樹脂成形シートの抜刃型装置。
【課題】樹脂成型シートの抜刃型の着脱を正確かつ容易に実施する。
【解決手段】抜刃7を埋設した抜刃型4と該抜刃型を据付ける基盤2とにより成る樹脂成型シート5打抜用の抜刃型装置において、前記抜刃型の下面には面ファスナーを装着すると共に前記基盤上には該面ファスナーに対向させて係合用の面ファスナーを装着し、前記各面ファスナーを介して抜刃型4と基盤2とを相互に係合離脱自在に構成した。
【解決手段】抜刃7を埋設した抜刃型4と該抜刃型を据付ける基盤2とにより成る樹脂成型シート5打抜用の抜刃型装置において、前記抜刃型の下面には面ファスナーを装着すると共に前記基盤上には該面ファスナーに対向させて係合用の面ファスナーを装着し、前記各面ファスナーを介して抜刃型4と基盤2とを相互に係合離脱自在に構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品トレーや商品収納用パッケージ等を真空成形又は空圧成形によって成形した樹脂成形品の抜型装置に関し、詳しくは基盤上に装着した複数の抜刃型を正確かつ1工程で据え付けかつ着脱を容易にした樹脂成形シート打抜用の抜刃型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品トレーや商品収納用パッケージ等の樹脂成形品は、一枚の大きな原反シートに複数のパッケージ成形体を連ねて配列した状態で真空成形や空圧成形し、この成形した樹脂成形シートを別工程で抜刃型によって所望とする形状に打ち抜いた後使用している。
【0003】
この場合、前記パッケージ成形体を抜刃型によって所望寸法に打ち抜くにあたり、原反シートに成形された各成形体の配列位置寸法と抜刃型の据付位置関係を正確に一致させてから打ち抜く必要がある。この理由は、例えば前記食品トレー個々の鍔部の幅寸法に打ち抜き位置のズレがあると食品の詰め込み後前記成形体の鍔部周縁を接着密封加工する工程で均一な接着面積が確保できず、これにより内部の食品が漏洩したり気密不良となって該食品の腐敗を生ずる等多くの問題を誘発する原因となる。
【0004】
そのため、従来は上記対策として抜刃を埋め込んだ抜刃型ブロック本体を基盤上に据え付ける際に樹脂成形シートに成形された個々の成形体の配列と位置関係を正確に一致させるため、該抜刃型ブロック本体の水平方向の据付位置を繰り返し微調整しながら確定しその後打ち抜き工程に移行するようにしている。
【0005】
この種の公知技術としては、例えば特開平10−113897号公報(特許文献1)においては、前記抜刃型ブロック本体を装着するベースプレート上に差し替えブロックと位置決めブロックを設けてこれを固定ボルトによって仮止め調整を繰り返し行って据付位置を確かめた後ボルトを緊締し固定するようにしている。また、特許第3613481号公報(特許文献2)では抜刃を埋め込んだ打ち抜きユニットのボルト取り付け穴を装着側の取り付け板上に突設したボルトの直径よりも大きく形成して前記打ち抜きユニットの装着位置を微調整したり、また特開2004−330388号公報(特許文献3)では抜刃を埋め込んだブロック体のボルト挿通孔を該ボルト軸径よりも大径に設定しておき、これを支持盤への装着時仮締め・位置調整を繰り返しながらその据付位置を確定するように構成している。
【0006】
【特許文献1】特開平10−113897号公報(図1)
【特許文献2】特許第3613481号公報(図2)
【特許文献3】特開2004−330388号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した抜刃型装置は、何れも樹脂成形シートの各成形体の配列寸法と抜刃型ブロック本体の据付位置とを正確に一致させるための手段として、固定ボルトを仮締め状態にして水平方向の据付位置の微調整を繰り返し実施し確定後緊締・固定する構造であるため、前記成形シートの各成形体の配列寸法と抜刃型ブロック本体との位置関係を確定するまでの作業が煩わしく、しかも抜刃型ブロック本体の固定ボルトの直径に対しその挿通穴を微調整可能なように大きく形成していることから打ち抜き作業を繰り返す間に次第に緊締が緩み該抜刃型の据付位置が横ずれして打抜成形体の大量不良が生じ易い他、抜刃型ブロック本体の据付・交換作業においても特殊工具を必要とする等その構造及び作業性に多くの問題点を有しているのが実情である。
【0008】
そこで、本発明は樹脂成形シートの各成形体の配列寸法と抜刃型ブロック本体の据付位置を1回の作業工程で正確に一致させて据付できると共に、抜刃型ブロック本体の交換作業に特殊工具を用いることなく簡単かつ迅速に実施できる樹脂成形シート打抜用の抜刃型装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、抜刃7を埋設した抜刃型4と該抜刃型を据付ける基盤2とにより成る樹脂成型シート5打抜用の抜刃型装置において、前記抜刃型の下面には面ファスナーを装着すると共に前記基盤上には該面ファスナーに対向させて係合用の面ファスナーを装着し、前記各面ファスナーを介して抜刃型4と基盤2とを相互に係合離脱自在に構成したことを特徴とする(請求項1)。
【0010】
さらに、前記抜刃型と基盤に装着する面ファスナーの何れか一方はフック型面ファスナー15とループ型面ファスナー16の双方を併用して装着すると共に、他方に装着する面ファスナーはフック型面ファスナー16であって、これら面ファスナーの係合素子15a・16a同士が対向し面接触したときに相互に係合するように構成するとよい(請求項2)。
【0011】
また、前記抜刃型下面に装着した面ファスナーの係合素子の先端部15b・16bは、該抜刃型の下面11よりも窪ませて装着すると共に、その窪み深さの設定は前記抜刃型下方の底板9に装着する当接板10の高さを変更することにより調節可能に構成することもできる(請求項3)。
【0012】
さらに、前記抜刃型下面に装着した面ファスナー15・16は、前記当接板の内周縁近傍に沿ってフック型面ファスナー15を、その略中央部にはループ型面ファスナー16を装着する一方、前記基盤2には該基盤の上面よりも窪ませて設けた凹み溝3を形成し、その底壁14にはフック型面ファスナー15を装着するとよい(請求項4)。
【0013】
また、抜刃37を埋設した抜刃型34と該抜刃型を据付ける基盤32とにより成る樹脂成型シート打抜用の抜刃型装置において、前記基盤の底壁35には段付凹み穴40を設け該段付凹み穴には前記抜刃型の底板39に螺合ねじ42を介して緊締・固定する遊嵌板41を嵌め込んで前記抜刃型の水平方向と垂直方向の移動量を制限すると共に、抜刃型34の下面となる遊嵌板41には面ファスナー16を装着し前記基盤側には該面ファスナーに対向させて係合用の面ファスナー15を装着し、前記各面ファスナーを介して抜刃型34と基盤32とを相互に係合離脱自在に構成することもできる(請求項5)。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、樹脂成形シート5打抜用の抜刃型装置の抜刃型4下面に面ファスナーを装着すると共に前記基盤2上には該面ファスナーに対向させて係合用の面ファスナーを装着し、前記各面ファスナーを介して抜刃型4と基盤2とを相互に係合離脱自在に構成したので、食品トレーや商品収納用パッケージ等の樹脂成形シートの打ち抜き工程における抜刃型4の据付を樹脂成形シート側の成形体6の配列寸法に合わせて1工程で正確に確定できると共に、抜刃型ブロック本体の交換作業においても特殊工具を用いることなく簡単かつ迅速に作業できる。これにより打ち抜いた成形体6の仕上がり寸法も誤差なく正確であるため、トレー鍔部周縁の密封包装も確実となる。よって、内部食品の漏洩や気密不良による食品の腐敗を皆無にできる(請求項1)。
【0015】
また、前記抜刃型と基盤に装着する面ファスナーの何れか一方はフック型面ファスナー15とループ型面ファスナー16の双方を併用して装着すると共に、他方に装着する面ファスナーはフック型面ファスナー15としで面ファスナー同士が面接触したときに相互に係合するように構成したので、抜刃型4の据え付けも確実かつ迅速にできると共に繰り返しの抜き作業においても好適な係合状態を保持することができる(請求項2)。
【0016】
また、前記抜刃型下面に装着した面ファスナーの係合素子15a・16aの先端部15b・16bは、該抜刃型の下面11よりも窪ませて装着すると共に、その窪み深さは抜刃型下方の当接板10の高さを変更することにより調節可能に構成したので使用する面ファスナーの高さ寸法のバラツキ及び該面ファスナーの種別や係合素子寸法に変更があったとしても抜刃型4と基盤2間の係合・離脱力を一定度合いに設定できる(請求項3)。
【0017】
また、前記抜刃型下面に装着した面ファスナーは、前記当接板の内周縁近傍に沿ってフック型面ファスナー15を、その略中央部にはループ型面ファスナー16を装着する一方、前記基盤には該基盤の上面よりも窪ませて設けた凹み溝3を形成し、その底壁14にはフック型面ファスナー15を装着したので基盤2に対する抜刃型4の据え付け状態を確実に保持しかつ抜刃型4の着脱作業性も向上する(請求項4)。
【0018】
さらに、本発明は樹脂成型シート打抜用の抜刃型装置の基盤底壁35には段付凹み穴40を設け該段付凹み穴には前記抜刃型の底板39に螺合ねじ42を介して緊締・固定する遊嵌板41を嵌め込んで前記抜刃型の水平方向と垂直方向の移動量を制限すると共に、抜刃型34の下面となる遊嵌板41には面ファスナー16を、前記基盤側には該面ファスナーに対向させて係合用の面ファスナー15を装着して抜刃型34と基盤32とを相互に係合離脱自在に構成したので、特に厚手の樹脂成形シートの打ち抜き作業時に生ずる跳ね返り振動があったとしても該抜刃型が基盤上から大きく浮き上がることもなくかつ打ち抜かれた成形体の取り出しも容易である(請求項5)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
抜刃7を埋設した抜刃型4と該抜刃型を据付ける基盤2とにより成る樹脂成型シート5打抜用の抜刃型装置において、前記抜刃型の下面には面ファスナーを装着すると共に前記基盤上には該面ファスナーに対向させて係合用の面ファスナーを装着し、前記各面ファスナーを介して抜刃型4と基盤2とを相互に係合離脱自在に構成することにより、前記抜刃型の据付・装着を1工程でしかも正確に抜刃型の据付位置を確定できる。
【実施例1】
【0020】
以下、本発明の実施例を図1ないし図9により説明する。抜刃型装置1は、平面視略方形で積層ベニヤ板製で有底の基盤2と該基盤上の凹み溝3下方に形成する合成樹脂製の底壁14に据え付けられた抜刃型4とにより成り、該抜刃型は後述する樹脂成形シート5の成形体6の配列寸法に対応して着脱自在に隣接・配置されている。
【0021】
抜刃型4は、成形体6の打ち抜き形状に対応して平面視略方形に枠組された抜刃7を埋設したベニヤ板積層の基台8と、その下方に設けた合成樹脂製の底板9、当接板10とによって独立した小ブロック体を成しており(図3)、これら小ブロック体を水平方向に微調整可能な程度に空間13(図1)を設けて基盤2上に隣接配置して樹脂成形シート5上の成形体6を一挙に打ち抜くようになっている。なお、4aは樹脂成型シートの成型体6の突出部6a挿入用の切抜溝で後述する樹脂成形シートの成形体の挿入ガイドともなっている。
【0022】
また、抜刃型4の基台8は図3に示すように上板8a、抜刃用ストッパ板8b、中間保持板8c、底板9、当接板10を一体的に接着接合し積層すると共に、当接板10の中央部には該抜刃型の下面11(当接板の下面)よりも窪ませて設けた開口12を形成し、該開口に面する底板9には面ファスナー(通称マジックテープ(登録商標))15、16が装着されている(図4)。
【0023】
この面ファスナーは、後述するフック型面ファスナー15とループ型面ファスナー16とを併用しそれぞれを抜刃型4の形状や大きさに対応して適宜組み合わせ配置したもので、例えば図4の如く当接板10の内周縁近傍でもある開口12の内周縁近傍に沿ってフック型面ファスナー15を、またその略中央部付近にはループ型面ファスナー16が装着されている。一方、基盤2の凹み溝3の底壁14の抜刃型4の据付位置にはフック型面ファスナー15が装着され前記抜刃型に装着した面ファスナー15,16がこれと対向するようになっている。
【0024】
上述したフック型面ファスナー15は、図5の如くその係合素子15a各々の先端部15bが合成樹脂によって略傘状又は膨頭状に形成されているもので、他方のループ型面ファスナー16は基布上に細い樹脂系繊維をループ状に編み上げその先端部16bが略ループ状又はかぎ状となった係合素子16aを有するもので(図6)、前記フック型面ファスナーと面接触することによって相互に係合するようになっている。
【0025】
この種のものでは、例えばフック型面ファスナーに関しては特開平6−133808号に開示するものが、一方、ループ型面ファスナーでは特開2003−289910号に開示するものが公知である。また、一般に市販されている面ファスナーとしては、フック型面ファスナー15に関しては商品名マジロック(株式会社クラレ製)が、ループ型面ファスナーでは商品名マジックテープ(登録商標)(株式会社クラレ製)が普及しており、本発明においては上述したように係合素子同士が面接触することにより相互に係合する構造の面ファスナーであれば係合素子の形状や構成は特に限定しない。
【0026】
さらに詳述すると、基盤2に対する抜刃型4の据付位置関係を正確に定め、しかも適度の固定保持力を維持すると共に該抜刃型の着脱を容易にするためには各面ファスナーの装着面積とそれぞれの係合素子の突出高さを適正に設定することが最も重要で、例えば抜刃型4側には図4に示すように開口12の周縁近傍の底板9に該開口面積の概ね20〜50%程度の面積のフック型面ファスナー15を分散配置すると共に、その略中央部には該開口面積の概ね20〜50%程度の面積のループ型面ファスナー16を装着するのが好ましく、具体的には抜刃型4の大きさや樹脂成形シート5の厚さ等に対応して適宜設定する。
【0027】
また、それぞれの面ファスナーの係合素子の先端部は抜刃型4の下面11よりも窪ませて装着するのがよく、実験によればその窪み深さはフック型面ファスナー15の高さの概ね20〜40%程度の寸法が好ましい。換言すると、この状態は抜刃型4の下面が基盤2の底壁14に当接した状態において面ファスナー同士が概ね60〜80%程度の係合度合い(図7)にあり、この状態が抜刃型の据付・着脱に最も好適である。なお、この窪み深さの設定は採用する面ファスナーの係合素子や基布の高さに対応して当接板10の高さを可変することにより行う。
【0028】
以上の如く設定することにより、基盤2上に抜刃型4を据え付けた際に繰り返しの抜き作業に耐えしかも該抜刃型の着脱を容易とするに好適な係合力を得ることとなる。換言すると、前記係合素子相互の係合度合いが100%か又はそれに近づくほど面ファスナー同士の係合力が増大し抜刃型4の着脱に多大な労力が必要となる。また、逆に前記係合度合いが0%に近づくほど抜刃型の据付が不十分となり据付位置の狂いが生じ易い。
【0029】
次いで、本発明の作用について説明する。まず抜刃型4の小ブロック体それぞれを基盤上の凹み溝3の所定位置に隣接させて仮置く。このとき基盤側の面ファスナー15の先端部15b同士は図8の如く抜刃型4側の面ファスナー15、16とは軽く面接触した状態にあり、手で軽く力を加えることで容易に水平方向に移動可能な係合度合いであり、よって抜刃型下面11と基盤の凹み溝底壁14間には空隙が生じている状態でもある。
【0030】
次いで、基盤2毎を図示しない打抜機のテーブル上に据え付けた後予め真空成型などで成型した樹脂成形シート5を抜刃型4上に載置しその上方から前記打抜機の押圧板を徐々に下降させて樹脂成形シート上を押し付けて行くと樹脂成形シートの成形体6の突出部6aが該抜刃型の切抜溝4a(図1)内への挿入ガイドとなって該切抜溝内に次第に嵌り込み、これにより必然的に抜刃型4の据付位置が成形体の配列寸法と一致する。
【0031】
と同時に、抜刃型4側のフック型面ファスナー15の係合素子15aの先端部15bは図9(a)の如く基盤2側の面ファスナー15の係合素子15aの先端部15b間に押し込まれると共に、ループ型面ファスナー側の係合素子16aの先端部16bも同様に図9(b)の如く軽度の係合状態となって先ず水平方向の位置関係が確定する。次いで、そのまま押圧板22を押し下げて行くと抜刃型下面11と基盤の凹み溝底壁14とが当接しこの時点で各係合素子同士が確実に係合して抜刃型4の据付が完了する。以降は所定の手順で抜き工程に移行すると共に、抜刃型4を取り外すときは隣接する抜刃型間の空間13にドライバー等の工具を挿入して軽く抉るだけで抜刃型4を取り外しできるので該抜刃型の交換も容易である。
【実施例2】
【0032】
図10は本発明の第2実施例で、上述した実施例1と同一部材は同一名称・同一符号を用い異なる部分のみを説明する。抜刃型4下方の底板9には、実施例1で説明した枠組状の当接板10に代えて平板状で該当接板と同等の高さ寸法のデイスタンスピース20が底板9に対して適宜幅で複数個所に分散配置されており、該抜刃型を基盤2上に据え付けたときにこの下面21が凹み溝3の底壁14(図2)上と当接して各面ファスナー同士を好適に係合する。
【0033】
また、底板9の前記デイスタンスピースで囲まれた領域には実施例1と同様に面ファスナー15、16が装着している。この面ファスナーの装着態様ならびにデイスタンスピース20の下面21から前記面ファスナー先端部までの窪み深さは上述した実施例と同じであるので以下その説明を省略する。なお、前記デイスタンスピースは基盤の凹み溝3の底壁14上に装着してもよいことは言うまでもなく、これによりデイスタンスピース自体の加工も簡単でかつ接着接合も容易となる。
【実施例3】
【0034】
図11は本発明の第3実施例で、樹脂成形シートの打ち抜き加工に伴う振動によって生ずる抜刃型の浮き上がり量を制限したもので、以下実施例1と同一部材は同一名称・同一符号を用いて異なる部分のみを説明する。基盤32の凹み溝33には抜刃型34が据え付けられると共に、該抜刃型の基台38と底板39は抜刃37の内側に一体的に嵌入している。また、基盤32の底壁35には略円形の段付凹み穴40が設けられ、ここに遊嵌板41が嵌まり込んで該遊嵌板と抜刃型の底板39を略中央部で貫通する螺合ねじ42、ロッキングナット43によって緊締・保持されており、さらにその下方となる基盤の底壁35の下面には座板44が螺合ねじ(図示せず)その他の固定手段によって着脱自在に装着している。
【0035】
また、前記遊嵌板41の一側には段付凸部45が設けられその大径部及び小径部の外形寸法は段付凹み穴40の大径穴及び小径穴の内径よりもやや小径に形成されると共に、該段付凸部の高さは前記段付凹み穴の段部46(小径部)の高さよりもやや高く設定されて嵌め込まれており、これにより抜刃型34の垂直方向に対する移動量は前記段付凸部の高さと段付凹み穴の段部46の高さとの差異量に制限されると共に、水平方向に対しても遊嵌板41と段付凹み穴40との直径差分の移動量に制限されている。
【0036】
さらに、遊嵌板41の下面にはループ型面ファスナー16が装着すると共に、座板44上には前記面ファスナーに対向してフック型面ファスナー15が装着し各面ファスナー同士は相互に係合し抜刃型34の水平方向の位置を確定している。なお、本実施例においてもこの係合度合いは遊嵌板41と段付凹み穴40の大径部の高さ寸法によって決定しその値は前述実施例1に準ずるものである。
【0037】
本第3実施例は、以上の如く遊嵌板41と段付凹み穴40を設けることにより抜刃型34の垂直方向及び水平方向の移動量を制限するように構成したので、特に厚手の樹脂成形シートの打ち抜き作業に伴う跳ね返り振動があったとしても該抜刃型が基盤32上から大きく浮き上がることがない。また、打ち抜かれた成形体6を取り出す際も該成形体の板厚が増すほど抜刃37間に嵌り込んで取り出しがきつくなるのが普通であるが、該抜刃型は螺合ねじ42によって緊締・保持されているので前記跳ね返り量の制限と相俟って打ち抜かれた成形体6が飛び出るため取り出しも容易となりかつその据付位置が大きく狂うこともない。
【0038】
さらに、本実施例で用いる面ファスナー15.16の装着面積も単に抜刃型の据え付け位置を確定するに必要な小面積でよいから経済的である。また、前記面ファスナー15、16は打ち抜くべき樹脂成形シートの材質や板厚に応じて適宜装着面積を変更したりまたは削除したりしてもよく、また基盤2側、抜刃型4側何れに装着する組み合わせであってもよくその装着態様は特に限定しない。
【0039】
以上説明したように、本発明によれば従来抜刃型の据付位置を確定するために仮止めや試し打ちを複数回繰り返し後決定していた作業が僅か1回の工程で達成でき、しかも固定ボルトの弛みも解消でき好適な係合・固定状態を保持できる。また、基盤2から抜刃型4を取り外す際も専用の工具必要とせず簡単に離脱できるなどその作用・効果は多大である。
【0040】
なお、基盤2側及び抜刃型4側に装着する面ファスナーは上述実施例で説明した態様に限らず、例えば基盤2側にフック型面ファスナー15とループ型面ファスナー16を、抜刃型4側にフック型面ファスナー15を装着してもよく、またそれぞれの装着方法も、底板の中央部にフック型面ファスナー16を、その周縁にループ型面ファスナーを配置するようにしてもよく、さらにフック型面ファスナー同士又はループ型面ファスナー同士の組み合わせとしても同様の作用・効果を奏するものであり、本発明の要旨の範囲内において各種の変形態様が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明樹脂シート成型用の抜刃型装置の全体斜視図である。
【図2】基盤の説明図である。
【図3】抜刃型の断面図である。
【図4】抜刃型底面の説明図である。
【図5】フック型面ファスナーの説明図である。
【図6】ループ型面ファスナーの説明図である。
【図7】面ファスナーの係合に関する説明図である。
【図8】面ファスナー同士の仮係合状態の説明図である。
【図9】面ファスナー同士の係合状態を示す説明図である。
【図10】本発明の第2実施例の断面図である。
【図11】本発明の第3実施例の断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 抜刃型装置
2 基盤
3 凹み溝
4 抜刃型
5 成型樹脂シート
6 成型体
7 抜刃
8 基台
9 底板
10 当接板
11 下面
12 開口
14 底壁
15 フック型面ファスナー
16 ループ型面ファスナー
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品トレーや商品収納用パッケージ等を真空成形又は空圧成形によって成形した樹脂成形品の抜型装置に関し、詳しくは基盤上に装着した複数の抜刃型を正確かつ1工程で据え付けかつ着脱を容易にした樹脂成形シート打抜用の抜刃型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品トレーや商品収納用パッケージ等の樹脂成形品は、一枚の大きな原反シートに複数のパッケージ成形体を連ねて配列した状態で真空成形や空圧成形し、この成形した樹脂成形シートを別工程で抜刃型によって所望とする形状に打ち抜いた後使用している。
【0003】
この場合、前記パッケージ成形体を抜刃型によって所望寸法に打ち抜くにあたり、原反シートに成形された各成形体の配列位置寸法と抜刃型の据付位置関係を正確に一致させてから打ち抜く必要がある。この理由は、例えば前記食品トレー個々の鍔部の幅寸法に打ち抜き位置のズレがあると食品の詰め込み後前記成形体の鍔部周縁を接着密封加工する工程で均一な接着面積が確保できず、これにより内部の食品が漏洩したり気密不良となって該食品の腐敗を生ずる等多くの問題を誘発する原因となる。
【0004】
そのため、従来は上記対策として抜刃を埋め込んだ抜刃型ブロック本体を基盤上に据え付ける際に樹脂成形シートに成形された個々の成形体の配列と位置関係を正確に一致させるため、該抜刃型ブロック本体の水平方向の据付位置を繰り返し微調整しながら確定しその後打ち抜き工程に移行するようにしている。
【0005】
この種の公知技術としては、例えば特開平10−113897号公報(特許文献1)においては、前記抜刃型ブロック本体を装着するベースプレート上に差し替えブロックと位置決めブロックを設けてこれを固定ボルトによって仮止め調整を繰り返し行って据付位置を確かめた後ボルトを緊締し固定するようにしている。また、特許第3613481号公報(特許文献2)では抜刃を埋め込んだ打ち抜きユニットのボルト取り付け穴を装着側の取り付け板上に突設したボルトの直径よりも大きく形成して前記打ち抜きユニットの装着位置を微調整したり、また特開2004−330388号公報(特許文献3)では抜刃を埋め込んだブロック体のボルト挿通孔を該ボルト軸径よりも大径に設定しておき、これを支持盤への装着時仮締め・位置調整を繰り返しながらその据付位置を確定するように構成している。
【0006】
【特許文献1】特開平10−113897号公報(図1)
【特許文献2】特許第3613481号公報(図2)
【特許文献3】特開2004−330388号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した抜刃型装置は、何れも樹脂成形シートの各成形体の配列寸法と抜刃型ブロック本体の据付位置とを正確に一致させるための手段として、固定ボルトを仮締め状態にして水平方向の据付位置の微調整を繰り返し実施し確定後緊締・固定する構造であるため、前記成形シートの各成形体の配列寸法と抜刃型ブロック本体との位置関係を確定するまでの作業が煩わしく、しかも抜刃型ブロック本体の固定ボルトの直径に対しその挿通穴を微調整可能なように大きく形成していることから打ち抜き作業を繰り返す間に次第に緊締が緩み該抜刃型の据付位置が横ずれして打抜成形体の大量不良が生じ易い他、抜刃型ブロック本体の据付・交換作業においても特殊工具を必要とする等その構造及び作業性に多くの問題点を有しているのが実情である。
【0008】
そこで、本発明は樹脂成形シートの各成形体の配列寸法と抜刃型ブロック本体の据付位置を1回の作業工程で正確に一致させて据付できると共に、抜刃型ブロック本体の交換作業に特殊工具を用いることなく簡単かつ迅速に実施できる樹脂成形シート打抜用の抜刃型装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、抜刃7を埋設した抜刃型4と該抜刃型を据付ける基盤2とにより成る樹脂成型シート5打抜用の抜刃型装置において、前記抜刃型の下面には面ファスナーを装着すると共に前記基盤上には該面ファスナーに対向させて係合用の面ファスナーを装着し、前記各面ファスナーを介して抜刃型4と基盤2とを相互に係合離脱自在に構成したことを特徴とする(請求項1)。
【0010】
さらに、前記抜刃型と基盤に装着する面ファスナーの何れか一方はフック型面ファスナー15とループ型面ファスナー16の双方を併用して装着すると共に、他方に装着する面ファスナーはフック型面ファスナー16であって、これら面ファスナーの係合素子15a・16a同士が対向し面接触したときに相互に係合するように構成するとよい(請求項2)。
【0011】
また、前記抜刃型下面に装着した面ファスナーの係合素子の先端部15b・16bは、該抜刃型の下面11よりも窪ませて装着すると共に、その窪み深さの設定は前記抜刃型下方の底板9に装着する当接板10の高さを変更することにより調節可能に構成することもできる(請求項3)。
【0012】
さらに、前記抜刃型下面に装着した面ファスナー15・16は、前記当接板の内周縁近傍に沿ってフック型面ファスナー15を、その略中央部にはループ型面ファスナー16を装着する一方、前記基盤2には該基盤の上面よりも窪ませて設けた凹み溝3を形成し、その底壁14にはフック型面ファスナー15を装着するとよい(請求項4)。
【0013】
また、抜刃37を埋設した抜刃型34と該抜刃型を据付ける基盤32とにより成る樹脂成型シート打抜用の抜刃型装置において、前記基盤の底壁35には段付凹み穴40を設け該段付凹み穴には前記抜刃型の底板39に螺合ねじ42を介して緊締・固定する遊嵌板41を嵌め込んで前記抜刃型の水平方向と垂直方向の移動量を制限すると共に、抜刃型34の下面となる遊嵌板41には面ファスナー16を装着し前記基盤側には該面ファスナーに対向させて係合用の面ファスナー15を装着し、前記各面ファスナーを介して抜刃型34と基盤32とを相互に係合離脱自在に構成することもできる(請求項5)。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、樹脂成形シート5打抜用の抜刃型装置の抜刃型4下面に面ファスナーを装着すると共に前記基盤2上には該面ファスナーに対向させて係合用の面ファスナーを装着し、前記各面ファスナーを介して抜刃型4と基盤2とを相互に係合離脱自在に構成したので、食品トレーや商品収納用パッケージ等の樹脂成形シートの打ち抜き工程における抜刃型4の据付を樹脂成形シート側の成形体6の配列寸法に合わせて1工程で正確に確定できると共に、抜刃型ブロック本体の交換作業においても特殊工具を用いることなく簡単かつ迅速に作業できる。これにより打ち抜いた成形体6の仕上がり寸法も誤差なく正確であるため、トレー鍔部周縁の密封包装も確実となる。よって、内部食品の漏洩や気密不良による食品の腐敗を皆無にできる(請求項1)。
【0015】
また、前記抜刃型と基盤に装着する面ファスナーの何れか一方はフック型面ファスナー15とループ型面ファスナー16の双方を併用して装着すると共に、他方に装着する面ファスナーはフック型面ファスナー15としで面ファスナー同士が面接触したときに相互に係合するように構成したので、抜刃型4の据え付けも確実かつ迅速にできると共に繰り返しの抜き作業においても好適な係合状態を保持することができる(請求項2)。
【0016】
また、前記抜刃型下面に装着した面ファスナーの係合素子15a・16aの先端部15b・16bは、該抜刃型の下面11よりも窪ませて装着すると共に、その窪み深さは抜刃型下方の当接板10の高さを変更することにより調節可能に構成したので使用する面ファスナーの高さ寸法のバラツキ及び該面ファスナーの種別や係合素子寸法に変更があったとしても抜刃型4と基盤2間の係合・離脱力を一定度合いに設定できる(請求項3)。
【0017】
また、前記抜刃型下面に装着した面ファスナーは、前記当接板の内周縁近傍に沿ってフック型面ファスナー15を、その略中央部にはループ型面ファスナー16を装着する一方、前記基盤には該基盤の上面よりも窪ませて設けた凹み溝3を形成し、その底壁14にはフック型面ファスナー15を装着したので基盤2に対する抜刃型4の据え付け状態を確実に保持しかつ抜刃型4の着脱作業性も向上する(請求項4)。
【0018】
さらに、本発明は樹脂成型シート打抜用の抜刃型装置の基盤底壁35には段付凹み穴40を設け該段付凹み穴には前記抜刃型の底板39に螺合ねじ42を介して緊締・固定する遊嵌板41を嵌め込んで前記抜刃型の水平方向と垂直方向の移動量を制限すると共に、抜刃型34の下面となる遊嵌板41には面ファスナー16を、前記基盤側には該面ファスナーに対向させて係合用の面ファスナー15を装着して抜刃型34と基盤32とを相互に係合離脱自在に構成したので、特に厚手の樹脂成形シートの打ち抜き作業時に生ずる跳ね返り振動があったとしても該抜刃型が基盤上から大きく浮き上がることもなくかつ打ち抜かれた成形体の取り出しも容易である(請求項5)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
抜刃7を埋設した抜刃型4と該抜刃型を据付ける基盤2とにより成る樹脂成型シート5打抜用の抜刃型装置において、前記抜刃型の下面には面ファスナーを装着すると共に前記基盤上には該面ファスナーに対向させて係合用の面ファスナーを装着し、前記各面ファスナーを介して抜刃型4と基盤2とを相互に係合離脱自在に構成することにより、前記抜刃型の据付・装着を1工程でしかも正確に抜刃型の据付位置を確定できる。
【実施例1】
【0020】
以下、本発明の実施例を図1ないし図9により説明する。抜刃型装置1は、平面視略方形で積層ベニヤ板製で有底の基盤2と該基盤上の凹み溝3下方に形成する合成樹脂製の底壁14に据え付けられた抜刃型4とにより成り、該抜刃型は後述する樹脂成形シート5の成形体6の配列寸法に対応して着脱自在に隣接・配置されている。
【0021】
抜刃型4は、成形体6の打ち抜き形状に対応して平面視略方形に枠組された抜刃7を埋設したベニヤ板積層の基台8と、その下方に設けた合成樹脂製の底板9、当接板10とによって独立した小ブロック体を成しており(図3)、これら小ブロック体を水平方向に微調整可能な程度に空間13(図1)を設けて基盤2上に隣接配置して樹脂成形シート5上の成形体6を一挙に打ち抜くようになっている。なお、4aは樹脂成型シートの成型体6の突出部6a挿入用の切抜溝で後述する樹脂成形シートの成形体の挿入ガイドともなっている。
【0022】
また、抜刃型4の基台8は図3に示すように上板8a、抜刃用ストッパ板8b、中間保持板8c、底板9、当接板10を一体的に接着接合し積層すると共に、当接板10の中央部には該抜刃型の下面11(当接板の下面)よりも窪ませて設けた開口12を形成し、該開口に面する底板9には面ファスナー(通称マジックテープ(登録商標))15、16が装着されている(図4)。
【0023】
この面ファスナーは、後述するフック型面ファスナー15とループ型面ファスナー16とを併用しそれぞれを抜刃型4の形状や大きさに対応して適宜組み合わせ配置したもので、例えば図4の如く当接板10の内周縁近傍でもある開口12の内周縁近傍に沿ってフック型面ファスナー15を、またその略中央部付近にはループ型面ファスナー16が装着されている。一方、基盤2の凹み溝3の底壁14の抜刃型4の据付位置にはフック型面ファスナー15が装着され前記抜刃型に装着した面ファスナー15,16がこれと対向するようになっている。
【0024】
上述したフック型面ファスナー15は、図5の如くその係合素子15a各々の先端部15bが合成樹脂によって略傘状又は膨頭状に形成されているもので、他方のループ型面ファスナー16は基布上に細い樹脂系繊維をループ状に編み上げその先端部16bが略ループ状又はかぎ状となった係合素子16aを有するもので(図6)、前記フック型面ファスナーと面接触することによって相互に係合するようになっている。
【0025】
この種のものでは、例えばフック型面ファスナーに関しては特開平6−133808号に開示するものが、一方、ループ型面ファスナーでは特開2003−289910号に開示するものが公知である。また、一般に市販されている面ファスナーとしては、フック型面ファスナー15に関しては商品名マジロック(株式会社クラレ製)が、ループ型面ファスナーでは商品名マジックテープ(登録商標)(株式会社クラレ製)が普及しており、本発明においては上述したように係合素子同士が面接触することにより相互に係合する構造の面ファスナーであれば係合素子の形状や構成は特に限定しない。
【0026】
さらに詳述すると、基盤2に対する抜刃型4の据付位置関係を正確に定め、しかも適度の固定保持力を維持すると共に該抜刃型の着脱を容易にするためには各面ファスナーの装着面積とそれぞれの係合素子の突出高さを適正に設定することが最も重要で、例えば抜刃型4側には図4に示すように開口12の周縁近傍の底板9に該開口面積の概ね20〜50%程度の面積のフック型面ファスナー15を分散配置すると共に、その略中央部には該開口面積の概ね20〜50%程度の面積のループ型面ファスナー16を装着するのが好ましく、具体的には抜刃型4の大きさや樹脂成形シート5の厚さ等に対応して適宜設定する。
【0027】
また、それぞれの面ファスナーの係合素子の先端部は抜刃型4の下面11よりも窪ませて装着するのがよく、実験によればその窪み深さはフック型面ファスナー15の高さの概ね20〜40%程度の寸法が好ましい。換言すると、この状態は抜刃型4の下面が基盤2の底壁14に当接した状態において面ファスナー同士が概ね60〜80%程度の係合度合い(図7)にあり、この状態が抜刃型の据付・着脱に最も好適である。なお、この窪み深さの設定は採用する面ファスナーの係合素子や基布の高さに対応して当接板10の高さを可変することにより行う。
【0028】
以上の如く設定することにより、基盤2上に抜刃型4を据え付けた際に繰り返しの抜き作業に耐えしかも該抜刃型の着脱を容易とするに好適な係合力を得ることとなる。換言すると、前記係合素子相互の係合度合いが100%か又はそれに近づくほど面ファスナー同士の係合力が増大し抜刃型4の着脱に多大な労力が必要となる。また、逆に前記係合度合いが0%に近づくほど抜刃型の据付が不十分となり据付位置の狂いが生じ易い。
【0029】
次いで、本発明の作用について説明する。まず抜刃型4の小ブロック体それぞれを基盤上の凹み溝3の所定位置に隣接させて仮置く。このとき基盤側の面ファスナー15の先端部15b同士は図8の如く抜刃型4側の面ファスナー15、16とは軽く面接触した状態にあり、手で軽く力を加えることで容易に水平方向に移動可能な係合度合いであり、よって抜刃型下面11と基盤の凹み溝底壁14間には空隙が生じている状態でもある。
【0030】
次いで、基盤2毎を図示しない打抜機のテーブル上に据え付けた後予め真空成型などで成型した樹脂成形シート5を抜刃型4上に載置しその上方から前記打抜機の押圧板を徐々に下降させて樹脂成形シート上を押し付けて行くと樹脂成形シートの成形体6の突出部6aが該抜刃型の切抜溝4a(図1)内への挿入ガイドとなって該切抜溝内に次第に嵌り込み、これにより必然的に抜刃型4の据付位置が成形体の配列寸法と一致する。
【0031】
と同時に、抜刃型4側のフック型面ファスナー15の係合素子15aの先端部15bは図9(a)の如く基盤2側の面ファスナー15の係合素子15aの先端部15b間に押し込まれると共に、ループ型面ファスナー側の係合素子16aの先端部16bも同様に図9(b)の如く軽度の係合状態となって先ず水平方向の位置関係が確定する。次いで、そのまま押圧板22を押し下げて行くと抜刃型下面11と基盤の凹み溝底壁14とが当接しこの時点で各係合素子同士が確実に係合して抜刃型4の据付が完了する。以降は所定の手順で抜き工程に移行すると共に、抜刃型4を取り外すときは隣接する抜刃型間の空間13にドライバー等の工具を挿入して軽く抉るだけで抜刃型4を取り外しできるので該抜刃型の交換も容易である。
【実施例2】
【0032】
図10は本発明の第2実施例で、上述した実施例1と同一部材は同一名称・同一符号を用い異なる部分のみを説明する。抜刃型4下方の底板9には、実施例1で説明した枠組状の当接板10に代えて平板状で該当接板と同等の高さ寸法のデイスタンスピース20が底板9に対して適宜幅で複数個所に分散配置されており、該抜刃型を基盤2上に据え付けたときにこの下面21が凹み溝3の底壁14(図2)上と当接して各面ファスナー同士を好適に係合する。
【0033】
また、底板9の前記デイスタンスピースで囲まれた領域には実施例1と同様に面ファスナー15、16が装着している。この面ファスナーの装着態様ならびにデイスタンスピース20の下面21から前記面ファスナー先端部までの窪み深さは上述した実施例と同じであるので以下その説明を省略する。なお、前記デイスタンスピースは基盤の凹み溝3の底壁14上に装着してもよいことは言うまでもなく、これによりデイスタンスピース自体の加工も簡単でかつ接着接合も容易となる。
【実施例3】
【0034】
図11は本発明の第3実施例で、樹脂成形シートの打ち抜き加工に伴う振動によって生ずる抜刃型の浮き上がり量を制限したもので、以下実施例1と同一部材は同一名称・同一符号を用いて異なる部分のみを説明する。基盤32の凹み溝33には抜刃型34が据え付けられると共に、該抜刃型の基台38と底板39は抜刃37の内側に一体的に嵌入している。また、基盤32の底壁35には略円形の段付凹み穴40が設けられ、ここに遊嵌板41が嵌まり込んで該遊嵌板と抜刃型の底板39を略中央部で貫通する螺合ねじ42、ロッキングナット43によって緊締・保持されており、さらにその下方となる基盤の底壁35の下面には座板44が螺合ねじ(図示せず)その他の固定手段によって着脱自在に装着している。
【0035】
また、前記遊嵌板41の一側には段付凸部45が設けられその大径部及び小径部の外形寸法は段付凹み穴40の大径穴及び小径穴の内径よりもやや小径に形成されると共に、該段付凸部の高さは前記段付凹み穴の段部46(小径部)の高さよりもやや高く設定されて嵌め込まれており、これにより抜刃型34の垂直方向に対する移動量は前記段付凸部の高さと段付凹み穴の段部46の高さとの差異量に制限されると共に、水平方向に対しても遊嵌板41と段付凹み穴40との直径差分の移動量に制限されている。
【0036】
さらに、遊嵌板41の下面にはループ型面ファスナー16が装着すると共に、座板44上には前記面ファスナーに対向してフック型面ファスナー15が装着し各面ファスナー同士は相互に係合し抜刃型34の水平方向の位置を確定している。なお、本実施例においてもこの係合度合いは遊嵌板41と段付凹み穴40の大径部の高さ寸法によって決定しその値は前述実施例1に準ずるものである。
【0037】
本第3実施例は、以上の如く遊嵌板41と段付凹み穴40を設けることにより抜刃型34の垂直方向及び水平方向の移動量を制限するように構成したので、特に厚手の樹脂成形シートの打ち抜き作業に伴う跳ね返り振動があったとしても該抜刃型が基盤32上から大きく浮き上がることがない。また、打ち抜かれた成形体6を取り出す際も該成形体の板厚が増すほど抜刃37間に嵌り込んで取り出しがきつくなるのが普通であるが、該抜刃型は螺合ねじ42によって緊締・保持されているので前記跳ね返り量の制限と相俟って打ち抜かれた成形体6が飛び出るため取り出しも容易となりかつその据付位置が大きく狂うこともない。
【0038】
さらに、本実施例で用いる面ファスナー15.16の装着面積も単に抜刃型の据え付け位置を確定するに必要な小面積でよいから経済的である。また、前記面ファスナー15、16は打ち抜くべき樹脂成形シートの材質や板厚に応じて適宜装着面積を変更したりまたは削除したりしてもよく、また基盤2側、抜刃型4側何れに装着する組み合わせであってもよくその装着態様は特に限定しない。
【0039】
以上説明したように、本発明によれば従来抜刃型の据付位置を確定するために仮止めや試し打ちを複数回繰り返し後決定していた作業が僅か1回の工程で達成でき、しかも固定ボルトの弛みも解消でき好適な係合・固定状態を保持できる。また、基盤2から抜刃型4を取り外す際も専用の工具必要とせず簡単に離脱できるなどその作用・効果は多大である。
【0040】
なお、基盤2側及び抜刃型4側に装着する面ファスナーは上述実施例で説明した態様に限らず、例えば基盤2側にフック型面ファスナー15とループ型面ファスナー16を、抜刃型4側にフック型面ファスナー15を装着してもよく、またそれぞれの装着方法も、底板の中央部にフック型面ファスナー16を、その周縁にループ型面ファスナーを配置するようにしてもよく、さらにフック型面ファスナー同士又はループ型面ファスナー同士の組み合わせとしても同様の作用・効果を奏するものであり、本発明の要旨の範囲内において各種の変形態様が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明樹脂シート成型用の抜刃型装置の全体斜視図である。
【図2】基盤の説明図である。
【図3】抜刃型の断面図である。
【図4】抜刃型底面の説明図である。
【図5】フック型面ファスナーの説明図である。
【図6】ループ型面ファスナーの説明図である。
【図7】面ファスナーの係合に関する説明図である。
【図8】面ファスナー同士の仮係合状態の説明図である。
【図9】面ファスナー同士の係合状態を示す説明図である。
【図10】本発明の第2実施例の断面図である。
【図11】本発明の第3実施例の断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 抜刃型装置
2 基盤
3 凹み溝
4 抜刃型
5 成型樹脂シート
6 成型体
7 抜刃
8 基台
9 底板
10 当接板
11 下面
12 開口
14 底壁
15 フック型面ファスナー
16 ループ型面ファスナー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抜刃を埋設した抜刃型と該抜刃型を据付ける基盤とにより成る樹脂成型シート打抜用の抜刃型装置において、前記抜刃型の下面には面ファスナーを装着すると共に前記基盤上には該面ファスナーに対向させて係合用の面ファスナーを装着し、前記各面ファスナーを介して抜刃型と基盤とを相互に係合離脱自在に構成したことを特徴とする樹脂成型シート打抜用の抜刃型装置。
【請求項2】
前記抜刃型と基盤に装着する面ファスナーの何れか一方はフック型面ファスナーとループ型面ファスナーの双方を併用して装着すると共に、他方に装着する面ファスナーはフック型面ファスナーであって、これら面ファスナーの係合素子同士が対向し面接触したときに相互に係合するように構成したことを特徴とする請求項1記載の樹脂成型シート打抜用の抜刃型装置。
【請求項3】
前記抜刃型下面に装着した面ファスナーの係合素子の先端部は、該抜刃型の下面よりも窪ませて装着すると共に、その窪み深さの設定は前記抜刃型下方の底板に装着する当接板の高さを変更することにより調節可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の樹脂成型シート打抜用の抜刃型装置。
【請求項4】
前記抜刃型下面に装着した面ファスナーは、前記当接板の内周縁近傍に沿ってフック型面ファスナーを、その略中央部にはループ型面ファスナーを装着する一方、前記基盤には該基盤の上面よりも窪ませて設けた凹み溝を形成し、その底壁にはフック型面ファスナーを装着したことを特徴とする請求項3記載の樹脂成型シート打抜用の抜刃型装置。
【請求項5】
抜刃を埋設した抜刃型と該抜刃型を据付ける基盤とにより成る樹脂成型シート打抜用の抜刃型装置において、前記基盤の底壁には段付凹み穴を設け該段付凹み穴には前記抜刃型の底板に螺合ねじを介して緊締・固定する遊嵌板を嵌め込んで前記抜刃型の水平方向と垂直方向の移動量を制限すると共に、抜刃型の下面となる遊嵌板には面ファスナーを装着し前記基盤側には該面ファスナーに対向させて係合用の面ファスナーを装着し、前記各面ファスナーを介して抜刃型と基盤とを相互に係合離脱自在に構成したことを特徴とする樹脂成型シート打抜用の抜刃型装置。
【請求項1】
抜刃を埋設した抜刃型と該抜刃型を据付ける基盤とにより成る樹脂成型シート打抜用の抜刃型装置において、前記抜刃型の下面には面ファスナーを装着すると共に前記基盤上には該面ファスナーに対向させて係合用の面ファスナーを装着し、前記各面ファスナーを介して抜刃型と基盤とを相互に係合離脱自在に構成したことを特徴とする樹脂成型シート打抜用の抜刃型装置。
【請求項2】
前記抜刃型と基盤に装着する面ファスナーの何れか一方はフック型面ファスナーとループ型面ファスナーの双方を併用して装着すると共に、他方に装着する面ファスナーはフック型面ファスナーであって、これら面ファスナーの係合素子同士が対向し面接触したときに相互に係合するように構成したことを特徴とする請求項1記載の樹脂成型シート打抜用の抜刃型装置。
【請求項3】
前記抜刃型下面に装着した面ファスナーの係合素子の先端部は、該抜刃型の下面よりも窪ませて装着すると共に、その窪み深さの設定は前記抜刃型下方の底板に装着する当接板の高さを変更することにより調節可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の樹脂成型シート打抜用の抜刃型装置。
【請求項4】
前記抜刃型下面に装着した面ファスナーは、前記当接板の内周縁近傍に沿ってフック型面ファスナーを、その略中央部にはループ型面ファスナーを装着する一方、前記基盤には該基盤の上面よりも窪ませて設けた凹み溝を形成し、その底壁にはフック型面ファスナーを装着したことを特徴とする請求項3記載の樹脂成型シート打抜用の抜刃型装置。
【請求項5】
抜刃を埋設した抜刃型と該抜刃型を据付ける基盤とにより成る樹脂成型シート打抜用の抜刃型装置において、前記基盤の底壁には段付凹み穴を設け該段付凹み穴には前記抜刃型の底板に螺合ねじを介して緊締・固定する遊嵌板を嵌め込んで前記抜刃型の水平方向と垂直方向の移動量を制限すると共に、抜刃型の下面となる遊嵌板には面ファスナーを装着し前記基盤側には該面ファスナーに対向させて係合用の面ファスナーを装着し、前記各面ファスナーを介して抜刃型と基盤とを相互に係合離脱自在に構成したことを特徴とする樹脂成型シート打抜用の抜刃型装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−183667(P2008−183667A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19677(P2007−19677)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(306048144)有限会社山崎抜型 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(306048144)有限会社山崎抜型 (2)
【Fターム(参考)】
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