説明

模様付化粧料の製造方法

【課題】模様付化粧料の強度を確保しつつ、使用しても化粧料の表面模様が最後まで消えないようにする。
【解決手段】化粧皿2内に予備打型された第1の化粧料3の表面を部分的、かつ、化粧皿2の内底2aに至る深さまで除去することにより、形成しようとする模様に応じた充填空間Aを第1の化粧料3内に形成する。つぎに、第1の化粧料3に形成された充填空間A内に、第1の化粧料3とは色の異なる第2の化粧料4を充填する。そして、第2の化粧料4が充填された第1の化粧料3を第2の化粧料4と共に本打型する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、模様付化粧料の製造方法に係り、特に化粧料の表面模様を金太郎飴状に形成する手法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1から特許文献6には、化粧皿内に打型された固形化粧料の表面にレーザー光を照射することによって、絵、文字、記号、図形といった複雑な表面模様を印字する表面加工方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−151108号公報
【特許文献2】特開昭62−164610号公報
【特許文献3】特開2002−192770号公報
【特許文献4】特開2004−10494号公報
【特許文献5】特開2004−2277307号公報
【特許文献6】特開2006−62980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1から特許文献6のように、薄い深さで印字された従来の化粧料では、パフや刷毛等で擦り取っていくにつれて、表面模様が徐々に薄くなって最終的には消えてしまう。
【0005】
そこで、本発明の目的は、模様付化粧料の強度を確保しつつ、使用しても化粧料の表面模様が最後まで消えないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決すべく、本発明は、化粧皿の内部全体に予備打型された第1の化粧料の表面を、形成しようとする模様に応じて部分的、かつ、化粧皿の内底に至る深さまで除去することにより、第1の化粧料内を上下に貫通する充填空間を形成する第1のステップと、第1の化粧料に形成された充填空間内に、第1の化粧料とは色の異なる第2の化粧料を充填する第2のステップと、第2の化粧料が充填された第1の化粧料を第2の化粧料と共に本打型する第3のステップとを有する模様付化粧料の製造方法を提供する。
【0007】
ここで、本発明において、第1のステップは、第1の化粧料の表面にレーザー光を照射することによって、化粧皿の内底に至る深さの模様を彫り込むステップであることが好ましい。また、第2の化粧料は、化粧料の粉体を顆粒化した顆粒状化粧料であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1の化粧料に形成された充填空間が化粧皿の内底に至る深さを有するので、ここに第2の化粧料を充填すれば、金太郎飴のように、深さに依存することなく常に同じ模様が得られる。したがって、パフや刷毛等で化粧料表面を擦り取っていっても、表面模様が不鮮明になったり消えてしまうことがなく、最後まで同じ模様を一様に保つことができる。また、予備打型された第1の化粧料に第2の化粧料を充填し、これら全体に本打型を行うことにより、模様付化粧料の全体的な強度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】模様付化粧料の斜視図
【図2】化粧皿内に予備打型された第1の化粧料の上面図
【図3】模様に応じた充填空間が形成された第1の化粧料の上面図
【図4】第1の化粧料の充填空間内に第2の化粧料を充填する工程の説明図
【図5】第2の化粧料が充填された第1の化粧料を本打型する工程の説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施形態に係る模様付化粧料の外観斜視図である。この模様付化粧料1は、化粧皿2と、この化粧皿2内に圧縮打型された化粧料3,4と主体に構成されている。化粧皿2は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス等の金属、または、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の合成樹脂で形成されており、その上方が開口している。化粧料3,4は、ファンデーション、フェイスパウダー、アイシャドウ等のように、粉末化粧料を打型したものであるが、その露出した表面には模様が面一で表現されている。この表面模様は、金太郎飴のように、深さに依存することなく化粧皿2の内底2aに至るまで常に同じ模様(断面模様)になっている。
【0011】
なお、ユーザに新鮮味を与え、アイキャッチ効果の向上を図るべく、化粧料3,4は、「異なる色」が付されている。本明細書では、「異なる色」という用語を、両者の違いをユーザが視覚的に認識できれば足りる程度の意味合いで用いている。したがって、明度、彩度、色相の違いはもとより、同一色であっても、パール等を加えたものと、そうでないものといったように質感が異なるものも、ここでいう「異なる色」の範疇に含まれる。
【0012】
つぎに、模様付化粧料1の製造方法を図2から図5を参照しながら説明する。まず、図2に示すように、化粧皿2内に第1の化粧料3を充填し、これを予備打型する。この化粧料3は、スラリーを用いた湿式化粧料、および、化粧料の粉体を用いた乾式化粧料のどちらであってもよい。ただし、後工程において再度打型(本打型)が行われるので、ここでの予備打型は、本打型よりも緩いプレスに留める必要がある。この予備打型により、第1の化粧料3の表面が全体的に平坦化され、化粧皿2の上縁相当の均一な厚みとなる。
【0013】
つぎに、図3に示すように、化粧皿2の内部全体に予備打型された第1の化粧料3の表面を、形成しようとする模様に応じて部分的、かつ、内底2aに至る深さまで除去する。これにより、化粧料3内を上下に貫通する充填空間Aが形成される。ここで、同図に示したような曲線状の複雑な表面模様を深い深度まで彫り込むためには、レーザー光を用いることが好ましい。レーザー光の照射対象となる第1の化粧料3は、その表面が平坦化かつ均一な厚みを有するので、レーザーエネルギーの複雑な調整は必要ない。最近では、レーザー技術の進歩に伴い、高エネルギーのレーザー光のピークを極小領域に集約させることが可能になった。高ピークパワーが得られるレーザーとしては、例えば、一定周期で連続するパルスレーザ光を光ファイバで増幅してバースト状のレーザー光を出射するファイバーレーザー、Qオンスイッチをオン・オフすることでバーズト状のレーザ光を出射するYAGレーザー等が挙げられる。このようなレーザー光を化粧料3の表面に照射すれば、化粧料3が一気に昇華してそのエネルギーにより周囲の化粧料が飛び散り、焦げを生じることなく深い深度に至るまで綺麗な模様を彫り込むことができる。
【0014】
なお、この除去工程における第1の化粧料3の部分的な除去は、レーザー光による彫刻が最適ではあるが、それ以外の方法を用いてもよい。例えば、エンドミル等を用いた機械的な切削、押型による打ち抜きといった如くである。
【0015】
つぎに、図4に示すように、第1の化粧料3に形成された充填空間A内に、第2の化粧料4を充填する。一般に、形成しようとする模様が複雑になると、充填空間Aの全体に第2の化粧料4をくまなく充填することが困難になる。特に、化粧料4として粉体を用いる場合には、この問題が顕著になる。この問題を解決するためには、化粧料4として、化粧料の粉体を顆粒化した顆粒状化粧料を用いることが好ましい。処方にもよるが、一般に、顆粒は粉体そのものよりも流動性に優れているため充填空間内に行き渡り易い。また、顆粒を構成する個々の粉体自体は緩く結合しているので、力が加わると顆粒が容易に崩れる。そのため、充填空間Aの狭い部分にも顆粒が崩れて入り込み易い。したがって、化粧料4として顆粒化したものを用いれば、これを充填空間Aの隅々まで行き渡らせることができる。化粧料4を顆粒化する手法としては、例えば、粉末状の化粧料を一度プレスして仮固めした後に、ふるいで落とすといった手法、或いは、粉末状の化粧料にバインダー(油等)を入れて、揺すりながら顆粒化するといった手法等が挙げられる。この場合、化粧料4の粒子径は、充填空間Aのサイズや複雑さに応じて適宜設定すればよく、同一径のものを用いてもよいし、径が異なるものを用いてもよい。
【0016】
なお、この充填工程における第2の化粧料4の充填は、顆粒状化粧料を用いるのが最適ではあるが、それ以外のものを用いてもよい。例えば、スラリー状のもの、熱で溶けて冷えて固まる練り物、落雁状のものといった如くである。
【0017】
つぎに、図5に示すように、プレス部材5を用いて、第2の化粧料4が充填された第1の化粧料3を第2の化粧料4と共に本打型する。これにより、化粧皿2内の化粧料全体がプレスされ、予備打型された第1の化粧料3と、充填空間Aに充填された第2の化粧料4とが同時に圧縮され、所望の固化状態が得られる。なお、この本打型に先立ち、或いは、本打型を行った後に、化粧皿2に収容された化粧料3,4の表面をカット機等で薄くスライスしてもよい。これにより、化粧料3,4間の境界を鮮明に形成することができる。
【0018】
このように、本実施形態によれば、第1の化粧料3に形成された充填空間Aが化粧皿2の内底2aに至る深さを有するので、ここに第2の化粧料4を充填すれば、金太郎飴のように、深さに依存することなく常に同じ模様が得られる。したがって、ユーザが製品を使用する際、パフや刷毛等で化粧料表面を擦り取っていっても、表面模様が不鮮明になったり消えてしまうことがなく、最後まで同じ模様を一様に保つことができる。また、本実施形態によれば、予備打型された第1の化粧料3に第2の化粧料4を充填し、これら全体に本打型を行うことにより、模様付化粧料1の全体的な強度を確保できる。
【0019】
さらに、本実施形態によれば、第1の化粧料3の部分的な除去をレーザ光の照射によって行うことで、複雑な模様であっても高精度な彫り込みが可能になる。さらに、第2の化粧料4として顆粒状化粧料を用いることで、充填空間Aの狭い部分にまで第2の化粧料4を隙間なく充填することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
以上のように、本発明に係る模様付化粧料の製造方法は、ファンデーション、フェイスパウダー、アイシャドウといった様々な化粧料に広く適用できる。
【符号の説明】
【0021】
1 模様付化粧料
2 化粧皿
2a 内底
3 第1の化粧料
4 第2の化粧料
5 プレス部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
模様付化粧料の製造方法において、
化粧皿の内部全体に予備打型された第1の化粧料の表面を、形成しようとする模様に応じて部分的、かつ、前記化粧皿の内底に至る深さまで除去することにより、第1の化粧料内を上下に貫通する充填空間を形成する第1のステップと、
前記第1の化粧料に形成された前記充填空間内に、前記第1の化粧料とは色の異なる第2の化粧料を充填する第2のステップと、
前記第2の化粧料が充填された前記第1の化粧料を前記第2の化粧料と共に本打型する第3のステップと
を有することを特徴とする模様付化粧料の製造方法。
【請求項2】
前記第1のステップは、前記第1の化粧料の表面にレーザー光を照射することによって、前記化粧皿の内底に至る深さの模様を彫り込むステップであることを特徴とする請求項1に記載された模様付化粧料の製造方法。
【請求項3】
前記第2の化粧料は、化粧料の粉体を顆粒化した顆粒状化粧料であることを特徴とする請求項1または2に記載された模様付化粧料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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