説明

標的された部位特異的薬物送達組成物およびその使用

【課題】薬学的薬剤をインビボで標的された部位に送達するための物質の新規組成物を提供すること;診断超音波の使用における特異的な部位への薬学的薬剤の送達の方法を提供すること;診断超音波と組み合わせる場合、アルブミンまたはオロソムコイド−アルブミンペルフルオロカーボン含有微小気泡の使用について、血漿結合薬物を含む現在利用可能な薬物の有効性を増大させる方法を提供すること。
【解決手段】特定の組織部位に生物学的活性薬剤を送達する方法であって、タンパク質カプセル化し不溶性ガスを充填した微小気泡の溶液を形成する工程であって、該微小気泡が該生物学的薬剤に結合される、工程;該溶液を動物に投与する工程;および該生物学的薬剤が該部位に放出されるように、該組織部位を超音波に曝露する工程、を包含する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、生物活性物質の送達のための新しいおよび改良された薬学的組成物および方法に関する。本発明の方法および組成物は、いくつかの薬剤とともに使用され得、そして生物学的に活性な物質の部位特異的送達を達成し得る。これは、薬物、特に標的された器官で治療濃度を達成する点で問題に悩まされるオリゴヌクレオチドのような薬剤での、より低い用量および改良された効能を可能にし得る。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
薬物送達技術は、薬物の利用可能性を増大させ、薬物用量を減少させ、そしてその後の薬物で誘導される副作用を減少させるために、すべての薬物治療の処方に用いられる。これらの技術は、体における薬物の放出を制御し、調節し、そして標的するために作用する。この目的は、より頻度の少ない薬物投与を提供すること、全身循環においてまたは特定の標的器官部位での薬物の一定および持続的治療レベルを維持すること、望ましくない副作用の減少を達成すること、および所望の治療利益を認識するために必要とされる量および用量濃度の減少を促進することであった。
【0003】
今日では、薬物送達システムは、タンパク質、多糖、合成ポリマー、赤血球、DNA、およびリポソームに基づく薬物キャリアを包含している。モノクローナル抗体、遺伝子治療ベクター、タキソールのような抗ガン薬物、ウイルスベースの薬物、ならびにODNおよびポリヌクレオチドのような新しい世代の生物学的薬剤は、送達に関していくつかの問題を提示している。実際、薬物送達は、これらの薬剤の主流の治療使用を達成することへの第1のハードルであり得、その薬剤の最初の可能性は限定されていないようであるが、治療パラメータが十分な利益の認識を防いでいる。
【0004】
ヌクレアーゼ耐性を与えるように化学的に改変された合成オリゴデオキシリボヌクレオチド(ODN)は、薬物治療への根本的に異なるアプローチを表す。今日までの最も普通の適用は、特異的に標的されたmRNA配列に相補的な配列を有するアンチセンスODNである。アンチセンスオリゴヌクレオチドの治療へのアプローチは、ODNが、翻訳プロセスまたは初期プロセシング事象における機械的介在を生じる、著しく簡単および特異的な薬物設計概念に関する。このアプローチの利点は、比較的低用量および最小の標的されない副作用で反映されるべき遺伝子特異的作用についての可能性である。
【0005】
ポリヌクレオチドのホスホロチオエートアナログは、非架橋リガンドの1つが硫黄であるキラルヌクレオチド間結合を有する。ホスホロチオエートアナログは、現在、インビトロおよびインビボの両方を含む生物学的研究に最も普通に用いられるアナログである。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの最も明らかな不利は、十分な量の高品質の物質の調整物の高い費用およびタンパク質の非特異的結合を含む。従って、アンチセンスアプローチの最初の利点(低用量および最小副作用)は、期待はずれである。
【0006】
オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドに関する薬物送達の努力は、2つの重要なチャレンジに焦点を合わせている;細胞中へのオリゴヌクレオチドのトランスフェクションおよびインビボでのオリゴヌクレオチドの分布の改変。
【0007】
トランスフェクションは、インビトロ細胞取り込みの増大を含む。取り込みを改良するための生物学的アプローチは、再構成したウイルスおよび偽ビリオンのようなウイルスベクター、ならびにリポソームのような化学薬剤を含んでいる。生体分布を改良するための方法は、カチオン性脂質のようなものに焦点を合わせており、これは、ほとんどの細胞の負の電荷を有する表面への正の電荷を有する脂質の誘引のため、薬物の細胞取り込みを増加させると仮定される。
【0008】
リポフェクションおよびDC-コレステロールリポソームは、カテーテルによって投与される場合、インビボで血管細胞への遺伝子移送を増大させると報告されている。カチオン性脂質DNA複合体もまた、気管内投与後マウスの肺への効果的な遺伝子移送を生じると報告されている。
【0009】
オリゴヌクレオチドのカチオン性リポソーム送達もまた達成されているが、肺および肝臓への変更された分布を経験した。アシアロ糖タンパク質ポリ(L)-リジン複合体は、制限された成功ならびにセンダイウイルスコートタンパク質含有リポソームとの複合体化を偶然見つけた。しかし、毒性および生体分布は重要な問題のままであった。
【0010】
上記のことから、生物学的薬剤、特にポリおよびオリゴヌクレオチドの送達のための標的された薬物送達システムが、その最大の可能性を達成するためにこれらの薬物に必要とされることが、理解され得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の1つの目的は、薬学的薬剤をインビボで標的された部位に送達するための物質の新規組成物を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、診断超音波の使用における特異的な部位への薬学的薬剤の送達の方法を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、診断超音波と組み合わせる場合、アルブミンまたはオロソムコイド−アルブミンペルフルオロカーボン含有微小気泡の使用について、血漿結合薬物を含む現在利用可能な薬物の有効性を増大させる方法を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、以下の本発明の説明から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によって以下が提供される:
1.特定の組織部位に生物学的活性薬剤を送達する方法であって、タンパク質カプセル化し不溶性ガスを充填した微小気泡の溶液を形成する工程であって、該微小気泡が該生物学的薬剤に結合される、工程;該溶液を動物に投与する工程;および該生物学的薬剤が該部位に放出されるように、該組織部位を超音波に曝露する工程、を包含する方法。
2.前記タンパク質が、アルブミン、ヒトγグロブリン、ヒトアポトランスフェリン、βラクトース、およびウレアーゼからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
3.前記不溶性ガスが、ペルフルオロメタン、ペルフルオロエタン、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、およびペルフルオロペンタンからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
4.前記ガスがペルフルオロプロパンである、項目3に記載の方法。
5.前記不溶性ガスがペルフルオロブタンである、項目3に記載の方法。
6.前記微小気泡が、以下の工程によって形成される、項目1に記載の方法:5重量%から50重量%のデキストロースで約2倍から約8倍に希釈された約2重量%から約10重量%のヒト血清アルブミンを含む水性溶液を混合する工程;および該溶液中で特定の部位で空洞を生成するために該溶液を超音波処理ホーンに曝露し、それによって約0.1から10ミクロンまでの直径の安定な微小気泡を生成する工程。
7.前記アルブミンのデキストロースでの希釈が3倍希釈である、項目6に記載の方法。
8.前記ヒト血清アルブミンが5重量%溶液である、項目6に記載の方法。
9.前記デキストロースが5重量%溶液である、項目6に記載の方法。
10.前記生物学的薬剤が、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、リボザイム、ナプロキセン、ピロキシカム、ワーファリン、フロセミド、フェニルブタゾン、バルプロ酸、スルフイソキサゾール、セフトリアキソン、およびミコナゾールからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
11.前記生物学的薬剤がオリゴヌクレオチドである、項目10に記載の方法。
12.前記オリゴヌクレオチドが、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドである、項目11に記載の方法。
13.前記ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドが、アンチセンスオリゴヌクレオチドである、項目12に記載の方法。
14.生物学的薬剤の標的部位への送達のための組成物であって、タンパク質カプセル化し不溶性ガスを充填した微小気泡を含む水性懸濁液、および該タンパク質に結合した生物学的薬剤を含む、組成物。
15.前記タンパク質が、アルブミン、ヒトγグロブリン、ヒトアポトランスフェリン、βラクトース、およびウレアーゼからなる群より選択される、項目14に記載の組成物。
16.前記タンパク質がアルブミンである、項目15に記載の組成物。
17.前記ガスが、ペルフルオロカーボンガスである、項目16に記載の組成物。
18.前記ガスが、ペルフルオロメタン、ペルフルオロエタン、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、およびペルフルオロペンタンからなる群より選択される、項目17に記載の組成物。
19.前記ガスがペルフルオロブタンである、項目18に記載の組成物。
20.前記ガスがペルフルオロプロパンである、項目19に記載の組成物。
21.前記タンパク質がアルブミンであり、そして前記生物学的薬剤が、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、リボザイム、ナプロキセン、ピロキシカム、ワーファリン、フロセミド、フェニルブタゾン、バルプロ酸、スルフイソキサゾール、セフトリアキソン、およびミコナゾールからなる群より選択される、項目20に記載の組成物。
22.前記生物学的薬剤がオリゴヌクレオチドである、項目21に記載の組成物。
23.核酸生物学的薬剤の標的部位への送達のための組成物であって、アルブミンカプセル化し不溶性ガスを充填した微小気泡、および該アルブミン微小気泡に結合した核酸生物学的薬剤を含む、組成物。
24.前記微小気泡が、0.1から10ミクロンの直径である、項目23に記載の組成物。
25.前記ガスがペルフルオロカーボンガスである、項目24に記載の組成物。
26.特定の組織部位に核酸生物学的活性薬剤を送達する方法であって、アルブミンカプセル化し不溶性ガスを充填した微小気泡の溶液を形成する工程であって、該微小気泡が該核酸生物学的薬剤に結合される、工程;該溶液を動物に投与する工程;および該核酸生物学的薬剤が放出されるように、該組織部位を超音波に曝露する工程、を包含する方法。
27.前記核酸生物学的薬剤が、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチ遺伝子オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチドプローブ、またはヌクレオチドベクター、ウイルスベクター、もしくはプラスミドからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
【0016】
発明の要旨
本発明によれば、新しい生物学的活性薬剤送達方法および組成物が開示される。組成物および方法は、オリゴヌクレオチドならびに伝統的薬剤のような送達問題に悩まされている治療剤または診断剤のような薬剤を送達するために使用され得、そして治療インデックスを増加させることおよびバイオアベイラビリティーを改良することのそれぞれの効果的用量を劇的に減少させ得る。これは、次に、薬物の細胞毒性および副作用を減少させ得る。さらに、本発明は、ヘパリン、ジルチアゼム、リドカイン、プロプラノロール(propanolol)、シクロスポリン、および血液プール活性化を必要とする化学療法剤のような他の血漿結合薬物の有効性を劇的に増大させ得る。例えば、ヘパリンの抗凝血特性が、最初に、超音波処理されたデキストロースアルブミンに曝露されたオロソムコイド標識したペルフルオロカーボンと医薬品とを合わせること、次いでこの組み合わせを静脈内に投与することによって、劇的に増強し得ることは、明らかである。
【0017】
本発明は、不溶性ガスをカプセル化したタンパク質殻微小気泡として形成されるフィルモゲンタンパク質(filmogenic protein)と生物学的薬剤との平衡結合を用いる。結合体は、水性懸濁液としての非経口投与のために設計される。目的の部位への注射されたボーラスの投与およびその進行の時間後、音波の形態でのエネルギーは、微小気泡を空洞にさせ;次いで、薬剤は放出されそして目的の器官または他の部位へ同時に送達される。
【0018】
図面の説明
図1は、PESDA微小気泡についての結合データのPS-ODNに対するLineweaver-Burkeプロットである。微小気泡への結合についての平衡解離定数K(2連で行った7濃度について計算した)は、1.76×10−5Mであった。これは、Srinivasan SKら,「Characterization of binding sites, extent of binding, and drug interactions of oligonucletides with albumin. Antisense Res. Devel. 5:131, 1995で既に報告される3.7〜4.8×10−5Mの溶液中のヒト血清アルブミンに対して、配列5'd(AACGTTGAGGGGCAT)-3'を有する15マーPS-ODNを結合することについてほぼ観察された範囲内である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
発明の詳細な説明
超音波イメージングは、治療手順における補助のための診断ツールとして長く使用されてきた。これは、音波エネルギーの波が、目的の領域に焦点を合わせそしてイメージを生じるように反映し得るという原理に基づく。一般的に、超音波変換器は、イメージされるべき領域に重なる体表面上に置かれ、そして音波を生成および受容することによって生成される超音波エネルギーに変換される。超音波エネルギーは、超音波イメージに翻訳される変換器に戻って反映される。反映されたエネルギーの量および特徴は、組織の音響的特性に依存し、そして音響生成性であるコントラスト剤が目的の領域で超音波エネルギーを生成しそして受容したイメージングを改良するするために優先的に使用される。コントラスト超音波器具使用の論議については、DeJongおよび「Acoustic Properties of Ultrasound Contrast Agents」, CIP-GEGEVENS Koninklijke BIBLIOTHEEK, Denhag (1993), 120頁以降を参照のこと。
【0020】
コントラストエコカルジオグラフィーは、心臓内構造の輪郭を描き、心弁の完全機能を評価し、そして心臓内血流側路を証明するために使用されている。心筋コントラストエコカルジオグラフィー(MCE)は、ヒトにおける冠血流量の予備を測定するために使用されている。MCEは、心筋灌流における相対的変化を評価しそして危険な領域を描くための安全かつ有用な技術であることが見いだされている。
【0021】
超音波振動はまた、種々の医薬品の吸収を増加させるために医学の分野での治療レベルで使用されている。例えば、日本国特許公開第115591/1977号では、医薬品の経皮吸収が超音波振動によって増大することを開示する。米国特許第4,953,565号および第5,007,438号はまた、超音波振動の補助による医薬品の経皮吸収の技術を開示する。米国特許第5,315,998号は、医薬品を拡散および透過させるために超音波エネルギーと組み合わせた、微小気泡を含む薬物治療のためのブースターを開示する。これは、結合した生物活性薬剤の放出を達成するために非常に短い時間の曝露で診断レベルの超音波を使用する本発明とは対照的に、20分までの間の治療レベルの超音波の使用を開示する。
【0022】
出願人は、伝統的診断超音波治療(例えば、0.1〜3.5メガパスカルの範囲のピークネガティブ圧力、および1.0〜40メガヘルツの範囲の伝導周波数を含む)およびコントラスト剤が、目的の正確な部位で治療薬剤を放出するために特異的に標的された送達適用として使用され得ることを証明した。生物学的薬剤の送達は、正確に標的され、そして目的の器官だけでなく器官上の正確な部位に薬剤を放出し得る。
【0023】
超音波の存在下で、微小気泡は空洞になりそして結合した生物活性薬剤を放出し、そのため標的部位に薬剤を送達する。
【0024】
本発明の薬学的組成物は、0.1〜10ミクロンの直径を有する不溶性ガスの微小気泡を含む液体懸濁液を含む。微小気泡は、液体中へガスの微小気泡を入れることによって形成される。微小気泡は、フルオロカーボンまたは硫黄ヘキサフルオリドガスのような種々の不溶性ガスから作成される。液体は、微小気泡を形成し得る任意の液体を含む。一般的に、任意の不溶性ガスが使用され得る。これは、体温でガス状でありそして非毒性でなければならない。ガスはまた、薬学的組成物が微小気泡を形成するために超音波処理される場合、平均サイズが約0.1と10ミクロンとの間の直径の安定な微小気泡を形成しなければならない。一般的に、ペルフルオロメタン、ペルフルオロエタン、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、およびペルフルオロペンタンのようなペルフルオロカーボンガスが好ましい。これらのガスのうち、ヒトにおける眼内注入のための証明された安全性のため、ペルフルオロプロパンおよびペルフルオロブタンが、本質的に好ましい。これらは、網膜剥離を安定にするために眼内注入のためのヒト研究で使用されている(WongおよびThompson, Opthamology 95:609-613)。眼内ペルフルオロプロパンでの処置は、この疾患の処置のためのケアの標準であると考えられる。ガスはまた、血管の内部雰囲気中に一旦拡散する窒素または酸素よりも低い拡散係数および血液溶解性を有さなければならない。
【0025】
硫黄ヘキサフルオリドのような他の不活性ガスもまた、窒素または酸素よりも低い拡散係数および血液溶解性を有するならば、本発明で有用である。本発明の薬剤は、超音波治療とともに、宿主への末梢投与のための薬学的有効用量で処方される。一般的に、このような宿主はヒト宿主であるが、イヌまたはウマのような他の哺乳動物宿主もまた、この治療を受けられ得る。
【0026】
本発明の薬学的液体組成物は、液体を使用し、ここでガス状の微小気泡はフィルモゲンタンパク質コーティングによって安定化される。適切なタンパク質には、アルブミン、ヒトγグロブリン、ヒトアポトランスフェリン、βラクトース、およびウレアーゼのような天然に存在するタンパク質が含まれる。好ましくは、本発明は、天然に存在するタンパク質を用いるが、合成タンパク質も使用され得る。特に好ましいのは、ヒト血清アルブミンである。
【0027】
先に記載したタンパク質と組み合わせて、薬学的に受容される糖(例えば、デキストロース)の混合物を含む水性溶液を使用することも好ましい。最も好ましい実施態様では、本発明の薬学的液体組成物は、市販のアルブミン(ヒト)(U.S.P.溶液(一般的に5重量%または25重量%の滅菌水性溶液として供給される))と、市販のデキストロース(静脈内投与用のU.S.P.)との超音波処理した混合物である。この混合物は、周囲の条件(すなわち、室内空気温度および圧力)下で超音波処理され、そして超音波処処理中、不溶性ガス(99.9重量%)で灌流される。
【0028】
最も好ましい実施態様では、薬学的液体組成物には、5重量%〜50重量%のデキストロースおよび2重量%〜10重量%のヒト血清アルブミンの2倍〜8倍希釈を含む。本発明の他の糖溶液の例は、水性単糖溶液(例えば、ヘキソース糖、デキストロース、またはフルクトース、あるいはそれらの混合物のような式CH12Oを有する)、水性二糖溶液(例えば、スクロース、ラクトース、またはマルトース、あるいはそれらの混合物のような式C12H22O11を有する)、または水性多糖溶液(例えば、アミラーゼ、またはデキストラン、あるいはそれらの混合物のような式CH10O(n)(ここで、nは20と約200との間の全整数である)を有する可溶性スターチ)である。しかし、糖は、本発明の結果を達成するために必須ではない。
【0029】
微小気泡は、超音波処理によって、代表的には超音波処理ホーン(sonicating horn)で形成される。超音波エネルギーによる超音波処理は、液体中の粒子状物質またはガスの部位でデキストロースアルブミン溶液内に空洞を生じる。これらの空洞部位は、最終的に共鳴し、そして崩壊せずそして安定である小さな微小気泡(約7ミクロンのサイズ)を生じる。一般的に、約5と約6ミクロンとの間の微小気泡の約4×10m以上の濃度を生じる超音波処理条件が好ましい。一般的に、混合物は、不溶性ガスで灌流されながら、約80秒間超音波処理される。
【0030】
調製の第2の方法は、15±2mlの超音波処理したデキストロースアルブミンと、超音波処理前の8±2mlのペルフルオロカーボンガスとを手で撹拌する工程を包含する。次いで、超音波処理を80±5秒間行う。
【0031】
多くの血清結合薬物への微小気泡の親和性を改良するために設計された、調製の第3の方法は、5〜30ミリグラムのオロソムコイド(α酸糖タンパク質)を、超音波処理前のアルブミン−デキストロースに添加することである。
【0032】
微小気泡が、経肺経路に十分である10ミクロンより小さいおよび0.1より大きい平均直径を有さなければならず、そして静脈内注入後および標的部位への移行中に微小気泡内のガスの顕著な拡散を防ぐために十分に安定でなければならないので、これらの微小気泡のサイズは、特に理想的である。
【0033】
次に、微小気泡は、生物学的活性薬剤とインキュベートされ、そのため医薬品はタンパク質コートされた微小気泡と結合する。全く予期せぬことに、出願人は、コントラスト剤で以前に使用したように、微小気泡の形態でのフィルモゲンタンパク質が、微小気泡が不溶性ガスで満たされる場合に、化合物を結合する能力を保持することを証明した。伝統的に、微小気泡コントラスト剤の形成においてタンパク質球が変性したタンパク質から構成されると考えられていたので、これは驚くべきことである。例えば、米国特許第4,572,203号、米国特許第4,718,433号、および米国特許第4,774,958号を参照のこと(これらのそれぞれの内容は参考として本明細書中に援用される)。本明細書で証明されるように、出願人は、空気の代わりに不溶性ガスが微小気泡に使用される場合、多くの超音波処理エネルギーがガスによって吸収されそしてタンパク質が結合活性を保持することを示した。従って、アルブミンのようなタンパク質は、生物学的活性医薬品に結合して微小気泡薬剤結合体を形成し得る。空気で充填した微小気泡は、その結合能力を保持せず、そして本発明の方法で使用され得ない。
【0034】
治療は、約0.1〜10ミクロンの直径のタンパク質微小気泡に結合した薬学的組成物の使用を包含する。本発明は、診断超音波イメージングで伝統的に使用される薬剤および方法を使用し、そしてこのように治療剤の送達のための標的部位での治療剤の可視化のための手段を提供する。
【0035】
本発明に有用な治療薬剤は、フィルモゲンタンパク質と結合する能力によって選択される。例えば、フィルモゲンタンパク質がアルブミンである場合、治療剤はオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、またはリボザイムを含み得、そのすべてはアルブミンと結合し得そしてこのような微小気泡との結合体を形成し得る。未処置のままであることが確認される部位1でアルブミンに結合し、そしてそのためアルブミンコートされた微小気泡とともに本発明の方法および組成物に有用である薬物のリストは、以下の通りである:
薬物 アルブミン結合% 薬物クラス
ナプロキセン 99.7 NSAID
ピロキシカム 99.3 NSAID
ワーファリン 99.0 抗凝血剤
フロセミド 98.8 ループ利尿剤
フェニルブタゾン 96.1 NSAID
バルプロ酸 93.0 抗てんかん剤
スルフイソキサゾール 91.4 スルフォンイミド抗生物質
セフトリアキソン 90〜95 第3世代セファロスホ゜リン抗生物質
ミコナゾール 90.7〜93.1 抗真あ菌剤
フェニトイン 89.0 抗てんかん剤

非ステロイド性抗炎症薬物
は患者対患者変化を表す。
【0036】

オロソムコイドがデキストロースアルブミンに添加される場合、増強され得る薬物のリストはまた、エリスロマイシン(抗生物質)、リドカイン(抗不整脈剤)、メペリジン(鎮痛剤)、メサドン(鎮痛剤)、ベラパミルおよびジルチアゼム(抗狭心剤)、シクロスポリン(免疫抑制剤)、プロパノロール(抗高血圧剤および抗狭心剤)、およびキニジン(抗不整脈剤)を含む。
【0037】
特に部位1でアルブミンと結合する他の薬物はまた、本発明の実施態様で有用であり、そして薬物相互作用および「Drug Information」AHFS 1994または四半期毎に更新されるBerney Olinによって刊行される「Facts and Comparisons」のような当該技術分野で標準的な薬理学的テキストから当業者に確認され得る。適切なタンパク質−生物学的薬剤の組み合わせの決定のためのアッセイは、本明細書に開示され、そして本発明の方法で作用する能力についての任意の組み合わせをテストするために使用され得る。
【0038】
本発明の1つの実施態様によれば、ペルフルオロカーボンガスのアルブミンコートされた微小気泡は、オリゴヌクレオチドとの安定な結合体を形成することが見いだされている。次いで、ODN結合した気泡は、伝統的な超音波可視化などで動物に非経口的に導入される。
【0039】
次いで、注入されたボーラスが標的部位に達する時に、診断超音波場が導入される。これは、多くの方法のいずれかで達成され得る。例えば、超音波変換器は、標的部位の上に直接配置され得る。従って、注入物がこの部位に達すると、この場に曝露され、そして薬剤が放出される。この方法はまた、ボーラスが超音波場に入る場合、可視化を可能にする。超音波によって提供されるエネルギーは、治療部位でまたは血液プール中へ、微小気泡に薬物を放出させる。あるいは、超音波変換器は、循環系を通過するに場合に、微小気泡の一定の曝露を可能にする血液プール中の部位上に配置され得る。この目的は、ヘパリンのような特定の薬物の全身効果を増強させることである。これが生じ得る配置部位の例は、心房(heart chamber)、大動脈、または大静脈上である。他の方法は、治療部位への投与からの移動の時間を計り、次いで適切な時間間隔後の超音波の適用とともに生物学的に結合した微小気泡懸濁液を注入するために、コントラスト剤単独を使用することである。
【0040】
本発明は、効果的なアンチセンス、アンチ遺伝子、プローブ診断、あるいは、ウイルスまたはプラスミドヌクレオチド送達を用いる遺伝子治療への最初のハードルが、治療効果を達成するために十分に高い濃度で標的部位に達する治療剤の能力であるので、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチド治療に特に関連する。
【0041】
治療部位には、特定の腫瘍の位置、特定の感染の位置、異なる遺伝子活性化のため特定の遺伝子産物を発現する器官、傷害または血栓症の部位、治療剤のさらなるプロセシングおよび分布のための部位などのようなものが含まれる。
【0042】
本発明の送達治療を実施するための好ましい方法は、本発明の薬学的液体薬剤を得る工程、および最初にこの薬剤を、静脈内注射、静脈内(静脈内注入)、経皮的、または筋肉内注射によって宿主に導入する工程を包含する。次いで、注入物は、標的領域が注入物によって達せられるまで、モニターされるかまたは時間が計られ得る。診断超音波は、適切なドップラーまたは超音波エコー装置を使用して標的部位に導入され、そのため超音波の場は標的部位を含み、そして医薬品が微小気泡から放出される。超音波シグナルは、微小気泡を活性化し、そのため微小気泡−治療剤結合が破壊されそして薬剤は効果的領域で放出される。一般的に、時間の期間は、目的の器官ならびに注射部位によって変わる。薬剤のいくつかが目的の器官に達するために十分に長くなければならないのみである。
【0043】
所望の超音波は、20Khz〜数Mhzの超音波シグナルを供給し得る従来の超音波デバイスによって適用され、そして一般的に、約3〜約5Mhzで適用される。
【0044】
水性タンパク質溶液を超音波処理することによって形成される微小気泡が、次に医学手順での使用のためのイメージを得るために超音波でスキャンされる所定の領域の音響特性を変更するために哺乳動物に注入される、診断超音波イメージングの方法は、周知である。例えば、米国特許第4,572,203号、米国特許第4,718,433号、および米国特許第4,774,958号を参考のこと(そのそれぞれの内容は参考として本明細書中に援用される)。
【0045】
これは、薬学的組成物としてのこれらのタイプのコントラスト剤の使用および本発明の新規な改良である標的された送達システムとしての超音波の適用である。
【0046】
本発明は、高クリアランス速度および毒性を含む、有効でない薬理学的パラメータで伝統的に悩まされてきた最も著しいアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むいくつかの薬物の効能および治療活性を、劇的に改良することが示されている。
【0047】
ヒト血清アルブミンのようなタンパク質物質は、体内で容易に代謝され、そして体外へ排泄され、そのためヒトの体に有害ではない。さらに、微小気泡内に捕獲されたガスは、非常に小さく、そして血液に容易に溶解される;ペルフルオロプロパンおよびペルフルオロブタンは、ヒトに安全であることが長く知られている。両方とも、網膜剥離を安定化するための眼内注入にヒトで使用されている。WongおよびThompson, Ophthalmology 95:609-613。従って、本発明の薬剤は、非常に安全でありそして患者に非毒性である。
【0048】
本発明は、最終的に標的細胞での遺伝子発現を変更または検出するための、遺伝子治療ベクター、診断ヌクレオチドプローブ、あるいはアンチセンスまたはアンチ遺伝子タイプストラテジーの形態でのヌクレオチド配列の送達に特に有用である。
【0049】
オリゴヌクレオチド治療の伝統的制限は、体の血液および細胞に見られるエンドおよびエキソヌクレアーゼに実質的に抵抗性である、オリゴヌクレオチドアナログの調製である。改変されていないODNは効果的であることが示されているが、これらのODNへのいくつかの改変はこの問題を軽減することを助けている。
【0050】
本発明の改変されたまたは関連するヌクレオチドは、核酸塩基、糖部分、ヌクレオシド間リン酸結合の1つ以上の改変、またはこれらの部位での改変の組み合わせを含み得る。ヌクレオシド間リン酸結合は、(オリゴヌクレオチドを改変した混合骨格を産生するために)ホスホロチオエート、ホスホロアミダイト、メチルホスホネート、ホスホロジチオエート、およびこのような同様の結合の組み合わせであり得る。改変は、オリゴヌクレオチド分子の内部または末端であり得、そして、コレステロール、アミノ基間の種々の数の炭素残基を有するジアミン化合物のようなヌクレオシド間リン酸結合の分子への付加、ならびに、反対の鎖へあるいは関連する酵素、またはゲノムに結合する他のタンパク質に切断または架橋する末端リボース、デオキシリボース、およびホスフェート改変を含み得る。これらの改変は、細胞内の酵素的分解からのODNを保護することを伝統的に助ける。上記の改変のいずれかは、本発明の方法とともに使用され得る。しかし、好ましい実施態様では、改変は、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドである。
【0051】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的タンパク質の合成を特異的に阻害する能力によって、調査および治療における潜在的ツールを表す。これらのODNの主な理論的利点は、細胞における1つの部位への結合への潜在的な特異性である。本発明の1つの実施態様によれば、内因性タンパク質の転写または翻訳のプロセスを妨害する、好ましくはDNA(アンチ遺伝子)またはRNA(アンチセンス)に相補的な、少なくとも6ヌクレオチドの合成オリゴヌクレオチドが提示される。
【0052】
オリゴヌクレオチド合成のための公知の方法のいずれかが、オリゴヌクレオチドを調製するために使用され得る。これらは、市販の自動化核酸合成機(例えば、ホスホロアミダイト化学を使用する製造者のプロトコルに従って、Applied Biosystems, Inc., DNA synthesizer (Model 380B)、Applied Biosystems (Foster City, CA))のいずれかを使用して最も便利に調製される。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを、StekおよびZon J. Chromatography, 326:263-280およびApplied Biosystems, DNA Synthesizer, User Bulletin, Models 380A-380B-381A-391-EP, December 1989に記載の方法に従って、合成および精製した。ODNは、当業者に公知の方法によって細胞に導入される。Iversenら,「Anti-Cancer Drug Design」, 1991, 6531-6538を参照のこと(参考として本明細書中に援用される)。
【0053】
以下の実施例は、例示の目的のみのためであり、そしてどのようにしても本発明を限定することを意図しない。多くの他のタンパク質−生物活性薬剤組み合わせは、本発明で使用され得、そして本明細書でさらに考慮されることが、当業者には理解される。例えば、フィルモゲンタンパク質がα1酸グリコタンパク質である場合、生物活性薬剤は、リドカイン、インデラル、またはヘパリンであり得る。
【0054】
以下の実施例のすべてにおいて、すべての部およびパーセントは、他に指示がない限り重量により、すべての希釈は用量によって記載される。
【実施例】
【0055】
実施例1
ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド合成
鎖伸長合成を、ABI Model 391 DNA合成機(Perkin Elmer, Foster City, CA)で1μモルのカラム支持体で行った、またはLynx Therapeutics, Inc.(Hayward CA)によって提供された。1マイクロモル合成は、シアノエチルホスホロアミダイトおよびABI user Bulletin 58によりテトラエチルチウラムジスルフィドとの硫黄化を用いた。
【0056】
放射標識したオリゴヌクレオチドを、Glen Research (Bethesda, MD) による水素ホスホネート物質として合成した。配列5'-TAT GCT GTG CCG GGG TCT TCG GGC 3' 配列番号2(c-mybに相補的な24マー)および5' TTAGGG 3' 配列番号3を有する均一に35S-標識されたPS-ODNを、ペルフルオロカーボン曝露した超音波処理したデキストロースアルブミン微小気泡溶液とともに、0.5mlの最終用量で、37℃にて30分間インキュベートした。この溶液を放置し、そのため気泡は上に上昇し、そして100マイクロリットルを底の澄明な溶液から取り出し、そして100マイクロリットルを微小気泡を含む上部から取り出した。本発明の方法が、配列に特異的ではなく、そしてODNの任意の塩基配列組成が使用され得ることが、理解されるべきである。
微小気泡薬剤の調製
5パーセントヒト血清アルブミンおよび5パーセントデキストロースを、市販の供給源から得た。5%デキストロースの3部および1部の5%ヒト血清アルブミン(合計16ミリリットル)を、35ミリリットルMonojetシリンジ中に引き出した。各デキストロースアルブミン試料を、8±2ミリリットルのフルオロカーボンガス(デカフルオロブタン;分子量238グラム/モル)または8±2ミリリットルの室内空気のいずれかと手で撹拌し、次いで試料を、20キロヘルツで80±5秒間電気機械的超音波処理に曝露した。このように生成したペルフルオロカーボン曝露した超音波処理したデキストロースアルブミン(PESDA)微小気泡の4つの連続した試料の平均サイズは、ヘモサイトメトリーで測定すると、4.6±0.4ミクロンであり、そして平均濃度は、Coulterカウンターによって測定すると、1.4×10気泡/ミリリットルであった。次いで、微小気泡の溶液を、1000倍容量過剰の5%デキストロースで洗浄して、微小気泡と結合しないアルブミンを除去した。微小気泡を4時間上昇させた。次いで、下方の溶液を、洗浄した泡を残して除去した。次いで、洗浄した泡を、0.9%塩化ナトリウムと混合した。
【0057】
結合アッセイ
放射活性な24マーPS-ODNを、PESDAおよび室内空気超音波処理したデキストロースアルブミン(RA-SDA)微小気泡の洗浄した溶液に、5nMの濃度で添加した。非放射活性PS-ODN20マーを、一連の漸増濃度(0、3.3、10、32.7、94.5、167、および626μM)で放射活性24マーを含むチューブに添加した。気泡の懸濁液を、転倒によって混合し、そして37℃にて60分間インキュベートする。
【0058】
放射活性の測定
溶液中の放射活性を、液体シンチレーションカウンター(モデルLSC7500;Beckman Instruments GmbH, Munich, Germany)中で液体シンチレーションカウンティングによって決定した。試料容量は100μlであり、これに5mlのHydrocount生分解性シンチレーションカクテルを添加して混合した。試料を、各実験直後に、および次いで化学発光およびクエンチングの影響を減少させるために24時間後に再度カウントした。
【0059】
フローサイトメトリー
PS-ODNの室内空気対ペルフルオロカーボン含有超音波処理したデキストロースアルブミン微小気泡結合の均一性を、フローサイトメトリーによって決定した。微小気泡の溶液を、1000倍過剰容量の滅菌生理食塩水で洗浄した。3つの群の試料を、以下のように3連で調製した;A群(コントロール)、100μlの微小気泡を900μLの生理食塩水に添加した、B群、100μLの微小気泡を900μLの生理食塩水に添加しそして2μLのFITC-標識した20マーを添加した(最終20マー濃度は151nMである)、そしてC群、100μLの微小気泡を800μLの生理食塩水、2μLのFITC-標識した20マー、および100μLの非標識20マーを添加した(最終濃度は151nMである)。インキュベーションを、すべて室温にて20分間行った。
【0060】
洗浄した微小気泡懸濁液を、滅菌生理食塩水(Baxter)に希釈し、次いでFITC-標識したPS-ODNとインキュベートした。フローサイトメトリー分析を、100mW空冷アルゴンレーザーならびにLysis II獲得および分析ソフトウエアを装着したFACStar Plus (Becton Dickinson) を使用して行った。リストモードデータを、最小の10収集した微小気泡および各試料についての独立した分析について用いた。
【0061】
研究プロトコル
本発明者らが以前に記載したMor-Avi V.ら「Stability of albunex microspheres under ultrasonic irradiation; and in vitro study」J Am Soc Echocardiogr 7:S29, 1994のものと同様の種々のフローマイクロスフェアスキャンニングチャンバーを、研究のために開発した。このシステムは、Masterflexフローシステム(Microgon, Inc., Laguna Hills California)に連結された環状のスキャンニングチャンバーからなる。スキャンニングチャンバーを、水を充填したチャンバーによって各側で囲い、そして音響透過性物質によって各側で結合した。PS-ODN標識したPESDA微小気泡(0.1ミリリットル)を、スキャンニングチャンバーの近くに1秒かけてボーラスとして注入し、次いでプラスチックチューブを介して水道水を充填したスキャンニングチャンバーに、100ml/分の制御された流速で流した。気泡がスキャンニングチャンバーを通る場合、スキャナー(2.0メガヘルツ周波数、1.2メガパスカルピークネガティブ圧力)を、従来の30ヘルツフレーム速度で超音波を送達するようにセットするかまたは遮断するかのいずれかにした。スキャンニングチャンバーを通った後、次いで、溶液を、同じサイズのプラスチックチューブを介して目盛りをつけたシリンダー中に通した。最初の10ミリリットルを捨てた。この後、次の10ミリリットルを、収集チューブ中に入れた。溶出した微小気泡を含む収集チューブを、試料の下方部分に存在する遊離のオリゴヌクレオチドから上部に微小気泡を分離するために、放置した。次いで、溶出液の上部および下部の操作の両方からの滴を、ヘモサイトメータースライド上に置き、そして10×拡大によって分析した。次いで、これらのスライドの写真を作成し、そして次いで、36平方センチメートル場の微小気泡の数を手でカウントした。次いで、残りの流出液の上層および下層を、以下に記載と同様にフローサイトメトリーを使用して、オリゴヌクレオチド含量の分析に使用した。
【0062】
種々のオリゴヌクレオチド溶液に曝露した微小気泡試料を、ホルムアルデヒドおよびEDTAの溶液で1:5(v/v)で混合し、そして5分間で95℃まで加熱した。次いで、これらの試料を、20%ポリアクリルアミドゲルを含むApplied Biosystems Model 373A DNAシークエンサーで試験した。データを、GeneScannerソフトウエアで得て、そのため曲線下蛍光強度面積を決定し得た。
【0063】
PS-ODNの腎臓取り込みにおけるこれらの同じ診断超音波圧力の効果のインビボ研究を、3匹のイヌで行った。蛍光PS-ODN標識したPESDA微小気泡の静脈内注射(0.2ml)を、これらのイヌの大腿静脈に投与した。各イヌの左腎臓を、外部に配置した2.0〜2.5メガヘルツの診断超音波変換器(ピークネガティブ圧力1.1MPa)によって超音波処理した(insonify)。腎臓を、注射後、および腎臓での可視的な明らかなコントラストの出現中に、最小2分間30ヘルツのフレーム速度を使用して超音波処理した。各イヌにおいて、左心室および肺動脈圧を、それぞれ左心室および肺動脈に配置した生理食塩水充填したカテーテルを使用して、腎臓注射の前後にモニターした。注射の約4時間後、イヌを屠殺し、そして両方の腎臓を取り出した。次いで、切片を腎皮質から得、そして上記の遺伝子スキャンニング方法を使用してカウントしたPS-ODNについてサンプリングした。組織学的切片もまた、糸球体およびネフロンでの蛍光の分析のために得た。
【0064】
データの分析
データの統計学的分析を、複数試料の比較のための非ペアード(unpaired)t-検定および試料の上部から底部のPS-ODNの分配の比較のためのペアード(paired)t-検定の両方でInStatソフトウエア(GraphPad, San Diego CA)を使用して得た。データのグラフでの分析を、Prismソフトウエア(GraphPad, San Diego CA )を使用して得た。
【0065】
PESDA対RA-SDA微小気泡のホスホロチオエートオリゴヌクレオチド結合
PS-ODNに対する、PESDA微小気泡(上層)、ならびに液体シンチレーションカウンティングによってカウントした非気泡の洗浄した下層(アルブミンなし)、および非洗浄の下層(非気泡アルブミン含有)の分配を、表1に示す。
表1: PESDA微小気泡のアルブミンに対するオリゴヌクレオチド結合
遊離アルブミンの存在における気泡
N 上部 底部 比
cpm/μl cpm/μl T/B
TTAGGG 6 125±6.4 92.3±6.4 1.35
c−myb 6 94.1±17.6 77.3±1.2 1.35

洗浄した気泡(遊離アルブミンなし)
N 上部 底部 比
cpm/μl cpm/μl T/B
TTAGGG 6 210±10.8 126±8.7 1.67
c−myb 6 200.3±37.4 92.7±15.7 2.16
これらのデータは、微小気泡と結合していない非洗浄溶液中のアルブミンが、PS-ODNに結合し、そのためPS-ODNの分配が微小気泡(上層)と周囲の溶液(下層;p=HS)との間で等価であることを示す。アルブミンを結合した非微小気泡(表1の洗浄した気泡)の除去は、PS-ODNのPESDA微小気泡との顕著な分配を示さない(TTAGGG PS-ODNについては1.67およびc-myb PS-ODNについては2.16)。表1に報告した実験における全放射活性の回収は、添加した放射活性の96%であり、これは100%とは有意に異ならない。
【0066】
PS-ODNの洗浄した微小気泡への結合の親和性を、結合部位への競合リガンドとして漸増量の過剰の非放射活性PS-ODNの添加によって評価した。この場合、配列5'-d(CCC TGC TCC CCC CTG GCT CC)-3'を有する20マーPS-ODNを用いて、放射活性24マーを置換した。洗浄した微小気泡実験でのアルブミンタンパク質濃度は、Bradford Assay, Bradford Mら「A Rapid and Sensitive Method for the quantification of microgram quantities of protein utilizing the principle of protein-dye binding」Anal. Bioche., 72:248, 1976によって決定すると、0.28±0.04mg/mlであった。観察した結合データを、図1にLineweaver Burkeプロットとして示す。微小気泡への結合についての平衡解離定数K(2連で行った7濃度について計算した)は、1.76×10−5Mであった。
【0067】
FITC-標識した微小気泡の分布を、表2に提供する。
表2: オリゴヌクレオチド(PS-ODN)結合した微小気泡の分布
コントロールPS-ODN 151nM FITC PS-ODN 過剰の非標識ODN
番号 PE MI PE MI PE MI
1 99.5 2.38 98.9 2109.8 97.8 1753.1
2 99.3 4.07 99.1 2142.3 98.7 1710.9
3 99.4 3.52 99.1 2258.5 99.3 1832.2
平均 3.23 2170 1765
±SE ±0.50 ±46 ±361、2
PE=パーセント事象
MI=平均強度
SE=標準誤差
は、この平均がコントロールとは有意に異なることを示す、p<0.001
は、この平均が151nMとは有意に異なることを示す、p<0.001
過剰の非標識PS-ODNを含む試料の平均蛍光強度の有意な減少は、微小気泡の結合が飽和していることを示す。結局、結合が飽和しているので、PS-ODNの微小気泡表面との非特異的相互作用は制限される。PS-ODNの洗浄したPESDA微小気泡に対するGaussian分布は、これらの微小気泡上のアルブミンが、オリゴヌクレオチドについての結合部位を保持することを示した。洗浄したRA-SDAについてのGaussian分布の欠如は、このオリゴヌクレオチドについてのアルブミン結合部位1の喪失が、これらの微小気泡の超音波処理中に生じることを示した。オリゴヌクレオチドに特に関連するようなアルブミン結合特性の議論については、Kumar, Shashiら「Characterization of Binding Sites, Extent of Binding, and Drug Interactions of Oligonucleotides with Albumin」Antisense Research and Development 5: 131-139 (1995)(この開示は参考として本明細書中に援用される)を参照のこと。
【0068】
Ps-ODN結合した微小気泡における診断超音波の影響;インビトロおよびインビボ観察
懸濁液中のPS-ODN標識したPESDA微小気泡の2.0メガヘルツ診断超音波の観察された影響を、表3に提供する。
表3: 微小気泡への診断超音波曝露後のPS-ODNおよび微小気泡カウントの分析。
【0069】
微小気泡カウントは括弧内である。
【0070】
【表3】

【0071】
上部=超音波処理後の溶出溶液の上層
下部=超音波処理後の溶出溶液の下層
超音波への曝露後の上層に微小気泡の著しい喪失がある(超音波なしの219±54の微小気泡対診断超音波へ曝露した場合の溶出液の上層において53±21の微小気泡)。微小気泡カウントのこの喪失は、超音波が適用されなかった場合の上部気泡含有層へ接着したPS-ODN濃度にかかわりないことが明らかであった。しかし、診断超音波の存在下、下部気泡非含有層においてゲル電気泳動によって測定されたPS-ODN濃度は、著しく増加した。
【0072】
1匹のイヌでは、標識したPESDAでの静脈内PS-ODN後の超音波処理していない腎臓と比較して、超音波処理した腎臓では10倍を超えるPS-ODNの取り込みがあった。3匹のイヌのうちの2匹では、超音波処理した腎臓へのPS-ODN取り込みのこの分配が明らかである。第1のイヌでは、超音波処理していない腎臓に対して超音波処理した腎臓でのPS-ODNの3倍高い取り込みがあった。第2のイヌでは、超音波処理した腎臓でのPS-ODNの9倍高い取り込みがあった。しかし、第3のイヌでは、2つの腎臓間にPS-ODN取り込みの差はなかった。PS-ODN標識したPESDA微小気泡の静脈内注射後に血行動態の変化はなかった。死後の腎臓の組織学的検査もまた、診断超音波による糸球体または尿細管細胞のいずれも破壊を示さなかった。
【0073】
本発明の2つの重要な局面が、本明細書で示される。第1に、PS-ODNは、PESDA微小気泡でアルブミンに結合し、これは、アルブミンにおける結合部位1が電気機械的超音波処理によるこれらの気泡の産生後に生物学的に活性であることを示す。この結合部位親和性は、電気機械的超音波処理が室内空気のみで行われる場合に喪失する。さらに、洗浄によってPESDA微小気泡と結合しないアルブミンの除去は、PS-ODNの微小気泡との有為な分配を示す(表1)。これらの観察は、アルブミン変性が、空気の存在下の超音波処理で示唆されたように、超音波処理の間にペルフルオロカーボン含有デキストロースアルブミン溶液とともに生じないことを示す。PESDA微小気泡において保持されたアルブミンの生物活性(特に部位1で)を、結合部位に対する競合リガンドとして過剰の非放射活性PS-ODNの漸増量の存在下で、洗浄したPESDA微小気泡へのPS-ODNの結合の親和性によって確認した(表2)。過剰の非標識PS-ODNを含む試料中の平均蛍光強度の著しい減少は、微小気泡への結合が飽和であることを示す。
【0074】
第2に、PS-ODN標識したPESDA微小気泡の診断超音波への曝露は、PS-ODNの強度を変化しないが、そのアルブミン結合からPS-ODNを放出する(表3)。
【0075】
実施例2
1匹のイヌでは、1500ユニットのボーラス用量での静脈内ヘパリンを、3つの異なるセッティングで投与した。活性化部分トロンボプラスチン時間(PTT)のベースライン測定を測定し、次いで最小15分の各注射の後の5分間隔で測定した。セッティング1では、ヘパリンを遊離の薬物として投与した。セッティング2では、1500ユニットのヘパリンを、オロソムコイドPESDAに結合して投与したが、血液プールに超音波を適用しなかった。セッティング3では、ヘパリンの同容量(1500ユニット)を、オロソムコイドPESDAに結合して投与したが、血液プールに超音波を適用した。セッティング1では、PTTは5分で>106秒まで増加したが、15分で30と60秒との間に戻った。セッティング2では、PTTは10分まで>106秒に達しなかったが、15分で60と80秒との間に戻った。セッティング3では、PTTは15分でも>106秒のままであった。さらなる測定を行わなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書等に記載されるような、標的された部位特異的薬物送達組成物およびその使用。

【公開番号】特開2007−297414(P2007−297414A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215329(P2007−215329)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【分割の表示】特願平9−532796の分割
【原出願日】平成9年3月12日(1997.3.12)
【出願人】(507282004)ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ネブラスカ (3)
【Fターム(参考)】