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標的遺伝子の発現を抑制する組成物
説明

標的遺伝子の発現を抑制する組成物

【課題】 本発明は、標的遺伝子の発現を抑制するための組成物等を提供することを目的とする。
【解決手段】リード粒子と標的遺伝子のmRNAの連続する15〜30塩基の配列および該配列と相補的な配列を含むRNAを構成成分とする複合粒子および該複合粒子を被覆する脂質膜から構成され、該脂質膜の構成成分が可溶な極性有機溶媒を含む液中に、該脂質膜の構成成分が分散可能で、該複合粒子も分散可能な濃度で該極性有機溶媒を含む液が存在する、該RNAを封入したリポソームを含有する組成物等を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的遺伝子の発現を抑制するための組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
標的遺伝子の発現を抑制する方法として、例えばRNA干渉(RNA interference、以下、RNAiとよぶ)を利用した方法等が知られており、具体的には、線虫において標的とする遺伝子と同一の配列を有する二本鎖RNAを導入することにより、該標的遺伝子の発現が特異的に抑制される現象が報告されている[“ネイチャー(Nature)”,1998年,第391巻,第6669号,p.806-811参照]。また、ショウジョウバエにおいて長い二本鎖RNAの代わりに、21〜23塩基の長さの二本鎖RNAを導入することによっても、標的遺伝子の発現が抑制されることが見出され、これはshort interfering RNA(siRNA)と名づけられている(国際公開第01/75164号パンフレット参照)。
【0003】
哺乳類細胞では、長い二本鎖RNAを導入した場合、ウイルス防御機構によりアポトーシスが起こり、特定の遺伝子の発現を抑制することができなかったが、20〜29塩基のsiRNAであれば、このような反応が起こらず、特定の遺伝子の発現を抑制できることが見出された。中でも21〜25塩基のものの発現抑制効果が高い[“ネイチャー(Nature)”,2001年,第411巻,第6836号,p.494-498、“ネイチャー・レビューズ・ジェネティクス(Nature Reviews Genetics)”,2002年,第3巻,第10号,p.737-747、“モレキュラー・セル(Molecular Cell)”,(米国),2002年,第10巻,第3号,p.549-561、“ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)”,(米国),2002年,第20巻,第5号,p.497-500]。また、二本鎖RNAでなく、分子内ハイブリダイズにより、ヘアピン構造を有する一本鎖RNAも、siRNAと同様にRNAiを示すことが報告されている[“プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステーツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)”, 2002年, 第99巻, 第9号, p.6047-6052参照]。
【0004】
RNAiについては、in vivo試験においても多く検証されており、50塩基対以下のsiRNAを用いた胎児の動物での効果(特許文献1参照)および成体マウスでの効果(特許文献2参照)が報告されている。また、siRNAをマウス胎児に静脈内投与した場合に、腎臓、脾臓、肺、膵臓および肝臓の各臓器で特定の遺伝子の発現抑制効果が確認されている(非特許文献1参照)。さらに、脳細胞においてもsiRNAを直接投与することで特定の遺伝子が発現抑制されることが報告されている(非特許文献2参照)。
【0005】
特許文献1、非特許文献1および2では、局所投与や、ハイドロダイナミック法と呼ばれる大量のsiRNA溶液を一気に注入する方法による全身投与によって、in vivoでのsiRNAの投与が行われている。siRNAは血中では不安定であり、血中での分解を避けるために、このような投与方法が選択されているが、局所投与では、投与した近傍にしかsiRNAを送達できないため、一般に発現の抑制効率は極めて低く、一方、ハイドロダイナミック法では、一般的に標的組織は肝臓に限定される。
【0006】
すなわち、標的遺伝子の発現を抑制する目的において、全身投与によって該標的遺伝子の発現を抑制するRNAを標的組織に効率よく送達する方法の開発が求められている。
【0007】
一方、核酸の細胞内への送達手段として、カチオニックリポソームやカチオニックポリマーを用いる方法が知られている。しかし、該方法では、核酸を含有するカチオニックリポソームやカチオニックポリマーを静脈内に投与後、血中から速やかに核酸が除去されてしまい、標的組織が肝臓や肺以外の場合、例えば腫瘍部位等の場合には核酸を標的組織に送達することができず、十分な作用の発現を可能とするに至っていない。そこで、核酸が血中で速やかに除去されるという問題点を解決した核酸封入リポソーム(リポソーム内に核酸を封入したリポソーム)が報告されている(特許文献3〜5および非特許文献3参照)。特許文献3では、核酸等を含有するリポソームの製造方法として、例えば、カチオン性脂質をクロロホルムに予め溶解し、次いでオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)の水溶液とメタノールを加え混合後、遠心分離することでクロロホルム層にカチオン性脂質/ODNの複合体を移行させ、さらにクロロホルム層を取り出し、これにポリエチレングリコール化リン脂質と中性の脂質と水を加えて油中水型(W/O)エマルジョンを形成し、逆相蒸発法で処理してODN内包リポソームを製造する方法が報告され、特許文献4および非特許文献3では、ODNを、pH3.8のクエン酸水溶液に溶解し、脂質(エタノール中)を加え、エタノール濃度を20v/v%まで下げてODN内包リポソームを調製し、サイジングろ過し、透析によって、過剰のエタノールを除去した後、試料をさらにpH7.5にて透析してリポソーム表面に付着したODNを除去してODN内包リポソームを製造する方法が報告され、それぞれ核酸等の有効成分を封入したリポソームを製造している。
【0008】
これらに対して特許文献5では、液体中で微粒子を脂質膜で被覆する方法で核酸等の有効成分を封入したリポソームを製造することが報告されている。該方法においては、微粒子が分散し、かつ脂質が溶解した極性有機溶媒含有水溶液中の極性有機溶媒の割合を減少させることによって、微粒子が脂質膜で被覆されており、液体中において被覆が行われ、例えば静脈注射用微粒子等に好適な大きさの脂質膜で被覆された微粒子(被覆微粒子)が、すぐれた効率で製造されており、また、特許文献5では微粒子の例として例えば水溶性薬物とカチオン性脂質からなる静電的相互作用により形成される複合体が例示されている。複合粒子を被覆した被覆微粒子の粒子径は、被覆される複合粒子に応じて異なるが、ODN-脂質複合体を被覆して得られた被覆微粒子は、粒子径が小さく、注射剤として使用可能であること、該被覆微粒子は、静脈内に投与した場合、高い血中滞留性を示し、腫瘍組織に多く集積したことが報告されている。
【特許文献1】米国公開第02/132788号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/10180号パンフレット
【特許文献3】特表2002-508765号公報
【特許文献4】特表2002-501511号公報
【特許文献5】国際公開第02/28367号パンフレット
【非特許文献1】“ネイチャー・ジェネティクス(Nature Genetics)”, 2002年, 第32巻, 第1号, p.107-108
【非特許文献2】“ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)”, 2002年, 第20巻, 第10号, p.1006-1010
【非特許文献3】“バイオキミカ・エ・バイオフィジカ・アクタ(Biochimica et Biophysica Acta)”, 2001年, 第1510巻, p.152-166
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、標的遺伝子の発現を抑制するための組成物等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の(1)〜(37)に関する。
(1) 標的遺伝子のmRNAの連続する15〜30塩基の配列および該配列と相補的な配列を含むRNAを封入したリポソームを含有し、該リポソームが標的遺伝子の発現部位を含む組織または臓器に到達するリポソームである、組成物。
(2) リポソームが、静脈内投与可能な大きさのリポソームである、前記(1)記載の組成物。
(3) RNAが、RNA干渉(RNAi)を利用した該標的遺伝子の発現抑制作用を有するRNAである、前記(1)または(2)記載の組成物。
(4) 標的遺伝子が、腫瘍や炎症に関連する遺伝子である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(5) 標的遺伝子が、血管新生に関連する遺伝子である、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の組成物。
(6) mRNAがKLF5 mRNAである、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(7) mRNAがヒトまたはマウスのKLF5 mRNAである、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(8) RNAが、KLF5 mRNAの連続する15〜30塩基の配列の鎖および該配列と相補的な配列の鎖からなる二本鎖RNAのそれぞれの鎖の3’端にヌクレオチドの1種または複数種のあわせて1〜6個が同一または異なって付加した二本鎖RNAである、前記(6)または(7)記載の組成物。
(9) RNAが、KLF5 mRNAの連続する15〜30塩基の配列からなるRNAおよび該配列と相補的な配列からなるRNAが、スペーサーオリゴヌクレオチドでつながれ、3’端にヌクレオチドの1種または複数種のあわせて1〜6個が付加した、ヘアピン構造を有するRNAである、前記(6)または(7)記載の組成物。
(10) RNAが、以下の(a)〜(c)からなる群から選ばれるRNAである、前記(6)または(7)記載の組成物。
(a)配列番号2〜16のいずれか1つの配列の鎖および該配列と相補的な配列の鎖からなる二本鎖RNAのそれぞれの鎖の3’端にウリジル酸およびデオキシチミジル酸のいずれか1種または2種あわせて2〜4個が同一または異なって付加した二本鎖RNA
(b)配列番号2〜16のいずれか1つの配列からなるRNAおよび該配列と相補的な配列からなるRNAが2個のウリジル酸またはデオキシチミジル酸を5’端に有するスペーサーオリゴヌクレオチドでつながれ、3’端にウリジル酸およびデオキシチミジル酸のいずれか1種または2種あわせて2〜4個が付加した、ヘアピン構造を有するRNA
(c)配列番号2〜11のいずれか1つの配列の鎖および該配列と相補的な配列の鎖からなる二本鎖RNAのそれぞれの鎖の3’端にウリジル酸2個が付加した二本鎖RNA
(11) mRNAがbcl2 mRNAである、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(12) RNAを封入したリポソームが、リード粒子と該RNAを構成成分とする複合粒子および該複合粒子を被覆する脂質膜から構成され、
該脂質膜の構成成分が可溶な極性有機溶媒を含む液の中に、該脂質膜の構成成分が分散可能で、該複合粒子も分散可能な濃度で該極性有機溶媒を含む液が存在する、リポソームである、前記(1)〜(11)に記載の組成物。
(13) 極性有機溶媒がアルコールである、前記(12)記載の組成物。
(14) 極性有機溶媒がエタノールである、前記(12)記載の組成物。
(15) リード粒子が、カチオン性脂質を含むリード粒子であり、脂質膜が、中性脂質および水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体を構成成分とする、前記(12)〜(14)のいずれかに記載の組成物。
(16) RNAを封入したリポソームが、カチオン性脂質を含むリード粒子と前記RNAを構成成分とする複合粒子および該複合粒子を被覆する脂質膜から構成され、
該脂質膜が、中性脂質および水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体を構成成分とするリポソームである、前記(1)〜(11)のいずれかに記載の組成物。
(17) カチオン性脂質がN-[1-(2,3-ジオレオイルプロピル)]-N,N,N-トリメチル塩化アンモニウム、N-[1-(2,3-ジオレオイルプロピル)]-N,N-ジメチルアミン、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシプロピル)]-N,N,N-トリメチル塩化アンモニウム、N-[1-(2,3-ジテトラデシルオキシプロピル)]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチル臭化アンモニウムおよび3β-[N-(N',N'-ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロールから選ばれる一つ以上である、前記(15)または(16)記載の組成物。
(18) 水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体が、ポリエチレングリコール-ホスファチジルエタノールアミンである、前記(15)〜(17)のいずれかに記載の組成物。
(19) 中性脂質が卵黄ホスファチジルコリンである、前記(15)〜(18)のいずれかに記載の組成物。
(20) リード粒子と標的遺伝子のmRNAの連続する15〜30塩基の配列および該配列と相補的な配列を含むRNAを構成成分とする複合粒子および該複合粒子を被覆する脂質膜から構成され、
該脂質膜の構成成分が可溶な極性有機溶媒を含む液の中に、該脂質膜の構成成分が分散可能で、該複合粒子も分散可能な濃度で該極性有機溶媒を含む液が存在する、該RNAを封入したリポソーム。
(21) 極性有機溶媒がアルコールである、前記(20)記載のリポソーム。
(22) 極性有機溶媒がエタノールである、前記(20)記載のリポソーム。
(23) リード粒子が、カチオン性脂質を含むリード粒子であり、脂質膜が、中性脂質および水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体を構成成分とする、前記(20)〜(22)のいずれかに記載のリポソーム。
(24) カチオン性脂質を含むリード粒子と標的遺伝子のmRNAの連続する15〜30塩基の配列および該配列と相補的な配列を含むRNAとを構成成分とする複合粒子、および該複合粒子を被覆する脂質膜から構成され、
該脂質膜が、中性脂質および水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体を構成成分とする、該RNAを封入したリポソーム。
(25) カチオン性脂質がN-[1-(2,3-ジオレオイルプロピル)]-N,N,N-トリメチル塩化アンモニウム、N-[1-(2,3-ジオレオイルプロピル)]-N,N-ジメチルアミン、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシプロピル)]-N,N,N-トリメチル塩化アンモニウム、N-[1-(2,3-ジテトラデシルオキシプロピル)]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチル臭化アンモニウムおよび3β-[N-(N',N'-ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロールから選ばれる一つ以上である、前記(23)または(24)記載のリポソーム。
(26) 水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体が、ポリエチレングリコール-ホスファチジルエタノールアミンである、前記(20)〜(25)のいずれかに記載のリポソーム。
(27) 中性脂質が卵黄ホスファチジルコリンである、前記(20)〜(26)のいずれかに記載のリポソーム。
(28) RNAが、RNA干渉(RNAi)を利用した該標的遺伝子の発現抑制作用を有するRNAである、前記(20)〜(27)のいずれかに記載のリポソーム。
(29) 標的遺伝子が、腫瘍や炎症に関連する遺伝子である、前記(20)〜(28)のいずれかに記載のリポソーム。
(30) 標的遺伝子が、血管新生に関係する遺伝子である、前記(20)〜(28)のいずれかに記載のリポソーム。
(31) mRNAがKLF5mRNAである、前記(20)〜(28)のいずれかに記載のリポソーム。
(32) mRNAがヒトまたはマウスのKLF5 mRNAである、前記(20)〜(28)のいずれかに記載のリポソーム。
(33) RNAが、KLF5 mRNAの連続する15〜30塩基の配列の鎖および該配列と相補的な配列の鎖からなる二本鎖RNAのそれぞれの鎖の3’端にヌクレオチドの1種または複数種あわせて1〜6個が同一または異なって付加した二本鎖RNAである、前記(31)または(32)記載のリポソーム。
(34) RNAが、KLF5 mRNAの連続する15〜30塩基の配列からなるRNAおよび該配列と相補的な配列からなるRNAが、スペーサーオリゴヌクレオチドでつながれ、3’端にヌクレオチドの1種または複数種あわせて1〜6個が付加した、ヘアピン構造を有するRNAである、前記(31)または(32)記載のリポソーム。
(35) RNAが、以下の(a)〜(c)からなる群から選ばれるRNAである、前記(31)または(32)記載のリポソーム。
(a)配列番号2〜16のいずれか1つの配列の鎖および該配列と相補的な配列の鎖からなる二本鎖RNAのそれぞれの鎖の3’端にウリジル酸およびデオキシチミジル酸のいずれか1種または2種あわせて2〜4個が同一または異なって付加した二本鎖RNA
(b)配列番号2〜16のいずれか1つの配列からなるRNAおよび該配列と相補的な配列からなるRNAが2個のウリジル酸またはデオキシチミジル酸を5’端に有するスペーサーオリゴヌクレオチドでつながれ、3’端にウリジル酸およびデオキシチミジル酸のいずれか1種または2種あわせて2〜4個が付加した、ヘアピン構造を有するRNA
(c)配列番号2〜11のいずれか1つの配列の鎖および該配列と相補的な配列の鎖からなる二本鎖RNAのそれぞれの鎖の3’端にウリジル酸2個が付加した二本鎖RNA
(36) mRNAがbcl2 mRNAである、前記(20)〜(28)のいずれかに記載のリポソーム。
(37) 前記(20)〜(36)のいずれかに記載のリポソームを含有する組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の標的遺伝子のmRNAの連続する15〜30塩基の配列および該配列と相補的な配列を含むRNAを封入したリポソームを含有する組成物を、ほ乳類等に投与することにより、該標的遺伝子の発現を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】マウスに植え付けた腫瘍の増殖の経時変化を示す。横軸は時間(日)、縦軸は腫瘍の大きさ(mm3)を表わしている。●は無処理群、○は実施例1で得られた製剤の投与群を表わしている。
【図2】担癌マウスの尾静脈から、50μgのsiRNAを含む製剤(実施例1;図中○、比較例1;図中●)、50μgのsiRNAを含むsiRNA溶液(比較例2;図中□、比較例3;図中■)および生理食塩水(図中△)を投与したときの腫瘍増殖曲線である。
【図3】腫瘍組織切片中に見られたCD31陽性構造をカウントした結果である。Salineは生理的食塩水を、Sc-salineは比較例3を、sc-WLは比較例1を、KLF5-salineは比較例2を、KLF5-WLは実施例1を投与したマウスの腫瘍でのCD31陽性構造の数を示している。
【図4】腫瘍から抽出したmRNAの定量的PCRの分析結果である。Salineは生理的食塩水を、Sc-salineは比較例3を、sc-WLは比較例1を、KLF5-salineは比較例2を、KLF5-WLは実施例1を示している。
【図5】腫瘍から抽出したKLF5の定量結果である。Salineは生理的食塩水を、Sc-salineは比較例3を、sc-WLは比較例1を、KLF5-salineは比較例2を、KLF5-WLは実施例1を示している。
【図6】腫瘍近傍に直接siRNAを投与したときの腫瘍増殖曲線である。△は生理的食塩水投与を、□はscramble-siRNA投与を、○はKLF5-siRNA投与をそれぞれ示す。
【図7】マウスに植え付けたDU145腫瘍の増殖の経時変化を示す。横軸は時間(日)、縦軸は腫瘍の大きさ(mm3)を表わしている。●は無処理群、○は実施例3で得られた製剤の投与群を表わしている。
【図8】マウスに植え付けたPC-3腫瘍の増殖の経時変化を示す。横軸は時間(日)、縦軸は腫瘍の大きさ(mm3)を表わしている。●は無処理群、○は実施例3、□は比較例4、■は比較例5(naked)で得られた製剤の投与群を表わしている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明における標的遺伝子としては、ほ乳類においてmRNAを産生して発現する遺伝子であれば特に限定されないが、例えばクルッペル様因子(Kruppel-like factor、以下KLFと略す)遺伝子があげられ、好ましくはKLF5遺伝子があげられる。KLFファミリーは、C末端のジンク・フィンガー(zinc finger)モチーフを特徴とする、転写因子のファミリーであり、KLF1、KLF2、KLF3、KLF4、KLF5、KLF6、KLF7、KLF8、KLF9、KLF10、KLF11、KLF12、KLF13、KLF14、KLF15、KLF16等が知られている。哺乳類において、KLFファミリーは、様々な組織や細胞、例えば赤血球、血管内皮細胞、平滑筋、皮膚、リンパ球等の分化に重要であること、また癌、心血管疾患、肝硬変、腎疾患、免疫疾患等の各種疾患の病態形成に重要な役割を果たしていることが報告されている[ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(The Journal of Biological Chemistry),2001年,第276巻,第37号,p.34355-34358、ジェノム・バイオロジー(Genome Biology),2003年,第4巻,第2号,p.206]。
【0014】
KLFファミリーのうちのKLF5は、BTEB2(basic transcriptional element binding protein 2)あるいはIKLF(intestinal-enriched Kruppel-like factor)ともよばれる。血管平滑筋におけるKLF5の発現は、発生段階で制御を受けており、胎児の血管平滑筋では、高い発現を示すのに対し、正常な成人の血管平滑筋では発現が見られなくなる。また、バルーンカテーテルによる削剥後に新生した血管内膜の平滑筋では、KLF5の高い発現がみられ、動脈硬化や再狭窄の病変部の平滑筋でもKLF5の発現がみられる[サーキュレーション(Circulation),2000年,第102巻,第20号,p.2528-2534]。 また、標的遺伝子として、例えば、B-CELL CLL/LYMPHOMA(以下bclと略す)遺伝子があげられ、好ましくはbcl2遺伝子があげらる。
【0015】
本発明におけるRNAとしては、前記標的遺伝子のmRNAの連続する15〜30塩基、好ましくは17〜25塩基、より好ましくは19〜23塩基の配列および該配列と相補的な配列を含んでいるRNAがあげられ、核酸の構造中のリン酸部、エステル部等に含まれる酸素原子等が、例えば硫黄原子等の他の原子に置換された誘導体を包含する。また、本発明におけるRNAとしては、好ましくはRNA干渉(RNAi)を利用した該標的遺伝子の発現抑制作用を有するRNAがあげられ、ここではKLF5遺伝子の発現を抑制するRNAを例にとって、RNA干渉(RNAi)を利用した標的遺伝子の発現を抑制するRNAについて説明する。他の遺伝子の場合も同様の構造を有し、また同様の操作で得ることができる。
【0016】
KLF5遺伝子の発現を抑制するRNAは、KLF5 mRNAの連続する15〜30塩基、好ましくは17〜25塩基、より好ましくは19〜23塩基の配列(以下配列Xとする)および該配列と相補的な配列(以下、相補配列X’とする)を含んでいる。RNAとしては、(A)配列Xの鎖(センス鎖)および相補配列X’の鎖(アンチセンス鎖)からなる二本鎖RNAのそれぞれの鎖の3’端に1〜6個、好ましくは2〜4個のヌクレオチドが同一または異なって付加した二本鎖RNA(以下、このような構造のRNAをsiRNAとよぶ)であってKLF5遺伝子の発現を抑制するRNA、(B)配列XからなるRNAおよび相補配列X’からなるRNAが、スペーサーオリゴヌクレオチドでつながれ、3’端に1〜6個、好ましくは2〜4個のヌクレオチドが付加した、ヘアピン構造を有するRNA(以下、このようなRNAをshRNAとよぶ)等があげられる。これらのRNAに付加したヌクレオチドの塩基は、グアニン、アデニン、シトシン、チミンおよびウラシルのいずれか1種または複数種でもよく、またRNAでもDNAでもよいが、ウリジル酸(U)およびデオキシチミジル酸(dT)のいずれか1種または2種が好ましい。またスペーサーオリゴヌクレオチドとしては6〜12塩基のRNAが好ましく、その5’端の配列は2個のUであるのが好ましい。スペーサーオリゴヌクレオチドの例として、UUCAAGAGAの配列からなるRNAがあげられる。スペーサーオリゴヌクレオチドによってつながれる2つのRNAの順番はどちらが5’側になってもよい。配列Xは、KLF5 mRNAの連続する15〜30塩基の配列、好ましくは17〜25塩基、より好ましくは19〜23塩基の配列であれば、いずれの配列でもよいが、以下の(I)に記載の方法で設計した19塩基の配列が最も好ましい。
【0017】
上記の構造のRNAは、配列XによってKLF5遺伝子の発現の抑制の強さが異なり、抑制が弱い場合もあるので、配列Xとして複数の配列を設計(I)して、それぞれの配列XをもとにしたRNAを調製(II)し、RNAをKLF5遺伝子が発現している細胞に導入してKLF5遺伝子の発現を測定(III)し、KLF5遺伝子の発現をより強く抑制するRNAを選択することより、本発明のRNAを取得できる。
【0018】
(I)配列Xの設計
遺伝子の発現を抑制したい動物のKLF5 cDNAの塩基配列から、AAではじまる21塩基の部分配列を取り出す。取り出した配列のGC含量を計算し、GC含量が20〜80%、好ましくは30%〜70%、より好ましくは40〜60%の配列を複数個選択する。
【0019】
配列としては、好ましくは、コード領域内の配列で、開始コドンから75塩基以上下流の配列を選択する。KLF5 cDNAの塩基配列の情報は、GenBank等の塩基配列データベースから得ることができる。例えば、マウスKLF5 cDNAの配列はGenBank登録番号NM_009769(配列番号41)、ヒトKLF5 cDNAの配列はGenBank登録番号AF287272(配列番号42)で、配列情報が得られる。
選択した配列の5’末端のAAを除き、配列中のTをUに変えた19塩基の配列を配列Xとする。
【0020】
(II) RNAの調製
(I)で選択した配列Xを元に、以下のようにしてRNA(siRNA、shRNA等)を調製することができる。以下には付加するオリゴヌクレオチドとしてUおよびdTのいずれか1種または2種のあわせて2個の場合を記載するが、他のヌクレオチドの場合も同様にして調製することができる。
【0021】
(i)siRNAの場合
配列Xの3’端にUおよびdTのいずれか1種または2種あわせて2個が付加した配列からなるRNA、および相補配列X’の3’端にUおよびdTのいずれか1種または2種のあわせて2個が付加した配列からなるRNAの2本のRNAを調製する。この2本のRNAは、化学合成またはインビトロ転写により調製できる。化学合成は、DNA合成機を用いて行うことができる。またアンビオン(Ambion)社、日本バイオサービス株式会社、キアゲン(QIAGEN)社等のメーカーに化学合成を依頼することもできる。化学合成した互いに相補的な配列を含む2本のRNAをアニーリングすることにより、配列Xの鎖および相補配列X’の鎖からなる二本鎖RNAのそれぞれの鎖の3’端にUおよびdTのいずれか1種または2種あわせて2個が同一または異なって付加した二本鎖RNAを調製することができる。アニーリングは、2本のRNAを適当なバッファー中で90〜95℃に1〜5分間加熱後、45〜60分間かけて室温にまで冷却することにより行うことができる。
【0022】
インビトロ転写によるRNAの調製は、以下のようにして行うことができる。まず、T7 RNAポリメラーゼのプロモーター配列を有するDNA(T7プライマー)、相補配列X’のUがTで、その5’端には2個のAが付加し、3’端にはT7プライマーの3’端8塩基と相補的な配列が付加した配列を有するDNA(DNA1)、配列XのUがTで、その5’端には2個のAが付加し、3’端にはT7プライマーの3’端8塩基と相補的な配列が付加した配列を有するDNA(DNA2)、をそれぞれ調製する。
【0023】
T7プライマーとDNA1とをアニールさせた後、DNAポリメラーゼ反応により、二本鎖DNAにする。得られた二本鎖DNAを鋳型として、T7 RNAポリメラーゼを用いたインビトロ転写反応を行うことにより、配列Xの3’端に2個のUが付加し、5’端にはリーダー配列が付加した配列を有するRNAを合成することができる。同様にT7プライマーとDNA2とを用いて同様の反応を行うことにより、相補配列X’の3’端に2個のUが付加し、5’端にはリーダー配列が付加した配列を有するRNAを合成することができる。
【0024】
2つの反応液を混ぜて、さらにインビトロ転写反応を続けることにより、互いに相補的な配列を含む2本のRNAをアニールさせる。その後、デオキシリボヌクレアーゼおよび一本鎖RNA特異的なリボヌクレアーゼにより、鋳型の二本鎖DNAおよび各RNA鎖の5’側のリーダー配列を分解して除去する。各RNA鎖の3’端の2個のUは分解を受けずに付加したまま残る。
【0025】
以上の反応は、サイレンサーSiRNA作製キット(Silencer・siRNA Construction Kit、アンビオン社製)等のキットを用いて行うことができる。T7プライマーとアニールさせるDNAは、DNA合成機により化学合成することができる。またアンビオン社、日本バイオサービス株式会社、北海道システム・サイエンス株式会社、キアゲン社等のメーカーに化学合成を依頼することもできる。
【0026】
(ii)shRNAの場合
配列XからなるRNAおよび相補配列X’からなるRNAが、スペーサーオリゴヌクレオチドでつながれ、3’端に1〜6個、好ましくは2〜4個のヌクレオチド(前記と同義)が付加した、ヘアピン構造を有するRNAは、DNA合成機を用いた化学合成によって調製できる。
【0027】
(III)KLF5遺伝子の発現抑制
KLF5遺伝子を発現する細胞株に(II)で調製したsiRNAまたはshRNAを導入する。細胞株としては、(I)の配列Xの設計のもとにしたKLF5 cDNAと同じ動物種の細胞を用いる。KLF5遺伝子を発現する細胞株としては、平滑筋、繊維芽細胞または血管内皮細胞に由来する細胞株、例えばマウス胎児繊維芽細胞株C3H/10T1/2(ATCC番号:CCL-226)、ヒト臍帯血管内皮細胞等をあげることができる。RNAの導入は、動物細胞へのトランスフェクション用試薬、例えばポリフェクト(Polyfect)トランスフェクション試薬(キアゲン社製)、トランスメッセンジャー(TransMessenger)トランスフェクション試薬、オリゴフェクトアミン(Oligofectamine)試薬(インビトロジェン社製)、リポフェクトアミン(Lipofectamine)2000(インビトロジェン社製)等を利用して、これらの試薬とRNAを混合して複合体を形成させた後、細胞に添加することにより行うことができる。
【0028】
RNAを導入した細胞におけるKLF5遺伝子の発現は、RT-PCRにより解析することができる。RNAを導入した細胞および導入しなかった細胞から総RNAを調製し、このRNAからcDNAを合成する。合成したcDNAを鋳型にして、KLF5遺伝子に特異的なプライマーを用いたPCRを行い、KLF5 cDNAに由来する増幅産物の量を、アガロースゲル電気泳動によって定量することにより、KLF5遺伝子の発現量を測定することができる。RNAを導入しなかった細胞のKLF5遺伝子の発現量と比較して、KLF5遺伝子の発現量が減少した細胞に導入したRNAを選択する。
【0029】
例えばKLF5遺伝子の発現を抑制するRNAとしては、配列番号2〜11のいずれか1つの配列の鎖および該配列と相補的な配列の鎖からなる二本鎖RNAのそれぞれの鎖の3’端に2個のウリジル酸が付加した二本鎖RNA等をあげることができる。配列番号1〜11のいずれか1つの配列の鎖および該配列と相補的な配列の鎖からなる二本鎖RNAのそれぞれの鎖の3’端に2個のウリジル酸が付加した二本鎖RNAはマウス cDNAの配列に基づいて設計されたものであり、マウスKLF5遺伝子の発現を抑制する。このうち、配列番号4、8および10の配列はそれぞれマウスとヒトのぞれぞれのKLF5 mRNAで共通する配列であるので、配列番号4、8および10のいずれか1つの配列の鎖および該配列と相補的な配列の鎖からなる二本鎖RNAのそれぞれの鎖の3’端に2個のウリジル酸が付加した二本鎖RNAは、マウスKLF5遺伝子だけでなくヒトKLF5遺伝子の発現も抑制する。
【0030】
(I)の配列Xの設計のもとにしたある動物種AのKLF5 cDNAと、異なる動物種BのKLF5 cDNAを配列の相同性に基づいてアライメントすることにより、動物種Aで選択された配列Xと対応する動物種Bの配列Yを得ることができる。上記の方法で、動物種AのKLF5遺伝子の発現を抑制するRNAが得られた場合、RNAの配列Xおよびその相補配列X’の領域をそれぞれ配列Yとその相補配列Y’に置換したRNAは、動物種BのKLF5遺伝子を抑制すると考えられる。
【0031】
例えば、マウスKLF5 cDNAの配列に基づく配列番号2、3、7、9および11のいずれか1つの配列の鎖および該配列と相補的な配列の鎖からなる二本鎖RNAのそれぞれの鎖の3’端に2個のウリジル酸が付加した二本鎖RNAは、マウスKLF5遺伝子の発現を抑制するので、ヒト KLF5 cDNAにおいて対応する配列である配列番号12〜16のいずれか1つの配列の鎖および該配列と相補的な配列の鎖からなる二本鎖RNAのそれぞれの鎖の3’端に2個のウリジル酸が付加した二本鎖RNAは、ヒトKLF5遺伝子の発現を抑制すると考えられる。
【0032】
本発明の組成物におけるリポソーム(以下リポソームA)としては、標的遺伝子のmRNAの連続する15〜30塩基の配列および該配列と相補的な配列を含むRNAを封入したリポソームであり、該リポソームが標的遺伝子の発現部位を含む組織または臓器に到達するリポソームであれば特に限定されないが、例えばリード粒子と前記RNAから構成される複合粒子および該複合粒子を封入する脂質膜から構成されたリポソーム等があげられ、好ましくはリード粒子と該RNAを構成成分とする複合粒子および該複合粒子を被覆する脂質膜から構成され、該脂質膜の構成成分が可溶な極性有機溶媒を含む液の中に、該脂質膜の構成成分が分散可能で、該複合粒子も分散可能な濃度で該極性有機溶媒を含む液が存在する、リポソームがあげられる。また、リポソームAとしては、好ましくはカチオン性脂質を含むリード粒子と前記RNAを構成成分とする複合粒子、および該複合粒子を被覆する脂質膜から構成され、該脂質膜が、中性脂質および水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体を構成成分とするリポソームもあげられ、好ましくはリード粒子と該RNAを構成成分とする複合粒子および該複合粒子を被覆する脂質膜から構成され、該脂質膜の構成成分が中性脂質および水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体であるリポソームであり、かつ該脂質膜の構成成分が可溶な極性有機溶媒を含む液の中に、該脂質膜の構成成分が分散可能で、該複合粒子も分散可能な濃度で該極性有機溶媒を含む液が存在する、リポソームがあげられる。
【0033】
本発明におけるリード粒子とは、例えば、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子、高分子、金属コロイド、微粒子製剤等を構成成分とする微粒子のことであり、好ましくはリポソームを構成成分とする微粒子があげられる。本発明におけるリード粒子は、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子、高分子、金属コロイド、微粒子製剤等を2つ以上組み合わせた複合体を構成成分としていてもよく、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子、高分子、金属コロイド、微粒子製剤等と他の化合物(例えば糖、脂質、無機化合物等)とを組み合わせた複合体を構成成分としていてもよい。
【0034】
リード粒子の構成成分としての脂質集合体またはリポソーム(以下リポソームB)は、例えば脂質および/または界面活性剤等によって構成され、脂質としては、単純脂質、複合脂質または誘導脂質のいかなるものであってもよく、例えばリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質、スフィンゴイド、ステロール等があげられ、好ましくはリン脂質があげられる。また、脂質としては、例えば界面活性剤(後記の界面活性剤と同義)、高分子(後記の高分子と同義、具体的にはデキストラン等)、ポリオキシエチレン誘導体(具体的にはポリエチレングリコール等)等の脂質誘導体もあげられ、好ましくはポリエチレングリコール化リン脂質があげられる。界面活性剤としては、例えば非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等があげられる。
【0035】
リン脂質としては、例えばホスファチジルコリン(具体的には大豆ホスファチジルコリン、卵黄ホスファチジルコリン(EPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン等)、ホスファチジルエタノールアミン(具体的にはジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン等)、グリセロリン脂質(具体的にはホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン等)、スフィンゴリン脂質(具体的にはスフィンゴミエリン、セラミドホスホエタノールアミン、セラミドホスホグリセロール、セラミドホスホグリセロリン酸等)、グリセロホスホノ脂質、スフィンゴホスホノ脂質、天然レシチン(具体的には卵黄レシチン、大豆レシチン等)、水素添加リン脂質(具体的には水素添加ホスファチジルコリン等)等の天然または合成のリン脂質があげられる。
【0036】
グリセロ糖脂質としては、例えばスルホキシリボシルグリセリド、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド、グリコシルジグリセリド等があげられる。
スフィンゴ糖脂質としては、例えばガラクトシルセレブロシド、ラクトシルセレブロシド、ガングリオシド等があげられる。
【0037】
スフィンゴイドとしては、例えばスフィンガン、イコサスフィンガン、スフィンゴシン、それらの誘導体等があげられる。誘導体としては、例えばスフィンガン、イコサスフィンガン、スフィンゴシン等の-NH2を-NHCO(CH2)xCH3(式中、xは0〜18の整数を表し、中でも6、12または18が好ましい)に変換したもの等があげられる。
ステロールとしては、例えばコレステロール、ジヒドロコレステロール、ラノステロール、β-シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、エルゴカステロール、フコステロール、3β-[N-(N',N'-ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)等があげられる。
【0038】
その他、脂質としては、例えば、N-[1-(2,3-ジオレオイルプロピル)]-N,N,N-トリメチル塩化アンモニウム(DOTAP)、N-[1-(2,3-ジオレオイルプロピル)]-N,N-ジメチルアミン(DODAP)、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシプロピル)]-N,N,N-トリメチル塩化アンモニウム(DOTMA)、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2-(スペルミンカルボキシアミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパナミニウムトリフルオロ酢酸(DOSPA)、N-[1-(2,3-ジテトラデシルオキシプロピル)]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチル臭化アンモニウム(DMRIE)、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシプロピル)]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチル臭化アンモニウム(DORIE)等もあげられる。
【0039】
非イオン性界面活性剤としては、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(具体的にはポリソルベート80等)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(具体的にはプルロニックF68等)、ソルビタン脂肪酸(具体的にはソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート等)、ポリオキシエチレン誘導体(具体的にはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレンラウリルアルコール等)、グリセリン脂肪酸エステル等があげられる。
【0040】
アニオン性界面活性剤としては、例えばアシルサルコシン、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸塩、炭素数7〜22の脂肪酸ナトリウム等があげられる。具体的にはドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム等があげられる。
【0041】
カチオン性界面活性剤としては、例えばアルキルアミン塩、アシルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アミン誘導体等があげられる。具体的には塩化ベンザルコニウム、アシルアミノエチルジエチルアミン塩、N-アルキルポリアルキルポリアミン塩、脂肪酸ポリエチレンポリアミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、アルキルポリオキシエチレンアミン、N-アルキルアミノプロピルアミン、脂肪酸トリエタノールアミンエステル等があげられる。
【0042】
両性界面活性剤としては、例えば3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホン酸、N-テトラデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホン酸等があげられる。
【0043】
リポソームBにおいては、これら脂質および界面活性剤は、単独でまたは組み合わせて用いられ、好ましくは組み合わせて用いられる。組み合わせて用いる場合の組み合わせとしては、例えば水素添加大豆ホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール化リン脂質およびコレステロールから選ばれる2成分以上の組み合わせ、ジステアロイルホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール化リン脂質およびコレステロールから選ばれる2成分以上の組み合わせ、EPCとDOTAPの組み合わせ、EPC、DOTAPおよびポリエチレングリコール化リン脂質の組み合わせ、EPC、DOTAP、コレステロールおよびポリエチレングリコール化リン脂質の組み合わせ等があげられる。
【0044】
また、リポソームBは、必要に応じて、例えばコレステロール等のステロール等の膜安定化剤、例えばトコフェロール等の抗酸化剤等を含有していてもよい。
脂質集合体としては、例えば球状ミセル、球状逆ミセル、ソーセージ状ミセル、ソーセージ状逆ミセル、板状ミセル、板状逆ミセル、ヘキサゴナルI、ヘキサゴナルIIおよび脂質2分子以上からなる会合体等があげられる。
【0045】
エマルジョン粒子としては、例えば脂肪乳剤、非イオン性界面活性剤と大豆油からなるエマルジョン、リピッドエマルジョン、リピッドナノスフェアー等の水中油型(O/W)エマルジョンや水中油中水型(W/O/W)エマルジョン粒子等があげられる。
高分子としては、例えばアルブミン、デキストラン、キトサン、デキストラン硫酸、DNA等の天然高分子、例えばポリ-L-リジン、ポリエチレンイミン、ポリアスパラギン酸、スチレンマレイン酸共重合体、イソプロピルアクリルアミド-アクリルピロリドン共重合体、ポリエチレングリコール修飾デンドリマー、ポリ乳酸、ポリ乳酸ポリグリコール酸、ポリエチレングリコール化ポリ乳酸等の合成高分子、およびそれらの塩等があげられる。
【0046】
ここで、高分子における塩は、例えば金属塩、アンモニウム塩、酸付加塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等を包含する。金属塩としては、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等があげられ、アンモニウム塩としては、例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩があげられ、酸付加塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、および酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩があげられ、有機アミン付加塩としては、例えばモルホリン、ピペリジン等の付加塩があげられ、アミノ酸付加塩としては、例えばグリシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン等の付加塩があげられる。
【0047】
金属コロイドとしては、例えば金、銀、白金、銅、ロジウム、シリカ、カルシウム、アルミニウム、鉄、インジウム、カドミウム、バリウム、鉛等を含む金属コロイドがあげられる。
【0048】
微粒子製剤としては、例えばマイクロスフェアー、マイクロカプセル、ナノクリスタル、リピッドナノパーティクル、高分子ミセル等があげられる。
【0049】
また、本発明におけるリード粒子は、例えば糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤等を含有することが好ましい。糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤は、リード粒子の構成成分として用いても、リード粒子の構成成分に加えて用いても構わない。
【0050】
糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤としては、好ましくは、糖脂質、または水溶性高分子の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体があげられ、より好ましくは、水溶性高分子の脂質誘導体または脂肪酸誘導体があげられる。糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤は、分子の一部がリード粒子の他の構成成分と例えば疎水性親和力、静電的相互作用等で結合する性質をもち、他の部分がリード粒子の製造時の溶媒と例えば親水性親和力、静電的相互作用等で結合する性質をもつ、2面性をもつ物質であるのが好ましい。
【0051】
糖、ペプチドまたは核酸の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体としては、例えばショ糖、ソルビトール、乳糖等の糖、例えばカゼイン由来ペプチド、卵白由来ペプチド、大豆由来ペプチド、グルタチオン等のペプチド、または例えばDNA、RNA、プラスミド、siRNA、ODN等の核酸と、例えば前記リード粒子の定義の中であげた脂質、例えばステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸等の脂肪酸とが結合してなるもの等があげられる。
【0052】
糖の脂質誘導体または脂肪酸誘導体としては、例えば前記リード粒子の定義の中であげたグリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質等があげられる。
水溶性高分子の脂質誘導体または脂肪酸誘導体としては、例えばポリエチレングリコール、ポリグリセリン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、オリゴ糖、デキストリン、水溶性セルロース、デキストラン、コンドロイチン硫酸、ポリグリセリン、キトサン、ポリビニルピロリドン、ポリアスパラギン酸アミド、ポリ-L-リジン、マンナン、プルラン、オリゴグリセロール等またはそれらの誘導体と、例えば前記リード粒子の定義の中であげた脂質、または例えばステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸等の脂肪酸とが結合してなるもの等があげられ、より好ましくは、ポリエチレングリコール誘導体、ポリグリセリン誘導体等の脂質誘導体または脂肪酸誘導体があげられ、さらに好ましくは、ポリエチレングリコール誘導体の脂質誘導体または脂肪酸誘導体があげられる。
【0053】
ポリエチレングリコール誘導体の脂質誘導体または脂肪酸誘導体としては、例えばポリエチレングリコール化脂質(具体的にはポリエチレングリコール-ホスファチジルエタノールアミン(より具体的には1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](PEG-DSPE)等)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、クレモフォアイーエル(CREMOPHOR EL)等)、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル類(具体的にはモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類等があげられ、より好ましくは、ポリエチレングリコール化脂質があげられる。
【0054】
ポリグリセリン誘導体の脂質誘導体または脂肪酸誘導体としては、例えばポリグリセリン化脂質(具体的にはポリグリセリン-ホスファチジルエタノールアミン等)、ポリグリセリン脂肪酸エステル類等があげられ、より好ましくは、ポリグリセリン化脂質があげられる。
【0055】
界面活性剤としては、例えば前記リード粒子の定義の中であげた界面活性剤、ポリエチレングリコールアルキルエーテル等があげられ、好ましくは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールアルキルエーテル等があげられる。
【0056】
また、好ましくは、リード粒子は、正電荷をもつ。ここで述べる、正電荷とは、前記RNA内の電荷、分子内分極等に対して静電的引力を生じる電荷、表面分極等を包含する。リード粒子が正電荷をもつには、好ましくは、リード粒子は、カチオン性物質を含有し、より好ましくは、リード粒子は、カチオン性脂質を含有する。
【0057】
リード粒子に含有されるカチオン性物質は、カチオン性を呈する物質であるが、カチオン性の基とアニオン性の基の両方をもつ両性の物質であっても、pHや、他の物質との結合等により相対的な陰性度が変化するので、その時々に応じてカチオン性物質に分類され得る。これらカチオン性物質は、リード粒子の構成成分として用いても、リード粒子の構成成分に加えて用いても構わない。
【0058】
カチオン性物質としては、例えば前記のリード粒子の定義で例示したもののうちのカチオン性物質[具体的には、カチオン性脂質、カチオン性界面活性剤(前記と同義)、カチオン性高分子等]、等電点以下の値のpHで、複合体の形成を行える蛋白質またはペプチド等があげられる。
【0059】
カチオン性脂質としては、例えばDOTAP、DODAP、DOTMA、DOSPA、DMRIE、DORIE、DC-Chol等があげられる。
【0060】
カチオン性高分子としては、例えばポリ-L-リジン、ポリエチレンイミン、ポリフェクト(polyfect)、キトサン等があげられる。
【0061】
等電点以下の値のpHで、複合体の形成を行える蛋白質またはペプチドとしては、その物質の等電点以下の値のpHで、複合体の形成を行える蛋白質またはペプチドであれば、特に限定されない。例えば、アルブミン、オロソムコイド、グロブリン、フィブリノーゲン、ペプシン、リボヌクレアーゼT1等があげられる。
【0062】
本発明におけるリード粒子は、公知の製造方法またはそれに準じて製造することができ、いかなる製造方法で製造されたものであってよい。例えば、リード粒子の1つであるリポソームBを構成成分とするリード粒子の製造には、公知のリポソームの調製方法が適用できる。公知のリポソームの調製方法としては、例えばバンガム(Bangham)らのリポソーム調製法[“ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J. Mol. Biol.)”, 1965年, 第13巻, p.238-252参照]、エタノール注入法[“ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー(J. Cell Biol.) ”, 1975年, 第66巻, p.621-634参照]、フレンチプレス法[“エフイービーエス・レターズ (FEBS Lett.)”, 1979年, 第99巻, p.210-214参照]、凍結融解法[“アーカイブス・オブ・バイオケミストリー・アンド・バイオフィジックス (Arch. Biochem. Biophys.)”, 1981年, 第212巻, p.186-194参照]、逆相蒸発法[“プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)”, 1978年, 第75巻, p.4194-4198参照]、pH勾配法(例えば特許第2572554号公報、特許第2659136号公報等参照)等があげられる。リポソームBの製造の際にリポソームBを分散させる溶液としては、例えば水、酸、アルカリ、種々の緩衝液、生理的食塩液、アミノ酸輸液等を用いることができる。また、リポソームBの製造の際には、例えばクエン酸、アスコルビン酸、システイン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の抗酸化剤、例えばグリセリン、ブドウ糖、塩化ナトリウム等の等張化剤等の添加も可能である。また、脂質等を例えばエタノール等の有機溶媒に溶解し、溶媒留去した後、生理食塩水等を添加、振とう撹拌し、リポソームBを形成させることによってもリポソームを製造することができる。
【0063】
また、例えば非イオン性界面活性剤(前記と同義)、カチオン性界面活性剤(前記と同義)、アニオン性界面活性剤(前記と同義)、高分子、ポリオキシエチレン誘導体等によるリポソーム表面改質も任意に行うことができ、これらの表面改質リポソームも本発明におけるリード粒子の構成成分として用いられる[ラジック(D. D. Lasic)、マーティン(F. Martin)編,“ステルス・リポソームズ(Stealth Liposomes)”(米国), シーアールシー・プレス・インク(CRC Press Inc), 1995年, p.93-102参照]。高分子としては、例えばデキストラン、プルラン、マンナン、アミロペクチン、ヒドロキシエチルデンプン等があげられる。ポリオキシエチレン誘導体としては、例えばポリソルベート80、プルロニックF68、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレンラウリルアルコール、PEG-DSPE等があげられる。リポソーム表面改質は、リード粒子に糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤を含有させる方法の1つとしても用いることができる。
【0064】
リポソームBの平均粒子径は、所望により自由に選択できる。平均粒子径を調節する方法としては、例えばエクストルージョン法、大きな多重膜リポソーム(MLV)を機械的に粉砕(具体的にはマントンゴウリン、マイクロフルイダイザー等を使用)する方法[ミュラー(R. H. Muller)、ベニタ(S. Benita)、ボーム(B. Bohm)編著,“エマルジョン・アンド・ナノサスペンジョンズ・フォー・ザ・フォーミュレーション・オブ・ポアリー・ソラブル・ドラッグズ(Emulsion and Nanosuspensions for the Formulation of Poorly Soluble Drugs)”,ドイツ,サイエンティフィック・パブリッシャーズ・スチュットガルト(Scientific Publishers Stuttgart),1998年,p.267-294参照]等があげられる。
【0065】
また、リード粒子を構成する例えば脂質集合体、リポソームB、エマルジョン粒子、高分子、金属コロイド、微粒子製剤等から選ばれる2つ以上を組み合わせた複合体の製造方法は、例えば水中で例えば脂質、高分子等を混合するだけの製造方法でもよく、この際、必要であればさらに整粒工程や無菌化工程等を加えることもできる。また、複合体形成を例えばアセトン、エーテル等種々の溶媒中で行うことも可能である。
【0066】
本発明におけるリード粒子の大きさは、平均粒子径が数nm〜数十μmであるのが好ましく、10nm〜1000nmであるのがより好ましく、50nm〜300nmであるのがさらに好ましい。
本発明における脂質膜を構成成分としては、例えば前記リード粒子の定義の中であげた脂質、界面活性剤等があげられ、好ましくは、脂質、界面活性剤のうちの中性脂質があげられ、より好ましくはリン脂質があげられ、さらに好ましくはEPCがあげられる。また、脂質膜の構成成分は、極性有機溶媒に可溶であることが好ましく、該極性有機溶媒を含む液中に、該脂質膜の構成成分が分散可能で、該複合粒子も分散可能な濃度で該極性有機溶媒を含む液が存在することが好ましい。ここで、中性脂質とは、脂質、界面活性剤のうちの、前記リード粒子が正電荷をもつ場合におけるカチオン性物質の中であげたカチオン性脂質とカチオン性界面活性剤および後記の付着競合剤の中であげたアニオン性脂質とアニオン性界面活性剤を除いたもののことであり、中性脂質としてより好ましくは、リン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質等があげられる。
【0067】
本発明における極性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール等のアルコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール等があげられ、好ましくはエタノールがあげられる。
【0068】
また、脂質膜に用いられる脂質として、例えば合成脂質等もあげられる。合成脂質としては、例えばフッ素添加ホスファチジルコリン、フッ素添加界面活性剤、臭化ジアルキルアンモニウム等があげられ、これらは単独でまたは他の脂質等と組み合わせて用いられてもよい。また、脂質膜は、好ましくは水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体またはもしくは脂肪族炭化水素誘導体、あるいは前記の糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤を含み、前記水溶性高分子の脂質誘導体または脂肪酸誘導体を含有することがより好ましく、前記ポリエチレングリコール化リン脂質を含有することがさらに好ましく、ポリエチレングリコール-ホスファチジルエタノールアミンを含有することが最も好ましい。
【0069】
本発明における水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体としては、例えば前記の糖、蛋白質およびペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体、または糖、蛋白質およびペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質脂肪族炭化水素誘導体があげられ、好ましくは、糖脂質、または水溶性高分子の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体があげられ、より好ましくは、水溶性高分子の脂質誘導体または脂肪酸誘導体があげられる。
【0070】
水溶性物質の脂肪族炭化水素誘導体としては、水溶性物質と、例えば長鎖脂肪族アルコール、ポリオキシプロピレンアルキル、グリセリン脂肪酸エステルのアルコール性残基等とが結合してなるものがあげられる。
【0071】
糖、ペプチドまたは核酸の脂肪族炭化水素誘導体としては、例えばショ糖、ソルビトール、乳糖等の糖、例えばカゼイン由来ペプチド、卵白由来ペプチド、大豆由来ペプチド、グルタチオン等のペプチド、または例えばDNA、RNA、プラスミド、siRNA、ODN等の核酸の脂肪族炭化水素誘導体があげられる。
【0072】
水溶性高分子の脂肪族炭化水素誘導体としては、例えばポリエチレングリコール、ポリグリセリン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、オリゴ糖、デキストリン、水溶性セルロース、デキストラン、コンドロイチン硫酸、ポリグリセリン、キトサン、ポリビニルピロリドン、ポリアスパラギン酸アミド、ポリ-L-リジン、マンナン、プルラン、オリゴグリセロール等またはそれらの誘導体の脂肪族炭化水素誘導体があげられ、より好ましくは、ポリエチレングリコール誘導体、ポリグリセリン誘導体等の脂肪族炭化水素誘導体があげられ、さらに好ましくは、ポリエチレングリコール誘導体の脂肪族炭化水素誘導体があげられる。
【0073】
リード粒子がリポソームBを構成成分とする微粒子である場合、リポソームBと前記RNAを構成成分とする複合粒子および該複合粒子を被覆する脂質膜から構成されるものがリポソームAとなり、その構成から狭義のリポソームと分類され、リード粒子がリポソームBを構成成分とする微粒子以外である場合でも、脂質膜で被覆されているので、広義のリポソームと分類される。本発明において、リード粒子の構成成分もリポソームであることがより好ましい。
【0074】
本発明におけるリード粒子と前記RNAを構成成分とする複合粒子は、該リード粒子を製造後または該リード粒子の製造と同時に、該RNAをリード粒子に付着または封入して複合粒子を製造でき、さらに該複合粒子の製造後または複合粒子の製造と同時に、脂質膜で該複合粒子を被覆することリポソームAを製造することができる。リポソームAは、例えば、特表2002-508765号公報、特表2002-501511号公報、“バイオキミカ・エ・バイオフィジカ・アクタ(Biochimica et Biophysica Acta)”,2001年,第1510巻,p.152-166、国際公開第02/28367号パンフレット等の公知の製造方法またはそれに準じて製造するか、例えばリード粒子に前記RNAを付着または封入して複合粒子を製造後、該複合粒子および被覆層成分を、該被覆層成分が可溶な極性有機溶媒を含む、該複合粒子が溶解せず、該被覆層成分が分散状態で存在することが可能な濃度の液中に分散させる工程および該複合粒子を該被覆層成分で被覆する工程を含む製造方法で製造することができる。
【0075】
本発明の組成物におけるリポソームの好ましい製造方法としては、以下のリード粒子と前記RNAを構成成分とする複合粒子を製造する工程(工程1)および該複合粒子を脂質膜で被覆する工程(工程2または工程3)を含む製造方法があげられる。
【0076】
工程1) リード粒子と前記RNAを構成成分とする複合粒子を製造する工程
リード粒子を、例えば水等の溶媒中に分散させ、リード粒子が分散した液中に、前記RNAを分散または溶解して含有させて混合し、リード粒子に該RNAを付着させる。工程1において、リード粒子の凝集を抑制するために、リード粒子は凝集抑制物質を含有するリード粒子であることが好ましく、凝集抑制物質として前記糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤を含有することがより好ましい。また、リード粒子が、正電荷をもつものである場合、リード粒子が分散した液中で、該RNAと付着競合剤を共存させ、付着競合剤を該RNAとともにリード粒子に付着させてもよく、さらにリード粒子が凝集抑制物質を含有するリード粒子である場合にも、リード粒子の凝集をより抑制させるために付着競合剤を用いてもよい。リード粒子と前記RNAの組み合わせとしては、複合粒子が極性有機溶媒を含有する液に分散可能となる組み合わせを選択することが好ましく、極性有機溶媒に対しての溶解度が、工程2または3で用いる脂質膜の構成成分よりも低いことがより好ましく、また、該極性有機溶媒を含む液中に、該脂質膜の構成成分が分散可能で、該複合粒子も分散可能な濃度で該極性有機溶媒を含む液が存在する組み合わせを選択することがより好ましい。
【0077】
付着競合剤としては、例えばアニオン性物質等があげられ、該アニオン性物質は、分子内の電荷、分子内分極等による静電的引力により、リード粒子の構成成分に静電的に付着する物質を包含する。付着競合剤としてのアニオン性物質は、アニオン性を呈する物質であるが、アニオン性の基とカチオン性の基の両方をもつ両性の物質であっても、pHや、他の物質との結合等により相対的な陰性度が変化するので、その時々に応じてアニオン性物質に分類され得る。
【0078】
アニオン性物質としては、例えば前記のリード粒子の定義で例示したもののうちのアニオン性物質[具体的には、アニオン性脂質、アニオン性界面活性剤(前記と同義)、アニオン性高分子等]、等電点以上の値のpHで、複合体の形成を行える蛋白質またはペプチド、核酸等があげられ、好ましくはデキストラン硫酸、デキストラン硫酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、コンドロイチン、デルタマン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケタラン硫酸、デキストランフルオレセインアニオニック等から選ばれる1つ以上の物質があげられる。
【0079】
アニオン性脂質としては、例えばホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸等があげられる。
アニオン性高分子としては、例えばポリアスパラギン酸、スチレンマレイン酸共重合体、イソプロピルアクリルアミド-アクリルピロリドン共重合体、ポリエチレングリコール修飾デンドリマー、ポリ乳酸、ポリ乳酸ポリグリコール酸、ポリエチレングリコール化ポリ乳酸、デキストラン硫酸、デキストラン硫酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、コンドロイチン、デルタマン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケタラン硫酸、デキストランフルオレセインアニオニック等があげられる。
【0080】
等電点以上の値のpHで、複合体の形成を行える蛋白質またはペプチドとしては、その物質の等電点以上の値のpHで、複合体の形成を行える蛋白質またはペプチドであれば、特に限定されない。例えば、アルブミン、オロソムコイド、グロブリン、フィブリノーゲン、ヒストン、プロタミン、リボヌクレアーゼ、リゾチーム等があげられる。
【0081】
アニオン性物質としての核酸としては、例えばDNA、RNA、プラスミド、siRNA、ODN等があげられ、生理活性を示さないものであれば、どのような長さ、配列のものであってもよい。
【0082】
付着競合剤は、リード粒子の構成成分に静電的に付着することが好ましく、リード粒子の構成成分に付着してもリード粒子の構成成分を凝集させるような架橋を形成しない大きさの物質であるか、分子内に付着する部分と、付着に反発してリード粒子の凝集を抑制する部分をもつ物質であることが好ましい。
工程1は、より具体的には、例えば凝集抑制物質を含有するリード粒子が分散した液を製造する操作および該リード粒子が分散した液中に、前記RNAを分散または溶解して含有させる操作(例えば該リード粒子が分散した液中に、該RNAを加えて分散または溶解する操作、該リード粒子が分散した液中に、該RNAが分散または溶解した液を加える操作等)を含む製造方法において実施することができる。ここで、リード粒子が分散した液中に、前記RNAを分散または溶解して含有させる工程により得られる複合粒子としては、具体的には、該カチオン性脂質を含有するリポソームBを構成成分とする微粒子に該RNAが付着して形成される複合粒子、カチオン性脂質を含有する脂質集合体を構成成分とする微粒子に前記RNAが付着して形成される複合粒子、ポリ-L-リジン等のカチオン性高分子を含有する高分子を構成成分とする微粒子に前記RNAが付着して形成される複合粒子があげられる。また、リード粒子が分散した液中に、前記RNAを分散または溶解して含有させる操作が、該RNAが分散または溶解した液に、さらに付着競合剤を含有させて、これを該リード粒子が分散した液中に加える操作であることが好ましく、この場合、該リード粒子に、該RNAと該付着競合剤が共に付着して複合粒子が製造され、該複合粒子の製造中におけるリード粒子の凝集も、製造後における複合粒子の凝集もより抑制されて製造できる。
【0083】
リード粒子のリード粒子が分散する液に対する割合は、リード粒子に前記RNAが付着できれば特に限定されるものではないが、1μg/mL〜1g/mLであるのが好ましく、0.1〜500mg/mLであるのがより好ましい。
【0084】
工程2) 複合粒子を脂質膜で被覆する工程(その1)
工程1で得られた複合粒子が分散し、かつ脂質膜の構成成分が溶解した極性有機溶媒を含む液(液A)を調製する操作、次いで、液A中の極性有機溶媒の割合を減少させることによって、複合粒子を脂質膜で被覆する操作を含む製造方法によってリポソームAが製造でき、この場合、リポソームAは分散液(液B)の形態で得られる。液Aにおける溶媒は、該脂質膜の構成成分が可溶で、該複合粒子が分散可能な極性有機溶媒の濃度の該極性有機溶媒を含む溶媒であり、液A中の極性有機溶媒の割合を減少させた液Bでは、該脂質膜の構成成分が分散可能で、該複合粒子も分散可能である。液A中の溶媒が、極性有機溶媒と極性有機溶媒以外の溶媒との混合液である場合、例えば該極性有機溶媒と混合可能な極性有機溶媒以外の溶媒を含む溶媒(液C)を加えること、および/または、蒸発留去、半透膜分離、分留等によって、選択的に極性有機溶媒を取り除くことで、極性有機溶媒の割合を減少させることができる。ここで、液Cは、極性有機溶媒以外の溶媒を含む溶媒であり、極性有機溶媒も液Aにおける極性有機溶媒の割合より低ければ含んでいてよい。
【0085】
工程2における極性有機溶媒以外の溶媒としては、例えば、水、液体二酸化炭素、液体炭化水素、ハロゲン化炭素、ハロゲン化炭化水素等があげられ、好ましくは水があげられる。また、液Aおよび液Cは、イオン、緩衝成分等を含んでいてもよい。
【0086】
極性有機溶媒と極性有機溶媒以外の溶媒の組み合わせは、相互に混合可能である組み合わせであるのが好ましく、液Aおよび液B中の溶媒ならびに液Cに対する、複合粒子および脂質膜の構成成分の溶解度等を考慮して選択できる。一方、複合粒子については、液Aおよび液B中の溶媒ならびに液Cのいずれに対しての溶解度も低いことが好ましく、また極性有機溶媒および極性有機溶媒以外の溶媒のいずれに対しての溶解度も低いことが好ましく、脂質膜の構成成分は、液B中の溶媒および液Cに対しての溶解度が低いことが好ましく、液A中の溶媒に対しての溶解度が高いことが好ましく、また極性有機溶媒に対しての溶解度が高いことが好ましく、極性有機溶媒以外の溶媒に対する溶解度が低いことが好ましい。ここで、複合粒子の溶解度が低いとは、複合粒子に含有されるリード粒子、RNAおよび付着競合剤等の各成分の、溶媒中における溶出性が小さいことであり、各成分の個々の溶解度が高くても各成分間の結合等によって各成分の溶出性が小さくなっていればよい。例えば、リード粒子に含まれる成分のいずれかの液A中の溶媒に対する溶解度が高い場合でも、リード粒子が正電荷をもつ場合、RNA内の電荷、分子内分極等に対して静電的に結合し、液A中の溶媒に対する溶解度が低くなれば、複合粒子中の成分の溶出が抑制され、複合粒子の液A中の溶媒に対する溶解度を低くすることが可能である。すなわち、リード粒子が正電荷をもつことは、リポソームAの製造において、複合粒子の成分の溶出を抑制し、製造性と歩留まりを向上させる効果も備えている。
【0087】
液Aにおける極性有機溶媒の割合は、脂質膜の構成成分が可溶で、複合粒子が分散可能であるであれば特に限定されるものではなく、用いる溶媒や複合粒子、脂質膜の構成成分の種類等により異なるが、好ましくは30v/v%以上、より好ましくは60〜90v/v%である。また、液Bにおける極性有機溶媒の割合は、液Aよりも低い濃度で該極性有機溶媒を含み、脂質膜の構成成分が分散可能で、複合粒子も分散可能であれば特に限定されるものではないが、好ましくは50v/v%以下である。
【0088】
液Aを調製する工程としては、複合粒子が溶解しなければ、極性有機溶媒、複合粒子および脂質膜の構成成分、または極性有機溶媒、複合粒子、脂質膜の構成成分および極性有機溶媒以外の溶媒をいかなる順に加えて液Aを調製する工程でもかまわず、好ましくは、該複合粒子が分散した極性有機溶媒を含む液(液D)を調製し、液D1中の極性有機溶媒と同一または異なった極性有機溶媒を含む溶媒に該脂質膜の構成成分を溶解させた液(液E)を調製し、液Dと液Eを混合して調製する工程があげられる。液Dと液Eを混合して液Aを調製する際には、徐々に混合することが好ましい。
【0089】
工程3) 複合粒子を脂質膜で被覆する工程(その2)
工程1で得られた複合粒子および脂質膜の構成成分を、該脂質膜の構成成分が可溶な極性有機溶媒を含む、該複合粒子が溶解せず、該脂質膜の構成成分が分散状態で存在することが可能な濃度の液(液F)中に分散させる操作を含む製造方法でリポソームAが製造でき、この場合、リポソームAは分散液の状態で得られる。液Fにおける溶媒は、該脂質膜の構成成分が可溶な極性有機溶媒を含み、該極性有機溶媒を含む溶媒に、該脂質膜の構成成分が分散可能で、該複合粒子も分散可能な濃度で該極性有機溶媒を含む液が存在する溶媒である。
【0090】
液Fの調製方法はいかなる形態をも取ることができる。例えば複合粒子の分散液と、脂質膜の構成成分の溶解液または分散液を調製した後、両液を混合して液Fを調製しても、複合粒子または脂質膜の構成成分のどちらか一方の分散液を調製し、その分散液に、固体状態の複合粒子または脂質膜の構成成分の残る一方を加えて分散させて液Fを調製してもよい。複合粒子の分散液と、脂質膜の構成成分の溶解液または分散液を混合する場合には、複合粒子の分散媒は、あらかじめ極性有機溶媒を含んでいてもよく、また被脂質膜の構成成分は溶解していてもまたは分散していてもよく、脂質膜の構成成分の溶媒または分散媒は極性有機溶媒を含む液または極性有機溶媒のみで構成される液でよい。一方、複合粒子または脂質膜の構成成分のどちらか一方の分散液を調製し、該分散液に、固体状態の複合粒子または脂質膜の構成成分の残る一方を加える場合には、該分散液は、極性有機溶媒を含む液である。なお、液Fを調製した後に複合粒子が溶解せず、脂質膜の構成成分が分散している場合には、複合粒子が溶解せず、脂質膜の構成成分が分散する極性有機溶媒濃度の範囲で極性有機溶媒を加えても、有機溶媒を除去または濃度を減少させてもよい。一方、液Fを調製した後に複合粒子は溶解していないが、脂質膜の構成成分が溶解している場合には、複合粒子が溶解せず、脂質膜の構成成分が分散する極性有機溶媒濃度の範囲で極性有機溶媒を除去または濃度を減少させればよい。また、複合粒子と脂質膜の構成成分をあらかじめ極性有機溶媒以外の溶媒中で混合し、そこに複合粒子が溶解せず、脂質膜の構成成分が分散する極性有機溶媒濃度の範囲で極性有機溶媒を加えてもよく、その場合には、複合粒子および脂質膜の構成成分のそれぞれを極性有機溶媒以外の溶媒中に分散させ、両分散液を混合した後で、極性有機溶媒を加えることでもよく、複合粒子または脂質膜の構成成分のどちらか一方を極性有機溶媒以外の溶媒中に分散させ、その分散液に、固体状態の複合粒子または脂質膜の構成成分の残る一方を加えて分散させた後で、極性有機溶媒を加えることでもよい。また、複合粒子および脂質膜の構成成分が分散し、極性有機溶媒を含有する液を、複合粒子が脂質膜で被覆されるに充分な時間、静置または混合する操作を含むことが好ましく、複合粒子と脂質膜の構成成分を、極性有機溶媒を含有する液中に分散させた後、静置または混合する時間は、複合粒子および脂質膜の構成成分を、極性有機溶媒を含有する液中に分散させた後に瞬時に終了させるのでなければ制限はないが、脂質膜の構成成分や、極性有機溶媒を含有する液の種類に応じて任意に設定することができ、得られたリポソームAの収率が定常量となる時間を設定することが好ましく、例えば3秒〜30分である。
【0091】
液Fにおける極性有機溶媒以外の溶媒としては、例えば工程2における極性有機溶媒以外の溶媒で例示した物があげられ、好ましくは水があげられる。
【0092】
液Fにおける極性有機溶媒の割合は、複合粒子と、脂質膜の構成成分がともに分散されている条件さえ満たしていれば特に限定されるものではなく、用いる溶媒や複合粒子、脂質膜の構成成分の種類等により異なるが、好ましくは1〜80vol%、より好ましくは10〜60vol%、さらに好ましくは20〜50vol%、最も好ましくは30〜40vol%である。
【0093】
本発明において、脂質膜の構成成分が極性有機溶媒に対して可溶とは、脂質膜の構成成分が極性有機溶媒に溶解する性質をもつ場合、可溶化剤等を用いることにより脂質膜の構成成分が極性有機溶媒に溶解する性質をもつ場合、脂質膜の構成成分が極性有機溶媒中で凝集体またはミセル等を形成して乳濁もしくはエマルジョン化し得る性質をもつ場合等を包含する。また、脂質膜の構成成分が分散するとは、脂質膜の構成成分の全部が凝集体またはミセル等を形成して乳濁もしくはエマルジョン化している状態、脂質膜の構成成分の一部が凝集体またはミセル等を形成して乳濁もしくはエマルジョン化し、残る部分が溶解している状態、脂質膜の構成成分の一部が凝集体またはミセル等を形成して乳濁もしくはエマルジョン化し、残る部分が沈殿している状態等を包含する。なお、脂質膜の構成成分が溶解するとは、脂質膜の構成成分の全部が凝集体またはミセル等を形成して乳濁もしくはエマルジョン化している状態を包含しない。
【0094】
本発明において、複合粒子が分散するとは、複合粒子が懸濁または乳濁もしくはエマルジョン化している状態のことであり、複合粒子の一部が懸濁または乳濁もしくはエマルジョン化し、残る部分が溶解している状態、複合粒子の一部が乳濁もしくはエマルジョン化し、残る部分が沈殿している状態等を包含する。複合粒子が溶解しないとは、前記の複合粒子が分散すると同義である。
【0095】
本発明におけるリポソームAの製造方法において用いられる、極性有機溶媒含有水溶液中の複合粒子の濃度は、複合粒子を脂質膜で被覆できれば特に限定されるものではないが、1μg/mL〜1g/mLであるのが好ましく、0.1〜500mg/mLであるのがより好ましい。また、用いられる脂質膜の構成成分の濃度は、複合粒子を被覆できれば特に限定されるものではないが、1μg/mL〜1g/mLであるのが好ましく、0.1〜400mg/mLであるのがより好ましい。
【0096】
また、本発明におけるリポソームAの大きさは、平均粒子径が300nm以下であるのが好ましく、200nm以下であるのがより好ましく、具体的には、例えば注射可能な大きさであるのが好ましい。
【0097】
さらに、上記で得られるリポソームAに抗体等の蛋白質、糖類、糖脂質、アミノ酸、核酸、種々の低分子化合物、高分子化合物等の物質による修飾を行うこともでき、これらで得られる被覆複合粒子もリポソームAに包含される。例えば、ターゲッティングに応用するため、上記で得られるリポソームAに対して、さらに抗体等の蛋白質、ペプチド、脂肪酸類等による脂質膜の表面修飾を行うこともできる[ラジック(D. D. Lasic)、マーティン(F. Martin)編,“ステルス・リポソームズ(Stealth Liposomes)”(米国),シーアールシー・プレス・インク(CRC Press Inc),1995年,p.93-102参照]。また、リポソームAに例えば水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体による表面改質も任意に行うことができ、これら表面改質に用いられる水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体は、前記脂質膜の構成成分としての水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体と同義である。
【0098】
本発明の組成物は、ほ乳類に投与することで、前記RNAを標的遺伝子の発現部位を含む組織または臓器へ送達することができ、in vivoでほ乳類の細胞に、例えばKLF5遺伝子およびKLF5により転写が活性化される遺伝子の発現を抑制するRNAを導入することができ、KLF5遺伝子およびKLF5により転写が活性化される遺伝子等の発現の抑制ができる。本発明の組成物によって、例えばKLF5遺伝子およびKLF5により転写が活性化される遺伝子の発現が抑制され、平滑筋の増殖や血管新生を抑制できるので、本発明の組成物を、動脈硬化、冠動脈インターベンション後の再狭窄、心肥大等の心血管系疾患、癌等の治療剤または予防剤の有効成分として使用することができる。また、前記RNAの標的遺伝子が腫瘍や炎症に関連する遺伝子や管新生に関連する遺伝子である場合、例えば、腫瘍の治療剤として該組成物を投与することで、腫瘍の治療を行うことや、炎症の治療剤として該組成物を投与することで、炎症の治療を行うことができる。また、本発明の組成物は、in vivoのスクリーニング系においてピーオーシー[POC(Proof of concept)]取得のツールとして使用することもできる。
【0099】
本発明の組成物は、例えば血液成分等の生体成分(例えば血液、消化管等)中での前記RNAの安定化、副作用の低減、腫瘍等の標的臓器への薬剤集積性の増大、経口や経粘膜での薬剤の吸収の改善等を目的とする製剤としても使用できる。
本発明の組成物を、医薬品の製剤として使用する場合、投与経路としては、治療に際し最も効果的なものを使用するのが望ましく、口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内、静脈内等の非経口投与または経口投与をあげることができ、好ましくは静脈内投与または筋肉内投与をあげることができ、より好ましくは静脈内投与があげられる。
【0100】
静脈内投与または筋肉内投与に適当な製剤としては、例えば注射剤があげられ、上述の方法により調製したリポソームAの分散液をそのまま例えば注射剤等の形態として用いることも可能であるが、該分散液から例えば濾過、遠心分離等によって溶媒を除去して使用することも、該分散液、または例えばマンニトール、ラクトース、トレハロース、マルトース、グリシン等の賦形剤を加えた分散液を凍結乾燥して使用することもできる。
【0101】
注射剤の場合、前記のリポソームAの分散液または前記の溶媒を除去または凍結乾燥したリポソームAに、例えば水、酸、アルカリ、種々の緩衝液、生理的食塩液、アミノ酸輸液等を混合して注射剤を調製することが好ましい。また、例えばクエン酸、アスコルビン酸、システイン、EDTA等の抗酸化剤、グリセリン、ブドウ糖、塩化ナトリウム等の等張化剤等を添加して注射剤を調製することも可能である。また、例えばグリセリン等の凍結保存剤を加えて凍結保存することもできる。
【0102】
また、リポソームAは、適当な賦形剤等と共に造粒、乾燥する等して例えばカプセル剤、錠剤、顆粒剤等の経口用製剤に加工してもよい。
【0103】
本発明のリポソームは、リポソームAのうち、リード粒子と前記RNAを構成成分とする複合粒子および該複合粒子を被覆する脂質膜から構成され、該脂質膜の構成成分が可溶な極性有機溶媒を含む液の中に、該脂質膜の構成成分が分散可能で、該複合粒子も分散可能な濃度で該極性有機溶媒を含む液が存在する、リポソーム、またはカチオン性脂質を含むリード粒子と前記RNAを構成成分とする複合粒子、および該複合粒子を被覆する脂質膜から構成され、該脂質膜が、中性脂質および水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体を構成成分とするリポソームがあげられる。
【0104】
次に、実施例および参考例により、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例および参考例に限定されるものではない。
【0105】
参考例1 siRNAの調製1
KLF5遺伝子の発現を抑制できるsiRNAの配列として、マウスKLF5 cDNAの配列(GenBank登録番号:NM_009769、配列番号41)から、(a)AAではじまる21塩基の配列、(b)GC含量が20〜80%の2つの条件に当てはまる、11個の部分配列を選択した。ただし、開始コドン(配列番号41の167〜169番目の配列)より75塩基以上下流の、コード領域(配列番号167〜1507番目の配列)内の配列で、GC含量が40〜60%のものをなるべく選択するようにした。選択した配列の配列番号41における配列の位置、GC含量を第1表に示した。選択した配列の5'端のAAを除いた19塩基の配列のTをUに変えた配列をそれぞれ配列番号1〜11に示した。
【0106】
【表1】

【0107】
配列番号1〜11のいずれかの配列および該配列と相補的な配列の3'端にそれぞれ2個のUまたはdTを付加した配列からなる11種類の二本鎖RNA(以下、それぞれsiRNA No.1〜No.11とよぶ)を以下のようにして調製した。siRNA No.1〜No.11それぞれのセンス鎖およびアンチセンス鎖の配列を第1表に示した(配列番号17〜38)。siRNA No.1は、配列番号17および18の配列からなる2本のRNAを、株式会社日本バイオサービスに依頼して化学合成し、アニーリングさせることにより調製した。siRNA No.2〜No.11はサイレンサーsiRNA作製キット(SilencerTM siRNA Construction Kit、アンビオン社製)を利用したインビトロ転写により調製した。インビトロ転写の鋳型作製に用いるDNAは、北海道システム・サイエンス株式会社に化学合成を依頼した。
【0108】
参考例2 siRNAの調製2
参考例1で得られたsiRNA No. 2〜4および7〜11について、マウスKLF5 cDNAと、ヒトKLF5 cDNAを、配列の相同性に基づいてアライメントすることにより、マウスで選択された配列と対応するヒトの配列を得た。第2表に、設計のもとにしたマウスKLF5 cDNA上の21塩基の配列および配列番号41におけるその位置と、該マウス配列に対応するヒトcDNA上の21塩基の配列、配列番号42におけるその位置、該ヒト配列から5'端のAAを除いたRNAの配列を表す配列番号を示した。なお、siRNA No. 5および6は、非コード領域の配列をもとにしているため、対応するヒト配列は示さなかった。
【0109】
【表2】

【実施例1】
【0110】
DOTAP(アバンチポーラルリピッズ社製)/PEG-DSPE(日本油脂製、以下同様)/蒸留水を30mg/12mg/mLになるように混合し、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。得られた分散液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルター(ワットマン製)に4回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルター(ワットマン製)に10回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルター(ワットマン製)に24回通してリード粒子を調製した。得られたリード粒子の分散液0.5mLに、参考例1または2のsiRNA No.4 の 8mg/mL水溶液0.25mLを添加し、エタノール1mLを加えて複合粒子を調製した。得られた複合粒子の分散液に、脂質膜の構成成分のEPC(日本油脂製)/PEG-DSPEを120mg/25mg/mLになるようにエタノールに溶解した溶液0.25mLを添加し、次に蒸留水23mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5vol%以下になるよう調整しリポソームを調製した。得られたリポソームの分散液を超遠心(1時間、110,000×g、25℃)し、上清を除去し、生理食塩水を添加して再分散させてリポソーム分散液を得た(PEG-DSPEエタノール溶液)。EPC 120重量部に対して50重量部のPEG-DSPEを少量(リポソーム分散液の約1/25容量)のエタノールに溶解した。リポソーム分散液とPEG-DSPEエタノール溶液をそれぞれ70℃で2分間加熱した。ついで、PEG-DSPEエタノール溶液にリポソーム分散液を添加し、混合後、70℃で2分間の加熱後、水冷し、製剤を得た。
製剤は3ロット調製した。
【0111】
動的光散乱法(A model ELS-800、大塚電子)でリポソームの平均粒子径を測定したところ、それぞれ102、103、95 nmであった。
【実施例2】
【0112】
実施例1と同様にして得られるリード粒子の分散液0.5mLに、参考例1または2のsiRNA No.1〜3および5〜16のそれぞれの 8mg/mL水溶液0.25mLを添加し、エタノール1mLを加えて、該siRNA No.1〜3および5〜16のそれぞれの複合粒子が得られる。得られた複合粒子の分散液に、実施例1と同様の操作をして該siRNA No.1〜3および5〜16のそれぞれの封入されたリポソームが得られる。得られたリポソームについて実施例1と同様の操作をして該siRNANo.1〜3および5〜16のそれぞれの製剤が得られる。
【0113】
比較例1
実施例1におけるsiRNAを、scrambled KLF5-siRNA(sense strand, 5’- GGU ACA CAU GUG CAC ACA C -dTdT-3’;antisense strand, 5’- GUG UGU GCA CAU GUG UAC C-dTdT-3’、北海道システムサイエンス社)に変え、同様に製剤を得た。製剤は3ロット以上調製した。なお、scrambled KLF5-siRNAは、KLF5-mRNAの配列および該配列と相補的な配列を含まないRNAである。
動的光散乱法(ゼータサイザーナノ-ZS、マルバーン製)でリポソームの平均粒子径を測定したところ、一例をとると、88 nmであった。
【0114】
比較例2
参考例1または2のsiRNA No.4(KLF5siRNA)を生理食塩水に溶解し、0.5mg/mL水溶液を調製した。
【0115】
比較例3
比較例1と同じscrambled KLF5siRNAを生理食塩水に溶解し、0.5mg/mL水溶液を調製した。
【0116】
試験例1
1×106個のMurine LL/2;lewis lung carcinoma[“ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(The Journal of Biological Chemistry) ”, 2003年, 278巻, p.34598-34604]をマウス(BL6J mouse、オス、5週齢)の皮下に投与した。LL/2は、その増殖が血管新生の影響を大きく受けることから、血管新生阻害剤のスクリーニングに使用されている。細胞が固定された時点(皮下投与後1〜2日)から、実施例1で得られた製剤を、連日、尾静脈内投与した。投与した製剤は、予めリン酸緩衝生理食塩水で総脂質濃度が5mg/mLになるように希釈しており、マウスに対する投与量はsiRNA 150μg/shot/mouse/dayとした。
【0117】
経時的に、マウスに植え付けた腫瘍の大きさを測定し、腫瘍の増殖を測定した。結果を図1に示す。
【0118】
また、投与10日後にマウスから、腫瘍を摘出し、癌細胞周辺の血管新生を観察すると共に、癌周辺切片を次の方法でCD31免疫染色およびヘマトキシリン・エオジン染色を行って顕微鏡で観察した。
【0119】
CD31免疫染色
メタノール固定した腫瘍をパラフィンで埋包した後、厚さ5μmの切片を作成し、切片を脱パラフィン化後、室温で10分間、0.5%ヤギ血清を添加しブロッキングした。ブロッキング液を吸引後、抗マウスCD31抗体(100倍希釈)[ファーミンゲン(pharmingen)社製]を添加し室温で2時間静置した。PBSで洗浄後、ビオチン付抗ラットIg抗体(200倍希釈)(DAKO社製)を添加し室温で1時間静置した。PBSで洗浄後、ABC-APキットAK-5000[ベクター・ラボラトリー(Vector Laboratories)社製]を添加し室温で30分間静置した。PBSで洗浄後、Vector Red SK-5100[ベクター・ラボラトリー(Vector Laboratories)社製]を添加し室温で30分間静置して発色させた。水洗後、ヘマトキシン染色液で後染色し、脱水して、顕微鏡で観察した。
【0120】
ヘマトキシリン・エオジン染色
メタノール固定した腫瘍をパラフィンで埋包した後、厚さ5μmの切片を作成した。切片を脱パラフィン化後、流水で洗浄し、蒸留水を通した。ヘマトキシリン染色液を添加し5分間静置した。水洗し、0.5%塩酸水を添加し分別した。流水で5分間色出し水洗後、蒸留水を通した。エオジン染色液を添加し3分間静置した。95%エタノールで分別、脱水して、顕微鏡で観察した。
【0121】
図1によると、実施例1で得られた製剤を投与した群では、無処理群と比べ、癌細胞の増殖が抑制された。また、投与10日後の癌細胞周辺の観察において、実施例1で得られた製剤を投与した群では、無処理群と比べ、腫瘍自身の大きさも小さい上、腫瘍中心部が大きく壊死していることが観察された。さらに、実施例1で得られた製剤を投与した群のヘマトキシリン・エオジン染色およびCD31免疫染色した腫瘍組織切片の顕微鏡観察において、無処理群と比較して、腫瘍周辺および腫瘍内で観察された血管内皮細胞が減少していることが観察され、実施例1で得られた製剤を投与した群は、血管新生が抑制されていることが明らかであった。
【0122】
すなわち、抗血管新生効果および癌細胞の増殖が抑制されたことより、本発明の組成物は、例えばKLF5-siRNAをほ乳類に静脈内投与した場合に、効率よく腫瘍近傍に到達することができ、KLF5遺伝子の発現を抑制することが可能であることが明らかとなった。
【0123】
試験例2
1×106個のMurine LL/2;lewis lung carcinomaをマウス(C57BL/6jjcl mouse、オス、6週齢、日本クレア)の腋部皮下に投与した。腫瘍細胞注射2日後から8日後まで、50μgのsiRNAを含む製剤(実施例1、比較例1)、50μgのsiRNAをsiRNA溶液(比較例2、3)および生理食塩水を、それぞれ連日、尾静脈内投与した。
【0124】
経時的に、マウスに植え付けた腫瘍の大きさを測定した。腫瘍体積を、腫瘍の長径×(短径)2×1/2で計算し、有意差をTukey-kramer法で検定した。結果を図2に示す。
【0125】
また、投与10日後にマウスから、腫瘍を摘出し、癌細胞周辺の血管新生を観察すると共に、癌周辺切片を次の方法でCD31免疫染色し、組織切片に見られるCD31構造をカウントした。一つの腫瘍あたり2視野、各5腫瘍をカウントし、その平均を示した。有意差をTukey-kramer法で検定した。結果を図3に示す。
CD31免疫染色
腫瘍を摘出し、95%メタノール溶液で固定した後、パラフィンに包埋した。5μm厚にスライスした腫瘍を脱パラフィン後、100倍希釈した抗CD31ポリクローナル抗体(ファーミンジェン社製、米国)室温で120分間作用させた。CD31抗体を洗浄後、200倍希釈したビオチン化抗ラットIgG(ダコ社製、米国)を室温で60分間作用させた。さらに洗浄後、HRP化アビジン(ベクター社製、米国)を室温で30分間作用させた。洗浄後、ジアミノベンジジン(シグマ社製、米国)で発色させた。
【0126】
図2によると、実施例1で得られた製剤を投与した群のみ、有意に腫瘍増殖の抑制効果が見られた。また、図3によると、実施例1で得られた製剤を投与した群は、新生血管を示すCD31の茶色の構造が少なく、腫瘍の血管新生が阻害されている。
【0127】
試験例3
1×106個のMurine LL/2;lewis lung carcinomaをマウス(C57BL/6jjcl mouse、オス、6週齢、日本クレア)の腋部皮下に投与した。50μgのsiRNAを含む製剤(実施例1、比較例1)、50μgのsiRNAを含むsiRNA溶液(比較例2、3)および生理食塩水を、それぞれ投与し、投与36時間後に腫瘍を摘出し、次の方法でmRNA発現量およびKLF5の量を測定した。
【0128】
mRNA発現量の測定
摘出した腫瘍細胞を、RNeasy Fibrous tissue kit(キアゲン社製)を用い、ジルコニアボールと破砕機(MM300、キアゲン)を用いて溶解した後精製してRNAを取得した。cDNAはSuperScript First-Strand Synthesis Kit (インビトロジェン社製、米国)を用い、1 μgのRNAからランダムプライマーで逆転写した。cDNAはHot Star TaqTM(キアゲン社製)と、特異的プライマーを用いて増幅した。このとき、リボソーマル18SRNAプライマーを内部標準として用いた。増幅サイクルは、95℃15分→(94℃30秒→53℃30秒→72℃30秒)×45回とし、プライマー配列は以下の通りとした:5′-GGTTGCACAAAAGTTTATAC-3′、 5′-GGCTTGGCGCCTGTGTGCTTCC-3′。mRNA発現量をABI PRISMTM 7900HT(アプライドバイオシステム社製、米国)とQuantiTect SYBR Green PCR kit(キアゲン社製)を使って定量した。QuantumRNATM Classic 18S ribosomal RNA primer (アンビオン社製、米国)を内部標準物質として標準化した。有意差をTukey-kramer法で検定した。結果を図4に示す。
【0129】
KLF5量の測定
摘出した腫瘍細胞を、適量の溶解用溶液(150mmol/L NaCl, 20 mmol/L Tris, pH 7.5, 0.1% Nonidet P-40, 0.1% Sodium laulyl sulfate, 0.5% Sodium deoxycholate, 0.1mmol/L DTT, タンパク分解酵素阻害剤)に浸し、ジルコニアボールと破砕機(MM300、キアゲン)を用いて溶解し、遠心上清を取得した。タンパク濃度はDc protein assay reagent (バイオラッド、米国)を用いて測定した。10μgのタンパクを95℃で15分間加熱処理し、10%ポリアクリルアミドゲル電気泳動に付した。泳動したタンパクはニトロセルロース膜(アマシャム社製、米国)に転写し、ブロッキング処理(5%スキムミルク中で振とう)をした後、1000倍した抗KLF5モノクローナル抗体(協和発酵工業製)中で1時間振とうした。膜を洗浄後、2000倍したHRPラベル化抗ラットIgG(アマシャム社製)処理し、洗浄後に蛍光発色試薬(ECLplus、アマシャム社製)で発色し、ウエスタンブロッティングのバンドを、画像解析ソフト(Image Quant、アマシャム社製)を用いて定量した。一群3匹、KLF5siRNA投与群のみ一群5匹で定量を行った。有意差をTukey-kramer法で検定した。結果を図5に示す。
【0130】
図4によると、実施例1で得られた製剤の投与群のみ、KLF5mRNAの産生抑制が観察された。図5によると、実施例1で得られた製剤の投与群のみ、KLF5の産生抑制が観察された。
【0131】
参考試験例1
1×106個のMurine LL/2;lewis lung carcinomaをマウス(C57BL/6jjcl mouse、オス、5〜6週齢)の腋部皮下に投与した。腫瘍細胞注射2日後から8日後まで、1μgのsiRNAを含むsiRNA溶液(比較例2、比較例3)および生理食塩水を、それぞれ連日、腫瘍に直接投与した。
【0132】
経時的に、マウスに植え付けた腫瘍の大きさを測定した。腫瘍体積を、腫瘍の長径×(短径)2×1/2で計算し、有意差をTukey-kramer法で検定した。結果を図6に示す。
図6によると、比較例1で得られたKLF5siRNA溶液投与群で腫瘍の成長が抑制される傾向が見られたが、有意差は見られなかった。
【0133】
また、投与10日後にマウスから、腫瘍を摘出し、試験例2と同様に癌周辺切片をCD31免疫染色し、観察した。新生血管を示すCD31に、両群で明らかな差は見られなかった。
【実施例3】
【0134】
実施例1におけるsiRNAを、bcl2-siRNA(sense strand, 5’-GUGAAGUCAACAUGCCUGC -dTdT-3’;antisense strand, 5’-GCAGGCAUGUUGACUUCAC-dTdT-3’、ダーマコン社または北海道システムサイエンス社)に変え、同様に製剤を得た。製剤は3ロット以上調製した。
動的光散乱法(ゼータサイザーナノ-ZS、マルバーン製)でリポソームの平均粒子径を測定したところ、一例をとると、110 nmであった。
【0135】
比較例4
実施例1におけるsiRNAを、GL3-siRNA(sense strand, 5’-CUUACGCUGAGUACUUCGA -dTdT-3’;antisense strand, 5’-UCGAAGUACUCAGCGUAAG-dTdT-3’、ダーマコン社または北海道システムサイエンス社)に変え、同様に製剤を得た。製剤は3ロット以上調製した。なお、GL3-siRNAは、bcl2-mRNAの配列および該配列と相補的な配列を含まないRNAである。
動的光散乱法(ゼータサイザーナノ-ZS、マルバーン製)でリポソームの平均粒子径を測定したところ、一例をとると、99 nmであった。
【0136】
比較例5
実施例3と同じbcl2-siRNAを生理食塩水に溶解し、0.5mg/mL水溶液を調製した。
【0137】
試験例4
1×107個のヒト前立腺癌細胞DU145 (ATCC No.HTB-81)をヌードマウス(BALB/cAJcl-nu、オス、5週齢、日本クレア)の皮下に投与した。皮下投与17日後に腫瘍の大きさを測定し、150-350 mm3に達したヌードマウスを選択し、実施例3で得られた製剤を、尾静脈内投与した。投与は5日間連続して行った後、2日間休薬し、さらに5日間連続投与した。
投与した製剤は、予め生理食塩水でsiRNA濃度が0.75 mg/mLになるように希釈し、マウスに対して、投与量をsiRNA 150μg/shot/mouse/dayとした。
経時的に、マウスに植え付けた腫瘍の大きさを測定し、腫瘍の増殖を測定した。結果を図7に示す。
図7によると、実施例3で得られた製剤を投与した群では、無処理群と比べ、癌細胞の増殖が抑制された。
【0138】
試験例5
1×106個のヒト前立腺癌細胞PC-3 (ATCC No.CRL-1435)をヌードマウス(BALB/cAJcl-nu、オス、6週齢、日本クレア)の皮下に投与した。皮下投与6日後に腫瘍の大きさを測定し、80-120 mm3に達したヌードマウスを選択し、実施例3、比較例4、5で得られた製剤を、尾静脈内投与した。投与は5日間連続して行った後、2日間休薬し、さらに5日間連続投与した。
投与した製剤は、予め生理食塩水でsiRNA濃度が0.75 mg/mLになるように希釈し、マウスに対して、投与量をsiRNA 150μg/shot/mouse/dayとした。
経時的に、マウスに植え付けた腫瘍の大きさを測定し、腫瘍の増殖を測定した。結果を図8に示す。
図8によると、実施例3で得られた製剤を投与した群では、無処理群、比較例4で得られた製剤および比較例5で得られた溶液を投与した群と比べ、癌細胞の増殖が抑制された。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の標的遺伝子のmRNAの連続する15〜30塩基の配列および該配列と相補的な配列を含むRNAを封入したリポソームを含有する組成物を、ほ乳類等に投与することにより、該標的遺伝子の発現を抑制することができる。
【0140】
「配列表フリーテキスト」
配列番号1-発明者:山内雅博;鳥取恒彰;石原淳;八木信宏;加藤泰己
配列番号17-siRNA No. 1 センス鎖
配列番号18-siRNA No. 1 アンチセンス鎖
配列番号19-siRNA No. 2 センス鎖
配列番号20-siRNA No. 2 アンチセンス鎖
配列番号21-siRNA No. 3 センス鎖
配列番号22-siRNA No. 3 アンチセンス鎖
配列番号23-siRNA No. 4 センス鎖
配列番号24-siRNA No. 4 アンチセンス鎖
配列番号25-siRNA No. 5 センス鎖
配列番号26-siRNA No. 5 アンチセンス鎖
配列番号27-siRNA No. 6 センス鎖
配列番号28-siRNA No. 6 アンチセンス鎖
配列番号29-siRNA No. 7 センス鎖
配列番号30-siRNA No. 7 アンチセンス鎖
配列番号31-siRNA No. 8 センス鎖
配列番号32-siRNA No. 8 アンチセンス鎖
配列番号33-siRNA No. 9 センス鎖
配列番号34-siRNA No. 9 アンチセンス鎖
配列番号35-siRNA No. 10 センス鎖
配列番号36-siRNA No. 10 アンチセンス鎖
配列番号37-siRNA No. 11 センス鎖
配列番号38-siRNA No. 11 アンチセンス鎖
配列番号39-SEAP-siRNA センス鎖
配列番号40-SEAP-siRNA アンチセンス鎖

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性脂質を含有するリポソーム、カチオン性脂質を含有する脂質集合体またはカチオン性高分子を含有する高分子と、腫瘍に関連する標的遺伝子のmRNAの連続する15〜30塩基の配列を含む鎖および該配列と相補的な配列を含む鎖からなり、RNA干渉(RNAi)を利用した標的遺伝子の発現抑制作用を有する二本鎖RNAとを構成成分とする複合粒子および該複合粒子を被覆する脂質膜から構成され該脂質膜の構成成分は、エタノールに可溶な脂質膜の構成成分であり、該脂質膜は、中性脂質およびポリエチレングリコール化脂質、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステルまたはポリエチレングリコール脂肪酸エステルを構成成分とする、静脈内投与用の組成物。
【請求項2】
二本鎖RNAが、標的遺伝子のmRNAの連続する15〜30塩基の配列を含む鎖および該配列と相補的な配列を含む鎖からなる二本鎖RNAのそれぞれの鎖の3’端にヌクレオチドの1種または複数種のあわせて1〜6個が同一または異なって付加した二本鎖RNAである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
標的遺伝子が、腫瘍や炎症に関連する遺伝子である、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
標的遺伝子が、血管新生に関連する遺伝子である、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
mRNAがヒトまたはマウスのmRNAである、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
中性脂質が、リン脂質である、請求項1〜5記載の組成物。
【請求項7】
エタノールを含む液の中に、該脂質膜の構成成分が分散可能で、該複合粒子も分散可能な濃度でエタノールを含む液が存在する、請求項1〜6に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−10786(P2013−10786A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−205586(P2012−205586)
【出願日】平成24年9月19日(2012.9.19)
【分割の表示】特願2011−278409(P2011−278409)の分割
【原出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(000001029)協和発酵キリン株式会社 (276)
【Fターム(参考)】