説明

樹状キレート化合物、該化合物の製造方法及び該化合物を含有する医薬組成物

本発明は、樹状キレート化合物、該化合物を製造する方法及び該化合物を含有する医薬組成物に関する。本発明の樹状キレート錯体は下記式Iを有する:[[MC]-En-[D]m-X1p12p23p34p4]z- zB+ (I)。式中、Mは磁気又はシンチグラフィーマーカーであり、Cは磁気マーカーM用のキレート剤であり、Eはスペーサーであり、n=0又は1、Dは、樹状構造体を形成し得る化合物であり、mは1又は2又は4に等しい整数であり、X1は錯体の親油性を増加させる基であり、p1は0〜12の整数であり、X2は、特定の器官に対する錯体の特異性を増加させる基であり、p2は0、1、2又は4に等しい整数であり、X3は治療活性を有する基であり、p3は0、1、2又は4に等しい整数であり、X4はCH3基であり、p4は0〜12の整数であり、Bは対イオンであり、zは0、1、2、3又は4に等しい整数である。本発明は、薬学の分野で、より正確には医学的画像化に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹状キレート錯体、該錯体の製造方法及び該錯体を含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴画像化及び核医学は、種々の医学分野において解剖学的及び機能的情報の両方への非侵襲性で非外傷性のアクセスを提供するので、ライフサイエンス分野における必須の研究ツールとなってきた。
現在の開発の1つの本線は機能的画像化に関する。機能的画像化は、詳細には、神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病又は多発性硬化症(MS)に関与する機序の理解における基本ツールを構成する。
磁気共鳴画像化に使用される製品は、磁気造影剤(磁気マーカーと名付けられたマーカーを含む)として知られる造影剤である。
【0003】
現時点で存在する磁気造影剤は、磁気マーカーがガドリニウム又はマンガンである化合物である。
核医学では、造影剤はシンチグラフィー造影剤と呼ばれ、これにはシンチグラフィーマーカーと名付けられたマーカーが含まれる。現時点で最も一般的に使用されるシンチグラフィーマーカーはテクネチウム-99mである。
これら全ての造影剤は、拘束性の仕様を満足しなければならない。よって、これらは、良好な生体適合性、低い毒性、生体における高い安定性を有し、低濃度で有効であり、加えて可能であれば、標的とする器官又は組織に特異的でなければならない(リガンドにグラフトされる官能基により提供されるベクトル化)。
【0004】
しかし、現在市場にある製品及び文献に記載された製品は、これらが毒性(特に肝毒性)を示すかもしれないという事実に加え、生体における低い安定性を有し、標的とする器官又は組織に対して特異的でない。
よって、Masato Hitoらは、Magnet. Res. Imag. 2006, 24, 625-630に公表した論文で、キレート剤がジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)であるガドリニウムキレートである造影剤を、脳に対する特異性を有するものとして記載している。
しかし、これは、該キレートの脳への真のベクトル化ではない。
【0005】
なぜなら、常に脳に至るのは注射した造影剤の4%であるからである。ここで、Masato Hitoにより提案された分子は、1分子あたりのガドリニウム原子の数は3であり、一方先行技術の造影剤には、造影剤1分子あたりガドリニウム原子が1つだけ存在する。したがって、Masato Hitoにより提案された分子では、実際には、脳に到達するガドリニウムの濃度の増加であり、キレートの脳への真のベクトル化ではない。
更に、この製品は肝臓毒性を示す。
Min Liuらは、Bioconj. chem. 2005, 16, 1126-1132で、マーカーがテクネチウム-99mであり、キレート剤がジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)であり、リガンドがポリエチレングリコール(PEG)ベースのポリマーである造影剤を提案した。
【0006】
この製品(核医学で使用することができる)は肝臓に結合し、腎臓によって排出され、このことによって腎臓の画像化を可能とする。
この製品もまた、造影剤のベクトル化という意味では特定の器官に特異的でない。
更に、このポリエチレングリコールベースポリマーのアプローチには、放射性医薬品の合成の再現性という問題があり、任意のポリマー合成と同様に、得られる製品の十分で既知の純度という問題もある。
【0007】
Jakub Rudovskyらは、Chem. Commun., 2005, 2390-2392で、下記式のDOTA(2,2',2'',2'''-(1,4,7,10-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,7,10-テトライル)四酢酸)アナログの樹状ガドリニウム(3+)錯体を提案した。
【0008】
【化1】

【0009】
しかし、この場合、錯体はデンドリマーの周縁部にあり、このことによりベクトル化剤での錯体自体の官能化が妨げられる。デンドリマーの全ての端部がキレートで占められている。
Paula Baiaらは、Eur. J. Inorg. Chem. 2005, 2110-2119に、ジエチレントリアミン五酢酸ビスアミド複合多糖ランタニド(III)キレートを記載している。
これら分子は、ベクトル化剤(βガラクトシル残基)がグラフトされたポリアミドタイプの樹状構造体に結合したGd3+イオンキレート性構造体から構成される。
【0010】
このベクトル化は、肝臓を標的とするためのベクトル化である。
しかし、この製品は、肝臓に対して特異的であるが脳に対しては特異的でないという事実に加えて、ポリアミドデンドリマーに起因する毒性を示す。
特許出願US No. 2006/0165601A1は、金属カチオン、特にGd3+カチオンをキレートするための樹状化合物を記載する。
【0011】
これら化合物において、Gd3+キレート剤はジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)であり、樹状構造体のコアはポリオール化合物であり、樹状構造体のデンドライトは、ヒドロキシル(OH)又はアミン(NH2)又はO-(C1〜C10)アルキル基で終端するポリエチレングリコール鎖から構成される。
しかし、これら化合物は、脳に対する特異性を有さず、既知の画像化製品と比較して、特別な血管残留性(vascular remanence)を有さない。
よって、今日までの全ての既存の及び記載された造影剤の中で、脳に対して或る種の「特異性」を有する唯一の製品は、Masato Hitoによって記載されたジエチレントリアミン五酢酸由来のGd3+イオンキレートであるが、これは、脳への真のベクトル化を示さず、加えて肝毒性を示す。
【0012】
他の全ての造影剤は肝臓又は腎臓に対して特異的であり、(特にPaula Baiaらにより提案された製品の場合には、ポリアミドデンドリマーの使用に起因して)生体に対して毒性を示すことがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、良好な生体適合性、低い毒性及び高い感度を有し、低濃度で有効であり、高い血管残留性を有し、加えて、(特に脳に対して)真の特異性(ベクトル化)を有する造影剤を提案することによって先行技術の課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この趣旨で、本発明は、樹状構造体の各デンドライトが官能化され得る遊離末端を有するマーカー-樹状構造体タイプのキレート錯体の構造を有する造影剤を提案する。
デンドライトの官能化により、特定の器官、特に脳への造影剤のベクトル化を得ることが可能になる。デンドライト-官能化剤は、特に血液脳関門を横断できるよう、造影剤の親油性を増加させるように選択することもできる。デンドライトの別のタイプの可能な官能化は、治療薬剤での官能化である。
更に別のタイプの官能化により、本発明の造影剤の血管残留性を増大させることも可能である。
【0015】
樹状構造体のデンドライトは、全てが同じ官能を有することもできるし、幾つかのデンドライトが第1のタイプの官能を有し、その他のデンドライトが別のタイプの官能を有することもできる。例えば、樹状構造体の少なくとも1つのデンドライトが、造影剤の親油性を増加させて血液脳関門を横断できるように官能化され、樹状構造体の少なくとも1つの他のデンドライトは、脳への造影剤の特異性を増加させるように官能化することができる。
このことにより、中枢神経系の病状(例えばアルツハイマー病及びパーキンソン病)の診断を可能にするのみならず、これら疾患に関与する機序の理解も可能にする新規造影剤を得ることが可能になる。
しかし、別の実施形態では、造影剤の少なくとも1つのデンドライトは、本発明の錯体の脳へのベクトル化が得られるように官能化し、樹状構造体の少なくとも1つの他のデンドライトは血液脳関門の横断が可能なように官能化し、樹状構造体の少なくとも1つの更に他のデンドライトは、脳に対して直接的かつ特異的に作用するように、中枢神経系疾患に特異的な治療薬剤で官能化してもよい。
【0016】
本発明の各樹状構造体(デンドロンとも呼ばれる)は、内在部(樹状構造体のコアとも呼ばれる)と、デンドライト自体に対応する周縁部とから構成される。
磁気又はシンチグラフィーマーカーのキレート剤又はキレート性の構造体に関して、それらは、造影剤のインビボ安定性を増大させるために修飾されていてもよい。
本発明の錯体の各樹状構造体は、ヒト生体に対して非毒性である。このことは、具体的には、この樹状構造体がポリアミドポリマー又はデンドリマーをベースにする構造体ではあり得ないことを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の説明を読めば、本発明はより明確に理解され、本発明の他の利点及び特徴はより明確になる。
一般的な実施形態では、本発明は、下記一般式I:
[[MC]-En-[D]m-X1p12p23p34p4]z-.zB+ 式I
を有することを特徴とする樹状キレート錯体に関する。
【0018】
一般式I中:
− Mは磁気マーカー、好ましくはGd3+、Mn2+及び99mTc3+イオンから選択される磁気マーカーであり、
− Cは磁気マーカーM用のキレート剤であり、
− [MC]は磁気マーカーMのキレートであり、
− Eはスペーサーであり、
− n=0又は1、
【0019】
− [D]は樹状構造体であり、そのコアはベンジルアルコール又はベンジルアミンに由来する少なくとも1つの基を含んでなり、そのベンジル環は、3位、4位、5位で、ポリエチレングリコール単位から構成されるデンドライトで置換されており、
− mは1又は2又は4に等しい整数であり、
− X1は錯体の親油性を増大させる基、例えばtert-ブチル(tBu)基であり、
− p1は0〜12(両端を含む)に等しい整数であり、
− X2は、特定の器官(好ましくは脳)に対する錯体の特異性を増加させる基、例えばL-ドーパミンであり、
− p2は、0、1、2又は4(両端を含む)に等しい整数であり、
【0020】
− X3は治療活性、好ましくは神経変性疾患(例えばアルツハイマー病、パーキンソン病及び多発性硬化症)に対する治療活性を有する基であり、
− p3は、0、1、2又は4(両端を含む)に等しい整数であり、
− X4はCH3基であり、
− p4は0〜12(両端を含む)に等しい整数であり、
− m=1のときp1+p2+p3+p4=3、又はm=2のときp1+p2+p3+p4=6、又はm=4のときp1+p2+p3+p4=12、
− Bは対イオンであり、好ましくはNa+又はK+であり、
− zは0、1、2、3又は4に等しい整数である。
【0021】
好ましくは、キレート剤Cは、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、カテコール由来トリポッド(三脚状配位子;tripod)又は8-ヒドロキシキノリン由来トリポッド(これらは、Gd3+、Mn2+及び99mTc3+イオンに対する優れたキレート剤である)である。
本発明の錯体の各樹状構造体又はデンドロンは、Dendrimers and other dendric polymers, J.M.J Frechet, D.A. Tomalia, Wiley, New York, 2001に記載されるようなFrechetデンドロンタイプである。
Frechetデンドロンは、これらデンドロンが属する世代に依存して下記式を有する。
− 第一世代Frechetデンドロン、すなわち、その内在部又はコア部がベンジルアルコールタイプの基であり、ベンジル環は3、4、5位で、デンドライトを構成するポリエーテル鎖で置換されている1つの樹状構造体を含んでなるもの。
【0022】
【化2】

【0023】
本発明の錯体では、上記式を参照すれば、O-Rは、エチレングリコール単位(-OCH2CH2)から構成される鎖であり、Xはキレート(式Iでは[MC]で示される)を表す;
− 第二世代Frechetデンドロン、すなわち上記の第一世代Frechetデンドロンと同一の樹状構造体を2つ含んでなるもの。
【0024】
【化3】

【0025】
本発明の錯体では、上記式を参照すれば、O-R鎖はエチレングリコール単位から構成され、Xはキレート(式Iでは[MC]で示される)を表す;
− 第三世代Frechetデンドロン、すなわち上記の第一世代Frechetデンドロンと同一の樹状構造体を4つ含んでなり、上記の第二世代Frechetデンドロンと同一の構造体を2つ形成するように対に結合するもの。
第二世代Frechetデンドロンと同一の構造体の各々が、それぞれ、ベンジルアルコールタイプの環の3位及び5位で結合している。
【0026】
【化4】

【0027】
第一世代及び第二世代のFrechetデンドロンに関しては、上記式中O-Rで示されるポリエーテル鎖は、本発明の錯体では、エチレングリコール単位から構成され、Xはキレート(式Iでは[MC]で示される)を表す。
上記のFrechetデンドロンは、樹状構造体が構造体[MC]に直接結合しているとき、すなわち式I中n=0のときに、又は樹状構造体がキレート[MC]にポリエチレングリコールタイプのスペーサーを介して結合しているときに使用される。
本発明で使用される好ましいスペーサーは下記で説明する。
【0028】
樹状構造体がキレート[MC]に直接結合していないが、ポリエチレングリコール鎖以外のスペーサー(式I中Eで示される)により結合されているとき、すなわち、式I中n=1のとき、本発明の樹状構造体は、世代に依存して、下記式を有する。
この場合、スペーサーに結合するベンジル環は、もはやベンジルアルコールに由来する環ではなく、ベンジルアミンに由来する環であることに注意すべきである。
− 樹状構造体がスペーサーEによりキレート[MC]に結合しているときに使用される第一世代デンドロン:
【0029】
【化5】

【0030】
この式中、Eはスペーサーを表し、O-Rはエチレングリコール単位から構成されるデンドライトを表す。
− 樹状構造体がスペーサーEによりキレート[MC]に結合しているときの第二世代樹状構造体。
この場合、スペーサーに結合するベンジル環は、ベンジルアミンタイプのものである。よって、樹状構造体は、下記式に対応する樹状構造体を有する:
【0031】
【化6】

【0032】
前記の場合と同様に、Eはスペーサーを表し、デンドライト(O-Rで示される)はエチレングリコール単位から構成される。
− 樹状構造体がスペーサーによりキレート[MC]に結合しているときの第三世代樹状構造体;
ここでも繰り返すが、スペーサーに結合するベンジル環は、ベンジルアミンタイプの環ある。第三世代樹状構造体は下記式を有する:
【0033】
【化7】

【0034】
この式では、Eは所望のスペーサーを表し、O-R鎖はエチレングリコール単位から構成される。
インビボでのポリエチレングリコールの非毒性は、長年、証明されている。
好ましくは、本発明の錯体のデンドライトは、3つ、より好ましくは4つのエチレングリコール単位を含んでなる。
【0035】
本発明の錯体の樹状構造体は、ベンジルアルコール又はベンジルアミン環の1位の遊離末端を介して、磁気マーカーのキレート(式I中[MC]で表される)に、直接か又はスペーサー(式I中Eで表される)により結合している。
スペーサーは、有利には、キレート剤がカテコール由来トリポッド又は8-ヒドロキシキノリン由来トリポッドであるときに使用され得、キレート剤がDTPAであるときには推奨されない。
これは、キレート剤がDTPAであるとき、デンドロンをグラフトするためにDTPAの分枝の1つを独占することが、形成される錯体を脱安定化し、そして安定性のこの損失を、キレートに近いデンドロンの膨大な球状構造を維持することによって克服する必要があるためである。
【0036】
しかし、キレート剤がカテコール由来トリポッド又は8-ヒドロキシキノリン由来トリポッドであるときは、形成される錯体は十分に安定であり、デンドロンの膨大な球状構造の保護効果を必要とせず、このデンドロン構造体とキレートとの間のスペーサーEの存在により、生じ得る立体障害の問題を回避するように2つの構造体の互いの間の距離を十分とすることが可能になる。
更に、スペーサーは、最後には脳へのより多くの分布を促進することにより、体内での本発明の錯体の生体内分布を改変することを可能にする。
【0037】
よって、スペーサーEは、カチオン性化合物であっても、アニオン性化合物であっても、更には中性化合物であってもよい。
本発明で使用する中性スペーサーは、下式のジアミンタイプのスペーサーである。
【0038】
【化8】

【0039】
nは好ましくは1又は2に等しく、すなわち、好ましいスペーサーはエチレンジアミン及びブタンジアミンのスペーサーである。
他の好ましい中性スペーサーはエチレングリコールのスペーサー、好ましくはトリ又はテトラエチレングリコールタイプのスペーサーである:
【0040】
【化9】

【0041】
本発明で使用するカチオン性スペーサーは、芳香族アンモニウムタイプ又は分枝状脂肪族鎖を含んでなるアンモニウムタイプの化合物である。
芳香族アンモニウムタイプのカチオン性スペーサーは、下記の単位から構成される:
【0042】
【化10】

【0043】
好ましくは、n=1又は2である。
本発明で使用する分枝状鎖を含んでなる脂肪族アンモニウムタイプのカチオン性スペーサーは下記式を有する:
【0044】
【化11】

【0045】
この式において、好ましくはn=1又は2である。
本発明で使用するアニオン性スペーサーは下記式を有する:
【0046】
【化12】

【0047】
この式において、nは好ましくは1又は2である。
本発明の錯体のデンドライトの末端に存在する基に従って、種々の特性が得られる。これが、デンドライトの官能化と呼ばれるものである。
よって、本発明の第1の実施形態では、一般式Iの樹状キレート錯体は、キレート剤CがDTPAであり、デンドライト(式I中X4で示される)がメチル基で官能化されている錯体である。
本発明の第1の実施形態による錯体の例は、下記式II-1の化合物である:
【0048】
【化13】

【0049】
上記式II-1の錯体を健常マウスにおいてMRI画像化で試験し、この錯体は0.5mmol/kgの用量で検出可能な毒性を示さないことが分かった。
事実、インビボで、遊離ガドリニウム(これはカルシウムと同じイオン半径を有する)は、カルシウム依存性の系と競合し、細網内皮系をブロックし、そのことにより心筋収縮性、凝固、カルシウム依存性酵素、ミトコンドリア呼吸及び神経伝達に影響する。このことは、血圧降下に続く心血管停止(cardiovascular arrest)及び肺麻痺によって顕在化することがある。
しかし、本発明の錯体により、DTPA錯体の熱力学的安定性は、毒性量のGd3+の遊離を防ぐに十分である。このことはニューロン細胞について確証されている(乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)のレベルを含む)。1〜10000μMの範囲の濃度について、本発明による式II-Iの錯体を用いても、キレート剤がDTPAであるGd3+キレートのみからなる市販製品を用いても、LDHのレベル及び神経細胞の増殖は同じであることが分かった。
【0050】
この化合物について行った研究により、この製品は血液脳関門(BBB)を横断できないことが示された一方で、高い血管残留性が証明された:この造影剤は少なくとも72時間は安定で、血中で循環状態のままであり、このことにより、毒性の危険性なく、長く結果的により完全な検査を可能にする。このことが先行技術の市販製品に対する利点である。
下記式II-2を有し、磁気マーカーがMn2+である本発明の樹状キレート錯体は、同じ利点を有する。このことは、MEMRI(マンガン増強磁気共鳴画像化)と呼ばれるMn2+を用いる磁気画像化の分野において、相当の進歩である。
【0051】
【化14】

【0052】
事実、Mn2+マーカーによってGd3+マーカーより更い高いコントラストを得ることが可能になるが、動物実験で現在使用されているMnCl2形態では、Mn2+マーカーは、Mn2+が高濃度で神経毒であるので、非常に毒性である。
更に、マンガン錯体はインビボで比較的不安定であり、生物学的な媒体で解離する。
しかし、本発明の樹状キレート錯体によれば、Mn2+マーカーを有する造影剤は非常に安定であり、緩慢に拡散し、従って非毒性である。
具体的には、生きた健常マウスで行った毒性研究により、この錯体は、マーカーがGd3+である上記式II-1の錯体と同様に、毒性でないことが示されている。
【0053】
デンドライトがCH3基で終端しているこれら製品は、3日間生体内に留まるだけでなく、この3日間は安定なままでもある。これら製品の非毒性を説明するのが、この安定性である。なぜなら、これら製品が安定であるので、生物中に磁気マーカーを迅速に放出することなく、マーカーが未だキレート形態にある間に生物により排除されるからである。
毒性に関して同じ利点が、シンチグラフィーマーカーが99mTc3+である下記式II-3を有する樹状キレート錯体を用いる核医学で見出される。
利点は安定性に関しても見出されるが、当然ながら99mTc3+の半減期(6時間半である)に制限される。
【0054】
【化15】

【0055】
上記式II-1〜II-3のものに対応するが、第一世代及び第三世代である錯体も、またデンドライトがテトラエチレングリコール鎖でありもはやトリエチレングリコール鎖でない錯体も、同じ利点を有する。
これら全ての錯体において、磁気マーカーは、配位結合を介して、DTPAに結合している。
例えば、Gd3+については、DTPA-Gd3+キレートは以下の様式で結合する:
【0056】
【化16】

【0057】
本発明の錯体の安定性を増加させるために、本発明の第2の実施形態では、磁気又はシンチグラフィーマーカーのキレートは、カテコール由来トリポッドであり、もはやDTPAではない。
この場合において、本発明の好ましい錯体は、下記式III-1〜III-3の錯体である。
【0058】
【化17】

【0059】
【化18】

【0060】
これら式において、一般式Iを参照して、樹状構造体[D]の各デンドライトは、3つのエチレングリコール単位を含んでなるメチル化ポリエチレングリコール鎖であり、m=1、キレート剤Cは、カテコール由来トリポッドであり、n=p1=p2=p3=0、BはNa+でありz=3又は4である。
式III-1ではマーカーはGd3+であり、式III-2ではマーカーはMn2+であり、式III-3ではマーカーは99mTc3+である。
増加した安定性を有する本発明の第2の実施形態による他の好ましい錯体は、下記式IV-1〜IV-3を有する:
【0061】
【化19】

【0062】
【化20】

【0063】
これら式において、一般式Iを参照して、樹状構造体[D]の各デンドライトは3つのエチレングリコール単位を有するメチル化ポリエチレングリコール鎖であり、m=1、Cが8-ヒドロキシキノリン由来トリポッドであり、p1=p2=p3=0、BはNa+であり、z=0又は1である。
式IV-1中マーカーはGd3+であり、式IV-2中マーカーはMn2+であり、式IV-3中マーカーは99mTc3+である。
しかし、増大した安定性を有する、本発明の第2の実施形態による他の好ましい錯体は、世代G2の樹状構造体を有する(すなわち、樹状構造体[D]の各デンドライトが3つのエチレングリコール単位を有するメチル化ポリエチレングリコール鎖であり、m=2、Cがカテコール由来トリポッドであり、p1=p2=p3=0、BはNa+である)錯体である。
【0064】
マーカーがGd3+であるとき、z=3であり、錯体が下記式V-1を有する:
【化21】

【0065】
マーカーがMn2+であるとき、z=4であり、錯体は下記式V-2を有する:
【化22】

【0066】
マーカーが99mTc3+であるとき、z=3であり、錯体は下記式V-3を有する:
【化23】

【0067】
第三世代錯体、またデンドライトがメチル化テトラエチレングリコール鎖である第一世代、第二世代又は第三世代の錯体及びこれら錯体に対応しキレート剤がカテコール由来トリポッド又は8-ヒドロキシキノリン由来トリポッドである第一世代、第二世代又は第三世代の錯体も、本発明の好ましい化合物である。
しかし、キレート性構造体がカテコール由来トリポッドであるが、キレートがスペーサー(式I中Eで示され、上記スペーサーの1つである)を介してデンドロン(これらは、第一世代又は第二世代又は第三世代である)により形成される構造体から遠ざけられている対応する錯体は、より高い程度で脳に分布するので、最も特に好ましい。
下記式III-4〜V-6を有する化合物が最も特に好ましい:
【0068】
【化24】

【0069】
【化25】

【0070】
【化26】

【0071】
【化27】

【0072】
【化28】

【0073】
【化29】

【0074】
【化30】

【0075】
【化31】

【0076】
【化32】

【0077】
よって、O-Rが3つ又は4つのエチレングリコール単位を含んでなるエチレングリコール鎖を表す下記式を有する第三世代錯体が、特に好ましい。
【化33】

【0078】
対応する第一世代及び第二世代の錯体、またスペーサーが上記のものの1つである対応する第一世代、第二世代又は第三世代の錯体も、全て特に好ましい。
事実、磁気又はシンチグラフィー造影剤の有効性は、形成する錯体の安定性に主として依存する。なぜなら、トレーサーのインビボ分布(タンパク質による、錯体の破壊、放射性元素の取込み)が細胞の非選択的照射を誘導し、不可逆性損傷を引き起こすからである。したがって、使用する錯体は優れたインビボ安定性を有することが重要である。
ここで、キレート球(chelation sphere)中への芳香族環の挿入により、構造のより良好な強直性が提供され、そのためリガンドの予備組織化(pre-organization)が可能になる。
【0079】
キレート剤がカテコール由来トリポッドでありMが99mTc3+である本発明による式V-6の錯体と、キレート剤がDTPAである式II-3の対応する錯体(共にメチル化末端を有する水溶性デンドリマーがグラフトされている)との間での比較動力学モニターによって、キレート剤がカテコール由来トリポッドである錯体がより安定であることが確証されている。
事実、式V-6の錯体の80%より多くが90分後に安定である一方、式II-3の錯体の50%が同一期間内に解離する。
【0080】
しかし、本発明による他の好ましい錯体は、キレート剤Cが8-ヒドロキシキノリン由来トリポッドであり、スペーサー及び3つ若しくは4つのエチレングリコール単位を含んでなるデンドライトを有するか又は有しない第一世代、第二世代又は第三世代である錯体である。
よって、増大した安定性を有する本発明のこれら錯体(これらもまた好ましい)において、一般式Iも参照して、樹状構造体[D]の各デンドライトは3つのエチレングリコール単位を有するメチル化ポリエチレングリコール鎖であり、m=2、Cが8-ヒドロキシキノリン由来トリポッドであり、p1=p2=p3=0、対イオンBはNa+である。
【0081】
マーカーMがGd3+であるとき、z=0であり、錯体は下記式VI-1を有する:
【化34】

【0082】
マーカーMがMn2+であるとき、z=1であり、錯体は下記式VI-2を有する:
【化35】

【0083】
マーカーMが99mTc3+であるとき、z=0であり、錯体は下記式VI-3を有する:
【化36】

【0084】
上記式VI-1〜VI-3の錯体に対応する第一世代又は第三世代の錯体、及びスペーサーを含んでなり、及び/又はデンドライトがテトラエチレングリコールである第一世代又は第二世代又は第三世代のものも、本発明の好ましい化合物である。
例えば、ブタンジアミンスペーサーを含んでなる第二世代錯体(上記式VI-1〜VI-3の錯体に対応する)は、下記式VI-4〜VI-6を有する:
【0085】
【化37】

【0086】
【化38】

【0087】
【化39】

【0088】
更に、これら錯体は、キレート剤がカテコール由来トリポッドであるものと同じ安定性を有する。
上記に記載の錯体は、相当の利点を有するが、特定の器官に特異的ではない。
これらが血液脳関門を横断することを可能にするために、本発明の第3の実施形態において、本発明の錯体の親油性は、樹状構造体の少なくとも1つのデンドライトを疎水性基で官能化することによって増大される。この基は、好ましくはtert-ブチル基である。
【0089】
よって、本発明の第3の実施形態は、X1がtert-ブチル基であり、p1が0〜12(両端を含む)に等しい整数である一般式Iを有する樹状キレート錯体に関する。
より具体的には、本発明のこの第3の実施形態では、好ましい錯体は、n=p2=p3=p4=0、マーカーMがGd3+であり、樹状構造体[D]の各デンドライトが3つのエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコール鎖であり、m=1、Cがジエチレントリアミン五酢酸であり、X1がtert-ブチル(tBu)基であり、p1=3、BはNa+であり、z=1である一般式Iの錯体である。この錯体は下記式VII-1を有する:
【0090】
【化40】

【0091】
本発明の第3の実施形態による別の好ましい錯体は、n=p2=p3=p4=0、マーカーMがMn2+であり、樹状構造体[D]の各デンドライトが3つのエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコール鎖であり、m=1、Cがジエチレントリアミン五酢酸であり、X1がtert-ブチル(tBu)基であり、p1=3、BはNa+であり、z=2である一般式Iの錯体である。この錯体は下記式VII-2を有する:
【0092】
【化41】

【0093】
本発明の第3の実施形態による別の好ましい錯体は、n=p2=p3=p4=0、マーカーMが99mTc3+であり、樹状構造体[D]の各デンドライトが3つのエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコール鎖であり、m=1、Cがジエチレントリアミン五酢酸であり、X1がtert-ブチル(tBu)基であり、p1=3、BはNa+であり、z=1である一般式Iの錯体である。この錯体は下記式VII-3を有する:
【0094】
【化42】

【0095】
当然のことながら、第二世代(G2)の樹状構造体を含んでなる(すなわちm=2である)本発明の錯体もまた、本発明の第3の実施形態による好ましい錯体の一部である。
これら錯体は:
− n=p2=p3=p4=0、マーカーMがGd3+であり、樹状構造体[D]の各デンドライトが3つのエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコール鎖であり、m=2、Cがジエチレントリアミン五酢酸であり、X1がtert-ブチル(tBu)基であり、p1=6、BはNa+であり、z=1である一般式Iの錯体。この錯体は下記式VIII-1を有する:
【0096】
【化43】

【0097】
− n=p2=p3=p4=0、MがMn2+であり、樹状構造体[D]の各デンドライトが3つのエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコール鎖であり、m=2、Cがジエチレントリアミン五酢酸であり、X1がtert-ブチル(tBu)基であり、p1=6、BはNa+であり、z=2である一般式Iの錯体。この錯体は下記式VIII-2を有する:
【0098】
【化44】

【0099】
− n=p2=p3=p4=0、Mが99mTc3+であり、樹状構造体[D]の各デンドライトが3つのエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコール鎖であり、m=2、Cがジエチレントリアミン五酢酸であり、X1がtert-ブチル(tBu)基であり、p1=6、BはNa+であり、z=1である一般式Iを有する錯体。この錯体は下記式VIII-3を有する:
【0100】
【化45】

【0101】
当然のことながら、式VIII-1〜VIII-3のものに対応する、第三世代である(すなわち、m=4)及び/又はデンドライトがテトラエチレングリコール鎖である錯体、及び式IX-1〜IX-3のものに対応する、スペーサーを含んでなる第一世代又は第二世代又は第三世代である錯体もまた、本発明の第3の実施形態による好ましい化合物である。
少なくとも1つのデンドライトがtert-ブチル基で官能化されている本発明の第3の実施形態による錯体は、本発明において特に好ましい。なぜなら、これら錯体は血液脳関門を横断するからである。
tert-ブチル化末端を有するデンドライトを含んでなる本発明による錯体(マーカーは99mTc3+である)を用い、健常マウスにおいて、核医学技法によって研究を行った。この研究では、マイクロモル濃度を通常どおり使用した。
【0102】
これら実験により、健常マウスの脳中放射活性をカウントすることによって示されるように、これら錯体が血液脳関門を横断することが示され、また、通常使用される市販製品(これはCis-Bio InternationalがTCK-6と呼ばれるキットの形態で販売しているペンテト酸三ナトリウムカルシウムである)を用いて得られるプロフィールより選択的なプロフィールも示された。
また、デンドライトがtert-ブチル化テトラエチレングリコール鎖でありマーカーはGd3+又はMn2+である第3の実施形態による本発明の錯体を、MRIにより試験した。これら錯体において、tert-ブチル基により引き起こされる水溶性の相当の減少は、デンドライトの鎖の長さによって一部補償され、そのことによってこれら錯体はMRIにおける使用(ミリモル濃度が必要である)に十分な水溶性を有することが可能となる。
これら錯体もまた血液脳関門を横断することが分かった。
【0103】
脳への本発明による錯体のベクトル化を得るために、これら錯体の樹状構造体の1又はそれより多いデンドライトは、ドーパミン作動性レセプターと結合する薬剤によって官能化することができる。本発明において好ましいそのような薬剤はL-ドーパミンである。
よって、本発明の第4の実施形態によれば、本発明において脳に対する特異性を有する造影剤としての使用に特に好ましい錯体は、各樹状構造体[D]のデンドライトがL-ドーパミン及び親油性を増加させる基(例えば、tert-ブチル基)で官能化されている一般式Iの錯体である。
よって、本発明の第4の実施形態による好ましい錯体は、以下の錯体である:
− n=p3=p4=0、樹状構造体[D]の各デンドライトが3つのエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコール鎖であり、Cがジエチレントリアミン五酢酸であり、MがGd3+であり、m=1、X1がtert-ブチル(tBu)基であり、p1=2、X2がL-ドーパミンであり、p2=1、BはNa+であり、z=1である一般式Iの錯体。この錯体は下記式IX-1を有する:
【0104】
【化46】

【0105】
− n=p3=p4=0、樹状構造体[D]の各デンドライトが3つのエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコール鎖であり、Cがジエチレントリアミン五酢酸であり、MがMn2+であり、m=1、X1がtert-ブチル(tBu)基であり、p1=2、X2がL-ドーパミンであり、p2=1、BはNa+であり、z=2である一般式Iの錯体。この錯体は下記式IX-2を有する:
【0106】
【化47】

【0107】
− n=p3=p4=0、樹状構造体[D]の各デンドライトが3つのエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコール鎖であり、Cがジエチレントリアミン五酢酸であり、Mが99mTc3+であり、m=1、X1がtert-ブチル(tBu)基であり、p1=2、X2がL-ドーパミンであり、p2=1、BはNa+であり、z=1である式Iの錯体。この錯体は下記式IX-3を有する:
【0108】
【化48】

【0109】
− n=p3=p4=0、樹状構造体[D]の各デンドライトが3つのエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコール鎖であり、Cがジエチレントリアミン五酢酸であり、MがGd3+であり、m=2、X1がtert-ブチル(tBu)基であり、p1=4、X2がL-ドーパミンであり、p2=2、BはNa+であり、z=1である一般式Iの錯体。この錯体は下記式X-1を有する:
【0110】
【化49】

【0111】
− n=p3=p4=0、樹状構造体[D]の各デンドライトが3つのエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコール鎖であり、Cがジエチレントリアミン五酢酸であり、MがMn2+であり、m=2、X1がtert-ブチル(tBu)基であり、p1=4、X2がL-ドーパミンであり、p2=2、BはNa+であり、z=2である一般式Iの錯体。この錯体は下記式X-2を有する:
【0112】
【化50】

【0113】
− n=p3=p4=0、樹状構造体[D]の各デンドライトが3つのエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコール鎖であり、Cがジエチレントリアミン五酢酸であり、Mが99mTc3+であり、m=2、X1がtert-ブチル(tBu)基であり、p1=4、X2がL-ドーパミンであり、p2=2、BはNa+であり、z=1である一般式Iの錯体。この錯体は下記式X-3を有する:
【0114】
【化51】

【0115】
上記式IX-1〜X-3のものに対応するが、デンドライトがテトラエチレングリコール鎖であり、及び/又は第三世代のものであり、及び/又は本発明によるスペーサーを含んでなる錯体もまた、本発明の第4の実施形態の好ましい錯体である。
特に好ましい本発明の第5の実施形態によれば、本発明の錯体は、生体内で高い安定性を有し、血液脳関門を横断し、脳へのベクトル化を有し、神経変性疾患に対する治療活性を有する。これらのことにより、錯体は、治療活性を有する特に有利な化合物となる。
【0116】
この第5の実施形態において、本発明の錯体は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、カテコールタイプのトリポッド、或いは8-ヒドロキシキノリンタイプのトリポッドに由来するキレート構造を有する。これらの樹状構造体は、tert-ブチル(tBu)タイプの親油性基で官能化された少なくとも4つのデンドライトと、脳に対する特異性を付与する基で官能化された少なくとも1つの他のデンドライトと、神経変性疾患用治療薬剤で官能化された少なくとも1つの他のデンドライトとを有する。
よって、本発明の第5の実施形態による好ましい錯体は、樹状構造体[D]の各デンドライトが3つのエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコール鎖であり、キレート剤Cがジエチレントリアミン五酢酸又はカテコール由来トリポッド又は8-ヒドロキシキノリン由来トリポッドのいずれかであり、m=2、マーカーMがGd3+又はMn2+又は99mTc3+のいずれかであり、X1がtert-ブチル基であり、p1=4、X2がL-ドーパミンであり、p2=1、X3が神経変性疾患用治療薬剤(例えば、メマンチン)であり、p3=1、p4=0、n=0、BはNa+であり、z=0、1、2、3又は4である一般式Iの錯体であり、下記式Aの錯体である:
【0117】
【化52】

【0118】
デンドライトがテトラエチレングリコール鎖であり、及び/又は本発明によるスペーサーを含んでなり、及び/又は第三世代又は第一世代のものである上記式Aのものに対応する錯体もまた、本発明の第5の実施形態による本発明の好ましい化合物である。
本発明の全ての錯体は、メチル3,4,5-トリヒドロキシベンゾエート又はヒドロキシベンジルアルコールを用い、トリエチレングリコールから出発する6〜19の工程を含んでなる方法によって合成することができる。
よって、本発明の他の主題は、式Iの錯体を合成する方法である。
【0119】
本発明の第1の実施形態による式II-1〜II-3の樹状キレート錯体(キレートがDTPAであり、デンドライトが官能化されておらず、第二世代(G2、m=2)の樹状構造体[D]を含んでなる)を合成する方法は、以下の工程を含んでなる:
【0120】
a) トリエチレングリコールモノメチルエーテルと塩化トシルとの反応、
b) 工程a)で得られるトシレートとメチル3,4,5-トリヒドロキシベンゾエートとの反応、
c) 対応するアルコールを得るための、工程b)で得られる生成物の、好ましくはLiAlH4での還元、
d) 工程c)で得られる生成物の臭素化、
e) 工程d)で得られる生成物とメチル3,5-ジヒドロキシベンゾエートとの反応、
f) 工程e)で得られる生成物の、好ましくはLiAlH4での還元、
g) 工程f)で得られる生成物とジエチレントリアミン五酢酸二無水物との反応、
h) 工程g)で得られる生成物と塩化Gd又は塩化Mn又は過テクネテートとの反応。
【0121】
本発明の別の主題は、本発明の第2の実施形態による式III-1〜III-3、IV-1〜IV-3の錯体(錯体のデンドライトは官能化されていないが、これら錯体の安定性を増大させるために、DTPAキレートがカテコール-由来又は8-ヒドロキシキノリン由来のトリポッドで置換され、第一世代(G1、m=1)の樹状構造体[D]を含んでなる)を合成する方法であり、以下の工程を含んでなる:
【0122】
式III-1〜III-3:
a) 2,3-ジヒドロキシ安息香酸の臭化アリルでのアリル化、
b) 対応する酸を得るための、工程a)で得られる生成物の鹸化、
c) 対応する酸フッ素化物を得るための、工程b)で得られる生成物のフッ素化、
a') トリアミントリポッドを得るための、トリニトリルトリポッドの還元、
b') 工程a')で得られるトリポッドと工程c)で得られる生成物との間のカップリング反応、
c') b')で得られる生成物のアルコール官能基の、テトラブチルアンモニウムフルオリドTBAFでの脱保護、
d') 対応するカルボン酸を得るためのc')で得られる生成物のSwern酸化、
e') d')で得られる生成物とtert-ブチルカルボキシル官能基Bocでモノ保護化した1,4-ブタンジアミンとの間のカップリング反応、
f') e')で得られる生成物のアルコール官能基の脱保護、
【0123】
a'') トリエチレングリコールモノメチルエーテルの合成、
b'') トリエチレングリコールモノメチルエーテルと塩化トシルとの反応、
c'') 工程b'')で得られるトシレートとメチル3,4,5-トリヒドロキシベンゾエートとの反応、
d'') 対応する酸を得るための、工程c'')で得られる生成物の鹸化、
a''') f')で得られる生成物とd'')で得られるものとの間のカップリング反応、
b''') カテコール官能基の脱アリル化、
c''') 工程b''')で得られる生成物と塩化Cd又は塩化Mn又は過テクネテートとの反応。
【0124】
本発明の更に別の主題は、式IV-1〜IV-3の錯体を合成する方法であり、この方法は以下の工程を含んでなる:
a) 8-ヒドロキシキノリン-7-カルボン酸メチルエステルの臭化アリルでのアリル化、
b) 対応する酸を得るための、工程a)で得られる生成物の鹸化、
c) 対応する酸フッ素化物を得るための、工程b)で得られる生成物のフッ素化、
a') トリアミントリポッドを得るための、トリニトリルトリポッドの還元、
b') 工程a')で得られるトリポッドと工程c)で得られる生成物との間のカップリング反応、
c') b')で得られる生成物のアルコール官能基のTBAFでの脱保護、
d') 対応するカルボン酸を得るためのc')で得られる生成物のSwern酸化、
e') d')で得られる生成物とBoc官能基でモノ保護化した1,4-ブタンジアミンとの間のカップリング反応、
【0125】
f') e')で得られる生成物のアミン官能基の脱保護、
a'') トリエチレングリコールモノメチルエーテルの合成、
b'') トリエチレングリコールモノメチルエーテルと塩化トシルとのとの反応、
c'') 工程b'')で得られるトシレートとメチル3,4,5-トリヒドロキシベンゾエートとの反応、
d'') 対応する酸を得るための、工程c'')で得られる生成物の鹸化、
a''')f')で得られる生成物とd'')で得られるものとの間のカップリング反応、
b''') アルコール官能基の脱アリル化、
c''') 工程b''')で得られる生成物と塩化Cd又は塩化Mn又は過テクネテートとの反応。
【0126】
同様に、本発明の別の主題は、式V-1〜V-3、VI-1〜VI-3の本発明による錯体(これら錯体の安定性を増大させるために、DTPAキレートがカテコール-由来又は8-ヒドロキシキノリン由来のトリポッドで置換され、第二世代(G2、m=2)の樹状構造体[D]を含んでなる)を合成する方法であり、この方法は以下の工程を含んでなる:
【0127】
式V-1〜V-3:
a) 2,3-ジヒドロキシ安息香酸の臭化アリルでのアリル化、
b) 対応する酸を得るための、工程a)で得られる生成物の鹸化、
c) 対応する酸フッ素化物を得るための、工程b)で得られる生成物のフッ素化、
a') トリアミントリポッドを得るための、トリニトリルトリポッドの還元、
b') 工程a')で得られるトリポッドと工程c)で得られる生成物との間のカップリング反応、
c') b')で得られる生成物のアルコール官能基のTBAFでの脱保護、
d') 対応するカルボン酸を得るための、c')で得られる生成物のSwern酸化、
e') d')で得られる生成物とBoc官能基でモノ保護化した1,4-ブタンジアミンとの間のカップリング反応、
f') e')で得られる生成物のアミン官能基の脱保護、
【0128】
a'') トリエチレングリコールモノメチルエーテルの合成、
b'') トリエチレングリコールモノメチルエーテルと塩化トシルとの反応、
c'') 工程b'')で得られるトシレートとメチル3,4,5-トリヒドロキシベンゾエートとの反応、
d'') 対応するアルコールを得るための、工程c'')で得られる生成物の、好ましくはLiAlH4での還元、
e'') 工程d'')で得られる生成物の臭素化、
f'') 工程e'')で得られる生成物とメチル3,5-ジヒドロキシベンゾエートとの反応、
g'') 対応する酸を得るための、工程f'')で得られる生成物の鹸化、
a''') f')で得られる生成物とg'')で得られるものとの間のカップリング反応、
b''') カテコール官能基の脱アリル化、
c''') 工程b''')で得られる生成物と塩化Cd又は塩化Mn又は過テクネテートとの反応。
【0129】
本発明の別の主題は、式VI-1〜VI-3の本発明の化合物を合成する方法であり、この方法は以下の工程を含んでなる:
a) 8-ヒドロキシキノリン-7-カルボン酸メチルエステルの臭化アリルでのアリル化、
b) 対応する酸を得るための、工程a)で得られる生成物の鹸化、
c) 対応する酸フッ素化物を得るための、工程b)で得られる生成物のフッ素化、
a') トリアミントリポッドを得るための、トリニトリルトリポッドの還元、
b') 工程a')で得られるトリポッドと工程c)で得られる生成物との間のカップリング反応、
c') b')で得られる生成物のアルコール官能基のTBAFでの脱保護、
d') 対応するカルボン酸を得るための、c')で得られる生成物のSwern酸化、
e') d')で得られる生成物とBoc官能基でモノ保護化した1,4-ブタンジアミンとの間のカップリング反応、
f') e')で得られる生成物のアミン官能基の脱保護、
【0130】
a'') トリエチレングリコールモノメチルエーテルの合成、
b'') トリエチレングリコールモノメチルエーテルと塩化トシルとの反応、
c'') 工程b'')で得られるトシレートとメチル3,4,5-トリヒドロキシベンゾエートとの反応、
d'') 対応するアルコールを得るための、工程c'')で得られる生成物の、好ましくはLiAlH4での還元、
e'') 工程d'')で得られる生成物の臭素化、
f'') 工程e'')で得られる生成物とメチル3,5-ジヒドロキシベンゾエートとの反応、
g'') 対応する酸を得るための、工程f'')で得られる生成物の鹸化、
a''') f')で得られる生成物とg'')で得られるものとの間のカップリング反応、
b''') アルコール官能基の脱アリル化、
c''') 工程b''')で得られる生成物と塩化Cd又は塩化Mn又は過テクネテートとの反応。
【0131】
本発明の別の主題は、式VII-1〜VII-3の本発明の錯体(キレートがDTPAであり、これら錯体の親油性を増大させるために、錯体のデンドライトがtert-ブチル基で官能化されており、第一世代(G1、m=1)の樹状構造体[D]を含んでなる)を合成する方法であり、この方法は以下の工程を含んでなる:
a) tert-ブタノールからのtert-ブトキシトリエチレングリコールの合成、
b) 工程a)で得られる生成物と塩化トシルとの反応、
c) 工程b)で得られるトシレートとメチル3,4,5-トリヒドロキシベンゾエートとの反応、
d) 対応するアルコールを得るための、工程c)で得られる生成物の、好ましくはLiAlH4での還元、
e) 工程d)で得られる生成物とジエチレントリアミン五酢酸二無水物との反応
f) 工程e)で得られる生成物と塩化Gd又は塩化Mn又は過テクネテートとの反応。
【0132】
同様に、本発明の別の主題は、本発明による錯体(キレートがDTPAであり、これら錯体の親油性を増大させるために、錯体のデンドライトがtert-ブチル基で官能化された式VIII-1〜VIII-3のものであり、第二世代(G2、m=2)の樹状構造体[D]を含んでなる)を合成する方法であり、この方法は以下の工程を含んでなる:
【0133】
a) tert-ブタノールからのtert-ブトキシトリエチレングリコールの合成、
b) 工程a)で得られる生成物と塩化トシルとの反応、
c) 工程b)で得られるトシレートとメチル3,4,5-トリヒドロキシベンゾエートとの反応、
d) 対応するアルコールを得るための、工程c)で得られる生成物の、好ましくはLiAlH4での還元、
e) 工程d)で得られる生成物の臭素化、
f) 工程e)で得られる生成物とメチル3,5-ジヒドロキシベンゾエートとの反応、
g) 対応するアルコールを得るための、工程f)で得られる生成物の、好ましくはLiAlH4での還元、
h) 工程g)で得られる生成物とジエチレントリアミン五酢酸二無水物との反応、
i) 工程h)で得られる生成物と塩化Gd(III)又は塩化Mn(III)又は過テクネテートとの反応。
【0134】
本発明の別の主題は、本発明による(式IX-1〜IX-3の)錯体(キレートがDTPAであり、錯体のデンドライトがL-ドーパミン及び親油性を増加させる基(例えばtert-ブチル基)で官能化されており、第一世代(G1、m=1)の樹状構造体[D]を含んでなる)を合成する方法であり、この方法は以下の工程を含んでなる:
【0135】
a) tert-ブタノールからのtert-ブトキシトリエチレングリコールの合成、
b) 工程a)で得られる生成物と塩化トシルとの反応、
a') メチル3,4,5-トリヒドロキシベンゾエートと無水酢酸との反応、
b') 工程a')で得られる生成物と臭化アリルとの反応、
c') 工程b')で得られる生成物の炭酸カリウムでの塩基性加水分解、
d') 工程c')で得られる生成物と工程b)で得られるトシレートとの反応
e') 工程d')で得られる生成物のアルコール機能の脱保護、
【0136】
a'') L-ドーパミンのフルオレニルメトキシカルボニルクロリド(Fmoc)での保護、
b'') 工程a'')で得られる生成物と臭化アリルとの反応、
c'') 工程b'')で得られる生成物とモルホリンとの反応、
d'') 工程c'')で得られる生成物のエステル化、
e'') 工程d'')で得られる生成物の鹸化、
f'') 工程e'')で得られる生成物の工程e')で得られる生成物とのエステル化、
g'') 対応するアルコールを得るための、工程f'')で得られる生成物の還元、
h'') 工程g'')で得られる生成物とジエチレントリアミン五酢酸二無水物との反応、
i'') 工程h'')で得られる生成物と塩化Gd(III)、塩化Mn(II)又は過テクネテートとの反応。
【0137】
同様に、本発明の別の主題は、本発明による(式X-1〜X-3の)錯体(キレートがDTPAであり、錯体のデンドライトがL-ドーパミン及び親油性を増加させる基(例えば、tert-ブチル基)で官能化されており、第二世代(G2、m=2)の樹状構造体[D]を含んでなる)を合成する方法であり、この方法は以下の工程を含んでなる:
【0138】
a) tert-ブタノールからのtert-ブトキシトリエチレングリコールの合成、
b) 工程a)で得られる生成物と塩化トシルとの反応、
a') メチル3,4,5-トリヒドロキシベンゾエートと無水酢酸との反応、
b') 工程a')で得られる生成物と臭化アリルとの反応、
c') 工程b')で得られる生成物の、好ましくは炭酸カリウムでの塩基性加水分解、
d') 工程c')で得られる生成物と工程b)で得られるトシレートとの反応
e') 工程d')で得られる生成物のアルコール機能の脱保護、
a'') L-ドーパミンのFmocクロライドでの保護、
b'') 工程a'')で得られる生成物と臭化アリルとの反応、
c'') 工程b'')で得られる生成物とモルホリンとの反応、
【0139】
d'') 工程c'')で得られる生成物のエステル化、
e'') 工程d'')で得られる生成物の鹸化、
f'') 工程e'')で得られる生成物の工程e')で得られる生成物とのエステル化、
g'') 対応するアルコールを得るための、工程f'')で得られる生成物の、好ましくはLiAlH4での還元、
h'') 工程g'')で得られる生成物の臭素化
i'') 工程h'')で得られる生成物とメチル3,5-ジヒドロキシベンゾエートとの反応、
j'') 対応するアルコールを得るための、工程i'')で得られる生成物の、好ましくはLiAlH4での還元、
k'') 工程j'')で得られる生成物とジエチレントリアミン五酢酸二無水物との反応、
l'') 工程k'')で得られる生成物と塩化Gd(III)又は塩化Mn又は過テクネテートとの反応。
【0140】
本発明の別の主題は、本発明による(式Aの)錯体(キレートはDTPA又はカテコール由来トリポッド又は8-ヒドロキシキノリン由来トリポッドのいずれかであり、錯体のデンドライトはL-ドーパミン、メマンチン及び親油性を増加させる基(例えば、tert-ブチル基)で官能化されており、第二世代(G2、m=2)の樹状構造体[D]を含んでなる)を合成する方法であり、この方法は以下の工程を含んでなる:
【0141】
a) メチル3,5-ジヒドロキシベンゾエートと臭化アリルとの反応、
a') tert-ブタノールからのtert-ブトキシトリエチレングリコールの合成、
b') 工程a')で得られる生成物と塩化トシルとの反応、
a'') メチル3,4,5-トリヒドロキシベンゾエートと無水酢酸との反応、
b'') 工程a'')で得られる生成物と臭化アリルとの反応、
c'') 工程b'')で得られる生成物の、好ましくは炭酸カリウムでの塩基性加水分解、
d'') 工程c'')で得られる生成物と工程b')で得られるトシレートとの反応、
e'') 工程d'')で得られる生成物のアルコール官能基の脱保護、
【0142】
a''') L-ドーパミンのFmocクロライドでの保護、
b''') 工程a''')で得られる生成物と臭化アリルとの反応、
c''') 工程b''')で得られる生成物とモルホリンとの反応、
d''') c''')で得られる生成物のエステル化、
e''') 工程d''')で得られる生成物の鹸化、
f''') 工程e'')で得られる生成物と工程e'')で得られる生成物とのエステル化、
g''') 対応するアルコールを得るための、工程f''')で得られる生成物の還元、
h''') 工程g''')で得られる生成物臭素化、
i''') 工程h''')で得られる生成物のアルコール官能基の脱保護、
【0143】
a'v) メマンチンのエステル化、
b'v) 工程a'v)で得られる生成物の鹸化、
c'v) 工程b'v)で得られる生成物のエステル化、
d'v) 工程c'v)で得られる生成物の、好ましくはLiAlH4での還元、
e'v) 工程d'v)で得られる生成物の臭素化、
f'v) 工程e'v)で得られる生成物の工程a)で得られる生成物とのエーテル化、
g'v) 工程f'v)で得られる生成物のアルコール官能基の脱保護、
h'v) 工程g'v)で得られる生成物の工程i''')で得られる生成物でのエーテル化、
i'v) 工程h'v)で得られる生成物の、好ましくはLiAlH4での還元、
j'v) 工程i'v)で得られる生成物とジエチレントリアミン五酢酸二無水物又はカテコールトリポッド又は8-ヒドロキシキノリントリポッドとの反応。
【0144】
本発明はまた、医薬的に許容され得る賦形剤中に、本発明による少なくとも1つの錯体又は本発明による方法によって得られる少なくとも1つの錯体を含んでなる医薬組成物に関する。
この医薬組成物は、神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病及び多発性硬化症の検出及びその機序の理解のための造影剤として使用し得る。
【0145】
しかし、この医薬組成物はまた、本発明による錯体の樹状構造体のデンドライトが治療薬剤(例えば、メマンチン(1,3-ジメチル-5-アミノアダマンタン))で官能化されているとき、神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病又は多発性硬化症を治療又は改善するためにも使用し得る。
上記の構成のものに加えて、本発明はまた、下記の本発明の錯体を合成する方法の実施例に言及する説明から明らかになる他の構成のものを含んでなる。
しかし、これら実施例は本発明の主題の例示のためだけに提示するものであり、本発明の制限を何ら構成するものではないことを理解すべきである。
【実施例】
【0146】
使用した材料及び分析方法
Brucker AM300スペクトロメータ(300MHz)で、1H及び13C NMRスペクトルを記録した。スペクトルの内部参照は、非重水素化溶媒のピークに対応する(CDCl3:7.27ppm、CD2Cl2:5.32ppm)。
全ての市販製品及び反応試薬は、前処理なしで使用した。これらはSIGMA-Aldrich社、ACROS社及びSTREM Chemicals社のものである。
【0147】
実施例1:式II-1〜II-3の錯体の合成
【化53】

【0148】
工程a):トリエチレングリコールモノメチルエーテルと塩化トシルとの反応
【化54】

【0149】
500ml丸底フラスコにおいて、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(20.00g,0.122mol)を蒸留水/THF混合物(20ml/140ml)中の水酸化ナトリウム(7.33g,0.183mol)溶液に加える。氷浴を使用して、この溶液を0℃に冷却する。次いで、滴下漏斗を使用して、40mlのTHF中の塩化トシル(25.50g,0.134mol)溶液を約30分間にわたって滴下して加える。このようにして得られる反応媒体を周囲温度にて24時間撹拌し、次いで0℃に冷却した200mlの飽和NaCl水溶液を含む800mlビーカー中に注ぐ。このとき二相が観察される。分液漏斗を用いて、黄色がかった上相(有機相に対応)を抽出する。続いて、これを500mlの飽和NaCl水溶液で洗浄する。続いて、最初の水相を200mlのCH2Cl2で処理し、得られる新たな有機相(これはこの時点で下相である(d20CH2Cl2=1.325))を回収する。こうして得られる2つの有機相を併せて、飽和NaCl水溶液(500ml)で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、次いでロータリーエバポレーターを用いて蒸発させる。
生成物3が収率で94% (36.30g,0.113mol)で得られる。無色の油。
【0150】
工程b):工程a)で得られるトシレートとメチル3,4,5-トリヒドロキシベンゾエートとの反応
【化55】

【0151】
ジメチルホルムアミド(DMF)(100ml)中のトシレート3(33.75g,0.106mol)とメチル3,4,5-トリヒドロキシベンゾエート(5.95g,0.032mol)とK2CO3 (44.4g,mol)との溶液を撹拌し、油浴を用いて72時間80℃に加温する。
加温を停止した後、反応媒体を周囲温度に冷却し、次いでセライトで濾過する。溶媒の蒸発後、濾液の残渣を300mlのCH2Cl2中に取る。こうして得られる有機相を3×300mlの飽和NaCl水溶液で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させ、次いで濾過し、蒸発乾固させ、精製すべき32.60gの粗生成物を得る。
精製:クロマトグラフィーカラム 直径4.5cm、Vsilica=500ml、溶離剤:1/1 CH2Cl2/アセトン
生成物5が90%の収率(17.65g,0.026mol)で得られる。
【0152】
工程c):対応するアルコールを得るための、工程b)で得られる生成物の、好ましくはLiAIH4での還元
【化56】

【0153】
THF (34ml,0.034mol)中LiAlH4の1M溶液を、アルゴン下に維持し氷浴で0℃に冷却した20mlの無水THF中の生成物5(15.00g,0.024mol)の溶液に、滴下して非常に注意深く加える。周囲温度にて20時間の撹拌後、反応媒体を氷浴で0℃に冷却し、20mlの酢酸エチル(EtOAc)、次いで20mlのメタノール(MeOH)、最後に20mlの水を添加して反応を停止させる。酢酸エチルの添加は、酢酸エチルをゆっくりと導入しなければ、激烈な反応を生じ、水の添加により塩の沈澱が引き起こされる。次いで反応媒体をセライトで濾過し、蒸発乾固させる。得られる残渣を200mlのCH2Cl2中に取り、3×200mlの飽和NaCl水溶液で洗浄する。得られる有機相を無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させる。
生成物7が79%の収率(11.18g,0.0188mol)で得られる。
【0154】
工程d):工程c)で得られる生成物の臭素化
【化57】

【0155】
TMSBr (2.67g,2.3ml,0.017mol)を、不活性雰囲気(アルゴン)下で氷浴を用いて0℃に維持した10mlの無水CHCl3中の生成物7(8.30g,0.014mol)の溶液に、シリンジを用いて滴下して加える。48時間の撹拌後、溶媒を蒸発除去して、生成物9が99%の収率(9.20g,0.014mol)で得られる。更なる精製は必要ない。
【0156】
工程e):工程d)で得られる生成物とメチル3,5-ジヒドロキシベンゾエートとの反応
【化58】

【0157】
50mlのアセトン中、生成物9(3.00g,4.56mmol)とメチル3,5-ジヒドロキシベンゾエート(348mg,2.07mmol)とK2CO3 (1.43g,10.37mmol)とKI (15mg,0.93mmol)との溶液を60℃にて72時間加温する。次いで反応媒体を周囲温度に冷却し、セライトで濾過し、こうして得られる濾液を蒸発乾固させる。
残渣を mlのCH2Cl2中に取り、得られる有機相を3×0mlの飽和NaCl水溶液で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、次いで蒸発乾固させて、精製すべき gの粗生成物を得る。
精製:クロマトグラフィーカラム 直径4.5cm、Vsilica=500ml,溶離剤:CH2Cl2:アセトン 1:2
生成物11が75%の収率(5.00g,3.4mmol)で得られる。黄色がかった油。
【0158】
工程f):工程e)で得られる生成物のLiAIH4での還元
【化59】

【0159】
THF (6.35ml,6.35mmol)中のLiAlH4の1M溶液を、アルゴン下に維持し氷浴で0℃に冷却した100mlの無水THF中の生成物11(6.00g,4.54mmol)の溶液に、滴下して非常に注意深く加える。周囲温度にて20時間の撹拌後、反応媒体を氷浴で0℃に冷却し、20mlの酢酸エチル(EtOAc)、次いで20mlのメタノール(MeOH)、最後に20mlの水を添加して反応を停止させる。酢酸エチルの添加は、酢酸エチルをゆっくりと導入しなければ、激烈な反応を生じ、水の添加により塩の沈澱が引き起こされる。次いで反応媒体をセライトで濾過し、蒸発乾固させる。得られる残渣を50mlのCH2Cl2中に取り、3×50mlの飽和NaCl水溶液で洗浄する。得られる有機相を無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させる。
生成物13が79%の収率(4.58g,3.54mmol)で得られる。
【0160】
工程g):工程f)で得られる生成物とジエチレントリアミン五酢酸二無水物との反応
【化60】

【0161】
ジエチレントリアミン五酢酸二無水物(63mg,0.177mmol)及び生成物13(230mg,0.177mmol)を17mlの無水塩化メチレンに溶解し、得られる懸濁物を50℃にて30分間撹拌する。次いでトリエチルアミン(0.247ml,1.77mmol)を加え、反応媒体50℃にて12時間撹拌した後、周囲温度に冷却し、5mlまで濃縮する。次いで、30mlのヘキサンをこれに加え、得られる溶液を一晩冷蔵庫(+4℃)で放置する。沈澱した生成物をヘキサンで洗浄し、真空下で乾燥させ、次いでフラッシュクロマトグラフィーカラムで精製する。
精製:クロマトグラフィーカラム 直径1cm、Vsilica=20ml,溶離剤:CH2Cl2/50% MeOH
生成物15が96%の収率(284mg,0.17mmol)で得られる。黄色がかった油。
【0162】
工程h):工程g)で得られる生成物と塩化Gd又は塩化Mn又は過テクネテートとの反応
− 1.工程g)で得られる生成物と塩化Gdとの反応:
【化61】

【0163】
リガンド15(350mg,0.209mmol)及びGd(ClO4)3 (191mgの50%水溶液,0.209mmol)を10mlの蒸留水に溶解し、NaOHの1M溶液を加えることによってpHを7に一定に維持しながら、この溶液を周囲温度にて12時間撹拌する。次いで、遊離Gd3+イオンを除去するために、反応媒体をChelex樹脂で1時間処理し、次いで濾過し、凍結乾燥させる。
錯体17が91%の収率(351mg,0.19mmol)で得られる。黄色がかった油。
式II-1の錯体が得られる。
【0164】
− 2.工程g)で得られる生成物と塩化Mnとの反応:
【化62】

【0165】
MnCl2. 4H2O (37mg,0.185mmol)を水(5ml)中の生成物15(310mg,0.185mmol)溶液に加え、周囲温度で撹拌する。30分間の撹拌後、不純な錯体19(NaClタイプの無機不純物が存在)を凍結乾燥させる。ナトリウム塩を除去するために精製を行なってもよい。
精製:凍結乾燥後、乾燥残渣を最小量のジクロロメタンに取り、得られる有機相を実質的飽和NaCl水溶液で洗浄した後、無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、次いで蒸発乾固させる。
錯体19が90%の収率(300mg,0.168mmol)で得られる。
式II-2の錯体が得られる。
【0166】
− 3.工程g)で得られる生成物と過テクネテートとの反応:
【化63】

【0167】
放射能メータを備えたシールド核医学フード内で行う操作:
溶液状態の発生源から滅菌無発熱原性生理食塩水中に出てくる185MBq (5mCi)の過テクネテート99mTc3+O4- (2〜4ml)を、18μmolの錯体15−CaNa3及びストック溶液から凍結乾燥した2μmolの塩化スズ(Sn2+)を含むバイアルに加える。
混合物を穏やかに撹拌し、周囲温度にて2分間反応させる。
標識化の質を、移動相としてメチルエチルケトンを含むWhatmanペーパー(3MM CHR)上でクロマトグラフィーにより確証する:標識錯体は移動せず(Rf=0)、遊離過テクネテートは溶媒先端と共に移動する(Rf=1)。
これら条件下でm、標識化は常に98%より高い。
式II-3の錯体が得られる。
【0168】
実施例2:式III-1〜III-3の化合物の合成
【化64】

【0169】
実施例3:式IV-1〜IV-3の化合物の合成
【化65】

【0170】
実施例4:式V-1〜V-3の化合物の合成
【化66】

【0171】
実施例5:式VI-1〜VI-3の化合物の合成
【化67】

【0172】
実施例6:式VII-1〜VII-3の化合物の合成
【化68】

【0173】
工程a):tert-ブタノールからのtert-ブトキシトリエチレングリコールの合成
【化69】

【0174】
150mlのジクロロメタン中のMgSO4 (55.00g,0.45mol)溶液を、バルブコンデンサーを備える二頸丸底フラスコに導入し、周囲温度にて撹拌する。このアセンブリは、絶対的に、密封されてアルゴン下になければならない。次いで、硫酸H2SO4 (6.42ml,0.111mol)、トリエチレングリコール(15.00ml,0.111mol)、次に非常にゆっくりとtert-ブタノール(52.80ml,0.556mol)をそれぞれ導入する。次いで、反応媒体を周囲温度にて19時間撹拌し、その後2時間還流させる。続いて、濾過し、有機相を水(300ml)、次いで飽和NaCl水溶液(2×300ml)で洗浄した後、無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、次いで蒸発乾固させる。
精製:クロマトグラフィーカラム 直径3.5cm、Vsilica=400ml,溶離剤:95/5 CH2Cl2/MeOH
生成物1が23%の収率(5.29g,0.026mol)で得られる。
【0175】
工程b):工程a)で得られる生成物と塩化トシルとの反応
【化70】

【0176】
4mlのTHFに溶解した塩化トシル(1.85g,9.70mmol)を、0℃に冷却した水/THF混合物(2/14ml)中のNaOH (0.53g,13.23mmol)及びアルコール1(1.82g,8.82mmol)の溶液に滴下して加える。周囲温度にて68時間の撹拌後、反応媒体を0℃に冷却した50mlの飽和NaCl水溶液中に注ぐ。得られる有機相を飽和NaCl水溶液(100ml)で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させる。
精製:クロマトグラフィーカラム 直径3.5cm、Vsilica=400ml,溶離剤:CH2Cl2/MeOH 98:2
生成物2が67%の収率(0.87g,5.89mmol)で得られる。
【0177】
工程c):工程b)で得られるトシレートとメチル3,4,5-トリヒドロキシベンゾエートとの反応
【化71】

【0178】
ジメチルホルムアミド(DMF)(20ml)中トシレート2(5.89g,16.28mmol)とメチル3,4,5-トリヒドロキシベンゾエート(0.91g,4.93mmol)とK2CO3 (6.82g,0.163mol)とKI (0.37g,2.22mmol)との溶液を撹拌し、油浴を用いて80℃に72時間加温する。
加温を停止した後、反応媒体を周囲温度に冷却し、次いでセライトで濾過する。溶媒の蒸発後、濾液の残渣を300mlのCH2Cl2中に取る。こうして得られる有機相を3×300mlの飽和NaCl水溶液で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させ、次いで濾過し、蒸発乾固させ、精製すべき4.60gの粗生成物を得る。
精製:クロマトグラフィーカラム 直径4.0cm、Vsilica=400ml,溶離剤:98/2 CH2Cl2/MeOH
生成物4が82%の収率(2.96g,4.03mmol)で得られる。
【0179】
工程d):対応するアルコールを得るための、工程c)で得られる生成物の、好ましくはLiAIH4での還元
【化72】

【0180】
THF (6.64ml,6.64mmol)中LiAlH4の1M溶液を、アルゴン下に維持し氷浴で0℃に冷却した4mlの無水THF中の生成物4(2.96g,4.03mmol)の溶液に、滴下して非常に注意深く加える。周囲温度にて20時間の撹拌後、反応媒体を氷浴で0℃に冷却し、4mlの酢酸エチル(EtOAc)、次いで4mlのメタノール(MeOH)、最後に4mlの水を添加して反応を停止させる。酢酸エチルの添加は、酢酸エチルをゆっくりと導入しなければ、激烈な反応を生じ、水の添加により塩の沈澱が引き起こされる。次いで反応媒体をセライトで濾過し、蒸発乾固させる。得られる残渣を35mlのCH2Cl2中に取り、3×35mlの飽和NaCl水溶液で洗浄する。得られる有機相を無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させる。
生成物6が88%の収率(2.56g,3.55mmol)で得られる。
【0181】
工程e):工程d)で得られる生成物とジエチレントリアミン五酢酸二無水物との反応
【化73】

【0182】
ジエチレントリアミン五酢酸二無水物(1.23g,3.46mmol)及び生成物6(2.50g,3.46mmol)を50mlの無水塩化メチレンに溶解し、得られる懸濁物を50℃にて30分間撹拌する。次いでトリエチルアミン(4.82ml,34.6mmol)を加え、反応媒体50℃にて12時間撹拌した後、周囲温度に冷却し、5mlまで濃縮する。次いで、30mlのヘキサンをこれに加え、得られる溶液を一晩冷蔵庫(+4℃)で放置する。沈澱した生成物をヘキサンで洗浄し、真空下で乾燥させ、次いでフラッシュクロマトグラフィーカラムで精製する。
精製:クロマトグラフィーカラム 直径1cm、Vsilica=20ml,溶離剤:CH2Cl2/50% MeOH
生成物8が95%の収率(3.59g,3.28mmol)で得られる。黄色がかった油。
【0183】
工程f):工程e)で得られる生成物と塩化Gd又は塩化Mn又は過テクネテートとの反応
− 1.塩化Gdとの反応
【化74】

【0184】
リガンド8(1.00g,0.91mmol)及びGd(ClO4)3 (838mgの50%水溶液,0.91mmol)を5mlの蒸留水に溶解し、NaOHの1M溶液を加えることによってpHを7に一定に維持しながら、この溶液を周囲温度にて12時間撹拌する。次いで、遊離Gd3+イオンを除去するために、反応媒体をChelex樹脂で1時間処理し、次いで濾過し、凍結乾燥させる。
錯体12が92%の収率(1.07g,0.83mmol)で得られる。黄色がかった油。
式式VII-1の錯体が得られる。
【0185】
− 2.塩化Mnとの反応
【化75】

【0186】
MnCl2. 4H2O (182mg,0.91mmol)を水(25ml)中のリガンド8(1.00g,0.91mmol)溶液に加え、周囲温度で撹拌する。30分間の撹拌後、不純な錯体(NaClタイプの無機不純物が存在)を凍結乾燥させる。ナトリウム塩を除去するために精製を行なってもよい。
精製:凍結乾燥後、乾燥残渣を最小量のジクロロメタンに取り、得られる有機相を実質的飽和NaCl水溶液で洗浄した後、無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、次いで蒸発乾固させる。
錯体14が90%の収率(978mg,0.82mmol)で得られる。
式VII-2の錯体が得られる。
【0187】
− 3.過テクネテートとの反応
【化76】

【0188】
放射能メータを備えたシールド核医学フード内で行う操作:
溶液状態の発生源から滅菌無発熱原性生理食塩水中に出てくる185MBq (5mCi)の過テクネテート99mTc3+O4- (2〜4ml)を、18μmolのリガンド8-CaNa3及びストック溶液から凍結乾燥した2μmolの塩化スズ(Sn2+)を含むバイアルに加える。
混合物を穏やかに撹拌し、周囲温度にて2分間反応させる。
標識化の質を、移動相としてメチルエチルケトンを含むWhatmanペーパー(3MM CHR)上でクロマトグラフィーにより確証する:標識錯体は移動せず(Rf=0)、遊離過テクネテートは溶媒先端と共に移動する(Rf=1)。
これら条件下で、標識化は常に98%より高い。
式VII-3の錯体が得られる。
【0189】
実施例7:式VIII-1〜VIII-3の化合物の合成
【化77】

【0190】
工程a):tert-ブタノールからのtert-ブトキシトリエチレングリコールの合成
【化78】

【0191】
150mlのジクロロメタン中のMgSO4 (55.00g,0.45mol)溶液を、バルブコンデンサーを備える二頸丸底フラスコに導入し、周囲温度にて撹拌する。このアセンブリは、絶対的に、密封されてアルゴン下になければならない。次いで、硫酸H2SO4 (6.42ml,0.111mol)、トリエチレングリコール(15.00ml,0.111mol)、次に非常にゆっくりとtert-ブタノール(52.80ml,0.556mol)をそれぞれ導入する。次いで、反応媒体を周囲温度にて19時間撹拌し、その後2時間還流させる。続いて、濾過し、有機相を水(300ml)、次いで飽和NaCl水溶液(2×300ml)で洗浄した後、無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、次いで蒸発乾固させる。
精製:クロマトグラフィーカラム 直径3.5cm、Vsilica=400ml,溶離剤:95/5 CH2Cl2/MeOH
生成物1が23%の収率(5.29g,0.026mol)で得られる。
【0192】
工程b):工程a)で得られる生成物と塩化トシルとの反応
【化79】

【0193】
4mlのTHFに溶解した塩化トシル(1.85g,9.70mmol)を、0℃に冷却した水/THF混合物(2/14ml)中のNaOH (0.53g,13.23mmol)及びアルコール1(1.82g,8.82mmol)の溶液に滴下して加える。周囲温度にて68時間の撹拌後、反応媒体を0℃に冷却した50mlの飽和NaCl水溶液中に注ぐ。得られる有機相を飽和NaCl水溶液(100ml)で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させる。
精製:クロマトグラフィーカラム 直径3.5cm、Vsilica=400ml,溶離剤:CH2Cl2/MeOH 98:2
生成物2が67%の収率(0.87g,5.89mmol)で得られる。
【0194】
工程c):工程b)で得られるトシレートとメチル3,4,5-トリヒドロキシベンゾエートとの反応
【化80】

【0195】
ジメチルホルムアミド(DMF)(20ml)中トシレート2(5.89g,16.28mmol)とメチル3,4,5-トリヒドロキシベンゾエート(0.91g,4.93mmol)とK2CO3 (6.82g,0.163mol)とKI (0.37g,2.22mmol)との溶液を撹拌し、油浴を用いて80℃に72時間加温する。
加温を停止した後、反応媒体を周囲温度に冷却し、次いでセライトで濾過する。溶媒の蒸発後、濾液の残渣を300mlのCH2Cl2中に取る。こうして得られる有機相を3×300mlの飽和NaCl水溶液で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させ、次いで濾過し、蒸発乾固させ、精製すべき4.60gの粗生成物を得る。
精製:クロマトグラフィーカラム 直径4.0cm、Vsilica=400ml,溶離剤:98/2 CH2Cl2/MeOH
生成物4が82%の収率(2.96g,4.03mmol)で得られる。
【0196】
工程d):対応するアルコールを得るための、工程c)で得られる生成物の、好ましくはLiAIH4での還元、
【化81】

【0197】
THF (6.64ml,6.64mmol)中LiAlH4の1M溶液を、アルゴン下に維持し氷浴で0℃に冷却した4mlの無水THF中の生成物4(2.96g,4.03mmol)の溶液に、滴下して非常に注意深く加える。周囲温度にて20時間の撹拌後、反応媒体を氷浴で0℃に冷却し、4mlの酢酸エチル(EtOAc)、次いで4mlのメタノール(MeOH)、最後に4mlの水を添加して反応を停止させる。酢酸エチルの添加は、酢酸エチルをゆっくりと導入しなければ、激烈な反応を生じ、水の添加により塩の沈澱が引き起こされる。次いで反応媒体をセライトで濾過し、蒸発乾固させる。得られる残渣を35mlのCH2Cl2中に取り、3×35mlの飽和NaCl水溶液で洗浄する。得られる有機相を無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させる。
生成物6が88%の収率(2.56g,3.55mmol)で得られる。
【0198】
工程e):工程d)で得られる生成物の臭素化
【化82】

【0199】
TMSBr (0.58ml,4.44mmol)を、不活性雰囲気(アルゴン)下で氷浴を用いて0℃に維持した3mlの無水CHCl3中の生成物6(2.56g,3.55mmol)の溶液に、シリンジを用いて滴下して加える。48時間の撹拌後、溶媒を蒸発除去して、生成物8が90%の収率(2.51g,3.19mmol)で得られる。更なる精製は必要ない。
【0200】
工程f):工程e)で得られる生成物とメチル3,5-ジヒドロキシベンゾエートとの反応
【化83】

【0201】
15mlのアセトン中、生成物8(2.51g,3.20mmol)と3,5-ジヒドロキシベンジルアルコール(0.25g,1.46mmol)とK2CO3 (1.01g,7.28mmol)とKI (7mg,0.44mmol)との溶液を60℃にて72時間加温する。次いで反応媒体を周囲温度に冷却し、セライトで濾過し、こうして得られる濾液を蒸発乾固させる。
残渣を50mlのCH2Cl2中に取り、得られる有機相を3×50mlの飽和NaCl水溶液で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、次いで蒸発乾固させて、精製すべき2.50gの粗生成物を得る。
精製:クロマトグラフィーカラム 直径4cm、Vsilica=450ml,溶離剤:アセトン
生成物10が88%の収率(1.98g,1.28mmol)で得られる。黄色がかった油。
【0202】
工程g):工程f)で得られる生成物のLiAlH4での還元
【化84】

【0203】
THF (1.73ml,1.73mmol)中のLiAlH4の1M溶液を、アルゴン下で維持し氷浴で0℃に冷却した50mlの無水THF中の生成物10(1.95g,1.23mmol)の溶液に、滴下して非常に注意深く加える。周囲温度にて20時間の撹拌後、反応媒体を氷浴で0℃に冷却し、10mlの酢酸エチル(EtOAc)、次いで10mlのメタノール(MeOH)、最後に10mlの水を添加して反応を停止させる。酢酸エチルの添加は、酢酸エチルをゆっくりと導入しなければ、激烈な反応を生じ、水の添加により塩の沈澱が引き起こされる。次いで反応媒体をセライトで濾過し、蒸発乾固させる。得られる残渣を50mlのCH2Cl2中に取り、3×50mlの飽和NaCl水溶液で洗浄する。得られる有機相を無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させる。
生成物12が92%の収率(1.76g,1.13mmol)で得られる。
【0204】
工程h):工程g)で得られる生成物とジエチレントリアミン五酢酸二無水物との反応
【化85】

【0205】
ジエチレントリアミン五酢酸二無水物(115mg,0.32mmol)及び生成物12(500mg,0.32mmol)を35mlの無水塩化メチレンに溶解し、得られる懸濁物を50℃にて30分間撹拌する。次いでトリエチルアミン(0.45ml,3.2mmol)を加え、反応媒体50℃にて12時間撹拌した後、周囲温度に冷却し、5mlまで濃縮する。次いで、30mlのヘキサンをこれに加え、得られる溶液を一晩冷蔵庫(+4℃)で放置する。沈澱した生成物をヘキサンで洗浄し、真空下で乾燥させ、次いでフラッシュクロマトグラフィーカラムで精製する。
精製:クロマトグラフィーカラム 直径1cm、Vsilica=20ml,溶離剤:CH2Cl2/50% MeOH
生成物14が89%の収率(553mg,0.28mmol)で得られる。黄色がかった油。
【0206】
工程i):工程h)で得られる生成物と塩化Gd(III)又は塩化Mn(II)又は過テクネテートとの反応
− 1.塩化Gdとの反応
【化86】

【0207】
リガンド14(200mg,0.10mmol)及びGd(ClO4)3 (95mgの50%水溶液,0.10mmol)を5mlの蒸留水に溶解し、NaOHの1M溶液を加えることによってpHを7に一定に維持しながら、この溶液を周囲温度にて12時間撹拌する。次いで、遊離Gd3+イオンを除去するために、反応媒体をChelex樹脂で1時間処理し、次いで濾過し、凍結乾燥させる。
錯体16が87%の収率(189mg,0.087mmol)で得られる。黄色がかった油。
式VIII-1の錯体が得られる。
【0208】
− 2.塩化Mnとの反応
【化87】

【0209】
MnCl2.4H2O (21mg,0.10mmol)を水(5ml)中の生成物14(200mg,0.10mmol)溶液に加え、周囲温度で撹拌する。30分間の撹拌後、不純な錯体18(NaClタイプの無機不純物が存在)を凍結乾燥させる。ナトリウム塩を除去するために精製を行なってもよい。
精製:凍結乾燥後、乾燥残渣を最小量のジクロロメタンに取り、得られる有機相を実質的飽和NaCl水溶液で洗浄した後、無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、次いで蒸発乾固させる。
錯体18が88%の収率(189mg,0.088mmol)で得られる。
式VIII-2の錯体が得られる。
【0210】
− 3.過テクネテートとの反応
【化88】

【0211】
放射能メータを備えたシールド核医学フード内で行う操作:
溶液状態の発生源から滅菌無発熱原性生理食塩水中に出てくる185MBq (5mCi)の過テクネテート99mTc3+O4- (2〜4ml)を、18μmolの錯体14-CaNa3及びストック溶液から凍結乾燥した2μmolの塩化スズ(Sn2+)を含むバイアルに加える。
混合物を穏やかに撹拌し、周囲温度にて2分間反応させる。
標識化の質を、移動相としてメチルエチルケトンを含むWhatmanペーパー(3MM CHR)上でクロマトグラフィーにより確証する:標識錯体は移動せず(Rf=0)、遊離過テクネテートは溶媒先端と共に移動する(Rf=1)。
これら条件下で、標識化は常に98%より高い。
式VIII-3の錯体が得られる。
【0212】
実施例8:式IX-1〜IX-3の化合物の合成
【化89】

【0213】
実施例9:式X-1〜X-3の化合物の合成
【化90】

【0214】
実施例10:式Aの第一世代及び第二世代の化合物の合成
【化91】

【化92】

【0215】
実施例11:式Aの第三世代の化合物の合成
【化93】

【0216】
実施例12:ブタンジアミンスペーサーを含んでなる式Aの第一世代、第二世代又は第三世代の化合物の合成
本発明の錯体の官能化第一世代デンドロンにより形成された球状の樹状構造体、及び第二世代デンドロンの球状の樹状構造体の合成を、実施例10に示した。第三世代の球状の樹状構造体の合成を、同様に、実施例11に示した。これらデンドロンの形成後、所望であれば、本発明によるスペーサーを導入する。
このスペーサーが1,4-ブタンジアミンであるとき、合成は、第一世代錯体については、以下のスキームに従う:
【0217】
【化94】

【0218】
次いで、実施例10及び11に示すように、所望の生成物を得るために、キレートを導入する。
本発明を、マーカーGd3+、Mn2+及び99mTc3+に関して上記実施例で説明したが、関心ある任意のマーカーを同じ方法で錯体化し得ることは当業者に明確に理解される。
加えて、本発明の錯体に脳へのベクトル化を付与する樹状構造体の官能化に関して前記実施例で本発明を説明したが、他の器官に特異的な造影剤を得るために、他の器官のレセプターに特異的に結合する基でのデンドライトの官能化を使用し得ることは当業者に明確に理解される。
【0219】
更に、第一世代、第二世代又は第三世代の樹状構造体について本発明を説明したが、より高次の世代の樹状構造体を含んでなる錯体を想定することが全く可能であることは当業者に明確に理解される。
同様に、上記では、デンドライトを3つ又は4つのエチレングリコール単位を含んでなるものとして説明したが、4より多いエチレングリコール単位を含んでなるデンドライトの使用を想定することが全く可能であることは当業者に明確に理解される。
同様に、特定の還元剤、保護基及び他の化合物を使用する合成方法を説明したが、実施例で記載したものと同じ官能基を有する他の還元剤、保護基及び化合物を使用し得ることは当業者に明確に理解される。
更に、前記実施例では、使用した治療薬剤は、神経変性疾患用の治療薬剤であるが、或る器官及びこの器官の特定の疾患に対して標的とする作用を有する医薬組成物を得るために、他の任意の治療薬剤を、適切なベクトル化剤と併用して使用し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式I:
[[MC]-En-[D]m-X1p12p23p34p4]z- zB+ 式I
(式中、
− Mは磁気又はシンチグラフィーマーカーであり、好ましくはGd3+、Mn2+及び99mTc3+イオンから選択され、
− Cは磁気マーカーM用のキレート剤であり、
− [MC]は磁気マーカーMのキレートであり、
− Eはスペーサーであり、
− n=0又は1、
− [D]は、そのコアがベンジルアルコール又はベンジルアミンに由来する少なくとも1つの基を含んでなり、そのベンジル環が3位、4位、5位においてポリエチレングリコール単位から構成される鎖で置換されている樹状構造体であり、
− mは1又は2又は4に等しい整数であり、
− X1は錯体の親油性を増加させる基、好ましくはtert-ブチル(tBu)基であり、
− p1は0〜12(両端を含む)に等しい整数であり、
− X2は、特定の器官、好ましくは脳に対する錯体の特異性を増加させる基、例えばL-ドーパミンであり、
− p2は0、1、2又は4(両端を含む)に等しい整数であり、
− X3は治療活性、好ましくは神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病及び多発性硬化症に対する治療活性を有する基であり、
− p3は0、1、2又は4(両端を含む)に等しい整数であり、
− X4はCH3基であり、
− m=1のときp1+p2+p3+p4=3、又はm=2のときp1+p2+p3+p4=6、又はm=4のときp1+p2+p3+p4=12、
− p4は0〜12(両端を含む)に等しい整数であり、
− Bは対イオンであり、好ましくはNa+又はK+であり、
− zは0、1、2、3又は4に等しい整数である)
を有することを特徴とする樹状キレート錯体。
【請求項2】
キレート剤Cがジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、カテコール由来トリポッド又は8-ヒドロキシキノリン由来トリポッドであることを特徴とする請求項1に記載の錯体。
【請求項3】
樹状構造体[D]の各デンドライトが3つ又は4つのエチレングリコール単位を含んでなるポリエチレングリコール鎖であることを特徴とする請求項1又は2に記載の錯体。
【請求項4】
m=1であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項5】
m=2又は4であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項6】
− n=p1=p2=p3=0、
− X4がCH3であり、
− p4=6、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3つのエチレングリコール単位を含んでなる鎖であり、
− m=2、
− Cがジエチレントリアミン五酢酸であり、
− MがGd3+であり、
− BがNa+であり、
− z=1
の下記式II-1:
【化1】

であることを特徴とする請求項1〜3及び5のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項7】
− n=p1=p2=p3=0、
− X4がCH3であり、
− p4=6、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3つのエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコール鎖であり、
− m=2、
− Cがジエチレントリアミン五酢酸であり、
− MがMn2+であり、
− BがNa+であり、
− z=2
の下記式II-2:
【化2】

であることを特徴とする請求項1〜3及び5のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項8】
− n=p1=p2=p3=0、
− X4がCH3であり、
− p4=6、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3つのエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコール鎖であり、
− m=2、
− Cがジエチレントリアミン五酢酸であり、
− Mが99mTc3+であり、
− BがNa+であり、
− z=1
の下記式II-3:
【化3】

であることを特徴とする請求項1〜3及び5のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項9】
− Cがカテコール由来トリポッドであり、
− n=1、
− Eがエチレンジアミン又はブタンジアミン鎖であり、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3つ又は4つのエチレングリコール単位を有する鎖であり、
− m=1、
− MがGd3+であり、
− p1=p2=p3=0、
− X4がCH3であり、
− p4=3、
− BがNa+であり、
− z=3
であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項10】
− Cがカテコール由来トリポッドであり、
− n=1、
− Eがエチレンジアミン又はブタンジアミン鎖であり、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3つ又は4つのエチレングリコール単位を有する鎖であり、
− m=1、
− MがMn2+であり、
− p1=p2=p3=0、
− X4がCH3であり、
− p4=3、
− BがNa+であり、
− z=4
であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項11】
− Cがカテコール由来トリポッドであり、
− n=1、
− Eがエチレンジアミン又はブタンジアミン鎖であり、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3つ又は4つのエチレングリコール単位を有する鎖であり、
− m=1、
− Mが99mTc3+であり、
− p1=p2=p3=0、
− X4がCH3であり、
− p4=3、
− BがNa3+であり、
− z=3
であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項12】
− Cが8-ヒドロキシキノリン由来トリポッドであり、
− n=1、
− Eがエチレンジアミン又はブタンジアミン鎖であり、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3つ又は4つのエチレングリコール単位を含んでなる鎖であり、
− m=1、
− MがGd3+であり、
− p1=p2=p3=0、
− X4がCH3であり、
− p4=3、
− BがNa3+であり、
− z=0
であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項13】
− Cが8-ヒドロキシキノリン由来トリポッドであり、
− n=1、
− Eがエチレンジアミン又はブタンジアミン鎖であり、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3つ又は4つのエチレングリコール単位を含んでなる鎖であり、
− m=1、
− MがMn2+であり、
− p1=p2=p3=0、
− X4がCH3であり、
− p4=3、
− BがNa3+であり、
− z=1
であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項14】
− Cが8-ヒドロキシキノリン由来トリポッドであり、
− n=1、
− Eがエチレンジアミン又はブタンジアミン鎖であり、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3つ又は4つのエチレングリコール単位を含んでなる鎖であり、
− m=1、
− Mが99mTc3+であり、
− p1=p2=p3=0、
− X4がCH3であり、
− p4=3、
− BがNa3+であり、
− z=0
であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項15】
− Cがカテコール由来トリポッドであり、
− n=1、
− Eがエチレンジアミン又はブタンジアミン鎖であり、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3つ又は4つのエチレングリコール単位を含んでなる鎖であり、
− m=2又は4、
− MがGd3+であり、
− m=2のときp4=6又はm=4のときp4=12、
− BがNa3+であり、
− z=3
であることを特徴とする請求項1、3及び5のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項16】
− Cがカテコール由来トリポッドであり、
− n=1、
− Eがエチレンジアミン又はブタンジアミン鎖であり、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3つ又は4つのエチレングリコール単位を含んでなる鎖であり、
− m=2又は4、
− MがMn2+であり、
− m=2のときp4=6又はm=4のときp4=12、
− BがNa3+であり、
− z=4
であることを特徴とする請求項1〜3及び5のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項17】
− Cがカテコール由来トリポッドであり、
− n=1、
− Eがエチレンジアミン又はブタンジアミン鎖であり、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3つ又は4つのエチレングリコール単位を含んでなる鎖であり、
− m=2又は4、
− Mが99mTc3+であり、
− p1=p2=p3=0、
− X4がCH3であり、
− m=2のときp4=6又はm=4のときp4=12、
− BがNa3+であり、
− z=3
であることを特徴とする請求項1〜3及び5のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項18】
− Cが8-ヒドロキシキノリン由来トリポッドであり、
− n=1、
− Eがエチレンジアミン又はブタンジアミン鎖であり、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3つ又は4つのエチレングリコール単位を含んでなる鎖であり、
− m=2又は4、
− MがGd3+であり、
− p1=p2=p3=0、
− X4がCH3であり、
− m=2のときp4=6又はm=4のときp4=12、
− BがNa3+であり、
− z=0
であることを特徴とする請求項1〜3及び5のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項19】
− Cが8-ヒドロキシキノリン由来トリポッドであり、
− n=1、
− Eがエチレンジアミン又はブタンジアミン鎖であり、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3つ又は4つのエチレングリコール単位を含んでなる鎖であり、
− m=2又は4、
− MがMn2+であり、
− p1=p2=p3=0、
− X4がCH3であり、
− p1=p2=p3=0、
− X4がCH3であり、
− m=2のときp4=6又はm=4のときp4=12、
− BがNa3+であり、
− z=1
であることを特徴とする請求項1〜3及び5のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項20】
− Cが8-ヒドロキシキノリン由来トリポッドであり、
− n=1、
− Eがエチレンジアミン又はブタンジアミン鎖であり、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3つ又は4つのエチレングリコール単位を含んでなる鎖であり、
− m=2又は4、
− Mが99mTc3+であり、
− p1=p2=p3=0、
− X4がCH3であり、
− p1=p2=p3=0、
− X4がCH3であり、
− m=2のときp4=6又はm=4のときp4=12、
− BがNa3+であり、
− z=0
であることを特徴とする請求項1〜3及び5のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項21】
− n=p2=p3=p4=0、
− MがGd3+であり、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3つ又は4つのエチレングリコール単位を含んでなる鎖であり、
− m=1、
− Cがジエチレントリアミン五酢酸であり、
− X1がtert-ブチル(tBu)基であり、
− p1=3、
− BがNa+であり、
− z=1
であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項22】
− n=p2=p3=p4=0、
− MがMn2+であり、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3つ又は4つのエチレングリコール単位を含んでなる鎖であり、
− m=1、
− Cがジエチレントリアミン五酢酸であり、
− X1がtert-ブチル(tBu)基であり、
− p1=3、
− BがNa+であり、
− z=2
であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項23】
− n=p2=p3=p4=0、
− Mが99mTc3+であり、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3つ又は4つのエチレングリコール単位を含んでなる鎖であり、
− m=1、
− Cがジエチレントリアミン五酢酸であり、
− X1がtert-ブチル(tBu)基であり、
− p1=3、
− BがNa+であり、
− z=1
であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項24】
− n=p2=p3=p4=0、
− MがGd3+であり、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3つ又は4つのエチレングリコール単位を含んでなる鎖であり、
− m=2又は4、
− Cがジエチレントリアミン五酢酸であり、
− X1がtert-ブチル(tBu)基であり、
− m=2のときp1=6又はm=4のときp1=12、
− BがNa+であり、
− z=1
であることを特徴とする請求項1〜3及び5のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項25】
− n=p2=p3=p4=0、
− MがMn2+であり、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3つ又は4つのエチレングリコール単位を含んでなる鎖であり、
− m=2又は4、
− Cがジエチレントリアミン五酢酸であり、
− X1がtert-ブチル(tBu)基であり、
− m=2のときp1=6又はm=4のときp1=12、
− BがNa+であり、
− z=2
であることを特徴とする請求項1〜3及び5のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項26】
− n=p2=p3=p4=0、
− Mが99mTc3+であり、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3つ又は4つのエチレングリコール単位を含んでなる鎖であり、
− m=2又は4、
− Cがジエチレントリアミン五酢酸であり、
− X1がtert-ブチル(tBu)基であり、
− m=2のときp1=6又はm=4のときp1=12、
− BがNa+であり、
− z=1
であることを特徴とする請求項1〜3及び5のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項27】
− n=p3=p4=0、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3つ又は4つのエチレングリコール単位を含んでなる鎖であり、
− Cがジエチレントリアミン五酢酸であり、
− MがGd3+であり、
− m=1、
− X1がtert-ブチル(tBu)基であり、
− p1=2、
− X2がL-ドーパミンであり、
− p2=1、
− BがNa+であり、
− z=1
であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項28】
− n=p3=p4=0、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3つ又は4つのエチレングリコール単位を含んでなる鎖であり、
− Cがジエチレントリアミン五酢酸であり、
− MがMn2+であり、
− m=1、
− X1がtert-ブチル(tBu)基であり、
− p1=2、
− X2がL-ドーパミンであり、
− p2=1、
− BがNa+であり、
− z=2
であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項29】
− n=p3=p4=0、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3つ又は4つのエチレングリコール単位を含んでなる鎖であり、
− Cがジエチレントリアミン五酢酸であり、
− Mが99mTc3+であり、
− m=1、
− X1がtert-ブチル(tBu)基であり、
− p1=2、
− X2がL-ドーパミンであり、
− p2=1、
− BがNa+であり、
− z=1
であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項30】
− n=p3=p4=0、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3つ又は4つのエチレングリコール単位を含んでなる鎖であり、
− Cがジエチレントリアミン五酢酸であり、
− MがGd3+であり、
− m=2、
− X1がtert-ブチル(tBu)基であり、
− p1=4、
− X2がL-ドーパミンであり、
− p2=2、
− BがNa+であり、
− z=1
であることを特徴とする請求項1〜3及び5のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項31】
− n=p3=p4=0、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3つ又は4つのエチレングリコール単位を含んでなる鎖であり、
− Cがジエチレントリアミン五酢酸であり、
− MがMn2+であり、
− m=2、
− X1がtert-ブチル(tBu)基であり、
− p1=4、
− X2がL-ドーパミンであり、
− p2=2、
− BがNa+であり、
− z=2
であることを特徴とする請求項1〜3及び5のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項32】
− n=p3=p4=0、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3つ又は4つのエチレングリコール単位を含んでなる鎖であり、
− Cがジエチレントリアミン五酢酸であり、
− Mが99mTc3+であり、
− m=2、
− X1がtert-ブチル(tBu)基であり、
− p1=4、
− X2がL-ドーパミンであり、
− p2=2、
− BがNa+であり、
− z=1
であることを特徴とする請求項1〜3及び5のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項33】
− Cがジエチレントリアミン五酢酸又はカテコール由来若しくは8-ヒドロキシキノリン由来トリポッドのいずれかであり、
− n=0又は1、
− n=1のとき、Eはエチレンジアミン鎖又はブタンジアミン鎖であり、
− 樹状構造体[D]の各デンドライトが3又は4のエチレングリコール単位を含んでなる鎖であり、
− m=1又は2又は4、
− MがGd3+又はMn2+又は99mTc3+であり、
− X1はtert-ブチル(tBu)基であり、
− p1は0〜12(両端を含む)に等しい整数であり、
− X2はL-ドーパミンであり、
− p2は0、1、2又は4(両端を含む)に等しい整数であり、
− X3は治療薬剤であり、
− p3は0、1、2又は4(両端を含む)に等しい整数であり、
− p4=0、
− BがNa+であり、
− z=0、1、2、3又は4
であることを特徴とする請求項1〜3及び5のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項34】
以下の工程:
a)トリエチレングリコールモノメチルエーテルと塩化トシルとの反応、
b)工程a)で得られるトシレートとメチル3,4,5-トリヒドロキシベンゾエートとの反応、
c)対応するアルコールを得るための、工程b)で得られる生成物の、好ましくはLiAlH4での還元、
d)工程c)で得られる生成物の臭素化、
e)工程d)で得られる生成物とメチル3,5-ジヒドロキシベンゾエートとの反応、
f)工程e)で得られる生成物の、好ましくはLiAlH4との反応、
g)工程f)で得られる生成物とジエチレントリアミン五酢酸二無水物との反応、
h)工程g)で得られる生成物と塩化Gd又は塩化Mn又は過テクネテートとの反応
を含んでなることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の錯体を合成する方法。
【請求項35】
以下の工程:
a)tert-ブタノールからのtert-ブトキシトリエチレングリコールの合成、
b)工程a)で得られる生成物と塩化トシルとの反応、
c)工程b)で得られるトシレートとメチル3,4,5-トリヒドロキシベンゾエートとの反応、
d)対応するアルコールを得るための、工程c)で得られる生成物の、好ましくはLiAlH4での還元、
e)工程d)で得られる生成物とジエチレントリアミン五酢酸二無水物との反応
f)工程e)で得られる生成物と塩化Gd又は塩化Mn又は過テクネテートとの反応
を含んでなることを特徴とする請求項21〜23のいずれか1項に記載の錯体を合成する方法。
【請求項36】
以下の工程:
a)tert-ブタノールからのtert-ブトキシトリエチレングリコールの合成、
b)工程a)で得られる生成物と塩化トシルとの反応、
a')メチル3,4,5-トリヒドロキシベンゾエートと無水酢酸との反応、
b')工程a')で得られる生成物と臭化アリルとの反応、
c')工程b')で得られる生成物の、好ましくは炭酸カリウムでの塩基性加水分解、
d')工程c')で得られる生成物と工程b)で得られるトシレートとの反応
e')工程d')で得られる生成物のアルコール官能基の脱保護、
a'')L-ドーパミンのFmocクロライドでの保護、
b'')工程a'')で得られる生成物と臭化アリルとの反応、
c'')工程b'')で得られる生成物とモルホリンとの反応、
d'')工程c'')で得られる生成物のエステル化、
e'')工程d'')で得られる生成物の鹸化、
f'')工程e'')で得られる生成物の工程e')で得られる生成物とのエステル化、
g'')対応するアルコールを得るための、工程f'')で得られる生成物の還元、
h'')工程g'')で得られる生成物とジエチレントリアミン五酢酸二無水物との反応、
i'')工程h'')で得られる生成物と塩化Gd(III)、塩化Mn(II)又は過テクネテートとの反応
を含んでなることを特徴とする請求項27〜29のいずれか1項に記載の錯体を合成する方法。
【請求項37】
以下の工程:
a)tert-ブタノールからのtert-ブトキシトリエチレングリコールの合成、
b)工程a)で得られる生成物と塩化トシルとの反応、
a')メチル3,4,5-トリヒドロキシベンゾエートと無水酢酸との反応、
b')工程a')で得られる生成物と臭化アリルとの反応、
c')工程b')で得られる生成物の炭酸カリウムでの塩基性加水分解、
d')工程c')で得られる生成物と工程b)で得られるトシレートとの反応
e')工程d')で得られる生成物のアルコール官能基の脱保護、
a'')L-ドーパミンのFmocクロライドでの保護、
b'')工程a'')で得られる生成物と臭化アリルとの反応、
c'')工程b'')で得られる生成物とモルホリンとの反応、
d'')工程c'')で得られる生成物のエステル化、
e'')工程d'')で得られる生成物の鹸化、
f'')工程e'')で得られる生成物の工程e')で得られる生成物とのエステル化、
g'')対応するアルコールを得るための、工程f'')で得られる生成物の、好ましくはLiAlH4での還元、
h'')工程g'')で得られる生成物の臭素化
i'')工程h'')で得られる生成物とメチル3,5-ジヒドロキシベンゾエートとの反応、
j'')対応するアルコールを得るための、工程i'')で得られる生成物の、好ましくはLiAlH4での還元、
k'')工程j'')で得られる生成物とジエチレントリアミン五酢酸二無水物との反応、
l'')工程k'')で得られる生成物と塩化Gd(III)又は塩化Mn又は過テクネテートとの反応
を含んでなることを特徴とする請求項30〜32のいずれか1項に記載の錯体を合成する方法。
【請求項38】
医薬的に許容され得る賦形剤中に、請求項1〜33のいずれか1項に記載の錯体又は請求項34〜37のいずれか1項に記載の方法により得られる錯体を少なくとも1つ含んでなることを特徴とする医薬組成物。
【請求項39】
神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病及び多発性硬化症の検出のための請求項38に記載の医薬組成物の使用。
【請求項40】
神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病又は多発性硬化症を治療又は改善するための請求項38に記載の医薬組成物の使用。

【公表番号】特表2010−507571(P2010−507571A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531870(P2009−531870)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【国際出願番号】PCT/FR2007/001645
【国際公開番号】WO2008/043911
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(502205846)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク (154)
【出願人】(501129398)ユニベルシテ・ルイ・パスツール (4)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE LOUIS PASTEUR
【Fターム(参考)】