説明

横方向の伸長性をもつ弾力性編物繊維布

本発明においては、エラストマー重合体の溶液で処理することにより幅が狭められた縦編み繊維布をエラストマー重合体で実質的に均一に含浸してつくられた伸長可能な弾力性繊維布が記載されている。得られる繊維布は横方向にはかなりの伸びを示すが、機械方向には殆どまたは全く伸びを示さない。このような伸長可能な繊維布は医療用製品および個人用衛生製品、並びに衣料の用途において有用である。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は2008年4月14日出願の米国特許暫定出願第61/044,640号の利益を請求する。
【技術分野】
【0002】
本発明は伸長し得る弾力性編物繊維布の製造法に関する。このような繊維布は、エラストマー重合体で含浸された幅を狭められた縦編み繊維布である。
【背景技術】
【0003】
現存の弾力性繊維布はスパンデックスまたはエラスタン(elastane)のような弾力性繊維を用い、公知の編物工程または織物工程によって製造することができる。弾力性繊維材料を用いて編物繊維布をつくる典型的な方法は例えば特許文献1〜3に記載されている。弾力性の糸および繊維からつくられた編物繊維布は、このような繊維および糸のコストが高いために高価である。またこのタイプの編物繊維布は、着色して最終的な形の繊維布にするためには、過度のスコアリングおよび染色工程を必要とする。
【0004】
エラストマー性材料を用い種々のタイプの繊維布を含浸し、このような繊維布に弾性および伸長性を賦与するかまたはその弾性を改善することも公知である。例えば特許文献4には弾力性をもった包帯製品をつくるために、エラストマーを含浸して伸長性をもった織物繊維布、編物繊維布または不織布の基質にすることが記載されている。
【0005】
またエラストマー材料を、予め延伸した、または幅が狭められた(consolidated)、或いは「ネッキング(necking)」された繊維布の基質と組み合わせることにより、繊維布の伸長性を変化させることができる。例えば特許文献5および6の両方には、種々の用途の伸長し得る繊維布製品を得るために、ネッキングし得るまたはネッキングされた不織布の基質にエラストマー材料を被覆して使用することが記載されている。
【0006】
エラストマー材料と種々の種類の繊維布基質との組合せを含んで成る広範囲の種類の伸長可能な繊維布は入手可能であるが、比較的低価格で且つ特に横方向ににおいて望ましい伸長性をもった他のタイプのエラストマー繊維布を見出だすことは有利であろうと思われる。
【発明の概要】
【0007】
一具体化例においては本発明は横方向の伸長性をもった弾力性繊維布に関する。このような弾力性繊維布は縦編み繊維布を含んで成り、その初期坪量は約15〜50g/mであり、延伸された結果初期幅の約30〜90%まで幅が狭くなっている。次に、この幅を狭められた編物繊維布は、繊維布の横方向の伸びが50%よりも大きくなる程度に実質的に均一に含浸される。このような弾力性繊維布は種々の製品、例えば衣料用製品、或いは医療用または衛生用製品の中に組み込むことができる。
【0008】
他の具体化例において本発明は、弾力性編物繊維布を作るための好適な方法に関する。このような好適な方法は、第1の段階として、或る一定の初期幅、厚さ、第1および第2の外側の表面、機械方向、横方向、および約15〜50g/mの初期坪量をもった縦編み繊維布をつくる段階を含んで成っている。第2の段階においては、次に機械方向に力をかけることによってこの縦編み繊維布を均一に延伸し、横方向の幅が初期幅の約30〜90%になるように幅が狭められた縦編み繊維布にする。この方法の第3段階においては、
溶媒中にエラストマー重合体を含んで成る溶液を用いてこの幅が狭められた縦編み繊維布を実質的に均一に含浸する。最終的な段階においては、幅を狭められた縦編み繊維布の厚さ全体に亙り湿式凝集法により均一にエラストマー重合体を沈着させることにより、該幅が狭められ含浸された縦編み繊維布から溶媒を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,103,485号明細書。
【特許文献2】PCT特許出願国際公開第00/29654号明細書。
【特許文献3】PCT特許出願国際公開第04/022827号明細書。
【特許文献4】米国特許第4,366,814号明細書。
【特許文献5】米国特許第5,910,224号明細書。
【特許文献6】米国特許第6,942,896号明細書。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の弾力性繊維布は、延伸して幅を狭くすることができる縦編み繊維布から製造され、次にこれをエラストマー重合体で含浸してつくられる。縦編み繊維布は公知の材料である。これらの繊維布は通常チェーン編機、ラッセル編機、またはトリコット編機で製造することができる。縦編み繊維布は例えば米国特許第4,487,040号明細書;同第4,802,346号明細書、および同第6,122,940号明細書、PCT特許出願国際公開第88/020038号明細書および同第03/023105号明細書に記載されている。これらの特許は引用により本明細書に包含される。
【0011】
本発明の縦編み繊維布に使用される糸は連続繊維または不連続繊維からつくることができる。これらの糸の繊維は例えばポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、或いはポリアミド、例えばナイロンからつくることができる。この場合縦編み繊維布に使用される繊維は一般に非弾性繊維である。
【0012】
本発明において弾力性繊維布をつくるのに使用される縦編み繊維布は一般に約15〜50g/mの初期坪量をもっているであろう。さらに好ましくは本発明に使用される縦編み繊維布の初期坪量は約20〜40g/mの範囲である。本明細書に使用される「初期坪量」という言葉は、幅を狭くしてエラストマー重合体で含浸する前の縦編み繊維布の坪量を意味する。
【0013】
本発明において弾力性繊維布をつくるためには、機械方向の力を掛けてこれらの縦編み繊維布を均一に延伸し、幅を狭くした縦編み繊維布をつくる。このような幅を狭められた縦編み繊維布は或る一定の幅、即ち横方向の寸法をもっており、それは幅を狭くする前の縦編み繊維布の初期幅の約30〜90%の範囲にある。さらに好ましくは縦編み繊維布は該繊維布の初期幅の約50〜70%の範囲の横方向の寸法をもつような程度に幅が狭められている。
【0014】
必要な範囲まで幅を狭められた縦編み繊維布は次いでエラストマー重合体で実質的に均一に含浸され、本発明の弾力性繊維布がつくられる。本明細書において使用される「エラストマー重合体」と云う言葉は、シート、繊維、またはフィルムにして一方向に偏った力をかけた場合、このような力をかけない弛緩した状態の長さの少なくとも約160%の伸長した長さまで伸長することができ、且つ伸長を起こさせるこのような力が解除された場合伸長した長さの少なくとも約55%が回復するような重合体を意味する。例えば少なくとも1.6cmまで伸長することができるこのような材料の1cmの試料は、力をかけて1.6cmまで伸長した後力を緩めた場合、1.27cm以下の長さまで回復するであろう。力を緩めた時の長さの60%よりも遥かに大きい、例えば100%またはそれ以上ま
でも伸長させることができる多くのエラストマー材料が存在しているし、またこれらの材料の多くは、伸長力を緩めると、力のかからない場合もっていた実質的な元の長さまで、例えば力のかからない場合の元の長さの105%以内まで回復するであろう。
【0015】
本発明に有用なエラストマー重合体にはポリウレタン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、およびポリエーテル−エステルブロック共重合体が含まれる。好適な具体化例においては、エラストマー重合体はポリウレタンである。最も好適な具体化例においては、ポリウレタンはLycra(R)スパンデックスである。
【0016】
本発明に有用なエラストマー・ポリウレタンは多量体のグリコールをジイソシアネートと反応させてキャッピングしたグリコールをつくり、このキャッピングしたグリコールを(適当な溶媒に)溶解し、次いでキャッピングしたグリコールを活性水素原子をもった二官能性の連鎖伸長剤と反応させることによってつくることができる。このようなポリウレタンは「セグメント化」されていると云われる。何故ならこれらはジイソシアネートおよび連鎖伸長剤から誘導される「固い」ウレタンおよび尿素セグメント、および多量体のグリコールから主として誘導される「柔らかい」セグメントから成っているからである。このような重合体の溶液をつくるのに適当な溶媒はアミド溶媒、例えばジメチルアセトアミド(「DMAc」)、ジメチルフォルムアミド(「DMF」)、およびN−メチル−ピロリドンであるが、他の溶媒、例えばジメチルスルフォキシドおよびテトラメチル尿素も使用することができる。
【0017】
エラストマーポリウレタンの製造に用いられる重合グリコールにはポリエーテル、ポリエステルグリコール、ポリカーボネートグリコールおよびこれらの共重合体が含まれる。このようなグリコールの例にはポリ(エチレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレン−co−2−メチル−テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(エチレン−co−ブチレンアジパミド) グリコール, ポリ(2,2−ジメチル−1,3−プロピレンドデカノエート)グリコール、ポリ(ペンタン−1,5−カーボネート)グリコール、およびポリ(ヘキサン−1,6−カーボネート)グリコールが含まれる。
【0018】
有用なジイソシアネートには1−イソシアナート−4−[(4−イソシアナートフェニル)メチル]ベンゼン、1−イソシアナート−2−[(4−イソシアナート−フェニル)メチル]ベンゼン、イソフォロンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、
および2,4−トリレンジイソシアネートが含まれる。
【0019】
有用な連鎖伸長剤はジオールまたはジアミンであることができる。有用なジオールにはエチレングリコール、1,3−トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、およびこれらの混合物が含まれる。ジオール連鎖伸長剤を使用するとポリウレタンが生じる。有用なジアミンにはエチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,3−ジアミノペンタン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、およびこれらの混合物が含まれる。この場合、生成する重合体はポリ尿素(ポリウレタンの下位クラス)である。ポリエーテルグリコールおよびジアミン連鎖伸長剤を使用した場合、生成する重合体はポリエーテルウレタン尿素である。ポリエステルグリコールをジアミン連鎖伸長剤と組み合わせて使用した場合には、ポリエステルウレタン尿素が生じる。一官能性のアミン連鎖終結剤、例えばジエチルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン等を加えて重合体の分子量を制御することができる。好適具体化例においてはエラストマー重合体はジアミンで連鎖伸長させたポリウレタンエラストマーである。
【0020】
一般にエラストマー重合体は、エラストマー重合体および溶媒を含む溶液の形で幅を狭められた縦編み繊維布の中に含浸される。エラストマー重合体溶液をつくるのに適した溶媒にはジメチルアセトアミド、ジメチルフォルムアミド、およびN−メチルピロリドンが含まれる。エラストマー重合体溶液の粘度は直接溶液中の重合体材料の濃度に関連しており、従って溶液の粘度は幅が狭められた縦編み繊維布の中に重合体が浸透する程度およびその中に沈着する重合体の量の両方に影響を及ぼす。溶液の粘度が低すぎると、幅が狭められた縦編み繊維布の中に沈着するエラストマーの量が不十分になり弾力性が悪くなる。溶液の粘度が高過ぎると、幅が狭められた縦編み繊維布の中への溶液の浸透が減少し、繊維布の中への重合体の含浸、または繊維布の表面上における重合体層の生成が不完全に或いは不均一になる。
【0021】
幅が狭められた縦編み繊維布の中に含浸させるエラストマー重合体の溶液は適切な流動性をもち、また繊維布を被覆する温度、圧力および他の処理条件において例えばポリウレタンを十分に移送できるような溶液粘度をもっていることが適当である。一具体化例においては例えばこの溶液は75℃で測定して約10,700センチポイズ(cPs)、典型的には10,000〜40,000cPsの溶液粘度をもっている。また一具体化例においてはこの溶液は約5〜約20重量%の重合体を含んで成っていることができる。
【0022】
一具体化例においては、幅が狭められた縦編み繊維布は、重合体溶液を少なくとも部分的に吸収する。他の具体化例においては幅が狭められた縦編み繊維布は重合体溶液を吸着することができる。さらに他の具体化例においては重合体溶液を吸収することができる。他の具体化例においては重合体溶液は幅が狭められた縦編み繊維布を実質的に均一に含浸する。本明細書において使用される「実質的に均一に含浸する」という言葉は、幅が狭められた縦編み繊維布の第2の表面上における重合体の濃度が、幅が狭められた縦編み繊維布の第1の表面上における重合体の濃度の25%以内であることを意味する。従って幅が狭められた縦編み繊維布は被覆されないようにしなければならない。或いは重合体溶液が繊維布の中に吸収されることを防ぐような他の何等かの方法で処理されなければならない。エラストマー重合体溶液および/または編物繊維布は、重合体溶液による繊維布の含浸を容易にするために表面活性剤を含んでいることができる。適当な表面活性剤には非イオン性の湿潤剤、例えば重合体の表面活性剤が含まれる。
【0023】
添加物、例えば顔料、酸化防止剤、紫外線安定剤、抗微生物剤および潤滑剤は、このような添加物が本発明の利益を損なわない限り、少量をエラストマー溶液に加えることができる。
【0024】
繊維布が均一に含浸され、皮膜が繊維布の一つまたは他の表面の上に厚く集中して存在しない限り、幅が狭められた縦編み繊維布の上にエラストマー重合体を被覆するかまたは他の処理を行う任意の適当な方法を使用することができる。幅が狭められた縦編み繊維布をエラストマー重合体で処理するために被覆法を使用することができるが、注意しなければならないことは、溶液および繊維布の性質、および被覆法の条件は、重合体溶液が幅が狭められた縦編み繊維布を完全に湿潤するか、または重合体溶液が幅が狭められた縦編み繊維布の中に完全に吸収されるか追い込まれ、その結果繊維布のいずれの表面上にも重合体の層が生成しないように選ばれなければならないことである。一般に被覆工程の際に被覆される重合体溶液の量は、繊維布の上に予め定められた距離で配置された被覆装置を使用することによって制御することができる。
【0025】
また溶液を繊維布の中に機械的に圧入することができる。この方法では被覆装置としてローラ、プラテン、スクレーパー、ナイフ等を使用することができる。幅が狭められた縦編み繊維布の上に溶液を噴霧する方法も、エラストマー溶液が実質的に完全且つ均一に編物繊維布を含浸する限り効果的である。噴霧の力を調節して良好な浸透を助けることがで
きる。幅が狭められた縦編み繊維布は、「浸漬圧搾法(dip and squeeze
method)」のような当業界に公知の方法を用いてエラストマー重合体で含浸することができる。「浸漬圧搾法」ではエラストマー重合体溶液を含むタンクの中に適当な浸漬方法で編物繊維布を浸漬し、次いで例えばニップローラの間で圧搾して過剰の重合体溶液を除去する。製造された伸長可能な弾力性繊維布の二つの表面の間の差を最低限度に抑制するためにはこの方法が好適である。
【0026】
最終的に得られる含浸された不織布シートの中に所望の量のエラストマー重合体を与えるのに十分な量の重合体を用い、幅が狭められた縦編み繊維布を含浸することができる。エラストマー重合体および幅が狭められた縦編み繊維布の全重量に関し約15〜約55重量%の範囲、例えば約20〜約40重量%の範囲のエラストマー重合体を沈着させるのに十分な重合体溶液を用い、幅が狭められた縦編み繊維布を含浸することができる。
【0027】
幅が狭められた縦編み繊維布を、溶媒およびエラストマー重合体を含んで成る溶液で含浸したら、溶媒を除去する。凝固用の液体を湿式凝固法の後で除去することにより溶媒を除去することが好ましい。本明細書において「湿式凝固法」と云う言葉は、溶媒中に溶解したエラストマー重合体を含んで成る溶液を含浸させた幅が狭められた縦編み繊維布を、エラストマー重合体に対しては非溶媒であるがエラストマー重合体溶液をつくるのに用いられる溶媒には混合する凝固用の液体と接触させる方法を意味する。また凝固用の液体は、幅を狭められた縦編み繊維布を溶解しないように選ばれる。凝固用の液体は重合体材料を凝固させ、除去されるべき溶媒は凝固用の液体の中へと除去される。次に例えば空気乾燥または加熱により、重合体が含浸させた幅が狭められた縦編み繊維布から凝固用の液体を除去する。
【0028】
熱乾燥の場合に比べて驚くほど柔らかく布に似た風合をもった製品が湿式凝固法により得られる。湿式凝固法は当業界に公知であり、人工レザーの製造に普通に使用されている。取扱いが容易であり低価格のために、凝固用の液体としては水が好適である。他の適当な凝固用の液体にはメタノール、エタノール、イソプロパノール,またはメチルエチルケトンが含まれる。エラストマー重合体に対する溶媒、例えばジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、またはN−メチルピロリドン、或いは他の添加物、例えば表面活性剤を凝固用の液体に加え凝固速度を変えることができる。これに加えて凝固速度を変化させるために凝固浴の温度を制御することができる。凝固速度が遅いと、溶媒を除去した後に含浸された幅が狭められた縦編み繊維布は一層魅力的な風合をもつようになる。
【0029】
幅が狭められた縦編み繊維布の風合は、エラストマーを含浸する前に、研磨またはナッピング(napping)を行って繊維布の表面の繊維を立ち上がらせることによって改善することができる。
【0030】
ナッピングは、繊維布に対しブラシ掛けを行って効果的に繊維を表面の方へ立ち上がらせる小さい金属の点を含む回転ロールの上に繊維布を通す工程を含んでいる。研磨の場合には、金属ブラシの代わりにサンドペーパーで覆った回転ロールを用いる。典型的には幅が狭められた縦編み繊維布の両方の面に対しナッピングまたは研磨を行うことができる。例えば80〜200グリット(grit)のサンドペーパーを用いて研磨を行うことができる。
【0031】
本発明によりつくられた弾力性繊維布は一般に機械方向の%伸びが約5%より小さい。このような繊維布の横方向の%伸びは一般に50%以上であり、好ましくは約100〜300%である。
【0032】
本発明の伸長可能な弾力性繊維布は種々の衣類、特にジャケットおよびコートのインタ
ーライナーとして有用である。インターライナーは、衣類に対し形状保持性、詰物としての特性、断熱性、固さまたは嵩性を賦与または改善することを目的として、衣類の外側および内側の層の間に挿入される繊維布である。本発明の弾力性繊維布はこの用途に特に有用である。何故なら、低コストと永久的な弾力性並びに胴周りの寸法において快適さを得るための伸長性を与える能力とが組み合わされているからである。
【0033】
本発明の範囲に入る伸長可能な弾力性繊維布は、胴体の輪郭に対して高度な快適性をもつようにつくることができ、また損傷した或いは傷ついた区域に弾力性をもった圧力をかける目的で使用することができる。従って本発明の弾力性繊維布は衣料用の製品および用途に使用することができる。このような製品および用途は例えば次のものを含んでいる:接着テープおよび粘着テープを含むテープ類;圧縮外被を含む被覆材;包帯;外科用および傷の手当用包帯を含む包帯類;外科手術の切開部を取り囲む皮膚に接着させる切開部の覆い布を含む覆い布類。また本発明の弾力性繊維布は個人用の衛生製品、例えばおむつおよび他の失禁防止製品、または女性用生理製品に使用することができる。
【0034】
試験法
本発明の伸長可能な弾力性繊維布のいくつかの性質および特性を決定するために種々の試験および方法を用いることができる。下記には本明細書に記載されたタイプの繊維布を評価するのに使用されるいくつかの典型的な試験がまとめられている。
【0035】
30%伸長させるのに必要な力
この解析はMerlinのデータ収集ソフトウエアシステムを備えたInstron Model 5565により行う。Merlinシステムおよび装置のハードウエアは両方ともInstron Corporation(米国マサチューセッツ州、Braintree)から入手できる。幅1インチ±0.05インチ(2.54cm±0.13cm)、長さ約8インチ(20.32cm)の弾力性繊維布の試料を、試料長を3.00インチ(7.62cm)に設定してInstron装置の鉤に取り付ける。試料は、その長手方向が繊維布の横方向と一致するように作製する。毎分6インチ(15.24cm/分)の速度で伸びが30%になるまで試料を伸長する。伸びが50%の所の力をg単位で記録する。
【0036】
破断強度の解析
この解析はMerlinのデータ収集ソフトウエアシステムを備えたInstron Model 5565により行う。Merlinシステムおよび装置のハードウエアは両方ともInstron Corporation(米国マサチューセッツ州、Braintree)から入手できる。幅1インチ±0.05インチ(2.54cm±0.13cm)、長さ約8インチ(20.32cm)の弾力性繊維布の試料を、試料長を3.00インチ(7.62cm)に設定してInstron装置の鉤にクランプする。試料は、その長手方向が繊維布の横方向と一致するように作製する。試料が切断して二つの部分に別れるまで毎分6インチ(15.24cm/分)の速度で試料を伸長し、破断点の所での最大の力を記録する。
【0037】
坪量
約1.0インチ×8.0インチ(2.54cm×20.32cm)の繊維布または繊維布の前駆材料の矩形の試料を、試料が皺または襞を含まないように注意しながら弛緩させる。試料の長さおよび幅をmm単位で最も近い値まで測定し、また試料の重さをmg単位で最も近い値まで測定する。計算した面積の値で重さの値を割り、結果をg/m単位で最も近い0.1gの値で表す。
【0038】
荷重をかけたまたはかけない力の解析
この解析はMerlinのデータ収集ソフトウエアシステムを備えたInstron Model 5565により行う。Merlinシステムおよび装置のハードウエアは両方ともInstron Corporation(米国マサチューセッツ州、Braintree)から入手できる。幅1インチ±0.05インチ(2.54cm±0.13cm)、長さ約8インチ(20.32cm)の弾力性繊維布の試料を、試料長を3.00インチ(7.62cm)に設定してInstron装置の鉤にクランプする。試料は、その長手方向が繊維布の横方向と一致するように作製する。伸び140%まで毎分6インチ(15.24cm/分)の速度で試料を伸長し、元の長さまで弛緩させる。この操作をさらに2回繰り返し、第3番目の過程では元の試料の長さに関して伸びが50%、100%、および135%になった所でこの伸長サイクルにおいて材料にかかった力を記録する。破断点の所での最大の力を記録し、同様に3番目の弛緩サイクルにおいて試料にかかった力(負荷をかけない力)を同じ伸びの所で記録する。結果は、3番目のサイクルにおける負荷がかかった力および負荷がかからない力として、適当な対応する%伸びの値の所でg単位で表す。
【0039】
%伸びの解析
皺または襞をもたない幅1.0インチ(2.54cm)、長さ約8インチ(20.32cm)の弾力性繊維布の弛緩した細片に、間隔4.0インチ(10.2cm)の二つの点のマークを繊維布の端からほぼ等距離になるようにペンを用いて付ける。次にそれぞれの手の親指および人差し指により繊維布の端をしっかりと保持して試料を十分に伸長するが、試料が引き裂けたり同様な機械的損傷を受けるまでには伸長しない。伸長に対する繊維布の抵抗性が著しく増加するので、試験を行っている人には伸びの最高の点は明らかに分かる。次にマークを付けた二つの点の間の長さを測定し、下記式によって%伸びを計算する。この場合初期の長さは10.2cmである。
%伸び = {(伸長した長さ − 初期の長さ)/初期の長さ}×100%
幅を狭めた方向において%伸びを測定する場合、繊維布試料は横方向(幅を狭めた方向)に沿った長さ方向に切断する。
【実施例】
【0040】
ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリアミド(PA),即ちナイロンのいずれかからつくられた縦編み繊維布のいくつかの試料を、第1の速度で動作するニップロールを通して供給し、次に第1のニップロールよりも速い第2の速度で動作する第2のニップロールに供給し、次いで取り出しロールに供給する。この工程で幅170cmの縦編み繊維布の幅を110cmの最終的な幅まで狭くする。幅が狭められた縦編み繊維布のいくつかの試料は機械方向において実質的に0の伸びをもっている。これらの試料の幅を狭める前の初期坪量は下記表1に示されている。
【0041】
次にジメチルフォルムアミド(DMF)溶媒中にLYCRAスパンデックス・エラストマーを含む15%溶液を用い、これらの幅が狭められた縦編み繊維布を均一に含浸する。
【0042】
次に含浸した幅が狭められた縦編み繊維布の試料を、水中にDMFを25容積%含む70°F(21℃)の浴に浸漬する。約1分後、含浸した繊維布を順次一連の水洗タンクへ移す。これらの一連のタンクの各々は、この系列の最後の水洗タンクが約100%の水を含むように順次DMFの濃度が減少している。次に含浸した繊維布の試料を室温で空気中において乾燥する。
【0043】
このようにしてつくられた弾力性をもつ縦編み繊維布は表1に示すような最終坪量と伸びの値をもっている。
【0044】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向の伸長性をもった弾力性繊維布であって、該弾力性繊維布は初期坪量が約15〜50g/mの縦編み繊維布を含んで成り、該縦編み繊維布はその初期幅の約30〜90%の範囲まで幅が狭くなっている程度に延伸されており、該幅が狭められた縦編み繊維布はエラストマー重合体を用いて実質的に均一に含浸され、該含浸の程度は含浸された繊維布が約50%より大きい横方向の伸びを示すような程度であることを特徴とする弾力性繊維布。
【請求項2】
該エラストマー重合体は、溶媒に溶解された該エラストマー重合体を含んで成る溶液を該幅が狭められた縦編み繊維布の中に吸収させ、しかる後湿式凝固法により該幅が狭められた縦編み繊維布から溶媒を除去し、これによって該幅が狭められた縦編み繊維布全体の亙り該エラストマー重合体を沈着させることにより、該幅が狭められた縦編み繊維布の中に含浸していることを特徴とする請求項1記載の弾力性繊維布。
【請求項3】
溶媒を除去した際に得られる弾力性繊維布のいずれの表面にも連続的なエラストマー重合体の層が生成しないように、該重合体と溶媒との該溶液は該幅が狭められた編物繊維布の中に取り込まれていることを特徴とする請求項2記載の弾力性繊維布。
【請求項4】
該エラストマー重合体はポリウレタンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載された弾力性繊維布。
【請求項5】
該溶媒はジメチルフォルムアミドおよびジメチルアセトアミドから選ばれることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一つに記載された弾力性繊維布。
【請求項6】
該エラストマー重合体はスパンデックスであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載された弾力性繊維布。
【請求項7】
該幅が狭められた縦編み繊維布はポリエステルおよびナイロンから選ばれる非弾性繊維を含んで成ることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載された弾力性繊維布。
【請求項8】
該縦編み繊維布はチェーン編機、ラッセル編機、またはトリコット編機でつくられたものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載された弾力性繊維布。
【請求項9】
機械方向の%伸びは約5%より小さく、横方向の%伸びは約100〜300%である請求項1〜8のいずれか一つに記載された弾力性繊維布。
【請求項10】
該含浸したエラストマー重合体は幅が狭められた縦編み繊維布とエラストマー重合体とを合わせた重量に関し約15〜約55重量%を成していることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載された弾力性繊維布。
【請求項11】
エラストマー重合体溶液に顔料を加えることによって着色されていることを特徴とする請求項2〜10のいずれか一つに記載された弾力性繊維布。
【請求項12】
抗微生物性仕上げ剤が被覆されているか、または繊維布を含浸するのに用いるエラストマー重合体溶液に抗微生物性仕上げ剤が加えられていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載された弾力性繊維布。
【請求項13】
該幅が狭められた縦編み繊維布は、エラストマー溶液で含浸する前に片方または両方の面が研磨されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一つに記載された方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一つに記載された弾力性繊維布を含んで成ることを特徴とする衣類または医療用或いは使い捨て可能な衛生用の製品。
【請求項15】
伸長可能な弾力性繊維布の製造法であって、該方法は
(a)或る一定の厚さ、初期幅、第1および第2の外側の表面、機械的方向、横方向、および約15〜50g/mの初期坪量を有する縦編み繊維布を提供し、
(b)機械的方向の力をかけることにより該縦編み繊維布を均一に延伸し、これによって初期幅の約30〜90%の横方向の幅をもった幅が狭められた縦編み繊維布をつくり、
(c)溶媒に溶解したエラストマー重合体を含んで成る溶液を用い、該幅が狭められた縦編み繊維布を均一に含浸し、
(d)湿式凝固法により該幅が狭められた縦編み繊維布の厚さ全体に亙り実質的に均一にエラストマー重合体を沈着させることにより、含浸された幅が狭められた縦編み繊維布から溶媒を除去する段階を含んで成ることを特徴とする方法。
【請求項16】
該含浸された幅が狭められた縦編み繊維布からの溶媒の除去は、幅が狭められた縦編み繊維布の第1または第2のいずれの外表面にもエラストマー重合体の実質的に連続な層を生じることなく行われることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項17】
該エラストマー重合体はポリウレタンであることを特徴とする請求項15または16記載の方法。
【請求項18】
該溶媒はジメチルフォルムアミドおよびジメチルアセトアミドから選ばれることを特徴とする請求項15〜17のいずれか一つに記載された方法。
【請求項19】
該エラストマー重合体はスパンデックスであることを特徴とする請求項15〜18のいずれか一つに記載された方法。
【請求項20】
該縦編み繊維布はポリエステルおよびナイロンから選ばれた非弾性繊維を含んで成っていることを特徴とする請求項15〜19のいずれか一つに記載された方法。
【請求項21】
該縦編み繊維布はチェーン編機、ラッセル編機、またはトリコット編機でつくられたものであることを特徴とする請求項15〜20のいずれか一つに記載された方法。
【請求項22】
該エラストマー重合体溶液には顔料が加えられていることを特徴とする請求項15〜21のいずれか一つに記載された方法。
【請求項23】
該含浸された幅が狭められた縦編み繊維布に抗微生物性仕上げ剤を被覆するか、または繊維布を含浸するのに用いるエラストマー重合体溶液に抗微生物性仕上げ剤を加える付加的な工程をさらに含んで成ることを特徴とする請求項15〜22のいずれか一つに記載された方法。
【請求項24】
エラストマー溶液で含浸する前に、該幅が狭められた縦編み繊維布の片方または両方の面を研磨することを特徴とする請求項15〜23のいずれか一つに記載された方法。

【公表番号】特表2011−516753(P2011−516753A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504565(P2011−504565)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【国際出願番号】PCT/IB2009/005389
【国際公開番号】WO2009/127966
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(309028329)インビスタ テクノロジーズ エス エイ アール エル (80)
【Fターム(参考)】