説明

樹脂、およびその製造方法

【課題】優れた熱安定性および成形性を有し、耐衝撃性、耐熱性、耐クラック性、色相に優れた無色透明樹脂と、それを含有する成形体およびフィルムの提供。
【解決手段】2価フェノール残基および/または2価アルコール残基、ならびにカーボネート残基および/または2価カルボン酸残基および/または2価ヘテロ酸残基から構成されており、かつ少なくとも1部のポリマー末端が下記構造式(1)であること特徴とする樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた熱安定性および成形性を有し、更には無色透明で高い靭性を有する樹脂と、それを含有する成型体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無色透明材料は、光学レンズ、機能性光学フィルムあるいはディスク基板など、その多様な用途に応じて種々の材料が適用されているが、近年、ヘルスケアやエレクトロニクスなどの急速な発展に伴い、材料自体に要求される機能・性能もますます精密かつ優れたものとなってきている。
【0003】
光学用材料の代表的なヘルスケア用途として眼鏡レンズが挙げられるが、この眼鏡レンズについては薄型化、軽量化あるいはファッション性等の観点から活発な材料開発が行われており、現在では耐衝撃性と軽量性等の利点から、市場の90%は樹脂レンズが占めるようになっている。
【0004】
従来の眼鏡レンズ用樹脂は、CR39(コロンビアレジン39)、アクリルおよびウレタンの3つの樹脂に大別され、低分散と高屈折を目指して多くの樹脂が開発実用化されている。これらの樹脂はすべて熱硬化性であるため、光学レンズへの成形は注型重合方法が用いられるが、この方法は重合時間が長く、その後のアニーリングプロセスなど、製造コストが高いという問題点がある。
【0005】
一方、ポリカーボネートのような熱可塑性樹脂をレンズに適用すれば、成形性がよく、熱硬化性樹脂に比べ格段にレンズ製造コストを安くできるという利点があるが、屈折率が1.58と低いため視力矯正眼鏡用途としての性能は不十分である。また、ポリカーボネート以上の屈折率を有する熱可塑性樹脂も数多く知られているが、高分散性および着色性等の問題があり、光学レンズ用途には適用するには問題があった。
【0006】
本発明者らは、高屈折率でかつ低分散な熱可塑性樹脂を見出すべく鋭意検討した結果、5価のリン原子を有する構造、中でもホスホン酸構造をポリマーの主鎖に導入することによって、無色透明で高屈折であり、しかも低分散な熱可塑性樹脂が得られることを見いだしている(特許文献1参照)。
【0007】
リン系官能基を含有する樹脂は種々知られているが、特にホスホン酸エステル基を主鎖に含む樹脂はポリホスホネートと呼ばれ(K. S. Kim, J. Appl. Polym. Sci., 28, 1119 (1983)、 Y. Imai et al, Makromol. Chem., Rapid Commun., 1, 419 (1980)、 米国特許第3719727号)、難燃機能などを目指し精力的な研究が行われている。これら公知のポリホスホネート系樹脂の多くは光学特性や力学特性などの諸物性については詳細な知見がなかったため、本発明者らはそれらを合成し物性評価を行った。結果として、それら公知のポリホスホネート系樹脂は、低分子量体ゆえに力学特性が不十分であったり、屈折率や光分散特性が不十分であった。また、WO01/34683号公報にはポリホスホネートの光学用途について記載されている。しかしながら分子量が低く十分な力学特性を有しているとは言い難く、更には該公知文献には光分散特性(アッベ数)についての詳細な記載がなく、該公知文献記載の種々のビスフェノール類では十分な光分散特性は得られないことを本発明者らは確認している。
【0008】
ポリホスホネート系ポリマーの一般的な製造方法としては、例えば、酸ハライドと2価のフェノールを有機溶剤中で反応させる溶液重合法(A. Conix, Ind. Eng. Chem., 51, 147 (1959)、特公昭37−5599号公報)、酸ハライドと2価のフェノールを塩化マグネシウム等の触媒存在下で加熱する溶融重合法、2価の酸と2価のフェノールをジアリルカーボネートの存在下で加熱する溶融重合法(特公昭38−26299号公報)、水と相溶しない有機溶剤に溶解せしめた2価の酸ハライドとアルカリ水溶液に溶解せしめた2価のフェノールとを混合する界面重合法(W. M. Eareckson, J. Poly. Sci., XL 399 (1959)、および特公昭40−1959号公報)等が挙げられる。
【0009】
また、ポリホスホネート−カーボネート共重合体については、界面重縮合を用いた重合体が知られている(特許文献2と特許文献3参照)。これらは、いずれもホスホネートオリゴマーを生成させた後、ホスゲンなどでポリマー主鎖延長をはかったものである。しかしながら、本発明者らは、界面重縮合ではホスホネートの結合が切れやすく、それがためにカーボネートとホスホネートの比が正確に制御しにくかったり、分子量が向上しにくいという問題があることを確認している。実際、特許文献2記載の方法によれば、ホスホネートの含有量がカーボネートよりも多くなると、力学特性が不十分となることが示されている。また、カーボネート残基の原料としてホスゲンを用いており、環境的にも技術的に十分な重合法とは言い難い。そこで、本発明者らはホスゲンなど毒物原料を用いないポリホスホネート−カーボネート共重合体の製造方法を見出すべく鋭意検討した結果、2価フェノール類のカーボネートポリマーあるいはオリゴマーをカーボネート残基の原料とし、それがトリエチルアミンなどの塩基存在下2価フェノールモノマーにより容易に結合のクラッキングが進行することを見出し、更に、クラッキング反応に続いてホスホン酸残基原料であるホスホン酸ハロゲン化物を高濃度で作用させることにより、ホスホン酸残基原料での主鎖延長が可能となる、すなわちホスゲンを用いずに極めて高い分子量のホスホネート−カーボネートランダム共重合体が得られることを見出している。(特許文献4参照)。
【0010】
しかしながら、ホスホン酸残基原料で主鎖延長をおこなったホスホネート−カーボネートランダム共重合体は、成形時の熱による分解により分子量低下および物性の低下が著しく、成形性および光学特性や力学特性などがカーボネート残基原料で主鎖延長をおこなった同じ組成のホスホネート−カーボネートランダム共重合体と比較して著しく劣るという問題が生じ、その改良、即ちポリマーの熱安定性改良の要望が高い。
【特許文献1】特開2002−167440号公報
【特許文献2】特開昭61−285225号公報
【特許文献3】特開昭61−238826号公報
【特許文献4】特開2002−78588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、優れた熱安定性および成形性を有し、更には無色透明で高い靭性を有する樹脂と、それを含有する成型体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討をおこなった結果、少なくとも1部のポリマー末端を下記構造式(1)にすることにより、ポリマーの熱分解による分子量低下および物性の低下を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本願発明は、2価フェノール残基および/または2価アルコール残基、ならびにカーボネート残基および/または2価カルボン酸残基および/または2価ヘテロ酸残基から構成されており、かつ少なくとも1部のポリマー末端が下記構造式(1)であることを特徴とする樹脂。
【0014】
【化1】

【0015】
[構造式(1)において、R2は有機基から選ばれ、構造式(1)はさらに置換されても良い。]
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、優れた熱安定性および成形性を有し、更には無色透明で高い靭性を有する樹脂が得られる。汎用的な成形体あるいはフィルムの用途など各種分野に用いることができるほか、特にレンズあるいは光学用のフィルムなどにおいて、この樹脂を用いることにより優れた効果をより一層発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
2価フェノール残基および/または2価アルコール残基、ならびにカーボネート残基および/または2価カルボン酸残基および/または2価ヘテロ酸残基から構成された樹脂の中でも、特にホスホン酸残基原料で主鎖延長をおこなったホスホネート−カーボネートランダム共重合体は、成形時の熱による分解により分子量低下および物性の低下が著しく、成形性および光学特性や力学特性などが、カーボネート残基原料で主鎖延長をおこなった同じ組成のホスホネート−カーボネートランダム共重合体と比較して著しく劣っていた。その原因を鋭意検討して追及した結果、ポリマー末端が特定の構造で構成された樹脂は、ポリマー自身の熱安定性に優れ、熱分解による分子量低下および物性の低下を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明は2価フェノール残基および/または2価アルコール残基、ならびにカーボネート残基および/または2価カルボン酸残基および/または2価ヘテロ酸残基から構成されており、かつ少なくとも1部のポリマー末端が下記構造式(1)であること特徴とする樹脂に関するものである。
【0019】
【化2】

【0020】
[構造式(1)において、R2は有機基から選ばれ、構造式(1)はさらに置換されても良い。]
以下、本発明の樹脂について具体的に述べる。
【0021】
本発明の樹脂において、2価フェノール残基および/または2価アルコール残基、ならびにカーボネート残基および/または2価カルボン酸残基および/または2価ヘテロ酸残基から構成されており、かつ少なくとも1部のポリマー末端が上記構造式(1)であることが必須であるが、構造式(1)の含有量が多ければ多いほど熱安定性に優れており、ポリマー末端全体の50%以上100%未満が好ましく、より好ましくは70%以上100%未満、更に好ましくは80%以上100%未満である。
【0022】
上記構造式(1)で表される化合物のリン原子上の置換基R2は有機基から選ばれ、具体例としては、C1〜C4アルキル、またはC〜Cハロアルキル、フェニル、クロロフェニル、p−トリル、ベンジル、ビフェニル、またはシクロヘキシルである。
【0023】
ここで、本発明で用いられる熱可塑性樹脂の構成成分の分析法については、核磁気共鳴(NMR)スペクトルを用いる方法が好適で、特に、チオホスホン酸残基や、ホスホン酸残基におけるリン原子上の置換基については、プロトンあるいはリン原子核磁気共鳴が好適である。さらに、熱可塑性樹脂そのもののスペクトルによる同定の精度が十分でない場合には、本発明で用いられる熱可塑性樹脂をアルカリ類により加水分解し、モノマー成分へと分解した後、各成分を定量および定性分析することができる。例えば、本発明で用いられる熱可塑性樹脂を無水アルコール中、大過剰のアルカリ金属アルコラートなどの強塩基で処理することにより、2価フェノール残基は2価フェノールに、各酸残基はアルコラートイオンに対応するエステルに分解する。これらはいずれも低分子量体であるため、高速液体クロマトグラフィーにより定量および分離した後、NMRスペクトルなどによる詳細な構造分析が可能である。
【0024】
本発明の樹脂において、下記構造式(2)に示されるチオホスホン酸残基を含むことが好ましい。
【0025】
【化3】

【0026】
構造式(2)において、Rは有機基を表し、構造式(2)はさらに置換されても良い。置換基Rを具体的に例示すると、フェニル、ハロ置換フェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、エチル、イソプロピル、シクロヘキシル、ビニル、アリル、ベンジル、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、ハロ置換アルキルおよびアルキルサルファイド基、ビシクロアルキル基が好ましい。ビシクロアルキル基の好適な構造を例示すると、ビシクロ[2,2,1]−1−ヘプチル(1−ノルボルニル)、ビシクロ[2,2,1]−2−ヘプチル(2−ノルボルニル)、ビシクロ[2,2,1]−7−ヘプチル(7−ノルボルニル)、ビシクロ[2,2,2]−1−オクチル、ビシクロ[2,2,2]−2−オクチル、ビシクロ[3,2,1]−2−オクチル、およびビシクロ[3,2,2]−1−ノニル、ビシクロ[4,2,2]−2−デカニル等が挙げられる。
【0027】
ここで、構造式(2)においてリン原子状に2つの有機基を有するチオホスフィン酸残基や、チオリン酸残基、3価のリン官能基であるホスホナイト残基に一部置き換えたものも、チオホスホン酸残基に含む。
【0028】
また、チオホスホン酸残基と2価フェノール残基および2価アルコール残基のモル分率が式(I)を満足することが好ましい。
【0029】
1≧(a)/(b)≧0.0005 (I)
式(I)はチオホスホン酸残基と2価フェノール残基および/または2価アルコール残基のモル分率を表す式であり、すなわち(a)はチオホスホン酸残基のモル数、(b)は2価フェノール残基および/または2価アルコール残基のモル数を示し、熱安定性を向上させるためにチオホスホン酸残基のモル分率(a)/(b)の値としては好ましくは0.0005以上であり、より好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.1以上であり、更に好ましくは0.25以上である。
【0030】
本発明で用いられる樹脂は、熱的、化学的あるいは力学的特性などを制御するために、上記構造式(2)で示されるチオホスホン酸残基以外に、下記構造式(3)で示されるホスホン酸残基を含有させることができる。
【0031】
【化4】

【0032】
構造式(3)中、Rは有機基、Xは酸素、セレンあるいは非共有電子対を表す。また、前記構造式(3)におけるXが非共有電子対であるホスホナウス酸残基も同様に挙げられる。これらは1種類でも、複数種含まれていてもよい。
【0033】
これらの全ホスホン酸残基のモル数とカーボネート残基の合計モル数が式(II)を満足することが好ましい。
【0034】
1≧(c)/{(c)+(d)}≧0.01 (II)
式(II)は、前記構造式(2)で示されるチオホスホン酸残基と前記構造式(3)で示されるホスホン酸残基の合計の、カーボネート残基を含んだ全酸残基に対する共重合分率を表す式である。すなわち、前記式(II)中の(c)は、前記構造式(2)で示されるチオホスホン酸残基と前記構造式(3)で示されるホスホン酸残基の合計モル数(全ホスホン酸残基のモル数)であり、(d)はカーボネート残基のモル数を示す。全ホスホン酸残基のモル分率が0.01未満である場合には、光学レンズ用樹脂としての特性が発現しにくい。さらに、全ホスホン酸残基のモル分率である上記式(II)の[c)/{(c)+(d)}]の値は、上記効果の観点から、0.05以上の範囲にあることが好ましく、0.25以上がより好ましい。
【0035】
ここで、カーボネート残基とは、炭酸エステルや炭酸ハライドなどを原料として得られる構造単位であり、原料としては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどの炭酸エステル、ホスゲン、およびトリホスゲンなどの炭酸ハライドが挙げられる。
【0036】
また得られる樹脂の分子量は、力学特性的に10,000以上が好ましく、より好ましくは20,000以上、更に好ましくは30,000以上であり、樹脂に含まれる分子量5,000以下の鎖状オリゴマー成分の含有量としては0重量%以上5重量%以下が好ましく、より好ましくは0重量%以上4重量%以下であり、更に好ましくは0重量%以上1重量%以下である。
【0037】
本発明の樹脂の製造方法としては、酸ハロゲン化物と2価のフェノールを有機溶剤中で反応させる溶液重合法(例えば、特公昭37−5599号公報参照。)や、酸ハロゲン化物と2価のフェノールを塩化マグネシウム等の触媒存在下で加熱する溶融重合法、2価の酸と2価のフェノールをジアリルカーボネートの存在下で加熱する溶融重合法(例えば、特公昭38−26299号公報参照。)、および水と相溶しない有機溶剤に溶解せしめた2価の酸ハロゲン化物とアルカリ水溶液に溶解せしめた2価のフェノールとを混合する界面重合法(例えば、特公昭40−1959号公報参照。)等が挙げられるが、特に溶液重合法が好適に採用される。
【0038】
溶液重合法について一例を説明すると、溶媒中トリエチルアミン等の塩基存在下で、2価フェノールおよび/または2価アルコール、ならびにホスホン酸残基の前駆体分子であるホスホン酸誘導体と、カーボネート残基の前駆体分子であるホスゲンやトリホスゲン等のホスゲン誘導体を、2価フェノールおよび/または2価アルコールの反応率が0%以上99.95%以下になるまで作用せしめた後、チオホスホン酸残基の前駆分子であるチオホスホンサン誘導体でポリマーの主鎖延長をおこなう事によって、本発明の樹脂を得ることができる。ホスホン酸誘導体、カーボネート誘導体としては、それらのハロゲン化物、酸無水物およびエステル等が用いられるが、その種類や2価フェノールに作用させる順序は特に限定されないが、主鎖延長はチオホスホン酸誘導体を用いることで耐熱性を向上させることができる。
【0039】
ここで共重合成分としてカーボネート基を導入する場合、上記のホスゲンやトリホスゲンなどのホスゲン誘導体を用いるのが一般的であるが、ホスゲンやホスゲン誘導体は、大気中で不安定であるため、取扱いが容易ではない。また、これらの化合物は不安定な化合物であるため、分解して不純物が生成することもあり、この不純物が該樹脂の着色原因であったり、該樹脂の高分子量化を妨げることもある。
【0040】
そこで、好ましくはカーボネート基の導入にホスゲンやホスゲン誘導体を用いることなく、2価フェノール類のカーボネートポリマーあるいは2価フェノール類のカーボネートオリゴマーを用いることによって、ホスゲン誘導体の不純物が存在しないため、全光線透過率が高く、黄色度の低い該樹脂を得ることできる。
【0041】
また、チオホスホン酸残基を与えるモノマーを2価フェノール類のカーボネートポリマーあるいは2価フェノール類のカーボネートオリゴマーを含んだ混合物に対して作用せしめるときの2価フェノール残基の濃度については、高濃度であることが環状オリゴマーの開環反応を促進する上で有利であり、1.0mol/L以上であることが好ましい。濃度は、より好ましくは1.5mol/L以上であり、更に好ましくは2.0mol/L以上である。
【0042】
本発明の樹脂の分子量を調節する方法としては、重合時に一官能の物質を添加して行うことができる。ここで言う分子量調節剤として用いられる一官能物質としては、フェノール、クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−メトキシフェノール等の一価フェノール類、安息香酸クロライド、メタンスルホニルクロライド、フェニルクロロホルメート等の一価酸クロライド類が挙げられる。
【0043】
本発明の樹脂は、その板状成形体(幅10mm、長さ25mm、厚さ3mm)として成形したときの靱性値が、好ましくは3N/mm以上であり、より好ましくは5N/mm以上である。
【0044】
ここで、靱性値は以下のように定義される。試料を、オリエンテック(株)社製テンシロンを用い、支点間距離22mm、曲げ速度1.5mm/分にて曲げ試験を行い、曲げ応力と破談変位を求めた。評価パラメーターは脆さの指標である靱性値で算出した。
【0045】
靱性値(N/mm)=曲げ応力×破断変位
また、本発明で得られる樹脂を光学用樹脂として用いる場合には、その樹脂から得られる幅10mm、長さ25mm、厚さ3mmの板状の成形体の全光線透過率が、好ましくは70%以上、かつ黄色度30位以下であり、より好ましくは全光線透過率が80%以上、かつ黄色度30以下、さらに好ましくは10以下である。
【0046】
なお、全光線透過率と黄色度は以下に定義される。試料をデジタルカラーコンピューター(スガ試験機(株)社製:SM−7CH)を用いて透過法により3刺激値(X、Y、Z)を求めた。なお、全光線透過率はYの値として定義される。黄色度(△YI)は、試料を装着して(X、Y、Z)を求め、下記式(II)によりYI値(YI)を求めた後、試料を外した状態で同様にX、Y、Zを求め、同様にリファレンス値YIを求め、下記式(III)より算出した。
【0047】
YI=100×(1.28X−1.06Z)/Y 式(II)
X、Y、Z:標準光Cにおける試料の三刺激値
△YI=YI2−YI1 式(III)
△YI:黄色度、YI1:リファレンス値、YI2:試料の測定値である。
【0048】
なお、全光線透過率は、ランベルト・ベールの法則を適用することで、幅10mm、長さ25mm、厚さ3mmの板状の成型体の全光線透過率に換算可能である。
【0049】
また、本発明で述べる衝撃強度とは、アイゾット衝撃試験(ISO180)によって測定されたものである。アイゾット衝撃試験とは、試験片を特定のエネルギー及び線速度を有する振り子打撃槌で、打撃破壊し、単位試験片幅当たりの破壊に消費されたエネルギーを示すものである。なお、試験片形状はISO180/4Aに準処したものを用い、試験片は加工後、室温23℃、湿度50%の状態で50時間保管したものを試験することがもっとも好ましい。
【0050】
また、本発明者らは、本発明樹脂を含有するガット、プレートあるいはフィルム状成型体は、優れた難燃性をも具備していることを見出した。
【0051】
さらに本発明者らは、本発明樹脂を光学異方体に成型した場合、位相差フィルム(別称として、位相差板、λ/4板、あるいは円偏光板)用途において、優れた複屈折/波長分散特性を示すことを見出した。一般的な樹脂の光学異方体、例えば一軸延伸したフィルムに光を透過させた場合、その光の波長が短いほど複屈折率が大きくなり、その度合いは波長の短い領域ほど大きいという傾向がある。位相差フィルム用途においては、複屈折率と波長の関係に関して次の条件を満たすものが光学的に理想であるといえる。すなわち、
(イ)百ミクロン以下のフィルムにおいて十分な大きさの複屈折率を有すること、
(ロ)このとき複屈折率の波長による変化が一定、すなわち複屈折率と波長の関係が比例関係(一次の関係)であること、
である。
【0052】
これらの条件を満たし、複屈折/波長分散特性の異なる2種の光学異方フィルムを組み合わせることによって理想的な位相差フィルムを作成することができる。本発明者らは、本発明樹脂を製膜して得られたフィルムを延伸することによって光学異方体とした場合、従来の樹脂に比べ複屈折と波長の関係がより一次の関係に近くなること、またこの本発明の延伸フィルムと従来のポリアルカン系樹脂の光学異方フィルムとを組み合わせることにより、優れた波長分散特性を有する位相差フィルムが得られることを見出した。さらに重合体の分子量についてはそれが高いことがフィルムの力学特性に関してだけでなく光学的な特性においても重要である。すなわち、ポリマーの分子量が高いほど、一軸延伸時のポリマー主鎖の配向が強く複屈折率が大きくなり、従ってより薄いフィルムで機能発現できるようになる。本発明者らは、本発明樹脂を当該用途に適用する際、従来より更なる薄膜化が達成できることを見出した。
【0053】
本発明で用いられる上記構造式(3)で表される化合物のリン原子上の置換基Rの具体例としては、フェニル、ハロ置換フェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、エチル、イソプロピル、シクロアルキル、ビニル、アリル、ベンジル、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、ハロ置換アルキルおよびアルキルサルファイド基等が挙げられる。
【0054】
このようなホスホン酸残基を構成するホスホン酸を具体的に例示すると、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、n−プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、n−ブチルホスホン酸、イソブチルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、n−ペンチルホスホン酸、ネオペンチルホスホン酸、シクロヘキシルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、クロロメチルホスホン酸、ジクロロメチルホスホン酸、ブロモメチルホスホン酸、ジブロモメチルホスホン酸、2−クロロエチルホスホン酸、1,2−ジクロロエチルホスホン酸、2−ブロモエチルホスホン酸、1,2−ジブロモエチルホスホン酸、3−クロロプロピルホスホン酸、2,3−ジクロロプロピルホスホン酸3−ブロモプロピルホスホン酸、2,3−ジブロモプロピルホスホン酸、2−クロロー1−メチルエチルホスホン酸、1,2−ジクロロー1−メチルエチルホスホン酸、2−ブロモー1−メチルエチルホスホン酸、1,2−ジブロモー1−メチルエチルホスホン酸、4−クロロブチルホスホン酸、3,4−ジクロロブチルホスホン酸、4−ブロモブチルホスホン酸、3,4−ジブロモブチルホスホン酸、3−クロロー1−メチルプロピルホスホン酸、2,3−ジクロロ−1−メチルプロピルホスホン酸、3−ブロモ−1メチルプロピルホスホン酸、2,3−ジブロモ−1−メチルホスホン酸、1−クロロメチルプロピルホスホン酸、1−クロロー1−クロロメチルプロピルホスホン酸、1−ブロモメチルプロピルホスホン酸、1−ブロモ−1−ブロモメチルプロピルホスホン酸、5−クロロペンチルホスホン酸、4,5−ジクロロペンチルホスホン酸、5−ブロモペンチルホスホン酸、4,5−ジブロモペンチルホスホン酸、1−ヒドロキシメチルホスホン酸、2−ヒドロキシエチルホスホン酸、3−ヒドロキシプロピルホスホン酸、4−ヒドロキシブチルホスホン酸、5−ヒドロキシペンチルホスホン酸、1−アミノメチルホスホン酸、2−アミノエチルホスホン酸、3−アミノプロピルホスホン酸、4−アミノブチルホスホン酸、5−アミノペンチルホスホン酸、メチルチオメチルホスホン酸、メチルチオエチルホスホン酸、メチルチオプロピルホスホン酸、メチルチオブチルホスホン酸、エチルチオメチルホスホン酸、エチルチオエチルホスホン酸、エチルチオプロピルホスホン酸、プロピルチオメチルホスホン酸、プロピルチオエチルホスホン酸、ブチルチオメチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、4−クロロフェニルホスホン酸、3,4−ジクロロフェニルホスホン酸、3,5−ジクロロフェニルホスホン酸、4−ブロモフェニルホスホン酸、3,4−ブロモフェニルホスホン酸、3,5−ブロモフェニルホスホン酸、4−メトキシフェニルホスホン酸、3,4−ジメトキシフェニルホスホン酸、1−ナフチルホスホン酸、2−ナフチルホスホン酸、5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチルホスホン酸、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、4−ブロモフェニルメチルホスホン酸、3,4−ジブロモフェニルメチルホスホン酸、3,5−ジブロモフェニルメチルホスホン酸、2−フェニルエチルホスホン酸、2−(4−ブロモフェニル)エチルホスホン酸、2−(3,4−ジブロモフェニル)エチルホスホン酸、2−(3,5−ジブロモフェニル)エチルホスホン酸、3−フェニルプロピルホスホン酸、3−(4−ブロモフェニル)プロピルホスホン酸、3−(3,4−ジブロモフェニル)プロピルホスホン酸、3−(3,5−ジブロモフェニル)プロピルホスホン酸、4−フェニルブチルホスホン酸、4−(4−ブロモフェニル)ブチルホスホン酸、4−(3,4−ジブロモフェニル)ブチルホスホン酸、4−(3,5−ジブロモフェニル)ブチルホスホン酸、2−ピリジルホスホン酸、3−ピリジルホスホン酸、4−ピリジルホスホン酸、1−ピロリジノメチルホスホン酸、1−ピロリジノエチルホスホン酸、1−ピロリジノプロピルホスホン酸、1−ピロリジノブチルホスホン酸、ピロール−1−ホスホン酸、ピロール−2−ホスホン酸、ピロール−3−ホスホン酸、チオフェン−2−ホスホン酸、チオフェン−3−ホスホン酸、ジチアン−2−ホスホン酸、トリチアン−2−ホスホン酸、フラン−2−ホスホン酸、フラン−3−ホスホン酸、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、2−ノルボルニルホスホン酸およびビシクロ[2,2,2]オクチルホスホン酸などが挙げられる。これらは1種類でも、複数種含まれていてもよい。また、これらホスホン酸は、その酸塩化物、エステルおよびアミドなどのホスホン酸誘導体であってもよい。
【0055】
また、構造式(3)においてリン原子状に2つの有機基を有するホスフィン酸残基や、リン酸残基もホスホン酸残基に含む。
【0056】
また、これらホスホン酸残基については、それぞれ対応する3価のリン官能基であるホスホナイト残基に一部置き換えてもよい(X=非共有電子対)。これにより樹脂の耐酸化性を付与することができる。
【0057】
また、2価フェノールを具体的に例示すると、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−メチル−2−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’−ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−secブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビスフェノールフローレン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、4,4’−〔1,4−フェニレン−ビス(2−プロピリデン)〕−ビス(2−メチルフェノール)、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,4’−メチレンビスフェノール、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−ブタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、テルペンジフェノール、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジsecブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチルフェニル)エタン、1,1−ビス(3−ノニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチル−6−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチルエステル、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−5−フルオロフェニル)メタン、2,2−ビス(4ーヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−フルオロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−フルオロフェニル)メタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラtert−ブチル−4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラフルオロ−4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)チオエーテル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)チオエーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)チオエーテル、1,1−ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸メチルエステル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸エチルエステル、イサチンビスフェノール、イサチンビスクレゾール、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−4,4’−ビフェノール、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,4’−メチレンビスフェノール、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ヒドロキシ−3−アリルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)エタン、ビス(2−ヒドロキシ−5−フェニルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、1,2−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチルフェニル)メタン、2,2−ビス(3−スチリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−ニトロフェニル)エタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’,5,5’−テトラtert−ブチル−2,2’−ビフェノール、2,2’−ジアリル−4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5,5−テトラメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,4−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−エチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロペンタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、α、α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン等が挙げられ、これらは1種類でも、複数種併用することもできる。これら2価フェノールは得られるポリマーの性能に応じて用いることができる。
【0058】
これら2価フェノールの中でも光学特性および力学特性的には、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシル)シクロドデカンが特に好適である。
【0059】
また、ジヒドロキシベンゼンを本発明の効果が損なわれない範囲で用いることができる。これらジヒドロキシベンゼンとしては、レゾルシノール、ハイドロキノンおよび1,2−ジヒドロキシベンゼン等が挙げられ、これらは1種類でも、複数種併用することもできる。
【0060】
本発明の樹脂は、下記構造式(4)で表される3価フェノール残基が含まれていることが好ましい。該3価フェノール残基を構成する3価フェノールを具体的に例示すると、次のものが挙げられる。
【0061】
【化5】

【0062】
4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチル)−フェニル)−メチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル)−フェニル)−メチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−メチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルプロピル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチルプロピル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−プロピルプロピル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルブチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルペンチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルヘキシル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルヘプチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−プロピリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−ブチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−ペンチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−ヘキシリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−へプチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジフェニルメチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジナフチルメチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−トリフロロメチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジトリフロロメチルメチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3−メチルビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3,5−ジメチルビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3−(1−メチルエチル)ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3,5−ジ(1−メチルエチル)ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3−シクロヘキシルビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3,5−ジシクロヘキシルビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3−フェニルビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3,5−ジフェニルビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3−ナフチルビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3,5−ジナフチルビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3−フロロビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3,5−ジフロロビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3−ブロモビスフェノール、4,4′−[(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン)))−3,5−ジブロモビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3−クロロビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3,5−ジクロロビスフェノール等が挙げられる。上記の3価フェノール誘導体の中でも、特に4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノールは、その製造が容易であって良好な水溶性を有し、ホスホネートカーボネート共重合体のインタラクションを容易に制御できるからより好ましい。
【0063】
また、本発明のポリマーは必ずしも直鎖状である必要はなく、得られるポリマーの性能に応じて多価フェノールを共重合することができる。このような多価フェノールを具体的に例示すると、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’−〔1−〔4−〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル〕フェニル〕エチリデン〕ビスフェノール、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、4−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,6−ビス〔(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル〕−4−メチルフェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、2−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕−フェノール、4−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−メチルフェニル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、4−〔(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、4−〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチル−エチル〕−1,3−ジヒドロキシベンゼン、4−〔(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,4−ビス〔1−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1−メチル−エチル〕ベンゼン、1,4−ビス〔1−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−1−メチル−エチル〕ベンゼン、2,4−ビス〔(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,3−ジヒドロキシベンゼン、2−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェイル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェイル)メチル〕フェノール、2−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェイル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−エトキシフェノール、2−〔ビス(2,3−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、3−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、2−〔ビス(2−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、3,6−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4,6−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、2−〔ビス(2,3,6−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、2−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、3−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、2,4,6−〔トリス(4−ヒドロキシフェニルメチル)−1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,1,2,2−テトラ(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラ(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,4−〔〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕〕ベンゼン、1,4−ジ〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕ベンゼン、1,4−ジ〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕ベンゼン、4−〔1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル〕アニリン、(2,4−ジヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、2−〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、1,3,3−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ブタン等が挙げられ、これらは1種類でも、複数種併用することもできる。
【0064】
本発明の樹脂には、その特性を損なわない範囲で、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、チオエーテル系、燐系の各種抗酸化剤を添加することができる。
【0065】
また、含窒素塩基性化合物は、電子供与性を有している限りその種類は限定されない。含窒素塩基性化合物の具体的な例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(Me4 NOH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(Et4 NOH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(Bu4 NOH)、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド(フェニル−CH2 (Me)3 NOH)などのアルキル、アリール、アルキルアリール基などを有するアンモニウムヒドロキシド類、トリメチルアミン、トリエチルアミン 、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミンなどの三級アミン類、R2 NH(式中Rはメチル、エチルなどのアルキル、フェニル、トルイルなどのアリール基などである)で示される二級アミン類、RNH2 (式中Rは上記と同じである)で示される一級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール類、テトラメチルアンモニウムアセテート(Me4 NOCOCH3 )などのアンモニウムカルボキシレート類、あるいはテトラメチルアンモニウムボロハイドライド(Me4 NBH4 )、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート(Bu4 NBPh4 )、テトラメチルアンモニウムテトラフェニルボレート(Me4 NBPh4 )などの塩基性塩を挙げることができる。これらの含窒素塩基性化合物は単独で又は2種類以上混合して使用できる。
【0066】
また、アルカリ金属化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二リチウム、ビスフェノールAの二等がナトリウム塩、二カリウム塩、二リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、二カリウム塩、二リチウム塩等が挙げられる。
【0067】
また、アルカリ土類金属化合物としては、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ホウ酸マグネシウム等が挙げられる。これらのアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属は単独で又は2種類以上混合して使用できる。
【0068】
また、本発明の樹脂は、用いるモノマーの溶解性に応じて、有機溶媒を用いることができる。溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、トルエン、キシレン、γ−ブチロラクトン、ベンジルアルコール、イソホロン、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼン等が挙げられる。
【0069】
本発明樹脂を用いて、例えば、レンズなどの成形体を得る方法については、公知の方法が採用することができ、特に限定されないが、例えば、射出成形法、プレス成形法、圧縮成形法、トランスファ成成形、積層成形法および押し出し成形法などが挙げられる。
【0070】
また、本発明で得られる樹脂をフィルム状に成形する方法としては、溶液製膜法や溶融押し出し製膜法などが挙げられ、特に溶液製膜が好適に採用される。溶液製膜法においては前記有機溶媒を適宜用いることができるが、好ましくはハロゲン含有溶媒であり、特に好ましくは塩化メチレンである。
【実施例】
【0071】
本発明の具体的実施態様を以下に実施例をもって述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。樹脂の評価は、以下の方法により行った。
【0072】
〔分子量測定〕
樹脂の0.2重量%クロロホルム溶液を、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)〔東ソー(株)製、GPC8020〕で測定、標準ポリスチレンで検量した数平均分子量をMn1とした。
【0073】
〔熱分解度の評価〕
樹脂1gを試験管に封入し、アルゴン雰囲気下(50ml/min)、300℃のGLASS TUBE OVEN(SIBATA GTO−350RD)で30分加熱した後の数平均分子量を上記方法で測定したものをMn2とし、上記加熱前の数平均分子量Mn1とMn2との差をMn1で除した値を求めた。当該当値が0.06未満のものを優、0.06以上0.08未満のものを良、0.08以上0.1未満のものを可、0.1以上のものを不良とした。
【0074】
〔力学特性〕
樹脂を幅10mm、長さ25mm、厚さ3mmの板状に加熱プレス成形し、オリエンテック(株)社製テンシロン(型式RTM−100)を用いて、支点間距離22mm、曲げ速度1.5mm/分にて曲げ試験を行った。評価パラメーターは、脆さの指標である靭性値(曲げ応力×破断変位)とした。
【0075】
〔衝撃強度の測定〕
射出成形した成形品を切削加工して12.7×63.5×3.2mm(ISO180/4A)の試験片を調整し、室温23℃、湿度50%の状態で50時間放置後にISO180の方法に従ってアイゾット衝撃強度を測定した。
【0076】
〔耐クラック性〕
射出成形した13mm×128mm、厚さ1.5mmの短冊状試験片の両端を試験用治具によって弦の長さが110mmとなるように弓状にたわませた後、その試験片の中央表面にサラダ油(豊年キャノーラ油)を塗布し、23℃において試験片が破断するまでの時間を測定する定歪み法により評価した。
【0077】
〔カーボネートオリゴマー重合度の測定〕
重水素化クロロホルムにて核磁気共鳴装置(日本電子株式会社:EX270型)を用い、末端を示すスペクトルとポリマーユニットを示すスペクトルの積分比からその平均値を算出した。また、鎖状オリゴマーの割合については、末端を示す核磁気共鳴スペクトル(NMR)ピークの強度と、すべてが鎖状オリゴマーと仮定した場合に推定されるピーク強度の比とした。
【0078】
〔ポリマー末端分析〕
重水素化クロロホルムにて核磁気共鳴装置(日本電子株式会社:EX270型)を用い、構造式(1)の末端を示すスペクトルとポリマーユニットを示すスペクトルの積分比からポリマー末端全体に対する構造式(1)の末端量を算出した。
【0079】
〔光学特性の測定〕
上記樹脂成型品をサンドペーパー、バフにて互いに直行する2面を鏡面仕上げになるように研磨し、屈折計(カルニュー光学工業(株)製:KPR−2)にて評価を行い、d線(波長:587.6nm)屈折率(nd)、式(4)より求められるアッベ数(νd)を測定した。
【0080】
〔リタデーションの測定〕
本発明の樹脂を製膜ならびに一軸延伸したもののリタデーションは大塚電子製RETS-1100(セルギャップ測定装置)を用いて測定した。
【0081】
〔ガラス転移温度(Tg)の測定〕
セイコー電子工業製DSC(SSC5200)システムを使用した。Tgは10℃/minで250℃まで昇温しそのまま3分ホールドし、次いで−50℃/minで0℃まで冷却し3分ホールドした後、再び10℃/minで昇温した際に観察されるTgのピークトップから算出した値である。なお、測定には、真空下、80℃で8時間乾燥したサンプルを用いて行った。
【0082】
[実施例1]
〔カーボネートオリゴマー原料の調製:溶融法〕
ガラス製ナスフラスコ(1L)に1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(0.67mol:180g)と炭酸ジフェニル(120g)、ナトリウムフェノラート(1g)を秤りとった。窒素パージ後、220℃まで加熱し、内容物の融解させ、220℃のまま1時間かけて減圧し約60mmHgとした。さらに約0.4mmHgまで減圧し、そのまま2時間加熱した。冷却後、窒素パージしオリゴマーをDPC転化率で93%で得た。得られたカーボネートオリゴマーはNMRにより、平均でビスフェノール/カーボネート=4/3のオリゴマーであった。
【0083】
〔ポリマー重合〕
窒素雰囲気下、塩化メチレン(30ml)中に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(16.9g:63mmol)、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール(0.04g:0.09mmol)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンカーボネートオリゴマー(4量体)(9g)およびトリエチルアミン(20.1ml:144mmol)を混合し、20℃で攪拌した。この溶液に氷冷下フェニルチオホスホン酸ジクロライド(9.6ml:63.7mmol)の塩化メチレン20ml溶液を30分間かけて滴下し20℃で3時間攪拌し、この溶液にフェニルチオホスホン酸ジクロライド(1.1ml:7.1mmol)の塩化メチレン4ml溶液を10分間かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌した。その後反応溶液に塩化メチレン50mlを注入し、0.1NHCl水溶液および蒸留水を注ぎ、水溶液層のpHを6.5付近にして有機層を脱塩洗浄し分離した。その後分離した有機層を0.5μmのメンブレンフィルターで濾過し、エタノール2000mlに投入して再沈しポリマーを濾取した後、100℃で20時間乾燥して目的の樹脂粉末を合計収率90%で得た。得られた樹脂粉末の分子量、熱分解度、ポリマー末端、力学特性、衝撃強度、耐クラック性、光学特性、ガラス転移温度を前記のごとく評価した。
【0084】
[実施例2]
窒素雰囲気下、塩化メチレン(30ml)中に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(16.9g:63mmol)、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール(0.04g:0.09mmol)およびトリエチルアミン(18.4ml:133mmol)を混合し、20℃で攪拌した。この溶液に氷冷下ノルボルニルホスホン酸ジクロライド(1ml:6.3mmol)の塩化メチレン2ml溶液を5分間かけて滴下し20℃で3時間攪拌し、この溶液に氷浴下で濃度0.581mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(23.57ml)を20分かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌した。続いてこの溶液にフェニルチオホスホン酸ジクロライド(2.4ml:15.8mmol)の塩化メチレン4ml溶液を10分間かけて滴下し20℃で1時間攪拌し、滴下終了後20℃で60分間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理し、ポリマーを収率92%で得、成形して評価した。
【0085】
[実施例3]
窒素雰囲気下、塩化メチレン(30ml)中に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(16.9g:63mmol)、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール(0.04g:0.09mmol)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンカーボネートオリゴマー(4量体)(9g)およびトリエチルアミン(20.1ml:144mmol)を混合し、20℃で攪拌した。この溶液に氷冷下フェニルホスホン酸ジクロライド(8.9ml:63.7mmol)の塩化メチレン20ml溶液を30分間かけて滴下し20℃で3時間攪拌し、この溶液にフェニルチオホスホン酸ジクロライド(1.1ml:7.1mmol)の塩化メチレン4ml溶液を10分間かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理し、ポリマーを収率92%で得、成形して評価した。
【0086】
[実施例4]
窒素雰囲気下、塩化メチレン(30ml)中に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(16.9g:63mmol)、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール(0.04g:0.09mmol)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンカーボネートオリゴマー(4量体)(9g)およびトリエチルアミン(20.1ml:144mmol)を混合し、20℃で攪拌した。この溶液に氷冷下ノルボルニルホスホン酸ジクロライド(10.1ml:63.7mmol)の塩化メチレン20ml溶液を30分間かけて滴下し20℃で3時間攪拌し、この溶液にフェニルチオホスホン酸ジクロライド(1.1ml:7.1mmol)の塩化メチレン4ml溶液を10分間かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理し、ポリマーを収率92%で得、成形して評価した
[実施例5]
フェニルチオホスホン酸ジクロライドの代わりに、ノルボルニルチオホスホン酸ジクロライドを用いた以外は、実施例1と同様に重合することにより、ポリマーを合計収率94%で得た。得られた樹脂を実施例1と同様に評価した。
【0087】
[実施例6]
フェニルチオホスホン酸ジクロライドの代わりに、ノルボルニルチオホスホン酸ジクロライドを用いた以外は、実施例2と同様に重合することにより、ポリマーを合計収率94%で得た。得られた樹脂を実施例1と同様に評価した。
【0088】
[実施例7]
実施例1で得られた樹脂を、さらに270℃に加熱溶融押し出しによりペレット化し、このペレットから、溶液キャスティング法(塩化メチレン溶液)によって、幅200mm、厚さ25μmのフィルムを作成した。該フィルムを延伸温度165℃、延伸速度100mm/minにて1.3倍に延伸した。延伸後のフィルム厚みは20μmであった。
【0089】
上記条件によって得られたフィルムは、波長550nmにおけるリタデーションが143.6nm、波長450nmのそれは157.3nm、波長650nmのそれは135.7nmを示した。
【0090】
[比較例1]
窒素雰囲気下、塩化メチレン(30ml)中に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(16.9g:63mmol)、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール(0.04g:0.09mmol)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンカーボネートオリゴマー(4量体)(9g)およびトリエチルアミン(20.1ml:144mmol)を混合し、20℃で攪拌した。この溶液に氷冷下フェニルホスホン酸ジクロライド(8.9ml:63.7mmol)の塩化メチレン20ml溶液を30分間かけて滴下し20℃で3時間攪拌し、この溶液にフェニルホスホン酸ジクロライド(1.1ml:7.1mmol)の塩化メチレン4ml溶液を10分間かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理することにより、ポリマーを収率93%で得た。得られた樹脂を実施例1と同様に評価した。
【0091】
[比較例2]
窒素雰囲気下、塩化メチレン(30ml)中に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(16.9g:63mmol)、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール(0.04g:0.09mmol)およびトリエチルアミン(18.4ml:133mmol)を混合し、20℃で攪拌した。この溶液に氷冷下ノルボルニルホスホン酸ジクロライド(1ml:6.3mmol)の塩化メチレン2ml溶液を5分間かけて滴下し20℃で3時間攪拌し、この溶液に氷浴下で濃度0.581mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(23.57ml)を20分かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌した。続いてこの溶液にフェニルホスホン酸ジクロライド(2.2ml:15.8mmol)の塩化メチレン4ml溶液を10分間かけて滴下し20℃で1時間攪拌し、滴下終了後20℃で60分間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理し、ポリマーを収率92%で得、成形して評価した。
【0092】
[比較例3]
窒素雰囲気下、塩化メチレン(30ml)中に1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(16.9g:63mmol)、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール(0.04g:0.09mmol)およびトリエチルアミン(18.4ml:133mmol)を混合し、20℃で攪拌した。この溶液に氷冷下ノルボルニルホスホン酸ジクロライド(1ml:6.3mmol)の塩化メチレン2ml溶液を5分間かけて滴下し20℃で3時間攪拌し、この溶液にフェニルホスホン酸ジクロライド(2.2ml:15.8mmol)の塩化メチレン4ml溶液を10分間かけて滴下し20℃で1時間攪拌し、続いてこの溶液に氷浴下で濃度0.581mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(23.57ml)を20分かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理することにより、ポリマーを収率90%で得た。得られた樹脂を実施例1と同様に評価した。
【0093】
[比較例4]
比較例1で得られた樹脂から、溶液キャスティング法(塩化メチレン溶液)によって、幅200mm、厚さ25μmのフィルムを作成した。該フィルムを延伸温度150℃、延伸速度180mm/minにて1.3倍に延伸した。延伸後のフィルム厚みは20μmであった。
【0094】
上記条件によって得られたフィルムは、波長550nmにおけるリタデーションが47.6nm、波長450nmのそれは51.9nm、波長650nmのそれは44.9nmを示した。
【0095】
実施例1〜6と比較例1〜3で作成した樹脂の評価結果を表1に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
比較例1から従来の方法で製造した樹脂は、熱分解度が大きく、衝撃強度、耐クラック性が不十分であることがわかる。
【0098】
一方、実施例1〜6で得られた本発明の樹脂は、熱分解度が小さく、衝撃強度、耐クラック性に優れ、成型性にも優れていることがわかる。また、位相差フィルム用途としては、本発明の樹脂が高い力学特性を維持しているが故に、一軸延伸時に強く配向し、より大きな複屈折率が生じ、位相差フィルムの薄膜化に有効であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
高い耐熱性、靭性、耐クラック性および耐衝撃性を有し、さらに無色透明で高屈折、低分散など優れた光学特性も併せ持つ樹脂は、光学用樹脂またはフィルムとして利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2価フェノール残基および/または2価アルコール残基、ならびにカーボネート残基および/または2価カルボン酸残基および/または2価ヘテロ酸残基から構成されており、少なくとも1部のポリマー末端が下記構造式(1)であることを特徴とする樹脂。
【化1】

[構造式(1)において、R2は有機基から選ばれ、構造式(1)はさらに置換されても良い。]
【請求項2】
下記構造式(2)に示されるチオホスホン酸残基を含み、該チオホスホン酸残基と2価フェノール残基および2価アルコール残基のモル分率が式(I)を満足する請求項1記載の樹脂。
【化2】

[構造式(2)において、Rは有機基を表し、構造式(2)はさらに置換されても良い。]
1≧(a)/(b)≧0.0005 (I)
[式(I)中、(a)はチオホスホン酸残基のモル数、(b)は2価フェノール残基および2価アルコール残基のモル数を示す。]
【請求項3】
カーボネート残基および/または、下記構造式(3)で示されるホスホン酸残基を含み、全ホスホン酸残基のモル数とカーボネート残基の合計モル数が式(II)を満足する請求項1または2記載の樹脂。
【化3】

[構造式(3)において、Rは有機基、Xは酸素、セレンあるいは非共有電子対を表す。構造式(3)はさらに置換されても良い。]
1≧(c)/{(c)+(d)}≧0.01 (II)
[式(II)中、(c)は全ホスホン酸残基のモル数、(d)はカーボネート残基のモル数を示す。]
【請求項4】
ホスホナイト残基が含まれている請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂。
【請求項5】
下記構造式(4)で示される3価フェノール残基が含まれている請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂。
【化4】

[構造式(4)において、R51、R52、R53は各々独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素、炭素数1〜20の芳香族炭化水素、ハロゲン原子、ニトロ基からなる群から選ばれ、r、s、t、は各々独立に0〜4の整数。Zはフェニル基、アルキリジン基、分岐鎖含有アルキリジン基、シクロアルキリジン基、分岐鎖含有シクロアルキリジン基群、フェニルアルキルジン基、脂肪族ホスフィンオキシド基、芳香族ホスフィンオキシド基、アルキルシラン基、フルオレン基から選ばれる。構造式(4)はさらに置換されても良い。]
【請求項6】
構造式(4)で表される3価のフェノール残基が、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノールである請求項5に記載の樹脂。
【請求項7】
数平均分子量が10000以上であること特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂。
【請求項8】
溶媒中塩基存在下で、2価フェノールおよび/または2価アルコール、ならびにカーボネート誘導体および/または2価カルボン酸誘導体および/または2価ヘテロ酸誘導体を、2価フェノールおよび/または2価アルコールの反応率が0%以上99.95%以下になるまで作用せしめた後、チオホスホン酸誘導体でポリマーの主鎖延長をおこなうことを特徴とする請求項1記載の樹脂の製造方法。
【請求項9】
溶媒中で、2価フェノールのカーボネート多量体若しくは2価フェノール類のカーボネートオリゴマーを塩基存在下に2価フェノールモノマーと反応せしめる工程、その後、チオホスホン酸誘導体を反応せしめる工程を含むことを特徴とする請求項8記載の樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記チオホスホン酸誘導体の反応時の少なくとも一部では、溶液中における2価フェノール残基の濃度として1.0mol/L以上にして反応せしめることを特徴とする請求項9記載の樹脂の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜7いずれかに記載の樹脂を含有してなる成型体。

【公開番号】特開2008−56717(P2008−56717A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231625(P2006−231625)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】