説明

横型多段プレス装置の板材搬入構造

【課題】 搬入部の搬入体から加熱加圧部の熱板間隔内への被処理板材の搬入を円滑に行うことによって、搬送途中での詰り等の発生を防止して装置故障を減少させ、製品歩留りの向上を図ることのできる横型多段プレス装置の板材搬入構造を提供する。
【解決手段】 押当て枠230はすべての被処理板材W1(搬入径路K)に跨る前後方向の幅を有する。押当て枠230は、搬入ローラコンベヤ210によって起立状態でローラコンベヤ160へ移送される被処理板材W1に対し、搬送方向後方側の端面を前方側へ押圧して、搬入ローラコンベヤ210における初期の移送遅れを補助する。移動用エアシリンダ231のロッド231aが伸長することにより、押当て枠230は被処理板材W1の搬送方向後方側の端面において上下方向高さの中央位置よりも低位を押圧するので、比較的小さな押圧力で被処理板材W1を押すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理板材を加熱加圧する横型多段プレス装置の板材搬入構造に関する。
【背景技術】
【0002】
合板、化粧板、繊維板、パーティクルボード、ベニヤ単板等の板材(被処理板材)を加熱加圧して所定の板厚に成形する多段プレス装置(ホットプレス)において、起立状態に保持された複数の板材を複数配置された熱板の間に搬入して加熱加圧する横型方式が知られている。この横型方式(横型ホットプレス)は、水平方向に保持された板材と熱板とを上下方向に交互に積み重ねて加熱加圧する縦型方式(縦型ホットプレス)に比して、板材や熱板自身の重量の影響による成形ムラ(板厚の不揃い)が発生しにくい利点を有する。
【0003】
そして、本願出願人はこのような横型ホットプレスにおいて、起立状態で所定間隔に整列された被処理板材をローダ部(搬入部)の搬入ローラコンベヤ(搬入体)とホットプレス部(加熱加圧部)の搬送ローラコンベヤ(搬送体)とによって熱板間へ一斉に搬入するとともに、これらのローラコンベヤを爪(突起状物)付きローラで構成することを提案した(特許文献1参照)。特許文献1によれば、被処理板材に曲がり、反り等が発生していても、ローラの爪が被処理板材に係止するので、一般的には被処理板材のローダ部から熱板間隔内への搬入を円滑に行える。
【0004】
【特許文献1】特公平7−115324号公報
【0005】
しかし、特許文献1では、搬入ローラコンベヤ上で停止中の被処理板材の慣性力が爪付きローラと被処理板材との間の摩擦力よりも大きい場合には、爪付きローラが空回り(滑り)を生じ、被処理板材の搬入を円滑に行えなくなるおそれがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、搬入部の搬入体から加熱加圧部の熱板間隔内への被処理板材の搬入を円滑に行うことによって、搬送途中での詰り等の発生を防止して装置故障を減少させ、製品歩留りの向上を図ることのできる横型多段プレス装置の板材搬入構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の横型多段プレス装置の板材搬入構造は、
搬入側において倒伏状態から起立状態に姿勢変更された複数の被処理板材を加熱加圧部の個々の搬入径路に跨って配置された搬送体により搬送方向に平行な複数の熱板の間にそれぞれ搬入し、各被処理板材の厚さ方向を押圧方向として前記複数の熱板により一斉に加熱加圧する横型多段プレス装置の板材搬入構造であって、
前記被処理板材を前記搬送方向に沿って起立状態で所定間隔に保持して前記搬送体に移送するために、その搬送体の搬送面と同じ高さに維持可能な搬送面を有する搬入体と、
その搬入体によって起立状態で前記搬送体へ移送される被処理板材に対し、前記搬送方向後方側の端面を前方側へ押圧して、前記搬入体による移送を補助するための押圧部材とを備えることを特徴とする。
【0008】
このような板材搬入構造では、搬入体(例えば搬入ローラコンベヤ)による搬送体(例えばローラコンベヤ)への移送を補助するために、被処理板材の搬送方向後方側の端面を前方側へ押圧する押圧部材(例えば押当て枠)を備えることにより、搬入体上で停止中の被処理板材を搬送方向前方側の搬送体へ円滑に移送できる。したがって、搬入部の搬入体から加熱加圧部の熱板間隔内への被処理板材の搬入を円滑に行うことができ、搬送途中での詰り等の発生を防止して装置故障を減少させ、製品歩留りの向上を図ることができる。なお、押圧部材は、板状、柵状、枠状、棒状、管状等の断面形状や、すべての搬入径路に跨って単一の形態、押圧方向に分割された形態等を含む。また、押圧部材は、エアシリンダ、油圧シリンダ等の流体圧シリンダ(リニア駆動源)等を用いて、搬送方向に沿って移動自在とすることができる。
【0009】
このような押圧部材は、搬入体が被処理板材を移送するための作動を開始するよりも前にその被処理板材の押圧を開始可能とすることが望ましい。搬入体上で停止中の被処理板材に対して搬入体の搬送力が作用するよりも前に(あるいは搬送力が作用するのとほぼ同時に)押圧部材の押圧力を被処理板材に及ぼすことができるので、搬入体による搬送体への被処理板材の移送が一層円滑に行なえる。
【0010】
また、押圧部材が被処理板材に対する押圧作用を解除したとき、搬入体は搬送体への被処理板材の移送を継続することが望ましい。このようにすれば、搬入体による被処理板材の移送初期にのみ、押圧部材の押圧力を被処理板材に作用させればよいので、駆動力(消費エネルギー)に無駄を生じない。なお、押圧部材と搬入体の作動タイミングをタイマ等によって精密に制御してもよいが、押圧部材を駆動するエアシリンダ等がストロークエンドに達したときに搬入体が被処理板材の移送を継続するように、搬入体の作動時間を設定しておくだけでもよい。
【0011】
そして、押圧部材は、起立状態で搬送体へ移送される被処理板材の搬送方向後方側(上流側)の端面において、上下方向高さの中央位置よりも低位を押圧することができる。これによって、押圧部材は比較的小さな押圧力で被処理板材を押すことができるので、上下方向高さ(板幅)の大小にかかわらず被処理板材の搬送途中での詰りを容易に防止することができる。
【0012】
あるいは、押圧部材は、起立状態で搬送体へ移送される被処理板材の搬送方向後方側(上流側)の端面において、上下方向高さの中央位置よりも高位を押圧することができる。これによって、押圧部材の押圧力は被処理板材の搬送方向前方側(下流側)において搬入体に作用しやすくなるので、板厚が大きく広幅で重量が大きい被処理板材の詰りに対しても、押圧部材の押圧力を効果的に及ぼすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施例)
以下、本発明の実施の形態につき図面に示す実施例を参照して説明する。図1は本発明に係る板材搬入構造を含む横型多段プレス装置の一例を示す平面図、図2はその正面図である。図1及び図2に示す横型多段プレス装置1は、合板、化粧板等のように、複数枚のベニヤ単板を接着剤で積層し、矩形板状となした水平状態の多数の被処理板材W1を、ローダ部200(搬入部)で起立状態に保持してホットプレス部100(加熱加圧部)へ搬入する。ホットプレス部100で所定時間加熱加圧して、所定の厚みに成形された処理済板材W2を、アンローダ部300(搬出部)で再び水平状態に戻して搬出する。
【0014】
ホットプレス部100には、上下方向(起立方向)及び左右方向(搬送方向)に各々所定の間隔を隔てて配置された各一対の上下の横梁101L,101R、102L,102Rを介して、前後方向(押圧方向)に一対の固定フレーム103F,103Bが配設されている。上方の横梁101L,101Rに敷設された軌条104L,104Rには、移動ローラ105L,105R(移動部材)が取り付けられている。軌条104L,104R間には、移動ローラ105L,105Rを介して、多数段の熱板130と前後方向に一対又は単一(図1では1個)の押圧盤140が吊下げ支持されている。固定フレーム103Fには、所定の間隔を隔てて複数(例えば2個)の油圧シリンダ150L,150R(駆動シリンダ)が挿通され、そのラム151L,151Rの先端が押圧盤140に取り付けられている。なお、この例では他方の固定フレーム103Bは対向側の押圧盤を兼ねている。
【0015】
熱板130の下方には、起立状態の被処理板材W1を下側から支持して、ローダ部200からホットプレス部100へ搬入するローラコンベヤ160(搬送体)が配置されている。ローラコンベヤ160は、被処理板材W1を搬入するために、すべての搬入径路K(図4参照)に跨る前後方向の幅を有する複数(例えば4本)の爪付きローラ161を備え、下方の横梁102L,102Rに掛け渡された機枠108に配設されている。ローダ部200からローラコンベヤ160で搬入された被処理板材W1は熱板130で加熱加圧された後、処理済板材W2となって再びローラコンベヤ160でアンローダ部300へ搬出される。
【0016】
ホットプレス部100の搬入側(搬送方向の上流側(後方側))には、ローダ部200が配設されている。ローダ部200には、架台201上に所定の間隔を隔てて左右一対のチェンコンベヤ202L,202R(無端体)が配置されている。チェンコンベヤ202L,202Rにはローダ棚203が設けられている。架台201上には、ホットプレス部100のローラコンベヤ160へ起立状態の被処理板材W1を受け渡すための搬入コンベヤ210(搬入体)が配置されている。搬入コンベヤ210は、すべての被処理板材W1(搬入径路K;図4参照)に跨る前後方向の幅を有する複数(例えば4本)の爪付きローラ211を備えている。
【0017】
ホットプレス部100の搬出側(搬送方向の下流側(前方側))には、アンローダ部300が配設されている。アンローダ部300には、架台301上に所定の間隔を隔てて左右一対のチェンコンベヤ302L,302R(無端体)が配置されている。チェンコンベヤ302L,302Rにはアンローダ棚303が設けられている。架台301上には、ホットプレス部100のローラコンベヤ160から起立状態の処理済板材W2を受け取るための搬出コンベヤ310(搬出体)が配置されている。搬出コンベヤ310は、すべての処理済板材W2に跨る前後方向の幅を有する複数(例えば4本)の爪付きローラ311を備えている。
【0018】
次に、図3はプレス構造の一例を示す平面図、図4はその側面図、図5はプレス閉鎖状態を示す側面図である。図3に示すホットプレス部100(加熱加圧部;プレス構造)には、水平方向における前後位置に固定フレーム103F,103Bを固定配置し、固定フレーム103F,103B間の上部に、平行状態で上方の横梁101L,101Rを設けてある。横梁101L,101Rに設けられた軌条104L,104Rには、前後方向に移動自在な複数の移動ローラ105L,105R(移動部材)を設けている。移動ローラ105L,105Rは、周知のごとくコロの転動状態や、面接触による摺動状態で移動するものであり、要するに水平方向に直線的に移動可能な手段であればよい。
【0019】
各移動ローラ105L,105Rは、プレス閉鎖時に上下方向に起立した被処理板材W1を間に挟んで加熱するために、熱板130の上方側が連結され、これら複数の熱板130は、前後方向に並設状態で吊持されて熱板群を構成する。またプレス開放時には、被処理板材W1が熱板群における熱板130の間に介挿できるように、隣り合う熱板130は搬送方向に平行に位置して所定間隔を保つようにしている。なお、熱板130の内部に蒸気、熱油などを給排し、その温度を被処理板材W1の種類に応じて維持している。
【0020】
また、熱板群の熱板130に連繋し、熱板130を前後方向に移動し、プレス閉鎖およびプレス開放を行うようにした前後一対の押圧盤140F,140Bを備えている。押圧盤140F,140Bは、熱板群における前後方向の両側に位置するそれぞれの熱板130に対向して配設され、押圧盤140F,140Bの上方側を移動ローラ105L,105Rに連結して前後方向に移動自在に吊持する。また、押圧盤140F,140Bは、固定フレーム103F,103Bに設けられる油圧シリンダ150L,150Rのラム151L,151Rと連結し、ラム151L,151Rによって前後方向に往復動自在となしている。なお、図3の押圧盤140F,140Bは、固定フレーム103F,103Bに対していずれも前後方向に往復動する。
【0021】
熱板群における熱板130相互間、及び両端部の熱板130と押圧盤140F,140Bとは、プレス開放時に所定の前後間隔を保持するために、それぞれ間隔規制具131で連繋されている。間隔規制具131は門型に形成され、熱板130、押圧盤140F,140Bの上方側で隣接するブラケット132相互に架け渡し、その一端をブラケット132に取り付け、他端を自由端とする。プレス開放時に、間隔規制具131の自由端がブラケット132に係止され、熱板130、押圧盤140F,140Bにおける前後の間隔が一定の幅で規制される。
【0022】
また、吊持している熱板群における熱板130の下方には、被処理板材W1を上下方向に起立させた状態で搬入し、支持し、搬出する爪付きローラ161を複数並列に設けたローラコンベヤ160を配置し、複数の爪付きローラ161上面を搬送面となしている。
【0023】
次に、図6は本発明に係る板材搬入構造の平面図、図7はその正面図、図8は左側面図である。図6に示すように本発明の板材搬入構造は、ホットプレス部100(加熱加圧部)の搬入側に設置されたローダ部200(搬入部)により主として構成されている。具体的には、板材搬入構造200は、搬入ローラコンベヤ210(搬入体)、左右一対の平行状の搬入チェンコンベヤ202L,202R(搬入無端体)、導入コンベヤ205(導入無端体)、補助搬入チェンコンベヤ220(補助搬入無端体)、及び押当て枠230(押圧部材)を備えている。この板材搬入構造200は、架台201の左右端から立ち上がって(図7参照)前後方向に延出配置された(図8参照)立設フレーム204L,204Rに保持されて、ホットプレス部100に配設された既述のローラコンベヤ160(搬送体)へ被処理板材W1を搬入する。
【0024】
搬入ローラコンベヤ210は、既述の通り、起立状態の被処理板材W1を前後方向に所定間隔(熱板130間隔)で搬送方向に沿う形態で保持してローラコンベヤ160へ受け渡すための複数(例えば5本)の爪付きローラ211を有している。これらの爪付きローラ211は、立設フレーム204L,204R上に載置されて昇降機構(図示せず)で上下方向に変位可能な矩形枠状の搬入ローラフレーム212(搬入支持フレーム)に、搬送方向に所定の間隔で前後方向に沿う形態で架設されている。なお、各爪付きローラ211は単一の電動モータ213(回転駆動源)により複数(例えば3本)の駆動チェーン214を介して同期回転する(図7参照)。
【0025】
左右一対の搬入チェンコンベヤ202L,202Rは、上記搬送方向と交差(例えば直交)する導入方向手前側(上流側)から搬入ローラコンベヤ210へ被処理板材W1を導入する。各々の立設フレーム204L,204Rの前方側において、搬入チェンコンベヤ202L,202Rを駆動する駆動軸202aの両端側を回転自在に支持する一方、各々の立設フレーム204L,204Rの後方側において、搬入チェンコンベヤ202L,202Rに追従する従動軸202bの両端側を回転自在に支持している。各搬入チェンコンベヤ202L,202Rは、駆動軸202a及び従動軸202bに固定されたスプロケットにチェンを掛け回し、駆動軸202aを単一の駆動モータ202c(回転駆動源)に連結(直結)することによって回転駆動される。
【0026】
また、左右の搬入チェンコンベヤ202L,202Rの間には、被処理板材W1を倒伏状態(例えば水平状態)から搬送方向に沿う起立状態(例えば垂直状態)に姿勢変更するための複数(熱板130と同数)のローダ棚203がそれぞれ起伏可能に架設されている(図8参照)。したがって、搬入ローラフレーム212(搬入ローラコンベヤ210)が下降変位したとき、左右の搬入チェンコンベヤ202L,202Rは、その回転に伴ってローダ棚203により被処理板材W1を倒伏状態から起立状態に姿勢変更するとともに、ローダ棚203の支持面203aで被処理板材W1の下端面を支持する(図8参照)。さらに、熱板130(搬入径路K)の間隔と一致する形態でローダ棚203(搬入チェンコンベヤ202L,202R)が停止すると、上昇変位した搬入ローラコンベヤ210により一斉に被処理板材W1をローラコンベヤ160へ搬入できる(図7参照)。
【0027】
ローダ棚203は、搬送方向の前方側(下流側;ホットプレス部100側)に位置して半径方向へ広く長く突出する主ガイド板203bと、搬送方向の後方側(上流側)に位置して半径方向へ狭く短く突出する副ガイド板203cと、搬送方向に沿って配置されて両ガイド板203b,203cを連結する連結板203dとを含む。また、副ガイド板203cと連結板203dとはL字状に屈曲したガイド枠203eで連結され、ガイド枠203eのうち導入方向に沿う辺は、補助搬入チェンコンベヤ220の延長線近傍に位置するように配置されている。
【0028】
なお、導入コンベヤ205は、前方側からローダ棚203(搬入チェンコンベヤ202L,202R)へ倒伏状態の被処理板材W1を導入するために、複数(例えば4本)の互いに平行状の平ベルトコンベヤを有している。各々の立設フレーム204L,204Rの前方側において、各導入コンベヤ205を駆動する駆動軸205aの両端側を回転自在に支持する一方、各々の立設フレーム204L,204Rの後方側において、各導入コンベヤ205に追従する従動軸205bの両端側を回転自在に支持している。各導入コンベヤ205は、駆動軸205a及び従動軸205bに固定されたプーリに平ベルトを掛け回し、駆動軸205aを単一の駆動モータ205c(回転駆動源)に連結(直結)することによって回転駆動される。
【0029】
補助搬入チェンコンベヤ220は、左右の搬入チェンコンベヤ202L,202Rの間に平行状に、かつ搬送方向後方側(左側;上流側)の搬入チェンコンベヤ202L側にオフセットして(偏って)配置されている。したがって、補助搬入チェンコンベヤ220は、搬入チェンコンベヤ202L,202Rによる倒伏状態から起立状態への姿勢変更の際に導入方向に対して左右に傾いた被処理板材W1の下端面を支持して後方側に搬送可能である(図7参照)。
【0030】
また、補助搬入チェンコンベヤ220は、5本の爪付きローラ211のうち、搬送方向後方端側(左端側;上流端側)の2本のローラの間に設けられている。これにより、搬入チェンコンベヤ202L,202R及び補助搬入チェンコンベヤ220から爪付きローラ211への被処理板材W1の受け継ぎが円滑に行え、姿勢変更時や搬入径路Kへの搬入時に被処理板材W1の傾きが防止できる。
【0031】
補助搬入チェンコンベヤ220は、搬入チェンコンベヤ202L,202Rの駆動軸202a(共通駆動軸)及び従動軸202bに固定されたスプロケットにチェンを掛け回し、単一の駆動モータ202c(搬入駆動源)によって同軸駆動されて、伝動構造の簡素化が図られている。なお、補助搬入チェンのリンクピッチを搬入チェンのリンクピッチよりも小(例えば約半分)として、補助搬入チェンコンベヤ220と搬入チェンコンベヤ202L,202Rの移動速度(すなわち、被処理板材W1の導入スピード)を等しく設定してある。
【0032】
図6又は図7に示すように、押当て枠230は、すべての被処理板材W1(搬入径路K)に跨る前後方向の幅を有するように、例えば角パイプを延設して配置されている。この押当て枠230は、搬入ローラコンベヤ210によって起立状態でローラコンベヤ160へ移送される被処理板材W1に対し、搬送方向後方側の端面を前方側へ押圧して、搬入ローラコンベヤ210における初期の移送遅れを補助(補完)する機能を有する。
【0033】
具体的には、搬送方向後方側(上流側)に位置する立設フレーム204Lに、押当て枠230の移動用エアシリンダ231(リニア駆動源)が固定配置されている。そして、移動用エアシリンダ231のロッド231aが伸長することにより、押当て枠230は搬入ローラコンベヤ210上の被処理板材W1を搬送方向後方側から前方側へ押圧する。このとき、図7に示すように、移動用エアシリンダ231(ロッド231a)は、被処理板材W1の搬送方向後方側の端面において上下方向高さの中央位置よりも低位を押圧するので、押当て枠230は比較的小さな押圧力で被処理板材W1を押すことができる。
【0034】
また、押当て枠230は、搬入ローラコンベヤ210が被処理板材W1を移送するための作動を開始するよりも前に被処理板材W1の押圧を開始する。さらに、移動用エアシリンダ231のロッド231aがストロークエンドまで伸長して、押当て枠230が被処理板材W1に対する押圧作用を解除したとき、搬入ローラコンベヤ210はローラコンベヤ160への被処理板材W1の移送を継続する。
【0035】
したがって、押当て枠230は、被処理板材W1の上下方向高さ(板幅)の大小にかかわらず、搬入ローラコンベヤ210上で停止状態にある被処理板材W1を搬送方向前方側のローラコンベヤ160へ向けて押すことにより、搬送初期での詰りを容易に防止することができる。しかも、搬入ローラコンベヤ210による被処理板材W1の移送初期にのみ、押当て枠230の押圧力を被処理板材W1に作用させればよいので、移動用エアシリンダ231の駆動力(消費エネルギー)に無駄を生じない。
【0036】
図6〜図8に示す板材搬入構造200の作動について説明する。図8に示すように、搬入ローラフレーム212(搬入ローラコンベヤ210)が上昇変位したとき、搬入ローラコンベヤ210の搬送面210aはローラコンベヤ160の搬送面160aと同じ高さに維持される(図7参照)。このとき、搬入ローラコンベヤ210の搬送面210aは、ローダ棚203の支持面203aの軌跡に対し、全体が高位に位置している。したがって、搬入ローラコンベヤ210の回転に伴って、搬送面210aで被処理板材W1の下端面を支持して搬入径路K(ローラコンベヤ160)に一斉に搬入できる。
【0037】
そして、搬入ローラコンベヤ210が、熱板130(搬入径路K)間隔で起立状態に整列された被処理板材W1をローラコンベヤ160へ移送するための作動(回転)を開始するのに先立って、移動用エアシリンダ231のロッド231aが伸長を始める。これによって、押当て枠230が停止状態の被処理板材W1を搬送方向後方側から前方側へ押圧し、被処理板材W1が搬送方向への移動を始めたときに、搬入ローラコンベヤ210が作動を開始する。やがて、移動用エアシリンダ231のロッド231aがストロークエンドまで伸長し、押当て枠230は被処理板材W1を押圧しなくなるが、搬入ローラコンベヤ210は被処理板材W1をローラコンベヤ160へ移送するまで作動を継続する。
【0038】
このようにして、ローダ部200の搬入ローラコンベヤ210からホットプレス部100の熱板130間隔(搬入径路K)内への被処理板材W1の搬入を円滑に行うことができるので、搬送途中での詰り等の発生が防止でき、横型多段プレス装置1の故障を減少させ、製品歩留りの向上を図ることができる。
【0039】
なお、押当て枠230は、起立状態でローラコンベヤ160へ移送される被処理板材W1の搬送方向後方側の端面において、上下方向高さの中央位置よりも高位を押圧してもよい。この場合には、押当て枠230の押圧力は被処理板材W1の搬送方向前方側において搬入ローラコンベヤ210に作用しやすくなる。つまり、爪付きローラ211に食い込みやすくなるので、板厚が大きく広幅で重量が大きい被処理板材W1の詰りに対しても、押当て枠230の押圧力を効果的に及ぼすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る板材搬入構造を含む横型多段プレス装置の一例を示す平面図。
【図2】図1の正面図。
【図3】プレス構造の一例を示す平面図。
【図4】図3の側面図。
【図5】プレス閉鎖状態を示す側面図。
【図6】本発明に係る板材搬入構造の平面図。
【図7】図6の正面図。
【図8】図6の左側面図。
【符号の説明】
【0041】
1 横型多段プレス装置
100 ホットプレス部(加熱加圧部;プレス構造)
130 熱板
160 ローラコンベヤ(搬送体)
160a 搬送面
200 ローダ部(搬入部;板材搬入構造)
202L,202R 搬入チェンコンベヤ(搬入無端体)
203 ローダ棚
203a 支持面
210 搬入ローラコンベヤ(搬入体)
210a 搬送面
212 搬入ローラフレーム(搬入支持フレーム)
230 押当て枠(押圧部材)
231 移動用エアシリンダ(リニア駆動源)
300 アンローダ部(搬出部;板材搬出構造)
K 搬入径路
W1 被処理板材
W2 処理済板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬入側において倒伏状態から起立状態に姿勢変更された複数の被処理板材を加熱加圧部の個々の搬入径路に跨って配置された搬送体により搬送方向に平行な複数の熱板の間にそれぞれ搬入し、各被処理板材の厚さ方向を押圧方向として前記複数の熱板により一斉に加熱加圧する横型多段プレス装置の板材搬入構造であって、
前記被処理板材を前記搬送方向に沿って起立状態で所定間隔に保持して前記搬送体に移送するために、その搬送体の搬送面と同じ高さに維持可能な搬送面を有する搬入体と、
その搬入体によって起立状態で前記搬送体へ移送される被処理板材に対し、前記搬送方向後方側の端面を前方側へ押圧して、前記搬入体による移送を補助するための押圧部材とを備えることを特徴とする横型多段プレス装置の板材搬入構造。
【請求項2】
前記押圧部材は、前記搬入体が前記被処理板材を移送するための作動を開始するよりも前にその被処理板材の押圧を開始可能である請求項1に記載の横型多段プレス装置の板材搬入構造。
【請求項3】
前記押圧部材が前記被処理板材に対する押圧作用を解除したとき、前記搬入体は前記搬送体への前記被処理板材の移送を継続する請求項1又は2に記載の横型多段プレス装置の板材搬入構造。
【請求項4】
前記押圧部材は、起立状態で前記搬送体へ移送される被処理板材の前記搬送方向後方側の端面において、上下方向高さの中央位置よりも低位を押圧する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の横型多段プレス装置の板材搬入構造。
【請求項5】
前記押圧部材は、起立状態で前記搬送体へ移送される被処理板材の前記搬送方向後方側の端面において、上下方向高さの中央位置よりも高位を押圧する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の横型多段プレス装置の板材搬入構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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