説明

模型素材

【課題】 従来、合成木材や盛り付け樹脂からは、表裏面ともに意匠性を有し、しかも作製時の歪みが少なく、機械物性にも優れる立体模型を得ることは困難であった。
【解決手段】 繊維状フィラー含有樹脂からなる内層と繊維状フィラーを含有しない樹脂からなる外層で構成される被覆層を、意匠性を有するコア材表面に有する模型素材(I);該模型素材(I)の被覆層の表面を切削加工してなる模型素材(II);および、該模型素材(II)からコア材を分離してなる、表裏面意匠性を有する模型。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、模型素材に関する。さらに詳しくは繊維状フィラーを含有する樹脂層と繊維状フィラーを含有しない樹脂層から構成される被覆層を、意匠性を有するコア材表面に有する模型素材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、模型用素材としては合成木材と呼ばれる板状の素材や、盛り付け樹脂と呼ばれる反応硬化性のペースト状樹脂をコア材表面に盛り付けて硬化させたブロック状の素材が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−328365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
合成木材を模型用素材として用いる場合は、所望の形状の模型を作製するには、合成木材が通常板状であるためこれを切削加工する必要があり、その際切り粉として廃棄される部分が切削前の合成木材重量の通常6割以上になると言われている。
また、従来合成木材を用いて作製する模型は、切削加工により形状を付与した表面の意匠の評価や、表面を成形モールドの型内面として利用することには適しているが、該模型の裏面をさらに切削加工して、表裏面ともに意匠性のある立体模型(例えば自動車のルーフ模型)にするには適さないとされる。その理由としては、模型の裏面を切削加工する場合は、形状付与済みの表面側を下に向け、NCマシンの定盤に固定しなければならず、そのためには表面形状に沿った形状の固定治具が別途必要となり、該模型の生産効率が極めて悪いことが挙げられる。
さらに、自動車のルーフ等厚さの比較的薄い大型形状の模型は合成木材の内部ひずみが原因で、切削加工中または切削加工後に反りや変形を生じる可能性があること、また、たとえ反りや変形のないルーフの模型ができたとしても、繊維素材等で補強されていない合成木材は機械物性に劣り、自動車本体の模型に取り付けると変形する恐れがあること等、強度に優れ大型形状で立体的なルーフ模型として正常に使用できない可能性が高いことも理由として挙げられる。
【0004】
これに対し盛り付け樹脂の場合は、所望形状に類似でやや小さめの概略形状を持つコア材を作製し、次に所望の形状よりやや大きめになるように盛り付け樹脂をコア材に盛り付け、反応硬化させた後に切削加工するため、切り粉として廃棄される部分が合成木材に比べ非常に少ない。
しかしながら、盛り付け樹脂の場合でも、従来表裏意匠性のある立体模型の作製には適さないとされる。その理由としては、盛り付け樹脂を用いて作製した模型は裏面が切削加工には適さないコア材であることから、切削加工により形状を付与して裏面に意匠性を持たせることができないことが挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果本発明に到達した。すなわち、本発明は、繊維状フィラー含有樹脂からなる内層と繊維状フィラーを含有しない樹脂からなる外層で構成される被覆層を、意匠性を有するコア材表面に有する模型素材(I);該模型素材(I)の被覆層の表面を切削加工してなる模型素材(II);該模型素材(II)からコア材を分離してなる、表裏面意匠性を有する模型である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の模型素材は下記の効果を奏する。
(1)表裏面意匠性を有する立体模型の作製が容易である。
(2)機械物性に優れた大型形状の立体模型の作製が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[模型素材(I)]
本発明の模型素材(I)は、繊維状フィラー含有樹脂からなる内層と繊維状フィラーを含有しない樹脂からなる外層で構成される被覆層を、意匠性を有するコア材表面に有するものである。
【0008】
該繊維状フィラーとしてはガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ザイロン繊維等が挙げられる。補強樹脂の機械物性および工業上の観点から好ましいのはガラス繊維である。
【0009】
目的とする模型を得るために必要な繊維状フィラーの形態としては、マット、網状のネット、織物(いわゆるクロス、例えば平織り、朱子織り、綾織り、横縞織り、からみ織り、斜こ織り)および編み物(いわゆるニット、例えば平編み、ゴム編み、パール編み、シングルデンビー編み、レース編み等)等が挙げられる。なかでも、コア材形状への追随性、模型の機械物性および樹脂の浸透性の観点から織物(クロス)形態が好ましい。
【0010】
模型素材(I)を構成する内層は、繊維状フィラーを含有する樹脂層部分を指し、上記繊維状フィラーで少なくとも一部が被覆された、意匠性を有するコア材表面の上方から後述の発泡性盛り付け剤をスプレー塗布し、発泡硬化させることにより形成される。
該内層の厚みは、後述する模型の機械物性および工業上の観点から好ましくは0.2〜20mm、さらに好ましくは0.5〜15mmである。
【0011】
模型素材(I)を構成する外層は、上記内層形成の際に発泡性盛り付け剤をスプレー塗布して発泡硬化させた樹脂層のうち、繊維状フィラーを含有しない樹脂層部分で、上記内層の外側部分の層を指す。該外層は、上記発泡性盛り付け剤をスプレー塗布し発泡硬化させて内層を形成させるとともに、外層まで一気に形成させてもよいし、一旦内層を形成させた後、その上にさらに発泡性盛り付け剤を塗り重ね発泡硬化させて該外層を積層して形成させてもよい。
該外層の厚みは、後述する模型の意匠性付与の自由度および模型の機械物性の観点から好ましくは2〜45mm、さらに好ましくは3〜40mmである。
【0012】
模型素材(I)の被覆層中の繊維状フィラーの含有量は、後述する模型の機械物性および裏面の外観の観点から好ましくは2〜30重量%、さらに好ましくは5〜25重量%である。
また、模型素材(I)の被覆層における内層と外層の厚みの比は、後述する模型の機械物性および模型の意匠性付与の自由度の観点から好ましくは0.01/1〜1.5/1、さらに好ましくは0.1/1〜1.2/1である。
【0013】
前記コア材としては、硬質ウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリアクリロニトリルフォーム、ポリオレフィンフォーム、ポリアミドフォームおよびポリエステルフォーム等が挙げられる。これらのうち樹脂強度および工業上の観点から好ましいのは硬質ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォームおよびポリアミドフォームである。
後述する模型の裏面に凹型および/または凸型の形状の意匠性を付与するために、該コア材表面はNCマシンや手加工によって所望の形状に切削加工することにより、模型の裏面の上記形状に対応する凸型および/または凹型の形状の意匠性が付与される。
【0014】
上記繊維状フィラーを用いてコア材の表面の少なくとも一部を被覆する方法としては、コア材表面に離型剤を塗布し乾燥した後、被覆する箇所の表面に、適当な間隔をおいて接着剤または両面テープを点状、ビード状もしくは格子状に塗布または貼り付けた後に上記繊維状フィラーをセットして半固定化する方法が挙げられる。
【0015】
[模型素材(II)]
本発明の模型素材(II)は、前記模型素材(I)の被覆層の表面を切削加工して得られるものである。
【0016】
[模型]
本発明の模型は、前記の模型素材(II)からコア材を分離して得られ、模型素材(II)における被覆層(内層と外層を含む)で構成され、内層側の裏面にコア材表面の凸型および/または凹型の形状を反映し、外層側の表面が切削加工された、表裏面ともに意匠性を有するものである。
【0017】
本発明の模型のショアD硬度は、内層部(裏面側)は機械的強度と手加工による修正作業性の観点から好ましくは65〜95、さらに好ましくは70〜90であり、外層部(表面側)は機械的強度と切削加工性の観点から好ましくは20〜70、さらに好ましくは30〜65である。
【0018】
[模型素材(I)の製造方法]
本発明の模型素材(I)は、少なくとも一部が繊維状フィラーで被覆された、意匠性を有するコア材表面に、発泡性盛り付け剤をスプレー発泡装置を用いてスプレー塗布し、発泡硬化させることにより製造することができる。
【0019】
<発泡性盛り付け剤>
上記発泡性盛り付け剤には、ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、整泡剤および触媒等を含有し、発泡硬化させてポリウレタン樹脂を形成するものが含まれる。
【0020】
ポリオールとしては、2価〜8価またはそれ以上の、高分子ポリオール[250以上のOH当量(OH価に基づく、OH当たりの分子量)を有する]、低分子ポリオール(250未満のOH当量を有する)、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
低分子ポリオールには、多価アルコール、並びに低分子OH末端ポリマー[ポリエーテルポリオール(以下PTポリオールと略記)、ポリエステルポリオール(以下PSポリオールと略記)等]が含まれる。
【0021】
上記多価アルコールには、以下のものが含まれる。
2価アルコール[炭素数(以下Cと略記)2〜20またはそれ以上)、例えばC2〜12の脂肪族2価アルコール[(ジ)アルキレングリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1 ,2−、2,3−、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールおよび3−メチルペンタンジオール(以下それぞれEG、DEG、PG、DPG、BD、HD、NPGおよびMPDと略記)、ドデカンジオール等];C6〜10の脂環含有2価アルコール[1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等];C8〜20の芳香環含有2価アルコール[キシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等];
3価〜8価またはそれ以上の多価アルコール、例えば(シクロ)アルカンポリオールおよびそれらの分子内もしくは分子間脱水物[グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールおよびジペンタエリスリトール(以下それぞれGR、TMP、PE、SOおよびDPEと略記)、1,2 ,6−ヘキサントリオール、エリスリトール、シクロヘキサントリオール、マンニトール、キシリトール、ソルビタン、ジグリセリンその他のポリグリセリン等]、糖類およびその誘導体[例えばショ糖、グルコース、フラクトース、マンノース、ラクトース、およびグリコシド(メチルグルコシド等)];
【0022】
含窒素ポリオール(3級アミノ基含有ポリオールおよび4級アンモニウム基含有ポリオール):含窒素ジオール、例えばC1〜12の脂肪族、脂環式および芳香環含有1級モノアミン[メチルアミン、エチルアミン、1−および2−プロピ ルアミン、ヘキシルアミン、1,3−ジメチルブチルアミン、1−,2−および3−アミノヘプタン、ドデシルアミン、シクロプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、ベンジルアミン等]のビスヒドロキシアルキル(C2〜4)化物[ビス(2−ヒドロキシエチル)化物、ビス(ヒドロキシプロピル)化物等、例えば米国特許第4,271,217号明細書に記載の3級窒素原子含有ポリオール]、およびそれらの4級化物[上記米国特許明細書に記載の4級化剤またはジアルキルカーボネート(C1〜4のアルキル基を有するもの、例えばジメチル、ジエチルおよびジ−i−プロピルカーボネート)が含まれる。)による4級化物]、例えば上記米国特許明細書に記載の4級窒素原子含有ポリオール;および3価〜8価またはそれ以上の含窒素ポリオール、例えばトリアルカノール(C2〜4)アミン(トリエタノールアミン等)およびC2〜12の脂肪族、脂環式、芳香族および複素環ポリアミン[例えばエチレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、トリレンジアミン、アミノエチルピペラジン]のポリヒドロキシアルキル(C2〜4)化物〔ポリ(2−ヒドロキシエチル)化物、ビス(ヒドロキシプロピル)化物等[例えばテトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、ペンタキス(2−ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン]〕、およびこれらの上記と同様の4級化物。
【0023】
低分子OH末端ポリマーには、後述のような、PTポリオール、PSポリオールおよびポリウレタン(以下PUと略記)ポリオールで250未満のOH当量を有するものが含まれる。例えば、低重合度のアルキレンオキシド(以下AOと略記)開環重合物および活性水素原子含有多官能化合物の低モルAO付加物[例えば後述のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトレメチレングリコール(以下それぞれPEG、PPG、PTMGと略記)等、ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼンおよびビスフェノールAのエチレンオキシド(以下EOと略記)2〜4モル付加物]、低縮合度の縮合PSポリオールおよびポリオールの低モルラクトン付加物[ポリカルボン酸と過剰(カルボキシル基1個当り1モル)の多価アルコールとの縮合物(例えばジヒドロキシエチルアジペート)およびEGのカプロラクトン1モル付加物]、並びに低重合度のPUポリオール[後述のポリイソシアネート(以下PIということがある。)と過剰(イソシアネート基1個当り1モル)の多価アルコールとの反応生成物(例えば後述のTDI 1モルとEG2モルとの反応生成物)]が挙げられる。
【0024】
AOには、C2〜12またはそれ以上(好ましくはC2〜4)のAO、例えばエチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、1,2−、2,3−および1,3−ブチレンオキシド、テトラヒドロフランおよび3−メチル−テトラヒドロフラン(以下それぞれEO、PO、BO、THFおよびMTHFと略記 )、1,3−プロピレンオキシド、イソBO、C5〜12のα−オレフィンオキシド、置換AO、例えばスチレンオキシドおよびエピハロヒドリン(エピクロルヒドリン等)、並びにこれらの2種以上の併用(ランダム付加および/またはブロック付加)が含まれる。
【0025】
高分子ポリオールは、通常250〜3,000またはそれ以上のOH当量を有する。該ポリオールは、通常500〜5,000またはそれ以上、好ましくは700〜4,500の数平均分子量[以下Mnと略記。測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]を有し、 好ましくは500〜6,000、さらに好ましくは700〜4,000の重量平均分子量 (以下Mwと略記。測定はGPC法による。)を有する。その例には、OH末端のポリマー[PT、PS、ポリアミド(以下PDと略記)、PU、ビニル系ポリマー(以下VPと略記) およびポリマーポリオール(以下P/Pと略記)]、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
OH末端のPTには、AOの開環重合物、少くとも2個(2個〜8個またはそれ以上)の活性水素原子を有する開始剤に1種または2種以上のAOを付加させた構造を有するPTポリオール(AO付加物)、およびそれら(同一または異なる)の2分子またはそれ以上をカップリング剤でカップリングさせてなるPTポリオールが含まれる。
【0026】
AO付加における開始剤には、例えば多価アルコール(前記)、ヒドロキシルアミン、アミノカルボン酸およびヒドロキシカルボン酸;多価フェノール;並びにポリカルボン酸(後述)が含まれる。
【0027】
ヒドロキシルアミンには、C2〜10の、(ジ)アルカノールアミン、シクロアルカノールアミンおよびアルキルアルカノールアミン、例えば2−アミノエタノール、3−アミノプロパノール、1−アミノ−2−プロパノール、4−アミノブタノール、5−アミノペンタノール、6−アミノヘキサノール、ジエタノールアミン、ジ−n−およびi−プロパノールアミン、3−アミノメチル −3,5,5−トリメチルシクロヘキサノール、メチルエタノールアミンおよびエチルエタノールアミンが含まれる。好ましいのは、2−アミノエタノールである。
【0028】
アミノカルボン酸には、C2〜12のもの、例えばアミノ酸[グリシン、アラニン、バリン、(イソ)ロイシン、フェニルアラニン等]、ω−アミノアルカン酸(例えばω−アミノカプロン、ω−アミノエナント、ω−アミノカプリル、 ω−アミノペルゴン、ω−アミノカプリン、11−アミノウンデカンおよび12−アミノドデカン酸)、および芳香族アミノカルボン酸(例えばo−、m−およびp−アミノ安息香酸)が含まれる。
ヒドロキシカルボン酸には、上記アミノカルボン酸に相当する(NHがOに置換った)もの(例えばω− ヒドロキシカプロン酸、サリチル酸、p−およびm−ヒドロキシ安息香酸)、並びにグリコール酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸およびベンジル酸が含まれる。好ましいのは12−アミノドデカン酸である。
【0029】
多価フェノールには、C6〜18の2価フェノール、例えば単環2価フェノール(ハイドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ウルシオール等)、ビスフェノール(ビスフェノールA、F、C、B、ADおよびS、ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタン等)、および縮合多環2価フェノール[ジヒドロキシナフタレン(例えば1,5−ジヒドロキシナフタレン)、ビナフトール等];並びに3価〜8価またはそれ以上の多価フェノール、例えば単環多価フェノール(ピロガロール、フロログルシノール、および1価もしくは2価フェノール(フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール等)のアルデヒドもしくはケトン(ホルムアルデヒド、グルタールアルデヒド、グリオキザール、アセトン)低縮合物(例えばフェノールもしくはクレゾールノボラック樹脂、レゾールの中間体、フェノールとグリオキザールもしくはグルタールアルデヒドの縮合反応によって得られるポリフェノール、およびレゾルシンとアセトンの縮合反応によって得られるポリフェノール)が含まれる。
【0030】
開始剤へのAOの付加は、通常の方法で行うことができ、無触媒、または触媒(アルカリ触媒、アミン触媒、酸性触媒等)の存在下(とくにAO付加の後半の段階で)に常圧または加圧下に1段階または多段階で行なわれる。2種以上のAOは、ランダム付加、ブロック付加、両者の組合せ(例えばランダム付加に次いでブロック付加)のいずれでもよい。
AO付加物のカップリング剤には、ポリハライド、例えばC1〜6のアルカンポリハライド(例えばC1〜4のアルキレンジハライド:メチレンジクロラ イド、1,2−ジブロモエタン等);エピハロヒドリン(エピクロルヒドリン等);およびポリエポキシドが含まれる。
【0031】
OH末端のPTの例には、PTジオール、例えばポリアルキレングリコール(以下PAGと略記)[例えばPEG、PPGおよびPTMG、ポリ−3−メチルテトラメチレンエーテルグリコール]、共重合ポリオキシアルキレンジオール〔EO/PO共重合ジオー ル、THF/EO共重合ジオール、THF/MTHF共重合ジオール等(重量比、例えば1/9〜9/1)〕、芳香環含有ポリオキシアルキレンジオール[ポリオキシアルキレンビスフェノールA(ビスフェノールAのEOおよび/ またはPO付加物等)];および3官能以上のPTポリオール、例えばポリオキシプロピレントリオール(GRのPO付加物等);並びにこれらの1種以上をメチレンジクロライドでカップリングしたものが含まれる。
【0032】
OH末端のPSには、縮合PSポリオール、ポリラクトン(以下PLと略記 )ポリオール、ヒマシ油系ポリオール[ヒマシ油(リシノール酸トリグリセリド)およびそのポリオール変性物]、およびポリカーボネートポリオールが含まれる。
縮合PSポリオールは、ポリオールとポリカルボン酸類(酸もしくはそのエステル形成性誘導体を指す。以下同様。)(および必要によりヒドロキシカルボン酸)との重縮合またはポリオールとポリカルボン酸無水物およびAOとの反応により、PLポリオールはポリオールを開始剤とするラクトンの開環付加(またはポリオールとヒドロキシカルボン酸との重縮合)により、ヒマシ油のポリオール変性物はヒマシ油とポリオールとのエステル交換反応により、そしてポリカーボネートポリオールはポリオールを開始剤とするアルキレンカーボネートの開環付加/重縮合、ポリオールとジフェニルもしくはジアルキルカーボネートの重縮合(エステル交換)、またはポリオールもしくは2価フェノール(前記のもの:ビスフェノールA等)のホスゲン化により、製造することができる。
【0033】
PSの製造に用いるポリオールは、通常1,000以下、好ましくは30〜500のOH当量(OH当たりのMn)を有する。その例には、上記の多価アルコ ール[ジオール(例えばEG、1,4−BD、NPG、HDおよびDEG)および3価以上のポリオール(GR、TMP、PE等)]、上記PTポリオール(PEG、PPG、PTMG等)、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。縮合PSポリオールの製造に好ましいのは、ジオール、およびそれと少割合(例えば10当量%以下)の3価以上のポリオールとの併用である。
【0034】
ポリカルボン酸には、ジカルボン酸および3価〜4価またはそれ以上のポリカルボン酸が含まれる。それらの例には、C2〜30またはそれ以上(好ましくはC2〜12)の飽和および不飽和の脂肪族ポリカルボン酸、例えばC2〜15ジカルボン酸(例えばシュウ、コハク、マロン、アジピン、スベリン、アゼライン、セバチン、ドデカンジカルボン、マレイン、フマルおよびイタコン酸)、C6〜20トリカルボン酸(例えばトリカルバリルおよびヘキサントリカルボン酸)];C8〜15の芳香族ポリカルボン酸、例えばジカルボン酸(例えばテレフタル、イソフタルおよびフタル酸)、トリ−およびテトラ−カルボン酸(例えばトリメリットおよびピロメリット酸);C6〜40の脂環式ポリカルボン酸(ダイマー酸等);およびスルホ基含有ポリカルボン酸[上記ポリカルボン酸にスルホ基を導入してなるもの、例えばスルホコハク、スルホマロン、スルホグルタル、スルホアジピンおよびスルホイソフタル酸、およびそれらの塩(アルカリ金属、アルカリ土類金属およびIIB族金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、並びに4級アンモニウム塩等)];並びにカルボキシ末端のポリマーが含まれる。
【0035】
カルボキシ末端のポリマーには、PTポリカルボン酸、例えばポリオール[上記の多価アルコール、PTポリオール等]のカルボキシメチルエーテル(アルカリの存在下にモノクロル酢酸を反応させて得られる);およびPD、PSおよび/またはPUポリカルボン酸、例えば上記ポリカルボン酸を開始剤としてラクタムもしくはラクトン(前記)を開環重合させてなるポリラクタムポリカルボン酸およびPLポリカルボン酸、上記ポリカルボン酸類の2分子またはそれ以上をポリオール(前記)またはポリアミンもしくはポリイソシアネート(PI、後述)でカップリング(エステル化またはアミド化)させてなる縮合PSポリカルボン酸および縮合PDポリカルボン酸、および上記のポリカルボン酸類およびポリオールとPIを反応(ウレタン化およびエステル化もしくはアミド化)させてなるPUポリカルボン酸が含まれる。
【0036】
ラクタムには、C4〜15(好ましくはC6〜12)のもの、例えばカプロラクタム、エナントラクタム、ラウロラクタムおよびウンデカノラクタム;ラクトンには、上記ラクタムに相当する(NHがOに置換った)もの(例えばε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン)が含まれる。
【0037】
エステル形成性誘導体には、酸無水物、低級アルキル(C1〜4)エステルおよび酸ハライド、例えばコハク、マレイン、イタコンおよびフタル酸無水物 、テレフタル酸ジメチル、並びにマロニルジクロライドが含まれる。
縮合PSポリオールの製造に好ましいのは、ジカルボン酸類、およびそれと少割合(例えば10当量%以下)の3価〜4価またはそれ以上のポリカルボン酸類との併用である。
ラクトンおよびヒドロキシカルボン酸には前掲のものが含まれる。
アルキレンカーボネートには、C2〜6のアルキレン基を有するもの、例えばエチレンおよびプロピレンカーボネートが含まれる。ジアルキルカーボネートには、C1〜4のアルキル基を有するもの、例えばジメチル、ジエチルおよびジ−i−プロピルカーボネートが含まれる。
【0038】
OH末端のPSの具体例には、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリエチレン/プロピレンアジペート、ポリエチレン/ブチレンアジペート、ポリブチレン/ヘキサメチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリ(ポ リテトラメチレンエーテル)アジペート、ポリエチレンアゼレート、ポリエチ レンセバケート、ポリブチレンアゼレート、ポリブチレンセバケート、ポリカプロラクトンジオールおよびポリヘキサメチレンカーボネートジオールが含まれる。
【0039】
OH末端のPDには、ポリカルボン酸類(上記)を、ヒドロキシルアミン(前記)またはポリオール(上記)およびポリアミン(PA)(後述)と重縮合させてなる、ポリ (エステル)アミドポリオールが含まれる。
【0040】
OH末端のPUには、ポリオールをPIで変性してなるOH末端ウレタンプレポリマーが含まれる。ポリオールには、前記の、多価アルコール、高分子ポリオール(上記OH末端のPTおよびPS、並びに後述のOH末端のVPおよびP/P)、並びにこれらの2種以上の併用が含まれる。ポリオールのうち、好ましいのは高分子ポリオール(とくにOH末端のPSおよびとくにPT)およびこれと低分子ポリオール(とくに多価アルコール)との併用である。併用する低分子ポリオールの量は、要求される性能に応じて適宜変えることができるが、一般に、高分子ポリオール1当量に対して、0.0 1〜0.5当量、さらに0.02〜0.4当量とくに0.1〜0.2当量が好ましい。
OH末端ウレタンプレポリマー製造に当り、ポリオールとPIとの当量比(OH/NCO比)は、通常1.1/1〜10/1、好ましくは1.4/1〜4/1とくに 1.4/1〜2/1である。ポリオールとPIとは、1段で反応させても、多段で反応(例えばポリオールもしくはPIの一部を反応させたのち残部を反応)させてもよい。
【0041】
OH末端のVPには、ポリブタジエン系ポリオール、例えばOH末端のブタジエンホモポリマーおよびコポリマー(スチレン−ブタジエンコポリマー、アクリロニトリル−ブタジエンコポリマー等)[1,2−ビニル構造を有するもの、1,4−トランス構造を有するもの、1,4−シス構造を有するもの、およびこれらの2種以上を有するもの(1,2−ビニル/1,4−トランス/1,4−シスのモル比100〜0/100〜0/100〜0、好ましくは10〜30/50〜70/10〜30]、並びにこれらの水素添加物(水素添加率:例えば20〜100%);アクリルポリオール、例えばアクリル共重合体[ アルキル(C1〜20)(メタ)アクリレート、またはこれらと他のモノマー(スチレン、アクリル酸等)との共重合体]にヒドロキシル基を導入したもの[ヒドロキシル基の導入は主としてヒドロキシエチル(メタ)アクリレートによる];および部分鹸化エチレン/酢酸ビニル共重合体が含まれる。
【0042】
P/Pは、ポリオール(前述のOH末端のPTおよび/またはPS、またはこれと前記の多価アルコールとの混合物)中でエチレン性不飽和モノマーをその場で重合させることにより得られる。エチレン性不飽和モノマーには、アクリル系モノマー、例えば(メタ)アクリロニトリルおよびアルキル(C1〜20またはそれ以上)(メタ)アクリレート(メチルメタクリレート等);炭化水素(以下HCと略記)系モノマー、例えば芳香族不飽和HC(スチレン等)および脂肪族不飽和HC(C2〜20またはそれ以上のアルケン、アルカジエン等、例えばα−オレフィンおよびブタジエン);並びにこれらの2種以上の併用[例えばアクリロニトリル/スチレンの併用(重量比100/0〜80/20)]が含まれる。P/Pは、例えば5〜80%またはそれ以上、好ましくは30〜70%の重合体含量を有する。
上記の高分子ポリオールのうちで好ましいのはPTポリオールおよびPSポリオールである。
【0043】
本発明におけるポリイソシアネートとしては、2個〜6個またはそれ以上(好ましくは2〜3個とくに2個)のイソシアネート基を有する、下記のポリイソシアネート(PI)、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
(1)C(NCO基中の炭素を除く、以下同様)2〜18の脂肪族PI:
ジイソシアネート(以下DIと略記)、例えばエチレンDI、テトラメチレンDI、ヘキサメチレンDI(HDI)、ヘプタメチレンDI、オクタメチレンDI、デカメチレンDI、ドデカメチレンDI、2,2,4−および/または2,4,4 −トリメチルヘキサメチレンDI、リジンDI、2,6−ジイソシアナトメチ ルカプロエート、2,6−ジイソシアナトエチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレートおよびビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート;
3官能以上のPI(トリイソシアネート等)、例えば1,6,1 1−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネートおよびリジンエステルトリイソシアネート(リジンとアルカノールアミンとの反応生成物のホスゲン化物、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート、2−および/または3−イソシアナトプロピル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等);
【0044】
(2)C4〜15の脂環式PI:
DI、例えばイソホロンDI(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−DI(水添MDI)、シクロヘキシレンDI、 メチルシクロヘキシレンDI、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキシレン−1,2−ジカルボキシレートおよび2,5−および/または2,6−ノルボルナンDI;
3官能以上のPI(トリイソシアネート等)、例えばビシクロヘプタントリイソシアネート;
(3)C8〜15の芳香脂肪族PI:
m−および/またはp−キシリレンDI(XDI)、ジエチルベンゼンDIおよびα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンDI(TMXDI);
(4)C6〜20の芳香族PI:
DI、例えば1,3−および/または1,4−フェニレンDI、2,4−および/または2,6−トリレンDI(TDI)、4, 4’−および/または2,4’−ジフェニルメタンDI(MDI)、m−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンおよび 1,5−ナフチレンDI;
3官能以上のPI(トリイソシアネート等)、例えば粗製TDI、粗製MDI(ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネ ート);
【0045】
(5)PIの変性体:
上記PIの変性体、例えばカルボジイミド、ウレタン、ウレア、イソシアヌレート、ウレトイミン、アロファネート、ビウレット、オキサゾリドンおよび/またはウレトジオン基を有する変性体)、例えばMDI、TDI、HDI、IPDI等のウレタン変性物(ポリオールと過剰のPIとを反応させて得られるNCO末端ウレタンプレポリマー)、ビウレット変性物 、イソシアヌレート変性物、トリヒドロカルビルホスフェート変性物、およびこれらの混合物。
ウレタン変性に用いるポリオールには、前記の多価アルコール、PTポリオールおよび/またはPSポリオールが含まれる。好ましいのは、500以下とくに30〜200のOH当量を有するポリオール、例えばグリコール(EG、PG、DEG、DPG等)、トリオール(TMP、GR等)、4官能以上の高官能ポリオール(PE、SO等)およびこれらのAO(EOおよび/またはP O)(1〜40モル)付加物、とくにグリコールおよびトリオールである。ウレタン変性におけるPIとポリオールとの当量比(NCO/OH比)は、通常1.1/1〜10/1、好ましくは1.4/1〜4/1とくに1.4/1〜2/1である。
上記変性PIの遊離イソシアネート基含量は通常8〜33%、好ましくは1 0〜30%、とくに好ましくは12〜29%である。
【0046】
ポリオールとポリイソシアネートからポリウレタン樹脂を形成させるに際して、ポリオールを(A)、ポリイソシアネートを(B)とした場合、(A)と(B)の割合をイソシアネート指数[(NCO基/OH基の当量比)×100]で表した場合、該指数は種々変えることができるが、樹脂強度および硬質ポリウレタン樹脂の切削加工のしやすさの観点から、好ましくは80〜140、さらに好ましくは85〜120、とくに好ましくは90〜115である。
また(A)と(B)の反応方法としては、ワンショット法であっても、予め(A)の一部と(B)を反応させてNCO末端プレポリマーを形成させた後、残りの(A)と反応させるか、あるいは予め(A)と、(B)の一部を反応させてOH末端プレポリマーを形成させた後、残りの(B)と反応させるプレポリマー法であってもよい。
【0047】
本発明における発泡性盛り付け剤を構成する発泡剤、整泡剤および触媒のうち、発泡剤としては、通常ポリウレタン樹脂発泡に使用されるもの、例えば水やフロン〔クロロフルオロカーボン(CFC−11等)等]、代替フロン[ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC−141b等)、ハイドロフルオロカーボン等]、およびこれらの併用等が挙げられる。
発泡剤がフロンの場合、その使用量は、全ポリオールの重量に基づいて、発泡性盛り付け剤を硬化させてなる樹脂の低密度化、切削加工性および切削面のきめの細かさの観点から、好ましくは0.1〜10%、さらに好ましくは0.2〜5%である。
発泡剤が水の場合、その使用量は、全ポリオ−ルの重量に基づいて、ポリウレタン樹脂の低密度化、切削加工性および切削面のきめの細かさの観点から、好ましくは0.01〜2%、さらに好ましくは0.05〜1%である。
【0048】
整泡剤としては、ポリシロキサンセグメントとポリオキシアルキレンセグメントとを有するブロック共重合体を主成分とするシリコーン整泡剤、例えば、「SH−193」、「SF−2936F」[商品名、いずれも東レ・ダウコーニング・シリコ−ン(株)製]、「L−5340」、「SZ−1671」[商品名、いずれも日本ユニカ−(株)製]、およびこれらの併用等が挙げられる。
整泡剤の使用量は、発泡性盛り付け剤の重量に基づいて、発泡性盛り付け剤を硬化させてなる樹脂の切削面のきめの細かさおよび工業上の観点から、好ましくは0.1〜3%、さらに好ましくは0.3〜2%である。
【0049】
また、触媒としては、ウレタン化反応に通常使用される触媒、例えばアミン触媒[トリエチレンジアミン、テトラエチルヘキサメチレンジアミン、N,N’,N”(トリスジアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等]、金属触媒(オクチル酸第1スズ、ジブチルチンジラウレート、オクチル酸鉛、オクチル酸カリウム、オクチル酸ビスマス等)、およびこれらの併用等が挙げられる。
触媒の使用量は、発泡性盛り付け剤の重量に基づいて、硬化性およびスプレー塗布時のコア材表面への浸透性の観点から、好ましくは0.01〜5%、さらに好ましくは0.03〜3%である。
【0050】
本発明の発泡性盛り付け剤の反応性は、ポリオール成分とイソシアネート成分を混合吐出後、吐出液の泡化が始まる、いわゆるクリームタイムで評価できる。該クリームタイムはスプレー塗布時のコア材表面への浸透性および硬化性の観点から、好ましくは3〜40秒、さらに好ましくは5〜35秒である。
【0051】
<スプレー発泡装置>
発泡性盛り付け剤のスプレー発泡装置としては、通常のポリウレタンスプレー発泡装置、すなわちポリオール、触媒、発泡剤、整泡剤、その他の助剤等を混合したポリオール成分と、ポリイソシアネート成分とを、高圧下ミキシングヘッドにて衝突混合しエアレススプレー発泡させる2液型スプレー発泡装置が挙げられ、例えばグラコ(株)製のリアクターシリーズ、ガスマー(株)製のFFシリーズ等が挙げられる。
【0052】
[模型素材(II)の製造方法]
模型素材(II)は、前記模型素材(I)の被覆層の表面を切削加工して得られる。該切削加工に用いる装置としては、例えば「模型作製技術マニュアル」[(財)素形材センター発行]に記載のNCマシンと呼ばれるコンピュータ制御の工作機械のうち、NCフライス盤やマシニングセンタが挙げられる。模型素材(II)は、これらの装置で切削加工後、さらに切削面をサンドペーパーで平滑にされて仕上げられる。
切削加工において使用される刃物は、ボールエンドミルやフラットエンドミルであり一般にハイス、超硬と呼ばれる材質のものが使用される。
切削加工は主として3段階の切削工程からなり、初期が粗加工、中期が中加工、最後が仕上げ加工と呼ばれる。本発明の模型素材(I)は、粗加工では好ましくは刃物の直径が20〜30mm、刃物送り速度1,000〜3,000mm/分、刃物回転数200〜5,000rpmで切削される。次に、中加工では好ましくは刃物直径10〜20mm、送り速度1,000〜2,000mm/分、回転数1,000〜3,000rpm、仕上げ加工では刃物直径5〜10mm、送り速度500〜1,500mm/分、回転数1,000〜2,000rpmで切削される。
切削加工時の模型素材(I)はコア材に半固定された状態であるので、外部から強固に固定しておく必要がある。この方法としては、例えば切削加工プログラムを数回に分割し、切削加工しない回の模型素材(I)の部分をクランプやシャコ万力を利用してNCマシンの定盤や固定台に押しつけ固定する方法が挙げられる。
【0053】
[模型の製造方法]
本発明の模型は、前記模型素材(II)からコア材を分離することにより得られ、該模型は、模型素材(II)における被覆層(内層と外層を含む)で構成され、内層側の裏面に意匠性を有するコア材表面の凸型および/または凹型の形状を反映し、外層側の表面が切削加工された、表裏面ともに意匠性を有する。
模型素材(II)からのコア材の分離は、コア材表面が予め離型剤処理されているため比較的容易に行うことができる。
【0054】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において「平面仕上げ」とあるのは「意匠性を有する表面仕上げ」を意味するものとする。すなわち、以下においては機械強度等の物性評価を行う関係上、「平面仕上げ」しているものであり、本来は凹凸のある「意匠性を有する表面仕上げ」は前記の切削加工装置で自在になし得るものである。
【0055】
実施例および比較例に使用した原料の組成、記号等は次の通りである。また、以下において「部」は重量部、「%」は重量%を表す。
ガラスクロス:厚さ0.25mmの平織りガラスクロス[商品名「WF230 100B
S6」、日東紡績(株)製]
ポリオール :グリセリンのPO付加物[商品名「サンニックスGP−400」、OH価
400、三洋化成工業(株)製]
ポリイソシアネート:ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート[商品名「ミリオネ
ートMR−200」、日本ポリウレタン工業(株)製]
整泡剤 :シリコーン整泡剤[商品名「SZ−1671」、日本ユニカー(株)製]
触媒 :トリエチレンジアミンのジプロピレングリコール溶液[商品名「DABC
O 33−LV」、三共エアープロダクツ(株)製]
【0056】
実施例および比較例で使用した素材、装置等、および評価方法は次のとおりである。
<素材>
コア材 :硬質ポリウレタンフォーム[商品名「ソフランボード80」、東洋ゴム工
業(株)製]を縦500mm、横500mm、厚さ30mmに切り出し、
NCマシン[型番「MM800」、(株)岩間工業所製]で表裏面の平面
仕上げを行った。平面仕上げにより最終厚さを28mmとした。
本板状硬質フォームの全周囲に、硬質フォーム表面からの高さが約45
mmとなるように囲いを設け、該囲まれた硬質フォームの表面と囲いに離
型剤[商品名「ダイフリーGA−6010」、ダイキン工業(株)製]を
スプレー塗布したものをコア材とした。以下においては離型剤をスプレー
塗布した硬質フォームの表面をコア材表面とする。
<装置等>
スプレー発泡装置:「リアクターE−20」、グラコ(株)製
スプレーガン :「エアパージガン」、グラコ(株)製
循風乾燥機 :「SPH−200」、エスペック(株)製
定盤 :「グラプレート517−307」、(株)ミツトヨ製
すきまゲージ :「75A19」、(株)永井ゲージ製作所製
コンターマシン :「LE−300」、(株)ラクソー製
<評価方法>
[1]発泡性盛り付け剤の反応性(単位:秒)
上記スプレー発泡装置を用い、25℃にそれぞれ温度調整したポリオール成分とイソシアネート成分を下記の実施例1と同じ混合吐出条件、配合組成で、内寸500×500×100mmの木製型内に混合吐出して発泡硬化させ、クリームタイム(秒)および発泡ポリウレタン樹脂の表面硬化時間(秒)を測定した。
[2]発泡ポリウレタン樹脂密度(単位:g/cm3
上記[1]における表面硬化時間後、型ごと循風乾燥機に入れ80℃で2時間加熱キュアした。循風乾燥機から取り出して室温(25℃)で12時間静置した後、脱型して得られた硬化物の重量と体積から密度を求め、これを発泡ポリウレタン樹脂密度(g/cm3)とした。
[3]内外層厚さ(単位:mm)
板状の模型(1)の側面から幅約10mmの端部をコンターマシンで切除し、露出した切断面の内層と外層の厚さをノギスで測定した。
[4]曲げ強度(単位:MPa)
模型から曲げ試験片をコンターマシンにて切り出し、JIS K6911に準じて曲げ強度を測定した。実施例1〜3では、ガラスクロスを含有する内層と、ガラスクロスを含有しない外層を含むように、裏面から表面まで達する試験片を模型から切り出し、また、比較例1では、ガラスクロスを含有しない、裏面から表面まで達する試験片を模型から切り出した。
[5]隙間高さ(反りの評価)(単位:mm)
模型の裏面(内層側)を下にして定盤上に置き、模型と定盤の間の隙間高さ(mm)をすきまゲージで測定した。隙間高さが高いほど反り、変形が大きいことを示す。
【0057】
実施例1
コア材表面に接着剤[商品名「アロンアルファG−10」、東亞合成(株)製]を約10cm間隔の格子上(タテヨコ各4列)に塗布し、幅50mm、長さ500mmに裁断したガラスクロスを幅の中心に接着剤の列が位置するようにして格子上に貼り付けた。使用したガラスクロス8枚の合計重量は125gであった。表1に記載の配合組成で、ポリオール成分の各原料をプラネタリーミキサーに投入し、130rpmで10分間撹拌後、20Lペール缶に入れスプレー発泡装置のポリオール成分吸引ホースを装着した。また、イソシアネート成分としてポリイソシアネートを20Lペール缶に入れ、スプレー発泡装置のイソシアネート成分吸引ホースを装着した。
表1の配合比でポリオール成分とイソシアネート成分をスプレー発泡装置で混合し、コア材表面のガラスクロスの上に8kg/分の吐出量で所定量の発泡性盛り付け剤をスプレー塗布し、発泡硬化させた。
発泡性盛り付け剤の表面に粘着性がなくなった(表面硬化時間)後、循風乾燥機に入れ80℃で2時間加熱した。その後循風乾燥機から取り出して室温(25℃)で12時間静置した。さらに前記囲いを除去して模型素材(I−1)を得た。
模型素材(I−1)のコア側をNCマシンの定盤にセットし、マグネットで固定して、直径20mm4枚刃のボールエンドミル[商品名「EBM」、オーエスジー(株)製]を用い、回転数3,000rpm、送り速度1,000mm/分、切り込み深さ0.1mmで、コア側とは反対側の表面を切削加工し平面仕上げして模型素材(II−1)を得た。 ボールエンドミルの移動経路は横(プラスX)方向に550mm移動し縦(マイナスY)方向に1mm移動、さらに逆の横(マイナスX)方向に550mm移動し縦(マイナスY)方向に1mm移動を繰り返すジグザグの経路とした。
次に、模型素材(II−1)からコア材の硬質ポリウレタンフォームを剥がし、タテ×ヨコ×厚さ=500×500×10.8mmの板状の、表裏面が平面仕上げされた(すなわち、意匠性を有する)模型(1)を得た。模型(1)の評価結果を表1に示す。
【0058】
実施例2、3
実施例1において、スプレー塗布量を低減したこと以外は実施例1と同様にして模型(2)、(3)を得て評価した。結果を表1に示す。
【0059】
比較例1
コア材表面にガラスクロスを貼り付けることなく発泡性盛り付け剤をスプレー塗布し、実施例1と同様に表裏面が平面仕上げされた(すなわち、意匠性を有する)模型(比1)を得た。模型(比1)の評価結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
上記実施例の結果から、表裏面意匠性を有する本発明の立体模型が容易に作製できること、および表1の結果から該立体模型は比較のものに比べ機械物性に極めて優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の模型用素材(I)は、表面の切削加工を経て模型用素材(II)とされ、さらにコア材を分離して、表裏面ともに意匠性を有し、しかも機械物性に優れる模型とすることができ、自動車のルーフ等、全面の形状等の評価が必要な大型の立体模型等として幅広く好適に使用できることから極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状フィラー含有樹脂からなる内層と繊維状フィラーを含有しない樹脂からなる外層で構成される被覆層を、意匠性を有するコア材表面に有する模型素材(I)。
【請求項2】
被覆層中の繊維状フィラーの含有量が、2〜30重量%である請求項1記載の模型素材(I)。
【請求項3】
請求項1または2記載の模型素材(I)の被覆層の表面を切削加工してなる模型素材(II)。
【請求項4】
請求項3記載の模型素材(II)からコア材を分離してなる、表裏面意匠性を有する模型。
【請求項5】
少なくとも一部が繊維状フィラーで被覆された、意匠性を有するコア材表面に発泡性盛り付け剤をスプレー塗布し、発泡硬化させることを特徴とする請求項1または2記載の模型素材(I)の製造方法。
【請求項6】
請求項1または2記載の模型素材(I)の表面を切削加工してなる模型素材(II)からコア材を分離することを特徴とする、表裏面意匠性を有する模型の製造方法。

【公開番号】特開2010−155373(P2010−155373A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334508(P2008−334508)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】