説明

標識独立検出バイオセンサ組成およびその方法

【課題】標識独立検出のためのバイオセンサであって、高効率共鳴グレーティングバイオセンサ、のための界面化学、そして調整法及び使用法を提供する。
【解決手段】基質と、基質表面に付着した結合層と、ここに定義されるように、例えば共重合によって結合層に付着されたナノメートルスケール架橋アクリロイルコポリマー層とを含んでいるバイオセンサ物品。バイオセンサ物品または細胞培養物品をするための方法および標的誘導体化されたバイオセンサ物品を有するリガンドのアッセイを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連した同時係属出願に対する相互参照
2008年11月26日に出願された、標識独立検出バイオセンサ組成およびそれの方法と称するヨーロッパ特許出願番号8305845.3の利点を本出願では請求する。本願明細書に言及される刊行物、特許および特許文献の全ての開示を引用し、本願明細書に含まれたものとする。
【背景技術】
【0002】
本開示は、一般に標識独立検出(LID)のためのバイオセンサに関し、特に、高効率共鳴グレーティングバイオセンサ、例えばEpic(登録商標)バイオセンサのための界面化学、そして、調整方法および使用方法に関する。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、標識独立検出(LID)のための表面処理されたバイオセンサ物品並びにそれらのための調製方法および使用方法を提供する。バイオセンサは共鳴グレーティングのような検出応用において高い固定化および結合効率なとの特性を有する。本開示はまた、高濃度で生物実体(例えば、受容体タンパク質などのような細胞標的)を固定できかつ、検体(例えばリガンド)の検出に関して、以前に報告されたものより優れた感度を提供できるセンサを提供するシステムおよび方法に関する。本開示のLIDバイオセンサは、生物分子事象の検出または認識に対し高感度を有する。本開示の処理されたバイオセンサ表面は、増加するリガンド結合を呈することができ、より少ないタンパク質の消費ができ、周知の処理されたバイオセンサ表面と比較してより大きい感度を提供できる。本開示の処理されたバイオセンサ表面は、細胞培養にも適している。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】図1は、本開示の実施例においてポリマーをLIDバイオセンサ表面上のインサイチュ形成するために実行されるステップの図解の概略図である。
【図2】図2は本開示の実施例において本開示のおよび比較の界面化学を有するバイオセンサ上のEpic(登録商標)機器によって測定された炭酸脱水酵素II(CAII)固定化応答のグラフを示す。
【図3】図3は本開示の実施例において本開示のおよび比較の界面化学を有するバイオセンサ上のEpic(登録商標)機器によって測定された炭酸脱水酵素II(CAII)固定化応答のグラフを示す。
【図4】図4は、本開示の実施例において本開示のおよび比較の界面化学のための濃度の関数としての炭酸脱水酵素(II)有効性(%)のグラフを示す。
【図5】図5は、本開示の実施例において本開示のおよび比較の界面化学を有するバイオセンサ上のEpic(登録商標)機器によって測定されたフロセミド結合応答のグラフを示す。
【図6】図6は、本開示の実施例においてフロセミド結合応答上の開示された表面のためのアクリル酸/アクリルアミド比の影響のグラフを示す。
【図7】図7は、本開示の実施例において本開示のおよび比較の界面化学のためのEpic(登録商標)機器によって測定されたストレプトアビジン(SA)固定化応答のグラフを示す。
【図8】図8は本開示の実施例において本開示のおよび比較の界面化学のためのEpic(登録商標)機器によって測ったビオチン結合応答および有効性のグラフを示す。
【図9】図9は本開示の実施例において本開示のおよび比較の界面化学のためのEpic(登録商標)機器によって測ったビオチン結合応答および有効性のグラフを示す。
【図10】図10は、本開示の実施例においてEpic(登録商標)2D Mapソフトウェアを使用している比較表面を有する384−ウエルプレートのCAII固定化の不均一性を図示する写真である。
【図11】図11は、本開示の実施例においてEpic(登録商標)2D Mapソフトウェアを使用している開示された表面を有する384−ウエルプレートのCAII固定化の均一性を図示する写真である。
【図12】図12は、本開示の実施例において図示する表面重合するポリマー構造の概略図である。
【図13】図13は、本開示の実施例において図示する活性ポリマー構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
図面を参照して本開示の様々な実施例について詳細に説明する。様々な実施例に対する基準は本発明の範囲を制限せずに、本発明の範囲は本願明細書に添付の請求項の範囲だけによって、制限される。その上、本明細書に記載されるいかなる例も制限されず、単に特許請求の範囲に記載された発明のためのいくつかの多くの可能な実施例を記載するだけである。
【0006】
定義
「アッセイ」、「分析する」または同様の用語は、例えば、リガンド候補化合物またはウイルス粒子または病原体、表面または培養条件または実体のような外因性刺激による刺激時の生物学的のまたは細胞の光学的反応またはバイオインピーダンス(バイオインピーダンス)反応のタイプ、存在、非存在、量、範囲、速度、動態力学を確定するための分析をいう。この種の語は、また、刺激に対する反応または刺激に対する非生物学的もしくは非細胞応答を含むことができる。
【0007】
「付着する」、「付着」、「接着する」、「接着した」、「接着性の」「不動化した」または同様の用語は、例えば、本開示の表面修飾物質、適合化剤、細胞、リガンド候補化合物および同様の主体を、物理吸着、化学的結合および同様のプロセスまたはこれらの組み合せによって表面に固定化するまたは不動化することを一般的にいう。特に、「細胞付着」、「細胞吸着」または同様の用語は表面への細胞の結合または相互作用を言い、例えば、培養による、または、アンカー物質、適合化剤(例えばフィブロネクチン、コラーゲン、ラミン、ゼラチン、ポリリジン、その他)での相互作用による、または、実体によるものである。
【0008】
「付着細胞」は原核または真核細胞などの細胞または細胞株または細胞系を言い、これは基質の外部表面との特定の接触、または固定化され協働して存続するものである。かかるタイプの培養後の細胞は、洗浄および媒質交換プロセス、多くのセルベースアッセイに不可欠なプロセスに耐えまたは存続する。「弱い付着細胞」は、細胞培養の間、基質の表面と弱く相互作用するまたは関連するまたは接触する原核または真核細胞などの細胞または細胞株をいう。しかしながら、これらのタイプの細胞、例えばHEK細胞などは洗浄または媒質交換などの物理的に阻害する方法によって基質の表面から容易に分離される傾向がある。「懸濁細胞」は、培養の間、基質の表面に付着または接着せずに、好ましくは媒質中で培養された細胞または細胞株をいう。管理された条件下で原核か真核細胞のいずれかが成長されるプロセスをいう。「細胞培養」は、多細胞真核細胞、特に動物細胞から得られる細胞を培養することのみならず、複合組織および臓器を培養することもいう。
【0009】
「細胞」または同様の用語は、小さく通常顕微鏡的な半透膜によって外的に結合された原形質の質量であって、任意に1つ以上の核および様々な他の細胞小器官を含み、単独で、あるいは他の同様の質量と相互作用して生体の全ての基本的機能を実行でき、合成細胞構成、細胞モデル系および同様の人工細胞系を含む独立して機能しうる最小の生体構造単位を形成するものをいう。
【0010】
「細胞系」または同様の用語は、各々が他と相互に作用してそこで生物学的または生理学的または病態生理学な機能を実行する1つ以上のタイプの細胞の集合(または細胞の単一タイプの特異化した形態)をいう。かかる細胞系は、器官、組織、幹細胞、特異化された肝細胞などの系を含む。
【0011】
「治療候補化合物」、「治療候補」、「予防候補」、「予防薬剤」、「リガンド候補」または同様の用語は、バイオセンサに付着した細胞と相互作用する可能性について興味深い、天然のまたは合成された分子または物質をいう。治療または予防候補物質は、例えば、化合物、生体分子、ペプチド、タンパク質、生体試料、薬剤候補の小分子例えば約1,000ダルトン未満の分子量の分子、薬剤候補の生物学的分子、薬剤候補の小分子−生物学的分子複合物および同様の物質または分子実体またはそれらの組み合せを含んでもよく、それらは具体的には、タンパク質、DNA、RNA、イオン、脂質または同様の生細胞の構造または成分などの細胞標的または病原体標的の少なくとも1つと相互作用しまたは結合し得る。
【0012】
「バイオセンサ」または同様の用語は、一般に、生物学的なコンポーネントを物理化学的な検出部コンポーネントと結合する検体の検出のための装置をいう。当該バイオセンサは、通常3つの部分、すなわち、生物学的な成分または構成要素(例えば、細胞標的、組織、微生物、病原体、生細胞またはそれらの結合)と、検出部構成要素(例えば光学的、圧電、電気化学的、測熱法的、磁気などの物理化学的な態様で動作する)と、当該両要素と関連するトランスデューサと、から構成されている。実施例において、光学バイオセンサは、細胞標的、生細胞、病原体、またはそれらの結合における分子識別または分子刺激現象を数量化できるシグナルに変換する光学トランスデューサを有していてもよい。
【0013】
「含む」、「含」は、制限的ではなく含むことを意味し、すなわち、包括的であり、排他的でないことである。
【0014】
「約」は、本開示の実施例を記載する際に用いられ、例えば組成の成分の量、濃度、体積、プロセス温度、プロセス時間、収率、流量、圧力、同様の値および同様の範囲を修飾し、例えば、化合物、組成物、濃度物、使用配合物を作るのに用いられる通常の測定または取扱処理、これらの処理における偶然誤差や、これらの方法を実行する際に用いられる製造、ソースまたは出発物質または成分の純度の違い、および同様の事項などにおいて生じうる数量の変動をいう。用語「約」はまた、特定の初期濃度または混合物を有する組成または調合の経年変化による違い、および特定の初期濃度または混合物を有する組成または調合の混合または処理による違いを包含する。添付の特許請求の範囲は、「約」の修飾の有無にかかわらずこれらの量の等しい量を含むことを意図する。
【0015】
「任意の」、「任意に」または同様の用語は、その後記載されている結果または状況が起こることができないかまたは起こることができないことをいい、そして、記述が結果または状況が起こる事例およびそれが起こらない事例を含むことをいう。例えば、句「任意の成分」は、成分が有ることまたは無いことを意味し、そして、本開示が成分を含んでいる、またはいない、両方の実施例を含むことを意味する。
【0016】
実施例における「から本質的に成る」は、例えば、表面組成、表面組成を生成または用いる方法、調合、バイオセンサ表面上の組成、物、装置、または本開示の装置に対して云い、特許請求の範囲に列挙の要素またはステップ、また組成、物品、装置および本開示の製造または使用方法の基本的で新規な特性に実質的に影響を及ぼさない他の要素またはステップ、を含むことであり、例えば特定の反応物、特定の添加物または成分、特定の薬剤、特定の細胞または細胞株、特定の表面修飾物質または状態、特定の適合化剤、特定の細胞または細胞系、特定のリガンド候補物質、または同様の構造、物質または選択されるプロセス変数である。実質的に本開示の要素またはステップの基本的な特性に影響を及ぼしてもよいか、または望ましくない特性を本開示に与えてもよいアイテムは、例えば、約300ナノメートルを超え約500ナノメートル程度の重合体表面層を含む。
【0017】
ここで用いられる不定冠詞「a」または「an」、およびその対応する定冠詞「the」は、特定されない限り、少なくとも1つまたは1つ以上を意味する。
【0018】
従来技術における当業者にとって周知である略語、例えば、「h」または「hr」は時間、「g」または「gm」はグラム、「mL」はミリリットル、「RT」は室温、「nm」はナノメートル、および同様の略語、が用いられている。
【0019】
特に反対に述べていなければ、例えば、成分に関する「重量パーセント」、「wt%」、「重量でパーセント」または同様の用語は、組成の合 計重量に対する成分の重量の比であり、成分が含まれ、パーセンテージとして表されたものである。
【0020】
開示された構成要素、成分、添加物、細胞タイプ、抗体、または同様の態様、およびそれらの範囲のために特定値または好ましい値は説明のみのためであり、定められた範囲内の他の値または他の定められた値を除外するものではない。本開示の組成、装置および方法は、ここに記載されている値、特定の値、より特定の値および好ましい値のいかなる値またはいずれかの組み合せを有するものを含む。
【0021】
バイオセンサ上の低標的固定化およびバイオセンサ低い特定リガンド結合活性上の問題は、本開示の薄膜機能化表面を有することによって、すなわち、バイオセンサ上の高い生化学標的固定化および表面−結合生化学標的または補体などとの高い特定リガンド結合活性を有することによって克服され得る。
【0022】
LID方法は、例えば、受容体のような固定された標的上へのリガンド吸着によって誘導された屈折率の局所的変化に基づくことがあってもよい。
【0023】
本開示の界面化学は、固定化された受容体密度、すなわち順番に目標とされたリガンドのための増加する捕捉容量を提供するバイオセンサに固定される受容体の数、を増やすことによって、そして、固定化された受容体の増加する活性または有効性を提供することによって結果として生じるシグナルを強化する。
【0024】
本開示の界面化学は、他のタイプのLIDセンサまたは表面プラズモン共鳴(SPR)タイプのセンサである二面偏波干渉技術(DPI)と互換性を持ってもよい。
【0025】
上述のポリマーゲルは、例えばデキストラン多糖類、または例えばポリアクリル酸のような合成ポリマーからなるLIDバイオセンサ上の生体分子を固定できる。例えばBIAcoreによる米国特許第5,436,161号参照のこと。
【0026】
ポリマーゲルの多数のタイプの中において、多用されるものの1つは、カルボキシメチルデキストランに基づいており、例として、文献S. Lofas, et al., ”A Novel Hydrogel Matrix on Gold Surfaces in Surface Plasmon Resonance Sensors for Fast and Efficient Covalent Immobilization of Ligands,” J. Chem. Soc., Chem. Commun., 1990, 21, 1526-1528および上述した米国特許第5,436,161号に説明されている。このカルボキシメチルデキストランに基づくゲルは、非常に高いタンパク質捕捉容量に対し不適当な最終的なゲルの高さおよび厚さをなすその分子量(BIAcoreから入手可能なCM5センサチップに対しMw500,000g/モル)のために捕捉容量を制限している。
【0027】
類似したアプローチは、特許協力条約公開番号WO2007/049269、「その製法およびそれの使用のための結合層および方法(Binding layer and method for its preparation and uses thereof)」、S. Nimri(出願人Bio-Rad)に記載されていた。この刊行物は、配位子分子の結合および検体分子との相互作用において高性能を示すカルボン酸基で置換された多糖類から成る結合層に言及している。多糖類は、アラニンスペーサとの反応によって修飾される。この刊行物も、スペーサ修飾が周知のカルボキシメチル化された多糖類のカルボン酸基の活性化と比較して、スペーサのカルボン酸基のより効率的な活性化を可能とすると述べている。この刊行物は更に、ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸のような合成ポリマーがより効率的な活性化と続く固定化とを示すと述べている。しかし、これらのポリマーの低い「生体親和性」により、配位子分子がおそらく低い活性を呈したと思われる(第13頁第5−9行参照のこと)。
【0028】
低タンパク質活性に加え、ポリメタクリル酸ポリマーへの「目標グラフト化(grafting to)」の時、グラフト化されたポリマー密度は制限され、捕捉されたタンパク質量を減少させる。この低いグラフト化密度は、基質に付着しようとするポリマー鎖の間で起こっている主に立体障害および斥力に起因すると考えられた。加えて、高いポリマーグラフト化密度を得るための中間分子量ポリマーの使用は、ゲルの厚さおよび捕捉されるタンパク質量を制限する。この欠点を克服するために、センサ表面上のポリマーのインサイチュ合成は、ある関心を得ている。例えば、RAFTまたはATRPなどの管理されたフリーラジカル重合を用いた高度な重合技術(いわゆる「表面開始グラフト重合(grafting from)」)もまた用いられ、より厚いゲルおよび表面にグラフト化されるポリマー鎖の高濃度を有するゲルを形成するが、しかし、この種の方法は多数欠点がある。例えば、これらのインサイチュ重合法は全く遅く、特定の係留重合開始剤を必要とすることがあり、運転が複雑で、ポリマーゲル層に望ましくない開始剤残基を残すことがあり、非結合材料を除去するために長い洗浄時間を必要とすることがある。さらに、ポリマー鎖の一端だけの完全な結合によって、生成されるポリマーの正確な分子量の管理と非常に高いポリマーグラフト化密度が得られるにもかかわらず、得られたポリマー鎖の長さは所定の重合時間枠に対してあまり大きくなく、よって、生体分子捕捉のためのゲル層の厚さを制限する(文献J. Brittain, et al., ”A Facile Route to Poly (Acrylic Acid) Brushes Using Atom Transfer Radical Polymerization”Macromolecules, 2006, Vol. 39, pgsを参照のこと)。
【0029】
米国特許第7,250,253号(「ポリマーブラシを介した表面上の分子の固定化(Immobilization of molecules on surfaces via polymer brushes)」、Klapproth等)において開示される他の方法は、ラジカル重合開始剤の単層を固定することを含むが、抑制できないフリーラジカル重合を使用している。ポリマーの分子量は例えば100,000g/molと同じ程度であり得るが、しかし、この値は、米国特許第5,436,161号で言及されたT500カルボキシメチルデキストランを使用している目標グラフト化技術によって得られた500,000g/mol未満のままである。米国特許’253号開示の方法の他の欠点は、基質に係留された特定の開始剤の合成である。主要な限界は、未反応モノマーおよび非結合のポリマーを除去するために要する長い抽出時間から来る。
【0030】
グレーティング共鳴センサまたはSPR−センサのようなLIDバイオセンサが使われるときに、エバネセント場波は、表面からの初めの100ナノメートルから200ナノメートルで培地へ調査して、分子識別事象を検出することが可能なだけである。このように、マイクロメートルの厚いゲルは実施できず、LID技術のための界面化学として不適当である、なぜなら、固定されるべきタンパク質の拡散が非常に遅く、少量のタンパク質だけが調査領域に着くからである。その上、固定されたタンパク質の多くへの小分子(例えば薬剤)の結合の大部分は調査領域を越えて生じ、よって、認識事象または結合は検出され得ない。
【0031】
装置および準備プロセスは、J.A. Bosley等による名称が「マイクロ化学検定のための材料および方法」、(ユニリーバに譲渡)のヨーロッパ特許EP0226470(’470特許という)に記載されている。しかし、厚いゲルを調製するための方法だけが記載されている。役にたつ例は、多様なマイクロメートルの厚さを有するゲル厚さを示す。’470特許は、結果として生じるゲル表面の平滑度が被覆基質上の平坦な非粘着固体表面を型締することによって得ることができる、と述べている。残念なことに、高い型締圧力が被覆基質および非粘着表面組立体に適用されたときでも、我々は、例えば約200ナノメートル未満厚さの最適な薄いゲル層でLIDバイオセンサと互換性を持つものが得られる、ことを発見した。
【0032】
’470特許はマイクロ化学検査を実施するための機器を記載し、それは、インサイチュ形成されかつそれに対して共有結合で結合されるポリマーヒドロゲルを担持する表面を有する固体基質から成る。ポリマーゲルは、ヒドロゲルポリマーのマー(例えばアクリレート)で結合する有機トリアルコキシシラン化合物(例えばMOPS)を使用し、基質に共有結合で結合される。例であるポリマーゲルは、例えばメタクリル酸およびメタクリルアミドなどのアクリルモノマーのインサイチュ重合によって生成されるそれらを含む。緩衝液に依存するヒドロゲルは、メタクリル酸によって提供されるカルボン酸基の存在により、最終的に負の電荷を持ち得る。ポリマーマトリックスに含まれるカルボン酸基は、適当な試薬、例えばウッドワードの試薬またはEDC/NHS、と化学反応することによって活性化され得る。それから活性ゲルは、例えばタンパク質、抗原またはハプテンと化学反応され得る。ゲルは、例えば、N‐ヒドロキシスクシンイミジルエステルアクリレートから、例えば、アクリル酸およびアクリルアミドの反応性官能基を有するモノマーで、形成され得る。
【0033】
ここで開示したように、’470特許で記載されているゲルは、捕捉された抗体および抗原間の相互作用のような生体分子認識事象を検出することに適していることが示されている。残念なことに、’470特許は、例えば生体分子相互作用を検出する蛍光性標識分子などの標識された分子(4ページ、カラム6、ライン52−65参照のこと)を使用する競争的免疫アッセイだけを記載した。これは、蛍光性基で関心の検体に標識される標識を必要としない、すなわち、直接の標識フリー方法を考慮すると厳しい欠点である。電気化学的検出もまた、記載されたインサイチュポリマーゲルを含んでいる装置の潜在的な使用として’470特許に記載されている。
【0034】
’470特許の厚いゲルは、結合アッセイの間の質量の輸送問題を誘発するであろう。すなわち、タンパク質捕捉の後、薬剤または小分子がゲルを介して拡散し、タンパク質の結合部に到達しなければならない。この拡散が限られたプロセスは、動態学的計測および会合/解離定数決定、例えばKon、KoffおよびK、に対し障害をつくる。この化学の他の欠点はウエル−プレートを調製するために用いるときに起こり、ウエル−プレートでは、厚いゲル層になるポリマー鎖が基質に係留せず、アッセイ間に浸出して、容認できないシグナル浮動を誘発する。
【0035】
3Dゲル構造が利用できる高い潜在的な固定化容量であるにもかかわらず、’470特許は、例えば、薄膜LID共鳴グレーティングバイオセンサ上のかかる化学を使用する方法に言及していない。
【0036】
他の方法は、例えば、WO2007/078873(「分析する検体のための支持体並びにその製法および使用方法」)およびアメリカ出願第61/123609号(共通に所有し譲渡した2008年4月10日出願の「標識独立検出のための表面およびその方法」)に記載されており、特にLIDバイオセンサと互換性を持って、実施が比較的簡単である方法を述べている。しかし、その方法は限られた運転性能が欠点であり、それはHTSモードの薬剤のスクリーニングのために容認できないかもしれない。すなわち、タンパク質活性および捕捉されたタンパク質量は、明瞭な結合応答を提供するにはあまりに低いかもしれない。
【0037】
実施例において、本開示は、標識フリーバイオセンサ物品であって、
基質と、
基質の表面に付着した結合層と、
結合層に付着したアクリロイル(すなわち、アクリル−アクリルアミド)コポリマー層と、から成り、
アクリル−アクリルアミドコポリマー層が、例えば約1ナノメートルから約100ナノメートルの、約2ナノメートルから約100ナノメートルの、約2ナノメートルから約75ナノメートルの、約2ナノメートルから約50ナノメートルの、約3ナノメートルから約30ナノメートルの、約3ナノメートルから約20ナノメートルの、中間値および範囲を含んでいる乾燥厚さを有することを特徴とする。
【0038】
基質は例えば、プラスチック、重合もしくは共重合の物質、セラミック、ガラス、複合物、結晶材料、金属、貴金属、半貴金属、金属酸化物、非金属の酸化物、遷移金属またはそれらの組み合せのうちの少なくとも1つであってもよい。
【0039】
アクリル−アクリルアミドコポリマーは、例えば、アクリル酸またはアルキルアクリル酸などのモノマーまたはそれらの組み合せの少なくとも1つと、アクリルアミド、N−置換アクリルアミド、N,N'−二置換アクリルアミド、アルキルアクリルアミド、N−置換アルキルアクリルアミド、N,N'−二置換アルキルアクリルアミドまたはそれらの組み合せの少なくとも1つと、のモノマーの混合物から調製され得る。
【0040】
具体例において、アクリル−アクリルアミドコポリマーは、例えば、アクリル酸モノマーのうちの少なくとも1つとアクリルアミドモノマーのうちの少なくとも1つとの約1.0:2.0から約2.0:1.0のモル比における混合物から調製され得る。
【0041】
実施例において、アクリル−アクリルアミドコポリマーは、例えば、モノマーの全モルに基づく約0.0001から約0.0015モルパーセントの例えば正常添加または付加によって、架橋されること、存在する架橋剤を更に含むことができる。
【0042】
アクリル−アクリルアミドコポリマー層は、例えば、生物実体を固定することに適している少なくとも1つの反応基を更に含むことができる。適切な反応基の例は、例えば−NHS基、s−NHS基などの基またはそれらの組み合わせようなNHS/EDCでの処理から生じている反応生成物あることができる。バイオセンサ物品は、適切な試薬によって活性化され、架橋および基質結合コポリマーを、NHSのような反応基の少なくとも1つの反応基を有する誘導体化されたポリマー表面へ変換することができ、そして、誘導体化または活性化された表面が生物実体吸着、固定化または両方を可能とし、または更に強化する。吸着または固定化された生物実体は、或る分子量(Mw)、例えば中間値および範囲を含む約60,000ダルトンまで、約50,000ダルトンまで、約40,000ダルトンまで、そして、約30,000ダルトンまでを有することができる。
【0043】
実施例において、本開示は、コポリマーが下式(I)のマーから成るバイオセンサ物品を提供し、
【0044】
【化1】

【0045】
式中、
aは少なくとも1つのアクリロイルカルボン酸基を含み、
bは少なくとも1つのアクリロイルアミド基を含み、
cは例えば図13の式に示されるNHSまたはs−NHS誘導体化基などの生物実体を固定することに適している少なくとも1つの反応基Xを含み、
dは表面付着基Aに対する少なくとも1つの結合層を含み、
ここで、Aは基質表面に付着して、アクリロイルモノマーで共重合化した結合層基であり、
はHまたは(C1−4)アルキルであり、
およびRは各々独立にHまたは(C1−4)アルキルであり、
付着したポリマー層は、例えば、約1ナノメートルから約100ナノメートルの、約2ナノメートルから約100ナノメートルの、および、約2ナノメートルから約50ナノメートルの、全ての中間値および範囲を含んでいる乾燥厚さを有する。水溶性培地のポリマー層は、例えば、約10ナノメートルから約200ナノメートルの過大な厚さを有することができる。
【0046】
実施例において、ポリマーは、例えばアクリル酸などのアクリロイルモノマーとアクリルアミドモノマーとの約1.0:1.5から約1.5:1.0のモル比における混合物からなり得る。ポリマーはモノマーの全モルに基づく約0.001から約0.0015モルパーセントの量の間鎖または鎖間架橋剤(図示せず)を更に含む。実施例において、特に効果的架橋剤は、N−N'メチレンビス−アクリルアミドなどの化合物である。
【0047】
実施例において、本開示は、上記したようなバイオセンサ物品を作成する方法を提供し、その方法は、重合可能な結合層表面を有する基質とアクリロイルモノマーおよび架橋剤の混合物とを接触させ、
重合可能な結合層表面でアクリロイルモノマー混合物を重合させて、約1ミクロンから約100ミクロンの厚さを有する初期のポリマー層を形成し、そして、
ポリマー層を洗浄および乾燥して、基質に付着しかつ約2ナノメートルから約100ナノメートルの厚さを有する残存ポリマー層を生成して成り、
架橋剤がモノマーの総モルに基づいて約0.0015mol%未満で存在する。ポリマー層の洗浄は、非結合または表面に付着していないポリマーの全てを実質的に除去すると考えられる。残存の付着ポリマー層は、例えば、約5から約50ナノメートルの乾燥厚さを有し、架橋剤はモノマーの全モルに基づいて約0.0015mol%未満で存在する。「乾燥する」および「乾燥」は、ここでは、例えば、大気、不活性雰囲気、減圧、そして、温和加熱などの方法またはそれらの組み合せの下における、バイオセンサ物品の表面からの水系または非水系液体の蒸着または除去をいう。
【0048】
実施例において、バイオセンサ物品を作成する方法は、活性化剤とポリマーとを接触させることにより上記の結果として生じる物品を活性化すること更に含むことができる。
【0049】
実施例において、バイオセンサ物品を作成する方法は、基質を適切な結合層前駆体化合物で処理して結合層改質表面を形成することを含む。結合層形成性化合物または結合層前駆体化合物は、例えば、式、BM(C)4−xである物質であってもよく、式中、MはSi、Ti、Ta、Sn、Alまたはそれらの組み合せであり、Bはフリーラジカル重合可能な基から成り、各々のBは独立に1から約18の炭素原子を有する置換または非置換のヒドロカルビレン基であり、Cは置換可能な基であり、xは1から3までである。
【0050】
例えば、アクリロイルモノマーでのBの結合層表面基共重合は、アクリロイルモノマー(すなわちアクリル樹脂およびアクリルアミドモノマー)がある場合には、表面基のフリーラジカル重合によって完成していてもよい。表面基Bは例えばフリーラジカルの重合可能な基であって、以下の、アルキル、−アルコキシ、−アクリル、−アルキルアクリル、−アルケニル、−シクロアルキル、−複素環、−アリール、−ヘテロアリール、−アルキレン−シクロアルキル、−シクロアルキレン−アルキル、−アルキレン−アリール、−アルキレン−ヘテロアリール、−アリーレン−アルキル、−ヘテロアリーレン−アルキル、−アルキレン−アクリル、アルキレン−アルキルアクリル、などのヒドロカルビル基またはそれの混合物などの、いずれのような、炭素−炭素不飽和または炭素−炭素二重結合を有するように修飾され得または有する置換または非置換の基であることができる。
【0051】
各々の置換可能な基Cは、独立であり、例えばハロゲン化物、または、置換または非置換のアルコキシ基として公知である1から約10の炭素原子を有するヒドロカルボキシル(hydrocarbyloxy)基であり、その基が例えば1つ以上の表面酸化物で部分的にまたは完全にM原子から置換され得る。
【0052】
実施例において、結合層前駆体化合物は、例えば、以下の式の少なくとも1つの化合物、
(RC=C(R)−Si(OR)
{(RC=C(R)−}Si(OR)
{(RC=C(R)−}Si(OR)、
(RC=C(R)−(CH−Si(OR)
{(RC=C(R)−(CH−}Si(OR)
{(RC=C(R)−(CH−}Si(OR)、
(RC=C(R)−C(=O)−O−(CH−Si(OR)
{(RC=C(R)−C(=O)−O−(CH−}Si(OR)
{(RC=C(R)−C(=O)−O−CH−}Si(OR)、および、それらの化合物または混合物など、であってもよく、式中、nは1から約16の整数であり、各々のRは独立にある(C1−10)アルキルであり、各々のR1は、独立にある−H、または、(C1−10)アルキルである。
【0053】
実施例において、適切な結合層前駆体化合物は、例えば式{CH2=C(CH3)−C(=O)−O−(CH−}Si(OR)で表され、式中、Rがメチルまたはエチルである。例えば、結合層前駆体化合物または反応物の優れた例は、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MOPS)であってもよい。
【0054】
実施例において、重合可能なアクリロイルモノマー混合物は、例えば、少なくとも1つのアクリル酸モノマー、少なくとも1つのアクリルアミドモノマーまたはそれらの組み合せから成ってもよく、そして、アクリロイルモノマー混合物を重合させることが化学線照射、照射感応開始剤またはそれらの組み合せを使用して重合を開始して達成されもよい。
【0055】
実施例において、本開示は、上記した式(I)バイオセンサ物品を使用する方法を提供し、方法は、吸収、固定またはそれらの組み合せの生物実体少なくとも1つの生物実体と活性ポリマー層とを接触させることから成る。
【0056】
実施例において、バイオセンサは、例えば共振波案内バイオセンサであってもよく、そしてこの種のバイオセンサは、例えば、それはEpic(登録商標)機器によって測定して、例えば、約1,500pm以上の生物実体固定化応答を呈することができる。
【0057】
実施例において、バイオセンサを使用する方法は、例えば、吸収または固定された生物実体に候補物質リガンドを接触せしめて、生物実体およびリガンド間の相互作用を検出することを更に含むことができる。例えば、生物実体間の検出相互作用およびバイオセンサを使用しているリガンドは約20から約200pmであってもよい。方法は、リガンドで結合するために少なくとも固定された生物実体の約20重量部以上を提供する。
【0058】
実施例において、本開示は上記の調製方法によって調製されるバイオセンサ物品または細胞培養物品を提供する。
【0059】
実施例において、生物実体は、例えば、自然または合成のオリゴヌクレオチド、自然または合成の核酸(DNAまたはRNA)、自然のペプチドまたは合成ペプチド、1つ以上の改質または抑止されたアミノ酸を任意に含む自然または合成のペプチド、抗体、ハプテン、生物学的リガンド、タンパク質膜、脂質膜、タンパク質、約1,000ダルトン未満、約500ダルトン未満および約300ダルトン未満の分子量を有する小分子、細胞などの生物実体、またはそれらの組み合せ若しくは結合体の少なくとも1つであってもよい。
【0060】
実施例において、リガンドは、刺激、治療候補物質、予防候補物質、予防試薬、化学化合物、生体分子、ペプチド、タンパク質、生体試料、約1,000ダルトン未満の分子量を有する小分子、生物学的薬物分子候補物質、薬剤候補物質小分子−生物学的結合体、病原体、細胞などのリガンド実体、またはそれらの組み合せの少なくとも1つであってもよい。
【0061】
実施例において、本開示は、生体分子結合のためのインサイチュ形成合成ポリマー被覆基質を有する共鳴グレーティングバイオセンサのような標識フリー検出センサと、例えばリガンド−生物実体相互作用の検出または調査するため被覆センサを製作し使用する方法とを提供する。
【0062】
実施例において、本開示は、例えば、インサイチュグラフト化によって適切改質(結合層)LIDセンサ表面へ容易に付着され得るアクリロイルコポリマーに基づく界面化学を提供し、これは、リガンド結合のための固定された生体分子の良好な有効性および活性を提供する非常に高い生物実体固定化容量を有し、そして、標識フリー検出方法論と互換性を持つ。作成方法は、インプリメントすが簡単でかつ製造スケールアップと互換性を持ち、例えば、長い表面重合時間も長く続く洗浄時間も必要でない。
【0063】
実施例において、本開示は、「目標グラフト化」方法にあった課題を解決するためにLIDセンサ表面にインサイチュでかつ直接合成されるポリマーを提供する。今まで、市販のLIDバイオセンサは、目標グラフト化方法によって調製された。
【0064】
我々は、驚くべきことに、例えばメタクリル酸モノマー、メタクリルアミドモノマーなどのモノマーまたはそれの混合物におけるインサイチュ重合を使用することにより、非常に効率的なLIDセンサが作成できることを発見した。
【0065】
実施例において、LIDセンサの準備プロセスは、例えば、センサ表面上にフリーラジカル共重合可能な結合層をグラフト化または付着すること、インサイチュフリーラジカル重合により、結合層を有しモノマーに基づく約0.0001から約0.0015mol%の濃度の架橋剤を含むようにアクリル系のゲルを、LIDセンサ表面上に直接形成すること、そして、例えば、非結合の過剰ポリマーを除去する洗浄によってインサイチュ形成されたいかなる非係留の過剰ポリマーも除去すること、を含むことができる。
【0066】
実施例において、フリーラジカル共重合可能な結合層は、例えば、上記した式BM(C)4−xの不飽和縮合シランなどの化合物およびそれらの組み合わせで形成され得る。
【0067】
重合開始剤は、好ましくは、紫外線/可視光などの化学線の照射開始プロセスなどの電磁波源起因性重合型であってもよい。
【0068】
記載されている方法を使用することによって、Epic(登録商標)システム(コーニング社)のような市販のLIDシステムと充分に互換性を持つ基質上の非常に再生可能な薄いゲル層を得ることができる。
【0069】
ポリマー層の厚さは、例えば、原子間力顕微鏡(AFM)で測定された。AFM結果は、基質上の付着のポリマー層の乾燥厚さが約5ナノメートルから約50ナノメートルであって、予想されたより、かなり薄いことを示した。理論によって制限されないにもかかわらず、水和ゲル層形態のポリマー層は以前に報告されたアクリレートゲルより薄いと考えられる。しかし、結合層改質基質表面上のグラフト化されたアクリレートポリマーの密度は、以前に報告されたアクリレートゲルのものよりかなり大きいと考えられる。
【0070】
我々のさらに発見したことは、(例えば、文献「活性エステルで共重合化したポリアクリルアミドゲル。親和性システムのための新規な培地(Polyacrylamide gels copolymerized with active esters.A new medium for affinity systems)」, R.L.Schnaar, et al., Biochemistry, Vol. 14, pgs.1535-1541に記載されているように)ゲルがアクリルアミドおよびアクリル酸モノマーまたは置換アクリル酸モノマーのアクリロイルコポリマーで作成される場合に、モノマー比は高タンパク質捕捉容量および高タンパク質活性を得るために明白に有意である、ことである。モノマー比は付着タンパク質の生物学的活性度を維持する際に特に重要であり、これは人が捕捉されたタンパク質の大きい量を更に利用することを可能とする。高活性の保存は、リガンド検体(結合パートナー)の有意な数が固定された生物学的標的と相互に作用することを確実にして、よってアッセイ感度および保全を増大する。
【0071】
実施例において、共鳴グレーティングバイオセンサは、例えば、メタクリル酸の50mol%とスルホ−(N−ヒドロキシ−スクシンイミジル(メタ)アクリレート)のようなNHS−アクリレートの50mol%とでできているインサイチュ形成されたゲルを含むことができる。
【0072】
実施例において、共鳴グレーティングバイオセンサは、例えば、スルホ−(N−ヒドロキシ−スクシンイミジル(メタ)アクリレート)のようなNHS−アクリレートの50mol%とメタクリルアミドの50mol%でできているインサイチュ形成されたゲルを含むことができる。
【0073】
実施例において、共鳴グレーティングバイオセンサは、例えば、33mol%メタクリル酸と33mol%のスルホ−(N−ヒドロキシ−スクシンイミジル(メタ)アクリレート)のようなNHS−アクリレートと33mol%メタクリルアミドとでできているインサイチュ形成されたゲルを含むことができる。
【0074】
タンパク質の非常に高い固定化レベルが得られてタンパク質の高い活性が確立され得るので、本開示の被覆センサ物品は、タンパク質と、非常に低い分子量分子、例えば、約75から約500ダルトンの分子量を有する分子などの小分子との間で起こっている結合事象を検出することに特に適していてもよい。
【0075】
ガラス、プラスチックなどの物質またはそれらの組み合せなどのLIDセンサ基質は、アクリルモノマーのインサイチュ重合の前に、まず、結合層前駆体で被覆または化学反応され得る。実施例において、結合層は、例えば、重合されるべきアクリロイルモノマーで共重合化または化学反応され得るアルコキシシランまたはクロロシランから成ることができる。この種のシランは、例えば、それらが運ぶ、ビニル基、メタクリル酸エステル基、アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、アクリルアミド基などの基またはそれらの組み合せを含む。例えば、固定化およびリガンド結合におけるその共重合化された薄膜のその有効性、共重合する際の効能およびの効率の故に、好適なシランは、下式のメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランである。
CH=CH−C(O)−O(CH−Si(OMe)
シランは、例えば、溶液または気相の接触によるどちらでもLIDセンサ表面に適用され得る。インサイチュ重合は、例えば有機または水性溶液のモノマー溶液、またはモノマーの蒸気を用いたプラズマ処理によって、好ましくは実行され得る。アクリル酸がインサイチュ重合するモノマー混合物において使われるときに、重合はモノマーの水溶液を使用して達成され得る。例えば、N−ヒドロキシ−スクシンイミジルアクリレートまたはそのスルホン酸誘導体の加水分解感応活性エステルが選ばれるときに、有機溶媒溶液が好ましい。
【0076】
交換できるまたは追加できる反応性コモノマが選択でき、それは含まれるか、または、インサイチュ重合の後、アルデヒド、カルボキシ、アミド、アジド、エポキシ、イソシアン酸塩、イソチオシアネート、マレイミド、スクシンイミジルエステルおよびスクシンイミジル炭酸塩などの基に代えることができる。例えば、本開示によって使用できる反応基のパネルは、文献“Bioconjugate Techniques”, Greg T. Hermanson, Academic Press, 1996において開示されている。反応基がモノマー混合物のインサイチュ重合を妨げそうな場合、反応基は、例えば、インサイチュ重合の後、導かれまたは保護基を使用して保護され得る。
【0077】
インサイチュ重合すべきモノマー混合物は、好ましくは、カルボン酸基を担う約10%から約90%のメタクリル酸モノマーまたはメタクリルアミドモノマー、そして、より好ましくは、約40%から約60%のこの種のモノマーを含む。好適なアクリルモノマーは、アクリル酸およびメタクリル酸を含む。全体のメタクリルアミドモノマー濃度は、例えば、約50重量部およびより好ましくは、約30重量部未満であってもよい。より高いモノマー濃度がインサイチュ形成されるポリマーのより高い分子量に至ることは、一般に公知である。好適な反応基はN−ヒドロキシスクシンイミジルエステルでそして、より好適なのはスルホ−N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルである。
【0078】
本開示は、タンパク質活性をかなり改良し劇的にアッセイ感度を強化すると共に、目立って高いタンパク質固定化容量を有するLIDセンサを作製するためのプロセスを提供する。
本開示のバイオセンサ物品の固定化および結合応答は、他の周知の界面化学を上回る。例えば、ここに開示されたようにフロセミド/炭酸脱水酵素のためのEpic(登録商標)の結合応答は、LIDセンサで知られている我々の知識で最も効果的固定化および結合化学とWO2007/078873に記載されている方法により作製したセンサによって得られたものより約4から約5倍高い。
【0079】
実施例において、本開示のセンサ物品は、提供される高い結合応答のために、薬剤または他の小分子の高い流量スクリーニング(HTS)と互換性を持つ。例えば約500ダルトン未満の分子量を有するフラグメントなどの非常に低い分子量化合物さえも、高い結合応答のためにセンサを使用してスクリーニングされ得る。
【0080】
実施例において、本開示は解析につきコストが他のLID技術と比較して実質的に減少できることを示唆する低タンパク質濃度を使用する標識フリー検出のためのセンサの製法を可能とする。
本開示のセンサの製法は、前方に直線的であり、特に、洗浄ステップでは非結合のモノマーおよびポリマーを除去して、例えば、それは数時間の代わりに数分だけを必要とする。
【0081】
表面改質バイオセンサを作製する開示された方法は、典型的ディップコーティングプロセスと比較して製造のために使用される溶剤の有意な減少を提供する。例えば、500マイクロリットルのモノマー溶液だけが、384−ウエルプレートを調製するために用い得る。製造プロセスはまた非常に効率的であり、例えば、UV照射を使用して、数秒以内で界面化学が迅速かつ容易にセンサプレートに添付されるからである。
【0082】
従来技術と異なって、本開示のセンサおよび検知方法は、使用する薄いゲル層の故に、リガンドおよび検体の間で会合/解離の動態学的計測が可能である。本開示により作製されるセンサプレートは、プレートの全ての領域全体の非常に良好な反応均一性を呈し、全てのウエルから非常に信頼できる反応を必要とするHTSモードにおいて、それは特に有意である。
【0083】
実施例において、本開示は、多くの種類の細胞の付着、成長およびアッセイに適している表面を提供し、その細胞は、チャイニーズハムスター子房(CHO)細胞および人間の上皮の癌腫A431細胞のような強く粘着性のセル、RMS13細胞のような中間体付着細胞および病弱な付着細胞、例えば人間の胎児腎臓(HEK)細胞または一次細胞を含む。
【0084】
本開示は、これらのバイオセンサの表面が細胞培養および次の細胞アッセイと互換性を持って敏感に反応するように、バイオセンサの表面を改質する方法を提供する。開示された方法は、例えば共鳴導波路グレーティングバイオセンサにおいて使用するような酸化金属薄膜表面や、表面プラズモン共鳴(SPR)において使用するようなパターンされない金表面や、電気バイオインピーダンス系バイオセンサにおいて使用するようなパターンされた金表面に適している。
【0085】
このように、本開示は、ここに定義した細胞培養物品と、ここに定義した細胞培養物品を調製するための方法と、ここに定義したリガンドのアッセイを実行するための方法と、から最適に成り、または本質的に成る。
【0086】
実施例において、本開示は、
基質と、
少なくとも基質に付着した結合層と、
結合層、基質または両方に付着した生物学的適合層と、から成る細胞培養物品を提供する。
【0087】
基質は、例えば、プラスチック、重合もしくは共重合の物質、セラミック、ガラス、金属、結晶材料、貴金属もしくは半貴金属、金属もしくは非金属の酸化物、遷移金属またはそれらの組み合せから成ることができる。実施例において、結合層は、例えば、アミノ基、チオール基、水酸基、カルボキシル基、アクリル酸、有機もしくは無機の酸、エステル、無水物、アルデヒド、エポキシドなどの基およびそれらの塩またはそれらの組み合せから成る1つ以上の反応の官能基を含む化合物から得ることができる。結合層を形成するための材料の選出は、基質の性質に依存することができる。例えば、シランは、酸化された無機基質、例えばガラス、SiO−存在基質、TiO、Nb、Ta、HfOおよびそれらの混合物または基質、と協働する優れた結合層であってもよい。またはさらに、代わりに、上述した無機基質は、SiO積層で結合されてもよい。
金基質が選ばれるときに、チオール化合物は優れた結合層であり得る。ポリマー基質が使われるときに、ポリリジンのような明らかに充電されるポリマーは優れた結合層であり得る。
【0088】
図を参照すると、図1は、LIDバイオセンサ表面上のポリマーをインサイチュ形成するために用いるステップ、i)MOPSシラン処理、ii)UV照射でのモノマーの混合物のインサイチュ重合、および、iii)EDC/スルホ−NHS処理によるポリマーゲルの活性化、を含む概略図である。
【0089】
図2および図3は、バイオセンサ上のEpic(登録商標)機器によって測った酢酸緩衝液中の炭酸脱水酵素II(CAII)固定化応答であって、発明の表面(25)と比較の表面(20、22)化学のグラフを示す。本開示の発明の例は50/50または1:1(mol:mol)アクリル酸およびアクリルアミドコポリマー(25)であり、そして、比較例2は「スペーサ」化学(22)であり、そして、比較例1は「dEMA」化学(20)である。約4.5pg/mm/pmの感度係数を仮定すると、結合されたCAIIの密度は、約24ng/mmである。使用したタンパク質の濃度が固定化応答(すなわち到達されないプラトー)を制限するので、界面化学の最大容量はこの値より高い。
【0090】
図4は、開示されたものと比較界面化学のための濃度の関数としての炭酸脱水酵素(II)有効性(%)のグラフである。この図は、10マイクログラム/mLのCAII濃度でさえ特異な有効性%を示す。
【0091】
図5は、発明の表面および比較調製された表面上の固定化のために使用されたCAII濃度対フロセミド薬剤結合応答のグラフである。本開示の例は50/50または1:1(mol:mol)アクリル酸およびアクリルアミドコポリマー(25)であり、比較例2は「スペーサ」表面(22)であり、そして、比較例1は「dEMA」表面(20)であった。この図は、タンパク質消費量が開示された調製された表面(25)を使用している所定の結合応答に対し、かなり減少し得ることを示す。例えば、30pm反応は、20マイクログラム/ミリリットルの発明のバイオセンサ表面を有するタンパク質を使用して得られる。対照的に、50マイクログラム/ミリリットルを越えるものは、比較例2(22)のバイオセンサ表面にて必要で、比較例1(20)の低容量バイオセンサ表面では達されることができない。
【0092】
図6は、第1日付(60)および後の第2日付(65)で測られた、酢酸緩衝液(20mM、pH5.5)中の4℃で、50マイクログラム/mLでCAIIに固定されるフロセミド結合応答上の開示された表面のための影響のグラフである。示されるコポリマー表面組成のアクリル酸/アクリルアミドモノマーモル比は、それぞれ、100/0、50/50および25/75である。グラフは、優れた結合のための最適のモノマーモル比が例えば50/50付近にあったことを示す。含量のアクリルアミド(75部)に対するアクリル酸(25部)の大きい比はタンパク質活性を増加したが、しかし、タンパク質捕捉は減少し、すなわち、結合応答の減少を導く減少CAII固定化となった。これに反して、大量または唯一のアクリル酸含量(100/0)はタンパク質固定化を増加させるが、タンパク質活性を減少させ、すなわち有効性の減少となり、それはまた減少された結合応答に至る。
【0093】
図7は、Epic(登録商標)機器によって測られた開示する表面および比較調製された表面のストレプトアビジン(SA)固定化応答のグラフを示す。SAは酢酸緩衝液(20mM、pH5.1)で固定された。本開示の例は50/50または1:1(mol:mol)アクリル酸およびアクリルアミドコポリマー(25)であり、比較例2は「スペーサ」表面(22)であり、そして、比較例1は「dEMA」表面(20)であった。最も低いSA濃度レベル(10マイクログラム/mL)で観察された比較例の固定化を除いて、絶えず比較例を越えるより高い固定化が示された。
【0094】
図8は、Epic(登録商標)機器によって測られた発明のビオチン結合応答および比較調製された表面のもののグラフである。比較されたビオチン結合は、固定化SAにたいして酢酸緩衝液(20mM、pH5.1)で測定された。本開示の発明の例は50/50または1:1(mol:mol)アクリル酸およびアクリルアミドコポリマー(25)であり、比較例2は「スペーサ」表面(22)であり、比較例1は「dEMA」表面(20)であった。比較例1および2と比較して発明の例では絶えず大きい結合応答差が各々のSA濃度試験で観察された。約4.5pg/mm/pmの感度係数を仮定すると、結合されたCAIIの密度は、約30ng/mmであった。
【0095】
図9は、期待される結合応答、受容体および検体の関係する屈折率増加増分(RII)および分子量の有効性からみて、固定化SAの算出された有効性のグラフを示す。期待される結合応答は、検体:受容体を4:1(ストイキオメトリ)の比とみなす。本開示の開示された例は50/50または1:1(mol:mol)アクリル酸およびアクリルアミドコポリマー(25)であり、比較例2は「スペーサ」表面(22)であり、比較例1は「dEMA」表面(20)であった。このグラフは、SA活性が約100%を示し、これがタンパク質の全生物学的活性度が表面にその付着中に維持されたあったことを示す。
【0096】
図10は、Epic(登録商標)2D Mapソフトウェアを使用して比較表面を有する384−ウエルプレートのCAII固定化の不均一性を図示する写真である。緑色および青いグレーティング領域(無色だが、すなわちグレイスケールの明るいグレイ四角)が観察され、それらはタンパク質が固定されたそれらのウエル領域と緩衝だけが加えられたウエルとに、それぞれ対応する。タンパク質が固定されたウエル領域は、容易に緩衝だけを有するウエル領域と区別されることができない。このプレートは、弱い固定化均一性を呈して、高量多様性を有する。
【0097】
図11は、Epic(登録商標)2D Mapソフトウェアを使用して発明の表面を有する384−ウエルプレートのCAII固定化の均一性を図示する写真である。緑色および青いグレーティング領域(それぞれの色のついた領域が示されもしないし、グレイスケールにおいても明らかである)は、タンパク質が固定されたウエル領域(カラム1−5、7−11、13−17および19−23)と、緩衝だけが加えられたウエル(カラム6、12、18、24)(すなわち暗灰カラム)とに、それぞれ対応する。プレートは、例えば約0.5pm多様性(variability)未満である優れた固定化均一性を呈した。
【0098】
図12はセンサおよびポリマー層状構造組み合わせの概略図である。本開示の図解の構造の実施例は式(I)に基づいて示される。インサイチュ形成されたポリマーゲルは、センサ表面または結合層改質センサに付着されるが、結合層改質センサは上記の式(I)の−A−、または、代わりに−W−R−M−の少なくとも1つの共有結合または基により修飾されており、それら式中で、
Mは、表面金属または金属酸化物、例えば少なくとも1つの共有結合によってセンサ基質に付着されるSiまたはTi酸化物、であり、
は、例えば、アルキル、芳香族か例えばプロピルまたはフェニルのような二価リンカーであり、
、RおよびRは例えば、独立にHまたはCHであってもよく、
Wは、例えばアミド(−C(=O)−NR)、または、好ましくは、カルボキシまたはエステル基(−C(=O)−Oなどの基のような二価のリンカー基を含んでもよく、
Xは例えば、カルボン酸(−COH)、スルホン酸(−SOH)、または、リン酸(−O−P(O)(OH))またはホスホン酸(−P(O)(OH)などの基、より好ましくは、カルボン酸を含んでもよく、
Yは例えば、アミノ(−C(=O)−NR)基または、置換アミド基などの基を含んでもよく、
Zは、例えば、NHSまたはスルホ−NHS基のような、変換される得る基、すなわち、ここで図示または説明した活性化されて反応基を担うかまたは有する基を含んでもよく、
a、b、cおよびdは、例えば、1から約100の整数であってもよい。
【0099】
実施例において、(a+c)は、b以上であり、例えば、(a+c)≧b>>dであってもよい。例えば、もし(a+c):b=1:1ならば、dが約0.001から約0.2、約0.001から約0.1、または約0.001から約0.01であってもよい。
【0100】
図13は、例えばNHSまたはスルホ−NHS基のような「c」マーに追加される反応基を有するそれらを含む典型的な活性ポリマー構造を示す概略図である。
【0101】
実施例において、コポリマー層は乾燥厚さを有ことができて、すなわち、洗浄の後、例えば、約1ナノメートルから約200ナノメートルの、約2ナノメートルから約150ナノメートルの、約2ナノメートルから約100ナノメートルの、および、約2から約50ナノメートルの、全ての中間値および範囲を含むことができる。
【0102】
本開示の界面化学強化は、他のガラス、金属、TOPASアドバンスドポリマーズ社から入手可能な例えばTopas(登録商標)COC基質のプラスチック基質などの材料またはそれらの組み合せ、を含んでいる他基質に適用できる。共通に所有され出願中の2008年8月29日出願の米特許出願第12/201,029号は、生物活性物質および細胞のための結合密度を強化していたプラズマ処理環状ポリオレフィンコポリマー表面を記載している。これらのプラズマ処理環状ポリオレフィンコポリマー表面は、結合を使用して結合生物活性物質または細胞のために更に強化され得る。
【0103】
実施例において、例えば、相互に作用しているリガンドは、生物学的適合層(例えば刺激、治療の化合物、治療の候補物質、予防の候補物質、予防の試薬、化学化合物、生体分子、ペプチド、タンパク質、生体試料、例えば約500ダルトン未満の分子量を有する薬剤候補物質小分子、薬剤候補物質生物学的分子、薬剤候補物質小分子−生物学的結合、病原体またはそれらの組み合せ)と関連する生体材料に相補性ある実体から成ることができる。実施例において、結合したリガンドは、いかなる適切な方法(例えば、蛍光、導波路共鳴グレーティング(RWG)システム、表面プラズモン共鳴(SPR)、インピーダンスマススペクトル分析などの方法のような光学バイオセンサを含む標識独立検査法)によって検出され得る。
【実施例】
【0104】
以下の実施例は、上記の開示を使用する方法を記載し、同様に、本開示の様々な態様を実行するために考慮された最良の形態をより充分に記載する役目を果たすものである。これらの例が決してこの開示の範囲を制限せず、例証する目的のために示されると理解される。実施例は、比較例と比較される開示のLIDセンサを作製する方法および使用する方法を記載する。
【0105】
実施例1
2wt%のメタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MOPS)(シグマオールドリッチから)水溶液(約3.5pHから約4pHを与えるために酢酸を含んでいる)が調製されて、透明になるまで(概ね15分、約22℃)攪拌された。
【0106】
追加の洗浄なしで受け取られるように使用した露出されたEpic(登録商標)ガラスインサートは、2時間、MOPS溶液に接触され、それから、1時間、50℃にてアルゴン下で乾燥して、空気乾燥され、インサートガラス表面でシランの凝縮を確実にした。
それから、インサートは室温に冷やされて、消イオン水(DI)で洗浄されて、イソプロピルアルコールによって洗浄されて、それからアルゴンによって最後に乾燥された。
【0107】
MOPS処理されたインサートは、約5から10ミクロン−厚い層(アクリルアミド(50.3mol%)、アクリル酸(49.6mol%)およびイルガキュア184mol%の水性モノマー混合物の層)に接触された。重さが20mgのイルガキュア184(Irgacure184)(商標)(チバから)はフラスコで7mlのDI水が加えられた。それから、1.5gのアクリル酸および1.5gのアクリルアミドが加えられた。フラスコは隔壁で封止され、そして溶液はバブリングアルゴン下で15分間、脱ガスされ、500マイクロリットルのモノマー混合物がシラン処理インサート表面上に堆積した。モノマー水溶液の厚さは、疎水性処理されたガラスプレート(FDSフルオロシラン)を型締することによって達成された。インサイチュ重合は、融合ランプ(電球H、80%電力、最小ベルトスピードで5通過)を使用した紫外線下で実行された。それから、カバープレートは除去され、そして、付着しているゲル層は超音波浴槽にてDI水で充分に洗浄され、過剰材料を除去して、最後に、表面は穏和アルゴン流下で乾燥された。重合および洗浄に続いて、Epic(登録商標)インサートは、PSA接着テープを使用してコーニング社ホーリィプレートによって集められた。
【0108】
ポリマーマトリックス内に含まれたカルボン酸基は(バイオメク自動操作ワークステーションを使用して)、水溶された50mMのスルホ−NHSおよび200mMのEDCでの処理によって活性化された。このステップで、活性コポリマーは、タンパク質または、アミンカップリングによって固定され得る他の生体分子と反応され得る。このプレートは、「PAA/AAm 50/50」と称した。
【0109】
比較例1
Epic(登録商標)インサートは、WO2007/078873(米出願番号第11/448,486号)の実施例1および9によって機能化された。この例のために使用した界面化学は、プロピルアミンによって部分的に誘導体化されたエチレン−無水マレイン酸コポリマーに基づく。タンパク質は、付着ポリマーのためのタンパク質および無水物基のアミノ基間の反応によって、アミンカップリングにより捕捉された。このプレートは、「dEMA」と称した。
【0110】
比較例2
Epic(登録商標)インサートは、2008年4月10日に出願のアメリカ出願番号第61/123609号(共通に所有、譲渡された出願中の特許出願「標識独立検出のための表面およびそれの方法」)の実施例Iによって機能化された。この界面化学は、センサ表面に付着してられるエチレン−無水マレイン酸コポリマーを含む。コポリマーは、カルボキシルPEGスペーサおよびプロピルアミンによって部分的に誘導体化され、スルホN−ヒドロキシスクシンイミド(スルホ−NHS)によって、アミンカップリングのために活性化された。商用のEpic(登録商標)プレート(ID38043)は、次のごとく処理された。ホウ酸塩緩衝液pH9.2の10mMアミノPEG−4酸スペーサ(クアンタバイオデザインから)の15マイクロリットルは、各々のウエルに添加された。溶液はオートメーション化したピペッタを使用して混ぜられ、そして、プレートは1分間遠心沈降され閉じ込められた気泡を除去し、それから室温で30分間培養した。培養後、プレートは3回水洗された。水洗後、DMSOまたは水の200mMのEDC/50mMのスルホ−NHSの10マイクロリットルは、16−経絡手部ピペッタを介して各々のウエルに添加された。プレートは、800回転数/分での1分間遠心沈降された。プレートは、室温で、30分間静置された。最後に、プレートはプレート洗浄器によって洗浄された。このプレートは、「スペーサ」表面と称された。
【0111】
実施例2
炭酸脱水酵素II(CAII)固定化およびCAII/フロセミド結合アッセイ
CAII固定化は、本開示のLIDセンサ上の20mMの酢酸緩衝液pH5.5の50g/mLタンパク質、25g/mLタンパク質および10g/mLタンパク質で実行され、そして、比較例によって調製されたセンサ表面上の20mMの酢酸緩衝液pH5.5の100g/mLタンパク質、75g/mLタンパク質、50g/mLタンパク質、25g/mLタンパク質および10g/mLタンパク質で実行された。プレートは、4℃で一晩の培養で完全固定化した。
【0112】
室温での平衡化の後、プレートは、各ウエルにて、PBS(自動ワークステーションを使用)および0.1%のDMSOを含む15マイクロリットルのPBSで洗浄された。それから、フロセミドは10μMの終了濃度に至るまで加えられた。
【0113】
固定化応答および結合応答は、Epic(登録商標)機器を使用して記録された。それぞれ、固定化応答および結合応答は図4および図5に示される。
【0114】
実施例3
ストレプトアビジンの固定化(SA)およびSA/ビオチン結合アッセイ
SA固定化は、本開示および比較例のLIDセンサ上の20mMの酢酸緩衝液pH5.1の100マイクログラム/mLタンパク質、75マイクログラム/mLタンパク質、50マイクログラム/mLタンパク質、25マイクログラム/mLタンパク質および10マイクログラム/mLタンパク質で実行され。プレートは、4℃で一晩の培養で完全固定化した。室温での平衡化の後、プレートは、各ウエルにて、PBS(バイオメク自動ワークステーションを使用)および0.1%のDMSOを含む15マイクロリットルのPBSで洗浄された。それから、ビオチンは5μMの終了濃度に至るまで加えられた。固定化応答および結合応答は、Epic(登録商標)機器を使用して記録された。典型的な固定化応答は、図7、図8および図9において与えられる。
【0115】
比較例3
この例は、’470特許の開示例に従ったLIDセンサの製法を記載する。2wt%のメタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MOPS)(シグマオールドリッチから)水溶液(約3.5から約4pHを与えるために酢酸を含んでいる)が調製されて、透明になるまで(概ね15分、約22℃)攪拌された。追加の洗浄なしで受け取られるように使用した露出されたEpic(登録商標)ガラスインサートは、2時間、MOPS溶液に接触され、それから、1時間、50℃にてアルゴン下で乾燥して、空気乾燥され、インサートガラス表面でシランの凝縮を確実にした。それから、インサートは室温に冷やされて、消イオン水(DI)で洗浄されて、イソプロピルアルコール(IPA)によって洗浄されて、それからアルゴンによって最後に乾燥された。
【0116】
それからMOPS処理されたインサートは、1mol%のN−N'メチレンビスアクリルアミド架橋剤が加えられた以外、上記の実施例1記載のように処理され、そして、’470特許の実施例5にて説明したように、結果として生じる着生ゲル層の洗浄ステップがなかった。
【0117】
一時的に、基質表面上の粘着水性モノマー溶液層は、疎水性処理されたガラスカバープレート(FDSフルオロシラン)と共に型締された。インサイチュ重合は、融合ランプ(電球H、80%電力、最小ベルトスピードで5通過)を使用した紫外線下で実行された。それから、カバープレートは除去され、そして、Epic(登録商標)インサートは圧感接着(PSA)テープを使用してCorning(登録商標)ホーリィプレートによって集められた。得られた最終的なゲルの厚さは、約10ミクロンであった。
【0118】
ポリマーマトリックス内に含まれたカルボン酸基は(バイオメク自動操作ワークステーションを使用して)、水溶された50mMのスルホ−NHSおよび200mMのEDCでの処理によって活性化された。
【0119】
比較例4
炭酸脱水酵素II(CAII)固定化およびCAII/フロセミド結合アッセイ
CAII固定化は、20mMの酢酸緩衝液pH5.5の100μg/mlタンパク質で実行された。タンパク質はカラム6、12、18および24には添加されないが、むしろ酢酸緩衝液だけが添加された。プレートは、4℃で一晩の培養で完全固定化した。室温での平衡化の後、プレートは、各ウエルにて、PBS(自動ワークステーションを使用)および0.1%のDMSOを含む15マイクロリットルのPBSで洗浄された。それから、フロセミドは10マイクロモル濃度の終了濃度に至るまで加えられた。正
固定化応答および結合応答は、Epic(登録商標)機器を使用して記録された。全体の固定化応答および結合シグナルはそれぞれ、添付の表1および表2に示される。
【0120】
【表1】

【0121】
【表2】

【0122】
CAIIの全固定化は、本開示によって調製されるセンサでの約6,100pmと比較して、約65pm未満だった。この結果は、’470特許の準備の手順によって定められる厚いゲルを使用して固定化が検出できないことを証明する。
【0123】
図10に示される比較プレートの2D MAP解析は、固定化タンパク質を有するカラム(すなわちウエル)と緩衝液だけ(すなわちタンパク質なし)を有するカラムと間の識別できる相違が無いことを示した。対照的に、図11に示すように、緩衝だけのカラム、すなわち、暗い陰影をつけられた鉛直のカラムは、本開示の発明のセンサ表面を使用して固定化タンパク質を有するウエルから明らかに識別可能であった。
【0124】
その上、フロセミド結合応答は、比較例4に従って作製かつ試験されるプレートを使用して検出可能でなかった。なぜならば、本開示のセンサでの44pmと比較して、得られたのが負値(−18.2pm)であったからである。
【0125】
厚いゲルの固定化および結合応答のための証明がないので、’470特許開示の実施例は実施できず、したがって、LID検出センサに不適当である。
【0126】
本開示は、様々な種の実施例および技術に関して記載されていた。
しかし、本開示の多数変形および修飾が、開示範囲内にあると共に可能であると理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標識フリーバイオセンサ物品であって、
基質と、
基質の表面に付着した結合層と、
結合層に付着したアクリル−アクリルアミドコポリマー層と、から成り、
アクリル−アクリルアミドコポリマー層が約1ナノメートルから約100ナノメートルの乾燥厚さを有することを特徴とするバイオセンサ物品。
【請求項2】
コポリマーが式(I)のマーから成り、
【化2】

式中、
aは少なくとも1つのアクリロイルカルボン酸基を含み、
bは少なくとも1つのアクリロイルアミド基を含み、
cは生物実体を固定することに適している少なくとも1つの反応基Xを含み、
dは表面付着基Aに対する少なくとも1つの結合層を含み、
ここで、Aは基質表面に付着して、アクリロイルモノマーで共重合化した結合層基であり、
はHまたは(C1−4)アルキルであり、
およびRは各々独立にHまたは(C1−4)アルキルであり、
ポリマー層は約5ナノメートルから約50ナノメートルの乾燥厚さを有することを特徴とする請求項1のバイオセンサ物品。
【請求項3】
コポリマーはアクリル酸モノマーとアクリルアミドモノマーとの約1.0:1.5から約1.5:1.0のモル比における混合物からなり、ポリマーはモノマーの全モルに基づく約0.001から約0.0015モルパーセントの量の架橋剤を更に含むことを特徴とする請求項2のバイオセンサ物品。
【請求項4】
バイオセンサ物品を作成する方法であって、重合可能な結合層表面を有する基質とアクリロイルモノマーおよび架橋剤の混合物とを接触させ、
重合可能な結合層表面でアクリロイルモノマー混合物を重合させて、約1ミクロンから約200ミクロンの厚さを有する初期のポリマー層を形成し、そして、
ポリマー層を洗浄および乾燥して、基質に付着しかつ約2ナノメートルから約100ナノメートルの厚さを有する残存ポリマー層を生成し、
架橋剤がモノマーの総モルに基づいて約0.0015mol%未満で存在することを特徴とする方法。
【請求項5】
重合可能なアクリロイルモノマー混合物は少なくとも1つのアクリル酸モノマー、少なくとも1つのアクリルアミドモノマーまたはそれらの組み合せから成り、そして、アクリロイルモノマー混合物を重合させることが化学線照射、照射感応開始剤またはそれらの組み合せを使用して重合を開始して達成されることを特徴とする請求項4の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−127935(P2010−127935A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−266713(P2009−266713)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】