説明

標的体外照射のためのインプラントを使用するためのシステム

定位の放射線治療のための安定し改良された標的を提供することができる乳房インプラントを使用する部分乳房照射の新しい方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
現在、乳癌に対する照射は、主として、乳房の全範囲に放射線治療を施す全乳房照射である。この照射は、限定はされないが心臓、肺、食道、胸壁、肋骨のような周囲の組織と、乳房付近のその他の組織との照射を、どうしても巻き込む。癌に関わる乳房の領域を標的とする部分乳房照射という新しい概念が、現在、評判を得つつある。この部分乳房照射は、全乳房照射と同等に有効であり、前述の周囲の臓器へのダメージを除くことが、これまでの研究によって示されている。一般的に、部分乳房照射は、限定はされないがMAMMOSITEもしくはCONTURAのような一時的に埋め込まれるバルーン・カテーテルによって、与えられる。このようなプロセスは、短い期間、即ち3日間乃至5日間、このカテーテルの下に放射性のシード即ち標的を配置することを含む。あいにく、カテーテルと放射性のシードとを使用するこの方法は、多くの欠点を有している。前記カテーテルもしくは他の外科手段によって植え込まれた放射性のシードの形態で、短期間に放射線を集中して照射することによって、脂肪壊死と、血清腫と、血腫と、感染と、美容的に望ましくない結果とのような種々の副作用を生じさせる。腫瘤摘出が行われる時、一時的なバルーン・カテーテルが、このカテーテルが前記乳房から突き出るようにして所定位置に配置される。このことは、感染の可能性を増やす孔を、前記腔内に与える。更に、このような方法によって、外科医は、(リンパ節から癌をなくす場合と同様に)患者が癌を除去するマージン(margins)を有していることを示すための病理報告を待ってから、初めて前記一時的なバルーンを取り除き、MAMMOSITE、CONTURA、もしくは他の外部のカテーテルを、部分乳房照射治療に備えて移植することができる。このような一連の処置は、腫瘤摘出の後、可能な限りすぐに行われることが好ましい。カテーテル方法に関する更なる欠点は、前記腫瘤摘出腔から空気を吸引する必要があることである。腫瘤摘出腔内の空気は、放射線治療を受ける時に、「ホットスポット」即ち高熱状態を前記腔内に生じさせ、この結果、火傷と他の望ましくない副作用とを生じさせる。従って、この空気を、最も一般的には注射器と針とによって吸引即ち除去することが望ましい。あいにく、この方法のカテーテルは、吸引の間、針によって穴を開けられ得、後の使用と治療の効果とに対して問題を生じさせ得る。
【発明の概要】
【0002】
このような問題は、提案される方法を使用することによって、解決される。発明者達は、限定はされないがCYBERKNIFEとBRAIN LABとのような多方向の定位線源によって与えられる体外照射を使用することを提案する。しかしながら、体外照射は、充分に識別可能な標的を要する。現在、体外照射は、腫瘍を含んでいる肝臓、もしくは腫瘍を含んでいる膵臓の頭部とのような実質臓器に使用されている。金製のシードが、このような組織内に移植され、体外定位照射を集中させるためのガイドとして作用する。このような臓器の実質の組織は、前記体外照射線源のための標的として作用するシードの配置ために、安定して変化のない環境を提供する。乳房組織中でカテーテルを使用することは、脂肪組織が前記乳房内に主として存在していることと、この脂肪組織が小さなシード即ち標的を配置するための環境を不可能にすることとを理由に、以前から必要とされてきた。脂肪組織中では、小さなシード即ち標的が、指定された標的位置から移動し、前記治療の効果を失くし得る。前記乳房は、前述の他の組織とは異なって、主として脂肪組織によって構成されている外部組織である。この結果、この時に必要なものは、前記乳房の脂肪組織内で、部分乳房照射の新しい方法で標的として使用されるシードもしくは他の標的源を安定させる手段である。提案される本発明は、このような問題に対処する。前記乳房は、外部組織であるので、定位照射マシンの標的のために、前記内部器官よりしっかりと固定されることができ、従って、前記乳房は、内側のインプラント及び/もしくはマーカの慎重な標的によって部分的な照射を使用するための良い候補である。
【0003】
本適用に取り上げられる米国特許6214045は、切除された組織に取って代わるように寸法を設定された再吸収可能な材料によって形成されており且つ繊維組織から成る内部生成物に取って代わられ得る乳房インプラントを、開示している。この乳房インプラントは、前記インプラントは、弾性且つ圧縮可能且つ膨張可能であり得、診断用物質を更に含み得る。米国特許6214045の説明は、参照によって本書に取り入れられる。特定の診断用物質が、米国特許6214045では、「領域特定のためのX線不透過性材料即ち金属製の材料」として特定されている。米国特許6214045に開示されている前記インプラントの種々の実施形態が、放射線不透過性の標的のように、定位放射線源のための適切な標的として作用し得る。限定はされないがコラーゲンのような生分解可能な材料と適度に密度の高い生物学的適合性の材料とは、適切に放射線不透過性に構成され得る。あるいは、前記インプラントは、2つ以上の異なる材料によって構成され得るか、大量の空気を収容している。また、このことは、適切な定位の放射線源による標的と捕捉との助けとなり得る。前記インプラントは、腫瘤摘出腔をより均一に開いた状態に保つように、球形の形状をしている。しかしながら、生検手順によって形成される前記腫瘤摘出腔が部分的につぶれて前記インプラントの寸法と形状とに適合することとが可能であるため、球形の形状は、必ずしも必須ではない。従って、このインプラントの形状は、前記腔のより特定された領域が一方の側面をもしくは他方の側面を照射され、あるいは球形のインプラントを使用する場合は円周を均一に照射され得るようにするために、体外照射源を案内し得る。先に開示されたカテーテル方法と比較されると特に、種々の形状のインプラントを使用できることは、癌の除去における望ましいマージンを得るために球形でない腫瘤摘出腔を構成することが必要である場合に、球形の形状のカテーテルより有利である。前記インプラント自体は、放射線不透過性の標的として作用し得、あるいは、このインプラントは、前記体外照射のためのガイドとして更に補助するように、前記インプラントの中心部に、限定はされないが金製のシードもしくはチタン製のシードのような小さな金属製のマーカを加え得る。望ましい診断に必要とされるものとこの診断の手順とに応じるように、2つ以上のマーカが、前記腫瘤摘出腔内に配置された1つのインプラント、もしくは2つ以上のインプラント中に、使用され得る。また、複数の異なるマーカ材料が、前記腫瘤摘出腔内に配置された1つのインプラント中、もしくは2つ以上のインプラント中に含まれ得る。適切に消毒されたいかなる金属製の材料、もしくは他の比較的密度の高い生物学的適合性の材料が、前記インプラント中のマーカとして使用され得る。前記体外照射が使用されるところでは、この照射は、この照射の利点によって局所的な近接照射療法を果たし、前記照射は、種々の期間に渡って、前記部分乳房照射の一般的な方法即ち前記バルーンのMammoSiteもしくはConturaに関わる複雑さを解消するように設定されることができる。米国特許6214045に開示されているインプラントの使用は、限定はされないが美容的に外観を損なうことと、血清腫と、血腫と、感染とのような医療産業に知られている多くの一般的な問題に対処し、同時に、有効な標的放射線治療のために必要な安定した標的を提供する。米国特許6214045のインプラントは、前記腔を開いたままに保ち、前記周囲の組織を支持するように設定されている。このことは、新しい組織の成長が放射線治療によって妨げられ得るので、放射線治療において特に重要である。従って、この方法と前記インプラントの使用とによって、前記腫瘤摘出の位置が、放射線治療中にこの位置の構造を維持することができ、この後に、放射線治療が終了すると、新しい組織の再生と内部生成とのための時間を与えることができる。前記体外照射が完了すると、前記インプラントは、患者の自然組織の内部生成を可能にするように、所定の期間に渡って生分解し得、従って、表面の皮膚にもしくは乳房に美容的に望ましくない変化をもたらす危険性を減じ得る。また、放射線治療は、出血を最小限にするための止血剤と、他の金属製のマーカと、腫瘍学的物質と、抗生物質などを前記インプラントに加え得る。
【0004】
標的部分乳房照射治療のためのインプラントを使用することの他の効果は、前記生分解可能なインプラントが腫瘤の摘出と同時に乳房に挿入され得、放射線治療が、標的手段の維持と治療とに問題を与えずに、もしくは患者に対して問題を与えずに、延長され得ることである。前記カテーテル方法の使用によって、外側に突出するカテーテルと前述の問題とが、感染と患者の不快感とのような考えられる問題を可能な限り最小限にするために、直後の放射線治療処置を必要とする。直後の放射線治療は、外科手術による傷が新しくまだ治っていないため、必ずしも好ましいとは限らない。放射線を使用することによって、この傷の治りを更に遅らせ、また不十分な治りのために、血清腫の生成と、感染と、美容的に外観を損なうこととが促される。インプラントを使用するという提案される方法は、前記インプラントを、前記腫瘤摘出腔中に配置し、前記傷を、外科的にシールすることを可能にする。この患者は、標準の生活様式を維持し得、放射線治療は、個々の場合に応じて、計画され得る。前記患者は、化学療法を受け得、また、放射線治療の効果を減じないで、最長約120日、放射線治療を延期することができる。前記インプラントは、時間の経過によって、いくらか質を落とし得るが、この間に、前記腫瘤摘出腔が、後の治療のために前記腫瘤摘出腔を縮小させ且つ前記標的を安定させるようにして、前記インプラントを圧縮するか、このインプラントの周りの傷を癒すことを可能にするように、前記乳房は癒える。後の放射線治療は、腫瘤摘出の数日後もしくは数週間後に開始され得る。放射線治療は、必要に応じて中断され得、前記生分解可能なインプラントの耐用年数の間に、もしくは、マーカの場合は腫瘤摘出後いつでも、必要に応じて再度実施され得る。このことによって、血腫もしくは血清腫の防止が果たされ、美容的に良好な結果をもたらし、同時に後の治療もしくは診断のための安定した標的を維持する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】図1は、放射線治療の照射の標的として作用するように乳房の腫瘤摘出腔内に配置されたインプラントの一実施形態を示す図である。
【図2】図2は、乳房の腫瘤摘出腔内に配置されており、放射線治療の照射の標的として作用するように内側のマーカを含んでいるインプラントの他の実施形態を示す図である。
【図3】図3は、乳房の腫瘤摘出腔内に配置されており放射線治療の照射を受けているインプラントの一例を示す図である。
【図4】図4は、放射線治療の照射の標的として作用するように内側のマーカを含んでいるインプラントの他の実施形態を示す図である。
【図5A】図5Aは、乳房の腫瘤摘出腔内に配置されており異なる形状と構造とを有するインプラントを示す図である。
【図5B】図5Bは、乳房の腫瘤摘出腔内に配置されており異なる形状と構造とを有するインプラントを示す図である。
【図6】図6は、縮小する乳房の腫瘤摘出腔内に部分的に再吸収されたインプラントを示す図である。
【図7】図7は、縮小する乳房の腫瘤摘出腔内に部分的に再吸収された金属製のマーカを有するインプラントを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1では、ほぼ球形のインプラント100が、生分解可能な材料によって形成されており、このインプラントは、生検処置もしくは他の外科手術の処置に続いて、乳房の腫瘤摘出腔110内に配置される。このインプラントは、生分解可能な発泡体(foams)、スポンジ、ゲル、液体、もしくは他の生物学的適合性の物質のような材料によって形成され得る。前記材料は、乳房の腫瘤摘出腔がつぶれないように維持することによって乳房の美観を助けるように、周囲の乳房組織を支持することができるように、形成されている。更に、このインプラントは、体外定位照射による部分乳房照射治療(external beam stereotactic partial breast radiotherapy)のための放射線不透過性の標的として、機能する。このインプラントは、種々の口径を有するように形成され得るので、このインプラントをより放射線不透過性にするように、例えばより多くの空気をこのインプラントに組み入れることができ、また、放射線治療のために適切でない状況を生じさせる乳房の腔内でのエアポケットの堆積を防ぐことができる。しかしながら、このインプラントは、前記腫瘤摘出腔と全く同じ寸法である必要はない。乳房組織は、前記腔を開いたままに保ち、且つ前記インプラントの中心から比較的同じ距離を保つように、前記インプラントの周りがつぶれ得る。このインプラントは、放射線治療専門家によって決定された正確な構造の腫瘤摘出腔のマージンに放射線治療を与えるための標的としての前記インプラントに、定位放射源を向けることができるように、十分な寸法と確かな一貫性とを有している。
【0007】
図2では、図1の前記インプラント100で、定位の放射線源のためのインプラントの領域の有効な標的を助けるために、金製のシード、金属製のシード、チタンクリップ、もしくは他の適切な密度のインプラント材料120を更に含んでいる。マージンは患者によって異なり得るため、インプラント材料の使用は、定位照射ユニットをプログラミングするためのガイドとして機能することができる。標的材料は、前記インプラント内の中心に位置され得るか、前記インプラントの周りに位置され得る。少なくとも1つのインプラント材料は、意図した放射線治療を患者の乳癌治療に合わせるように、必要に応じて一緒に使用され得る。前記標的材料が生分解可能である場合と生分解可能でない場合があるので、前記インプラント材料は、必要に応じて拡大される放射線治療のために使用できる状態であり得る。生分解可能な材料は、可変吸収率(variable absorption rates)を有し得る。
【0008】
図3では、多方向(定位)の放射線治療160の例が、前記乳房の腫瘤摘出腔110内の乳房インプラント100を標的としており、前記乳房の腫瘤摘出腔110の周りにある標的マージン(targeted margins)170の範囲内で前記乳房を部分的に照射している。
【0009】
図4では、多方向(定位)の放射線治療160の例が、前記乳房の腫瘤摘出腔110内に内側のマーカ120を含む乳房インプラントを標的としており、前記乳房の腫瘤摘出腔110の周りにある標的マージン170の範囲内で前記乳房を部分的に照射している。
【0010】
図5A及び図5Bでは、乳房の腫瘤摘出腔110内のインプラント100が、癌の切除のために充分なマージンを形成するために切り取られる前記腫瘤摘出腔に適合するように、もしくは、外科手術のための良好な医療行為に従って適合するように設定されている。前記インプラントを前記腔に適合させることが可能であることは、次の放射線治療のために適切なマージンが維持されることを可能にし、前記周囲の乳房組織を変形しないで支持する。
【0011】
図6では、前記インプラント100は、時間が経過した結果として、部分的に再吸収されている。従来のカテーテルとは異なり、このインプラントは、放射線治療の延期を余儀なくさせるような治療、化学治療、もしくは他の問題を考慮して、移植の後、数週間か数ヶ月間、生検査の位置への標的として作用することができる。前記腫瘤摘出腔を有する前記周囲の乳房組織は、前記インプラントが再吸収されるのに従って、所定の位置に前記インプラントと静的関係にある前記乳房組織の構成とを保持するように、つぶれ、もしくは成長する。
【0012】
また、図7では、再吸収されるインプラント100は、標的を促すために、少なくとも1つのマーカ120を収容している。更に、前記インプラントと前記マーカとによって、治療する外科医は、完了していない治療、化学治療、もしくは他の好ましい延期の理由のために、放射線治療の延期が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳房の腔内に、生物学的適合性で生分解性の材料から成るほぼ放射性不透過性のインプラントを、前記乳房の腔の周りの組織を支持するようにして、配置させるための手段と、
放射線照射が前記乳房の全体を実質的に照射しないように、この放射線照射を前記インプラントの周りの乳房組織に向けるための手段と、を具備する部分乳房照射システム。
【請求項2】
治療的に有効な照射の1回の投与を、定位照射マシンによって、前記インプラントの周りの前記乳房組織に向けるための手段を更に具備する請求項1のシステム。
【請求項3】
治療的に有効な照射の複数回の投与を、定位照射マシンによって、1回の処置で前記インプラントの周りの前記乳房組織に向けるための手段を更に具備する請求項2のシステム。
【請求項4】
治療的に有効な照射の複数回の投与を、定位照射マシンによって、1回の処置で複数回、前記インプラントの周りの前記乳房組織に向けるための手段を更に具備する請求項2のシステム。
【請求項5】
治療的に有効な照射の1回の投与を、多方向の放射線治療によって、前記インプラントの周りの前記乳房組織に向けるための手段を更に具備する請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
治療的に有効な照射の1回の投与を、画像がガイドされる放射線治療(image guided radiation therapy)によって、前記インプラントの周りの前記乳房組織に向けるための手段を更に具備する請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
治療的に有効な照射の1回の投与を、3D等角投影の放射線治療によって、前記インプラントの周りの前記乳房組織に向けるための手段を更に具備する請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
治療的に有効な照射の1回の投与を、強度が変調される放射線治療によって、前記インプラントの周りの前記乳房組織に向けるための手段を更に具備する請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記インプラントの配置の後に、腫瘤摘出腔から空気を吸引するための手段を更に具備する請求項1に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−518640(P2011−518640A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507420(P2011−507420)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/002551
【国際公開番号】WO2009/134340
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(510285997)セノアールエックス,インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】