説明

標的抗原の検出方法

標的抗原を高感度に検出することができる方法を提供することを目的とし、この目的を達成するために、(a)標的抗原と1種又は2種以上の抗体とを反応させ、標的抗原と抗体とを含む抗原抗体複合体を形成させる工程、(b)工程(a)を行う前、行う際又は行った後に、一般式(I)〜(IV)のいずれかで表される塩基配列からなる一本鎖核酸の5’末端を、抗体に結合させる工程、(c)工程(a)及び(b)を行った後に、デオキシアデノシン三リン酸とデオキシチミジン三リン酸及び/又はデオキシウリジン三リン酸とを含むデオキシヌクレオシド三リン酸の存在下、かつ抗原抗体複合体の形成を維持できる温度下において、一本鎖核酸にDNAポリメラーゼを作用させる工程、及び(d)工程(c)を行った後に、抗原抗体複合体を構成する抗体に結合した一本鎖核酸の自己伸長を検出する工程、を含む標的抗原の検出方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的抗原の検出方法及び検出用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞又は組織内の生体内タンパク質、感染微生物等の異物を検出する方法として、抗原抗体反応を利用した方法が用いられている。この方法には、抗原と抗原を認識する標識化抗体とを反応させて抗原を検出する直接法と、抗原と抗原を認識する抗体(一次抗体)とを反応させた後、一次抗体を認識する標識化抗体(二次抗体)を反応させて抗原を検出する間接法とがあり、一般的に間接法が高感度とされている。
【0003】
ポストゲノム時代に入り、細胞又は組織内の微量なタンパク質の発現や、狂牛病に代表される微量な抗原を高感度に検出することができる技術の開発の必要性が高まっている。
【0004】
抗原の検出感度は、用いる抗原と抗体とが同一であれば、標識物質一分子が発するシグナルの強さ及び抗体に結合した標識物質の数によって決まる。したがって、微量な抗原を検出するには、シグナルの強い標識物質を抗体へ結合させるか、又は多量の標識物質を抗体へ結合させる必要がある。
【0005】
シグナルの強い標識物質としてはラジオアイソトープが挙げられるが、ラジオアイソトープは放射線を発生するので特別な設備を必要とする、有効期間が短い等の理由により汎用性に欠ける。また、ラジオアイソトープを用いる場合、細胞標本又は組織標本の直接観察は不可能である。
【0006】
多量の標識化合物を抗体へ結合させる方法の一つとして、PCR(Polymerase Chain Reaction)を抗原抗体反応へ応用する免疫PCR法(Immumo−PCR)(非特許文献1参照)が知られている。この方法は、抗体とビオチン化DNAとを、プロテインAとアビジンとのキメラタンパク質を介して結合させた後、抗原と抗体とを反応させ、抗体に結合させたDNAを1組以上のプライマーを用いて増幅させ、増幅したDNA断片をアガロースゲル電気泳動法により検出することにより、抗原を検出する方法である。したがって、この方法は、細胞又は組織に存在する微量な抗原を細胞又は組織から抽出して試験管内で検出する際には非常に有効である。しかし、この方法では、抗原の存在を明らかにすることはできるものの、抗原の細胞又は組織中での分布を明らかにすることはできない。
【0007】
免疫PCR法を細胞又は組織中の抗原の検出へ応用するために改良されたインサイチュー免疫PCR法(in situ immumo−PCR)(非特許文献2参照)は、インサイチューPCR法(in situ PCR)(非特許文献3参照)で用いられる特殊な装置を必要とするとともに、DNA断片を増幅した後にインサイチューハイブリダイゼーション(in situ hybridization)を行うことを必要とするため、操作が煩雑である。また、PCRに必要な長さのビオチン化DNAを細胞又は組織中へ十分浸透させられない可能性がある。さらに、PCRにより増幅したDNA断片は抗原から遊離しているため、抗原の細胞又は組織内の分布を正確に明らかにすることはできない。
【0008】
多量の標識化合物を抗体へ結合させる最も実用的な方法として、チラミドシグナル増感法(非特許文献4参照)が知られている。この方法は、チラミド(Tyramide)化合物が、過酸化水素の存在下において、ペルオキシダーゼ(Peroxidase)の触媒作用によりラジカル化され、その近傍にある芳香属化合物と非特異的に共有結合する性質を利用し、抗原とペルオキシダーゼを結合させた抗体とを反応させた後、標識物質に結合したチラミドをペルオキシダーゼの周辺にある組織やブロッキング剤に含まれるアミノ酸等の芳香属化合物と共有結合させることにより集積させて増感する方法である。チラミドシグナル増感法はペルオキシダーゼでチラミドをラジカル化させることが肝要であり、ラジカルの寿命は短いために、シグナル/ノイズ比の制御が非常に難しい。
【0009】
一方、オリゴヌクレオチドを標識する標識する方法として、3’末端側に(XY)で表される繰り返し配列(ここで、XとYはアデニンとチミン若しくはウラシル、又はグアニンとシトシンの組合せからなり、nは1以上の整数を表す)を有するオリゴヌクレオチドを、前記繰り返し配列を構成するヌクレオチドの標識体及び5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を欠損したDNAポリメラーゼを用いて前記繰り返し配列を付加伸長させる方法が知られている(特許文献1)。この方法は、3’末端側に(XY)で表される繰り返し配列を有するオリゴヌクレオチドの自己伸長により生成される伸長部分に標識化ヌクレオチドを取り込ませ、オリゴヌクレオチドを標識する方法である。
【特許文献1】特開平11−75880号公報
【非特許文献1】Sano,T.等,「Science」,1992年,第258巻,p.120−122
【非特許文献2】Cao,P.等,「The Lancet」,2000年,第356巻,p.1002−1003
【非特許文献3】Nuovo,GJ.,「PCR Methods Appl.」,1995年,第4巻,S151−S167
【非特許文献4】Strappe,PM.等,「Journal of Virological Methods」,1997年,第67巻,p.103−112
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、標的抗原を高感度に検出することができる方法及びキットを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、標的抗原が細胞表面抗原又は細胞内抗原である場合、標的抗原を高感度に検出することができるとともに、標的抗原の細胞内分布を検出することができる方法及びキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の方法及びキットを提供する。
【0013】
(1)下記工程(a)〜(d)を含む、標的抗原の検出方法。
(a)標的抗原と1種又は2種以上の抗体とを反応させ、前記標的抗原と前記抗体とを含む抗原抗体複合体を形成させる工程
(b)前記工程(a)を行う前、行う際又は行った後に、一般式(I)〜(IV):


[式中、Xはアデニン、チミン又はウラシルを表し、Xがアデニンを表すときYはチミン又はウラシルを表し、Xがチミン又はウラシルを表すときYはアデニンを表し、Zは任意の塩基配列を表し、nは2以上の整数を表す。]
のいずれかで表される塩基配列からなる一本鎖核酸の5’末端を、前記抗体に結合させる工程
(c)前記工程(a)及び(b)を行った後に、デオキシアデノシン三リン酸とデオキシチミジン三リン酸及び/又はデオキシウリジン三リン酸とを含むデオキシヌクレオシド三リン酸の存在下、かつ前記抗原抗体複合体の形成を維持できる温度下において、前記一本鎖核酸にDNAポリメラーゼを作用させる工程
(d)前記工程(c)を行った後に、前記抗原抗体複合体を構成する前記抗体に結合した前記一本鎖核酸の自己伸長を検出する工程
【0014】
(2)前記工程(c)で使用する前記DNAポリメラーゼが、エシェリキア(Escherichia)属、バチラス(Bacillus)属、サーモコッカス(Thermococcus)属、テルムス(Thermus)属、ピロコッカス(Pyrococcus)属若しくはサーモトガ(Thermotoga)属の微生物に由来するDNAポリメラーゼ、又はバクテリオファージに由来するDNAポリメラーゼである、前記(1)記載の方法。
【0015】
(3)前記工程(c)で使用する前記DNAポリメラーゼが、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性及び3’→5’エキソヌクレアーゼ活性の一方又は両方を有しないDNAポリメラーゼである、前記(1)記載の方法。
【0016】
(4)前記工程(c)において使用する前記デオキシヌクレオシド三リン酸が、標識化デオキシアデノシン三リン酸、標識化デオキシチミジン三リン酸又は標識化デオキシウリジン三リン酸を含み、
前記工程(d)において、前記一本鎖核酸の伸長部分に取り込まれた前記標識化デオキシアデノシン三リン酸、前記標識化デオキシチミジン三リン酸又は前記標識化デオキシウリジン三リン酸を検出することにより、前記一本鎖核酸の自己伸長を検出する、前記(1)記載の方法。
【0017】
(5)前記工程(d)において、核酸の二重らせん構造にインターカレーションできる標識物質と前記一本鎖核酸とを反応させ、前記一本鎖核酸の分子内二重らせん構造にインターカレーションした前記標識物質を検出することにより、前記一本鎖核酸の自己伸長を検出する、前記(1)記載の方法。
【0018】
(6)前記工程(b)において、前記一本鎖核酸の5’末端と前記抗体とを、アビジン又はその誘導体とビオチン又はその誘導体との結合を介して結合させる、前記(1)記載の方法。
【0019】
(7)前記工程(b)において、前記一本鎖核酸の5’末端と前記抗体とを、プロテインA、プロテインG又はそれらの誘導体と前記抗体との結合を介して結合させる、前記(1)記載の方法。
【0020】
(8)前記工程(b)において、前記一本鎖核酸の5’末端と前記抗体とを、共有結合を介して結合させる、前記(1)記載の方法。
【0021】
(9)標的抗原に対する抗体と、一般式(I)〜(IV):

[式中、Xはアデニン、チミン又はウラシルを表し、Xがアデニンを表すときYはチミン又はウラシルを表し、Xがチミン又はウラシルを表すときYはアデニンを表し、Zは任意の塩基配列を表し、nは2以上の整数を表す。]
のいずれかで表される塩基配列からなる一本鎖核酸とを含む、標的抗原の検出用キット。
【発明の効果】
【0022】
本発明の方法及びキットによれば、標的抗原を高感度に検出することができる。また、標的抗原が細胞表面抗原又は細胞内抗原である場合、標的抗原を高感度に検出することができるとともに、標的抗原の細胞内分布を検出することができる。
【0023】
本発明の方法及びキットによれば、一本鎖核酸の自己伸長の程度を調節することにより、抗原の検出感度を自在に調節することができる。
【0024】
本発明の方法及びキットによれば、多検体について標的抗原の有無を同時に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明に係る標的抗原の検出方法は、工程(a)〜(d)を含む限り、その他の工程を含むことができる。
以下、工程(a)〜(d)について詳細に説明する。
【0026】
〔工程(a)〕
工程(a)は、標的抗原と1種又は2種以上の抗体とを反応させ、前記標的抗原と前記抗体とを含む抗原抗体複合体を形成させる工程である。
【0027】
標的抗原は、抗原抗体反応を生じさせることができる限り特に限定されるものではなく、免疫原性を有する抗原(完全抗原)であってもよいし、免疫原性を有しない抗原(不完全抗原)であってもよい。標的抗原としては、例えば、タンパク質、ペプチド、ホルモン、糖鎖、核酸、脂質等が挙げられる。具体的には、細胞、血液、尿等から抽出されたタンパク質、ペプチド、ホルモン、糖鎖、核酸、脂質等のうち、特定のものを標的抗原として選択することができる。また、各種環境の土壌、水等から抽出したタンパク質、ペプチド、ホルモン、糖鎖、核酸、脂質等のうち、特定のものを標的抗原として選択することができる。さらに、細胞の表面又は内部に含まれるタンパク質、ペプチド、ホルモン、糖鎖、核酸、脂質等のうち、特定のものを標的抗原として選択することができる。
【0028】
本発明によれば、標的抗原の種類に関わらず、標的抗原の有無を高感度に検出することができる。標的抗原が細胞表面抗原又は細胞内抗原である場合、細胞表面抗原又は細胞内抗原の有無を高感度に検出することができるとともに、細胞表面抗原又は細胞内抗原の細胞内分布を検出することができる。なお、細胞表面抗原又は細胞内抗原は、生体を構成していない細胞(例えば、ヒトを含む哺乳動物、昆虫、植物等から採取した細胞又はその培養細胞)の表面又は内部に含まれる抗原である。
【0029】
細胞表面抗原は特に限定されるものではないが、その具体例としては、CD抗原、ウイルスレセプター、ホルモンレセプター、細胞接着分子等が挙げられる。細胞内抗原は特に限定されるものではないが、その具体例としては、ミトコンドリア構成タンパク質、ゴルジ体構成タンパク質、核構成タンパク質、ウイルス抗原等が挙げられる。
【0030】
標的抗原と反応させる抗体としては、少なくとも、標的抗原に対する1種又は2種以上の抗体が使用されるが、これに加えて、一次抗体に対する1種又は2種以上の二次抗体、・・・、k次抗体に対する1種又は2種以上の(k+1)次抗体を使用することができる。すなわち、標的抗原と抗体との抗原抗体反応により形成される抗原抗体複合体は、少なくとも、標的抗原と標的抗原に対する一次抗体とを含むが、これに加えて、一次抗体に対する二次抗体、・・・・・、k次抗体に対する(k+1)次抗体を含むことができる。なお、kは1以上の整数を表す。
【0031】
標的抗原と反応させる抗体としては、通常、標的抗原に対する1種又は2種以上の一次抗体を単独で使用するか、あるいは、標的抗原に対する1種又は2種以上の一次抗体と一次抗体に対する1種又は2種以上の二次抗体とを組み合わせて使用する。標的抗原の検出感度を向上させる点からは、標的抗原に対する1種又は2種以上の一次抗体と一次抗体に対する1種又は2種以上の二次抗体とを組み合わせて使用することが好ましい。
【0032】
抗体は、目的の反応性(例えば、標的抗原に対する反応性、一次抗体に対する反応性)を有する限り、抗体の断片であってもよく、抗体の断片としては、例えば、Fab断片、F(ab)’断片、単鎖抗体(scFv)等が挙げられる。また、抗体は、モノクローナル抗体であってもよいし、ポリクローナル抗体であってもよいが、モノクローナル抗体であることが好ましい。モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体は、いずれのクラスのものであってもよい。
【0033】
抗体は、常法に従って作製することができる。また、市販の抗体を使用することができる。
【0034】
抗原抗体反応は、常法に従って行うことができ、その反応条件は特に限定されるものではない。抗原抗体反応は、例えば、以下の反応条件に従って行うことができる。
【0035】
反応温度は、通常4〜50℃、好ましくは4〜42℃、さらに好ましくは20〜40℃である。
【0036】
反応時間は、通常5分間〜24時間、好ましくは10分間〜16時間、さらに好ましくは30分間〜120分間である。
【0037】
反応溶媒としては、例えば、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、トリス緩衝液、トリシン緩衝液等を使用することができる。
【0038】
標的抗原と反応させる抗体の量は、標的抗原1モルに対して通常3〜100モル、好ましくは5〜50モル、さらに好ましくは5〜20モルである。
【0039】
標的抗原と抗体とを反応させる際、抗原抗体反応が妨げられない限り、夾雑物が存在していてもよい。
【0040】
抗原抗体反応は、通常、プラスチック、ガラス、ナイロン膜、セルロース膜等の固相上で行われる。
【0041】
抗原抗体反応を行う前に、標的抗原又は抗体を予め固相に結合させておいてもよい。これにより、抗原抗体複合体を形成していない抗体(以下「未反応の抗体」という場合がある。)を容易かつ効率的に除去することができる。未反応の抗体の除去は、工程(a)を行った後から工程(d)を行う前までのいずれかの時点で行うことが好ましく、工程(a)を行った後から工程(b)を行う前のいずれかの時点で行うことがさらに好ましい。工程(a)を行った後から工程(b)を行う前のいずれかの時点で未反応の抗体の除去することにより、未反応の抗体と一本鎖核酸との結合を防止することができる。
【0042】
標的抗原又は抗体を固定できる固相としては、例えば、プラスチック、ガラス、ナイロン膜、セルロース膜等が挙げられる。
【0043】
標的抗原又は抗体の固相への固定は常法に従って行うことができ、例えば、イオン結合、共有結合等を介して固定することができる。
【0044】
固相の洗浄液は、抗原抗体複合体の形成を維持できる限り特に限定されるものではなく、その具体例としては、Tween20含有リン酸緩衝化生理食塩水、Tween20含有トリス緩衝化生理食塩水等が挙げられる。
【0045】
標的抗原が細胞表面抗原又は細胞内抗原である場合、抗原抗体反応を行う前に、細胞をTritonX−100等の界面活性剤で処理して細胞膜を脱脂することにより、抗体の細胞透過性を向上させることが好ましい。また、細胞がパラフィン封入細胞である場合、トリプシン又はプロテアーゼ処理、あるいはマイクロウェーブ処理により抗原を露出させることが好ましい。
【0046】
〔工程(b)〕
工程(b)は、前記工程(a)を行う前、行う際又は行った後に、一般式(I)〜(IV):

[式中、Xはアデニン、チミン又はウラシルを表し、Xがアデニンを表すときYはチミン又はウラシルを表し、Xがチミン又はウラシルを表すときYはアデニンを表し、Zは任意の塩基配列を表し、nは2以上の整数を表す。]
のいずれかで表される塩基配列からなる一本鎖核酸の5’末端を、前記抗体に結合させる工程である。
【0047】
一般式(I)〜(IV)において、「5’」は一本鎖核酸の5’末端を表し、「3’」は一本鎖核酸の3’末端を表す。
【0048】
一般式(I)〜(IV)において、nで表される整数は2以上、好ましくは4以上、さらに好ましくは7以上である。nで表される整数が大きくなるほど、一般式(I)〜(IV)で表される塩基配列からなる一本鎖核酸の自己伸長を効率よく開始させることができる。
【0049】
一般式(I)〜(IV)において、nで表される整数の上限は特に限定されるものではないが、通常50、好ましくは25、さらに好ましくは15である。nで表される整数が大きくなるほど、一本鎖核酸の合成に要する費用が高くなるとともに収率が下がること、及びnで表される整数が大きくなるほど、細胞浸透性が悪くなることを考慮して、nで表される整数の上限は、上記範囲に設定することが好ましい。
【0050】
一般式(III)又は(IV)において、Zで表される塩基配列及びその塩基数は特に限定されるものではない。Zで表される塩基配列の塩基数は、通常2〜50塩基、好ましくは5〜30塩基、さらに好ましくは10〜25塩基である。なお、本明細書において、「塩基配列」という用語は、2個以上の塩基からなるものの他、1個の塩基からなるものも含む意味で使用される。
【0051】
一般式(I)〜(IV)のいずれかで表される一本鎖核酸の自己伸長は以下のように進行する。以下の説明において、アデニンとチミン及び/又はウラシルとの繰り返し配列を「XY配列」といい、XY配列には、例えば、5’−(XY)−3’、5’−(YX)−3’、5’−(XY)−X−3’、5’−Y−(XY)−3’等が含まれる。なお、tは1以上の整数を表す。
【0052】
一本鎖核酸の3’末端を含むXY配列(以下「3’末端XY配列」という。)が、3’末端XY配列の5’側に位置するXY配列にアニーリングする(自己アニーリングによる分子内二本鎖の形成)。そして、3’末端XY配列がプライマーとしての役割を果たすとともに、3’末端XY配列がアニーリングしたXY配列の5’側に位置する塩基配列が鋳型としての役割を果たし、DNAポリメラーゼの作用により3’末端XY配列の3’末端に相補的塩基配列が付加される(自己プライミングによる自己伸長)。
【0053】
一本鎖核酸の3’末端に付加される塩基配列(一本鎖核酸の伸長部分)が長いほど、工程(d)において一本鎖核酸の自己伸長の検出感度が向上する。したがって、一本鎖核酸が、自己アニーリングによる分子内二本鎖の形成と、自己プライミングによる自己伸長と、分子内二本鎖の融解とを繰り返すことができることが好ましい。一本鎖核酸が、これらを繰り返すためには、一本鎖核酸の3’末端に付加される塩基配列がXY配列である(すなわち、一本鎖核酸の自己伸長の後も一本鎖核酸の塩基配列が一般式(I)〜(IV)で表される)ことが必要である。
【0054】
一般式(I)又は(II)で表される一本鎖核酸の場合、工程(c)で使用するデオキシヌクレオシド三リン酸に、デオキシアデノシン三リン酸、デオキシチミジン三リン酸及びデオキシウリジン三リン酸以外の種類のデオキシヌクレオシド三リン酸が含まれているか否かに関わらず、一本鎖核酸の3’末端に付加される塩基配列はXY配列である。
【0055】
一般式(III)又は(IV)で表される一本鎖核酸の場合、一本鎖核酸の3’末端に付加される塩基配列がXY配列であるためには、自己プライミングによる自己伸長の際、Zで表される塩基配列を鋳型とした伸長反応が進行しないか、又はZで表される塩基配列を鋳型として伸長する塩基配列がXY配列であることが必要である。
【0056】
例えば、工程(c)で使用するデオキシヌクレオシド三リン酸が、デオキシアデノシン三リン酸とデオキシチミジン三リン酸及び/又はデオキシウリジン三リン酸とから構成され、他種のデオキシヌクレオシド三リン酸を含まない場合、Zで表される塩基配列がその3’末端側にグアニン及び/又はシトシンのみからなる塩基配列を含めば、Zで表される塩基配列の3’側からZで表される塩基配列の方向へ進行してきた伸長反応は、Zで表される塩基配列の3’末端で停止するので、Zで表される塩基配列を鋳型とした伸長反応は進行しない。
【0057】
Zで表される塩基配列がその3’末端にグアニン及び/又はシトシンのみからなる塩基配列を含まなければ、グアニン及び/又はシトシンのみからなる塩基配列が含まれる位置まで伸長反応が進行するが、Zで表される塩基配列の3’末端からグアニン及び/又はシトシンのみからなる塩基配列が含まれる位置までの塩基配列がXY配列であれば、Zで表される塩基配列を鋳型として伸長する塩基配列はXY配列である。
【0058】
Zで表される塩基配列がXY配列を含む場合、3’末端XY配列がZで表される塩基配列にアニーリングし、Zで表される塩基配列を鋳型とした伸長反応が進行する場合がある。この場合、Zで表される塩基配列に含まれるXY配列の5’末端にグアニン及び/又はシトシンのみからなる塩基配列が隣接していれば、Zで表される塩基配列を鋳型として伸長する塩基配列はXY配列である。
【0059】
一本鎖核酸の5’末端を結合させる抗体は、工程(a)で使用する抗体のうち、いずれの抗体であってもよい。一本鎖核酸の5’末端を結合させる抗体としては、例えば、標的抗原に対する1種又は2種以上の一次抗体、一次抗体に対する1種又は2種以上の二次抗体等が挙げられる。
【0060】
一本鎖核酸の5’末端を抗体に結合させる方法は特に限定されるものではなく、その具体例としては、特定物質間の特異的相互作用、共有結合(例えば、アミド結合、ジスルフィド結合、チオエーテル結合)等を利用した方法が挙げられる。これらの方法によって核酸と抗体とを結合させることができるように、常法に従って抗体及び/又は核酸に適当な化学修飾を施すことができる。
【0061】
特定物質間の特異的相互作用としては、例えば、アビジン又はその誘導体(例えば、ストレプトアビジン、エクストラアビジン(ExtraAvidin)、ニュートロアビジン(NeutrAvidin))/ビオチン又はその誘導体(例えば、イミノビオチン、カルボビオチン、ビオチンヒドラジド);IgGのFcフラグメント/プロテインA、プロテインG又はそれらの誘導体(例えば、プロテインAとGとの融合タンパク質であるプロテインA/G(ピアス社製)、抗体との結合に寄与しない領域を除いた改変体であるプロテインG’(シグマ社製));IgG、IgM、IgA、IgE又はIgDのκ軽鎖/プロテインL又はそれらの誘導体(例えば、プロテインLとAとの融合タンパク質であるプロテインLA(シグマ社製));マルトース結合タンパク質/マルトース;ポリヒスチジンペプチド/ニッケル、コバルト等の金属イオン;グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/グルタチオン;カルモジュリン/カルモジュリン結合ペプチド;ATP結合タンパク質/ATP;核酸/相補的核酸;受容体タンパク質/リガンド;酵素/基質の特異的相互作用が挙げられ、好ましい特異的相互作用としては、アビジン又はその誘導体/ビオチン又はその誘導体;IgGのFcフラグメント/プロテインA、プロテインG又はそれらの誘導体の特異的相互作用が挙げられる。
【0062】
物質a及びb間の特異的相互作用を利用する場合、例えば、物質a(例えばビオチン又はその誘導体)を核酸の5’末端に結合させるとともに、物質b(例えばアビジン又はその誘導体)を抗体の抗原認識部位以外の部位に結合させる。物質bを核酸の5’末端に結合させるとともに、物質aを抗体の抗原認識部位以外の部位に結合させてもよい。そして、物質aと物質bとを結合させることにより、核酸と抗体とを結合させることができる。但し、IgGのFcフラグメント/プロテインA又はプロテインGの特異的相互作用のように、抗体自体が物質a又は物質bである場合、物質a又は物質bを抗体に結合させる必要はない。
【0063】
1分子の物質bに対して複数分子の物質aが結合できる場合(例えば、物質aがビオチン又はその誘導体であり、物質bがアビジン又はその誘導体である場合)、物質aを核酸及び抗体の両方に結合させることもできる。そして、核酸に結合させた物質aと、抗体に結合させた物質aとを、物質bを介して結合させることにより、核酸と抗体とを結合させることができる。
【0064】
特異的相互作用を生じる物質は常法に従って核酸及び/又は抗体に結合させることができる。
【0065】
例えば、核酸の5’末端に導入したアミノ基と、プロテインA、プロテインG又はそれらの誘導体が有するカルボキシル基と反応させることにより、ペプチド結合を介して、プロテインA、プロテインG又はそれらの誘導体を核酸に結合させることができる。
【0066】
また、ビオチンアミダイドを用いて核酸を合成することにより核酸の5’末端にビオチンを導入することができる。
【0067】
また、スクシンイミジルビオチンと抗体が有する一級アミン基とを反応させることにより、アミド結合を介して、ビオチンを抗体に結合させることができる。
【0068】
また、還元した抗体(スルフヒドリル基を有する)とマレイミド活性化アビジンとを反応させることにより、マレイミドとスルフヒドリル基との結合を介して、アビジンを抗体に結合させることができる。
【0069】
また、核酸の5’末端に導入したアミノ基と、アビジン又はそれらの誘導体が有するカルボキシル基と反応させることにより、ペプチド結合を介して、アビジン又はそれらの誘導体を核酸に結合させることができる。
【0070】
特異的相互作用を生じる物質を核酸及び/又は抗体に結合させる時点は、工程(b)を行う前である限り特に限定されるものではないが、工程(a)を行う際又は行った後に工程(b)を行う場合には、工程(a)を行う前であることが好ましい。
【0071】
共有結合の形成を利用する場合、核酸又は抗体が有する官能基を利用して共有結合を形成させることができる。共有結合を形成できる官能基としては、例えば、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、スルフヒドリル基、アルデヒド基等が挙げられる。
【0072】
核酸又は抗体への所望の官能基の導入は、核酸又は抗体が有する官能基と反応できる架橋剤を使用して行うことができる。架橋剤としては、例えば、N−スクシンイミジル(4−イオードアセチル)アミノベンゾエート(N−succinimidyl(4−iodoacetyl)aminobenzoate)(SIAB)、ジマレイミド(dimaleimide)、ジチオ−ビス−ニトロ安息香酸(dithio−bis−nitrobenzoic acid)(DTNB)、N−スクシンイミジル−S−アセチル−チオアセテート(N−succinimidyl−S−acetyl−thioacetate)(SATA)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(N−succinimidyl−3−(2−pyridyldithio)propionate)(SPDP)、スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(succinimidyl 4−(N−maleimidomethyl)cyclohexane−1−carboxylate)(SMCC)、6−ヒドラジノニコチミド(6−hydrazinonicotimide)(HYNIC)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシニミドエステル(m−maleimidobenzoyl−N−hydroxysuccinimide ester)(MBC)等の多官能性試薬が挙げられる。
【0073】
例えば、抗体が有するカルボキシル基を利用する場合、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)等のカルボジイミド類でカルボキシル基を活性化させた後、核酸が有するアミノ基と反応させることにより、抗体と核酸とをアミド結合させることができる。また、抗体が有するアミノ基を利用する場合には、無水コハク酸等の環状酸無水物を用いてアミノ基をカルボキシル基に変換した後、核酸が有するアミノ基と反応させることにより、抗体と核酸とをアミド結合させることができる。
【0074】
工程(b)を行う時点は、工程(a)を行う前、行う際又は行った後のいずれの時点であってもよいが、特定物質間の特異的相互作用を利用する場合には、工程(a)を行う際又は行った後であることが好ましく、共有結合を利用する場合には、工程(a)を行う前であることが好ましい。
【0075】
抗体に結合していない一本鎖核酸(以下「未反応の一本鎖核酸」という場合がある。)、又は未反応の抗体に結合した一本鎖核酸が存在する場合には、これらの一本鎖核酸を工程(d)を行う前に除去することが好ましく、工程(c)を行う前に除去することがさらに好ましい。工程(c)を行う前に除去することにより、抗原抗体複合体を構成する抗体に結合した一本鎖核酸の自己伸長を効率よく開始及び進行させることができる。
【0076】
〔工程(c)〕
工程(c)は、前記工程(a)及び(b)を行った後に、デオキシアデノシン三リン酸とデオキシチミジン三リン酸及び/又はデオキシウリジン三リン酸とを含むデオキシヌクレオシド三リン酸の存在下、かつ前記抗原抗体複合体の形成を維持できる温度条件下において、前記一本鎖核酸にDNAポリメラーゼを作用させる工程である。
【0077】
デオキシヌクレオシド三リン酸は、デオキシアデノシン三リン酸とデオキシチミジン三リン酸及び/又はデオキシウリジン三リン酸とを含む限り、その他の種類のデオキシヌクレオシド三リン酸(例えば、デオキシグアノシン三リン酸、デオキシシチジン三リン酸等)を含んでいても含んでいなくてもよい。
【0078】
デオキシヌクレオシド三リン酸の濃度は特に限定されるものではないが、通常50μM〜1mM、好ましくは100〜750μM、さらに好ましくは200〜500μMである。
【0079】
デオキシヌクレオシド三リン酸は、標識化デオキシアデノシン三リン酸、標識化デオキシチミジン三リン酸又は標識化デオキシウリジン三リン酸を含むことができる。この場合、工程(d)において、一本鎖核酸の伸長部分に取り込まれた標識化デオキシアデノシン三リン酸、標識化デオキシチミジン三リン酸又は標識化デオキシウリジン三リン酸を検出することにより、一本鎖核酸の自己伸長を検出することができる。
【0080】
標識デオキシヌクレオシド三リン酸と未標識デオキシヌクレオシド三リン酸との混合比率は特に限定されるものではないが、通常1:10〜1:800、好ましくは1:20〜1:640、さらに好ましくは1:40〜1:160である。
【0081】
一本鎖核酸にDNAポリメラーゼを作用させる際に使用する溶媒は、抗原抗体複合体の形成を維持できるとともに、DNAポリメラーゼ活性を阻害しない限り特に限定されるものではなく、その具体例としては、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、トリシン緩衝液等が挙げられる。これらの溶媒は、酵素反応に必要な二価陽イオン、好ましくはマグネシウムイオンを含み、必要に応じて血清アルブミン、グリセロール、2−メルカプトエタノール、ジチオスレイトール等を含むことができる。これらの物質は、DNAポリメラーゼの酸化防止等の活性保護作用を有する。
【0082】
一本鎖核酸にDNAポリメラーゼを作用させる際の温度は、抗原抗体複合体の形成を維持できる限り特に限定されるものではないが、通常4〜75℃、好ましくは20〜60℃、さらに好ましくは25〜45℃である。
【0083】
一本鎖核酸にDNAポリメラーゼを作用させる時間は、一本鎖核酸の3’末端に十分の長さの塩基配列を付加できる限り特に限定されるものではないが、通常30分間〜24時間、好ましくは1〜8時間、さらに好ましくは2〜5時間である。
【0084】
一本鎖核酸に作用させるDNAポリメラーゼ量は一本鎖核酸の3’末端に十分の長さの塩基配列を付加できる限り特に限定されるものではないが、一本鎖核酸1nmole/0.1mLに対して通常1〜50U、好ましくは2〜25U、さらに好ましくは5〜20Uである。
【0085】
DNAポリメラーゼは、抗原抗体複合体の形成を維持できる温度条件において、DNAポリメラーゼ活性を発揮できる限り特に限定されるものではない。DNAポリメラーゼは、抗原抗体複合体の形成を維持できる温度条件において、一本鎖核酸の3’末端に十分の長さの塩基配列を付加できるようなDNAポリメラーゼ活性を有することが好ましい。「十分の長さ」とは、通常1,000〜50,000塩基、好ましくは2,000〜50,000塩基、さらに好ましくは5,000〜50,000塩基を意味し、DNAポリメラーゼは、十分の長さの塩基配列を通常30分間〜12時間、好ましくは30分間〜6時間、さらに好ましくは30分間〜2時間で付加できるようなDNAポリメラーゼ活性を有することが好ましい。
【0086】
DNAポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ活性を有する限り、天然に存在するものであってもよいし、天然に存在するものに改変を加えたものであってもよい。
【0087】
抗原抗体複合体の形成を維持できる温度条件において、DNAポリメラーゼ活性を発揮することができるDNAポリメラーゼとしては、例えば、エシェリキア(Escherichia)属、バチラス(Bacillus)属、サーモコッカス(Thermococcus)属、テルムス(Thermus)属、ピロコッカス(Pyrococcus)属、サーモトガ(Thermotoga)属等の微生物に由来するDNAポリメラーゼ、バクテリオファージに由来するDNAポリメラーゼが挙げられる。
【0088】
エシェリキア(Escherichia)属の微生物としては、例えば、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、エシェリキア・フェルグソニ(Escherichia fergusonii)等が挙げられ、エシェリキア(Escherichia)属の微生物に由来するDNAポリメラーゼとしては、例えば、DNAポリメラーゼI、クレノウフラグメント等が挙げられる。
【0089】
バチラス(Bacillus)属の微生物としては、例えば、バチラス・スティーロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、バチラス・カルドテナックス(Bacillus caldotenax)等が挙げられ、バチラス(Bacillus)属の微生物に由来するDNAポリメラーゼとしては、例えば、BstDNAポリメラーゼ、BcaBESTDNAポリメラーゼ等が挙げられる。
【0090】
サーモコッカス(Thermococcus)属の微生物としては、例えば、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)、サーモコッカス・9° N−7(Thermococcus sp.9degreeN−7)等が挙げられ、サーモコッカス(Thermococcus)属の微生物に由来するDNAポリメラーゼとしては、例えば、TliDNAポリメラーゼ、TherminatorDNAポリメラーゼ、9degree NmDNAポリメラーゼ等が挙げられる。
【0091】
テルムス(Thermus)属の微生物としては、例えば、テルムス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、テルムス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、テルムス・フラーバス(Thermus flavus)等が挙げられ、テルムス(Thermus)属の微生物に由来するDNAポリメラーゼとしては、例えば、TthDNAポリメラーゼ、TaqDNAポリメラーゼ、TflDNAポリメラーゼ等が挙げられる。
【0092】
ピロコッカス(Pyrococcus)属の微生物としては、例えば、ピロコッカス・フィルオサス(Pyrococcus furiosus)等が挙げられ、ピロコッカス(Pyrococcus)属の微生物に由来するDNAポリメラーゼとしては、例えば、Pfuポリメラーゼ等が挙げられる。
【0093】
サーモトガ(Thermotoga)属の微生物としては、例えば、サーモトガ・マリティーマ(Thermotoga maritima)等が挙げられ、サーモトガ(Thermotoga)属の微生物に由来するDNAポリメラーゼとしては、例えば、Ultmaポリメラーゼ(パーキンエルマー社製)等が挙げられる。
【0094】
バクテリオファージに由来するDNAポリメラーゼとしては、例えば、T4DNAポリメラーゼ、T7DNAポリメラーゼ等が挙げられる。
【0095】
好ましいDNAポリメラーゼとしては、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、バチラス・スティーロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、サーモコッカス・9° N−7(Thermococcus sp.9degreeN−7)等に由来するDNAポリメラーゼが挙げられる。
【0096】
DNAポリメラーゼは、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性及び3’→5’エキソヌクレアーゼ活性の一方又は両方を有しないことが好ましく、両方を有しないことがさらに好ましい。その理由は2つあり、1つは、テルムス(Thermus)属、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)等に由来するDNAポリメラーゼは、鋳型及びプライマーの非存在下でもDNA合成を行うが(Hanaki,K.等,Biochem.Biophys.Res.Commun.,238,113−118(1997);Ogata,N.等,Nucleic Acids Res.,26,4652−4656(1998))、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性及び3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を欠失させた、それらの改変DNAポリメラーゼは、鋳型及びプライマー非存在下ではDNA合成を行わない(Hanaki,K.等,Biochem.Biophys.Res.Commun.,244,210−219(1998);Hanaki,K.等,Biochem.Biophys.Res.Commun.,244,210−219(1998))からであり、もう1つは、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性及び3’→5’エキソヌクレアーゼ活性の一方又は両方を有するDNAポリメラーゼはアデニンとチミンとの繰り返し配列からなるDNAを消化する(Hanaki,K.等,Biochem.Biophys.Res.Commun.,244,210−219(1998))からである。
【0097】
5’→3’エキソヌクレアーゼ活性及び3’→5’エキソヌクレアーゼ活性の一方又は両方を欠損するDNAポリメラーゼは、これらの活性を担うドメインを欠失させることにより作製することができる。所定のドメインの欠失は、部位特異的変異誘発法等の公知の方法を用いて人為的に変異を導入することにより行うことができる。また、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性及び3’→5’エキソヌクレアーゼ活性の一方又は両方を欠損する市販のDNAポリメラーゼを利用することができる。
【0098】
抗原抗体複合体の形成を維持できる温度条件下において、一本鎖核酸は、自己アニーリングによる分子内二本鎖の形成と、分子内二本鎖の融解とを繰り返しているので、一本鎖核酸にDNAポリメラーゼが作用すると、自己プライミングによる自己伸長が開始及び進行する。
【0099】
〔工程(d)〕
工程(d)は、前記工程(c)を行った後に、前記抗原抗体複合体を構成する前記抗体に結合した前記一本鎖核酸の自己伸長を検出する工程である。
【0100】
工程(a)〜(c)を行うことにより、抗原抗体複合体の形成が維持された状態のまま、一本鎖核酸が自己伸長する。したがって、工程(d)において、抗原抗体複合体を構成する抗体に結合した一本鎖核酸の自己伸長を検出することにより、抗原抗体複合体を検出することができる。標的抗原が存在する場合には抗原抗体複合体が形成され、標的抗原が存在しない場合には抗原抗体複合体が形成されないので、抗原抗体複合体を検出することにより、標的抗原を検出することができる。
【0101】
抗原抗体複合体を構成する抗体に結合した一本鎖核酸とともに、未反応の抗体に結合した一本鎖核酸、又は未反応の一本鎖核酸が存在する場合には、工程(d)を行う前に、これらの一本鎖核酸を除去することが好ましい。これにより、抗原抗体複合体を構成する抗体に結合した一本鎖核酸の自己伸長の検出精度を向上させることができる。
【0102】
未反応の抗体に結合した一本鎖核酸、又は未反応の一本鎖核酸は、工程(a)を行う前に予め標的抗原又は抗体を固相に固定しておき、工程(d)を行う前に、固相を洗浄することにより除去することができる。
【0103】
一本鎖核酸の自己伸長の検出方法は特に限定されるものではない。一本鎖核酸の自己伸長は、例えば、以下の方法に従って検出することができる。
工程(c)において使用するデオキシヌクレオシド三リン酸が、標識化デオキシアデノシン三リン酸、標識化デオキシチミジン三リン酸又は標識化デオキシウリジン三リン酸を含む場合、工程(d)において、一本鎖核酸の伸長部分に取り込まれた標識化デオキシアデノシン三リン酸、標識化デオキシチミジン三リン酸又は標識化デオキシウリジン三リン酸を検出することにより、一本鎖核酸の自己伸長を検出することができる。
【0104】
一本鎖核酸の伸長部分に取り込まれた標識化デオキシヌクレオシド三リン酸を検出する前に、一本鎖核酸の伸長部分に取り込まれずに残存する標識化デオキシヌクレオシド三リン酸(以下「未反応の標識化デオキシヌクレオシド三リン酸」という場合がある。)を除去することが好ましい。これにより、一本鎖核酸の伸長部分に取り込まれた標識化デオキシヌクレオシド三リン酸の検出精度を向上させることができる。
【0105】
未反応の標識化デオキシヌクレオシド三リン酸は、工程(a)を行う前に予め標的抗原又は抗体を固相に固定しておき、工程(c)を行った後に固相を洗浄することにより除去することができる。
【0106】
標識化デオキシヌクレオシド三リン酸が有する標識物質は特に限定されるものではなく、その具体例としては、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン等の蛍光物質;アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ等の酵素;ジゴキシゲニン;ビオチン;ルミノール、ルシゲニン、アクリジウムエステルの化学発光物質;ルシフェラーゼ、ルシフェリン等の生物発光物質;32P、35S等のアイソトープ等が挙げられ、好ましい標識物質としては、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン等の蛍光色素;アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ等の酵素;ジゴキシゲニン;ビオチン等が挙げられる。
【0107】
また、工程(d)において、核酸の二重らせん構造にインターカレーションできる標識物質と一本鎖核酸とを反応させ、一本鎖核酸の分子内二重らせん構造にインターカレーションした標識物質を検出することにより、一本鎖核酸の自己伸長を検出することができる。なお、一本鎖核酸は、自己アニーリングにより分子内二本鎖を形成するので、標識物質は分子内二本鎖を形成している一本鎖核酸にインターカレーションすることができる。
【0108】
核酸の二重らせん構造にインターカレーションできる標識物質は特に限定されるものではなく、その具体例としては、エチジウムブロマイド、DAPI(4,6−diamidino−2−phenylindole)、プロピジウムヨーダイド、等の蛍光物質が挙げられる。DAPIは、アデニン及びチミンの割合が大きい塩基配列に優先的にインターカレーションできる点で好ましい。
【0109】
本発明に係る標的抗原の検出用キットは、標的抗原に対する抗体と、一般式(I)〜(IV):

[式中、Xはアデニン、チミン又はウラシルを表し、Xがアデニンを表すときYはチミン又はウラシルを表し、Xがチミン又はウラシルを表すときYはアデニンを表し、Zは任意の塩基配列を表し、nは2以上の整数を表す。]
のいずれかで表される塩基配列からなる一本鎖核酸とを含む限り、その他の要素を含むことができる。
【0110】
その他の要素としては、例えば、デオキシアデノシン三リン酸とデオキシチミジン三リン酸及び/又はデオキシウリジン三リン酸とを含むデオキシヌクレオシド三リン酸、標識物質、DNAポリメラーゼ、固相、反応溶媒、核酸又は抗体を化学修飾するための試薬等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を含むことができる。
【0111】
標的抗原と一般式(I)〜(IV)のいずれかで表される塩基配列からなる一本鎖核酸とは、結合した状態でキットに含まれていてもよいし、結合していない状態でキットに含まれていてもよい。また、結合できるように化学修飾された状態でキットに含まれていてもよいし、結合できるように化学修飾されていない状態でキットに含まれていてもよい。
【0112】
本発明に係る標的抗原の検出方法及び検出用キットにおいて、標的抗原がタンパク質である場合、抗体の代わりに、標的タンパク質に特異的に結合できるその他の物質(以下「その他の結合性物質」という。)を使用することができる。
【0113】
標的タンパク質/その他の結合性物質の組み合わせとしては、例えば、アビジン又はその誘導体(例えば、ストレプトアビジン、エクストラアビジン(ExtraAvidin)、ニュートロアビジン(NeutrAvidin))/ビオチン又はその誘導体(例えば、イミノビオチン、カルボビオチン、ビオチンヒドラジド);抗体又はその断片/プロテインA、プロテインG、プロテインL又はそれらの誘導体(例えば、プロテインAとGとの融合タンパク質であるプロテインA/G(ピアス社製)、抗体との結合に寄与しない領域を除いた改変体であるプロテインG’(シグマ社製)、プロテインLとAとの融合タンパク質であるプロテインLA(シグマ社製));受容体タンパク質/リガンド(例えば、ホルモン受容体/環境ホルモン、Fas受容体/Fasリガンド);酵素/基質;マルトース結合タンパク質/マルトース;ポリヒスチジンペプチド/ニッケル、コバルト等の金属イオン;グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/グルタチオン;カルモジュリン/カルモジュリン結合ペプチド;ATP結合タンパク質/ATP;F−アクチン/ファロトキシン;デオキシリボヌクレアーゼ/G−アクチン等が挙げられる。
【0114】
その他の結合性物質を使用する場合、工程(a)〜(c)を行うことにより、標的タンパク質と上記結合性物質とを含む複合体の形成が維持された状態のまま、一本鎖核酸が自己伸長する。したがって、工程(d)において、上記複合体を構成する上記結合性物質に結合した一本鎖核酸の自己伸長を検出することにより、上記複合体を検出することができる。標的タンパク質が存在する場合には上記複合体が形成され、標的タンパク質が存在しない場合には上記複合体が形成されないので、上記複合体を検出することにより、標的タンパク質を検出することができる。
【実施例】
【0115】
以下、実施例に基づき、本発明についてさらに詳細に説明する。
〔実施例1〕アビジン化抗体の調製
リン酸緩衝食塩水(PBS,pH7.6)で5mg/mLの濃度に調整した抗マウスIgGヤギIgG(ジャクソンイムノリサーチ社製)に、0.1mLの2−メルカプトエチラミン塩酸塩溶液(10g/Lの2−Mercaptoethlamine・HCl,0.1MのSodium Phospate,5mMのEDTA,pH7.6)を加え、37℃で90分間処理した。
【0116】
室温まで冷却した後、還元IgGを2−メルカプトエチラミン塩酸塩と分離するために、1.1mLの反応液をポリアクリルアミド脱塩カラムに通した後、マレイミド標識用バッファー(0.1MのSodium Phospate,5mMのEDTA,pH7.6)で溶出させた。
【0117】
還元IgGをアビジン化するために、1.9mg/mLの還元IgGと5mg/mLのマレイミド活性化NeutrAvidin Biotin−Binding Protein(ピアス社製)とを1mLずつ等量混合し、室温で3時間反応させた。
未反応のアビジンとEDTAとを除去するために、分子量10,000の物質を透過させる透析膜へ反応液を封入し、PBSを用いて4℃で一晩透析することにより、アビジン化抗体を得た。
【0118】
〔実施例2〕オリゴ(dA−dT)結合化抗体の調製
5’末端にアミノ基を導入したオリゴ(dA−dT)(5’−atatatatatatata−3’)0.5mgを1mole/Lのリン酸バッファー(pH7.4)0.5mLに溶解し、次いで、1mgのSulfo−SMCC(ピアス社製)を添加し、室温で1時間混和した。
【0119】
マレイミド標識化オリゴ(dA−dT)を精製するために、反応液をデキストラン脱塩カラムに通した後、マレイミド標識化オリゴ(dA−dT)を1mLのマレイミド標識用バッファーで溶出させた。
【0120】
マレイミド標識化オリゴ(dA−dT)と、実施例1で調製した1.9mg/mLの還元IgGとを1mLずつ等量混合し、4℃で一晩反応させた。
【0121】
未反応のマレイミド標識化オリゴ(dA−dT)とEDTAとを除去するために、分子量10,000の物質を透過させる透析膜へ反応液を封入し、PBSを用いて4℃で一晩透析することにより、オリゴ(dA−dT)結合化抗体を得た。
【0122】
〔実施例3〕オリゴ(dA−dT)の自己伸長による標識効率の比較
5’末端にビオチンを導入したオリゴ(dA−dT)(5’−atatatatatatata−3’)をTBST(25mMのTris,pH7.2,150mMのNaCl,0.1%のBSA,0.05%のTween20)に溶解し、1pM、10pM及び100pMのオリゴ(dA−dT)溶液を調製した。
【0123】
それぞれのオリゴ(dA−dT)溶液を0.1mL/ウェルでアビジン固相化96ウェルプレート(ピアス社製)に滴下し(N=4)、室温で30分間静置した。
【0124】
ウェルをTBSTで5回洗浄して未反応のオリゴ(dA−dT)を除去し、次いで、5U/100μLの酵素、0.2mMのdATP、0.2mMのdTTP、2.5μMのジゴキシゲニン標識dUTP(digoxigenin−11−dUTP,ロシュ社製)を含む酵素溶液を各酵素添付のバッファーで調製し、50μL/ウェルを滴下した。
【0125】
酵素反応に用いた酵素は、
(1)BstポリメラーゼLarge fragment(NEB社製,バチラス・スティーロサーモフィラス由来,5’→3’エキソヌクレアーゼ活性無し,3’→5’エキソヌクレアーゼ活性無し)(以下「Bst−LF」という。)
(2)△Tthポリメラーゼ(東洋紡社製,テルムス・サーモフィルス由来,5’→3’エキソヌクレアーゼ活性無し,3’→5’エキソヌクレアーゼ活性無し)
(3)Klenow fragment(exo−)(NEB社製,エシェリキア・コリ由来,5’→3’エキソヌクレアーゼ活性無し,3’→5’エキソヌクレアーゼ活性無し)(以下「KF−」という。)
(4)Klenow fragment(タカラバイオ社製,エシェリキア・コリ由来,5’→3’エキソヌクレアーゼ活性無し,3’→5’エキソヌクレアーゼ活性有り)(以下「KF」という。)
(5)KODポリメラーゼ(東洋紡社製,サーモコッカス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakaraensis)由来,5’→3’エキソヌクレアーゼ活性無し,3’→5’エキソヌクレアーゼ活性有り)
(6)Pfuポリメラーゼ(ストラテジーン社製,ピロコッカス・フィルオサス(Pyrococcus furiosus)由来,5’→3’エキソヌクレアーゼ活性無し,3’→5’エキソヌクレアーゼ活性有り)
(7)Stoffel fragment(アプライドバイオシステムズ社製,テルムス・アクアティカス由来,5’→3’エキソヌクレアーゼ活性無し,3’→5’エキソヌクレアーゼ活性無し)(以下「SF」という。)
(8)Therminatorポリメラーゼ(NEB社製,サーモコッカス・9° N−7由来,5’→3’エキソヌクレアーゼ活性無し,3’→5’エキソヌクレアーゼ活性無し)
(9)Ventポリメラーゼ(NEB社製,サーモコッカス・リトラリス由来,5’→3’エキソヌクレアーゼ活性無し,3’→5’エキソヌクレアーゼ活性有り)である。
【0126】
それぞれの反応バッファー組成は、Bst−LF、Pfuポリメラーゼ、Therminatorポリメラーゼ及びVentポリメラーゼについては、20mMのトリス塩酸(pH8.8)、10mMの塩化カリウム、10mMの硫安、2mMの硫化マグネシウム及び0.1%のトリトン系界面活性剤であり、△Tthポリメラーゼ及びSFについては、10mMのトリス塩酸(pH8.9)、1.5mMの塩化マグネシウム、80mMの塩化カリウム、0.1%のデオキシコール酸ナトリウム、0.1%のトリトン系界面活性剤及び0.5mg/mLのウシ血清アルブミンであり、KF−及びKFについては、10mMのトリス塩酸(pH7.5)、5mMの塩化マグネシウム及び7.5mMのジチオスレイトールであり、KODポリメラーゼについては、120mMのトリス塩酸(pH8)、1.5mMの塩化マグネシウム、10mMの塩化カリウム、6mMの硫安、0.1%のトリトン系界面活性剤及び10μg/mLのウシ血清アルブミンである。
【0127】
酵素反応を37℃で3時間行った後、TBSTでウェルを5回洗浄した。TBSTで50mU/mLの濃度に調整したペルオキシダーゼ(POD)標識抗ジゴキシゲニンFab断片(ロシュ社製)を50μL/ウェル滴下し、37℃で30分間静置した後、ウェルをTBSTで5回洗浄した。発色反応は、テトラメチルベンジジン(Tetramethylbenzidine,シグマ社製)溶液を30μL/ウェル滴下し、暗室中、室温で10分間行った。2規定の硫酸を70μL/ウェル滴下して発色反応を停止させた後、450nmの吸光度をマイクロプレートリーダーで測定した。
【0128】
結果を図1に示す。図1に示すように、KF−及びTherminatorポリメラーゼを用いた場合、固相化オリゴ(dA−dT)が1pM以上であれば、オリゴ(dA−dT)の伸長部分に取り込まれたジゴキシゲニン標識dUTPを有意に検出できた。また、Bst−LF、KF及びTherminatorポリメラーゼを用いた場合、固相化オリゴ(dA−dT)が10pM以上であれば、オリゴ(dA−dT)の伸長部分に取り込まれたジゴキシゲニン標識dUTPを有意に検出できた。
【0129】
〔実施例4〕オリゴ(dA−dT)の自己伸長による標識効率と標識dUTP濃度との関係
5’末端にビオチンを導入したオリゴ(dA−dT)(5’−atatatatatatata−3’)をTBSTで溶解して10pM溶液を調製し、アビジン固相化96ウェルプレートに0.1mL/ウェル滴下した。室温30分間静置した後、ウェルをTBSTで5回洗浄して未反応のオリゴ(dA−dT)を除去した。
【0130】
次いで、5U/100μLのKF−又はTherminatorポリメラーゼ、0.2mMのdATP、0.2mMのdTTP、200μM、100μM、50μM、25μM又は12.5μMのジゴキシゲニン標識dUTPを含む酵素溶液を各酵素添付のバッファーで調製し、50μL/ウェル滴下した(N=4)。
【0131】
酵素反応のために、プレートを37℃又は60℃で3時間静置した後、ウェルをTBSTで5回洗浄した。
以下、実施例3と同様の処理を行った後、吸光度を測定した。
【0132】
結果を図2に示す。図2に示すように、KF−は37℃において、Therminatorポリメラーゼは60℃において、ジゴキシゲニン標識dUTPの濃度がdTTP:標識dUTP=160:1であっても、dTTP:標識dUTP=10:1のときと遜色なく、オリゴ(dA−dT)の伸長部分に取り込まれたジゴキシゲニン標識dUTPを有意に検出できた。
【0133】
〔実施例5〕37℃でのオリゴ(dA−dT)の自己伸長による細胞内抗原の検出
3%ホルマリンで室温10分間処理した後、0.5%トリトン系界面活性剤を含むPBSで室温5分間処理したVero細胞を、一次抗体を用いて37℃で1時間処理し、次いで、二次抗体を用いて37℃で30分間処理した。一次抗体として、PBSで500倍希釈した抗ゴルジ蛋白58Kマウスモノクローナル抗体(シグマ社製)を用い、二次抗体として、PBSで1,000倍希釈したビオチン標識抗マウス抗体ウサギ免疫血清(ジャクソンイムノリサーチ社製)を用いた。
【0134】
次いで、PBSで2μg/mLの濃度に調整したストレプトアビジン(和光純薬工業社製)を用いて37℃で30分間処理し、最後に、PBSで10nMの濃度に調整した5’末端にビオチンを導入したオリゴ(dA−dT)(5’−atatatatatatata−3’)を用いて37℃で30分間処理した。
【0135】
酵素反応に用いた酵素は、
(1)Bst−LF
(2)△Tthポリメラーゼ
(3)KF−
(4)SF
(5)Therminatorポリメラーゼ
(6)Vent(exo−)ポリメラーゼ(NEB社製,サーモコッカス・リトラリス由来,5’→3’エキソヌクレアーゼ活性無し,3’→5’エキソヌクレアーゼ活性無し)である。
【0136】
Vent(exo−)ポリメラーゼの反応バッファー組成は、Bst−LFのものと同一である。
【0137】
酵素反応は、それぞれのバッファーに5U/100μLの酵素、0.2mMのdATP、0.2mMのdTTP、0.01mMのローダミン標識dUTP(Tetramethylrhodamine−5−dUTP、ロシュ社製)を含む溶液を用いて、37℃で3時間保温して行った。それぞれの処理の間に、5分間の振盪によるPBS洗浄を3回行った。顕微鏡観察は、励起フィルター:520〜550nm、蛍光フィルター:>580nm、60倍油浸対物レンズで実施した。
【0138】
結果を図3に示す。図3に示すように、Bst−LF又はKF−を用いた場合、ローダミン(赤色)による顕著な染色が認められた。
【0139】
〔実施例6〕60℃でのオリゴ(dA−dT)の自己伸長による細胞内抗原の検出
酵素反応を60℃で3時間保温して行った点以外は、実施例5と同様に処理した。
結果を図4に示す。図4に示すように、Bst−LF、KF−、Therminatorポリメラーゼ又はVent(exo−)ポリメラーゼを用いた場合、ローダミン(赤色)による顕著な染色が認められた。
【0140】
〔実施例7〕74℃でのオリゴ(dA−dT)の自己伸長による細胞内抗原の検出
酵素反応を74℃で3時間保温して行った点以外は、実施例5と同様に処理した。
結果を図5に示す。図5に示すように、Bst−LF又はKF−を用いた場合、ローダミン(赤色)による顕著な染色が認められた。
【0141】
〔実施例8〕DAPI(4,6−diamidino−2−phenylindole)を用いた細胞内抗原の検出
実施例5の方法に従い、酵素反応を、5U/100μLのKF−、0.2mMのdATP、0.2mMのdTTPを含む溶液を用いて37℃で3時間保温して行った。細胞は、抗原抗体反応を行っていない対照細胞とともに、PBSで3nMの濃度に調整したDAPIで染色した。顕微鏡観察は、励起フィルター:330〜385nm、蛍光フィルター:>420nm、60倍油浸対物レンズで実施した。
【0142】
結果を図6に示す。図6に示すように、対照細胞では核のみ染色されたが、オリゴ(dA−dT)の自己伸長反応を行った細胞では核近傍にDAPI被染色核酸が観察され、それはゴルジ体の分布と一致した。
【0143】
〔実施例9〕酵素反応時間依存シグナル増幅
3%ホルマリンを用いて室温で10分間処理した後、0.5%トリトン系界面活性剤を含むPBSを用いて室温で10分間処理したVero細胞を、一次抗体を用いて37℃で1時間処理し、次いで、二次抗体を用いて37℃で30分間処理した。一次抗体として、0.05%Tween20を含むPBS(PBST)で4,000倍に希釈した抗GM130マウスモノクローナル抗体(ファーミンジェン社製)を用い、二次抗体として、PBSTで500倍希釈したビオチン標識抗マウス抗体ウサギ免疫血清を用いた。
【0144】
次いで、PBSTで2μg/mLの濃度に調整したストレプトアビジンを用いて室温で30分間処理し、最後に、PBSTで1μMの濃度に調整した5’末端にビオチンを導入したオリゴ(dA−dT)(5’−atatatatatatata−3’)を用いて室温で30分間処理した。それぞれの処理の間に、5分間の振盪によるPBST洗浄を3回行った。
【0145】
酵素反応は、5U/100μLのKF−、0.2mMのdATP、0.2mMのdTTP、2.5μMのローダミン標識dUTPを含む溶液(10mMのトリス塩酸,pH7.5,5mMの塩化マグネシウム,7.5mMのジチオスレイトール)を用いて37℃で1、2又は4時間保温して行った。顕微鏡観察は、励起フィルター:520〜550nm、蛍光フィルター:>580nm、60倍油浸対物レンズで実施した。
【0146】
結果を図7に示す。図7に示すように、細胞核周囲(ゴルジ体)のシグナル(ローダミン(赤色)による染色)が酵素反応時間依存的に増強された。
【0147】
〔実施例10〕酵素反応時間依存シグナル増幅
実施例9と同様にホルマリン固定したVero細胞を、一次抗体を用いて37℃で1時間処理し、次いで、二次抗体を用いて37℃で30分間処理した。一次抗体として、PBSTで4,000倍に希釈した抗ZO−1マウスモノクローナル抗体(ファーミンジェン社製)を用い、二次抗体として、PBSTで500倍希釈したビオチン標識抗マウス抗体ウサギ免疫血清を用いた。
【0148】
次いで、PBSTで2μg/mLの濃度に調整したストレプトアビジンを用いて室温で30分間処理し、最後に、PBSTで1μMの濃度に調整した5’末端にビオチンを導入したオリゴ(dA−dT)(5’−atatatatatatata−3’)を用いて室温で30分間処理した。それぞれの処理の間に、5分間の振盪によるPBST洗浄を3回行った。
【0149】
酵素反応は、5U/100μLのKF−、0.2mMのdATP、0.2mMのdTTPを含む溶液(10mMのトリス塩酸,pH7.5,5mMの塩化マグネシウム,7.5mMのジチオスレイトール)を用いて37℃で1、2又は4時間保温し、5分間の振盪によるPBST洗浄を3回行った。それぞれの細胞は、PBSで1nMの濃度に調整したDAPIを用いて室温で5分間染色し、実施例8と同じ条件で顕微鏡観察を行った。
【0150】
結果を図8に示す。図8に示すように、細胞核周囲(ゴルジ体)のシグナル(DAPIによる染色)が酵素反応時間依存的に増強された。
【0151】
〔実施例11〕抗原検出感度に関する従来法と本発明の方法との比較
実施例5の方法に従って細胞を調製し、一次抗体を用いて37℃で1時間処理した後、二次抗体を用いて37℃で30分間処理した。一次抗体として、PBSで500倍希釈した抗ゴルジ58K蛋白マウスモノクローナル抗体(シグマ社製)を用い、二次抗体として、PBSで200倍希釈したビオチン標識抗マウス抗体ウサギ免疫血清(ジャクソンイムノリサーチ社製)を用いた。
【0152】
従来法では、PBSで2μg/mLの濃度に調製したフルオレセイン標識ストレプトアビジン(シグマ社製)を用いて37℃で30分間保温した。本発明の方法では、実施例1の方法に従い、KF−、フルオレセイン標識dUTPを用いて37℃一晩保温した。顕微鏡観察は、励起フィルター:470〜490nm、蛍光フィルター:510〜550nm、60倍油浸対物レンズで実施した。
【0153】
結果を図9に示す。図9に示すように、本発明の方法では従来法よりもフルオレセインによるシグナルが増強された。
【0154】
〔実施例12〕抗原検出感度に関する従来法と本発明の方法との比較
実施例9の方法に従って細胞を調製し、3%過酸化水素を含むPBSを用いて室温で1時間処理し、内在性のペルオキシダーゼを不活化した。次いで、一次抗体を用いて37℃で1時間処理した。一次抗体として、PBSTで500倍から62,500倍までの5倍段階希釈列を調整した抗ZO−1マウスモノクローナル抗体を用いた。
【0155】
本発明の方法では、ローダミン標識dUTPの代わりにフルオレセイン標識dUTPを用いた以外は、実施例9と同様の条件で処理を行った。
【0156】
従来法としてシグナル増幅法(TSA)及び間接抗体法(IF)を選択した。TSAでは、500倍希釈したビオチン標識抗マウス抗体ウサギ免疫血清を二次抗体として用いた以外は、TSA Fluorescece Systems(パーキンエルマー社製)の添付文書に従って反応を行った。IFでは、PBSで50倍希釈したFITC標識抗マウスIgG抗体(シグマ社製)を用いて37℃1時間処理した。
【0157】
結果を図10に示す。なお、図10中、(A)は本発明の方法での結果、(B)はTSAでの結果、(C)はIFでの結果、「NC」は一次抗体を含まない場合(ネガティブコントロール)の結果を示す。
【0158】
図10に示すように、本発明の方法では、TSAに比べて5倍、IFに比べて25倍薄い一次抗体濃度で細胞同士が接着している細胞膜部位を染色することができた。
【0159】
〔実施例13〕抗原検出感度に関する従来の酵素免疫測定法と本発明の方法との比較
B型肝炎ウイルス表面抗原(HBs)を50mMの炭酸バッファー(pH9.6)に溶解して調製した1,024ng/mLから1ng/mLまでの2倍段階希釈列を、96ウェルイムノプレート(マキシソープ、ナルジェヌンク社製)へ200μL滴下した(N=3)。
【0160】
4℃で一晩静置した後、炭酸バッファーで2回ウェルを洗浄し、0.5%BSA加炭酸バッファーを200μL/ウェル滴下し、37℃で一時間静置した。BSA加炭酸バッファーを除去した後、PBSTで1,000倍希釈した抗HBsマウスモノクローナル抗体(ケミコン社製)を100μL/ウェル滴下し、37℃で30分間静置した。
【0161】
PBSTでウェルを3回洗浄した後、PBSTで1,000倍希釈したビオチン標識抗マウス抗体ウサギ免疫血清を100μL/ウェル滴下し、37℃で30分間保温した。PBSTでウェルを3回洗浄した後、PBSTで500ng/mLに調製したストレプトアビジンを100μL/ウェル滴下し、室温で30分間処理した。
【0162】
PBSTでウェルを3回洗浄した後、PBSTで0.1μMの濃度に調整した5’末端にビオチンを導入したオリゴ(dA−dT)(5’−atatatatatatata−3’)を100μL/ウェル滴下し、室温で30分間処理した。PBSTでウェルを5回洗浄し、さらにPBSでウェルを2回洗浄した。
【0163】
次いで、5U/100μLのKF−、0.2mMのdATP、0.2mMのdTTP、2.5μMのジゴキシゲニン標識dUTPを含む酵素溶液(10mMのトリス塩酸,pH7.5,5mMの塩化マグネシウム,7.5mMのジチオスレイトール)を80μL/ウェル滴下し、37℃で3時間処理した。
【0164】
PBSTでウェルを5回洗浄した後、PBSTで200mU/mLの濃度に調整したペルオキシダーゼ(POD)標識抗ジゴキシゲニンFab断片を70μL/ウェル滴下し、37℃で30分間静置した。ウェルをPBSTで5回洗浄した後、テトラメチルベンジジン溶液を50μL/ウェル滴下し、暗室中、室温で5分間発色を行った。2規定の硫酸を100μL/ウェル滴下して発色反応を停止し、450nmの吸光度をマイクロプレートリーダーで測定した。
【0165】
従来法では、二次抗体として、PBSTで500倍希釈したペルオキシダーゼ(POD)標識抗マウスIgG抗体(ジャクソンイムノリサーチ社製)を用い、37℃で30分間静置した。ウェルをPBSTで5回洗浄した後、テトラメチルベンジジン溶液を50μL/ウェル滴下し、暗室中、室温で5分間発色を行った。2規定の硫酸を100μL/ウェル滴下して発色反応は停止し、450nmの吸光度をマイクロプレートリーダーで測定した。
【0166】
結果を図11に示す。図11に示すように、本発明の方法では8ng/mLのHBsを検出することができたが、従来法では128ng/mL以上のHBsでないと検出することができなかった。
産業上の利用の可能性
【0167】
本発明によれば、抗原抗体反応を利用して標的抗原を高感度に検出することができる方法及びキットが提供される。
【0168】
また、本発明によれば、標的抗原が細胞表面抗原又は細胞内抗原である場合、標的抗原を高感度に検出することができるとともに、標的抗原の細胞内分布を検出することができる方法及びキットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0169】
[図1]オリゴ(dA−dT)の自己伸長による標識効率に関する各種DNAポリメラーゼ間の比較結果を示す図である。
[図2]オリゴ(dA−dT)の自己伸長による標識効率と標識dUTP濃度との関係を示す図である。
[図3]37℃でのオリゴ(dA−dT)の自己伸長による細胞内抗原の検出結果を示す図である。
[図4]60℃でのオリゴ(dA−dT)の自己伸長による細胞内抗原の検出結果を示す図である。
[図5]74℃でのオリゴ(dA−dT)の自己伸長による細胞内抗原の検出結果を示す図である。
[図6]DAPI(4,6−diamidino−2−phenylindole)を用いた核酸染色による細胞内抗原の検出結果を示す図である。
[図7]標識物質によるシグナル(ローダミン(赤色)による染色)が酵素反応時間依存的に増強されたことを示す図である。
[図8]標識物質によるシグナル(DAPIによる染色)が酵素反応時間依存的に増強されたことを示す図である。
[図9]抗原検出感度に関する従来法と本発明の方法との比較結果を示す図である。
[図10]抗原検出感度に関する従来法(シグナル増幅法(TSA)及び間接抗体法(IF))と本発明の方法との比較結果を示す図である。
[図11]抗原検出感度に関する従来の酵素免疫測定法と本発明による方法との比較結果を示す図である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(a)〜(d)を含む、標的抗原の検出方法。
(a)標的抗原と1種又は2種以上の抗体とを反応させ、前記標的抗原と前記抗体とを含む抗原抗体複合体を形成させる工程
(b)前記工程(a)を行う前、行う際又は行った後に、一般式(I)〜(IV):

[式中、Xはアデニン、チミン又はウラシルを表し、Xがアデニンを表すときYはチミン又はウラシルを表し、Xがチミン又はウラシルを表すときYはアデニンを表し、Zは任意の塩基配列を表し、nは2以上の整数を表す。]
のいずれかで表される塩基配列からなる一本鎖核酸の5’末端を、前記抗体に結合させる工程
(c)前記工程(a)及び(b)を行った後に、デオキシアデノシン三リン酸とデオキシチミジン三リン酸及び/又はデオキシウリジン三リン酸とを含むデオキシヌクレオシド三リン酸の存在下、かつ前記抗原抗体複合体の形成を維持できる温度下において、前記一本鎖核酸にDNAポリメラーゼを作用させる工程
(d)前記工程(c)を行った後に、前記抗原抗体複合体を構成する前記抗体に結合した前記一本鎖核酸の自己伸長を検出する工程
【請求項2】
前記工程(c)で使用する前記DNAポリメラーゼが、エシェリキア(Escherichia)属、バチラス(Bacillus)属、サーモコッカス(Thermococcus)属、テルムス(Thermus)属、ピロコッカス(Pyrococcus)属若しくはサーモトガ(Thermotoga)属の微生物に由来するDNAポリメラーゼ、又はバクテリオファージに由来するDNAポリメラーゼである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記工程(c)で使用する前記DNAポリメラーゼが、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性及び3’→5’エキソヌクレアーゼ活性の一方又は両方を有しないDNAポリメラーゼである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記工程(c)において使用する前記デオキシヌクレオシド三リン酸が、標識化デオキシアデノシン三リン酸、標識化デオキシチミジン三リン酸又は標識化デオキシウリジン三リン酸を含み、
前記工程(d)において、前記一本鎖核酸の伸長部分に取り込まれた前記標識化デオキシアデノシン三リン酸、前記標識化デオキシチミジン三リン酸又は前記標識化デオキシウリジン三リン酸を検出することにより、前記一本鎖核酸の自己伸長を検出する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記工程(d)において、核酸の二重らせん構造にインターカレーションできる標識物質と前記一本鎖核酸とを反応させ、前記一本鎖核酸の分子内二重らせん構造にインターカレーションした前記標識物質を検出することにより、前記一本鎖核酸の自己伸長を検出する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記工程(b)において、前記一本鎖核酸の5’末端と前記抗体とを、アビジン又はその誘導体とビオチン又はその誘導体との結合を介して結合させる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記工程(b)において、前記一本鎖核酸の5’末端と前記抗体とを、プロテインA、プロテインG又はそれらの誘導体と前記抗体との結合を介して結合させる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記工程(b)において、前記一本鎖核酸の5’末端と前記抗体とを、共有結合を介して結合させる、請求項1記載の方法。
【請求項9】
標的抗原に対する抗体と、一般式(I)〜(IV):


[式中、Xはアデニン、チミン又はウラシルを表し、Xがアデニンを表すときYはチミン又はウラシルを表し、Xがチミン又はウラシルを表すときYはアデニンを表し、Zは任意の塩基配列を表し、nは2以上の整数を表す。]
のいずれかで表される塩基配列からなる一本鎖核酸とを含む、標的抗原の検出用キット。

【国際公開番号】WO2004/111232
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【発行日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506998(P2005−506998)
【国際出願番号】PCT/JP2004/008545
【国際出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(502166880)
【出願人】(503263838)
【Fターム(参考)】