説明

横圧較正用加圧装置

【課題】鉄道車両用レールの横圧較正のために両側のレール間に配置され、ロッドの伸縮によりレールを外側へ押圧するロッド伸縮式であって、ガードレールが配設された箇所において横圧較正作業を行う場合に、該ガードレールの脱着を必要としない押し横圧較正用加圧装置を提供する。
【解決手段】レール10A,10Bの内側に沿って配設されるガードレール40A,40Bを回避するように、分解組立が可能なガードレール回避部材25A,25Bを該ガードレール40A,40Bを包囲するようにロッド中間部に設け、該レール10A,10B間に荷重伝達が可能な状態に構成する。この状態からガードレール回避部材25A,25Bを分解することによりレール10A,10B間から取り外し可能となる。荷重センサ22A,22Bは、ガードレール回避部材25A,25Bの各外面に取付けられて、レール10A,10Bの各頭側面を押圧し、押圧荷重を直接測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用レールの横圧較正のために、レールに横圧荷重を強制的に付加する横圧較正用加圧装置に関し、特に、両側のレール間に配置され、油圧ジャッキなどを用いたロッドの伸縮によりレールを外側へ押圧するロッド伸縮式の横圧較正用加圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両用レールの曲線区間では、車両通過時に両側のレールに加わる輪重P及び横圧Qが測定され、脱線の危険性が判定される。すなわち、曲線区間では車両に加わる遠心力と車両の横揺れが相乗して脱線を発生させるために、両側のレールに加わる輪重P及び横圧Qが測定され、輪重Pが小さく、横圧Qが大きいほど脱線の危険性が増大することから、Q/Pは脱線係数と呼ばれている。そして、車両通過ごとに輪重P及び横圧Qが測定され、これらから求めた脱線係数Q/Pの値に基づいて、脱線の危険性が判定される。
【0003】
レールに加わる輪重P及び横圧Qを測定する方法として一般的なのは、レールに取り付けた歪みゲージの出力からこれらを測定する方法である。輪重Pはレールのウエブ部に取り付けた歪みゲージの出力から測定され、横圧Qは外軌側レールのフランジ部に取り付けられた歪みゲージの出力から測定される。この測定に関しては、特許文献1などに詳しい説明がなされている。
【0004】
このような輪重P及び横圧Qの測定で重要なことは、レールに取り付けられた歪みゲージの出力と輪重P・横圧Qとの関係を予め正確に調査しておくことである。すなわち、レールにおける歪みゲージ取り付け箇所ごとにこの関係が微妙に相違するため、それそれの歪みゲージ取り付け箇所において、レールに荷重を強制的に付加し、付加荷重と歪みゲージの出力との関係を調査しておくのである。付加荷重と歪みゲージの出力との関係は較正線などと呼ばれている。
【0005】
そして、横圧Qについての較正線を求める最も正確な方法は、図11に示すように、両側のレール10A,10Bのレール頭側面間にロッド伸縮式の加圧装置20を配置して、横圧荷重を付加する方法である。ロッド伸縮式の加圧装置20は、押圧手段としての油圧ジャッキ21をロッド中間部に装備すると共に、荷重センサとしてのロードセル22を片方のロッド先端部に装備している。
【0006】
作業では、レール10A,10Bの曲線区間における歪みゲージの30の取り付け箇所ごとに、一方のレール10Aの側にロードセル22を向けて加圧装置20をレール10A,10Bのレール頭側面間に配置し、油圧ジャッキ21を作動させることにより、もう一方のレール10Bの頭側面を反力支点としてレール10Aの頭側面に横圧荷重を付加する。レール10Aの頭側面への付加荷重は、ロードセル22によりダイレクトに検出され、この検出と同時に、歪みゲージ30の出力が検出される。複数種類の荷重についてこの作業を繰り返すことにより、レール10Aの歪みゲージ30に関して横圧Qの較正線が得られる。
【0007】
レール10Aの歪みゲージ30に関して横圧Qの較正線が得られると、レール10A,10B間から加圧装置20を取り出し、反対方向を向けて同じ操作を繰り返すことにより、レール10Bの歪みゲージ30に関して横圧Qの較正線が得られる。
【0008】
この方法は、レール10A,10Bの歪みゲージ30が取り付けられた箇所のレール頭側面に直接的に外向きの横圧荷重を付加し、且つその付加荷重を、レール頭側面に直接当接するロードセル22により測定するので、付加荷重データの信頼性に特に優れるとされているのである。しかしながら、その一方では、次のような問題もある。
【0009】
鉄道車両用レールの曲線区間においては、その曲率半径にもよるが、車輪がレール上から外側に向かって外れるのを防止するために、両側のレール10A,10Bの各内側に、脱線防止用のガードレール40A,40Bがそれぞれのレールに沿って配設されていることが多い。ガードレール40A,40Bが配設された箇所において、前述したロッド伸縮式の加圧装置20を使用しようとすると、ガードレール40A,40Bが邪魔になるため、作業の前に両側のガードレール40A,40Bを取り外し、作業後に再び両側のガードレール40A,40Bを設置し直す作業が必要になり、ガードレール40A,40Bの脱着に伴う作業工数の増加が、ロッド伸縮式加圧装置20の大きな問題の一つとなっている。
【0010】
また、歪みゲージ30が両側のレール10A,10Bに取り付けられているために、同じ箇所で加圧装置20を反転させて2回同じ作業を繰り返さなければならず、これもまた作業工数を増加させる原因になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−185666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、両側のレール間に配置されるロッド伸縮式でありながら、ガードレールが配設された箇所において作業を行う場合にも、そのガイドレールの脱着を必要としない、作業性に優れた横圧較正用加圧装置を提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、両側のレールについて横圧較正を行う場合にも、装置の反転及び再設置の作業を必要としない作業性に更に優れた横圧較正用加圧装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の横圧較正用加圧装置は、鉄道車両用レールの横圧較正のために両側のレール間に配置され、ロッドの伸縮によりレールを外側へ押圧するロッド伸縮式の横圧較正用加圧装置であって、レールの内側に沿って配設されるガードレールを回避して両側のレール間に配置されるように、分解組立が可能なガードレール回避部材がロッド中間部に設けられており、ガードレールを包囲してガードレール回避部材を組み立てることによりロッド軸方向の荷重伝達が可能な状態となり、この状態からガードレール回避部材を分解することによりガードレールから取り外し可能となることを構成上の特徴点としている。
【0015】
本発明の横圧較正用加圧装置においては、当該加圧装置がガードレールを回避して両側のレール間に配置されるように、分解組立が可能なガードレール回避部材がロッド中間部に設けられている。ガードレールを包囲してガードレール回避部材を組み立てることにより、両側のレール間に当該加圧装置が配置され、その回避部材を分解することにより、両側のレール間から当該加圧装置が取り外し可能となる。したがって、両側のレール間に当該加圧装置を配置するあたって、ガードレールの脱着が不要となる。
【0016】
部材配置位置に関しては、ガードレール回避部材は両側のガードレール配置位置に対応してロッド両端側に取り付け可能とするのが好ましく、荷重センサはロッド両端部に取り付け可能とするのが好ましい。ガードレール回避部材をロッド両端側に取り付け可能とすれば、両側のガードレールを共に取り外すことなく押圧操作を行うことができ、荷重センサをロッド両端部に取り付け可能とすれば、両側のレールに同時に押圧力を付加することができ、同一箇所での繰り返し作業が不要となる。
【0017】
ガードレール回避部材の具体的構成については、ガードレールを両側から挟んで対向配置される一対の端板と、ガードレールの上側及び下側においてレール方向に所定の隙間をあけて並列しそれぞれが一対の端板を所定間隔で分離可能に連結する複数の連結棒とを有するものが、剛性確保及び分解組立作業が容易で好ましい。
【0018】
一対の端板のうちの外側の端板については、表面に荷重センサを取り付け可能とするのが好ましい。そうすれば、外側の端板がセンサ取り付けベースを兼ね、構成が簡素となる。
【0019】
外側の端板に関しては更に、表面に荷重センサを取り付けるセンサ取り付け用端板と、表面に反力パッドを取り付けるパッド取り付け用端板とが交換可能な構成とすることができる。この構成によれば、片側のレール側に荷重センサ、反対側のレール側に反力パッドを取り付ける場合の構成が特に簡単になる。
【0020】
絶縁部材をロッド中間部に設けると、両側のレール間に加圧装置を配置したときの不用意な電気的短絡事故を確実に防止することができる。
【0021】
また、両側のレールに上方から係合してロッド端部を保持する保持高さ調節が可能な保持部材を両端部に設けると、両側のレール間に当該加圧装置をセットする作業が簡単となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の横圧較正用加圧装置は、ロッド伸縮式であるので、付加荷重を測定すべきレールに外向きの横圧荷重を直接的に付加でき、較正線を作成する際の精度が高い。しかもガードレールを回避する分解組立が可能なガードレール回避部材を中間部に有するので、曲線区間内のガードレールが配置された鉄道車両用レールにおいて横圧較正用の荷重付加を行う場合に、ガードレール回避部材の分解組立により、ガードレールを取り外すことなく両側のレール間に配置され、また両側のレール間から取り外される。したがって作業性にも著しく優れる。
【0023】
荷重センサをロッド両端部に取り付け可能とすれば、両側のレールに同時に押圧力を付加することができ、同一箇所での装置反転を伴う繰り返し作業が不要となり、作業性が更に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態を示す横圧較正用加圧装置の斜視図である。
【図2】同横圧較正用加圧装置の主要部の斜視図で、組立図である。
【図3】同横圧較正用加圧装置の主要部の斜視図で、分解図である。
【図4】同横圧較正用加圧装置の使用形態を示す正面図である。
【図5】同横圧較正用加圧装置の使用形態を示す平面図である。
【図6】同取り付け状態の詳細を示す4面図で(a)は左側面図、(b)は右側面図で図5中のA−A線矢示図、(c)は正面図、(d)は平面図である。
【図7】同横圧較正用加圧装置の別の使用形態を示す正面図である。
【図8】同横圧較正用加圧装置の更に別の使用形態を示す正面図である。
【図9】ガードレール回避部材における端板連結構造を示す縦断側面図である。
【図10】(a)(b)はガードレール回避部材における別の端板連結構造を示す縦断側面図である。
【図11】本発明の基礎となる横圧較正用加圧装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
本実施形態の横圧較正用加圧装置は、図1、図4及び図5に示すように、鉄道車両用レールの曲線区間において、両側のレール10A,10Bの各頭側面に横圧荷重を同時付加するために、レール10A,10B間に掛け渡されるように配置されるロッド伸縮式の加圧装置20である。レール10A,10Bの各フランジ部には、車両通過時の歪み量から横圧を検出するために、複数個の歪みゲージ30がそれぞれ取り付けられている。
【0027】
この横圧較正用加圧装置20は、全体としてロッド形状をしており、押圧手段としてロッド中間部に丸棒状の油圧ジャッキ21を有している。油圧ジャッキ21の一端側には、絶縁部材24を介して丸棒状の連結部材23が同心状に接続されており、連結部材23の更に先端側には、ガードレール回避部材25Aが外側(レール10Aの側)を向けて接続されている。そして、ガードレール回避部材25の更に先端側には、荷重センサとしてのロードセル22Aが同心状に且つ外向きに取り付けられている。
【0028】
一方、油圧ジャッキ21の他端側には、前記ガードレール回避部材25Aと同様のガードレール回避部材25Bが、外側(レール10Bの側)を向けて取り付けられおり、その更に先端側には、荷重センサとしてのロードセル22Bが同心状に且つ外向きに取り付けられている。
【0029】
両端のロードセル22A,22Bは、向きが異なるだけで同じ構造であり、厚い円盤状の本体22aをガードレール回避部材25A,25Bの各外面に対して複数本のボルト25eにより取り外し可能に取り付ける構造になっている。ロードセル22A,22Bの中心部には円筒状の感応部22b(図3参照)が設けられており、その内側はねじ孔22c(図3参照)になっている。そして、ロードセル22A,22Bの更に外側には、当該加圧装置20をレール10A,10B間に位置決めセットするために、レール10A,10Bに各係合する保持部材26A,26Bが取り付けられている。
【0030】
以上の部材は、いずれもねじ込み、或いはねじ込みボルトにより分離可能に接続されている。油圧ジャッキ21、連結棒23、ガードレール回避部材25A,25B、ロードセル22A,22B、及び保持部材26A,26Bは金属製であり、絶縁部材24は硬質樹脂からなる。
【0031】
横圧較正用加圧装置20で特に重要な部材はガードレール回避部材25A,25Bである。ガードレール回避部材25A,25Bの詳細を、レール10Aの側のガードレール回避部材25Aについて説明する。
【0032】
ガードレール保持部材25Aは、図2、図3及び図6に詳しく示されるように、ガードレール40の両側に対向配置される一対の垂直な端板25a,25bと、端板25a,25bをガードレール40の上下で連結する複数の水平な連結棒25cとを有している。端板25a,25bは中央部が横に広い八角形の厚板であり、その高さはガードレール40の高さより大である。
【0033】
外側(レール10Aの側)の端板25aはロードセル22Aの取付けベースを兼ねる。その端板25aの中央部には、ロードセル22Aを取り付けるための複数のねじ孔25dが環状に設けられており、複数のねじ孔25dに対応する複数本のボルト25eを、同じく複数のねじ孔25dに対応してロードセル22Aに設けられた複数の貫通孔22dに通して複数のねじ孔25dにねじ込むことにより、ロードセル22Aは端板25aの中央部表面に同心状に取り付けられる。内側(レール10Bの側)の端板25bの中心部表面には、連結棒23がねじ込まれる円筒状の接続部25fが設けられている。
【0034】
端板25a,25bを連結する上下の連結棒25cは、上側に2本、下側に2本配置されている。上下各2本の連結棒25cは、端板25a,25bを平行状態に固定するべく、ガードレール40に沿った方向に所定の間隔をあけて配列されている。そして、個々の連結棒25cは、外側の端面にねじ穴25mを、内側の端面にねじ棒25nをそれぞれ有しており、端板25aの四隅部に設けられた貫通孔25jを貫通してボルト25hをねじ穴25mにねじ込み、端板25bの四隅部に設けられた貫通孔25kにねじ棒25nを通してこれにナット25iをねじ込むことにより、端板25a,25bを連結し、ガードレール保持部材25Aの組立を行う。また、ボルト25h・ナット25iを緩めて取り外すことにより、ガードレール回避部材25Aは分解される。
【0035】
ここで、連結棒25cの内側の端面から突出するねじ棒25nは、図9に示すように、連結棒25cの内側の端面に設けられたねじ穴25pに一端部をねじ込み固定することにより形成されている。
【0036】
端板25a,25bと上下の連結棒25cとの間をガードレール40が通過するように、連結棒25cの長さ、すなわち端板25a,25bの間隔はガードレール40の奥行きより大とされており、上下の連結棒25cの間隔はガードレール40の高さより大とされている。
【0037】
また、横圧較正用加圧装置20の全長は、油圧ジャッキ21が縮んだ状態でレール10A,10B間の内寸より短くなり、油圧ジャッキ21が伸びた状態でレール10A,10B間の内寸より大きくなるように設定されている。これにより、レール10A,10Bの各頭側面に横圧荷重を同時付加することが可能となる。
【0038】
横圧較正用加圧装置20をレール10A,10B間にセットするために、ロードセル22A,22Bの両端側に取り付けられる保持部材26A,26Bは同一構造であり、ロードセル22A,22Bの両端側に外側を向いて取り付けられている。保持部材26A,26Bの詳細な構造を、レール10Aの側のものについて、図2、図3及び図6を参照して説明する。
【0039】
保持部材26Aは、横長の水平なベース26aの両端部から外側へ延出した一組の水平部26bと、前記ベース26aの中央部から下方へ延出した垂直部26cとを有している。水平部26bはレール10Aに対する係合部であり、係合高さを調節するために垂直な高さ調整ボルト26dが回動可能にねじ込まれている。垂直部26cには、取付けボルト26eが貫通する貫通孔が設けられると共に、ロードセル22Aの円筒状の感応部22bに当接するように、内側に向けて突出する円筒部26fが設けられている。そして、前記貫通孔を通し、円筒部26f内を通して取付けボルト26eをロードセル22Aの感応部22b内にねじ込むことにより、保持部材26Aがロードセル22Aの外側に取り付けられると共に、取付けボルト26eの頭部が垂直部26cから外側へ突出して、ロードセル22Aの受圧部となる。
【0040】
次に、本実施形態の横圧較正用加圧装置20の使用方法及び機能を、両側のレール10A,10Bの歪みゲージ取り付け箇所における横圧較正線を求める場合について、主に図4及び図5を参照して説明する。レール10A,10Bは曲線区間に配置されており、歪みゲージ30はレール10A,10Bの各フランジ部に取り付けられている。また、レール10A,10Bの内側には脱線防止用のガードレール40A,40Bがレール10A,10Bに沿って設けられている。
【0041】
レール10A,10Bの歪みゲージ取り付け部における横圧較正線を求めるには、先ず横圧較正用加圧装置20のガードレール回避部材25A,25Bを分解した後、ガードレール40A,40Bを取り囲んで、再び回避部材25A,25Bを組み立てる。他の部材も連結して、レール10A,10B間で加圧装置20を完成させる。同時に、加圧装置20の両端に取付けられた保持部材26A,26Bの取付けボルト26eの各頭部(受圧部)の先端面間の距離(加圧装置20の有効長)が、レール10A,10Bの内寸(頭部側面間の距離)より若干小さくなるように、油圧ジャッキ21を操作する。
【0042】
レール10A,10B間で加圧装置20の組立が完了すると、加圧装置20をレール10A,10B間で位置決めする。具体的には、両端の保持部材26A,26Bの高さ調整ボルト26a,26dをレール10A,10Bの頭頂面に当接させる。これにより、レール10A,10B間に加圧装置20が保持される。この状態で保持部材26A,26Bの高さ調整ボルト26dを操作することにより、保持部材26A,26Bの取付けボルト26eの各頭部(ロードセル22Aの受圧部)を、レール10A,10Bの頭側面の所定レベルに調整する。
【0043】
こうしてレール10A,10B間で加圧装置20が位置決めされると、油圧ジャッキ21を伸ばす。これにより、保持部材26A,26Bの取付けボルト26eの各頭部(ロードセル22A,22Bの各受圧部)が両側のレール10A,10Bの各頭側面に同時に押圧され、その押圧荷重がロードセル22A,22Bにより測定される。
【0044】
そして、このときレール10A,10Bの各フランジ部に取り付けられた歪みゲージ30により、ゲージ取り付け部の歪み量を測定する。複数の押圧荷重について、押圧荷重と歪み量との関係を測定することにより、両側のレール10A,10Bの歪みゲージ取り付け部における横圧較正線が同時に求まる。
【0045】
このように、本実施形態の横圧較正用加圧装置20を使用すれば、その加圧装置20がレール10A,10B間に配置されるロッド伸縮式であるにもかかわらず、レール10A,10Bの内側に設けられるガードレール40A,40Bを取り外す必要がない。しかも、両側のレール10A,10Bについて同時に横圧較正線を求めることができる。更に、レール10A,10Bの各頭側面に付加される荷重を、その頭側面を直接押圧するロードセル22A,22Bで測定するので、荷重測定値の信頼性が高い。したがって、高精度な横圧較正を、両側のレール10A,10Bに対して同時に作業性よく能率的に行うことができる。
【0046】
また、加圧装置20で横圧荷重を付加するときに、両側のレール10A,10B間が電気的に短絡状態になると、鉄道車両用レールの信号系統に支障をきたすが、ロッド中間部に絶縁部材24を装備しているので、レール10A,10B間を短絡させる危険がない。すなわち、本実施形態の横圧較正用加圧装置20では保持部材26A,26Bを使用しているので、レール10A,10Bの頭側面に当接するボルト26eの各頭部(ロードセル22Aの受圧部)を絶縁しても、レール10A,10B間を絶縁することは難しいが、ロッド中間部に絶縁部材24を装備していることにより、保持部材26A,26Bの使用とは無関係にレール10A,10B間を絶縁できる。
【0047】
本実施形態の横圧較正用加圧装置20においては又、ガードレール回避部材25A,25Bの各外側の端板25a,25bがロードセル22A,22Bの取付けベースを兼ねているので、部品点数が少なく、経済性が高い。
【0048】
本実施形態の横圧較正用加圧装置20においては、ガードレール回避部材25A,25Bの外側の端板25aを利用して装置両端にロードセル22A,22Bを設けたが、図7に示すように、一方のガードレール回避部材25Aにおいて、外側の端板25aを押圧パッド保持板兼用の端板25qに変更すれば、一方のレール10Aの頭側面を半力支点として他方のレール10Bの頭側面に横圧荷重を加え、その荷重を測定することもできる。押圧パッド保持板兼用の端板25qは、中央部外面に反力パッド27をねじ込むための円筒状の取付け部25rを有している。反力パッド27は保持部材26Aの取付け具も兼ねている。
【0049】
レール10A,10Bの一方について横圧較正線を求める場合に、図7の加圧装置20は有効である。
【0050】
本実施形態の横圧較正用加圧装置20においては又、ガードレール40A,40Bが両側に存在することを前提として、ガードレール回避部材25A,25Bを加圧装置両端側に設けたが、ガードレール40A,40Bの一方しか存在しない場合、あるいはガードレール40A,40Bの一方が取り外されている場合は、図8に示すように、その側のガードレール回避部材25Aを省略することもできる。このため、存在しないガードレール回避部材25Aの位置に、厚肉円盤状のセンサ保持部材28及び丸棒状の連結部材29が設けられている。
【0051】
センサ保持部材28の表面には、ロードセル22Aが複数本のボルトにより装着されている。連結部29はセンサ保持部材28を連結部材23と接続する。センサ保持部材28及び連結部材29の合計長さは、ガードレール回避部材25Aと同じ長さである。
【0052】
図8の加圧装置20も、本実施形態の横圧較正用加圧装置と同様に、両側のレール10A,10Bについて横圧較正線を同時に求めることができる。
【0053】
ガードレール回避部材25A,25Bに関し、両側の端板25a,25bを連結する連結棒25の内側の端面から突出するねじ棒25nは、上述の実施形態では、連結棒25cの内側の端面に設けられたねじ穴25pに一端部をねじ込み固定することにより形成されているが(図9参照)、図10(a)に示すように、連結棒25cの端部から切り出すことによっても形成することができる。更に、連結棒25cは端板25a,25bに対しボルト25h・ナット25iにより固定されるが、図10(b)に示すように、両端ともねじ棒25nへのナット25iによって固定することもできる。ここにおけるねじ棒25nも、連結棒25cの端面にねじ込み固定されたものでも、端部から切り出しにより形成されたものでもよい。
【0054】
更に又、連結棒25cは、上述の実施形態では、両側の端板25a,25bと分離しているが、端板25a,25bの一方に溶接等により固着することも可能である。固着した側では、ボルト25hやナット25iによる固定は不要となる。
【0055】
端板25a,25bの形状については、上記実施形態では八角形とされているが、八角形を除く、三角形以上の多角形であってもよく、円形、楕円形であってもよく、その形状を特に限定するものではない。
【0056】
連結棒25cの形状についても、上記実施形態では断面円形の丸棒とされているが、断面多角形の角棒であってもよく、その断面形状を特に限定するものではない。
【符号の説明】
【0057】
10A,10B レール
20 横圧較正用加圧装置
21 押圧手段(油圧ジャッキ)
22 荷重センサ(ロードセル)
23 連結部材
24 絶縁部材
25A,25B ガードレール回避部材
25a,25b 端板
25c 連結棒
26A,26B 保持部材
27 反力パッド
28 センサ保持部材
30 歪みゲージ
40A,40B ガードレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両用レールの横圧較正のために両側のレール間に配置され、ロッドの伸縮によりレールを外側へ押圧するロッド伸縮式の横圧較正用加圧装置であって、
レールの内側に沿って配設されるガードレールを回避して両側のレール間に配置されるように、分解組立が可能なガードレール回避部材がロッド中間部に設けられており、ガードレールを包囲してガードレール回避部材を組み立てることによりロッド軸方向の荷重伝達が可能な状態となり、この状態からガードレール回避部材を分解することによりガードレールから取り外し可能となる横圧較正用加圧装置。
【請求項2】
請求項1に記載の横圧較正用加圧装置において、ガードレール回避部材は両側のガードレール配置位置に対応してロッド両端側に取り付け可能である横圧較正用加圧装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の横圧較正用加圧装置において、荷重センサはロッド両端部に取り付け可能である横圧較正用加圧装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の横圧較正用加圧装置において、前記ガードレール回避部材は、ガードレールを両側から挟んで対向配置される一対の端板と、ガードレールの上側及び下側においてレール方向に所定の隙間をあけて並列しそれぞれが一対の端板を所定間隔で分離可能に連結する複数の連結棒とを有する横圧較正用加圧装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の横圧較正用加圧装置において、ロッド中間部に絶縁部材を有する横圧較正用加圧装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の横圧較正用加圧装置において、両側のレールに上方から係合してロッド端部を保持する保持高さの調節が可能な保持部材が両端部に取り付け可能である横圧較正用加圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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