説明

横型多段プレスを用いたベニヤ単板の処理方法及び横型多段プレス

【課題】横型多段プレスを用いた単板の熱圧処理の円滑化を図る。
【解決手段】左右のフレーム1A・1Bの間に、複数段の熱盤4A・4Bを、閉塞・離隔可能に備えた横型多段プレスに於て、所要の付属部材類を、熱盤群の前方、後方、及び下方へ限定的に備えて、熱盤群の上方を開放状と成し、熱盤群の前位に於て、繊維方向を垂直方向に揃えて待機させた複数枚の単板11を、搬入用把持部材を用いて各別に把持して熱盤群の上方まで移送した後に、各単板11を各熱盤4A・4Bの間隔内に下降させて把持を開放し、更に、搬入用把持部材を熱盤群の上方へ上昇させてから、各熱盤4A・4Bを閉塞させて、各単板11を所要時間だけ熱圧する。次いで、各熱盤4A・4Bを離隔させた後に、熱圧処理済みの各単板11を、搬出用把持部材を用いて各別に把持して、熱盤群の上方まで上昇させてから、熱盤群の後位の適宜場所まで移送して把持を開放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横型多段プレスを用いたベニヤ単板の処理方法及び横型多段プレスの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、木質系の板材を熱圧する処理に用いる装置として、加熱蒸気・加熱油・電熱器等の適宜の熱源によって適温に加熱した熱盤の間に、板材を挟んで熱圧する、所謂、ホットプレスが公知であるが、熱盤を多段状に具備することによって、処理能力の増大化を図らんとする場合に、上下方向に多段状に備える形態を採ると、最上段部と最下段部とでは、板材に掛かる熱盤の総重量が著しく相違することになるので、熱圧に伴う板材の潰れ量や表面の平滑性などに差異が発生し、結果的に、板材の歩留りを低下させたり、或は板材の品質を不均一にしたりするなどの不都合が生じる。
【0003】
そこで、例えば特許文献1・特許文献2等に開示される如く、左右に対設されたフレーム間に、等間隔をおいて開閉自在となる複数段の熱盤を、並立的に立設して成る、所謂、横型多段プレスを用いることによって、前記不都合の解消を図らんとする試みが成されており、相応の成果を挙げるに至っているが、既知の横型多段プレスは、いずれも、熱盤群の下方に搬送コンベヤを備え、処理する複数枚の板材を、熱盤群の前方から水平方向に搬送して、各熱盤の間隔内へ搬入した後に、必要に応じては、各板材を若干上方へ持ち上げてから、各熱盤を相互に接近作動させて板材群を熱圧し、次いで、所要時間経過後に、各熱盤を相互に離隔作動させて熱圧を開放し、必要に応じて、各板材を若干下方へ押し下げてから、処理した板材群を水平方向に搬送して、各熱盤の間隔内から熱盤群の後方へ搬出する処理形態を採るのが通例である。
【0004】
而して、述上の如く熱圧に先立って、予め各板材を若干上方へ持ち上げておく意図は、各板材と熱盤との相対位置を調整して、熱圧の均等化を図ることの他に、熱圧に伴って板材から滲出する接着剤・樹脂等の接着作用によって、仮に、いずれかの板材が熱盤に接着することがあっても、例えば前記特許文献2に開示される如き連結梁・押体等を介して、全ての板材を若干下方へ押し下げ得る余地を設けることによって、前記接着の解放を可能化し、搬送コンベヤによる板材群の搬出の適確化を図ることにあり、処理する板材が、例えば合板・化粧板等の如く、垂直方向及び水平方向のいずれの方向に対しても相応に剛性を有する板材である場合には、格別支障なく処理することが可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平3−39442号公報
【特許文献2】特公平3−39443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、処理する板材が、ベニヤ単板(以下、単に単板と称す)である場合に限っては、先述の如き処理形態によると、単板の特性に起因して、必ずしも良好な搬出入が行い得ず、処理が滞ったり不能化したりする不具合が生じる。詳述すると、公知の通り、単板は、繊維方向と平行方向(同方向)については、比較的剛性に富むのに対して、繊維方向と直交方向については、極めて軟弱であるという、顕著な強度の異方性を有する特異な材料であり、先述の如く搬送コンベヤを介して搬送する場合に、繊維方向を垂直方向に向けると、搬送方向の先端部分が、例えば熱盤・挿入ガイド等に接触することなどによって、僅かな抵抗を受けるだけで、搬送方向の後端側が座屈し易く、円滑な搬送が滞る虞が大きいことから、結局、前記特許文献1・2の図面に図示される如く、繊維方向を水平方向に向けて搬送せざるを得ないが、斯様に繊維方向を水平方向に向けて単板を起立させると、単板が比較的厚い場合は別として、単板が比較的薄い場合には、自重に起因する上下方向の座屈に耐え得る程の剛性を有しないので、適切な搬送姿勢を維持すること自体が困難であり、円滑な搬送はとても望み得ない。
【0007】
また更に、たとえ、単板が比較的厚い場合であっても、樹脂の接着作用によって、いずれかの単板が熱盤に接着した場合には、前記特許文献2に開示される如き連結梁・押体等を介して、単板の上面を下方へ押し下げても、押し力の伝達に適さない軟弱な方向に押すことになるので、少なくとも単板の中央部より下方の部分の接着を開放することは極めて困難であり、熱盤の間隔内に於て、接着した単板の中央部より上方の部分が座屈して詰まる現象が発生し、以降の処理が不能化することとなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、述上の如き横型多段プレスに於ける単板の特性に起因する問題の解消を図るべく開発したものであり、具体的には、基礎的な発明として、左右に対設されたフレーム間に、等間隔をおいて開閉自在となる複数段の熱盤を、並立的に立設して成る横型多段プレスを用いて複数枚の単板を一斉に熱圧するに際し、前記左右のフレームを連結するベッド(基台)・横梁・連結腕等の連結部材、各熱盤の左右方向への移動を案内する案内軌道・案内輪等の案内部材、各熱盤毎の開放間隔を等間隔に規制する間隔規制部材、各単板の下端位置を規制する規制部材等の付属部材類を、熱盤群の前方、後方、及び下方に限定して備えることにより、熱盤群の上方を開放状と成し、熱盤群の前位に於て、繊維方向を垂直方向に揃えて並立的に待機させた複数枚の単板を、前後方向及び上下方向へ変位可能に備えた適宜形状の適数対の搬入用把持部材を用いて各別に把持して、熱盤群の上方まで移送すると共に、各単板の少なくとも大部分を、各熱盤の間隔内に下降させた後に把持を開放して、搬入用把持部材を各熱盤の間隔外に上昇させる動作と、相互の間隔内に供給された各単板を所要時間だけ熱圧し終えた各熱盤を離隔状態とした後に、前後方向及び上下方向へ変位可能に備えた適宜形状の適数対の搬出用把持部材を、処理済みの各単板の少なくとも上端部が把持可能な高さまで下降させて、処理済みの複数枚の単板を各別に把持し、熱盤群の上方へ上昇させてから、熱盤群の後位の適宜場所まで移送して把持を開放する動作とを交互に繰り返し、複数枚の単板を間歇的に処理することを特徴とする横型多段プレスを用いた単板の処理方法(請求項1)を提案する。
【0009】
また、前記処理方法の実施に供する為に、横型多段プレスの左右のフレームを連結する連結部材、各熱盤の左右方向への移動を案内する案内部材、各熱盤毎の開放間隔を等間隔に規制する間隔規制部材、各単板の下端位置を規制する規制部材等の付属部材類を、熱盤群の前方、後方、及び下方に限定して備えることにより、熱盤群の上方を開放状と成すと共に、熱盤群の前位に於て、繊維方向を垂直方向に揃えて並立的に待機させた複数枚の単板を各別に把持することが可能な、適宜形状の適数対の搬入用把持部材を、熱盤群の前位から熱盤群の上方まで、前後方向へ移動可能に、且つ、熱盤群の上方から、把持した各単板の少なくとも大部分を、各熱盤の間隔内に下降させ得る高さまで、垂直方向へ昇降可能に備え、更に、所定の間隔を隔てて対向する各熱盤の加熱面に於ける少なくとも単板の供給領域の全長に亘って、先端部が弾性的に当接する薄板状のガイド板を、下端部に具備し、離隔状態にある各熱盤の間隔内に介入して、処理済みの各単板を各別に把持することが可能な、適宜形状の適数対の搬出用把持部材を、熱盤群の上方から、処理済みの各単板の少なくとも上端部が把持可能な高さまで、垂直方向へ昇降可能に、且つ、熱盤群の上方から熱盤群の後位まで、前後方向へ移動可能に備えて成る横型多段プレス(請求項2)と、下端部に具備したガイド板が、熱盤に接着した単板の少なくとも大半を、接着から開放するに足る高さまで、搬出用把持部材を下降させるよう構成した請求項2記載の横型多段プレス(請求項3)と、横型多段プレスの左右のフレームを連結する連結部材、各熱盤の左右方向への移動を案内する案内部材、各熱盤毎の開放間隔を等間隔に規制する間隔規制部材、各単板の下端位置を規制する規制部材等の付属部材類を、熱盤群の前方、後方、及び下方に限定して備えることにより、熱盤群の上方を開放状と成すと共に、熱盤群の前位に於て、繊維方向を垂直方向に揃えて並立的に待機させた複数枚の単板を各別に把持することが可能な、適宜形状の適数対の搬入用把持部材を、熱盤群の前位から熱盤群の上方まで、前後方向へ移動可能に、且つ、熱盤群の上方から、把持した各単板の少なくとも大部分を、各熱盤の間隔内に下降させ得る高さまで、垂直方向へ昇降可能に備え、更に、離隔状態にある各熱盤の間隔内に介入し、処理済みの各単板の下端に於ける、規制部材が当接する部分を除く、残余の大部分に当接して、各単板を各別に所望量だけ上昇させる適数個の押し上げ部材を、熱盤群の下方に昇降可能に備え、更に、処理した各単板を各別に把持することが可能な、適宜形状の適数対の搬出用把持部材を、熱盤群の上方から、処理済みの各単板の少なくとも上端部が把持可能な高さまで、垂直方向へ昇降可能に、且つ、熱盤群の上方から熱盤群の後位まで、前後方向へ移動可能に備えて成る横型多段プレス(請求項4)と、処理済みの各単板の上端部を、各熱盤の上端よりも上方へ突出させる高さまで、上昇することが可能な押し上げ部材を具備すると共に、各熱盤の上端よりも上方に突出した各単板の上端部を把持することが可能な適数対の搬出用把持部材を備えた請求項4記載の横型多段プレス(請求項5)と、所定の間隔を隔てて対向する各熱盤の加熱面に於ける少なくとも単板の供給領域の全長に亘って、先端部が弾性的に当接する薄板状のガイド板を、下端部に具備し、離隔状態にある各熱盤の間隔内に介入して、処理済みの各単板の少なくとも上端部を各別に把持することが可能な適数対の搬出用把持部材を用いて成る請求項4記載の横型多段プレス(請求項6)とを提案する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る横型多段プレスを用いた単板の処理方法によれば、熱盤群の上方を開放状と成し、熱盤群の前位に於て、繊維方向を垂直方向に揃えて並立的に待機させた複数枚の単板を、適数対の搬入用把持部材を用いて各別に把持して、熱盤群の上方まで移送すると共に、繊維方向と平行方向に下降させて、各熱盤の間隔内に供給し、次いで、相互の間隔内に供給された各単板を所要時間だけ熱圧し終えた各熱盤を離隔状態とした後に、処理済の各単板を、適数対の搬出用把持部材を用いて各別に把持して、熱盤群の上方まで繊維方向と平行方向に上昇させると共に、熱盤群の上方から、熱盤群の後位まで移送するものであるから、処理する単板が厚い場合は勿論のこと、たとえ、処理する単板が薄い場合であっても、処理の途中に於て、各単板のいずれかの部分が座屈する虞はなく、処理が滞ったり不能化したりする不具合の発生が解消される。而して、該処理方法の実施には、請求項2〜請求項6に係る横型多段プレスを用いることが可能であるが、夫々の構成の相違に基づく機能の差異については、後述する実施例の説明と共に、後に改めて詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る横型多段プレスの本体部分の正面説明図である。
【図2】図1に例示した横型多段プレスの本体部分の一部破断平面説明図である。
【図3】図1に例示した横型多段プレスの本体部分の側面説明図である。
【図4】各熱盤の離隔時に於ける間隔規制部材の拡大斜視説明図である。
【図5】本発明に係る横型多段プレスの単板搬入機構の正面説明図である。
【図6】図5に例示した単板搬入機構の側面説明図である。
【図7】本発明に係る横型多段プレスの単板搬出機構の背面説明図である。
【図8】図7に例示した単板搬出機構の側面説明図である。
【図9】図5に例示した単板搬入機構の作動説明図である。
【図10】図1〜図3に例示した横型多段プレスの本体部分の作動説明図である。
【図11】各熱盤の接近時に於ける間隔規制部材の拡大斜視説明図である。
【図12】図7に例示した単板搬出機構の作動説明図である。
【図13】図7に例示した単板搬出機構の部分拡大作動工程説明図である。
【図14】別の構成で成る単板搬出機構の背面説明図である。
【図15】更に別の構成で成る単板搬出機構の背面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図面に例示した実施の一例と共に更に詳述するが、本発明に係る横型多段プレスの全体を一つの図に収めるように図示すると、比較的小型の機器類の表示が過小となって、細部の構成の認識が不便となることから、便宜上、全体を三つの主な構成部分に分けて図示すると共に、関連する他図の機器類の一部を、各図毎に表示することによって、各図相互の位置関係が認識できるよう計らった。また、本発明に係る横型多段プレスを構成する機器類の内で、熱盤群への単板の搬出入処理に関連する機器類以外の機器類に関しては、特に制約なく、従来公知の機器類を用いて差支えないので、該機器類については、詳細な図示及び説明を省略若しくは簡略化した。更に、本発明に係る横型多段プレスを構成する機器類の作動を制御する制御機構についても、格別な制約はなく、各機器類が所望通り作動するよう制御できれば、従来公知の制御手段・制御態様で差支えないので、制御回路(制御系統)を含めて、詳細な図示及び説明を省略した。而して、実施例の説明は、分けて図示した三つの主な構成部分毎に区切って順に詳述する。
【実施例】
【0013】
先ず、図1〜図4に例示した本発明に係る横型多段プレスの本体部分(主要部分)について説明すると、図1〜図4に於て、1Aは、後述する可動フレーム1Bと対を成す固定フレームであって、可動フレーム用の前後一対のフレームガイドを兼用する基台2上の右側に固定的に備えられている。
【0014】
1Bは、前後の側面側の夫々に、後述する鉤付アーム9の鉤部位9aと係合する窓状の鉤掛け部位1a(但し、実質的に鉤部位9aと直接係合するのは窓の縁に相当する部位である)を有して成り、前記固定フレーム1Aの反対側(基台2上の左側)に配設された可動フレームであって、下部に付設されたコロ1bを介して、左右方向へ移動可能に備えられており、図示しない制御機構の制御に基づき、後述するフレーム移動機構8の作動を得て、適時、処理すべき単板11の押圧方向と同方向へ前進・後退移動させられる。尚、前記窓状の鉤掛け部位の穿設位置、及び大きさについては、単板の厚さの変更、処理枚数の不足等に適応し得るよう、鉤付アームの長さに対して、相応の余裕を有する穿設位置、及び大きさとする必要がある。
【0015】
2は、前記可動フレーム1Bの前進・後退移動をガイドする前後一対のフレームガイド兼用の基台であって、後述する熱盤ガイド5、支持部材7、フレーム移動機構8等の取付けを許容する部位も有している。
【0016】
3は、前記固定フレーム1Aの内側に配設された加圧盤であって、後述する片面加熱型の熱盤4Aと一体状を成すように断熱材4aを介して固着されると共に、該熱盤4Aに付設されたコロ4bを介して、後述する熱盤ガイド5に沿って左右方向へ移動可能に備えられており、図示しない制御機構の制御に基づき、前記固定フレーム1Aに配設された適数個(実施例は二個であるが、必要に応じて、変更可)の油圧シリンダ3aの作動を得て、適時、単板11の押圧方向と同方向へ前進・後退移動させられる。尚、図示実施例は、圧締用の油圧シリンダを所定位置へ固定的に備える態様であるが、必要に応じては、図示は省略したが、処理する単板の寸法変更等に適応し得るように、油圧シリンダを水平方向又は/及び垂直方向へ変位可能に備える態様を採ることも可能である。
【0017】
4Aは、断熱材4aを介して、前記可動フレーム1B、及び加圧盤3の夫々の内側に固着された片面加熱型の熱盤であって、加圧盤3に固着された熱盤4Aは、該熱盤4Aの前後に付設された一対のコロ4bを介して、後述する熱盤ガイド5に沿って左右方向へ移動可能に備えられいる。尚、図示する如く、加熱面の上側に面取りを施すか、或は図示は省略したが、適宜形状の単板挿入用ガイドを付設すれば、単板の挿入が容易化するので好ましい。
【0018】
4Bは、前記片面加熱型の熱盤4Aの内側に配設された複数枚の両面加熱型の熱盤であって、各熱盤4Bの前後に付設された一対のコロ4bを介して、後述する熱盤ガイド5に沿って左右方向へ移動可能に備えられている。尚、図示する如く、各加熱面の上側に面取りを施すか、或は図示は省略したが、適宜形状の単板挿入用ガイドを付設すれば、単板の挿入が容易化するので好ましい。
【0019】
5は、一端を前記固定フレーム1Aに、他端を前記基台2に夫々固着された逆L字状の加圧盤ガイド兼用の熱盤ガイドであって、上面に載せられたコロ4bを介して、前記加圧盤と一体状を成す片面加熱型の熱盤4Aと、両面加熱型の熱盤4Bの前進・後退をガイドする。尚、図示は省略したが、必要に応じては、上面側の適宜部分に、左右方向に延在するガイド溝を設けることにより、ガイドの一層の安定化を図ることも可能であり、実用的にも好ましい。
【0020】
6、6aは、各々が隣合う熱盤4A、4B、又は隣合う熱盤4B同士に分けて付設された二個で一組の間隔規制部材であって、各熱盤の前後端面の夫々に適数(少なくとも単板の処理枚数と同じ数、例えば1〜3組)付設されており、前記各熱盤同士の接近は無条件で許容し(図11参照)、且つ、各熱盤同士の離隔は一定限度までしか許容しないように規制する(図4参照)。
【0021】
7は、帯板状の支持部材であって、前記各熱盤4A、4B同士が離隔した際に、各熱盤4A、4B同士の間隔を下方から筋状に遮るように、複数条(実施例は7条)が、左右一対の連結支持具7aを介して、前記基台2の上方に付設されており、後述する単板搬入機構13を介して、前記各熱盤4A、4Bの間に挿入される単板11の下辺を支持して、間隔内からの落下を防止する。
【0022】
8は、軸8a、軸受8b、鎖車8c、無端状の鎖8d、繋止具8e、連結具8f、減速機付電動機等から成る駆動源8g等を有するフレーム移動機構であって、図示しない制御機構の制御に基づき、適時、駆動源8gを正逆駆動させて、前記可動フレーム1Bを前進・後退移動させる。
【0023】
9は、先端側に、前記可動フレーム1Bの鉤掛け部位1aと係合する鉤部位9a(但し、実質的に鉤掛け部位1aと直接係合するのは鉤の内側面に相当する部位である)を有する鉤付アームであって、基端側が、前記固定フレーム1Aに付設された枢軸受け9b、該枢軸受け9bに嵌装された枢軸9cを介して、回動自在に枢支されており、図示しない制御機構の制御に基づき、後述する揺動機構10の作動を得て、適時、図示矢印の如く揺動することにより、単板11の熱圧処理に先立って、単板11の押圧方向に対する固定フレーム1Aと可動フレーム1Bとの係止を可能化し、また熱圧処理の終了後には、当該係止を無用化する。
【0024】
10は、流体シリンダ等から成る作動部材10a、接続具10b、支軸受10c等を有する揺動機構であって、図示しない制御機構の制御に基づき、適時、前記鉤付アーム9を図示矢印の如く揺動させる。
【0025】
14は、適宜の長さを有する左右一対のガイドレールであって、前述した横型多段プレスの本体部分の前位から、開放状態にある固定フレーム1A、及び可動フレーム1Bの上方を経て、横型多段プレスの本体部分の後位に至るまで、固定的に配設されており、後述する単板搬入機構13、及び単板搬出機構15の移動をガイドする
【0026】
次に、図5及び図6に例示した本発明に係る横型多段プレスの単板搬入機構について説明すると、図5及び図6に於て、12は、左右一対の軸12a、鎖車12b、無端状の鎖12c、複数個の樋状の受け板12d、複数対の単板支え板12e、12f等を有する単板搬送機構であって、前述した横型多段プレスの本体部分の前位に配設されており、図示しない制御機構の制御に基づき、適時、駆動源(図示省略)を作動させることにより、受け板12d、及び単板支え板12e・12fを、実線で示す位置と点線で示す位置とへ交互に移動させるよう構成されており、点線で示す位置に於て、図示矢印で示す如く、各単板支え板12e・12fの間へ次々と充填される単板11の複数枚を、実線で示す位置まで移送して、後述する単板搬入機構13による単板11の抜き出しを待機する。尚、全ての単板11は、実線の位置に於て、繊維方向が垂直方向に揃うように充填する。
【0027】
13は、4本の柱部分を有する櫓状の移動枠13a、該移動枠13aの各柱部分の内側に付設された昇降ガイド13b、該昇降ガイド13bに沿って昇降可能に配設された昇降枠13c、該昇降枠13cを昇降させる流体シリンダ等から成る昇降部材13d、左右毎に各々の長さが異なって複数対を成すようスライド軸13f・13jに固着された搬入用把持部材13e・13h、スライド軸13f・13jを介して、図示矢印で示す如く、前記複数対を成す搬入用把持部材13e・13hを、実線で示す位置と点線で示す位置とへ交互に往復移動させる流体シリンダ等から成るスライド部材13g、13k等を有する単板搬入機構であって、図示しない制御機構の制御に基づき、適時、適宜の構成で成る作動機構、例えば軸、軸受、鎖車、無端状の鎖、繋止具、連結具、駆動源等を有する作動機構(図示省略)を作動させることにより、先記ガイドレール14に沿って、横型多段プレスの本体部分の前位から上位に至る位置の間を交互に前後移動するよう構成されており、横型多段プレスの本体部分の前位に於て、前記単板搬送機構12によって実線で示す位置に搬送された複数枚の単板11を、前記搬入用把持部材13e・13hにより把持して抜き出して、点線で示す位置まで上昇させ、次いで、横型多段プレスの本体部分の上位まで移送した後に、開放状態にある先記熱盤4A・4Bの間隔内へ下降させてから把持を解除することによって、熱盤4A・4Bの間隔内に複数枚の単板11を供給する。尚、図には表されていないが、長い方の搬入用把持部材13hには、スライド軸13fの貫通を許容する貫通孔が穿設されている。
【0028】
次に、図7及び図8に例示した本発明に係る横型多段プレスの単板搬出機構について説明すると、図7及び図8に於て、15は、4本の柱部分を有する櫓状の移動枠15a、該移動枠15aの各柱部分の内側に付設された昇降ガイド15b、該昇降ガイド15bに沿って昇降可能に配設された昇降枠15c、該昇降枠15cを昇降させる流体シリンダ等から成る昇降部材15d、左右毎に各々の長さが異なって複数対を成すようスライド軸15f・15jに固着された搬出用把持部材15e・15h、スライド軸15f・15jを介して、図示矢印で示す如く、前記複数対を成す搬出用把持部材15e・15hを、実線で示す位置と点線で示す位置とへ交互に往復移動させる流体シリンダ等から成るスライド部材15g、15k、前記搬出用把持部材15e・15hの下端部に付設された各々の先端部が、開放状態にある先記熱盤4A・4Bの加熱面へ弾性的に当接する薄板状のガイド板15m等を有する単板搬出機構であって、図示しない制御機構の制御に基づき、適時、適宜の構成で成る作動機構、例えば軸、軸受、鎖車、無端状の鎖、繋止具、連結具、駆動源等を有する作動機構(図示省略)を作動させることにより、先記ガイドレール14に沿って、横型多段プレスの本体部分の上位から後位に至る位置の間を交互に前後移動するよう構成されており、横型多段プレスの本体部分に於て熱圧処理された単板11を、前記搬出用把持部材15e・15hにより把持して抜き出して、点線で示す位置まで上昇させ、次いで、横型多段プレスの本体部分の後位まで移送した後に、後述する単板移送機構16の単板支え板16e・16eの間隔内へ下降させてから把持を解除するように、熱圧処理済みの単板11を搬出する。尚、図には表されていないが、長い方の搬出用把持部材15hには、スライド軸15fの貫通を許容する貫通孔が穿設されている。
【0029】
16は、左右一対の軸16a、鎖車16b、無端状の鎖16c、複数個の樋状の受け板16d、複数対の単板支え板16e等を有する単板移送機構であって、前述した横型多段プレスの本体部分の後位に配設されており、図示しない制御機構の制御に基づき、適時、駆動源(図示省略)を作動させることにより、受け板16d及び単板支え板16eを、実線で示す位置と点線で示す位置とへ交互に移動させるよう構成されており、実線で示す位置に於て、前記単板搬出機構15により、対向する単板支え板16e・16eの間に搬出される複数枚の単板11を、次々と点線で示す位置まで移送し、図示矢印で示す如く、機外への抜き取りを可能化する。
【0030】
次に、述上の如き構成で成る横型多段プレス全体の作動状態を、図9〜図13に例示した説明図をも併用しつつ説明すると、当初、単板搬入機構13は、単板搬送機構12の上方に於て、単板搬出機構15は、単板移送機構16の上方に於て夫々待機(図6、図8参照)させると共に、搬入用把持部材13eと13h、及び搬出用把持部材15eと15hは、最も上方の待機位置に於て、個別に相互に離隔する状態で待機するよう制御する。また、横型多段プレスの本体部分の熱盤4A・4Bは、少なくとも単板搬入機構13が、横型多段プレスの本体部分の上方へ移動されるまでに、開放状態(図1、図2、図4参照)とするように制御する。
【0031】
而して、複数枚の単板11が、単板搬送機構12を介して、図5に於て実線で示す位置に移送されたら、単板搬入機構13の昇降部材13dを作動させることにより、昇降枠13cを介して、搬入用把持部材13eと13hを、図5に於て実線で示す位置に下降させるよう制御し、次いで、スライド部材13g、13kを作動させて、対向する搬入用把持部材13eと13hを相互に接近させることにより、複数枚の単板11を一斉に把持してから、昇降部材13dを作動させることにより、昇降枠13cを介して、搬入用把持部材13eと13hを、図5に於て点線で示す位置に上昇させるよう制御する。
【0032】
次いで、単板搬入機構用の作動機構(図示省略)を作動させることにより、単板搬入機構13を、横型多段プレスの本体部分の上方まで移動させた後に、昇降部材13dを作動させることにより、昇降枠13c、及び搬入用把持部材13e・13hを介して、複数枚の単板11を、図9に於て実線で示す位置(乃至はそれよりも若干上方の位置)まで下降させ、次いで、スライド部材13g、13kの作動を休止させて、対向する搬入用把持部材13eと13hとによる単板11の把持を一斉に解除し、更に、昇降部材13dを作動させることにより、昇降枠13cを介して、搬入用把持部材13eと13hを、横型多段プレスの本体部分の上方へ上昇させるよう制御することにより、各熱盤4A・4Bの間隔内に複数枚の単板11を供給する。
【0033】
然る後に、先記移動機構8を作動させて、可動フレーム1Bを右側(固定フレーム側)に向けて移動させると共に、該可動フレーム1Bが概ね最右端まで移動したら、先記揺動機構10を介して、鉤付アーム9を揺動させることにより、該鉤付アーム9の鉤部位9aを可動フレーム1Bの鉤掛け部位1aに挿入し、更に、先記油圧シリンダ3aを介して、先記加圧盤3を左側(可動フレーム側)に向けて移動させるよう制御することにより、各熱盤4A・4Bの間隔内に供給された複数枚の単板11を一斉に熱圧する(図10、図11参照)。
【0034】
尚、単板群の供給を終了した単板搬入機構13は、単板搬入機構用の作動機構(図示省略)を作動させることにより、単板搬送機構12の上方へ復動させ、更に、スライド部材13g、13kを作動させて、対向する搬入用把持部材13eと13hを相互に離隔させることにより、当初の状態に復帰させ、次の単板群の供給に備えるよう制御する。また一方、単板搬入機構13が単板搬送機構12の上方へ復動するのと入れ替りに、単板搬出機構用の作動機構(図示省略)を作動させることにより、単板搬出機構15を横型多段プレスの本体部分の上方まで移動させ、熱圧処理した単板群の搬出に備えるよう制御する。
【0035】
而して、所要の熱圧時間が経過した後には、先記油圧シリンダ3aを介して、先記加圧盤3を右側(固定フレーム側)に向けて移動させ、単板11の熱圧を一斉に解除すると共に、先記揺動機構10を介して、鉤付アーム9を揺動させることにより、該鉤付アーム9の鉤部位9aを可動フレーム1Bの鉤掛け部位1aから外し、更に、先記移動機構8を作動させて、可動フレーム1Bを元の位置に向けて移動させることにより、各熱盤4A・4Bを開放状態(図1、図2、図4参照)とするように制御する。
【0036】
然る後に、単板搬出機構15の昇降部材15dを作動させることにより、昇降枠15cを介して、搬出用把持部材15eと15hを、図12に於て実線で示すように下降させるよう制御し、次いで、スライド部材15g、15kを作動させて、対向する搬出用把持部材15eと15hを相互に接近させることにより、複数枚の単板11を一斉に把持してから、昇降部材15dを作動させることにより、昇降枠15cを介して、搬出用把持部材15eと15hを、図12に於て点線で示す位置に上昇させるよう制御する。
【0037】
尚、必要に応じては、搬出用把持部材15eと15hを下降させる際に、スライド部材15g、15kの作動を一時休止させるか、或は作動力を暫時低減させるよう制御することによって、搬出用把持部材15eと15hの下端部に付設したガイド板15mが、熱盤4A・4Bの加熱面へ過剰に強く圧接しないよう配慮するのが好ましいが、いずれにしても、搬出用把持部材15eと15hを下降させる際には、図13(イ)に例示する如く、搬出用把持部材15eと15hの下端部に付設したガイド板15mが、熱盤4A・4Bの加熱面へ弾性的に圧接される故に、たとえ樹脂等の接着作用によって、熱盤4B(又は熱盤4A)の加熱面に単板11が接着することがあっても、図13(ロ)に例示する如く、搬出用把持部材15e・15hの下降に伴って、少なくとも単板11の上部の接着が剥されるように解除されるので、各単板11を支障なく把持することができ、仮に、他の部分の接着が比較的軽微であれば、接着に抗して、単板11を容易に取り出すことができる。また、必要に応じては、図14に例示する如く、前記搬出用把持部材15e・15hに代えて、各々の下端部に具備したガイド板15mが、熱盤4B(又は熱盤4A)の加熱面に接着した単板11の少なくとも大半を、接着から開放するに足る長さを有する搬出用把持部材15n・15pを備えると共に、昇降部材15dの作動長さを所要量だけ延長する構成を採れば、たとえいずれの単板11の接着が強固であっても、ガイド板15mの下降によって、少なくとも大半の接着を剥すように解除し得るので、やはり、単板11を容易に取り出すことができる。
【0038】
而して、搬出用把持部材15eと15hを、図12に於て点線で示す位置に上昇させた後には、単板搬出機構用の作動機構(図示省略)を作動させることにより、単板搬出機構15を横型多段プレスの後位へ移動させ、次いで、昇降部材15dを作動させることにより、昇降枠15cを介して、搬出用把持部材15eと15hを、図7に於て実線で示す位置(乃至はそれよりも若干上方の位置)まで下降させるよう制御し、更に、スライド部材15g、15kを作動させて、対向する搬出用把持部材15eと15hを相互に離隔させることにより、複数枚の単板11を、単板移送機構16の単板支え板16e・16eの間に搬出し、更に、昇降部材15dを作動させることにより、昇降枠15cを介して、搬出用把持部材15eと15hを、当初の待機位置まで上昇させるよう制御する。
【0039】
また更に、単板搬出機構による単板群の取り出しと概ね並行して、単板搬入機構による次位の単板群の把持を、先記手順通りに実施すると共に、単板搬出機構の横型多段プレスの後位への移動に概ね同期させて、単板搬入機構の横型多段プレスの上方への移動を実施し、以下、同様の動作の繰り返しによって、複数枚の単板を次々と熱圧処理することができるが、本発明に係る横型多段プレスを用いた単板の処理方法によれば、述上の如く、熱盤群の上方を開放状と成し、熱盤群の前位に於て、繊維方向を垂直方向に揃えて並立的に待機させた複数枚の単板を、適数対の搬入用把持部材を用いて各別に把持して、熱盤群の上方まで移送すると共に、繊維方向と平行方向に下降させて、各熱盤の間隔内に供給し、次いで、相互の間隔内に供給された各単板を所要時間だけ熱圧し終えた各熱盤を離隔状態とした後に、処理済の各単板を、適数対の搬出用把持部材を用いて各別に把持して、熱盤群の上方まで繊維方向と平行方向に上昇させると共に、熱盤群の上方から、熱盤群の後位まで移送するものであるから、処理する単板が厚い場合は勿論のこと、たとえ、処理する単板が薄い場合であっても、処理の途中に於て、各単板のいずれかの部分が座屈する虞はなく、処理が滞ったり不能化したりする不具合の発生が解消される。
【0040】
また、本発明に係る単板の処理方法を実施するに際し、図1〜図8に例示した実施例の如く、横型多段プレスの本体部分に於ける熱盤群の上方を開放状と成すと共に、熱盤群の前位に於て、繊維方向を垂直方向に揃えて並立的に待機させた複数枚の単板を各別に把持することが可能な、適宜形状の適数対の搬入用把持部材を、熱盤群の前位から熱盤群の上方まで、前後方向へ移動可能に、且つ、熱盤群の上方から、把持した各単板の少なくとも大部分を、各熱盤の間隔内に下降させ得る高さまで、垂直方向へ昇降可能に備え、更に、各々が、所定の間隔を隔てて対向する各熱盤の加熱面に於ける少なくとも単板の供給領域の全長に亘って、先端部が弾性的に当接する薄板状のガイド板を具備し、離隔状態にある各熱盤の間隔内に介入して、処理済みの各単板を各別に把持することが可能な、適宜形状の適数対の搬出用把持部材を、熱盤群の上方から、処理済みの各単板の少なくとも上端部が把持可能な高さまで、垂直方向へ昇降可能に、且つ、熱盤群の上方から熱盤群の後位まで、前後方向へ移動可能に備えて成る横型多段プレスを用いるようにすれば、樹脂等の接着作用によって、熱盤の加熱面に単板が接着することがあっても、搬出用把持部材(実質的には、ガイド板)の下降に伴って、少なくとも単板の上部の接着が解除されるので、各単板を支障なく把持することができ、仮に、他の部分の接着が比較的軽微であれば、接着に抗して、単板を容易に取り出すことができるので有効である。
【0041】
また、図14に例示した実施例の如く、各々の下端部に具備したガイド板が、熱盤に接着したベニヤ単板の少なくとも大半を、接着から開放するに足る高さまで、搬出用把持部材を下降させるよう構成して成る横型多段プレスを用いるようにすれば、たとえ接着が強固であっても、ガイド板の下降によって、少なくとも大半の接着を開放し得るので、一段と安定的に単板を取り出すことができ、一層効果的である。
【0042】
但し、本発明に係る単板の処理方法の実施に用い得る横型多段プレスとしては、前記実施例の形態に限るものではなく、例えば後述する如き形態の横型多段プレスであっても、本発明に係る単板の処理方法の実施に用いることが可能である。
【0043】
即ち、図15に例示した実施例は、横型多段プレスの本体部分に於て離隔状態にある各熱盤4A・4Bの間隔内に位置する熱圧処理済みの各単板11の下端に於ける、支持部材7が当接する部分を除く、残余の大部分に当接する適数個の押し上げ部材17a、該適数個の各押し上げ部材17aを一体状に連結する連結杆17b、該連結杆17bを介して、前記適数個の押し上げ部材17aを、各熱盤4A・4Bの間隔内に一斉に昇降させる流体シリンダ等から成る昇降部材(図示省略)等を有し、図示しない制御機構の制御を得て、熱圧処理後に於ける各熱盤4A・4Bの開放時に、各単板11を各別に所望量だけ押し上げる単板押し上げ機構17を、横型多段プレスの本体部分の下方に備えると共に、図7、図8、或は図14に例示した実施例に於ける単板搬出機構15に代えて、4本の柱部分を有する櫓状の移動枠18a、該移動枠18aの各柱部分の内側に付設された昇降ガイド18b、該昇降ガイド18bに沿って昇降可能に配設された昇降枠18c、該昇降枠18cを昇降させる流体シリンダ等から成る昇降部材18d、左右毎に各々の長さが異なって複数対を成すようスライド軸18f・18jに固着された搬出用把持部材18e・18h、スライド軸18f・18jを介して、図示矢印で示す如く、前記複数対を成す搬出用把持部材18e・18hを、実線で示す位置と点線で示す位置とへ交互に往復移動させる流体シリンダ等から成るスライド部材18g、18k等を有する単板搬出機構18を備えて成る横型多段プレスである。
【0044】
尚、前記単板押し上げ機構を、横型多段プレスの本体部分の下方に備えるに際し、昇降部材を含めた単板押し上げ機構の配設空間を確保する手段としては、例えば基台の高さを高くする態様、或は基台の基礎部分に所要容量の穴を穿設する態様、更には連結杆の前後方向に突出部位を設けると共に、昇降部材を前記突出部位へ逆向き(上向き)に備える態様等が挙げられ、要は単板押し上げ機構が支障なく収まれば足りる。
【0045】
前記の如く構成して成る横型多段プレスを用いても、本発明に係る単板の処理方法を実施することが可能であって、複数枚の単板11の繊維方向を垂直方向に向けて、横型多段プレスの本体部分の前位から本体部分の上方まで移送した後に、各熱盤4A・4Bの間隔内に下降させ、次いで、所要時間だけ熱圧処理を施した各単板11を、本体部分の上方へ取り出す際には、前記単板押し上げ機構17の押し上げ部材17aを介して、各単板11を各別に所望量だけ押し上げるものであり、而も、押し上げる方向は、各単板11の繊維方向と同方向であるから、たとえ樹脂等の接着作用によって、熱盤4A・4Bの加熱面に単板11が接着することがあっても、先記公報類に開示された既知の技術手段に比べて、より適確な押し上げ作用を奏し得て、接着の解除を図ることができる。
【0046】
因に、前記図示例の如く、処理済みの各単板の上端部を、各熱盤の上端よりも上方へ突出させる高さまで、上昇することが可能な押し上げ部材を具備する構成によれば、図からも明らかな如く、各熱盤の上端よりも上方に突出した各単板の上端部を把持することができる搬出用把持部材を備えれば足り、下端部へのガイド板の付設は無用となるが、必要に応じては、先記図1〜図8に例示した実施例に於ける単板搬出機構の搬出用把持部材と同じ形態の搬出用把持部材、つまり、下端部にガイド板を付設した搬出用把持部材を備えると共に、処理済みの各単板の下端を、各熱盤の下端よりも所望寸法だけ上方(前記図示例の場合より低くても差支えない)へ押し上げ得る高さまで、上昇することが可能な押し上げ部材を併設する構成を採ることも可能であり、斯様な構成を採れば、各単板の下端近辺の接着を、押し上げ部材による押し上げ作用により、また、各単板の上端近辺の接着を、ガイド板による剥し作用によって、夫々解除できるので、やはり、安定的な単板の取出しが可能となる。
【0047】
尚、前記いずれの実施例に於ても、各機構、各部材の形態については、図示した形態に限定するものではなく、各実施例に於ける各機構類、各部材類と同様の機能を奏し得る形態であれば差支えないので、必要に応じて、種々の設計変更を施すことが可能であり、以下、例示的に設計変更例のいくつかについて説明する。
【0048】
前記図示例の如く、横型多段プレスの本体部分に於ける左右一対のフレームの一方を、可動式とする構成によると、熱圧に必須である高価な油圧シリンダの作動長さの短縮化が図り得るので、総じて、プレス製造コストの低減化に有効であるが、本発明に係る横型多段プレスの本体部分に於ける左右一対のフレームとしては、図示は省略したが、先記公報類に開示される如き左右双方共に固定式のフレームであっても差支えなく、斯様な構成を採る場合には、当然ながら、フレーム移動機構、鉤付アーム、揺動機構等の付設は無用となる。
【0049】
また、前記図示例に於ては、横型多段プレスの本体部分に於ける各熱盤の加熱面を平滑状に表示したが、必要に応じては、水平方向(熱圧する単板の繊維方向と直交方向)に延在する細い蒸気排出溝の複数条を、各熱盤の加熱面へ平行線状に穿設することにより、熱圧に伴って単板から発生する蒸気の排出の円滑化を図る構成を採っても差支えなく、斯様な構成を採る場合に於て、対向する加熱面同士の蒸気排出溝の穿設位置は、対称状、非対称状のいずれであっても差支えない。
【0050】
また、前記図示例に例示する如く、ガイド板の下端形状をナイフ状に尖らせれば、各熱盤の加熱面と単板との境界への進入が適確化するので好ましいが、例えばガイド板の厚さが比較的薄い場合(例えば0.5mm程度)には、斯様に尖らせなくても、前記境界への進入に格別問題はなく、要は前記境界への進入に支障のない下端形状であれば足り、必要に応じては、ガイド板の下端を、波状、鋸刃状等の如き非直線状としても差支えない。
【0051】
また、前記図示例に於ては、単板搬入機構の搬入用把持部材を、飛石の如く、相互に隙間を設けて、断続的に並ぶように備える態様としたが、必要に応じては、前記図示例に於ける単板搬出機構の搬出用把持部材と同様に、水平方向(熱圧する単板の繊維方向と直交方向)へ概ね連なって並ぶように備える態様とすることも可能であり、斯様な態様によれば、繊維方向と直交方向の結合強度が不安定乃至は著しく不安定な単板(例えば繊維方向に延在する割れが、比較的狭い間隔で2条以上実在する単板、或は例えば接着テープ等を用いて剥ぎ合わされた横矧単板等)でも、安定的に処理することができる。
【0052】
また、前記図示例の如く、単板搬入機構の搬入用把持部材、単板搬出機構の搬出用把持部材、及びガイド板の夫々を、単一形状の複数対(図示例は各4対)に分割して備えるようにすれば、前記各部材の加工・組み付けが比較的容易になるので実用的であるが、前記各部材の形態としては、必ずしも斯様な分割状に限るものではなく、図示は省略したが、例えば非分割の一体状として、一対だけ備える形態でも差支えなく、或は例えば単板搬入機構の搬入用把持部材、及び単板搬出機構の搬出用把持部材を、単一形状の複数対に分割して備えると共に、ガイド板のみを非分割の一体状とする形態であっても差支えない。
【0053】
また、前記搬入用把持部材、搬出用把持部材の作動に用いる作動部材としては、図示実施例の如きスライド部材に限るものではなく、図示は省略したが、例えば前記搬入用把持部材、搬出用把持部材のいずれの対であれ、所望の対の部材を、適宜位置に配設した支軸を介して対称的に枢支すると共に、上端側に介在させた適数対のカムを用いて(必要に応じては、引張りバネ・圧縮バネ等の弾性部材を併用して)、下端側を一斉に開閉作動させることにより、単板の把持と解除とを交互に行う形態とすることも可能であり、要は、適時、単板の把持と解除とを交互に行い得る構成であれば足りる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上明らかな如く、本発明は、顕著な異方性を有する単板の熱圧処理に有益な作用・効果を奏するものであるが、必要に応じては、合板・化粧板等の板材の熱圧処理に転用することも当然可能であり、板面と平行方向(同方向)の強度が比較的劣る、薄物合板(例えば2.5mm以下の合板)、2プライ合板等の薄い板材の熱圧処理に相応に有益な作用・効果を奏する。
【符号の説明】
【0055】
1A :固定フレーム
1B :可動フレーム
2 :フレームガイド兼用の基台
3 :加圧盤
4A :片面加熱型の熱盤
4B :両面加熱型の熱盤
5 :加圧盤ガイド兼用の熱盤ガイド
6、6a :間隔規制部材
7 :支持部材
8 :フレーム移動機構
9 :鉤付アーム
10 :揺動機構
11 :単板
12 :単板搬送機構
13 :単板搬入機構
14 :左右一対のガイドレール
15、18 :単板搬出機構
16 :単板移送機構
17 :単板押し上げ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に対設されたフレーム間に、等間隔をおいて開閉自在となる複数段の熱盤を、並立的に立設して成る横型多段プレスを用いて複数枚のベニヤ単板を一斉に熱圧するに際し、前記左右のフレームを連結するベッド・横梁・連結腕等の連結部材、各熱盤の左右方向への移動を案内する案内軌道・案内輪等の案内部材、各熱盤毎の開放間隔を等間隔に規制する間隔規制部材、各ベニヤ単板の下端位置を規制する規制部材等の付属部材類を、熱盤群の前方、後方、及び下方に限定して備えることにより、熱盤群の上方を開放状と成し、熱盤群の前位に於て、繊維方向を垂直方向に揃えて並立的に待機させた複数枚のベニヤ単板を、前後方向及び上下方向へ変位可能に備えた適宜形状の適数対の搬入用把持部材を用いて各別に把持して、熱盤群の上方まで移送すると共に、各ベニヤ単板の少なくとも大部分を、各熱盤の間隔内に下降させた後に把持を開放して、搬入用把持部材を各熱盤の間隔外に上昇させる動作と、相互の間隔内に供給された各ベニヤ単板を所要時間だけ熱圧し終えた各熱盤を離隔状態とした後に、前後方向及び上下方向へ変位可能に備えた適宜形状の適数対の搬出用把持部材を、処理済みの各ベニヤ単板の少なくとも上端部が把持可能な高さまで下降させて、処理済みの複数枚のベニヤ単板を各別に把持し、熱盤群の上方へ上昇させてから、熱盤群の後位の適宜場所まで移送して把持を開放する動作とを交互に繰り返し、複数枚のベニヤ単板を間歇的に処理することを特徴とする横型多段プレスを用いたベニヤ単板の処理方法。
【請求項2】
左右に対設されたフレーム間に、等間隔をおいて開閉自在となる複数段の熱盤を、並立的に立設して成る横型多段プレスに於て、前記左右のフレームを連結するベッド・横梁・連結腕等の連結部材、各熱盤の左右方向への移動を案内する案内軌道・案内輪等の案内部材、各熱盤毎の開放間隔を等間隔に規制する間隔規制部材、各ベニヤ単板の下端位置を規制する規制部材等の付属部材類を、熱盤群の前方、後方、及び下方に限定して備えることにより、熱盤群の上方を開放状と成すと共に、熱盤群の前位に於て、繊維方向を垂直方向に揃えて並立的に待機させた複数枚のベニヤ単板を各別に把持することが可能な、適宜形状の適数対の搬入用把持部材を、熱盤群の前位から熱盤群の上方まで、前後方向へ移動可能に、且つ、熱盤群の上方から、把持した各ベニヤ単板の少なくとも大部分を、各熱盤の間隔内に下降させ得る高さまで、垂直方向へ昇降可能に備え、更に、所定の間隔を隔てて対向する各熱盤の加熱面に於ける少なくともベニヤ単板の供給領域の全長に亘って、先端部が弾性的に当接する薄板状のガイド板を、下端部に具備し、離隔状態にある各熱盤の間隔内に介入して、処理済みの各ベニヤ単板を各別に把持することが可能な、適宜形状の適数対の搬出用把持部材を、熱盤群の上方から、処理済みの各ベニヤ単板の少なくとも上端部が把持可能な高さまで、垂直方向へ昇降可能に、且つ、熱盤群の上方から熱盤群の後位まで、前後方向へ移動可能に備えたことを特徴とする横型多段プレス。
【請求項3】
下端部に具備したガイド板が、熱盤に接着したベニヤ単板の少なくとも大半を、接着から開放するに足る高さまで、搬出用把持部材を下降させるよう構成して成る請求項2記載の横型多段プレス。
【請求項4】
左右に対設されたフレーム間に、等間隔をおいて開閉自在となる複数段の熱盤を、並立的に立設して成る横型多段プレスに於て、前記左右のフレームを連結するベッド・横梁・連結腕等の連結部材、各熱盤の左右方向への移動を案内する案内軌道・案内輪等の案内部材、各熱盤毎の開放間隔を等間隔に規制する間隔規制部材、各ベニヤ単板の下端位置を規制する規制部材等の付属部材類を、熱盤群の前方、後方、及び下方に限定して備えることにより、熱盤群の上方を開放状と成すと共に、熱盤群の前位に於て、繊維方向を垂直方向に揃えて並立的に待機させた複数枚のベニヤ単板を各別に把持することが可能な、適宜形状の適数対の搬入用把持部材を、熱盤群の前位から熱盤群の上方まで、前後方向へ移動可能に、且つ、熱盤群の上方から、把持した各ベニヤ単板の少なくとも大部分を、各熱盤の間隔内に下降させ得る高さまで、垂直方向へ昇降可能に備え、更に、離隔状態にある各熱盤の間隔内に介入し、処理済みの各ベニヤ単板の下端に於ける、規制部材が当接する部分を除く、残余の大部分に当接して、各ベニヤ単板を各別に所望量だけ上昇させる適数個の押し上げ部材を、熱盤群の下方に昇降可能に備え、更に、処理した各ベニヤ単板を各別に把持することが可能な、適宜形状の適数対の搬出用把持部材を、熱盤群の上方から、処理済みの各ベニヤ単板の少なくとも上端部が把持可能な高さまで、垂直方向へ昇降可能に、且つ、熱盤群の上方から熱盤群の後位まで、前後方向へ移動可能に備えたことを特徴とする横型多段プレス。
【請求項5】
処理済みの各ベニヤ単板の上端部を、各熱盤の上端よりも上方へ突出させる高さまで、上昇することが可能な押し上げ部材を具備すると共に、各熱盤の上端よりも上方に突出した各ベニヤ単板の上端部を把持することが可能な適数対の搬出用把持部材を備えて成る請求項4記載の横型多段プレス。
【請求項6】
所定の間隔を隔てて対向する各熱盤の加熱面に於ける少なくともベニヤ単板の供給領域の全長に亘って、先端部が弾性的に当接する薄板状のガイド板を、下端部に具備し、離隔状態にある各熱盤の間隔内に介入して、処理済みの各ベニヤ単板の少なくとも上端部を各別に把持することが可能な適数対の搬出用把持部材を用いて成る請求項4記載の横型多段プレス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2011−201016(P2011−201016A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57195(P2010−57195)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000155182)株式会社名南製作所 (77)
【Fターム(参考)】