説明

樹脂成形品の取付ブラケット

【課題】車両走行中の振動や衝撃に対しては強度を十分に発揮できると共に、樹脂成形品の本体の回収時にのみ、小さい外力で容易に破断分離することができ、よって回収作業性およびリサイクル性を向上すること。
【解決手段】ボルト挿通孔3aに通したボルト10で締着部3が取付対象部材に締結されることにより樹脂成形品の本体1を取付対象部材に固定する樹脂成形品の取付ブラケット2である。この取付ブラケット2には、その締着部3の内部に空洞4が設けられており、通常の締結力を加えたときには締着部3が潰れずにその締結力を適正に受け止め、通常の締結力を超える締結力を加えたときに、空洞4があることにより締着部3が潰れて破断し且つ樹脂成形品の本体1から分離するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等といった車両に用いられ且つ、例えばリレー、ヒューズ、等の電気部品を収容するリレー・ボックス、ヒューズ・ボックス、等の電気接続箱(即ち、エレクトリック・ジャンクション・ブロック)、電線等を保護するプロテクタ、等といった樹脂成形品に係り、より詳細には、そのような樹脂成形品を車両の車体パネル等の取付対象部材(即ち、被取付体)であるブラケットに固定するための樹脂成形品の取付ブラケットおよび樹脂成形品の取付構造であって、特に車両をリサイクルするために易解体性に優れたものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車において、取付ブラケットが一体に形成された本体を有する電気接続箱、プロテクタ、等の樹脂成形品を車体に取り付けるに当たっては、取付ブラケットの締着部の下面を車体側のブラケット(取付対象部材)の受面に載せた状態で、締着部に形成したボルト挿通孔にボルト(即ち、雄ネジ)を通し、そのボルトで締着部を車体に締結する。これにより、樹脂成形品の本体が車体に固定される。
【0003】
近年、自動車のリサイクルに係る要請から、解体時に電気接続箱を容易に車体から取り外せるようにすることが強く望まれており、それを実現するものとして、取付ブラケットの一部に脆弱部を形成しておき、通常よりも強い力を加えることで脆弱部を破断させて、電気接続箱の本体だけを容易に車体から取り外せるようにした構造が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、等参照)。
【0004】
図5は脆弱部を形成した取付ブラケットの従来例を示している。この例では、取付ブラケット50に、切欠部51とこの切欠部51と同一線L上に位置する破断用孔52とからなる破断容易部53を形成し、破断容易部53の横断面積を他の部分よりも小さくすることで、この部分に応力の集中を生じさせて、小さい外力で本体54と取付ブラケット50とを破断分離できるようにしている。
【0005】
このような構成にすれば、本体54に強い外力を作用させることで、取付ブラケット50の破断容易部53に亀裂を生じさせることができ、切欠部51と破断用孔52とを結ぶ線L上に亀裂を進展させて、本体54を破損することなく回収することができる。
【0006】
【特許文献1】特開2000−350331号公報
【特許文献2】特開2004−328953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の取付ブラケットでは、車両走行中の振動や衝撃により破断容易部53に不測の大きな外力が作用することにより、破断容易部53から破断する可能性がある。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両走行中の振動や衝撃に対しては強度を十分に発揮できると共に、樹脂成形品の本体の回収時にのみ、小さい外力で容易に破断分離することができ、よって回収作業性およびリサイクル性を向上することのできる取付ブラケット、および該取付ブラケットを備えた樹脂成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明に係る取付ブラケットは、
樹脂成形品の本体に一体に形成され、雄ネジ挿通孔が設けられた締着部を備え、且つ該締着部の下面を取付対象部材の受面に載せた状態で、前記雄ネジ挿通孔に通した雄ネジで前記締着部が前記取付対象部材に締結されることにより、前記樹脂成形品の本体を前記取付対象部材に固定する取付ブラケットであって、
前記締着部の内部に空洞が設けられており、通常の締結力を加えたときには前記締着部が潰れずにその締結力を適正に受け止め、そして通常の締結力を超える締結力を加えたときに、前記空洞があることによって、前記締着部が潰れて破断し且つ前記樹脂成形品の本体から分離することを特徴としている。
【0010】
この構成の取付ブラケットによれば、締着部の内部に空洞を設けているので、空洞を潰さない通常の締結力で締め付けている状態では、十分な強度を発揮させて、本体を取付対象部材に固定することができる。また、この構成の取付ブラケットでは、車両のリサイクルの際に通常の締結力を超える締結力で締め付けると、締着部に空洞があることによって、締着部を潰すことができるので、その部分で取付ブラケットを破断し且つ樹脂成形品の本体から分離することができる。よって、樹脂成形品の本体を小さい力で容易に取付対象部材から取り外すことができる。
【0011】
また、上述した目的を達成するために、本発明に係る樹脂成形品は、上記(1)に記載した取付ブラケットが一体に形成された本体を備えることを特徴としている。
【0012】
この構成の樹脂成形品によれば、締着部に空洞が存在する取付ブラケットを用いて樹脂成形品の本体を取付対象部材に雄ネジで固定しているので、強い締結力を加えて締着部を潰すことにより、取付ブラケットを破断分離することができ、樹脂成形品の本体を取付対象部材から容易に取り外すことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両走行中の振動や衝撃に対しては強度を十分に発揮できると共に、樹脂成形品の本体の回収時にのみ、小さい外力で容易に破断分離することができ、よって回収作業性およびリサイクル性を向上することのできる取付ブラケット、および該取付ブラケットを備えた樹脂成形品を提供できる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための最良の形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、下記実施形態は本発明を自動車に搭載される電気接続箱に適用した例である。
【0016】
図1(a)および(b)は本発明に係る取付ブラケットの実施形態の構成を示す斜視図であって、図1(a)は本発明の取付ブラケットを備えた電気接続箱の本体を斜め上から見た斜視図、そして図1(b)は図1(a)の電気接続箱の本体から二点鎖線円Ib内に示される取付ブラケットの部分のみを切り取って示す拡大斜視図である。図2(a)および(b)はボルトを装着した状態の取付ブラケットを示す構成図であって、図2(a)は斜視図、そして図2(b)は側面図である。
【0017】
図1(a)において、1は電気接続箱(即ち、樹脂成形品)の本体、そして2はその外周部に一体に突設された舌片状の取付ブラケットである。図1(a)〜図2(b)に示されるように、取付ブラケット2の先端側には、ボルト挿通孔3aを有した締着部3が設けられており、この締着部3の下面を取付対象部材である車体パネルの受面(不図示)に載せた状態で、ボルト挿通孔3aに通したボルト10で締着部3を車体パネルに締結することにより、電気接続箱の本体1を車体パネルに固定できるようになっている。
【0018】
締着部3には、取付ブラケット2の厚さ方向の中間部をくり抜くことで空洞4が設けられている。この空洞4は、図1(b)に示されるように、取付ブラケット2の一方の側端面から他方の側端面まで高さB2の寸法で貫通しており、厚さB1(B1>B2)の取付ブラケット2の上下面に梁状の板部4a、4bを残している。この上下面の板部4a、4bは、ボルト10により通常の締結力で締着部3を締め付ける限りにおいては潰れることはないが、通常の締結力を超える大きな締結力でボルト10により締め付けた場合には潰れる程度の強度を備えている。
【0019】
この取付ブラケット2を用いて電気接続箱の本体1を車体パネルに固定する場合は、締着部3の下面を車体パネル(不図示)の受面に載せた状態で、図2(a)および(b)に示されるように、締着部3に形成したボルト挿通孔3aにボルト10を通し、該ボルト10を締め込むことにより、通常の締結力で締着部3を車体パネルに締結する。それにより、電気接続箱の本体1を車体パネルに固定することができる。
【0020】
このように取り付けた状態においては、空洞4を潰さない通常の締結力で締め付けているので、十分な強度を発揮することができ、本体1を車体パネルに安定して固定することができる。また、車両のリサイクルの際に通常の締結力を超える締結力でボルト10を締め付けると、締着部3に空洞4があることによって、特に上面の壁部4aが潰れる。そしてその部分から取付ブラケット2が破断分離されることにより、電気接続箱の本体1を小さい力で容易に車体パネルから取り外すことができる。
【0021】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0022】
例えば、上記ボルトとして六角ボルトが図示されているが、これに限らず、締着部を取付対象部材に締結する雄ネジであれば何でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る取付ブラケットの実施形態の構成を示す斜視図であって、図1(a)は本発明の取付ブラケットを備えた電気接続箱の本体を斜め上から見た斜視図、そして図1(b)は図1(a)の電気接続箱の本体から二点鎖線円Ib内に示される取付ブラケットの部分のみを切り取って示す拡大斜視図である。
【図2】ボルトを装着した状態の取付ブラケットを示す構成図であって、図2(a)は斜視図、そして図2(b)は側面図である。
【図3】従来の取付ブラケットの構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0024】
1:本体
2:取付ブラケット
3:締着部
3a:ボルト挿通孔(雄ネジ挿通孔)
4:空洞
10:ボルト(雄ネジ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形品の本体に一体に形成され、雄ネジ挿通孔が設けられた締着部を備え、且つ該締着部の下面を取付対象部材の受面に載せた状態で、前記雄ネジ挿通孔に通した雄ネジで前記締着部が前記取付対象部材に締結されることにより、前記樹脂成形品の本体を前記取付対象部材に固定する取付ブラケットであって、
前記締着部の内部に空洞が設けられており、通常の締結力を加えたときには前記締着部が潰れずにその締結力を適正に受け止め、そして通常の締結力を超える締結力を加えたときに、前記空洞があることによって、前記締着部が潰れて破断し且つ前記樹脂成形品の本体から分離することを特徴とする取付ブラケット。
【請求項2】
請求項1に記載した取付ブラケットが一体に形成された本体を備える樹脂成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−278582(P2008−278582A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−116971(P2007−116971)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】