27を後退させることにより、スライドカセット25からスライドガラス5を引き出して、XYステージ21の所定の位置に配置することができる。
【0027】
図1に戻り、スライドガラス5の下方には光源であるランプ28が配設されており、このランプ28からの光は、スライドガラス5上の血液を通過し、さらに光路上に配置されたハーフミラー29及び干渉フィルタ210を経由して、複数の画素が一列に並んだオートフォーカス用のラインセンサ211、複数の画素が一列に並んだ白血球(WBC)検出用のセンサ212、及びCCDカメラ213に入射する。白血球検出用のセンサ212には、FPGA又はASIC等で構成された白血球検出部214が接続され、センサ212の出力信号が白血球検出部214に与えられるようになっている。また、オートフォーカス用のセンサ211には、FPGA又はASIC等で構成されたフォーカス算定部215が接続され、センサ211の出力信号がフォーカス算定部215に与えられるようになっている。センサ212の入射光に応じた出力信号に基づいて、白血球検出部214により白血球の検出が行われ、またセンサ211の入射光に応じた出力信号に基づいて、フォーカス算定部215でオートフォーカスの動作に用いられる情報が算定され、かかる情報に基づいてオートフォーカスの動作が行われる。
【0028】
また、顕微鏡ユニット2は、制御部216及び通信インタフェース217,218を備えている。制御部216はCPU及びメモリを備え、XYステージ駆動回路23、対物レンズ駆動回路24、カセット搬送駆動回路26、白血球検出部214、フォーカス算定部215、通信インタフェース217及び218にそれぞれ通信可能に接続されており、かかる制御部216がメモリに記憶された制御プログラムを実行することにより、上述した各機構が制御されるようになっている。
【0029】
通信インタフェース217は、Ethernet(登録商標)インタフェースである。かかる通信インタフェース217は、通信ケーブルを介して画像処理ユニット3にデータ通信可能に接続されている。また、通信インタフェース218は、A/D変換器213aを介してCCDカメラ213に接続されており、また通信ケーブルを介して画像処理ユニット3に接続されている。CCDカメラ213から出力された画像信号(アナログ信号)は、A/D変換器213aによりA/D変換され、A/D変換器213aから出力された画像データ(デジタルデータ)が通信インタフェース218に与えられ、画像処理ユニット3へ送信される。
【0030】
また、顕微鏡ユニット2は、2次元バーコードリーダ219を備えている。スライドガラス5のフロスト部には、検体IDを示す2次元バーコードが印字されており、顕微鏡ユニット2に導入されたスライドガラス5の2次元バーコードが、2次元バーコードリーダ219により読み取られる。このようにして読み取られた検体IDは、制御部216に与えられる。
【0031】
<画像処理ユニット3の構成>
次に、画像処理ユニット3の構成について説明する。図3は、画像処理ユニット3の構成を示すブロック図である。画像処理ユニット3は、コンピュータ3aによって実現される。図3に示すように、コンピュータ3aは、本体31と、画像表示部32と、入力部33とを備えている。本体31は、CPU31a、ROM31b、RAM31c、ハードディスク31d、読出装置31e、入出力インタフェース31f、通信インタフェース31g、及び画像出力インタフェース31jを備えており、CPU31a、ROM31b、RAM31c、ハードディスク31d、読出装置31e、入出力インタフェース31f、通信インタフェース31g、通信インタフェース31h、通信インタフェース31i、及び画像出力インタフェース31jは、バス31kによって接続されている。
【0032】
CPU31aは、RAM31cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するような画像処理プログラム34aを当該CPU31aが実行することにより、コンピュータ3aが画像処理ユニット3として機能する。
【0033】
ROM31bは、マスクROM、PROM、EPROM、又はEEPROM等によって構成されており、CPU31aに実行されるコンピュータプログラム及びこれに用いるデータ等が記録されている。
【0034】
RAM31cは、SRAMまたはDRAM等によって構成されている。RAM31cは、ハードディスク31dに記録されている画像処理プログラム34aの読み出しに用いられる。また、CPU31aがコンピュータプログラムを実行するときに、CPU31aの作業領域として利用される。
【0035】
ハードディスク31dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU31aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。後述する画像処理プログラム34aも、このハードディスク31dにインストールされている。
【0036】
さらにハードディスク31dには、血球画像を保存するための血球画像フォルダ35が設けられている。かかる血球画像フォルダ35には、検体毎にフォルダが設けられており、さらにそのフォルダ内に後述するようにして得られた血球画像が格納される。検体毎に設けられた各フォルダには、検体IDを含むフォルダ名が付けられており、検体IDから対応するフォルダを特定することが可能となっている。また、この血球画像フォルダ35は血球画像表示ユニット4との共有設定がなされており、血球画像表示ユニット4から当該血球画像フォルダ35に格納されているファイルにアクセスすることが可能となっている。
【0037】
また、ハードディスク31dには、検体に関する情報を格納するための検体データベースDB1と、画像処理によって白血球を分類した結果を格納するための血球データベースDB2とが設けられている。図4Aは、検体データベースDB1の構造を示す模式図であり、図4Bは、血球データベースDB2の構造を示す模式図である。検体データベースDB1には、検体IDを格納する検体フィールドF11と、図示しない多項目自動血球分析装置による分析の結果、白血球スキャッタグラム異常と判定されたか否かを示す情報(白血球スキャッタグラム異常フラグ)、NRBC(有核赤血球)スキャッタグラム異常と判定されたか否かを示す情報(NRBCスキャッタグラム異常フラグ)、好中球減少異常と判定されたか否かを示す情報(好中球減少異常フラグ)等、各種の異常と判定された情報を格納するためのフィールドF12、F13、F14、…と、標本撮像装置1による測定日を格納するためのフィールドF15と、染色異常か否かを示す情報(染色異常フラグ)を格納する染色異常フィールドF16と、ランプ光量異常か否かを示す情報(ランプ光量異常フラグ)を格納する光量異常フィールドF17とが含まれている。白血球スキャッタグラム異常フィールドF12、NRBCスキャッタグラム異常フィールドF13、好中球減少異常フィールドF14、染色異常フィールドF16、光量異常フィールドF17等の異常を示す情報を格納するフィールドには、異常が発生していない場合には「0」が、異常が発生している場合には「1」が格納される。なお、図を簡単にするため省略しているが、検体データベースDB1には、多項目自動血球分析装置による分析結果(白血球数、赤血球数等)の数値データを格納するためのフィールドも設けられている。また、検体データベースDB1には、患者氏名を格納するフィールド、病棟を特定する情報を格納するフィールド、年齢を格納するフィールド、顕微鏡ユニット2による白血球カウント数Nを格納するフィールド等も設けられている。
【0038】
血球データベースDB2は、検体毎に設けられており、各血球データベースDB2には、検体IDを示すデータが含まれている。これにより、検体IDから対応する血球データベースDB2を特定することが可能である。かかる血球データベースDB2には、白血球を特定する白血球IDを格納する白血球IDフィールドF21と、白血球の分類結果を格納する種類フィールドF22と、分類不能であった白血球を特定するための情報を格納する再確認対象フィールドF23とが設けられている。再確認対象フィールドF23には、白血球分類が正常に行われている場合には「0」が、分類不能であり、再確認の対象とされる場合には「1」が格納される。
【0039】
読出装置31eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体34に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体34には、コンピュータを画像処理ユニット3として機能させるための画像処理プログラム34aが格納されており、コンピュータ3aが当該可搬型記録媒体34から画像処理プログラム34aを読み出し、当該画像処理プログラム34aをハードディスク31dにインストールすることが可能である。
【0040】
なお、前記画像処理プログラム34aは、可搬型記録媒体34によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ3aと通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記画像処理プログラム34aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ3aがアクセスして、当該コンピュータプログラムをダウンロードし、これをハードディスク31dにインストールすることも可能である。
【0041】
また、ハードディスク31dには、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のマルチタスクオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施の形態に係る画像処理プログラム34aは当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0042】
入出力インタフェース31fは、例えばUSB,IEEE1394,又はRS-232C等のシリアルインタフェース、SCSI,IDE,又はIEEE1284等のパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース31fには、キーボード及びマウスからなる入力部33が接続されており、ユーザが当該入力部33を使用することにより、コンピュータ3aにデータを入力することが可能である。また、入出力インタフェース31fには、顕微鏡ユニット2に設けられたCCDカメラ213が接続されており、CCDカメラ213の撮像により得られた画像を取り込むことが可能である。
【0043】
通信インタフェース31g,31hは、それぞれEthernet(登録商標)インタフェースである。通信インタフェース31gはLANを介して血球画像表示ユニット4に接続されている。コンピュータ3aは、通信インタフェース31gにより、所定の通信プロトコルを使用して当該LANに接続された血球画像表示ユニット4及び図示しないホストコンピュータとの間でデータの送受信が可能である。また、通信インタフェース31hは、通信ケーブルを介して顕微鏡ユニット2の通信インタフェース217とデータ通信可能に接続されている。
【0044】
通信インタフェース31iは、通信ケーブルを介して顕微鏡ユニット2の通信インタフェース218とデータ通信可能に接続されている。これにより、CCDカメラ213による撮像画像が通信インタフェース31iにより受信されるようになっている。
【0045】
画像出力インタフェース31jは、LCDまたはCRT等で構成された画像表示部32に接続されており、CPU31aから与えられた画像データに応じた映像信号を画像表示部32に出力するようになっている。画像表示部32は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0046】
<血球画像表示ユニット4の構成>
血球画像表示ユニット4は、コンピュータにより構成されている。また、かかる血球画像表示ユニット4は、画像処理ユニット3とLANを介して接続されており、画像処理ユニット3のハードディスク31dに設けられた血球画像フォルダ35内の血球画像を読み出し、表示することが可能である。
【0047】
図5は、血球画像表示ユニット4の構成を示すブロック図である。血球画像表示ユニット4は、コンピュータ4aによって実現される。図5に示すように、コンピュータ4aは、本体41と、画像表示部42と、入力部43とを備えている。本体41は、CPU41a、ROM41b、RAM41c、ハードディスク41d、読出装置41e、入出力インタフェース41f、通信インタフェース41g、及び画像出力インタフェース41hを備えており、CPU41a、ROM41b、RAM41c、ハードディスク41d、読出装置41e、入出力インタフェース41f、通信インタフェース41g、及び画像出力インタフェース41hは、バス41iによって接続されている。
【0048】
ハードディスク41dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU41aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。後述する血球画像表示プログラム44aも、このハードディスク41dにインストールされている。
【0049】
読出装置41eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体44に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体44には、コンピュータを血球画像表示ユニット4として機能させるための血球画像表示プログラム44aが格納されており、コンピュータ4aが当該可搬型記録媒体44から血球画像表示プログラム44aを読み出し、当該血球画像表示プログラム44aをハードディスク41dにインストールすることが可能である。
【0050】
入出力インタフェース41fは、例えばUSB,IEEE1394,SAS,SATA,又はRS-232C等のシリアルインタフェース、SCSI,IDE,又はIEEE1284等のパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース41fには、キーボード及びマウスからなる入力部43が接続されており、ユーザが当該入力部43を使用することにより、コンピュータ4aにデータを入力することが可能である。
【0051】
通信インタフェース41gは、Ethernet(登録商標)インタフェースである。通信インタフェース41gはLANを介して画像処理ユニット3に接続されている。コンピュータ4aは、通信インタフェース41gにより、所定の通信プロトコルを使用して当該LANに接続された画像処理ユニット3及び図示しないホストコンピュータとの間でデータの送受信が可能である。
【0052】
なお、血球画像表示ユニット4のその他の構成は、上述した画像処理ユニット3の構成と同様であるので、その説明を省略する。
【0053】
[標本撮像装置の動作]
次に、本実施の形態に係る標本撮像装置1の動作について説明する。
【0054】
<血球画像の登録動作>
まず、標本撮像装置1が血球を撮像し、血球画像を記憶する血球画像の登録動作について説明する。標本撮像装置1の動作に先立ち、血液塗抹標本の作製が行われる。標本撮像装置1の近傍に配置された血液塗抹標本作製装置は、採血管に収容された検体を吸引し、この検体をスライドガラスに滴下して引き延ばし、当該スライドガラスを染色液に浸すことにより、血液塗抹標本を作製する。なお、血液塗抹標本作製装置によって標本に対して施される染色は、メイグリュンワルドギムザ染色(メイギムザ染色)、ライトギムザ染色、又はライト単染色とされる。このようにして作製された血液塗抹標本(スライドガラス5)は、血液塗抹標本作製装置から顕微鏡ユニット2へ自動供給される。
【0055】
図6は、血球画像の登録動作における顕微鏡ユニット2の動作手順を示すフローチャートであり、図7A及び図7Bは、血球画像の登録動作における画像処理ユニット3の動作手順を示すフローチャートである。顕微鏡ユニット2は、血液塗抹標本作製装置1からスライドガラス5を受け付けると、これを図示しないセンサによって検出する(ステップS11)。制御部216により実行される制御プログラムはイベントドリブン型のプログラムであり、顕微鏡ユニット2の制御部216においては、血液塗抹標本作製装置1からスライドガラス5を受け付けるイベントが発生すると、ステップS12の処理が呼び出される。
【0056】
ステップS12において、制御部216は、受け付けたスライドガラス5を収容するスライドカセット25を所定のバーコード読み取り位置まで搬送させ、2次元バーコードリーダ219に検体バーコードを読み取らせる(ステップS12)。次に、制御部216は、ステップS2において取得した検体IDを通信インタフェース217に画像処理ユニット3へ送信させる(ステップS13)。
【0057】
顕微鏡ユニット2から送信された検体IDは、画像処理ユニット3の通信インタフェース31hにより受信される(図7AのステップS21)。画像処理ユニット3のCPU31aにより実行される画像処理プログラム34aはイベントドリブン型のプログラムであり、CPU31aにおいては、検体IDを受信するイベントが発生すると、ステップS22の処理が呼び出される。
【0058】
ステップS22において、CPU31aは、通信インタフェース31gに、受信した検体IDを含むオーダ要求データをホストコンピュータへ送信させる(ステップS22)。ホストコンピュータから送信されるオーダには、検体ID、患者氏名、患者性別、病棟情報、コメント、多項目自動血球分析装置の分析結果(白血球数、赤血球数等の数値データ)、多項目自動血球分析装置により検出された各種の異常情報(白血球スキャッタグラム異常フラグ、NRBCスキャッタグラム異常フラグ、好中球減少異常フラグ、好中球増加異常フラグ、単球増加異常フラグ、好酸球増加異常フラグ、好塩基球増加異常フラグ、白血球減少異常フラグ、白血球増加異常フラグ、赤芽球増加異常フラグ等)、及び白血球のカウント数Nのデータが含まれている。CPU31aは、オーダ受信を待機し(ステップS23においてNO)、オーダを受信すると(ステップS23においてYES)、通信インタフェース31hにより、かかるオーダに含まれる顕微鏡ユニット2による白血球のカウント数Nを含む測定開始指示データを顕微鏡ユニット2へ送信し(ステップS24)、解析した血球画像の数を示す変数iに1をセットする(ステップS25)。
【0059】
ここで、顕微鏡ユニット2は、測定開始指示データを待機している(図6のステップS14においてNO)。画像処理ユニット3から送信された測定開始指示データが、顕微鏡ユニット2の通信インタフェース217により受信された場合には(ステップS14においてYES)、制御部216は、スライドカセット25を所定位置まで搬送させ、所定位置に停止しているスライドガラス5をチャック部27に把持させ、次いでチャック部27を後退させることによりスライドカセット25からスライドガラスを引き出させ、XYステージ21の所定の位置(撮像位置)にセットさせる(ステップS15)。また、制御部216は、撮像回数を示す変数jに1をセットする(ステップS16)。
【0060】
次いで、スライドガラス5に塗布された血液中の白血球の検出が行われる(ステップS17)。この検出は前述したセンサ212を用いて行われる。センサ212はラインセンサであり、その視野は400μm程度である。図8は、白血球検出におけるスライドガラス上の検体のスキャニングのパターンを説明する図である。制御部216は、センサ212がスライドガラス5上を略ジグザグ状に長手方向の一端から他端に向けてスキャンするように、前記XYステージ21がX方向及びY方向に移動させる(図8参照)。前記略ジグザグ状の走査の、スライドガラス5長手方向の間隔Dは、検出漏れを防ぎつつ走査効率を上げるという観点より、通常、300〜500μm程度であり、また、前記走査のスライドガラス5幅方向の寸法Hは、スライドガラス5の幅が一般に26mm程度であることから、通常、14〜18mm程度である。
【0061】
赤血球は光の赤色成分をあまり吸収しないが、白血球の核は光の赤色成分を多く吸収することから、この赤色成分を検出することにより白血球と赤血球とを容易に区別することができる。図9Aは、ラインセンサ212の視野を説明する図であり、図9Bは、ラインセンサ212の信号波形を示す図である。図9Aにおいては、ラインセンサ212の視野V内に白血球WBCが存在する場合を示しており、この場合、ラインセンサ212により検出された信号の赤色成分は、図9Bに示されるように、白血球WBCが存在する箇所において基準値S以下となる。この現象を利用して、血液中の白血球を検出することができる。なお、信号の赤色成分が基準値S以下となる幅Wを検出することで、この信号を発する部分が白血球の核であるか否かのチェックが行われる。
【0062】
次いで、制御部216は、オートフォーカス動作を実行する(ステップS18)。図2に示すように、スライドガラス5及び対物レンズ22を通過した光は、プリズムミラー29aにより方向変換され、さらにハーフミラー29によってCCDカメラ213に向かう光と、センサ211、212に向かう光とに分けられる。オートフォーカス用のラインセンサ211は、2つのラインセンサ211a及び211bから構成されている。
【0063】
図2に示すように、2つのオートフォーカス用のラインセンサ211a、211bのうち一方のラインセンサ211aは、合焦位置(焦点が合っている位置)よりも前側(光路上対物レンズに近づく側)に配置されており、他方のラインセンサ211bは合焦位置よりも後側(光路上対物レンズから離れる側)に配置されている。そして、かかる2つのラインセンサの出力信号の差分積分値に基づいて、対物レンズの焦点がスライドガラス上の検体に合うように、対物レンズの位置が調節される。
【0064】
次に、制御部216は、通信インタフェース218にCCDカメラ213の画像の取り込み及び送信を指示し、これにより、ステップS17で検出された白血球の画像が取り込まれ(ステップS19)、かかる血球画像が画像処理ユニット3へ送信される(ステップS110)。その後、制御部216は、要求された白血球のカウント数に到達したか否か、即ち、j≧Nであるか否かを判定し(ステップS111)、j<Nの場合には(ステップS111においてNO)、jを1インクリメントし(ステップS112)、処理をステップS17に戻し、再度白血球の検出を実行する。一方、ステップS111においてj≧Nの場合には(ステップS111においてYES)、制御部216は、処理を終了する。
【0065】
上記のステップS25の後、CPU31aは、血球画像の受信を待機している(図7AのステップS26においてNO)。顕微鏡ユニット2から送信された血球画像が、画像処理ユニット3の通信インタフェース31hにより受信された場合には(ステップS26においてYES)、CPU31aは、受信した血球画像をハードディスク31dに記憶する(ステップS27)。ステップS27の処理においては、受信した血球画像に対応する白血球IDが生成され、その白血球IDを含むファイル名の画像データとして、前記血球画像が記憶される。次に、CPU31aは、血球画像の補正処理を行う(ステップS28)。かかる補正処理においては、血球画像の背景部分(血球像以外の部分)の輝度の平均値が所定値(例えば、225)になるように、血球画像の全画素のRGB成分の輝度値が線形補正される。このような補正後の血球画像は、補正前の血球画像とは別にハードディスク31dに記憶される(ステップS29)。この補正後の血球画像も、白血球IDを含むファイル名(補正前の血球画像とは異なるファイル名)が付けられる。
【0066】
次に、CPU31aは、補正後の血球画像における細胞質及び核の領域を特定する(ステップS210)。図10Aは、補正後の血球画像の一例を示す図である。図10Aに示すように、補正後の血球画像6Aには、白血球像61が含まれている。染色された白血球においては、核及び細胞質が異なる色を呈する。また、白血球の核及び細胞質の色は、赤血球及び背景の色ともそれぞれ異なっている。したがって、ステップS210の処理では、白血球像61のRGB値を利用して、白血球像61に含まれる核の領域61a及び細胞質の領域61bが特定される。
【0067】
次に、CPU31aは、補正後の血球画像に基づき白血球の各種特徴パラメータを算出する(ステップS211)。この特徴パラメータとしては、画像の色信号(G、B、R)に基づいて求めることができる白血球の核の面積、核数、凹凸、色調、及び濃度(むら)、白血球の細胞質の面積、色調、及び濃度(むら)、並びに前記核と細胞質との面積比及び濃度比などをあげることができる。
【0068】
次に、CPU31aは、取得した特徴パラメータを用いて、白血球の種類を分類する(ステップS212)。具体的には、例えば白血球のいくつかの特徴パラメータについて、順次、各パラメータについて予め定めておいた判定基準値と比較することで、白血球の種類を除々に絞り込んでいくことができる。このようにして、撮像された白血球は、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、好中球(桿状、分葉状)といった成熟白血球の分類、芽球、幼若顆粒球、異型リンパ球といった未熟白血球の分類、赤芽球の分類がなされる。
【0069】
上記のように、本実施の形態に係る標本撮像装置1にあっては、血球画像の色情報を利用して白血球の分類が行われる。したがって、血液塗抹標本に染色異常が発生している場合には、正常に染色された場合とは異なる色の白血球像を含む血球画像が得られることとなる。また、ランプの光量低下が発生している場合には、上記の補正処理によって染色の影響を受けない背景部分が特定の輝度値となるように補正され、ランプ光量が正常な場合とは異なる色の白血球像を含む血球画像が得られることとなる。
【0070】
このことを図を用いて説明する。図10Aは、正常な染色が行われた場合の補正後の血球画像の例を示す図であり、図10Bは、染色異常が発生している場合の補正後の血球画像の例を示す図である。メイギムザ染色、ライトギムザ染色、及びライト単染色を実施したときにおいて、正常な染色が行われた場合の血球画像6Aと、染色異常が発生している場合の血球画像6Bとでは、特に核領域の色が異なっており、染色異常の場合の血球画像6Bの核領域62aは、正常な染色が行われた場合の血球画像6の核領域61aに比べて色が淡い。また、図10A及び図10Bには示していないが、過度に染色されることにより、核領域の色が正常染色の場合の核領域よりも濃くなり、これによって正常な分類が行われないこともある。したがって、核領域61aの特定の色成分(本実施の形態においては緑成分)の輝度値が正常範囲内に収まっていない場合に、染色異常が発生していると判断することができる。
【0071】
図11Aは、正常なランプ光量における撮像により得られた補正前の血球画像の例を示す図であり、図11Bは、ランプ光量の低下が生じているときの撮像により得られた補正前の血球画像の例を示す図である。正常なランプ光量における補正前の血球画像6Cと、ランプ光量異常が発生している場合の補正前の血球画像6Dとでは、特に背景領域の輝度が異なっている。この背景領域は、染色の影響を受けないが、ランプ光量の影響を受ける領域である。ランプ光量異常が発生している場合の血球画像6Dの背景領域63は、ランプ光量異常が発生していない場合の血球画像6Cの背景領域64に比べて輝度が低い。したがって、補正前血球画像の背景領域の特定の色成分(本実施の形態においては緑成分)の輝度値が基準値より低い場合に、ランプ光量異常が発生していると判断することができる。
【0072】
上記のような染色異常及びランプ光量異常を検出するために、本実施の形態においては画像処理ユニット3が以下の処理を実行する。まず、CPU31aは、補正前の血球画像における背景領域、即ち、補正前の血球画像のうち血球領域以外の領域の各画素のG値(緑成分の輝度値)を取得し、取得したG値の平均値を算出し、得られた値(以下、「背景G値」という。)をRAM31cに記憶する(ステップS213)。
【0073】
次に、CPU31aは、ステップS212における分類の結果、この血球画像に係る白血球が好中球と分類されたか否かを判定する(ステップS214)。当該白血球が好中球と分類された場合には(ステップS214においてYES)、補正後の血球画像における白血球の核の領域の各画素のG値を取得し、取得したG値の平均値を算出し、得られた値(以下、「核G値」という。)をRAM31cに記憶する(ステップS215)。CPU31aは、この後、ステップS216へと処理を進める。
【0074】
一方、ステップS214において、この血球画像に係る白血球が好中球と分類されなかった場合には(ステップS214においてNO)、CPU31aは、ステップS216へと処理を移す。
【0075】
ステップS216において、CPU31aは、要求された白血球のカウント数に到達したか否か、即ち、i≧Nであるか否かを判定し(ステップS216)、i<Nの場合には(ステップS216においてNO)、iを1インクリメントし(ステップS217)、処理をステップS26に戻し、再度血球画像の受信を待機する。
【0076】
一方、ステップS216においてi≧Nの場合には(ステップS216においてYES)、CPU31aは、RAM31cに記憶された背景G値の平均値(以下、「平均背景G値」という。)BAを算出し(ステップS218)、また、RAM31cに記憶された核G値の平均値(以下、「平均核G値」という。)NAを算出する(ステップS219)。
【0077】
次に、CPU31aは、平均背景G値BAが所定の基準値TBより大きいか否かを判定し(ステップS220)、平均背景G値BAが基準値TB以下である場合には(ステップS220においてNO)、RAM31cに設けられたランプ光量異常のフラグに1をセットし(ステップS221)、画像表示部32にランプ光量異常の発生を通知するためのエラー画面を表示し(ステップS222)、ステップS224へと処理を移す。
【0078】
図12Aは、ランプ光量異常の発生を通知するためのエラー画面を示す図である。ランプ光量異常が発生した場合には、図12Aに示すようなエラー画面E1が表示される。エラー画面E1には、エラー情報を表示するエラーリスト表示領域81と、そのエラーに対処するための詳細情報を表示する詳細情報表示領域82と、画面を閉じるために使用されるOKボタン83とが含まれている。ランプ光量異常の場合のヘルプ画面E1には、エラーリスト表示領域81に「ランプ光量不足異常」と表示され、詳細情報表示領域82に「1)ランプの交換時期です。サービスマンに連絡してください。」というメッセージが表示される。
【0079】
一方、平均背景G値BAが基準値TBより大きい場合には(ステップS220においてYES)、CPU31aは、ランプ光量異常のフラグに0をセットし(ステップS223)、ステップS224へと処理を移す。
【0080】
ステップS224において、CPU31aは、平均核G値NAが所定の下限基準値TN1より大きく、且つ、所定の上限基準値TN2より小さいか否かを判定し(ステップS224)、平均核G値NAが下限基準値TN1以下であるか、又は、平均核G値NAが上限基準値TN2以上である場合には(ステップS224においてNO)、RAM31cに設けられた染色異常のフラグに1をセットし(ステップS225)、画像表示部32に染色異常の発生を通知するためのエラー画面を表示し(ステップS226)、ステップS228へと処理を移す。
【0081】
図12Bは、染色異常の発生を通知するためのエラー画面を示す図である。染色異常が発生した場合には、図12Bに示すようなエラー画面E2が表示される。エラー画面E1と同様に、エラー画面E2には、エラー情報を表示するエラーリスト表示領域81と、そのエラーに対処するための詳細情報を表示する詳細情報表示領域82と、画面を閉じるために使用されるOKボタン83とが含まれている。染色異常の場合には、エラーリスト表示領域81に「染色異常」と表示され、詳細情報表示領域82に「1)スライドの塗抹標本が正常であるか確認してください。」「2)再度測定する場合は、カセットにスライドを挿入し、連携ユニットに挿入してください。」というメッセージが表示される。
【0082】
上記のようなエラー画面E1,E2は、ユーザによる入力部43の操作によって、OKボタン83が選択された場合に、表示が終了される。
【0083】
一方、平均核G値NAが下限基準値TN1より大きく、且つ、上限基準値TN2より小さい場合には(ステップS224においてYES)、CPU31aは、染色異常のフラグに0をセットし(ステップS227)、ステップS228へと処理を移す。
【0084】
ステップS228において、CPU31aは、上述のようにして得られた検体に関する情報及び分類結果をハードディスク31dの検体データベースDB1及び血球データベースDB2に登録し(ステップS228)、処理を終了する。
【0085】
<血球画像の表示動作>
図13Aは、血球画像の表示動作における血球画像表示ユニット4の初期動作の手順を示すフローチャートであり、図13Bは、血球画像の表示動作における画像処理ユニット3の検体情報送信動作の手順を示すフローチャートである。ユーザは、コンピュータ4aの入力部43を操作することにより、血球画像表示プログラム44aの実行を指示する。コンピュータ4aのCPU41aは、この指示を受け、血球画像表示プログラム44aを実行する。これにより、コンピュータ4aが血球画像表示ユニット4として機能する。
【0086】
血球画像表示プログラム44aの起動直後は、ユーザ名及びパスワードの入力を促すログイン入力画面が表示される(図13AにおけるステップS31)。このログイン入力画面においてユーザがユーザ名及びパスワードを入力する(ステップS32)。血球画像表示ユニット4のCPU41aにより実行される血球画像表示プログラム44aはイベントドリブン型のプログラムであり、CPU41aにおいては、ユーザ名及びパスワードの入力を受け付けるイベントが発生すると、ステップS33の処理が呼び出される。
【0087】
ステップS33において、CPU41aは、ユーザ認証処理を実行する。かかるユーザ認証が失敗した場合には(ステップS34においてNO)、CPU41aは、処理を終了する。上記のログイン処理によるユーザ認証が成功した場合には(ステップS34においてYES)、CPU41aは、通信インタフェース41gに、その日が測定日とされている検体情報の要求データを画像処理ユニット3へ送信させる(ステップS35)。
【0088】
血球画像表示ユニット4から送信された要求データは、画像処理ユニット3の通信インタフェース31hにより受信される(図13BのステップS41)。CPU31aにおいては、前記要求データを受信するイベントが発生すると、ステップS42の処理が呼び出される。
【0089】
ステップS42において、CPU31aは、測定日がその日である検体情報を、検体データベースDB1から取得する(ステップS42)。次に、CPU231aは、通信インタフェース31gに、取得した検体情報を血球画像表示ユニット4へ送信させ(ステップS43)、処理を終了する。
【0090】
血球画像表示ユニット4のCPU41aは、検体情報の要求データを送信した後、検体情報の受信を待機する(図13AのステップS36においてNO)。画像処理ユニット3から送信された検体情報が、血球画像表示ユニット4の通信インタフェース41gにより受信された場合には(ステップS36においてYES)、測定進捗画面(図示せず)を表示し(ステップS37)、処理を終了する。かかる測定進捗画面では、複数の検体に関する検体情報がリスト表示される。かかる検体情報のリストには、「染色異常」及び「ランプ光量異常」の領域が設けられており、染色異常が検出された検体の染色異常の領域には、染色異常発生を示す印が表示され、ランプ光量異常が検出された検体のランプ光量異常の領域には、ランプ光量異常を示す印が表示される。また、この測定進捗画面においては、ユーザがリスト表示されている検体情報の1つを選択することが可能であり、1つの検体情報を選択した上で所定の操作(例えば、マウスの左ボタンのダブルクリック)を行うことにより、この検体に関する血球画像の表示指示を与えることが可能である。
【0091】
図14Aは、血球画像の表示動作における血球画像表示ユニット4の画像表示動作の手順を示すフローチャートであり、図14Bは、血球画像の表示動作における画像処理ユニット3の血球画像送信動作の手順を示すフローチャートである。血球画像表示ユニット4では、測定進捗画面が表示されている状態において、上記のように1つの検体に関する血球画像の表示指示を受け付けるイベントが発生すると(ステップS51)、ステップS52の処理が呼び出される。
【0092】
ステップS52において、CPU41aは、通信インタフェース41gに、指示を受けた検体の検体IDを含む血球画像送信要求データを画像処理ユニット3へ送信させる(ステップS52)。
【0093】
血球画像表示ユニット4から送信された要求データは、画像処理ユニット3の通信インタフェース31hにより受信される(図14BのステップS61)。CPU31aにおいては、前記要求データを受信するイベントが発生すると、ステップS62の処理が呼び出される。
【0094】
ステップS62において、CPU31aは、前記検体IDに対応する血球データベースDB2から、分類結果情報を取得する(ステップS62)。この分類結果情報には、白血球を特定する白血球IDと、白血球の分類結果の種類(単球、好中球、好塩基球、好酸球、リンパ球等)と、分類不能か否かを示す情報とが含まれている。また、分類結果情報においては、白血球の種類情報又は分類不能情報に白血球IDが対応付けられている。即ち、分類結果情報は、白血球IDから、その白血球の種類が何であるか、又は、その白血球が分類不能であったかを特定可能な情報とされている。
【0095】
次に、CPU31aは、通信インタフェース31gに、取得した分類結果情報を血球画像表示ユニット4へ送信させる(ステップS63)。
【0096】
血球画像表示ユニット4のCPU41aは、分類結果情報の要求データを送信した後、分類結果情報の受信を待機する(図14AのステップS53においてNO)。画像処理ユニット3から送信された分類結果情報が、血球画像表示ユニット4の通信インタフェース41gにより受信された場合には(ステップS53においてYES)、例えば、特定の種類の白血球の画像のみを表示する等の表示条件にしたがって、その分類結果情報に含まれる白血球IDから表示すべき血球画像に対応する白血球IDを特定し(ステップS54)、通信インタフェース41gに、特定した白血球IDを含む画像送信要求データを画像処理ユニット3へ送信させる(ステップS55)。なお、ステップS54においては、1又は複数の白血球IDが特定され、上記画像送信要求データには、特定された全ての白血球IDが含まれる。
【0097】
画像処理ユニット3のCPU31aは、分類結果情報を送信した後、画像送信要求データの受信を待機する(図14BのステップS64においてNO)。血球画像表示ユニット4から送信された要求データが、画像処理ユニット3の通信インタフェース31hにより受信された場合には(ステップS64においてYES)、CPU31aは、ハードディスク31dの血球画像フォルダ35の中の前記検体IDに対応するフォルダから、画像送信要求データに含まれる白血球IDに対応する血球画像(補正後の血球画像)を読み出し(ステップS65)、通信インタフェース31gに、読み出した血球画像を血球画像表示ユニット4へ送信させ(ステップS66)、処理を終了する。
【0098】
血球画像表示ユニット4のCPU41aは、画像送信要求データを送信した後、血球画像の受信を待機する(図14AのステップS56においてNO)。画像処理ユニット3から送信された血球画像が、血球画像表示ユニット4の通信インタフェース41gにより受信された場合には(ステップS56においてYES)、血球画像レビュー画面を表示し(ステップS57)、処理を終了する。
【0099】
図15は、血球画像レビュー画面の一例を示す図である。血球画像レビュー画面7には、1又は複数の血球画像を表示する血球画像表示領域71と、患者情報を表示する患者情報表示領域72と、分類された血球の種類毎に、計数結果を表示するカウント値表示領域73と、多項目自動血球分析装置による分析結果を表示する分析結果表示領域74とが含まれている。血球画像表示領域には、受信された血球画像を縮小した画像が一覧表示される。各縮小画像には、血球種が文字列(単球は「MONO」、好中球は「NEUT」、好酸球は「EO」、好塩基球は「BASO」、リンパ球は「LYMP」等)で表示される。
【0100】
以上のような構成とすることにより、スライドガラス5の染色異常を検出することが可能となり、染色異常により血球の分類不良が生じた場合に、その分類不良の原因が染色異常であることを特定することが可能となる。また、本実施の形態に係る標本撮像装置にあっては、撮像に用いられるランプの光量異常を検出することが可能であり、ランプ光量異常により血球の分類不良が生じた場合に、その分類不良の原因がランプ光量異常であることを特定することが可能となる。撮像用のランプは、経時的に劣化して徐々に光量が落ちたり、突然発光しなくなったりする消耗部品である。したがって、ランプ光量異常を検出することで、ユーザが適時にランプの交換を行うことができる。
【0101】
また、白血球の血球画像において、核領域の各画素のG値(核G値)は、その白血球の特徴を示しており、正常に染色された白血球の血球画像と、染色異常の白血球の血球画像とでは、かかる核G値が異なっている。したがって、このような核G値を用いることにより、精度よく染色異常の検出を行うことが可能となる。
【0102】
また、白血球は核を含んでおり、メイギムザ染色、ライトギムザ染色、及びライト単染色では、白血球の核が主に染色される。したがって、白血球を検出し、検出された白血球の血球画像を取得し、染色による影響が大きく現れる白血球の血球画像を染色異常の検出に用いることにより、精度よく染色異常の検出を行うことができる。
【0103】
また、白血球には、単球、好中球、好酸球、好塩基球、及びリンパ球の種類があり、種類が異なる白血球では、その核の形態が異なり、核の染色の状態も異なる。したがって、特定の種類の白血球(好中球)の血球画像に基づいて染色異常を検出することにより、精度よく染色異常の検出を行うことが可能となる。
【0104】
また、本実施の形態に係る標本撮像装置1においては、好中球の血球画像を用いて染色異常の検出を行っている。健常者の血液中に含まれる白血球の中では好中球が最も数が多いため、このように好中球の血球画像を用いることで、他の種類の血球画像を用いる場合に比べて安定して染色異常の検出を行うことが可能となる。
【0105】
また、本実施の形態に係る標本撮像装置1においては、白血球の核の領域を血球画像から識別し、この核の領域に基づいて染色異常の検出を行っている。上記のように、メイギムザ染色、ライトギムザ染色、及びライト単染色では、白血球の核が主に染色されるため、血球画像の中の核の領域から取得した核G値に基づいて染色異常を検出することにより、精度よく染色異常の検出を行うことが可能となる。
【0106】
また、本実施の形態に係る標本撮像装置1においては、血球画像の核の領域の複数の画素から特徴値である核G値を取得し、複数の血球画像の核G値に基づいて染色異常の検出を行っている。核の領域に含まれる複数の画素の核G値には、突発的に他の画素よりも高い値又は低い値を示すものが存在することがある。したがって、上記のように複数の核G値を用いることで、正確な染色異常の検出を安定して行うことができる。
【0107】
また、本実施の形態に係る標本撮像装置1においては、取得された複数の核G値の平均値に基づいて染色異常の検出を行っている。同一検体の白血球の核G値が、正規分布に従うことが分かっているような場合、平均値を用いることで比較的変動が少なく、母集団(同一検体中の白血球の核G値)の特徴を表す値として用いることができる。
【0108】
また、本実施の形態に係る標本撮像装置1においては、血球画像の背景領域に基づいて、撮像に用いられるランプの光量異常を検出する。血球画像の背景領域は、染色によって受ける影響が少なく、また、ランプが一定の光量を発している場合には、複数の血球画像における背景領域は同程度の輝度に保たれる。したがって、かかる背景領域(血球以外の領域)を用いることにより、正確にランプの光量異常を検出することができる。
【0109】
また、スライドガラス5の染色異常が検出された場合には、上述したヘルプ画面によって染色異常の発生がユーザに通知されるため、ユーザが血液塗抹標本作製装置の装置状態又は染色液を確認することで迅速にかかる異常に対処することが可能となり、早期に染色異常を解消することが可能となる。
【0110】
また、ランプの光量異常が検出された場合には、上述したヘルプ画面によってランプ光量異常の発生がユーザに通知されるため、ユーザがランプ交換を実施したり、サービスマンに連絡することでかかる異常に対処することが可能となり、早期にランプ光量異常を解消することが可能となる。
【0111】
(その他の実施の形態)
なお、上述した実施の形態においては、血液塗抹標本を撮像して血球画像を取得する標本撮像装置について述べたが、これに限定されるものではない。人体から採取した組織を薄くスライスしてスライドガラスに貼り付け、染色液により染色することによって得られた標本を撮像し、細胞像を含む細胞画像を取得する標本撮像装置としてもよい。
【0112】
また、上述した実施の形態においては、標本の染色異常と、撮像に用いられるランプの光量異常とのそれぞれを検出可能な構成について述べたが、これに限定されるものではない。標本の染色異常を検出可能であるが、ランプ光量異常を検出することができない構成としてもよいし、ランプ光量異常を検出可能であるが、標本の染色異常を検出することができない構成としてもよい。
【0113】
また、上述した実施の形態においては、平均核G値NAが所定の下限基準値TN1より大きく、且つ、所定の上限基準値TN2より小さい場合に、染色異常と判定する構成について述べたが、これに限定されるものではない。上限基準値を設けず、平均核G値NAが下限基準値TN1以下である場合に、染色異常と判定する構成としてもよい。
【0114】
また、上述した実施の形態においては、血球画像の核の領域のG値を平均した平均核G値を染色の特徴を示す特徴パラメータとして用いて、染色異常を検出する構成について述べたが、これに限定されるものではない。平均核G値ではなく、血球画像の核の領域のB値又はR値を平均した値を特徴パラメータとして用いて染色異常を検出する構成としてもよいし、血球画像の核の領域に含まれる1つの画素のG値、B値又はR値を特徴パラメータとして用いて染色異常を検出する構成としてもよい。
【0115】
また、上述した実施の形態においては、血球画像の背景の領域のG値を平均した平均背景G値をランプ光量の特徴を示す特徴パラメータとして用いて、ランプ光量異常を検出する構成について述べたが、これに限定されるものではない。平均背景G値ではなく、血球画像の背景の領域のB値又はR値を平均した値を特徴パラメータとして用いてランプ光量異常を検出する構成としてもよいし、血球画像の背景の領域に含まれる1つの画素のG値、B値又はR値を特徴パラメータとして用いてランプ光量異常を検出する構成としてもよい。
【0116】
また、上述した実施の形態においては、好中球の血球画像を用いて、染色異常を検出する構成について述べたが、これに限定されるものではない。好中球ではなく、単球、好酸球、好塩基球、リンパ球等の他の種類の白血球の血球画像を用いて、染色異常を検出する構成としてもよい。ただし、健常者の血液中に含まれる白血球の中では好中球が最も数が多いため、好中球の血球画像を用いることで、他の種類の血球画像を用いる場合に比べて安定して染色異常の検出を行うことが可能となる。また、赤血球全体が染色液により染色されることから、血球画像の赤血球領域を用いて染色異常を検出する構成とすることもできる。
【0117】
また、上述した実施の形態においては、コンピュータが画像処理プログラムを実行することにより、画像処理ユニット3として機能して、染色異常及びランプ光量異常の検出を行う構成について述べたが、これに限定されるものではない。画像処理プログラムと同様の処理を実行することが可能なFPGA又はASIC等の専用ハードウェアにより、染色異常及びランプ光量異常の検出処理を実行する構成としてもよい。
【0118】
また、上述した実施の形態においては、画像処理ユニット3とは独立して設けられた血球画像表示ユニット4によって、血球画像及び染色異常又はランプ光量異常の通知情報を表示する構成について述べたが、これに限定されるものではない。画像処理ユニット3の機能と血球画像表示ユニット4の機能とを併せて具備する1つの装置によって、染色異常及びランプ光量異常を検出し、また、血球画像及び染色異常又はランプ光量異常の通知情報を表示する構成としてもよい。
【0119】
また、上述した実施の形態においては、血球画像に基づいて白血球の分類を行った後に、染色異常及びランプ光量異常の検出を行う構成について述べたが、これに限定されるものではない。染色異常及びランプ光量異常の検出を行った後に、白血球の分類を行う構成としてもよい。また、この場合には、染色異常又はランプ光量異常が検出された場合に、その血球画像による白血球分類の処理を実行しない構成とすることも可能である。これにより、染色異常又はランプ光量異常により正常に白血球分類が行えないと推定できる場合に、白血球分類を行うことがなく、効率的に標本撮像装置を動作させることができる。
【0120】
また、上述した実施の形態においては、補正後の血球画像を用いて染色異常の検出を行う構成について述べたが、これに限定されるものではない。血球画像のゲイン補正の程度、即ち、補正における血球画像の各画素の輝度値の変化量に応じて基準値(閾値)を定め、補正前の血球画像の核の領域の特定の色成分(例えば緑)の輝度値を前記基準値と比較し、基準値以下となった場合には染色異常と判定する構成としてもよい。つまり、補正量が大きい場合には、補正前の血球画像はその全体において輝度値が低いため、基準値を低く設定し、補正量が小さい場合には、補正前の血球画像はその全体において輝度値が高いため、基準値を高く設定する。これにより、補正前の血球画像を用いても、適切に染色異常の検出を行うことが可能となる。
【0121】
また、上述した実施の形態においては、単一のコンピュータ3aにより画像処理プログラム34aの全ての処理を実行する構成について述べたが、これに限定されるものではなく、上述した画像処理プログラム34aと同様の処理を、複数の装置(コンピュータ)により分散して実行する分散システムとすることも可能である。
【0122】
また、上述した実施の形態においては、単一のコンピュータ4aにより血球画像表示プログラム44aの全ての処理を実行する構成について述べたが、これに限定されるものではなく、上述した血球画像表示プログラム44aと同様の処理を、複数の装置(コンピュータ)により分散して実行する分散システムとすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の標本撮像装置は、染色標本を撮像し、撮像することにより得られた画像に基づいて、染色標本の染色に関する異常又は撮像部に関する異常を検出する標本撮像装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】実施の形態に係る標本撮像装置の構成を示すブロック図。
【図2】実施の形態に係る顕微鏡ユニットの一部を示す斜視図。
【図3】実施の形態に係る画像処理ユニットの構成を示すブロック図。
【図4A】実施の形態に係る検体データベースの構造を示す模式図。
【図4B】実施の形態に係る血球データベースの構造を示す模式図。
【図5】実施の形態に係る血球画像表示ユニットの構成を示すブロック図。
【図6】血球画像の登録動作における顕微鏡ユニットの動作手順を示すフローチャート。
【図7A】血球画像の登録動作における画像処理ユニットの動作手順を示すフローチャート(前半)。
【図7B】血球画像の登録動作における画像処理ユニットの動作手順を示すフローチャート(後半)。
【図8】白血球検出におけるスライドガラス上の検体のスキャニングのパターンを説明する図。
【図9A】白血球検出用のラインセンサの視野を説明する図。
【図9B】白血球検出用のラインセンサの信号波形を示す図。
【図10A】正常な染色が行われた場合の補正後の血球画像の例を示す図。
【図10B】染色異常が発生している場合の補正後の血球画像の例を示す図。
【図11A】正常なランプ光量における撮像により得られた補正前の血球画像の例を示す図。
【図11B】ランプ光量の低下が生じているときの撮像により得られた補正前の血球画像の例を示す図。
【図12A】ランプ光量異常の発生を通知するためのエラー画面を示す図。
【図12B】染色異常の発生を通知するためのエラー画面を示す図。
【図13A】血球画像の表示動作における血球画像表示ユニットの初期動作の手順を示すフローチャート。
【図13B】血球画像の表示動作における画像処理ユニットの検体情報送信動作の手順を示すフローチャート。
【図14A】血球画像の表示動作における血球画像表示ユニットの画像表示動作の手順を示すフローチャート。
【図14B】血球画像の表示動作における画像処理ユニットの血球画像送信動作の手順を示すフローチャート。
【図15】血球画像レビュー画面の一例を示す図。
【符号の説明】
【0125】
1 標本撮像装置
2 顕微鏡ユニット
213 CCDカメラ
214 白血球検出部
216 制御部
217,218 通信インタフェース
3 画像処理ユニット
3a コンピュータ
31a CPU
31b ROM
31c RAM
31d ハードディスク
31g,31h,31i 通信インタフェース
32 画像表示部
34a 画像処理プログラム
35 血球画像フォルダ
4 血球画像表示ユニット
4a コンピュータ
41 本体
41a CPU
41b ROM
41c RAM
41d ハードディスク
41g 通信インタフェース
41h 画像出力インタフェース
42 画像表示部
44a 血球画像表示プログラム
5 スライドガラス
6A,6B,6C,6D 血球画像
61 白血球像
61a,62a 核領域
61b 細胞質領域
63,64 背景領域
7 血球画像レビュー画面
71 血球画像表示領域
75 ヘルプボタン
81 エラーリスト表示領域
82 詳細情報表示領域
DB1 検体データベース
DB2 血球データベース
E1,E2 ヘルプ画面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
染色された細胞を含む染色標本を撮像し、前記染色標本に含まれる細胞に関する細胞画像を取得する撮像部と、
前記撮像部により得られる細胞画像に基づいて、前記染色標本の染色に関する異常を検出する染色異常検出手段と、
を備える、標本撮像装置。
【請求項2】
前記染色標本の染色に関する異常の検出に用いられる基準値を記憶する記憶部をさらに備え、
前記染色異常検出手段は、前記細胞画像に基づいて細胞の特徴を示す特徴値を取得し、前記基準値と前記特徴値とを比較することにより、前記染色標本の染色に関する異常を検出するように構成されている、請求項1に記載の標本撮像装置。
【請求項3】
前記撮像部は、所定の色成分の輝度を含む細胞画像を取得するように構成されており、
前記染色異常検出手段は、前記特徴値として、前記細胞画像の細胞部分における所定の色成分の輝度に関する情報を取得するように構成されている、請求項2に記載の標本撮像装置。
【請求項4】
染色された血液細胞を含む前記染色標本から白血球を検出する白血球検出手段をさらに備え、
前記撮像部は、前記白血球検出手段により検出された白血球に関する細胞画像を取得するように構成されている、請求項1乃至3の何れかに記載の標本撮像装置。
【請求項5】
前記細胞画像に含まれる白血球を複数の種類に分類する血球分類手段をさらに備え、
前記染色異常検出手段は、前記血球分類手段により所定の種類に分類された白血球に基づいて、前記染色標本の染色に関する異常を検出するように構成されている、請求項4に記載の標本撮像装置。
【請求項6】
前記血球分類手段は、前記細胞画像に含まれる白血球を、好中球を含む複数の種類に分類するように構成されており、
前記染色異常検出手段は、前記血球分類手段により好中球と分類された前記細胞画像に含まれる白血球に基づいて、前記染色標本の染色に関する異常を検出するように構成されている、請求項5に記載の標本撮像装置。
【請求項7】
前記細胞画像に含まれる白血球の核の領域を識別する核識別手段をさらに備え、
前記染色異常検出手段は、前記核識別手段により核と識別された領域に基づいて前記特徴値を取得し、取得された前記特徴値に基づいて、前記染色標本の染色に関する異常を検出するように構成されている、請求項4乃至6の何れかに記載の標本撮像装置。
【請求項8】
前記撮像部は、複数の細胞画像を取得するように構成されており、
前記染色異常検出手段は、前記複数の細胞画像のそれぞれに基づいて、複数の前記特徴値を取得し、取得された複数の前記特徴値と前記記憶部に記憶されている前記基準値とに基づいて、前記染色標本の染色に関する異常を検出するように構成されている、請求項2又は3に記載の標本撮像装置。
【請求項9】
前記染色異常検出手段は、取得された複数の前記特徴値の平均値を取得し、取得された平均値と前記記憶部に記憶されている前記基準値とを比較することにより、前記染色標本の染色に関する異常を検出するように構成されている、請求項8に記載の標本撮像装置。
【請求項10】
前記撮像部により得られる細胞画像に基づいて、前記撮像部に関する異常を検出する撮像異常検出手段をさらに備える、請求項1乃至9の何れかに記載の標本撮像装置。
【請求項11】
表示部と、
前記染色異常検出手段により前記染色標本の染色に関する異常が検出された場合に、前記染色標本の染色に関する異常が発生したことを示す染色異常発生情報を前記表示部に表示させる表示制御手段と、
をさらに備える、請求項1乃至10の何れかに記載の標本撮像装置。
【請求項12】
染色された染色標本を撮像し、前記染色標本に含まれる細胞に関する細胞画像を取得する撮像部と、
前記撮像部により得られる細胞画像に基づいて、前記撮像部に関する異常を検出する撮像異常検出手段と、
を備える、標本撮像装置。
【請求項13】
前記撮像部は、光源を具備し、
前記撮像異常検出手段は、前記撮像部により得られる細胞画像に基づいて、前記光源に関する異常を検出するように構成されている、請求項12に記載の標本撮像装置。
【請求項14】
前記撮像異常検出手段は、前記細胞画像における細胞以外の領域に関する特徴値を取得し、取得された特徴値に基づいて、前記撮像部に関する異常を検出するように構成されている、請求項12又は13に記載の標本撮像装置。
【請求項1】
染色された細胞を含む染色標本を撮像し、前記染色標本に含まれる細胞に関する細胞画像を取得する撮像部と、
前記撮像部により得られる細胞画像に基づいて、前記染色標本の染色に関する異常を検出する染色異常検出手段と、
を備える、標本撮像装置。
【請求項2】
前記染色標本の染色に関する異常の検出に用いられる基準値を記憶する記憶部をさらに備え、
前記染色異常検出手段は、前記細胞画像に基づいて細胞の特徴を示す特徴値を取得し、前記基準値と前記特徴値とを比較することにより、前記染色標本の染色に関する異常を検出するように構成されている、請求項1に記載の標本撮像装置。
【請求項3】
前記撮像部は、所定の色成分の輝度を含む細胞画像を取得するように構成されており、
前記染色異常検出手段は、前記特徴値として、前記細胞画像の細胞部分における所定の色成分の輝度に関する情報を取得するように構成されている、請求項2に記載の標本撮像装置。
【請求項4】
染色された血液細胞を含む前記染色標本から白血球を検出する白血球検出手段をさらに備え、
前記撮像部は、前記白血球検出手段により検出された白血球に関する細胞画像を取得するように構成されている、請求項1乃至3の何れかに記載の標本撮像装置。
【請求項5】
前記細胞画像に含まれる白血球を複数の種類に分類する血球分類手段をさらに備え、
前記染色異常検出手段は、前記血球分類手段により所定の種類に分類された白血球に基づいて、前記染色標本の染色に関する異常を検出するように構成されている、請求項4に記載の標本撮像装置。
【請求項6】
前記血球分類手段は、前記細胞画像に含まれる白血球を、好中球を含む複数の種類に分類するように構成されており、
前記染色異常検出手段は、前記血球分類手段により好中球と分類された前記細胞画像に含まれる白血球に基づいて、前記染色標本の染色に関する異常を検出するように構成されている、請求項5に記載の標本撮像装置。
【請求項7】
前記細胞画像に含まれる白血球の核の領域を識別する核識別手段をさらに備え、
前記染色異常検出手段は、前記核識別手段により核と識別された領域に基づいて前記特徴値を取得し、取得された前記特徴値に基づいて、前記染色標本の染色に関する異常を検出するように構成されている、請求項4乃至6の何れかに記載の標本撮像装置。
【請求項8】
前記撮像部は、複数の細胞画像を取得するように構成されており、
前記染色異常検出手段は、前記複数の細胞画像のそれぞれに基づいて、複数の前記特徴値を取得し、取得された複数の前記特徴値と前記記憶部に記憶されている前記基準値とに基づいて、前記染色標本の染色に関する異常を検出するように構成されている、請求項2又は3に記載の標本撮像装置。
【請求項9】
前記染色異常検出手段は、取得された複数の前記特徴値の平均値を取得し、取得された平均値と前記記憶部に記憶されている前記基準値とを比較することにより、前記染色標本の染色に関する異常を検出するように構成されている、請求項8に記載の標本撮像装置。
【請求項10】
前記撮像部により得られる細胞画像に基づいて、前記撮像部に関する異常を検出する撮像異常検出手段をさらに備える、請求項1乃至9の何れかに記載の標本撮像装置。
【請求項11】
表示部と、
前記染色異常検出手段により前記染色標本の染色に関する異常が検出された場合に、前記染色標本の染色に関する異常が発生したことを示す染色異常発生情報を前記表示部に表示させる表示制御手段と、
をさらに備える、請求項1乃至10の何れかに記載の標本撮像装置。
【請求項12】
染色された染色標本を撮像し、前記染色標本に含まれる細胞に関する細胞画像を取得する撮像部と、
前記撮像部により得られる細胞画像に基づいて、前記撮像部に関する異常を検出する撮像異常検出手段と、
を備える、標本撮像装置。
【請求項13】
前記撮像部は、光源を具備し、
前記撮像異常検出手段は、前記撮像部により得られる細胞画像に基づいて、前記光源に関する異常を検出するように構成されている、請求項12に記載の標本撮像装置。
【請求項14】
前記撮像異常検出手段は、前記細胞画像における細胞以外の領域に関する特徴値を取得し、取得された特徴値に基づいて、前記撮像部に関する異常を検出するように構成されている、請求項12又は13に記載の標本撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図15】
【公開番号】特開2010−78377(P2010−78377A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244880(P2008−244880)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
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