説明

樹脂ワックス皮膜層の剥離剤組成物およびその剥離方法

【課題】剥離性に優れた樹脂ワックス皮膜層の剥離剤組成物及び該剥離剤組成物を用いた剥離方法提供する。
【解決手段】プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチルアルコールから選ばれる少なくとも1種の揮発性溶剤85重量%乃至98重量%と、ベンジルアルコール1重量%乃至10重量%と、アミルシナミックアルデヒド1重量%乃至5重量%とからなる樹脂ワックス皮膜層の剥離剤組成物。及び前記剥離剤組成物を用いる樹脂ワックス皮膜層の剥離方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は床面の樹脂ワックス皮膜層を剥離するための剥離剤組成物およびその剥離方法にかんする。
【背景技術】
【0002】
床面の樹脂ワックス皮膜層は時間の経過とともに塵や泥等が付着し汚れが目立つようになる。美麗な床面を保持するには汚れた樹脂ワックス皮膜層を剥離した上で改めて樹脂ワックスを施す必要がある。樹脂ワックス皮膜層を剥離するため使用さる洗剤に、例えば、界面活性剤を主成分とし、助剤である溶剤、有機アルカリ、無機アルカリを加えた強アルカリ性のものがある。すなわち強アルカリ性の洗剤を水で10乃至20倍に希釈するとともに糸付モップに多量に浸み込ませ、床面に塗付して10乃至30分放置した後、ブラシを備えた電動ポリッシャあるいはナイロン繊維にガラスの粉末の混合した不織布やパッドを備えた電動ポリッシャを回転させ、樹脂ワックス皮膜層の表面をブラッシングなどしながら樹脂ワックス皮膜層を洗浄して除去する。強アルカリ性洗剤を使用するのは中性あるいは微アルカリ洗剤では樹脂ワックス皮膜層が除去できないからである。洗浄後は水分を含む汚泥状の除去物をゴムワイパーなどで掻き集めてから床面を水洗いし、再度電動ポリッシャで床面に付着する汚れを落とすとともにその除去物を掻き集める。最後にきれいな水を含ませたモップで床面の表面を拭き仕上げをする。洗浄後においても自然乾燥にかなりの時間を要し、乾燥を迅速化するため熱風乾燥機を使用することもあり、床面が十分に乾燥した後にあらためて樹脂ワックスを施すことができる。かなりの水を使用する従来の方法は湿式の洗浄方法であり、相当の手間と時間を要し、洗浄時に生ずる汚泥状物や汚水の後処理が大変である。また作業環境もよくない。
【0003】
【特許文献1】特開2004−143251
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、容易に剥離されるとともに剥離性に優れた樹脂ワックス皮膜層の剥離剤組成物を提供する。さらに良好な作業環境下、容易に剥離される樹脂ワックス皮膜層の剥離方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような課題を解決するため、本発明にかかる樹脂ワックス皮膜層の剥離剤組成物は、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチルアルコールから選ばれる少なくとも1種の揮発性溶剤 重量%85乃至98重量%と、ベンジルアルコール1重量%乃至10重量%と、アミルシナミックアルデヒド1重量%乃至5重量%とからなる。この剥離剤組成物は水分を含まず中性である。
【0006】
また本発明にかかる樹脂ワックス皮膜層の剥離方法は、上記剥離剤組成物を用いる樹脂ワックス皮膜層の剥離方法である。すなわち樹脂ワックス皮膜層の表面に剥離剤組成物を塗布する工程Aと、塗布された剥離剤組成物がその浸透性により樹脂ワックス皮膜層に浸透する工程Bと、浸透した剥離剤組成物がその溶解性により樹脂ワックス皮膜層を溶解するとともに膨潤させる工程Cと、膨潤した樹脂ワックス皮膜層に対してブラシ、パッドなどにより加えられる外力により樹脂ワックス皮膜層を固形物に破砕あるいは粉砕するとともに床面から剥離する工程Dとからなる。また前記工程Dにおいて、浸透した溶剤により半乾燥化状態の樹脂ワックス皮膜層を破砕あるいは粉砕し、破砕された小片物あるいは粉砕された粉状物が樹脂ワックス皮膜層に付着したごみなどの付加物を含んでいる。樹脂ワックス皮膜層の剥離において前記剥離剤組成物を水で希釈することはなく、また剥離作業時においても水を使用しない。
【効果】
【0007】
本発明にかかる剥離剤組成物は、従来の剥離剤組成物と比べ、樹脂ワックス皮膜層を容易に剥離することができ、剥離性に優れた効果を有する。また剥離剤組成物を水で希釈したり、剥離作業時に水を全く使用しないから、従来は不可能であった木製床材(白木床材を含む)、コルク床材、リノニューム床材などの樹脂ワックス皮膜層に対しても有効である。また床面の一部の樹脂ワックス皮膜層のみを対象とした部分的な剥離も可能である。また洗浄作業時に水を使用する従来の湿式洗浄方法のように汚泥、汚水を出さず、作業環境が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
樹脂ワックス皮膜層を剥離するための剥離剤組成物について最良の形態を説明する。本発明の剥離剤組成が対象とする樹脂ワックス皮膜層は床面に形成される水性ポリマータイプの樹脂ワックス皮膜層である(以下、同様)。本発明にかかる剥離剤組成物は、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチルアルコールから選ばれる少なくとも1種の揮発性溶剤を重量%85乃至98重量%、ベンジルアルコールを1重量%乃至10重量%、アミルシナミックアルデヒドを1重量%乃至5重量%とした。
【0009】
本発明の剥離剤組成物において揮発性溶剤はプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチルアルコールである。これを単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。揮発性溶剤は剥離剤組成物中に85重量%乃至98重量%の範囲内で配合する。揮発性溶剤の配合がこの範囲内にあるときは樹脂ワックス皮膜層の剥離性がきわめて良好である。樹脂ワックス皮膜層を剥離後の影響性についても、床材に変色、ゆがみ、はがれなどがなく、きわめて良好な状態である。また樹脂ワックス皮膜層の剥離直後における樹脂ワックスの塗布性についても、樹脂ワックがきわめて良好に塗布される。これに対して85重量%未満の場合あるいは98重量%を超える場合は、いずれも樹脂ワックス皮膜層が剥離されない。
【0010】
剥離剤組成物においてベンジルアルコールは1重量%乃至10重量%の範囲内で配合する。ベンジルアルコールの配合がこの範囲内にあるときは樹脂ワックス皮膜層の剥離性がきわめて良好である。しかし1重量%未満あるいは10重量%を超える場合は、いずれも樹脂ワックス皮膜層は剥離されない。樹脂ワックス皮膜層が剥離されないから、樹脂ワックス皮膜層を剥離後の影響性、樹脂ワックス皮膜層の剥離直後における樹脂ワックスの塗布性は、いずれもきわめて悪い(後述の比較例参照)。
【0011】
アミルシナミックアルデヒドは1重量%乃至5重量%の範囲内で配合する。アミルシナミックアルデヒドの配合がこの範囲内にあるときは樹脂ワックス皮膜層の剥離性がきわめて良好である。しかし1重量%未満のあるいは5重量%を超える場合は、いずれも樹脂ワックス皮膜層が剥離されない。この場合はまた臭気に若干の問題がある(後述の比較例参照)。
【0012】
剥離剤組成物を樹脂ワックス皮膜層に塗布すると、樹脂ワックス皮膜層の表面が塗布された剥離剤組成物により濡れた状態となり、樹脂ワックス皮膜層の表面がやや湿り気のある柔軟性を帯びた状態となる。そして塗布された剥離剤組成物がその揮発性により樹脂ワックス皮膜層の表面から蒸発する一方、樹脂ワックス皮膜層の内部に浸透し、樹脂ワックス皮膜層が溶解するとともに膨潤する。すなわち浸透した剥離剤組成物により樹脂ワックス皮膜層が溶解、膨潤し、また樹脂ワックス皮膜層の「濡れ」がなくなる。このように表面を含む樹脂ワックス皮膜層の全体あるいは大部分が剥離剤組成物によりやや湿り気を帯びた柔軟性のある状態(これを「半乾燥状態」という)が、樹脂ワックス皮膜層を剥離するために最良の状態である。これに対して樹脂ワックス皮膜層の表面が剥離剤組成物により濡れたままの状態、つまり「べとついた」状態においては樹脂ワックス皮膜層は剥離しない。一方、樹脂ワックス皮膜層の表面から剥離剤組成物の蒸発が進むと、樹脂ワックス皮膜層は表面の柔軟性が失われ固化した状態になるが、このよう状態においても樹脂ワックス皮層は剥離しない。
【0013】
本発明の剥離剤組成物によれば、樹脂ワックス皮膜層への浸透性、樹脂ワックス皮膜層の溶解性、樹脂ワックス皮膜層の溶解性が極めて良好であり、表面をふくむ樹脂ワックス皮膜層の全体あるいは大部分がやや湿り気を帯びた柔軟性のある状態となる。このような半乾燥状態の樹脂ワックス皮膜層に対して、例えば、電動ボリッシャのように回転するブラシ、パッドなどで表面から擦過するなど適度な外力を加えると、樹脂ワックス皮膜層が固形物に破砕あるいは粉砕され、これにより樹脂ワックス皮膜層が床面から剥離される。この場合、樹脂ワックス皮膜層の剥離性はきわめて良好である。また剥離後における樹脂ワックス皮膜層の床面への影響性はなく、樹脂ワックスの塗布性もきわめて良好である(後述の実施例参照)。
【実施例】
【0014】
本発明にかかる剥離剤組成物の実施例について説明する。テストパネル(床面を構成する床材)の樹脂ワックス皮膜層に供試の剥離剤組成物を塗布し、試験項目である樹脂ワックス皮膜層への浸透性、樹脂ワックス皮膜層の溶解性、樹脂ワックス皮膜層の膨潤性、樹脂ワックス皮膜層の剥離性、樹脂ワックス皮膜層剥離後の床面への影響性、剥離後の樹脂ワックスの床面への塗布性、剥離剤組成物の臭気について試験をおこなうとともに評価した。
【0015】
樹脂ワックス皮膜層への浸透性は、供試の剥離剤組成物をテストパネルに塗布して5分後、樹脂ワックス皮膜層をヘラではがし樹脂ワックス皮膜層への浸透状態を断面の目視により観察した。塗布量は50g/平方メートルである。評価方法は、浸透性がきわめて良好な場合は◎、浸透性が70%程度と認められる場合は○、浸透性が50%程度と認められる場合は△、浸透性が著しく劣る場合は×とした。
【0016】
樹脂ワックス皮膜層の溶解性は、供試の剥離剤組成物をテストパネルに塗布して5分後、樹脂ワックス皮膜層をヘラではがし、樹脂ワックス皮膜層の溶解状態を断面の目視により観察した。評価方法は、樹脂ワックス皮膜層の溶解性がきわめて良好な場合は◎、溶解性が良好な場合は○、溶解性が50%程度と認められる場合は△、溶解性が著しく劣る場合は×とした。
【0017】
樹脂ワックス皮膜層の膨潤性は、供試の剥離剤組成物をテストパネルに塗布して5分後、樹脂ワックス皮膜層の表面の凹凸状態やヘラではがした樹脂ワックス皮膜層の膨潤状態を目視により観察した。評価方法は、樹脂ワックス皮膜層の膨潤性がほぼ全体におよびきわめて良好な場合は◎、膨潤性が全体のほぼ80%程度な場合は○、溶解性が50%程度と認められる場合は△、溶解性が50%以下で劣る場合は×とした。
【0018】
樹脂ワックス皮膜層の剥離性は、供試の剥離剤組成物をテストパネルに塗布して5分後、ブラシ、パッドで擦り樹脂ワックス皮膜層を剥離し、樹脂ワックスの塗布前と樹脂ワックス皮膜層の剥離後に光沢度測定計で測定し、床材の光沢度と目視により剥離性を評価した。評価方法は、光沢度が樹脂ワックスの塗布前と樹脂ワックス皮膜層の剥離後で同じであり、完全に剥離された場合は◎、樹脂ワックス皮膜層がわずかに残り、剥離後の光沢度が樹脂ワックスの塗布前の光沢度より2乃至5大きい場合は○、樹脂ワックス皮膜層が部分的(50%程度)残り、剥離後の光沢度が最初に樹脂ワックス皮膜層を塗布した直後の光沢度とほぼ同じである場合を△、樹脂ワックス皮膜層が剥離せず、従って光沢度に変化のない場合は×とした。
【0019】
樹脂ワックス皮膜層の剥離後の床面への影響性は、樹脂ワックス皮膜層の剥離直後、床材に変色、ゆがみ、はがれなどのいたみが生じていないか床面への影響性を観察した。評価方法は、剥離後に変色、ゆがみ、はがれなどがなく、きわめて良好な状態で影響性がない場合は◎、変色、ゆがみ、はがれなどがほとんどなく、良好な状態で影響性がない場合は○、変色、ゆがみ、はがれなどが徴妙に認められる場合は△、変色、ゆがみ、はがれなどが認められる場合を×とする。なお樹脂ワックス皮膜層の剥離不能な場合も×とする。
【0020】
樹脂ワックス皮膜層の剥離後における樹脂ワックスの塗布性は、樹脂ワックス皮膜層の剥離直後、樹脂ワックスを塗布し、塗布性の良否を確認した。評価方法は、きわめて良好に塗布される場合は◎、良好に塗布される場合は○、やや塗布しにくく均一に塗布されずムラが生じる場合は△、塗布できない場合は×とした。なお樹脂ワックス皮膜層の剥離不能な場合も×とする。
【0021】
剥離剤組成物の臭気は、パネラー3人が摂氏20度の状態で供試の剥離剤組成物の匂いを嗅ぎ臭気の有無を確認した。評価方法は、さわやかな香気を感じる場合は◎、ほとんど気にならない場合は○、若干気になる場合は△、臭くて不快を感じる場合は×とした。
【0022】
上記の実施例および冷比較例のテストパネルの調製について説明する。床面を構成する床材としてつぎのものを対象とした。
1)コンポジションビニタイル、株式会社タジマ製、商品名P−60、カラー黒、
2)フローリング床材、大建工業株式会社製、商品名YW−1826、
3)コルク床材、神戸コルク株式会社製、商品名KC−200、
4)リノリューム床材、東リ株式会社、商品名リノリーム、
樹脂ワックスとして株式会社リスダンケミカル製、商品名ベストコート(水性ポリマー樹脂ワックス)を上記床材に塗布した。塗布量は1回当たり10g/平方メートルとし、コンポジションビニタイルの場合は6回重ね塗りをし、フローリング床材、コルク床材、リノリューム床材の場合は4回重ね塗りをし、常温(摂氏20乃至25度)で自然乾燥の上さらに24時間室温で放置した。剥離用具は、株式会社オーエ製ブラシ、商品名BBアールハスタイブラシ No.6760と、住友3M株式会社製の不織布、商品名ユーテイリテイパッドを使用し、光沢度測定計は株式会社堀場製作所製の光沢度測定計、商品名IG310を使用した。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
【表3】

【0026】
上記の実施例1乃至15に示される剥離剤組成物は、いずれも樹脂ワックス皮膜層への浸透性、樹脂ワックス皮膜層の溶解性、樹脂ワックス皮膜層の膨潤性がきわめて良好であり、また剥離性はきわめて良好であった。剥離後における樹脂ワックス皮膜層の床面への影響性、剥離後の樹脂ワックスの塗布性はいずれもきわめて良好であった。臭気については「香気を感じる」場合と、「ほとんど気にならない」場合があるが、「ほとんど気にならない」から特に問題はない。
【0027】
【表4】

【0028】
比較例1乃至5は、樹脂ワックス皮膜層への浸透性、樹脂ワックス皮膜層の溶解性、樹脂ワックス皮膜層の膨潤性が、上記実施の場合のように「きわめて良好」ではない。とくにそのうちの1項目はかなり劣る。比較例1は、揮発性溶剤であるエチルアルコール(99.0)の量が多くベンジルアルコールの量(0.5)が少ないため、樹脂ワックス皮膜層の表面から揮発性溶剤が蒸発して表面が固化状態となり、剥離不能である。また比較例2乃至5はいずれもベンジルアルコールの量が多く、樹脂ワックス皮膜層の表面が塗布された剥離剤組成物により「べとついた」状態であり、剥離不能である。
【0029】
【表5】

【0030】
比較例6乃至10は、樹脂ワックス皮膜層への浸透性、樹脂ワックス皮膜層の溶解性、樹脂ワックス皮膜層の膨潤性が、上記実施の場合のように「きわめて良好」ではない。とくにそのうちの1項目はかなり劣る。比較例6、9、10はいずれもベンジルアルコールの量が多く、樹脂ワックス皮膜層の表面が塗布された剥離剤組成物により「べとついた」状態であり、剥離不能である。また比較例7、8についてもアミルシナミックアルデヒドの量が多く、同様に、樹脂ワックス皮膜層の表面が塗布された剥離剤組成物により「べとついた」状態であり、剥離不能である。
【0031】
このように上記の比較例1乃至10に示される剥離剤組成物は、いずれも樹脂ワックス皮膜層が剥離しなかった(剥離不能)。このように剥離不能であるから、床面への影響性、剥離後の樹脂ワックスの塗布性はいずれも「きわめて悪い」という結果になる。 臭気については、不快を感じることはなかったが若干気になる程度の臭気があり、やや問題があった。
【0032】
つぎに樹脂ワックス皮膜層の剥離方法につき最良の形態を説明する。樹脂ワックス皮膜層は種々の床材1からなる床面に形成される。まず樹脂ワックス皮膜層2の表面に剥離剤組成物3を塗布する工程Aである。剥離剤組成物は水分を含まない中性であり、また水で希釈しない。床面に形成された樹脂ワックス皮膜層2に剥離剤組成物3を塗布する(図2参照)。例えば、モップ5などの塗布用具に剥離剤組成物をしみこませ、樹脂ワックス皮膜層2にほぼ均一に剥離剤組成物3を塗布する。塗布手段や塗布方法に限定はない。この場合、剥離剤組成物に水が混入しないことが肝要であり、十分に乾燥したモップを使用する。
【0033】
剥離剤組成物の塗布量は樹脂ワックス皮膜層2の厚みなどにより異なるが、樹脂ワックス皮膜層2の表面に塗布された剥離剤組成物3が樹脂ワックス皮膜層2の内部のほぼ全体あるいは大部分に浸透するように塗布する。塗布された離剤組成物3は樹脂ワックス皮膜層2の内部に浸透する一方、塗付された剥離剤組成物で濡れた状態の樹脂ワックス皮膜層2の表面がやや湿り気を帯びた柔軟性のある状態となる。樹脂ワックス皮膜層2の厚みなどにより異なるが4層程度からなる場合、通常は1、2分程度で固化した樹脂ワックス皮膜層2の表面が柔軟性を帯びてくる。しかし、その揮発性により樹脂ワックス皮膜層2の表面から剥離剤組成物の蒸発が進むと、樹脂ワックス皮膜層2は表面の柔軟性が失われて固化状態となる。なお剥離剤組成物の塗布前に床面の大きなごみなどを取り除くのが望ましいが、樹脂ワックス皮膜層2の内部や表面に付着したごみ、泥、塵など、樹脂ワックス皮膜層2と一体化した付加物は、後述のように、樹脂ワックス皮膜層2の剥離の際に一体となって床面から剥離される。
【0034】
塗布された剥離剤組成物が樹脂ワックス皮膜層2に浸透する工程Bである。すなわち塗布された剥離剤組成物3は、その浸透性により、樹脂ワックス皮膜層2の内部に浸透する(図3参照)。剥離剤組成物3は樹脂ワックス皮膜層2の表面から内部に徐々に浸透し、表面を含むほぼ全体あるいは大部分に浸透する。樹脂ワックス皮膜層2の厚みなどにより異なるが、4層程度の場合、通常1、2分程度で浸透がほぼ完了する。
【0035】
樹脂ワックス皮膜層2が溶解するとともに樹脂ワックス皮膜層2に膨潤が生じる工程Cである。樹脂ワックス皮膜層2に浸透した剥離剤組成物3は樹脂ワックスに対する溶解性があり、その溶解性により、樹脂ワックス皮膜層2が部分的に溶解する(図4参照)。また樹脂ワックス皮膜層2の溶解とともに樹脂ワックス皮膜層2に膨潤が生じる。内部における部分的あるいは全体的な膨潤によりひずみを生じることもある。樹脂ワックス皮膜層に膨潤が生じた状態では、例えば、樹脂ワックス皮膜層2の表面を爪で引っかくなどすると樹脂ワックス皮膜層2の一部が「ぽろぽろ」と取れるようになる。これは、浸透した剥離剤組成物により樹脂ワックス皮膜層2がやや湿り気を帯びた柔軟性のある状態(「半乾燥の状態」)である。樹脂ワックス皮膜層2の厚みなどにより異なるが、剥離剤組成物の樹脂ワックス皮膜層2への浸透とともに樹脂ワックス皮膜層2の内部に膨潤が生じ、4層の程度の場合、通常1、2分程度で膨潤が生じる。
【0036】
樹脂ワックス皮膜層2に加えた外力により樹脂ワックス皮膜層2を固形物に破砕あるいは粉砕して床面(床材)から剥離する工程Dである。浸透した剥離剤組成物により樹脂ワックス皮膜層2がやや湿り気を帯びた柔軟性のある状態においては、表面から樹脂ワックス皮膜層2に直接に外力を加えると、樹脂ワックス皮膜層2が容易に破砕あるいは粉砕される(図5参照)。例えば、樹脂ワックス皮膜層2の表面に回転するブラシ6やパッドなどを当てて擦過し、樹脂ワックス皮膜層2に衝撃や摩擦などの外力を適宜に加えると、樹脂ワックス皮膜層2が固形物となって破砕あるいは粉砕される。破砕された小片物あるいは粉砕された粉状物が床面から分離し、これにより樹脂ワックス皮膜層2がほぼ完全に近い形で剥離される。通常は電動ポリッシャなどの剥離用具6などにより外力を加えるが、外力を加える手段、方法などは任意である。
【0037】
樹脂ワックス皮膜層2の表面を含む内部には通常これと一体的に付着した小さなごみ、泥、塵などの付加物が含まれている。前記工程Dにおいて、樹脂ワックス皮膜層2を破砕あるいは粉砕したとき、破砕あるいは粉砕された固形物(小片物や粉状物)にごみなどの付加物が一体に固着している。固形物がごみなどの付加物を含むから、破砕時や粉砕時に樹脂ワックスと付加物が分離することはない。また破砕後や粉砕後に樹脂ワックスと付加物が分離することもない。破砕された固形物はやや粘り気があったり、さらさらした状態の多数の小粒になったりする。やや湿り気を帯びた柔軟性のある状態の樹脂ワックス皮膜層2を破砕、粉砕するから、破砕時や粉砕時または破砕後や粉砕後に、破砕された小片や粉砕された粉状物が周辺に飛散することはない。また空中に飛散することもない
【0038】
このようにやや湿り気を帯び柔軟性のある状態において樹脂ワックス皮膜層2に適宜な外力を加えると、樹脂ワックス皮膜層2が容易に破断あるいは粉砕されるが、これは、湿式の洗浄方法と異なり水を使用しないのみならず、樹脂ワックス皮膜層2を固形物に破砕、粉砕して床面から剥離するものであり、従来にはない新規な剥離方法である。この剥離方法によれば、剥離作業は簡易、迅速におこなうことができ、また床面に樹脂ワックス皮膜層が残留することもない。樹脂ワックス皮膜層の剥離後の床面は中性であり、この点からの床面をいためることはない。なお樹脂ワックス皮膜層2の剥離後は床面上の固形物を箒で集め、あるいは電気掃除機で吸引し、床面から除去するなどすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明にかかる樹脂ワックス皮膜層の剥離方法において、樹脂ワックス皮膜層が床材に施されている状態を示す説明図である。
【図2】同剥離方法において、樹脂ワックス皮膜層の表面に剥離剤組成物をモップで塗布する状態を示す説明図である。
【図3】同剥離方法において、樹脂ワックス皮膜層の表面から剥離剤組成物が樹脂ワックス皮膜層に浸透する状態を示す説明図である。
【図4】同剥離方法において、樹脂ワックス皮膜層に浸透した剥離剤組成物が樹脂ワックス皮膜層を溶解する状態を示す説明図である。
【図5】樹脂ワックス皮膜層をブラシで破砕し床面から剥離する状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1 床材
2 樹脂ワックス皮膜層
3 剥離剤組成物
5 モップ
6 ブラシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチルアルコールから選ばれる少なくとも1種の揮発性溶剤85重量%乃至98重量%と、ベンジルアルコール1重量%乃至10重量%と、アミルシナミックアルデヒド1重量%乃至5重量%とからなる樹脂ワックス皮膜層の剥離剤組成物。
【請求項2】
前記剥離剤組成物が水分を含まない中性である請求項1に記載の樹脂ワックス皮膜層の剥離剤組成物。
【請求項3】
前記請求項1に記載の剥離剤組成物を用いる樹脂ワックス皮膜層の剥離方法。
【請求項4】
前記請求項1に記載の剥離剤組成物を用いる樹脂ワックス皮膜層の剥離方法であって、樹脂ワックス皮膜層の表面に剥離剤組成物を塗布する工程Aと、塗布された剥離剤組成物がその浸透性により樹脂ワックス皮膜層に浸透する工程Bと、浸透した剥離剤組成物がその溶解性により樹脂ワックス皮膜層を溶解するとともに膨潤させる工程Cと、膨潤した樹脂ワックス皮膜層に対してブラシ、パッドなどにより加えられる外力により樹脂ワックス皮膜層を固形物に破砕あるいは粉砕するとともに床面から剥離する工程Dとからなる樹脂ワックス皮膜層の剥離方法
【請求項5】
前記工程Dにおいて、浸透した溶剤により半乾燥化状態の樹脂ワックス皮膜層を破砕あるいは粉砕し、破砕された小片物あるいは粉砕された粉状物が樹脂ワックス皮膜層に付着したごみなどの付加物を含む請求項4に記載の樹脂ワックス皮膜層の剥離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−282976(P2006−282976A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−134561(P2005−134561)
【出願日】平成17年4月3日(2005.4.3)
【出願人】(500148570)株式会社リスダンケミカル (11)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】