説明

標識タンパク質及びその取得方法

【課題】標識タンパク質を取得することを課題とする。特に標識タンパク質と標識されていない該タンパク質を分離することを課題とする。
【解決手段】標識タンパク質であって、標的タンパク質と、少なくとも1つ以上の、アフィニティーキャリアに結合するアフィニティー相互作用ドメインと、少なくとも1つ以上の標識サイトを有する、被標識タンパク質と、さらに前記標識サイトの少なくとも1つに結合した標識試薬からなり、標識タンパク質と被標識タンパク質の、アフィニティーキャリアとの親和性が異なることを特徴とする標識タンパク質を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は標識タンパク質を高純度で取得するための、標識タンパク質、ならびにその取得方法に関する。特には、診断用途において有用な標識抗体、ならびにその精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
標識抗体をはじめとする標識タンパク質は癌などの病変の診断に用いられる。標識タンパク質は病変部位で特異的に存在している分子と結合するタンパク質、および標識物としての生体外からの検出を可能とする信号発信部や、そのタンパク質の物理化学的性質を改変する化学修飾剤からなる。標識物が信号発信部の場合、病変部の検出、画像化病変部位の造影などに用いられる。すなわち、標識タンパク質が特異的分子に結合し、その標識物が信号を発するため、その信号を検出する事で、特異的分子の在否、量、ならびにその位置情報を得る事が可能になる。また、タンパク質の機能を改変、制御する目的で、標識物として化学修飾剤が用いられる。
【0003】
標識タンパク質を診断剤や造影剤として使用する際、未標識タンパク質の混在は、競合阻害を引き起こし、検出感度を低下させる原因となる。したがって、標識タンパク質の分離精製法が望まれる。
【0004】
しかし、標識後の標識タンパク質と未標識タンパク質の分離は困難であり、特に標識試薬として蛍光色素や水溶性オリゴエチレングルコールなどの低分子化合物を使用する場合は、いっそう分離が困難となる。なぜなら、低分子化合物で標識する場合、標識前後で標識体の物理化学的な性質(分子サイズ・新疎水性・電荷など)が大きく変わらないためである。
【0005】
標識タンパク質の分離には、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィーなどを用いることができる。しかし、低分子量化合物を標識した標識タンパク質と未標識タンパク質を分離することはこれらを用いても簡単ではなく、詳細な条件検討が必要になる。その他の分離法として、標識試薬に対する抗体、例えば抗蛍光色素抗体を用いることで標識タンパク質を分離可能であるが、必ずしも抗体が入手できるわけではなく、汎用的ではない。
【0006】
標識タンパク質の精製方法として、標識タンパク質を未標識タンパク質から分離するための疎水性クロマトグラフィーを用いる方法(特許文献1)、ヒドロキシアパタイトカラムによる分離精製方法(特許文献2)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−325142号公報
【特許文献2】特開平2−2937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記の疎水性クロマトグラフィーを用いる方法は、精製する対象となるタンパク質が変性してしまうおそれがある。
また、ヒドロキシアパタイトカラムによる分離精製方法は、対象となるタンパク質と、ヒドロキシアパタイトのイオン交換や、静電相互作用を利用する。この性質上、ヒドロキシアパタイトカラムを用いた精製は次の(i)から(iii)のような課題がある。
(i)精製条件がサンプルに依存し、分離溶媒のpHや塩濃度、流速などのパラメーターを最適化しないといけないので、手間がかかる。
(ii)対象となるタンパク質の種類によっては、アパタイト表面への吸着をきっかけにして、変性してしまうおそれがある。
(iii)同じような分子表面(例えば、表面電位、親疎水性)を持つ物質は、同じように吸着・遊離すると考えられるため、分離が困難である。
本発明は、標識タンパク質を取得することを課題とする。特に標識タンパク質と標識されていない該タンパク質を分離することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を達成するための、標識タンパク質の取得方法について鋭意検討を行い、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明の第一は、標識タンパク質であって、標的タンパク質と、少なくとも1つ以上の、アフィニティーキャリアに結合するアフィニティー相互作用ドメインと、少なくとも1つ以上の標識サイトを有する、被標識タンパク質と、さらに前記標識サイトの少なくとも1つに結合した標識試薬からなり、標識タンパク質と被標識タンパク質の、アフィニティーキャリアとの親和性が異なることを特徴とする標識タンパク質を提供する。
【0011】
また、本発明の第二は、下記の一般式(1)で表されることを特徴とする標識タンパク質を提供する。
Z−(L)a−X−Y ・・・(1)
(ただし、上記の式においてZは標的タンパク質、Lはリンカーを構成するアミノ酸、Xはアフィニティーキャリアに結合するアフィニティー相互作用ドメインと、標識サイトとからなるポリペプチド、Yは前記標識サイトに結合した標識試薬であり、aは0または1である。ただし、上記一般式(1)からYを欠失した状態のタンパク質と上記一般式(1)で表される標識タンパク質では、アフィニティーキャリアとの親和性が異なる。)
この形態においては、一般式(1)からYを欠損した状態のタンパク質が被標識タンパク質に相当する。
【0012】
また、本発明の第三は、標識タンパク質を取得する方法であって、i)標的タンパク質とアフィニティー相互作用ドメインと標識サイトを有する被標識タンパク質を得る工程ii)前記被標識タンパク質の標識サイトに標識試薬を結合し、標識試薬が結合した標識タンパク質を得る工程、iii)標識タンパク質と標識試薬を有さない被標識タンパク質の混合物を上記アフィニティー相互作用ドメインに特異的に結合できるアフィニティーキャリアに接触させる工程、iv)前記アフィニティーキャリアへの親和性の差異により、標識タンパク質を選択する工程、を具備する方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の標識タンパク質は、アフィニティー精製によって、未標識の該タンパク質と分離することが可能になり、標識タンパク質を簡便に精製することができる。
また、本発明の標識タンパクの取得方法は、従来のカラムを利用した精製工程は2つの工程(サンプルを吸着させる工程と溶出する工程)であるのに対し、条件によっては、1つの工程(サンプルを流して、分離されなかったものを回収する工程のみ)で行うことも可能であり、優れている。
また、本発明の標識タンパク質は、抗体結合部位の外に標識物質が存在し、これが固定相に吸着するため、タンパク質の変性が極力抑えられる。
また、標識物質の有無を特異的に識別するため、同じような分子表面であっても分離が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る標識タンパク質を示す模式図を示す
【図2】金属キレートアフィニティークロマトグラフィーによるhu4D5−8 scFvタンパクの精製前後における、還元下のゲル電気泳動の結果を示す。
【図3】アフィニティー相互作用ドメイン及び標識サイトを含む配列と一本鎖抗体からなる標識タンパク質の模式図を示す。
【図4】本実施例で作製したPEG化抗体とPEG化前の抗体の還元型SDS−PAGE結果を示す。
【図5】本発明実施形態に係る方法の概略を示す
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る標識タンパク質について以下にその詳細を説明する。
【0016】
本発明は、被標識タンパク質と標識試薬とからなる標識タンパク質である。この被標識タンパク質は、標的タンパク質と、少なくとも1つ以上の、アフィニティーキャリアに結合するアフィニティー相互作用ドメインと、少なくとも1つ以上の標識サイトを有する。なお、前記標識試薬は、前記標識サイトの少なくとも1つに結合している。そして、前記標識タンパク質と前記被標識タンパク質の、アフィニティーキャリアとの親和性が異なる。
【0017】
本発明に係る標識タンパク質の一例として、下記の一般式(1)で表されることを特徴とする標識タンパク質が挙げられる。
Z−(L)a−X−Y ・・・(1)
(ただし、上記の式においてZは標的タンパク質、Lはリンカーを構成するアミノ酸、Xはアフィニティーキャリアに結合するアフィニティー相互作用ドメインと、標識サイトとからなるポリペプチド、Yは前記標識サイトに結合した標識試薬であり、aは0または1である。ただし、上記一般式(1)からYを欠失した状態のタンパク質と上記一般式(1)で表される標識タンパク質では、アフィニティーキャリアとの親和性が異なる。)
このうち、一般式(1)からYを欠失した状態のタンパク質(被標識タンパク質)が、上記被標識タンパク質である。
【0018】
本発明においては、標識タンパク質と被標識タンパク質の、アフィニティーキャリアとの親和性が異なるため、標識タンパク質と被標識タンパク質とを分離、精製することができる。
【0019】
本発明の実施形態に係る標識タンパク質を、図1(a)から(d)に示す。図1(a)は標識試薬として色素を、(b)は微粒子を、(c)はPEGを、(d)はPEG化リン脂質を用いた例である。なお、図中1は標的タンパク質、2はリンカーアミノ酸、3はアフィニティー相互作用ドメイン、4は標識サイト、5は色素、6は微粒子、7はPEG、8はPEG化リン脂質を示す。
【0020】
(標的タンパク質)
本実施形態において、標的タンパク質とは、標識されることを目的とするタンパク質をいう。標的タンパク質は、特に限定されることはなく、その例として、酵素、抗体、抗体フラグメント、受容体、サイトカイン、ホルモン、血清タンパク等が挙げられ、特に好適な例として抗体または抗体フラグメントが挙げられる。抗体とは、特定の抗原又は物質に応答して免疫系により誘発されるイムノグロブリンファミリーのタンパク質の総称であり、特定の分子を認識し、結合することが可能である。抗体又は抗体フラグメントは、ヒト、マウス、ラット、ラクダ、鳥、等、由来は問わず、さらにはキメラ体であってもよい。抗体はポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。抗体フラグメントとは、標的分子結合能を維持したまま低分子化した抗体の誘導体を指す。抗体フラグメントとしてはFabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)、重鎖可変(VH)ドメイン単独、軽鎖可変(VL)ドメイン単独、VHとVLの複合体、あるいはラクダ化VHドメイン、または抗体の相補正決定領域(CDR)を含むペプチド等がある。これらのうち、特に好ましくはペプチドリンカーで重鎖可変領域と軽鎖可変領域を連結した一本鎖抗体(scFv)、更には、ヒト化一本鎖抗体(scFv)が特に好ましい。抗体フラグメントは、抗体に比べ、分子サイズが小さくなる結果、高い組織浸透性や早いクリアランス速度を有する事から診断剤あるいは造影剤としての応用が期待される。これらの抗体あるいは抗体フラグメントは、特に病変部位で発現の高い分子と結合するものが望ましい。病変部位で発現の高い分子の例として、例えば、受容体型チロシンキナーゼHER2やガン胎児性抗原(Carcinoembryonic antigen;CEA)を挙げることができる。HER2遺伝子はがん関連遺伝子であり、多くの種類のがんでその遺伝子増幅がみられる。CEAは、糖タンパク質であり、内胚葉由来の消化系上皮腺癌、および乳癌や非小細胞肺癌などにおいて強く発現している。
【0021】
上記標的タンパク質として、下記のアミノ酸配列を有するポリペプチドであることが好ましい。
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号38)
【0022】
(アフィニティー相互作用ドメイン)
本実施形態において、アフィニティー相互作用ドメインとは、互いに特異的な親和性(アフィニティー)を有する2以上の物質において、その一方の物質あるいは物質の部分構造を含むドメインのことをいう。互いに特異的な親和性を示す2以上の物質の例として、抗原と抗体、酵素と酵素基質、受容体とホルモンなどのリガンド、キレートされた金属イオンとその捕捉体、核酸(DNA、RNA)とその相補結合、ビオチンとアビジンなどが知られている。アフィニティーキャリアとは、アフィニティー相互作用ドメインと特異的な親和性を有し、アフィニティー相互作用ドメインを含む分子の固定や精製に用いるための担体をいう。アフィニティーキャリアの例として、上記互いに特異的な親和性を有する2以上の物質のうちの一方を、デキストランやアガロースなどに固定化したものを挙げることができる。アフィニティーキャリアは、キャリア上に分離すべき物質の溶液を展開することで、アフィニティー相互作用ドメインを有する物質を分離精製するアフィニティー精製に用いることができる。
【0023】
本実施形態において、アフィニティー相互作用ドメインは相互作用可能な物質であれば特に制限されない。アフィニティー相互作用ドメインの例を挙げると、少なくとも4個以上のオリゴヒスチジンペプチド、マルトース結合ペプチド(MBP)、アルブミン結合ペプチド(ABP)、ビオチンを含むペプチドを挙げることができる。アフィニティーキャリアの例として、アフィニティー相互作用ドメインがマルトース結合ペプチド(MBP)であれば、マルトースあるいは抗MBP抗体、少なくとも4個以上の連続したヒスチジンペプチドであれば、ニトリロ三酢酸に結合したニッケル錯体化合物(Ni−NTA)あるいは抗オリゴヒスチジン抗体、アルブミン結合ペプチド(ABP)であれば、アルブミンあるいは抗アルブミン抗体、ビオチンを含むペプチドであれば、アビジン、アビジン誘導体、あるいは抗ビオチン抗体を用いる事が出来る。
【0024】
アフィニティー相互作用ドメイン自体のサイズが小さく、標的タンパクの機能を阻害しない点においては、アフィニティー相互作用ドメインはオリゴヒスチジンペプチド、特にヘキサペプチドHis−His−His−His−His−Hisが好ましい。オリゴヒスチジンは、Cu2+、Zn2+、Ni2+、Co2+、Mg2+などの2価金属イオン、特にNi2+イオンと結合する。これらの金属をキレートしたアフィニティーキャリア(例えば、ニトリロ三酢酸−キレート化Ni2+またはイミノ二酢酸−キレート化Ni2+)を用いて、オリゴヒスチジンペプチドをアフィニティー精製することができることが知られている。
【0025】
(標識サイト)
本実施形態において、標識サイトとは、標識試薬を連結するための部位のことをいう。標識サイトはアフィニティー相互作用ドメインあるいは標的タンパク質に含まれていてもよい。標識サイトとして、例えば、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基、マレイミド基、ヒドロキシスクシンイミド基、アルデヒド基、イソチオシアネート基、グリシジル基を有するアミノ酸残基を挙げることができる。これらの官能基はアミノ酸残基がもともと有するものであってもよいし、アミノ酸残基に化学反応などにより付加してもよい。
【0026】
標識サイトとして、より好適には、リジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、チロシンを用いることができる。反応特異性、標識サイト導入の容易性からは、標識サイトとしては、側鎖チオール基を有するシステインあるいは、側鎖εアミノ基を有するリジンがさらに好適に用いられ、その場合、側鎖チオールあるいは側鎖εアミノ基を介して標識試薬を結合することができる。
【0027】
(被標識タンパク質)
本実施形態で、被標識タンパク質とは、標的タンパク質と、少なくとも1つ以上の、アフィニティーキャリアに結合するアフィニティー相互作用ドメインと、少なくとも1つ以上の標識サイトを有するタンパク質をいう。本明細書中では、被標識タンパク質を、特に標識されていない状態のものを指すことがある。被標識タンパク質において、標識サイトはアフィニティー相互作用ドメインに含まれてもよく、本実施形態に係る被標識タンパク質は、アフィニティー相互作用ドメインと、標識サイトの両者を含む配列として、例えば以下の配列を有することができる。
His−His−His−His−His−His−Gly−Gly−Cys(配列番号1)
His−His−His−His−His−His−Cys(配列番号2)
Cys−His−His−His−His−His−His(配列番号3)
Cys−His−His−His−His−His−His−Cys(配列番号4)
Cys−His−His−His−His−His−His−Gly−Gly−Cys(配列番号5)
Ala−Ala−Ala−Leu−Glu−His−His−His−His−His−His−Gly−Gly−Cys(配列番号6)
Ala−Ala−Ala−Leu−Glu−His−His−His−His−His−His−Cys(配列番号7)
Ala−Ala−Ala−Leu−Glu−Cys−His−His−His−His−His−His(配列番号8)
Ala−Ala−Ala−Leu−Glu−Cys−His−His−His−His−His−His−Cys(配列番号9)
Ala−Ala−Ala−Leu−Glu−Cys−His−His−His−His−His−His−Gly−Gly−Cys(配列番号10)
Ala−Ala−Ala−Cys−His−His−His−His−His−His(配列番号11)
Ala−Ala−Ala−Gly−Cys−Gly−Gly−Leu−Glu−His−His−His−His−His−His(配列番号12)
Ala−Ala−Ala−Cys−Leu−Glu−His−His−His−His−His−His(配列番号13)
Ala−Ala−Ala−Leu−Cys−His−His−His−His−His−His(配列番号14)
【0028】
これらの配列は標的タンパク質の機能を損なわない限りにおいてN末端C末端のいずれに結合してもよく、また、標的タンパク質とこれらの配列の間には適宜アミノ酸残基を加えてもよい。標的タンパク質が一本鎖抗体である場合には、そのN末端側の配列が抗原認識に深く関わっているため、上記の配列はC末端側に付加されることが望ましい。
【0029】
(リンカーアミノ酸)
なお、本実施形態に係る被標識タンパク質は、図4で示すように、標的タンパク質、アフィニティー相互作用ドメイン、標識サイト、のそれぞれの間にリンカーアミノ酸を有してもよい。リンカーアミノ酸は、アフィニティー相互作用ドメインあるいは標識サイトと標的タンパク質を空間的に互いに分離する役割があり、それらの機能性に相互に悪影響を及ぼさない形であることが必要である。それらの空間配置的が重ならないように、該リンカーアミノ酸はフレキシブルであることが特に必要である。該アミノ酸の例を挙げると、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、スレオニン、バリン、トリプトファン、フェニルアラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、リジン、セリン及びチロシンなどがある。柔軟性を有し、水溶性を著しく低下させないのであれば、その組成や残基数は特に制限されないが、好ましくは1〜30アミノ酸の長さであり、特に好ましくは、1〜15アミノ酸からなるリンカーアミノ酸である。例えば、Leu−Gly、Gly−Ala、Ser−Ala、Gly−Gly、Gly−Gly−Gly、Gly−Gly−Gly−Gly(配列番号15)、Gly−Gly−Gly−Gly−Ser(配列番号16)、Ala−Ala−Ala−Leu−Glu(配列番号17)が、柔軟性の観点から好適に用いる事が出来る。いうまでもなく、リンカーアミノ酸はなくともよい。
【0030】
そして、上記被標識タンパク質の好適な例として、下記のアミノ酸配列を有するポリペプチドを挙げる事ができる。
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSAAALEHHHHHHGGC(配列番号21)
上記配列中、リンカーアミノ酸はAAALE(配列番号17)、アフィニティー相互作用ドメインと標識サイトはHHHHHHGGC(配列番号1)である。
【0031】
本実施形態において、被標識タンパク質は、遺伝子工学による組換えDNA技術を利用し、融合タンパク質として細菌や細胞により生産することで行うことができる。実施例で後述するように、標的タンパク質のN末端、あるいはC末端に、標識サイト、あるいは、アフィニティー相互作用ドメインのアミノ酸配列をコードする遺伝子cDNAを目的タンパク質をコードするcDNAと連結し、融合した形で発現させることができる。
【0032】
あるいは、被標識タンパク質は、標的タンパク質とアフィニティー相互作用ドメインと、標識サイトを化学反応により結合することによって作製してもよい。その際、標的タンパク質とアフィニティー相互作用ドメインと、標識サイトの互いの間にリンカーアミノ酸を含んで結合させてもよい。いずれにおいても、アフィニティー相互作用ドメイン、標識サイト及び標的タンパク質の機能が相互に悪影響を及ぼさない条件で行われるべきである。化学反応により結合する場合、標的タンパク質のアミノ末端、カルボキシ末端、又はリジン残基、又はシステイン残基との結合、好ましくは、標的タンパク質のカルボキシ末端との反応を介してアフィニティー相互作用ドメインや標識サイトを導入することができる。
【0033】
さらには、被標識タンパク質は、遺伝子組換えと化学反応の両方を組み合わせて作製してもよい。例えば、アフィニティー相互作用ドメイン、標識サイト、標的タンパク質をそれぞれ別個に遺伝子組換えにより作製してから、それらを化学反応により結合させてもよい。または、遺伝子組換えにより作製した標的タンパク質に、化学合成により作製したアフィニティー相互作用ドメインあるいは標識サイトを化学反応により結合してもよい。
【0034】
遺伝子組換えにより、被標識タンパク質、標的タンパク質、アフィニティー相互作用ドメイン、標識サイトなどを作製する場合は、宿主を介して、あるいはインビトロ翻訳法を介してタグ分子あるいは融合タンパク質を発現させて得ることができる。ベクターは、目的タンパク質を発現できるものであれば特に限定はされないが、例えば、プラスミド、コスミド、ファージミド、ウイルスベクターなどが利用できる。ベクターを作製するには、例えば、被標識タンパク質の発現であれば、融合タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するcDNAを公知の方法に従って合成し、適当なベクターに挿入することができる。アフィニティー相互作用ドメインとして用いることのできる、オリゴヒスチジン部位をコードするベクター(例えばNovagen社、pETシリーズ)は商業的に入手可能である。宿主は、前記ベクターがペプチドやタンパク質を発現することができるものであれば特に限定されない。例えば、動物細胞、昆虫細胞、大腸菌、酵母などであり、公知の形質転換方法によって宿主に導入し、宿主を適当に培養することで目的タンパク質を取得できる。また、インビトロ翻訳法においてタグ分子あるいはタンパク質を合成可能であり、市販のキット(例えばRoche社RTSシステム)を用いることができる。なお、遺伝子組換えに関する一連の操作は、上記に限定されるわけではなく、当業者であればMolecular Cloning, 3rd edition(Sambrook and Russell, CSHL PRESS)等に示されている公知の技術に基づいて容易に実施することができる。
【0035】
化学合成については、特に限定されるものではなく、例えば、市販のペプチド合成用樹脂を用いることができ、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させることができる。また、天然のアミノ酸はない新たな官能基を導入する場合、予め官能基を挿入したアミノ酸誘導体を原料とするペプチド合成、あるいはペプチド合成後に所定の化合物を反応させて官能基を導入することができる。
【0036】
(標識試薬)
本実施形態において、標識試薬は特に限定はないが、例として色素、微粒子、ポリエチレングリコール(PEG)、リン脂質、ポリエチレングリコール−リン脂質複合体を用いることができる。
【0037】
色素の特に好ましい例としては、蛍光色素を挙げることができ、とりわけ、近赤外蛍光色素、例えば、インドシアニングリーン(ICG)、Alexa Fluor(invitrogen社登録商標)750、Alexa Fluor790、Vivotag(invitrogen社商標)680(Invitrogen)、Vivotag−S(VisEn Medical社商標)680、Vivotag−S750、AminoSPARK(VisEn Medical社商標)680、AminoSPARK750(VisEn Medical,Inc.)、DyLight(Thermo Fisher Scientific社商標)680、DyLight750、Dylight800(Thermo Fisher Scientific,Inc.)、IRDye(LI−COR Biosciences社登録商標)700DX、IRDye800CW、IRDye800RS(LI−COR Biosciences,Inc.)、Cy(GE Healthcare UK社商標)5.5(GE Healthcare UK Ltd.)などが挙げられる。
【0038】
近赤外に吸収波長と蛍光波長を有するシアニン色素は特に好ましく、インドシアニングリーンあるいはその誘導体、Alexa Fluor(invitrogen社登録商標)750が特に好ましい。
【0039】
また、微粒子の好ましい例としては、酸化鉄や金の金属微粒子、高分子微粒子、タンパク質微粒子などが挙げられ、診断用途としては、酸化鉄微粒子を特に好適に用いる事ができる。体内診断における酸化鉄微粒子は、酸化鉄磁気共鳴イメージングの造影剤として既に臨床で用いられており、その平均直径は50〜100nm程度である。毛細血管径が2マイクロメートル程度であることから、粒子のサイズは大きくても1マイクロメートル以下、組織への浸透性を考慮すれば、5〜500ナノメートルのサイズが好ましい。
【0040】
さらに、PEGやリン脂質もタンパク質の機能制御用の標識試薬として有効である。PEGは生体に対する毒性が低く、生体内に投与する物質をPEG標識することで、その血中半減期を延長させる事が知られている。PEGは非イオン性の水溶性の高い高分子であり、大きな体積排除効果を有する。PEGの十分な体積排除効果を発揮するためには、その平均分子量が2k以上であることが望ましく、標識されるタンパク質の機能阻害を抑制するためには、その平均分子量が40k以下であることが望ましい。したがって、PEGの平均分子量は2kから40kであることが、特に好ましい。なお、本明細書において、ポリエチレングリコール(PEG)は、PEGの誘導体も含む。
【0041】
酸化鉄粒子やPEGでは、蛍光色素と比較して、分子サイズがかなり大きいため(数〜数十ナノメートル)、アフィニティー相互作用ドメインに対して、大きな立体障害となる。その結果、標識タンパク質とアフィニティーキャリアとのアフィニティーは被標識タンパク質とアフィニティーキャリアとのアフィニティーと比較して顕著に低下する。
【0042】
本実施形態において、リン脂質とは、天然リン脂質および合成リン脂質、ならびにそれらの誘導体のいずれでもよい。例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ジアシルグリセロホスホエタノールアミン、ジステアロイルグリセロホスホエタノールアミン(DSPE)、ジミリストイルグリセロホスホエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルグリセロホスホエタノールアミン(DPPE)、ジオレオリルグリセロホスホエタノールアミン(DOPE)、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ポリエチレングリコール−リン脂質複合体、卵リン脂質などが挙げられる。また、前記リン脂質はリガンドと共有結合する官能基を含んでいてもよく、例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、マレイミド基、カルボキシル基、およびビオチン基などが挙げられる。タンパク質に安定に疎水性を導入する目的で、特に、ポリエチレングリコール−リン脂質複合体(本明細書において、PEG化リン脂質ということがある)が利用できる。
【0043】
本実施形態に係る精製方法においては、上記の標識試薬により、より効果的に標識タンパク質を濃縮精製することが可能になる。
【0044】
また、標識試薬は上記の標識試薬に、さらに標識サイトと結合するための官能基が付されていてもよい。そのような官能基として、たとえば、NHSエステル、イソシアナート、マレイミド、ヒドラジド(アルデヒド反応性)、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、ヒドロキシル基などが利用できる。
【0045】
標識サイトと標識試薬の結合は、共有結合、イオン結合、配位結合など、特に限定されないが、特に好ましくは共有結合である。また、標識サイトに、標識試薬が結合する際には、4−(マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸スクシンイミドエステルなどの二官能性架橋試薬を介して結合してもよい。例えば、4−(マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸スクシンイミドエステルは標識サイトのシステイン側鎖のチオール基を修飾することで、ヒドロキシスクシンイミド基を介して標識試薬のアミノ基と結合できるようになる。
【0046】
本実施形態に係る標識タンパク質は、標識を有しない状態の被標識タンパク質と比較して、アフィニティーキャリアとの親和性が、大きく変化することを特徴する。アフィニティー相互作用ドメイン自体のアフィニティーキャリアとの親和性は、標識前後で変化はないが、標識タンパク質全体としては、アフィニティーキャリアとの親和性は標識前後で変化する。親和性は、その解離定数Kによって評価することが一般的である。しかし、標識タンパク質と被標識タンパク質とを分離するという本発明の目的に照らし合わせると、標識されていない被標識タンパク質がアフィニティーキャリアに強く結合することが重要であり、解離定数Kよりも、会合速度定数KONが重要である。
【0047】
親和性の差は会合速度定数Konが10倍異なることが好ましく、すなわち、標識タンパク質とアフィニティーキャリア間、被標識タンパク質とアフィニティーキャリア間の会合速度定数Konが10倍異なることが好ましい。特に、標識後に親和性が低下することが好ましく、標識タンパク質とアフィニティーキャリアとのKonが被標識タンパク質とアフィニティーキャリアとの会合速度定数と比較して10分の1以下であることが好ましい。例えば、被標識タンパク質とアフィニティーキャリアとのKonが10−1−1(Koff=10−4−1,KD=10−8M)であり、標識タンパク質とアフィニティーキャリアとのKonが10−1−1(Koff=10−4−1,KD=10−7M)である系を考える。系中の標識タンパク質あるいは被標識タンパク質のアフィニティー相互作用ドメインの全濃度を1μM、それと相互作用するアフィニティーキャリアの全濃度を1μMとする。単純化するために、アフィニティー相互作用ドメインとアフィニティーキャリアは1:1で相互作用すると仮定する。この条件下で、それぞれのアフィニティー相互作用ドメインとアフィニティーキャリアの結合の経時変化をシミュレーションすると、10分間のインキュベーション後では、被標識タンパク質(Kon=10−1−1)は83%がアフィニティーキャリアと結合している。一方、標識タンパク質(Kon=10−1−1)は36%がアフィニティーキャリアと結合している。従って、標識タンパク質とアフィニティーキャリアとのKonと被標識タンパク質とアフィニティーキャリアとのKonにおける10倍の差は、標識タンパク質と被標識タンパク質をアフィニティ−精製で分離精製するに十分な親和性の差である。実施例で後述するように、本実施形態に係る被標識タンパク質は、標識されることにより、標識試薬の空間的な阻害効果により、アフィニティーキャリアとの親和性が大きく低下する。これを利用する事で、標識体と未標識体を簡便に分離することが可能になる。
【0048】
標識タンパク質の親和性は、アフィニティー相互作用ドメインと標識試薬の、分子サイズ、空間的な位置、数、荷電状態などに依存する。以下は、アフィニティー相互作用ドメインがヘキサヒスチジンの場合を例に説明する。ペプチド結合単位の平均距離は、約0.38nmであり、ヘキサヒスチジンの分子長は約2.3nmである。ヘキサヒスチジン配列から0〜5残基の距離内に位置する標識サイト、例えばシステインに標識試薬が結合する場合、標識試薬のサイズが約2〜6nm以上であれば、立体障害を発揮させると考えられ、好適に用いる事ができる。シアニン蛍光色素の一般的なサイズは、約2nmであり、これらの色素をヘキサヒスチジン近傍に標識する場合は、可能な限り近接させて、具体的にはアミノ酸残基数で少なくとも5残基以内の位置に、標識させることが好ましい。分子サイズや距離のみならず、分子の荷電状態も親和性には影響する。例えば、アフィニティー相互作用ドメインがカチオン電荷を有する場合、標識試薬がマイナス電荷を有すれば、適切な距離に位置する場合、両者に静電相互作用が生じるため、標識タンパク質のアフィニティーキャリアとの親和性を効果的に低下する事が可能である。
【0049】
本実施形態に係る標識タンパク質を取得する方法について、図5を用いて、以下に詳細に説明する。
i)標的タンパク質とアフィニティー相互作用ドメインと標識サイトを有する被標識タンパク質を得る工程
上述の被標識タンパク質の項等に従って、標的タンパク質とアフィニティー相互作用ドメインと標識サイトを有する被標識タンパク質を得ることができる。
【0050】
ii)前記被標識タンパク質の標識サイトに標識試薬を結合し、標識試薬が結合した標識タンパク質を得る工程
上述の標識試薬の項等に従って被標識タンパク質の標識サイトに標識標識を結合し、標識タンパク質を得ることができる。
【0051】
iii)標識タンパク質と標識試薬を有さない被標識タンパク質の混合物を上記アフィニティー相互作用ドメインに特異的に結合できるアフィニティーキャリアに接触させる工程
上述のとおり、本実施形態に係る標識タンパク質は、標識試薬で標識することで、アフィニティーキャリアとの親和性が、被標識タンパク質と比較して変化する。この親和性の差を用いて、標識タンパク質を分離するための工程がこれらの工程である。上記iii)の工程は、具体的には、標識タンパク質と被標識タンパク質の混合物を、アフィニティー相互作用ドメインに特異的に結合するアフィニティーキャリアに接触させることである。例えば、前記アフィニティーキャリアを充填したカラムに流し込むことによって行われる。
【0052】
iv)アフィニティーキャリアへの親和性の差異により、標識タンパク質を選択する工程
アフィニティーキャリアへの親和性の差異が十分に大きく、被標識タンパク質のみがアフィニティーキャリアに結合し、標識タンパク質はアフィニティーキャリアに結合しない場合は、カラムを素通りした画分を回収することで標識タンパク質を選択することができる。図5では、この例を示している。さらに、必要であれば、この操作を繰り返す事で、さらに純度の高い標識タンパク質を得ることができる。
【0053】
一方、アフィニティーキャリアへの親和性の差異が上記ほどは大きくなく、標識タンパク質が前記アフィニティーキャリアに弱く結合する場合は、次のようにして、標識タンパク質を選択することができる。すなわち、標識タンパク質を溶出するが、被標識タンパク質を溶出しないような溶出液、溶出時間などの各条件を選択して溶出することで、標識タンパク質のみを選択的に溶出することができる。溶出液はたとえば、前記アフィニティーキャリアに特異的な親和性を有する物質を含むものを用いることができ、使用するアフィニティーキャリアに対応し、適時選択することができる。例えば、アフィニティー相互作用ドメインがオリゴヒスチジンであれば、イミダゾールまたはその誘導体を含む溶液を溶出液として利用できる。本工程はその他周知のアフィニティー精製方法に従って実施することができる。
【実施例】
【0054】
以下の実施例では具体的な試薬や反応条件を挙げるが、種々の変更が可能であり、それらもまた本発明の範囲に包摂される。以下の実施例は、本発明の理解を助けることが目的であり、本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【0055】
(実施例1 アフィニティー相互作用ドメイン及び標識サイトを含む抗体hu4D5−8 scFvの調製)
HER2へ結合するIgGの可変領域の遺伝子配列(hu4D5−8)を基に、一本鎖抗体(scFv)をコードする遺伝子hu4D5−8 scFvを作製した。まずhu4D5−8のVL、VH遺伝子をペプチド(GGGGS)をコードするcDNAで連結したcDNAを作製した。5’末端には制限酵素NcoI−を、3’末端には制限酵素NotIの認識サイトを導入した。以下に塩基配列を示す(制限酵素の認識サイトを下線で示す)。
【0056】
5’−CCATGGATATCCAGATGACCCAGTCCCCGAGCTCCCTGTCCGCCTCTGTGGGCGATAGGGTCACCATCACCTGCCGTGCCAGTCAGGATGTGAATACTGCTGTAGCCTGGTATCAACAGAAACCAGGAAAAGCTCCGAAACTACTGATTTACTCGGCATCCTTCCTCTACTCTGGAGTCCCTTCTCGCTTCTCTGGATCCAGATCTGGGACGGATTTCACTCTGACCATCAGCAGTCTGCAGCCGGAAGACTTCGCAACTTATTACTGTCAGCAACATTATACTACTCCTCCCACGTTCGGACAGGGTACCAAGGTGGAGATCAAAGGCGGTGGTGGCAGCGGTGGCGGTGGCAGCGGCGGTGGCGGTAGCGAGGTTCAGCTGGTGGAGTCTGGCGGTGGCCTGGTGCAGCCAGGGGGCTCACTCCGTTTGTCCTGTGCAGCTTCTGGCTTCAACATTAAAGACACCTATATACACTGGGTGCGTCAGGCCCCGGGTAAGGGCCTGGAATGGGTTGCAAGGATTTATCCTACGAATGGTTATACTAGATATGCCGATAGCGTCAAGGGCCGTTTCACTATAAGCGCAGACACATCCAAAAACACAGCCTACCTGCAGATGAACAGCCTGCGTGCTGAGGACACTGCCGTCTATTATTGTTCTAGATGGGGAGGGGACGGCTTCTATGCTATGGACTACTGGGGTCAAGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCGGCGGCCGC−3’ (配列番号18)
【0057】
上記遺伝子断片hu4D5−8 scFvをプラスミドpET−22b(+)(Novagen社)のT7/lacプロモーターの下流に挿入した。具体的には、制限酵素NcoI−とNotIで消化処理したpET−22b(+)(Novagen社)に、上記のcDNAをライゲーションする。
【0058】
その後、アフィニティー相互作用ドメインと標識サイトを含む配列を挿入する。具体例として、上記遺伝子産物のカルボキシ末端に、標識サイトとしてシステイン残基、及びアフィニティー精製のためのヒスチジンが6残基連続した6×Hisタグを有するタグ配列(Ala−Ala−Ala−Leu−Glu−His−His−His−His−His−His−Gly−Gly−Cys(配列番号6))について説明する。まず、上記のプラスミドを制限酵素NotIとXhoIで消化処理する。以下に示す塩基配列の合成DNA(配列番号19及び配列番号20)をアニ−リングによって2本鎖DNAとし、これを制限酵素NotIとXhoIで消化処理後、先のプラスミドへライゲーションさせる。この結果、HER2へ結合する一本鎖抗体(scFv)のC末端に本実施例にかかるアフィニティー相互作用ドメインと標識サイトを含む配列が融合したタンパク質の発現用プラスミドが調製された。
【0059】
5’−GGCCGCACTGGAACACCATCACCATCACCATGGTGGTTGTTGATGAC−3’(配列番号19)
【0060】
5’−TCGAGTCATCAACAACCACCATGGTGATGGTGATGGTGTTCCAGTGC−3’(配列番号20)
【0061】
このプラスミドを大腸菌(Escherichia coli BL21(DE3))に形質転換し、発現用菌株を得た。得られた菌株をLB−Amp培地4mlで一晩前培養後、全量を250mlの2×YT培地に添加し、28℃、120rpmで8時間振とう培養した。その後、終濃度1mMでIPTGを添加し、28℃で一晩培養した。培養した大腸菌を8000×g、30min、4℃で遠心分離し、その上清の培養液を回収した。得られた培養液の60%重量の硫酸アンモニウムを添加し、塩析によりタンパク質を沈殿させた。塩析操作した溶液を一晩4℃で静置後、8000xg、30分、4℃で遠心分離することで沈殿物を回収した。得られた沈殿物を20mM TrisHCl/500mM NaClバッファーに溶解し、1Lの同バッファーへ透析した。透析後のタンパク質溶液を、His・Bind(登録商標)Resin(Novagen社)を充填したカラムへ添加し、Niイオンを介した金属キレートアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。精製したhu4D5−8 scFvは、還元SDS−PAGEによりシングルバンドを示し分子量は約28kDaであることを確認した。結果を図2に示す。図2において、レーン1は分子量マーカー(BenchMark(登録商標)His−Tagスタンダード(Invitrogen))、レーン2は精製前のタンパク溶液、レーン3は精製後のタンパク質溶液(28kDa)をそれぞれロードした。アフィニティー相互作用ドメインと標識サイトを含む配列を含む発現させたタンパク質(一本鎖抗体)の模式図を図3に示した。図3においては、抗体のVLとVHドメイン、これらを連結するペプチドリンカー、さらにアフィニティー相互作用ドメイン及び標識サイトを含む配列がカルボキシ末端に連結されている。以下に調製された抗体のアミノ酸配列を示す(リンカー配列、アフィニティー相互作用ドメイン、ならびに標識サイトを含む配列を下線で示す。)。
【0062】
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSAAALEHHHHHHGGC(配列番号21)
以下、得られた精製タンパク質を抗体と略す。
【0063】
(実施例2 抗体の色素を用いた標識)
上記で調製した抗体を5mM EDTAを含むリン酸バッファー(2.68mM KCl/137mM NaCl/1.47mM KHPO/1mM NaHPO/5mM EDTA,pH7.4)にバッファー置換後、20倍モル量のトリ(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)によって、25℃で2時間、還元処理した。この還元処理した抗体を、25℃で2〜4時間、10倍モル量の蛍光色素、Alexa Fluor(invitrogen社登録商標)750―マレイミド、と反応させた。1時間の反応後、Superde×200 GL10/300カラム(GEヘルスケア株式会社)を用いてゲルろ過クロマトグラフィーにより、未反応のAlexa Fluor(invitrogen社登録商標)750―マレイミドを除去し、標識抗体を得た(以下、色素標識抗体と略す)。抗体に対する色素の標識率(モル比)は、吸光度測定より0.4〜0.6であった。
【0064】
(実施例3 抗体のPEGを用いた標識)
上記で調製した抗体を5mM EDTAを含むリン酸バッファー(2.68mM KCl/137mM NaCl/1.47mM KHPO/1mM NaHPO/ 5mM EDTA,pH7.4)にバッファー置換後、20倍モル量のトリ(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)によって、25℃で2〜4h、還元処理した。この還元処理した抗体を、25℃で2〜4時間、10倍モル量の20kDa PEG−マレイミド(日油株式会社)と反応させた。反応後、Superde×200GL10/300カラム(GEヘルスケア株式会社)を用いてゲルろ過クロマトグラフィーにより、未反応の20kDa PEG−マレイミドを除去し、PEG化抗体を得た。SDS−PAGEにより、PEG化前の抗体と分子量を比較することで、PEG化抗体の調製が確認できる。本実施例で作製したPEG化抗体とPEG化前の抗体の還元型SDS−PAGE結果を図4に示す。
【0065】
(実施例4 抗体への微粒子を用いた標識)
上記で調製した抗体を5mM EDTAを含むリン酸バッファー(2.68mM KCl/137mM NaCl/1.47mM KHPO/1mM NaHPO/5 mM EDTA,pH7.4)にバッファー置換後、20倍モル量のトリ(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)によって、25℃で2〜4時間、還元処理した。この還元処理した抗体を、25℃で2〜4時間、市販酸化鉄粒子nanomag−D−SPIO(maleimide−PEG修飾されたもの、平均直径20nm、コアフロント株式会社)と反応させる。反応後、BCAアッセイ等により粒子に固定化された抗体量を定量することで粒子への抗体の固定化を確認できる。
【0066】
(実施例5 標識前後の抗体とアフィニティキャリアの親和性評価)
上記で作製した標識抗体とアフィニティキャリアであるNi−NTAとの相互作用をBiacore Xシステム(GEヘルスケア株式会社)を用いて測定した。センサーチップは、ニトリロ三酢酸(NTA)を予め固定化したカルボキシルメチルデキストランチップ(GEヘルスケア株式会社)を用い、Ni塩水溶液を添加し、表面にニトリロ三酢酸(NTA)とニッケルの錯体を形成させた。約80 RUであった。ランニングバッファーとしてはPBS−T(2.68mM KCl/137mM NaCl/1.47mM KHPO/1mM NaHPO/0.005% Tween20,pH7.4)を用いて、100 nMの標識抗体または未標識抗体(コントロール)を流速30μl/分の条件下でインジェクトし結合能を評価した。測定時間は、注入時間(結合)120秒、注入停止後経過時間(解離)120秒であり、フローセル表面の洗浄は1サンプル測定毎にEDTA水溶液を用いてセンサーグラムがベースラインに戻るまで適量注入した。結合速度論解析実験においては、BIAevaluation3.0.2ソフトウェア(GE Healthcare)の1:1ラングミュアフィッティングモデルを用いてセンサーグラムを分析した。標識抗体のセンサー表面への吸着量(レゾナンスユニット:RU)は、コントロールに対して、約10倍低下した。この結果から、色素標識により、オリゴヒスチジンとNTAニッケル錯体との親和性が低下することがわかった。
【0067】
(実施例6 アフィニティー精製による標識タンパク質の濃縮精製)
アフィニティキャリアとして金属キレートカラム担体であるHis−Bind(Novagen社製)を用いる。カラム調製やサンプル負荷、及び洗浄工程は、前記業者の推奨方法に準拠し、室温(20℃)にて行うが、必要に応じて条件を最適化することができる。
【0068】
まず、上記実施例2〜4で調製された標識タンパク質を、NiをローディングしたHis−Bindカラムに添加する。展開溶媒はTris緩衝溶液を用いる。カラムを素通りしてくる溶液は全て回収する。目的の標識タンパク質はこの溶液に含まれる。標識されていないタンパク質はカラム内に強く保持される。目的である標識タンパク質が遊離しない場合は、低濃度のイミダゾール溶液、例えば5mM〜50mMの濃度、をカラムに添加することで、目的の標識タンパク質を回収する事ができる。一方、カラムに保持された未標識タンパク質は100mM〜1Mイミダゾール溶液にて溶出させ、回収することができる。回収された液の紫外・可視吸収スペクトル、あるいはSDS−PAGEにより、標識タンパク質の精製を確認できる。必要に応じ、上記の精製操作を繰り返す事により、精製度を上げることができる。
【0069】
(実施例7 アフィニティー相互作用ドメインと標識サイトを含む配列を融合タンパク質として調製するためのオリゴDNA)
本実施例に係るアフィニティー相互作用ドメインと標識サイトを含む配列を融合タンパク質として調製するためのオリゴDNAを以下に示す。実施例1に従い、ライゲーション反応により抗体遺伝子への連結が行われる。
【0070】
Ala−Ala−Ala−Leu−Glu−His−His−His−His−His−His−Cys(配列番号7)に対しては、
5’−GGCCGCACTGGAACACCATCACCATCACCATTGTTGATGAC−3’(配列番号22)
5’−TCGAGTCATCAACAATGGTGATGGTGATGGTGTTCCAGTGC−3’(配列番号23)
を、アニ−リングすることで2本鎖DNAとした後、制限酵素NotIとXhoIを用いたカセットライゲーションにより発現コンストラクトを調製できる。
【0071】
Ala−Ala−Ala−Leu−Glu−Cys−His−His−His−His−His−His(配列番号8)に対しては、
5’−GGCCGCACTGGAATGTCACCATCACCATCACCATTGATGAC−3’(配列番号24)
5’−TCGAGTCATCAATGGTGATGGTGATGGTGACATTCCAGTGC−3’(配列番号25)
を、アニ−リングすることで2本鎖DNAとした後、制限酵素NotIとXhoIを用いたカセットライゲーションにより発現コンストラクトを調製できる。
【0072】
Ala−Ala−Ala−Leu−Glu−Cys−His−His−His−His−His−His−Cys(配列番号9)に対しては、5’−GGCCGCACTGGAATGTCACCATCACCATCACCATTGTTGATGAC−3’ (配列番号26)
5’−TCGAGTCATCAACAATGGTGATGGTGATGGTGACATTCCAGTGC−3’ (配列番号27)
を、アニ−リングすることで2本鎖DNAとした後、制限酵素NotIとXhoIを用いたカセットライゲーションにより発現コンストラクトを調製できる。
【0073】
Ala−Ala−Ala−Leu−Glu−Cys−His−His−His−His−His−His−Gly−Gly−Cys(配列番号10)に対しては、
5’−GGCCGCACTGGAATGTCACCATCACCATCACCATGGTGGTTGTTGATGAC−3’ (配列番号28)
5’−TCGAGTCATCAACAACCACCATGGTGATGGTGATGGTGACATTCCAGTGCGGC−3’ (配列番号29)
を、アニ−リングすることで2本鎖DNAとした後、制限酵素NotIとXhoIを用いたカセットライゲーションにより発現コンストラクトを調製できる。
【0074】
Ala−Ala−Ala−Cys−His−His−His−His−His−His(配列番号11)に対しては、
5’−GGCCGCATGTCACCATCACCATCACCATTGATGAC−3’ (配列番号30)
5’−TCGAGTCATCAATGGTGATGGTGATGGTGACATGC−3’ (配列番号31)
を、アニ−リングすることで2本鎖DNAとした後、制限酵素NotIとXhoIを用いたカセットライゲーションにより発現コンストラクトを調製できる。
【0075】
Ala−Ala−Ala−Gly−Cys−Gly−Gly−Leu−Glu−His−His−His−His−His−His(配列番号12)に対しては、
5’−GGCCGCAGGTTGTGGTGGTC−3’ (配列番号32)
5’−TCGAGACCACCACAACCTGC−3’ (配列番号33)
を、アニ−リングすることで2本鎖DNAとした後、制限酵素NotIとXhoIを用いたカセットライゲーションにより発現コンストラクトを調製できる。
【0076】
Ala−Ala−Ala−Cys−Leu−Glu−His−His−His−His−His−His(配列番号13)に対しては、
5’−GGCCGCATGTC−3’ (配列番号34)
5’−TCGAGACATGC−3’ (配列番号35)
を、アニ−リングすることで2本鎖DNAとした後、制限酵素NotIとXhoIを用いたカセットライゲーションにより発現コンストラクトを調製できる。
【0077】
Ala−Ala−Ala−Leu−Cys−His−His−His−His−His−His(配列番号14)に対しては、
5’−GGCCGCACTGTGTCACCATCACCATCACCATTGATGAC−3’ (配列番号36)
5’−TCGAGTCATCAATGGTGATGGTGATGGTGACACAGTGC−3’ (配列番号37)
を、アニ−リングすることで2本鎖DNAとした後、制限酵素NotIとXhoIを用いたカセットライゲーションにより発現コンストラクトを調製できる。
【0078】
(実施例8 抗体のポリエチレングリコール−リン脂質複合体を用いた標識)
上記で調製した抗体を5mM EDTAを含むリン酸バッファー(2.68mM KCl/137mM NaCl/1.47mM KHPO/1mM NaHPO/5mM EDTA,pH7.4)にバッファー置換後、20倍モル量のトリ(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)によって、25℃で2h、還元処理した。この還元処理した抗体を、25℃で4h、4倍モル量の[N−[(3−Maleimide−1−oxopropyl)aminopropyl polyethyleneglycol−carbamyl]
distearoylphosphatidyl−ethanolamine(DSPE−PEG−MAL)](製品名SUNBRIGHT(登録商標)DSPE−020MA, 日油株式会社)と反応させた。反応後、Superdex 200GL 10/300カラム(GEヘルスケア株式会社)を用いたゲルろ過クロマトグラフィーにより、ポリエチレングリコール−リン脂質複合体を標識した抗体の粗精製物を得た。
【0079】
(実施例9 アフィニティー精製による色素標識抗体の濃縮精製)
サンプルとして、抗体に対する色素の標識率(モル比)が0.43の色素標識抗体を用いた。色素標識抗体の溶液1mLを、予めNiをローディングしたHis−Bindカラム(Novagen社製)に添加した(担体のベッドボリューム:1mL)。次いで、展開溶媒としてのTris緩衝溶液(pH8.0)を3mL添加し、カラムを通過した溶液(カラム通過分と略す)を全て回収した。目的の色素標識抗体はこの溶液に含まれる。色素標識されていない未標識抗体はカラム内に強く保持された。カラム通過分の紫外・可視吸収スペクトルにより、標識抗体の標識率を算出した結果、0.58であった。一方、カラムに保持された未標識抗体を300mMイミダゾール溶液にて溶出させ、回収した。回収された溶液の紫外・可視吸収スペクトルにより、本回収溶液中の抗体は色素標識されていないことが確認された。以上の結果より、本実施例にかかる精製方法において、標識抗体から未標識抗体を簡便に除去できる事が示された。
【符号の説明】
【0080】
1 タンパク質
2 リンカーアミノ酸
3 アフィニティー相互作用ドメイン
4 標識サイト
5 蛍光色素
6 微粒子
7 PEG
8 PEG化リン脂質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標識タンパク質であって、
標的タンパク質と、少なくとも1つ以上の、アフィニティーキャリアに結合するアフィニティー相互作用ドメインと、少なくとも1つ以上の標識サイトを有する、被標識タンパク質と、
さらに前記標識サイトの少なくとも1つに結合した標識試薬からなり、
標識タンパク質と被標識タンパク質の、アフィニティーキャリアとの親和性が異なることを特徴とする標識タンパク質。
【請求項2】
下記の一般式(1)で表されることを特徴とする標識タンパク質。
Z−(L)a−X−Y ・・・(1)
(ただし、上記の式においてZは標的タンパク質、Lはリンカーを構成するアミノ酸、Xはアフィニティーキャリアに結合するアフィニティー相互作用ドメインと、標識サイトとからなるポリペプチド、Yは前記標識サイトに結合した標識試薬であり、aは0または1である。ただし、上記一般式(1)からYを欠失した状態のタンパク質(被標識タンパク質)と上記一般式(1)で表される標識タンパク質では、アフィニティーキャリアとの親和性が異なる。)
【請求項3】
前記被標識タンパク質が、アフィニティー相互作用ドメインと、標識サイトを含む配列として、以下の配列番号1から5から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の標識タンパク質。
His−His−His−His−His−His−Gly−Gly−Cys(配列番号1)
His−His−His−His−His−His−Cys(配列番号2)
Cys−His−His−His−His−His−His(配列番号3)
Cys−His−His−His−His−His−His−Cys(配列番号4)
Cys−His−His−His−His−His−His−Gly−Gly−Cys(配列番号5)。
【請求項4】
前記被標識タンパク質が、アフィニティー相互作用ドメインと、標識サイトを含む配列として、以下の配列番号6から14から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の標識タンパク質。
Ala−Ala−Ala−Leu−Glu−His−His−His−His−His−His−Gly−Gly−Cys(配列番号6)
Ala−Ala−Ala−Leu−Glu−His−His−His−His−His−His−Cys(配列番号7)
Ala−Ala−Ala−Leu−Glu−Cys−His−His−His−His−His−His(配列番号8)
Ala−Ala−Ala−Leu−Glu−Cys−His−His−His−His−His−His−Cys(配列番号9)
Ala−Ala−Ala−Leu−Glu−Cys−His−His−His−His−His−His−Gly−Gly−Cys(配列番号10)
Ala−Ala−Ala−Cys−His−His−His−His−His−His(配列番号11)
Ala−Ala−Ala−Gly−Cys−Gly−Gly−Leu−Glu−His−His−His−His−His−His(配列番号12)
Ala−Ala−Ala−Cys−Leu−Glu−His−His−His−His−His−His(配列番号13)
Ala−Ala−Ala−Leu−Cys−His−His−His−His−His−His(配列番号14)
【請求項5】
前記標識タンパク質の、前記アフィニティーキャリアとの会合速度定数が、前記被標識タンパク質の、前記アフィニティーキャリアとの会合速度定数と比較して10分の1以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の標識タンパク質。
【請求項6】
前記標的タンパク質が、一本鎖抗体であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の標識タンパク質。
【請求項7】
前記標的タンパク質が、下記のアミノ酸配列を有するポリペプチドであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の標識タンパク質。
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号38)
【請求項8】
前記標識試薬が、蛍光色素からなることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の標識タンパク質。
【請求項9】
前記標識試薬が、酸化鉄微粒子からなることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の標識タンパク質。
【請求項10】
前記標識試薬が、リン脂質からなることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の標識タンパク質。
【請求項11】
前記標識試薬が、ポリエチレングリコール−リン脂質複合体からなることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の標識タンパク質。
【請求項12】
標識タンパク質を取得する方法であって、
i) 標的タンパク質とアフィニティー相互作用ドメインと標識サイトを有する被標識タンパク質を得る工程
ii) 前記被標識タンパク質の標識サイトに標識試薬を結合し、標識試薬が結合した標識タンパク質を得る工程、
iii) 標識タンパク質と標識試薬を有さない被標識タンパク質の混合物を上記アフィニティー相互作用ドメインに特異的に結合できるアフィニティーキャリアに接触させる工程、
iv) 前記アフィニティーキャリアへの親和性の差異により、標識タンパク質を選択する工程、
を具備する方法。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−32264(P2011−32264A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153036(P2010−153036)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】