説明

樹脂成形体の切断装置

【課題】樹脂成形体を精度よく切断することが可能な樹脂成形体の切断装置を提供する。
【解決手段】張架された加熱線5と、加熱線5を成形シート1に対して相対移動させることにより成形シート1を切断する移動機構4と、加熱線5を張架した状態で支持する支持機構6とを備えた切断装置。加熱線5は、厚みより幅が大きい帯状に形成されている。支持機構6は、加熱線5の少なくとも一端部を保持する保持部7と、保持部7の姿勢を保つ姿勢維持機構8とを備えている。姿勢維持機構8は、保持部7から延出する複数のシャフト14と、シャフト14を支持する固定体15とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱線を用いて樹脂成形体を切断する装置に関し、特に、帯状の加熱線を使用する切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成形体の切断装置としては、ステンレス鋼やニクロム線からなる電熱線材を使用した切断装置が知られている(例えば、特許文献1〜4を参照)。
特許文献3および特許文献4には、帯状の加熱線を用いた切断装置が記載されている。帯状の加熱線を採用すると、断面円形の加熱線を用いた場合に比べて、切断時に樹脂成形体から受ける押圧力による加熱線の撓みが少なく、精度の高い切断が可能である。
【特許文献1】特開平9−94800号公報
【特許文献2】実開平5−24300号公報
【特許文献3】特開2006−15437号公報
【特許文献4】特開2005−96065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の切断装置では、帯状の加熱線を使用した場合に、切断時に樹脂成形体から受ける力によって加熱線が厚さ方向に傾いた状態となり、精度の高い切断が難しくなることがあった(図6を参照)。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、樹脂成形体を精度よく切断することが可能な樹脂成形体の切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明によれば、樹脂成形体を切断する装置であって、張架された加熱線と、前記加熱線を前記樹脂成形体に対して相対移動させることにより前記樹脂成形体を切断する移動機構と、前記加熱線を張架した状態で支持する支持機構とを備え、前記加熱線が、厚みより幅が大きい帯状に形成され、前記移動機構が、前記相対移動により前記樹脂成形体が前記加熱線の幅方向の一端側から他端側に向けて前記加熱線を横切ることによって樹脂成形体が切断されるようにされ、前記支持機構が、前記加熱線の少なくとも一端部を保持する保持部と、この保持部の姿勢を保つ姿勢維持機構とを備え、この姿勢維持機構が、前記保持部から延出する複数のシャフトと、前記シャフトを支持する固定体とを有する樹脂成形体の切断装置を提供する。
本発明では、前記シャフトが前記加熱線にほぼ平行に形成され、前記固定体が、前記複数のシャフトをそれぞれ進退可能に挿通させる複数の挿通孔を有することが好ましい。
前記複数のシャフトは、その短手方向に間隔をおいて配置されていることが好ましい。
本発明では、前記支持機構が、前記加熱線の一端部に設けられ、前記加熱線の他端部に、前記加熱線に張力を与える張力付与部が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、保持部から延出する複数のシャフトが固定体に支持されているので、保持部の姿勢(傾き)は固定体に対して変化しない。このため、切断の際に、加熱線に樹脂成形体によって厚み方向の力が加えられても、加熱線の傾きを抑制できる。
従って、設定した切断寸法に対してずれが少なく、精度の高い切断が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図7は、本発明に係る樹脂成形体の切断装置の一実施形態を備えた樹脂製容器の製造装置を示す図である。
製造装置21は、樹脂シートAに収容凹部を形成した成形シートBを成形する成形機22と、成形シートBを個別の容器Cに切断する切断装置23と、容器Cを移送する移送装置24とを備えている。
成形機22は、樹脂シートロール25から供給される樹脂シートAを雌雄一対の成形型で挟み加熱して、収容凹部が形成された所定長さの成形シートBを得る。
成形機22で作製された成形シートBは、収容凹部の開口が上向きの状態でコンベア26上を搬送され、反転器27により収容凹部の開口が下向きとなるよう反転され、さらにコンベア26上を搬送されて切断装置23のテーブル3上に載せられ、加熱線5によって個別の容器Cに切断される。
【0007】
切断装置23で得られた容器Cは、移送装置24により製品コンベア28上に移送され、所定枚数となるまで積み重ねられ、順次下流側に送られる。
製品コンベア28の下流側には、梱包部29が設けられている。梱包部29では、所定枚数積み重ねられた容器Cを、段ボールなどの適当な梱包材に収納、梱包して梱包製品Dとする。
【0008】
以下、本発明の樹脂成形体の切断装置の一実施形態である切断装置23の構成を詳細に説明する。
図1は、切断装置23を模式的に示す斜視図である。図2は、切断装置23の支持機構6を示す正面図である。図3は、支持機構6を一方側から見た側面図である。図4は、支持機構6を他方側から見た側面図である。図5は、加熱線5を模式的に示す斜視図である。
【0009】
図1に示すように、切断装置23は、成形シート1(樹脂成形体)を個別の容器2(樹脂製容器)ごとに切断するものであって、成形シート1を載置するテーブル3と、テーブル3を上死点と下死点との間で上下動させる移動機構4と、縦横に固定状態で張架された加熱線5と、加熱線5を張架した状態で支持する支持機構6とを備えている。
成形シート1としては、各種の熱可塑性樹脂シートを用いることができ、特に発泡スチレン系樹脂シートが好ましい。容器2は、収容凹部2cが形成された容器本体部2aと、蓋部2bとからなる。
【0010】
テーブル3は、成形シート1の収容凹部2cに嵌合する凸部(図示略)が形成された位置決め型であり、成形シート1に形成された容器2同士の境界に沿って設けられた加熱線通過用のスリット3aを有する。
移動機構4は、テーブル3を上下動させることによって、成形シート1を、加熱線5を横切るように移動させることができる。
【0011】
加熱線5は、テーブル3の上死点と下死点の間に、固定された状態で張架されている。
図5に示すように、加熱線5は、厚みよりも幅が大きい帯状に形成されている。厚みT1に対する幅W1の比(W1/T1)は、1.5〜100が好ましく、2.5〜25がさらに好ましい。
加熱線5は、幅方向の一端側(エッジ面5d)が下、幅方向他端側(面5dとは逆側のエッジ面5e)が上となる向きで張架される。
符号5cは加熱線5の断面S1の長辺に相当する側面である。
【0012】
加熱線5の厚みT1は、小さすぎれば成形シート1の切断後に熱切断した個々の切断物同士が再融着するおそれがあり、大きすぎれば必要な熱量や張力が大きくなってしまう。このため、例えば、0.1〜1.0mm、好ましくは0.2〜0.8mmが好適である。
加熱線5の幅W1は、小さすぎれば加熱線5の撓みや振幅が大きくなるおそれがあり、大きすぎれば必要な熱量や張力が大きくなってしまうため、例えば、1.5〜10mm、好ましくは2.0〜5.0mmが好適である。
加熱線5を構成する材料としては、例えば、ニクロム(Ni−Cr合金)、ステンレス鋼が好ましい。特に、安価に得られる点で、ニクロムを採用することが好ましい。
図1に示すように、縦方向の加熱線5aと、これに直交する横方向の加熱線5bとは、若干高さを違えて張架してもよい。
【0013】
支持機構6は、加熱線5の一端部を支持する保持部7と、保持部7の姿勢を保つ姿勢維持機構8とを備えている。
図2〜図4に示すように、保持部7は、矩形板状の保持部本体11と、保持部本体11の保持凹部11aに配置された2枚の接続板12とを備えている。以下の説明において、図2における右方を前方といい、左方を後方ということがある。
保持凹部11aは、保持部本体11の下面11dに、その延在方向(前後方向)にわたって溝状に形成されている。
【0014】
接続板12は、保持凹部11a内に前後方向にわたって配置された矩形状の板体であり、これら2枚の接続板12の間に加熱線5の一端部を挟み込むことができる。接続板12、12は、加熱線5の両側面5c、5cに当接して加熱線5を挟み込むように構成するのが好ましい。
保持部本体11には、貫通孔11cが形成されており、貫通孔11cに挿通した固定ボルト11bによって、接続板12を加熱線5に押し当てて加熱線5を保持できる。
なお、保持部7には、テンションシリンダ(図示略)などにより後方への引張力を加えてもよい。
【0015】
姿勢維持機構8は、保持部7から延出する複数のシャフト14と、シャフト14を支持する固定体15とを有する。
図示例では、シャフト14は、断面略円形とされ、保持部7の後面7aの上部および下部に、それぞれ後方に直線的に延出して形成されている。2本のシャフト14は、上下方向(シャフト14の短手方向)に間隔をおいて、互いにほぼ平行に形成されている。
シャフト14が間隔をおいて配置されているため、保持部7に傾きが生じるのを防ぐことができる。
シャフト14は、加熱線5にほぼ平行に形成されている。
なお、シャフトの数は、3以上とすることもできる。
【0016】
固定体15は、矩形板状に形成され、シャフト14が挿通する挿通孔16が形成されている。
挿通孔16は、シャフト14とほぼ同じ高さに、前面15aから後面15bにかけて固定体15を貫通して形成されている。挿通孔16は、シャフト14の数に応じて複数形成されている。図示例では、2本のシャフト14がそれぞれ挿通する2つの挿通孔16が形成されている。
【0017】
挿通孔16は、シャフト14が前後方向に進退自在に挿通できるように形成されている。挿通孔16内には、挿通孔16の両端部に、ベアリング17が設けられており、これによってシャフト14が容易に進退できる。
シャフト14が進退自在であるため、温度変化によって加熱線5が伸縮した場合でも、その長さに応じて保持部7の移動が可能であり、加熱線5にたるみが生じるのを防ぐことができる。
ベアリング17は、シャフト14を進退自在に支持する軸受けであり、ボールベアリングやローラーベアリングなどの転がり軸受けが採用できる。
【0018】
固定体15は、その姿勢(傾き)が変化することがないように、直接、または接続部材(図示略)を介して、切断装置23のフレームなどの被固定部(図示略)に固定されている。
符号18は、固定体15の後方に相当する位置のシャフト14に取り付けられたストッパであり、保持部7の前後方向の移動範囲を規定するものである。
【0019】
図2に示すように、加熱線5の他端部には、接続部材19を介してテンションシリンダ20(張力付与部)が接続されており、テンションシリンダ20によって加熱線5に所望の張力を与えることができるようになっている。
【0020】
加熱線5を加熱する方法は特に限定されないが、加熱線5の両端部を電源に接続して加熱線5に通電することによって加熱線5を発熱させることが好ましい。なお、加熱線5の端部を外部から加熱することも可能である。
加熱線5は一端側と他端側とで加熱線5の高さが異なるように傾斜して張架してもよい。加熱線5を傾斜させることによって、加熱線5の切断が点切断となり、線切断する場合に比べて温度低下が少なくなり、切れ味が良好に保たれる。
【0021】
次に、切断装置23を用いて成形シート1を切断する方法について説明する。
図1に示すように、テーブル3を上昇させると、成形シート1は、加熱線5の幅方向の一端側(ここでは加熱線5の下側)から他端側(ここでは加熱線5の上側)に向けて加熱線5を横切るようにして移動し、加熱線5によって熱切断され、容器2が得られる。
成形シート1を切断する際には、成形シート1によって加熱線5に押圧力が加えられる。
【0022】
保持部7から延出する2本のシャフト14は固定体15に支持されているので、保持部7の姿勢(傾き)は固定体15に対して変化しない。
このため、加熱線5に、切断時に成形シート1によって厚み方向の力が加えられても、図6に仮想線で示すような傾きが生じるのを抑制できる。
従って、設定した切断寸法に対してずれが少なく、精度の高い切断が可能となる。
【0023】
また、加熱線5が傾くと、切断時に成形シート1から受ける押圧力により加熱線5に撓みが生じやすくなるが、前記傾きを抑制できるため、加熱線5の撓みを原因とする切断精度の低下および加熱線5の耐久性低下を防ぐことができる。
【0024】
樹脂成形体の切断装置としては、上述した構成のものに限定されず、各種構成のものを採用できる。
図示例では、移動機構4は、成形シート1を上下動させることによって、相対的に加熱線5を成形シート1に対し移動させ、これによって成形シート1を切断するようになっているが、逆に、加熱線5を成形シート1に対し移動させて成形シート1を切断する機構を採用してもよい。また、成形シート1と加熱線5の両方を互いに近づく方向に移動させることによって成形シート1を切断する機構を採用することもできる。
また、支持機構は加熱線の両端部に設けることもできる。
【0025】
なお、本発明の切断対象の樹脂成形体としては、上述した発泡ポリスチレン以外の発泡樹脂材料で形成されたシート(発泡樹脂シート)の他、発泡樹脂板、発泡樹脂ブロック等であってもよい。また、非発泡の樹脂シート、樹脂板、樹脂ブロック等も採用可能である。発泡ポリスチレン以外の発泡樹脂材料としては、例えば、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリウレタン等が挙げられる。非発泡の樹脂シート、樹脂板、樹脂ブロックとしては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン製のもの等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の切断装置の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1に示す切断装置の支持機構を示す正面図である。
【図3】図2に示す支持機構を一方側から見た側面図である。
【図4】図2に示す支持機構を他方側から見た側面図である。
【図5】図1に示す切断装置に使用される加熱線を模式的に示す斜視図である。
【図6】加熱線の傾きに関する説明図である。
【図7】図1に示す切断装置を適用可能な製造装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0027】
1…成形シート(樹脂成形体)、2…容器、4…移動機構、5…加熱線、6…支持機構、7…保持部、8…姿勢維持機構、14…シャフト、15…固定体、16…挿通孔、20…テンションシリンダ(張力付与部)、23…切断装置、T1…厚み、W1…幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形体を切断する装置であって、
張架された加熱線と、前記加熱線を前記樹脂成形体に対して相対移動させることにより前記樹脂成形体を切断する移動機構と、前記加熱線を張架した状態で支持する支持機構とを備え、
前記加熱線が、厚みより幅が大きい帯状に形成され、
前記移動機構が、前記相対移動により前記樹脂成形体が前記加熱線の幅方向の一端側から他端側に向けて前記加熱線を横切ることによって樹脂成形体が切断されるようにされ、
前記支持機構は、前記加熱線の少なくとも一端部を保持する保持部と、この保持部の姿勢を保つ姿勢維持機構とを備え、
この姿勢維持機構が、前記保持部から延出する複数のシャフトと、前記シャフトを支持する固定体とを有することを特徴とする樹脂成形体の切断装置。
【請求項2】
前記シャフトが、前記加熱線にほぼ平行に形成され、
前記固定体は、前記複数のシャフトがそれぞれ進退可能に挿通する複数の挿通孔を有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形体の切断装置。
【請求項3】
前記複数のシャフトは、その短手方向に間隔をおいて形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂成形体の切断装置。
【請求項4】
前記支持機構が、前記加熱線の一端部に設けられ、
前記加熱線の他端部には、前記加熱線に張力を与える張力付与部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の樹脂成形体の切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−183669(P2008−183669A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19744(P2007−19744)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(592222444)ホクエイ化工株式会社 (11)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】