説明

標的組換え細胞とランダム挿入細胞とを判別する方法およびその用途

【課題】遺伝子導入を行った細胞について、標的組換え細胞であるかランダム挿入細胞であるかを簡便に判別できる方法を提供する。
【解決手段】プロモーター、第1蛍光タンパク質のコード配列および2つのアームを含み、前記2つのアームの間に、前記プロモーターおよび前記第1蛍光タンパク質コード配列が配置された第1ベクターを導入した細胞に、プロモーター、前記第1蛍光タンパク質とは異なる第2蛍光タンパク質のコード配列および2つのアームを含み、前記2つのアームの間に、前記プロモーターおよび前記第2蛍光タンパク質コード配列が配置された第2ベクターを導入する。得られた細胞について、第1蛍光タンパク質および第2蛍光タンパク質の蛍光を検出し、第2蛍光タンパク質のみを発現した細胞を標的組換え細胞、第1蛍光タンパク質および第2蛍光タンパク質の両方を発現した細胞をランダム挿入細胞と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的組換え細胞とランダム挿入細胞とを判別する方法およびそれに用いる判別用キットに関する。また、本発明は、標的組換え効率の評価方法およびそれに用いる評価用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子治療等の先端医療分野や、創薬研究、基盤研究等の分野において、遺伝子ターゲティングは、遺伝子機能を解明するための主要な技術とされている。遺伝子ターゲティングとは、ゲノム上の目的遺伝子を破壊したり改変する方法であって、一般的に、相同組換えが利用されている。具体的には、例えば、目的遺伝子(内在性遺伝子)に類似した配列を有する遺伝子ターゲティングベクターを使用し、前記目的遺伝子と前記ベクターとの間で相同組換えを起こすことによって、ゲノムの目的位置に突然変異を組み込んで、目的遺伝子の破壊や改変が行われる。
【0003】
しかしながら、真核細胞、特に哺乳類の細胞において、このような相同組換えは稀にしか起こらず、その頻度はランダム挿入の約1/10〜1/10にすぎない。また、このように頻度が極めて低いため、多数のランダム挿入体が混在する中から、相同組換え体(標的組換え体)を判別することは非常に困難である。
【0004】
そこで、近年、標的組換え(相同組換え)が高効率で生じる細胞の検索(非特許文献1)や、高効率での標的組換えを可能にする技術の確立(非特許文献2、非特許文献4)が求められ、盛んに研究が行われている。このような研究においては、検索対象の細胞や改良技術によって、標的組換えが高効率で起こっているか否かを相対的に判断することが必要である(非特許文献3)。そこで、通常、組換え処理を行った細胞を培養して、標的組換え体の数とランダム挿入体の数とを計数し、それから算出した標的組換え効率を比較することによって、相対的に評価を行っている。
【0005】
具体例として、従来、標的組換え体とランダム挿入体との判別、ならびに、それぞれの計数は、以下のようにして行われていた。例えば、ターゲティングベクターの導入処理を行った細胞について、前記ターゲティングベクター上の薬剤耐性遺伝子によるスクリーニングを行い、各クローンからゲノムを調製して、サザンブロッティングによって相同組換え体を識別する方法がある。この方法は、識別結果の確実性に優れている。他方、簡便性に優れる方法としては、例えば、前記クローンから調製したゲノムを鋳型としてPCRにより識別する方法がある。
【0006】
しかしながら、従来のPCRやブロッティングを利用する方法では、多数の細胞についてランダム挿入体であるか標的組換え体であるかを同定することは、非常に手間がかかり効率的ではなかった。特に、例えば、標的組換え効率の算出が目的である場合等は、目的の標的組換えが生じた細胞を得ること自体を目的とする場合と異なり、多数の細胞について標的組換え体であるかランダム挿入体であるかを判断することが必要である。したがって、標的組換え体であるかランダム挿入体であるかを迅速且つ簡便に判別できることが望ましい。
【非特許文献1】“Increased Ratio of Targeted to Random Integration after Transfection of Chicken 6 Cell Lines.” Buerstedde JM and Takeda S, Cell 67, 179-188 (1991).
【非特許文献2】“Possible association of BLM in decreasing DNA double strand breaks during DNA replication.” Wang W et al., EMBO 19, 3428-3435 (2000).
【非特許文献3】“Lntrachromosomal homologous recombination in whole plants.” Swoboda P et al., EMBO 13, 484-489 (1994).
【非特許文献4】“Site-directed mutagenesis by gene targeting in mouse embryo-derived stem cells.” Thomas K and Capecchi MR, Cell 51, 503-512 (1987).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、遺伝子導入を行った細胞について、標的組換え細胞であるかランダム挿入細胞であるかを簡便に判別できる方法および標的組換え効率の評価方法、ならびに、これらに使用するキットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の判別方法は、標的組換え細胞とランダム挿入細胞とを判別する方法であって、下記(A)〜(D)工程を含む。
(A) 細胞に、第1ベクターを導入する工程であり、前記第1ベクターが、プロモーター、第1蛍光タンパク質のコード配列、および、2つのアームを含み、前記2つのアームの間に、前記プロモーターおよび前記第1蛍光タンパク質コード配列が配置されたベクターである、工程
(B) 前記(A)工程により得られた細胞について、前記第1ベクターが導入された細胞を選択する工程
(C) 前記第1ベクターが導入された細胞に、さらに、第2ベクターを導入する工程であり、前記第2ベクターが、プロモーター、前記第1蛍光タンパク質とは異なる第2蛍光タンパク質のコード配列、および、2つのアームを含み、前記2つのアームの間に、前記プロモーターおよび前記第2蛍光タンパク質コード配列が配置されたベクターである、工程
(D) 前記(C)工程により得られた細胞について、第1蛍光タンパク質および第2蛍光タンパク質の蛍光を検出する工程
(E) 第2蛍光タンパク質のみを発現した細胞を標的組換え細胞、第1蛍光タンパク質および第2蛍光タンパク質の両方を発現した細胞をランダム挿入細胞と判定する工程
【0009】
本発明の評価方法は、標的組換え効率を評価する方法であって、下記(a)および(b)工程を含む。
(a) 本発明の判別方法により、前記第2ベクターを導入した複数の細胞について、標的組換え細胞であるかランダム挿入細胞であるかの判別を行う工程
(b) 標的組換え細胞の細胞数とランダム挿入細胞の細胞数とを計数して、標的組換え効率を算出する工程
【0010】
本発明の判別用キットは、標的組換え細胞とランダム挿入細胞とを判別するためのキットであり、第1ベクターおよび第2ベクターを含み、前記第1ベクターが、プロモーター、第1蛍光タンパク質のコード配列、および、2つのアームを含み、前記2つのアームの間に、前記プロモーターおよび前記第1蛍光タンパク質コード配列が配置されているベクターであり、前記第2ベクターが、プロモーター、前記第1蛍光タンパク質とは異なる第2蛍光タンパク質のコード配列、および、2つのアームを含み、前記2つのアームの間に、前記プロモーターおよび前記第2蛍光タンパク質コード配列が配置されているベクターである。
【0011】
本発明の評価用キットは、標的組換え効率を評価するためのキットであり、本発明の標的組換え細胞とランダム挿入細胞とを判別するためのキットを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、まず、第1蛍光タンパク質コード配列を有する第1ベクターを細胞に導入して、ゲノムDNAへの組み込みを行い、さらに、第2蛍光タンパク質コード配列を有する第2ベクターを細胞に導入して、ゲノムDNAへの組み込みを行う。このため、標的組換えが生じていれば、ゲノムDNAには、第1ベクターの第1蛍光タンパク質コード配列に置き換わって第2ベクターの第2蛍光タンパク質コード配列が組み込まれることとなる。他方、ランダム挿入が生じていれば、ゲノムDNAには、第1ベクターの第1蛍光タンパク質コード配列と第2ベクターの第2蛍光タンパク質コード配列の両方が組み込まれることとなる。したがって、最終的に得られる細胞について、第1蛍光タンパク質と第2蛍光タンパク質とを検出することによって、標的組換え細胞(標的組換え体)であるかランダム挿入細胞(ランダム挿入体)であるかを判断できる。特に、本発明においては、前記第1蛍光タンパク質と第2蛍光タンパク質とを、それらが発する蛍光によって検出するため、視覚的な検出が可能であり、極めて簡便に標的組換え細胞であるかランダム挿入細胞であるかを判別できる。このように標的組換え細胞とランダム挿入細胞との判別を視覚的に行える方法は従来存在しなかった。この蛍光検出には、例えば、PCRやハイブリダイゼーション等のように、細胞からDNA、RNA、タンパク質等を抽出する必要はなく、細胞そのものへの励起光照射で足りることからも、極めて簡便な方法といえる。また、このように標的組換え細胞とランダム挿入細胞の判別を簡便に行えることから、それぞれの細胞数の計数も非常に容易となる。このため、本発明によれば、極めて簡便に標的組換え効率を評価することもできる。前述のように、近年、高効率で標的組換えが生じる細胞の検索や技術の確立が研究されていることからも、例えば、本発明によればこれらの研究を促進化できるため、非常に有用な技術といえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<標的組換え細胞とランダム挿入細胞との判別方法>
本発明の判別方法は、前述のように、標的組換え細胞とランダム挿入細胞とを判別する方法であって、下記(A)〜(D)工程を含む。
(A) 細胞に、第1ベクターを導入する工程であり、前記第1ベクターが、プロモーター、第1蛍光タンパク質のコード配列、および、2つのアームを含み、前記2つのアームの間に、前記プロモーターおよび前記第1蛍光タンパク質コード配列が配置されたベクターである、工程
(B) 前記(A)工程により得られた細胞について、前記第1ベクターが導入された細胞を選択する工程
(C) 前記第1ベクターが導入された細胞に、さらに、第2ベクターを導入する工程であり、前記第2ベクターが、プロモーター、前記第1蛍光タンパク質とは異なる第2蛍光タンパク質のコード配列、および、2つのアームを含み、前記2つのアームの間に、前記プロモーターおよび前記第2蛍光タンパク質コード配列が配置されたベクターである、工程
(D) 前記(C)工程により得られた細胞について、第1蛍光タンパク質および第2蛍光タンパク質の蛍光を検出する工程
(E) 第2蛍光タンパク質のみを発現した細胞を標的組換え細胞、第1蛍光タンパク質および第2蛍光タンパク質の両方を発現した細胞をランダム挿入細胞と判定する工程
【0014】
まず、本発明における第1ベクターおよび第2ベクターについて説明する。なお、本発明において、「機能的に連結」、「機能的に配置」とは、それが意図する機能を発揮しうる状態で連結(結合)または配置されていることを意味する。
【0015】
前記第1ベクターの蛍光タンパク質および第2ベクターの蛍光タンパク質の種類は、制限されない。本発明において、前記両蛍光タンパク質は、異なる種類であればよく、具体的には、例えば、従来公知の方法により、区別して検出できるものであればよい。蛍光タンパク質は、通常、特定波長光(励起光)の照射により励起され、その励起状態から基底状態に戻る際に蛍光を発する。このため、蛍光タンパク質の検出においては、一般に、目的の蛍光タンパク質に応じて、励起光を抽出するための光学素子(Excitaion filter:Ex)、蛍光タンパク質が発する蛍光とその他の散乱光を分離する光学素子(Emission filter)、励起光と蛍光を分離するための光学素子(Dichroic mirror)等が使用される。そして、これらの光学素子(光学フィルタ)を組み合わせることによって、複数の目的蛍光タンパク質を検出できることは、当該技術分野の技術常識である。
【0016】
前記蛍光タンパク質は、前述のように制限されないが、例えば、青色蛍光タンパク質、緑色蛍光タンパク質、青緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質およびオレンジ色蛍光タンパク質があげられる。第1蛍光タンパク質が、例えば、青色蛍光タンパク質、緑色蛍光タンパク質、青緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質およびオレンジ色蛍光タンパク質からなる群から選択された少なくとも一つである場合、前記第2蛍光タンパク質は、例えば、前記第1蛍光タンパク質とは異なる色彩であり且つ青色蛍光タンパク質、緑色蛍光タンパク質、青緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質およびオレンジ色蛍光タンパク質からなる群から選択された少なくとも一つであることが好ましい。組合せとしては、制限されないが、例えば、赤色蛍光タンパク質と緑色タンパク質との組合せがあげられる。
【0017】
また、第1蛍光タンパク質と第2蛍光タンパク質とが、同じ色彩の蛍光タンパク質グループに属する場合(例えば、両者ともに緑色蛍光タンパク質)であっても、例えば、両者の励起光が異なる場合等は、区別して検出することが可能である。
【0018】
前記青色蛍光タンパク質としては、例えば、ECFP、BFP、sgBFP、AmCyan、d2ECFP等があげられる。前記緑色蛍光タンパク質としては、例えば、wild type GFP、GFPuv(GFPcycle3)、EGFP(Enhanced GFP)、sgGFP、CrGFP、AcGFP、hMGFP、hrGFP、ZsGreen、d2/1/4EGFP、Azami−Green、Dronpa−Green(OnOff可能)等があげられる。前記青緑色蛍光タンパク質としては、例えば、Midoriishi−Cyan等があげられる。前記黄色蛍光タンパク質としては、例えば、EYFP、ZsYellow、d2EYFP等があげられる。前記赤色蛍光タンパク質としては、例えば、AsRed、DsRed(RFP)、DsRed−Express、DsRed2、HcRed1、DsRed−Express−DR、HcRed−DR、DsRed−Monomer、Keima−Red等があげられる。オレンジ色蛍光タンパク質としては、例えば、Kusabira−Orangeがあげられる。また、DsRed−E5(pTimer)、Kaede、Kikume Green−Red等の変色化蛍光タンパク質等も使用できる。これらの蛍光タンパク質のコード遺伝子は、例えば、BD Biosciences Clontech、和光純薬、Qbiogene、フナコシ、Takara、Invitrtogen、Amasham Buosciences、Entelechon、B−Bridge、Promega、TOYOBO、Stratagene、MBL等から入手できる。また、その配列にしたがってPCR等により合成してもよい。
【0019】
さらに、本発明における蛍光タンパク質としては、上述のタンパク質のように、タンパク質そのものが蛍光を発するものの他に、例えば、触媒機能を有するタンパク質があげられる。具体的には、触媒機能によって基質を発色させるタンパク質があげられる。このようなタンパク質としては、例えば、β−ガラクトシダーゼがあげられる。β−ガラクトシダーゼの基質としては、例えば、X-gal、6−クロロ−3−インドキシル−β−D−ガラクトピラノシド等があげられる。前者は、前記酵素の触媒反応によって青色に発色し、後者は、前記酵素の触媒反応によってピンク色に発色する。前記β−ガラクトシダーゼのコード遺伝子(β-gal)は、例えば、市販のベクターから入手できる。本発明において、第1蛍光タンパク質と第2蛍光タンパク質は、両方が、前述のように、タンパク質そのものが蛍光を発する蛍光タンパク質でもよいし、両方が、触媒反応によって基質を発色させるタンパク質であってもよい。また、いずれか一方が、タンパク質そのものが蛍光を発する蛍光タンパク質であり、他方が、触媒反応によって基質を発色させるタンパク質であってもよい。
【0020】
本発明において、前記プロモーターの種類は制限されず、細胞内において、蛍光タンパク質コード配列の転写を開始できるプロモーター配列であればよい。また、プロモーターの種類は、例えば、細胞の種類によって適宜決定してもよい。前記プロモーターとしては、例えば、構成的プロモーターがあげられ、具体例として、サイトメガロウイルス(CMV)由来のプロモーター(以下、「CMVプロモーター」という)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、シミアンウイルス−40(SV−40)、単純ヘルペスウイルス(HSV)等のウイルス由来プロモーター;チミヂンキナーゼプロモーター、エロンゲーションファクター1α(EF1α)プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター、筋βアクチンプロモーター等のハウスキーピング遺伝子由来プロモーター;CAGプロモーター(サイトメガロウイルスのエンハンサー、ニワトリβアクチンプロモーター、ウサギβグロビンエクソンからなる合成プロモーター)、SRα(SV40初期プロモーターとHTLV1のLTRからなる合成プロモーター)等の合成プロモーター等があげられる。
【0021】
前記プロモーターは、第1ベクターにおいて第1蛍光タンパク質コード配列に、第2ベクターにおいて第2蛍光タンパク質コード配列に、それぞれ機能的に結合(配置)されていることが好ましい。つまり、各ベクターにおいて、プロモーターは、前記蛍光タンパク質コード配列の転写を制御する位置に配置されていることが好ましい。通常、前記プロモーターは、転写目的のコード配列の上流側(すなわち5’側)に配置されているが、プロモーターと前記転写目的のコード配列との距離は、制限されない。一般的に、プロモーターは、転写開始点、その約25〜37塩基対上流にTATAボックス、さらに、その上流(−40〜−60)にGCボックス、さらに、その上流(−60〜−100)にCAATボックス、前記転写開始点の下流にイントロン(転写産物mRNAが効率的に核外に輸送される)等が含まれた構成となっている。したがって、蛍光タンパク質を発現させるにあたって、例えば、そのコード遺伝子の転写を妨げる配列が入らないように、プロモーターと前記転写目的のコード配列との距離は、なるべく近い方が好ましい。また、mRNAの効率よい翻訳が望まれることから、例えば、目的遺伝子(本発明における蛍光タンパク質のコード遺伝子)の開始コドン近傍は、Kozak配列(CCACCATGG)に統一することが望ましい。
【0022】
本発明における第1ベクターおよび第2ベクターは、それぞれ、2つのアームを有し、2つのアームの間に、前記プロモーターおよび前記蛍光タンパク質コード配列が配置されている。一般に、標的組換えの効率に関して、アームの設計が重要であることが知られている。しかしながら、本発明は、より高い効率で相同組換えを実現するベクターを構築すること自体が目的ではない。本発明の第一の目的は、第1ベクターおよび第2ベクターを導入した細胞が、標的組換え体であるかランダム挿入体であるかを判別したり、判別結果から、その細胞種の組換え効率またはその組換え手法の組換え効率を評価することである。したがって、本発明において、例えば、前記アームの配列や長さは制限されない。
【0023】
第1ベクターのライトアームと第2ベクターのライトアーム、および、第1ベクターのレフトアームと第2ベクターのライトアームとは、互いに相同性が高い配列であることが好ましい。具体的には、例えば、99%以上が好ましく、より好ましくは、99.9%以上、特に好ましくは100%である。
【0024】
各ベクターの2つのアームは、例えば、ベクターが線状化した状態において、前記プロモーターの上流側(5’末端側)をレフトアーム、蛍光タンパク質コード配列の下流側(3’末端側)をライトアームと呼ぶ。
【0025】
前記アームの長さは、制限されず、適宜設定できる。一般的には、相同領域が、例えば、2〜5kbであり、好ましくは、10kb以上である。通常、レフトアームおよびライトアームの少なくとも一方の長さ(相同領域の長さ)が、例えば、5kb以上であることが好ましく、より好ましくは10kb以上である。また、他方の相同領域の長さは、例えば、短くてもよいが、0.5kb以上であることが好ましく、より好ましくは、前述のアームと同様に10kb以上である。
【0026】
本発明における第1ベクターおよび第2ベクターについて、構成の一例を図1に示す。同図において、上が第1ベクターであり、下が第2ベクターである。同図において、Color1は、第1蛍光タンパク質コード配列であり、Color2は、第2蛍光タンパク質コード配列である。同図に示す第1ベクターは、上流側から、レフトアーム、プロモーター、Color1およびライトアームがこの順序で配置された構造であり、第2ベクターは、レフトアーム、プロモーター、Color2およびライトアームがこの順序で配置された構造である。これらのベクターにおいて、各領域は、機能的に配置されていればよく、その限りにおいて、例えば、各領域の間に他の配列を含んでもよい。
【0027】
本発明におけるベクターは、例えば、図1に示すような線状化ベクターでもよいし、環状化ベクターであってもよい。前記環状化ベクターの場合、通常、細胞への導入前に、レフトアームとライトアームとの間を切断して、線状化したものを使用する。なお、第1ベクターのプロモーターと第2ベクターのプロモーターとが同じ配列の場合、前記プロモーターは、例えば、レフトアームに含まれ、前記蛍光タンパク質コード配列の上流側がレフトアームに含まれ得る。
【0028】
本発明における第1ベクターおよび第2ベクターは、それぞれ、さらに、薬剤耐性遺伝子およびバイシストロニック性制御配列を含んでもよい。前記バイシストロニック性制御配列は、例えば、前記第1蛍光タンパク質コード配列または第2蛍光タンパク質コード配列と前記薬剤耐性遺伝子との間に配置される。「バイシストロニック性制御配列」とは、通常、バイシストロニック性を実現する制御配列を意味し、「バイシストロニック性」とは、1つのmRNAから、2つの機能し得るタンパク質が発現することを意味する。
【0029】
本発明において、第1ベクターおよび第2ベクターは、それぞれ、プロモーターの下流において、前記蛍光タンパク質コード配列と前記薬剤耐性遺伝子との間にバイシストロニック性制御配列が配置されていることが好ましい。前記蛍光タンパク質コード配列と前記薬剤耐性遺伝子との位置関係は特に制限されない。例えば、バイシストロニック性制御配列を介して、上流側に前記蛍光タンパク質コード配列、下流側に薬剤耐性遺伝子が機能的に配置されてもよいし、上流側に薬剤耐性遺伝子、下流側に前記蛍光タンパク質コード配列が機能的に配置されてもよい。中でも、上流側から、前記蛍光タンパク質コード配列、バイシストロニック性制御配列および薬剤耐性遺伝子がこの順序で配置されていることが好ましい。
【0030】
前記バイシストロニック性制御配列は、例えば、リボソーム内部認識部位(IRES:Internal Ribosomal Entry Site)配列があげられる。前記IRES配列としては、特に制限されないが、例えば、脳心筋炎ウイルス(ECMV:Encephalo Myocarditis Virus)由来のIRES配列が好ましい。IRES配列は、例えば、米国特許第4,937,190号、特表2002−514086(JP2002−514086A)号公報、特表2001−500021(JP2001−500021A)号公報等に記載されている。IRES配列は、例えば、IRESのポリヌクレオチド配列に基づいてPCRやクローニング等により合成してもよいし、IRES配列を有する市販のベクターから調製することもできる。
【0031】
また、前述のように、IRES配列の下流側に薬剤耐性遺伝子が配置されている場合、例えば、前記薬剤耐性遺伝子の下流側(3’末端側)に、さらに、ポリA付加シグナルが結合していることが好ましい。
【0032】
前記薬剤耐性遺伝子としては、制限されず、公知の薬剤耐性マーカーが使用できる。また、第1ベクターおよび第2ベクターが、前述のように、バイシストロニック性制御配列と共に薬剤耐性遺伝子を有する場合、第1ベクターと第2ベクターは、異なる薬剤耐性遺伝子を有することが好ましい。前記薬剤耐性遺伝子としては、例えば、ネオマイシン耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ヒスチジノール耐性遺伝子等があげられる。
【0033】
本発明における第1ベクターおよび第2ベクターについて、その他の構成例を、図2に示す。同図において、上が第1ベクターであり、下が第2ベクターである。同図において、Color1は、第1蛍光タンパク質コード配列、Color2は、第2蛍光タンパク質コード配列、drug1は、第1ベクターの第1の薬剤耐性遺伝子、drug2は、第2ベクターの第2の薬剤耐性遺伝子を示す。同図に示す第1ベクターは、上流側から、レフトアーム、プロモーター、Color1、IRES、第1薬剤耐性遺伝子およびライトアームがこの順序で配置された構造であり、第2ベクターは、レフトアーム、プロモーター、Color2、IRES、第2薬剤耐性遺伝子およびライトアームがこの順序で配置された構造である。これらのベクターにおいて、各領域は、機能的に配置されていればよく、その限りにおいて、例えば、各領域の間に他の配列を含んでもよい。これらのベクターは、前述のように、例えば、図2に示すような線状化ベクターでもよいし、環状化ベクターであってもよい。なお、前述と同様に、第1ベクターのプロモーターと第2ベクターのプロモーターとが同じ配列の場合、例えば、前記プロモーターは、レフトアームに含まれる。
【0034】
このような第1ベクターおよび第2ベクターは、例えば、前述のような領域を機能的に結合させて構築することもできるが、例えば、市販のベクターを骨格として作製することもできる。前記骨格となるベクターとしては、制限されないが、例えば、pIRESpuro3、pIRESneo3、pIREShyg3、pIRESbleo3、pIRES、pIRES2−AcGFP、pIRES2−ZsGreen1等があげられる。前記第1ベクターおよび第2ベクターの構築において、例えば、前述のプロモーター、蛍光タンパク質コード配列、バイシストロニック性制御配列、薬剤耐性遺伝子等は、前記骨格となるベクターに連結してもよいし、前記骨格となるベクターが本来有している領域をそのまま利用してもよい。また、第1ベクターおよび第2ベクターにおいて、前記骨格となるベクター(またはその一部)を、アームとしてもよいし、さらに、別途準備したDNA断片を前記骨格となるベクターに補充してアームを形成してもよい。
【0035】
つぎに、本発明の判別方法の一例を、図3および図4を用いて説明する。なお、本発明は、以下の例に限定されるものではない。
【0036】
(A)第1ベクターの導入
まず、細胞に第1ベクターを導入する(図3(A))。前記第1ベクターは、前述のように、通常、線状化ベクターとして導入に使用する。細胞へのベクターの導入方法は、制限されず、例えば、細胞やベクターの種類に応じて適宜決定でき、従来公知の方法が採用できる。具体例としては、例えば、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法、DEAEデキストラントランスフェクョン法、リポソームにより導入する方法等があげられる。また、ウイルスをもとに作製したベクターの場合、例えば、ウイルスを介して細胞に導入させてもよい。このようなベクターとしては、例えば、レトロウィルスベクター、アデノウィルスベクター等をもとに作製したベクターがあげられる。また、ベクターは、in vivo、in vitroのいずれで導入してもよい。
【0037】
前記細胞は、制限されない。本発明は、例えば、前述のように、標的組換えが起こりにくい細胞に対して、標的組換え効率に優れる系を新たに構築する際、得られた細胞が標的組換え体であるかランダム挿入体であるかを判断するのに有用である。このような目的で本発明を実施する場合、前記細胞として、例えば、標的組換えが起こり難い細胞があげられる。具体的には、HeLa、HEK293、IMR90、NIH3T3、CHO、BHK21、Vero、PC12、MDCK、S2、Sf9細胞等があげられる。また、遺伝子解析が求められている重要性の高い細胞について、さらに標的組換え効率を向上させる技術の開発も望まれることから、例えば、Nalm−6細胞、HCT116、DT40、Embryonic Stem Cell(ES cell)等の細胞も好ましい。なお、本発明は、これには制限されず、例えば、真核細胞があげられ、詳細には、ヒトをはじめとする哺乳類由来の様々な細胞があげられる。より詳細には、造血幹細胞;Nalm−6、BALL1、NALM1、Raji等のpre−B細胞ならびにB細胞、T細胞、白血球、単球・マクロファ−ジ、赤血球、血小板等の血球系細胞、血液細胞;筋原細胞、肝細胞、リンパ球、ニューロン細胞、皮膚上皮、気道上皮、受精卵母細胞、各種腫瘍細胞(例えば、Hela、CHO、MCF、HEK293、HepG2)、神経系細胞等があげられる。また、細胞の培養条件は、使用する細胞に応じて適宜決定できる。
【0038】
(B)第1ベクター導入細胞の選択
続いて、前記工程により前記第1ベクターが導入された細胞(以下、「第1ベクター導入細胞」という)を選択する。すなわち、図3(B)に示すように、前記第1ベクターが前記細胞のゲノムDNAに組み込まれた細胞を選択する。第1ベクターが組み込まれた細胞は、例えば、図4(B)に示すように第1蛍光タンパク質コード配列(Color1)を有し、第1蛍光タンパク質を発現する。
【0039】
この第1ベクターの選択方法は、制限されないが、本発明においては、例えば、第1蛍光タンパク質の蛍光検出により選択できる。蛍光検出の方法は、制限されず、従来公知の方法が使用できる。具体例としては、例えば、蛍光顕微鏡、セルソーティング、FACScan等が使用できる。また、検出の際には、例えば、励起フィルタ、吸収フィルタ、ダイクロイックミラー等、前述の各種光学素子を組み合わせて使用することが好ましい。
【0040】
また、前記第1ベクターが、薬剤耐性遺伝子を有する場合には、前記薬剤耐性を示す細胞を、第1ベクター導入細胞として選択することもできる。このように薬剤耐性によって細胞を選択する場合、前述のように、薬剤耐性遺伝子をバイシストロニック性制御配列の上流または下流に機能的に配置した第1ベクターを使用することが好ましい。このベクターによれば、バイシストロニック性制御遺伝子の性質上、例えば、薬剤耐性を示す細胞は、第1蛍光タンパク質コード遺伝子が導入された細胞と判断できる。
【0041】
(C)第2ベクターの導入
つぎに、前記第1ベクターが導入された細胞に、さらに、第2ベクターを導入する(図3(C))。前記第2ベクターは、前述と同様に、線状化ベクターであることが好ましい。また、細胞へのベクターの導入方法は、前述と同様である。
【0042】
(D)蛍光タンパク質の検出、および、(E)組換えの判定
前記(C)工程により得られた細胞について、第1蛍光タンパク質および第2蛍光タンパク質の検出を行う。前記(C)工程により第2ベクターが導入された細胞は、例えば、標的組換え体またはランダム挿入体となる。具体的に説明すると、図3(C)に示すように、すでにゲノムDNAに組み込まれた第1ベクターと導入された第2ベクターとの間で標的組換え(相同組換え)が生じると、図3(D1)に示す標的組換え体となる。この細胞では、標的組換えが生じたため、第1ベクター由来の蛍光タンパク質コード配列(Color1)が、第2ベクター由来の蛍光タンパク質コード配列(Color2)と置き換わっている。このため、この細胞では、例えば、図4(D1)に示すように、第2蛍光タンパク質コード配列(Color1)を有し、第2蛍光タンパク質のみを発現する。他方、ランダム挿入が生じると、図3(D2)に示すように、ゲノムDNAにおいて、第1ベクターとは異なる部位に、第2ベクターが組み込まれる。このため、ランダム挿入体では、例えば、図4(D2)に示すように、第1蛍光タンパク質コード配列(Color1)と第2蛍光タンパク質コード配列(Color2)との両方を有し、第1蛍光タンパク質および第2蛍光タンパク質を発現する。したがって、得られた細胞について、第1蛍光タンパク質の検出および第2蛍光タンパク質の検出を行えば、標的組換え体であるか、ランダム挿入体であるかを判別できる。すなわち、第2蛍光タンパク質のみが検出された場合は、例えば、図3(D1)と判断できることから、標的組換え体であると判定できる。他方、第1蛍光タンパク質と第2蛍光タンパク質とが検出された場合は、例えば、図3(D2)と判断できることから、ランダム挿入体であると判定できる。
【0043】
また、第1タンパク質のみが検出された場合は、第2ベクターが細胞内に導入されていないと判定できる。このように第2ベクターが導入されていない細胞を除外するためには、例えば、薬剤耐性遺伝子を有する第2ベクターを使用することが好ましい。前記薬剤耐性遺伝子としては、例えば、第1ベクターが同様に薬剤耐性遺伝子(第1薬剤耐性遺伝子)を有する場合、前述のように、前記第1薬剤耐性遺伝子とは異なる遺伝子(第2薬剤耐性遺伝子)であることが好ましい。このように第2ベクターの薬剤耐性遺伝子によって細胞を選択すれば、第2ベクターが細胞に導入されていない細胞を除外できる。また、このように薬剤耐性によって細胞を選択する場合は、前記第1ベクターと同様に、薬剤耐性遺伝子をバイシストロニック性制御配列の上流または下流に機能的に配置した第2ベクターを使用することが好ましい。このベクターによれば、バイシストロニック性制御遺伝子の性質上、例えば、薬剤耐性を示す細胞は、標的組換え体かランダム挿入体であるかは別として、少なくとも第2蛍光タンパク質コード遺伝子が導入された細胞と判断できる。
【0044】
また、本発明の判別方法は、例えば、後述するような標的組換え効率の評価だけでなく、細胞に目的配列を標的組換えにより組み込む際にも利用できる。例えば、第2ベクターにおいて、プロモーターの制御下、IRESの上流および下流に、第2蛍光タンパク質コード配列と目的配列を配置して、前述と同様に組換えを行う。そして、得られた細胞において、第2タンパク質の蛍光のみが検出された細胞を、標的組換えによって目的配列が組み込まれた細胞として判別できる。第2蛍光タンパク質が検出されれば、IRESの性質上、目的配列も標的組換えにより組み込まれていると判断できるからである。
【0045】
<標的組換え効率の評価方法>
本発明は、細胞の標的組換え効率を評価する方法であって、下記(a)および(b)工程を含む。
(a) 本発明の判別方法により、前記第2ベクターを導入した複数の細胞について、標的組換え細胞であるかランダム挿入細胞であるかの判別を行う工程
(b) 標的組換え細胞の細胞数とランダム挿入細胞の細胞数とを計数して、標的組換え効率を算出する工程
【0046】
細胞に遺伝子を導入した場合、前述のように、多数のランダム挿入体が混在しており、いずれの細胞が標的組換え体であるか同定することが極めて困難であった。しかしながら、本発明の判別方法によれば、前述のように、簡便に、標的組換え体であるかランダム挿入体であるかを判別できる。このため、ベクターの導入により得られる多数の細胞について、標的組換え体の細胞数とランダム挿入体数を計数でき、これによって標的組換え効率を算出(定量化)できる。前記標的組換え効率の表し方は、制限されないが、例えば、標的組換え体の細胞数とランダム挿入体の細胞数との比で表すことが好ましい。具体例としては、例えば、標的組換え体数(A)とランダム挿入体数(B)との比(A:B)、全細胞数(A+B)における標的細胞数(A)の割合(A/(A+B))およびその百分率(100×A/(A+B))等があげられる。
【0047】
<判別用キット>
本発明は、標的組換え細胞とランダム挿入細胞とを判別するためのキットであり、前記第1ベクターおよび第2ベクターを含む。本発明の判別用キットを用いれば、前述の本発明の判別方法を実施できる。なお、第1ベクターおよび第2ベクターは、前述の通りである。
【0048】
<標的組換え効率評価定用キット>
本発明は、標的組換え効率を評価するためのキットであり、前記本発明の標的組換え細胞とランダム挿入細胞とを判別するためのキットを含む。本発明の評価用キットを用いれば、前述の本発明の標的組換え効率の評価方法を実施できる。
【0049】
[実施例]
つぎに、本発明の実施例について、説明する。ただし、本発明は下記の実施例により制限されない。
【実施例1】
【0050】
<第1ベクターおよび第2ベクターの構築>
pIRESpuro3(Clontech社製)の薬剤耐性遺伝子「puromycin−N−acetyl−transferase遺伝子」を、別の薬剤耐性遺伝子「neomycin phosphotransferase遺伝子」のHindIII/XbaI断片で置き換えた。このベクターをpIRESneomycinと呼び、第1ベクター構築用のベクターとした。また、pIRESpuro3(Clontech社製)を、第2ベクター構築用のベクターとした。
【0051】
λファージのゲノムDNAから、DNA断片を調製した。具体的には、下記プライマーセット1を用いて、2.5kbのDNA断片を、下記プライマーセット2を用いて5.1kbのDNA断片を、それぞれPCR増幅により調製した。λファージのゲノムDNA(48502bp)において、2.5kbの断片は、17010〜13198番目の領域であり、5.1kbのDNA断片は、5525〜10617番目の領域である。前記2.5kbのDNA断片をNruIおよびNotIで切断し、前記pIRESneomycinおよびpIRESpuro3のNruI−NotIサイトに、それぞれ挿入した。得られたベクターをNotIおよびNsiIで切断し、これに、前記5.1kbのDNA断片をNotIおよびNsiIで処理して得られた4.8kbの前記DNA断片を、同様に連結した。得られたプラスミドを、pIRESneoλおよびpIRESpuroλと呼ぶ。
(プライマーセット1)
Forward Primer
5’−GGGGTCGCGAGCTGCACAGAAAGCGGGGATTTC−3’
Reverse Primer
5’−ATAAGAAGCGGCCGCCGCTCGCTGAGAATAGCCATCAC−3’
(プライマーセット2)
Forward Primer
5’−ATAAGAAGCGGCCGCCACTAGTGCTCACGGACGCGAAGAACAG−3’
Reverse Primer
5’−CCGCTCGAGTTGGCGCGCCCTCTGGCCATCTGCTCGTCAAATC−3’
【0052】
他方、生体由来蛍光タンパク質AcGFPおよびDsRed2の完全コード配列を、それぞれ制限酵素認識部位(5’側にMunIサイト、3’側にEcoRIサイト)を含むプライマーを用いてPCR増幅し、MunI/EcoRI処理したDNA断片を、発現ベクターpCAGGSのEcoRIサイトにサブクローニングした。使用したプライマーセットを以下に示す。なお、各蛍光タンパク質のコード遺伝子の開始コドン近傍は、Kozak配列(CCACCATGG)とした。そして、このベクターから、CAGプロモーターおよび前記蛍光タンパク質のコード配列を含むDNA断片をSalIおよびEcoRIで切り出し、これを平滑化して、前述のpIRESneoλおよびpIRESpuroλのNsiI部位(平滑末端)に挿入した。前記断片をpIRESneoλに挿入して得られたベクターを、第1ベクター(AcGFP−IRES−neo)、前記断片をpIRESpuroλに挿入して得られたベクターを第2ベクター(DsRed2−IRES−puro)という。図5に、pIRESpuro3に2.5kbのDNA断片、4.8kbのDNA断片、CAGプロモーターおよびDsRed2コード配列が挿入された、環状の第2ベクター(DsRed2−IRES−puro)を示す。同図において、proCAGは、CAGプロモーター、Color2は、DsRed2コード配列、puroは、ピューロマイシン耐性遺伝子を、それぞれ示す。また、矢印は、後述する線状化の際の切断部位を示す。なお、第1ベクター(AcGFP−IRES−neo)は、図5において、puroがneo(ネオマイシン耐性遺伝子)であり、Color2(DsRed2コード配列)がColor1(AcGFPコード配列)となった構造である。
(AcGFPプライマーセット)
Forward Primer
5’−GGGCAATTGTCGCCACCATGGTGAGCAAG−3’
Reverse Primer
5’−GGGGAATTCTACTTGTACAGCTCATCCATGCCGTG−3’
(DsRed2プライマーセット)
Forward Primer
5’−CCGCAATTGTCGCCACCATGGACAACACC−3’
Reverse Primer
5’−CCGGAATTCTACTGGGAGCCGGAGTGGC−3’
【0053】
<ベクターの導入>
Nalm−6細胞に、第1ベクター(AcGFP−IRES−neo)および第2ベクター(DsRed2−IRES−puro)を、以下の方法により導入した。なお、第1ベクターおよび第2ベクターは、NotIでの切断により線状化したものを導入に使用した。図6に、NotIでの切断により線状化した第1ベクターおよび第2ベクターの構成の概略を示す。NotI処理によって、例えば、図6に示すベクターにおいて、λDNA断片2.5kbとλDNA断片4.8kbとの間が切断される。そして、蛍光タンパク質コード領域の上流が、レフトアーム、薬剤耐性遺伝子の下流が、ライトアームとなる。前記各ベクターの導入は、遺伝子導入システム(商品名Nucleofector(登録商標)、amaxa社製)および前記システム専用の遺伝子導入試薬を用いて行った。図7に、本実施例における、第1ベクターおよび第2ベクターのヒトゲノムDNAに対する組み込みを表す概略図を示す。
【0054】
まず、指数増殖中のNalm−6細胞(約2×10個)を用意し、遠心分離によって上澄みを除去した。回収した細胞を、100μlのSolutionT(Nucleofector Kit T,amaxa)に懸濁し、線状化した前記第1ベクター2μgを混和し、前記キットに付随するキュベットに移した。そして、Program C−05にて通電し、エレクトロポレーションにより前記ベクターの導入を行った。導入処理後、前記細胞を、37℃に温めておいたES培地4mlに添加し、24時間、37℃で、COインキュベータ内に静置した。24時間静置後の細胞を、細胞濃度が約5×10cells/mlになるように、終濃度1.4mg/mlのG418を含有するES培地で希釈し、この細胞希釈液を96ウェルプレートにまいた(200μl細胞懸濁液/ウェル、1×10cells/ウェル)。このプレートを、2週間、37℃で、COインキュベータ内に静置した。2週間後、G418に耐性を示した細胞を選択した。ここで選択される細胞は、図7に示すように、Nalm−6細胞に第1ベクターが導入されることによって(図7(A))、ヒトゲノムDNAに線状化第1ベクターが組み込まれた細胞である(図7(B))。なお、ヒトゲノムDNAに線状化第1ベクターが組み込まれた細胞を、以下、GFP neo Clone4(第1ベクター導入細胞株)ともいう。
【0055】
続いて、得られたG418耐性細胞に、前記第1ベクターと同じ方法で、第2ベクターを導入した。導入後の細胞を、さらに、終濃度0.2μg/mlのピューロマイシンを含有するES培地において、37℃で2週間培養した。そして、ピューロマイシンに耐性を示した細胞を選択した(合計6株)。これらのピューロマイシン耐性細胞を、それぞれ、Clone1〜6とする。ここで選択される細胞は、2種類の組換え体である。一つは、図7(C)に示すように、ヒトゲノムDNAに組み込まれた前記第1ベクターと第2ベクターとの間で「標的組換え」が生じ、第1ベクターにおけるColor1(AcGFPコード配列)がColor2(DsRed2コード配列)に、IRES−neoがIRES−puroに置き換わった組換え体である(図7(D1))。他方は、図7(D2)に示すように、ランダム挿入によって、第1ベクターが組み込まれた領域とは別の領域に、第2ベクターが組み込まれた組換え体である。なお、後述するが、Clone6は、標的組換えが生じている細胞であるため、以下の図においては、便宜上「CloneC6」と記載する。
【0056】
蛍光タンパク質の発現を利用した組換えの評価が可能であることを裏付けるため、得られたピューロマイシン耐性細胞について、以下の分析を行った。コントロールとして、ベクターを導入していない野生株Nalm−6細胞、蛍光タンパク質としてAcGFPのみを発現する細胞(GFP neo Clone4)、および、蛍光タンパク質としてDsRed2のみを発現する細胞(以下、「DsRed2 neo Clone5」という)についても同様に分析を行った。前記GFP neo Clone4は、前述のとおり、Nalm−6細胞に第1ベクター(AcGFP−IRES−neo)のみを導入した細胞である。前記DsRed2 neo Clone5は、Nalm−6細胞にベクター(DsRed2−IRES−neo)のみを導入した細胞である。前記ベクター(DsRed2−IRES−neo)は、前述と同様にしてDsRed2の完全コード配列をサブクローニングしたpCAGGSから、CAGプロモーターおよびDsRed2コード配列を含むDNA断片をSalIおよびEcoRIで切断し、平滑化して、前記pIRESneoλに挿入することにより作製した。
【0057】
(PCRによる標的組換えの確認)
各細胞から単離したゲノムDNAを鋳型として、AcGFPコード配列およびDsRed2コード配列に特異的なプライマーセットをそれぞれ用いて、PCRを行った。前記プライマーセットは、前記ベクター構築で使用したものと同じである。そして、各細胞のPCR産物をアガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイド染色により増幅断片の検出を行った。なお、増幅反応のコントロールとして、β−グロブリンの増幅を確認した。これらの結果を図8に示す。同図は、各細胞のゲノムにおけるPCR産物の電気泳動写真である。
【0058】
Clone1〜5は、それぞれ、同図に示すように、AcGFPコード配列およびDsRed2コード配列の増幅物が両方検出された。これは、Clone1〜5は、ランダム挿入が生じ、第1ベクターによりAcGFPコード配列が組み込まれ、且つ、異なる部位に、第2ベクターによりDsRed2コード配列が組み込まれたことを意味する。他方、CloneC6は、同図に示すように、AcGFPコード配列の増幅物は検出されず、コントロールDsRed2 neo Clone5と同様に、DsRed2コード配列のみが検出された。このことから、CloneC6は、初めに組み込まれた第1ベクターのAcGFPコード配列が、第2ベクターのDsRed2コード配列と置き換わっている、つまり標的組換えが生じていることがわかる。
【0059】
(サザンブロットによる標的組換えの確認)
各細胞から単離したゲノムDNAをHindIIIで切断し、0.7%アガロースゲルで電気泳動した。そして、ゲル内で分離されたDNA断片をナイロンメンブランに写し、AcGFPコード配列またはDsRed2コード配列に対する下記プローブとのハイブリダイズを行った。これらのオートラジオグラフィーの結果を、図9に示す。同図は、各細胞のゲノムDNAとプローブとのサザンハイブリダイゼーションの結果を示すオートラジオグラフィーであり、(A)が、AcGFPコード配列を検出した結果であり、(B)が、DsRed2コード配列を検出した結果である。
【0060】
AcGFP用プローブは、ベクターpAcGFP−Nuc(Clontech)をNheI/XhoIで制限酵素処理した、全長AcGFPの精製DNA断片を使用した。また、DsRed2用プローブは、ベクターDsRed−mono−C1(Clontech)をNheI/XhoIで制限酵素処理した、全長DsRed2の精製DNA断片を使用した。
【0061】
Clone1〜5は、同図(A)に示すように、AcGFPコード配列が検出され、且つ、同図(B)に示すように、DsRed2コード配列が検出された。これは、Clone1〜5について、ランダム挿入が生じ、第1ベクターによりAcGFPコード配列が組み込まれ、且つ、第2ベクターによりDsRed2コード配列が組み込まれたことを意味する。また、Clone1〜5は、同図(A)におけるAcGFPコード配列のバンドと、同図(B)におけるDsRed2コード配列のバンドが、全く異なることからも、DsRed2コード配列は、AcGFPコード配列とは、全く別の部位に組み込まれていることがわかる。他方、CloneC6は、同図(A)に示すように、AcGFPコード配列は検出されず、同図(B)に示すように、DsRed2コード配列のみが検出された。さらに、同図(A)のClone1〜5におけるAcGFPコード配列のバンドと、同図(B)のCloneC6におけるDsRed2コード配列のバンドが同じであった。このことから、CloneC6は、初めに組み込まれた第1ベクターのAcGFPコード配列が、第2ベクターのDsRed2コード配列と置き換わっている、つまり標的組換えが生じていることがわかる。
【0062】
(FACScanによる標的組換えの確認)
各細胞について、AcGFPの蛍光強度とDsRed2の蛍光強度に従って、FACS(fluorescence activated cell sorting)分析を行った。フローサイトメーターとしては、商品名FACScan(ベクトン・ディッキンソン社製)を使用し、AcGFPは、励起光波長488nm、検出波長530nm近傍(FL1)とし、DsRed2は、励起光波長488nm、検出波長585nm近傍(FL2)とした。この結果を図10に示す。同図において、各グラフの横軸は、GFPの蛍光強度を示し、縦軸は、DsRed2の蛍光強度を示す。同図に示すように、Clone1〜5は、全て、緑の蛍光と赤の蛍光を示す領域に分布しているのに対し、CloneC6は、赤の蛍光を示す領域に略100%が分布していた。つまり、Clone6は、FACScanの結果からも、標的組換えによりDsRed2のみを発現していることがわかる。また、この結果は、標的組換え効率の測定に、FACScanによる解析が効果的であることも示唆している。
【0063】
(標的組換えの蛍光顕微鏡解析)
以上のように、ピューロマイシン耐性細胞6株のうち、CloneC6のみがDsRed2を発現し、Clone1〜5は、DsRed2とAcGFPの両方を発現していることから、Clone6は標的組換えが生じ、Clone1〜5はランダム挿入が生じていることがわかった。つまり、蛍光タンパク質の検出によって、ランダム挿入体と標的組換え体を判断できることがわかった。そこで、実際に、得られたピューロマイシン耐性6株における組換えを視覚的に判断するため、蛍光顕微鏡観察を行った(商品名Axiovert 200M、Zeiss社製)。蛍光顕微鏡観察の条件は、AcGFPについて、励起光波長485nm、検出波長515−565nm(蛍光フィルタFilter set17)とし、DsRed2について、励起光波長550nm、検出波長570−640nm(蛍光フィルタ43−HE)とした。観察は、標的組換えが生じたCloneC6、ランダム挿入が生じたClone5、コントロールとして、野生株Nalm−6細胞およびGFP neo Clone4(第1ベクター導入細胞株)について行った。これらの結果を、図11に示す。同図において、(A)は、各細胞の顕微鏡写真の画像データであり、(B)は、AcGFPの検出波長での蛍光顕微鏡写真の画像データ、(C)は、DsRed2の検出波長での蛍光顕微鏡写真の画像データであり、(D)は、前記(B)および(C)を重ね合わせた画像データである。同図に示すように、標的組換えが生じたCloneC6では、AcGFPは検出されず、赤色のDsRed2のみが検出された。他方、ランダム挿入が生じたClone5は、緑色のAcGFPと赤色のDsRed2がともに検出され、これらを重ね合わせた画像データでは、黄色〜黄緑を示した。このように、蛍光顕微鏡観察において、CloneC6は、標的組換えによりDsRed2のみを発現し、他のCloneは、ランダム挿入によりDsRed2とAcGFPとを発現していた。この結果は、前述のゲノム解析、サザンブロット解析等における蛍光タンパク質遺伝子の組換え結果と同様の結果である。したがって、本実施例の手法によれば、蛍光タンパク質の検出によって標的組換えとランダム挿入を視覚的に区別でき、且つ、それに基づいて組換え効率を評価することが可能であるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、最終的に得られる細胞について、第1蛍光タンパク質と第2蛍光タンパク質を検出することによって、標的組換え体であるかランダム挿入体であるかを判断できる。特に、本発明においては、前記第1蛍光タンパク質と第2蛍光タンパク質とを、それらが発する蛍光によって検出するため、視覚的な検出が可能であり、極めて簡便に標的組換え体であるかランダム挿入体であるかを判断できる。この蛍光検出には、例えば、PCRやハイブリダイゼーション等のように細胞からDNA、RNA、タンパク質等を抽出する必要はなく、例えば、細胞そのものへの励起光照射で足りることからも、極めて簡便かつ迅速な方法であるといえる。また、このように標的組換え体とランダム挿入体の判別を簡便に行えることから、それぞれの細胞数の計数も非常に容易に行うことができる。このため、本発明によれば、極めて簡便に標的組換え効率を評価できる。前述のように、近年、高効率で標的組換えが生じる細胞の検索や技術の確立が行われていることからも、本発明は、これらの研究を、例えば、簡便化且つ促進化できるため、非常に有用な技術といえる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、本発明の一実施形態における第1ベクターおよび第2ベクターの構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明のその他の実施形態における第1ベクターおよび第2ベクターの構成を示す図である。
【図3】図3は、本発明のさらにその他の実施形態において、第1ベクターおよび第2ベクターのゲノムDNAに対する組み込みを示す概略図であり、(A)は、細胞内に第1ベクターが導入された状態を示す図、(B)は、ゲノムDNAに第1ベクターが挿入された状態を示す図、(C)は、第1ベクターが組み込まれたゲノムDNAと第2ベクターとの相同組換えを示す図、(D1)は、第2ベクターが標的組換えによりゲノムDNAに組み込まれた状態を示す図、(D2)は、第2ベクターがランダム挿入によりゲノムDNAに組み込まれた状態を示す図をそれぞれ示す。
【図4】図4は、本発明のさらにその他の実施形態において、図3における細胞が有する蛍光タンパク質を示す概略図であって、(B)は、図3(B)の第1ベクター導入細胞、(D1)は、図3(D1)の標的組換え体、(D2)は、図3(D2)のランダム挿入体をそれぞれ示す。
【図5】図5は、本発明の一実施例における、環状の第2ベクターの構成を示す概略図である。
【図6】図6は、本発明の一実施例における、第1ベクターおよび第2ベクターの構成を示す概略図である。
【図7】図7は、本発明の一実施例において、第1ベクターおよび第2ベクターのヒトゲノムDNAに対する組み込みを示す概略図であり、(A)は、細胞内に第1ベクターが導入された状態を示す図、(B)は、ゲノムDNAに第1ベクターが挿入された状態を示す図、(C)は、第1ベクターが組み込まれたゲノムDNAと第2ベクターとの相同組換えを示す図、(D1)は、第2ベクターが標的組換えによりゲノムDNAに組み込まれた状態を示す図、(D2)は、第2ベクターがランダム挿入によりゲノムDNAに組み込まれた状態を示す図をそれぞれ示す。
【図8】本発明のその他の実施例における、PCR産物の電気泳動写真である。
【図9】本発明のさらにその他の実施例における、サザンブロットのオートラジオグラフィー写真である。
【図10】本発明のさらにその他の実施例における、フローサイトメトリーの結果を示すグラフである。
【図11】本発明のさらにその他の実施例における、蛍光顕微鏡解析の結果を示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的組換え細胞とランダム挿入細胞とを判別する方法であって、下記(A)〜(D)工程を含む、判別方法。
(A) 細胞に、第1ベクターを導入する工程であり、前記第1ベクターが、プロモーター、第1蛍光タンパク質のコード配列、および、2つのアームを含み、前記2つのアームの間に、前記プロモーターおよび前記第1蛍光タンパク質コード配列が配置されたベクターである、工程
(B) 前記(A)工程により得られた細胞について、前記第1ベクターが導入された細胞を選択する工程
(C) 前記第1ベクターが導入された細胞に、さらに、第2ベクターを導入する工程であり、前記第2ベクターが、プロモーター、前記第1蛍光タンパク質とは異なる第2蛍光タンパク質のコード配列、および、2つのアームを含み、前記2つのアームの間に、前記プロモーターおよび前記第2蛍光タンパク質コード配列が配置されたベクターである、工程
(D) 前記(C)工程により得られた細胞について、第1蛍光タンパク質および第2蛍光タンパク質の蛍光を検出する工程
(E) 第2蛍光タンパク質のみを発現した細胞を標的組換え細胞、第1蛍光タンパク質および第2蛍光タンパク質の両方を発現した細胞をランダム挿入細胞と判定する工程
【請求項2】
前記プロモーターが、CMVプロモーターである、請求項1記載の判別方法。
【請求項3】
前記(B)工程において、第1蛍光タンパク質の蛍光を検出することにより、前記第1ベクターが導入された細胞を選択する、請求項1または2記載の判別方法。
【請求項4】
第1ベクターが、さらに、薬剤耐性遺伝子およびバイシストロニック性制御配列を含み、前記第1蛍光タンパク質コード配列と前記薬剤耐性遺伝子との間に、前記バイシストロニック性制御配列が配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の判別方法。
【請求項5】
前記(B)工程において、前記(A)工程により得られた細胞について、前記薬剤耐性を検出することにより、前記第1ベクターが導入された細胞を選択する、請求項4記載の判別方法。
【請求項6】
第2ベクターが、さらに、薬剤耐性遺伝子およびバイシストロニック性制御配列を含み、前記第2蛍光タンパク質コード配列と前記薬剤耐性遺伝子との間に、前記バイシストロニック性制御配列が配置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の判別方法。
【請求項7】
バイシストロニック性制御配列が、IRES(Internal Ribosomal Entry Site)配列である、請求項4から6のいずれか一項に記載の判別方法。
【請求項8】
前記第1ベクターおよび前記第2ベクターが、それぞれ、異なる薬剤耐性遺伝子を有し、前記薬剤耐性遺伝子が、ネオマイシン耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、および、ヒスチジノール耐性遺伝子からなる群から選択された少なくとも一つである、請求項1から7のいずれか一項に記載の判別方法。
【請求項9】
前記第1蛍光タンパク質が、青色蛍光タンパク質、緑色蛍光タンパク質、青緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質およびオレンジ色蛍光タンパク質からなる群から選択された少なくとも一つであり、
前記第2蛍光タンパク質が、前記第1蛍光タンパク質とは異なる色彩であり且つ青色蛍光タンパク質、緑色蛍光タンパク質、青緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質およびオレンジ色蛍光タンパク質からなる群から選択された少なくとも一つである、請求項1から8のいずれか一項に記載の判別方法。
【請求項10】
細胞が、真核細胞である、請求項1から9のいずれか一項に記載の判別方法。
【請求項11】
真核細胞が、ヒト細胞である、請求項10記載の判別方法。
【請求項12】
前記ヒト細胞が、Nalm−6細胞である、請求項11記載の判別方法。
【請求項13】
標的組換え効率を評価する方法であって、下記(a)および(b)工程を含む、標的組換え効率算出方法。
(a) 請求項1から12のいずれか一項に記載の判別方法により、前記第2ベクターを導入した複数の細胞について、標的組換え細胞であるかランダム挿入細胞であるかの判別を行う工程
(b) 標的組換え細胞の細胞数とランダム挿入細胞の細胞数とを計数して、標的組換え効率を算出する工程
【請求項14】
標的組換え細胞とランダム挿入細胞とを判別するためのキットであり、
第1ベクターおよび第2ベクターを含み、
前記第1ベクターが、プロモーター、第1蛍光タンパク質のコード配列、および、2つのアームを含み、前記2つのアームの間に、前記プロモーターおよび前記第1蛍光タンパク質コード配列が配置されているベクターであり、
前記第2ベクターが、プロモーター、前記第1蛍光タンパク質とは異なる第2蛍光タンパク質のコード配列、および、2つのアームを含み、前記2つのアームの間に、前記プロモーターおよび前記第2蛍光タンパク質コード配列が配置されているベクターである、判別用キット。
【請求項15】
前記プロモーターが、CMVプロモーターである、請求項14記載の判別用キット。
【請求項16】
第1ベクターが、さらに、薬剤耐性遺伝子およびバイシストロニック性制御配列を含み、前記第1蛍光タンパク質コード配列と前記薬剤耐性遺伝子との間に、前記バイシストロニック性制御配列が配置されている、請求項14または15記載の判別用キット。
【請求項17】
第2ベクターが、さらに、薬剤耐性遺伝子およびバイシストロニック性制御配列を含み、前記第2蛍光タンパク質コード配列と前記薬剤耐性遺伝子との間に、前記バイシストロニック性制御配列が配置されている、請求項14から16のいずれか一項に記載の判別用キット。
【請求項18】
バイシストロニック性制御配列が、IRES(Internal Ribosomal Entry Site)配列である、請求項16または17記載の判別用キット。
【請求項19】
前記第1ベクターおよび前記第2ベクターが、それぞれ、異なる薬剤耐性遺伝子を有し、前記薬剤耐性遺伝子が、ネオマイシン耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、および、ヒスチジノール耐性遺伝子からなる群から選択された少なくとも一つである、請求項14から18のいずれか一項に記載の判別キット。
【請求項20】
前記第1蛍光タンパク質が、青色蛍光タンパク質、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質および赤色蛍光タンパク質からなる群から選択された少なくとも一つであり、
前記第2蛍光タンパク質が、前記第1蛍光タンパク質とは異なる色彩であり且つ青色蛍光タンパク質、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質および赤色蛍光タンパク質からなる群から選択された少なくとも一つである、請求項14から19のいずれか一項に記載の判別キット。
【請求項21】
標的組換え効率を評価するためのキットであり、請求項14から20のいずれか一項に記載の標的組換え細胞とランダム挿入細胞とを判別するためのキットを含む、標的組換え効率評価用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−271865(P2008−271865A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119791(P2007−119791)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(504202472)大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 (119)
【Fターム(参考)】