説明

樹脂キャップ

【課題】壜離れがよく、キャップ全体を容易に容器口部から取り外して開封することが可能な樹脂キャップを提供する。
【解決手段】頂板部1と、スカート壁2とから成り、スカート壁2の外面には、外方に突出した鍔状の開封用タブ9が形成されており、頂板部1の内面には、スカート壁2とは間隔を置いて下方に延びているインナーリング3が形成され、インナーリング3とスカート壁との間の空間に容器口部50が嵌め込まれて固定される樹脂キャップにおいて、インナーリング3は、上面乃至底面からみて、開封用タブ9の反対側部分の領域に、開封用タブ9の中心部に対応する部分から180度離れた開封支点部Bを中心として、内面側が肉抜きされた肉抜き部15,30が対称的に形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛乳ビン等の比較的広口の注出口を有する容器に適用される樹脂キャップに関するものであり、特に、注出口に嵌め込まれ、スカート壁外面に形成された鍔状の開封用タブを持ち上げることにより、容器口部から取り除かれて開封が行われるタイプの樹脂キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
牛乳ビン等の比較的広口の注出口を有する容器に適用される樹脂キャップとして、頂板部と、頂板部周縁から下方に垂下したスカート壁とから成り、頂板部の内面には、スカート壁とは間隔を置いて下方に延びているインナーリングが形成され、該インナーリングとスカート壁との間の空間に容器口部が嵌め込まれて容器口部に固定されるものがある。このタイプの樹脂キャップは、通常のネジキャップ等と比較してキャップハイト(スカート壁の高さに相当)が小さく、容器口部に嵌め込まれたキャップをしっかりと係止するために、スカート壁の内面下端には、周状の係止用アンダーカットが設けられている。即ち、このアンダーカットが容器口部に形成されている顎部と係合することにより、該樹脂キャップは、容器口部にしっかりと固定される。また、この樹脂キャップのスカート壁外面には、鍔状の開封用タブが設けられており、この開封用タブを持ち上げることにより、容器口部に固定されたキャップの取り外し、即ち開封が行われるようになっている。
【0003】
上記のような樹脂キャップについては、種々提案されており、例えば、特許文献1には、スカート壁の開封用タブの両端に位置する部分にスコアを設けた樹脂キャップが提案されている。かかる樹脂キャップでは、開封用タブの持ち上げによる開封を容易に行うことができるようになっている。
【特許文献1】実公昭47−13109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、公知の樹脂キャップでは、開封用タブの持ち上げを容易に行い得るような工夫はなされているものの、所謂壜離れが悪いという問題がある。即ち、上述した樹脂キャップでは、容器口部をキャップのスカート壁とインナーリングとの間にがっちりと嵌め込み、且つスカート壁の下端内面に形成されているアンダーカットにより容器口部をがっちりと保持するようになっており、これにより、キャップの容器口部からの脱落を有効に防止し、且つ良好な密封性が確保されるようになっている。従って、この樹脂キャップを開封する場合、開封用タブを上方に持ち上げると、該キャップは、開封用タブとは反対側の部分を支点として、開封用タブ側から順次上方に持ち上げられて容器口部から離脱していくが、開封用タブの反対側(開封に際しての支点部側)において、容器口部がスカート壁とインナーリングとの間にがっちり嵌め込まれているため、この部分が容器口部からなかなか抜けないという問題、即ち、壜離れが悪いという問題を生じる。キャップの壜離れが悪いと、開封用タブの反対側に位置する支点部側を容器口部から取り外す最後の段階で大きな力を要するため、キャップ全体が完全に容器口部から取り外されたとき、この大きな力によって、キャップがはじけて飛んでしまうなどの不都合を生じることもある。
【0005】
また、上記のような樹脂キャップの材質としては、良好な密封性を確保するため、可撓性の高い低密度ポリエチレンが広く使用されているが、最近では、材料コストの低減を図るためにキャップハイト(スカート壁の高さ)が低く、薄肉のものが望まれている。しかし、低密度ポリエチレンでこのような要求を満足させようとすると、キャップの変形による密封不良或いはキャップの容器口部からの脱落などの問題を引き起こすこととなる。また、剛性の高い高密度ポリエチレン等を使用するとその剛性の高さから容器口部とキャップとの嵌合力がかなり高くなり、しかもキャップが変形し難いため、上記のような壜離れの問題が一層顕著となる。
【0006】
従って、本発明の目的は、壜離れがよく、キャップ全体を容易に容器口部から取り外して開封することが可能な樹脂キャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、頂板部と、頂板部周縁から下方に垂下したスカート壁とから成り、該スカート壁の外面には、外方に突出した鍔状の開封用タブが形成されており、該頂板部の内面には、前記スカート壁とは間隔を置いて下方に延びているインナーリングが形成され、該インナーリングとスカート壁との間の空間に容器口部が嵌め込まれて容器口部に固定される樹脂キャップにおいて、
前記インナーリングには、上面乃至底面からみて、前記開封用タブの反対側部分の領域に、該開封用タブの中心部に対応する部分から180度離れた開封支点部を中心として、内面側が肉抜きされた肉抜き部が対称的に形成されていることを特徴とする樹脂キャップが提供される。
【0008】
本発明の樹脂キャップにおいては、
(1)前記インナーリングには、前記開封支点部を中心とし、その両側に対称的に一対の前記肉抜き部が小幅に形成されていること、
(2)前記一対の肉抜き部は、前記開封支点部に対して、キャップ中心を基準とする角度θ(絶対値)が10乃至40度の領域に形成されていること、
(3)前記インナーリングは、前記開封支点部に対して、キャップ中心を基準とする角度θ(絶対値)以下の領域全体が前記肉抜き部となっており、該角度θが10乃至40度の範囲に設定されていること、
(4)前記スカート壁には、前記開封支点部に対応する位置を中心として、その両側に、下端から上方に延びている一対のスコアが形成されていること、
(5)前記スコアは、前記キャップの中心位置と前記肉抜き部とを結ぶ直線の延長線上、或いは前記開封支点部を基準として該延長線よりもやや外側に位置する部分に形成されていること、
(6)前記樹脂キャップは、密度が0.95g/cm以上の高密度ポリエチレンにより形成されていること、
が好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂キャップは、インナーリングの周方向の一部分が、その内面が肉抜きされた肉抜き部(薄肉部)となっていることが重要な特徴である。即ち、この肉抜き部は、開封用タブの中心部に対応する部分とは反対側に位置している開封支点部を中心として対称的に形成されているものであり、開封支点部を中心として対称的に形成されているため、開封支点部においてインナーリングが変形し易くなっている。従って、開封用タブを上方に持ち上げてキャップの開封を行うとき、該キャップの開封用タブ側では、開封用タブの持ち上げによって該キャップが容器口部側から離脱すると同時に、その反対側の開封支点部側では、容器口部に保持されたままの状態であるが、この部分でインナーリングが変形し易くなっているため、開封支点部側での容器口部をインナーリングによる締め付けから容易に開放することができる可能となり、キャップの容器口部からの離脱を容易に行うことができ、壜離れ性が向上することとなる。
【0010】
上記のようなインナーリングの内面の肉抜きによって形成される肉抜き部は、開封支点部から一定の角度離れ且つ開封支点部を中心として互いに対称となるように、一対の小幅の線状肉抜き部として形成することもできるし、また、開封支点部を中心とする一定の角度の範囲内の内面全体を肉抜きして面状肉抜き部として形成することもできる。何れの場合にも、開封支点部でのインナーリングは変形し易くなるため、開封支点部側においてもキャップの容器口部からの離脱を容易に行うことができ、壜離れ性が向上する。
【0011】
本発明は、材料コストの低減を図るためにハイトが低く、薄肉なキャップに好適な比較的剛性の高い高密度ポリエチレン製のキャップに適用した場合においても優れた壜離れ性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を、以下、添付図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。
図1は、一対の線状肉抜き部をインナーリングに形成した本発明の樹脂キャップの一例を示す側断面図であり、
図2は、図1のキャップの底面図であり、
図3は、図1のキャップの内面を示す斜視図であり、
図4は、図1のキャップを容器口部から取り外すときのプロセスを説明するための図であり、
図5は、面状肉抜き部をインナーリングに形成した本発明の樹脂キャップの一例を示す側断面図であり、
図6は、図5のキャップの底面図であり、
図7は、図5のキャップの内面を示す斜視図であり、
図8は、図5のキャップを容器口部から取り外すときのプロセスを説明するための図である。
【0013】
図1乃至図4において、本発明の樹脂キャップは、大まかに言って、頂板部1とスカート壁2とから成る。頂板部1の内面には、スカート壁2とは間隔をおいて下方に延びているインナーリング3が設けられている。
【0014】
スカート壁2は、頂板部1の周縁から垂下しており、その下端の内壁面には、複数の係止用アンダーカット5が一定間隔で設けられている。即ち、図4に示されている容器の形態から理解されるように、スカート壁2とインナーリング3との間の空間に容器口部50を嵌め込むことにより、このキャップ4の容器口部50への固定が行われるものであり、上記の係止用アンダーカット5が容器口部50の外面に形成されている顎部51と係合することにより、容器口部50にキャップ4がしっかりと固定される。
【0015】
また、スカート壁2の下端の外壁面には、鍔状の開封用タブ9が設けられている。この開封用タブ9を指で引っ掛けて上方に持ち上げることにより、容器口部に装着されたキャップ4を取り除いて開封を行うものである。この際、指が引っ掛かり易くするため開封用タブ9の下面周縁部には突部9aが設けられている。更に、開封用タブ9の強度を上げるために開封用タブ9の上面とスカート壁2とを連結する三角形状のリブ9bが複数個(実施例では4個)設けられている。更に、開封用タブ9が形成されていないスカート壁2の外面の下端部には、外方に僅かに突出した外方フランジ7が形成されている。この外方フランジ7は、キャップ4の強度を高め、キャップ4による容器口部50の保持力を高めると共に、キャップ4成形後の離型に際してスカート壁2を保持するのに好適となる。また、スカート壁2の外面には、開封用タブ9の両端部において、外面の肉抜きにより、下端から上方に延びている線状の薄肉部(肉抜き部)10,10が形成されている。このような薄肉部10の形成により、開封用タブ9の両端部において、スカート壁2による容器口部50の締め付け力が低減され、開封用タブ9を上方に引張り上げた際、この部分が容易に容器口部50から離脱し、キャップ4の開封操作を容易に進行させることができる。
【0016】
インナーリング3の外面は、十分な密封性を確保するために、若干外方に膨出しており、最も外方に膨出して最厚肉となっている部分がシールポイントPとなって容器口部50の内面に強固に密着するようになっている(図1参照)。また、インナーリング3の内面は、若干スカート壁2側に傾斜して形成され、成形時の型抜きを容易にしている。さらに、図1から理解されるように、インナーリング3の付け根部分の近傍は、薄肉部3aが形成されており、この薄肉部3aを支点として外方或いは内方に容易に撓むようになっている。即ち、インナーリング3を容易に撓むようにすることにより、容器口部50をスカート壁2とインナーリング3との間の空間に容易に嵌め込み(打栓)、且つ容器口部50からのキャップ4の取り外し(開封)を容易に行ない得るようになっている。尚、上記の態様では、薄肉部3aは、インナーリング3の付け根部(頂板部1とインナーリング3との接合部)の近傍に形成されているが、インナーリング3の付け根部自体を薄肉として、インナーリング3の変形の支点とすることも可能である。
【0017】
頂板部1の内面には、インナーリング3とスカート壁2との間の位置に、環状の小突起13が形成されている。即ち、容器口部5をインナーリング3とスカート壁2との間の空間に嵌め込んだ時、インナーリング3の外面のシールポイントPが容器口部50の内面に密着すると同時に、上記の環状の小突起13が容器口部50の上端面に密着するため、密封性のさらなる向上がもたらされることとなる。
【0018】
本発明では、上述した樹脂キャップ4のインナーリング3の内面側には、上面乃至底面からみたときの開封用タブ9の中心部に対応する部分Aから180度離れた開封支点部Bを中心として、互いに対称となるように、一対の小幅の線状薄肉部(肉抜き部)15,15が肉抜きによって形成されている。即ち、このような線状薄肉部15,15を形成したとき、このキャップ4の開封用タブ9を持ち上げて開封操作を行うと、図4に示されているように、開封支点部B側において、インナーリング3は、速やかに内方に変形し、容器口部50の内面とシールポイントPとの密着が開放され、容器口部50の開封支点部B側もインナーリング3による締め付けから開放され、結果として、容器口部50からのキャップ4の離脱を容易に行うことができ、優れた壜離れ性を確保することができるのである。
尚、この線状薄肉部15,15は、当然のことながら、インナーリング3の内面側の肉抜きによって形成されるものでなければならない、外面側からの肉抜きによって線状薄肉部を形成すると、インナーリング3と容器口部50との密着性が損なわれてしまい、シール不良を生じてしまうからである。
【0019】
本発明において、上記のような肉抜きによって形成される一対の線状肉抜き部(薄肉部)15,15は、図2の底面図に示されているように、開封用タブ9の反対側部分の領域、即ち、キャップ4中心Oを基準として、該肉抜き部15の開封支点部Bに対する角度θ(絶対値)が90度以下となるように形成されるものであるが、特に、この角度θ(絶対値)が、10乃至40度の範囲となるように形成されていることが好ましい。この角度θが、あまり大きいと(線状肉抜き部15と開封支点部Bとの間隔が大きすぎる場合)、この部分でインナーリング3が内面側上方に変形したとしても、開封支点部Bでのインナーリング3の変形が小さくなってしまい、壜離れ性が低下してしまうおそれがある。また、この角度θがあまり小さいと(線状肉抜き部15と開封支点部Bとの間隔が小さすぎる場合)、インナーリング3が内面側上方に変形しにくくなり、やはり壜離れ性が低下するおそれがある。
【0020】
また、本発明においては、図2及び図3に示されているように、スカート壁2の開封用タブ9の反対側部分の領域には、外面側からの肉抜きによって、開封支点部Bに対応する位置を中心として、その両側の対称位置に、下端から上方に延びている一対のスコア(線状薄肉部)17,17が形成されていることが好ましい。このようなスコア17,17の形成により、開封用タブ9を上方に引っ張り上げたとき、スカート壁2が開封用タブ9の反対側部分の領域にあるスコア17,17の部分を支点として変形し或いはスコア17,17での引き裂きが生じるため、インナーリング3の線状肉抜き部15,15の部分での変形が促進され、結果として、開封支点部Bでのインナーリング3の変形を大きくし、開封支点部Bでのインナーリング3による締め付けをスムーズに開放し、壜離れ性を高めることができる。
【0021】
尚、上記のような一対のスコア17,17は、キャップ4の中心Oと線状肉抜き部15とを結ぶ直線Lの延長線上、或いは開封支点部Bを基準として該延長線Lよりもやや外側に位置する部分に形成されていることが好ましい。このような位置に一対のスコア17,17を設けることにより、スコア17,17を支点としてのスカート壁2の変形或いは引き裂きにより、インナーリング3の線状肉抜き部15,15での変形が効果的に促進され、開封支点部Bでのインナーリング3による締め付けをよりスムーズに開放し、壜離れ性をさらに高めることができる。
【0022】
さらに、本発明においては、開封用タブ9を引っ張り上げたときのスカート壁2のスコア17,17を支点としての変形乃至引き裂きを促進させるため、上記スコア17,17よりも開封用タブ9側に近い部分において、スカート壁2の外面側からの肉抜きにより、スカート壁2の下端から上方に延びている一対のスコア(以下、開封用タブ側スコアと呼ぶ)19,19を設けることが好適である。例えば、図2の例では、スカート壁2の開封用タブ9側と開封支点部Bに対応する部分との境界領域(キャップ4の中心Oを基準として、開封支点部Bに対応する部分からの角度が90度の位置)に開封タブ側スコア19,19が設けられている。即ち、このような開封タブ側スコア19,19は、先のスコア17,17(以下、開封支点部側スコアと呼ぶことがある)よりも開封用タブ9側に形成されているため、開封用タブ9を引っ張り上げたとき、始めに開封用タブ側スコア19,19を支点としてスカート壁2が上方に変形し、次いで開封支点部側スコア17,17を支点としてスカート壁2が変形し或いは引き裂かれるため、開封支点部側スコア17,17を支点としてのスカート壁2の変形或いは引き裂きを容易に行うことができ、一連の動作で開封操作をスムーズに行うことが可能となる。
【0023】
また、本発明においては、スカート壁2の外面には、上下方向に延びる線状の突条21を設けることができる。この線状の突条21により、キャップの剛性を高めることができ、容器口部への保持力が確保され、密封性の向上が図られるものである。更に、スカート壁2の下端の外方フランジ7よりも上側において、キャップ4軸方向に沿って線状に延びているものであり、図3から理解されるように、スカート壁2の外面に適当な間隔で均等に分散して設けられている。
【0024】
尚、スカート壁2に形成されている開封支点部側スコア17,17と開封用タブ側スコア19,19は、何れもスカート壁2の外面側からの肉抜きにより薄肉化される。これは、両スコアをスカート壁2の下端から外方に延びる外方フランジ7にまで形成するため外面側に形成した方が成形性の点で好ましい。
【0025】
上述した図1〜4のキャップ4は、インナーリング3の開封支点部B側の領域に一対の線状薄肉部(肉抜き部)17,17を設けることにより、キャップ4の壜離れ性を高めたものであるのに対し、図5〜8のキャップ40では、インナーリング3の開封用タブ9とは反対側の領域に、キャップ40の中心Oを基準として、開封支点部Bに対する角度θの部分全体が内面側からの肉抜きによって面状に薄肉化された肉抜き部(面状肉抜き部)30となっている。即ち、図5〜8のキャップ40は、線状肉抜き部15,15の代わりに面状肉抜き部30が形成されている点を除けば、図1〜図4のキャップ4と実施的に同じ構造を有している。従って、面状薄肉部30を除く部分についての説明は省略する。
【0026】
即ち、図5〜8のキャップ40のインナーリング3においては、特に図6及び図7に示されているように、キャップ40中心Oを基準として、該肉抜き部30の開封支点部Bに対する角度θ(絶対値)以内の領域全体が、内面側での肉抜きによって薄肉化された面状肉抜き部30となっているため、このキャップ40の開封用タブ9を持ち上げて開封操作を行うと、図8に示されているように、開封支点部B側において、インナーリング3は、速やかに内方に変形し、容器口部50の内面とシールポイントPとの密着が開放され、容器口部50の開封支点部B側もインナーリング3による締め付けから開放され、図1〜4のキャップ4と同様、容器口部50からのキャップ40の離脱を容易に行うことができ、優れた壜離れ性を確保することができるのである。
【0027】
上記のキャップ40において、面状肉抜き部30となる領域を示す角度θ(絶対値)は、10乃至40度の範囲となるように形成されていることが好ましい。この角度θが大きすぎると、インナーリング3による容器口部50に対する締め付け力が大きく低下してしまい、密封性が損なわれてしまうおそれがあり、また、この角度θがあまり小さいと、開封支点部Bにおいて、インナーリング3が内面側上方に変形しにくくなり、壜離れ性が低下するおそれがある。
【0028】
さらに、このような面状薄肉部30を設けた場合においても、前述したキャップ4と同様、スカート壁2の外面に、開封支点部側スコア17,17と開封用タブ側スコア19,19を設けることにより、開封操作を容易に且つスムーズに行い、壜離れ性を高めることができる。この場合、開封支点部側スコア17,17は、面状薄肉部30と共同して開封支点部B側でのインナーリング3とスカート壁2による容器口部の締め付け力を低減させるため、面状薄肉部30の両端とキャップ40中心Oとを結ぶ直線の延長線L上或いは該延長線Lよりも若干外側に位置せしめることが好適である。
【0029】
上述した本発明において、線状肉抜き部15及び面状肉抜き部30は、何れもインナーリング3の下端から上方に延びており、少なくともシールポイントPに対応する部分よりも上方にまで延びていることが必要であり、特に、インナーリング3の変形性を高めるという観点から、図1或いは図5に示されているように、インナーリング3の下端から上端の付け根部までの全体が肉抜きされて薄肉化されていることが好適である。
【0030】
上述した本発明の樹脂キャップ4、40は、牛乳瓶等の比較的広口の容器に適用されるものであり、そのスカート壁2の長さは比較的短く、これに伴って、インナーリング3のシールポイントPも比較的浅い位置、例えばインナーリング3の付け根からシールポイントPまでの長さdが、一般的には、2.5ないし3.5mm程度である。
【0031】
また、この樹脂キャップの材質は、特に制限されず、各種のプラスチックを用いての射出成形、圧縮成形等の一体成形により該樹脂キャップは形成されていてよいが、一般的には、短いハイトで良好な密封性を確保するという観点からポリエチレンから形成されているのがよく、最も好適には、密度が0.950g/cm以上の高密度ポリエチレンにより形成される。即ち、高密度ポリエチレン製のキャップは、適度な柔軟性を有し、容器口部50に対して良好な密着性を示すと同時に、低密度ポリエチレンに比して剛性が高いため、インナーリング3とスカート壁2との間に嵌め込まれた容器口部50をがっちりと保持することができ、キャップ4を薄肉にすることが可能となる。従って、キャップ4を薄肉にしてもインナーリング3の変形等による容器口部50からのキャップの脱落を有効に防止し、且つ高い密封性を保持することができる。しかも、従来公知の樹脂キャップを高密度ポリエチレンで形成した場合には、図4或いは図8に示されるように、開封用タブ9を持ち上げて開封を行う場合、開封支点部B側でキャップ4、40ががっちりと容器口部50に保持されることとなり、壜離れがかなり悪いが、本発明では、インナーリング3に所定の肉抜き部15或いは30を設けることにより、この壜離れを高めることができるため、高密度ポリエチレン製キャップの欠点を効果的に回避し、その利点を最大源に活かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】一対の線状肉抜き部をインナーリングに形成した本発明の樹脂キャップの一例を示す側断面図。
【図2】図1のキャップの底面図。
【図3】図1のキャップの内面を示す斜視図。
【図4】図1のキャップを容器口部から取り外すときのプロセスを説明するための図。
【図5】面状肉抜き部をインナーリングに形成した本発明の樹脂キャップの一例を示す側断面図。
【図6】図5のキャップの底面図。
【図7】図5のキャップの内面を示す斜視図。
【図8】図5のキャップを容器口部から取り外すときのプロセスを説明するための図。
【符号の説明】
【0033】
1:頂板部
2:スカート壁
3:インナーリング
9:開封用タブ
15:線状薄肉部
30:面状薄肉部
50:容器口部
B:開封支点部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂板部と、頂板部周縁から下方に垂下したスカート壁とから成り、該スカート壁の外面には、外方に突出した鍔状の開封用タブが形成されており、該頂板部の内面には、前記スカート壁とは間隔を置いて下方に延びているインナーリングが形成され、該インナーリングとスカート壁との間の空間に容器口部が嵌め込まれて容器口部に固定される樹脂キャップにおいて、
前記インナーリングには、上面乃至底面からみて、前記開封用タブの反対側部分の領域に、該開封用タブの中心部に対応する部分から180度離れた開封支点部を中心として、内面側が肉抜きされた肉抜き部が対称的に形成されていることを特徴とする樹脂キャップ。
【請求項2】
前記インナーリングには、前記開封支点部を中心とし、その両側に対称的に一対の前記肉抜き部が小幅に形成されている請求項1に記載の樹脂キャップ。
【請求項3】
前記一対の肉抜き部は、前記開封支点部に対して、キャップ中心を基準とする角度θ(絶対値)が10乃至40度の領域に形成されている請求項2に記載の樹脂キャップ。
【請求項4】
前記インナーリングは、前記開封支点部に対して、キャップ中心を基準とする角度θ(絶対値)以下の領域全体が前記肉抜き部となっており、該角度θが10乃至40度の範囲に設定されている請求項1に記載の樹脂キャップ。
【請求項5】
前記スカート壁には、前記開封支点部に対応する位置を中心として、その両側に、下端から上方に延びている一対のスコアが形成されている請求項1乃至4の何れかに記載の樹脂キャップ。
【請求項6】
前記スコアは、前記キャップの中心位置と前記肉抜き部とを結ぶ直線の延長線上、或いは前記開封支点部を基準として該延長線よりもやや外側に位置する部分に形成されている請求項5に記載の樹脂キャップ。
【請求項7】
前記樹脂キャップは、密度が0.95g/cm以上の高密度ポリエチレンにより形成されている請求項1乃至6の何れかに記載の樹脂キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−269609(P2009−269609A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118775(P2008−118775)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】