標識ヌクレオチドを利用することによる核酸の新規測定方法
【課題】1つの系内に存在する未知核酸及び/又は既知核酸を含む少なくとも1種の核酸を、優れた感度で、且つ短時間、簡便、特異的に正確に測定できる新規方法を提供すること。
【解決手段】(A)少なくとも1種の鋳型としての核酸と、(C)少なくとも1種の核酸合成酵素と、(G)非標識ヌクレオチド及び蛍光標識核酸プライマーとを含有してなる核酸重合反応系で核酸重合反応を行い、核酸重合系の光学的キャラクターの変化若しくは変化量から鋳型核酸若しくはそれを鋳型として合成された核酸を測定することを特徴とする核酸の測定方法。
【解決手段】(A)少なくとも1種の鋳型としての核酸と、(C)少なくとも1種の核酸合成酵素と、(G)非標識ヌクレオチド及び蛍光標識核酸プライマーとを含有してなる核酸重合反応系で核酸重合反応を行い、核酸重合系の光学的キャラクターの変化若しくは変化量から鋳型核酸若しくはそれを鋳型として合成された核酸を測定することを特徴とする核酸の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の核酸を測定する方法、詳しくは、蛍光色素等の物質で標識されたヌクレオチドを用いて、未知核酸及び/又は既知核酸(標的核酸)の少なくとも1種の核酸を測定することができる核酸の測定方法に関する。又、複数の核酸の場合は同時に測定できる。
【背景技術】
【0002】
核酸プローブを用いて標的核酸を測定する方法は数多く知られている。例えば、
(1)FRET(fluorescence resonance energy transfer)現象を利用したプローブを用いる方法(例えば、非特許文献1及び2参照)。
(2)蛍光色素が特定の核酸塩基と相互作用して蛍光発光量を減少させる特性を利用したプローブを用いる方法(例えば、非特許文献3参照)等で代表される方法等、数多くの例を挙げることができる。これらの方法は、均一系で、蛍光色素等で標識された核酸プローブを標的核酸にハイブリダイズさせることで及び/又は標的核酸を増幅させることで、核酸プローブに標識された蛍光色素等の光学的キャラクター(蛍光強度)の変化若しくは変化量を測定するものである。以下、本件明細書全体において当該核酸プローブを「均一溶液系核酸プローブ」と呼ぶ。又は単に「核酸プローブ」という場合がある。
【0003】
しかしながら、上記の方法において必要な均一溶液系核酸プローブは、蛍光物質及び/又はクエンチャー物質でオリゴヌクレオチドを標識する必要がある。又、当該プローブの設計法は、標準化されていない。このことが、時間と費用の浪費に繋がっていた。又、測定感度が改善されてきてはいるが、更なる改善が要望されていた。又、自然界の1つの系内に存在する未知核酸及び/又は既知核酸を含む複数の核酸を同時に、優れた感度で、且つ短時間、簡便、特異的、正確に測定できるものではない。
【0004】
【非特許文献1】Morrison et al.,Anal. Biochem.,vol.183,231-244、1989
【非特許文献2】Xiangnin Chen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.94, 10756-10761, 1997
【非特許文献3】KURATA et al.,Nucleic acids Research,2001,vol.29,No.6 e34
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、前記の状況に鑑み、1つの系内に存在する未知核酸及び/又は既知核酸を含む少なくとも1種の核酸を、優れた感度で、且つ短時間、簡便、特異的に正確に測定できる新規方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、核酸の合成を行う過程で、蛍光標識ヌクレオチド或はクエンチャー標識ヌクレオチドを核酸重合体に取り込ませた場合、標識された蛍光色素の蛍光キャラクターが、取り込ませる前に較べて、著しく変化することを知見した。本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。
【0007】
即ち、本発明は、
1)(A)少なくとも1種の鋳型としての核酸と、(B)(a)蛍光色素と、(b)クエンチャー物質及び(c)蛍光色素若しくはクエンチャー物質を含有する免疫関連物質からなる群から選ばれた少なくとも1種の標識物質で標識された、少なくとも1種のヌクレオチドモノマーと、(C)少なくとも1種の核酸合成酵素を含有してなる核酸重合反応系で核酸重合反応を行い、核酸重合系の光学的キャラクターの変化若しくは変化量から鋳型核酸若しくはそれを鋳型として合成された核酸を測定することを特徴とする核酸の測定方法を提供する。
【0008】
上記本発明の方法においては、
2)標識物質が、少なくとも1種のドナー蛍光色素と少なくとも1種のアクセプター蛍光色素との組み合わせであることが好ましい。
3)又、標識物質が、少なくとも1種の蛍光色素と少なくとも1種のクエンチャー物質の組み合わせであることが好ましい。
4)又、核酸重合系が、(D)標識物質で標識されていない少なくとも1種のヌクレオチドモノマーを含むことが好ましい。
【0009】
5)又、核酸重合系が、更に、(E)鋳型核酸に特異的に結合する少なくとも1種のオリゴヌクレオチドからなる核酸プライマーを含むことが好ましい。
6)上記5)の方法においては、核酸プライマーが、(E’)前記1)に記載の標識物質で標識されていることが好ましい。
7)又、前記1)の方法では、核酸重合系が、非標識ヌクレオチドを含有することが好ましい。
8)上記7)の方法では、蛍光標識及び/又は非標識ヌクレオチドが、グアニン(g)を含有するか、及び/又は鋳型核酸が少なくとも1つのグアニン(g)を含むことが好ましい。
9)前記1)の方法では、核酸重合系が、更に、前記1)に記載のB成分を含まず、非標識ヌクレオチド及び蛍光標識核酸プライマーを含有することが好ましい。
【0010】
10)上記9)の方法では、非標識ヌクレオチドがグアニン(g)塩基を含むことが好ましい。
11)前記1)、7)及び9)の方法では、非標識ヌクレオチド及び/又は標識ヌクレオチドが、3リン酸体であることが好ましい。
12)又、本発明は、鋳型核酸と、少なくとも1種の蛍光色素及び/又は少なくとも1種クエンチャー物質で標識された、少なくとも1種のジデオキシヌクレオチドモノマーと、核酸合成酵素とを含有する核酸重合系で核酸重合反応を行い、蛍光強度の変化若しくは変化量から鋳型核酸若しくはそれを鋳型とする核酸重合体を測定することを特徴とする核酸の測定方法を提供する。
13)上記12)の方法では、核酸重合系が、標識ヌクレオチド又は非標識ヌクレオチド或は両者を含む系であることが好ましい。
14)前記12)の方法では、核酸重合系が、非標識核酸プライマーを含むことが好ましい。
15)前記1)、7)、9)及び12)の方法では、核酸重合系が、(F)核酸に結合することで蛍光を発する蛍光色素を含有していることが好ましい。
【0011】
16)又、本発明は、鋳型核酸と、非標識ジデオキシヌクレオチドモノマーと、標識ヌクレオチドと、非標識核酸プライマーと、核酸に結合することで蛍光を発する少なくとも1種の蛍光色素と、核酸合成酵素とを含有する核酸重合系で核酸重合反応を行い、蛍光強度の変化若しくは変化量から鋳型核酸若しくはそれを鋳型とする核酸重合体を測定することを特徴とする核酸の測定方法を提供する。
17)前記12)、16)の方法においては、非標識ジデオキシヌクレオチド、標識ジデオキシヌクレオチド、非標識ヌクレオチド及び/又は標識ヌクレオチドが、3リン酸体であることが好ましい。
18)前記1)、7)、9)、12)、16)の方法では、核酸合成酵素が、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、及びそれらの改変体からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
標識ヌクレオチドを核酸重合体に取り込ませる核酸重合反応を行う際に、核酸重合系の蛍光強度変化をモニタリングすることで、ハイブリダイズすることにより蛍光強度の変化する均一溶液系核酸プローブが不要な、簡便・迅速且つ低コストで高感度な核酸の測定方法が実現する。この方法により、自然界の2系内に存在する遺伝子等の全核酸が測定できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明を詳細に説明する前に、特許請求の範囲を含む本明細書全体にわたって使用する用語の定義をする。本発明に用いている用語は、特別な断りがない場合、生物学、分子生物学、遺伝学若しくは遺伝子工学、微生物学若しくは微生物工学等で一般的に使用されている用語と同じ意味である。
【0014】
ヌクレオチドモノマーとは、少なくとも1種の核酸合成酵素により核酸重合体に取り込まれ得るヌクレオチドのことをいう。好適にはオリゴヌクレオチドの核酸の構成成分のモノヌクレオチドであるが、本発明においては、モノヌクレオチドの他に、2〜30量体のオリゴヌクレオチドを含む。好適な例としは、ヌクレオシドモノリン酸体(NMP)、2リン酸体(NDP)及び3リン酸体(NTP)を挙げることができる。より好適な例としては、3リン酸体である。塩基として、核酸構成成分のもの、即ち、アデニン、グアニン、ウラシル、シトシン、チミン、それらの誘導体、RNAに含まれる微量成分等を挙げることができる。糖はリボース、デオシキシリボースである。前記のオリゴヌクレオチドは、鋳型核酸にハイブリダイズするものであるならば、エキソヌクレアーゼ活性を有さない核酸合成酵素(例えば、DNAポリメラーゼ)とリガーゼを用いることにより、核酸重合系で核酸重合体に取り込まれる。
【0015】
ヌクレオシドモノリン酸体又は2リン酸体が用いられる理由は、核酸重合系に当該リン酸体を3リン酸体にするキナーゼ(kinase)類、ホスホリラーゼ類若しくはそれらの生成系を含んでいてもよいからである。例えば、精製していない粗鋳型核酸若しくは粗核酸合成酵素には、これらの酵素及び/又は生成系を含む例が多い。核酸重合系にATPが過分に含まれている場合は、ATP以外の3リン酸体が形成し易い。即ち、本発明の核酸重合系とは、これらの酵素及び/又は生成系を含むことができると定義する。尚、標識ヌクレオチド及び免疫関連標識ヌクレオチドについても前記と同様で、3リン酸体がより好適である。又、ジデオキシヌクレオチドモノマー及び標識若しくは非標識ジデオキシヌクレオチドについても前記と同様で、3リン酸体がより好適である。
【0016】
標識ヌクレオチドとは、後記する蛍光色素、クエンチャー物質等の少なくとも一種で標識されたヌクレオチドモノマーのことをいう。そして、蛍光色素で標識されたヌクレオチドモノマーを蛍光標識ヌクレオチドと、又、クエンチャー物質で標識されたヌクレオチドモノマーをクエンチャー標識ヌクレオチドという。更にドナー蛍光色素で標識された蛍光標識ヌクレオチドをドナー標識ヌクレオチドと、又、アクセプター蛍光色素で標識された蛍光標識ヌクレオチドをアクセプター標識ヌクレオチドという。当該標識ヌクレオチドについては、詳しく後記した。
非標識ヌクレオチドとは、前記ような標識物質で標識されないヌクレオチドモノマーのことをいう。
核酸プライマーとは、鋳型核酸に特異的に結合する1種のプライマーのことをいう。又、核酸プライマーが、蛍光色素、及びクエンチャー物質で標識されたものを、順に、蛍光標識核酸プライマー及びクエンチャー標識核酸プライマーという。又、2者を総称して、標識核酸プライマーという。アデニン、グアニン、ウラシル、シトシン、チミンを順にA若しくはa、G若しくはg、U若しくはu、C若しくはc、T若しくはtとした。核酸に結合することで、蛍光を発する蛍光色素を核酸特異的蛍光色素と定義した。
【0017】
鋳型核酸とは、核酸重合体の鋳型になり得るものである。本発明においては、未知の核酸(「未知核酸」という場合がある。)、既知の核酸(「標的核酸」という場合がある。)、又、それらの混合物を指す。そして、それらはDNA及び/又はRNAである。即ち、本発明の鋳型核酸とは、測定を目的とした特定の核酸(標的核酸)とは限らず、不特定の核酸をも含む。勿論、遺伝子等を含む。それらの核酸が混在していもよい。又、濃度又は大きさの大小も問わない。即ち、1つの系内に存在する特定及び不特定の核酸をも意味する。即ち、鋳型核酸とは、本発明方法により重合及び/又は増幅されて検出若しくは測定できる核酸のこという。
【0018】
核酸合成酵素とは、前記の鋳型核酸を鋳型として前記の非標識ヌクレオチド及び/又は標識ヌクレオチドを重合して、核酸重合体を合成する能力を有するものであればどのようなものでもよい。代表的な例として、DNAポリメラーゼ類、RNAポリメラーゼ類、逆転写酵素類(reverse transcriptase)、リガーゼ類、各種のキナーゼ類、ヌクレオチド3リン体生成系、及びそれらの遺伝子工学的に改変された改変蛋白質を有する酵素類を挙げることができる。DNAポリメラーゼ類、RNAポリメラーゼ類及び逆転写酵素類は、リガーゼ類、各種のキナーゼ類、ヌクレオチド3リン体生成系を含んでいる酵素類は、本発明においては、好適に利用され得る。本発明においては、これらのものが、単独若しくは併用で用いられる。
【0019】
勿論、酵素は、これら酵素の活性を十分に発揮させる各種因子を含んでいても、いなくともよい。DNAポリメラーゼの場合は、エキソヌクレアーゼ活性を有していても、有さなくてもよい。精製されたもの若しくはされない粗酵素の状態のどちらでもよい。又、酵素の起源(微生物、動物、植物)については特に限定されない。好適には耐熱性を有するものがよい。好適な具体例として、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を欠損させたVent(exo-)DNA Polymerase(サーモコッカス・リトラリス由来)、Tgo(exo-) DNA Polymerase、ThermoSequenase DNA Polymerase(Armersham社製)、AmpliTagGold polymerase、T7 Sequenase DNA Polymerase等を挙げることができる。
【0020】
蛍光色素等で標識された核酸重合体又は核酸プライマーと鋳型核酸又は核酸重合体等の対応核酸とのハイブリダイゼーションによる複合体のことをハイブリッド(又はハイブリット)複合体、核酸重合体・鋳型核酸複合体、核酸プライマー・鋳型核酸複合体、核酸プライマー・核酸重合体複合体という。
【0021】
本発明において「核酸を測定する」、或いは「核酸濃度を測定する」なる用語は、標的核酸の濃度を定量することは勿論のこと、定量的検出をすること、定性的検出をすること、核酸重合系の蛍光強度を単に測定するか若しくは単にモニタリングすること、単なる検出をすること、又、核酸を分析若しくは解析すること、多型(SNPを含む。)及び/又は変異の測定、解析、又は分析すること等を意味するものとする。又、このようにして得られたデーターを公知の蔵田らの方法(EP特許公開公報、EP1 046 717 A9号)で解析して、1つの系内に存在している濃度(コピー数等)を求める操作等も含めるものとする。又、公知の方法(基礎生化学実験法、第4巻(核酸・遺伝子実験)、日本生化学会編、東京化学同人社)等により塩基配列を決める操作等も含めるものとする。
【0022】
又、核酸の重合反応とは、単なる重合(合成、又は伸長反応)反応だけでなく、核酸の増幅反応、例えば、PCR方法、リアルタイム定量的PCR法、ICAN方法、LAMP方法、NASBA方法、TAMA方法、LCR方法、それらの方法に伴う、ハイブリダイゼーション反応、伸長、変性等を含める。そして、重合反応の具体的例として以下の例を挙げることができる。
(1)鋳型核酸がDNAで、核酸合成酵素がDNAポリメラーゼ若しくは改変RNAポリメラーゼで、ヌクレオチドモノマー、蛍光標識ヌクレオチド及びクエンチャー標識ヌクレオチドが、デオキシリボヌクレオチド体で、核酸重合体がDNAである反応。
(2)鋳型核酸がDNAで、核酸合成酵素がRNAポリメラーゼ若しくは改変DNAポリメラーゼで、ヌクレオチドモノマー、蛍光標識ヌクレオチド及びクエンチャー標識ヌクレオチドがリボヌクレオチド体で、核酸重合体がRNAである反応。
【0023】
(3)鋳型核酸がRNAで、核酸合成酵素が逆転写酵素で、ヌクレオチドモノマー、蛍光標識ヌクレオチド及びクエンチャー標識ヌクレオチドがデオキシリボヌクレオチド体で、核酸重合体がDNAである反応。
(4)鋳型核酸がRNAで、核酸合成酵素が逆転写酵素及びRNAポリメラーゼで、ヌクレオチドモノマー、蛍光標識ヌクレオチド及びクエンチャー標識ヌクレオチドがリボヌクレオチド体及びデオキシリボヌクレオチド体で、核酸重合体がRNAである反応、即ち、DNA合成反応を介する反応。
【0024】
(5)上記の反応系にリガーゼを併用する反応系。
(6)上記の反応系に各種のキナーゼ類及び/又はヌクレオチド3リン体生成系を併用する反応系。
上記において、好ましいものは(1)〜(4)で、より好ましいものは(1)〜(3)で、特に好ましいものが、(1)及び(2)である。
【0025】
「光学的キャラクター」なる用語は、ヌクレオチドを標識する蛍光色素、クエンチャー物質等の各種の吸収スペクトル、若しくは蛍光発光スペクトル、及びそれらの吸収強度、偏光、蛍光発光、蛍光強度、蛍光寿命、蛍光偏光、蛍光異方性等の光学的特性等のこという(「蛍光強度」で総称する。)。又、標識ヌクレオチド等に標識されている少なくとも1つの蛍光色素等について少なくとも1種以上の測定波長で測定された測定値を総合的に評価して得た性質のこともいう。例えば、核酸の変性反応の蛍光強度曲線等もその1つである。
【0026】
本発明において、「蛍光強度の変化若しくは変化量から」なる用語は、本発明の核酸重合体に基づく蛍光強度の変化だけでなく、当該核酸重合体に、蛍光色素及び/又はクエンチャーで標識された均一溶液系核酸プローブをハイブリダイズさせたときの、そのハイブリダイゼーション前後の蛍光強度の変化若しくは変化量をも含めるものとする。
【0027】
又、核酸重合系は、標識又は非標識ジデオキシヌクレオチドを、標識又は非標識ヌクレオチドと共に含むこともできる。この場合の核酸の重合は、当該ジデオキシヌクレオチドが反応に利用された場合は、利用された時点でストップする。1種の標的核酸が鋳型となっている場合は、それを鋳型とする鎖長の異なる核酸重合体が多数得られる。これらの核酸重合体を電気泳動方法、液体クロマト方法等で分析・解析することにより、標的核酸について重要な情報が得られる。このような分析・解析においても前記標識物質の蛍光強度の変化が利用される。
【0028】
蛍光標識ヌクレオチド、クエンチャー標識ヌクレオチド及び核酸特異的蛍光色素について詳しく記載する。本発明でいう蛍光色素(「蛍光物質」という場合もある。)とは、一般に核酸プローブに標識して、核酸の測定・検出に用いられている蛍光色素の類である。例えば、フルオレセイン(fluorescein)又はその誘導体類{例えば、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate)(FITC)若しくはその誘導体等}、Alexa 488、Alexa 532、cy3、cy5、6-joe、EDANS、ローダミン(rhodamine)6G(R6G)又はその誘導体{例えば、テトラメチルローダミン(teramethylrhodamine)(TMR)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(tetramethylrhodamine isothiocyanate)(TMRITC)、x−ローダミン(x-rhodamine)}、テキサスレッド(Texas red)、ボデピー(BODIPY)FL{ボデピー(BODIPY)は商標名、FLは商品名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国;以下同様}、ボデピー(BODIPY)FL/C3、ボデピー(BODIPY)FL/C6、ボデピー(BODIPY)5-FAM、ボデピー(BODIPY)TMR、又はその誘導体{例えば、ボデピー(BODIPY)TR、ボデピー(BODIPY)R6G、ボデピー(BODIPY)564}、ボデピー(BODIPY)581等を挙げることができる。
【0029】
上記の中でも、FITC、EDANS、テキサスレッド、6-joe、TMR、Alexa 488、Alexa 532、BODIPY FL/C3、BODIPY R6G、BODIPY FL、Alexa 532、BODIPY FL/C6、BODIPY TMR、5-FAM、BODIPY 493/503、BODIPY 564、BODIPY 581、Cy3、Cy5、Texas red、x-Rhodamine等を好適なものとして挙げることができる。
【0030】
クエンチャー物質とは、前記蛍光色素に作用して、その発光を抑制若しくは消光する物質である。例えば、Dabcyl、QSY7(モルキュラー・プローブ社製)、QSY33(モルキュラー・プローブ社製)、Ferrocene又はその誘導体、methyl viologen、N,N'-dimethyl-2,9-diazopyrenium等、好適にはDabcyl等を挙げることができる。
【0031】
本発明の蛍光標識ヌクレオチドとは、少なくとも1種の蛍光色素で標識されたヌクレオチドモノマーである。その標識は5’側の糖部位及び/又はそのリン酸部位、塩基部位、3’側の糖部位及び/又はリン酸部位のどちらでもよい。そして、蛍光色素とは前記に例示されるような色素で、ドナー色素となり得る色素、アクセプター色素となり得る色素の双方を意味するものとする。又、同様に、クエンチャー標識ヌクレオチドとは前記に例示されるようなクエンチャー物質で標識されたヌクレオチドモノマーである。尚、蛍光標識ヌクレオチドとクエンチャー標識ヌクレオチドの双方を総称して、「標識ヌクレオチド」という場合がある。蛍光標識ジデオキシヌクレオチド及びクエンチャー標識ジデオキシヌクレオチドについても前記と同様である。この場合は、糖の3’位にOH基がないので、核酸重合に当該ヌクレオチドが反応に利用された場合は、利用された時点で、核酸重合反応がストップする。
【0032】
標識ヌクレオチドにおいて糖の3’OH基に標識されている場合は、核酸の重合は、当該ヌクレオチドが反応に利用された場合は、利用された時点で重合がストップする。1種の標的核酸が鋳型となっている場合は、それを鋳型とする鎖長の異なる核酸重合体が多数得られる。これらの核酸重合体を電気泳動方法、液体クロマト方法等で分析・解析することにより標的核酸について重要な情報が得られる。このような分析・解析においても標識物質の蛍光強度の変化が利用される。
【0033】
ヌクレオチドモノマーに蛍光色素、クエンチャー物質を標識するには、従来公知の標識法のうちの所望のものを利用することができる。標識部位は、5’リン酸部のOH基、塩基のOH基、アミノ基である。アミノ基に標識する場合、キット試薬、例えば、Uni-link aminomodifier(CLONTECH社製、米国)、フルオ・リポターキット(FluoReporter Kit)F-6082、F-6083、F-6084、F-10220(いずれもモルキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)を用いるのが便利である。そして、常法に従って当該ヌクレオチドモノマーに前記標識物質分子を結合させることができる。
【0034】
OH基に標識する場合、5'Amino-Modifier C6キット(Glen Research社、米国)等を用いる。例えば、塩基のOH基に前記標識物質分子を結合させる場合は、先ず、常法に従ってOH基にスペーサーとして、例えば、-(CH2)n-SHを導入する。この場合、nは3〜8、好ましくは6である。このスペーサーにSH基反応性を有する前記標識物質又はそれらの誘導体を結合させることにより標識ヌクレオチドモノマーを合成できる。アミノ基に標識する場合も同様である。リボース及びデオキシリボースの3’位のOH基、リボースの2’位のOH基、又、5’リン酸部位のOH基を前記と同様にして標識することができる。このようにして合成された前記標識物質で標識された各種のヌクレオチドモノマーは、逆相等のクロマトグラフィー等で精製して、本発明で用いる標識ヌクレオチドとすることができる。勿論、委託合成を行って入手してもよい。
【0035】
本発明で用いる核酸プライマーとは、核酸重合体の前駆体、即ち、プレカーサー(precursor)と成り得るものであり、オリゴヌクレオチドからなるものである。デオキシリボース体、リボース体のどちらでもよい。そして鎖長は公知の核酸合成に利用できるものでよく、特に限定されないが、例示するならば、2〜50塩基、好適には、3〜40塩基、より好適には5〜30塩基である。鋳型核酸に特異的にハイブリダイズする塩基配列を有するもの、又、単に共通の塩基配列若しくはコンセンサス配列だけを有するもののどちらも用いることができる。前者の場合は、特定の鋳型核酸を鋳型とする核酸重合体が得られる。後者の場合は不特定のものが得られる。
【0036】
本発明の前記プライマーは、前記の蛍光色素、クエンチャー物質で標識されていても、いなくとも用いることができる。標識はこれらの標識物質の少なくとも1種で為されていればよい。そして、好ましい核酸プライマーは5’末端及び/又は鎖中の塩基が標識され、3’末端の糖の3’OH基が標識されていないものである。この場合は得られる核酸重合体はプライマーを標識した標識物質で標識されたものになる。勿論、3’末端の糖の3’OH基が標識されたものも用いることができる。この場合は単に核酸プローブとして利用される。
【0037】
本発明の核酸プライマーのオリゴヌクレオチドは、通常の一般的オリゴヌクレオチドの製造方法で製造できる。例えば、化学合成法、プラスミドベクター、ファージベクター等を使用する微生物法等で製造できる。尚、現在、市販されている核酸合成機を使用するのが好適である。
【0038】
オリゴヌクレオチドに蛍光色素、クエンチャー物質を標識するには、前記の標識ヌクレオチドモノマーの場合と同様にすればよい。この場合、オリゴヌクレオチドの5’末端塩基、3’末端塩基、鎖中の塩基、5’末端リン酸基、3’末端のリボース、デオキシリボースが標識対象になる。当該オリゴヌクレオチドの合成、当該標識核酸プライマーの合成は、委託合成を行うのが最も簡便な方法である。
【0039】
本発明において、核酸特異的蛍光色素とは、核酸に結合することで蛍光を発する物質のことである。結合する核酸種は、標識又は非標識の核酸プライマー・鋳型核酸複合体、1本鎖DNA、1本鎖RNA、2本鎖DNA、DNAとRNAの2本鎖、2本鎖RNA等の核酸であればよく、特に限定されない。核酸特異的蛍光色素としての1例を挙げれば、エチジュウムブロミド、Sybr green 1、Sybr green 2、YOYO、TOTO、YO-PRO-1等のインターカレター類を挙げることができる。しかしながら、本発明においては核酸に結合することで蛍光を発する物質であれば、全ての本発明の方法に適用可能である。
【0040】
本発明は次の手順からなる核酸の測定方法である。
1)下記{(1)〜(8)}、好ましくは{(6)、(7)及び(8)}、より好ましくは{(6)及び(7)}の何れか1つの核酸重合系で核酸重合反応(単独)、又は核酸重合反応及び核酸増幅反応(双方の反応)を開始する。
(1)鋳型核酸、少なくとも1種の標識ヌクレオチド、及び核酸合成酵素を含む核酸重合系。
(2)前記(1)において、非標識ヌクレオチドを含む核酸重合系。
(3)鋳型核酸、少なくとも1種の標識ジデオキシヌクレオチド、及び核酸合成酵素を含む核酸重合系。
(4)上記(3)において、標識ヌクレオチド及び非標識ヌクレオチドからなる群から選ばれた少なくとも1種を含む核酸重合系。
【0041】
(5)鋳型核酸、非標識ジデオキシヌクレオチド、標識ヌクレオチド、及び核酸合成酵素を含有する核酸重合系。
(6)上記(1)〜(5)において更に標識核酸プライマー又は非標識核酸プライマーを含む核酸重合系。
(7)鋳型核酸、非標識ヌクレオチド、標識核酸プライマー及び核酸合成酵素を含む核酸重合系。
(8)上記(1)〜(7)の何れか1項において核酸特異的蛍光色素を含む核酸重合系。
【0042】
2)前記の反応過程で、反応産物である核酸重合体に標識ヌクレオチド及び/又は核酸特異的蛍光色素が取り込まれるので、核酸重合系の蛍光強度が変化する。その変化若しくは変化量を測定する。核酸プローブを存在させた場合は、プローブと核酸重合体とが、ハイブリダイズし、核酸重合反応系の蛍光強度が独特な変化をする。
3)必要に応じて、前記反応物を電気泳動、HPLCで分析する。
尚、上記の核酸重合系において、特に、核酸プライマーを含有する(6)のものは、当該核酸重合系の出力である核酸重合体としてDNAの場合が好適である。又、(1)及び(2)のものは、当該核酸重合系の出力である核酸重合体としてRNAの場合が好適である。又、標識又は非標識ジデオキシヌクレオチドを含む系は、後記する多型(SNPを含む。)又は変異の測定、分析若しくは解析に用いるのが好適である。
【0043】
本発明において、「少なくとも1種の核酸プライマーを存在させるか存在させずして」の意味は、少なくとも1種の鋳型核酸(例えば粗鋳型核酸)若しくは少なくとも1種の鋳型核酸を含む試料、粗核酸合成酵素類には、鋳型核酸にハイブリダイズして核酸重合体の前駆体になり得るオリゴヌクレオチドが存在する例が多いからである。又、粗鋳型核酸、粗核酸合成酵素類の中に、当該前駆体を合成する酵素類が含まれている例が多い。
又、RNA系の核酸重合反応は前記の核酸プライマーが存在させなくとも進む場合がある。
【0044】
又、少なくとも1種の鋳型核酸(例えば、粗鋳型核酸)若しくは少なくとも1種の鋳型核酸を含む試料中に、核酸合成系が含まれている場合(例えば、各種生物の細胞抽出液)は、核酸合成酵素を添加しなくとも、核酸重合反応がおこる。この場合は、少なくとも1種の蛍光標識ヌクレオチド、クエンチャー標識ヌクレオチド、及び核酸特異的蛍光色素からなる群から選ばれた少なくとも1種のもの、又は、核酸プライマーを反応系に存在させて、反応を開始すればよい。
【0045】
上記の反応は、公知の反応条件で行ってよいのであるが、例示するならば、温度10℃〜核酸変性温度未満、具体的には、核酸合成酵素の種類に依存する。例えば、DNAポリメラーゼを使用する場合は、温度10℃〜核酸変性温度未満、好適には、30〜90℃、より好適には30〜80℃である。RNAポリメラーゼを使用する場合は、30〜60℃、逆転写酵素を使う場合は、30〜70℃である。反応時間は核酸重合系の蛍光強度を時間の関数として、モニタリニグした場合、平衡に達するまでである。例えば、10秒〜10時間、好適には10秒〜2時間、より好適には10秒〜1時間である。
【0046】
上記の蛍光強度の変化は、次の現象からなる群の少なくとも1種の現象によって引き起こされるものと推定されている。そして複雑にかみ合っているものである。
(1)核酸特異的蛍光色素と蛍光色素間の相互作用(FRET(fluorescence resonance energy transfer)現象)。
(2)蛍光色素間の相互作用(FRET現象)。
(3)クエンチャー物質と蛍光色素間の相互作用(蛍光消光現象)(前記(2)と同じ)。
(4)グアニン塩基と蛍光色素間の相互作用(蛍光消光現象)。
尚、本発明でいう相互作用とは、一方の励起エネルギーが他方へ移動する反応である。又、”蛍光消光現象”を単に”蛍光消光”と略称する場合がある。
【0047】
以下、蛍光強度の変化若しくは変化量を測定する好ましい実際的方法は、リアルタイムで核酸重合系の蛍光強度を測定し、測定値を求める方法である。この場合、少なくとも1種の入射光若しくは励起光を出し、且つ少なくとも1種のホトマル等の受光面をもつ、即ち、マルチチャンネルを有する市販装置を使用するのが望ましい。例えば、スマートサイクラー(タカラバイオ株式会社)、ABI PRISMTM 7700Sequence Detection System(SDS 7700)(PE Applied Biosystems)、LightCyclerTM System(Roche Diagnostics,Mannheim Germany)等を使用すればよい。
【0048】
実際の測定値を求める場合は、以下の少なくとも何れか1つを実施する。
(1)核酸重合反応の前後の核酸重合系の測定。
(2)核酸合成を行なわせない系(例えば、鋳型核酸又は核酸合成酵素を添加しない系)を対照としての核酸重合系の測定。
(3)核酸合成が平衡に達した系の核酸重合系の蛍光強度を先ず測定し、次いで、核酸重合系の核酸変性処理(例えば、90〜98℃での処理)後、測定する。
【0049】
前記の方法により得られた測定値を、後記するデータ解析方法で処理(解析)することにより、自然界の1つの系内に存在する鋳型核酸(未知核酸、標的核酸)種、及びそれらの核酸が重合若しくは増幅される前のコピー数等の濃度を知ることができる。そしてよりよいデータになる。
【0050】
以下に本発明の特徴を図面を参照して説明する。
1)本発明方法A(図1参照)
(1)少なくとも1種の蛍光標識ヌクレオチドを核酸重合体に取り込ませ、取り込まれた蛍光標識ヌクレオチド間の標識された蛍光色素(A)と標識された蛍光色素(B)間の相互作用に由来する核酸重合系の蛍光キャラクターの変化を測定するか、又はその変化を時間の関数としてモニタリングする(以下、単にモニタリングするという。)ことから、鋳型核酸若しくはそれを鋳型する核酸重合体を測定することを特徴とする。本方法は、核酸重合系が前記核酸重合系(1)及び(2)の1例で、特許請求の範囲の請求項1〜3の発明に相当する。
【0051】
(2)前記(1)において、核酸プライマーを含有する核酸重合系で、核酸重合反応を行う方法である。この場合は、核酸プライマーが核酸重合体の前駆体(プライマー)として利用される。この方法は、核酸重合系が前記核酸重合系(6)の1例で、特許請求の範囲の請求項5の発明に相当する。
【0052】
前記(1)及び(2)のように、蛍光標識ヌクレオチドを核酸重合体に取り込ませた場合、取り込まれた蛍光標識ヌクレオチドに標識された蛍光色素(A、B)間の距離が著しく接近し、溶液中に分散した状態では発生しなかった蛍光色素間の相互作用が発生する(図1参照)。蛍光色素間の相互作用に由来する蛍光強度の変化若しくは変化量を測定するか、又はモニタリングすることで鋳型核酸若しくはそれを鋳型する核酸重合体を測定することが可能となる。
【0053】
この場合、相互作用し合う蛍光色素の内、一方は、FRET現象の励起エネルギーを与える色素でドナー色素(A)という。そして他方はエネルギーを受けて蛍光発光する色素でアクセプター(B)という。
【0054】
又、アクセプター色素は一般にFRET現象において、ドナー色素との対において、アクセプター色素となり得る色素、即ち、ドナー色素からエネルギー転移を受け得る(言葉を換えるとドナー色素に対してクエンチング(消光作用)作用をする)色素であればどのようなものでもよい。そして、ドナー色素は、アクセプター色素に励起エネルギーを転移できるものであれば、どのようなものでもよい。前記色素の中から該当するものを適当に選択することができる。
【0055】
例えば、好適なドナー色素として、FITC、BODIPY FL、BODIPY FL系の前記色素、BODIPY 493/503、5-FAM、BODIPY 5-FAM、Tetramethylrhodamine、6-TAMRA等を、より好適なものとして、FITC、BODIPY FL、BODIPY 493/503、BODIPY 5-FAM、Tetramethylrhodamine、6-TAMRA等を挙げることができる。
【0056】
好適なアクセプター色素は、対を形成するドナー色素の種類に依存する。例示するならば、BODIPY FL、BODIPY FL系の前記色素、BODIPY 493/503、5-FAM、BODIPY 5-FAM、Tetramethylrhodamine、6-TAMRA等をドナー色素とするならば、rhodamine X、BODIPY 581/591等をアクセプター色素とすることができる。本方法は、標識ヌクレオチドの蛍光色素、即ち、核酸重合系の特定波長の蛍光強度の増加若しくは減少を測定する。ドナー色素の蛍光強度を測定する場合は蛍光強度の減少、アクセプター色素の蛍光強度を測定する場合は蛍光強度の増加を測定することになる。
【0057】
2)本発明方法B(図2参照)
本発明の核酸重合系が、核酸特異的蛍光色素を含有する例である。そして、核酸重合系が前記核酸重合系(8)の1例である。核酸特異的蛍光色素(C)は、核酸重合体、核酸重合体・鋳型核酸複合体、核酸プライマー・鋳型核酸複合体に結合する。そして核酸重合体に取り込まれた蛍光標識ヌクレオチドの蛍光色素(D)と核酸特異的蛍光色素(C)間の相互作用が発生する。この相互作用に由来する蛍光強度の変化を測定するか、又はモニタリングすることで鋳型核酸若しくはそれを鋳型する核酸重合体を測定することが可能となる。この方法は、特許請求の範囲の請求項15の発明に相当し、核酸特異的蛍光色素(C)の蛍光強度の減少、又、標識ヌクレオチドの蛍光色素(D)の蛍光強度の増加を測定することになる。即ち、核酸重合系の特定波長の蛍光強度の増加若しくは減少を測定する。
【0058】
前記したように、核酸特異的蛍光色素(C)の存在下で、蛍光標識ヌクレオチドを核酸重合体に取り込ませる反応を行う過程で、合成された核酸重合体に核酸特異的蛍光色素(C)が結合し、この蛍光色素(C)と、反応過程で取り込まれた蛍光標識ヌクレオチドの蛍光色素(D)の距離が著しく接近する(図2参照)。このため前記同様の蛍光色素間の相互作用が発生する。
【0059】
この場合の蛍光色素(D)としては、前記の蛍光色素がすべて利用できるが、好ましいものはFITC、EDANS、6-joe、TMR、Alexa 488、Alexa 532、BODIPY FL/C3、BODIPY R6G、BODIPY FL、Alexa 532、BODIPY FL/C6、BODIPY TMR、5-FAM、BODIPY 493/503、BODIPY 564、BODIPY 581、Cy3、Cy5、Texas red、x-Rhodamine等を例示できる。又、核酸特異的蛍光色素(C)の前記したものがすべて利用できるが、好ましいものはSybr green 1及びYO-PRO-1である。好ましい蛍光色素の組合わせは、Syber greenとTexas red、6-joe、TMR、Alexa 532、BODIPY R6G、Alexa 532、BODIPY TMR、BODIPY 564、BODIPY 581、Cy3、Cy5、x-Rhodamineの組み合わせ、及びYO-PRO-1とTexas red、6-joe、TMR、Alexa 532、BODIPY R6G、Alexa 532、BODIPY TMR、BODIPY 564、BODIPY 581、Cy3、Cy5、Texas red、x-Rhodamine等を例示できる。
【0060】
3)本発明方法C
非標識核酸プライマーが存在するか、存在せずして、蛍光標識ヌクレオチド、非標識ヌクレオチド、鋳型核酸、核酸合成酵素を含有してなる核酸重合系で核酸重合反応を行い、核酸重合系の蛍光強度の減少若しくは減少量から鋳型核酸若しくはそれを鋳型する核酸重合体を測定することを特徴とする核酸の測定方法である。そして非標識ヌクレオチドの少なくとも一種がグアニン(g)を含むか及び/又は鋳型核酸が少なくとも1つグアニン(g)を含む場合が好適である。即ち、核酸重合体に取り込まれた蛍光標識ヌクレオチドの塩基に対応する鋳型核酸の塩基がgc(GC)対を形成するか、又は、上記蛍光標識ヌクレオチドの塩基から1乃至3塩基離れて(当該対応塩基を1と数える。)、鋳型核酸中にGが存在するか若しくは核酸重合体中に塩基がGである非標識ヌクレオチドが存在し、蛍光強度の変化が蛍光色素(E)とGとの相互作用によるものである核酸の測定方法。この方法は、核酸重合系が前記核酸重合系(2)の1例で、特許請求の範囲の請求項7及び8に相当する発明である。
【0061】
重合反応系の蛍光強度の減少は、次の何れかの場合におこる。
(1)蛍光標識ヌクレオチドの塩基がシトシン(c)又はグアニン(g)である。
(2)少なくとも一種の非標識ヌクレオチドの塩基がグアニン(g)である。
(3)鋳型核酸が少なくとも1つグアニン(g)を含む。
【0062】
前記したように、蛍光標識ヌクレオチド及び/又は非標識ヌクレオチドを用いて核酸重合反応を行う過程で、鋳型核酸中のグアニン(g)、又は合成された核酸重合体中の、グアニン(g)を含む非標識ヌクレオチドのグアニン(g)と取り込まれた蛍光標識ヌクレオチドの蛍光色素(E)との距離が著しく接近する(図3参照)。このため溶液中に分散した状態では発生しなかった、標識された蛍光色素(E)の励起エネルギーがグアニン(g)塩基に移動するようになる。
【0063】
この場合の標識される蛍光色素(E)としては、前記の蛍光色素がすべて利用できるのであるが、好ましいものは、FITC、EDANS、Texas red、6-joe、TMR、Alexa 488、Alexa 532、BODIPY FL/C3、BODIPY R6G、BODIPY FL、Alexa532、BODIPY FL/C6、BODIPY TMR、5-FAM、BODIPY 493/503、BODIPY 564、BODIPY 581、Cy3、Cy5、Texas red、x-Rhodamine等である。
【0064】
蛍光標識される好ましいヌクレオチドモノマーはシトシン(以下、cと略称する。)を塩基とするヌクレオチドモノマー(cytidylic acid、cytidine 5'-phosphate,cytidine 5'-diphosphate,cytidine 5'-triphosphate、若しくはそれらの重合体若しくはcytidylic acidを含有する重合体)であり、そして標識部位は塩基部(アミノ基)、又はリン酸部(OH基)、又はリボース部(2’又は3’位のOH基)である。好ましい部位は塩基部、又はリン酸部である。
【0065】
4)本発明方法D(図4参照)
本発明方法Aの(1)又は(2)において、蛍光標識ヌクレオチドとクエンチャー標識ヌクレオチドとを使用する例である。即ち、蛍光標識ヌクレオチドとクエンチャー標識ヌクレオチドとを核酸重合体に取り込ませると、取り込まれた蛍光標識ヌクレオチドの蛍光色素(A)とクエンチャー標識ヌクレオチドのクエンチャー物質(Q)が接近し、相互作用する(図4参照)ことにより核酸重合系の蛍光強度が減少する。この蛍光強度の減少を測定するか、又はその減少をモニタリングすることで鋳型核酸又はそれを鋳型とする核酸重合体を測定することを特徴とする。本方法は、核酸重合系が前記核酸重合系(1)及び/又は(2)の1例で、特許請求の範囲の請求項3及び/又は4の発明に相当する。そして、核酸重合系の蛍光強度の減少を測定することになる。
【0066】
本方法で利用できるクエンチャー物質(別名として”蛍光消光物質”ともいう。)は、例えば、Dabcyl、QSY7(モルキュラー・プローブ社製)、QSY33(モルキュラー・プローブ社製)又はその誘導体、methyl viologen、N,N'-dimethyl-2,9-diazopyrenium等、好適にはDabcyl等を例示できる。
【0067】
前記したように、核酸重合系に蛍光標識ヌクレオチドとクエンチャー標識ヌクレオチドを存在させて、核酸重合反応を行うと、蛍光標識ヌクレオチドとクエンチャー標識ヌクレオチドが核酸重合体に取り込まれる。核酸重合体に取り込まれた蛍光標識ヌクレオチドとクエンチャー標識ヌクレオチドとの距離が著しく接近する。その結果として標識された蛍光色素(A)とクエンチャー物質(Q)の間の距離も著しく接近する(図4参照)。このため溶液中に分散した状態では発生しなかった標識されたクエンチャー物質(Q)と標識された蛍光色素(A)間の相互作用(発光エネルギーの移動現象)が発生するようになる。
【0068】
5)本発明方法E(図5及び図6参照)
本発明方法Aの(2)において、核酸プライマーとして標識核酸プライマーを用いる例である。鋳型核酸の重合を行う過程で、標識ヌクレオチドが核酸重合体に取り込まれる。標識核酸プライマーの蛍光色素(A)或はクエンチャー物質(Q)と標識ヌクレオチドの蛍光色素(A)或はクエンチャー物質(Q)間の相互作用により蛍光強度が変化する。この変化を測定するか、又はモニタリングすることから鋳型核酸若しくはそれを鋳型する核酸重合体を測定する方法である。本方法は、核酸重合系が前記核酸重合系(6)の1例で、特許請求の範囲の請求項6の発明に相当する。そして、核酸重合系の蛍光強度の増加若しくは減少を測定することになる。この場合、蛍光強度の増加、又は減少は、標識ヌクレオチドの蛍光色素(A)若しくはクエンチャー物質(Q)と標識核酸プライマーの標識物質の蛍光色素(A)若しくはクエンチャー物質(Q)の組合せに依存する。ドナー色素とアクセプター色素の関係の場合は、本発明方法Aと同様である。クエンチャー物質と蛍光色素の関係の場合は、本発明方法Dと同様である。
【0069】
前記のように、標識核酸プライマーと蛍光標識ヌクレオチドを用いて本発明方法Aの(2)のような核酸重合反応を行うと、標識核酸プライマーと蛍光標識ヌクレオチドは核酸重合体に取り込まれる。そして重合体に取り込まれた標識核酸プライマーと蛍光標識ヌクレオチドの蛍光色素(A)或はクエンチャー物質(Q)との距離が著しく接近する(図5、図6参照)。このため溶液中に分散した状態では発生しなかった当該プライマーの蛍光色素(A)或はクエンチャー物質(Q)と標識ヌクレオチドの蛍光色素(A)或はクエンチャー物質(Q)の間で相互作用が発生する。
【0070】
本発明で起こり得る物質間相互作用として、(1)標識核酸プライマーの蛍光色素(A)と標識ヌクレオチドの蛍光色素(B)間の相互作用、(2)標識核酸プライマーの蛍光色素(A)と標識ヌクレオチドのクエンチャー物質(Q)の間の相互作用、(3)標識核酸プライマーのクエンチャー物質(Q)と標識ヌクレオチドの蛍光色素(A)の間の相互作用の3つのケースが考えられる(図5は(1)のケースを、図6は(3)のケースを図示してある。)。標識核酸プライマーは、公知技術の均一溶液系核酸プローブ(後記した。)とは異なり、鋳型核酸にハイブリダイゼーションした際に、蛍光強度が変化するようにプローブを設計する必要性がない。よって、本方法は実験系の確立が簡便・確実という利点を有する。本方法に用いる好適な蛍光色素は本発明方法Aと同様である。又、クエンチャー物質は本発明方法Dと同様である。
【0071】
6)本発明方法F(図7参照)
本発明方法Aの(2)において、核酸プライマーとして標識核酸プライマーを用い、標識ヌクレオチドの代わりに非標識ヌクレオチドを用いた(即ち、標識ヌクレオチドを用いない)例である。標識核酸プライマーに標識した蛍光色素(A)と、取り込まれたG塩基を有する非標識ヌクレオチドのG間の相互作用により核酸重合系の蛍光強度が減少する。この蛍光強度の減少を測定するか、又はその減少をモニタリングすることで鋳型核酸若しくはそれを鋳型する核酸重合体を測定することを特徴とする。この方法は、核酸重合系が前記核酸重合系(7)の1例で、特許請求の範囲の請求項9及び10に相当する発明である。
【0072】
即ち、非標識ヌクレオチドがGを含むものであり、合成された核酸重合体中の蛍光標識核酸プライマーの蛍光色素(A)で標識された塩基から1乃至3塩基離れて(標識された塩基を1と数える。)、新たに重合された(当該プライマーの鎖中の塩基ではないという意味)核酸重合体中に少なくとも1つのGが存在する場合に起こる(図7参照)。前項で記述した標識核酸プライマーは、公知技術の均一溶液系の核酸プローブとは異なり、鋳型核酸にハイブリダイゼーションした際に、蛍光強度が変化するようにプローブを設計する必要性がない。よって、本発明方法Eと同じく、本方法は実験系の確立が簡便・確実という利点を有する。本方法に用いる好適な蛍光色素は本発明方法Cと同様である。
【0073】
7)本発明方法G(図8参照)
本発明方法A〜Fにおいて、蛍光標識ヌクレオチド又はクエンチャー標識ヌクレオチドを用いる代わりに、免疫関連物質、即ち、抗原、抗体及び抗抗体からなる群から選ばれた少なくとも1種で標識されたヌクレオチドモノマー(免疫関連標識ヌクレオチド)を用いた例である。例示して説明すると、前記のヌクレオチドモノマーに標識された抗体には、蛍光色素又はクエンチャー物質が結合されている、前記の抗原、抗抗体に対応する抗原又は抗抗体が結合する。その結果、蛍光標識ヌクレオチド又はクエンチャー標識ヌクレオチドと同様な作用をする。又、抗原には、蛍光色素又はクエンチャー物質が結合されている抗体が結合するようになっている。抗抗体には、蛍光色素又はクエンチャー物質が結合されている抗体が結合するようになっている。その結果、前記免疫関連標識ヌクレオチドは、蛍光標識ヌクレオチド又はクエンチャー標識ヌクレオチドと同様な作用をする。
尚、免疫関連物質、即ち、抗原、抗体及び抗抗体からなる群から選ばれた少なくとも1種でヌクレオチドを標識するには、前記の従来公知の方法により達成出来る。又、前記と同様に委託合成((株)日本遺伝子研究所(http://www.ngrl.co.jp)を行って入手した方が好適である。
【0074】
本方法は、前記の通りであるので、免疫関連標識ヌクレオチドは、蛍光色素又はクエンチャー物質が結合している、前記の免疫関連標識ヌクレオチドの免疫関連物質に対応する免疫関連物質が1つの対を形成する。そしてこの対は、免疫関連標識ヌクレオチドを標識している免疫関連物質は、ヌクレオチドに標識されていなくとも、蛍光色素又はクエンチャー物質が結合している前記の免疫関連物質と結合し複合体を形成する。それで、この複合体がヌクレオチドを標識している構造になっているとも認識することができる。従って、本発明においては、簡便化のために、この複合体を蛍光色素及びクエンチャー物質と同じものとして扱うことにした。それで、本発明の蛍光色素とは、前記した蛍光色素の他に蛍光色素を含有する前記複合体を含むものと定義する。又、同様にして、本発明のクエンチャー物質とは、前記したクエンチャー物質の他にクエンチャー物質を含有する前記複合体を含むものと定義する。蛍光色素を含有する複合体、即ち免疫関連物質で標識ヌクレオチドを蛍光標識ヌクレオチドの概念の中に入れ、蛍光標識ヌクレオチドと称することにした。クエンチャー物質についても同様にし、クエンチャー物質を含有する免疫関連物質で標識ヌクレオチドをクエンチャー標識ヌクレオチドと称する。又、免疫関連物質で標識した核酸プライマーにおいても前記ヌクレオチドと同様に、蛍光色素を含む免疫関連物質で標識された核酸プライマーを蛍光標識核酸プライマーと、又、クエンチャーを含む免疫関連物質で標識された核酸プライマーをクエンチャー標識核酸プライマーと称することにした。
【0075】
それで、免疫関連標識ヌクレオチド、免疫関連標識核酸プライマーとは、当該ヌクレオチド、当該プライマーは、蛍光色素又はクエンチャー物質が結合している、当該ヌクレオチド、当該プライマーの免疫関連物質に対応する免疫関連物質を含むものと定義する。具体的には、当該ヌクレオチド及び/又は当該プライマーと、蛍光色素又はクエンチャー物質が結合している当該免疫関連物質を一緒に核酸重合系に存在せしめて、核酸重合系の蛍光強度を測定することになる。
【0076】
それで、前記の本発明方法A〜Fと同様にして、核酸重合体若しくはその鋳型核酸、又は鋳型核酸若しくはそれを鋳型する核酸重合体を測定できる。以上より本方法は、後記する方法を含めて本発明の全てに相当し、核酸重合系の蛍光強度の増加若しくは減少を測定することになる。
【0077】
前記したように、前述の本発明方法A〜Fに示した物質間相互作用の内のいずれかが起こるよう、抗原或は抗体或は抗抗体にてヌクレオチドを標識し、核酸重合反応を行う過程で、核酸重合体にそれらで標識されたヌクレオチドを取り込ませる。図8は、本発明方法Aで示した蛍光色素間の相互作用を利用している図である。公知技術で示した均一溶液系核酸プローブ(後記に示した。)とは異なり、鋳型核酸にハイブリダイゼーションした際に、蛍光強度が変化するようにプローブを設計する必要性がない。よって、本方法は実験系の確立が簡便・確実という利点を有する。
【0078】
8)本発明方法H(図示なし)
本方法は、2つの発明を含む。
i)核酸重合系が前記核酸重合系(3)の1例で、特許請求の範囲の請求項12〜15に相当する発明である。鋳型核酸、少なくとも1種の蛍光色素及び/又は少なくとも1種のクエンチャー物質で標識された、少なくとも1種のジデオキシヌクレオチドモノマー(前者を「蛍光標識ジデオキシヌクレオチド」、後者を「クエンチャー標識ジデオキシヌクレオチド」という。両者を総称して「標識ジデオキシヌクレオチド」という。)、及び核酸合成酵素を含有する核酸重合系で核酸重合反応を行い、蛍光強度の変化若しくは変化量から鋳型核酸若しくはそれを鋳型とする核酸重合体を測定することを特徴とする核酸の測定方法である。そして、核酸重合系が、標識ヌクレオチド及び非標識ヌクレオチドからなる群から選ばれた少なくとも1種を含む系である。又、核酸重合系が、非標識核酸プライマーを含む系である。
【0079】
ii)核酸重合系が前記核酸重合系(7)の1例で、特許請求の範囲の請求項16に相当する発明である。鋳型核酸、少なくとも1種の蛍光色素及び/又は少なくとも1種のクエンチャー物質で標識されていない、少なくとも1種のジデオキシヌクレオチドモノマー(「非標識ジデオキシヌクレオチド」という。)、標識ヌクレオチド、非標識核酸プライマー、核酸特異的蛍光色素、及び核酸合成酵素を含有する核酸重合系で核酸重合反応を行い、蛍光強度の変化若しくは変化量から鋳型核酸若しくはそれを鋳型とする核酸重合体を測定することを特徴とする核酸の測定方法である。上記のi)、ii)の発明において、蛍光色素及びクエンチャー物質の概念は、前記の本発明方法Gと同様である。
【0080】
尚、当該方法は、1塩基伸長反応方法と組合せることにより、多型(SNPを含む。)及び/又は変異の測定、解析又は分析に好適に利用できる。即ち、核酸プライマーの3’末端塩基が鋳型核酸中の目的の多型(SNPを含む。)及び/又は変異部位の塩基に隣接するように設計してなる核酸プライマーと、鋳型核酸中の目的の多型(SNPを含む。)及び/又は変異の塩基に相補する(水素結合出来る。)か若しくは相補しない塩基を有する非標識若しくは標識ジデオキシヌクレオチドを用いて、当該発明の核酸重合反応又は核酸増幅反応を行うと、多型(SNPを含む。)及び/又は変異の塩基の存在若しくは不存在により、核酸重合系の蛍光強度に差が出る。その差により目的が達成できる。具体的には、実施例5及び実施例6に示した。
【0081】
9)本発明方法I(図9参照)
各種核酸合成酵素を用いて、固体表面上に固定化された1種以上の核酸プライマーから鋳型核酸の重合を行うことを特徴とする前述の本発明方法A〜Gの何れかに記載の方法である。
【0082】
前記したように、1種以上の核酸プライマーを固体表面上に固定化し、各種核酸合成酵素により鋳型核酸の重合反応を行う。この際、前述の本発明方法A〜Hの内、いずれかの物質間の相互作用が発生するように、核酸プライマー、蛍光標識ヌクレオチド、クエンチャー標識ヌクレオチド、核酸特異的蛍光色素等を用意する。この際に発生する蛍光強度の変化若しくは変化量をモニタリングすることで単に核酸重合体又はその鋳型核酸若しくはそれを鋳型する核酸重合体を測定することが可能となる(図9参照:図中では本発明方法Aで示した蛍光色素間の相互作用を利用している。)。
【0083】
本方法は、前記したように、1つの鋳型核酸又は当該鋳型核酸と新たに重合合成された核酸重合体との1つの複合体から観察した場合、新たに重合合成された核酸重合体に複数の蛍光色素を含むようになるので、測定感度が、単数種の蛍光色素の蛍光強度変化に基づく均一溶液系核酸プローブを使用する方法より更に改善される。又、鋳型核酸と非標識若しくは標識核酸プライマー又は新たに重合合成された核酸重合体との複合体に取り込まれた核酸特異的蛍光色素から、標識ヌクレオチドの蛍光色素へのエネルギー移動による蛍光強度の変化に基づく測定方式であるので、測定感度が格段に改善される。しかも、標的遺伝子等を含む1種以上の各種核酸を簡便且つ迅速に同時に測定できるという利点を有する。
【0084】
尚、前記の本発明方法で得られたデータの解析方法において、核酸重合系のFRET現象におけるドナーとしての役割をもつ蛍光色素若しくは核酸特異的な蛍光色素の蛍光強度値を、アクセプターとしての役割をもつ蛍光色素の蛍光強度値で割るか、又は逆の操作をするとより好ましいデータになる。それで、このデータ処理方法も本発明に含まれる。
【0085】
本発明方法においては、下記(1)〜(7)の公知の均一溶液系核酸プローブ(鋳型核酸に特異的にハイブリダイズし、蛍光色素又はクエンチャー物質で標識されたオリゴヌクレオチド)、及び公知の核酸測定方法を本発明方法、特に標識核酸プライマーに好適に適用することができる。当該プライマーとして利用される場合は前記した通りである。又、核酸増幅方法に記載した単なるプローブとして利用する場合、核酸合成酵素としてエキソヌクレアーゼを欠いたDNA又はRNAポリメラーゼとリガーゼを用いるのが好適である。均一溶液系核酸プローブが鋳型核酸にハイブリダイズしたとき、本発明の核酸重合体に組み込まれる。又、エキソヌクレアーゼ活性を有するDNA又はRNAポリメラーゼを用いた場合、分解されてしまう。分解されたヌクレオチドがカイネース等で3リン酸体にされた後、本発明の核酸重合体に組み込まれてしまう。
【0086】
(1)Morrisonらのプローブ(Morrison et al.,Anal.Biochem.,183:231-244,1989)で代表されるプローブ。
(2)Mergneyらのプローブ(Mergney et al.,Nucleic acid Res.,22:920-928,1994)で代表されるプローブ。
(3)分子ビーコン(molecular beacon)方法(Tyagi et al.,Nature Biotech.,14:303-308,1996;Schofield et al.,Applied and Environ. Microbiol.,63:1143-1147,1997)で代表されるプローブ。
(4)Livakらのプローブ(US patent No.5,538,848)で代表されるプローブ。
【0087】
(5)KURATAらのプローブ(KURATA et al.,Nucleic acids Research,2001,vol.29,No.6 e34)で代表されるプローブ。このプローブは、1本鎖のオリゴヌクレオチドを蛍光色素で標識した均一溶液系核酸プローブであるが、蛍光色素で標識した塩基がG又はCであるか、又は対応核酸の標識塩基に対応する塩基から1乃至3塩基離れて(標識塩基に対応する塩基を1と数える。)G又はCが存在する均一溶液系核酸プローブである。
【0088】
(6)Davisらのプローブ(Davis et al.,Nucleic acids Res.,24:702-706,1996)で代表されるプローブ。
(7)HORNらのプローブ(US Patent Application Publication No.US2001/0009760A1,Pub.Date:Jul.26,2001)で代表されるプローブ。
【0089】
前記に記載した核酸重合方法が核酸増幅方法である場合について以下に記す。本発明でいう核酸増幅方法とは、インビトロ(in vitro)で核酸を増幅する方法のことをいう。公知、未公知を問わない。例えば、PCR方法、LCR方法(ligase chain reaction)、TAS方法、ICAN(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids)方法、LAMP方法、NASRA方法、RCA方法、TAMA方法、UCAN方法等を全て含めるものとする。
【0090】
又、このPCRとは、公知の各種のPCRを意味するものである。例えば、リアルタイムモニタリング定量的PCR方法、RT−PCR、RNA-primed PCR、Stretch PCR、逆PCR、Alu配列を利用したPCR、多重PCR、混合プライマーを用いたPCR、PNAを用いたPCR、PCRにより増幅した核酸について、融解曲線の解析若しくは分析する方法等をも含むものとする。
【0091】
具体的には、前記した核酸重合系、特に、核酸プライマー若しくは核酸プローブを含む系で、ハイブリダイゼーション反応、核酸重合反応(核酸伸長反応)、変性反応を1サイクルとして従来公知の条件(KURATA et al.,Nucleic acids Research,2001,vol.29,No.6 e34)で核酸増幅反応を行い、各サイクルの蛍光強度若しくは相対蛍光強度の変化若しくは変化量を経時的に測定することにより、鋳型核酸の核酸増幅前の濃度若しくはコピー数を測定する核酸の測定方法である。そして、各サイクルの蛍光強度の変化若しくは変化量を経時的に測定することにより、蛍光強度若しくは相対蛍光強度の変化若しくは変化量が観察(目視)され始めるサイクル数Ct値を求め、当該Ctと標準の鋳型核酸の核酸増幅前の濃度若しくはコピー数の関係から、試料中の鋳型核酸の核酸増幅前の濃度若しくはコピー数を求めることができる。具体的には、実施例4〜11に記載されている。
【0092】
前記した均一溶液系核酸プローブを好適に、核酸プライマー(リバース及び/又はフォワードプライマー)として利用できる。この場合、均一溶液系核酸プローブから標識されている蛍光色素及び/又はクエンチャー物質を離脱した非標識の核酸プライマーも好適に利用できる。当該核酸増幅方法で増幅された核酸重合体は少なくとも一種の蛍光色素を含むので、少なくとも一種の測定波長を用いて当該重合体の解離曲線から得られる情報は有用である。
【0093】
本発明の核酸増幅系は、前記の核酸重合反応のための核酸重合系の{(1)〜(8)}、好ましくは{(6)、(7)及び(8)}、より好ましくは{(6)及び(7)}の何れか1つである。
【0094】
本発明方法は、又、以下のデータ処理方法も含む。即ち、上記の核酸増幅方法で得られたデータを解析する方法において、鋳型核酸及び/又は核酸合成酵素を含有している核酸重合系の各サイクルの蛍光強度値を、鋳型核酸及び/又は核酸合成酵素が含有していない核酸重合系の各サイクルの蛍光強度値により補正すると、好ましいデータになる。又、核酸重合系のFRET現象におけるドナーとしての役割をもつ蛍光色素若しくは核酸特異的な蛍光色素の、経時的に測定された蛍光強度値を、アクセプターとしての役割をもつ蛍光色素の、経時的に測定された蛍光強度値で割るか、又は逆の操作をして補正したデータは好適なものになる。このような補正をする演算処理過程(以下、補正演算処理過程という。)を有する手順を記録した電子記録媒体も本発明である。測定及び/又はデーター解析装置において当該電子記録媒体を装備したもの、又、当該装置を用いた測定も当然本発明の範囲内である。
【0095】
本発明の核酸の重合反応を利用したリアルタイム定量的PCR方法で得られるデータを解析する方法は具体的には以下の通りである。リアルタイム定量的PCR方法は、現在、PCRを行わせる反応装置、蛍光色素の発光を検出する装置、ユーザーインターフェース、即ち、データ解析方法の各手順をプログラム化して、それを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体(別称:Sequence Detection Software System)、及びそれらを制御し、データ解析するコンピュータから構成される装置で、リアルタイムで測定されている。それで、本発明の測定もこのような装置で行われるのがよい。
【0096】
尚、PCR反応装置は、鋳型核酸の熱変性反応、アニーリング反応、核酸の伸長反応を繰り返し行う装置(例えば、温度を95℃、60℃、72℃に繰り返し行うことができる。)である。又、検出システムは、蛍光励起用アルゴンレーザー、スペクトログラフならびにCCDカメラからなっている。更に、データ解析方法の各手順をプログラム化して、それを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、コンピュータにインストールされて使用され、コンピュータを介して上記のシステムを制御し、検出システムから出力されたデータを解析処理するプログラムを記録したものである。
【0097】
コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されているデータ解析用プログラムは、サイクルごとの蛍光強度を測定する過程、測定された蛍光強度を、サイクルの関数として、即ち、PCRのamplification plotとしてコンピュータのディスプレー上に表示する過程、蛍光強度若しくは相対蛍光強度の変化若しくは変化量が検出され始めるPCRサイクル数(threshold cycle number:Ct)を算出する過程、Ct値から試料核酸のコピー数を求める検量線を作成する過程、前記各過程のデータ、プロット値を印字する過程からなっている。PCRが指数的に進行している場合、PCR開始時の測定対象の核酸のコピー数のLog値と、Ctとの間には直線関係が成り立つ。従って、既知量のコピー数を用いて検量線を作成し、未知コピー数の鋳型核酸を含有するサンプルのCtを検出することにより、鋳型核酸のPCR開始時の初期コピー数を計算できる。
【0098】
本発明方法を用いる多型(polymorphism)及び/又は変異(mutation)を測定若しくは解析する方法について、以下に記す。即ち、核酸重合方法及び核酸増幅方法の核酸重合系{(1)〜(9)}、好ましくは{(6)、(7)及び(8)}、より好ましくは{(6)及び(7)}の何れか1つで、核酸重合反応又は核酸増幅反応を行い、核酸重合系の蛍光強度の変化若しくは変化量を経時的若しくは非経時的に測定し、その測定値から多型(SNPを含む。)及び/又は変異の測定、解析、又は分析することを特徴とする核酸の測定方法である。好適には、当該方法を配列特異的伸長方法と組合せることがよい。具体的には、実施例7〜実施例10に示した。
【0099】
この場合、非標識若しくは標識核酸プライマーを、その3’末端塩基若しくは3’末端から2番目の塩基(3’末端塩基を1と数える。)が、鋳型核酸の検出目的の多型(SNPを含む。)及び/又は変異の塩基に相補しない(相互の塩基が水素結合できる。)よう(他の塩基は相補する。)に作製してなる、少なくとも一種の非標識若しくは標識核酸プライマーを含有する核酸重合系で核酸重合若しくは核酸増幅反応を行うのが好適である。当該プライマーを含有する核酸重合系では、当該プライマーを前駆体として、核酸重合若しくは核酸増幅反応が進まない場合は、核酸重合系の蛍光強度の変化が起きない。逆に進む場合は、蛍光強度の変化が起きる。尚、反応温度は、一般的には、当該プライマーのTM値以上変性反応温度(例えば、95℃)未満であるのが好適である。又、当該プライマーの3’末端から3番目の塩基を、鋳型核酸の塩基に相補しない塩基にし、鋳型核酸と当該プライマーとの間で人工的なミスマッチを形成させることで、非特異的な伸長反応が抑えられる。即ち、より正確な多型の判定が可能になる。この場合の反応温度は、当該プライマーのTM値より5℃程低い温度から変性反応温度未満であることが好適である。尚、本発明において、鋳型核酸の多型若しくは変異の塩基とは相補しない塩基を有する当該プライマーをA型プライマーと称した場合に、相補する塩基を有する当該プライマーをB型プライマーと称することにする。この測定方法において、A型プライマーとB型プライマーを併用することにより確かなデータが得られる。
【0100】
具体的には、以下の方法で行う。
以下の核酸重合系で核酸重合反応若しくは核酸増幅反応を行う。尚、詳しくは実施例7及び8に示した。
1)前記した核酸重合若しくは核酸増幅方法の核酸重合系{(1)〜(8)}、好ましくは{(6)、(7)及び(8)}、より好ましくは{(6)及び(7)}の何れか1つのものである。この場合、好適には、標識又は非標識核酸プライマーとしてA型プライマーを少なくとも1種を含有する。
2)前記1)の核酸重合系が、前記同様にB型プライマーを少なくとも1種を含有する。
3)前記1)の核酸重合系が、前記同様にA型プライマーを少なくとも1種、及びB型プライマーを少なくとも1種を含有する(但し、同種の蛍光色素で標識されたA型プライマー及びB型プライマーを除く。)。
【0101】
尚、同種の蛍光色素で標識されたA型プライマー及びB型プライマーを用いた場合は、上記(1)と(2)の反応系で、核酸重合反応、又は核酸増幅反応を行い、経時的若しくは非経時的に蛍光強度の変化若しくは変化量を測定して、その測定値を比較検討することにより、多型(SNPを含む。)若しくは変異を測定できる。異種の蛍光色素で標識されたA型プライマー及びB型プライマーを用いた場合、上記(3)の核酸重合系で、核酸重合反応若しくは核酸増幅反応を好適に行うことができる。尚、この場合でも、上記(1)と(2)の核酸重合系で、核酸重合反応若しくは核酸増幅反応を好適に行うことができる。
尚、上記のA型若しくはB型プライマーの替わりに、鋳型核酸中の目的の多型(SNPを含む。)及び/又は変異の塩基に相補する(水素結合出来る。)か又は相補しない塩基を有する非標識若しくは標識ジデオキシヌクレオチドの少なくとも一種を用いることでも、多型(SNPを含む。)及び/又は変異の測定、解析、又は分析することが達成出来ることは、前記した通りである。
【0102】
そして、A型プライマーを少なくとも1種及び/又はB型プライマーを少なくとも1種、鋳型核酸、核酸合成酵素、非標識ヌクレオチド、標識ヌクレオチド、免疫関連標識ヌクレオチド、標識ジデオキシヌクレオチド及び非標識ジデオキシヌクレオチドからなる群から選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする多型(SNPを含む。)及び/又は変異の測定、解析、又は分析するための反応液、測定キット類又はデバイス類である。
【0103】
本発明の核酸の測定方法は、医学、法医学、人類学、古代生物学、生物学、遺伝子工学、分子生物学、農学、植物育種学等の各種の分野で利用できる。又、複合微生物系、共生微生物系といわれ、色々の種類の微生物が混在するか、若しくは少なくとも1種類の微生物が他の動物、植物由来の細胞と共に混在していて相互に単離できない微生物系等に好適に利用できる。又、本発明は各種の核酸測定方法、例えば、FISH方法、LCR方法、SD方法、TAS方法等に好適に適用できる。
本発明は、特許請求の範囲の請求項1〜18の発明を開示するが、その他に以下に記載する幾つかの好ましい実施形態を開示する。
【0104】
[1]下記の何れか1つの核酸重合系で、核酸重合反応を行い、核酸重合系の蛍光強度の変化若しくは変化量を測定し、その測定値から多型(SNPを含む。)及び/又は変異の測定、解析、又は分析することを特徴とする核酸の測定方法。
(1)鋳型核酸、少なくとも1種の標識ヌクレオチド、及び核酸合成酵素を含む。
(2)前記(1)において、非標識ヌクレオチドを含む。
(3)鋳型核酸、少なくとも1種の標識ジデオキシヌクレオチド、及び核酸合成酵素を含む。
(4)上記(3)において、標識ヌクレオチド及び非標識ヌクレオチドからなる群から選ばれた少なくとも1種を含む。
【0105】
(5)鋳型核酸、非標識ジデオキシヌクレオチド、標識ヌクレオチド、及び核酸合成酵素を含有する。
(6)上記(1)〜(5)において更に標識核酸プライマー又は非標識核酸プライマーを含む。
(7)鋳型核酸、非標識ヌクレオチド、標識核酸プライマー及び核酸合成酵素を含む。
(8)上記(1)〜(7)の何れか1つにおいて核酸特異的蛍光色素を含む。
【0106】
[2]下記の何れか1つの核酸重合系で、ハイブリダイゼーション反応(アニーリング反応)、核酸重合反応(核酸伸長反応)、変性反応を1サイクルとして核酸増幅反応を行い、各サイクルの蛍光強度の変化若しくは変化量を経時的に測定することにより、鋳型核酸の核酸増幅前の濃度若しくはコピー数を測定することを特徴とする核酸の測定方法。
(1)鋳型核酸、少なくとも1種の標識ヌクレオチド、及び核酸合成酵素を含む。
(2)前記(1)において、非標識ヌクレオチドを含む。
(3)鋳型核酸、少なくとも1種の標識ジデオキシヌクレオチド、及び核酸合成酵素を含む。
(4)上記(3)において、標識ヌクレオチド及び非標識ヌクレオチドからなる群から選ばれた少なくとも1種を含む。
【0107】
(5)鋳型核酸、非標識ジデオキシヌクレオチド、標識ヌクレオチド、及び核酸合成酵素を含有する。
(6)上記(1)〜(5)において更に標識核酸プライマー又は非標識核酸プライマーを含む。
(7)鋳型核酸、非標識ヌクレオチド、標識核酸プライマー及び核酸合成酵素を含む。
(8)上記(1)〜(7)の何れか1つにおいて核酸特異的蛍光色素を含む。
【0108】
[3]各サイクルの蛍光強度の変化若しくは変化量を経時的に測定することにより、蛍光強度の変化若しくは変化量が観察され始めるサイクル数Ct値を求め、当該Ctと鋳型核酸の核酸増幅前の濃度若しくはコピー数の関係から、鋳型核酸の核酸増幅前の濃度若しくはコピー数を測定する前記[2]に記載の核酸の測定方法。
[4]前記[2]に記載の核酸重合系で、核酸増幅反応を行い、核酸重合系の蛍光強度の変化若しくは変化量を経時的に測定して、その測定値から、多型(SNPを含む。)及び/又は変異の測定、解析、又は分析する前記[2]に記載の核酸の測定方法。
[5]非標識若しくは標識核酸プライマーの3’末端塩基若しくは3’末端から2番目の塩基(3’末端塩基を1と数える。)が鋳型核酸の検出目的の多型(SNPを含む。)及び/又は変異の塩基に対応する非標識若しくは標識核酸プライマーを含有する核酸重合系で核酸重合若しくは核酸増幅反応を行い、核酸重合系の蛍光強度の変化若しくは変化量を測定し、多型(SNPを含む。)及び/又は変異の測定、解析、又は分析する前記[1]又は[4]に記載の核酸の測定方法。
【0109】
[6]下記の核酸重合系で、核酸重合反応、又は核酸増幅を行い、得られるデータを比較検討することにより、多型(SNPを含む。)及び/又は変異の測定、解析、又は分析する前記[1]又は[4]に記載の核酸の測定方法。
1)前記した核酸重合系{(1)〜(8)}の何れか1つのものが、非標識若しくは標識核酸プライマーの、3’末端塩基若しくは3’末端から2番目の塩基(3’末端塩基を1と数える。)が、対応する鋳型核酸の塩基とは相補しない塩基を有するもの(A型プライマーと称する。)の少なくとも1種を含有する。
2)前記1)の核酸重合系が、非標識若しくは標識核酸プライマーの、3’末端塩基若しくは3’末端から2番目の塩基(3’末端塩基を1と数える。)が、対応する鋳型核酸の塩基とは相補する塩基を有するもの(B型プライマーと称する。)の少なくとも1種を含有する。
3)前記1)の核酸重合系が、A型プライマーの少なくとも1種、B型プライマーの少なくとも1種を含有する(但し、同種の蛍光色素で標識されたA型プライマー及びB型プライマーを除く。)。
【0110】
[7]前記請求項1、7、9、12、16、前記[1]、[3]の何れか1項で得られたデータを解析する方法において、核酸重合系のFRET現象におけるドナーとしての役割をもつ蛍光色素若しくは核酸特異的蛍光色素の、経時的若しくは非経時的に測定された蛍光強度値を、アクセプターとしての役割をもつ蛍光色素の蛍光強度値で割るか、又は逆の操作をすることを特徴とするデータ処理若しくは解析方法。
[8]前記請求項1、7、9、12、16、前記[1]、[3]の何れか1項に記載の方法で得られたデータを解析する方法において、鋳型核酸若しくは核酸合成酵素を含有している核酸重合系の各サイクルの蛍光強度値を、鋳型核酸若しくは核酸合成酵素が含有していない核酸重合系の各サイクルの蛍光強度値により補正することを特徴とするデータ処理若しくは解析方法。
【0111】
[9]A型プライマーの少なくとも1種及び/又はB型プライマーの少なくとも1種、鋳型核酸、核酸合成酵素、非標識ヌクレオチド、標識ヌクレオチド、標識ジデオキシヌクレオチド及び非標識ジデオキシヌクレオチドからなる群から選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする多型(SNPを含む。)及び/又は変異の測定、解析、又は分析するための反応液、測定キット類又はデバイス類。
[10]核酸合成酵素が、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を欠損させたVent(exo-)DNA Polymerase(サーモコッカス・リトラリス由来)、Tgo(exo-)DNA Polymerase、ThermoSequenase DNA Polymerase(Armersham社製)、AmpliTagGold、T7 Sequenase DNA Polymeraseである前記請求項1、7、9、12、16、前記[1]、[4]のいずれか1項に記載の核酸の測定方法。
【0112】
[11]核酸増幅方法が、PCR方法、ICAN方法、LAMP方法、NASBA方法、RCA方法、TAMA方法、LCR方法のいずれかの方法である前記[4]に記載の核酸の測定方法。
[12]PCR方法がリアルタイム定量的PCR法である前記[11]の核酸の測定方法。
[13]前記請求項5に記載の標識核酸プライマーの少なくとも1種で標識された核酸プライマーを固体表面上に固定化させて、前記請求項1、7、9、12、16、前記[1]、[2]の何れか1項に記載の方法を実施できるようにしたことを特徴するデバイス(DNAチップ)類。
[14]前記のデバイス(DNAチップ)類を用いて鋳型核酸の核酸重合反応を行う前記請求項1、7、9、12、16、前記[1]、[2]のいずれか1項に記載の核酸の測定方法。
【0113】
[15]前記請求項1、7、9、12、16、前記[1]、[2]、[4]のいずれか1項に記載の方法で鋳型核酸又はそれを鋳型とする核酸重合体若しくは核酸増幅体を測定するための、温度を変化させながら蛍光測定可能な装置で、且つ前記[7]、[8]に記載のデータ処理若しくは解析方法の過程を、コンピュータに実行させるための手順をプログラムとして記録したコンピュータ読取可能な記録媒体を組み込んだことを特徴とする測定装置。
[16]前記請求項1、7、9、12、前記[2]の何れか1項に記載の方法を用いて、均一溶液系核酸プローブの任意の位置の塩基を蛍光色素で標識する方法。
【実施例】
【0114】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例においては、以下のように用語を短略して用いた。
1)「鋳型核酸」を「鋳型」という場合がある。
2)「核酸プライマー」を「プライマー」とした。
3)dNTSs、dATP、dGTP、dTTP、dUTPは現在分子で生物学等で用いられている意味と同じである。
本実施例で用いた、鋳型、標識又は非標識ヌクレオチド及び標識又は非標識プライマーは特別の記載がない限り、委託合成((株)日本遺伝子研究所(http://www.ngrl.co.jp)を行って入手した。
【0115】
本実施例にて使用したプライマー及び塩基配列は以下のものである。尚、塩基配列は右が3’末端で左が5’末端である。
(合成1本鎖DNAの塩基配列)
プライマー1:CAGACTCGACAGTGTAGACCCG
プライマー2:AGAGTTTGATCCTGGCTCAG
プライマー3:TTGCATGTGTTAGGCCTG
【0116】
又、鋳型1〜9は次の塩基配列を有していた。塩基配列は右が3’側で左が5’側である。
鋳型1:
ACACACACACACACTTCGGGTCTACACTGTCGAGTCTG
鋳型2:
TATCTATCTATCTATCTATCTATCTATCTTCGGGTCTACACTGTCGAGTCTG
鋳型3:
TTATTCTTATTCTTATTCTTATTCTTATTCTTATTCTTATTCTTCGGGTCTACACTGTCGAGTCTG
鋳型4:
TTATTTCTTTATTTCTTTATTTCTTTATTTCTTTATTTCTTTATTTCTTTATTTCTTCGGGTCTACACTGTCGAGTCTG
鋳型5:
TTATTTTCTTTATTTTCTTTATTTTCTTTATTTTCTTTATTTTCTTTATTTTCTTTATTTTCTTCGGGTCTACACTGTCGAGTCTG
【0117】
鋳型6:
TTATTTTCTTTTATTTTCTTTTATTTTCTTTTATTTTCTTTTATTTTCTTTTATTTTCTTTTATTTTCTTCGGGTCTACACTGTCGAGTCTG
鋳型7:
TTATTTTTCTTTTATTTTTCTTTTATTTTTCTTTTATTTTTCTTTTATTTTTCTTTTATTTTTCTTTTATTTTTCTTCGGGTCTACACTGTCGAGTCTG
鋳型8:
TTATTTTTCTTTTTATTTTTCTTTTTATTTTTCTTTTTATTTTTCTTTTTATTTTTCTTTTTATTTTTCTTTTTATTTTTCTTCGGGTCTACACTGTCGAGTCTG
鋳型9:
TTATTTTTTCTTTTTTATTTTTTCTTTTTTATTTTTTCTTTTTTATTTTTTCTTTTTTATTTTTTCTTTTTTATTTTTTCTTTTTTATTTTTTCTTCGGGTCTACACTGTCGAGTCTG
鋳型10:
GCTTCGGGTCTACACTGTCGAGTCTG
鋳型11:
GCTCCGGGTCTACACTGTCGAGTCTG
【0118】
実施例1(本発明方法B(2))
2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間のFRET現象を利用して鋳型核酸を測定する。
【0119】
A)各種方法
1)鋳型DNAとプライマーの合成
本実施例に鋳型として使用した1本鎖DNA(鋳型1〜9)及び22塩基のプライマー(プライマー1)はDNA合成機ABI394(Perkin Elmer社製、米国)で調製した。鋳型1から9はプライマー1と相補的な共通の配列を3´側に有する。又、これらの鋳型は伸長反応の過程で標識されたdUTPが7つ取り込まれるように設計してある。以下に鋳型1本鎖DNAとプライマー1との組み合わせの特徴を示す:
・鋳型1とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチドが1個取り込まれるごとに1つの蛍光標識ヌクレオチドが取り込まれる。
・鋳型2とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチドが3個取り込まれるごとに1つの蛍光標識ヌクレオチドが取り込まれる。
・鋳型3とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチドが5個取り込まれるごとに1つの蛍光標識ヌクレオチドが取り込まれる。
【0120】
・鋳型4とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチドが7個取り込まれるごとに1つの蛍光標識ヌクレオチドが取り込まれる。
・鋳型5とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチドが8個取り込まれるごとに1つの蛍光標識ヌクレオチドが取り込まれる。
・鋳型6とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチドが10個取り込まれるごとに1つの蛍光標識ヌクレオチドが取り込まれる。
・鋳型7とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチドが11個取り込まれるごとに1つの蛍光標識ヌクレオチドが取り込まれる。
・鋳型8とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチドが13個取り込まれるごとに1つの蛍光標識ヌクレオチドが取り込まれる。
【0121】
2)重合(増幅)反応条件
DNAポリメラーゼは3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を欠損させたサーモコッカス・リトラリス由来のVent(exo-)DNA Polymerase(NEW ENGLAND BioLabs,Beverly,MA)を用いた。蛍光標識ヌクレオチドにCyanine 5-dUTP(650nm/668nm)、LissamineTM-5-dUTP(570nm/588nm)、Texas Red(r)-5-dUTP(593nm/612nm)(カッコ内は最大吸収波長/最大蛍光波長、PerkinElmer米国)を用いた。DNAポリメラーゼにより取り込まれた標識ヌクレオチドへFRET現象を起こさせるためのドナー色素に、2本鎖核酸に特異的に結合し497nmに最大励起波長を持ち、520nm付近で最大の蛍光を発するSYBR(r)Green I Nucleic Acid Gel Stain(Molecular probes、米国)を用いた。
【0122】
反応液を以下のように調製した。
・20mM Tris-HCl(pH8.8) ・10mM KCl ・10mM (NH4)2SO4 ・2.5mM MgSO4
・0.1%Triton X-100 ・0.25mg/ml BSA ・200nM dATP ・200nM dGTP
・200nM dCTP ・200nM Cyanine5-dUTP若しくはLissamineTM-5-dUTP若しくはTexas Red(r)-5-dUTP ・1×SYBR(r)Green I ・2nM プライマー
・20nM 合成1本鎖鋳型DNA ・0.1 U(単位) Vent(exo-)DNA Polymerase
【0123】
反応溶液の最終容量20μl。上記反応液を均一に混合し、95℃で15秒熱変性させた後、65℃、15分間保温した。蛍光の検出にはライトサイクラーTMシステム(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社、ドイツ)を用いた。その際、該システムにあるF1(530nm)をSYBR(r)Green Iの検出に、F2(640nm)をLissamineTM-5-dUTP若しくはTexas Red(r)-5-dUTPの検出、F3(710nm)をCyanine 5-dUTPの検出に用いた。又、励起強度は75%に固定した。
【0124】
3)実施した実験系の内容
・モデル1〜9:プライマー1と鋳型1〜9の組み合わせ。蛍光標識ヌクレオチドはCyanine 5-dUTPを使用した。
・モデル10:プライマー1と鋳型9の組み合わせ。蛍光標識ヌクレオチドはCyanine 5-dUTPを使用しVent(exo-)DNA Polymeraseを添加しない。
・モデル11〜19:プライマー1と鋳型1〜9の組み合わせ。蛍光標識ヌクレオチドはLissamineTM-5-dUTPを使用しVent(exo-)DNA Polymeraseを添加しない。・モデル20:プライマー1と鋳型9の組み合わせ。蛍光標識ヌクレオチドはLissamineTM-5-dUTPを使用しVent(exo-)DNA Polymeraseを添加しない。
・モデル21〜29:プライマー1と鋳型1〜9の組み合わせ。蛍光標識ヌクレオチドはTexas Red(r)-5-dUTPを使用した。
・モデル30:プライマー1と鋳型9の組み合わせ。蛍光標識ヌクレオチドはTexas Red(r)-5-dUTPを使用しVent(exo-)DNA Polymeraseを添加しない。
・モデル31〜39:プライマー1と鋳型1〜9の組み合わせ。蛍光標識ヌクレオチドは使用しないかわりにdTTPを用いる。
・モデル40:プライマー1と鋳型9の組み合わせ。蛍光標識ヌクレオチドは使用しないかわりにdTTPを用いる。Vent(exo-)DNA Polymeraseを添加しない。
【0125】
結果を図10〜16に示した。モデル1〜10のF1蛍光強度変化を図10に、F3蛍光強度変化を図11に示す。モデル11〜20のF1蛍光強度変化を図12に、F2蛍光強度変化を図13に示す。モデル21〜30のF1蛍光強度変化を図14、F2蛍光強度変化を図15に示す。モデル31〜40のF1蛍光強度変化を図16に示す。
【0126】
その結果、モデル1〜9ではF1の蛍光が最大で約40%減少し、F3の蛍光が最大で約4倍増加した。酵素非添加のモデル10の反応ではF1は若干蛍光強度が減少したものの、F3の蛍光強度に変化はみられなかった(図10、11)。モデル11〜19はF1の蛍光強度が最大で約40%減少し、F2の蛍光強度が最大で約2.5倍増加した。酵素非添加のモデル20のF2の蛍光強度は変化しなかった(図12、13)。モデル21〜29はF1の蛍光強度が最大で約40%減少し、F2の蛍光強度が最大で約8倍増加した。酵素非添加のモデル30ではF2の蛍光強度に変化はなかった(図14、15)。SYBR(r)Green Iのみのモデル31〜39ではF1の蛍光強度が最大で3倍増加した(図16)。
【0127】
このように、2本鎖核酸特異的蛍光色素(今回はSYBR(r)Green I)と蛍光標識ヌクレオチドとの間にエネルギー移動現象が観察され、鋳型核酸を測定することができた。即ち、ドナーとなる2本鎖核酸特異的蛍光色素がアクセプターとなる各蛍光標識ヌクレオチドにエネルギーを供与したことで、ドナーの蛍光強度(F1)が減少し、アクセプターの蛍光強度(F2若しくはF3)が増加した。酵素を入れない系では蛍光強度値の変化はみられなかった。又、蛍光標識ヌクレオチドを入れないSYBR(r)Green Iだけの系では、エネルギー移動は起こらないためにSYBR(r)Green Iの蛍光強度(F1)のみが増加した。この手法では、エネルギー移動現象におけるドナー側の蛍光強度の減少、又、アクセプター側の蛍光強度の増加のどちらを測定しても鋳型核酸を測定することが可能であった。
【0128】
実施例2(本発明方法A)
蛍光標識ヌクレオチド同士のエネルギー移動現象を利用して鋳型核酸を測定する。
1)鋳型DNAとプライマーの合成
実施例1で使用したプライマーならびに鋳型1本鎖DNAを用いた。以下に鋳型1本鎖DNAとプライマー1との組み合わせの特徴を示す。
・鋳型1とプライマー1との組み合わせ:蛍光標識ヌクレオチドとFITC標識ヌクレオチドが交互に1つずつ取り込まれる。
・鋳型2とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチド1個が取り込まれるごとに、蛍光標識ヌクレオチドとFITC標識ヌクレオチドが交互に1つずつ取り込まれる。
・鋳型3とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチド2個が取り込まれるごとに、蛍光標識ヌクレオチドとFITC標識ヌクレオチドが交互に1つずつ取り込まれる。
【0129】
・鋳型4とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチド3個が取り込まれるごとに、蛍光標識ヌクレオチドとFITC標識ヌクレオチドが交互に1つずつ取り込まれる。
・鋳型5とプライマー1との組み合わせ:FITC標識ヌクレオチドが取り込まれた後、非標識ヌクレオチド3個が取り込まれる。次に、蛍光標識ヌクレオチドが取り込まれる。非標識ヌクレオチド4個が取り込まれる。この繰り返しである。非標識ヌクレオチド4個が取り込まれるごとに、蛍光標識ヌクレオチドとFITC標識ヌクレオチドが交互に1つずつ取り込まれる。
・鋳型6とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチド4個が取り込まれるごとに、蛍光標識ヌクレオチドとFITC標識ヌクレオチドが交互に1つずつ取り込まれる。
・鋳型8とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチド5個が取り込まれるごとに、蛍光標識ヌクレオチドとFITC標識ヌクレオチドが交互に1つずつ取り込まれる。
・鋳型9とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチド6個が取り込まれるごとに、蛍光標識ヌクレオチドとFITC標識ヌクレオチドが交互に1つずつ取り込まれる。
【0130】
2)重合(増幅)反応条件
蛍光標識ヌクレオチドには、実施例1と同様の蛍光標識ヌクレオチドとしてCyanine 5-dUTP、LissamineTM-5-dUTP、Texas Red(r)-5-dUTPを用いた。FITC標識ヌクレオチドはFITC-dGTP(PerkinElmer、米国)を用いた。
【0131】
尚、反応液を以下のように調製した。
・20mM TrisHCl(pH8.8) ・10mM KCl ・10mM (NH4)2SO4 ・2.5mM MgSO4
・0.1% Triton X-100 ・0.25mg/ml BSA ・200nM FITC-dGTP(ドナー色素)
・200nM dCTP ・200nM dATP ・200nM Cyanine 5-dUTP若しくはLissamineTM-5-dUTP若しくはTexas Red(r)-5-dUTP (アクセプター色素) ・2nM プライマー
・20nM 合成1本鎖鋳型DNA ・0.1 U Vent(exo-)DNA Polymerase
【0132】
反応溶液の最終容量20μl。上記反応液を均一に混合し、95℃で15秒熱変性させた後、65℃、15分間保温した。蛍光の検出にはライトサイクラーTMシステムを用いた。検出はF1、F2、F3を用い、励起強度は75%に固定した。
【0133】
3)実施した実験系の内容
・モデル1〜7:プライマー1と鋳型1、プライマー1と鋳型2、プライマー1と鋳型3、プライマー1と鋳型4、プライマー1と鋳型6、プライマー1と鋳型8、プライマー1と鋳型9の組み合わせで、Cyanine 5-dUTPを用いる。
・モデル8:プライマー1と鋳型6を使用し、蛍光標識ヌクレオチドにCyanine 5-dUTPを用い、Vent(exo-)DNA Polymeraseを添加しない。
・モデル9〜15:プライマー1と鋳型1、プライマー1と鋳型2、プライマー1と鋳型3、プライマー1と鋳型4、プライマー1と鋳型6、プライマー1と鋳型8、プライマー1と鋳型9の組み合わせで、LissamineTM-5-dUTPを用いる。
【0134】
・モデル16:プライマー1と鋳型6を使用し、蛍光標識ヌクレオチドにLissamineTM-5-dUTPを用い、Vent(exo-)DNA Polymeraseを添加しない。
・モデル17〜23:プライマー1と鋳型1、プライマー1と鋳型2、プライマー1と鋳型3、プライマー1と鋳型4、プライマー1と鋳型6。プライマー1と鋳型8、プライマー1と鋳型9の組み合わせで、Texas Red(r)-5-dUTPを用いる。
・モデル24:プライマー1と鋳型6を使用し、蛍光標識ヌクレオチドにRed(r)-5-dUTPを用い、Vent(exo-)DNA Polymeraseを添加しない。
【0135】
結果を図17〜22に示した。モデル1〜8のF1の蛍光強度変化を図17に、F3の蛍光強度変化を図18に示す。モデル9〜16のF1の蛍光強度変化を図19に、F2の蛍光強度変化を図20に示す。モデル17〜24のF1の蛍光強度変化を図21、F2の蛍光強度変化を図22に示す。
【0136】
その結果、モデル1〜7はF1の蛍光強度が最大で約50%減少し、F3の蛍光が最大で約5倍増加した。酵素非添加のモデル8の反応では蛍光変化はみられなかった(図17、18)。モデル9〜15はF1の蛍光強度が最大で60%減少し、F2の蛍光強度が最大で約2.5倍増加した。酵素非添加のモデル16の蛍光強度は変化しなかった(図19、20)。モデル17〜23はF1の蛍光強度が最大で50%以上減少し、F2の蛍光強度が最大で約4.5倍増加した。酵素非添加のモデル24では変化しなかった(図21、22)。
【0137】
以上の結果より、DNAポリメラーゼにより合成された蛍光標識ヌクレオチド同士のエネルギー移動現象によって蛍光強度値の変化から鋳型核酸を測定することができた。即ち、ドナー蛍光色素であるFITC標識ヌクレオチドの蛍光強度(F1)が減少し、アクセプター蛍光色素となるCyanine5,LissamineTM、Texas Red(r)標識ヌクレオチドの蛍光強度(F2若しくはF3)が増加した。酵素を入れない系では蛍光強度の変化はみられなかった。実施例1と同様、ドナー蛍光色素側の蛍光強度の減少、又、アクセプター蛍光色素側の蛍光強度の増加のどちらを測定しても鋳型核酸を測定することが可能であった。よって、アクセプター蛍光色素の蛍光強度値/ドナー蛍光色素の蛍光強度値を求めることで、より高いS/N比を得ることができ、感度の良い鋳型核酸測定法であることがわかった。本結果より、均一溶液系核酸プローブを使用しないで、簡便且つ高感度に鋳型核酸を測定可能であることが示された。
【0138】
実施例3(本発明方法A(2))
FITC標識ヌクレオチドとCy5標識ヌクレオチドを用いたリアルタイム定量的PCR
1)鋳型の合成
鋳型はPseudomonas fluorescens DSM 50108(PF)16SリボゾーマルDNAの1400bpのDNA断片を使用した。該鋳型は以下のようにして調製した。プライマー2、3を使用し、PFゲノムを鋳型としてPCR反応を行った。該増幅断片はマイクロコンPCR(r)(ミリポア社、米国)で精製後、濃度を測定しコピー数に換算した。
【0139】
2)PCR反応条件
反応液は以下のように調製した。
・20mM Tris-HCl(pH8.8) ・10mM KCl ・10mM (NH4)2SO4 ・2.5 mM MgSO4
・0.1% Triton X-100 ・0.25mg/ml BSA ・20μM プライマー対
・最終濃度1×109〜1×105コピーの鋳型DNA
・0.2 U Vent(exo-)DNA Polymerase ・6μM dATP、dCTP、dGTP混合物
・2.5μM dTTP ・0.25μM Cy5 5-dUTP ・0.25μM FITC-5-dUTP
【0140】
反応溶液の最終容量20μl。上記反応液を均一に混合し、95℃、30秒間熱変性させた後、変性反応95℃、10秒、アニーリング反応56℃、10秒、伸長反応72℃、70秒を1サイクルとして40サイクル行った。蛍光の検出にはライトサイクラーTMシステム用いた。検出にはF1及びF3を用い、励起強度は75%に固定した。
【0141】
前記に示した条件でPCRを行い、各サイクルの蛍光強度を実測した。その結果を図23、24に示す。即ち、各コピー数の鋳型リボゾーマルDNAについて、各サイクルのアニーリング反応時の蛍光強度を測定し、印字したものである。6サイクル目あたりからF1の蛍光強度が減少し、F3の蛍光強度が増加しているのが観察される。更にF1(ドナー蛍光色素)の蛍光強度の減少、F3(アクセプター蛍光色素)の蛍光強度の増加はコピー数が多い順に起こることがわかる。ここで、鋳型DNAが添加されていない0コピーのブランクでも、サイクル数を重ねるごとにF1蛍光強度が減少している様子が観察される。そこで、この点について蛍光強度値を補正した。即ち、各サイクルのF1蛍光強度値を同じサイクル数でのブランク蛍光強度値で割った。
Fn=fn(56℃)/f’n(56℃)
但し、Fn=各サイクルにおける蛍光強度値の補正値、fn(56℃)=各サイクルにおけるサンプルの56℃の蛍光強度値、f’n(56℃)=各サイクルにおけるブランクの56℃における蛍光強度値
【0142】
又、鋳型リボゾーマルDNAの各コピー数について、初期のサイクル数の蛍光強度値が2様ではないことがわかる。そこで、この点についても蛍光強度値を補正した。即ち、5サイクル目の蛍光強度値を1として各サイクルの蛍光強度値を換算した。
Cn=Fn(56℃)/F5(56℃)
但し、Cn=各サイクルにおける蛍光強度値の換算値、Fn(56℃)=各サイクルの56℃の蛍光強度値、F5(56℃)=5サイクル目の56℃における蛍光強度値。
以上2点の補正方法は、アニーリング反応後(ここでは56℃)、若しくは伸長反応後(72℃)のどちらの蛍光強度値を用いても構わない。
【0143】
この方法で処理すると、5サイクル目の蛍光強度値を1として各サイクルの蛍光強度を換算し、その換算値を対応するサイクル数に対してプロットした図となる。前記の過程で処理したデータを図25、図26に示す。スレッシュホールド値を設定し、その値に達したサイクル数をX軸に、鋳型リボゾーマルDNAの反応開始前のコピー数をY軸にプロットし、検量線を描かせた。実際にはY軸がF1蛍光強度の時のスレッシュホールド値を0.85、Y軸がF3蛍光強度の時のスレッシュホールド値を1.5とした。これらの過程で処理して求めた相関係数(R2)は各々0.9965(図27)、0.9931(図28)であった。
【0144】
2種類の蛍光標識ヌクレオチドを含んだdNTPを基質としてPCRを行うと、DNAポリメラーゼの作用により産物に2種類の蛍光標識ヌクレオチドが標識される。このことを利用し、1分子中に標識された2種類の蛍光標識ヌクレオチド同士のエネルギー移動現象を利用したリアルタイム定量的PCRを行った。初期とプラトー期の蛍光強度値を比較すると、ドナーの蛍光強度値(ここではF1)は約50%減少、アクセプターの蛍光強度(ここではF3)は約3倍に増加した。この蛍光強度値を用い、更にPCRのサイクル数を重ねることで起こる蛍光色素の減退と初期の蛍光強度値のずれを補正することで、正確な鋳型核酸の定量が可能であった。この手法では、ドナー及びアクセプターのどちらの蛍光強度値の変化を測定しても定量可能であった。更にF3をF1で割ることで、SN比を高くすることも可能である。
【0145】
実施例4
2本鎖核酸特異的蛍光色素とCy5標識ヌクレオチドを用いたリアルタイム定量的PCR
鋳型とプライマーは実施例5と同様のものを使用した。以下に反応液組成を示す。
・20mM Tris-HCl(pH 8.8) ・10mM KCl ・10mM (NH4)2SO4 ・2.5mM MgSO4
・0.1% Triton X-100 ・0.25mg/ml BSA ・20μM プライマー対
・最終濃度1×109〜1×105コピーの鋳型DNA
・0.2 U Vent(exo-)DNA Polymerase ・4μM dATP、dCTP、dGTP混合物
・1μM dTTP ・1μM Cy5-5-dUTP ・1×SYBR(r)Green I
【0146】
反応溶液の最終容量20μl。上記反応液を均一に混合し、95℃、30秒間熱変性させた後、95℃、10秒、56℃、10秒、72℃、70秒を1サイクルとして40サイクル行った。蛍光の検出にはライトサイクラーTMシステムを用いた。検出にはF3を用い、励起強度は75%に固定した。結果を図29に示す。実施例5と同様の方法で蛍光強度値を補正した。スレッシュホールド値を2でとった場合の相関係数(R2)は0.9984であった(図30)。
【0147】
1種類の蛍光標識ヌクレオチドを含むdNTPを基質としてPCRを行うと、DNAポリメラーゼの作用により産物に1種類の蛍光標識ヌクレオチドが標識される。この時、ある種の鋳型核酸に結合する蛍光色素を混ぜておき、この蛍光色素と分子中の蛍光標識ヌクレオチドとの間のエネルギー移動現象を利用してリアルタイム定量的PCRを行った。初期とプラトー期の蛍光強度値を比較すると、アクセプターの蛍光強度(ここではF3)は約4倍に増加した。この蛍光強度値と、更にPCRのサイクル数を重ねることで起こる蛍光色素の蛍光強度の減退と初期の蛍光強度値のずれを補正することで、鋳型核酸の測定(定量)が可能であった。
【0148】
実施例5
標識ヌクレオチドを用いた1塩基伸長反応によるSNPの測定
1)鋳型DNAとプライマーの合成
本実施例に鋳型として使用した26塩基の1本鎖DNA(鋳型10、11)DNA合成機ABI394で調製した。鋳型10と11は5’末端から数えて4塩基目がそれぞれT、Cであり、その他の配列は同じである。このように、鋳型10と11は特定の部位がT若しくはCであるSNP(single nucleotide polymorphism;1塩基多型、以下SNPと略す)を含んだDNA断片と考えることができる。これらの鋳型は3’側にプライマー1と相補的な配列を持ち、該プライマーとハイブリダイズした際、プライマーの3’末端塩基が鋳型のSNP部位の塩基に隣接するように設計してある。尚、蛍光標識ヌクレオチドはTexas Red(r)-5-ddATP(PerkinElmer 米国)、Cy5TM-5-ddGTP(Amersham Biosciences)を用いた。又、核酸重合系にSYBR(r)Green 1を添加した。
【0149】
2)1塩基伸長反応
反応液を以下のように調製した。
・20mM Tris-HCl(pH 8.8) ・10mM KCl ・10mM (NH4)2SO4 ・2.5mM MgSO4
・0.1% Triton X-100 ・0.25mg/ml BSA ・200nM Texas Red(r)-5-ddATP
・200nM Cyanine5TM-5-ddGTP ・1×SYBR(r)Green I ・20nM プライマー
・200nM 合成1本鎖鋳型DNA ・0.1 U Vent(exo-)DNA Polymerase
【0150】
反応溶液の最終容量20μl。上記反応液を均一に混合し、95℃、15秒間熱変性させた後、65℃で10分間保温した。蛍光の検出には蛍光測定機器パーキンエルマーLS−50Bを用いた。励起波長480nm、蛍光波長610nm、670nmで測定し、スリット幅を10nmにセットした。
【0151】
3)実施した実験系の内容
・モデル1:プライマー1と鋳型10の組み合わせでVent(exo-)DNA Polymeraseを添加しない(ブランクコントロール)
・モデル2:プライマー1と鋳型10の組み合わせ(鋳型10のホモ)でVent(exo-)DNA Polymeraseを添加する。
・モデル3:プライマー1と鋳型11の組み合わせ(鋳型11のホモ)でVent(exo-)DNA Polymeraseを添加する。
・モデル4:プライマー1、鋳型10、11を100nMずつ等量加えた組み合わせ(鋳型10と11のヘテロ)Vent(exo-)DNA Polymeraseを添加する。
【0152】
その結果、モデル1の610nmにおける蛍光強度値は0.60、670nmでの蛍光強度値は0.10であった。モデル2の610nmにおける蛍光強度値は2、40、670nmでの蛍光強度値は0.10であった。モデル3における610nmの蛍光強度値は0.59、670nmでの蛍光強度値は0.31であった。モデル4の610nmの蛍光強度値は2.01、670nmでの蛍光強度値は0.21であった。
【0153】
鋳型10のホモを想定したモデル2は、ブランクと比較して610nmの蛍光強度値が約4倍高くなっている。これは鋳型10のSNP部位に相補的なTexas Red(r)標識ヌクレオチドが取り込まれた結果、SYBR(r)Green Iとエネルギー移動を起こしTexas Red(r)の610nmの蛍光強度値が増加したと考えられる。SNP部位に相補的でないCy5TM標識ヌクレオチドは取り込まれない為670nmの蛍光強度に変化はなかった。鋳型11のホモを想定したモデル3はブランクと比較して670nmの蛍光強度値が約3倍高い。これは鋳型11のSNP部位に相補的なCy5TM標識ヌクレオチドを取り込んだ結果、SYBR(r)Green Iとエネルギー移動を起こしCy5TMの670nmの蛍光が増加したと考えられる。SNP部位に相補的でないTexas Red(r)標識ヌクレオチドは取り込まれず610nmの蛍光強度は変化しなかった。鋳型10と鋳型11が等量入ったヘテロの系のモデル4では、610nm、670nmどちらの蛍光も約2倍増加した。これはTexas Red(r)標識ヌクレオチド、Cy5TM標識ヌクレオチドの両者が取り込まれた結果である。このように、SNPの測定のような、1分子につき2つの蛍光標識ヌクレオチドを取り込んだ場合にも、蛍光強度の変化が測定可能であった。更に、二種類の蛍光標識ヌクレオチドを用いて、1つのチューブ内で二種類の鋳型核酸の測定が可能であった。
【0154】
実施例6
一塩基伸長反応によるp53遺伝子コドン282の一塩基多型検出
(1)鋳型DNAとプライマーの合成
本実施例に鋳型として使用したDNAは、PCR反応にてプライマー14、15を用いて調製した。
【0155】
(PCR反応条件)
反応液は以下のように調製した。
・20mM Tris-HCl(pH8.0) ・10mM KCl ・10mM (NH4)2SO4 ・2.5mM MgCl2
・0.1% Triton X100 ・200nM プライマー対 ・50ng ヒトゲノムDNA
・1U AmpliTaqGold(Applied Biosystems) ・200μM dNTPs
【0156】
反応溶液の最終容量25μl。上記反応液を均一に混合し、95℃、10分間熱変性させた後、変性反応95℃、30秒、アニーリング反応60℃、30秒、伸長反応72℃、30秒を1サイクルとして40サイクル行った。
【0157】
(2)PCR産物の精製
調製したPCR産物には大過剰のPCRプライマーとdNTPが含まれるため、キアゲンPCR産物精製キット(Qiagen)による精製、若しくは、シュリンプ由来アルカリフォスファターゼ(usb)とエキソヌクレアーゼI(usb)をそれぞれ4U、20Uずつ添加し、37℃、90分温置後、85℃15分間加熱して酵素を不活性化した溶液を鋳型とした。
【0158】
(3)一塩基伸長反応
ジェノタイピングプライマーとして、プライマー16に示したオリゴヌクレオチドを使用した。PCR反応で調製した鋳型とハイブリダイズした際、その3’末端塩基がSNP部位に隣接するように設計してある。
反応液は以下のように調製した。
・1U Thermo Sequenase I DNA Polymerase(Amersham-Pharmacia Biotech)
・10×Thermo Sequenase I DNA Polymeraseバッファー
・200nM Texas Red-5-ddATP ・200nM Cy5-5-ddGTP
・1×SYBR Green I ・200nM プライマー
・鋳型DNA
【0159】
反応溶液の最終容量20μl。上記反応液を均一に混合し、95℃、30秒間熱変性させた後、50℃で1分間保温した。これを1サイクルとして、40サイクル行った。蛍光の検出には蛍光測定機器LS−50B(Perkin Elmer)を用いた。励起波長480nm、蛍光波長610nm、670nmで測定し、スリット幅を10nmにセットした。
【0160】
その結果、Cアレルホモ接合体の610nmにおける蛍光強度値は0.60、670nmでの蛍光強度値は2.10であった。Tアレルホモ接合体の610nmにおける蛍光強度値は2.40、670nmでの蛍光強度値は0.58であった。ヘテロ接合体における610nmの蛍光強度値は1.60、670nmでの蛍光強度値は1.23であった。鋳型DNAを添加していないブランク試験の610nmの蛍光強度値は0.61、670nmでの蛍光強度値は0.60であった。尚、用いたサンプルは別の方法(制限断片長多型法)でジェノタイプを判定済みのものを使用した。
【0161】
Cアレルホモ接合体は、ブランクと比較して670nmの蛍光強度値が約5倍高くなっている。これは、CY5標識ヌクレオチドが取り込まれた結果、SYBR Green Iとエネルギー移動を起こしCY5の670nmの蛍光強度値が増加したためと考えられる。SNP部位に相補的でないTexas Red標識ヌクレオチドは取り込まれない為610nmの蛍光強度に変化はなかった。Tアレルホモ接合体を鋳型とした場合は、ブランクと比較して610nmの蛍光強度値が約4倍高い。これは、SNP部位に相補的なTexas Red標識ヌクレオチドを取り込んだ結果、SYBR Green Iとエネルギー移動を起こしTexas Redの610nmの蛍光が増加したためと考えられる。SNP部位に相補的でないCY5標識ヌクレオチドは取り込まれず670nmの蛍光強度は変化しなかった。ヘテロ接合体では、610nm、670nmどちらの蛍光も約2倍増加した。これはTexas Red標識ヌクレオチド、Cy5標識ヌクレオチドの両者が取り込まれた結果である。このように、PCR産物を鋳型とした場合にも、本発明の方法を用いて、ワンチューブ内での2種類の核酸の検出が可能であった。
【0162】
実施例7
アレル特異的プライマーを用いた配列特異的伸長法によるアルデヒドデヒドロゲナーゼ2(ALDH2)遺伝子の一塩基多型検出
ALDH2は、12番染色体長腕に存在するアルコール代謝関連遺伝子の1つである。日本人に頻繁にみられる変異型アレル(ALDH2*2)は、ALDH2 exon 12中487番目のアミノ酸Glu(グルタミン酸)をコードするGAAが、Lys(リジン)をコードするAAAに変異した点突然変異である。
【0163】
(1)鋳型の合成
本実施例に使用する鋳型DNAは、PCR反応にてヒトゲノムDNAよりプライマー4、5を用いて調製した。反応溶液の組成は以下のとおりである。
・20mM Tris-HCl(pH8.0) ・10mM KCl ・10mM (NH4)2SO4 ・2.5mM MgCl2
・0.1% Triton X100 ・200nM プライマー対 ・50ng ヒトゲノムDNA
・1U AmpliTaqGold ・200μM dNTPs 混合物
【0164】
反応溶液の最終容量25μl。上記反応液を均一に混合し、95℃、10分間熱変性させた後、変性反応95℃、30秒、アニーリング反応60℃、30秒、伸長反応72℃、30秒を1サイクルとして40サイクル行った。
(2)PCR産物の精製
調製したPCR産物を、PCR精製キット(Qiagen)、若しくは酵素処理(シュリンプ由来アルカリフォスファターゼとエキソヌクレアーゼIをそれぞれ4U、20Uずつ添加し、37℃、90分温置後、85℃、15分間加熱して酵素を不活性化)した溶液を鋳型として一塩基多型解析に用いた。
【0165】
(3)配列特異的伸長反応
3’末端がそれぞれのSNPに相補的なアレル特異的プライマーを合成した。プライマー6は3’末端がC、プライマー7はTであり、その他は鋳型と相補的な同じ配列を有している。配列特異的伸長反応による一塩基多型解析は、プライマーの3’末端にミスマッチが存在すると、DNAポリメラーゼによる伸長反応が阻害されるという原理に基づいている。従って3’末端が相補的な場合、伸長反応により取り込まれた2種類の蛍光色素標識ヌクレオチドによりFRETが起き、蛍光強度が変化する。相補的でない場合、蛍光標識ヌクレオチドは取り込まれないため蛍光強度は変化しない。
【0166】
反応液を以下のように調製した。
・20mM Tris-HCl(pH8.8) ・10mM KCl ・10mM (NH4)2SO4 ・2.5mM MgSO4
・2μM dATP ・2μM dGTP ・2μM dTTP ・1.2μM dCTP ・400nM Cy5-5-dCTP
・400nM FITC-5-dCTP ・200nM プライマー ・精製PCR産物
・0.1U Vent(exo-)DNA Polymerase
【0167】
反応溶液の最終容量20μl。上記反応液を均一に混合し、95℃、15秒間熱変性させた後、アニーリング、60℃で1分間し、伸長反応、72℃で20秒間を1サイクルとし、20サイクル反応させた。蛍光の検出にはライトサイクラーTMシステムを用いた。その際、該システムにあるF1(530nm)をFITCの検出に、F3(710nm)をCY 5の検出に用いた。又、励起強度は75%に固定した。
【0168】
3種類の遺伝子型(Cアレルホモ接合体、Tアレルホモ接合体、ヘテロ接合体)におけるプライマー6を使用した際のFITC及びCY5の蛍光強度変化をそれぞれ図31、図32に示した。プライマー7を使用した際のFITC及びCY5の蛍光強度変化をそれぞれ図33、図34に示した。Cアレルホモ接合体では、3’末端がCであるプライマー6を添加した場合のみ、蛍光強度が変化した。即ち、ドナーであるFITCの蛍光強度が減少し、アクセプターのCY5の蛍光強度が増加した。3’末端がTであるプライマー7を添加した場合は、蛍光強度の変化はみられなかった。これは、3’末端が鋳型と相補的なプライマー6を添加した場合にのみ、伸長反応が起こったためと考えられる。Tアレルホモ接合体では、3’末端がTであるプライマー7を添加した場合のみFITCの蛍光強度が減少し、アクセプターであるCY5の蛍光強度が増加した。ヘテロ接合体では、プライマー6及び7のどちらを添加した場合にも蛍光強度の変化がみられた。尚、用いたサンプルは別の方法(制限断片長多型)でジェノタイプを判定済みのものを使用した。従って、本発明の方法と配列特異的伸長法を組み合わせて、一塩基多型解析が可能であることが示された。
【0169】
実施例8
ICAN法(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids)で調製した鋳型を用いた配列特異的伸長法によるALDH2遺伝子の一塩基多型の検出
本実施例に使用する鋳型DNAは、RNA−DNAキメラプライマー、鎖置換活性と鋳型交換活性を有するDNAポリメラーゼ、RNaseHを用いる等温の遺伝子増幅方法で調製した。その際使用したプライマーは、プライマー4及び5と同じ塩基配列を有し、その3’末端3塩基がリボヌクレオチドに置き換わっている。
【0170】
(1)鋳型DNAの合成
(ICAN反応条件)
・35mM Tris-HCl(pH7.8) ・10mM MgSO4 ・5% DMSO ・1μM プライマー対
・200ng ヒトゲノムDNA ・2.2U BcaBEST DNA polymerase(宝酒造)
・15U RNase H(宝酒造) ・1mM dNTPs
【0171】
反応溶液の最終容量20μl。上記反応液を均一に混合し、55℃、60分反応させた後、90℃、5分間加熱し、酵素を失活させた。
(2)ICAN増幅産物の酵素処理
シュリンプ由来アルカリフォスファターゼとエキソヌクレアーゼIをそれぞれ4U、20Uずつ添加し、37℃、90分温置、続いて85℃、15分間加熱して酵素を不活性化した。
【0172】
(3)配列特異的伸長反応
反応液を以下のように調製した。
・20mM Tris-HCl(pH8.8) ・10mM KCl ・10mM (NH4)2SO4 ・2.5mM MgSO4 ・2μM dATP
・2μM dGTP ・2μM dTTP ・1.2μM dCTP ・400nM Cy5-5-dCTP ・400nM FITC-5-dCTP
・100nM プライマー6、7 ・ICAN増幅産物 ・0.1U Vent(exo-)DNA Polymerase
【0173】
反応溶液の最終容量20μl。上記反応液を均一に混合し、95℃、15秒間熱変性させた後、アニーリング反応、60℃で1分間し、伸長反応、72℃で20秒間を1サイクルとし、20サイクル反応させた。蛍光の検出にはライトサイクラーTMシステムを用いた。その際、該システムにあるF1(530nm)をFITCの検出に、F3(710nm)をCY5の検出に用いた。又、励起強度は75%に固定した。
【0174】
その結果、Cアレルホモ接合体では、3’末端がCであるプライマー6を添加した場合のみ、蛍光強度が変化した。即ち、FRET現象のドナーであるFITCの蛍光強度が減少し、アクセプターであるCY5の蛍光強度が増加した。それに対し、3’末端がTであるプライマー7を添加した場合、変化はみられなかった。Tアレルホモ接合体では、3’末端がTであるプライマー7を添加した場合のみ蛍光強度が変化した。ヘテロ接合体では、プライマー6及び7のどちらを添加した場合にも蛍光の変化がみられた。従って、ICAN増幅産物を鋳型とした場合にも、一塩基多型検出が可能であることが確認された。
【0175】
実施例9
LAMP(Loop-mediated Isothermal Amplification)法で調製した鋳型を用いた、配列特異的伸長法によるProstate-specific antigenの一塩基多型検出
本実施例で使用する鋳型DNAは、4つのプライマーを使用し、さらに酵素として鎖置換型DNAポリメラーゼを使用する等温遺伝子増幅法で調製した。
【0176】
(1)鋳型DNAの合成
LAMP反応条件
・10×Thermopol Buffer(NEB) ・2mM MgSO4 ・200ng ヒトゲノムDNA
・8U Bst DNA polymerase(NEB) ・4M Betaine(Sigma) ・10mM dNTPs
・40pmol プライマー8 ・40pmol プライマー9 ・5pmol プライマー10
・5pmol プライマー11
【0177】
反応溶液の最終容量25μl。上記反応液を均一に混合し、65℃、60分反応させた後、80℃、10分間加熱し、酵素を失活させた。
(2)LAMP増幅産物の酵素処理
シュリンプ由来アルカリフォスファターゼとエキソヌクレアーゼIをそれぞれ4U、20Uずつ添加し、37℃、90分温置、続いて85℃、15分間加熱して酵素を不活性化した。
【0178】
(3)配列特異的伸長反応
反応液を以下のように調製した。
・20mM Tris-HCl(pH8.8) ・10mM KCl ・10mM (NH4)2SO4 ・2.5mM MgSO4
・400nM CY5-5-dCTP ・400nM FITC-5-dCTP ・2μM dATP ・2μM dGTP
・2μM dTTP ・1.2μM dCTP ・100nM プライマー12及びプライマー13
・LAMP増幅産物 ・0.1U Vent(exo-)DNA Polymerase
【0179】
反応溶液の最終容量20μl。上記反応液を均一に混合し、95℃、15秒間熱変性させた後、アニーリング反応、60℃で1分間し、伸長反応、72℃で20秒間を1サイクルとし、20サイクル反応させた。蛍光の検出にはライトサイクラーTMシステムを用いた。その際、該システムにあるF1(530nm)をFITCの検出に、F3(710nm)をCY 5の検出に用いた。又、励起強度は75%に固定した。
【0180】
その結果、Cアレルホモ接合体では、3’末端がCであるプライマー12を添加した場合のみ、蛍光強度が変化した。即ち、FITCの蛍光強度が減少し、CY5の蛍光強度が増加した。Tアレルホモ接合体では、3’末端がTであるプライマー13を添加した場合のみ蛍光強度が変化した。ヘテロ接合体では、プライマー12及び13のどちらを添加した場合にも蛍光の変化がみられた。従って、LAMP法で増幅した産物を鋳型とした場合にも一塩基多型検出が可能であることが示された。
【0181】
実施例10
逆転写酵素を用いたアレル特異的伸長反応による1塩基多型解析
LCHAD(長鎖3−ヒドロキシアシル コエンザイムA デヒドロゲナーゼ)、OAT(有機アニオントランスポーター)の一塩基多型を、逆転写酵素を用いた配列特異的伸長法により解析した。
(1)鋳型RNAの合成
本実施例に鋳型として使用するRNAは以下のように調製した。
後記の配列番号17、18、21、22のプライマーを用いて2−プレックスPCRを行った。1組のプライマーの一方には5’RNAポリメラーゼプロモーター配列を付けた。マルチプレックスPCR反応条件は、Ampli Taq Gold 1U 200nM、プライマー対50ng、ヒトゲノムDNA、Ampli Taq Gold buffer 200μM、dNTPsを均一に混合し、最終容量25μlとした。95℃、10分間熱変性させた後、変性反応95℃、30秒、アニーリング反応65℃、30秒、伸長反応72℃、30秒を1サイクルとして40サイクル行った。続いて、T7 Ampliscribe Kit(Epicentre Technologies)を用いて転写反応を行った。
【0182】
(2)マイクロアレイの調製
マイクロアレイは、標準的なマイクロスコープガラススライドを用いた。イソチオシアネートで表面を活性化させた後、NH2−修飾オリゴヌクレオチド(配列番号19、20、23、24)を固定化した。オリゴヌクレオチドは20μMになるよう400mMの炭酸ナトリウムバッファー(pH9.0)で溶解した。直径2mmにスポットした後、気化したアンモニアにさらし蒸留水で三回洗浄した。
【0183】
(3)配列特異的伸長法
調製した鋳型RNAを、10mM Tris-HCl、(pH7.4)、1mM EDTA、0.2M NaCl、0.1% Triton X-100に溶解後、10μlをアレイに添加し37℃、20分間温置してアニーリングさせた。0.1M NaClで洗浄後、逆転写酵素MMLV(Epicentre Technologies)6U、dNTPs(dATP、dGTP、FITC-dUTP、CY5-dCTP)6μM、酵素付属バッファーを添加し、52℃で1時間反応させた。
【0184】
(4)シグナルの検出
マイクロスコープ ガラス スライドは、コンフォーカル スキャン アレイ4000(GSI Lumonics)を用いて励起波長480nm、蛍光波長650nmでスキャンした。バックグランドの蛍光強度値を引いた値をジェノタイプの判定に用いた。
【0185】
LCHADのCアレル特異的プライマーであるプライマー19が固定化されたスライドは、LCHADのCアレル接合体を含む鋳型をスポッティングした場合のみ、シグナル強度が約900と高い値を示した。Cアレル接合体を含まない鋳型をスポットした場合のシグナルはすべて100以下であった。LCHADのGアレル特異的プライマーであるプライマー20が固定化されたスライドでは、LCHADのGアレル接合体を含む鋳型をスポットした場合のみ高いシグナル強度(800付近)が得られた。それに対してGアレル接合体を含まない鋳型をスポットした場合のシグナルはすべて100以下であった。OATのCアレル特異的プライマーであるプライマー23が固定化されたスライドは、OATのCアレル接合体を含む鋳型をスポッティングした場合のみ、シグナル強度が約1200と高い値を示した。Cアレル接合体を含まない鋳型をスポットした場合のシグナルはすべて100以下であった。このように、本発明の核酸検出方法において、逆転写酵素を用いた一塩基多型解析が可能であることが示された。
【0186】
実施例11
フルオレセインクロロトリアジニル−4−dC(デオキシシチジン)ヌクレオチドモノマーを利用して、グアニンによる消光現象により核酸を検出する。
1)鋳型DNAとプライマー
プライマー1と、鋳型12を用いた。
・モデル1:プライマー1と鋳型12の組み合わせ
・モデル2:プライマー1と鋳型12の組み合わせでVent(exo-)DNA Polymeraseを添加しない。
【0187】
2)増幅反応条件
反応液を以下のように調製した。
・20mM Tris-HCl(pH8.8) ・10mM KCl ・10mM (NH4)2SO4 ・2.5mM MgSO4
・0.5% Triton X100 ・5% DMSO ・0.25mg/ml BSA
・200nM フルオレセインクロロトリアジニル-4-dC
・200nM dGTP ・200nM dATP ・200nM dUTP ・2nM プライマー
・50nM 合成一本鎖鋳型DNA ・0.1U Vent(exo-)DNA Polymerase
【0188】
反応溶液の最終容量20μl。上記反応液を均一に混合し、95℃で15秒熱変性させた後、65℃、15分間保温した。蛍光の検出にはライトサイクラーTMシステムを用いた。検出はF1を用い、励起強度は75%に固定した。
【0189】
その結果、モデル1ではF1の蛍光強度が最大で24%減少した。酵素非添加のモデル2の反応では蛍光変化はみられなかった。以上の結果より、DNAポリメラーゼにより合成中の鎖に取り込まれたdC-FITC標識ヌクレオチドが、相補鎖に存在するグアニンと相互作用した結果、蛍光が減少したと考えられる。
【0190】
[プライマーの配列]
プライマー4:GTGTAACCCATAACCCCCAAGA
プライマー5:CACCAGCAGACCCTCAAGC
プライマー6:CCCACACTCACAGTTTTCACTTC
プライマー7:CCCACACTCACAGTTTTCACTTT
プライマー8:TGTTCCTGATGCAGTGGGCAGCTTTAGTCTGCGGCGGTGTTCTG
プライマー9:TGCTGGGTCGGCACAGCCTGAAGCTGACCTGAAATACCTGGCCTG
プライマー10:TGCTTGTGGCCTCTCGTG
プライマー11:GGGTGTGGGAAGCTGTG
【0191】
プライマー12:TGATCTTGCTGGGTCGGCACAGC
プライマー13:TGATCTTGCTGGGTCGGCACAGT
プライマー14:ACCTGATTTCCTTACTGCCTCTTGC
プライマー15:GTCCTGCTTGCTTACCTCGCTTAGT
プライマー16:TGTGCCTGTCCTGGGAGAGAC
プライマー17:TTCTAATACGACTCACTATAGGGAGACCCTTGCCAGGTGATTGGC
プライマー18:GCGGTCCCAAAAGGGTCAGTGTTTCTGTGGTCACGAAGTC
【0192】
プライマー19:CTCTAATAGTGCTGGCTC
プライマー20:CTCTAATAGTGCTGGCTG
プライマー21:
TTCTAATACGACTCACTATAGGGAGACCTTTGTAGCTGGGA ACTTC
プライマー22:
GCGGTCCCAAAAGGGTCAGTACCAAAACCTGGTAAATACGG
プライマー23:GAGATAGCAGACAACGTCC
プライマー24:GAGATAGCAGACAACGTCG
鋳型12:
TTGTTTTGTTTTGTTTTGTTTTGTTTTGTTTTGTTTTGTTTTGTTTTGTTTTGTTTTGTTTTGTTTTGTTCGGGTCTACACTGTCGAGTCTG
【0193】
[図10]2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル1〜10のF1蛍光強度変化。
[図11]2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル1〜10のF3蛍光強度変化。
[図12]2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル11〜20のF1蛍光強度変化。
[図13]2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル11〜20のF2蛍光強度変化。
[図14]2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル21〜30のF1蛍光強度変化。
[図15]2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル21〜30のF2蛍光強度変化。
[図16]2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル31〜40のF1蛍光強度変化。
[図17]2種の蛍光標識ヌクレオチド間相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル1〜8のF1蛍光変化。
[図18]2種の蛍光標識ヌクレオチド間相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル1〜8のF3蛍光変化。
[図19]2種の蛍光標識ヌクレオチド間相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル9〜16のF1蛍光変化。
[図20]2種の蛍光標識ヌクレオチド間相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル9〜16のF2蛍光変化。
[図21]2種の蛍光標識ヌクレオチド間相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル17〜24のF1蛍光変化。
[図22]2種の蛍光標識ヌクレオチド間相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル17〜24のF2蛍光変化。
[図23]2種の蛍光標識ヌクレオチドを用いたPCR増幅産物のリアルタイムモニタリング(F1蛍光変化)。
[図24]2種の蛍光標識ヌクレオチドを用いたPCR増幅産物のリアルタイムモニタリング(F3蛍光変化)。
[図25]2種の蛍光標識ヌクレオチドを用いたPCR増幅産物のリアルタイムモニタリング(データ処理後のF1蛍光変化)。
[図26]2種の蛍光標識ヌクレオチドを用いたPCR増幅産物のリアルタイムモニタリング(データ処理後のF3蛍光変化)。
[図29]2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドを用いたPCR増幅産物のリアルタイムモニタリング(データ処理後のF3蛍光変化)。
【産業上の利用可能性】
【0194】
標識ヌクレオチドを核酸重合体に取り込ませる核酸重合反応を行う際に、核酸重合系の蛍光強度変化をモニタリングすることで、ハイブリダイズすることにより蛍光強度の変化する均一溶液系核酸プローブが不要な、簡便・迅速且つ低コストで高感度な核酸の測定方法が実現する。この方法により、自然界の2系内に存在する遺伝子等の全核酸が測定できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0195】
【図1】本発明方法Aの概要:蛍光色素間の相互作用を利用した核酸測定方法。
【図2】本発明方法Bの概要:核酸特異的蛍光色素・蛍光色素間の相互作用を利用した核酸測定方法。
【図3】本発明方法Cの概要:G塩基・蛍光色素間の相互作用を利用した核酸測定方法。
【図4】本発明方法Dの概要:クエンチャー物質・蛍光色素間の相互作用を利用した核酸測定方法。
【図5】本発明方法Eの概要:標識された特異的プライマーを用いた核酸測定方法(1)。
【図6】本発明方法Eの概要:標識された特異的プライマーを用いた核酸測定方法(2)。
【図7】本発明方法Fの概要:特異的プライマーに標識された蛍光色素とG塩基間の相互作用を利用した核酸測定方法。
【図8】本発明方法Gの概要:抗原又は抗体で標識されたヌクレオチドを用いる核酸測定方法。
【図9】本発明方法Hの概要:固体表面上に固定化された特異的プライマーを用いる核酸測定方法。
【図10】2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル1〜10のF1蛍光強度変化。
【図11】2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル1〜10のF3蛍光強度変化。
【図12】2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル11〜20のF1蛍光強度変化。
【図13】2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル11〜20のF2蛍光強度変化。
【図14】2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル21〜30のF1蛍光強度変化。
【図15】2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル21〜30のF2蛍光強度変化。
【図16】2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル31〜40のF1蛍光強度変化。
【図17】2種の蛍光標識ヌクレオチド間相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル1〜8のF1蛍光変化。
【図18】2種の蛍光標識ヌクレオチド間相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル1〜8のF3蛍光変化。
【図19】2種の蛍光標識ヌクレオチド間相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル9〜16のF1蛍光変化。
【図20】2種の蛍光標識ヌクレオチド間相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル9〜16のF2蛍光変化。
【図21】2種の蛍光標識ヌクレオチド間相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル17〜24のF1蛍光変化。
【図22】2種の蛍光標識ヌクレオチド間相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル17〜24のF2蛍光変化。
【図23】2種の蛍光標識ヌクレオチドを用いたPCR増幅産物のリアルタイムモニタリング(F1蛍光変化)。
【図24】2種の蛍光標識ヌクレオチドを用いたPCR増幅産物のリアルタイムモニタリング(F3蛍光変化)。
【図25】2種の蛍光標識ヌクレオチドを用いたPCR増幅産物のリアルタイムモニタリング(データ処理後のF1蛍光変化)。
【図26】2種の蛍光標識ヌクレオチドを用いたPCR増幅産物のリアルタイムモニタリング(データ処理後のF3蛍光変化)。
【図27】2種の蛍光標識ヌクレオチドを用いたリアルタイム定量的PCR法による検量線(検量線作成に使用したデータ:データ処理後のF1蛍光値)。
【図28】2種の蛍光標識ヌクレオチドを用いたリアルタイム定量的PCR法による検量線(検量線作成に使用したデータ:データ処理後のF3蛍光値)。
【図29】2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドを用いたPCR増幅産物のリアルタイムモニタリング(データ処理後のF3蛍光変化)。
【図30】2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドを用いたリアルタイム定量的PCR法による検量線(データ処理後のF3蛍光変化)。
【図31】3種類の遺伝子型(Cアレルホモ接合体、Tアレルホモ接合体、ヘテロ接合体)におけるプライマー6を使用した際のFITCの蛍光強度変化を示す図。
【図32】3種類の遺伝子型(Cアレルホモ接合体、Tアレルホモ接合体、ヘテロ接合体)におけるプライマー6を使用した際のCY5の蛍光強度変化を示す図。
【図33】プライマー7を使用した際のFITCの蛍光強度変化を示す図。
【図34】プライマー7を使用した際のCY5の蛍光強度変化を示す図。
【符号の説明】
【0196】
N:ヌクレオチドモノマー
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の核酸を測定する方法、詳しくは、蛍光色素等の物質で標識されたヌクレオチドを用いて、未知核酸及び/又は既知核酸(標的核酸)の少なくとも1種の核酸を測定することができる核酸の測定方法に関する。又、複数の核酸の場合は同時に測定できる。
【背景技術】
【0002】
核酸プローブを用いて標的核酸を測定する方法は数多く知られている。例えば、
(1)FRET(fluorescence resonance energy transfer)現象を利用したプローブを用いる方法(例えば、非特許文献1及び2参照)。
(2)蛍光色素が特定の核酸塩基と相互作用して蛍光発光量を減少させる特性を利用したプローブを用いる方法(例えば、非特許文献3参照)等で代表される方法等、数多くの例を挙げることができる。これらの方法は、均一系で、蛍光色素等で標識された核酸プローブを標的核酸にハイブリダイズさせることで及び/又は標的核酸を増幅させることで、核酸プローブに標識された蛍光色素等の光学的キャラクター(蛍光強度)の変化若しくは変化量を測定するものである。以下、本件明細書全体において当該核酸プローブを「均一溶液系核酸プローブ」と呼ぶ。又は単に「核酸プローブ」という場合がある。
【0003】
しかしながら、上記の方法において必要な均一溶液系核酸プローブは、蛍光物質及び/又はクエンチャー物質でオリゴヌクレオチドを標識する必要がある。又、当該プローブの設計法は、標準化されていない。このことが、時間と費用の浪費に繋がっていた。又、測定感度が改善されてきてはいるが、更なる改善が要望されていた。又、自然界の1つの系内に存在する未知核酸及び/又は既知核酸を含む複数の核酸を同時に、優れた感度で、且つ短時間、簡便、特異的、正確に測定できるものではない。
【0004】
【非特許文献1】Morrison et al.,Anal. Biochem.,vol.183,231-244、1989
【非特許文献2】Xiangnin Chen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.94, 10756-10761, 1997
【非特許文献3】KURATA et al.,Nucleic acids Research,2001,vol.29,No.6 e34
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、前記の状況に鑑み、1つの系内に存在する未知核酸及び/又は既知核酸を含む少なくとも1種の核酸を、優れた感度で、且つ短時間、簡便、特異的に正確に測定できる新規方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、核酸の合成を行う過程で、蛍光標識ヌクレオチド或はクエンチャー標識ヌクレオチドを核酸重合体に取り込ませた場合、標識された蛍光色素の蛍光キャラクターが、取り込ませる前に較べて、著しく変化することを知見した。本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。
【0007】
即ち、本発明は、
1)(A)少なくとも1種の鋳型としての核酸と、(B)(a)蛍光色素と、(b)クエンチャー物質及び(c)蛍光色素若しくはクエンチャー物質を含有する免疫関連物質からなる群から選ばれた少なくとも1種の標識物質で標識された、少なくとも1種のヌクレオチドモノマーと、(C)少なくとも1種の核酸合成酵素を含有してなる核酸重合反応系で核酸重合反応を行い、核酸重合系の光学的キャラクターの変化若しくは変化量から鋳型核酸若しくはそれを鋳型として合成された核酸を測定することを特徴とする核酸の測定方法を提供する。
【0008】
上記本発明の方法においては、
2)標識物質が、少なくとも1種のドナー蛍光色素と少なくとも1種のアクセプター蛍光色素との組み合わせであることが好ましい。
3)又、標識物質が、少なくとも1種の蛍光色素と少なくとも1種のクエンチャー物質の組み合わせであることが好ましい。
4)又、核酸重合系が、(D)標識物質で標識されていない少なくとも1種のヌクレオチドモノマーを含むことが好ましい。
【0009】
5)又、核酸重合系が、更に、(E)鋳型核酸に特異的に結合する少なくとも1種のオリゴヌクレオチドからなる核酸プライマーを含むことが好ましい。
6)上記5)の方法においては、核酸プライマーが、(E’)前記1)に記載の標識物質で標識されていることが好ましい。
7)又、前記1)の方法では、核酸重合系が、非標識ヌクレオチドを含有することが好ましい。
8)上記7)の方法では、蛍光標識及び/又は非標識ヌクレオチドが、グアニン(g)を含有するか、及び/又は鋳型核酸が少なくとも1つのグアニン(g)を含むことが好ましい。
9)前記1)の方法では、核酸重合系が、更に、前記1)に記載のB成分を含まず、非標識ヌクレオチド及び蛍光標識核酸プライマーを含有することが好ましい。
【0010】
10)上記9)の方法では、非標識ヌクレオチドがグアニン(g)塩基を含むことが好ましい。
11)前記1)、7)及び9)の方法では、非標識ヌクレオチド及び/又は標識ヌクレオチドが、3リン酸体であることが好ましい。
12)又、本発明は、鋳型核酸と、少なくとも1種の蛍光色素及び/又は少なくとも1種クエンチャー物質で標識された、少なくとも1種のジデオキシヌクレオチドモノマーと、核酸合成酵素とを含有する核酸重合系で核酸重合反応を行い、蛍光強度の変化若しくは変化量から鋳型核酸若しくはそれを鋳型とする核酸重合体を測定することを特徴とする核酸の測定方法を提供する。
13)上記12)の方法では、核酸重合系が、標識ヌクレオチド又は非標識ヌクレオチド或は両者を含む系であることが好ましい。
14)前記12)の方法では、核酸重合系が、非標識核酸プライマーを含むことが好ましい。
15)前記1)、7)、9)及び12)の方法では、核酸重合系が、(F)核酸に結合することで蛍光を発する蛍光色素を含有していることが好ましい。
【0011】
16)又、本発明は、鋳型核酸と、非標識ジデオキシヌクレオチドモノマーと、標識ヌクレオチドと、非標識核酸プライマーと、核酸に結合することで蛍光を発する少なくとも1種の蛍光色素と、核酸合成酵素とを含有する核酸重合系で核酸重合反応を行い、蛍光強度の変化若しくは変化量から鋳型核酸若しくはそれを鋳型とする核酸重合体を測定することを特徴とする核酸の測定方法を提供する。
17)前記12)、16)の方法においては、非標識ジデオキシヌクレオチド、標識ジデオキシヌクレオチド、非標識ヌクレオチド及び/又は標識ヌクレオチドが、3リン酸体であることが好ましい。
18)前記1)、7)、9)、12)、16)の方法では、核酸合成酵素が、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、及びそれらの改変体からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
標識ヌクレオチドを核酸重合体に取り込ませる核酸重合反応を行う際に、核酸重合系の蛍光強度変化をモニタリングすることで、ハイブリダイズすることにより蛍光強度の変化する均一溶液系核酸プローブが不要な、簡便・迅速且つ低コストで高感度な核酸の測定方法が実現する。この方法により、自然界の2系内に存在する遺伝子等の全核酸が測定できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明を詳細に説明する前に、特許請求の範囲を含む本明細書全体にわたって使用する用語の定義をする。本発明に用いている用語は、特別な断りがない場合、生物学、分子生物学、遺伝学若しくは遺伝子工学、微生物学若しくは微生物工学等で一般的に使用されている用語と同じ意味である。
【0014】
ヌクレオチドモノマーとは、少なくとも1種の核酸合成酵素により核酸重合体に取り込まれ得るヌクレオチドのことをいう。好適にはオリゴヌクレオチドの核酸の構成成分のモノヌクレオチドであるが、本発明においては、モノヌクレオチドの他に、2〜30量体のオリゴヌクレオチドを含む。好適な例としは、ヌクレオシドモノリン酸体(NMP)、2リン酸体(NDP)及び3リン酸体(NTP)を挙げることができる。より好適な例としては、3リン酸体である。塩基として、核酸構成成分のもの、即ち、アデニン、グアニン、ウラシル、シトシン、チミン、それらの誘導体、RNAに含まれる微量成分等を挙げることができる。糖はリボース、デオシキシリボースである。前記のオリゴヌクレオチドは、鋳型核酸にハイブリダイズするものであるならば、エキソヌクレアーゼ活性を有さない核酸合成酵素(例えば、DNAポリメラーゼ)とリガーゼを用いることにより、核酸重合系で核酸重合体に取り込まれる。
【0015】
ヌクレオシドモノリン酸体又は2リン酸体が用いられる理由は、核酸重合系に当該リン酸体を3リン酸体にするキナーゼ(kinase)類、ホスホリラーゼ類若しくはそれらの生成系を含んでいてもよいからである。例えば、精製していない粗鋳型核酸若しくは粗核酸合成酵素には、これらの酵素及び/又は生成系を含む例が多い。核酸重合系にATPが過分に含まれている場合は、ATP以外の3リン酸体が形成し易い。即ち、本発明の核酸重合系とは、これらの酵素及び/又は生成系を含むことができると定義する。尚、標識ヌクレオチド及び免疫関連標識ヌクレオチドについても前記と同様で、3リン酸体がより好適である。又、ジデオキシヌクレオチドモノマー及び標識若しくは非標識ジデオキシヌクレオチドについても前記と同様で、3リン酸体がより好適である。
【0016】
標識ヌクレオチドとは、後記する蛍光色素、クエンチャー物質等の少なくとも一種で標識されたヌクレオチドモノマーのことをいう。そして、蛍光色素で標識されたヌクレオチドモノマーを蛍光標識ヌクレオチドと、又、クエンチャー物質で標識されたヌクレオチドモノマーをクエンチャー標識ヌクレオチドという。更にドナー蛍光色素で標識された蛍光標識ヌクレオチドをドナー標識ヌクレオチドと、又、アクセプター蛍光色素で標識された蛍光標識ヌクレオチドをアクセプター標識ヌクレオチドという。当該標識ヌクレオチドについては、詳しく後記した。
非標識ヌクレオチドとは、前記ような標識物質で標識されないヌクレオチドモノマーのことをいう。
核酸プライマーとは、鋳型核酸に特異的に結合する1種のプライマーのことをいう。又、核酸プライマーが、蛍光色素、及びクエンチャー物質で標識されたものを、順に、蛍光標識核酸プライマー及びクエンチャー標識核酸プライマーという。又、2者を総称して、標識核酸プライマーという。アデニン、グアニン、ウラシル、シトシン、チミンを順にA若しくはa、G若しくはg、U若しくはu、C若しくはc、T若しくはtとした。核酸に結合することで、蛍光を発する蛍光色素を核酸特異的蛍光色素と定義した。
【0017】
鋳型核酸とは、核酸重合体の鋳型になり得るものである。本発明においては、未知の核酸(「未知核酸」という場合がある。)、既知の核酸(「標的核酸」という場合がある。)、又、それらの混合物を指す。そして、それらはDNA及び/又はRNAである。即ち、本発明の鋳型核酸とは、測定を目的とした特定の核酸(標的核酸)とは限らず、不特定の核酸をも含む。勿論、遺伝子等を含む。それらの核酸が混在していもよい。又、濃度又は大きさの大小も問わない。即ち、1つの系内に存在する特定及び不特定の核酸をも意味する。即ち、鋳型核酸とは、本発明方法により重合及び/又は増幅されて検出若しくは測定できる核酸のこという。
【0018】
核酸合成酵素とは、前記の鋳型核酸を鋳型として前記の非標識ヌクレオチド及び/又は標識ヌクレオチドを重合して、核酸重合体を合成する能力を有するものであればどのようなものでもよい。代表的な例として、DNAポリメラーゼ類、RNAポリメラーゼ類、逆転写酵素類(reverse transcriptase)、リガーゼ類、各種のキナーゼ類、ヌクレオチド3リン体生成系、及びそれらの遺伝子工学的に改変された改変蛋白質を有する酵素類を挙げることができる。DNAポリメラーゼ類、RNAポリメラーゼ類及び逆転写酵素類は、リガーゼ類、各種のキナーゼ類、ヌクレオチド3リン体生成系を含んでいる酵素類は、本発明においては、好適に利用され得る。本発明においては、これらのものが、単独若しくは併用で用いられる。
【0019】
勿論、酵素は、これら酵素の活性を十分に発揮させる各種因子を含んでいても、いなくともよい。DNAポリメラーゼの場合は、エキソヌクレアーゼ活性を有していても、有さなくてもよい。精製されたもの若しくはされない粗酵素の状態のどちらでもよい。又、酵素の起源(微生物、動物、植物)については特に限定されない。好適には耐熱性を有するものがよい。好適な具体例として、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を欠損させたVent(exo-)DNA Polymerase(サーモコッカス・リトラリス由来)、Tgo(exo-) DNA Polymerase、ThermoSequenase DNA Polymerase(Armersham社製)、AmpliTagGold polymerase、T7 Sequenase DNA Polymerase等を挙げることができる。
【0020】
蛍光色素等で標識された核酸重合体又は核酸プライマーと鋳型核酸又は核酸重合体等の対応核酸とのハイブリダイゼーションによる複合体のことをハイブリッド(又はハイブリット)複合体、核酸重合体・鋳型核酸複合体、核酸プライマー・鋳型核酸複合体、核酸プライマー・核酸重合体複合体という。
【0021】
本発明において「核酸を測定する」、或いは「核酸濃度を測定する」なる用語は、標的核酸の濃度を定量することは勿論のこと、定量的検出をすること、定性的検出をすること、核酸重合系の蛍光強度を単に測定するか若しくは単にモニタリングすること、単なる検出をすること、又、核酸を分析若しくは解析すること、多型(SNPを含む。)及び/又は変異の測定、解析、又は分析すること等を意味するものとする。又、このようにして得られたデーターを公知の蔵田らの方法(EP特許公開公報、EP1 046 717 A9号)で解析して、1つの系内に存在している濃度(コピー数等)を求める操作等も含めるものとする。又、公知の方法(基礎生化学実験法、第4巻(核酸・遺伝子実験)、日本生化学会編、東京化学同人社)等により塩基配列を決める操作等も含めるものとする。
【0022】
又、核酸の重合反応とは、単なる重合(合成、又は伸長反応)反応だけでなく、核酸の増幅反応、例えば、PCR方法、リアルタイム定量的PCR法、ICAN方法、LAMP方法、NASBA方法、TAMA方法、LCR方法、それらの方法に伴う、ハイブリダイゼーション反応、伸長、変性等を含める。そして、重合反応の具体的例として以下の例を挙げることができる。
(1)鋳型核酸がDNAで、核酸合成酵素がDNAポリメラーゼ若しくは改変RNAポリメラーゼで、ヌクレオチドモノマー、蛍光標識ヌクレオチド及びクエンチャー標識ヌクレオチドが、デオキシリボヌクレオチド体で、核酸重合体がDNAである反応。
(2)鋳型核酸がDNAで、核酸合成酵素がRNAポリメラーゼ若しくは改変DNAポリメラーゼで、ヌクレオチドモノマー、蛍光標識ヌクレオチド及びクエンチャー標識ヌクレオチドがリボヌクレオチド体で、核酸重合体がRNAである反応。
【0023】
(3)鋳型核酸がRNAで、核酸合成酵素が逆転写酵素で、ヌクレオチドモノマー、蛍光標識ヌクレオチド及びクエンチャー標識ヌクレオチドがデオキシリボヌクレオチド体で、核酸重合体がDNAである反応。
(4)鋳型核酸がRNAで、核酸合成酵素が逆転写酵素及びRNAポリメラーゼで、ヌクレオチドモノマー、蛍光標識ヌクレオチド及びクエンチャー標識ヌクレオチドがリボヌクレオチド体及びデオキシリボヌクレオチド体で、核酸重合体がRNAである反応、即ち、DNA合成反応を介する反応。
【0024】
(5)上記の反応系にリガーゼを併用する反応系。
(6)上記の反応系に各種のキナーゼ類及び/又はヌクレオチド3リン体生成系を併用する反応系。
上記において、好ましいものは(1)〜(4)で、より好ましいものは(1)〜(3)で、特に好ましいものが、(1)及び(2)である。
【0025】
「光学的キャラクター」なる用語は、ヌクレオチドを標識する蛍光色素、クエンチャー物質等の各種の吸収スペクトル、若しくは蛍光発光スペクトル、及びそれらの吸収強度、偏光、蛍光発光、蛍光強度、蛍光寿命、蛍光偏光、蛍光異方性等の光学的特性等のこという(「蛍光強度」で総称する。)。又、標識ヌクレオチド等に標識されている少なくとも1つの蛍光色素等について少なくとも1種以上の測定波長で測定された測定値を総合的に評価して得た性質のこともいう。例えば、核酸の変性反応の蛍光強度曲線等もその1つである。
【0026】
本発明において、「蛍光強度の変化若しくは変化量から」なる用語は、本発明の核酸重合体に基づく蛍光強度の変化だけでなく、当該核酸重合体に、蛍光色素及び/又はクエンチャーで標識された均一溶液系核酸プローブをハイブリダイズさせたときの、そのハイブリダイゼーション前後の蛍光強度の変化若しくは変化量をも含めるものとする。
【0027】
又、核酸重合系は、標識又は非標識ジデオキシヌクレオチドを、標識又は非標識ヌクレオチドと共に含むこともできる。この場合の核酸の重合は、当該ジデオキシヌクレオチドが反応に利用された場合は、利用された時点でストップする。1種の標的核酸が鋳型となっている場合は、それを鋳型とする鎖長の異なる核酸重合体が多数得られる。これらの核酸重合体を電気泳動方法、液体クロマト方法等で分析・解析することにより、標的核酸について重要な情報が得られる。このような分析・解析においても前記標識物質の蛍光強度の変化が利用される。
【0028】
蛍光標識ヌクレオチド、クエンチャー標識ヌクレオチド及び核酸特異的蛍光色素について詳しく記載する。本発明でいう蛍光色素(「蛍光物質」という場合もある。)とは、一般に核酸プローブに標識して、核酸の測定・検出に用いられている蛍光色素の類である。例えば、フルオレセイン(fluorescein)又はその誘導体類{例えば、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate)(FITC)若しくはその誘導体等}、Alexa 488、Alexa 532、cy3、cy5、6-joe、EDANS、ローダミン(rhodamine)6G(R6G)又はその誘導体{例えば、テトラメチルローダミン(teramethylrhodamine)(TMR)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(tetramethylrhodamine isothiocyanate)(TMRITC)、x−ローダミン(x-rhodamine)}、テキサスレッド(Texas red)、ボデピー(BODIPY)FL{ボデピー(BODIPY)は商標名、FLは商品名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国;以下同様}、ボデピー(BODIPY)FL/C3、ボデピー(BODIPY)FL/C6、ボデピー(BODIPY)5-FAM、ボデピー(BODIPY)TMR、又はその誘導体{例えば、ボデピー(BODIPY)TR、ボデピー(BODIPY)R6G、ボデピー(BODIPY)564}、ボデピー(BODIPY)581等を挙げることができる。
【0029】
上記の中でも、FITC、EDANS、テキサスレッド、6-joe、TMR、Alexa 488、Alexa 532、BODIPY FL/C3、BODIPY R6G、BODIPY FL、Alexa 532、BODIPY FL/C6、BODIPY TMR、5-FAM、BODIPY 493/503、BODIPY 564、BODIPY 581、Cy3、Cy5、Texas red、x-Rhodamine等を好適なものとして挙げることができる。
【0030】
クエンチャー物質とは、前記蛍光色素に作用して、その発光を抑制若しくは消光する物質である。例えば、Dabcyl、QSY7(モルキュラー・プローブ社製)、QSY33(モルキュラー・プローブ社製)、Ferrocene又はその誘導体、methyl viologen、N,N'-dimethyl-2,9-diazopyrenium等、好適にはDabcyl等を挙げることができる。
【0031】
本発明の蛍光標識ヌクレオチドとは、少なくとも1種の蛍光色素で標識されたヌクレオチドモノマーである。その標識は5’側の糖部位及び/又はそのリン酸部位、塩基部位、3’側の糖部位及び/又はリン酸部位のどちらでもよい。そして、蛍光色素とは前記に例示されるような色素で、ドナー色素となり得る色素、アクセプター色素となり得る色素の双方を意味するものとする。又、同様に、クエンチャー標識ヌクレオチドとは前記に例示されるようなクエンチャー物質で標識されたヌクレオチドモノマーである。尚、蛍光標識ヌクレオチドとクエンチャー標識ヌクレオチドの双方を総称して、「標識ヌクレオチド」という場合がある。蛍光標識ジデオキシヌクレオチド及びクエンチャー標識ジデオキシヌクレオチドについても前記と同様である。この場合は、糖の3’位にOH基がないので、核酸重合に当該ヌクレオチドが反応に利用された場合は、利用された時点で、核酸重合反応がストップする。
【0032】
標識ヌクレオチドにおいて糖の3’OH基に標識されている場合は、核酸の重合は、当該ヌクレオチドが反応に利用された場合は、利用された時点で重合がストップする。1種の標的核酸が鋳型となっている場合は、それを鋳型とする鎖長の異なる核酸重合体が多数得られる。これらの核酸重合体を電気泳動方法、液体クロマト方法等で分析・解析することにより標的核酸について重要な情報が得られる。このような分析・解析においても標識物質の蛍光強度の変化が利用される。
【0033】
ヌクレオチドモノマーに蛍光色素、クエンチャー物質を標識するには、従来公知の標識法のうちの所望のものを利用することができる。標識部位は、5’リン酸部のOH基、塩基のOH基、アミノ基である。アミノ基に標識する場合、キット試薬、例えば、Uni-link aminomodifier(CLONTECH社製、米国)、フルオ・リポターキット(FluoReporter Kit)F-6082、F-6083、F-6084、F-10220(いずれもモルキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)を用いるのが便利である。そして、常法に従って当該ヌクレオチドモノマーに前記標識物質分子を結合させることができる。
【0034】
OH基に標識する場合、5'Amino-Modifier C6キット(Glen Research社、米国)等を用いる。例えば、塩基のOH基に前記標識物質分子を結合させる場合は、先ず、常法に従ってOH基にスペーサーとして、例えば、-(CH2)n-SHを導入する。この場合、nは3〜8、好ましくは6である。このスペーサーにSH基反応性を有する前記標識物質又はそれらの誘導体を結合させることにより標識ヌクレオチドモノマーを合成できる。アミノ基に標識する場合も同様である。リボース及びデオキシリボースの3’位のOH基、リボースの2’位のOH基、又、5’リン酸部位のOH基を前記と同様にして標識することができる。このようにして合成された前記標識物質で標識された各種のヌクレオチドモノマーは、逆相等のクロマトグラフィー等で精製して、本発明で用いる標識ヌクレオチドとすることができる。勿論、委託合成を行って入手してもよい。
【0035】
本発明で用いる核酸プライマーとは、核酸重合体の前駆体、即ち、プレカーサー(precursor)と成り得るものであり、オリゴヌクレオチドからなるものである。デオキシリボース体、リボース体のどちらでもよい。そして鎖長は公知の核酸合成に利用できるものでよく、特に限定されないが、例示するならば、2〜50塩基、好適には、3〜40塩基、より好適には5〜30塩基である。鋳型核酸に特異的にハイブリダイズする塩基配列を有するもの、又、単に共通の塩基配列若しくはコンセンサス配列だけを有するもののどちらも用いることができる。前者の場合は、特定の鋳型核酸を鋳型とする核酸重合体が得られる。後者の場合は不特定のものが得られる。
【0036】
本発明の前記プライマーは、前記の蛍光色素、クエンチャー物質で標識されていても、いなくとも用いることができる。標識はこれらの標識物質の少なくとも1種で為されていればよい。そして、好ましい核酸プライマーは5’末端及び/又は鎖中の塩基が標識され、3’末端の糖の3’OH基が標識されていないものである。この場合は得られる核酸重合体はプライマーを標識した標識物質で標識されたものになる。勿論、3’末端の糖の3’OH基が標識されたものも用いることができる。この場合は単に核酸プローブとして利用される。
【0037】
本発明の核酸プライマーのオリゴヌクレオチドは、通常の一般的オリゴヌクレオチドの製造方法で製造できる。例えば、化学合成法、プラスミドベクター、ファージベクター等を使用する微生物法等で製造できる。尚、現在、市販されている核酸合成機を使用するのが好適である。
【0038】
オリゴヌクレオチドに蛍光色素、クエンチャー物質を標識するには、前記の標識ヌクレオチドモノマーの場合と同様にすればよい。この場合、オリゴヌクレオチドの5’末端塩基、3’末端塩基、鎖中の塩基、5’末端リン酸基、3’末端のリボース、デオキシリボースが標識対象になる。当該オリゴヌクレオチドの合成、当該標識核酸プライマーの合成は、委託合成を行うのが最も簡便な方法である。
【0039】
本発明において、核酸特異的蛍光色素とは、核酸に結合することで蛍光を発する物質のことである。結合する核酸種は、標識又は非標識の核酸プライマー・鋳型核酸複合体、1本鎖DNA、1本鎖RNA、2本鎖DNA、DNAとRNAの2本鎖、2本鎖RNA等の核酸であればよく、特に限定されない。核酸特異的蛍光色素としての1例を挙げれば、エチジュウムブロミド、Sybr green 1、Sybr green 2、YOYO、TOTO、YO-PRO-1等のインターカレター類を挙げることができる。しかしながら、本発明においては核酸に結合することで蛍光を発する物質であれば、全ての本発明の方法に適用可能である。
【0040】
本発明は次の手順からなる核酸の測定方法である。
1)下記{(1)〜(8)}、好ましくは{(6)、(7)及び(8)}、より好ましくは{(6)及び(7)}の何れか1つの核酸重合系で核酸重合反応(単独)、又は核酸重合反応及び核酸増幅反応(双方の反応)を開始する。
(1)鋳型核酸、少なくとも1種の標識ヌクレオチド、及び核酸合成酵素を含む核酸重合系。
(2)前記(1)において、非標識ヌクレオチドを含む核酸重合系。
(3)鋳型核酸、少なくとも1種の標識ジデオキシヌクレオチド、及び核酸合成酵素を含む核酸重合系。
(4)上記(3)において、標識ヌクレオチド及び非標識ヌクレオチドからなる群から選ばれた少なくとも1種を含む核酸重合系。
【0041】
(5)鋳型核酸、非標識ジデオキシヌクレオチド、標識ヌクレオチド、及び核酸合成酵素を含有する核酸重合系。
(6)上記(1)〜(5)において更に標識核酸プライマー又は非標識核酸プライマーを含む核酸重合系。
(7)鋳型核酸、非標識ヌクレオチド、標識核酸プライマー及び核酸合成酵素を含む核酸重合系。
(8)上記(1)〜(7)の何れか1項において核酸特異的蛍光色素を含む核酸重合系。
【0042】
2)前記の反応過程で、反応産物である核酸重合体に標識ヌクレオチド及び/又は核酸特異的蛍光色素が取り込まれるので、核酸重合系の蛍光強度が変化する。その変化若しくは変化量を測定する。核酸プローブを存在させた場合は、プローブと核酸重合体とが、ハイブリダイズし、核酸重合反応系の蛍光強度が独特な変化をする。
3)必要に応じて、前記反応物を電気泳動、HPLCで分析する。
尚、上記の核酸重合系において、特に、核酸プライマーを含有する(6)のものは、当該核酸重合系の出力である核酸重合体としてDNAの場合が好適である。又、(1)及び(2)のものは、当該核酸重合系の出力である核酸重合体としてRNAの場合が好適である。又、標識又は非標識ジデオキシヌクレオチドを含む系は、後記する多型(SNPを含む。)又は変異の測定、分析若しくは解析に用いるのが好適である。
【0043】
本発明において、「少なくとも1種の核酸プライマーを存在させるか存在させずして」の意味は、少なくとも1種の鋳型核酸(例えば粗鋳型核酸)若しくは少なくとも1種の鋳型核酸を含む試料、粗核酸合成酵素類には、鋳型核酸にハイブリダイズして核酸重合体の前駆体になり得るオリゴヌクレオチドが存在する例が多いからである。又、粗鋳型核酸、粗核酸合成酵素類の中に、当該前駆体を合成する酵素類が含まれている例が多い。
又、RNA系の核酸重合反応は前記の核酸プライマーが存在させなくとも進む場合がある。
【0044】
又、少なくとも1種の鋳型核酸(例えば、粗鋳型核酸)若しくは少なくとも1種の鋳型核酸を含む試料中に、核酸合成系が含まれている場合(例えば、各種生物の細胞抽出液)は、核酸合成酵素を添加しなくとも、核酸重合反応がおこる。この場合は、少なくとも1種の蛍光標識ヌクレオチド、クエンチャー標識ヌクレオチド、及び核酸特異的蛍光色素からなる群から選ばれた少なくとも1種のもの、又は、核酸プライマーを反応系に存在させて、反応を開始すればよい。
【0045】
上記の反応は、公知の反応条件で行ってよいのであるが、例示するならば、温度10℃〜核酸変性温度未満、具体的には、核酸合成酵素の種類に依存する。例えば、DNAポリメラーゼを使用する場合は、温度10℃〜核酸変性温度未満、好適には、30〜90℃、より好適には30〜80℃である。RNAポリメラーゼを使用する場合は、30〜60℃、逆転写酵素を使う場合は、30〜70℃である。反応時間は核酸重合系の蛍光強度を時間の関数として、モニタリニグした場合、平衡に達するまでである。例えば、10秒〜10時間、好適には10秒〜2時間、より好適には10秒〜1時間である。
【0046】
上記の蛍光強度の変化は、次の現象からなる群の少なくとも1種の現象によって引き起こされるものと推定されている。そして複雑にかみ合っているものである。
(1)核酸特異的蛍光色素と蛍光色素間の相互作用(FRET(fluorescence resonance energy transfer)現象)。
(2)蛍光色素間の相互作用(FRET現象)。
(3)クエンチャー物質と蛍光色素間の相互作用(蛍光消光現象)(前記(2)と同じ)。
(4)グアニン塩基と蛍光色素間の相互作用(蛍光消光現象)。
尚、本発明でいう相互作用とは、一方の励起エネルギーが他方へ移動する反応である。又、”蛍光消光現象”を単に”蛍光消光”と略称する場合がある。
【0047】
以下、蛍光強度の変化若しくは変化量を測定する好ましい実際的方法は、リアルタイムで核酸重合系の蛍光強度を測定し、測定値を求める方法である。この場合、少なくとも1種の入射光若しくは励起光を出し、且つ少なくとも1種のホトマル等の受光面をもつ、即ち、マルチチャンネルを有する市販装置を使用するのが望ましい。例えば、スマートサイクラー(タカラバイオ株式会社)、ABI PRISMTM 7700Sequence Detection System(SDS 7700)(PE Applied Biosystems)、LightCyclerTM System(Roche Diagnostics,Mannheim Germany)等を使用すればよい。
【0048】
実際の測定値を求める場合は、以下の少なくとも何れか1つを実施する。
(1)核酸重合反応の前後の核酸重合系の測定。
(2)核酸合成を行なわせない系(例えば、鋳型核酸又は核酸合成酵素を添加しない系)を対照としての核酸重合系の測定。
(3)核酸合成が平衡に達した系の核酸重合系の蛍光強度を先ず測定し、次いで、核酸重合系の核酸変性処理(例えば、90〜98℃での処理)後、測定する。
【0049】
前記の方法により得られた測定値を、後記するデータ解析方法で処理(解析)することにより、自然界の1つの系内に存在する鋳型核酸(未知核酸、標的核酸)種、及びそれらの核酸が重合若しくは増幅される前のコピー数等の濃度を知ることができる。そしてよりよいデータになる。
【0050】
以下に本発明の特徴を図面を参照して説明する。
1)本発明方法A(図1参照)
(1)少なくとも1種の蛍光標識ヌクレオチドを核酸重合体に取り込ませ、取り込まれた蛍光標識ヌクレオチド間の標識された蛍光色素(A)と標識された蛍光色素(B)間の相互作用に由来する核酸重合系の蛍光キャラクターの変化を測定するか、又はその変化を時間の関数としてモニタリングする(以下、単にモニタリングするという。)ことから、鋳型核酸若しくはそれを鋳型する核酸重合体を測定することを特徴とする。本方法は、核酸重合系が前記核酸重合系(1)及び(2)の1例で、特許請求の範囲の請求項1〜3の発明に相当する。
【0051】
(2)前記(1)において、核酸プライマーを含有する核酸重合系で、核酸重合反応を行う方法である。この場合は、核酸プライマーが核酸重合体の前駆体(プライマー)として利用される。この方法は、核酸重合系が前記核酸重合系(6)の1例で、特許請求の範囲の請求項5の発明に相当する。
【0052】
前記(1)及び(2)のように、蛍光標識ヌクレオチドを核酸重合体に取り込ませた場合、取り込まれた蛍光標識ヌクレオチドに標識された蛍光色素(A、B)間の距離が著しく接近し、溶液中に分散した状態では発生しなかった蛍光色素間の相互作用が発生する(図1参照)。蛍光色素間の相互作用に由来する蛍光強度の変化若しくは変化量を測定するか、又はモニタリングすることで鋳型核酸若しくはそれを鋳型する核酸重合体を測定することが可能となる。
【0053】
この場合、相互作用し合う蛍光色素の内、一方は、FRET現象の励起エネルギーを与える色素でドナー色素(A)という。そして他方はエネルギーを受けて蛍光発光する色素でアクセプター(B)という。
【0054】
又、アクセプター色素は一般にFRET現象において、ドナー色素との対において、アクセプター色素となり得る色素、即ち、ドナー色素からエネルギー転移を受け得る(言葉を換えるとドナー色素に対してクエンチング(消光作用)作用をする)色素であればどのようなものでもよい。そして、ドナー色素は、アクセプター色素に励起エネルギーを転移できるものであれば、どのようなものでもよい。前記色素の中から該当するものを適当に選択することができる。
【0055】
例えば、好適なドナー色素として、FITC、BODIPY FL、BODIPY FL系の前記色素、BODIPY 493/503、5-FAM、BODIPY 5-FAM、Tetramethylrhodamine、6-TAMRA等を、より好適なものとして、FITC、BODIPY FL、BODIPY 493/503、BODIPY 5-FAM、Tetramethylrhodamine、6-TAMRA等を挙げることができる。
【0056】
好適なアクセプター色素は、対を形成するドナー色素の種類に依存する。例示するならば、BODIPY FL、BODIPY FL系の前記色素、BODIPY 493/503、5-FAM、BODIPY 5-FAM、Tetramethylrhodamine、6-TAMRA等をドナー色素とするならば、rhodamine X、BODIPY 581/591等をアクセプター色素とすることができる。本方法は、標識ヌクレオチドの蛍光色素、即ち、核酸重合系の特定波長の蛍光強度の増加若しくは減少を測定する。ドナー色素の蛍光強度を測定する場合は蛍光強度の減少、アクセプター色素の蛍光強度を測定する場合は蛍光強度の増加を測定することになる。
【0057】
2)本発明方法B(図2参照)
本発明の核酸重合系が、核酸特異的蛍光色素を含有する例である。そして、核酸重合系が前記核酸重合系(8)の1例である。核酸特異的蛍光色素(C)は、核酸重合体、核酸重合体・鋳型核酸複合体、核酸プライマー・鋳型核酸複合体に結合する。そして核酸重合体に取り込まれた蛍光標識ヌクレオチドの蛍光色素(D)と核酸特異的蛍光色素(C)間の相互作用が発生する。この相互作用に由来する蛍光強度の変化を測定するか、又はモニタリングすることで鋳型核酸若しくはそれを鋳型する核酸重合体を測定することが可能となる。この方法は、特許請求の範囲の請求項15の発明に相当し、核酸特異的蛍光色素(C)の蛍光強度の減少、又、標識ヌクレオチドの蛍光色素(D)の蛍光強度の増加を測定することになる。即ち、核酸重合系の特定波長の蛍光強度の増加若しくは減少を測定する。
【0058】
前記したように、核酸特異的蛍光色素(C)の存在下で、蛍光標識ヌクレオチドを核酸重合体に取り込ませる反応を行う過程で、合成された核酸重合体に核酸特異的蛍光色素(C)が結合し、この蛍光色素(C)と、反応過程で取り込まれた蛍光標識ヌクレオチドの蛍光色素(D)の距離が著しく接近する(図2参照)。このため前記同様の蛍光色素間の相互作用が発生する。
【0059】
この場合の蛍光色素(D)としては、前記の蛍光色素がすべて利用できるが、好ましいものはFITC、EDANS、6-joe、TMR、Alexa 488、Alexa 532、BODIPY FL/C3、BODIPY R6G、BODIPY FL、Alexa 532、BODIPY FL/C6、BODIPY TMR、5-FAM、BODIPY 493/503、BODIPY 564、BODIPY 581、Cy3、Cy5、Texas red、x-Rhodamine等を例示できる。又、核酸特異的蛍光色素(C)の前記したものがすべて利用できるが、好ましいものはSybr green 1及びYO-PRO-1である。好ましい蛍光色素の組合わせは、Syber greenとTexas red、6-joe、TMR、Alexa 532、BODIPY R6G、Alexa 532、BODIPY TMR、BODIPY 564、BODIPY 581、Cy3、Cy5、x-Rhodamineの組み合わせ、及びYO-PRO-1とTexas red、6-joe、TMR、Alexa 532、BODIPY R6G、Alexa 532、BODIPY TMR、BODIPY 564、BODIPY 581、Cy3、Cy5、Texas red、x-Rhodamine等を例示できる。
【0060】
3)本発明方法C
非標識核酸プライマーが存在するか、存在せずして、蛍光標識ヌクレオチド、非標識ヌクレオチド、鋳型核酸、核酸合成酵素を含有してなる核酸重合系で核酸重合反応を行い、核酸重合系の蛍光強度の減少若しくは減少量から鋳型核酸若しくはそれを鋳型する核酸重合体を測定することを特徴とする核酸の測定方法である。そして非標識ヌクレオチドの少なくとも一種がグアニン(g)を含むか及び/又は鋳型核酸が少なくとも1つグアニン(g)を含む場合が好適である。即ち、核酸重合体に取り込まれた蛍光標識ヌクレオチドの塩基に対応する鋳型核酸の塩基がgc(GC)対を形成するか、又は、上記蛍光標識ヌクレオチドの塩基から1乃至3塩基離れて(当該対応塩基を1と数える。)、鋳型核酸中にGが存在するか若しくは核酸重合体中に塩基がGである非標識ヌクレオチドが存在し、蛍光強度の変化が蛍光色素(E)とGとの相互作用によるものである核酸の測定方法。この方法は、核酸重合系が前記核酸重合系(2)の1例で、特許請求の範囲の請求項7及び8に相当する発明である。
【0061】
重合反応系の蛍光強度の減少は、次の何れかの場合におこる。
(1)蛍光標識ヌクレオチドの塩基がシトシン(c)又はグアニン(g)である。
(2)少なくとも一種の非標識ヌクレオチドの塩基がグアニン(g)である。
(3)鋳型核酸が少なくとも1つグアニン(g)を含む。
【0062】
前記したように、蛍光標識ヌクレオチド及び/又は非標識ヌクレオチドを用いて核酸重合反応を行う過程で、鋳型核酸中のグアニン(g)、又は合成された核酸重合体中の、グアニン(g)を含む非標識ヌクレオチドのグアニン(g)と取り込まれた蛍光標識ヌクレオチドの蛍光色素(E)との距離が著しく接近する(図3参照)。このため溶液中に分散した状態では発生しなかった、標識された蛍光色素(E)の励起エネルギーがグアニン(g)塩基に移動するようになる。
【0063】
この場合の標識される蛍光色素(E)としては、前記の蛍光色素がすべて利用できるのであるが、好ましいものは、FITC、EDANS、Texas red、6-joe、TMR、Alexa 488、Alexa 532、BODIPY FL/C3、BODIPY R6G、BODIPY FL、Alexa532、BODIPY FL/C6、BODIPY TMR、5-FAM、BODIPY 493/503、BODIPY 564、BODIPY 581、Cy3、Cy5、Texas red、x-Rhodamine等である。
【0064】
蛍光標識される好ましいヌクレオチドモノマーはシトシン(以下、cと略称する。)を塩基とするヌクレオチドモノマー(cytidylic acid、cytidine 5'-phosphate,cytidine 5'-diphosphate,cytidine 5'-triphosphate、若しくはそれらの重合体若しくはcytidylic acidを含有する重合体)であり、そして標識部位は塩基部(アミノ基)、又はリン酸部(OH基)、又はリボース部(2’又は3’位のOH基)である。好ましい部位は塩基部、又はリン酸部である。
【0065】
4)本発明方法D(図4参照)
本発明方法Aの(1)又は(2)において、蛍光標識ヌクレオチドとクエンチャー標識ヌクレオチドとを使用する例である。即ち、蛍光標識ヌクレオチドとクエンチャー標識ヌクレオチドとを核酸重合体に取り込ませると、取り込まれた蛍光標識ヌクレオチドの蛍光色素(A)とクエンチャー標識ヌクレオチドのクエンチャー物質(Q)が接近し、相互作用する(図4参照)ことにより核酸重合系の蛍光強度が減少する。この蛍光強度の減少を測定するか、又はその減少をモニタリングすることで鋳型核酸又はそれを鋳型とする核酸重合体を測定することを特徴とする。本方法は、核酸重合系が前記核酸重合系(1)及び/又は(2)の1例で、特許請求の範囲の請求項3及び/又は4の発明に相当する。そして、核酸重合系の蛍光強度の減少を測定することになる。
【0066】
本方法で利用できるクエンチャー物質(別名として”蛍光消光物質”ともいう。)は、例えば、Dabcyl、QSY7(モルキュラー・プローブ社製)、QSY33(モルキュラー・プローブ社製)又はその誘導体、methyl viologen、N,N'-dimethyl-2,9-diazopyrenium等、好適にはDabcyl等を例示できる。
【0067】
前記したように、核酸重合系に蛍光標識ヌクレオチドとクエンチャー標識ヌクレオチドを存在させて、核酸重合反応を行うと、蛍光標識ヌクレオチドとクエンチャー標識ヌクレオチドが核酸重合体に取り込まれる。核酸重合体に取り込まれた蛍光標識ヌクレオチドとクエンチャー標識ヌクレオチドとの距離が著しく接近する。その結果として標識された蛍光色素(A)とクエンチャー物質(Q)の間の距離も著しく接近する(図4参照)。このため溶液中に分散した状態では発生しなかった標識されたクエンチャー物質(Q)と標識された蛍光色素(A)間の相互作用(発光エネルギーの移動現象)が発生するようになる。
【0068】
5)本発明方法E(図5及び図6参照)
本発明方法Aの(2)において、核酸プライマーとして標識核酸プライマーを用いる例である。鋳型核酸の重合を行う過程で、標識ヌクレオチドが核酸重合体に取り込まれる。標識核酸プライマーの蛍光色素(A)或はクエンチャー物質(Q)と標識ヌクレオチドの蛍光色素(A)或はクエンチャー物質(Q)間の相互作用により蛍光強度が変化する。この変化を測定するか、又はモニタリングすることから鋳型核酸若しくはそれを鋳型する核酸重合体を測定する方法である。本方法は、核酸重合系が前記核酸重合系(6)の1例で、特許請求の範囲の請求項6の発明に相当する。そして、核酸重合系の蛍光強度の増加若しくは減少を測定することになる。この場合、蛍光強度の増加、又は減少は、標識ヌクレオチドの蛍光色素(A)若しくはクエンチャー物質(Q)と標識核酸プライマーの標識物質の蛍光色素(A)若しくはクエンチャー物質(Q)の組合せに依存する。ドナー色素とアクセプター色素の関係の場合は、本発明方法Aと同様である。クエンチャー物質と蛍光色素の関係の場合は、本発明方法Dと同様である。
【0069】
前記のように、標識核酸プライマーと蛍光標識ヌクレオチドを用いて本発明方法Aの(2)のような核酸重合反応を行うと、標識核酸プライマーと蛍光標識ヌクレオチドは核酸重合体に取り込まれる。そして重合体に取り込まれた標識核酸プライマーと蛍光標識ヌクレオチドの蛍光色素(A)或はクエンチャー物質(Q)との距離が著しく接近する(図5、図6参照)。このため溶液中に分散した状態では発生しなかった当該プライマーの蛍光色素(A)或はクエンチャー物質(Q)と標識ヌクレオチドの蛍光色素(A)或はクエンチャー物質(Q)の間で相互作用が発生する。
【0070】
本発明で起こり得る物質間相互作用として、(1)標識核酸プライマーの蛍光色素(A)と標識ヌクレオチドの蛍光色素(B)間の相互作用、(2)標識核酸プライマーの蛍光色素(A)と標識ヌクレオチドのクエンチャー物質(Q)の間の相互作用、(3)標識核酸プライマーのクエンチャー物質(Q)と標識ヌクレオチドの蛍光色素(A)の間の相互作用の3つのケースが考えられる(図5は(1)のケースを、図6は(3)のケースを図示してある。)。標識核酸プライマーは、公知技術の均一溶液系核酸プローブ(後記した。)とは異なり、鋳型核酸にハイブリダイゼーションした際に、蛍光強度が変化するようにプローブを設計する必要性がない。よって、本方法は実験系の確立が簡便・確実という利点を有する。本方法に用いる好適な蛍光色素は本発明方法Aと同様である。又、クエンチャー物質は本発明方法Dと同様である。
【0071】
6)本発明方法F(図7参照)
本発明方法Aの(2)において、核酸プライマーとして標識核酸プライマーを用い、標識ヌクレオチドの代わりに非標識ヌクレオチドを用いた(即ち、標識ヌクレオチドを用いない)例である。標識核酸プライマーに標識した蛍光色素(A)と、取り込まれたG塩基を有する非標識ヌクレオチドのG間の相互作用により核酸重合系の蛍光強度が減少する。この蛍光強度の減少を測定するか、又はその減少をモニタリングすることで鋳型核酸若しくはそれを鋳型する核酸重合体を測定することを特徴とする。この方法は、核酸重合系が前記核酸重合系(7)の1例で、特許請求の範囲の請求項9及び10に相当する発明である。
【0072】
即ち、非標識ヌクレオチドがGを含むものであり、合成された核酸重合体中の蛍光標識核酸プライマーの蛍光色素(A)で標識された塩基から1乃至3塩基離れて(標識された塩基を1と数える。)、新たに重合された(当該プライマーの鎖中の塩基ではないという意味)核酸重合体中に少なくとも1つのGが存在する場合に起こる(図7参照)。前項で記述した標識核酸プライマーは、公知技術の均一溶液系の核酸プローブとは異なり、鋳型核酸にハイブリダイゼーションした際に、蛍光強度が変化するようにプローブを設計する必要性がない。よって、本発明方法Eと同じく、本方法は実験系の確立が簡便・確実という利点を有する。本方法に用いる好適な蛍光色素は本発明方法Cと同様である。
【0073】
7)本発明方法G(図8参照)
本発明方法A〜Fにおいて、蛍光標識ヌクレオチド又はクエンチャー標識ヌクレオチドを用いる代わりに、免疫関連物質、即ち、抗原、抗体及び抗抗体からなる群から選ばれた少なくとも1種で標識されたヌクレオチドモノマー(免疫関連標識ヌクレオチド)を用いた例である。例示して説明すると、前記のヌクレオチドモノマーに標識された抗体には、蛍光色素又はクエンチャー物質が結合されている、前記の抗原、抗抗体に対応する抗原又は抗抗体が結合する。その結果、蛍光標識ヌクレオチド又はクエンチャー標識ヌクレオチドと同様な作用をする。又、抗原には、蛍光色素又はクエンチャー物質が結合されている抗体が結合するようになっている。抗抗体には、蛍光色素又はクエンチャー物質が結合されている抗体が結合するようになっている。その結果、前記免疫関連標識ヌクレオチドは、蛍光標識ヌクレオチド又はクエンチャー標識ヌクレオチドと同様な作用をする。
尚、免疫関連物質、即ち、抗原、抗体及び抗抗体からなる群から選ばれた少なくとも1種でヌクレオチドを標識するには、前記の従来公知の方法により達成出来る。又、前記と同様に委託合成((株)日本遺伝子研究所(http://www.ngrl.co.jp)を行って入手した方が好適である。
【0074】
本方法は、前記の通りであるので、免疫関連標識ヌクレオチドは、蛍光色素又はクエンチャー物質が結合している、前記の免疫関連標識ヌクレオチドの免疫関連物質に対応する免疫関連物質が1つの対を形成する。そしてこの対は、免疫関連標識ヌクレオチドを標識している免疫関連物質は、ヌクレオチドに標識されていなくとも、蛍光色素又はクエンチャー物質が結合している前記の免疫関連物質と結合し複合体を形成する。それで、この複合体がヌクレオチドを標識している構造になっているとも認識することができる。従って、本発明においては、簡便化のために、この複合体を蛍光色素及びクエンチャー物質と同じものとして扱うことにした。それで、本発明の蛍光色素とは、前記した蛍光色素の他に蛍光色素を含有する前記複合体を含むものと定義する。又、同様にして、本発明のクエンチャー物質とは、前記したクエンチャー物質の他にクエンチャー物質を含有する前記複合体を含むものと定義する。蛍光色素を含有する複合体、即ち免疫関連物質で標識ヌクレオチドを蛍光標識ヌクレオチドの概念の中に入れ、蛍光標識ヌクレオチドと称することにした。クエンチャー物質についても同様にし、クエンチャー物質を含有する免疫関連物質で標識ヌクレオチドをクエンチャー標識ヌクレオチドと称する。又、免疫関連物質で標識した核酸プライマーにおいても前記ヌクレオチドと同様に、蛍光色素を含む免疫関連物質で標識された核酸プライマーを蛍光標識核酸プライマーと、又、クエンチャーを含む免疫関連物質で標識された核酸プライマーをクエンチャー標識核酸プライマーと称することにした。
【0075】
それで、免疫関連標識ヌクレオチド、免疫関連標識核酸プライマーとは、当該ヌクレオチド、当該プライマーは、蛍光色素又はクエンチャー物質が結合している、当該ヌクレオチド、当該プライマーの免疫関連物質に対応する免疫関連物質を含むものと定義する。具体的には、当該ヌクレオチド及び/又は当該プライマーと、蛍光色素又はクエンチャー物質が結合している当該免疫関連物質を一緒に核酸重合系に存在せしめて、核酸重合系の蛍光強度を測定することになる。
【0076】
それで、前記の本発明方法A〜Fと同様にして、核酸重合体若しくはその鋳型核酸、又は鋳型核酸若しくはそれを鋳型する核酸重合体を測定できる。以上より本方法は、後記する方法を含めて本発明の全てに相当し、核酸重合系の蛍光強度の増加若しくは減少を測定することになる。
【0077】
前記したように、前述の本発明方法A〜Fに示した物質間相互作用の内のいずれかが起こるよう、抗原或は抗体或は抗抗体にてヌクレオチドを標識し、核酸重合反応を行う過程で、核酸重合体にそれらで標識されたヌクレオチドを取り込ませる。図8は、本発明方法Aで示した蛍光色素間の相互作用を利用している図である。公知技術で示した均一溶液系核酸プローブ(後記に示した。)とは異なり、鋳型核酸にハイブリダイゼーションした際に、蛍光強度が変化するようにプローブを設計する必要性がない。よって、本方法は実験系の確立が簡便・確実という利点を有する。
【0078】
8)本発明方法H(図示なし)
本方法は、2つの発明を含む。
i)核酸重合系が前記核酸重合系(3)の1例で、特許請求の範囲の請求項12〜15に相当する発明である。鋳型核酸、少なくとも1種の蛍光色素及び/又は少なくとも1種のクエンチャー物質で標識された、少なくとも1種のジデオキシヌクレオチドモノマー(前者を「蛍光標識ジデオキシヌクレオチド」、後者を「クエンチャー標識ジデオキシヌクレオチド」という。両者を総称して「標識ジデオキシヌクレオチド」という。)、及び核酸合成酵素を含有する核酸重合系で核酸重合反応を行い、蛍光強度の変化若しくは変化量から鋳型核酸若しくはそれを鋳型とする核酸重合体を測定することを特徴とする核酸の測定方法である。そして、核酸重合系が、標識ヌクレオチド及び非標識ヌクレオチドからなる群から選ばれた少なくとも1種を含む系である。又、核酸重合系が、非標識核酸プライマーを含む系である。
【0079】
ii)核酸重合系が前記核酸重合系(7)の1例で、特許請求の範囲の請求項16に相当する発明である。鋳型核酸、少なくとも1種の蛍光色素及び/又は少なくとも1種のクエンチャー物質で標識されていない、少なくとも1種のジデオキシヌクレオチドモノマー(「非標識ジデオキシヌクレオチド」という。)、標識ヌクレオチド、非標識核酸プライマー、核酸特異的蛍光色素、及び核酸合成酵素を含有する核酸重合系で核酸重合反応を行い、蛍光強度の変化若しくは変化量から鋳型核酸若しくはそれを鋳型とする核酸重合体を測定することを特徴とする核酸の測定方法である。上記のi)、ii)の発明において、蛍光色素及びクエンチャー物質の概念は、前記の本発明方法Gと同様である。
【0080】
尚、当該方法は、1塩基伸長反応方法と組合せることにより、多型(SNPを含む。)及び/又は変異の測定、解析又は分析に好適に利用できる。即ち、核酸プライマーの3’末端塩基が鋳型核酸中の目的の多型(SNPを含む。)及び/又は変異部位の塩基に隣接するように設計してなる核酸プライマーと、鋳型核酸中の目的の多型(SNPを含む。)及び/又は変異の塩基に相補する(水素結合出来る。)か若しくは相補しない塩基を有する非標識若しくは標識ジデオキシヌクレオチドを用いて、当該発明の核酸重合反応又は核酸増幅反応を行うと、多型(SNPを含む。)及び/又は変異の塩基の存在若しくは不存在により、核酸重合系の蛍光強度に差が出る。その差により目的が達成できる。具体的には、実施例5及び実施例6に示した。
【0081】
9)本発明方法I(図9参照)
各種核酸合成酵素を用いて、固体表面上に固定化された1種以上の核酸プライマーから鋳型核酸の重合を行うことを特徴とする前述の本発明方法A〜Gの何れかに記載の方法である。
【0082】
前記したように、1種以上の核酸プライマーを固体表面上に固定化し、各種核酸合成酵素により鋳型核酸の重合反応を行う。この際、前述の本発明方法A〜Hの内、いずれかの物質間の相互作用が発生するように、核酸プライマー、蛍光標識ヌクレオチド、クエンチャー標識ヌクレオチド、核酸特異的蛍光色素等を用意する。この際に発生する蛍光強度の変化若しくは変化量をモニタリングすることで単に核酸重合体又はその鋳型核酸若しくはそれを鋳型する核酸重合体を測定することが可能となる(図9参照:図中では本発明方法Aで示した蛍光色素間の相互作用を利用している。)。
【0083】
本方法は、前記したように、1つの鋳型核酸又は当該鋳型核酸と新たに重合合成された核酸重合体との1つの複合体から観察した場合、新たに重合合成された核酸重合体に複数の蛍光色素を含むようになるので、測定感度が、単数種の蛍光色素の蛍光強度変化に基づく均一溶液系核酸プローブを使用する方法より更に改善される。又、鋳型核酸と非標識若しくは標識核酸プライマー又は新たに重合合成された核酸重合体との複合体に取り込まれた核酸特異的蛍光色素から、標識ヌクレオチドの蛍光色素へのエネルギー移動による蛍光強度の変化に基づく測定方式であるので、測定感度が格段に改善される。しかも、標的遺伝子等を含む1種以上の各種核酸を簡便且つ迅速に同時に測定できるという利点を有する。
【0084】
尚、前記の本発明方法で得られたデータの解析方法において、核酸重合系のFRET現象におけるドナーとしての役割をもつ蛍光色素若しくは核酸特異的な蛍光色素の蛍光強度値を、アクセプターとしての役割をもつ蛍光色素の蛍光強度値で割るか、又は逆の操作をするとより好ましいデータになる。それで、このデータ処理方法も本発明に含まれる。
【0085】
本発明方法においては、下記(1)〜(7)の公知の均一溶液系核酸プローブ(鋳型核酸に特異的にハイブリダイズし、蛍光色素又はクエンチャー物質で標識されたオリゴヌクレオチド)、及び公知の核酸測定方法を本発明方法、特に標識核酸プライマーに好適に適用することができる。当該プライマーとして利用される場合は前記した通りである。又、核酸増幅方法に記載した単なるプローブとして利用する場合、核酸合成酵素としてエキソヌクレアーゼを欠いたDNA又はRNAポリメラーゼとリガーゼを用いるのが好適である。均一溶液系核酸プローブが鋳型核酸にハイブリダイズしたとき、本発明の核酸重合体に組み込まれる。又、エキソヌクレアーゼ活性を有するDNA又はRNAポリメラーゼを用いた場合、分解されてしまう。分解されたヌクレオチドがカイネース等で3リン酸体にされた後、本発明の核酸重合体に組み込まれてしまう。
【0086】
(1)Morrisonらのプローブ(Morrison et al.,Anal.Biochem.,183:231-244,1989)で代表されるプローブ。
(2)Mergneyらのプローブ(Mergney et al.,Nucleic acid Res.,22:920-928,1994)で代表されるプローブ。
(3)分子ビーコン(molecular beacon)方法(Tyagi et al.,Nature Biotech.,14:303-308,1996;Schofield et al.,Applied and Environ. Microbiol.,63:1143-1147,1997)で代表されるプローブ。
(4)Livakらのプローブ(US patent No.5,538,848)で代表されるプローブ。
【0087】
(5)KURATAらのプローブ(KURATA et al.,Nucleic acids Research,2001,vol.29,No.6 e34)で代表されるプローブ。このプローブは、1本鎖のオリゴヌクレオチドを蛍光色素で標識した均一溶液系核酸プローブであるが、蛍光色素で標識した塩基がG又はCであるか、又は対応核酸の標識塩基に対応する塩基から1乃至3塩基離れて(標識塩基に対応する塩基を1と数える。)G又はCが存在する均一溶液系核酸プローブである。
【0088】
(6)Davisらのプローブ(Davis et al.,Nucleic acids Res.,24:702-706,1996)で代表されるプローブ。
(7)HORNらのプローブ(US Patent Application Publication No.US2001/0009760A1,Pub.Date:Jul.26,2001)で代表されるプローブ。
【0089】
前記に記載した核酸重合方法が核酸増幅方法である場合について以下に記す。本発明でいう核酸増幅方法とは、インビトロ(in vitro)で核酸を増幅する方法のことをいう。公知、未公知を問わない。例えば、PCR方法、LCR方法(ligase chain reaction)、TAS方法、ICAN(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids)方法、LAMP方法、NASRA方法、RCA方法、TAMA方法、UCAN方法等を全て含めるものとする。
【0090】
又、このPCRとは、公知の各種のPCRを意味するものである。例えば、リアルタイムモニタリング定量的PCR方法、RT−PCR、RNA-primed PCR、Stretch PCR、逆PCR、Alu配列を利用したPCR、多重PCR、混合プライマーを用いたPCR、PNAを用いたPCR、PCRにより増幅した核酸について、融解曲線の解析若しくは分析する方法等をも含むものとする。
【0091】
具体的には、前記した核酸重合系、特に、核酸プライマー若しくは核酸プローブを含む系で、ハイブリダイゼーション反応、核酸重合反応(核酸伸長反応)、変性反応を1サイクルとして従来公知の条件(KURATA et al.,Nucleic acids Research,2001,vol.29,No.6 e34)で核酸増幅反応を行い、各サイクルの蛍光強度若しくは相対蛍光強度の変化若しくは変化量を経時的に測定することにより、鋳型核酸の核酸増幅前の濃度若しくはコピー数を測定する核酸の測定方法である。そして、各サイクルの蛍光強度の変化若しくは変化量を経時的に測定することにより、蛍光強度若しくは相対蛍光強度の変化若しくは変化量が観察(目視)され始めるサイクル数Ct値を求め、当該Ctと標準の鋳型核酸の核酸増幅前の濃度若しくはコピー数の関係から、試料中の鋳型核酸の核酸増幅前の濃度若しくはコピー数を求めることができる。具体的には、実施例4〜11に記載されている。
【0092】
前記した均一溶液系核酸プローブを好適に、核酸プライマー(リバース及び/又はフォワードプライマー)として利用できる。この場合、均一溶液系核酸プローブから標識されている蛍光色素及び/又はクエンチャー物質を離脱した非標識の核酸プライマーも好適に利用できる。当該核酸増幅方法で増幅された核酸重合体は少なくとも一種の蛍光色素を含むので、少なくとも一種の測定波長を用いて当該重合体の解離曲線から得られる情報は有用である。
【0093】
本発明の核酸増幅系は、前記の核酸重合反応のための核酸重合系の{(1)〜(8)}、好ましくは{(6)、(7)及び(8)}、より好ましくは{(6)及び(7)}の何れか1つである。
【0094】
本発明方法は、又、以下のデータ処理方法も含む。即ち、上記の核酸増幅方法で得られたデータを解析する方法において、鋳型核酸及び/又は核酸合成酵素を含有している核酸重合系の各サイクルの蛍光強度値を、鋳型核酸及び/又は核酸合成酵素が含有していない核酸重合系の各サイクルの蛍光強度値により補正すると、好ましいデータになる。又、核酸重合系のFRET現象におけるドナーとしての役割をもつ蛍光色素若しくは核酸特異的な蛍光色素の、経時的に測定された蛍光強度値を、アクセプターとしての役割をもつ蛍光色素の、経時的に測定された蛍光強度値で割るか、又は逆の操作をして補正したデータは好適なものになる。このような補正をする演算処理過程(以下、補正演算処理過程という。)を有する手順を記録した電子記録媒体も本発明である。測定及び/又はデーター解析装置において当該電子記録媒体を装備したもの、又、当該装置を用いた測定も当然本発明の範囲内である。
【0095】
本発明の核酸の重合反応を利用したリアルタイム定量的PCR方法で得られるデータを解析する方法は具体的には以下の通りである。リアルタイム定量的PCR方法は、現在、PCRを行わせる反応装置、蛍光色素の発光を検出する装置、ユーザーインターフェース、即ち、データ解析方法の各手順をプログラム化して、それを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体(別称:Sequence Detection Software System)、及びそれらを制御し、データ解析するコンピュータから構成される装置で、リアルタイムで測定されている。それで、本発明の測定もこのような装置で行われるのがよい。
【0096】
尚、PCR反応装置は、鋳型核酸の熱変性反応、アニーリング反応、核酸の伸長反応を繰り返し行う装置(例えば、温度を95℃、60℃、72℃に繰り返し行うことができる。)である。又、検出システムは、蛍光励起用アルゴンレーザー、スペクトログラフならびにCCDカメラからなっている。更に、データ解析方法の各手順をプログラム化して、それを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、コンピュータにインストールされて使用され、コンピュータを介して上記のシステムを制御し、検出システムから出力されたデータを解析処理するプログラムを記録したものである。
【0097】
コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されているデータ解析用プログラムは、サイクルごとの蛍光強度を測定する過程、測定された蛍光強度を、サイクルの関数として、即ち、PCRのamplification plotとしてコンピュータのディスプレー上に表示する過程、蛍光強度若しくは相対蛍光強度の変化若しくは変化量が検出され始めるPCRサイクル数(threshold cycle number:Ct)を算出する過程、Ct値から試料核酸のコピー数を求める検量線を作成する過程、前記各過程のデータ、プロット値を印字する過程からなっている。PCRが指数的に進行している場合、PCR開始時の測定対象の核酸のコピー数のLog値と、Ctとの間には直線関係が成り立つ。従って、既知量のコピー数を用いて検量線を作成し、未知コピー数の鋳型核酸を含有するサンプルのCtを検出することにより、鋳型核酸のPCR開始時の初期コピー数を計算できる。
【0098】
本発明方法を用いる多型(polymorphism)及び/又は変異(mutation)を測定若しくは解析する方法について、以下に記す。即ち、核酸重合方法及び核酸増幅方法の核酸重合系{(1)〜(9)}、好ましくは{(6)、(7)及び(8)}、より好ましくは{(6)及び(7)}の何れか1つで、核酸重合反応又は核酸増幅反応を行い、核酸重合系の蛍光強度の変化若しくは変化量を経時的若しくは非経時的に測定し、その測定値から多型(SNPを含む。)及び/又は変異の測定、解析、又は分析することを特徴とする核酸の測定方法である。好適には、当該方法を配列特異的伸長方法と組合せることがよい。具体的には、実施例7〜実施例10に示した。
【0099】
この場合、非標識若しくは標識核酸プライマーを、その3’末端塩基若しくは3’末端から2番目の塩基(3’末端塩基を1と数える。)が、鋳型核酸の検出目的の多型(SNPを含む。)及び/又は変異の塩基に相補しない(相互の塩基が水素結合できる。)よう(他の塩基は相補する。)に作製してなる、少なくとも一種の非標識若しくは標識核酸プライマーを含有する核酸重合系で核酸重合若しくは核酸増幅反応を行うのが好適である。当該プライマーを含有する核酸重合系では、当該プライマーを前駆体として、核酸重合若しくは核酸増幅反応が進まない場合は、核酸重合系の蛍光強度の変化が起きない。逆に進む場合は、蛍光強度の変化が起きる。尚、反応温度は、一般的には、当該プライマーのTM値以上変性反応温度(例えば、95℃)未満であるのが好適である。又、当該プライマーの3’末端から3番目の塩基を、鋳型核酸の塩基に相補しない塩基にし、鋳型核酸と当該プライマーとの間で人工的なミスマッチを形成させることで、非特異的な伸長反応が抑えられる。即ち、より正確な多型の判定が可能になる。この場合の反応温度は、当該プライマーのTM値より5℃程低い温度から変性反応温度未満であることが好適である。尚、本発明において、鋳型核酸の多型若しくは変異の塩基とは相補しない塩基を有する当該プライマーをA型プライマーと称した場合に、相補する塩基を有する当該プライマーをB型プライマーと称することにする。この測定方法において、A型プライマーとB型プライマーを併用することにより確かなデータが得られる。
【0100】
具体的には、以下の方法で行う。
以下の核酸重合系で核酸重合反応若しくは核酸増幅反応を行う。尚、詳しくは実施例7及び8に示した。
1)前記した核酸重合若しくは核酸増幅方法の核酸重合系{(1)〜(8)}、好ましくは{(6)、(7)及び(8)}、より好ましくは{(6)及び(7)}の何れか1つのものである。この場合、好適には、標識又は非標識核酸プライマーとしてA型プライマーを少なくとも1種を含有する。
2)前記1)の核酸重合系が、前記同様にB型プライマーを少なくとも1種を含有する。
3)前記1)の核酸重合系が、前記同様にA型プライマーを少なくとも1種、及びB型プライマーを少なくとも1種を含有する(但し、同種の蛍光色素で標識されたA型プライマー及びB型プライマーを除く。)。
【0101】
尚、同種の蛍光色素で標識されたA型プライマー及びB型プライマーを用いた場合は、上記(1)と(2)の反応系で、核酸重合反応、又は核酸増幅反応を行い、経時的若しくは非経時的に蛍光強度の変化若しくは変化量を測定して、その測定値を比較検討することにより、多型(SNPを含む。)若しくは変異を測定できる。異種の蛍光色素で標識されたA型プライマー及びB型プライマーを用いた場合、上記(3)の核酸重合系で、核酸重合反応若しくは核酸増幅反応を好適に行うことができる。尚、この場合でも、上記(1)と(2)の核酸重合系で、核酸重合反応若しくは核酸増幅反応を好適に行うことができる。
尚、上記のA型若しくはB型プライマーの替わりに、鋳型核酸中の目的の多型(SNPを含む。)及び/又は変異の塩基に相補する(水素結合出来る。)か又は相補しない塩基を有する非標識若しくは標識ジデオキシヌクレオチドの少なくとも一種を用いることでも、多型(SNPを含む。)及び/又は変異の測定、解析、又は分析することが達成出来ることは、前記した通りである。
【0102】
そして、A型プライマーを少なくとも1種及び/又はB型プライマーを少なくとも1種、鋳型核酸、核酸合成酵素、非標識ヌクレオチド、標識ヌクレオチド、免疫関連標識ヌクレオチド、標識ジデオキシヌクレオチド及び非標識ジデオキシヌクレオチドからなる群から選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする多型(SNPを含む。)及び/又は変異の測定、解析、又は分析するための反応液、測定キット類又はデバイス類である。
【0103】
本発明の核酸の測定方法は、医学、法医学、人類学、古代生物学、生物学、遺伝子工学、分子生物学、農学、植物育種学等の各種の分野で利用できる。又、複合微生物系、共生微生物系といわれ、色々の種類の微生物が混在するか、若しくは少なくとも1種類の微生物が他の動物、植物由来の細胞と共に混在していて相互に単離できない微生物系等に好適に利用できる。又、本発明は各種の核酸測定方法、例えば、FISH方法、LCR方法、SD方法、TAS方法等に好適に適用できる。
本発明は、特許請求の範囲の請求項1〜18の発明を開示するが、その他に以下に記載する幾つかの好ましい実施形態を開示する。
【0104】
[1]下記の何れか1つの核酸重合系で、核酸重合反応を行い、核酸重合系の蛍光強度の変化若しくは変化量を測定し、その測定値から多型(SNPを含む。)及び/又は変異の測定、解析、又は分析することを特徴とする核酸の測定方法。
(1)鋳型核酸、少なくとも1種の標識ヌクレオチド、及び核酸合成酵素を含む。
(2)前記(1)において、非標識ヌクレオチドを含む。
(3)鋳型核酸、少なくとも1種の標識ジデオキシヌクレオチド、及び核酸合成酵素を含む。
(4)上記(3)において、標識ヌクレオチド及び非標識ヌクレオチドからなる群から選ばれた少なくとも1種を含む。
【0105】
(5)鋳型核酸、非標識ジデオキシヌクレオチド、標識ヌクレオチド、及び核酸合成酵素を含有する。
(6)上記(1)〜(5)において更に標識核酸プライマー又は非標識核酸プライマーを含む。
(7)鋳型核酸、非標識ヌクレオチド、標識核酸プライマー及び核酸合成酵素を含む。
(8)上記(1)〜(7)の何れか1つにおいて核酸特異的蛍光色素を含む。
【0106】
[2]下記の何れか1つの核酸重合系で、ハイブリダイゼーション反応(アニーリング反応)、核酸重合反応(核酸伸長反応)、変性反応を1サイクルとして核酸増幅反応を行い、各サイクルの蛍光強度の変化若しくは変化量を経時的に測定することにより、鋳型核酸の核酸増幅前の濃度若しくはコピー数を測定することを特徴とする核酸の測定方法。
(1)鋳型核酸、少なくとも1種の標識ヌクレオチド、及び核酸合成酵素を含む。
(2)前記(1)において、非標識ヌクレオチドを含む。
(3)鋳型核酸、少なくとも1種の標識ジデオキシヌクレオチド、及び核酸合成酵素を含む。
(4)上記(3)において、標識ヌクレオチド及び非標識ヌクレオチドからなる群から選ばれた少なくとも1種を含む。
【0107】
(5)鋳型核酸、非標識ジデオキシヌクレオチド、標識ヌクレオチド、及び核酸合成酵素を含有する。
(6)上記(1)〜(5)において更に標識核酸プライマー又は非標識核酸プライマーを含む。
(7)鋳型核酸、非標識ヌクレオチド、標識核酸プライマー及び核酸合成酵素を含む。
(8)上記(1)〜(7)の何れか1つにおいて核酸特異的蛍光色素を含む。
【0108】
[3]各サイクルの蛍光強度の変化若しくは変化量を経時的に測定することにより、蛍光強度の変化若しくは変化量が観察され始めるサイクル数Ct値を求め、当該Ctと鋳型核酸の核酸増幅前の濃度若しくはコピー数の関係から、鋳型核酸の核酸増幅前の濃度若しくはコピー数を測定する前記[2]に記載の核酸の測定方法。
[4]前記[2]に記載の核酸重合系で、核酸増幅反応を行い、核酸重合系の蛍光強度の変化若しくは変化量を経時的に測定して、その測定値から、多型(SNPを含む。)及び/又は変異の測定、解析、又は分析する前記[2]に記載の核酸の測定方法。
[5]非標識若しくは標識核酸プライマーの3’末端塩基若しくは3’末端から2番目の塩基(3’末端塩基を1と数える。)が鋳型核酸の検出目的の多型(SNPを含む。)及び/又は変異の塩基に対応する非標識若しくは標識核酸プライマーを含有する核酸重合系で核酸重合若しくは核酸増幅反応を行い、核酸重合系の蛍光強度の変化若しくは変化量を測定し、多型(SNPを含む。)及び/又は変異の測定、解析、又は分析する前記[1]又は[4]に記載の核酸の測定方法。
【0109】
[6]下記の核酸重合系で、核酸重合反応、又は核酸増幅を行い、得られるデータを比較検討することにより、多型(SNPを含む。)及び/又は変異の測定、解析、又は分析する前記[1]又は[4]に記載の核酸の測定方法。
1)前記した核酸重合系{(1)〜(8)}の何れか1つのものが、非標識若しくは標識核酸プライマーの、3’末端塩基若しくは3’末端から2番目の塩基(3’末端塩基を1と数える。)が、対応する鋳型核酸の塩基とは相補しない塩基を有するもの(A型プライマーと称する。)の少なくとも1種を含有する。
2)前記1)の核酸重合系が、非標識若しくは標識核酸プライマーの、3’末端塩基若しくは3’末端から2番目の塩基(3’末端塩基を1と数える。)が、対応する鋳型核酸の塩基とは相補する塩基を有するもの(B型プライマーと称する。)の少なくとも1種を含有する。
3)前記1)の核酸重合系が、A型プライマーの少なくとも1種、B型プライマーの少なくとも1種を含有する(但し、同種の蛍光色素で標識されたA型プライマー及びB型プライマーを除く。)。
【0110】
[7]前記請求項1、7、9、12、16、前記[1]、[3]の何れか1項で得られたデータを解析する方法において、核酸重合系のFRET現象におけるドナーとしての役割をもつ蛍光色素若しくは核酸特異的蛍光色素の、経時的若しくは非経時的に測定された蛍光強度値を、アクセプターとしての役割をもつ蛍光色素の蛍光強度値で割るか、又は逆の操作をすることを特徴とするデータ処理若しくは解析方法。
[8]前記請求項1、7、9、12、16、前記[1]、[3]の何れか1項に記載の方法で得られたデータを解析する方法において、鋳型核酸若しくは核酸合成酵素を含有している核酸重合系の各サイクルの蛍光強度値を、鋳型核酸若しくは核酸合成酵素が含有していない核酸重合系の各サイクルの蛍光強度値により補正することを特徴とするデータ処理若しくは解析方法。
【0111】
[9]A型プライマーの少なくとも1種及び/又はB型プライマーの少なくとも1種、鋳型核酸、核酸合成酵素、非標識ヌクレオチド、標識ヌクレオチド、標識ジデオキシヌクレオチド及び非標識ジデオキシヌクレオチドからなる群から選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする多型(SNPを含む。)及び/又は変異の測定、解析、又は分析するための反応液、測定キット類又はデバイス類。
[10]核酸合成酵素が、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を欠損させたVent(exo-)DNA Polymerase(サーモコッカス・リトラリス由来)、Tgo(exo-)DNA Polymerase、ThermoSequenase DNA Polymerase(Armersham社製)、AmpliTagGold、T7 Sequenase DNA Polymeraseである前記請求項1、7、9、12、16、前記[1]、[4]のいずれか1項に記載の核酸の測定方法。
【0112】
[11]核酸増幅方法が、PCR方法、ICAN方法、LAMP方法、NASBA方法、RCA方法、TAMA方法、LCR方法のいずれかの方法である前記[4]に記載の核酸の測定方法。
[12]PCR方法がリアルタイム定量的PCR法である前記[11]の核酸の測定方法。
[13]前記請求項5に記載の標識核酸プライマーの少なくとも1種で標識された核酸プライマーを固体表面上に固定化させて、前記請求項1、7、9、12、16、前記[1]、[2]の何れか1項に記載の方法を実施できるようにしたことを特徴するデバイス(DNAチップ)類。
[14]前記のデバイス(DNAチップ)類を用いて鋳型核酸の核酸重合反応を行う前記請求項1、7、9、12、16、前記[1]、[2]のいずれか1項に記載の核酸の測定方法。
【0113】
[15]前記請求項1、7、9、12、16、前記[1]、[2]、[4]のいずれか1項に記載の方法で鋳型核酸又はそれを鋳型とする核酸重合体若しくは核酸増幅体を測定するための、温度を変化させながら蛍光測定可能な装置で、且つ前記[7]、[8]に記載のデータ処理若しくは解析方法の過程を、コンピュータに実行させるための手順をプログラムとして記録したコンピュータ読取可能な記録媒体を組み込んだことを特徴とする測定装置。
[16]前記請求項1、7、9、12、前記[2]の何れか1項に記載の方法を用いて、均一溶液系核酸プローブの任意の位置の塩基を蛍光色素で標識する方法。
【実施例】
【0114】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例においては、以下のように用語を短略して用いた。
1)「鋳型核酸」を「鋳型」という場合がある。
2)「核酸プライマー」を「プライマー」とした。
3)dNTSs、dATP、dGTP、dTTP、dUTPは現在分子で生物学等で用いられている意味と同じである。
本実施例で用いた、鋳型、標識又は非標識ヌクレオチド及び標識又は非標識プライマーは特別の記載がない限り、委託合成((株)日本遺伝子研究所(http://www.ngrl.co.jp)を行って入手した。
【0115】
本実施例にて使用したプライマー及び塩基配列は以下のものである。尚、塩基配列は右が3’末端で左が5’末端である。
(合成1本鎖DNAの塩基配列)
プライマー1:CAGACTCGACAGTGTAGACCCG
プライマー2:AGAGTTTGATCCTGGCTCAG
プライマー3:TTGCATGTGTTAGGCCTG
【0116】
又、鋳型1〜9は次の塩基配列を有していた。塩基配列は右が3’側で左が5’側である。
鋳型1:
ACACACACACACACTTCGGGTCTACACTGTCGAGTCTG
鋳型2:
TATCTATCTATCTATCTATCTATCTATCTTCGGGTCTACACTGTCGAGTCTG
鋳型3:
TTATTCTTATTCTTATTCTTATTCTTATTCTTATTCTTATTCTTCGGGTCTACACTGTCGAGTCTG
鋳型4:
TTATTTCTTTATTTCTTTATTTCTTTATTTCTTTATTTCTTTATTTCTTTATTTCTTCGGGTCTACACTGTCGAGTCTG
鋳型5:
TTATTTTCTTTATTTTCTTTATTTTCTTTATTTTCTTTATTTTCTTTATTTTCTTTATTTTCTTCGGGTCTACACTGTCGAGTCTG
【0117】
鋳型6:
TTATTTTCTTTTATTTTCTTTTATTTTCTTTTATTTTCTTTTATTTTCTTTTATTTTCTTTTATTTTCTTCGGGTCTACACTGTCGAGTCTG
鋳型7:
TTATTTTTCTTTTATTTTTCTTTTATTTTTCTTTTATTTTTCTTTTATTTTTCTTTTATTTTTCTTTTATTTTTCTTCGGGTCTACACTGTCGAGTCTG
鋳型8:
TTATTTTTCTTTTTATTTTTCTTTTTATTTTTCTTTTTATTTTTCTTTTTATTTTTCTTTTTATTTTTCTTTTTATTTTTCTTCGGGTCTACACTGTCGAGTCTG
鋳型9:
TTATTTTTTCTTTTTTATTTTTTCTTTTTTATTTTTTCTTTTTTATTTTTTCTTTTTTATTTTTTCTTTTTTATTTTTTCTTTTTTATTTTTTCTTCGGGTCTACACTGTCGAGTCTG
鋳型10:
GCTTCGGGTCTACACTGTCGAGTCTG
鋳型11:
GCTCCGGGTCTACACTGTCGAGTCTG
【0118】
実施例1(本発明方法B(2))
2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間のFRET現象を利用して鋳型核酸を測定する。
【0119】
A)各種方法
1)鋳型DNAとプライマーの合成
本実施例に鋳型として使用した1本鎖DNA(鋳型1〜9)及び22塩基のプライマー(プライマー1)はDNA合成機ABI394(Perkin Elmer社製、米国)で調製した。鋳型1から9はプライマー1と相補的な共通の配列を3´側に有する。又、これらの鋳型は伸長反応の過程で標識されたdUTPが7つ取り込まれるように設計してある。以下に鋳型1本鎖DNAとプライマー1との組み合わせの特徴を示す:
・鋳型1とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチドが1個取り込まれるごとに1つの蛍光標識ヌクレオチドが取り込まれる。
・鋳型2とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチドが3個取り込まれるごとに1つの蛍光標識ヌクレオチドが取り込まれる。
・鋳型3とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチドが5個取り込まれるごとに1つの蛍光標識ヌクレオチドが取り込まれる。
【0120】
・鋳型4とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチドが7個取り込まれるごとに1つの蛍光標識ヌクレオチドが取り込まれる。
・鋳型5とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチドが8個取り込まれるごとに1つの蛍光標識ヌクレオチドが取り込まれる。
・鋳型6とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチドが10個取り込まれるごとに1つの蛍光標識ヌクレオチドが取り込まれる。
・鋳型7とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチドが11個取り込まれるごとに1つの蛍光標識ヌクレオチドが取り込まれる。
・鋳型8とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチドが13個取り込まれるごとに1つの蛍光標識ヌクレオチドが取り込まれる。
【0121】
2)重合(増幅)反応条件
DNAポリメラーゼは3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を欠損させたサーモコッカス・リトラリス由来のVent(exo-)DNA Polymerase(NEW ENGLAND BioLabs,Beverly,MA)を用いた。蛍光標識ヌクレオチドにCyanine 5-dUTP(650nm/668nm)、LissamineTM-5-dUTP(570nm/588nm)、Texas Red(r)-5-dUTP(593nm/612nm)(カッコ内は最大吸収波長/最大蛍光波長、PerkinElmer米国)を用いた。DNAポリメラーゼにより取り込まれた標識ヌクレオチドへFRET現象を起こさせるためのドナー色素に、2本鎖核酸に特異的に結合し497nmに最大励起波長を持ち、520nm付近で最大の蛍光を発するSYBR(r)Green I Nucleic Acid Gel Stain(Molecular probes、米国)を用いた。
【0122】
反応液を以下のように調製した。
・20mM Tris-HCl(pH8.8) ・10mM KCl ・10mM (NH4)2SO4 ・2.5mM MgSO4
・0.1%Triton X-100 ・0.25mg/ml BSA ・200nM dATP ・200nM dGTP
・200nM dCTP ・200nM Cyanine5-dUTP若しくはLissamineTM-5-dUTP若しくはTexas Red(r)-5-dUTP ・1×SYBR(r)Green I ・2nM プライマー
・20nM 合成1本鎖鋳型DNA ・0.1 U(単位) Vent(exo-)DNA Polymerase
【0123】
反応溶液の最終容量20μl。上記反応液を均一に混合し、95℃で15秒熱変性させた後、65℃、15分間保温した。蛍光の検出にはライトサイクラーTMシステム(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社、ドイツ)を用いた。その際、該システムにあるF1(530nm)をSYBR(r)Green Iの検出に、F2(640nm)をLissamineTM-5-dUTP若しくはTexas Red(r)-5-dUTPの検出、F3(710nm)をCyanine 5-dUTPの検出に用いた。又、励起強度は75%に固定した。
【0124】
3)実施した実験系の内容
・モデル1〜9:プライマー1と鋳型1〜9の組み合わせ。蛍光標識ヌクレオチドはCyanine 5-dUTPを使用した。
・モデル10:プライマー1と鋳型9の組み合わせ。蛍光標識ヌクレオチドはCyanine 5-dUTPを使用しVent(exo-)DNA Polymeraseを添加しない。
・モデル11〜19:プライマー1と鋳型1〜9の組み合わせ。蛍光標識ヌクレオチドはLissamineTM-5-dUTPを使用しVent(exo-)DNA Polymeraseを添加しない。・モデル20:プライマー1と鋳型9の組み合わせ。蛍光標識ヌクレオチドはLissamineTM-5-dUTPを使用しVent(exo-)DNA Polymeraseを添加しない。
・モデル21〜29:プライマー1と鋳型1〜9の組み合わせ。蛍光標識ヌクレオチドはTexas Red(r)-5-dUTPを使用した。
・モデル30:プライマー1と鋳型9の組み合わせ。蛍光標識ヌクレオチドはTexas Red(r)-5-dUTPを使用しVent(exo-)DNA Polymeraseを添加しない。
・モデル31〜39:プライマー1と鋳型1〜9の組み合わせ。蛍光標識ヌクレオチドは使用しないかわりにdTTPを用いる。
・モデル40:プライマー1と鋳型9の組み合わせ。蛍光標識ヌクレオチドは使用しないかわりにdTTPを用いる。Vent(exo-)DNA Polymeraseを添加しない。
【0125】
結果を図10〜16に示した。モデル1〜10のF1蛍光強度変化を図10に、F3蛍光強度変化を図11に示す。モデル11〜20のF1蛍光強度変化を図12に、F2蛍光強度変化を図13に示す。モデル21〜30のF1蛍光強度変化を図14、F2蛍光強度変化を図15に示す。モデル31〜40のF1蛍光強度変化を図16に示す。
【0126】
その結果、モデル1〜9ではF1の蛍光が最大で約40%減少し、F3の蛍光が最大で約4倍増加した。酵素非添加のモデル10の反応ではF1は若干蛍光強度が減少したものの、F3の蛍光強度に変化はみられなかった(図10、11)。モデル11〜19はF1の蛍光強度が最大で約40%減少し、F2の蛍光強度が最大で約2.5倍増加した。酵素非添加のモデル20のF2の蛍光強度は変化しなかった(図12、13)。モデル21〜29はF1の蛍光強度が最大で約40%減少し、F2の蛍光強度が最大で約8倍増加した。酵素非添加のモデル30ではF2の蛍光強度に変化はなかった(図14、15)。SYBR(r)Green Iのみのモデル31〜39ではF1の蛍光強度が最大で3倍増加した(図16)。
【0127】
このように、2本鎖核酸特異的蛍光色素(今回はSYBR(r)Green I)と蛍光標識ヌクレオチドとの間にエネルギー移動現象が観察され、鋳型核酸を測定することができた。即ち、ドナーとなる2本鎖核酸特異的蛍光色素がアクセプターとなる各蛍光標識ヌクレオチドにエネルギーを供与したことで、ドナーの蛍光強度(F1)が減少し、アクセプターの蛍光強度(F2若しくはF3)が増加した。酵素を入れない系では蛍光強度値の変化はみられなかった。又、蛍光標識ヌクレオチドを入れないSYBR(r)Green Iだけの系では、エネルギー移動は起こらないためにSYBR(r)Green Iの蛍光強度(F1)のみが増加した。この手法では、エネルギー移動現象におけるドナー側の蛍光強度の減少、又、アクセプター側の蛍光強度の増加のどちらを測定しても鋳型核酸を測定することが可能であった。
【0128】
実施例2(本発明方法A)
蛍光標識ヌクレオチド同士のエネルギー移動現象を利用して鋳型核酸を測定する。
1)鋳型DNAとプライマーの合成
実施例1で使用したプライマーならびに鋳型1本鎖DNAを用いた。以下に鋳型1本鎖DNAとプライマー1との組み合わせの特徴を示す。
・鋳型1とプライマー1との組み合わせ:蛍光標識ヌクレオチドとFITC標識ヌクレオチドが交互に1つずつ取り込まれる。
・鋳型2とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチド1個が取り込まれるごとに、蛍光標識ヌクレオチドとFITC標識ヌクレオチドが交互に1つずつ取り込まれる。
・鋳型3とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチド2個が取り込まれるごとに、蛍光標識ヌクレオチドとFITC標識ヌクレオチドが交互に1つずつ取り込まれる。
【0129】
・鋳型4とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチド3個が取り込まれるごとに、蛍光標識ヌクレオチドとFITC標識ヌクレオチドが交互に1つずつ取り込まれる。
・鋳型5とプライマー1との組み合わせ:FITC標識ヌクレオチドが取り込まれた後、非標識ヌクレオチド3個が取り込まれる。次に、蛍光標識ヌクレオチドが取り込まれる。非標識ヌクレオチド4個が取り込まれる。この繰り返しである。非標識ヌクレオチド4個が取り込まれるごとに、蛍光標識ヌクレオチドとFITC標識ヌクレオチドが交互に1つずつ取り込まれる。
・鋳型6とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチド4個が取り込まれるごとに、蛍光標識ヌクレオチドとFITC標識ヌクレオチドが交互に1つずつ取り込まれる。
・鋳型8とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチド5個が取り込まれるごとに、蛍光標識ヌクレオチドとFITC標識ヌクレオチドが交互に1つずつ取り込まれる。
・鋳型9とプライマー1との組み合わせ:非標識ヌクレオチド6個が取り込まれるごとに、蛍光標識ヌクレオチドとFITC標識ヌクレオチドが交互に1つずつ取り込まれる。
【0130】
2)重合(増幅)反応条件
蛍光標識ヌクレオチドには、実施例1と同様の蛍光標識ヌクレオチドとしてCyanine 5-dUTP、LissamineTM-5-dUTP、Texas Red(r)-5-dUTPを用いた。FITC標識ヌクレオチドはFITC-dGTP(PerkinElmer、米国)を用いた。
【0131】
尚、反応液を以下のように調製した。
・20mM TrisHCl(pH8.8) ・10mM KCl ・10mM (NH4)2SO4 ・2.5mM MgSO4
・0.1% Triton X-100 ・0.25mg/ml BSA ・200nM FITC-dGTP(ドナー色素)
・200nM dCTP ・200nM dATP ・200nM Cyanine 5-dUTP若しくはLissamineTM-5-dUTP若しくはTexas Red(r)-5-dUTP (アクセプター色素) ・2nM プライマー
・20nM 合成1本鎖鋳型DNA ・0.1 U Vent(exo-)DNA Polymerase
【0132】
反応溶液の最終容量20μl。上記反応液を均一に混合し、95℃で15秒熱変性させた後、65℃、15分間保温した。蛍光の検出にはライトサイクラーTMシステムを用いた。検出はF1、F2、F3を用い、励起強度は75%に固定した。
【0133】
3)実施した実験系の内容
・モデル1〜7:プライマー1と鋳型1、プライマー1と鋳型2、プライマー1と鋳型3、プライマー1と鋳型4、プライマー1と鋳型6、プライマー1と鋳型8、プライマー1と鋳型9の組み合わせで、Cyanine 5-dUTPを用いる。
・モデル8:プライマー1と鋳型6を使用し、蛍光標識ヌクレオチドにCyanine 5-dUTPを用い、Vent(exo-)DNA Polymeraseを添加しない。
・モデル9〜15:プライマー1と鋳型1、プライマー1と鋳型2、プライマー1と鋳型3、プライマー1と鋳型4、プライマー1と鋳型6、プライマー1と鋳型8、プライマー1と鋳型9の組み合わせで、LissamineTM-5-dUTPを用いる。
【0134】
・モデル16:プライマー1と鋳型6を使用し、蛍光標識ヌクレオチドにLissamineTM-5-dUTPを用い、Vent(exo-)DNA Polymeraseを添加しない。
・モデル17〜23:プライマー1と鋳型1、プライマー1と鋳型2、プライマー1と鋳型3、プライマー1と鋳型4、プライマー1と鋳型6。プライマー1と鋳型8、プライマー1と鋳型9の組み合わせで、Texas Red(r)-5-dUTPを用いる。
・モデル24:プライマー1と鋳型6を使用し、蛍光標識ヌクレオチドにRed(r)-5-dUTPを用い、Vent(exo-)DNA Polymeraseを添加しない。
【0135】
結果を図17〜22に示した。モデル1〜8のF1の蛍光強度変化を図17に、F3の蛍光強度変化を図18に示す。モデル9〜16のF1の蛍光強度変化を図19に、F2の蛍光強度変化を図20に示す。モデル17〜24のF1の蛍光強度変化を図21、F2の蛍光強度変化を図22に示す。
【0136】
その結果、モデル1〜7はF1の蛍光強度が最大で約50%減少し、F3の蛍光が最大で約5倍増加した。酵素非添加のモデル8の反応では蛍光変化はみられなかった(図17、18)。モデル9〜15はF1の蛍光強度が最大で60%減少し、F2の蛍光強度が最大で約2.5倍増加した。酵素非添加のモデル16の蛍光強度は変化しなかった(図19、20)。モデル17〜23はF1の蛍光強度が最大で50%以上減少し、F2の蛍光強度が最大で約4.5倍増加した。酵素非添加のモデル24では変化しなかった(図21、22)。
【0137】
以上の結果より、DNAポリメラーゼにより合成された蛍光標識ヌクレオチド同士のエネルギー移動現象によって蛍光強度値の変化から鋳型核酸を測定することができた。即ち、ドナー蛍光色素であるFITC標識ヌクレオチドの蛍光強度(F1)が減少し、アクセプター蛍光色素となるCyanine5,LissamineTM、Texas Red(r)標識ヌクレオチドの蛍光強度(F2若しくはF3)が増加した。酵素を入れない系では蛍光強度の変化はみられなかった。実施例1と同様、ドナー蛍光色素側の蛍光強度の減少、又、アクセプター蛍光色素側の蛍光強度の増加のどちらを測定しても鋳型核酸を測定することが可能であった。よって、アクセプター蛍光色素の蛍光強度値/ドナー蛍光色素の蛍光強度値を求めることで、より高いS/N比を得ることができ、感度の良い鋳型核酸測定法であることがわかった。本結果より、均一溶液系核酸プローブを使用しないで、簡便且つ高感度に鋳型核酸を測定可能であることが示された。
【0138】
実施例3(本発明方法A(2))
FITC標識ヌクレオチドとCy5標識ヌクレオチドを用いたリアルタイム定量的PCR
1)鋳型の合成
鋳型はPseudomonas fluorescens DSM 50108(PF)16SリボゾーマルDNAの1400bpのDNA断片を使用した。該鋳型は以下のようにして調製した。プライマー2、3を使用し、PFゲノムを鋳型としてPCR反応を行った。該増幅断片はマイクロコンPCR(r)(ミリポア社、米国)で精製後、濃度を測定しコピー数に換算した。
【0139】
2)PCR反応条件
反応液は以下のように調製した。
・20mM Tris-HCl(pH8.8) ・10mM KCl ・10mM (NH4)2SO4 ・2.5 mM MgSO4
・0.1% Triton X-100 ・0.25mg/ml BSA ・20μM プライマー対
・最終濃度1×109〜1×105コピーの鋳型DNA
・0.2 U Vent(exo-)DNA Polymerase ・6μM dATP、dCTP、dGTP混合物
・2.5μM dTTP ・0.25μM Cy5 5-dUTP ・0.25μM FITC-5-dUTP
【0140】
反応溶液の最終容量20μl。上記反応液を均一に混合し、95℃、30秒間熱変性させた後、変性反応95℃、10秒、アニーリング反応56℃、10秒、伸長反応72℃、70秒を1サイクルとして40サイクル行った。蛍光の検出にはライトサイクラーTMシステム用いた。検出にはF1及びF3を用い、励起強度は75%に固定した。
【0141】
前記に示した条件でPCRを行い、各サイクルの蛍光強度を実測した。その結果を図23、24に示す。即ち、各コピー数の鋳型リボゾーマルDNAについて、各サイクルのアニーリング反応時の蛍光強度を測定し、印字したものである。6サイクル目あたりからF1の蛍光強度が減少し、F3の蛍光強度が増加しているのが観察される。更にF1(ドナー蛍光色素)の蛍光強度の減少、F3(アクセプター蛍光色素)の蛍光強度の増加はコピー数が多い順に起こることがわかる。ここで、鋳型DNAが添加されていない0コピーのブランクでも、サイクル数を重ねるごとにF1蛍光強度が減少している様子が観察される。そこで、この点について蛍光強度値を補正した。即ち、各サイクルのF1蛍光強度値を同じサイクル数でのブランク蛍光強度値で割った。
Fn=fn(56℃)/f’n(56℃)
但し、Fn=各サイクルにおける蛍光強度値の補正値、fn(56℃)=各サイクルにおけるサンプルの56℃の蛍光強度値、f’n(56℃)=各サイクルにおけるブランクの56℃における蛍光強度値
【0142】
又、鋳型リボゾーマルDNAの各コピー数について、初期のサイクル数の蛍光強度値が2様ではないことがわかる。そこで、この点についても蛍光強度値を補正した。即ち、5サイクル目の蛍光強度値を1として各サイクルの蛍光強度値を換算した。
Cn=Fn(56℃)/F5(56℃)
但し、Cn=各サイクルにおける蛍光強度値の換算値、Fn(56℃)=各サイクルの56℃の蛍光強度値、F5(56℃)=5サイクル目の56℃における蛍光強度値。
以上2点の補正方法は、アニーリング反応後(ここでは56℃)、若しくは伸長反応後(72℃)のどちらの蛍光強度値を用いても構わない。
【0143】
この方法で処理すると、5サイクル目の蛍光強度値を1として各サイクルの蛍光強度を換算し、その換算値を対応するサイクル数に対してプロットした図となる。前記の過程で処理したデータを図25、図26に示す。スレッシュホールド値を設定し、その値に達したサイクル数をX軸に、鋳型リボゾーマルDNAの反応開始前のコピー数をY軸にプロットし、検量線を描かせた。実際にはY軸がF1蛍光強度の時のスレッシュホールド値を0.85、Y軸がF3蛍光強度の時のスレッシュホールド値を1.5とした。これらの過程で処理して求めた相関係数(R2)は各々0.9965(図27)、0.9931(図28)であった。
【0144】
2種類の蛍光標識ヌクレオチドを含んだdNTPを基質としてPCRを行うと、DNAポリメラーゼの作用により産物に2種類の蛍光標識ヌクレオチドが標識される。このことを利用し、1分子中に標識された2種類の蛍光標識ヌクレオチド同士のエネルギー移動現象を利用したリアルタイム定量的PCRを行った。初期とプラトー期の蛍光強度値を比較すると、ドナーの蛍光強度値(ここではF1)は約50%減少、アクセプターの蛍光強度(ここではF3)は約3倍に増加した。この蛍光強度値を用い、更にPCRのサイクル数を重ねることで起こる蛍光色素の減退と初期の蛍光強度値のずれを補正することで、正確な鋳型核酸の定量が可能であった。この手法では、ドナー及びアクセプターのどちらの蛍光強度値の変化を測定しても定量可能であった。更にF3をF1で割ることで、SN比を高くすることも可能である。
【0145】
実施例4
2本鎖核酸特異的蛍光色素とCy5標識ヌクレオチドを用いたリアルタイム定量的PCR
鋳型とプライマーは実施例5と同様のものを使用した。以下に反応液組成を示す。
・20mM Tris-HCl(pH 8.8) ・10mM KCl ・10mM (NH4)2SO4 ・2.5mM MgSO4
・0.1% Triton X-100 ・0.25mg/ml BSA ・20μM プライマー対
・最終濃度1×109〜1×105コピーの鋳型DNA
・0.2 U Vent(exo-)DNA Polymerase ・4μM dATP、dCTP、dGTP混合物
・1μM dTTP ・1μM Cy5-5-dUTP ・1×SYBR(r)Green I
【0146】
反応溶液の最終容量20μl。上記反応液を均一に混合し、95℃、30秒間熱変性させた後、95℃、10秒、56℃、10秒、72℃、70秒を1サイクルとして40サイクル行った。蛍光の検出にはライトサイクラーTMシステムを用いた。検出にはF3を用い、励起強度は75%に固定した。結果を図29に示す。実施例5と同様の方法で蛍光強度値を補正した。スレッシュホールド値を2でとった場合の相関係数(R2)は0.9984であった(図30)。
【0147】
1種類の蛍光標識ヌクレオチドを含むdNTPを基質としてPCRを行うと、DNAポリメラーゼの作用により産物に1種類の蛍光標識ヌクレオチドが標識される。この時、ある種の鋳型核酸に結合する蛍光色素を混ぜておき、この蛍光色素と分子中の蛍光標識ヌクレオチドとの間のエネルギー移動現象を利用してリアルタイム定量的PCRを行った。初期とプラトー期の蛍光強度値を比較すると、アクセプターの蛍光強度(ここではF3)は約4倍に増加した。この蛍光強度値と、更にPCRのサイクル数を重ねることで起こる蛍光色素の蛍光強度の減退と初期の蛍光強度値のずれを補正することで、鋳型核酸の測定(定量)が可能であった。
【0148】
実施例5
標識ヌクレオチドを用いた1塩基伸長反応によるSNPの測定
1)鋳型DNAとプライマーの合成
本実施例に鋳型として使用した26塩基の1本鎖DNA(鋳型10、11)DNA合成機ABI394で調製した。鋳型10と11は5’末端から数えて4塩基目がそれぞれT、Cであり、その他の配列は同じである。このように、鋳型10と11は特定の部位がT若しくはCであるSNP(single nucleotide polymorphism;1塩基多型、以下SNPと略す)を含んだDNA断片と考えることができる。これらの鋳型は3’側にプライマー1と相補的な配列を持ち、該プライマーとハイブリダイズした際、プライマーの3’末端塩基が鋳型のSNP部位の塩基に隣接するように設計してある。尚、蛍光標識ヌクレオチドはTexas Red(r)-5-ddATP(PerkinElmer 米国)、Cy5TM-5-ddGTP(Amersham Biosciences)を用いた。又、核酸重合系にSYBR(r)Green 1を添加した。
【0149】
2)1塩基伸長反応
反応液を以下のように調製した。
・20mM Tris-HCl(pH 8.8) ・10mM KCl ・10mM (NH4)2SO4 ・2.5mM MgSO4
・0.1% Triton X-100 ・0.25mg/ml BSA ・200nM Texas Red(r)-5-ddATP
・200nM Cyanine5TM-5-ddGTP ・1×SYBR(r)Green I ・20nM プライマー
・200nM 合成1本鎖鋳型DNA ・0.1 U Vent(exo-)DNA Polymerase
【0150】
反応溶液の最終容量20μl。上記反応液を均一に混合し、95℃、15秒間熱変性させた後、65℃で10分間保温した。蛍光の検出には蛍光測定機器パーキンエルマーLS−50Bを用いた。励起波長480nm、蛍光波長610nm、670nmで測定し、スリット幅を10nmにセットした。
【0151】
3)実施した実験系の内容
・モデル1:プライマー1と鋳型10の組み合わせでVent(exo-)DNA Polymeraseを添加しない(ブランクコントロール)
・モデル2:プライマー1と鋳型10の組み合わせ(鋳型10のホモ)でVent(exo-)DNA Polymeraseを添加する。
・モデル3:プライマー1と鋳型11の組み合わせ(鋳型11のホモ)でVent(exo-)DNA Polymeraseを添加する。
・モデル4:プライマー1、鋳型10、11を100nMずつ等量加えた組み合わせ(鋳型10と11のヘテロ)Vent(exo-)DNA Polymeraseを添加する。
【0152】
その結果、モデル1の610nmにおける蛍光強度値は0.60、670nmでの蛍光強度値は0.10であった。モデル2の610nmにおける蛍光強度値は2、40、670nmでの蛍光強度値は0.10であった。モデル3における610nmの蛍光強度値は0.59、670nmでの蛍光強度値は0.31であった。モデル4の610nmの蛍光強度値は2.01、670nmでの蛍光強度値は0.21であった。
【0153】
鋳型10のホモを想定したモデル2は、ブランクと比較して610nmの蛍光強度値が約4倍高くなっている。これは鋳型10のSNP部位に相補的なTexas Red(r)標識ヌクレオチドが取り込まれた結果、SYBR(r)Green Iとエネルギー移動を起こしTexas Red(r)の610nmの蛍光強度値が増加したと考えられる。SNP部位に相補的でないCy5TM標識ヌクレオチドは取り込まれない為670nmの蛍光強度に変化はなかった。鋳型11のホモを想定したモデル3はブランクと比較して670nmの蛍光強度値が約3倍高い。これは鋳型11のSNP部位に相補的なCy5TM標識ヌクレオチドを取り込んだ結果、SYBR(r)Green Iとエネルギー移動を起こしCy5TMの670nmの蛍光が増加したと考えられる。SNP部位に相補的でないTexas Red(r)標識ヌクレオチドは取り込まれず610nmの蛍光強度は変化しなかった。鋳型10と鋳型11が等量入ったヘテロの系のモデル4では、610nm、670nmどちらの蛍光も約2倍増加した。これはTexas Red(r)標識ヌクレオチド、Cy5TM標識ヌクレオチドの両者が取り込まれた結果である。このように、SNPの測定のような、1分子につき2つの蛍光標識ヌクレオチドを取り込んだ場合にも、蛍光強度の変化が測定可能であった。更に、二種類の蛍光標識ヌクレオチドを用いて、1つのチューブ内で二種類の鋳型核酸の測定が可能であった。
【0154】
実施例6
一塩基伸長反応によるp53遺伝子コドン282の一塩基多型検出
(1)鋳型DNAとプライマーの合成
本実施例に鋳型として使用したDNAは、PCR反応にてプライマー14、15を用いて調製した。
【0155】
(PCR反応条件)
反応液は以下のように調製した。
・20mM Tris-HCl(pH8.0) ・10mM KCl ・10mM (NH4)2SO4 ・2.5mM MgCl2
・0.1% Triton X100 ・200nM プライマー対 ・50ng ヒトゲノムDNA
・1U AmpliTaqGold(Applied Biosystems) ・200μM dNTPs
【0156】
反応溶液の最終容量25μl。上記反応液を均一に混合し、95℃、10分間熱変性させた後、変性反応95℃、30秒、アニーリング反応60℃、30秒、伸長反応72℃、30秒を1サイクルとして40サイクル行った。
【0157】
(2)PCR産物の精製
調製したPCR産物には大過剰のPCRプライマーとdNTPが含まれるため、キアゲンPCR産物精製キット(Qiagen)による精製、若しくは、シュリンプ由来アルカリフォスファターゼ(usb)とエキソヌクレアーゼI(usb)をそれぞれ4U、20Uずつ添加し、37℃、90分温置後、85℃15分間加熱して酵素を不活性化した溶液を鋳型とした。
【0158】
(3)一塩基伸長反応
ジェノタイピングプライマーとして、プライマー16に示したオリゴヌクレオチドを使用した。PCR反応で調製した鋳型とハイブリダイズした際、その3’末端塩基がSNP部位に隣接するように設計してある。
反応液は以下のように調製した。
・1U Thermo Sequenase I DNA Polymerase(Amersham-Pharmacia Biotech)
・10×Thermo Sequenase I DNA Polymeraseバッファー
・200nM Texas Red-5-ddATP ・200nM Cy5-5-ddGTP
・1×SYBR Green I ・200nM プライマー
・鋳型DNA
【0159】
反応溶液の最終容量20μl。上記反応液を均一に混合し、95℃、30秒間熱変性させた後、50℃で1分間保温した。これを1サイクルとして、40サイクル行った。蛍光の検出には蛍光測定機器LS−50B(Perkin Elmer)を用いた。励起波長480nm、蛍光波長610nm、670nmで測定し、スリット幅を10nmにセットした。
【0160】
その結果、Cアレルホモ接合体の610nmにおける蛍光強度値は0.60、670nmでの蛍光強度値は2.10であった。Tアレルホモ接合体の610nmにおける蛍光強度値は2.40、670nmでの蛍光強度値は0.58であった。ヘテロ接合体における610nmの蛍光強度値は1.60、670nmでの蛍光強度値は1.23であった。鋳型DNAを添加していないブランク試験の610nmの蛍光強度値は0.61、670nmでの蛍光強度値は0.60であった。尚、用いたサンプルは別の方法(制限断片長多型法)でジェノタイプを判定済みのものを使用した。
【0161】
Cアレルホモ接合体は、ブランクと比較して670nmの蛍光強度値が約5倍高くなっている。これは、CY5標識ヌクレオチドが取り込まれた結果、SYBR Green Iとエネルギー移動を起こしCY5の670nmの蛍光強度値が増加したためと考えられる。SNP部位に相補的でないTexas Red標識ヌクレオチドは取り込まれない為610nmの蛍光強度に変化はなかった。Tアレルホモ接合体を鋳型とした場合は、ブランクと比較して610nmの蛍光強度値が約4倍高い。これは、SNP部位に相補的なTexas Red標識ヌクレオチドを取り込んだ結果、SYBR Green Iとエネルギー移動を起こしTexas Redの610nmの蛍光が増加したためと考えられる。SNP部位に相補的でないCY5標識ヌクレオチドは取り込まれず670nmの蛍光強度は変化しなかった。ヘテロ接合体では、610nm、670nmどちらの蛍光も約2倍増加した。これはTexas Red標識ヌクレオチド、Cy5標識ヌクレオチドの両者が取り込まれた結果である。このように、PCR産物を鋳型とした場合にも、本発明の方法を用いて、ワンチューブ内での2種類の核酸の検出が可能であった。
【0162】
実施例7
アレル特異的プライマーを用いた配列特異的伸長法によるアルデヒドデヒドロゲナーゼ2(ALDH2)遺伝子の一塩基多型検出
ALDH2は、12番染色体長腕に存在するアルコール代謝関連遺伝子の1つである。日本人に頻繁にみられる変異型アレル(ALDH2*2)は、ALDH2 exon 12中487番目のアミノ酸Glu(グルタミン酸)をコードするGAAが、Lys(リジン)をコードするAAAに変異した点突然変異である。
【0163】
(1)鋳型の合成
本実施例に使用する鋳型DNAは、PCR反応にてヒトゲノムDNAよりプライマー4、5を用いて調製した。反応溶液の組成は以下のとおりである。
・20mM Tris-HCl(pH8.0) ・10mM KCl ・10mM (NH4)2SO4 ・2.5mM MgCl2
・0.1% Triton X100 ・200nM プライマー対 ・50ng ヒトゲノムDNA
・1U AmpliTaqGold ・200μM dNTPs 混合物
【0164】
反応溶液の最終容量25μl。上記反応液を均一に混合し、95℃、10分間熱変性させた後、変性反応95℃、30秒、アニーリング反応60℃、30秒、伸長反応72℃、30秒を1サイクルとして40サイクル行った。
(2)PCR産物の精製
調製したPCR産物を、PCR精製キット(Qiagen)、若しくは酵素処理(シュリンプ由来アルカリフォスファターゼとエキソヌクレアーゼIをそれぞれ4U、20Uずつ添加し、37℃、90分温置後、85℃、15分間加熱して酵素を不活性化)した溶液を鋳型として一塩基多型解析に用いた。
【0165】
(3)配列特異的伸長反応
3’末端がそれぞれのSNPに相補的なアレル特異的プライマーを合成した。プライマー6は3’末端がC、プライマー7はTであり、その他は鋳型と相補的な同じ配列を有している。配列特異的伸長反応による一塩基多型解析は、プライマーの3’末端にミスマッチが存在すると、DNAポリメラーゼによる伸長反応が阻害されるという原理に基づいている。従って3’末端が相補的な場合、伸長反応により取り込まれた2種類の蛍光色素標識ヌクレオチドによりFRETが起き、蛍光強度が変化する。相補的でない場合、蛍光標識ヌクレオチドは取り込まれないため蛍光強度は変化しない。
【0166】
反応液を以下のように調製した。
・20mM Tris-HCl(pH8.8) ・10mM KCl ・10mM (NH4)2SO4 ・2.5mM MgSO4
・2μM dATP ・2μM dGTP ・2μM dTTP ・1.2μM dCTP ・400nM Cy5-5-dCTP
・400nM FITC-5-dCTP ・200nM プライマー ・精製PCR産物
・0.1U Vent(exo-)DNA Polymerase
【0167】
反応溶液の最終容量20μl。上記反応液を均一に混合し、95℃、15秒間熱変性させた後、アニーリング、60℃で1分間し、伸長反応、72℃で20秒間を1サイクルとし、20サイクル反応させた。蛍光の検出にはライトサイクラーTMシステムを用いた。その際、該システムにあるF1(530nm)をFITCの検出に、F3(710nm)をCY 5の検出に用いた。又、励起強度は75%に固定した。
【0168】
3種類の遺伝子型(Cアレルホモ接合体、Tアレルホモ接合体、ヘテロ接合体)におけるプライマー6を使用した際のFITC及びCY5の蛍光強度変化をそれぞれ図31、図32に示した。プライマー7を使用した際のFITC及びCY5の蛍光強度変化をそれぞれ図33、図34に示した。Cアレルホモ接合体では、3’末端がCであるプライマー6を添加した場合のみ、蛍光強度が変化した。即ち、ドナーであるFITCの蛍光強度が減少し、アクセプターのCY5の蛍光強度が増加した。3’末端がTであるプライマー7を添加した場合は、蛍光強度の変化はみられなかった。これは、3’末端が鋳型と相補的なプライマー6を添加した場合にのみ、伸長反応が起こったためと考えられる。Tアレルホモ接合体では、3’末端がTであるプライマー7を添加した場合のみFITCの蛍光強度が減少し、アクセプターであるCY5の蛍光強度が増加した。ヘテロ接合体では、プライマー6及び7のどちらを添加した場合にも蛍光強度の変化がみられた。尚、用いたサンプルは別の方法(制限断片長多型)でジェノタイプを判定済みのものを使用した。従って、本発明の方法と配列特異的伸長法を組み合わせて、一塩基多型解析が可能であることが示された。
【0169】
実施例8
ICAN法(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids)で調製した鋳型を用いた配列特異的伸長法によるALDH2遺伝子の一塩基多型の検出
本実施例に使用する鋳型DNAは、RNA−DNAキメラプライマー、鎖置換活性と鋳型交換活性を有するDNAポリメラーゼ、RNaseHを用いる等温の遺伝子増幅方法で調製した。その際使用したプライマーは、プライマー4及び5と同じ塩基配列を有し、その3’末端3塩基がリボヌクレオチドに置き換わっている。
【0170】
(1)鋳型DNAの合成
(ICAN反応条件)
・35mM Tris-HCl(pH7.8) ・10mM MgSO4 ・5% DMSO ・1μM プライマー対
・200ng ヒトゲノムDNA ・2.2U BcaBEST DNA polymerase(宝酒造)
・15U RNase H(宝酒造) ・1mM dNTPs
【0171】
反応溶液の最終容量20μl。上記反応液を均一に混合し、55℃、60分反応させた後、90℃、5分間加熱し、酵素を失活させた。
(2)ICAN増幅産物の酵素処理
シュリンプ由来アルカリフォスファターゼとエキソヌクレアーゼIをそれぞれ4U、20Uずつ添加し、37℃、90分温置、続いて85℃、15分間加熱して酵素を不活性化した。
【0172】
(3)配列特異的伸長反応
反応液を以下のように調製した。
・20mM Tris-HCl(pH8.8) ・10mM KCl ・10mM (NH4)2SO4 ・2.5mM MgSO4 ・2μM dATP
・2μM dGTP ・2μM dTTP ・1.2μM dCTP ・400nM Cy5-5-dCTP ・400nM FITC-5-dCTP
・100nM プライマー6、7 ・ICAN増幅産物 ・0.1U Vent(exo-)DNA Polymerase
【0173】
反応溶液の最終容量20μl。上記反応液を均一に混合し、95℃、15秒間熱変性させた後、アニーリング反応、60℃で1分間し、伸長反応、72℃で20秒間を1サイクルとし、20サイクル反応させた。蛍光の検出にはライトサイクラーTMシステムを用いた。その際、該システムにあるF1(530nm)をFITCの検出に、F3(710nm)をCY5の検出に用いた。又、励起強度は75%に固定した。
【0174】
その結果、Cアレルホモ接合体では、3’末端がCであるプライマー6を添加した場合のみ、蛍光強度が変化した。即ち、FRET現象のドナーであるFITCの蛍光強度が減少し、アクセプターであるCY5の蛍光強度が増加した。それに対し、3’末端がTであるプライマー7を添加した場合、変化はみられなかった。Tアレルホモ接合体では、3’末端がTであるプライマー7を添加した場合のみ蛍光強度が変化した。ヘテロ接合体では、プライマー6及び7のどちらを添加した場合にも蛍光の変化がみられた。従って、ICAN増幅産物を鋳型とした場合にも、一塩基多型検出が可能であることが確認された。
【0175】
実施例9
LAMP(Loop-mediated Isothermal Amplification)法で調製した鋳型を用いた、配列特異的伸長法によるProstate-specific antigenの一塩基多型検出
本実施例で使用する鋳型DNAは、4つのプライマーを使用し、さらに酵素として鎖置換型DNAポリメラーゼを使用する等温遺伝子増幅法で調製した。
【0176】
(1)鋳型DNAの合成
LAMP反応条件
・10×Thermopol Buffer(NEB) ・2mM MgSO4 ・200ng ヒトゲノムDNA
・8U Bst DNA polymerase(NEB) ・4M Betaine(Sigma) ・10mM dNTPs
・40pmol プライマー8 ・40pmol プライマー9 ・5pmol プライマー10
・5pmol プライマー11
【0177】
反応溶液の最終容量25μl。上記反応液を均一に混合し、65℃、60分反応させた後、80℃、10分間加熱し、酵素を失活させた。
(2)LAMP増幅産物の酵素処理
シュリンプ由来アルカリフォスファターゼとエキソヌクレアーゼIをそれぞれ4U、20Uずつ添加し、37℃、90分温置、続いて85℃、15分間加熱して酵素を不活性化した。
【0178】
(3)配列特異的伸長反応
反応液を以下のように調製した。
・20mM Tris-HCl(pH8.8) ・10mM KCl ・10mM (NH4)2SO4 ・2.5mM MgSO4
・400nM CY5-5-dCTP ・400nM FITC-5-dCTP ・2μM dATP ・2μM dGTP
・2μM dTTP ・1.2μM dCTP ・100nM プライマー12及びプライマー13
・LAMP増幅産物 ・0.1U Vent(exo-)DNA Polymerase
【0179】
反応溶液の最終容量20μl。上記反応液を均一に混合し、95℃、15秒間熱変性させた後、アニーリング反応、60℃で1分間し、伸長反応、72℃で20秒間を1サイクルとし、20サイクル反応させた。蛍光の検出にはライトサイクラーTMシステムを用いた。その際、該システムにあるF1(530nm)をFITCの検出に、F3(710nm)をCY 5の検出に用いた。又、励起強度は75%に固定した。
【0180】
その結果、Cアレルホモ接合体では、3’末端がCであるプライマー12を添加した場合のみ、蛍光強度が変化した。即ち、FITCの蛍光強度が減少し、CY5の蛍光強度が増加した。Tアレルホモ接合体では、3’末端がTであるプライマー13を添加した場合のみ蛍光強度が変化した。ヘテロ接合体では、プライマー12及び13のどちらを添加した場合にも蛍光の変化がみられた。従って、LAMP法で増幅した産物を鋳型とした場合にも一塩基多型検出が可能であることが示された。
【0181】
実施例10
逆転写酵素を用いたアレル特異的伸長反応による1塩基多型解析
LCHAD(長鎖3−ヒドロキシアシル コエンザイムA デヒドロゲナーゼ)、OAT(有機アニオントランスポーター)の一塩基多型を、逆転写酵素を用いた配列特異的伸長法により解析した。
(1)鋳型RNAの合成
本実施例に鋳型として使用するRNAは以下のように調製した。
後記の配列番号17、18、21、22のプライマーを用いて2−プレックスPCRを行った。1組のプライマーの一方には5’RNAポリメラーゼプロモーター配列を付けた。マルチプレックスPCR反応条件は、Ampli Taq Gold 1U 200nM、プライマー対50ng、ヒトゲノムDNA、Ampli Taq Gold buffer 200μM、dNTPsを均一に混合し、最終容量25μlとした。95℃、10分間熱変性させた後、変性反応95℃、30秒、アニーリング反応65℃、30秒、伸長反応72℃、30秒を1サイクルとして40サイクル行った。続いて、T7 Ampliscribe Kit(Epicentre Technologies)を用いて転写反応を行った。
【0182】
(2)マイクロアレイの調製
マイクロアレイは、標準的なマイクロスコープガラススライドを用いた。イソチオシアネートで表面を活性化させた後、NH2−修飾オリゴヌクレオチド(配列番号19、20、23、24)を固定化した。オリゴヌクレオチドは20μMになるよう400mMの炭酸ナトリウムバッファー(pH9.0)で溶解した。直径2mmにスポットした後、気化したアンモニアにさらし蒸留水で三回洗浄した。
【0183】
(3)配列特異的伸長法
調製した鋳型RNAを、10mM Tris-HCl、(pH7.4)、1mM EDTA、0.2M NaCl、0.1% Triton X-100に溶解後、10μlをアレイに添加し37℃、20分間温置してアニーリングさせた。0.1M NaClで洗浄後、逆転写酵素MMLV(Epicentre Technologies)6U、dNTPs(dATP、dGTP、FITC-dUTP、CY5-dCTP)6μM、酵素付属バッファーを添加し、52℃で1時間反応させた。
【0184】
(4)シグナルの検出
マイクロスコープ ガラス スライドは、コンフォーカル スキャン アレイ4000(GSI Lumonics)を用いて励起波長480nm、蛍光波長650nmでスキャンした。バックグランドの蛍光強度値を引いた値をジェノタイプの判定に用いた。
【0185】
LCHADのCアレル特異的プライマーであるプライマー19が固定化されたスライドは、LCHADのCアレル接合体を含む鋳型をスポッティングした場合のみ、シグナル強度が約900と高い値を示した。Cアレル接合体を含まない鋳型をスポットした場合のシグナルはすべて100以下であった。LCHADのGアレル特異的プライマーであるプライマー20が固定化されたスライドでは、LCHADのGアレル接合体を含む鋳型をスポットした場合のみ高いシグナル強度(800付近)が得られた。それに対してGアレル接合体を含まない鋳型をスポットした場合のシグナルはすべて100以下であった。OATのCアレル特異的プライマーであるプライマー23が固定化されたスライドは、OATのCアレル接合体を含む鋳型をスポッティングした場合のみ、シグナル強度が約1200と高い値を示した。Cアレル接合体を含まない鋳型をスポットした場合のシグナルはすべて100以下であった。このように、本発明の核酸検出方法において、逆転写酵素を用いた一塩基多型解析が可能であることが示された。
【0186】
実施例11
フルオレセインクロロトリアジニル−4−dC(デオキシシチジン)ヌクレオチドモノマーを利用して、グアニンによる消光現象により核酸を検出する。
1)鋳型DNAとプライマー
プライマー1と、鋳型12を用いた。
・モデル1:プライマー1と鋳型12の組み合わせ
・モデル2:プライマー1と鋳型12の組み合わせでVent(exo-)DNA Polymeraseを添加しない。
【0187】
2)増幅反応条件
反応液を以下のように調製した。
・20mM Tris-HCl(pH8.8) ・10mM KCl ・10mM (NH4)2SO4 ・2.5mM MgSO4
・0.5% Triton X100 ・5% DMSO ・0.25mg/ml BSA
・200nM フルオレセインクロロトリアジニル-4-dC
・200nM dGTP ・200nM dATP ・200nM dUTP ・2nM プライマー
・50nM 合成一本鎖鋳型DNA ・0.1U Vent(exo-)DNA Polymerase
【0188】
反応溶液の最終容量20μl。上記反応液を均一に混合し、95℃で15秒熱変性させた後、65℃、15分間保温した。蛍光の検出にはライトサイクラーTMシステムを用いた。検出はF1を用い、励起強度は75%に固定した。
【0189】
その結果、モデル1ではF1の蛍光強度が最大で24%減少した。酵素非添加のモデル2の反応では蛍光変化はみられなかった。以上の結果より、DNAポリメラーゼにより合成中の鎖に取り込まれたdC-FITC標識ヌクレオチドが、相補鎖に存在するグアニンと相互作用した結果、蛍光が減少したと考えられる。
【0190】
[プライマーの配列]
プライマー4:GTGTAACCCATAACCCCCAAGA
プライマー5:CACCAGCAGACCCTCAAGC
プライマー6:CCCACACTCACAGTTTTCACTTC
プライマー7:CCCACACTCACAGTTTTCACTTT
プライマー8:TGTTCCTGATGCAGTGGGCAGCTTTAGTCTGCGGCGGTGTTCTG
プライマー9:TGCTGGGTCGGCACAGCCTGAAGCTGACCTGAAATACCTGGCCTG
プライマー10:TGCTTGTGGCCTCTCGTG
プライマー11:GGGTGTGGGAAGCTGTG
【0191】
プライマー12:TGATCTTGCTGGGTCGGCACAGC
プライマー13:TGATCTTGCTGGGTCGGCACAGT
プライマー14:ACCTGATTTCCTTACTGCCTCTTGC
プライマー15:GTCCTGCTTGCTTACCTCGCTTAGT
プライマー16:TGTGCCTGTCCTGGGAGAGAC
プライマー17:TTCTAATACGACTCACTATAGGGAGACCCTTGCCAGGTGATTGGC
プライマー18:GCGGTCCCAAAAGGGTCAGTGTTTCTGTGGTCACGAAGTC
【0192】
プライマー19:CTCTAATAGTGCTGGCTC
プライマー20:CTCTAATAGTGCTGGCTG
プライマー21:
TTCTAATACGACTCACTATAGGGAGACCTTTGTAGCTGGGA ACTTC
プライマー22:
GCGGTCCCAAAAGGGTCAGTACCAAAACCTGGTAAATACGG
プライマー23:GAGATAGCAGACAACGTCC
プライマー24:GAGATAGCAGACAACGTCG
鋳型12:
TTGTTTTGTTTTGTTTTGTTTTGTTTTGTTTTGTTTTGTTTTGTTTTGTTTTGTTTTGTTTTGTTTTGTTCGGGTCTACACTGTCGAGTCTG
【0193】
[図10]2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル1〜10のF1蛍光強度変化。
[図11]2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル1〜10のF3蛍光強度変化。
[図12]2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル11〜20のF1蛍光強度変化。
[図13]2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル11〜20のF2蛍光強度変化。
[図14]2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル21〜30のF1蛍光強度変化。
[図15]2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル21〜30のF2蛍光強度変化。
[図16]2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル31〜40のF1蛍光強度変化。
[図17]2種の蛍光標識ヌクレオチド間相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル1〜8のF1蛍光変化。
[図18]2種の蛍光標識ヌクレオチド間相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル1〜8のF3蛍光変化。
[図19]2種の蛍光標識ヌクレオチド間相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル9〜16のF1蛍光変化。
[図20]2種の蛍光標識ヌクレオチド間相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル9〜16のF2蛍光変化。
[図21]2種の蛍光標識ヌクレオチド間相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル17〜24のF1蛍光変化。
[図22]2種の蛍光標識ヌクレオチド間相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル17〜24のF2蛍光変化。
[図23]2種の蛍光標識ヌクレオチドを用いたPCR増幅産物のリアルタイムモニタリング(F1蛍光変化)。
[図24]2種の蛍光標識ヌクレオチドを用いたPCR増幅産物のリアルタイムモニタリング(F3蛍光変化)。
[図25]2種の蛍光標識ヌクレオチドを用いたPCR増幅産物のリアルタイムモニタリング(データ処理後のF1蛍光変化)。
[図26]2種の蛍光標識ヌクレオチドを用いたPCR増幅産物のリアルタイムモニタリング(データ処理後のF3蛍光変化)。
[図29]2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドを用いたPCR増幅産物のリアルタイムモニタリング(データ処理後のF3蛍光変化)。
【産業上の利用可能性】
【0194】
標識ヌクレオチドを核酸重合体に取り込ませる核酸重合反応を行う際に、核酸重合系の蛍光強度変化をモニタリングすることで、ハイブリダイズすることにより蛍光強度の変化する均一溶液系核酸プローブが不要な、簡便・迅速且つ低コストで高感度な核酸の測定方法が実現する。この方法により、自然界の2系内に存在する遺伝子等の全核酸が測定できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0195】
【図1】本発明方法Aの概要:蛍光色素間の相互作用を利用した核酸測定方法。
【図2】本発明方法Bの概要:核酸特異的蛍光色素・蛍光色素間の相互作用を利用した核酸測定方法。
【図3】本発明方法Cの概要:G塩基・蛍光色素間の相互作用を利用した核酸測定方法。
【図4】本発明方法Dの概要:クエンチャー物質・蛍光色素間の相互作用を利用した核酸測定方法。
【図5】本発明方法Eの概要:標識された特異的プライマーを用いた核酸測定方法(1)。
【図6】本発明方法Eの概要:標識された特異的プライマーを用いた核酸測定方法(2)。
【図7】本発明方法Fの概要:特異的プライマーに標識された蛍光色素とG塩基間の相互作用を利用した核酸測定方法。
【図8】本発明方法Gの概要:抗原又は抗体で標識されたヌクレオチドを用いる核酸測定方法。
【図9】本発明方法Hの概要:固体表面上に固定化された特異的プライマーを用いる核酸測定方法。
【図10】2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル1〜10のF1蛍光強度変化。
【図11】2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル1〜10のF3蛍光強度変化。
【図12】2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル11〜20のF1蛍光強度変化。
【図13】2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル11〜20のF2蛍光強度変化。
【図14】2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル21〜30のF1蛍光強度変化。
【図15】2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル21〜30のF2蛍光強度変化。
【図16】2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドとの間の相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル31〜40のF1蛍光強度変化。
【図17】2種の蛍光標識ヌクレオチド間相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル1〜8のF1蛍光変化。
【図18】2種の蛍光標識ヌクレオチド間相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル1〜8のF3蛍光変化。
【図19】2種の蛍光標識ヌクレオチド間相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル9〜16のF1蛍光変化。
【図20】2種の蛍光標識ヌクレオチド間相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル9〜16のF2蛍光変化。
【図21】2種の蛍光標識ヌクレオチド間相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル17〜24のF1蛍光変化。
【図22】2種の蛍光標識ヌクレオチド間相互作用(FRET現象)を利用した核酸測定:モデル17〜24のF2蛍光変化。
【図23】2種の蛍光標識ヌクレオチドを用いたPCR増幅産物のリアルタイムモニタリング(F1蛍光変化)。
【図24】2種の蛍光標識ヌクレオチドを用いたPCR増幅産物のリアルタイムモニタリング(F3蛍光変化)。
【図25】2種の蛍光標識ヌクレオチドを用いたPCR増幅産物のリアルタイムモニタリング(データ処理後のF1蛍光変化)。
【図26】2種の蛍光標識ヌクレオチドを用いたPCR増幅産物のリアルタイムモニタリング(データ処理後のF3蛍光変化)。
【図27】2種の蛍光標識ヌクレオチドを用いたリアルタイム定量的PCR法による検量線(検量線作成に使用したデータ:データ処理後のF1蛍光値)。
【図28】2種の蛍光標識ヌクレオチドを用いたリアルタイム定量的PCR法による検量線(検量線作成に使用したデータ:データ処理後のF3蛍光値)。
【図29】2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドを用いたPCR増幅産物のリアルタイムモニタリング(データ処理後のF3蛍光変化)。
【図30】2本鎖核酸特異的蛍光色素と蛍光標識ヌクレオチドを用いたリアルタイム定量的PCR法による検量線(データ処理後のF3蛍光変化)。
【図31】3種類の遺伝子型(Cアレルホモ接合体、Tアレルホモ接合体、ヘテロ接合体)におけるプライマー6を使用した際のFITCの蛍光強度変化を示す図。
【図32】3種類の遺伝子型(Cアレルホモ接合体、Tアレルホモ接合体、ヘテロ接合体)におけるプライマー6を使用した際のCY5の蛍光強度変化を示す図。
【図33】プライマー7を使用した際のFITCの蛍光強度変化を示す図。
【図34】プライマー7を使用した際のCY5の蛍光強度変化を示す図。
【符号の説明】
【0196】
N:ヌクレオチドモノマー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも1種の鋳型としての核酸と、(C)少なくとも1種の核酸合成酵素と、(G)非標識ヌクレオチド及び蛍光標識核酸プライマーとを含有してなる核酸重合反応系で核酸重合反応を行い、核酸重合系の光学的キャラクターの変化若しくは変化量から鋳型核酸若しくはそれを鋳型として合成された核酸を測定することを特徴とする核酸の測定方法。
【請求項2】
非標識ヌクレオチドがグアニン(g)塩基を含む請求項1に記載の核酸の測定方法。
【請求項3】
非標識ヌクレオチド及び/又は標識ヌクレオチドが、3リン酸体である請求項1に記載の核酸の測定方法。
【請求項4】
鋳型核酸と、少なくとも1種の蛍光色素及び/又は少なくとも1種クエンチャー物質で標識された、少なくとも1種のジデオキシヌクレオチドモノマーと、核酸合成酵素とを含有する核酸重合系で核酸重合反応を行い、蛍光強度の変化若しくは変化量から鋳型核酸若しくはそれを鋳型とする核酸重合体を測定することを特徴とする核酸の測定方法。
【請求項5】
核酸重合系が、標識ヌクレオチド又は非標識ヌクレオチド或は両者を含む系である請求項4に記載の核酸の測定方法。
【請求項6】
核酸重合系が、非標識核酸プライマーを含む請求項4に記載の核酸の測定方法。
【請求項7】
核酸重合系が、(F)核酸に結合することで蛍光を発する蛍光色素を含有している請求項1又は4に記載の核酸の測定方法。
【請求項8】
鋳型核酸と、非標識ジデオキシヌクレオチドモノマーと、標識ヌクレオチドと、非標識核酸プライマーと、核酸に結合することで蛍光を発する少なくとも1種の蛍光色素と、核酸合成酵素とを含有する核酸重合系で核酸重合反応を行い、蛍光強度の変化若しくは変化量から鋳型核酸若しくはそれを鋳型とする核酸重合体を測定することを特徴とする核酸の測定方法。
【請求項9】
非標識ジデオキシヌクレオチド、標識ジデオキシヌクレオチド、非標識ヌクレオチド及び/又は標識ヌクレオチドが、3リン酸体である請求項4又は8に記載の核酸の測定方法。
【請求項10】
核酸合成酵素が、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、及びそれらの改変体からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1、4又は8に記載の核酸の測定方法。
【請求項1】
(A)少なくとも1種の鋳型としての核酸と、(C)少なくとも1種の核酸合成酵素と、(G)非標識ヌクレオチド及び蛍光標識核酸プライマーとを含有してなる核酸重合反応系で核酸重合反応を行い、核酸重合系の光学的キャラクターの変化若しくは変化量から鋳型核酸若しくはそれを鋳型として合成された核酸を測定することを特徴とする核酸の測定方法。
【請求項2】
非標識ヌクレオチドがグアニン(g)塩基を含む請求項1に記載の核酸の測定方法。
【請求項3】
非標識ヌクレオチド及び/又は標識ヌクレオチドが、3リン酸体である請求項1に記載の核酸の測定方法。
【請求項4】
鋳型核酸と、少なくとも1種の蛍光色素及び/又は少なくとも1種クエンチャー物質で標識された、少なくとも1種のジデオキシヌクレオチドモノマーと、核酸合成酵素とを含有する核酸重合系で核酸重合反応を行い、蛍光強度の変化若しくは変化量から鋳型核酸若しくはそれを鋳型とする核酸重合体を測定することを特徴とする核酸の測定方法。
【請求項5】
核酸重合系が、標識ヌクレオチド又は非標識ヌクレオチド或は両者を含む系である請求項4に記載の核酸の測定方法。
【請求項6】
核酸重合系が、非標識核酸プライマーを含む請求項4に記載の核酸の測定方法。
【請求項7】
核酸重合系が、(F)核酸に結合することで蛍光を発する蛍光色素を含有している請求項1又は4に記載の核酸の測定方法。
【請求項8】
鋳型核酸と、非標識ジデオキシヌクレオチドモノマーと、標識ヌクレオチドと、非標識核酸プライマーと、核酸に結合することで蛍光を発する少なくとも1種の蛍光色素と、核酸合成酵素とを含有する核酸重合系で核酸重合反応を行い、蛍光強度の変化若しくは変化量から鋳型核酸若しくはそれを鋳型とする核酸重合体を測定することを特徴とする核酸の測定方法。
【請求項9】
非標識ジデオキシヌクレオチド、標識ジデオキシヌクレオチド、非標識ヌクレオチド及び/又は標識ヌクレオチドが、3リン酸体である請求項4又は8に記載の核酸の測定方法。
【請求項10】
核酸合成酵素が、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、及びそれらの改変体からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1、4又は8に記載の核酸の測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図2】
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【図4】
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【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
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【図31】
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【図33】
【図34】
【公開番号】特開2008−264005(P2008−264005A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201164(P2008−201164)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【分割の表示】特願2003−155498(P2003−155498)の分割
【原出願日】平成15年5月30日(2003.5.30)
【出願人】(000156581)日鉄環境エンジニアリング株式会社 (67)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【分割の表示】特願2003−155498(P2003−155498)の分割
【原出願日】平成15年5月30日(2003.5.30)
【出願人】(000156581)日鉄環境エンジニアリング株式会社 (67)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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