説明

横電界型スイッチングモード型液晶表示装置用のロール状円偏光板及び横電界型スイッチングモード型3D液晶表示装置

【課題】高コントラストで画像のムラが少なく、湿熱耐久性に優れかつ高生産性の横電界型スイッチングモード型液晶表示装置用ロール状円偏光板、及び該ロール状円偏光板を用いた横電界型スイッチングモード型3D液晶表示装置を提供する。
【解決手段】第1の保護フィルム、偏光子、第2の保護フィルムの順に積層された横電界型スイッチングモード型液晶表示装置用のロール状円偏光板であって、前記偏光子が前記横電界型スイッチングモード型液晶表示装置用のロール状円偏光板の長手方向に対して斜めの吸収軸を有し、前記第1の保護フィルムの面内方向の位相差値Roが、下記一般式(i)を満たし、且つ第1の保護フィルムの遅相軸が前記偏光子の吸収軸となす角度が、45°±10°であることを特徴とする横電界型スイッチングモード型液晶表示装置用のロール状円偏光板。
一般式(i) 80≦Ro≦200

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は長手方向、幅手方向に対し斜めの吸収軸を有する偏光子を用いた横電界型スイッチングモード型液晶表示装置用のロール状円偏光板、及び該ロール状円偏光板を用いた3D液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ市場が急速に伸長している。
【0003】
各種液晶表示方式の中でも、横電界型スイッチングモード型(以下インプレーンスイッチング(IPS)方式ともいう)は応答速度が速く、また視野角が広く、斜め方向のコントラストも高いことから、液晶表示ディスプレイとして好ましく用いられている(例えば特許文献1、2参照)。また3D(立体)ディスプレイ分野においても、IPS方式は上記メリットから、他の方式に対し、好ましく用いられている。
【0004】
アクティブ方式の3Dディスプレイには偏光子とλ/4位相差板を組み合わせた光学素子(λ/4偏光板)を有する構成とすることで、3D視認領域を広げられることが知られている。例えば特許文献3では外光のフリッカー抑制、眼鏡の明るさ向上のために、偏光板を一枚しか使用しない眼鏡を使用した立体映像表示装置が開示されている。当該文献では、ディスプレイの前面に円偏光板、眼鏡の構成を(λ/4板)/(液晶セル)/(直線偏光板)とすることで、首を傾けた際のクロストークを抑制できることを開示している。
【0005】
また液晶ディスプレイ(LCD)や反射防止のために円偏光板を用いた有機ELディスプレイのように、発せられる光が直線偏光のディスプレイのほかに、発せられる光が直線偏光ではないディスプレイ、例えばプラズマディスプレイや反射防止のための円偏光板を用いていない有機ELディスプレイなども用いることもできる。
【0006】
λ/4偏光板の製造方法は、位相差フィルムを斜め方向に延伸し、長手方向、または幅手方向に延伸した偏光子と貼合する方法や、長手方向、または幅手方向に延伸した位相差フィルムを偏光子と枚様式で貼り合わせる方法が一般的である。また、例えば特許文献4に示されているように、配向処理された支持フィルム上に液晶化合物を塗布することにより、支持フィルムの配向方向に吸収軸を斜めに有する偏光子を得る方法などが知られている。
【0007】
偏光子はパネル点灯時の熱や使用環境の湿度により、偏光子の延伸方向、及び延伸と垂直な方向に強い収縮力が働く。偏光子への収縮力は、偏光板に貼合されたパネルの中心部から外部に従って大きくなるが偏光板吸収軸を液晶パネルに対し、水平もしくは垂直方向に配置した場合、液晶画面四隅に最も強い収縮力が働く。
【0008】
そのため偏光板の変形(伸縮)による、液晶画面四隅部分に偏光ムラが発生する。特に3Dパネルの場合、本来得られるべき円偏光が楕円偏光となり、コントラストの低下、及び3D立体感が著しく損なわれることから、通常の2Dディスプレイに対して、及び近年のディスプレイ画面の大型化に伴い大きな問題となっており、IPS方式におけるさらなるコントラストの改良や画像のムラの改善が問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−12−02479号公報
【特許文献2】国際公開第2008/044463号
【特許文献3】特開2002−82307号公報
【特許文献4】特開2011−22223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その解決課題は、高コントラストで画像のムラが少なく、湿熱耐久性に優れかつ高生産性の横電界型スイッチングモード型液晶表示装置用ロール状円偏光板、及び該ロール状円偏光板を用いた横電界型スイッチングモード型3D液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0012】
1.第1の保護フィルム、偏光子、第2の保護フィルムの順に積層された横電界型スイッチングモード型液晶表示装置用のロール状円偏光板であって、前記偏光子が前記横電界型スイッチングモード型液晶表示装置用のロール状円偏光板の長手方向に対して斜めの吸収軸を有し、前記第1の保護フィルムの面内方向の位相差値Roが、温度23℃相対湿度55%RHの環境下、光波長590nmでの測定において、下記一般式(i)を満たし、且つ第1の保護フィルムの遅相軸が前記偏光子の吸収軸となす角度が、45°±10°であることを特徴とする横電界型スイッチングモード型液晶表示装置用のロール状円偏光板。
【0013】
一般式(i) 80≦Ro≦200
(式中、Ro=(n−n)×dであり、nはフィルムの面内の遅相軸方向の屈折率、nはフィルム面内で遅相軸に直交する方向の屈折率をそれぞれ表し、dはフィルムの厚さ(nm)を表す。)
2.前記偏光子がリオトロピック液晶化合物を配向させた配向膜を有し、該配向膜がプラスティック基材に配向処理され、長手方向に対して吸収軸が45°±10°傾斜していることを特徴とする前記1に記載の横電界型スイッチングモード型液晶表示装置用のロール状円偏光板。
【0014】
3.前記偏光子が、第2の保護フィルムに配向処理を行い、長手方向に対して斜めの吸収軸を持たせたものであることを特徴とする前記1に記載の横電界型スイッチングモード型液晶表示装置用のロール状円偏光板。
【0015】
4.液晶セルとそれを挟持する2枚の偏光板からなる横電界型スイッチングモード型3D液晶表示装置であって、液晶セルの視認側に、前記1〜3のいずれか一項に記載の横電界型スイッチングモード型液晶表示装置用のロール状円偏光板が第2の保護フィルムを電極側となるよう配置されることを特徴とする横電界型スイッチングモード型3D液晶表示装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、高コントラストで画像のムラが少なく、湿熱耐久性に優れかつ高生産性の横電界型スイッチングモード型液晶表示装置用ロール状円偏光板、及び該ロール状円偏光板を用いた横電界型スイッチングモード型3D液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】偏光子が偏光板の長手方向に対して斜めの吸収軸を有するロール状偏光板の一例の模式図である。
【図2】3D液晶メガネの概念図の一例である。
【図3】本発明の好ましい実施形態による液晶表示装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
我々は鋭意検討の結果、横電界型スイッチングモード型液晶表示装置用のロール状円偏光板第1の保護フィルム、偏光子、第2の保護フィルムの順に積層されたロール状円偏光板であって、前記偏光子がロール状偏光板の長手方向に対して斜めの吸収軸を有し、前記第1の保護フィルムの面内方向の位相差値Roが後述する一般式(i)を満たし、且つ第1の保護フィルムの遅相軸が前記偏光子の吸収軸となす角度が、45°±10°であるロール状円偏光板により、立体感が高く画像ムラが少なく、高コントラストでかつ湿熱耐久性の優れたIPS方式の3Dディスプレイを、安価に提供することを見出した。
【0020】
本発明のロール状円偏光板は表示用ディスプレイの視認側に設けられる。この表示用ディスプレイを鑑賞するための3Dメガネにはλ/4位相差板を有しており、この3Dメガネと上記表示用ディスプレイとの組み合わせで、高コントラストでムラの少ない良好な立体画像を鑑賞することができる。
【0021】
〈ロール状円偏光板〉
本発明のロール状円偏光板は第1の保護フィルム、偏光子、第2の保護フィルムの順に積層されたロール状偏光板であって、前記偏光子が偏光板の長手方向に対して斜めの吸収軸を有している。この偏光板は液晶セルに、第2の保護フィルム、偏光子、第1の保護フィルムの順に積層されている。液晶セルの下側に位置する下偏光板の吸収軸に対してIPS液晶セルの上側に位置する本発明に係る斜めの吸収軸を有す偏光子の吸収軸は90度と直交している。
【0022】
また、本発明に係る斜めの吸収軸を有す偏光子は第2の保護フィルムと一体であっても構わない。
【0023】
以下第1の保護フィルム、偏光子、第2の保護フィルムについて説明する。
【0024】
〈第2の保護フィルム〉
第2の保護フィルムは電極側の液晶セルと偏光子との間に配置される。第2の保護フィルムは、面内方向の位相差Roが、0nm≦Ro≦5nmであり、厚み方向の位相差Rtが−5nm≦Rt≦5nmであることが好ましい。Ro、Rtを所望の値にするための手段はフィルムが一枚であれば限定はないが、好ましくは、負の配向複屈折性を有する化合物を含有するセルロースエスエルであって、膜厚が20〜60μmのものである。
【0025】
第2の保護フィルムは、フィルムとして均一のものであることが好ましく、例えば、複数のフィルムを重ね合わせたり塗布層を設けて同じRo、Rtを有していたとしても、一枚のフィルムである場合の方が、性能改善効果は大きい。
【0026】
〈セルロースエステル〉
本発明に係る第2の保護フィルムは、面内方向の位相差Roと厚み方向の位相差Rtが上記の範囲内の材料であれば限定されないが、セルロースエステルフィルムからなる保護フィルムであることが好ましい。セルロースエステルとしては、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース(DAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、硝酸セルロース等のセルロースエステル類が挙げられる。
【0027】
本発明に用いられるセルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることができる。また、これらから得られたセルロースエステルは、それぞれを単独あるいは任意の割合で混合使用することができるが、綿花リンターを50質量%以上使用することが好ましい。
【0028】
セルロースエステルフィルムの分子量が大きいと弾性率が大きくなるが、分子量を上げすぎるとセルロースエステルの溶解液の粘度が高くなりすぎるため生産性が低下する。セルロースエステルの分子量は数平均分子量(Mn)で30000〜200000のものが好ましく、500000〜200000のものが更に好ましい。
【0029】
本発明で用いられるセルロースエステルはMw/Mn比が1〜5であることが好ましく、更に好ましくは1〜3であり、特に好ましくは1.4〜2.3である。
【0030】
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用い測定できるので、これを用いて数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を算出し、その比を計算することができる。
【0031】
測定条件は以下の通りである。
【0032】
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1,000,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
【0033】
(負の配向複屈折性を有する化合物)
本発明に用いることのできる負の配向複屈折性を有する化合物とは、セルロースエステルフィルムの中で、フィルムの延伸方向に対して負の複屈折性を示す材料を意味し、アクリルポリマー、ポリエステル、フラノース構造もしくはピラノース構造を有する化合物、スルホン化合物等が挙げられる。
【0034】
負の配向複屈折性を有しているか否かは、その化合物を添加した系と、添加していない系でのフィルムの複屈折を複屈折計により測定し、その差を比較することにより知ることができる。
【0035】
〈アクリルポリマー、ポリエステル、フラノース構造もしくはピラノース構造を有する化合物〉
次に本発明に用いることのできるアクリルポリマー、ポリエステルおよびフラノース構造もしくはピラノース構造を有する化合物ついて説明する。
【0036】
〈アクリルポリマー〉
本発明に用いることのできるセルロースエステルフィルムは、延伸方向に対して負の配向複屈折性を示す重量平均分子量が500以上30000以下であるアクリルポリマーを含有することが好ましく、該アクリルポリマーは芳香環を側鎖に有するアクリルポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマーであることが好ましい。
【0037】
該ポリマーの重量平均分子量が500以上30000以下のもので該ポリマーの組成を制御することで、セルロースエステルと該ポリマーとの相溶性を良好にすることができる。
【0038】
特に、アクリルポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリルポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマーについて、好ましくは重量平均分子量が500以上10000以下のものであれば、上記に加え、製膜後のセルロースエステルフィルムの透明性が優れ、透湿度も極めて低く、偏光板用保護フィルムとして優れた性能を示す。
【0039】
該ポリマーは重量平均分子量が500以上30000以下であるから、オリゴマーから低分子量ポリマーの間にあると考えられるものである。このようなポリマーを合成するには、通常の重合では分子量のコントロールが難しく、分子量をあまり大きくしない方法で、できるだけ分子量を揃えることの出来る方法を用いることが望ましい。
【0040】
かかる重合方法としては、クメンペルオキシドやt−ブチルヒドロペルオキシドのような過酸化物重合開始剤を使用する方法、重合開始剤を通常の重合より多量に使用する方法、重合開始剤の他にメルカプト化合物や四塩化炭素等の連鎖移動剤を使用する方法、重合開始剤の他にベンゾキノンやジニトロベンゼンのような重合停止剤を使用する方法、更に特開2000−128911号公報または同2000−344823号公報にあるような一つのチオール基と2級のヒドロキシ基とを有する化合物、或いは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等を挙げることができ、何れも本発明において好ましく用いられるが、特に、該公報に記載の方法が好ましい。
【0041】
本発明に有用なポリマーを構成するモノマー単位としてのモノマーを下記に挙げるがこれに限定されない。
【0042】
エチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマーを構成するエチレン性不飽和モノマー単位としては:ビニルエステルとして、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、オクチル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等;アクリル酸エステルとして、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェネチル、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸−p−ヒドロキシメチルフェニル、アクリル酸−p−(2−ヒドロキシエチル)フェニル等;メタクリル酸エステルとして、上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたもの;不飽和酸として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等を挙げることができる。
【0043】
上記モノマーで構成されるポリマーはコポリマーでもホモポリマーでもよく、ビニルエステルのホモポリマー、ビニルエステルのコポリマー、ビニルエステルとアクリル酸またはメタクリル酸エステルとのコポリマーが好ましい。
【0044】
本発明において、アクリルポリマーという(単にアクリルポリマーという)のは、芳香環或いはシクロヘキシル基を有するモノマー単位を有しないアクリル酸またはメタクリル酸アルキルエステルのホモポリマーまたはコポリマーを指す。芳香環を側鎖に有するアクリルポリマーというのは、必ず芳香環を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位を含有するアクリルポリマーである。
【0045】
また、シクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマーというのは、シクロヘキシル基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位を含有するアクリルポリマーである。
【0046】
芳香環及びシクロヘキシル基を有さないアクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)等、または上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることができる。
【0047】
アクリルポリマーは上記モノマーのホモポリマーまたはコポリマーであるが、アクリル酸メチルエステルモノマー単位が30質量%以上を有していることが好ましく、また、メタクリル酸メチルエステルモノマー単位が40質量%以上有することが好ましい。特にアクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルのホモポリマーが好ましい。
【0048】
芳香環を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸(2または4−クロロフェニル)、メタクリル酸(2または4−クロロフェニル)、アクリル酸(2または3または4−エトキシカルボニルフェニル)、メタクリル酸(2または3または4−エトキシカルボニルフェニル)、アクリル酸(oまたはmまたはp−トリル)、メタクリル酸(oまたはmまたはp−トリル)、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェネチル、メタクリル酸フェネチル、アクリル酸(2−ナフチル)等を挙げることができるが、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニチル、メタクリル酸フェネチルを好ましく用いることができる。
【0049】
芳香環を側鎖に有するアクリルポリマーの中で、芳香環を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位が20〜40質量%を有し、且つアクリル酸またはメタクリル酸メチルエステルモノマー単位を50〜80質量%有することが好ましい。該ポリマー中、ヒドロキシ基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位を2〜20質量%有することが好ましい。
【0050】
シクロヘキシル基を有するアクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、アクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)等を挙げることができるが、アクリル酸シクロヘキシル及びメタクリル酸シクロヘキシルを好ましく用いることができる。
【0051】
シクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマー中、シクロヘキシル基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位を20〜40質量%を有し且つ50〜80質量%有することが好ましい。また、該ポリマー中、ヒドロキシ基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位を2〜20質量%有することが好ましい。
【0052】
上述のエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリルポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリルポリマー及びシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマーは何れもセルロース樹脂との相溶性に優れる。
【0053】
これらのヒドロキシ基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマーの場合はホモポリマーではなく、コポリマーの構成単位である。この場合、好ましくは、ヒドロキシ基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位がアクリルポリマー中2〜20質量%含有することが好ましい。
【0054】
本発明において、側鎖にヒドロキシ基を有するポリマーも好ましく用いることができる。ヒドロキシ基を有するモノマー単位としては、前記したモノマーと同様であるが、アクリル酸またはメタクリル酸エステルが好ましく、例えば、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸−p−ヒドロキシメチルフェニル、アクリル酸−p−(2−ヒドロキシエチル)フェニル、またはこれらアクリル酸をメタクリル酸に置き換えたものを挙げることができ、好ましくは、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル及びメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルである。ポリマー中にヒドロキシ基を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルモノマー単位はポリマー中2〜20質量%含有することが好ましく、より好ましくは2〜10質量%である。
【0055】
前記のようなポリマーが上記のヒドロキシ基を有するモノマー単位を2〜20質量%含有したものは、勿論セルロースエステルとの相溶性、保留性、寸法安定性が優れ、透湿度が小さいばかりでなく、偏光板保護フィルムとしての偏光子との接着性に特に優れ、偏光板の耐久性が向上する効果を有している。
【0056】
アクリルポリマーの主鎖の少なくとも一方の末端にヒドロキシ基を有するようにする方法は、特に主鎖の末端にヒドロキシ基を有するようにする方法であれば限定ないが、アゾビス(2−ヒドロキシエチルブチレート)のようなヒドロキシ基を有するラジカル重合開始剤を使用する方法、2−メルカプトエタノールのようなヒドロキシ基を有する連鎖移動剤を使用する方法、ヒドロキシ基を有する重合停止剤を使用する方法、リビングイオン重合によりヒドロキシ基を末端に有するようにする方法、特開2000−128911号または2000−344823号公報にあるような一つのチオール基と2級のヒドロキシ基とを有する化合物、或いは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等により得ることができ、特に該公報に記載の方法が好ましい。
【0057】
この公報記載に関連する方法で作られたポリマーは、綜研化学社製のアクトフロー・シリーズとして市販されており、好ましく用いることができる。上記の末端にヒドロキシ基を有するポリマー及び/または側鎖にヒドロキシ基を有するポリマーは、本発明において、ポリマーの相溶性、透明性を著しく向上する効果を有する。
【0058】
更に、延伸方向に対して負の配向複屈折性を示すエチレン性不飽和モノマーとして、スチレン類を用いたポリマーであることが負の屈折性を発現させるために好ましい。スチレン類としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ビニル安息香酸メチルエステルなどが挙げられるが、これらに限定される物ではない。
【0059】
前記不飽和エチレン性モノマーとして挙げた例示モノマーと共重合してもよく、また複屈折性を制御する目的で、2種以上の上記ポリマーをもちいてセルロースエステルに相溶させて用いても良い。
【0060】
更に、本発明に係るセルロースエステルフィルムは、分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと分子内に芳香環を有せず、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとを共重合して得られた重量平均分子量5000以上30000以下のポリマーXと、より好ましくは芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーYaを重合して得られた重量平均分子量500以上3000以下のポリマーYとを含有することが好ましい。
【0061】
〈ポリマーX、ポリマーY〉
本発明に好ましく用いることのできるポリマーXは分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと分子内に芳香環を有せず、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとを共重合して得られた重量平均分子量5000以上30000以下のポリマーである。好ましくは、Xaは分子内に芳香環と親水性基を有しないアクリルまたはメタクリルモノマー、Xbは分子内に芳香環を有せず親水性基を有するアクリルまたはメタクリルモノマーである。
【0062】
本発明に好ましく用いることのできるポリマーXは、下記一般式(1)で表される。
【0063】
一般式(1)
−(Xa)−(Xb)−(Xc)
さらに好ましくは、下記一般式(1−1)で表されるポリマーである。
【0064】
一般式(1−1)
−[CH−C(−R)(−CO)]−[CH−C(−R)(−CO−OH)−]−[Xc]
(式中、R、R、Rは、HまたはCHを表す。Rは炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基を表す。R、Rは−CH−、−C−または−C−を表す。Xcは、Xa、Xbに重合可能なモノマー単位を表す。m、nおよびpは、モル組成比を表す。ただしm≠0、n≠0、m+n+p=100である。)
本発明のポリマーXを構成するモノマー単位としてのモノマーを下記に挙げるがこれに限定されない。
【0065】
Xにおいて、親水性基とは、ヒドロキシ基、エチレンオキシド連鎖を有する基をいう。
【0066】
分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaは、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−エトキシエチル)等、または上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることができる。中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル(i−、n−)であることが好ましい。
【0067】
分子内に芳香環を有せず、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbは、ヒドロキシ基を有するモノマー単位として、アクリル酸またはメタクリル酸エステルが好ましく、例えば、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、またはこれらアクリル酸をメタクリル酸に置き換えたものを挙げることができ、好ましくは、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)及びメタクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)である。
【0068】
Xcとしては、Xa、Xb以外のものでかつ共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであれば、特に制限はないが、芳香環を有していないものが好ましい。
【0069】
Xa、XbおよびXcのモル組成比m:nは99:1〜65:35の範囲が好ましく、更に好ましくは95:5〜75:25の範囲である。Xcのpは0〜10である。Xcは複数のモノマー単位であってもよい。
【0070】
Xaのモル組成比が多いとセルロースエステルとの相溶性が良化するがフィルム厚み方向のリターデーション値Rtが大きくなる。Xbのモル組成比が多いと上記相溶性が悪くなるが、Rtを低減させる効果が高い。また、Xbのモル組成比が上記範囲を超えると製膜時にヘイズが出る傾向があり、これらの最適化を図りXa、Xbのモル組成比を決めることが好ましい。
【0071】
ポリマーXの分子量は重量平均分子量が5000以上30000以下であり、更に好ましくは8000以上25000以下である。
【0072】
重量平均分子量を5000以上とすることにより、セルロースエステルフィルムの、高温高湿下における寸法変化が少ない、偏光板保護フィルムとしてカールが少ない等の利点が得られ好ましい。重量平均分子量が30000を以内とした場合は、セルロースエステルとの相溶性がより向上し、高温高湿下においてのブリードアウト、さらには製膜直後でのヘイズの発生が抑制される。
【0073】
本発明に用いることのできるポリマーXの重量平均分子量は、公知の分子量調節方法で調整することができる。そのような分子量調節方法としては、例えば四塩化炭素、ラウリルメルカプタン、チオグリコール酸オクチル等の連鎖移動剤を添加する方法等が挙げられる。また、重合温度は通常室温から130℃、好ましくは50℃から100℃で行われるが、この温度または重合反応時間を調整することで可能である。
【0074】
重量平均分子量の測定方法は下記方法によることができる。
【0075】
(重量平均分子量測定方法)
重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した。
【0076】
測定条件は以下の通りである。
【0077】
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
【0078】
本発明に好ましく用いることのできるポリマーYは芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーYaを重合して得られた重量平均分子量500以上3000以下のポリマーである。
【0079】
量平均分子量500以上ではポリマーの残存モノマーが減少し好ましい。また、3000以下とすることは、リターデーション値Rt低下性能を維持するために好ましい。
【0080】
Yaは、好ましくは芳香環を有さないアクリルまたはメタクリルモノマーである。
【0081】
本発明のポリマーYは、下記一般式(2)で表される。
【0082】
一般式(2)
−(Ya)−(Yb)
さらに好ましくは、下記一般式(2−1)で表されるポリマーである。
【0083】
一般式(2−1)
−[CH−C(−R)(−CO)]−[Yb]
(式中、Rは、HまたはCHを表す。Rは炭素数1〜12のアルキル基またはシクロアルキル基を表す。Ybは、Yaと共重合可能なモノマー単位を表す。kおよびqは、モル組成比を表す。ただしk≠0、k+q=100である。)
Ybは、Yaと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであれば特に制限はない。Ybは複数であってもよい。k+q=100、qは好ましくは0〜30である。
【0084】
芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマーYを構成するエチレン性不飽和モノマーYaはアクリル酸エステルとして、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、メタクリル酸エステルとして、上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたもの;不飽和酸として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等を挙げることができる。
【0085】
Ybは、Yaと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであれば特に制限はないが、ビニルエステルとして、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、オクチル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、桂皮酸ビニル等が好ましい。Ybは複数であってもよい。
【0086】
ポリマーX、Yを合成するには、通常の重合では分子量のコントロールが難しく、分子量をあまり大きくしない方法で、できるだけ分子量を揃えることの出来る方法を用いることが望ましい。かかる重合方法としては、クメンペルオキシドやt−ブチルヒドロペルオキシドのような過酸化物重合開始剤を使用する方法、重合開始剤を通常の重合より多量に使用する方法、重合開始剤の他にメルカプト化合物や四塩化炭素等の連鎖移動剤を使用する方法、重合開始剤の他にベンゾキノンやジニトロベンゼンのような重合停止剤を使用する方法、更に特開2000−128911号または同2000−344823号公報にあるような一つのチオール基と2級のヒドロキシ基とを有する化合物、あるいは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等を挙げることができ、何れも本発明において好ましく用いられるが、特に、分子中にチオール基と2級のヒドロキシ基とを有する化合物を連鎖移動剤として使用する重合方法が好ましい。
【0087】
この場合、ポリマーXおよびポリマーYの末端には、重合触媒および連鎖移動剤に起因するヒドロキシ基、チオエーテルを有することとなる。この末端残基により、ポリマーX、Yとセルロースエステルとの相溶性を調整することができる。
【0088】
ポリマーXおよびYの水酸基価(ヒドロキシ基価)は30〜150[mgKOH/g]であることが好ましい。
【0089】
(水酸基価(ヒドロキシ基価)の測定方法)
この測定は、JIS K 0070(1992)に準ずる。この水酸基価(ヒドロキシ基価)は、試料1gをアセチル化させたとき、ヒドロキシ基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数と定義される。具体的には試料Xg(約1g)をフラスコに精秤し、これにアセチル化試薬(無水酢酸20mlにピリジンを加えて400mlにしたもの)20mlを正確に加える。フラスコの口に空気冷却管を装着し、95〜100℃のグリセリン浴にて加熱する。
【0090】
1時間30分後、冷却し、空気冷却管から精製水1mlを加え、無水酢酸を酢酸に分解する。次に電位差滴定装置を用いて0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で滴定を行い、得られた滴定曲線の変曲点を終点とする。更に空試験として、試料を入れないで滴定し、滴定曲線の変曲点を求める。
【0091】
水酸基価(ヒドロキシ基価)は、次の式によって算出する。
【0092】
水酸基価(ヒドロキシ基価)={(B−C)×f×28.05/X}+D
(式中、Bは空試験に用いた0.5mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、Cは滴定に用いた0.5mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、fは0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター、Dは酸価、また、28.05は水酸化カリウムの1mol量56.11の1/2を表す)
上述のXポリマーポリマーYは何れもセルロースエステルとの相溶性に優れ、蒸発や揮発もなく生産性に優れ、偏光板用保護フィルムとしての保留性がよく、透湿度が小さく、寸法安定性に優れている。
【0093】
ポリマーXとポリマーYのセルロースエステルフィルム中での含有量は、下記式(i)、式(ii)を満足する範囲であることが好ましい。ポリマーXの含有量をXg(質量%=ポリマーXの質量/セルロースエステルの質量×100)、ポリマーYの含有量をYg(質量%)とすると、
式(i) 5≦Xg+Yg≦35(質量%)
式(ii) 0.05≦Yg/(Xg+Yg)≦0.4
式(i)の好ましい範囲は、10〜25質量%である。
【0094】
ポリマーXとポリマーYは総量として5質量%以上であれば、リターデーション値Rtの低減に十分な作用をする。また、総量として35質量%以下であれば、偏光子PVAとの接着性が良好である。
【0095】
ポリマーXとポリマーYは後述するドープ液を構成する素材として直接添加、溶解するか、もしくはセルロースエステルを溶解する有機溶媒に予め溶解した後ドープ液に添加することができる。
【0096】
〈ポリエステル〉
本発明に用いることのできるセルロースエステルフィルムは下記ポリエステルを含有することも好ましい。
【0097】
(一般式(3)または(4)で表されるポリエステル)
本発明のセルロースエステルフィルムは下記一般式(3)または(4)で表されるポリエステルを含有することが好ましい。
【0098】
一般式(3) B1−(G−A−)G−B1
(式中、B1はモノカルボン酸を表し、Gは2価のアルコールを表し、Aは2塩基酸を表す。B1、G、Aはいずれも芳香環を含まない。mは繰り返し数を表す。)
一般式(4) B2−(A−G−)A−B2
(式中、B2はモノアルコールを表し、Gは2価のアルコールを表し、Aは2塩基酸を表す。B2、G、Aはいずれも芳香環を含まない。nは繰り返し数を表す。)
一般式(3)、(4)において、B1はモノカルボン酸成分を表し、B2はモノアルコール成分を表し、Gは2価のアルコール成分を表し、Aは2塩基酸成分を表し、これらによって合成されたことを表す。B1、B2、G、Aはいずれも芳香環を含まないことが特徴である。m、nは繰り返し数を表す。
【0099】
B1で表されるモノカルボン酸としては、特に制限はなく公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸等を用いることができる。
【0100】
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0101】
脂肪族モノカルボン酸としては炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることがさらに好ましく、炭素数1〜12であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
【0102】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
【0103】
B2で表されるモノアルコール成分としては、特に制限はなく公知のアルコール類を用いることができる。例えば炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪族飽和アルコールまたは脂肪族不飽和アルコールを好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることがさらに好ましく、炭素数1〜12であることが特に好ましい。
【0104】
Gで表される2価のアルコール成分としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等を挙げることができるが、これらのうちエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが好ましく、さらに、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールを好ましく用いられる。
【0105】
Aで表される2塩基酸(ジカルボン酸)成分としては、脂肪族2塩基酸、脂環式2塩基酸が好ましく、例えば、脂肪族2塩基酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等、特に、脂肪族ジカルボン酸としては炭素原子数4〜12もの、これらから選ばれる少なくとも一つのものを使用する。つまり、2種以上の2塩基酸を組み合わせて使用してよい。
【0106】
m、nは繰り返し数を表し、1以上で170以下が好ましい。
【0107】
(一般式(5)または(6)で表されるポリエステル)
本発明のセルロースエステルフィルムは下記一般式(5)または(6)で表されるポリエステルを含有することが好ましい。
【0108】
一般式(5) B1−(G−A−)G−B1
(式中、B1は炭素数1〜12のモノカルボン酸を表し、Gは炭素数2〜12の2価のアルコールを表し、Aは炭素数2〜12の2塩基酸を表す。B1、G、Aはいずれも芳香環を含まない。mは繰り返し数を表す。)
一般式(6) B2−(A−G−)A−B2
(式中、B2は炭素数1〜12のモノアルコールを表し、Gは炭素数2〜12の2価のアルコールを表し、Aは炭素数2〜12の2塩基酸を表す。B2、G、Aはいずれも芳香環を含まない。nは繰り返し数を表す。)
一般式(5)、(6)において、B1はモノカルボン酸成分を表し、B2はモノアルコール成分を表し、Gは炭素数2〜12の2価のアルコール成分を表し、Aは炭素数2〜12の2塩基酸成分を表し、これらによって合成されたことを表す。B1、G、Aはいずれも芳香環を含まない。m、nは繰り返し数を表す。
【0109】
B1、B2は、前述の一般式(3)または(4)におけるB1、B2と同義である。
【0110】
G、Aは前述の一般式(3)または(4)におけるG、Aの中で炭素数2〜12のアルコール成分または2塩基酸成分である。
【0111】
ポリエステルの重量平均分子量は20000以下が好ましく、10000以下であることがさらに好ましい。特に重量平均分子量が500〜10000のポリエステルは、セルロースエステルとの相溶性が良好であり、好ましく用いられる。
【0112】
ポリエステルの重縮合は常法によって行われる。例えば、上記2塩基酸とグリコールの直接反応、上記の2塩基酸またはこれらのアルキルエステル類、例えば2塩基酸のメチルエステルとグリコール類とのポリエステル化反応またはエステル交換反応により熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコールとの脱ハロゲン化水素反応の何れかの方法により容易に合成し得るが、重量平均分子量がさほど大きくないポリエステルは直接反応によるのが好ましい。
【0113】
低分子量側に分布が高くあるポリエステルはセルロースエステルとの相溶性が非常によく、フィルム形成後、透湿度も小さく、しかも透明性に富んだセルロースエステルフィルムを得ることができる。分子量の調節方法は、特に制限なく従来の方法を使用できる。例えば、重合条件にもよるが、1価の酸または1価のアルコールで分子末端を封鎖する方法により、これらの1価のものの添加する量によりコントロールできる。
【0114】
この場合、1価の酸がポリマーの安定性から好ましい。例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸等を挙げることができるが、重縮合反応中には系外に溜去せず、停止して反応系外にこのような1価の酸を系外に除去するときに溜去し易いものが選ばれるが、これらを混合使用してもよい。また、直接反応の場合には、反応中に溜去してくる水の量により反応を停止するタイミングを計ることによっても重量平均分子量を調節できる。その他、仕込むグリコールまたは2塩基酸のモル数を偏らせることによってもできるし、反応温度をコントロールしても調節できる。
【0115】
本発明に用いることのできるポリエステルは、セルロースエステルに対し1〜40質量%含有することが好ましく、一般式(5)または(6)で表されるポリエステルは2〜30質量%含有することが好ましい。特に5〜15質量%含有することが好ましい。
【0116】
〈フラノース構造もしくはピラノース構造を有する化合物〉
本発明に用いることのできるセルロースエステルフィルムはフラノース構造もしくはピラノース構造を少なくとも1個有し、該フラノース構造もしくはピラノース構造が1〜12個結合した化合物中のOH基のすべてもしくは一部をエステル化した化合物とを含むことを特徴とする。
【0117】
好ましい「フラノース構造もしくはピラノース構造を少なくとも1個有し、該フラノース構造もしくはピラノース構造が1〜12個結合した化合物」の例としては、例えば以下のようなものをあげることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0118】
グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、アラビノース、ラクトース、スクロース、セロビオース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノースなどが挙げられるが、特にフラノース構造とピラノース構造を両方有するものが好ましい。例としてはスクロースが挙げられる。
【0119】
フラノース構造もしくはピラノース構造を少なくとも1個有し、該フラノース構造もしくはピラノース構造が1〜12個結合した化合物中のOH基のすべてもしくは一部をエステル化した化合物に用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。
【0120】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
【0121】
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
【0122】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、アルコキシ基を導入したもの、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができるが、特に安息香酸が好ましい。
【0123】
これらの化合物の製造方法の詳細は、特開昭62−42996号公報及び特開平10−237084号公報に記載されている。
【0124】
以下に、具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0125】
【化1】

【0126】
【化2】

【0127】
【化3】

【0128】
<スルホン化合物>
下記一般式(7)において、Rはアルキル基またはアリール基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。また、R、RおよびRの炭素原子数の総和が10以上であることが特に好ましい。
【0129】
また、一般式(8)中、RおよびRは、それぞれ独立に、アルキル基またはアリール基を表す。また、RおよびRの炭素原子数の総和は10以上であり、各々、アルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよい。置換基としてはフッ素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基が好ましく、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基が特に好ましい。
【0130】
【化4】

【0131】
また、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数1乃至25のものが好ましく、6乃至25のものがより好ましく、6乃至20のもの(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ビシクロオクチル、ノニル、アダマンチル、デシル、t−オクチル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、ジデシル)が特に好ましい。アリール基としては炭素原子数が6乃至30のものが好ましく、6乃至24のもの(例えば、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル、ビナフチル、トリフェニルフェニル)が特に好ましい。
【0132】
一般式(7)または一般式(8)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0133】
【化5】

【0134】
【化6】

【0135】
【化7】

【0136】
【化8】

【0137】
【化9】

【0138】
〈第1の保護フィルム〉
本発明の第1の保護フィルムは面内方向の位相差値Roが、温度23℃相対湿度55%RHの環境下、光波長590nmでの測定において、下記一般式(i)を満たし、且つ第1の保護フィルムの遅相軸が前記偏光子の吸収軸となす角度が、45°±10°である。
【0139】
一般式(i) 80≦Ro≦200
(式中、Ro=(n−n)×dであり、nはフィルムの面内の遅相軸方向の屈折率、nはフィルム面内で遅相軸に直交する方向の屈折率をそれぞれ表し、dはフィルムの厚さ(nm)を表す。)
尚、フィルムの複屈折、リターデーション値は自動複屈折率測定装置(王子計測機器(株)製の商品名KOBRA−21ADH)を用いて測定出来るが、これに限定されるものではない。
【0140】
本発明に係る第1の保護フィルムは面内方向の位相差Roが上記の範囲内の材料であれば限定されないが、セルロースエステルフィルムからなる保護フィルムであることが好ましい。
【0141】
さらに好ましいセルロースエステルは、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXacとし、プロピオニル基またはブチリル基の置換度をYpbとした時、アセチル基の置換度をXacとプロとピオニル基またはブチリル基の置換度をYpbとの和が、下記式(A)を満たすセルロースエステルである。
【0142】
また、厚み方向の位相差Rtは、100≦Rt≦300の範囲にあることが本発明の効果を発現する上で好ましい。
【0143】
式(A) 2.2≦(Xac+Ypb)≦2.55
特に好ましくは、上記式(A)及び下記式(B)を同時に満たすセルロースエステルである。
【0144】
式(B) 1.0≦Xac≦2.1、0.1≦Ypb≦1.55
これらアシル基の置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法に準じて測定することができる。アシル基で置換されていない部分は通常水酸ヒドロキシ基として存在している。
【0145】
これらのセルロースエステルは公知の方法で合成することができる。
【0146】
本発明に係る第1の保護フィルムに用いられるセルロースエステルの原料のセルロースは、第2の保護フィルムに用いられるセルロースエステルの原料のセルロースと同様に用いる事ができる。本発明に係る第1の保護フィルムに用いられるセルロースエステルの分子量、Mw/Mn比、その測定法も第2の保護フィルムと同様である。
【0147】
本発明において、第1の保護フィルムの遅相軸は、後述する偏光子の吸収軸となす角度が、45°±10°である。この構成にするために、第1の保護フィルムの遅相軸はロール状偏光板の長手方向に対して平行あるいは、直角方向が好ましい。作製の容易さ等からは、長手方向に対して垂直であることが好ましい。
【0148】
第1の保護フィルム及び偏光子を上記の構成とすることで、光源側より偏光子を通過した直線偏光を、第1の保護フィルム(すなわちλ/4板)により円偏光板にすることが可能である。かつ本発明の構成であれば、長手方向と吸収軸との角度が実質的に45゜であるロール状の偏光子と、長手方向と遅相軸とが実質的に垂直であるロール状のλ/4板とをロールtoロールで積層するだけで、容易にロール状の円偏光板を製造することができる。
【0149】
ロールツーロールで円偏光板を容易に作成することができる。
【0150】
また、上記円偏光板を3D液晶パネル前面に適用し、視認側のλ/4位相差板と組み合わせることで、首を傾けた際のクロストークを抑制でき、広い範囲で立体感のある映像を視聴することができる。
【0151】
第1の保護フィルムの膜厚は、特に限定はされないが10〜200μmが用いられる。好ましくは10〜100μm、更に好ましくは30〜80μmである。
【0152】
〈位相差調整剤〉
本発明において、位相差を調整するために位相差調整剤を用いることができる。位相差調整剤としては、特に限定されないが、次のポリエステルポリオールを用いることができる。
【0153】
本発明で使用することができるポリエステルポリオールは、二塩基酸又はこれらのエステル形成性誘導体とグリコールとの縮合反応により得ることができる末端がヒドロキシ基(水酸基)となる重合体である。ここで言うエステル形成性誘導体とは、二塩基酸のエステル化物、二塩基酸クロライド、二塩基酸の無水物のことである。
【0154】
前記ポリエステルポリオールは、芳香族二塩基酸とグリコールとの脱水縮合反応、芳香族無水二塩基酸へのグリコールの付加および脱水縮合反応、又は芳香族二塩基酸のエステル化物とグリコールとの脱アルコールによる縮合反応により得ることができる。
【0155】
前記芳香族二塩基酸又はこれらのエステル形成性誘導体として、単独で10〜16個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を使用できるが、例えばベンゼン環構造、ナフタレン環構造、アントラセン環構造等の芳香族環式構造を有するジカルボン酸やそのエステル形成性誘導体を使用することができ、例えば置換基を有するオルソフタル酸、置換基を有するイソフタル酸、置換基を有するテレフタル酸、置換基を有する無水フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸等やこれらのエステル化物、及び酸塩化物、1,8−ナフタレンジカルボン酸の酸無水物等を挙げることができ、これらは芳香族環に置換基を有していても良く、これらを単独で使用又は2種以上併用できる。好ましくは、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸及びそのエステル化物であり、更に好ましくは、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及びそのエステル化物であり、特に好ましくは、2,6−ナフタレンジカルボン酸及びそのエステル化物である。
【0156】
前記ポリエステルポリオールの二塩基酸の炭素数の平均とは、単一の二塩基酸を用いてポリエステルポリオールを重合する場合は該二塩基酸の炭素数を意味するが、2種以上の二塩基酸を用いてポリエステルポリオールを重合する場合、それぞれの二塩基酸の炭素数とその二塩基酸のモル分率の積の合計を意味する。
【0157】
本発明において、ポリエステルポリオールの原料として使用する二塩基酸の炭素数の平均が10〜16の範囲であることが重要である。かかる二塩基酸の炭素数の平均が10以上であれば、リターデーションの発現性に優れ、炭素数の平均が16以下であれば、セルロースエステルとの相溶性が著しく優れる。二塩基酸として、好ましくは炭素数の平均が10〜14であり、更に好ましくは炭素数の平均が10〜12である。
【0158】
前記炭素数の平均が10〜16であれば、前記10〜16個の炭素原子を有する芳香族二塩基酸とそれ以外の二塩基酸を併用することができる。
【0159】
併用できる二塩基酸として、4〜9個の炭素原子を有するジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体が好ましく、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸等やこれらのエステル化物、及び酸塩化物を挙げることができる。
【0160】
前記グリコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等を単独で使用又は2種以上併用することができ、なかでもエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、2−メチル1,3−プロパンジオールが好ましく、更に好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコールである。
【0161】
本発明に係るポリエステルポリオールは、前記二塩基酸又はそれらのエステル形成性誘導体とグリコールを必要に応じてエステル化触媒の存在下で、例えば180〜250℃の温度範囲内で、10〜25時間、周知慣用の方法でエステル化反応させることによって製造することができる。
【0162】
エステル化反応を行う際に、トルエン、キシレン等の溶媒を用いても良いが、無溶媒若しくは原料として使用するグリコールを溶媒として用いる方法が好ましい。
【0163】
前記エステル化触媒としては、例えばテトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、p−トルエンスルホン酸、ジブチル錫オキサイド等を使用することができる。前記エステル化触媒は、二塩基酸又はそれらのエステル形成性誘導体の全量100質量部に対して0.01〜0.5質量部使用することが好ましい。
【0164】
二塩基酸又はそれらのエステル形成性誘導体とグリコールを反応させる際のモル比は、ポリエステルの末端基がヒドロキシ基(水酸基)となるモル比でなければならず、そのため二塩基酸又はそれらのエステル形成性誘導体1モルに対してグリコールは1.1〜10モルである。好ましくは、二塩基酸又はそれらのエステル形成性誘導体1モルに対して、グリコールが1.5〜7モルであり、更に好ましくは、二塩基酸又はそれらのエステル形成性誘導体1モルに対して、グリコールが2〜5モルである。
【0165】
一方、前記ポリエステルポリオール中に於けるカルボキ基末端は、湿度安定性を低下させるため、その含有量は低い方が好ましい。具体的には、酸価5.0以下が好ましく、更に好ましくは1.0以下であり、特に好ましくは0.5以下である。
【0166】
ここで言う酸価とは、試料1g中に含まれる酸(試料中に存在するカルボキシ基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価はJIS K0070に準拠して測定したものである。
【0167】
前記ポリエステルポリオールは、ヒドロキシ基(水酸基)価(OHV)が35mgKOH/g〜220mgKOH/gの範囲であることが好ましい。ここで言うヒドロキシ基(水酸基)価とは、試料1g中に含まれるOH基をアセチル化したときに、ヒドロキシ基(水酸基)と結合した酢酸を中和するために要する水酸化カリウムのミリグラム数をいう。無水酢酸を用いて試料中のOH基をアセチル化し、使われなかった酢酸を水酸化カリウム溶液で滴定し、初期の無水酢酸の滴定値との差より求める。
【0168】
前記ポリエステルポリオールのヒドロキシ基(水酸基)含有量は、70%以上であることが好ましい。ヒドロキシ基(水酸基)含有量が少ない場合、ポリエステルポリオールとセルロースエステルとの相溶性が低下する。このため、ヒドロキシ基(水酸基)含有量は、70%以上が好ましく、更に好ましくは90%以上であり、最も好ましくは99%以上である。
【0169】
本発明において、ヒドロキシ基(水酸基)含有量が50%以下の化合物は、末端基の一方がヒドロキシ基(水酸基)以外の基で置換されているためポリエステルポリオールには含まれない。
【0170】
前記ヒドロキシ基(水酸基)含有量は、下記の式(A)により求めることができる。
【0171】
式(A):Y/X×100=ヒドロキシ基(水酸基)含有量(%)
X:前記ポリエステルポリオールのヒドロキシ基(水酸基)価(OHV)
Y:1/(数平均分子量(Mn))×56×2×1000
前記ポリエステルポリオールは、300〜3000の範囲内の数平均分子量を有することが好ましく、350〜2000の数平均分子量を有することがより好ましい。
【0172】
また、本発明に係るポリエステルポリオールの分子量の分散度は1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることが更に好ましい。分散度が上記範囲以内であれば、セルロースエステルとの相溶性に優れたポリエステルポリオールを得ることができる。
【0173】
また、前記ポリエステルポリオールは、分子量が300〜1800の成分を50%以上含有することが好ましい。数平均分子量を前記範囲とすることにより、相溶性を大幅に向上させることができる。
【0174】
数平均分子量、分散度及び成分含有率を上記の好ましい範囲に制御する方法として、二塩基酸又はそれらのエステル形成性誘導体1モルに対してグリコールを2〜5モル使用し、未反応のグリコールを減圧留去する方法が好ましい。減圧留去する温度は、100〜200℃が好ましく、更に好ましくは120〜180℃であり、特に好ましくは130〜170℃が好ましい。減圧留去する際の減圧度は、0.1〜500Torrが好ましく、更に好ましくは0.5〜200Torrであり、最も好ましくは1〜100Torrである。
【0175】
ポリエステルポリオール数平均分子量(Mn)及び分散度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0176】
測定条件の一例は以下の通りであるが、これに限られることはなく、同等の測定方法を用いることも可能である。
【0177】
溶媒: テトラヒドロフラン(THF)
カラム: TSKgel G2000HXL(東ソー(株)製を2本接続して使用する)
カラム温度:40℃
試料濃度: 0.1質量%
装置: HLC−8220(東ソー(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: PStQuick F(東ソー(株)製)による校正曲線を使用する。
【0178】
本発明の効果を得る上で、ポリエステルポリオールをフィルム中に5〜30質量%含有することが好ましい。より好ましくは5〜20質量%である。
【0179】
以下に、炭素数が10〜16である二塩基酸の具体例を示すが、本発明はこれに限定されない。
(1)2,6−ナフタレンジカルボン酸
(2)2,3−ナフタレンジカルボン酸
(3)2,6−アントラセンジカルボン酸
(4)2,6−ナフタレンジカルボン酸:コハク酸(75:25〜99:1 モル比)
(5)2,6−ナフタレンジカルボン酸:テレフタル酸(50:50〜99:1 モル比)
(6)2,3−ナフタレンジカルボン酸:コハク酸(75:25〜99:1 モル比)
(7)2,3−ナフタレンジカルボン酸:テレフタル酸(50:50〜99:1 モル比)
(8)2,6−アントラセンジカルボン酸:コハク酸(50:50〜99:1 モル比)(9)2,6−アントラセンジカルボン酸:テレフタル酸(25:75〜99:1 モル比)
(10)2,6−ナフタレンジカルボン酸:アジピン酸(67:33〜99:1 モル比)
(11)2,3−ナフタレンジカルボン酸:アジピン酸(67:33〜99:1 モル比)
(12)2,6−アントラセンジカルボン酸:アジピン酸(40:60〜99:1 モル比)
本発明において用いることができる位相差調整剤としては、上記のポリエステルポリオール以外に、化合物の水溶性や配向性の観点から、オクタノール−水分配係数(logP)は0以上7未満の化合物を用いることも好ましい。
【0180】
位相差調整剤は、例えば、下記一般式(9)で表されるエステル系化合物を好ましく用いることができる。
【0181】
一般式(9) B−(G−A)n−G−B
(式中、Bはヒドロキシ基またはカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基または炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは1以上の整数を表す。)
一般式(9)中、Bで示されるヒドロキシ基またはカルボン酸残基と、Gで示されるアルキレングリコール残基またはオキシアルキレングリコール残基またはアリールグリコール残基、Aで示されるアルキレンジカルボン酸残基またはアリールジカルボン酸残基とから構成されるものであり、通常のエステル系化合物と同様の反応により得られる。
【0182】
一般式(9)で表されるエステル系化合物のカルボン酸成分としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸、脂肪族酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上の混合物として使用することができる。
【0183】
一般式(9)で表されるエステル系化合物の炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。
【0184】
特に炭素数2〜12のアルキレングリコールがセルロースエステルとの相溶性に優れているため、特に好ましい。
【0185】
また、上記一般式(9)で表されるエステル系化合物の炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用できる。
【0186】
一般式(9)で表されるエステル系化合物の炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ1種または2種以上の混合物として使用される。炭素数6〜12のアリーレンジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5ナフタレンジカルボン酸、1,4ナフタレンジカルボン酸等がある。
【0187】
一般式(9)で表されるエステル系化合物は、数平均分子量が、好ましくは300〜1500、より好ましくは400〜1000の範囲が好適である。また、その酸価は、0.5mgKOH/g以下、ヒドロキシ基(水酸基)価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.3mgKOH/g以下、ヒドロキシ基(水酸基)価は15mgKOH/g以下のものである。
【0188】
以下に、本発明に用いることのできる一般式(9)で表されるエステル系化合物の具体的化合物を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0189】
【化10】

【0190】
【化11】

【0191】
【化12】

【0192】
【化13】

【0193】
【化14】

【0194】
【化15】

【0195】
【化16】

【0196】
本発明の第1の保護フィルム、第2の保護フィルムは位相差調整剤を保護フィルムの0.1〜30質量%含むことが好ましく、特には、0.5〜10質量%含むことが好ましい。
【0197】
(位相差発現剤)
本発明では、位相差(「リターデーション」ともいう。)発現剤を含んでいてもよい。位相差(リターデーション)発現剤は、例えば、保護フィルムの0.5〜10質量%の割合で含有させることができ、さらには、2〜6質量%の割合で含有させることが好ましい。位相差(リターデーション)発現剤を採用することにより、低延伸倍率で高いリターデーション発現性を得られる。位相差(リターデーション)発現剤の種類としては、特に定めるものではないが、棒状又は円盤状化合物からなるものを挙げることができる。上記棒状又は円盤状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を位相差(リターデーション)発現剤として好ましく用いることができる。棒状化合物からなる位相差(リターデーション)発現剤の添加量は、セルロースエステルを含むポリマー成分100質量部に対して0.5〜10質量部であることが好ましく、2〜6質量部であることがさらに好ましい。
【0198】
円盤状の位相差(リターデーション)発現剤は、前記セルロースエステルを含むポリマー成分100質量部に対して、0.5〜10質量部の範囲で使用することが好ましく、1〜8質量部の範囲で使用することがより好ましく、2〜6質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。
【0199】
二種類以上の位相差(リターデーション)発現剤を併用してもよい。
【0200】
位相差(リターデーション)発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
【0201】
円盤状化合物について説明する。円盤状化合物としては少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることができる。
【0202】
ここで、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
【0203】
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
【0204】
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環及び1,3,5−トリアジン環が含まれる。
【0205】
芳香族環としては、ベンゼン環、縮合ベンゼン環、ビフェニール類が好ましい。特に1,3,5−トリアジン環が好ましく用いられる。具体的には例えば特開2001−166144号公報に開示の化合物が好ましく用いられる。
【0206】
位相差(リターデーション)発現剤が有する芳香族環の炭素数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましく、2〜6であることが最も好ましい。
【0207】
二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合及び(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。
【0208】
(a)の縮合環(二つ以上の芳香族環の縮合環)の例には、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドリジン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、インダゾール環、クロメン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、キサンテン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環及びチアントレン環が含まれる。ナフタレン環、アズレン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環及びキノリン環が好ましい。
【0209】
(b)の単結合は、二つの芳香族環の炭素原子間の結合であることが好ましい。二以上の単結合で二つの芳香族環を結合して、二つの芳香族環の間に脂肪族環又は非芳香族性複素環を形成してもよい。
【0210】
(c)の連結基も、二つの芳香族環の炭素原子と結合することが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO−、−O−、−NH−、−S−又はそれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。なお、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。
c1:−CO−O−
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−
c13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c14:−NH−CO−アルケニレン−
c15:−O−CO−アルケニレン−
芳香族環及び連結基は、置換基を有していてもよい。
【0211】
置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、スルファモイル基、ウレイド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基及び非芳香族性複素環基が含まれる。
【0212】
アルキル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、さらに置換基(例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、4−カルボキシブチル基、2−メトキシエチル基及び2−ジエチルアミノエチル基の各基が含まれる。
【0213】
アルケニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル基、アリル基及び1−ヘキセニル基が含まれる。
【0214】
アルキニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルキニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル基、1−ブチニル基及び1−ヘキシニル基が含まれる。
【0215】
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル基、プロパノイル基及びブタノイル基が含まれる。
【0216】
脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシ基が含まれる。
【0217】
アルコキシ基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルコキシ基は、さらに置換基(例えば、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基及びメトキシエトキシ基が含まれる。
【0218】
アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基が含まれる。
【0219】
アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノ基及びエトキシカルボニルアミノ基が含まれる。
【0220】
アルキルチオ基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ基、エチルチオ基及びオクチルチオ基が含まれる。
【0221】
アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニル基及びエタンスルホニル基が含まれる。
【0222】
脂肪族アミド基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミドが含まれる。
【0223】
脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基及びn−オクタンスルホンアミド基が含まれる。
【0224】
脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基及び2−カルボキシエチルアミノ基が含まれる。
【0225】
脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル基及びジエチルカルバモイル基が含まれる。
【0226】
脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイル基及びジエチルスルファモイル基が含まれる。
【0227】
脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイド基が含まれる。
【0228】
非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノ基及びモルホリノ基が含まれる。
【0229】
位相差(リターデーション)発現剤の分子量は、300〜800であることが好ましい。
【0230】
円盤状化合物として下記一般式(10)で表されるトリアジン化合物を用いることが好ましい。
【0231】
【化17】

【0232】
上記一般式(10)中、Rは、各々独立に、オルト位、メタ位及びパラ位の少なくともいずれかに置換基を有する芳香族環又は複素環を表す。
【0233】
Xは、各々独立に、単結合又はNR−を表す。ここで、Rは、各々独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基又は複素環基を表す。
【0234】
が表す芳香族環は、フェニル又はナフチルであることが好ましく、フェニルであることが特に好ましい。Rが表す芳香族環はいずれかの置換位置に少なくとも一つの置換基を有してもよい。前記置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アルキル置換スルファモイル基、アルケニル置換スルファモイル基、アリール置換スルファモイル基、スルオンアミド基、カルバモイル、アルキル置換カルバモイル基、アルケニル置換カルバモイル基、アリール置換カルバモイル基、アミド基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基及びアシル基が含まれる。
【0235】
が表す複素環基は、芳香族性を有することが好ましい。芳香族性を有する複素環は、一般に不飽和複素環であり、好ましくは最多の二重結合を有する複素環である。複素環は5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがさらに好ましく、6員環であることが最も好ましい。複素環のヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子又は酸素原子であることが好ましく、窒素原子であることが特に好ましい。芳香族性を有する複素環としては、ピリジン環(複素環基としては、2−ピリジル又は4−ピリジル)が特に好ましい。複素環基は、置換基を有していてもよい。複素環基の置換基の例は、上記アリール部分の置換基の例と同様である。
【0236】
Xが単結合である場合の複素環基は、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基であることが好ましい。窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがさらに好ましく、5員環であることが最も好ましい。複素環基は、複数の窒素原子を有していてもよい。また、複素環基は、窒素原子以外のヘテロ原子(例えば、O、S)を有していてもよい。以下に、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基の例を示す。
【0237】
【化18】

【0238】
が表すアルキル基は、環状アルキル基であっても鎖状アルキル基であってもよいが、鎖状アルキル基が好ましく、分岐を有する鎖状アルキル基よりも、直鎖状アルキル基がより好ましい。
【0239】
アルキル基の炭素原子数は、1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましく、1〜8がさらにまた好ましく、1〜6であることが最も好ましい。アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)及びアシルオキシ基(例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基)が含まれる。
【0240】
が表すアルケニル基は、環状アルケニル基であっても鎖状アルケニル基であってもよいが、鎖状アルケニル基を表すのが好ましく、分岐を有する鎖状アルケニル基よりも、直鎖状アルケニル基を表すのがより好ましい。アルケニル基の炭素原子数は、2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜8であることがさらにまた好ましく、2〜6であることが最も好ましい。アルケニル基は置換基を有していてもよい。置換基の例には、前述のアルキル基の置換基と同様である。
【0241】
が表す芳香族環基及び複素環基は、Rが表す芳香族環及び複素環と同様であり、好ましい範囲も同様である。芳香族環基及び複素環基はさらに置換基を有していてもよく、置換基の例にはRの芳香族環及び複素環の置換基と同様である。
【0242】
円盤状化合物としては下記一般式(11)で表されるトリフェニレン化合物を好ましく用いることもできる。
【0243】
【化19】

【0244】
上記一般式(11)中、R、R、R、R、R及びRは各々独立して、水素原子又は置換基を表す。
【0245】
、R、R、R、R及びRが各々表す置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは、炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜40、より好ましくは炭素数0〜30、特に好ましくは炭素数0〜20のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜40、より好ましくは炭素数6〜30、特に好ましくは炭素数6〜20のアリールオキシ基であり、例えば、フェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる)、アシル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のアシル基であり、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜40、より好ましくは炭素数7〜30、特に好ましくは炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基であり、例えば、フェニルオキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜40、より好ましくは炭素数7〜30、特に好ましくは炭素数7〜20のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜40、より好ましくは炭素数0〜30、特に好ましくは炭素数0〜20のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは、炭素数6〜40、より好ましくは炭素数6〜30、特に好ましくは炭素数1〜20、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、1,3,5−トリアジル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が含まれる。これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基を二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
【0246】
、R、R、R、R及びRが各々表す置換基としては、好ましくはアルキル基、アリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基又はハロゲン原子である。
【0247】
以下に一般式(11)で表される化合物の具体例を挙げるが、こられに限定されない。
【0248】
【化20】

【0249】
【化21】

【0250】
【化22】

【0251】
一般式(10)で表される化合物は、例えば特開2003−344655号公報に記載の方法、一般式(11)で表される化合物は、例えば特開2005−134884号公報に記載の方法等、公知の方法により合成することができる。
【0252】
本発明では前述の円盤状化合物の他に直線的な分子構造を有する棒状化合物も好ましく用いることができる。直線的な分子構造とは、熱力学的に最も安定な構造において棒状化合物の分子構造が直線的であることを意味する。熱力学的に最も安定な構造は、結晶構造解析又は分子軌道計算によって求めることができる。例えば、分子軌道計算ソフト(例えば、WinMOPAC2000、富士通(株)製)を用いて分子軌道計算を行い、化合物の生成熱が最も小さくなるような分子の構造を求めることができる。分子構造が直線的であるとは、上記のように計算して求められる熱力学的に最も安定な構造において、分子構造で主鎖の構成する角度が140度以上であることを意味する。
【0253】
少なくとも二つの芳香族環を有する棒状化合物としては、下記一般式(12)で表される化合物が好ましい。
【0254】
一般式(12):Ar−L−Ar
上記一般式(12)において、Ar及びArは、それぞれ独立に、芳香族基である。ここで、芳香族基は、アリール基(芳香族性炭化水素基)、置換アリール基、芳香族性ヘテロ環基及び置換芳香族性ヘテロ環基を含む。
【0255】
アリール基及び置換アリール基の方が、芳香族性ヘテロ環基及び置換芳香族性ヘテロ環基よりも好ましい。芳香族性ヘテロ環基のヘテロ環は、一般には不飽和である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子が好ましく、窒素原子又は硫黄原子がさらに好ましい。
【0256】
芳香族基の芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環及びピラジン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
【0257】
置換アリール基及び置換芳香族性ヘテロ環基の置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基の各基)、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基(例えば、N−メチルカルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基の各基)、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基(例えば、N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基の各基)、ウレイド基、アルキルウレイド基(例えば、N−メチルウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基、N,N,N′−トリメチルウレイド基の各基)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、s−ブチル基、tert−アミル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基の各基)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基の各基)、アルキニル基(例えば、エチニル基、ブチニル基)、アシル基(例えば、ホルミル基、アセチル基、ブチリル基、ヘキサノイル基、ラウリル基の各基)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ブチリルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ラウリルオキシ基の各基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基の各基)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基の各基)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、ブトキシカルボニルアミノ基、ヘキシルオキシカルボニルアミノ基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基の各基)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、ヘプチルスルホニル基、オクチルスルホニル基の各基)、アミド基(例えば、アセトアミド基、ブチルアミド基、ヘキシルアミド基、ラウリルアミド基の各基)及び非芳香族性複素環基(例えば、モルホリル基、ピラジニル基)が含まれる。
【0258】
なかでも、好ましい置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基及びアルキル基が挙げられる。
【0259】
アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基のアルキル部分とアルキル基とは、さらに置換基を有していてもよい。アルキル部分及びアルキル基の置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、ウレイド基、アルキルウレイド基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アミド基及び非芳香族性複素環基が含まれる。アルキル部分及びアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基及びアルコキシ基が好ましい。
【0260】
一般式(12)において、Lは、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−CO−及びそれらの組み合わせからなる基から選ばれる二価の連結基である。
【0261】
アルキレン基は、環状構造を有していてもよい。環状アルキレン基としては、シクロヘキシレンが好ましく、1,4−シクロヘキシレンが特に好ましい。鎖状アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基の方が分岐を有するアルキレン基よりも好ましい。
【0262】
アルキレン基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜15であり、さらに好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜8であり、最も好ましくは1〜6である。
【0263】
アルケニレン基及びアルキニレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。
【0264】
アルケニレン基及びアルキニレン基の炭素原子数は、好ましくは2〜10であり、より好ましくは2〜8であり、さらに好ましくは2〜6であり、さらに好ましくは2〜4であり、最も好ましくは2(ビニレン基又はエチニレン基)である。
【0265】
アリーレン基は、炭素原子数は6〜20であることが好ましく、より好ましくは6〜16であり、さらに好ましくは6〜12である。
【0266】
一般式(12)の分子構造において、Lを挟んで、ArとArとが形成する角度は、140度以上であることが好ましい。
【0267】
棒状化合物としては、下記式一般式(13)で表される化合物がさらに好ましい。
【0268】
一般式(13):Ar−L−X−L−Ar
上記一般式(13)において、Ar及びArは、それぞれ独立に、芳香族基である。芳香族基の定義及び例は、一般式(12)のAr及びArと同様である。
【0269】
一般式(13)において、L及びLは、それぞれ独立に、アルキレン基、−O−、−CO−及びそれらの組み合わせからなる基より選ばれる二価の連結基である。
【0270】
アルキレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。
【0271】
アルキレン基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましく、より好ましくは1〜8であり、さらに好ましくは1〜6であり、さらに好ましくは1〜4であり、1又は2(メチレン基又はエチレン基)であることが最も好ましい。
【0272】
及びLは、−O−CO−又はCO−O−であることが特に好ましい。
【0273】
一般式(13)において、Xは、1,4−シクロヘキシレン基、ビニレン基又はエチニレン基である。
【0274】
一般式(12)又は(13)で表される化合物の具体例としては、特開2004−109657号公報の〔化1〕〜〔化11〕に記載の化合物が挙げられる。
【0275】
溶液の紫外線吸収スペクトルにおいて最大吸収波長(λmax)が250nmより長波長である棒状化合物を、二種類以上併用してもよい。
【0276】
棒状化合物は、文献記載の方法を参照して合成できる。文献としては、Mol.Cryst.Liq.Cryst.,53巻、229ページ(1979年)、同89巻、93ページ(1982年)、同145巻、111ページ(1987年)、同170巻、43ページ(1989年)、J.Am.Chem.Soc.,113巻、1349ページ(1991年)、同118巻、5346ページ(1996年)、同92巻、1582ページ(1970年)、J.Org.Chem.,40巻、420ページ(1975年)、Tetrahedron、48巻16号、3437ページ(1992年)を挙げることができる。
【0277】
また、特開2004−50516号公報の11〜14頁に記載の棒状芳香族化合物を、前記位相差(リターデーション)発現剤として用いてもよい。
【0278】
前記光学フィルムをソルベントキャスト法で作製する場合は、前記位相差(リターデーション)発現剤を、ドープ中に添加してもよい。添加はいずれのタイミングで行ってもよく、例えば、アルコール、メチレンクロライド、ジオキソラン等の有機溶媒に位相差(リターデーション)発現剤を溶解してから、セルロースエステル溶液(ドープ)に添加してもよいし、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。
【0279】
その他、前記各公報に記載されている以外の棒状化合物の好ましい化合物の具体例を以下に示す。
【0280】
【化23】

【0281】
【化24】

【0282】
【化25】

【0283】
【化26】

【0284】
【化27】

【0285】
【化28】

【0286】
前記具体例(1)〜(34)、(41)、(42)は、シクロヘキサン環の1位と4位とに二つの不斉炭素原子を有する。ただし、具体例(1)、(4)〜(34)、(41)、(42)は、対称なメソ型の分子構造を有するため光学異性体(光学活性)はなく、幾何異性体(トランス型とシス型)のみ存在する。具体例(1)のトランス型(1−trans)とシス型(1−cis)とを、以下に示す。
【0287】
【化29】

【0288】
前述したように、棒状化合物は直線的な分子構造を有することが好ましい。そのため、トランス型の方がシス型よりも好ましい。
【0289】
具体例(2)及び(3)は、幾何異性体に加えて光学異性体(合計4種の異性体)を有する。幾何異性体については、同様にトランス型の方がシス型よりも好ましい。光学異性体については、特に優劣はなく、D、Lあるいはラセミ体のいずれでもよい。
【0290】
具体例(43)〜(45)では、中心のビニレン結合にトランス型とシス型とがある。上記と同様の理由で、トランス型の方がシス型よりも好ましい。
【0291】
〈第1の保護フィルム、第2の保護フィルムの添加剤〉
第1の保護フィルム、第2の保護フィルムに好ましく用いられるセルロースエステルフィルムには、通常のセルロースエステルフィルムに添加することのできる添加剤を含有させることができる。
【0292】
これらの添加剤としては、可塑剤、紫外線吸収剤、微粒子等を挙げることができる。
【0293】
本発明に使用することができる可塑剤としては特に限定されないが、好ましくは、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤及び多価アルコールエステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、アクリル系可塑剤等から選択される。そのうち、可塑剤を2種以上用いる場合は、少なくとも1種は多価アルコールエステル系可塑剤であることが好ましい。
【0294】
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
【0295】
本発明に使用することができる紫外線吸収剤は、400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。
【0296】
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。高分子型の紫外線吸収剤としてもよい。
【0297】
本発明に使用される微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
【0298】
微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜50nmが好ましく、更に好ましいのは7〜20nmである。これらは主に粒径0.05〜0.3μmの2次凝集体として含有されることが好ましい。セルロースエステルフィルム中のこれらの微粒子の含有量は0.05〜1質量%であることが好ましく、特に0.1〜0.5質量%が好ましい。共流延法による多層構成のセルロースエステルフィルムの場合は、表面にこの添加量の微粒子を含有することが好ましい。
【0299】
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0300】
酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0301】
ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0302】
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vがセルロースエステルフィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましく用いられる。
【0303】
(偏光板保護フィルム製造方法)
次に、本発明の第2の保護フィルム(電極側)および第1の保護フィルム(非電極側)を好ましく形成するセルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。
【0304】
セルロースエステルフィルムは、溶液流延法もしくは溶融流延で製造されたセルロースエステルフィルムが好ましい。
【0305】
セルロースエステルフィルムの製造は、セルロースエステル及び負の配向複屈折性有する化合物並びに添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程により行われる。
【0306】
ドープを調製する工程について述べる。ドープ中のセルロースエステルの濃度は、濃い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減出来て好ましいが、セルロースエステルの濃度が濃過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
【0307】
ドープで用いられる溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよいが、セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方がセルロースエステルの溶解性の点で好ましい。
【0308】
良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。
【0309】
そのため、セルロースエステルの平均酢化度(アセチル基置換度)によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いる時には、セルロースエステルの酢酸エステル(アセチル基置換度2.4)、セルロースアセテートプロピオネートでは良溶剤になり、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.8)では貧溶剤となる。
【0310】
本発明に用いられる良溶剤は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライドまたは酢酸メチルが挙げられる。
【0311】
また、本発明に用いられる貧溶剤は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。また、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることが好ましい。また、セルロースエステルの溶解に用いられる溶媒は、フィルム製膜工程で乾燥によりフィルムから除去された溶媒を回収し、これを再利用して用いられる。
【0312】
上記記載のドープを調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱出来る。溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。また、セルロースエステルを貧溶剤と混合して湿潤或いは膨潤させた後、更に良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
【0313】
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
【0314】
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
【0315】
若しくは冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースエステルを溶解させることができる。
【0316】
次に、このセルロースエステル溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生し易いという問題がある。このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
【0317】
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスティック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースエステルに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
【0318】
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間にロール状セルロースエステルを置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm以下であり、更に好ましくは50個/m以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
【0319】
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶剤の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。
【0320】
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
【0321】
ここで、ドープの流延について説明する。
【0322】
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤の沸点未満の温度で、温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度は0〜40℃であり、5〜30℃が更に好ましい。
【0323】
或いは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。
【0324】
金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
【0325】
ロール状セルロースエステルが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
【0326】
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
【0327】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
尚、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
【0328】
また、ロール状セルロースエステルの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
【0329】
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールをウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
【0330】
セルロースエステルフィルムを作製するためには、金属支持体より剥離した直後のウェブの残留溶剤量の多いところで搬送方向(=長尺方向)に延伸し、更にウェブの両端をクリップ等で把持するテンター方式で幅方向に延伸を行うことが特に好ましい。
【0331】
〈円偏光子〉
本発明の円偏光子は、ロール状偏光板の長手方向に対して斜めの吸収軸を有し、第1の保護フィルムの遅相軸が前記偏光子の吸収軸となす角度が、45°±10°である。斜めの吸収軸を有す偏光子とすることで、横電界型スイッチングモード型の大型画面や、3D液晶表示装置の4隅のコントラストを改善することができる。特に横電界型スイッチングモード型の3D液晶表示装置に好ましく適用できる。
【0332】
これは、以下のように推定している。偏光子はパネル点灯時の熱や使用環境の湿度により、偏光子の延伸方向、及び延伸と垂直な方向に強い収縮力が働く。偏光子への収縮力は、偏光板に貼合されたパネルの中心部から外部に従って大きくなるが偏光板吸収軸を液晶パネルに対し、水平もしくは垂直方向に配置した場合、液晶画面四隅に最も強い収縮力が働く。そのため偏光板の変形(伸縮)による、液晶画面四隅部分に偏光ムラが発生する。IPSパネルの場合、偏光板の液晶パネル側保護フィルムに働く収縮力は、保護フィルムの光弾性により位相差を発現し、四隅のコントラスト、色ずれ性能が低下する。
【0333】
また特に3Dパネルの場合、円偏光板を構成するλ/4の歪みにより、本来得られるべき円偏光が楕円偏光となり、コントラストの低下、及び3D立体感が著しく損なわれてしまう。
【0334】
ロール状偏光板の長手方向に対して、偏光子が斜めの吸収軸を有する本構成では、液晶パネルに対して斜め方向に吸収軸を配することが容易に可能であり、上記液晶画面四隅部分に偏光ムラを解消し、コントラスト、3D立体感を向上することが可能となった。
【0335】
本発明の偏光子は支持体状に偏光子が設けられた偏光板として用いられることが好ましい。
【0336】
円偏光子には公知のλ/4板(位相差フィルム)を用いることができる。
【0337】
本発明において用いるλ/4板とは、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(又は、円偏光を直線偏光に)変換する機能を有するものをいう。λ/4板は、所定の光の波長(通常、可視光領域)に対して、層の面内の位相差値Roが約1/4である。
【0338】
本発明に係るλ/4板は、可視光の波長の範囲においてほぼ完全な円偏光を得るため、可視光の波長の範囲において概ね波長の1/4のリターデーションを有する位相差板(フィルム)であることが好ましい。Ro、Rt、θは自動複屈折率計を用いて測定することができる。自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、各波長での複屈折率測定によりRoを算出する。θは配向角を表しフィルム長手方向を基準(0°)とした。
【0339】
λ/4板の遅相軸と後述する偏光子の透過軸との角度が実質的に45°になるように積層すると円偏光板が得られる。「実質的に45°」とは、35〜55°であることを意味する。λ/4板の面内の遅相軸と偏光子の透過軸との角度は、41〜49°であることが好ましく、42〜48°であることがより好ましく、43〜47°であることが更に好ましく、44〜46°であることが最も好ましい。
【0340】
当該λ/4板の少なくとも一方のNz係数が、1.1〜4.0の範囲内であることが好ましく、1.3〜3.5の範囲内であることがさらに好ましく、1.5〜2.5の範囲であることが最も好ましい。
【0341】
λ/4偏光板の製造方法は一般に、位相差フィルムを斜め方向に延伸し、長手方向、または幅手方向に延伸した偏光子と貼合する方法や、長手方向、または幅手方向に延伸した位相差フィルムを偏光子と枚様式で貼り合わせる方法で作製される。前者はフィルム延伸時に破断しやすく、また均一な膜を得ることが非常に困難で、コントラストや表示ムラが著しく劣る欠点があり、後者は、打ち抜きの際の廃棄部分が多く、高価になる欠点があった。
【0342】
本発明では、例えば特開2011−22223号公報で記載されているように、配向処理されたプラスティック基材(支持フィルムともいう)上にリオトロピック液晶化合物を塗布することにより、リオトロピック液晶化合物を配向させ支持フィルムの配向方向に吸収軸を斜めに有する偏光子をもつ配向膜を得る方法が好ましい。この方法によると均一で薄い膜を得られる点で有利である。長手方向に対して吸収軸が45°±10°傾斜していることが好ましい。
【0343】
〈偏光子の製造方法〉
配向処理された支持フィルム上にリオトロピック液晶化合物を塗布することにより、支持フィルムの配向方向に吸収軸を斜めに有する偏光子を得る方法による偏光板の製造方法を、図1を用いて以下に記す。
【0344】
図1は偏光子が偏光板の長手方向に対して斜めの吸収軸を有するロール状偏光板の一例の模式図である。
【0345】
支持フィルム11上に、支持フィルム11の幅方向19と、異なる方向の吸収軸17を有する配向膜18が積層された、ロール状偏光板10の製造方法である。この製造方法は、工程Aと工程Bを含む。
【0346】
工程Aでは、支持フィルム11の表面を、2方向に配向処理する。2方向とは、第1の配向処理方向12および第2の配向処理方向13である。
【0347】
工程Bでは、支持フィルム11の表面に、リオトロピック液晶化合物14を含む溶液を塗布する。リオトロピック液晶化合物14は、溶液中でカラム状会合体15を形成する。カラム状会合体15は、第1の配向処理方向12と第2の配向処理方向13とのベクトル和方向(配向方向16)に配向する。
【0348】
本発明の製造方法は、工程AおよびBのほかに、他の工程を含んでいてもよい。そのような工程として、例えば、工程Bの後、リオトロピック液晶化合物14の配向層(配向膜18)を乾燥させる工程がある。
【0349】
[工程A]
工程Aでは、支持フィルム11の表面を、2方向に配向処理する。2方向とは、第1の配向処理方向12および第2の配向処理方向13である。
【0350】
支持フィルム11は、配向膜18を片側から支持する。プラスティック基材(支持フィルム)11の材料は、特に制限はないが、例えば、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂が挙げられる。
【0351】
支持フィルム11は単層フィルムでもよいし、単層フィルムの上に、ポリイミドやポリビニルアルコールなどの、高分子膜が塗布された複層フィルムでもよい。支持フィルム11の総厚みは、好ましくは、10μm〜200μmである。
【0352】
配向処理としては、例えば、ラビング処理、斜め蒸着処理、プラズマ処理が挙げられる。これらの配向処理は、例えば、松本正一・角田市良共著「液晶の基礎と応用」(工業調査会、1991年発行)に、解説されている。
【0353】
面内の異なる2方向に配向処理をおこなう方法としては、例えば、以下の方法がある。
(ア)異なる2方向にラビング処理をおこなう。
(イ)斜め蒸着処理をした後、それと異なる方向にラビング処理をおこなう。
(ウ)異なる方向に、それぞれラビング処理された2枚のラビングフィルムを、互いのラビング処理面が対向するように重ね合わせて、一方のラビングフィルムに、他方のラビングフィルムの配向規制力を転写する。
【0354】
支持フィルム11に施す2方向の配向処理を、第1の配向処理(方向12)および第2の配向処理(方向13)としたとき、第1の配向処理12と第2の配向処理13のなす角度θは、30°〜150°が好ましい。
【0355】
[工程B]
工程Bでは、工程Aで得られた支持フィルム11の配向処理表面に、リオトロピック液晶化合物14を含む溶液を塗布して、配向膜18を形成する。リオトロピック液晶化合物14は、溶液中でカラム状会合体15を形成する。多数のカラム状会合体15が薄膜状となって、配向膜18を形成する。支持フィルム11と配向膜18とを備えた積層体が、本発明のロール状偏光板10である。
【0356】
本発明において、「リオトロピック液晶化合物」とは、溶媒に溶解して液晶化合物溶液となり、溶液中の濃度変化により、等方相から液晶相へ(またはその逆の)相変化を起こす液晶化合物である。
【0357】
リオトロピック液晶化合物溶液は、等方相状態、あるいは、液晶相状態で、配向処理表面に塗布することによって、一方向に配向させることができる。
【0358】
リオトロピック液晶化合物は、分子長軸(吸収軸17)を横向きにして積み重なることで、カラム状会合体15を形成する。X線回折から求められる、カラム状会合体15の長さL1は、4nm〜9nmであることが好ましい。
【0359】
リオトロピック液晶化合物14は、上記の性質を示すものであれば、特に制限はないが、例えば、アゾ系化合物、アントラキノン系化合物、ペリレン系化合物、キノフタロン系化合物、ナフトキノン系化合物、メロシアニン系化合物が用いられる。
【0360】
本発明に用いられるリオトロピック液晶化合物14として、一般式(14)で表わされるアゾ化合物が好適である。一般式(14)で表わされるアゾ化合物は、溶液中で安定した液晶性を示し、配向性に優れる。
【0361】
【化30】

【0362】
一般式(14)中、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、アセチル基、ベンゾイル基、または、置換基を有していてもよいフェニル基を表わす。Mは対イオンを表わし、好ましくは、水素原子、アルカリ金属原子、または、アルカリ土類金属原子である。Xは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、または、−SOM基を表わす。
【0363】
一般式(14)で表わされるアゾ化合物は、例えば、アニリン誘導体とナフタレンスルホン酸誘導体とを、常法により、ジアゾ化およびカップリング反応させて、モノアゾ化合物としたのち、さらにジアゾ化し、アミノナフトールジスルホン酸誘導体とカップリング反応させて、得ることができる。
【0364】
用いられる溶液は、リオトロピック液晶化合物14と、それを溶解する溶媒とを含む。リオトロピック液晶化合物14の濃度は、溶液の総質量に対して、1質量%〜15質量%が好ましい。
【0365】
溶液の塗布には、任意のコータが用いられる。前記のコータは、例えば、テンションウェブダイ、スロットダイ、ワイヤーバー、またはカーテンロールを有するコータである。
【0366】
工程Bにより得られる配向膜18は、リオトロピック液晶化合物14を含み、リオトロピック液晶化合物14のつくるカラム状会合体15が、一方向に配向する。
【0367】
このような配向膜18は、可視光領域(波長380nm〜780nm)で、吸収二色性を示す。配向膜18の厚みは、0.1μm〜5μmであることが好ましい。
【0368】
配向膜18は、溶媒含有率が、50質量%以下になるように乾燥させることが好ましい。この場合の乾燥手段は、自然乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥などである。
【0369】
[ロール状偏光板]
本発明の製造方法により得られるロール状偏光板10は、支持フィルム11と、支持フィルム11の幅方向19に斜め方向の吸収軸17を有する配向膜18とを備える。ロール状偏光板10の総厚みは、好ましくは、10μmを超え、250μm以下である。
【0370】
本発明において支持フィルムは第2の保護フィルムを兼ねることもできる。このような構成とすることで、層の数を減らす事ができ、コントラストを向上させるため好ましい。
【0371】
これは層の数を減らすことで、薄膜化が可能であり、また接合界面による光ロスが減少することで、コントラストを向上させることができる。更に、パネルの熱湿度等の環境変動による界面での剥がれ、しわの発生がなく、液晶パネル耐久性能の上でも好ましい。
【0372】
〈偏光子の作製例〉
[合成例]
4−ニトロアニリンと、8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸とを、常法に従って、ジアゾ化およびカップリング反応させ、モノアゾ化合物を得た。「常法」は、細田豊著「理論製造 染料化学 第5版」昭和43年7月15日 技報堂発行、135ページ〜152ページによる。
【0373】
このモノアゾ化合物を、同様に常法によりジアゾ化し、さらに1−アミノ−8−ナフトール−2,4−ジスルホン酸リチウム塩とカップリング反応させて、構造式(2)のアゾ化合物を含む粗生成物を得た。これを塩化リチウムで塩析することにより、構造式(2)のアゾ化合物を得た。
【0374】
【化31】

【0375】
構造式(2)のアゾ化合物を、イオン交換水に溶解させ、20質量%の水溶液を調製した。この水溶液中で、アゾ化合物はカラム状会合体を形成し、室温(23℃)にて、ネマチック液晶相を示す。
【0376】
(IPS型液晶セルとの関係)
IPS型液晶表示装置における液晶パネルの液晶層は、初期状態で基板面と平行なホモジニアス配向で、かつ基板と平行な平面で液晶層のダイレクターは電圧無印加時で電極配線方向と平行または幾分角度を有し、電圧印加時で液晶層のダイレクターの向きが電圧の印加に伴い電極配線方向と垂直な方向に移行し、液晶層のダイレクター方向が電圧無印加時のダイレクター方向に比べて45°電極配線方向に傾斜したとき、当該電圧印加時の液晶層は、まるで1/2波長板のように偏光の方位角を90°回転させ、出射側光板の透過軸と偏光の方位角が一致して白表示となる。
【0377】
一般に、液晶層の厚みは一定であるが、横電界駆動であるため、液晶層の厚みに若干凹凸を設ける方がスイッチングに対する応答速度を上げることができるとも考えられるが、本発明においては、液晶層の厚みが一定でない場合であっても、その効果を最大限生かすことができるものである。
【0378】
本発明においては、液晶層の厚みの変化に対し影響が少ない。本発明における効果を大きく発揮できる液晶層の厚みは、2〜6μmであって、好ましくは3〜5.5μmである。
【0379】
本発明の液晶表示装置は、大型の液晶テレビに用いられる。画面サイズとしては、17型以上に用いることができ、好ましくは26型以上100型程度まで用いることができる。
【0380】
なお、IPS型液晶表示装置としては、いわゆるIPSモード以外に、FFS(フリンジフィールドスイッチング)モード、FLC(強誘電性液晶)モードも含まれる。
【0381】
(3D液晶表示装置)
本発明の3D(立体)液晶表示装置は、IPS型液晶セルとそれを挟持する2枚の偏光板からなる横電界型スイッチングモード型液晶表示装置であって、液晶セルの視認側に、本発明のロール状偏光板が、第2の保護フィルムを電極側となるよう配置用いられている。当該表示装置には、視認側から、第1の保護フィルム、偏光子、第2の保護フィルムがこの順に設けられている。3Dメガネには、偏光子、液晶セル、及びλ/4板が設けられており、この3Dメガネを通して立体画像を観察することができる。
【0382】
以下図を用いて説明する。
【0383】
図2は3D液晶メガネの概念図の一例である。3D用メガネ(G)を着用して、液晶ディスプレイの画像を見るという方式である。3D液晶メガネ(G)には、図2に示すように左右の目に液晶シャッタ(S1)及び(S2)が備え付けられ、これらの液晶シャッタ(S1)及び(S2)を制御する制御回路CCが接続されている。
【0384】
図3に示す3D表示装置のように、液晶ディスプレイ(LCD)に映し出される画像としては、二枚のフィールドに、左眼用画像(LI)と右眼用画像(RI)とがそれぞれ割り当てられてあり、時系列でこれらが交互に高速に切り替わって表示される。本発明液晶ディスプレイ(LCD)から出射される光は直線偏光をλ/4板を通る円偏光である。さらに、3D用メガネの左右の切り替えは、左眼用画像(LI)と右眼用画像(RI)の切り替えに同期させて行う。
【0385】
3D用メガネにもλ/4板を備えることで、首を傾けた際に、輝度低下や色味の変化をなくすことができる。λ/4板は液晶ディスプレイの視認側及び立体画像視認用眼鏡の目から遠い側の表面にそれぞれλ/4を用いることが好ましい。
【0386】
具体的には3Dメガネは、視認側からセルロースエステル、偏光子、セルロースエステル、液晶セル、λ/4板とする事が好ましい。
【0387】
液晶ディスプレイは視認の遠い側から、バックライト、下偏光板、IPS液晶パネル、本発明の偏光板とする構成が好ましい。
【0388】
下偏光板は本発明の偏光子は、IPS液晶パネルを介して反対側に位置し、吸収軸が本発明の偏光子と90°である。
【0389】
下偏光板の偏光子、バックライトは公知のものが使用されるが、下偏光子も本発明に係る斜め延伸偏光子を用いることができる。
【実施例】
【0390】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0391】
実施例1
(偏光板101の作製)
(第1の保護フィルム1の作製)
〈微粒子分散液1〉
微粒子(アエロジル R972V 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
【0392】
〈微粒子添加液1〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。さらに、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
【0393】
メチレンクロライド 99質量部
微粒子分散液1 5質量部
下記組成の主ドープ液を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースアセテートを攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
【0394】
〈主ドープ液の組成〉
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
アセチル基置換度が2.45のセルロースアセテート(Mn;53000)
100質量部
糖エステル化合物(例示化合物;化合物3) 10.0質量部
ポリエステル(エステル系例示化合物;B−15) 2.5質量部
紫外線吸収剤(チヌビン928(BASFジャパン(株)製)) 2.3質量部
微粒子添加液1 1質量部
以上を密閉容器に投入し、攪拌しながら溶解してドープ液を調製した。次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープ液を温度33℃、2000mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は30℃に制御した。
【0395】
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力130N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。
【0396】
剥離後、特開2009−214441号公報の実施例1に記載の装置(延伸機A:図11)を用い、温度170℃、倍率1.35倍で遅相軸がフィルム幅方向と45°をなす様に斜め方向に延伸を行った。
【0397】
次いで、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃で、搬送張力は100N/mとした。
【0398】
以上のようにして、幅1500mm、かつ端部に幅1cm、高さ8μmのナーリングを有する、乾燥膜厚80μm、配向角θ=45°、Ro=138nm、Rt=160nm、の第1の保護フィルム1を得た。
【0399】
(第2の保護フィルムの作製)
下記組成の主ドープ液を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースアセテートを攪拌しながら投入した。これを70℃まで加熱し、撹拌しながら、セルローストリアセテート(TAC)を完全に溶解しドープを得た。溶解に要した時間は4時間であった。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
【0400】
(主ドープ組成物)
・アセチル基置換度が2.87のセルロースアセテート(Mn;136000)
85質量部
・2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベゾトリアゾール
1.5質量部
・メチルメタクリレート−2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体
(80/20(質量比))Mw;8000 8質量部
・メチルアクリレート重合体(*)Mw;1000 5質量部
・メチレンクロライド 475質量部
・エタノール 50質量部
・微粒子添加液1 2質量部
(*)特開2000−128911公報の実施例3記載の重合方法でメチルアクリレートモノマーを重合し、Mw1000、Mn700のポリマーを得た。この反応物の水酸基価(ヒドロキシ基価)(OHV;mgKOH/g)は、50であった。
【0401】
ベルト流延装置を用い、ドープ温度35℃で22℃のステンレスバンド支持体上に均一に流延した。ステンレスバンド支持体の温度は20℃であった。
【0402】
その後、剥離可能な範囲まで乾燥させた後、ステンレスバンド支持体上からドープを剥離した。このときのドープの残留溶媒量は25質量%であった。ドープ流延から剥離までに要した時間は3分であった。ステンレスバンド支持体から10kg/mの張力で剥離させ、140℃下にてテンターで幅方向に2%延伸させた後、多数のロールで搬送させながら120℃、135℃の乾燥ゾーンで乾燥を終了させた。巻き取り張力は、初期張力10kg/m、最終巻張力8kg/mとした。
【0403】
以上のようにして、幅1500mm、かつ端部に幅1cm、高さ5μmのナーリングを有する、乾燥膜厚40μm、Ro=0.2nm、Rt=1nm、の第2の保護フィルムを得た。
【0404】
なお、第1の保護フィルム1と第2の保護フィルムのそれぞれのRo、Rt、及び配向角θは、自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて測定した。23℃、55%RHの環境下で、各波長での複屈折率測定によりRoを算出した。θはフィルム長手方向を基準(0°)とした。
【0405】
また、セルロースアセテートの数平均分子量(Mn)の測定は前述した方法で測定した。
【0406】
(偏光子の作成)
厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、35℃の水で膨潤させた。得られたフィルムを、ヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5gおよび水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し;さらに、ヨウ化カリウム3g、ホウ酸7.5gおよび水100gからなる45℃の水溶液に浸漬した。そして、得られたフィルムを、延伸温度55℃、延伸倍率6倍の条件で一軸延伸した。この一軸延伸フィルムを、水洗した後、乾燥させて、厚さ20μmの偏光子を得た。
【0407】
次いで、下記工程1〜5に従って偏光子と第1の保護フィルム1、裏面側には第2の保護フィルムを貼り合わせて偏光板を作製した。
【0408】
工程1:60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化した第1の保護フィルム1を得た。
【0409】
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
【0410】
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理した第1の保護フィルム1の上にのせて配置した。
【0411】
工程4:工程3で積層した第1の保護フィルム1と偏光子と、第2の保護フィルムを圧力20〜30N/cm、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
【0412】
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した試料を2分間乾燥し、ロール状偏光板101を作製した。
【0413】
得られた偏光板101は、第1の保護フィルム1の遅相軸と偏光子の吸収軸のなす角度は45°であった。
【0414】
(偏光板102の作成)
偏光板101の、第1の保護フィルム1の作成において、剥離後、テンターでウェブ両端部を把持し、幅手(TD)方向の延伸倍率が1.35倍となるように延伸し、その幅を維持したまま数秒間保持し、幅方向の張力を緩和させた後、幅保持を解放し、更に125℃に設定された第3乾燥ゾーンで30分間搬送させて乾燥を行うこと以外は同様の方法で、第1の保護フィルム2を作成した。なお、延伸開始時の残留溶媒は30%であった。
【0415】
以上のようにして、乾燥膜厚66μm、θ=90°、Ro=136nm、Rt=228nm、の第1の保護フィルム2を得た。
【0416】
(偏光子の作成)
偏光板101の偏光子の作成において、特開2009−214441号公報の実施例1に記載の装置(延伸機A:図11)を用い、延伸温度55℃、延伸倍率5倍で吸収軸がフィルム幅方向と45°をなす様、斜め方向に延伸を行った以外は同様にして、ポリビニルアルコールフィルム偏光子を得た。
【0417】
次いで、偏光板101の作成の工程1〜5に従って、偏光子と第1の保護フィルム2、裏面側には第2の保護フィルムを貼り合わせて偏光板102を作製した。
【0418】
得られた偏光板102は、第1の保護フィルム2の遅相軸と偏光子の吸収軸のなす角度は45°であった。
【0419】
(偏光板103の作成)
(偏光子の作成)
厚み100μmの、シクロオレフィン系樹脂フィルム(オプテス社製ゼオノア)の表面を、コットン製バフ布(吉川化工社製YA−25−C)で2方向に擦って、ラビング処理を施し、支持フィルムを得た。2方向は、フィルムの幅方向を基準として、左回りに125°および145°である。
【0420】
配向処理された支持フィルムの処理面に、構造式(2)のアゾ化合物であるリオトロピック液晶化合物を含む水溶液(濃度7質量%)を塗布し、配向させ、乾燥して、厚み0.5μmの配向膜を作製した。得られた配向膜の偏光子の吸収軸がフィルム幅方向となす角度は45°であった。
【0421】
次いで、偏光板101の作成の工程1〜5に従って、この偏光子と第1の保護フィルム2、裏面側には第2の保護フィルムを貼り合わせて偏光板103を作製した。
【0422】
得られた偏光板103は、第1の保護フィルム2の遅相軸と偏光子の吸収軸のなす角度は45°であった。
【0423】
(偏光板104)
偏光板103の作製において、偏光子の支持フィルムとしてシクロオレフィン系樹脂フィルムの代わりに第2の保護フィルムを用いて偏光子を作製した以外は同様にして、偏光板104を得た。
【0424】
(偏光板105〜109)
偏光板104の作成において、第1の保護フィルムが表1記載の位相差、膜厚となるよう、幅手(TD)方向に延伸したこと、及び、偏光子の吸収軸の角度を変えることにより、表のように、第1の保護フィルムの遅相軸と、偏光子の吸収軸のなす角度を変更した以外は同様にして、偏光板105〜109を作成した。
【0425】
(偏光板110)
(偏光子の作製)
支持フィルムとして第2の保護フィルム上に、下記の組成の配向膜塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28ml/mの塗布量で塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥して、ポリビニルアルコール層を形成した。
【0426】
(配向膜塗布液組成)
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
【0427】
【化32】

【0428】
形成したポリビニルアルコール層の表面を、コットン製バフ布(吉川化工社製YA−25−C)で2方向に擦って、ラビング処理を施し、配向膜付きの支持フィルムを得た。2方向は、フィルムの幅方向を基準として、左回りに35°および55°である。
【0429】
配向処理された支持フィルムの処理面に、構造式(2)のアゾ化合物であるリオトロピック液晶化合物を含む水溶液(濃度7質量%)を塗布し、配向させ、乾燥して、厚み0.5μmの配向膜を作製した。得られた配向膜の偏光子の吸収軸がフィルム幅方向となす角度は45°であった。
【0430】
次いで、偏光板101の作成の工程1〜5に従って、この偏光子と第1の保護フィルム2、裏面側には第2の保護フィルムを貼り合わせて偏光板110を作製した。
【0431】
得られた偏光板110は、第1の保護フィルム2の遅相軸と偏光子の吸収軸のなす角度は45°であった。
【0432】
(偏光板耐久性評価)
得られた偏光板101〜110を、42インチ液晶パネルサイズ(930mm*520mm)に裁断し、60℃、90%RHの高温高湿雰囲気下に300時間放置後、対角の中心点(ρ0)、対角線上の中心から75%点(ρ75)について偏光度バラツキを偏光度Cのパーセンテージの差として下記のようにクラス分けして湿熱耐久性を評価した。この値が小さいほど、画像のムラが少なく好ましい。
【0433】
なお、自動偏光フィルム測定装置 VAP−7070(日本分光株式会社製)及び専用プログラムにて偏光度ρを算出した。
【0434】
(偏光度バラツキ((ρ75)−(ρ0)))
◎ : 1%未満
○ : 1%以上2%未満
△ : 2%以上5%未満
× : 5%以上
以上の評価結果を表1に示す。なお、表中、ロール状偏光板の番号は偏光板No、配向角θはθ、ポリビニルアルコールフィルムをPVAとそれぞれ略記した。また、表中、偏光子の延伸でMDは長尺方向に、斜めは斜め方向に延伸して作製したことを示す。
【0435】
【表1】

【0436】
表1から示されるように、本発明のロール状円偏光板は、湿熱耐久テスト後の偏光度バラツキが小さく、好ましい。
【0437】
実施例2
(液晶表示装置の作成):
横電界型スイッチングモード型(IPSモード型)の液晶セルを含む液晶表示装置[東芝(株)製レグザ 47ZG2]から液晶パネルを取り出し、液晶セルの上下に配置されていた偏光板を取り除いて、該液晶セルのガラス面(表裏)を洗浄した。
【0438】
続いて、本発明の偏光板を、第2の保護フィルムが液晶パネル側になるよう、上側(視認側)の偏光板は第1の保護フィルムの遅相軸が、液晶セルの長辺と平行(0±0.2度)となるように、また下側(バックライト側)の偏光板は、液晶セルの短辺と平行(0±0.2度)となるように液晶セルの両面にアクリル粘着剤(厚み20μm)を用いて貼着した。
【0439】
上記の方法により、液晶表示装置201〜210を得た。
【0440】
(液晶表示装置のコントラスト比の測定方法)
以下の方法、液晶セル、測定装置を用いて23℃の暗室でコントラスト比を測定した。
【0441】
液晶表示装置に、白画像および黒画像を表示させ、ELDIM社製 製品名「EZ Contrast160D」により、表示画面の方位角45°方向、極角60°方向におけるXYZ表示系のY値を測定した。そして、白画像におけるY値(YW)と、黒画像におけるY値(YB)とから、斜め方向のコントラスト比「YW/YB」を算出した。なお、方位角45°とは、パネルの長辺を0°としたときに反時計周りに45°回転させた方位を表し、極角60°とは表示画面の正面方向を0°としたときに、角度60°に傾斜した方向を表す。測定は温度23℃、湿度55%の暗室内にて行った。この値が高い方が、コントラストが高く好ましい。
【0442】
(3D立体感評価)
作成した表示装置に3D映像を流し、付属のアクティブシャッター方式の「レグザ3Dグラス」を用い、研究者10人により3D立体感を官能評価した。
【0443】
(3D立体感評価基準)
3点 : 立体感が非常に高い
2点 : 立体感が高い
1点 : 立体感が弱い
0点 : 立体感が感じられない
(映像ムラ評価)
液晶表示装置を60℃、90%RHにて1500時間サーモ処理して、25℃60%RHに20時間調湿後、3D映像を流し、対角中央部での立体感と、対角線上の中心から75%点(端部)での立体感の差を、研究者10人による官能評価を行った。
【0444】
表中、3D立体感、映像ムラは評価者全員の平均点を記す。
【0445】
(映像ムラ評価基準)
3点 : 中央部と端部の差が全くない
2点 : 中央部と端部の差はほとんどない
1点 : 中央部と端部の差が感じられる
0点 : 中央部と端部の差が非常に大きい
【0446】
【表2】

【0447】
表2から示されるように、本発明のロール状円偏光板を用いた横電界型スイッチングモード型(IPSモード型)液晶表示装置は、3D立体感が高く、コントラストが高く、かつ湿熱耐久後の立体感の中央部、端部でのバラツキが小さく好ましいことがわかる。
【符号の説明】
【0448】
10 ロール状偏光板
11 支持フィルム
12 第一の配向処理方向
13 第二の配向処理方向
14 リオトロピック液晶化合物
15 カラム状会合体
16 配向方向
17 吸収軸
18 配向膜
19 幅方向
20 長手方向
G 3D液晶メガネ
S1 液晶シャッタ
S2 液晶シャッタ
LI 左眼用画像
RI 右眼用画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の保護フィルム、偏光子、第2の保護フィルムの順に積層された横電界型スイッチングモード型液晶表示装置用のロール状円偏光板であって、前記偏光子が前記横電界型スイッチングモード型液晶表示装置用のロール状円偏光板の長手方向に対して斜めの吸収軸を有し、前記第1の保護フィルムの面内方向の位相差値Roが、温度23℃相対湿度55%RHの環境下、光波長590nmでの測定において、下記一般式(i)を満たし、且つ第1の保護フィルムの遅相軸が前記偏光子の吸収軸となす角度が、45°±10°であることを特徴とする横電界型スイッチングモード型液晶表示装置用のロール状円偏光板。
一般式(i) 80≦Ro≦200
(式中、Ro=(n−n)×dであり、nはフィルムの面内の遅相軸方向の屈折率、nはフィルム面内で遅相軸に直交する方向の屈折率をそれぞれ表し、dはフィルムの厚さ(nm)を表す。)
【請求項2】
前記偏光子がリオトロピック液晶化合物を配向させた配向膜を有し、該配向膜がプラスティック基材に配向処理され、長手方向に対して吸収軸が45°±10°傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の横電界型スイッチングモード型液晶表示装置用のロール状円偏光板。
【請求項3】
前記偏光子が、第2の保護フィルムに配向処理を行い、長手方向に対して斜めの吸収軸を持たせたものであることを特徴とする請求項1に記載の横電界型スイッチングモード型液晶表示装置用のロール状円偏光板。
【請求項4】
液晶セルとそれを挟持する2枚の偏光板からなる横電界型スイッチングモード型3D液晶表示装置であって、液晶セルの視認側に、請求項1〜3のいずれか一項に記載の横電界型スイッチングモード型液晶表示装置用のロール状円偏光板が第2の保護フィルムを電極側となるよう配置されることを特徴とする横電界型スイッチングモード型3D液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−45041(P2013−45041A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184462(P2011−184462)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】