説明

標的組織の検出とイメージング

【課題】 標的組織の高解像度イメージングのための方法が本発明に包含される。
【解決手段】 そのような方法は、標的化細胞又は組織に特異的な低解像度及び高解像度造影剤を投与することを含む。造影剤は、標的細胞に結合でき、又は、標的組織内に集積できる。標的組織内の低解像度造影剤の集積部位を特定するために低解像度イメージング法が使用される。次に、高解像度造影剤の集積部位を特定するために標的組織の高解像度画像が取得され、低解像度造影剤を単独で使用した場合に得られる画像よりも解像度が高い画像の生成が可能になる。これらの方法は、任意でエマルションに含まれるナノ粒子を造影剤として利用してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍のような標的組織の特定、位置特定、及び低解像度イメージングを提供するための、標的化低解像度造影剤の対象への投与に関する。当該投与と同時に、又は、投与後に、低解像度造影剤の投与が高解像度イメージングのプロセスの指標となるように、同様に標的化された高解像度イメージングを提供する組成物が投与される。本発明は、イメージング用の低解像度及び高解像度造影剤を含むエマルションの作製及び投与にも関する。
【背景技術】
【0002】
監視・疫学及び転帰成績(Surveillance,Epidemology,and End Results:SEER)の癌登録おいて過去25年間に集められたデータは、腫瘍の早期発見が、限局性乳癌又は局所浸潤性乳癌患者の5年生存率を改善するという原則を裏付けている(Elkin et al.(2005)Cancer 104(6):1149−1157)。生存率の改善は腫瘍サイズ分布の全体的な下方移動と相関しており、癌の大きさが1cmに満たない患者に共通して特に有利な効果が認められている。癌の早期発見及び治療への幅広い要求から分子イメージングとゲノムプロテオミクス技術への関心が集まっており、これらの技法とがん治療の新戦略を組み合わせることで癌患者の生存率が更に改善する可能性がある。
【0003】
小さな固形腫瘍を特定する手法の1つは、αβ−インテグリンのような、新生血管内皮に固有のバイオシグネチャーを標的とした血管新生の早期発見をに関するものである。発明者らは、臨床で用いられる磁界強度(1.5T)での30mmの腫瘍の新生血管の検出に、αβ−インテグリンを標的とする常磁性のパーフルオロカーボンエマルションが使用可能であることをこれまでに示した。パーフルオロカーボンナノ粒子は公称粒径が250nmであり、血管内にとどまるため、血管外のマクロファージ、平滑筋、及びその他の細胞上に発現したαβ−インテグリンへのアクセスは妨げられる。複数のモデルにおいて示されているように、MRIでは、結合した常磁性のナノ粒子による増強によって、たとえ微小な腫瘍であっても非常に解像度の高い画像が得られている(Winter et al.(2003)Cancer Res.63(18):5838−5843;Schmieder et al.(2005)Magn.Reson.Med.53(3):621−627)が、臨床上この方法を用いるには、コイルの位置を決定し、撮像野を定め、画像を取得するために、腫瘍の位置を予め知っている必要がある。1つ以上の未知の場所に存在する微小な腫瘍を特定するには、広い関心領域にわたって確実に検出可能な111In又は99mTcのような高感度の放射性核種シグナルが必要となることがある。
【0004】
抗体、ペプチド、ペプチド模倣薬、及び、ディスインテグリンを含む数多くの放射線標識αβ−インテグリン又はビトロネクチンアンタゴニストが、腫瘍血管の標的物質として検討されてきた(Haubner et al.(2001)J.Nucl.Med.42:326−336;Haubner et al.(1999)J.Nucl.Med.40:1061−1071;Janssen et al.(2002)Cancer Res.62(21):6146−6151;McQuade et al.(2004)Bioconjug.Chem.15(5):988−996;Chen et al.(2004)Eur.J.Nucl.Med.Mol.Imaging31(8):1081−1089;Chen et al.(2004)Nucl.Med.Biol.31(1):11−19;Chen et al.(2004)Nucl.Med.Biol.31(2):179−189;Chen et al.(2004)Bioconjug.Chem.15(1):41−49;Onthank et al.(2004)Bioconjug.Chem.15(2):235−241;Sadeghi et al.(2004)Circulation 110(1):84−90)。これらの物質は、αβ−インテグリンに対して非常に高い特異性を持ちうるものの、血液循環を超えて浸透するため、内皮以外の成分から成る組織にも結合する。パーフルオロカーボンナノ粒子の細網内皮系(RES)器官への生体内分布は周知であり、これまでに報告もされている(McGoron et al.(1994)Artif.Cells Blood Substit.Immobil.Biotechnol.22:1243−1250)が、放射性核種の、より高いペイロード能、及び、脈管内に分布することから、頭部、頚部、肺、腹部、骨盤、及び、骨を含む非細網内皮系組織における初期腫瘍の迅速な特定に魅力的な物質となっている。
【0005】
個体の体内での様々な及び/又は特定の部位及び組織への到達に有用で、かつ、コントラスト、特異性、及び、感度の向上をもたらす手法及び組成物の開発が、分子イメージング及び治療薬送達のために引き続き必要とされている。
【0006】
本明細書において引用する全ての出版物、特許出願、及び特許は、開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、液体エマルションである組成物を提供する。該液体エマルションは、脂質及び/又は界面活性剤からなるコーティングで覆われた、液状で比較的高沸点のパーフルオロカーボンを含むナノ粒子を含有する。被覆するコーティングは、αβを標的する部分と直接結合し、又は、当該部分と任意にリンカーを介して共有結合している中間物質を封入することができる。あるいは、負に帯電したαβターゲティング物質、例えば、一般的には核酸、特にはアプタマー等が表面に吸着されるように、コーティングはカチオン性であってもよい。
【0008】
本発明の組成物は、標的部分を発現する組織を標的とすることを目的としており、該標的は、低解像度及び高解像度のイメージング法を用いて検出されることを目的としている。一の態様において、低解像度造影剤は、標的特異的リガンドに結合しうる放射性核種又は光学的イメージング剤を含む。必要に応じて、低解像度造影剤は、ナノ粒子のような粒子を含む。粒子のその他の種類には、リポソーム、ミセル、ガス及び/若しくはガス前駆体を含有する気泡、リポタンパク質、ハロカーボン及び/若しくは炭化水素ナノ粒子、ハロカーボン及び/又は炭化水素エマルション滴、中空粒子及び/若しくは多孔質粒子、並びに/又は、固体ナノ粒子が含まれる。一の態様において、低解像度造影剤は、例えばフッ素MRI等で検出可能な、パーフルオロオクチルブロミド(PFOB)ナノ粒子のようなハロカーボンベースのナノ粒子を含む。高解像度造影剤は、標的特異的リガンド、磁気共鳴画像法(MRI)用の造影剤、CTイメージング剤、光学的イメージング剤、超音波イメージング剤、パラCESTイメージング剤、又は、これらの組み合わせを含み、また、必要に応じてナノ粒子のような粒子を含む。低解像度及び高解像度造影剤は、同じ粒子内に封入されてもよい。
【0009】
標的化低解像度造影剤は、標的部分を発現する組織中に集積する。低解像度イメージング法によって、低解像度造影剤の集積が含まれる潜在的な標的組織が特定される。低解像度造影剤と類似する標的を有する標的化高解像度造影剤は、投与されると同様に潜在的標的組織中に集積する。低解像度イメージング法を使用して任意の潜在的標的組織が特定された場合は、特定された任意の潜在的標的組織を高解像度で検査するため高解像度イメージング法が使用される。
【0010】
従って、一の態様においては、本発明は高解像度イメージングの方法に関し、本方法は、(a)標的化低解像度造影剤と、低解像度造影剤と類似する標的を有する標的化高解像度造影剤を投与し、標的組織中に各造影剤を集積させること、(b)低解像度イメージング法を用いて標的組織を特定することにより、低解像度造影剤の集積部位を特定することを含む。低解像度イメージング法によって低解像度造影剤が集積した標的組織が特定された場合、ステップ(c)が適用され、本ステップは、高解像度造影剤の集積部位を特定するために高解像度イメージング法を用いて標的組織の高解像度画像を得ることにより、低解像度造影剤を単独で用いた場合に得られる画像よりも解像度の高い画像の生成を可能にするものである。
【0011】
別の態様において、本発明は標的化造影剤を標的組織に送達する方法に関し、本方法は、(a)標的化核造影剤及びハロカーボンベースのナノ粒子から選択される低解像度標的造影剤を、前記標的組織を体内に含む対象に投与すること、(b)MRI用造影剤、CT用造影剤、超音波用造影剤、光学用造影剤、パラCEST用造影剤、及び、これらの組み合わせからなる群から選択される高解像度標的化造影剤を対象に投与すること、ここで、高解像度造影剤は、低解像度造影剤と類似する標的を有する、並びに、(c)造影剤を標的組織中に集積させることにより、標的化造影剤を標的組織に送達することを含む。標的組織に結合した低解像度造影剤の画像が得られる。別の態様において、必要に応じて、標的組織に結合した低解像度造影剤の画像が得られた後に、標的組織に結合した高解像度造影剤の画像が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、標的部分を発現する組織を標的とするナノ粒子等の粒子のエマルションを調製するためのキットを提供し、本キットは、標的部分に特異的なリガンド、及び、低解像度造影剤及び/又は高解像度造影剤と結合するための結合部分を含むナノ粒子を含む少なくとも1つの容器、前記低解像度造影剤を含む少なくとも1つの容器、並びに、前記高解像度造影剤を含む少なくとも1つの容器とを備える。一の態様において、標的部分はαβである。
【0013】
標的部分を発現する組織を標的とするナノ粒子のエマルションを調製するためのキットも含まれ、本キットは、標的部分に特異的なリガンドに結合するための結合部分を含むナノ粒子を含む少なくとも1つの容器と、標的部分に特異的なリガンドを含む少なくとも1つの容器と、低解像度造影剤を含む少なくとも1つの容器と、高解像度造影剤を含む少なくとも1つの容器とを備える。一の態様において、標的部分はαβである。
【0014】
本発明で使用するナノ粒子は、脂質/界面活性剤のコーティングを更に含む高沸点の液体パーフルオロカーボンベースのナノ粒子であってもよい。下記で更に詳細に説明するように、標的特異的リガンドは、特定の実施形態においてはαβ特異的リガンドであり、脂質/界面活性剤コーティングの成分と共有結合していてもよい。
【0015】
更に、本発明は高解像度イメージング用のキットに関し、本キットは、標的化低解像度造影剤を含む少なくとも1つの容器と、標的化高解像度造影剤を含む少なくとも1つの容器と、使用説明手段とを備える。造影剤のうちの1つ又は両方は、これに限定されすものではないが、ナノ粒子等の粒子を含むことができる。一の態様において、キットは、低解像度造影剤に結合部分を介して結合した、標的部分に特異的なリガンドを含むナノ粒子を含む少なくとも1つの容器と、高解像度造影剤に結合部分を介して結合した、標的部分に特異的なリガンドを含有するナノ粒子を含む少なくとも1つの容器とを備える。別の態様において、キットは、低解像度及び高解像度造影剤の両方が同じナノ粒子内に封入されるように、標的部分に特異的なリガンド及び高解像度造影剤を含むハロカーボンベースのナノ粒子を含む少なくとも1つの容器を備える。ハロカーボンベースのナノ粒子は、低解像度イメージング法を用いて検出可能であってもよい。例えば、低解像度イメージング法としてフッ素MRIを用いることにより、当該ナノ粒子を検出することができる。一の態様において、ナノ粒子は、対象に投与され、対象の体内の標的組織を特定するために低解像度イメージング法が使用される。更なる態様においては、その後、標的組織の画像を得るために高解像度イメージング法が使用される。一の態様において、標的部分はαβである。
【0016】
別の態様において、本発明は、高解像度イメージング用のキットに関し、本キットは、標的部分に特異的なリガンドを含有するハロカーボンベースのナノ粒子であって、高解像度造影剤と結合するナノ粒子を含む少なくとも1つの容器と、使用説明手段とを備える。ハロカーボンベースのナノ粒子は、パーフルオロオクチルブロミド(PFOB)を含むことができる。一の態様において、高解像度造影剤はMRI用造影剤を含む。標的組織の高解像度画像を取得するための方法において、組成物を対象に投与し、フッ素MRIを使用して標的組織を特定することにより、低解像度造影剤の集積部位を特定し、標的組織のMRI画像が取得され、標的組織の高解像度画像が生成される。
【0017】
本発明は、高解像度イメージング用の方法を更に包含し、本方法は、(a)標的化低解像度造影剤、及び、低解像度造影剤と類似する標的を有する標的化高解像度造影剤を対象に投与し、各造影剤を1つ以上の標的組織に集積させること、(b)低解像度イメージング法を用いて標的組織中の低解像度造影剤の集積部位を特定すること、並びに、(c)高解像度イメージング法を用いて標的組織の高解像度画像を取得することにより、高解像度造影剤の集積部位を特定し、低解像度造影剤を単独で使用した場合に得られる画像よりも解像度の高い画像を生成することを含む。標的組織は哺乳動物の対象の体内に存在してもよく、好ましくはヒトの対象の体内に存在する。低解像度造影剤及び高解像度造影剤は同じ組成物中に組み込まれてもよく、本組成物は低解像度モダリティ及び高解像度モダリティを使用して検出可能である。例えば、造影剤は、フッ素MRIにより低解像度イメージング法として検出可能であり、プロトンMRIにより高解像度イメージング法として検出可能な、ガドリニウム添加パーフルオロカーボンエマルションであってもよい。一の態様において、低解像度造影剤及び高解像度造影剤は、本明細書で更に説明するナノ粒子等の粒子に組み込まれている。
【0018】
デコイ粒子を低解像度造影剤と同時に投与することも可能である。デコイ粒子は、例えば国際公開公報WO05/086639号に記載されている。
【0019】
低解像度造影剤を高解像度造影剤と同時に投与することも可能である。一の態様において、低解像度及び高解像度造影剤は同一のナノ粒子中に封入される。あるいは、低解像度造影剤に続いて高解像度造影剤が投与される。
【0020】
本発明は、標的化造影剤を標的組織に送達する方法に関し、本方法は、(a)疑わしい標的組織を含む対象に低解像度標的化造影剤を投与すること、(b)高解像度標的化造影剤を対象に投与すること、ここで、高解像度造影剤は低解像度造影剤と類似する標的を有する、並びに、(c)造影剤を標的組織中に集積させることにより、標的化造影剤を標的組織に送達することを含む。標的組織に結合した低解像度造影剤の画像を得ることができる。別の態様において、必要に応じて標的組織に結合した低解像度造影剤の画像が取得された後で、標的組織に結合した高解像度造影剤の画像が取得される。
【0021】
本発明の一の態様において、低解像度造影剤は診断用放射性核種及び標的リガンドを含む。別の態様において、低解像度造影剤は、例えばPFOB等のハロカーボンベースのナノ粒子、又は、その他のフッ素ベースMRI用造影剤を含む。
【0022】
更なる態様において、高解像度造影剤は、MRI用造影剤、CT用イメージング剤、光学用イメージング剤、超音波用イメージング剤、パラCEST用イメージング剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。別の態様において、高解像度造影剤は、PFOB等のフッ素ベースであってもよいMRI用造影剤を含む。または、高解像度造影剤は、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、ルテニウム、セリウム、インジウム、プラセオジミウム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、及び、イッテルビウムからなる群から選択される常磁性金属のキレートを含むプロトンベースMRI又はパラCEST用造影剤である。更なる態様において、高解像度造影剤は、ヨウ素化油ナノ粒子又は封入型固体金属粒子を含むCT用イメージング剤を含むことができる。
【0023】
低解像度又は高解像度造影剤は、粒子を含む担体に封入されてもよい。「粒子」には、例えばリポソーム、ミセル、ガス及び/若しくはガス前駆体を含有する気泡、リポタンパク質、ハロカーボン及び/若しくは炭化水素ナノ粒子、ハロカーボン及び/若しくは炭化水素エマルション滴、中空粒子及び/若しくは多孔質粒子、並びに/又は、固体ナノ粒子が含まれる。粒子自体は、固体粒子、液体でコーティングされた固体粒子、液体でコーティングされた液体粒子、及び、固体又は液体でコーティングされた気体粒子を含む、様々な物理的状態であってもよい。本発明に有用な様々な粒子だけでなく、活性組成物中の当該粒子にターゲティング成分を結合させる手段が、当該技術分においてこれまで説明されている。該粒子は、例えば、米国特許第6548046号、第6821506号、第5149319号、第5542935号、第5585112号、第5149319号、第5922304号、並びに、欧州特許公開公報第727225号に記載されており、粒子の構造に関して全ての開示内容が参照として本明細書に組み込まれる。これらの文献は例に過ぎず、本発明に有用な様々な種類の粒子状担体を全て含んでいるものではない。本明細書では概してナノ粒子について述べるが、本発明の実施形態はナノ粒子に限定されず、本明細書において説明する組成物及び方法は他の種類の粒子にも同様に有用であることが理解される。
【0024】
更に、担体として使用する粒子は、ガス気泡、又は、使用の際にガス気泡を形成する前駆体を含んでもよい。この場合、ガスは液体又は固体ベースのコーティングに包含される。
【0025】
ターゲティング物質と共に、また必要に応じて活性成分と共に提供されてもよく、又は、担体中で使用してもよい、他の適した粒子には、米国特許第5536489号に記載の油及び水エマルション、米国特許第5512294号に記載されたようなリポソーム組成物、並びに、米国特許第5171737号に記載の油及び水エマルションが含まれる。
【0026】
一の態様において、本明細書において更に説明するように、エマルション中に含まれていてもよいナノ粒子中に造影剤が封入される。好ましくは、ナノ粒子は脂質コーティングで覆われた液体フルオロカーボンコアを含む。
【0027】
造影剤は、標的特異的リガンドによって標的化される。好ましい態様において、標的特異的リガンドは抗体、抗体断片、ペプチド、アプタマー、ペプチド模倣薬、薬剤、又は、ホルモンである。標的特異的リガンドはナノ粒子に結合させることができる。一の態様において、標的組織は高レベルのαβ−インテグリンによって特徴付けられ、更なる態様において、低解像度及び/又は高解像度造影剤は、αβ−インテグリンに対するリガンドと結合したナノ粒子を含むエマルションを備える。
【0028】
一般的に、標的特異的リガンドと直接結合した標的化ナノ粒子は、それ自体、X線イメージング(例えば、コンピュータ断層撮影法(CT))、超音波イメージング、及び/又は、治療薬の送達に有用である。また、他の成分を添加することで、磁気共鳴画像法(MRI)、核医学イメージング(例えば、シンチグラフィー、陽電子放射断層撮像法(PET)、及び、単光子放射型コンピュータ断層撮像法(SPECT))、光学的又は光イメージング(例えば、共焦点顕微鏡及び蛍光画像法)、マグネトトモグラフィー(magnetotomography)、並びに、電気インピーダンスイメージングのような他の形態の画像法に使用できる。例えば、常磁性イオンを含有するキレート剤を添加すると、粒子は磁気共鳴画像法用の造影剤として使用できる。パーフルオロカーボンナノ粒子は多量のフッ素を含むため、該粒子をMRIに使用する場合、常磁性イオンの添加は必要ではなく、フルオロカーボンコアによって、19F磁気共鳴画像法を使用し粒子の位置を追跡することができる。他の画像化モダリティの性質に応じて、19F磁気共鳴画像法を低解像度又は高解像度イメージング法として使用することができる。更に、放射性核種を添加することで、核イメージング(例えば、シンチグラフィー、陽電子放射断層撮像法(PET)、及び、単光子放射型コンピュータ断層撮像法(SPECT))、若しくは、放射線療法の治療薬、又は、その両方に造影剤を使用することができる。生物活性物質を添加することで、薬物送達システムとして造影剤を使用することができる。そうした活性の複数を含んでいてもよく、従って、治療用活性物質を標的組織へ送達すると同時に、標的組織の画像を得ることもできる。
【0029】
ハロカーボンベースのナノ粒子のエマルションは、コーティングに加えられる成分の性質に応じて様々な方法で調製可能である。典型例として、単に例示を目的とするものであるが、以下手順を示す:パーフルオロオクチルブロミド(40%w/v、PFOB、3M)、界面活性剤混合物(2.0%、w/v)及び、グリセリン(1.7%、w/v)を調製する。ここで、前記界面活性剤混合物は、クロロホルムに溶解された、64モル%レシチン(Pharmacia Inc)、35モル%コレステロール(Sigma Chemical Co.)及び1モル%ジパルミトイル−L−α−ホスファチジル−エタノールアミン(Pierce Inc.)が含まれる。薬剤をメタノールに懸濁し(〜25μg/20μl)、0.01から5.0モル%の間、好ましくは0.2から2.0モル%の間、でタイトレーションした量を、2%界面活性剤層に添加する。クロロホルム−脂質混合液を減圧下で蒸発させ、50℃の真空オーブン内で一晩乾燥し、超音波処理により水に分散させる。懸濁液を、蒸留水又は脱イオン水に溶解したパーフルオロオクチルブロミドと共にブレンダーカップ(Dynamics Corporation of America)に移し、30秒〜60秒間乳化させる。乳化した混合液をMicrofluidics乳化装置(Microfluidics Co.)に移し、20,000PSIで3分間処理を継続する。処理が完了したエマルションをバイアルに移し、窒素を封入し、使用するまでクリンプ栓で密封する。コントロール用エマルションは、界面活性剤混合物に薬剤を添加しないことで、同じ手順により調製することができる。粒子の大きさは、レーザー光散乱サブミクロン粒子サイズ解析装置(Malvern Zetasizer 4、Malvern Instruments Ltd.(Southborough、米国マサチューセッツ州)を使用して37℃で3回測定し、平均直径が400nm未満のタイトかつ再現性の高いサイズ分布を示す。取り込まれなかった薬剤は透析法又は限外ろ過法で除去することができる。ターゲティングリガンドを提供するため、上述の手順において、二官能性リンカーを介してF(ab)フラグメントをホスファチジルエタノールアミンに共有結合させる。
【0030】
一部の例では、脂質及び/又は界面活性剤で覆うコーティングは、ターゲティング部分に直接結合することができ、若しくは、ターゲティング部分と共有結合した中間成分を封入することができる、必要に応じてリンカーを介していてもよく、又は、ビオチンのような非特異的結合物質を含有してもよい。あるいは、ターゲティング物質が静電的に表面に吸着されるようにコーティングはカチオン性又はアニオン性であってもよい。例えば、負に帯電したターゲティング物質、一般的には核酸、特にはアプタマー等を表面に吸着させるため、コーティングはカチオン性であってもよい。
【0031】
いくつかの態様において、ナノ粒子は、その表面に存在する、イメージング及び/又は治療に有用な「補助物質」を少なくとも1つ含んでいてもよい。本補助物質は、放射性核種、MRI若しくはPETイメージング用造影剤、光学イメージング用蛍光色素分子若しくは赤外線物質、及び/又は、生物活性化合物を含むが、これらに限定されるものではない。ナノ粒子は、それ自体、X線(例えば、CT)、フッ素ベースMRI、又は、超音波イメージング用の造影剤として使用することができる。他の態様においては、ナノ粒子は低解像度及び高解像度造影剤に結合し、これら造影剤は更にそれぞれ1つ以上の補助物質と結合していてもよい。
【0032】
いくつかの態様においては、造影剤は、治療薬及び診断用薬として使用するために、これらに限定されるものではないが、生物活性剤、放射性薬剤、化学療法剤、及び/又は、遺伝子製剤を含むよう改良されていてもよい。
【0033】
本発明は、本造影剤を、in vivo、ex vivo、in situ、及び、in vitroを含む様々な応用において使用する方法を提供する。本方法は、単一モード又はマルチモードイメージング及び/又は治療法を含む。
【0034】
従って、少なくとも1つの治療薬を封入した標的化造影剤は、選択された細胞、組織及び/又は臓器に特異的に投与した場合に、リスク/ベネフィットプロファイルが改善する病気又は疾患の治療に特に有用である。
本発明の使用法及び組成物
【0035】
(本発明の使用法及び組成物)
エマルション及びその調製用キットは、細胞、組織及び/若しくは臓器のイメージング、並びに/又は、細胞、組織及び/若しくは臓器への治療薬の送達を含む本発明の方法に有用である。いくつかの態様において、エマルションは、その表面上に存在する、細胞及び/又は組織に指向化されたリガンドを使用することで、特定の細胞種及び/又は組織を標的化させる。エマルションは、in vivo、ex vivo、in situ、及び、in vitroの細胞又は組織に使用することができる。
【0036】
ターゲティングリガンドと物質(例えば、薬剤)を含有するエマルションのin vivo又はex vivoで使用することにより、例えば、特定及び/又は物質を標的化細胞への送達を行うことができる。例えば、X線イメージング法を使用してそのような細胞の特定が可能であり、細胞への物質の送達もイメージングの過程において確認できる。例えば、細胞の移植、又は、次に続く利用の前に、ex vivo又はin vivoにおいて、細胞、例えば幹細胞に遺伝物質を送達するために、及び/又は、細胞、例えば幹細胞を標識するために標的化エマルションを使用することができる。更に、本発明のエマルションは、溶液中の標的化細胞を特定し、及び、例えば沈降法及び/又は勾配遠心分離によって標的化細胞を溶液から回収又は単離するために使用することができる。
【0037】
in vivo及びin vitroで本発明のナノ粒子エマルションを使用する方法は当業者に周知である。例えば、本発明のエマルションを使用して画像化される及び/又は治療される関心部位は、これらに限定されるものではないが、心臓組織と全ての心血管系の血管、血管由来組織、心血管系の血管の任意の部分、又は、例えば、血栓、凝血塊、破裂凝血塊、血小板、筋細胞等の心血管内に入り若しくは心血管を塞栓する任意の物質若しくは細胞が含まれる心血管系組織である。本発明のエマルションを用いて画像化され及び/又は治療される病態は、病変において血管系が重要な役割を果たす任意の病態、例えば、心臓血管疾患、癌、関節リウマチを含む様々な疾患の特徴を示すことがある炎症部位、再狭窄につながる血管形成術による刺激のような刺激部位、腫瘍、アテローム性動脈硬化部位が含まれるが、これらに限定されるものではない。使用するターゲティングリガンドに応じて、本発明のエマルションは、血管及び/又は再狭窄の画像化に特に使用される。例えば、αβ−インテグリンに結合するリガンドを含有するエマルションは、αβ−インテグリンを高レベルに発現している組織を標的とする。αβの高レベル発現は活性化内皮細胞に典型的に認められ、新生血管の特徴であると考えられている。画像化及び/又は治療する他の組織には、特定の悪性組織及び/又は腫瘍を含有するものが含まれる。
【0038】
所望により、標的指向性イメージング及び治療薬送達を組み合わせることで、単一の手順で、標的の特定及び薬の送達を行うことができる。薬を送達するエマルションを画像化する能力によって、薬が送達される細胞又は組織の同定及び/又は確認を行うことができる。
【0039】
本明細書で説明する低解像度及び高解像度造影剤は、単一モードイメージング又はマルチモードイメージングに使用することができる。例えば、X線とMRIイメージングの組み合わせ、又は、他の本明細書で説明するイメージングの種類の組み合わせのような、1種類より多いイメージングを可能にする補助薬を含む造影剤により、マルチモードイメージングを実施することができる。あるいは、初めに低解像度イメージング法により低解像度造影剤の局在を知り、続いて、高解像度イメージング法により高解像度造影剤の局在を知るように、1種類より多い造影剤を対象に投与することもできる。
【0040】
一の態様において、低解像度イメージング法を用いることにより標的組織の存在場所が特定される。低解像度イメージング法の限定されない例としては、X線透視法、MR透視法、リアルタイム超音波法、核医学イメージング(例えば、シンチグラフィー、陽電子放射断層撮像法(PET)、並びに、光学イメージング(例えば、近赤外線法、蛍光法)及び単光子放射型コンピュータ断層撮像法(SPECT))が挙げられる。続いて、低解像度イメージング法を用いて位置が特定された標的組織の高解像度画像を得る。本明細書で用いる場合、語句「高解像度イメージング法」は、特定の態様において用いられる低解像度イメージング法よりも高解像度の画像を取得する方法を意味する。本明細書で用いる場合、語句「低解像度」は、そのイメージング法が高解像度イメージング法よりも高い感度を持つことを示す。はじめに感度の高い技法を用いることで、潜在的な標的組織をより広い範囲で検索ができ、その後、高解像度イメージングが行われることにより、特定された標的組織に関するより正確な情報を得る。イメージング法の解像度は、一般的に、スキャンされる時間/量を算出することにより決定される。使用する低解像度イメージング法は、一般的に、選択される高解像度イメージング法と比較して、与えられた量をスキャンするために要する時間が短い。高解像度イメージング法の限定されない例として、プロトン及びフッ素MRI、CT(X線CT及び電子ビームCT)、超音波法、並びに、共焦点顕微鏡がある。当業者は、低解像度及び高解像度イメージング法用に選択される解像度が、少なくとも、使用される技法、造影剤、対象の生体構造、及び、画像化される組織によることを容易に理解するであろう。
【0041】
本発明の更なる態様において、1つ以上の組織又は目的領域における低解像度造影剤の集積部位を特定するために低解像度イメージングを使用し、次に、高解像度イメージング法が該特定領域において使用して、低解像度造影剤と類似して標的化した高解像度造影剤の集積を検出する。従って、低解像度造影剤の使用及び検出を、標的組織の高解像度画像の取得の指標として利用する。
【0042】
X線用造影剤として使用する場合、本発明の組成物は一般的に、約10%〜約60%w/v、好ましくは約15%〜約50%w/v、より好ましくは約20%〜約40%w/vの濃度のパーフルオロカーボンを有する。静脈注射によって投与される用量は、一般的に、約0.5mmol/kg〜1.5mmol/kg、好ましくは約0.8mmol/kg〜1.2mmol/kgの範囲にある。イメージングは、既知の技法、好ましくはX線コンピュータ断層撮影法を使用して行われる。
【0043】
本発明の超音波用造影剤は、例えば、およそ3μL/kg/分の注入速度での静脈注射により投与する。イメージングは、既知の超音波法を使用することにより行われる。
【0044】
本発明の磁気共鳴画像法用造影剤は、米国特許第5155215号及び第5087440号;Margerstadt et al.(1986)Magn.Reson.Med.3:808;Runge et al(1988)Radiology 166:835;並びに、Bousquet et al.(1988)Radiology 166:693に記載されるような他のMRI剤と同様の方式で使用してもよい。他の薬剤として、米国特許第6875419号において説明されているような、pH感受性であり、またパルスに応じてコントラスト特性が変化可能なものを使用してもよい。概して、0.01〜1.0ミリモル/体重kgの用量で造影剤の滅菌水溶液を患者に静脈内投与する。
【0045】
診断用放射線医薬品は、通常は生理食塩水中に含まれ、1〜100mCi/体重70kgの用量、又は、好ましくは5〜50mCiの用量で静脈注射によって投与される。イメージングは、既知の手順を使用して行われる。
【0046】
治療用放射線医薬品は、通常は生理食塩水中に含まれ、0.01〜5mCi/体重kgの用量で、又は好ましくは0.1〜4mCi/体重kgの用量で、例えば静脈注射によって投与される。同等の治療用放射線医薬品に関しては、現在の臨床診療では、用量をZevalin(商標)の0.3〜0.4mCi/kgから標識ソマトスタチンペプチドであるOctreoTher(商標)の1〜2mCi/kgまでの範囲に設定している。このような治療用放射線医薬品では、腫瘍細胞の殺傷と正常組織への毒性、特に放射線腎炎との間のバランスが保たれている。これらのレベルでは、そのバランスは概して腫瘍細胞への効果を重視する。これらの用量は対応する画像用アイソトープに比較して多い。
【0047】
本明細書において、「個体」は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。哺乳動物には、ヒト、家畜、スポーツ用動物、げっ歯類、及び愛玩動物が含まれるがこれらに限定されるものではない。
【0048】
本明細書において、物質の「有効量」又は「十分量」は、臨床結果を含む有益な又は所望の結果をもたらすのに十分量である。「有効量」は、その語句が使われる文脈に応じて異なる。有効量は、1つ以上の投与によって投与することができる。
【0049】
本明細書において、単数形「ある」及び「その」は、別段の記載がない限り複数の指示対象を含む。例えば「ある」標的細胞は、1つ以上の標的細胞を含む。
【0050】
本発明の方法においては、任意の低解像度又は高解像度造影剤を用いることができる。
【0051】
本明細書において「造影剤」は、例えば、CT又はMRIスキャン等の画像において身体の内部構造の可視性を高めるために用いられる化合物を意味する。本明細書において、語句、造影剤は、イメージング剤ともいう。例えば、非経口注射(例えば、静脈内、動脈内、髄腔内、腹腔内、皮下、筋肉内)、経口的(例えば、錠剤若しくはドリンク剤として)、経直腸的、又は、吸入によって造影剤を対象に投与することができる。
【0052】
例えば、X線用造影剤は、硫酸バリウムを含むことができ、又は、有機(非イオン)化合物中又はイオン化合物中にヨードを含むことができる。有機ヨード造影剤の例としては、イオヘキソール、イオジキサノール、イオベルソル、イオパミドール、及び、これらの組み合わせが含まれるがこれらに限定されるものではない。イオン性造影剤の例には、ヨーダミドメグルミン、イオタラム酸メグルミン、ジアトリゾ酸メグルミン、アミドトリゾ酸メグルミン、ジアトリゾ酸ナトリウム、イオキサグル酸メグルミンナトリウム、イオタラム酸ナトリウム、イオタラム酸メグルミンナトリウム、ジアトリゾ酸メグルミンナトリウム、及び、これらの組み合わせが含まれるがこれらに限定されるものではない。
【0053】
別の態様において、MRI用造影剤は常磁性造影剤(例えば、ガドリニウム化合物)、超常磁性造影剤(例えば、酸化鉄ナノ粒子)、反磁性物質(例えば、硫酸バリウム)、及び、これらの組み合わせを含むことができる。
【0054】
更なる態様においては、CT用造影剤はヨード(イオン性又は非イオン性製剤)、バリウム、硫酸バリウム、ガストログラフィン(ジアトリゾ酸メグルミン及びジアトリゾ酸ナトリウム溶液)、及び、これらの組み合わせを含むことができる。
【0055】
別の態様において、PET又はSPECT用造影剤は、金属キレートを含むことができる。
【0056】
本発明は、本明細書において使用される造影剤が、標的化造影剤であってもよいことを意図するものである。本明細書において、語句「標的化」は、本明細書において更に説明するように、目的とする分子に対する標的特異的リガンドの使用を意味するものである。
【0057】
本発明の一の態様において、低解像度及び/又は高解像度造影剤はパーフルオロカーボンエマルションを含む。使用可能なパーフルオロカーボンエマルションは、米国特許第4927623号、第5077036号、第5114703号、第5171755号、第5304325号、第5350571号、第5393524号、及び、第5403575号において開示されている。使用可能なパーフルオロカーボンエマルションは、パーフルオロカーボン化合物が、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタン、パーフルオロジクロロオクタン、パーフルオロ−n−オクチルブロミド、パーフルオロヘプタン、パーフルオロデカン、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロモルホリン、パーフルオロトリプロピルアミン、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロジメチルシクロヘキサン、パーフルオロトリメチルシクロヘキサン、パーフルオロジシクロヘキシルエーテル、パーフルオロ−n−ブチルテトラヒドロフラン、並びに、これらの化合物と構造的に類似し、部分的若しくは完全にハロゲン化された(少なくとも数個のフッ素置換基を含む)化合物、又は、パーフルオロアルキル化エーテル、ポリエーテル若しくはクラウンエーテルを含む部分的若しくは完全にパーフルオロ化された化合物を含む。
【0058】
乳化剤、例えば界面活性剤は、エマルションの形成を促進し、かつ、その安定性を向上させるために用いられる。通常は、水中油型エマルションの形成を促進するために水相界面活性剤が用いられてきた。界面活性剤は、親水部分と疎水部分の両方を含む任意の物質である。水又は溶媒に添加された場合、界面活性剤は表面張力を弱める。
【0059】
ナノ粒子(所望の化合物を表面に結合させるための、結合したリガンド又は封入された試薬を含んでいてもよい)上の外層コーティングを形成するために使用される脂質/界面活性剤には、天然又は合成リン脂質、脂肪酸、コレステロール、リゾ脂質、スフィンゴミエリン、トコフェロール、糖脂質、ステアリルアミン、カルジオリピン、プラズマロゲン、エーテル又はエステル結合脂肪酸を持つ脂質、及び、重合脂質が含まれる。一部の例では、脂質/界面活性剤は、脂質結合ポリエチレングリコール(PEG)を含んでいてもよい。Tween、Span、Triton等を含む市販の各種のアニオン性、カチオン性、及び、非イオン性界面活性剤を使用することもできる。いくつかの態様において、好ましい界面活性剤はリン脂質及びコレステロールである。
【0060】
油に溶解して乳化するフッ素化界面活性剤も使用することができる。好ましいフッ素系界面活性剤は、パーフルオロヘキサン酸及びパーフルオロオクタン酸のようなパーフルオロ化アルカン酸、並びに、アミドアミン誘導体を含む。これらの界面活性剤は、通常、約0.01〜5.0重量%の量、好ましくは約0.1〜1.0%の量で用いられる。他の適切なフッ素系界面活性剤には、パーフルオロ化アルコールリン酸エステル及びその塩;パーフルオロ化スルホンアミドアルコールリン酸エステル及びその塩;パーフルオロ化アルキルスルホンアミド;アルキレン四級アンモニウム塩;N,N(カルボキシル置換低級アルキル)パーフルオロ化アルキルスルホンアミド;及び、その混合物が含まれる。本明細書において、語句「パーフルオロ化」は、界面活性剤が少なくとも1つのパーフルオロアルキル基を有することを意味する。
【0061】
適切なパーフルオロ化アルコールリン酸エステルは、モノ−及びビス(1H、1H、2H、2Hパーフルオロアルキル)ホスフェートのジエタノールアミン塩の遊離酸を含む。商標名ZONYL RP(Dupont,Wilmington,DE)として市販されているリン酸塩は、既知の方法を用いて対応する遊離酸に変換される。適切なパーフルオロ化スルホンアミドアルコールリン酸エステルは、米国特許第3094547号に記載されている。適切なパーフルオロ化スルホンアミドアルコールリン酸エステルとその塩には、パーフルオロ−n−オクチル−N−エチルスルホンアミドエチルホスフェート、ビス(パーフルオロ−n−オクチル−N−エチルスルホンアミドエチル)ホスフェート、ビス(パーフルオロ−n−オクチル−N−エチルスルホンアミドエチル)ホスフェートのアンモニウム塩、ビス(パーフルオロデシル−N−エチルスルホンアミドエチル)ホスフェート、及び、ビス(パーフルオロヘキシル−N−エチルスルホンアミドエチル)ホスフェートを含む。好ましい製剤は、ホスファチジルコリン、誘導体化ホスファチジルエタノールアミン、及び、コレステロールを脂質界面活性剤として使用する。
【0062】
その他、例えば、PLURONIC F−68、HAMPOSYL L30(W.R.Grace Co.,米国ニューハンプシャー州ナシュア)、ドデシル硫酸ナトリウム、Aerosol 413(American Cyanamid Co.,米国ニュージャージー州ウェーン)、Aerosol 200(American Cyanamid Co.)、LIPOPROTEOL LCO(Rhodia Inc.,米国ニュージャージー州Mammoth)、STANDAPOL SH135(Henkel Corp.,米国ニュージャージー州ティーネック)、FIZUL 10−127(Finetex Inc.,米国ニュージャージー州エルムウッドパーク)、及び、CYCLOPOL SBFA30(Cyclo Chemicals Corp.,米国フロリダ州マイアミ)等の既知の界面活性剤添加剤、;例えば、商標名Deriphat(商標)170(Henkel Corp.)、LONZAINE JS(Lonza,Inc.)、NIRNOL C2N−SF(Miranol Chemical Co.,Inc.,米国ニュージャージー州Dayton)、AMPHOTERGE W2(Lonza,Inc.)、及び、AMPHOTERGE 2WAS(Lonza,Inc.)で販売されている両性剤等の両性剤;並びに、例えば、商標名PLURONIC F−68(BASF Wyandotte,米国ミシガン州ワイアンドット)、PLURONIC F−127(BASF Wyandotte)、BRIJ35(ICI Americas,米国デラウェア州ウィルミントン)、TRITON X−100(Rohm and Haas Co.,米国ペンシルバニア州フィラデルフィア)、BRIJ52(ICI Americas)、SPAN20(ICI Americas)、GENEROL 122ES(Henkel Corp.)、TRITON N−42(Rohm and Haas Co.)、Triton(商標)N−101(Rohm and Haas Co.)、TRITON X−405(Rohm and Haas Co.)、TWEEN80(ICI Americas)、TWEEN85(ICI Americas)、及び、BRIJ56(ICI Americas)として販売されている非イオン剤等の非イオン剤を、単独で又は組み合わせて、0.10〜5.0重量%の量で使用し、エマルションを安定させてもよい。
【0063】
脂質封入エマルションは、粒子表面に核酸やアプタマーのようなリガンドを取り込ませ又は付着させるカチオン性脂質を界面活性剤層中に含有させて製剤化してもよい。一般的なカチオン性脂質は、DOTMA(N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド);DOTAP(1,2−ジオレオイルオキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン);DOTB(1,2−ジオレオイル−3−(4’−トリメチル−アンモニオ)ブタノイル−sn−グリセロール、1,2−ジアシル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン;DAP(1,2−ジアシル−3−ジメチルアンモニウム−プロパン);TAP(1,2−ジアシル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン);1,2−ジアシル−sn−グリセロール−3−エチルホスホコリン、3β−[N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモル]コレステロール−HCl、DC−コレステロール(DC−Chol);及び、DDAB(ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド)を含んでいてもよい。一般的に、脂質界面活性剤単層中のカチオン性脂質の非カチオン性脂質に対するモル比は、例えば1:1000〜2:1であってもよく、好ましくは2:1〜1:10であり、より好ましくは1:1〜1:2.5の範囲であり、最も好ましくは1:1である(カチオン性脂質のモル量の非カチオン性脂質、例えばDPPCのモル量に対する比)。様々な脂質は、上述のものに加えて、エマルション界面活性剤の非カチオン性脂質成分、特にジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、又は、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンを含んでもよい。上述のカチオン性脂質の代わりに、ポリリシン又はポリアルギニンのようなカチオン性ポリマーを有する脂質を脂質界面活性剤に加えて、エマルション粒子の外層に負に帯電した治療薬、例えば遺伝物質又はその類似体を結合させてもよい。いくつかの態様において、in vivoで使用されるエマルションの安定性をもたらすため、脂質は架橋していてもよい。架橋結合した脂質を有するエマルションは、本明細書で説明するイメージング方法にとって特に有用であり得る。
【0064】
特定の態様において、脂質/界面活性剤コーティングは、標的特異的リガンド及び/又はイメージング又は治療に有用な補助物質を結合するのに使用可能な反応基を有する成分を含む。いくつかの態様において、1以上の所望の成分の非常に多数をナノ粒子に結合させるための担体となる脂質/界面活性剤コーティングが好ましい。下記で説明するように、脂質/界面活性剤成分は、脂質/界面活性剤成分に含まれる官能性を介してこれらの反応基に結合してもよい。例えば、ホスファチジルエタノールアミンを、アミノ基を介して所望の部分に直接結合させてもよく、又は、下記で説明するようにカルボキシル基、アミノ基若しくはスルフヒドリル基を備える短鎖ペプチドのようなリンカーに結合させてもよい。あるいは、マレイミドのような標準的な結合剤を用いてもよい。ナノ粒子にターゲティングリガンドや補助物質を結合させるのに様々な方法を用いることができ、該方法は、例えばポリエチレングリコール又はペプチドのようなスペーサー基の使用を含んでいてもよい。
【0065】
一般的に脂質/界面活性剤でコーティングされたナノ粒子は、懸濁液中でコアを形成する油と外層を形成する脂質/界面活性剤混合物との混合液を、水性溶媒中でミクロ流動化してエマルションを生じさせることで形成される。本方法において、脂質/界面活性剤は、ナノ粒子に乳化された時点で、既に追加のリガンドと結合していてもよく、又は、単にその後の結合に使用する反応基を含んでいてもよい。あるいは、脂質/界面活性剤層に加えられる成分は、補助物質の溶解度特性によって単に層に可溶化されていてもよい。水性溶媒中の脂質/界面活性剤の懸濁液を得るため、超音波処理又はその他の技法が必要であってもよい。一般的には、脂質/界面活性剤の外層中の物質の少なくとも1つの物質は、付加する所望成分の結合に有用なリンカー若しくは官能基を含み、又は、エマルションが調製された時点で成分がすでに物質に結合していてもよい。
【0066】
標的特異的リガンド又はその他の有機部分(例えば、常磁性金属用のキレート剤)の外層の成分への共有結合による結合のため、各種の結合剤及び連結剤を使用してもよい。当該結合を形成するのに用いられる一般的な方法は、カルボジアミドを使用したアミドの形成、又は、マレイミドのような不飽和成分を使用したスルフィド結合の形成を含む。その他の結合剤には、例えば、グルタルアルデヒド、プロパンジアール又はブタンジアール、2−イミノチオレンハイドロクロリド、例えば、ジスクシンイミジルスベリン酸、ジスクシンイミジル酒石酸、及び、ビス[2−(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン等の二官能性N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば、N−(5−アジド−2−ニトロベンゾイルオキシ)スクシンイミド、スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラート、及び、スクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)ブチラート等のヘテロ二官能性試薬、例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン、4,4’−ジフルオロ−3,3’−ジニトロジフェニルスルホン、4,4’−ジイソチオシアノ−2,2’−ジスルホン酸スチルベン、p−フェニレンジイソチオシアネート、カルボニルビス(L−メチオニン p−ニトロフェニルエステル)、4,4’−ジチオビスフェニルアジド、及び、エリトリトールビスカーボネート等のホモ二官能性試薬、並びに、例えば、ジメチルアジピミデートハイドロクロリド、ジメチルスベリミデート、ジメチル3,3’−ジチオビスプロピオニミデートハイドロクロリドの二官能性イミドエステル等が含まれる。アシル化、スルホン化、還元的アミノ化等によって結合してもよい。所望のリガンドを外層の1つ以上の成分に共有結合させる多くの手法が当該技術分野で周知である。その特性が適していれば、リガンド自体を界面活性剤層に加えてもよい。例えば、リガンドが高親油性部分を含む場合、それ自体が脂質/界面活性剤コーティング中に封入されてもよい。更に、リガンドがコーティングに直接吸着され得る場合、当該吸着もリガンドの結合に影響する。例えば、核酸は負に帯電しているために、カチオン性界面活性剤に直接吸着する。
【0067】
リガンドは直接ナノ粒子に結合してもよい、即ち、リガンドはナノ粒子自体に結合する。あるいは、例えば加水分解性脂質アンカー等の加水分解性アンカーを用いて、ターゲティングリガンド又はその他の有機部分をエマルションの脂質/界面活性剤コーティングに結合させる間接的な結合も有用である。リガンドに対して、ビオチン/アビジンによってもたらされるような間接的結合を用いてもよい。例えば、ビオチン/アビジンを介する標的化では、ターゲティングリガンドはエマルションに結合せず、ビオチン化された形で標的化組織に結合する。
【0068】
造影剤に結合されてもよい補助物質には放射性核種が含まれる。放射性核種は、治療用又は診断用のいずれかであってよく、該核種を使用する診断用イメージングは周知であり、放射性核種を所望の組織に標的化することによる治療上の有効性も認識されている。診断用イメージング用の放射性核種は、多くの場合ガンマ放出体(例えば96Tc)を含み、治療目的に使用される放射性核種は、多くの場合アルファ放出体(例えば225Ac)とベータ放出体(例えば90Y)を含む。典型的な診断用放射性核種は、99mTc、96Tc、95Tc、111In、62Cu、64Cu、67Ga、68Ga、201Tl、79Kr、及び、192Irを含み、治療用核種は、225Ac、186Re、188Re、153Sm、166Ho、177Lu、149Pm、90Y、212Bi、103Pd、109Pd、159Gd、140La、198Au、199Au、133Xe、169Yb、175Yb、165Dy、166Dy、123I、131I、67Cu、105Rh、111Ag、及び、192Irを含む。様々な方式により、予め形成したエマルションに核種を供給することができる。例えば、99Tc−過テクネチウム酸は、過剰量の塩化第一スズと混合し、予め形成したナノ粒子のエマルションに封入してもよい。オキシン酸第一スズを塩化第一スズの代わりに使用することができる。更に、市販のキット、例えばCeretek(登録商標)としてNycomed Amershamより販売されているHM−PAO(exametazine)キットを使用することができる。本発明の造影剤に様々な放射性リガンドを結合させる手段は当該技術分野で周知である。
【0069】
磁気共鳴画像法に使用される金属イオンを含有するキレート剤も補助物質として使用することができる。一般的には、常磁性金属又は超常磁性金属を含有するキレート剤は、ナノ粒子上のコーティングの脂質/界面活性剤と結合し、超音波処理される最初の混合物に封入される。キレート剤は、コーティング層の1以上の成分に直接結合してもよい。適切なキレート剤は、大環状又は直鎖状キレート剤であり、EDTA、DPTA、DOTA等を含む様々な多座配位化合物を包含する。該キレート剤は、例えばホスファチジルエタノールアミン、オレイン酸塩、又は、その他任意の合成天然又は官能化脂質又は脂溶性化合物等に含まれる官能基に直接結合させることができる。あるいは、これらのキレート剤は、結合基を介して結合していてもよい。
【0070】
本発明のMRI用造影剤に有用な常磁性及び超常磁性金属には、希土類金属が含まれ、マンガン、イッテルビウム、テルビウム、ガドリニウム、ユウロピウム等を挙げることができる。鉄イオンを使用することもできる。
【0071】
特に好ましいMRI用キレート剤セットは、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)及びその誘導体、特に、メトキシベンジル誘導体(MEO−DOTA)、及び、イソチオシアネート官能基を含むメトキシベンジル誘導体(MEO−DOTA−NCS)を含み、次にホスファチジルエタノールアミンのアミノ基又はそのペプチド誘導体形に結合する。この種の誘導体は、米国特許第5573752号に記載され、他の適切なキレート剤は米国特許第6056939号に開示されている。
【0072】
DOTAイソシアネート誘導体は、直接、又は、ペプチドスペーサー、例えばgly−gly−glyスペーサーを介して脂質/界面活性剤に結合してもよい。直接的な結合には、結合産物を得るために、MEO−DOTA−NCSをホスホエタノールアミン(PE)と反応させる。ペプチドを用いる場合、例えば、トリグリシル結合の場合、まずPEをt−boc保護されたトリグリシンと結合させる。例えば、ジイソプロピルカルボジイミド(又はそれと同等のもの)と、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)又はヒドロキシベンゾトリアゾール(HBT)のいずれかとを用いて、t−boc−トリグリシンの遊離酸の活性化エステルを形成するような標準的な結合法を使用し、t−boc−トリグリシン−PEを精製する。
【0073】
その他の補助物質には蛍光色素分子(例えばフルオレセイン、ダンシル、量子ドット等)及び赤外色素が含まれ、又は、光学又は光イメージング(例えば共焦点顕微鏡及び蛍光イメージング)に金属が用いられてもよい。PETイメージングのような核医学イメージングでは、トシル化及び18Fフッ素化化合物が補助物質としてナノ粒子と結合していてもよい。
【0074】
いくつかの態様において、生物活性物質がエマルションナノ粒子のコアに封入される。
【0075】
本発明のいくつかの態様において、ナノ粒子の表面に生物活性物質を含む。これらの生物活性物質の種類は多岐にわたり、タンパク質、核酸、医薬品等が含まれる。従って、適切な医薬品には、抗腫瘍薬、ホルモン、鎮痛薬、麻酔薬、神経筋遮断薬、抗菌剤又は抗寄生虫剤、抗ウイルス薬、インターフェロン、抗糖尿病薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、抗凝固剤等が含まれる。
【0076】
本発明の標的化エマルションは、イメージング剤と併用される治療薬を提供するのに用いてもよい。そのようなエマルションは、例えば、ある部位における治療の進行のモニタリング、及び、その後当該部位に送達する容量又は治療薬の所望の調整を目的とした当該部位の画像化を可能にする。従って、本発明は、慣用のイメージングシステムを使用しながら、例えば、患者の血栓、感染症、癌及び梗塞の検出及び治療のための非侵襲的手段を提供する。
【0077】
上述の全ての例において、結合部位がターゲティングリガンドであろうと、又は、補助物質であろうと、限定部分は、脂質/界面活性剤層と非共有結合していてもよく、脂質/界面活性剤層成分と直接結合していてもよく、又は、該成分とスペーサー部分を介して間接的に結合していてもよい。
【0078】
イメージング及び/又は治療用標的は、in vivo又はin vitroの標的であってよく、好ましくは生物学的物質であってもよいが、標的が生物学的物質である必要はない。標的は、造影物質が結合する表面、又は、三次元構造であって、造影物質が通過し、表面の下にある標的部分に結合する構造で構成されていてもよい。
【0079】
好ましくは、イメージング及び/又は治療の標的におけるエマルションナノ粒子の半減期を停止し又は延長するために、リガンドを造影用エマルションに封入する。能動的標的化を可能にするため、リガンドは所望のターゲットに特異的であってもよい。能動的標的化とは、細胞の表面膜上、あるいは、細胞外又は細胞内マトリックス内に存在する分子エピトープ、即ち、受容体、脂質、ペプチド、細胞接着分子、ポリサッカライド、バイオポリマー等への局在化及び結合による、細胞、組織、又は臓器への、リガンド指向性の部位特異的な物質の集積を意味する。抗体、抗体断片、小さいオリゴペプチド、大きいポリペプチド又は三次元構造を持つタンパク質のようなポリペプチド、ペプチド模倣薬、ポリサッカライド、アプタマー、脂質、核酸、レクチン、又は、これらの組み合わせを含む多種多様なリガンドを用いることができる。通常は、リガンドは細胞のエピトープ又は受容体に特異的に結合する。
【0080】
本明細書で用いる場合、語句「リガンド」は、エマルション粒子自体から分離し又は区別される、生物学的標的である別の分子に特異的に結合するターゲティング分子を意味することを意図する。反応は、配位錯体の金属原子と配位共有結合を形成するために電子対を供与し又は受容する分子を必要とするものでもないし、排除するものでもない。従って、リガンドは、ナノ粒子表面に、直接的な結合として共有結合していてもよいし、間接的な結合として非共有結合していてもよい。
【0081】
いくつかの態様において、例えばin vivoでの使用の場合、その特異的標的に対するリガンドの結合親和性は約10−7M以上である。いくつかの態様において、例えばin vitroでの使用の場合、その特異的ターゲットに対するリガンドの結合親和性は約10−7M未満であってもよい。
【0082】
アビジン−ビオチンの相互作用は、多くの生物学的及び解析システムに取り入れられ、in vivoでの応用に選択されている、極めて有用な非共有結合ターゲティングシステムである。アビジンは、ビオチンに対して高い親和性を持ち(10−15M)、生理学的条件下で迅速かつ安定した結合が容易である。本手法を利用するいくつかの標的化システムは、製剤に応じて2又は3ステップで行われる。これらのシステムにおいては、一般的に、モノクローナル抗体のようなビオチン化されたリガンドをまず投与し、固有の分子エピトープを「プレ標的化」する。次に、アビジンを投与し、「プレ標的化」されたリガンドのビオチン部分に結合させる。最後に、ビオチン化エマルションを添加し、アビジン上に残された占有されていないビオチン−結合部位に結合させ、リガンド−アビジン−エマルションの「サンドイッチ」構造を完成させる。アビジン−ビオチンによる手法は、表面上に抗体が存在することから続いて起こる、促進された早期の細網内皮系による標的化物質のクリアランスを避けることができる。更に、アビジンは、4つの独立したビオチン結合部位を持ち、シグナルを増幅し、検出感度を向上させる。
【0083】
本明細書で用いる場合、語句「ビオチンエマルション」、又は、ビオチンエマルション若しくはビオチン物質への結合に関する「ビオチン化」は、ビオチン、ビオシチン、並びに、その他のビオチン誘導体及び類似体、例えば、ビオチンアミドカプロエートN−ヒドロキシスクシンイミドエステル、ビオチン4−安息香酸アミド、ビオチンアミドカプロイルヒドラジド、及び、その他のビオチン誘導体及び複合体を含むことを意図している。その他の誘導体は、ビオチン−デキストラン、ビオチン−ジスルフィドN−ヒドロキシスクシンイミドエステル、ビオチン−6 アミドキノリン、ビオチンヒドラジド、d−ビオチン−Nヒドロキシスクシンイミドエステル、ビオチンマレイミド、d−ビオチン p−ニトロフェニルエステル、ビオチン化ヌクレオチド、及び、N,ε−ビオチニル−l−リシン等のビオチン化アミノ酸を含む。語句「アビジンエマルション」、又は、アビジンエマルション若しくはアビジン物質への結合に関する「アビジン化」は、アビジン、ストレプトアビジン、並びに、その他のアビジン類似体、例えば、ストレプトアビジン若しくはアビジン複合体、高度に精製され分画されたアビジン種若しくはストレプトアビジン、及び、非アミノ酸若しくは部分的アミノ酸のバリアント、遺伝子組み換え、又は、化学的に合成されたアビジンを含むことを意図している。
【0084】
粒子表面の性質に応じて、様々な方法でエマルションのナノ粒子表面にターゲティングリガンドを化学的に結合してもよい。使用するリガンドに応じて、エマルション粒子を形成する前又は後に結合を行ってもよい。タンパク性物質に対するリガンドの直接的な化学的結合は、表面に元々存在する多数のアミノ基(例えばリシン)を利用することが多い。あるいは、粒子が形成された後に、ピリジルジチオプロピオナート、マレイミド、又は、アルデヒドのような機能的に活性な化学基をリガンド結合のための化学的「フック」として表面に組み込んでもよい。他の一般的な後処理としては、リガンドを添加する前に、表面のカルボン酸塩をカルボジイミドで活性化する方法がある。選択する共有結合方法は、主にリガンドの化学的性質によって決定する。抗体及びその他の大きなタンパク質は、厳しい処理条件下では変性することがあるが、炭水化物、短いペプチド、アプタマー、薬剤、又は、ペプチド模倣薬の生物活性は多くの場合で保持される。高いリガンド結合の完全性を確保し、標的化粒子の結合活性を最大化するために、活性化された表面官能基とターゲティングリガンドの間に、柔軟性のあるポリマーのスペーサーアーム、例えば、ポリエチレングリコール又は単純なカプロン酸による架橋を挿入することも可能である。該スペーサーによる伸長は、10nm以上とすることができ、かつ、粒子表面の相互作用によるリガンド結合への干渉を最小限に抑えることができる。
【0085】
抗体、特にモノクローナル抗体は、病理学的分子エピトープを含む広範な分子エピトープのあらゆるエピトープに対する部位ターゲティングリガンドとして用いることができる。能動的、部位特異的な標的化を行うため、免疫グロブリン−γ(IgG)クラスのモノクローナル抗体を、リポソーム、エマルション、及び、その他の微小気泡粒子に結合している。通常は、これらのタンパク質は、同一対の重鎖及び軽鎖からなる左右対称の糖タンパク質(MWca.150,000ダルトン)である。2本のアームそれぞれの端部にある超可変領域は、同一の抗原結合部位として働く。様々な大きさの分岐炭水化物ドメインは補体活性化領域に結合し、ヒンジ部は特に利用しやすい鎖間ジスルフィド結合を含み、当該結合により、より小さい断片とすることもできる。
【0086】
好ましくは、本発明の抗体組成物において、モノクローナル抗体を使用する。細胞表面上の選択された抗原に特異的なモノクローナル抗体は、慣用法を用いて容易に作製することができる(例えば、米国再発行特許第32011号、米国特許第4902614号、第4543439号、及び、第4411993号参照)。抗原特異的に反応する抗体を作製するため、免疫化学的にハイブリドーマ細胞をスクリーニングし、モノクローナル抗体を単離することができる。モノクローナル抗体の作製は、その他の技法を利用することもできる(例えば、Huse et al.(1989)Science 246:1275−1281;Sastry et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:5728−5732;Alting−Mees et al.(1990)Strategies in Molecular Biology3:1−9参照)。
【0087】
本発明の文脈においては、抗体は、必ずしもこれに限定されるわけではないが、天然型抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗原結合特異性を維持する抗体断片(例えば、Fab及びF(ab’))、及び、遺伝子組み換えによって作製された、結合パートナー、単一ドメイン抗体、ハイブリッド抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体等を含む様々な種類の抗体を包含するものとして理解される。通常は、抗体が10−1以上か同等の親和性(結合定数)で結合する場合、該抗体は細胞の選択された抗原に対して反応性を有するものとして理解される。エマルションと共に使用するための選択された抗原に対する抗体は、商業的供給源から入手してもよい。
【0088】
本発明において部位ターゲティングリガンドして使用する様々な種類の抗体については、本明細書中、特に本セクションの後半において更に説明する。
【0089】
本発明のエマルションには、抗体又はその断片以外のリガンドであるターゲティング物質も利用する。例えば、抗体等のポリペプチドは、標的化造影剤のためのベクター分子として使用するため、高い特異性とエピトープ親和性を有していてもよい。例えば、5〜20のアミノ酸を有し、固有の受容体配列(例えば、血小板GIIbIIIa受容体のRGDエピトープ等)に特異的な小さいオリゴペプチド、又は、コレシストキニン等のより大きい生物活性を有するホルモンであってもよい。より短いペプチドは、本来、非ヒト化マウス抗体に比べて低い免疫原性を有する可能性がある。ペプチド、又は、細胞接着分子、サイトカイン、セレクチン、カドヘドリン(cadhedrins)、Igスーパーファミリー、インテグリン等のペプチド(非ペプチド)類似体を、標的化イメージング及び/又は治療薬送達に利用してもよい。
【0090】
一部の例では、リガンドは、米国特許第6130231号(例えば、式1に記載)、第6153628号、第6322770号、及び、国際公開第01/97848号に記載されているような非ペプチド有機分子である。一般に「非ペプチド」部分は、遺伝子によりコードされ又はコードされていないアミノ酸の単純なポリマーである化合物以外のものである。従って、「非ペプチドリガンド」は、高分子の特徴を持たず、アミノ酸ポリマー以外の中心構造を要することにより特徴付けられる、一般的に「低分子」と呼ばれる部分である。本発明において有用な非ペプチドリガンドは、ペプチドと結合していてもよく、又は、標的部位に対する親和性を担うリガンド部分に結合したペプチドを含んでいてもよいが、その結合能を担うのはリガンドの非ペプチド領域である。例えば、αβインテグリンに特異的な非ペプチドリガンドは、米国特許第6130231号及び第6153628号に記載されている。
【0091】
例えば米国特許第4310505号に記載されているように、炭水化物を有する脂質を、エマルションの標的化に用いてもよい。
【0092】
アシアログリコプロテインは、肝細胞上に特異的に存在するアシアログリコプロテイン受容体に対して高い親和性を持つことから、肝臓に特化した用途に用いられている。原発性又は続発性肝臓腫瘍、及び、肝炎等の良性びまん性肝疾患を検出するため、アシアログリコプロテイン指向性物質(主に、酸化鉄に結合された磁気共鳴用物質)が用いられている。肝細胞上のアシアログリコプロテイン受容体は、凡そ500,000個/細胞と豊富であり、素早く取り込んだ後、細胞表面に戻る。肝細胞標的にエマルションを局在化させるため、アラビノガラクタンのようなポリサッカライドを利用してもよい。アラビノガラクタンは、肝のアシアログリコプロテイン受容体に高い親和性を示す複数の末端アラビノース基を有する。
【0093】
アプタマーは、in vitro selection法(SELEX:systematic evolution of ligands by exponential enrichment)によって産生される、高親和性、高特異性RNA又はDNAベースリガンドである。アプタマーは、20〜30ヌクレオチドのランダム配列から生成され、分子抗原又は細胞に対する吸着により選択的にスクリーニングされ、高親和性結合リガンドを特異的に精製するため濃縮される。in vivoでの安定性と実用性を高めるため、アプタマーは、通常、ヌクレアーゼ分解を阻害し、薬剤、標識、又は、粒子との結合を容易にするように化学的に修飾される。その他、より単純な化学架橋法により、リガンドとの相互作用に具体的に関与しない核酸を置換する。溶液中において、アプタマーは構造をとらないが、折り畳み、標的エピトープを取り囲むことが可能であり、それにより特異的に認識する。エピトープ周囲における核酸の特異的な折り畳みは、水素結合、静電作用、スタッキング、形状相補性を介する識別力のある分子間接触をもたらす。タンパク質ベースのリガンドと比較して、一般に、アプタマーは安定であり、加熱滅菌の伝導性が高く、免疫原性が低い。アプタマーは、現在、血管形成、活性化血小板、固形腫瘍を含む多くの臨床的に意義のある病変を標的として使用されており、その使用は増加している。イメージング及び/又は治療用エマルション粒子におけるターゲティングリガンドとしてアプタマーを使用する場合、その臨床的な有用性は、クリアランス率に対する、核酸のリン酸基により付与される表面の負電荷強度に依存することもある。脂質ベースの粒子を用いた以前の研究は、負のゼータ電位がリポソームの血中半減期を著しく低下させる一方、中性又はカチオン性粒子は、共通して、より長い間全身で持続することを示している。
【0094】
いくつかの応用において、特異的結合種をエマルションに結合させるため、「前処理物質(primer material)」と呼ばれるものを使用することができる。本明細書で用いる場合、「前処理物質」は、粒子とターゲティングリガンド又はターゲティングリガンドのサブユニット等のターゲティングリガンド成分との間に共有結合を形成するために化学的に利用可能な、エマルションの脂質界面活性剤層に封入された、あらゆる構成要素又は誘導体化された構成要素を意味する。
【0095】
従って、特異的結合種(即ちターゲティングリガンド)は、油/水界面への直接吸着により又は前処理物質を使用して、封入化脂質単分子層上に固定化してもよい。前処理物質は、特異的結合種又はターゲティング種と化学的に結合し、又は、当該種を吸着するように粒子に封入された、界面活性剤に適合するいかなる化合物であってもよい。水連続相を持つエマルション及び連続相と不連続層の界面で前処理物質に吸着され又は結合する、生物活性リガンドを形成することにより好ましい結果を得ることができる。アミン基、カルボキシル基、メルカプト基、又は、結合剤及び高電荷ポリマーと特異的に反応し得るその他の官能基を持つ、天然又は合成ポリマーを結合プロセスにおいて用いてもよい。特異的結合種(例えば、抗体)は、直接吸着又は化学的結合によって、Z番号が大きい原子のエマルション粒子表面に結合した油上に固定化してもよい。直接吸着により固定化し得る特異的結合種の例は、小ペプチド、ペプチド模倣薬、又は、ポリサッカライドベースの物質が含まれる。該エマルションを作製するため、エマルション形成の前に、特異的結合種を水相に懸濁又は溶解してもよい。あるいは、特異的結合種をエマルションの形成後に添加し、pH7.0の緩衝剤(通常はリン酸緩衝食塩水)中で穏やかに攪拌しながら、室温(約25℃)で1.2〜18時間インキュベーションしてもよい。
【0096】
特異的結合種を前処理物質に結合させる場合は、慣用の結合法を用いてもよい。特異的結合種は、当該技術分野で既知の方法に従い、結合剤によって前処理物質と共有結合させてもよい。前処理物質は、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、N−カプロイルアミン−PE、n−ドデカニルアミン、ホスファチジルチオエタノール、N−1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[4−(p−マレイミドフェニル)ブチルアミド]、1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[4−(p−マレイミドメチル)シクロヘキサン−カルボキシレート]、1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート]、1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N[PDP(ポリエチレングリコール)2000]、N−スクシニル−PE、N−グルタリル−PE、N−ドデカニル−PE、N−ビオチニル−PE、又は、N−カプロイル−PEを含んでいてもよい。添加する結合剤は、例えば、カルボジイミド、又はエチレン性不飽和結合若しくは複数のアルデヒド基のいずれかを有するアルデヒドの使用を含む。使用に適した他の結合剤に関しては、本明細書において、特に本セクションの後半で詳細に記載する。
【0097】
特異的結合種の前処理物質との共有結合は、本明細書で開示する試薬を用いて、慣用の周知の反応、例えば、中性pHの水溶液中、25℃未満の温度で1時間から一晩反応させることにより実施することができる。非ペプチドリガンドを含むリガンドの結合に用いられるリンカーの例は、当該技術分野で既知である。
【0098】
エマルションと共に乳化剤及び/又は可溶化剤も使用してよい。当該薬剤は、アカシア、コレステロール、ジエタノールアミン、モノステアリン酸グリセリン、ラノリンアルコール、レシチン、モノ−及びジ−グリセリド、モノ−エタノールアミン、オレイン酸、オレイルアルコール、ポロキサマー、ピーナッツ油、パルミチン酸、ポリオキシエチレン50ステアレート、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル10オレイルエーテル、ポリオキシル20セトステアリルエーテル、ポリオキシル40ステアラート、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノステアラート、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸、トロラミン、及び、乳化ワックスを含むがこれらに限定されるものではない。植物又は動物由来の脂質に認められる飽和又は不飽和炭化水素脂肪酸の代わりにパーフルオロ脂肪酸を脂質成分として持つ全ての脂質を使用することができる。エマルションと共に使用できる懸濁化剤及び/又は増粘剤は、アカシア、寒天、アルギニン酸、アルミニウムモノステアレート、ベントナイト、マグマ、カルボマー934P、カルボキシメチルセルロース、カルシウム及びナトリウム及びナトリウム12、カラゲナン、セルロース、デキストリン、ゼラチン、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ケイ酸アルミニウム・マグネシウム、メチルセルロース、ペクチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポピドン、アルギン酸プロピレングリコール、二酸化ケイ素、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、及び、キサンタンガムを含むが、これらに限定されるものではない。
【0099】
本明細書で記載するように、本発明のエマルションは、生物活性物質(例えば、薬剤、プロドラッグ、遺伝物質、放射性同位体、又はこれらの組み合わせ)を天然型で、又は、ナノ粒子への取り込み又は吸着を高めるために疎水性部分又は荷電部分を用いて誘導体化された形で封入してもよい。特に、生物活性物質は、本発明の標的化エマルションに組み込まれていてもよい。生物活性物質は、例えば、Sinkyla et al.(1975)J.Pharm.Sci.64:181−210、Koning et al.(1999)Br.J.Cancer 80:1718−1725、米国特許第6090800号及び第6028066号に記載されているプロドラッグを含むプロドラッグであってもよい。
【0100】
本治療用エマルションは、抗腫瘍薬、放射性医薬品、タンパク質及び非タンパク質天然産物又はそれらの類似体/模倣薬、例えば、ホルモン、鎮痛薬、筋肉弛緩剤、麻薬作動薬、麻薬作動薬拮抗薬、麻薬拮抗薬、非ステロイド系抗炎症剤、麻酔薬及び鎮静薬、神経筋遮断薬、抗菌剤、駆虫薬、抗マラリア薬、抗寄生虫剤、抗ウイルス薬、抗ヘルペス薬、抗高血圧薬、抗糖尿病薬、痛風関連薬、抗ヒスタミン剤、抗潰瘍薬、抗凝固剤、及び、血液製剤を含んでいてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0101】
遺伝物質は、例えば、天然由来又は合成由来いずれかの核酸、RNA及びDNAを含み、例えば、遺伝子組み換えRNA及びDNA、アンチセンスRNA及びDNA、ハンマーヘッド型RNA、リボザイム、ハンマーヘッド型リボザイム、抗遺伝子核酸、一本鎖及び二本鎖両方のRNA及びDNA並びにそれらの類似体、免疫賦活性核酸、リボオリゴヌクレオチド、アンチセンスリボヌクレオチド、デオキシリボオリゴヌクレオチド、及びアンチセンスデオキシリボオリゴヌクレオチドを含む。使用できるその他の種類の遺伝物質には、例えば、プラスミド、ファージミド、コスミド、酵母人工染色体、欠損ウイルス又は「ヘルパー」ウイルスのような発現ベクター上に存在する遺伝子、抗遺伝子核酸、一本鎖及び二本鎖両方のRNA及びDNA並びにそれらの類似体、例えば、ホスホロチオエート及びホスホロジチオエートオリゴデオキシヌクレオチドを含む。更に、例えば、遺伝物質は、タンパク質又はその他のポリマーと組み合わされてもよい。
【0102】
使用に適した治療薬に関しては、本明細書中、特に本セクションの後半で更に詳細に記載する。
【0103】
本明細書において記載するように、エマルションナノ粒子は、これらに限定されるものではないが、ガドリニウム、マグネシウム、鉄、マンガンを含む、常磁性又は超常磁性要素を、天然型又は化学的に錯体化した形で粒子上に封入してもよい。同様に、天然型又は化学的に錯体化した形の、ポジトロン放出体、ガンマ放出体、ベータ放出体、アルファ放出体を含む放射性核種が、粒子上又は粒子内に組み込まれてもよい。当該部分を添加することで、追加の複数の臨床的画像モダリティを使用できるようになる。
【0104】
例えば、発色団(例えば、ある波長で光を吸収する物質)、蛍光色素分子(例えば、ある波長で光を放出する物質)、光線感作物質(例えば、in vitro及び/又はin vivoで組織の壊死及び/又は細胞死を引き起こす物質)、蛍光物質、リン光性物質等を含む、光活性物質、即ち光に活性がある、又は光に反応する化合物又は物質を診断用又は治療上の用途に使用してもよい。「光」は、スペクトルの紫外(UV)領域、可視領域及び/又は赤外(IR)領域を含む全ての光源を意味する。本発明に使用してもよい適切な光活性物質は、他の研究者らによって開示されている(例えば、米国特許第6123923号)。使用に適した光活性物質に関しては、本明細書中、特に本セクションの後半で更に詳細に説明する。
【0105】
更に、ある種のリガンド、例えば、抗体、ペプチド断片、又は生物活性リガンドの模倣薬は特定のエピトープに結合した際に、拮抗薬又は作動薬のいずれかとして元来備わっている治療効果に貢献する場合がある。一例として、新生血管の内皮細胞上に存在するαβインテグリンに対する抗体は、固形腫瘍の増殖及び転移を一時的に抑制することが示されている。αβインテグリンに指向化された治療用エマルション粒子は、粒子によって組み込まれ、送達される治療薬の効果に加えて、ターゲティングリガンドの向上した拮抗作用により有効であってもよい。
【0106】
有用なエマルションは、様々な公称粒径であってよく、例えば、約0.01μmの小さいものから10μmの大きいものまで、好ましくは約50nm〜約1000nm、より好ましくは約50nm〜約500nm、一部の例では約50nm〜約300nm、一部の例では約100nm〜約300nm、一部の例では約200nm〜約250nm、一部の例では約200nm、一部の例では約200nm未満である。通常は、サブミクロン粒子等の小さいサイズの粒子は、大きい粒子よりも長く循環し、安定性が高い傾向がある。
【0107】
本明細書の他の箇所で説明したものに加えて、本発明のエマルションにおいて、及び/又は、本発明のエマルションと共に、部位ターゲティングリガンドとして使用するために適した各種の抗体を以下に詳細に記載する。
【0108】
二価のF(ab’)及び一価のF(ab)断片は、リガンドとして使用可能であり、これらは、それぞれペプシン又はパパイン消化による完全抗体の選択的切断によって得られる。慣用法を使用して抗体を断片化することができ、完全抗体について上記と同様の手法で、断片(「Fab」断片を含む)の有用性をスクリーニングすることができる。「Fab」領域とは、重鎖及び軽鎖の分岐部を含む配列とほぼ等しく又は類似し、特定の抗原に対する免疫学的結合を示すことが確認されている、重鎖及び軽鎖の部分を意味し、当該部分はエフェクターであるFc部分を持たない。「Fab」は、1本の重鎖と1本の軽鎖の集合体(一般的にFab’として知られる)だけでなく、2本の重鎖と2本の軽鎖を含む四量体(F(ab)と呼ばれる)を含み、指定された抗原又は抗原ファミリーと選択的に反応することができる。抗体のFab断片を作製する方法は当該技術分野で既知であり、例えば、タンパク質分解や遺伝子組み換え法による合成が含まれる。例えば、ペプシンで抗体を処理することによりF(ab’)断片を作製することができる。得られたF(ab’)断片について、ジスルフィド結合を還元する処理をしてFab’断片を作製することができる。「Fab」抗体は、本明細書で説明するものに類似するサブセット、即ち「ハイブリッドFab」、「キメラFab」、及び「改変Fab」に分類してもよい。Fc領域の除去は、分子の免疫原性を大幅に低下させ、結合した炭水化物に続いて起こる非特異的な肝臓での取り込みを低下させ、かつ、補体活性化及び結果として起こる抗体依存性の細胞毒性を低下させる。補体結合及び関連する細胞傷害性は、標的化部位が保存されなくてはいけない場合は有害であり得、又は、宿主のキラー細胞の動員及び標的細胞の破壊が望ましい場合(例えば抗腫瘍薬)は有益であり得る。
【0109】
多くのモノクローナル抗体はマウス由来であり、他の種において、様々な程度の免疫原性を本質的に有している。遺伝子工学によるマウス抗体のヒト化により、生体適合性が高く、血中半減期が長いキメラリガンドの開発がもたらされた。本発明で使用される抗体は、ヒト化された抗体、又は、投与される個体への適合性が高まるよう改変された抗体を含む。一部の例では、標的化分子エピトープに対する遺伝子組み換え抗体の結合親和性を、結合イディオタイプの選択的な部位特異的突然変異誘発法によって向上させることができる。抗体分子のそのような遺伝子操作に用いられる方法及び技法は当該技術分野で既知である。「ヒト化」とは、ヒトに投与された場合に、ヒト化抗体に対して生じる抗体及び/又は免疫反応が減少するように、抗体のアミノ酸配列を改変することを意味する。ヒト以外の哺乳動物で抗体を使用する場合は、抗体はその種のフォーマットに変更されてもよい。
【0110】
抗体産生動物を使用せずに広範な種類の抗原に対する遺伝子組み換えヒトモノクローナル抗体断片を作製するために、ファージディスプレイ法を用いてもよい。一般的に、「逆転写酵素」という酵素を使用して、ヒトBリンパ球の全メッセンジャーRNA(mRNA)から導かれ、合成される、対応するDNA(cDNA)鎖の大規模な遺伝子ライブラリがクローニングによって作成される。一例として、免疫グロブリンのcDNA鎖は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅され、ある抗原に特異的な軽鎖及び重鎖がファージミドベクターに導入される。該ファージミドベクターを適切な細菌にトランスフェクションすると、バクテリオファージの表面にscFV免疫グロブリン分子が発現する。所望の抗原(例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、及び、糖)に対する、免疫吸着/ファージ増殖サイクルを繰り返すことで、特定の免疫グロブリンを発現するバクテリオファージを選択する。標的抗原に厳格に特異的なバクテリオファージを適切なベクター(例えば、大腸菌、酵母、細胞)に導入し、発酵によって増幅させて、一般的に天然型抗体と非常に類似した構造を有する、多量のヒト抗体断片を産生させる。ファージディスプレイ法は、当該技術分野で既知であり、この技法によって標的化及び治療上の応用に用いられる固有のリガンドの産生が可能である。
【0111】
選択された抗原に対するポリクローナル抗体は、ウマ、ウシ、各種家禽類、ウサギ、マウス、又はラットのような様々な温血動物から当業者によって容易に作製される。一部の例では、選択された抗原に対するヒトポリクローナル抗体はヒトを由来として精製してもよい。
【0112】
本明細書で用いる場合、「単一ドメイン抗体」(dAb)は、指定された抗原と免疫学的に反応する、Vドメインを備える抗体である。dAbは、Vドメインを含まないが、抗体中に存在することが知られるその他の抗原結合ドメイン、例えば、κ及びλドメインを含んでいてもよい。dAbを作製する方法は当該技術分野で既知である。例えば、Ward et al.(1989)Nature 341:544−546を参照することができる。抗体は、Vドメイン及びVドメイン、更にその他の既知の抗原結合ドメインで構成されてもよい。この種の抗体及びその作製方法の例は、当該技術分野で既知である(例えば、米国特許第4816467号参照)。
【0113】
更なる典型的な抗体は、「一価抗体」を含み、これは第二の重鎖のFc(即ち定常)領域に結合した重鎖/軽鎖二量体からなる集合体である。この種の抗体は通常、免疫原性修飾を免れる。例えば、Glennie et al.(1982)Nature 295:712−714を参照することができる。
【0114】
「ハイブリッド抗体」は、一対の重鎖及び軽鎖が、第1の抗体中におけるものと相同であるが、もう一対の重鎖及び軽鎖は異なる第2の抗体中におけるものと相同である抗体である。一般的に、これらの2つの対のそれぞれは、特に異なる抗原上に存在する、異なるエピトープと結合する。これにより、「二価」の特性、即ち二つの抗原に同時に結合する能力がもたらされる。本明細書において説明するように、キメラ鎖を用いてそのようなハイブリッドを形成してもよい。
【0115】
本発明は「改変抗体」も包含し、これは脊椎動物の抗体中の天然型のアミノ酸配列が変化した抗体を意味する。所望の特性を得るために、遺伝子組み換えDNA法を利用して、抗体のデザインを変更することができる。可能なバリエーションは多く、1つ以上のアミノ酸の変更から、例えば定常領域等の領域の完全なデザイン変更まで様々である。抗原結合特性を変更するために、可変領域を変化させることができる。特定の細胞又は組織部位へのエマルションの特異的送達を容易にするために、抗体の改変を行ってもよい。分子生物学分野で既知の技法、例えば、遺伝子組み換え法、部位特異的突然変異誘発法、及び、その他の技法を用いて所望の改変を行うことができる。
【0116】
「キメラ抗体」は、重鎖及び/又は軽鎖が融合タンパク質である抗体である。通常は、鎖の定常領域は1つの特定の種及び/又はクラスに由来し、可変領域は異なる種及び/又はクラスに由来する。本発明は、キメラ抗体誘導体、即ちヒト以外の動物の可変領域とヒトの定常領域が組み合わされた抗体分子を含む。例えば、キメラ抗体分子は、マウス、ラット、又は、その他の種の抗体由来の抗原結合ドメインを、ヒトの定常領域と共に含むことができる。キメラ抗体を作製するための様々な手法が開示されており、標的化細胞及び/又は組織の表面上に存在する選択された抗原を認識する免疫グロブリンの可変領域を含むキメラ抗体を作製するために使用可能である。例えば、Morrison et al.(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:6851;Takeda et al.(1985)Nature 314:452;米国特許第4816567号及び第4816397号、欧州特許第171496号及び第173494号;並びに、英国特許第2177096(B)号を参照することができる。
【0117】
二重特異性抗体は、抗標的部位抗体の可変領域及び脂質で覆われたエマルションの表面上の少なくとも1つの抗原に特異的な可変領域を含んでいてもよい。他の例では、二重特異性抗体は、抗標的部位抗体の可変領域及びリンカー分子に特異的な可変領域を含んでいてもよい。例えば、体細胞交雑によってハイブリッドハイブリドーマを形成することで二重特異性抗体を得てもよい。ハイブリッドハイブリドーマは、例えば、Staerz et al.(1986,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.83:1453)及びStaerz et al.(1986,Immunology Today 7:241)に開示されているような、当該技術分野で既知の手順を用いて作製してもよい。体細胞交雑は、2つの確立されたハイブリドーマの融合によるクアドローマの作製(Milstein et al.(1983)Nature 305:537−540)又は1つの確立されたハイブリドーマと第二の抗原で免疫したマウス由来のリンパ球の融合によるトリオーマの作製(Nolan et al.(1990)Biochem.Biophys.Acta 1040:1−11)を含む。ハイブリッドハイブリドーマは、特定の薬剤耐性マーカーに耐性を示す各ハイブリドーマ細胞株を作製することによって(De Lau et al.(1989)J.Immunol.Methods 117:1−8)、又は各ハイブリドーマを異なる蛍光色素で標識し、ヘテロ蛍光細胞を選別すること(Karawajew et al.(1987)J.Immunol.Methods 96:265−270)により選択される。
【0118】
二重特異性抗体は、Staerz et al.(1985)Nature 314:628及びParez et al.(1985)Nature 316:354によって説明されるような手順を用いて、化学的手段によって作製してもよい。化学的結合は、例えば、Eアミノ基又はヒンジ領域のチオール基との、ホモ−及びヘテロ二官能性試薬を基本的に使用してもよい。5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DNTB)のようなホモ二官能性試薬は、2つのFabの間にジスルフィド結合を生成し、O−フェニレンジマレイミド(O−PDM)は2つのFabの間にチオエーテル結合を生成する(Brenner et al.(1985)Cell 40:183−190,Glennie et al.(1987)J.Immunol.139:2367−2375)。N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)のようなヘテロ二官能性試薬は、クラス又はアイソタイプに関係なく、抗体の露出したアミノ基とFab断片を連結する(Van Dijk et al.(1989)Int.J.Cancer 44:738−743)。
【0119】
二重官能性抗体は、遺伝子工学法によって作製されてもよい。遺伝子工学は、抗体の特定の断片をコードするDNA配列をプラスミドにライゲーションし、遺伝子組み換えタンパク質を発現させる、遺伝子組み換えDNAを基本とする技術の使用を含む。二重特異性抗体は、リンカーを使用して2つの一本鎖Fv(scFV)断片を連結することにより、単一の共有構造物として(Winter et al.(1991)Nature 349:293−299)、転写因子fos及びjun由来の配列を共発現するロイシンジッパーとして(Kostelny et al.(1992)J.Immunol.148:1547−1553)、p53の相互作用領域を共発現するへリックスターンへリックスとして(Rheinnecker et al.(1996)J.Immunol.157:2989−2997)、又はダイアボディとして(Holliger et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:6444−6448)作製することができる。
【0120】
本明細書の他の箇所で記載したものに加えて、前処理物質と、例えば、特異的結合又はターゲティングリガンドとの結合に使用することに適した結合剤を以下に詳細に記載する。他の結合剤は、1−エチル−3−(3−N,Nジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロリド又は1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドメチル−p−トルエンスルホネートのようなカルボジイミドを使用する。その他の適切な結合剤は、アクロレイン、メタクロレイン若しくは2−ブテナールのようなエチレン性不飽和結合を持ち、又は、グルタルアルデヒド、プロパンジアール若しくはブタンジアールのような複数のアルデヒド基を持つ、アルデヒド結合剤を含む。その他の結合剤は、2−イミノチオラン塩酸塩、例えば、ジスクシンイミジル基質、ジスクシンイミジル酒石酸、ビス[2−(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン、ジスクシンイミジルプロピオナート、エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシナート)等の二官能性N−ヒドロキシスクシンイミドエステル;例えば、N−(5−アジド−2−ニトロベンゾイルオキシ)スクシンイミド、p−アジドフェニルブロミド、p−アジドフェニルグリオキサル、4−フルオロ−3−ニトロフェニルアジド、N−ヒドロキシスクシンイミジル−4−アジドベンゾアート、m−マレイミドベンゾイルN−ヒドロキシスクシンイミドエステル、メチル−4−アジドフェニルグリオキサル、4−フルオロ−3−ニトロフェニルアジド、N−ヒドロキシスクシンイミジル−4−アジドベンゾエートハイドロクロリド、p−ニトロフェニル2−ジアゾ−3,3,3−トリフルオロプロピオナート、N−スクシンイミジル−6−(4’−アジド−2’−ニトロフェニルアミノ)ヘキサノアート、スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラート、スクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)ブチラート、N−スクシンイミジル(4−アジドフェニルジチオ)プロピオナート、N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート、N−(4−アジドフェニルチオ)フタルアミド等のヘテロ二官能性試薬;例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン、4,4’−ジフルオロ−3,3’−ジニトロジフェニルスルホン、4,4’−ジイソチオシアノ−2,2’−ジスルホン酸スチルベン、p−フェニレンジイソチオシアナート、カルボニルビス(L−メチオニン p−ニトロフェニルエステル)、4,4’−ジチオビスフェニルアジド、エリトリトールビスカルボナート等のホモ二官能性試薬;並びに、例えば、ジメチルアジピミデートハイドロクロリド、ジメチルスベリミデート、ジメチル 3,3’−ジチオビスプロピオンイミデートハイドロクロリド等の二官能性イミドエステル等が含まれる。
【0121】
本明細書の別の箇所に記載したものに加えて、本発明のナノ粒子上、及び/又はナノ粒子内に組み込まれてもよい治療薬を以下に更に記載する。通常は、治療薬を脂溶性にし、又は、脂質への溶解度を高めることにより、治療薬がエマルションの脂質層中及び/又は標的細胞の脂質膜中で保持されることを高めるため、治療薬は、脂質アンカーを用いて誘導体化することができる。当該治療用エマルションはまた、例えば、白金化合物(例えば、スピロプラチン、シスプラチン、及びカルボプラチン)、メトトレキサート、フルオロウラシル、アドリアマイシン、マイトマイシン、アンサマイトシン、ブレオマイシン、シトシンアラビノシド、アラビノシルアデニン、メルカプトポリリシン、ビンクリスチン、ブスルファン、クロラムブシル、メルファラン(例えば、PAM、L−PAM、又はフェニルアラニン・マスタード)、メルカプトプリン、ミトタン、塩酸プロカルバジンダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、タキソール、プリカマイシン(ミトラマイシン)、アミノグルテチミド、リン酸エストラムスチンナトリウム、フルタミド、酢酸ロイプロリド、酢酸メゲストロール、クエン酸タモキシフェン、テストラクトン、トリロスタン、アムサクリン(m−AMSA)、アスパラギナーゼ(L−アスパラギナーゼ)エルウィナ(Erwina)アスパラギナーゼ、インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、テニポシド(VM−26)、硫酸ビンブラスチン(VLB)、硫酸ビンクリスチン、ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、メトトレキサート、アドリアマイシン、アラビノシル、ヒドロキシウレア、プロカルバジン、ダカルバジン、例えばエトポシド及びその他のビンカアルカロイド類等の分裂抑制剤等の抗腫瘍薬;例えば、これに限定されるものではないが、放射性ヨード、サマリウム、ストロンチウム、コバルト、イットリウム等の放射性医薬品;例えば、これに限定されるものではないが、成長ホルモン、ソマトスタチン、プロラクチン、甲状腺ホルモン、ステロイド、アンドロゲン、プロゲスチン、エストロゲン、及び、抗エストロゲン等のホルモン類を含む、タンパク質又は非タンパク質天然産物又はその類似体/模倣薬;これに限定されるものではないが、例えば、オーラノフィン、メトトレキサート、アザチオプリン、スルファサラジン、レフルノミド、ヒドロクロロキン、及び、エタネルセプト等の抗リウマチ薬を含む鎮痛薬;例えば、バクロフェン、ダントロレン、カリソプロドール、ジアゼパム、メタキサロン、シクロベンザプリン、クロルゾキサゾン、チザニジン等の筋肉弛緩剤;例えば、コデイン、フェンタニル、ヒドロモルホン、レボルファノール、メペリジン、メタドン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、プロポキシフェン等の麻薬作動薬;例えば、ブプレノルフィン、ブトルファノール、デゾシン、ナルブフィン、ペンタゾシン等の麻薬作動薬拮抗薬;例えば、ナルメフェン及びナロキソン等の麻薬拮抗薬;ASA、アセトミノフェン、トラマドール、又は、これらの組み合わせ等のその他の鎮痛薬;これに限定されるものではないが、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、ナプロキセン、オキサプロキセン(oxaproxen)、ロフェコキシブ、サルサレート、サルディンダック(suldindac)、トルメチンを含む非ステロイド系抗炎症剤;例えば、エトミデート、フェンタニル、ケタミン、メトヘキシタール、プロポフォール、スフェンタニル、チオペンタール等の麻酔薬及び鎮静薬;例えば、これに限定されるものではないが、パンクロニウム、アトラクリウム、シサトラクリウム、ロクロニウム、スクシニルコリン、ベルクロニウム(vercuronium)等の神経筋遮断薬;アミノグリコシドを含む抗菌剤;アムホテリシンB、クロトリマゾール、フルコナゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ナイスタチン、及び、テルビナフィンを含む抗真菌薬;駆虫薬;例えば、クロロキン、ドキシサイクリン、メフロキン、プリマキン、キニーネ等の抗マラリア薬;ダプソン、エタンブトール、エチオナミド、イソニアジド、ピラジナミド、リファブチン、リファンピン、リファペンチンを含む抗抗酸菌薬;アルベンダゾール、アトバクオン、ヨードキノール、イベルメクチン、メベンダゾール、メトロニダゾール、ペンタミジン、プラジカンテル、ピランテル、ピリメタミン、チアベンダゾールを含む抗寄生虫剤;アバカビル、ジダノシン、ラミブジン、スタブジン、ザルシタビン、ジドブジン、及び、例えば、インジナビル及び関連化合物等のプロテアーゼ阻害剤を含む抗ウイルス薬;これに限定されるものではないが、シドフォビル、ホスカルネット、及びガンシクロビルを含む抗CMV薬;アマンタジン、リマンタジン、ザナミビルを含む抗ヘルペス薬;インターフェロン、リバビリン、レベトロン;カルバペネム、セファロスポリン、フルオロキノン、マクロライド、ペニシリン、スルホンアミド、テトラサイクリン、及び、アズトレオナム、クロラムフェニコール、ホスホマイシン、フラゾリドン、ナリジクス酸、ニトロフラントイン、バンコマイシン等のその他の抗菌剤;硝酸塩、利尿薬、β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、アンギオテンシン変換酵素阻害薬、アンギオテンシン受容体拮抗薬、抗アドレナリン作動薬、抗不整脈薬、抗高脂血症薬、抗血小板化合物、昇圧薬、血栓溶解薬を含む抗高血圧薬;座瘡治療薬;乾癬治療薬;コルチコステロイド;アンドロゲン、アナボリックステロイド、ビスホスホネート;スルホニル尿素、及びその他の抗糖尿病薬;痛風関連薬;抗ヒスタミン剤、鎮咳薬、うっ血除去薬、及び去痰薬;制酸薬、5−HT受容体拮抗薬、H2−拮抗薬、ビスマス化合物、プロトンポンプ阻害薬、緩下薬、オクトレオチド及びその類似体/模倣薬を含む抗潰瘍薬;抗凝固剤;免疫抗原、免疫グロブリン、免疫抑制剤、抗痙攣薬、5−HT受容体作動薬、その他の片頭痛治療法;抗コリン作用薬、及びドーパミン作動薬を含むパーキンソン病治療薬;エストロゲン、GnRH作動薬、プロゲスチン、エストロゲン受容体モジュレータ、子宮収縮抑制薬、子宮収縮薬、例えばヨード生成物及び抗甲状腺薬等の甲状腺物質;例えば、非経口用鉄、ヘミン、ヘマトポルフィリン及びその誘導体等の血液製剤も含んでいてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0122】
本明細書の他の箇所で記載したものに加えて、本発明のナノ粒子を光イメージングで使用する場合に適した他の光活性物質を以下に詳細に記載する。適切な光活性物質は、例えば、フルオレセイン、インドシアニングリーン、ローダミン、トリフェニルメチン、ポリメチン、シアニン、フラーレン、オキサテルラゾール(oxatellurazole)、バーディン(verdin)、ロジン、ポルフィセン、サフィリン、ルビリン、コレステリル 4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a,−ジアザ−s−インダセン−3−ドデカノアート、コレステリル 12−(N−メチル−N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)ドデカノアート、シス−パリナリン酸コレステリル、コレステリル 3−((6−フェニル)−1,3,5−ヘキサトリエニル)フェニル−プロピオナート、コレステリル 1−ピレンブチレート、コレステリル−1−ピレンデカノアート、コレステリル 1−(ピレンヘキサノアート)、22−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)−23,24−ビスノル−5−コレン−3β−オール、22−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)−23,24−ビスノル−5−コレン−3β−イル シス9−オクタデセノアート、1−ピレンメチル 3−ヒドロキシ−22,23−ビスノル−5−コレナート、1−ピレン−メチル 3β−(シス−9−オクタデセノイルオキシ)−22,23−ビスノル−5−コレナート、アクリジンオレンジ 10−ドデシルブロミド、アクリジンオレンジ 10−ノニルブロミド、4−(N,N−ジメチル−N−テトラデシルアンモニウム)−メチル−7−ヒドロキシクマリン)クロリド、5−ドデカノイルアミノフルオレセイン、5−ドデカノイルアミノフルオレセイン−ビス−4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジルエーテル、2−ドデシルレゾルフィン、フルオレセインオクタデシルエステル、4−ヘプタデシル−7−ヒドロキシクマリン、5−ヘキサデカノイルアミノエオシン、5−ヘキサデカノイルアミノフルオレセイン、5−オクタデカノイルアミノフルオレセイン、N−オクタデシル−N’−(5−(フルオレセイニル))チオウレア、オクタデシルローダミンBクロリド、2−(3−(ジフェニルヘキサトリエニル))−プロパノイル)−1−ヘキサデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、6−N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)ヘキサン酸、1−ヘキサデカノイル−2−(1−ピレンデカノイル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,1’−ジオクタデシル−3,3,3’,3’−テトラメチル−インドカルボシアニンパークロレート、12−(9−アントロイルオキシ)オレイン酸、5−ブチル−4,4−ジフルオロ−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−ノナン酸、N−(リサミン(商標)ローダミンBスルホニル)−1,2−ジヘキサデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、トリエチルアンモニウム塩、フェニルグリオキサルモノハイドレート、ナフタレン−2,3−ジカルボキシアルデヒド、8−ブロモメチル−4,4−ジフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン、o−フタルジアルデヒド、リサミン(商標)ローダミンBスルホニルクロリド、2’,7’−ジフルオロフルオレセイン、9−アントロニトリル、1−ピレンスルホニルクロリド、4−(4−(ジヘキサデシルアミノ)−スチリル)−N−メチルピリジニウムヨウ化物、例えば、クロリン、クロリンe6、ボネリン、モノ−L−アスパルチルクロリンe6、メソクロリン、メソテトラフェニルイソバクテリオクロリン及びメソテトラフェニルバクテリオクロリン等のクロリン類、ヒポクレリンB、例えば、オクタエチルプルプリン、亜鉛(II)エチオプルプリン、スズ(IV)エチオプルプリン及びスズエチルエチオプルプリン等のプルプリン、ルテチウムテキサフィリン、フォトフリン、金属ポルフィリン、プロトポルフィリンIX、スズプロトポルフィリン、ベンゾポルフィリン、ヘマトポルフィリン、フタロシアニン、ナフトシアニン、メロシアニン、ランタニド錯体、シリコンフタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、アルミニウムフタロシアニン、Geオクタブチルオキシフタロシアニン、メチルフェオホルビド−α−(ヘキシル−エーテル)、ポルフィセン、ケトクロリン、スルホン化テトラフェニルポルフィン、δ−アミノレブリン酸、例えば、1,2−ジニトロ−4−ヒドロキシ−5−メトキシベンゼン、1,2−ジニトロ−4−(1−ヒドロキシヘキシル)オキシ−5−メトキシベンゼン、4−(1−ヒドロキシヘキシル)オキシ−5−メトキシ−1,2−フェニレンジアミンを含むテキサフィリン、及び、金属としてY(III)、Mn(II)、Mn(III)、Fe(II)、Fe(III)、及びランタニド金属類Gd(III)、Dy(III)、Eu(III)、La(III)、Lu(III)、及びTb(III)を含むテキサフィリン−金属キレート、クロロフィル、カロチノイド、フラボノイド、ビリン、フィトクロム、フィコビリン、フィコエリトリン、フィコシアニン、レチン酸、レチノイン、レチノイン酸、あるいは、上記物質の任意の組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない。
【0123】
上記の化合物のうち、例えば、蛍光物質及び/又は光線感作物質は、当業者が容易に理解し又は容易に判定することができる。リサミンは、N−エチル−N−[4−[[4−[エチル[(3−スルホフェニル)メチル]アミノ]フェニル](4−スルホフェニル−1)−メチレン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−3−スルホベンゼン−メタンアミニウム水酸化物、内塩、ジナトリウム塩及び/又はエチル[4[p[エチル(m−スルホベンジル)アミノ]−α−(p−スルホフェニル)ベンジリデン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン](m−スルホベンジル)アンモニウム水酸化物内塩ジナトリウム塩の商標である(Molecular Probes,Inc.(米国オレゴン州ユージーン)より販売されている)。本発明で使用する適したその他の光活性物質は、米国特許第4935498号に記載されているもの、例えば、4,5,9,24−テトラエチル−16−(1−ヒドロキシヘキシル)オキシ−17メトキシペンタアザペンタシクロ−(20.2.1.1,6.1,11.014,19)−ヘプタコサ−1,3,5,7,9,11(27),12,14,16,18,20,22(25),23−トリデカエンのジスプロシウム錯体、及び、2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピル−6−(4,5,9,24−テトラエチル−17−メトキシペンタアザペンタシクロ−(20.2.1.1,6.1,11.014,19)−ヘプタコサ−1,3,5,7,9,11(27),12,14,16,18,20,22(25),23−トリデカエン−16−(1−オキシ)ヘキシルホスホルアミダイトのジスプロシウム錯体を含む。
【0124】
組成物の調製方法
様々な技法を用いて本発明のエマルションを調製してもよく、詳細は国際出願PCT/US2004/025484号に記載されている。本発明のエマルションの調製に用いられる一般的な手順では、パーフルオロカーボンと脂質/界面活性剤コーティング成分を水性溶媒中で流動化してエマルションを形成する。表層の機能成分は、元のエマルションに含まれていてもよく、又は、後からナノ粒子エマルションの形成に続いて表層に共有結合させてもよい。例えば、核酸ターゲティング物質又は薬剤が含まれる特定の例では、コーティングはカチオン性界面活性剤を用いてもよく、粒子が形成された後に表面に核酸が吸着される。
【0125】
通常は、乳化プロセスには、お互いに衝突しあって粒子サイズと分布が狭いエマルションが産生されるように、水溶液、前処理物質又は特異的結合種、パーフルオロカーボン、及び界面活性剤(もしあれば)を含有する混合液の流れに高い圧力を加えるステップが含まれる。好ましいエマルションを作製するためにMICROFLUIDIZER(Microfluidics、米国マサチューセッツ州ニュートン)を使用することができる。本装置は、超音波処理又はその他の従来法を用いて作製したエマルションの後処理にも使用することができる。MICROFLUIDIZER装置にエマルション滴の流れを送入すると、サイズが小さく、サイズ分布が狭い製剤が産生される。
【0126】
エマルションの作製に用いられる他の方法は、パーフルオロカーボンと適切な前処理物質及び/又は特異的結合種を含有する水溶液の超音波処理を含む。通常は、当該混合液は界面活性剤を含む。乳化している混合液を冷却し、界面活性剤の濃度を最小に抑え、緩衝食塩水で緩衝することで、一般的に、前処理物質の特異的結合特性と結合能の両方が最大限保存される。本方法によって、吸着された前処理物質又は特異的結合種の単位ごとに高い活性を有する、優れたエマルションがもたらされる。
【0127】
高濃度の前処理物質又は特異的結合種を脂質エマルションにコーティングする場合、超音波処理の間は混合物を温める必要があり、また混合物のイオン強度は比較的低く、中等度から低いpHである必要がある。イオン強度が低すぎたり、pHが低すぎたり、又は温めすぎる場合、特異的結合種の有用な結合特性又は前処理物質の結合能の全てが低下し又は失われることがある。乳化条件を注意深く管理し、変化させることで、高濃度のコーティングを得ると同時に、前処理物質又は特異的結合種の特性を最適化することができる。投与の前に、当該技術分野で既知の技法、例えば最終段階での蒸気滅菌により当該製剤を滅菌してもよい。
【0128】
乳化法と化学成分を変化させることで、エマルション粒子の大きさをコントロールし、変化させることができる。粒子サイズを測定するための技法及び機器は、当該技術分野で既知であり、レーザー光散乱法及び粒子によるレーザー光の散乱を測定するための分析装置を含むが、これらに限定されるものではない。
【0129】
適切に調製された場合、補助物質を含むナノ粒子は、多数のそうした機能性物質を外層に含有し、ナノ粒子は一般的に、数十、数百、又は数千の生物活性物質、ターゲティングリガンド、放射性核種、MRI用造影剤及び/又はPET用造影剤の分子を含有する。MRI用造影剤に関しては、ナノ粒子に結合される成分のコピー数は、通常は1粒子につき約5,000コピーを上回り、より好ましくは1粒子につき約10,000コピーを上回り、更により好ましくは1粒子につき30,000コピーを上回り、更により好ましくは1粒子につき約50,000〜100,000コピー以上である。1粒子当たりのターゲティング物質の数は通常は更に少なく、およそ数百程度であり、同様にPET用造影剤、蛍光色素分子、放射性核種、及び生物活性物質の濃度を変えることができる。
【0130】
ナノ粒子は補助物質を含有しなくてもよい。一般に、粒子はパーフルオロカーボンコアを持つことから、本明細書に記載する他の機能と併用して、粒子の位置を追跡するためにX線イメージング、一部の例では超音波イメージング、を使用することができる。また、ターゲティングリガンドと結合したそのような粒子は、それ自体がイメージング用造影剤として特に有用である。更に、複数のその他の成分を含むことにより、本明細書に記載したようなその他の点においても使用することができる。例えば、常磁性イオンを含有するキレート剤を加えると、エマルションがMRI用造影剤として有用になる。生物活性物質を加えると、薬物送達システムとして使用することができる。放射性核種を加えると、放射線治療用の治療薬として、又は、イメージングのための診断用薬として使用することができる。その他のイメージング剤は、フルオレセイン又はダンシルのような蛍光色素分子が含まれる。生物活性物質を含んでいてもよい。多くの活性が含まれていてもよく、従って、標的化組織の画像を、活性物質がそれらに送達されると同時に得ることができる。
【0131】
コーティングに含有させる成分の性質に応じて、エマルションは、様々な方法で調製することができる。
【0132】
例を示すものに過ぎないが、一例において、以下の手順を記載する:パーフルオロオクチルブロミド(PFOB、20%v/v)、界面活性剤コミクスチャー(1.5%w/v)、グリセリン(1.7%w/v)、及び、バランスに相当する水を調製する。ここで、界面活性剤コミクスチャーは、97.9モル%のレシチン、0.1モル%のPEG2000−ホスファチジルエタノールアミンと結合したビトロネクチン拮抗薬、及び、1モル%の脂溶性キレート(メトキシ−DOTA−カプロイル−ホスファチジルエタノールアミン(MeO−DOTA−PE)を含む。界面活性剤成分は、これまでに開示されているように調製され(Lanza et al.(1996)Circulation 94:3334−40)、PFOB及び蒸留脱イオン水と混合され、20,000PSIで4分間乳化される。2%界面活性剤層の0.01から50モル%の間、2%界面活性剤層の0.01から20モル%の間、2%界面活性剤層の0.01から10モル%の間、2%界面活性剤層の0.01から5.0モル%の間、好ましくは2%界面活性剤層の0.2から2.0モル%の間のタイトレーション量で薬剤を添加することができる。クロロホルム−脂質混合液を減圧下で蒸発させ、50℃の真空オーブン内で一晩乾燥し、超音波処理によって水に分散させる。懸濁液を、蒸留水又は脱イオン水に溶解したヨード化油と共にブレンダーカップ(例えば、Dynamics Corporation of Americaより販売されているもの)に移し、30秒〜60秒間乳化させる。乳化した混合液をMicrofluidics乳化装置に移し、20,000PSIで4分間処理を継続する。処理が完了したエマルションをバイアルに移し、窒素を封入し、使用するまでクリンプ栓で密封する。コントロール用エマルションは、界面活性剤コミクスチャーに薬剤を添加せず、同じ手順により調製することができる。レーザー光散乱サブミクロン粒子サイズ解析装置(Malvern Zetasizer 4、Malvern Instruments Ltd、米国マサチューセッツ州サウスボロ)を使用して粒子の大きさを37℃で3回測定すると、タイトかつ再現性の高いサイズ分布示され、平均直径は200nm未満である。取り込まれなかった薬剤は透析又は限外ろ過法で除去することができる。ターゲティングリガンドを提供するため、例えば、本明細書で記載の手順において、二官能性リンカーを介して、ホスファチジルエタノールアミンに、抗体又は抗体断片又は非ペプチドリガンドを共有結合させる。
【0133】
キット
本発明のエマルションは、本発明の方法において直接調製及び使用してもよく、又は、エマルションの成分はキットの形で提供されてもよい。キットは、所望の補助物質の全てを、緩衝液又は凍結乾燥状態で含有する非標的化組成物を含んでもよい。キットは、全ての所望の補助物質及びターゲティング物質を緩衝液又は凍結乾燥状態で含有する調製済み標的化組成物を含んでもよい。あるいは、キットは、個別に提供されるターゲティング物質を含まないエマルションの形態を含んでもよい。このような条件下では、一般的に、エマルションがターゲティング物質と混合されたときに、エマルション自体へのターゲティング物質の結合を生じさせるような、マレイミド基のような反応基をエマルションが含む。結合の達成に有用な更なる試薬が個別の容器によって提供されてもよい。あるいは、エマルションは、それ自体が反応基を含み、個別に提供される所望の成分に結合したリンカーと結合する反応基を含んでもよい。適切なキットを構成するための各種様々な手法が想定されうる。従って、最終的なエマルションを構成する個々の成分は個別の容器で提供されてもよく、又は、キットそのものとは別に提供されるその他の材料と併用するための試薬だけをキットが含んでいてもよい。
【0134】
組み合わせの限定的なリストは、脂質−界面活性剤層中に蛍光色素分子又はキレート剤のような補助成分、及び、ターゲティング物質と結合するための反応部分を包含するエマルション製剤;エマルションがターゲティング物質と結合し、補助物質と結合するための反応基を包含する製剤;ターゲティング物質及びキレート剤を両方含み、キレートされる金属がキットで提供され、又は、ユーザーによって個別に提供されるエマルション;脂質層中の物質が異なる反応基、即ちターゲティングリガンドに対する反応基セット、及び、補助物質に対するもう1つの反応基セットを含む界面活性剤/脂質層を含むナノ粒子の製剤;結合剤によって反応基が供給される、上述の組み合わせのいずれかを含むエマルションの製剤を含んでいてもよい。
【0135】
一の態様において、αβを発現する組織を標的とするナノ粒子のエマルションの調製用のキットは、αβに特異的なリガンド、及び、低解像度造影剤及び/又は高解像度造影剤と結合するための結合部分を含むナノ粒子を含む少なくとも1つの容器、前記低解像度造影剤を含む少なくとも1つの容器、並びに、前記高解像度造影剤を含む少なくとも1つの容器とを含む。
【0136】
別の態様において、αβを発現する組織を標的とするナノ粒子のエマルション調製用キットは、αβに特異的なリガンドに結合するための結合部分を含むナノ粒子を含む少なくとも1つの容器、αβに特異的なリガンドを含む少なくとも1つの容器、低解像度造影剤を含む少なくとも1つの容器、並びに、高解像度造影剤を含む少なくとも1つの容器を備える。
【0137】
本発明は、高解像度イメージング用のキットにも関し、本キットは、低解像度造影剤に結合部分を介して結合したαβに特異的なリガンドを含むナノ粒子を含む少なくとも1つの容器と、高解像度造影剤に結合部分を介して結合したαβに特異的なリガンドを含むナノ粒子を含む少なくとも1つの容器を備える。
【0138】
別の態様において、高解像度イメージング用のキットは、標的部分に特異的なリガンドを含むハロカーボンベースのナノ粒子を含む少なくとも1つの容器を含み、ここで、ナノ粒子は高解像度造影剤に結合する。
【0139】
本発明のキットは、対象への造影剤の投与に関する使用説明手段を更に含むことができる。使用説明手段は、対象へ造影剤を投与することにより、低解像度イメージング法によって標的組織の位置を特定し、更に高解像度イメージング法によって可視化することを指示する、書面による添付物、録音テープ、視聴覚テープ、又は、他のあらゆる手段であってもよい。
【0140】
以下の実施例は例を示すことを目的としており、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0141】
(αβ標的化111Inナノ粒子の調製)
20%(v/v)パーフルオロオクチルブロミド、1.5%(w/v)の界面活性剤コミクスチャー、1.7%(w/v)のグリセリン、及び、バランス用の水を乳化させることによって、αβ標的化111Inパーフルオロカーボンナノ粒子を調製した(Lanza et al.(1996)Circulation 94:3334−3340;Flacke et al.(2001)Circulation 104(11):1280−1285;Winter et al.(2003)Cancer Res.63(18):5838−5843)。界面活性剤コミクスチャーは、通常、97.9モル%のレシチン(Avanti Polar Lipids,Inc.)、0.1モル%のPEG2000−ホスファチジルエタノールアミンと結合したビトロネクチン拮抗薬(Avanti Polar Lipids,Inc.)(Winter et al.(2003)Cancer Res.63(18):5838−5843)、及び1モル%の脂溶性キレート(メトキシ−DOTA−カプロイル−ホスファチジルエタノールアミン(MeO−DOTA−PE)、Dow Chemical Company)(Winter et al.(2005)J.Magn.Magn.Mater.293(1):540−545)を含んでいた。界面活性剤成分をこれまでに開示されているように調製し(Lanza et al.(1996)Circulation 94:3334−3340)、PFOB及び蒸留脱イオン水と混合し、20,000PSIで4分間乳化(Microfluidics, Inc.)した。
【0142】
レーザー光散乱サブミクロン粒子解析装置(Zetasizer 4,Malvern Instruments)を使用して37℃で測定した結果、公称粒径は242nmであった(多分散性指数は0.231)。これまでに報告されているように(Schmieder et al.(2005)Magn.Reson.Med.53(3):621−627)、in vitroでビトロネクチン細胞接着アッセイを使用してαβ−インテグリン標的化ナノ粒子の生物活性を確認した。
【0143】
加水分解が一定でなく金属が沈殿することから、直接的な結合方法を用いて複数の111Inをナノ粒子へ効率的に固相結合させるのは困難であることが示された。複数の直接的結合標識法を、0.1Mの酢酸アンモニウム緩衝液、pH5.5、0.2Mの炭酸ナトリウム溶液、0.2M水酸化ナトリウム、又は10%v/vトリエチルアミン緩衝液中で65℃にて30分間加熱して実施したが、遊離金属の著しい加水分解のために結果は概して不良であり又は一定でなかった。コントロール用エマルション(即ちホーミングリガンド又はDOTAを持たない)と111Inを併せてインキュベーションした後、DTPAを添加してTLCプロファイルを得た。標識のおよそ40%が起始部に残っている(rf=0)。
【0144】
弱いキレート剤であるクエン酸塩を、111Inと一時的に錯体化するシャトルとして利用し、加水分解を最小に抑えることでこの問題を解決した。0.5Mのクエン酸ナトリウムの存在下で、水酸化111Inの沈殿は2%未満に低下した。強力なキレート剤であるメトキシ−ベンジルDOTAを表面に豊富に含むαβ−インテグリン標的化ナノ粒子を続いて添加すると、クエン酸塩由来の111Inと順調に競合し、再現性の高い標識がもたらされた。
【0145】
実質的に化学量論的な正確さで溶液中の遊離DOTAキレートへの111Inの結合が達成されたが、ナノ粒子上のメトキシベンジルDOTAへの111Inの固相結合の結果は、表面のキレートが著しく多量であったにもかかわらず不良であった。しかし、本研究で非常に高い比放射能(〜10111In/ナノ粒子)が常に得られた。
【0146】
通常は、0.04MのHCl中で250μlの0.5Mクエン酸ナトリウム(pH5.7)を、40MBqの111InClと混合した(250μl)。インジウム−クエン酸塩緩衝液を、それぞれ〜1又は〜10の核種を有する粒子が生じるような割合でαβ−インテグリンナノ粒子と混合した。〜40℃の振盪槽(50RPM)内で一晩インキュベーションした後、遊離放射性核種を除去するため反応混合液に遊離DTPAを5分間添加した。
【0147】
環境温度にて、薄層クロマトグラフィー(TLC)を使用して結合を評価した。シリカゲルがコーティングされたろ紙に上記の混合液の一定量を添加し、0.1M酢酸アンモニウム(pH5.5):メタノール:水(20:100:200、v/v)で展開した。1cm片を自動ガンマカウンター(Wizard3」 model1480,Perkin Elmer)で計数した。放射性ナノ粒子のペイロードを、それらの公称粒径とパーフルオロカーボン濃度に基づいて、エマルション1μl当たりの粒子の数に対する、ナノ粒子に結合したTLCで解析したμl当たりの放射能の割合として算出した。ナノ粒子への111Inの結合効率は、高いもの(10核種/粒子)では〜50から〜70%、1核種/粒子の製剤では〜85%から〜90+%であった。高特異活性注射液に非標識、非標的化エマルションを添加することで、治療間で等しいナノ粒子の総投与量を維持した。
【実施例2】
【0148】
(放射性標識ナノ粒子の薬物動態)
Washington University Medical SchoolのAnimal Studies Committeeによって承認されたプロトコル及び手順に従って、これらの研究全体を通して動物を管理し、生理学的なモニタリングを行った。
【0149】
10111In/粒子を有するαβ標的化111Inナノ粒子を耳静脈からボーラス注入法で投与した(11MBp/kg)6匹のNew Zealand White rabbitにおいて、放射性標識ナノ粒子の基本的な薬物動態パラメータを評価した。ベースライン時、及び注射の2、5、10、20、30、45、60、90、及び120分後に別の静脈アクセスから血液を採取し、重量を量り、オートウェルガンマカウンター(Wizard 1480,Perkin Elmer)で測定し、若干の量の差について結果を標準化した。各動物について、単純なbiexponential model、y=A−αt+B−βtをデータに適合し、これから分布容積、消失速度、及びクリアランスの推定値を、2−コンパートメントオープンモデル用の標準的な動力学モデリング公式を用いて導いた(O’Flaherty EJ.Toxicants and Drugs:kinetics and dynamics.New York:John Wiley&Sons,1981)。
【0150】
全ての変数は平均±平均値の標準誤差(SEM)として表す。SAS(SAS Institute)を使用したStudentのt検定及びANOVAをはじめとする通常の線形モデルを連続変数の解析に使用した。0.05のα水準での分離手段として最小有意差法(LSD)を使用した。
【0151】
111Inαβナノ粒子(〜10111In/NP)の薬物動態を、6匹のウサギにおいて定義した。図1aは、最初の2時間の間に1匹のウサギから得られたデータの2−コンパートメントモデリングを示す。これらのデータから得られた係数及び速度の推定値に基づいて、ナノ粒子のβ相の消失半減期(t1/2β)を309分±136分(SD)と推定した。分布容積(V)とクリアランス(Cl)を、これらの若年のウサギにおいてそれぞれ380ml±66ml(SD)と0.68ml/分±0.12ml/分(SD)と算出した。データは、任意の血管受容体に到達し飽和するのに十分以上である、十分な血中半減期をパーフルオロカーボンナノ粒子が示すことを示唆する。分布容積は循環血液量の推定値のおよそ2倍であり、これは細網内皮系による取り込みとクリアランスを反映していた。
【実施例3】
【0152】
(αβ標的化111Inナノ粒子の生体内分布)
0.25ml/kg(n=3)、0.5mg/kg(n=3)、及び1.0ml/kg(n=3)の用量を静脈経路で無作為に投与したNew Zealand White rabbitにおいて、αβ標的化パーフルオロカーボンナノ粒子の生体内分布を注射の3時間後に測定した。ウサギを安楽死させ、主要な特定クリアランス臓器(即ち、肺、脾臓、肝臓、リンパ節、骨髄、腎臓)を切除し、重量を測定し、パーフルオロカーボン解析用に処理した。
【0153】
水素炎イオン化検出器(Model 6890,Agilent Technologies,Inc.(米国デラウェア州ウィルミントン))を使用し、ガスクロマトグラフィーによってパーフルオロカーボン濃度を測定した。重量を測定した組織の一定量をエタノール中の10%水酸化カリウムに抽出した。2mlの内部標準液(0.1%オクタンを含むFreon)を添加し、混合液を血清バイアルに密封した。密封したバイアルの内容物をボルテックスで激しく攪拌した後、振盪機上で30分間攪拌を続けた。抽出層の下層をシリカゲルカラムで濾過し、解析用に4〜6℃で保存した。GCカラムの温度はまず30℃とし、10℃/分で145℃まで上昇させた。全てのサンプルの解析を2回行い、結果を%ID/g±SDで表した。
【0154】
図1bに示すように、%ID/g組織としてのパーフルオロカーボンの量は脾臓で最も多く、0.25ml/kg、0.5ml/kg、及び1.0ml/kgのエマルション用量で、それぞれ1.0±1.1%ID/g、3.0±2.8%ID/g、及び3.7±0.8%ID/gに濃度が上昇した。1.0ml/kgのエマルション用量レベルでは、肝臓のパーフルオロカーボン量は、脾臓で測定された量の15%(0.6±0.1%ID/g)であった。概して、残りの組織のパーフルオロカーボン濃度はこれより低かった。
【実施例4】
【0155】
(αβ標的化111Inナノ粒子を使用した腫瘍の標的化)
雄のNew Zealand White Rabbit(〜2.5kg)にケタミンとキシラジンを筋肉内投与(それぞれ65及び13mg/kg)して麻酔をかけた。各動物の左後肢の毛を刈り、消毒し、膝窩の上側に小切開を作成する前にマーカイン(商標)を局所的に浸潤させた。2×2mmの大きさのVx−2癌腫瘍(NCI tumor depository)をドナー動物から新たに採取し、膝窩内におよそ0.5cmの深さに移植した。解剖面を接合し、1本の吸収性縫合糸で固定し、皮膚の切開部を皮膚用接着剤Dermabond(商標)で閉鎖した。腫瘍移植の手順後、キシラジンの効果をヨヒンビンで減弱し、動物を覚醒させた。
【0156】
Vx−2の移植から12〜16日後に、1%〜2%のイソフルラン(商標)でウサギを麻酔し、挿管して酸素を供給し、単一の3mm開口部を備える高エネルギー用ピンホール型コリメータの下側3cmに設置し、平面モードで作動するclinical Genesysガンマカメラ(Philips Medical Systems)にマウントした。静脈及び動脈カテーテルを各ウサギの両側の耳に留置してナノ粒子の全身注射と動脈血の採取/生理学的モニタリングに使用した。Capintec CRC−15Rウェルカウンターで、標識ナノ粒子の用量を使用する直前に較正した。
【0157】
22MBq/kgの:1)〜10111In/NPのαβ−インテグリン−標的化NP(n=3)、2)〜1111In/NPのαβ−インテグリン−標的化NP(n=4)、3)αβ−インテグリン−標的化非放射性NPと共に投与された〜10111In/NPのαβ−インテグリン−標的化ナノ粒子(3:1)(即ち競合グループ、n=3)、4)〜10111In/NPの非標的化NP(n=3)、又は5)〜1111In/NPの非標的化NP(n=3)が投与されるよう無作為化した16匹のNew Zealand rabbitにおいて、〜12dのVx−2腫瘍内の血管新生のin vivoでの検出を行った。
【0158】
静脈注射後、ベースライン時、及び約2時間の間連続して15分毎に、170keVと244keVに中心を持つ2つの20%ウインドウを使用して動的放射線画像(マトリックス:128×128)を得た。DICOM画像をUnix workstationにエクスポートし、後からImageJソフトウェア(NIH.gov)で解析した。解剖学的ランドマークを各フレーム上で特定し、平均ピクセル活性を決定するために、同等の大きさの関心領域(ROI)を腫瘍シグナル、筋肉、及び背景領域の周辺に手動で設定した。
【0159】
Vx−2腫瘍を移植した追加の8匹のウサギに、〜10111In/NPのαβ−インテグリン−標的化(n=4)又は非標的化(n=4)NPを投与し、18時間後(n=4)又は48時間後(n=4)にイメージングを行った。18時間後の時点で、15分毎に2時間の間、ウサギの動的スキャンを行った。48時間後の時点では、15分での画像取得を1度行った。
【0160】
イメージング後に動物を安楽死させ、腫瘍を切除し、重量を測定し、ルーチンの組織病理学と特定の免疫組織化学的検討用にホルマリン固定するか、又はOCT内ですばやく凍結した。2匹の動物では、精索内で継続的に発生する新生血管の確認用に、精巣を陽性対照として切除した。アセトン固定の凍結組織を薄切し(5μm)、ヘマトキシリン・エオシン染色で通常通り染色を行い、及び/又は、αβ−インテグリン(LM−609,Chemicon International,Inc)で免疫染色を行った。Vectastain(登録商標)Elite ABCキット(Vector Laboratories)を使用して免疫組織化学を行い、Vector(登録商標)VIPキットで発色した。Nikon E800研究用顕微鏡で顕微鏡画像を取得し、Nikon DXM1200カメラでデジタル化した。
【0161】
別の動物集団では(n=2)、血管内皮用の一般的な染色であるローダミンとFITC−レクチン(Vector Laboratories)で標識したαβ−標的化ナノ粒子(0.1ml/kg)を静脈投与した。核医学イメージングのプロトコルに従って、αβ−標的化ローダミンナノ粒子(0.1ml/kg)を、FITC−レクチンの2時間前に投与し、安楽死させる約15分前に蛍光レクチンを投与した。凍結切片作成及び顕微鏡観察用に腫瘍をOCTに包埋する前に、結合していない蛍光標識を除去するため、組織を採取する前にウサギを食塩水で勢いよくかん流を行った。
【0162】
全ての変数は平均±平均値の標準誤差(SEM)として表す。SAS(SAS Institute)を使用したStudentのt検定及びANOVAをはじめとする通常の線形モデルを連続変数の解析に使用した。0.05のα水準での分離手段として最小有意差法(LSD)を使用した。
【0163】
静脈注射後2時間にわたって動的イメージングを実施し、〜10111In/NPの111Inαβ−ナノ粒子を投与されたウサギにおける平均ピクセル強度の腫瘍対筋肉比を、3倍の競合用量の非標識αβ−ナノ粒子と共に111Inαβ−ナノ粒子を投与された動物と比較した(図2a)。111Inαβ−ナノ粒子は、注射15分以内に高い腫瘍対筋肉比(TMR)コントラスト(6.46±0.78)をもたらし、これは2時間にわたって持続し、平均は6.3±0.07であった。非標識αβ−ナノ粒子によるインテグリン受容体の占有によって、15分後の時点でのTMRコントラストは4.53±0.77まで低下し、この差は連続イメージングを行った2時間の間持続し、平均は4.11±0.08であった(p<0.05)。非標的化111Inナノ粒子(図2b)は、15分後の時点(3.82±0.32)、並びに2時間にわたって(3.74±0.05)、インテグリン標的化製剤が示した値より低いTMRコントラストを示した(p<0.05)。非標的化及び競合的治療の腫瘍コントラスト反応に差はなかった(p>0.05)。2時間後の時点で、111Inαβ−ナノ粒子を投与されたウサギの腫瘍部位における%注入用量(%ID)は1.20%ID±0.18%IDであり、これは同等量の非標的化ナノ粒子を投与された動物において保持された用量、0.60%ID±0.08%IDより高かった(p<0.05)。総合すると、これらの結果は、αβ−インテグリン標的化によってより優れたコントラスト増強が得られることを裏付けるものであり、血管新生の受動的標的化が、初期の腫瘍対筋肉の総コントラスト比に著しく寄与する可能性を示唆する。
【0164】
図2cでは、2時間の間の、〜10111In/NPの111Inαβ−ナノ粒子の筋肉に関してのシグナル増強は、〜1111In/NPで製剤化された粒子(5.09±0.04)より高かった(p<0.05)。しかし、活性の低い物質で得られた平均コントラストは、〜1111In/NPを有する非標的化製剤で得られたシグナルと差はなかった(p>0.05)(データ示さず)。
【0165】
標的化核シグナルの持続性を評価するため、別のウサギ8匹の集団で18時間後(〜3血中半減期)及び48時間後(〜8血中半減期)に検討を行った。図3は、等量の放射活性用量の111Inナノ粒子が投与され、筋肉細胞のバックグラウンド数が同等であった2匹のウサギ(1匹は標的化:図3b、1匹は対照:図3a)の18時間後の画像を示す。インテグリン標的化製剤のコントラストは、非標的化薬に比べて高かった。111Inαβ−ナノ粒子を投与された動物では、腫瘍部位での平均%注入用量は、非標的化対照物質を投与された動物において残存していたもの(0.10%ID±0.04%ID/kg)より4倍多かった(p<0.05、0.48%ID±0.04%ID)。注射48時間後では、腫瘍と筋肉からのシグナルは著しく低下し、グループ間で識別できなかった(p>0.05)。
【0166】
αβ−インテグリン発現の組織学的解析によって、αβ−インテグリンの発現は、腫瘍と結合組織内の血管構造、並びに血管外膜の間の組織界面に沿って非対称に起こることが明らかになった。αβ−インテグリンの発現の亢進は、腫瘍被膜を越えて拡がり、筋膜に付随する近傍の血管構造中にも認められた(図4a〜c)。αβ−インテグリンの血管発現は、成熟精巣上体(組織学的に確認された)及び大腿骨及び脛骨の骨端軟骨領域をはじめとする他の臓器でも検出された。αβ−インテグリンを豊富に有するマクロファージはRAM−11染色で確認され、腫瘍中心部に密集して分布していた(図5a及びb)が、腫瘍周囲の結合組織ではまばらであった。
【0167】
αβ−標的化ローダミンナノ粒子と、血管内皮マーカーであるFITC−レクチンの静脈経路での同時投与によって、二つのマーカーの密接な空間的相関が明らかになった。図7A〜Cに示すように、FITC−レクチンは新生血管を含む脈管系全体に認められた。ローダミンナノ粒子は、小血管内に主に分布し、FITC−レクチンと共局在していた。
【実施例5】
【0168】
(αβ標的化蛍光ナノ粒子の調製)
カプロイル−ホスファチジルエタノールアミンに結合したAlexaFluor488を界面活性剤に0.5モル%の割合で組み込むことで蛍光ナノ粒子を調製した。7.8μモルのAlexaFluor488カルボキシルスクシンイミジルエステル(Molecular Probes)を、1.4mlのジメチルホルムアミドに溶解し、それと10μモルのカプロイルアミンホスファチジルエタノールアミン(Avanti Polar Lipids)を200μlのクロロホルム中で37℃にて1時間混合することで、AlexaFluor488−カプロイル−ホスファチジルエタノールアミンを合成した。200μlのクロロホルムを添加した後、反応温度を50℃に上昇させ、一晩継続した。
【0169】
複合体産物をモニタリングし、未結合のAlexaFluor色素から精製するために、炭化水素(C18)が結合したシリカゲルの逆相と、20:100:200の割合の0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.6):メタノール:水で構成される移動相を使用してTLCを実施した。赤色蛍光の脂質を起始部で回収し、クロロホルム:メタノール(3;1)で抽出し、使用するまで蒸発乾固した。
【0170】
腫瘍内及び腫瘍周囲のナノ粒子の顕微鏡画像上の局在を、AlexaFluor488シアン色素が界面活性剤中に封入されたαβ−標的化ナノ粒子を投与した(0.1ml/kg)別の集団のVx−2移植ウサギ(n=2)において検討した。新生血管内の受動的集積を最小に抑えるために、10倍過剰量の非標的化、非標識ナノ粒子と共に蛍光ナノ粒子を投与し、1時間循環させた。動物を殺し、腫瘍を取り出してリン酸緩衝液で繰り返しすすいだ後、OCT剤中で凍結した。核を識別するために腫瘍の凍結切片(4μm)をDAPIで対比染色した。他の細胞成分に対する造影剤の分布を評価するため、緑色のAlexaFluorナノ粒子とDAPI標識核の顕微鏡写真を重ね合わせた。マクロファージの腫瘍内分布を明らかにするために隣接切片をRAM−11(Dako,Inc.)で染色した。
【0171】
凍結腫瘍組織を蛍光顕微鏡で観察すると、AlexaFluor粒子が近傍の筋肉との間の被膜界面内に存在しており(図6a)、これはαβ−インテグリン陽性血管の分布と一致していた(図6b)。αβ−標的化AlexaFluor488ナノ粒子で前処理を行ったウサギにおけるαβ−インテグリン陽性血管のLM609による免疫組織学的共染色は、結合した粒子による受容体によって競合的に阻害された。αβ−標的化AlexaFluor488ナノ粒子の分布と、RAM−11で染色されたマクロファージとの関連性はなかった。
【0172】
要約すると、αβ−標的化111Inナノ粒子を開発し、発生期の腫瘍における血管形成に対する高感度の指標としての使用について検討を行った。腫瘍の新生血管は標的化ナノ粒子を使用して迅速に特定されたが、受動的に取り込まれたナノ粒子が血液プール中で存在し続けウォッシュアウト時間が長かったため、クリアランスが起こるのが一晩遅れた。この結果は、in vivoでの血管形成の検出にαβ−標的化111Inナノ粒子が臨床的に確実かつ迅速な指標をもたらす可能性を示唆するものであり、これは腫瘍の早期発見及び治療の一助となるかもしれない。
【0173】
従って、腫瘍の新生血管内の放射性標識ナノ粒子からの低解像度シグナルを、潜在的な関心領域を迅速に特定するために、またMR又はCTイメージングのような高解像度の二次イメージングの指標とするために使用することが可能である。更に、目的部位の位置を特定するのに最小用量の粒子を単独で使用し、その後、非造影イメージング、又はH及び/又は19Fのそれぞれについて、常磁性標識した、又はしないαβナノ粒子を使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】図1Aは、薬物動態プロファイルであり、〜10111In/NPを有するαβ−標的化111Inナノ粒子(NP)の分布と血流からのクリアランスを示す。1匹の動物について、最初の2時間の血液中の%注入用量(ID)対注射後の時間を示している。各動物から得られたデータに対して2−コンパートメント2指数関数モデルを適用した。β脱離の消失半減期、分布容積、及びクリアランスの推定値を算出した後で、平均±標準偏差で表した(n=6)。図1Bは、ナノ粒子エマルションを、0.25ml/kg、0.5ml/kg、及び1.0ml/kgの用量(n=3/用量)で注射したウサギにおける、パーフルオロカーボンナノ粒子の生体内分布を示す。組織内パーフルオロカーボン量をガスクロマトグラフィーで直接測定した後、結果を%ID/g組織±標準偏差として表す。
【図2】図2A、B、及びCは、腫瘍対筋肉のシグナル比を示す。Vx−2を移植したウサギにおいて、22MBq/kg(静脈内投与)のA)〜10111In/NPのαβ−標的化111Inナノ粒子(NP)対αβ−標的化未標識(競合);B)〜10111In/NPのαβ−標的化又は非標的化111Inナノ粒子;C)〜10111In/NPのαβ−標的化111Inナノ粒子対〜1111In/NPを投与した後に、造影剤注射直後、及び、15分毎に連続して腫瘍対筋肉のシグナル比を測定した。表示されている値は、2時間の平均±SEMを示し;*はp<0.05を表す。
【図3】図3A及びBは、〜12日前にVx−2腫瘍を移植したウサギに、22MBq/kg(静脈内投与)の〜10111In/NPを有する非標的化(A)又はαβ−標的化(B)111Inナノ粒子(NP)を投与後、18時間の111Inプラナー画像(15分スキャン、マトリックスは128×128)を示す。
【図4】図4Aは、αβ−インテグリンで染色した筋肉に隣接するVx−2腺癌の顕微鏡画像(4倍)を示し、介在する結合組織内に濃い茶色(紫)の筋(白い矢印)として認められる。図4B及びCは、最初の画像で特定されたαβ−インテグリン陽性新生血管の、比較的まばらな領域(B)と密集した領域(C)の高倍率画像(20倍)である。
【図5】図5Aは、マクロファージ特異的なバイオマーカーであるRAM11で染色したVx−2腺癌の顕微鏡画像(4倍)を示し、腫瘍の中心部では散在性の濃い茶色(紫)の集積として認められるが、周囲の被膜にはあまり認められない。図5Bは、Aの拡大視野であり、腫瘍の中心部におけるマクロファージの分布(白い矢印)が明らかである。
【図6】図6Aは、Vx−2腺癌と被膜の光学顕微鏡画像(4倍)を示す。中心部に向かって広がる壊死と、腫瘍の周辺部で細胞増殖が起きている。図6Bは、Aで示した腫瘍の被膜領域の蛍光顕微鏡画像(20倍)を示す。被膜内のαβ−インテグリン標的化AlexaFluor488ナノ粒子を保持する血管が緑のシグナルとして認められる。青のDAPI染色は、結合組織内の細胞核を表す。
【図7】図7A〜Cは、αβ−インテグリン標的化ローダミンナノ粒子(B)及びFITC−レクチン(A)の蛍光顕微鏡画像、並びに、腫瘍被膜領域(C)から得られたマージ画像を示す。(C)に示すように、αβ−インテグリン標的化ローダミンナノ粒子及びFITC−レクチンは空間的に共局在している。ローダミンナノ粒子は、腫瘍又は被膜の血管外領域では認められなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高解像度イメージング法であって、
a)標的化低解像度造影剤と、前記低解像度造影剤と類似する標的を有する標的化高解像度造影剤を対象に投与し、各造影剤を標的組織内に集積させること、
b)低解像度イメージング法を使用して前記低解像度造影剤の集積部位を特定し、前記標的組織を特定すること、
c)高解像度イメージング法を使用して前記高解像度造影剤の集積部位を特定し、前記標的組織の高解像度画像を取得することにより、前記低解像度造影剤を単独で使用した場合に得られる画像よりも解像度の高い画像を得ること、を含む方法。
【請求項2】
前記低解像度造影剤及び前記高解像度造影剤が、低解像度モダリティ及び高解像度モダリティを使用して検出可能な同一の物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記低解像度造影剤と共にデコイ粒子が投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記低解像度造影剤及び/又は高解像度造影剤がナノ粒子に封入されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記低解像度造影剤及び高解像度造影剤が同一のナノ粒子に封入されている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ナノ粒子がエマルション中に含有される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記ナノ粒子を包含するエマルションが、脂質コーティングで覆われた液体ハロカーボンコアを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記低解像度造影剤及び/又は高解像度造影剤が、標的特異的リガンドにより標的化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記標的特異的リガンドが、抗体、抗体断片、ペプチド、アプタマー、ペプチド模倣薬、薬剤、又は、ホルモンである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
標的化造影剤を標的組織に送達する方法であって、
a)標的組織を含む対象に低解像度標的化造影剤を投与すること、
b)前記対象に高解像度標的化造影剤を投与すること、ここで、前記高解像度造影剤は前記低解像度造影剤と類似する標的を有する、
c)前記造影剤を前記標的組織内に集積させることにより、標的化造影剤を前記標的組織に送達すること、を含む方法。
【請求項11】
前記低解像度造影剤及び/又は高解像度造影剤が、ナノ粒子に封入されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記低解像度造影剤及び高解像度造影剤が、同一のナノ粒子に封入されている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ナノ粒子がエマルション中に含有されている、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
ナノ粒子を包含するエマルションが、脂質コーティングで覆われた液体ハロカーボンコアを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記低解像度造影剤に結合した前記標的組織の画像を取得することを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記標的組織の高解像度画像を取得することを更に含む、請求項15の方法。
【請求項17】
前記標的組織が、高レベルのαβ−インテグリンによって特徴付けられ、かつ、前記低解像度造影剤及び/又は高解像度造影剤がαβ−インテグリンに対するリガンドと結合している、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
標的部分を発現する組織に標的化されたナノ粒子のエマルションを調製するためのキットであって、
前記標的部分に特異的なリガンド、及び、低解像度造影剤及び/又は高解像度造影剤と結合するための結合部分を含むナノ粒子を包含する少なくとも1つの容器、
前記低解像度造影剤を含む少なくとも1つの容器、並びに、
前記高解像度造影剤を含む少なくとも1つの容器を含むキット。
【請求項19】
前記ナノ粒子が、脂質/界面活性剤のコーティングを更に含むハロカーボンベースのナノ粒子である、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
前記標的化部分が、αβである、請求項18に記載のキット。
【請求項21】
前記高解像度造影剤が、少なくとも1つのMRI用造影剤を含む、請求項18に記載のキット。
【請求項22】
前記低解像度造影剤が99mTcを含む、請求項18に記載のキット。
【請求項23】
標的部分を発現する組織を標的とするナノ粒子のエマルションを調製するためのキットであって、
前記標的部分に特異的なリガンドに結合するための結合部分を含むナノ粒子を含む少なくとも1つの容器、
前記標的部分に特異的なリガンドを含む少なくとも1つの容器、
低解像度造影剤を含む少なくとも1つの容器、及び、
高解像度造影剤を含む少なくとも1つの容器を含むキット。
【請求項24】
高解像度イメージングのためのキットであって、
標的化低解像度造影剤を含む少なくとも1つの容器、
高解像度造影剤を含む少なくとも1つの容器、及び、
使用説明手段を含むキット。
【請求項25】
前記造影剤のうち1つ又は両方がαβに標的化されている、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
前記高解像度造影剤が、MRI剤、CT用イメージング剤、光学用イメージング剤、超音波用イメージング剤、パラCEST用イメージング剤、及び、これらの組み合わせからなる群から選択される、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
標的の磁気共鳴画像を得るための方法であって、
高解像度造影剤が、MRI剤を含み、
請求項25に記載の組成物を前記標的に投与すること、及び、
前記標的の磁気共鳴画像を得ることを含む方法。
【請求項28】
前記標的が、哺乳動物である対象に含まれている、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記造影剤のうち1つ又は両方はナノ粒子を含む、請求項25に記載のキット。
【請求項30】
高解像度イメージング用のキットであって、
標的部分に特異的なリガンドを含むハロカーボンベースのナノ粒子を含む少なくとも1つの容器、ここで、前記ナノ粒子は高解像度造影剤と結合している、及び、
使用説明手段を含むキット。
【請求項31】
前記ハロカーボンベースのナノ粒子が、PFOBを含む、請求項30に記載のキット。
【請求項32】
標的組織の高解像度画像を得るための方法であって、
高解像度造影剤が、MRI用造影剤を含み、
請求項31に記載の組成物を対象に投与すること、
フッ素MRIを使用して標的組織内における低解像度造影剤の集積部位を特定し、標的組織を特定すること、及び、
前記標的組織の磁気共鳴画像を得て、これにより前記標的組織の高解像度画像を生成することを含む方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−535126(P2009−535126A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507997(P2009−507997)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/067701
【国際公開番号】WO2007/127958
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
【出願人】(506274187)
【Fターム(参考)】