樹脂成形装置の金型取付用冶具、当該金型取付用冶具が配された射出成形装置、及び射出成形装置の金型取付方法
【課題】 より正確な位置で高い再現性で金型の位置合わせが可能となる新規な樹脂成形装置の金型取付用冶具を提供する。
【解決手段】 樹脂成形装置の金型取付用冶具1は、圧縮ばね等の力で上昇するピストンと、このピストンの上面からその頂部が突出したローラ3とを備え、ローラ3の頂部が可動型220の下面と当接しており、可動型220の固定を解除し型締め状態を解除したときに前記可動型220の重量と釣り合う力で下支えする。
【解決手段】 樹脂成形装置の金型取付用冶具1は、圧縮ばね等の力で上昇するピストンと、このピストンの上面からその頂部が突出したローラ3とを備え、ローラ3の頂部が可動型220の下面と当接しており、可動型220の固定を解除し型締め状態を解除したときに前記可動型220の重量と釣り合う力で下支えする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形装置等の樹脂成形装置の金型取付用冶具、この金型取付用冶具が配された射出成形装置、並びに射出成形装置の金型取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形は樹脂成形の一種であり、加熱溶融させた樹脂に射出圧を加えて押込んで金型に充填し、冷却して成形する方法であり、複雑な形状の製品を大量生産するのに適している。一般に、射出成形は、型閉じ、型締め、射出、保圧、冷却、型開き、成形された製品の取出し、の順序で行われ、このサイクルの繰り返しで、製品を連続的に生産する。なおここで、型閉じは、開いた金型を低い圧力で速やかに閉じる動作のことであり、また、型締めは、閉じた金型を型閉じ動作時の圧力よりさらに大きな圧力で締め付ける動作のことである。
【0003】
前記型締めには、金型のうちの可動型を縦方向(上下方向)に移動させる縦型締めと、金型のうちの可動型を横方向(左右方向又は前後方向)に移動させる横型締めがある。横型締め構造は、材料の投入から金型までの距離を長くでき、成形後の製品を取り出し易い特徴がある。射出成形装置は主に型締ユニットと射出ユニットに分かれている。型締ユニットは金型の開閉や突き出しを行うユニットであり、金型の開閉方式には、トグル方式と直圧方式とがある。射出ユニットは樹脂を加熱溶融させ、金型内へ射出する装置である。
【0004】
図13は既知の横型締め構造の型締ユニット100を側面側から示す構造図であり、この金型200が取り付けられた箇所を示す構造図を図14に示す。金型200は固定型210と可動型220とが対面して配されており、固定型210はクランプ手段115によって固定プラテン(固定盤)111に取り付けられており、可動型220はクランプ手段116によって可動プラテン(可動盤)113に取り付けられている。固定プラテン111とバックプラテン117(支持盤)とはそれぞれ機台102上に固定されており、可動プラテン113はガイド部材191とレール部材192とからなるスライド手段190を介して水平方向にスライド自在に機台102上に配されている。固定プラテン111とバックプラテン117との間には可動プラテン113が配されており、固定プラテン111とバックプラテン117とで固定された複数のタイバー110(図13では4本のタイバー110)が可動プラテン113に挿通されており、可動プラテン113が固定プラテン111とバックプラテン117との間でスライド自在となる構成である。ここで、可動プラテン113のガイド方法を例示すると、スライド手段190とタイバー110を組み合わせた方法、スライド手段190だけの方法、又はタイバー110だけの方法がある。
【0005】
射出成形装置における一般的な横型締め構造の固定型210は、その背面(固定型取り付け板211の背面)にロケートリング121が付設されており、このロケートリング121が、固定プラテン111に形成されたロケートリング取り付け穴119に挿入され取り付けられた状態で、射出ユニット103の射出ノズル103aがロケートリング121に挿入されて固定型210のスプルブシュ(図示省略)に当接する(図14)。図13と図14に示す例では、型締ユニット100の駆動装置114で進退動作する型締め軸114aによって可動プラテン113が右方向にスライドし型閉じ動作および型締め動作を行い、可動プラテン113が左方向にスライドし型開き動作を行なう。図15は、図14のA1−A1線断面図であり、固定型210が固定プラテン111に固定された状態を示している。固定型210は、固定型本体212が固定型取り付け板211に固定されており、固定型取り付け板211と固定プラテン111とがクランプ手段115にて固定される。可動型220は、可動型本体222が可動型取り付け板221に固定されており、可動型取り付け板221と可動プラテン113とがクランプ手段116にて固定される。図15に示す例では、市販のクランプ115が固定型取り付け板211の上下左右の4箇所に配されており、クランプ115に挿通されたボルト115aを締め付けると固定型取り付け板211と固定プラテン111とが固定される。また、単純な固定方法としては、固定型取り付け板211に取り付け孔を形成して、その取り付け孔にボルトを通して固定プラテン111に締め付け固定することもある。その他、磁力を利用したクランプ手段などを用いることもある。なお、可動型取り付け板221と可動プラテン113との固定方法についても上記と同様である。
【0006】
一般に、横型締め構造の射出成形装置(横型成形機)に金型200を取り付けるには、クレーン等の吊り下げ手段を用いて、金型200をその中心位置でバランスがとれるように吊って(図17)、ロケートリング121とロケートリング取り付け穴119とを位置合わせして取り付け、可動プラテン113を型締め方向にスライドさせて可動プラテン113と固定プラテン111の間に金型200を挟み込み、さらに金型200を所定の圧力で型締めして、クランプ手段115、116で可動型220を可動プラテン113に締め付け固定するとともに固定型210を固定プラテン111に締め付け固定する。
【0007】
既知の特許文献に開示される射出成形装置の金型取付方法及び金型取付用冶具に関しては、例えば特許文献1や特許文献2がある。特許文献1には、可動型が取り付けられる調心面板を備えて当該可動型の中心軸を固定型の中心軸に一致させる射出成形装置の金型取付構造において、前記調心面板を、前記中心軸に直交する平面上の直交2方向に微調整移動可能にかつ固定可能にするとともに前記中心軸の回りに微少回動可能にかつ固定可能にすることにより、前記中心軸位置と当該中心軸回りの角度位置とをそれぞれ微調整可能にかつ固定可能にして、前記調心面板位置を微調整して固定することによって前記可動型を固定型に微調整調芯し固定するとの記載がある(その請求項1等を参照)。
特許文献2には、射出成形装置における取付け盤(プラテン)の下部に金型支持装置を取り付けて、このプラテンの前面に装着される金型の下面に対して上方へ移動する可動フレームの支持部を当接させて支持する金型支持装置が記載されている(その請求項1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−47477号公報
【特許文献2】特開平8−1678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、射出成形装置等の樹脂成形装置では、可動型と固定型の両型の型開閉時における心出しを容易とするために、可動型と固定型の両型の型開閉時における心出しガイドとしてガイドピンとガイド穴とを備えることが一般的であり、特に射出成形装置にはロケートリングとロケートリング取り付け穴が形成されており、正確な位置での金型取付けを行なうためには、これらの点も考慮しなければならない。詳述すると、前記金型200は、パーティングPT(パーティング面PT)を境として可動型220と固定型210とが接離可能となっており、可動型220と固定型210のパーティングPTを合わせた状態で吊り下げられバランスがとれて、概ね水平となっている(図17)。固定型210と可動型220との配置関係は、可動型220に所定間隔で配された複数のガイドピン215が、固定型210に形成された複数のガイド穴225に挿通される嵌め合い構造によって位置精度を維持しながら可動型220が型締ユニット100によって右方向にスライドして固定型210とで型閉じ動作および型締め動作をし、可動型220が左方向にスライドして固定型210とで型開き動作を行なう(図17、図18、図19等)。なお、ガイドピン215とガイド穴225との位置関係は上記と逆の関係でもよい。
【0010】
ここで、図17に示す固定型210の重量を符号W1とし、可動型220の重量を符号W2とし、クレーン等による吊り上げ力を符号V1とすると、吊り上げ力V1は固定型210の重量W1と可動型220の重量W2とを合算した値となる(V1=W1+W2)。一般に、固定型210の重量W1や可動型220の重量W2は、それぞれ数十kgの重量があり、数トン近い重量の金型200もある。つまり、クレーン等の吊り下げ手段を用いて重量物である金型200をその中心位置(パーティングPTのある位置)でバランスがとれて、水平な状態で静止させることや、吊り下げた状態でロケートリング121とロケートリング取り付け穴119とを正確な位置で位置合わせすることは、熟練の技を要してもなお極めて困難な作業であるが、金型200の位置決め精度を維持しなければならないことから、前記ロケートリング121の外径は、ロケートリング取り付け穴119の内径よりも僅かに小さい寸法に設定されている。
【0011】
前記ロケートリング121の外径は、ロケートリング取り付け穴119の内径よりも小さいので、ロケートリング121とロケートリング取り付け穴119とを位置合わせするときは、両者の隙間量だけ上下左右に位置がずれ易く、吊り下げた金型200は、その水平度合いが完全な水平状態とはなり難いことから、若干傾くことがある。このため、金型200の上下左右の位置ずれや傾きによって、ロケートリング121とロケートリング取り付け穴119とを位置合わせする際には、金型200が僅かにこじれて取り付けられることとなる(図17)。
【0012】
図17に示す状態のときは、前記ロケートリング121の根元の中心点(固定型取り付け板211の背面とロケートリング121の中心線の交点)を符号Q1とし、前記ロケートリング取り付け穴119の中心線をP1−P1線とすると、前記P1−P1線と前記ロケートリング121の根元の中心点Q1とがずれた位置になる。この状態で金型200を型締ユニット100で型締めした後に、固定型を固定プラテン111にクランプ手段115で締め付け固定するとともに可動型を可動プラテン113にクランプ手段116で締め付け固定すると、金型200が僅かにこじれて取り付けられる。熟練の作業者によってはこの僅かなこじれ状態に気が付くことがあり、この僅かなこじれ状態を解消するために前記固定型210(又は前記可動型220)はそのままにして、前記可動型220(又は前記固定型210)のクランプ手段115(又はクランプ手段116)による締め付け固定を解除した後、型締め状態を解除(型締力の開放)し、再度型締めして、クランプ手段115(又はクランプ手段116)を再度締め付け固定する場合がある。なお、前記再度締め付け作業を固定型側で行う際には、前記再度締め付け作業の前にロケートリング121を取り外しておくこともある。
【0013】
しかし、本発明者らの最近の研究によれば、この再度締め付け作業によって、前記金型200がこじれて取り付けられることが解消されるとは限らず、仮に前記金型200がこじれて取り付けられることが解消されたとしても、次の不具合が生じることがわかってきた。
つまり、可動型220の締め付け固定を解除して型締め状態を解除した場合には、可動型220の重量W2がガイドピン215を介して固定型210に付加された状態で再度締め付け固定されるので、ガイドピン215に上向きの力F1が作用することとなる(図18)。また、固定型210の締め付け固定を解除して型締め状態を解除した場合には、固定型210の重量W1がガイド穴225を介して可動型220に付加された状態で再度締め付け固定されるので、ガイドピン215に下向きの力F2が作用することとなる(図19)。
したがって、型開閉動作の際に、複数のガイドピン215が、外力F2や外力F1に作用されながらガイド穴225に出入りすることとなり、ガイドピン215に負荷(外力F2や外力F1)が加わっていることにより、ガイドピン215とガイド穴225との磨耗が進行し、がたつきが大きくなって位置ずれし易くなることが、最近わかってきた。
【0014】
しかしながら、特許文献1記載の方法や特許文献2記載の冶具は、前記金型が僅かにこじれて前記プラテンに締め付け固定されることは想定しておらず、上述したような、前記金型の上下左右の位置ずれや傾きによって、ロケートリングとロケートリング取り付け穴とを位置合わせする際に、前記金型が僅かにこじれて取り付けられることは知られていない。そして仮に、前記特許文献1記載の方法や特許文献2記載の冶具を用いる等して、再度締め付け直す作業を行なうことによって前記金型がこじれて取り付けられることが解消されたとしても、締め付け直す側の型(例えば可動型)の重量が固定された側の型(例えば固定型)にかかることによって、型締め動作と型開き動作の際に、ガイドピンに負荷(図18の外力F1や図19の外力F2)が加わって、ガイドピンとガイド穴との磨耗が進行し、がたつきが大きくなって位置ずれし易くなるという新たな不具合が生じてしまう。
【0015】
樹脂成形部品の部品寸法精度を高くして同一寸法の部品を成形するためには、正確な位置で高い再現性で金型の位置合わせをし、金型のガイドピンとガイド穴との磨耗の進行を軽減することが最重要課題である。特に、樹脂製レンズ等の精密部品では、高精度で同一寸法の部品を再現性よく製造しなければならず、より正確な位置で高い再現性で金型の位置合わせをすることが望まれているが、いまだ効果的な改善方法がないのが実情である。
【0016】
そこで本発明の目的は、横型締め構造の樹脂成形装置において、より正確な位置で高い再現性で金型の位置合わせが可能となる新規な金型取付用冶具、当該金型取付用冶具が配された射出成形装置、及び射出成形装置の金型取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の樹脂成形装置の金型取付用冶具は、可動プラテンに締め付け固定された可動型と固定プラテンに締め付け固定された固定型とが対向して型開閉動作する横型締め構造の樹脂成形装置において、可動型と固定型との型開閉時における心出しガイドとしてガイドピンとガイド穴とが備わっている金型を、その取付位置を微調整して取り付ける際に使用される金型取付用冶具であって、前記金型取付用冶具は、駆動手段と、駆動手段の駆動力で上昇する当接部材とを備えており、前記可動プラテンの下方側に取り付けられて、前記駆動手段の駆動力で前記当接部材を前記可動型に当接させて前記可動型を下支えするか、又は、前記固定プラテンの下方側に取り付けられて、前記駆動手段の駆動力で前記当接部材を前記固定型に当接させて前記固定型を下支えすることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、前記可動プラテンの下方側に取り付けられた前記金型取付用冶具が、前記駆動手段の駆動力で前記当接部材を前記可動型に当接させて前記可動型を下支えすることで、前記可動型の取付位置を微調整して取り付ける際に前記可動型の重量が前記固定型にかかる虞がない。また同様に、前記固定プラテンの下方側に取り付けられた前記金型取付用冶具が、前記駆動手段の駆動力で前記当接部材を前記固定型に当接させて前記固定型を下支えすることで、前記固定型の取付位置を微調整して取り付ける際に前記固定型の重量が前記可動型にかかる虞がない。よって、従来に比べて、より正確な位置で高い再現性で金型の位置合わせが可能となる。
【0019】
本発明は、前記可動型の固定を解除し型締め状態を解除したときの前記当接部材が前記可動型を下支えする力が前記可動型の重量と釣り合っているか、又は、前記当接部材が前記固定型の固定を解除し型締め状態を解除したときの前記固定型を下支えする力が前記固定型の重量と釣り合っていることが好ましい。
本発明によれば、前記可動型(又は前記固定型)の固定を解除し型締め状態を解除したときの前記当接部材が前記可動型(又は前記固定型)を下支えする力が前記可動型(又は前記固定型)の重量と釣り合っていることで、前記下支えする力には過不足がなく、前記可動型(又は前記固定型)には余分な力が働かないため前記可動型(又は前記固定型)の取付位置の微調整がし易い。
【0020】
前記駆動手段としては、油圧シリンダ、液圧シリンダ、空圧シリンダ、ばね、電動モータ等が適用される。
【0021】
本発明は、前記当接部材を当接させる駆動手段が圧縮ばねであり、この圧縮ばねを予め所定量だけ縮ませておく予圧調節機構が備わっていることが好ましい。本発明によれば、前記駆動手段を圧縮ばねとすることで、油圧源、空圧源、電源等の特別な動力源を必要とせず、かつ、前記予圧調節機構を備えることで、少しの押し込みストロークで前記可動型や前記固定型を下支えすることができる。ここで、前記予圧調節機構とは、前記圧縮ばねをある程度縮ませておくことで、前記当接部材が前記可動型や前記固定型を下支えするために必要なストロークを短くするための機構である。
【0022】
前記当接部材の形状としては、例えば凸形、ローラ形、ドーム形、半球形、球形等が挙げられる。本発明は、前記当接部材がローラ又は球体であり、少なくとも前記型開閉方向に回動可能な構成であることが好ましい。本発明によれば、前記ローラ又は球体がその頂部で前記可動型を受けて支持した箇所を基準に前記可動型の取付位置を微調整し締め付け固定するか、または、前記ローラ又は球体がその頂部で前記固定型を受けて支持した箇所を基準に前記固定型の取付位置を微調整し締め付け固定することができるので、前記金型の取付位置の微調整がし易い。さらに、前記ローラ又は球体が少なくとも前記型開閉方向に回動可能な構成とすることで、前記型閉じや型締めや型開きの際に前記可動型(又は前記固定型)を前後に動かして微調整することが容易となる。また、そのような構成によって、その当接部材に対して軸心方向以外の方向に無理な力が作用することが軽減されて、金型取付用治具の破損が防止される。
【0023】
本発明は、前記当接部材が前記可動型を一点支持するか、又は、前記当接部材が前記固定型を一点支持することが好ましい。前記当接部材と前記可動型や前記固定型との接触部分が少ないほうが両者の摩擦力が生じ難く、前記可動型や前記固定型の取付位置を微調整し易いからである。また、前記可動プラテン(又は前記固定プラテン)を背にして前記可動型(又は前記固定型)を正面視したときの左右方向に前記可動型(又は前記固定型)が傾斜可能になり、前記可動型や前記固定型の取付位置をさらに微調整し易くする。そして、前記可動型(又は前記固定型)を一点で支持すれば良いので、大掛かりな治具にならず、その取扱いも簡単なものとなる。
本明細書では、前記一点支持とは、前記可動プラテン(又は前記固定プラテン)を背にして前記可動型(又は前記固定型)および前記当接部材を正面視したときに、前記可動型(又は前記固定型)の下面の面積と比較してその下面に接触する前記当接部材の接触面の面積が十分小さく、かつ、前記可動型(又は前記固定型)の左右方向の寸法(幅)と比較して前記当接部材の前記接触面の左右方向の寸法(幅)が十分に小さいこと、と定義している。より具体的には、例えば前記当接部材がローラの場合は、前記可動型(又は前記固定型)の下面の面積と比較してその下面に接触する前記当接部材の接触面積が十分小さいといえるので、前記可動型(又は前記固定型)の幅と比較して前記ローラの幅が十分に小さければ一点支持となる。例えば、前記当接部材が、厚みの小さな円板や半円板、又は、厚みの小さな三角板や四角板等の多角形状板であって、その頂部が前記可動型(又は前記固定型)と当接する場合は、一点支持となる。当然ながら、前記当接部材が、球体や半球体であり、その頂部が前記可動型(又は前記固定型)と当接する場合は、一点支持となる。
【0024】
例えば、前記金型取付用冶具が予め配されている射出成形装置とすることで、前記金型の取付位置を微調整することが簡便である。
【0025】
本発明の射出成形装置の金型取付方法は、可動プラテンに締め付け固定された可動型と固定プラテンに締め付け固定された固定型とが対向して型開閉動作する横型締め構造の射出成形装置において、可動型と固定型との型開閉時における心出しガイドとしてガイドピンとガイド穴とが備わっている金型を、その取付位置を微調整して取り付ける金型取付方法において、前記可動プラテンに金型取付用冶具を配しておき、この金型取付用冶具によって前記可動型の固定を解除し型締め状態を解除したときに前記可動型を下支えしながら前記可動型の取付位置を微調整して、前記可動型を締め付け固定するか、又は、前記固定プラテンに金型取付用冶具を配しておき、この金型取付用冶具によって前記固定型の固定を解除し型締め状態を解除したときに前記固定型を下支えしながら前記固定型の取付位置を微調整して、前記固定型を締め付け固定することを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、前記金型取付用冶具によって前記可動型の固定を解除し型締め状態を解除したときに前記可動型を下支えしながら前記可動型の取付位置を微調整して、前記可動型を締め付け固定することで、前記可動型の重量が前記固定型に付加されないようにする。または、前記金型取付用冶具によって前記固定型の固定を解除し型締め状態を解除したときに前記固定型を下支えしながら前記固定型の取付位置を微調整して、前記固定型を締め付け固定することで、前記固定型の重量が前記可動型に付加されないようにする。よって、前記金型(可動型及び固定型)がこじれて取り付けられることが解消されるとともに、前記ガイドピンには前記金型の重量が付加されないこととなり、型開閉動作の際に、前記ガイドピンが、それぞれのガイド穴にスムーズに出入りするので、ガイドピンとガイド穴が磨耗し難く、良好な状態となる。
【0027】
前記ガイドピンとガイド穴との配置関係は、前記可動型に配された複数のガイドピンが前記固定型に形成された複数のガイド穴に挿通される嵌め合い構造であるか、又は、前記固定型に配された複数のガイドピンが前記可動型に形成された複数のガイド穴に挿通される嵌め合い構造である。例えば、前記ガイドピンとガイド穴は4対設けられる。
【0028】
一般に、射出成形装置では、前記固定型の背面(固定型取り付け板の背面)にはロケートリングが付設されており、このロケートリングを前記固定プラテンに形成されたロケートリング取り付け穴に挿入し取り付ける。このため、ガイドピンをガイド穴に挿通し、かつ、前記固定型と前記可動型のパーティング同士を合わせた状態の金型は、最初に、前記ロケートリングをロケートリング取り付け穴に挿入される。次に、その金型は、固定プラテンと可動プラテンの間に挟まれるように可動プラテンがスライドし、さらに型締めされて、その後、固定型が固定プラテンにクランプ手段で締め付け固定されるとともに可動型が可動プラテンにクランプ手段で締め付け固定される。
【0029】
本発明は、前記可動型の固定を解除し型締め状態を解除したときの前記金型取付用冶具が下支えする力を前記可動型の重量と釣り合わせるか、又は、前記固定型の固定を解除し型締め状態を解除したときの前記金型取付用冶具が下支えする力を前記固定型の重量と釣り合わせることが好ましい。
本発明によれば、前記可動型(又は前記固定型)には余分な力が働いていないため前記可動型(又は前記固定型)の取付位置の微調整がし易い。つまり、可動型(又は固定型)が、その重量を下支えされた状態のもとで、クランプ手段による締め付け固定を解除したあと、型締め状態を解除すれば、容易にガイドピンに無理な負荷が作用しない状態を作り出すことができる。あとは、可動型(又は固定型)を再度可動プラテン(又は固定プラテン)に締め付け固定すれば、ガイドピンに無理な負荷がかからない最適な金型位置で取り付けできる。
【0030】
本発明は、前記金型取付用冶具によって前記可動型を一点支持し、この一点支持した点を基準点として前記可動型の取付位置を微調整するか、又は、前記金型取付用冶具によって前記固定型を一点支持し、この一点支持した点を基準点として前記固定型の取付位置を微調整することが好ましい。
本発明によれば、前記一点支持した点を基準点として前記可動型(又は前記固定型)の取付位置を微調整することとなり、前記金型の取付位置の微調整がし易い。ここで、前記一点支持とは、前記可動型(又は固定型)の真下の位置であって、可動プラテン(又は固定プラテン)を背にして前記可動型(又は固定型)を正面視したときに、前記可動型(又は固定型)が左右に傾斜可能となる点を基準点として支持することである。前記一点支持する基準点の位置としては、一般的な金型が左右対称に重量のバランスがとれていることが多いことや前記金型位置の微調整のし易さの観点から、前記可動型(又は固定型)の真下の位置であって、可動プラテン(又は固定プラテン)を背にして前記可動型(又は固定型)を正面視したときに、左右方向に対する中心線上の位置が好ましい。また、前記一点支持する基準点の位置としては、前記可動型(又は固定型)の真下の位置であって、可動プラテン(又は固定プラテン)を背にして前記可動型(又は固定型)を正面視したときに、前記左右方向の重量のバランスがとれる位置であっても良い。また、前記一点支持する基準点の位置としては、前記可動型(又は固定型)の真下の位置であって、可動プラテン(又は固定プラテン)を背にして前記可動型(又は固定型)を正面視したときの左右方向、および、型締めユニットの型開閉方向となる前後方向に対して、それぞれの重量のバランスがとれる位置であっても良い。
【0031】
本発明は、前記可動型を可動プラテンに締め付け固定するとともに前記固定型を固定プラテンに締め付け固定した後、前記可動型の固定を解除し型締め状態を解除してから、前記可動型の取付位置を微調整して、再度型締めして、前記可動型を可動プラテンに再度締め付け固定する手順とするか、又は、前記固定型の固定を解除し型締め状態を解除してから、前記固定型の取付位置を微調整して、再度型締めして、前記固定型を固定プラテンに再度締め付け固定する手順とすることが好ましい。
前記型締め状態の解除の際には、その反動で前記可動プラテンや可動型が僅かに型開き方向にスライドする場合もあり得る。また、前記型締め状態の解除には、その解除のあと、オペレータにより僅かに型締ユニットを型開き動作させて、可動プラテンを型開き方向にスライドさせる場合も含まれる。もちろん、その場合の型締め解除および型開きにあっては、ガイドピンがガイド穴から抜け出るようなことはない。
【0032】
本発明は、前記金型の温度を設定温度としてから、前記取付位置を微調整することが好ましい。本発明の作業手順とすることで、設定温度における前記金型の構成部品同士の熱のびや熱収縮による歪みや位置ずれ、および、設定温度における前記金型からの熱の影響を受けた前記固定プラテンおよび前記可動プラテンの熱のびや熱収縮に起因する前記固定型と前記可動型の相対的な少なくとも上下方向の位置ずれを解消することができる。なお、前記固定プラテンと前記可動プラテンでは、前記金型等からの熱の受け方や熱の逃げ方が異なる。一方の前記固定プラテンは、前記可動プラテンに比べて温調された前記金型の熱の影響を受け易く、加えて、射出ノズルからの熱の影響も受ける。そのような前記固定プラテンは、その下面のほぼ全体を機台上に接触するように取り付けられて、その機台に熱を逃がすことができる。加えて、前記固定プラテンは、タイバーにも熱を逃がすことができる。もう一方の前記可動プラテンは、前記可動型がその内部に成形品突き出し機構のための空洞部(図示省略)を備えているため、温調された前記金型の熱の影響を固定プラテンに比べて受けにくい。そのような前記可動プラテンは、ガイド手段の方法によって変わるが、その下面の一部に取り付けられたスライド手段を介して機台に熱を逃すことができるし、タイバーに熱を逃がすこともできる。加えて、前記可動プラテンは、その背面の一部に取り付けられた型締め軸などに熱を逃がすことができる。したがって、熱の受け方や熱の逃げ方が異なる前記固定プラテンと前記可動プラテンとでは、その熱のび量やその熱収縮量に差ができる。しかも、それらのプラテンのどちらが熱のび又は熱収縮し易いのかは、型締めユニットの構造や前記金型の構造や前記金型の設定温度等によって変わることとなる。
その結果、同じ機台上に設置された前記固定プラテンと前記可動プラテンでは、それらの盤面に前記金型が取り付けられてからその金型が温度調節されて設定温度になるまでに、前記固定プラテンの盤面中心の機台からの高さ位置がずれる量と前記可動プラテンの盤面中心の機台からの高さ位置がずれる量に差が生じてしまう。つまり、それらプラテンに取り付けられた前記固定型と前記可動型は、それら金型が取り付けられてからその金型が温度調節されて設定温度になるまでに、機台からの高さ位置がそれぞれ違う量ずつずれてしまい、前記固定型と前記可動型の相対的な上下方向の位置にずれが生じてしまう。また、前記可動プラテンが、その一端が前記金型の熱を受けないバックプラテンに固定され、もう他端が前記固定プラテンに固定されたタイバーのみでガイドされて、機台から浮いた状態であるとするような場合でも、タイバーが固定されたバックプラテンと前記固定プラテンとでは、熱の受け方や熱の逃げ方が異なるので、熱のび量や熱収縮量に差が生じる。そのため、前記金型を前記固定プラテンと前記可動プラテンに取り付けられてからその金型が温度調節されて設定温度になるまでに、タイバーのバックプラテン側固定箇所の機台から見た高さ位置がずれる量とタイバーの前記固定プラテン側固定箇所の機台から見た高さ位置がずれる量に差が生じてしまう。そのようなタイバーに前記可動プラテンが挿通されて、前記固定プラテンとバックプラテンの間をスライド自在にガイドされていることから、最終的には、前記金型が前記固定プラテンと前記可動プラテンに取り付けられてからその金型が温度調節されて設定温度になるまでに、前記固定型と前記可動型の相対的な上下方向の位置にずれが生じてしまう。
【発明の効果】
【0033】
本発明の樹脂成形装置の金型取付用冶具によれば、前記可動プラテンの下方側に取り付けられた前記金型取付用冶具が、前記駆動手段の駆動力で前記当接部材を前記可動型に当接させて前記可動型を下支えすることで、前記可動型の取付位置を微調整して取り付ける際に前記可動型の重量が前記固定型にかかる虞がない。また同様に、前記固定プラテンの下方側に取り付けられた前記金型取付用冶具が、前記駆動手段の駆動力で前記当接部材を前記固定型に当接させて前記固定型を下支えすることで、前記固定型の取付位置を微調整して取り付ける際に前記固定型の重量が前記可動型にかかる虞がない。よって、従来に比べて、より正確な位置で高い再現性で金型の位置合わせが可能となる。そして、前記駆動手段を圧縮ばねとすることで、油圧源、空圧源、電源等の特別な動力源を必要とせず、かつ、前記予圧調節機構を備えることで、少しの押し込みストロークで前記可動型や前記固定型を下支えすることができる。また、前記金型の取付位置を微調整したあと、実際の成形作業中もそのまま前記金型を支持させておいた場合には、前記金型の取付位置を常に保持させて、成形作業中に徐々に前記固定型と前記可動型の相対的な位置がずれることを防止できるとともにガイドピンに無理な負荷がかかることを防止できる。また、前記可動型(又は前記固定型)を一点で支持する構成とすれば、大掛かりな治具にならず、その取扱いも簡単なものとなる。
【0034】
本発明の射出成形装置の金型取付方法によれば、前記金型(可動型及び固定型)がこじれて取り付けられることが解消されるとともに、前記ガイドピンには前記金型の重量が付加されないこととなり、型開閉動作の際に、前記ガイドピンが、それぞれのガイド穴にスムーズに出入りするので、ガイドピンとガイド穴が磨耗し難く、良好な状態となる。本発明によれば、前記可動型(又は前記固定型)には余分な力が働いておらず、また、前記可動型(又は前記固定型)を一点支持した点を基準点として前記可動型(又は前記固定型)の取付位置を微調整することによって、前記金型の取付位置の微調整がし易い。
したがって、これら本発明によって、より正確な位置で高い再現性で金型の位置合わせが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】金型を型締ユニット内に取り付けて、本発明の第1の実施形態の金型取付用冶具を可動プラテンに取り付けた状態を示す構造図である。
【図2】上記金型のうち可動型を締め付け直して固定し、型開きしたときの状態を示す構造図である。
【図3】上記第1の実施形態の金型取付用冶具が可動プラテンに配されており、上記可動型が可動プラテンに固定されている状態を示す構造図である。
【図4】上記第1の実施形態の金型取付用冶具を示す構造図であり、(a)は正面側から見た断面図であり、(b)は側面側から見た断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の金型取付用冶具を固定プラテンに取り付けた状態を示す構造図である。
【図6】上記金型のうち固定型を締め付け直して固定し、型開きしたときの状態を示す構造図である。
【図7】上記第2の実施形態の金型取付用冶具が固定プラテンに配されており、上記固定型が固定プラテンに固定されている状態を示す構造図である。
【図8】上記第1の実施形態又は第2の実施形態の金型取付用冶具を可動プラテンと固定プラテンにそれぞれ取り付けて、金型を型締ユニット内に取り付けた状態を示す構造図である。
【図9】本発明の実施形態の金型取付手順を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施形態の金型取付手順を示すフローチャートの他の例である。
【図11】本発明の実施形態の金型取付手順を示すフローチャートの他の例である。
【図12】上記第2の実施形態の金型取付用冶具の他の例が可動プラテンに配されている状態を示す構造図である。
【図13】既知の横型締め構造の型締ユニットを側面側から示す構造図である。
【図14】上記型締ユニットの金型が取り付けられた箇所を示す構造図である。
【図15】上記金型の固定型が固定プラテンに固定された状態を示す構造図である。
【図16】上記金型を吊っている状態を示す構造図である。
【図17】上記金型が僅かにこじれて取り付けられたときの状態を示す構造図である。
【図18】従来の方法で上記金型のうち可動型を再度締め付け直して固定し、型開きしたときの状態を示す構造図である。
【図19】従来の方法で上記金型のうち固定型を再度締め付け直して固定し、型開きしたときの状態を示す構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0037】
(第1の実施形態の金型取付用冶具)
図1は、金型200を型締ユニット100内に取り付けて、本発明の第1の実施形態の金型取付用冶具1を可動プラテン113に取り付けた状態を示す構造図である。本実施形態の金型取付用冶具1は、圧縮ばね(駆動手段)4の復元力で上昇するピストン2と、このピストン2の上方に配されてピストン上面からその頂部が突出したローラ(当接部材)3を備える。
図2は、前記金型200のうち可動型220を締め付け直して固定し、型開きしたときの状態を示す構造図である。図3は、図2のB1−B1線断面図であり、可動型220が可動プラテン113に固定された状態を正面側から示す構造図である。そして、図4(a)は、図2のB2−B2線断面図であり、金型取付用冶具1を正面側から見た構造図である。図4(b)は、図4(a)のC2−C2線断面図であり、金型取付用冶具1を側面側から見た構造図である。
【0038】
第1の実施形態の金型取付用冶具1は、可動プラテン113の下方側に配されており、可動型220の真下となる位置であって、P2−P2線上の位置に配され、ローラ3の頂部と可動型取り付け板221の下面とが符号R2の箇所でほぼ点接触している(図3)。前記P2−P2線は、前記可動プラテン113を正面視したときに左右方向に対する中心線であり、かつ、前記可動型220を正面視したときに左右方向に対する中心線である。なお、図1では、図示省略された金型温調用外部配管等の邪魔にならないことや金型取付用治具1の取り付け位置などの観点から、金型取付用治具1のローラ3を可動型下面のP2−P2線上の可動プラテン113の近く(符号R2の箇所)に当接させている。そのため、可動型220が、クランプ116による締め付け固定が解除され、かつ型締め状態が解除されて、型開き方向に僅かでもスライドさせられた状態になると、ローラ3との当接箇所(符号R2)を支点に可動型220が固定型210側に倒れ込む傾向にある。しかし、可動型220と固定型210のパーティング面同士が合わさった状態でかつそれら金型200が可動プラテン113と固定プラテン111の間に挟まれた状態、つまり、型閉じされ、型締めされる直前の状態においては、上記可動型220の倒れ込みが解消されている。また、その倒れ込んだ可動型220を起こすように型閉じされる際に、可動型220と固定型210のパーティング面の間に摩擦が発生して、それが可動型220と固定型210の相対的な位置ずれを生じさせる要因にもなり得るが、通常無視できる程度である。もちろん、ローラ3が下支えする可動型220の下面の位置は、図1とは逆に可動プラテンから離れた位置(この場合には、可動プラテン側に倒れ込む傾向にある)でも良いし、可動型220の重心位置に応じてバランスがとれる位置に変更されても構わない。このことは、固定型210の側に金型取付用治具1を配する場合も同じである。
【0039】
本実施形態の金型取付用冶具1は、横長で長方形のフレーム11の下方にU字形の支え12が一体的に取り付けられている。長方形のフレーム11には上下に貫通穴が形成されており、この貫通穴に円柱形状のピストン2が昇降可能に取り付けられ、回転防止キー21によってピストン2が回転しない構成となっている。長方形のフレーム11には回転防止キー21を上下に動かせるキー溝111が形成されている。そして、U字形の支え12には上下にねじ穴が形成されており、このねじ穴に対して、支え12の下面から調整ネジ7が取り付けられており、ダブルナット71にて調整ネジ7の押し込み位置を規制している(図4)。前記フレーム11は可動プラテン113の下方側にボルト固定されている。
【0040】
前記ピストン2の上方には、軸棒31を介してローラ3が取り付けられ、ローラ3の頂部がピストン2の上面から突出している(図4)。また、ローラ3は、前記型開閉方向に回動可能な構成となっている。また、ローラ3は、後述される微調整の際の型閉じや型締めあるいは型締めの解除や型開きの動作によって、前記ピストン2とそれに下支えされた可動型220の間に発生する摩擦を軽減して、可動型220を前後に動かし易くすることで、後述される微調整を容易にするとともに金型取付用冶具1の破損を防止する役割を果たす。
【0041】
前記ピストン2は、その下面側から上方に向かって中空の空洞部22が形成され、かつ、ピストン2の下面側から空洞部22の途中までねじ穴が形成されており、このねじ穴に対して、ピストン2の下面から六角ボルト5が取り付けられており、ダブルナット51にて六角ボルト5の押し込み位置を規制している(図4)。前記六角ボルト5には上下に貫通穴が形成されており、この貫通穴に円柱形状の予圧シャフト6が昇降可能に取り付けられている。予圧シャフト6は上方側(ヘッド)の径が下方側の径よりも大きく設定され、予圧シャフト6の上面が六角ボルト5の上面から突出し、六角ボルト5にて押し上げられた位置を保持する構成となっている。前記ピストン2の空洞部22には圧縮ばね4が配されており、この圧縮ばね4の上面がピストン2の空洞部22の上面に当接し、予圧シャフト6の上面が圧縮ばね4の下面に当接し、予圧シャフト6の下面が調整ネジ7の上面に当接している。よって、前記六角ボルト5のねじ締め量に応じて圧縮ばね4が縮む構成となっている。そして、前記調整ネジ7のねじ締め量に応じてピストン2が上昇するか、又は、圧縮ばね4が縮む構成となっている。
【0042】
前記ローラ3を当接させる圧縮ばね4は、市販のばねが適用でき、ばね荷重等の選択によって、1つの圧縮ばね4で、例えば数kgから百kg程度の範囲に対応できるようにして、複数種類の可動型220(又は固定型210)を下支えしてその重量を受け持つことが可能である。一般に、圧縮ばね4は、かかる重量(荷重)が大きくなると縮み量が大きくなり、全長が短くなる。しかし、前記ローラ3が可動型220(又は固定型210)の重量を下支えしている状態と下支えしていない状態とで、圧縮ばね4の全長が大きく変化すると、金型取付用治具1を取り扱う上で作業性が悪い場合がある。例えば、伸びきった状態の圧縮ばね4を可動型220の重量に見合う縮み量まで毎回縮ませる作業は、そのストロークも長く面倒である。また、例えば、可動型220の下面位置をローラ3やピストン2を介して圧縮ばね4で下支えした状態から、金型取付用治具1を取り付けた可動プラテン113を固定が解除された可動型220に対して離間する方向に移動させると、前記ローラ3が可動型220の下面から外れて、圧縮ばね4が伸びきった状態になる。そのため、ローラ3が可動型220下面の高さ位置を大きく超えた高い位置に上昇してしまうことから、再び可動型220を下支えさせるには、伸びきった圧縮ばね4を所定の縮み量まで最初から縮め直す作業が必要になる。そこで、本実施形態では、予め、前記六角ボルト5を回してある程度ねじを締めることで圧縮ばね4を所定量縮ませておき、前記ローラ3が可動型220(又は固定型210)を下支えするために必要な圧縮ばね4のストロークを短くしている。そして、前記調整ネジ7を回動させてねじ締め量を調節することで、フレーム11に取り付けられたピストン2を昇降させて、ローラ3の頂部(符号R2の箇所)を可動型取り付け板221の下面と当接させて、予め所定量縮ませておいた圧縮ばね4をさらに圧縮させることができる構成となっている(図3)。
【0043】
本実施形態の金型取付用冶具1の具体的な使用態様を、一例を挙げて説明する。例えば、可動型220を例に上げると、その可動型220の重量が32kgであるとするならば、荷重が2kgで全長が0.5mm縮む圧縮ばね4を使用し、荷重が30kgまで圧縮ばね4を予め圧縮しておく。そして、金型200を型締めしたあと、固定型210を固定プラテン111にクランプ手段115で締め付け固定するとともに可動型220を可動プラテン113にクランプ手段11116で締め付け固定してから、可動プラテン113に既に取り付けてある金型取付用冶具1(または、上記締め付け固定の直後に金型取付用冶具1を取り付けても良い)のピストン2を、調整ネジ7を回動させて上昇させ、ローラ3の頂部(符号R2の箇所)を可動型取り付け板221の下面と当接させ、さらに調整ネジ7を回動させることで圧縮ばね4の全長をさらに0.5mm縮ませて荷重が32kgまで圧縮ばね4を圧縮させる。これによって、前記可動型220の締め付け固定を解除し型締め状態を解除したときの可動型220を下支えする力が可動型220の重量と釣り合うこととなる。
【0044】
つまり、下支えされた可動型220(又は固定型210)は、クランプ手段115(又は、116)で締め付け固定されていた位置で可動型220(又は固定型210)の重量が下支えされるとともに、その重量を超えると下に移動することが許容され、その重量未満だと上に移動することを許容される。それによって、ガイドピン215にかかるこじり力が解消されるとともに、可動型220(又は固定型210)の重量に起因してガイドピン215にかかる負荷が非常に小さくなる。
したがって、固定型210と可動型220の相対的な位置をより正確な位置で高い再現性で位置合わせすることが可能となる。そして、前記固定型210のガイドピン215には前記可動型220又は固定型210自身の重量が付加されないこととなり、型閉じ動作や型締め動作や型開き動作の際に、前記ガイドピン215が、それぞれのガイド穴225にスムーズに出入りするので、ガイドピン215とガイド穴225が磨耗し難く、良好な状態となる。前記金型200の構成としては、例えば、ガイドピン215とガイド穴225とが4対設けられる構成や、ガイドピン215とガイド穴225とが2対設けられる構成等がある。
【0045】
上述の説明では、金型取付用冶具1を可動プラテン113に取り付ける例で説明したが、金型取付用冶具1を固定プラテン111に取り付けてもよいし、図8に示すように金型取付用冶具1を可動プラテン113と固定プラテン111にそれぞれ取り付けることもできる。いずれにしても、一般的な方法で型締ユニット100に金型200を取り付けて、型締めした状態において、可動型220又は固定型210のいずれか一方をクランプ手段115又は116で締め付け固定したまま、もう一方を金型取付用治具1で下支えしたうえで、その下支えした方の金型のクランプ手段116又は115による締め付け固定を解除する。そのあとは、型締め状態を解除するだけで、その締め付け固定が解除された側の金型が、最初に締め付け固定されていた高さ位置で上下に移動可能に下支えされて、ガイドピン215に負荷がかからない位置に微調整されることになる。
また、図8に示す例では、金型取付用冶具1と固定プラテン111の間には断熱板41が配されているので、固定プラテン111からの熱が金型取付用冶具1に加わり難い構成となっており、ローラ3の頂部と可動型取り付け板221の下面とが符号R2の箇所でほぼ点接触しているので、可動型220からの熱が金型取付用冶具1に加わり難い構成となっている。このように、金型200からの熱が金型取付用冶具1に加わり難くすることで、圧縮ばね4のばね荷重等の特性を安定なものとする。前記断熱板41の材質としては、セラミックス、シリコーンゴム、耐熱性樹脂等が挙げられる。前記ローラ3の材質としては、金属、セラミックス、シリコーンゴム、耐熱性樹脂等が挙げられる。なお、図8に示す例では、金型取付用冶具1と可動プラテン113の間にも、同様に断熱板41が配されている。
【0046】
(第2の実施形態の金型取付用冶具)
図5は、本発明の第2の実施形態の金型取付用冶具1を固定プラテン111に取り付けた状態を示す構造図である。本実施形態の金型取付用冶具1は、空圧源とレギュレータを有する空圧回路9を備えており、空圧回路9中の空圧源(図示省略)からの空圧力を予め設定した空圧力に調圧可能なレギュレータ(図示省略)を介して空圧シリンダ8に送圧して、固定型210の重量に見合う空圧力でピストン2を上昇させて、このピストン2の上方に配されてピストン上面からその頂部が突出した球体(当接部材)3を、その頂部(符号R1の箇所)を固定型取り付け板211の下面に当接させる構成である。前記レギュレータは、一時側(空圧源側)の空圧力を予め設定した空圧力に調圧して2次側(空圧シリンダ側)に送圧するものである。これにより、固定型210は、クランプ手段115による締め付け固定が解除されかつ型締め状態が解除されても、最初に締め付け固定されていた高さ位置で、その固定型210の重量に見合う空圧力で下支えされるとともに、その重量を超えると下に移動することが許容され、その重量未満だと上に移動することが許容される。なお、前記空圧シリンダ8と前記レギュレータの間に、前記ピストン2の上下の移動方向を切り換える切換バルブ(図示省略)を備えても良い。ここで、同一の符号は同じ機能を表しており、その説明を適宜省略する。
【0047】
本実施形態の金型取付用冶具1は、固定プラテン111の下方側に取り付けられており、固定型210の真下となる位置であって、P2−P2線上の位置に配され、球体3の頂部と固定型取り付け板211の下面とが符号R1の箇所で点接触している(図7)。前記P2−P2線は、前記固定プラテン111を正面視したときに左右方向に対する中心線であり、かつ、前記固定型210を正面視したときに左右方向に対する中心線である。本実施形態では、球体3の頂部と固定型取り付け板211の下面とが符号R1の箇所で点接触しているので、固定型210からの熱が金型取付用冶具1に加わり難い。前記球体3の材質としては、金属、セラミックス、シリコーンゴム、耐熱性樹脂等が挙げられる。
【0048】
本実施形態によれば、空圧力を利用しているので、工場配管のエアを引き出して利用することができ、固定型210(又は可動型220)の重量に見合う空圧力の調整範囲も広く設定可能である。もちろん、金型取付用冶具1を可動プラテン113に取り付ける場合には、可動型220の重量に見合う空圧力でピストン2を上昇させる。なお、本実施形態では空圧力を利用しているが、油圧力を利用したものとしてもよい。油圧力を利用すれば、固定型210(又は可動型220)の重量が大きい場合にも対応が容易である。
【0049】
図12は、上記第2の実施形態の金型取付用冶具1の他の例が、可動プラテン113に取り付けられている状態を示す構造図である。本実施形態では、空圧回路9中の空圧源(図示省略)からの空圧力を予め設定した空圧力に調圧可能なレギュレータ(図示省略)を介して空圧シリンダ8に送圧して、可動型220の重量に見合う空圧力でピストン2を上昇させて、このピストン2の上方に配されてピストン上面からその頂部が突出した球体3を、その頂部(符号R1の箇所)を可動型取り付け板221の下面に当接させる構成であり、かつ、電動モータM1の駆動力でピストン2が左右に移動する構成となっている。ここで、同一の符号は同じ機能を表しており、その説明を適宜省略する。
【0050】
本実施形態によれば、電動モータM1のの駆動力でピストン2を左右に移動させることで、球体3の頂部(符号R2の箇所)を可動型220の重心の真下となる位置に移動させ、点接触により下支えしてその重量を受け持つことが容易である。本実施形態の金型取付用冶具1では、可動型220の重量に見合う空圧力によって、可動型220の固定を解除し型締め状態を解除したときの可動型220を下支えする力が可動型220の重量と釣り合わせておき、下支えされた可動型220が、最初に可動型を締め付け固定していた位置で可動型220の重量が下支えされるとともに、その重量を超えると下に移動することが許容され、その重量未満だと上に移動することが許容される。それによって、可動型220の重量に起因してガイドピン215にかかる負荷が非常に小さくなる。もちろん、金型取付用冶具1を固定プラテン111に取り付ける場合には、固定型210の重量に見合う空圧力でピストン2を上昇させる。なお、上述の空圧力に代えて、電動モータの駆動力を利用することもでき、この場合は、下支えされた固定型210又は可動型220が、上述した実施態様と同じように、その重量を所定位置で下支えしながら、その重量を超えると下に移動することが許容され、その重量未満だと上に移動することが許容される機構とすることが必要である。
【0051】
(本発明の金型取付手順)
図9は本発明の実施形態の金型取付手順を例示するフローチャートである。図9(a)は金型取付用冶具1を可動プラテン113に取り付ける場合の手順を示しており、図9(b)は金型取付用冶具1を固定プラテン111に取り付ける場合の手順を示している。ここでは、図9(a)に示すフローチャートにしたがって、本発明の方法による金型の取付手順を以下に説明する。先ず、金型取付用冶具1を可動プラテン113に取り付けておく(符号S1)。
【0052】
上述の既知の方法によって、クレーン等の吊り下げ手段を用いて、可動型220と固定型210のパーティングPT(パーティング面PT)を合わせかつガイドピン215とガイド穴225とをスライド可能な嵌め合い状態とし、金型200を中心位置でバランスがとれるように吊って(図16)、ロケートリング121とロケートリング取り付け穴119とを位置合わせして、固定型210を固定プラテン111に取り付けるとともに可動プラテン113を固定プラテン111側にスライドさせてそれらのプラテン111、113の間に金型200を挟み込み、さらに型締めして(符号S2)、クランプ手段115によって固定型210を固定プラテン111に締め付け固定するとともに、クランプ手段116によって可動型220を可動プラテン113に締め付け固定する(符号S3)。ここで、固定型210は、固定型本体212が固定型取り付け板211に固定されており、固定型取り付け板211と固定プラテン111とがクランプ手段115にて固定される。可動型220は、可動型本体222が可動型取り付け板221に固定されており、可動型取り付け板221と可動プラテン113とがクランプ手段116にて固定される。
【0053】
前記可動型220を可動プラテン113に締め付け固定するとともに固定型210を固定プラテン111に締め付け固定した後(符号S3)、当接部材としてのローラ3の頂部(符号R2の箇所)を可動型210の下面の中央(図3のP2−P2線上)に当接させる。そして、金型200の温度を設定温度にする(符号S5)。これは、前記金型温度が設定温度で安定状態になってから前記可動型220の取り付け位置を微調整することで、設定温度における可動型220の構成部品同士の熱のびや熱収縮による歪みや位置ずれ、および、設定温度における可動型220からの熱の影響を受けた可動プラテン113の熱のびや熱収縮に起因する可動型220と固定型210の相対的な少なくとも上下方向の位置ずれを解消するためである。ここで、金型取付用冶具1の駆動手段が圧縮ばね4である場合には、可動型220や可動プラテン113の熱のび等を考慮して、金型温度が設定温度で安定状態になった後で、再度下支えするための重量調整を行うと尚良い。
【0054】
前記金型温度が設定温度となってから(符号S5)、可動型220の締め付け固定を解除し、型締め状態を解除(型締力の開放)し、ガイドピン215とガイド穴225とが嵌め合い状態で可動型220の位置を微調整し、再度型締めして(符号S6)、可動型220を可動プラテン113に再度締め付け固定する(符号S7)。その後、金型取付用冶具1は、可動プラテン113から取り外すか、又は、そのまま取り付けた状態のままでも良い。可動型220側に金型取付用冶具1を取り付けた場合には、成形作業中において可動型220が下に位置ズレすることを金型取付用冶具1によって防止させることも可能である。なお、その際には、固定型210側の位置ズレがロケートリング121で防止される。
【0055】
図9(a)や図9(b)に示す作業手順によれば、前記金型200(可動型220及び固定型210)がこじれて取り付けられることが解消されるとともに、前記ガイドピン215には前記可動型220の重量や前記固定型210の重量が付加されないこととなり、型開閉動作の際に、前記ガイドピン215が、それぞれのガイド穴225にスムーズに出入りするので、ガイドピン215とガイド穴225が磨耗し難く、良好な状態となる。
【0056】
図10は本発明の実施形態の金型取付手順を例示するフローチャートの他の例である。ここで、同一の符号は同じ機能を表しており、その説明を適宜省略する。図10(a)は金型取付用冶具1を可動プラテン113に取り付ける場合の手順を示しており、図10(b)は金型取付用冶具1を固定プラテン111に取り付ける場合の手順を示している。ここでは、図10(a)に示すフローチャートにしたがって、本発明の方法による金型の取付手順を以下に説明する。
【0057】
上述のように既知の方法で可動プラテン113と固定プラテン111の間に金型200を挟み込み、型締めして(符号S2)、クランプ手段115によって固定型210を固定プラテン111に締め付け固定するとともに、クランプ手段116によって可動型220を可動プラテン113に締め付け固定する(符号S3)。そして、前記可動型220を可動プラテン113に締め付け固定するとともに固定型210を固定プラテン111に締め付け固定した後(符号S3)、金型取付用冶具1を可動プラテン113に取り付ける(符号S11)。そして、当接部材としてのローラ3の頂部(符号R2の箇所)を可動型220の下面の中央(図3のP2−P2線上)に当接させる。そして、金型200の温度を設定温度にする(符号S5)。
【0058】
前記金型温度が設定温度となってから(符号S5)、可動型220の固定を解除し、型締め状態を解除(型締力の開放)し、ガイドピン215とガイド穴225とが嵌め合い状態で可動型220の位置を微調整し、再度型締めして(符号S6)、可動型220を可動プラテン113に再度締め付け固定する(符号S7)。その後、金型取付用冶具1は、可動プラテン113から取り外すか、又は、そのまま取り付けた状態のままでも良い。本実施形態の金型取付用冶具1は、既存の可動プラテン113や固定プラテン111の金型取付穴等を利用して取り付けることができるので、既に稼働中の射出成形装置に本発明の成形装置の金型取付方法を適用することが容易である。
【0059】
図11は本発明の実施形態の金型取付手順を例示するフローチャートの他の例である。ここで、同一の符号は同じ機能を表しており、その説明を適宜省略し、本発明の方法による金型の取付手順を以下に説明する。先ず、金型取付用冶具1を可動プラテン113と固定プラテン111にそれぞれ取り付けておく(符号S21)。
【0060】
上述のように既知の方法で可動プラテン113と固定プラテン111の間に金型200を挟み込み、型締めして(符号S2)、クランプ手段115によって固定型210を固定プラテン111に締め付け固定するとともに、クランプ手段115によって可動型220を可動プラテン113に締め付け固定する(符号S3)。そして、前記可動型220を可動プラテン113に締め付け固定するとともに固定型210を固定プラテン111に締め付け固定した後(符号S3)、金型取付用冶具1の当接部材としてのローラ3の頂部(符号R2の箇所)を固定型210および可動型220の下面の中央(図3のP2−P2線上)にそれぞれ当接させる(符号S4)。そして、金型200の温度を設定温度にする(符号S5)。ここで、符号S4と符号S5の順序を上記と逆の順序としても良い。
【0061】
前記金型温度が設定温度となってから(符号S5)、可動型220の固定を解除し、型締め状態を解除(型締力の開放)し、ガイドピン215とガイド穴225とが嵌め合い状態で可動型220の位置を微調整し、再度型締めして(符号S6)、可動型220を可動プラテン113に再度締め付け固定する(符号S7)。その後、固定型210の固定を解除し、型締め状態を解除(型締力の開放)し、ガイドピン215とガイド穴225とが嵌め合い状態で固定型210の位置をロケートリング121がロケートリング取り付け穴119に取り付けられた状態で僅かに微調整し、再度型締めして(符号S26)、固定型210を固定プラテン111に再度締め付け固定する(符号S27)。図11に示す作業手順によれば、上記よりも、より正確な位置で金型の位置合わせをすることも可能である。なお、固定型210の高さ位置を微調整する際には、型締めを解除する前にロケートリング取り付け穴119に挿入されたロケートリング121を取り外しておいても良い。
【0062】
以上、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。前記金型取付用冶具1のピストン2を駆動する駆動手段としては、油圧シリンダ、液圧シリンダ、空圧シリンダ、ばね、電動モータ等が適用できる。前記金型取付用冶具1を既存のプラテン(可動プラテン113や固定プラテン111)に後付けしてもよいし、前記金型取付用冶具1が組み込まれたプラテン(可動プラテンや固定プラテン)としてもよい。クランプ手段115や116は、固定型210や可動型220に一体的に形成されていてもよい。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0063】
1 金型取付用冶具、
3 当接部材(ローラ,球体)
4 駆動手段(圧縮ばね)、
111 固定プラテン、
113 可動プラテン、
115,116 クランプ手段(取り付け板)、
119 ロケートリング取り付け穴、
121 ロケートリング、
200 金型(可動型及び固定型)、
210 固定型、
211 固定型取り付け板、
220 可動型、
221 可動型取り付け板
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形装置等の樹脂成形装置の金型取付用冶具、この金型取付用冶具が配された射出成形装置、並びに射出成形装置の金型取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形は樹脂成形の一種であり、加熱溶融させた樹脂に射出圧を加えて押込んで金型に充填し、冷却して成形する方法であり、複雑な形状の製品を大量生産するのに適している。一般に、射出成形は、型閉じ、型締め、射出、保圧、冷却、型開き、成形された製品の取出し、の順序で行われ、このサイクルの繰り返しで、製品を連続的に生産する。なおここで、型閉じは、開いた金型を低い圧力で速やかに閉じる動作のことであり、また、型締めは、閉じた金型を型閉じ動作時の圧力よりさらに大きな圧力で締め付ける動作のことである。
【0003】
前記型締めには、金型のうちの可動型を縦方向(上下方向)に移動させる縦型締めと、金型のうちの可動型を横方向(左右方向又は前後方向)に移動させる横型締めがある。横型締め構造は、材料の投入から金型までの距離を長くでき、成形後の製品を取り出し易い特徴がある。射出成形装置は主に型締ユニットと射出ユニットに分かれている。型締ユニットは金型の開閉や突き出しを行うユニットであり、金型の開閉方式には、トグル方式と直圧方式とがある。射出ユニットは樹脂を加熱溶融させ、金型内へ射出する装置である。
【0004】
図13は既知の横型締め構造の型締ユニット100を側面側から示す構造図であり、この金型200が取り付けられた箇所を示す構造図を図14に示す。金型200は固定型210と可動型220とが対面して配されており、固定型210はクランプ手段115によって固定プラテン(固定盤)111に取り付けられており、可動型220はクランプ手段116によって可動プラテン(可動盤)113に取り付けられている。固定プラテン111とバックプラテン117(支持盤)とはそれぞれ機台102上に固定されており、可動プラテン113はガイド部材191とレール部材192とからなるスライド手段190を介して水平方向にスライド自在に機台102上に配されている。固定プラテン111とバックプラテン117との間には可動プラテン113が配されており、固定プラテン111とバックプラテン117とで固定された複数のタイバー110(図13では4本のタイバー110)が可動プラテン113に挿通されており、可動プラテン113が固定プラテン111とバックプラテン117との間でスライド自在となる構成である。ここで、可動プラテン113のガイド方法を例示すると、スライド手段190とタイバー110を組み合わせた方法、スライド手段190だけの方法、又はタイバー110だけの方法がある。
【0005】
射出成形装置における一般的な横型締め構造の固定型210は、その背面(固定型取り付け板211の背面)にロケートリング121が付設されており、このロケートリング121が、固定プラテン111に形成されたロケートリング取り付け穴119に挿入され取り付けられた状態で、射出ユニット103の射出ノズル103aがロケートリング121に挿入されて固定型210のスプルブシュ(図示省略)に当接する(図14)。図13と図14に示す例では、型締ユニット100の駆動装置114で進退動作する型締め軸114aによって可動プラテン113が右方向にスライドし型閉じ動作および型締め動作を行い、可動プラテン113が左方向にスライドし型開き動作を行なう。図15は、図14のA1−A1線断面図であり、固定型210が固定プラテン111に固定された状態を示している。固定型210は、固定型本体212が固定型取り付け板211に固定されており、固定型取り付け板211と固定プラテン111とがクランプ手段115にて固定される。可動型220は、可動型本体222が可動型取り付け板221に固定されており、可動型取り付け板221と可動プラテン113とがクランプ手段116にて固定される。図15に示す例では、市販のクランプ115が固定型取り付け板211の上下左右の4箇所に配されており、クランプ115に挿通されたボルト115aを締め付けると固定型取り付け板211と固定プラテン111とが固定される。また、単純な固定方法としては、固定型取り付け板211に取り付け孔を形成して、その取り付け孔にボルトを通して固定プラテン111に締め付け固定することもある。その他、磁力を利用したクランプ手段などを用いることもある。なお、可動型取り付け板221と可動プラテン113との固定方法についても上記と同様である。
【0006】
一般に、横型締め構造の射出成形装置(横型成形機)に金型200を取り付けるには、クレーン等の吊り下げ手段を用いて、金型200をその中心位置でバランスがとれるように吊って(図17)、ロケートリング121とロケートリング取り付け穴119とを位置合わせして取り付け、可動プラテン113を型締め方向にスライドさせて可動プラテン113と固定プラテン111の間に金型200を挟み込み、さらに金型200を所定の圧力で型締めして、クランプ手段115、116で可動型220を可動プラテン113に締め付け固定するとともに固定型210を固定プラテン111に締め付け固定する。
【0007】
既知の特許文献に開示される射出成形装置の金型取付方法及び金型取付用冶具に関しては、例えば特許文献1や特許文献2がある。特許文献1には、可動型が取り付けられる調心面板を備えて当該可動型の中心軸を固定型の中心軸に一致させる射出成形装置の金型取付構造において、前記調心面板を、前記中心軸に直交する平面上の直交2方向に微調整移動可能にかつ固定可能にするとともに前記中心軸の回りに微少回動可能にかつ固定可能にすることにより、前記中心軸位置と当該中心軸回りの角度位置とをそれぞれ微調整可能にかつ固定可能にして、前記調心面板位置を微調整して固定することによって前記可動型を固定型に微調整調芯し固定するとの記載がある(その請求項1等を参照)。
特許文献2には、射出成形装置における取付け盤(プラテン)の下部に金型支持装置を取り付けて、このプラテンの前面に装着される金型の下面に対して上方へ移動する可動フレームの支持部を当接させて支持する金型支持装置が記載されている(その請求項1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−47477号公報
【特許文献2】特開平8−1678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、射出成形装置等の樹脂成形装置では、可動型と固定型の両型の型開閉時における心出しを容易とするために、可動型と固定型の両型の型開閉時における心出しガイドとしてガイドピンとガイド穴とを備えることが一般的であり、特に射出成形装置にはロケートリングとロケートリング取り付け穴が形成されており、正確な位置での金型取付けを行なうためには、これらの点も考慮しなければならない。詳述すると、前記金型200は、パーティングPT(パーティング面PT)を境として可動型220と固定型210とが接離可能となっており、可動型220と固定型210のパーティングPTを合わせた状態で吊り下げられバランスがとれて、概ね水平となっている(図17)。固定型210と可動型220との配置関係は、可動型220に所定間隔で配された複数のガイドピン215が、固定型210に形成された複数のガイド穴225に挿通される嵌め合い構造によって位置精度を維持しながら可動型220が型締ユニット100によって右方向にスライドして固定型210とで型閉じ動作および型締め動作をし、可動型220が左方向にスライドして固定型210とで型開き動作を行なう(図17、図18、図19等)。なお、ガイドピン215とガイド穴225との位置関係は上記と逆の関係でもよい。
【0010】
ここで、図17に示す固定型210の重量を符号W1とし、可動型220の重量を符号W2とし、クレーン等による吊り上げ力を符号V1とすると、吊り上げ力V1は固定型210の重量W1と可動型220の重量W2とを合算した値となる(V1=W1+W2)。一般に、固定型210の重量W1や可動型220の重量W2は、それぞれ数十kgの重量があり、数トン近い重量の金型200もある。つまり、クレーン等の吊り下げ手段を用いて重量物である金型200をその中心位置(パーティングPTのある位置)でバランスがとれて、水平な状態で静止させることや、吊り下げた状態でロケートリング121とロケートリング取り付け穴119とを正確な位置で位置合わせすることは、熟練の技を要してもなお極めて困難な作業であるが、金型200の位置決め精度を維持しなければならないことから、前記ロケートリング121の外径は、ロケートリング取り付け穴119の内径よりも僅かに小さい寸法に設定されている。
【0011】
前記ロケートリング121の外径は、ロケートリング取り付け穴119の内径よりも小さいので、ロケートリング121とロケートリング取り付け穴119とを位置合わせするときは、両者の隙間量だけ上下左右に位置がずれ易く、吊り下げた金型200は、その水平度合いが完全な水平状態とはなり難いことから、若干傾くことがある。このため、金型200の上下左右の位置ずれや傾きによって、ロケートリング121とロケートリング取り付け穴119とを位置合わせする際には、金型200が僅かにこじれて取り付けられることとなる(図17)。
【0012】
図17に示す状態のときは、前記ロケートリング121の根元の中心点(固定型取り付け板211の背面とロケートリング121の中心線の交点)を符号Q1とし、前記ロケートリング取り付け穴119の中心線をP1−P1線とすると、前記P1−P1線と前記ロケートリング121の根元の中心点Q1とがずれた位置になる。この状態で金型200を型締ユニット100で型締めした後に、固定型を固定プラテン111にクランプ手段115で締め付け固定するとともに可動型を可動プラテン113にクランプ手段116で締め付け固定すると、金型200が僅かにこじれて取り付けられる。熟練の作業者によってはこの僅かなこじれ状態に気が付くことがあり、この僅かなこじれ状態を解消するために前記固定型210(又は前記可動型220)はそのままにして、前記可動型220(又は前記固定型210)のクランプ手段115(又はクランプ手段116)による締め付け固定を解除した後、型締め状態を解除(型締力の開放)し、再度型締めして、クランプ手段115(又はクランプ手段116)を再度締め付け固定する場合がある。なお、前記再度締め付け作業を固定型側で行う際には、前記再度締め付け作業の前にロケートリング121を取り外しておくこともある。
【0013】
しかし、本発明者らの最近の研究によれば、この再度締め付け作業によって、前記金型200がこじれて取り付けられることが解消されるとは限らず、仮に前記金型200がこじれて取り付けられることが解消されたとしても、次の不具合が生じることがわかってきた。
つまり、可動型220の締め付け固定を解除して型締め状態を解除した場合には、可動型220の重量W2がガイドピン215を介して固定型210に付加された状態で再度締め付け固定されるので、ガイドピン215に上向きの力F1が作用することとなる(図18)。また、固定型210の締め付け固定を解除して型締め状態を解除した場合には、固定型210の重量W1がガイド穴225を介して可動型220に付加された状態で再度締め付け固定されるので、ガイドピン215に下向きの力F2が作用することとなる(図19)。
したがって、型開閉動作の際に、複数のガイドピン215が、外力F2や外力F1に作用されながらガイド穴225に出入りすることとなり、ガイドピン215に負荷(外力F2や外力F1)が加わっていることにより、ガイドピン215とガイド穴225との磨耗が進行し、がたつきが大きくなって位置ずれし易くなることが、最近わかってきた。
【0014】
しかしながら、特許文献1記載の方法や特許文献2記載の冶具は、前記金型が僅かにこじれて前記プラテンに締め付け固定されることは想定しておらず、上述したような、前記金型の上下左右の位置ずれや傾きによって、ロケートリングとロケートリング取り付け穴とを位置合わせする際に、前記金型が僅かにこじれて取り付けられることは知られていない。そして仮に、前記特許文献1記載の方法や特許文献2記載の冶具を用いる等して、再度締め付け直す作業を行なうことによって前記金型がこじれて取り付けられることが解消されたとしても、締め付け直す側の型(例えば可動型)の重量が固定された側の型(例えば固定型)にかかることによって、型締め動作と型開き動作の際に、ガイドピンに負荷(図18の外力F1や図19の外力F2)が加わって、ガイドピンとガイド穴との磨耗が進行し、がたつきが大きくなって位置ずれし易くなるという新たな不具合が生じてしまう。
【0015】
樹脂成形部品の部品寸法精度を高くして同一寸法の部品を成形するためには、正確な位置で高い再現性で金型の位置合わせをし、金型のガイドピンとガイド穴との磨耗の進行を軽減することが最重要課題である。特に、樹脂製レンズ等の精密部品では、高精度で同一寸法の部品を再現性よく製造しなければならず、より正確な位置で高い再現性で金型の位置合わせをすることが望まれているが、いまだ効果的な改善方法がないのが実情である。
【0016】
そこで本発明の目的は、横型締め構造の樹脂成形装置において、より正確な位置で高い再現性で金型の位置合わせが可能となる新規な金型取付用冶具、当該金型取付用冶具が配された射出成形装置、及び射出成形装置の金型取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の樹脂成形装置の金型取付用冶具は、可動プラテンに締め付け固定された可動型と固定プラテンに締め付け固定された固定型とが対向して型開閉動作する横型締め構造の樹脂成形装置において、可動型と固定型との型開閉時における心出しガイドとしてガイドピンとガイド穴とが備わっている金型を、その取付位置を微調整して取り付ける際に使用される金型取付用冶具であって、前記金型取付用冶具は、駆動手段と、駆動手段の駆動力で上昇する当接部材とを備えており、前記可動プラテンの下方側に取り付けられて、前記駆動手段の駆動力で前記当接部材を前記可動型に当接させて前記可動型を下支えするか、又は、前記固定プラテンの下方側に取り付けられて、前記駆動手段の駆動力で前記当接部材を前記固定型に当接させて前記固定型を下支えすることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、前記可動プラテンの下方側に取り付けられた前記金型取付用冶具が、前記駆動手段の駆動力で前記当接部材を前記可動型に当接させて前記可動型を下支えすることで、前記可動型の取付位置を微調整して取り付ける際に前記可動型の重量が前記固定型にかかる虞がない。また同様に、前記固定プラテンの下方側に取り付けられた前記金型取付用冶具が、前記駆動手段の駆動力で前記当接部材を前記固定型に当接させて前記固定型を下支えすることで、前記固定型の取付位置を微調整して取り付ける際に前記固定型の重量が前記可動型にかかる虞がない。よって、従来に比べて、より正確な位置で高い再現性で金型の位置合わせが可能となる。
【0019】
本発明は、前記可動型の固定を解除し型締め状態を解除したときの前記当接部材が前記可動型を下支えする力が前記可動型の重量と釣り合っているか、又は、前記当接部材が前記固定型の固定を解除し型締め状態を解除したときの前記固定型を下支えする力が前記固定型の重量と釣り合っていることが好ましい。
本発明によれば、前記可動型(又は前記固定型)の固定を解除し型締め状態を解除したときの前記当接部材が前記可動型(又は前記固定型)を下支えする力が前記可動型(又は前記固定型)の重量と釣り合っていることで、前記下支えする力には過不足がなく、前記可動型(又は前記固定型)には余分な力が働かないため前記可動型(又は前記固定型)の取付位置の微調整がし易い。
【0020】
前記駆動手段としては、油圧シリンダ、液圧シリンダ、空圧シリンダ、ばね、電動モータ等が適用される。
【0021】
本発明は、前記当接部材を当接させる駆動手段が圧縮ばねであり、この圧縮ばねを予め所定量だけ縮ませておく予圧調節機構が備わっていることが好ましい。本発明によれば、前記駆動手段を圧縮ばねとすることで、油圧源、空圧源、電源等の特別な動力源を必要とせず、かつ、前記予圧調節機構を備えることで、少しの押し込みストロークで前記可動型や前記固定型を下支えすることができる。ここで、前記予圧調節機構とは、前記圧縮ばねをある程度縮ませておくことで、前記当接部材が前記可動型や前記固定型を下支えするために必要なストロークを短くするための機構である。
【0022】
前記当接部材の形状としては、例えば凸形、ローラ形、ドーム形、半球形、球形等が挙げられる。本発明は、前記当接部材がローラ又は球体であり、少なくとも前記型開閉方向に回動可能な構成であることが好ましい。本発明によれば、前記ローラ又は球体がその頂部で前記可動型を受けて支持した箇所を基準に前記可動型の取付位置を微調整し締め付け固定するか、または、前記ローラ又は球体がその頂部で前記固定型を受けて支持した箇所を基準に前記固定型の取付位置を微調整し締め付け固定することができるので、前記金型の取付位置の微調整がし易い。さらに、前記ローラ又は球体が少なくとも前記型開閉方向に回動可能な構成とすることで、前記型閉じや型締めや型開きの際に前記可動型(又は前記固定型)を前後に動かして微調整することが容易となる。また、そのような構成によって、その当接部材に対して軸心方向以外の方向に無理な力が作用することが軽減されて、金型取付用治具の破損が防止される。
【0023】
本発明は、前記当接部材が前記可動型を一点支持するか、又は、前記当接部材が前記固定型を一点支持することが好ましい。前記当接部材と前記可動型や前記固定型との接触部分が少ないほうが両者の摩擦力が生じ難く、前記可動型や前記固定型の取付位置を微調整し易いからである。また、前記可動プラテン(又は前記固定プラテン)を背にして前記可動型(又は前記固定型)を正面視したときの左右方向に前記可動型(又は前記固定型)が傾斜可能になり、前記可動型や前記固定型の取付位置をさらに微調整し易くする。そして、前記可動型(又は前記固定型)を一点で支持すれば良いので、大掛かりな治具にならず、その取扱いも簡単なものとなる。
本明細書では、前記一点支持とは、前記可動プラテン(又は前記固定プラテン)を背にして前記可動型(又は前記固定型)および前記当接部材を正面視したときに、前記可動型(又は前記固定型)の下面の面積と比較してその下面に接触する前記当接部材の接触面の面積が十分小さく、かつ、前記可動型(又は前記固定型)の左右方向の寸法(幅)と比較して前記当接部材の前記接触面の左右方向の寸法(幅)が十分に小さいこと、と定義している。より具体的には、例えば前記当接部材がローラの場合は、前記可動型(又は前記固定型)の下面の面積と比較してその下面に接触する前記当接部材の接触面積が十分小さいといえるので、前記可動型(又は前記固定型)の幅と比較して前記ローラの幅が十分に小さければ一点支持となる。例えば、前記当接部材が、厚みの小さな円板や半円板、又は、厚みの小さな三角板や四角板等の多角形状板であって、その頂部が前記可動型(又は前記固定型)と当接する場合は、一点支持となる。当然ながら、前記当接部材が、球体や半球体であり、その頂部が前記可動型(又は前記固定型)と当接する場合は、一点支持となる。
【0024】
例えば、前記金型取付用冶具が予め配されている射出成形装置とすることで、前記金型の取付位置を微調整することが簡便である。
【0025】
本発明の射出成形装置の金型取付方法は、可動プラテンに締め付け固定された可動型と固定プラテンに締め付け固定された固定型とが対向して型開閉動作する横型締め構造の射出成形装置において、可動型と固定型との型開閉時における心出しガイドとしてガイドピンとガイド穴とが備わっている金型を、その取付位置を微調整して取り付ける金型取付方法において、前記可動プラテンに金型取付用冶具を配しておき、この金型取付用冶具によって前記可動型の固定を解除し型締め状態を解除したときに前記可動型を下支えしながら前記可動型の取付位置を微調整して、前記可動型を締め付け固定するか、又は、前記固定プラテンに金型取付用冶具を配しておき、この金型取付用冶具によって前記固定型の固定を解除し型締め状態を解除したときに前記固定型を下支えしながら前記固定型の取付位置を微調整して、前記固定型を締め付け固定することを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、前記金型取付用冶具によって前記可動型の固定を解除し型締め状態を解除したときに前記可動型を下支えしながら前記可動型の取付位置を微調整して、前記可動型を締め付け固定することで、前記可動型の重量が前記固定型に付加されないようにする。または、前記金型取付用冶具によって前記固定型の固定を解除し型締め状態を解除したときに前記固定型を下支えしながら前記固定型の取付位置を微調整して、前記固定型を締め付け固定することで、前記固定型の重量が前記可動型に付加されないようにする。よって、前記金型(可動型及び固定型)がこじれて取り付けられることが解消されるとともに、前記ガイドピンには前記金型の重量が付加されないこととなり、型開閉動作の際に、前記ガイドピンが、それぞれのガイド穴にスムーズに出入りするので、ガイドピンとガイド穴が磨耗し難く、良好な状態となる。
【0027】
前記ガイドピンとガイド穴との配置関係は、前記可動型に配された複数のガイドピンが前記固定型に形成された複数のガイド穴に挿通される嵌め合い構造であるか、又は、前記固定型に配された複数のガイドピンが前記可動型に形成された複数のガイド穴に挿通される嵌め合い構造である。例えば、前記ガイドピンとガイド穴は4対設けられる。
【0028】
一般に、射出成形装置では、前記固定型の背面(固定型取り付け板の背面)にはロケートリングが付設されており、このロケートリングを前記固定プラテンに形成されたロケートリング取り付け穴に挿入し取り付ける。このため、ガイドピンをガイド穴に挿通し、かつ、前記固定型と前記可動型のパーティング同士を合わせた状態の金型は、最初に、前記ロケートリングをロケートリング取り付け穴に挿入される。次に、その金型は、固定プラテンと可動プラテンの間に挟まれるように可動プラテンがスライドし、さらに型締めされて、その後、固定型が固定プラテンにクランプ手段で締め付け固定されるとともに可動型が可動プラテンにクランプ手段で締め付け固定される。
【0029】
本発明は、前記可動型の固定を解除し型締め状態を解除したときの前記金型取付用冶具が下支えする力を前記可動型の重量と釣り合わせるか、又は、前記固定型の固定を解除し型締め状態を解除したときの前記金型取付用冶具が下支えする力を前記固定型の重量と釣り合わせることが好ましい。
本発明によれば、前記可動型(又は前記固定型)には余分な力が働いていないため前記可動型(又は前記固定型)の取付位置の微調整がし易い。つまり、可動型(又は固定型)が、その重量を下支えされた状態のもとで、クランプ手段による締め付け固定を解除したあと、型締め状態を解除すれば、容易にガイドピンに無理な負荷が作用しない状態を作り出すことができる。あとは、可動型(又は固定型)を再度可動プラテン(又は固定プラテン)に締め付け固定すれば、ガイドピンに無理な負荷がかからない最適な金型位置で取り付けできる。
【0030】
本発明は、前記金型取付用冶具によって前記可動型を一点支持し、この一点支持した点を基準点として前記可動型の取付位置を微調整するか、又は、前記金型取付用冶具によって前記固定型を一点支持し、この一点支持した点を基準点として前記固定型の取付位置を微調整することが好ましい。
本発明によれば、前記一点支持した点を基準点として前記可動型(又は前記固定型)の取付位置を微調整することとなり、前記金型の取付位置の微調整がし易い。ここで、前記一点支持とは、前記可動型(又は固定型)の真下の位置であって、可動プラテン(又は固定プラテン)を背にして前記可動型(又は固定型)を正面視したときに、前記可動型(又は固定型)が左右に傾斜可能となる点を基準点として支持することである。前記一点支持する基準点の位置としては、一般的な金型が左右対称に重量のバランスがとれていることが多いことや前記金型位置の微調整のし易さの観点から、前記可動型(又は固定型)の真下の位置であって、可動プラテン(又は固定プラテン)を背にして前記可動型(又は固定型)を正面視したときに、左右方向に対する中心線上の位置が好ましい。また、前記一点支持する基準点の位置としては、前記可動型(又は固定型)の真下の位置であって、可動プラテン(又は固定プラテン)を背にして前記可動型(又は固定型)を正面視したときに、前記左右方向の重量のバランスがとれる位置であっても良い。また、前記一点支持する基準点の位置としては、前記可動型(又は固定型)の真下の位置であって、可動プラテン(又は固定プラテン)を背にして前記可動型(又は固定型)を正面視したときの左右方向、および、型締めユニットの型開閉方向となる前後方向に対して、それぞれの重量のバランスがとれる位置であっても良い。
【0031】
本発明は、前記可動型を可動プラテンに締め付け固定するとともに前記固定型を固定プラテンに締め付け固定した後、前記可動型の固定を解除し型締め状態を解除してから、前記可動型の取付位置を微調整して、再度型締めして、前記可動型を可動プラテンに再度締め付け固定する手順とするか、又は、前記固定型の固定を解除し型締め状態を解除してから、前記固定型の取付位置を微調整して、再度型締めして、前記固定型を固定プラテンに再度締め付け固定する手順とすることが好ましい。
前記型締め状態の解除の際には、その反動で前記可動プラテンや可動型が僅かに型開き方向にスライドする場合もあり得る。また、前記型締め状態の解除には、その解除のあと、オペレータにより僅かに型締ユニットを型開き動作させて、可動プラテンを型開き方向にスライドさせる場合も含まれる。もちろん、その場合の型締め解除および型開きにあっては、ガイドピンがガイド穴から抜け出るようなことはない。
【0032】
本発明は、前記金型の温度を設定温度としてから、前記取付位置を微調整することが好ましい。本発明の作業手順とすることで、設定温度における前記金型の構成部品同士の熱のびや熱収縮による歪みや位置ずれ、および、設定温度における前記金型からの熱の影響を受けた前記固定プラテンおよび前記可動プラテンの熱のびや熱収縮に起因する前記固定型と前記可動型の相対的な少なくとも上下方向の位置ずれを解消することができる。なお、前記固定プラテンと前記可動プラテンでは、前記金型等からの熱の受け方や熱の逃げ方が異なる。一方の前記固定プラテンは、前記可動プラテンに比べて温調された前記金型の熱の影響を受け易く、加えて、射出ノズルからの熱の影響も受ける。そのような前記固定プラテンは、その下面のほぼ全体を機台上に接触するように取り付けられて、その機台に熱を逃がすことができる。加えて、前記固定プラテンは、タイバーにも熱を逃がすことができる。もう一方の前記可動プラテンは、前記可動型がその内部に成形品突き出し機構のための空洞部(図示省略)を備えているため、温調された前記金型の熱の影響を固定プラテンに比べて受けにくい。そのような前記可動プラテンは、ガイド手段の方法によって変わるが、その下面の一部に取り付けられたスライド手段を介して機台に熱を逃すことができるし、タイバーに熱を逃がすこともできる。加えて、前記可動プラテンは、その背面の一部に取り付けられた型締め軸などに熱を逃がすことができる。したがって、熱の受け方や熱の逃げ方が異なる前記固定プラテンと前記可動プラテンとでは、その熱のび量やその熱収縮量に差ができる。しかも、それらのプラテンのどちらが熱のび又は熱収縮し易いのかは、型締めユニットの構造や前記金型の構造や前記金型の設定温度等によって変わることとなる。
その結果、同じ機台上に設置された前記固定プラテンと前記可動プラテンでは、それらの盤面に前記金型が取り付けられてからその金型が温度調節されて設定温度になるまでに、前記固定プラテンの盤面中心の機台からの高さ位置がずれる量と前記可動プラテンの盤面中心の機台からの高さ位置がずれる量に差が生じてしまう。つまり、それらプラテンに取り付けられた前記固定型と前記可動型は、それら金型が取り付けられてからその金型が温度調節されて設定温度になるまでに、機台からの高さ位置がそれぞれ違う量ずつずれてしまい、前記固定型と前記可動型の相対的な上下方向の位置にずれが生じてしまう。また、前記可動プラテンが、その一端が前記金型の熱を受けないバックプラテンに固定され、もう他端が前記固定プラテンに固定されたタイバーのみでガイドされて、機台から浮いた状態であるとするような場合でも、タイバーが固定されたバックプラテンと前記固定プラテンとでは、熱の受け方や熱の逃げ方が異なるので、熱のび量や熱収縮量に差が生じる。そのため、前記金型を前記固定プラテンと前記可動プラテンに取り付けられてからその金型が温度調節されて設定温度になるまでに、タイバーのバックプラテン側固定箇所の機台から見た高さ位置がずれる量とタイバーの前記固定プラテン側固定箇所の機台から見た高さ位置がずれる量に差が生じてしまう。そのようなタイバーに前記可動プラテンが挿通されて、前記固定プラテンとバックプラテンの間をスライド自在にガイドされていることから、最終的には、前記金型が前記固定プラテンと前記可動プラテンに取り付けられてからその金型が温度調節されて設定温度になるまでに、前記固定型と前記可動型の相対的な上下方向の位置にずれが生じてしまう。
【発明の効果】
【0033】
本発明の樹脂成形装置の金型取付用冶具によれば、前記可動プラテンの下方側に取り付けられた前記金型取付用冶具が、前記駆動手段の駆動力で前記当接部材を前記可動型に当接させて前記可動型を下支えすることで、前記可動型の取付位置を微調整して取り付ける際に前記可動型の重量が前記固定型にかかる虞がない。また同様に、前記固定プラテンの下方側に取り付けられた前記金型取付用冶具が、前記駆動手段の駆動力で前記当接部材を前記固定型に当接させて前記固定型を下支えすることで、前記固定型の取付位置を微調整して取り付ける際に前記固定型の重量が前記可動型にかかる虞がない。よって、従来に比べて、より正確な位置で高い再現性で金型の位置合わせが可能となる。そして、前記駆動手段を圧縮ばねとすることで、油圧源、空圧源、電源等の特別な動力源を必要とせず、かつ、前記予圧調節機構を備えることで、少しの押し込みストロークで前記可動型や前記固定型を下支えすることができる。また、前記金型の取付位置を微調整したあと、実際の成形作業中もそのまま前記金型を支持させておいた場合には、前記金型の取付位置を常に保持させて、成形作業中に徐々に前記固定型と前記可動型の相対的な位置がずれることを防止できるとともにガイドピンに無理な負荷がかかることを防止できる。また、前記可動型(又は前記固定型)を一点で支持する構成とすれば、大掛かりな治具にならず、その取扱いも簡単なものとなる。
【0034】
本発明の射出成形装置の金型取付方法によれば、前記金型(可動型及び固定型)がこじれて取り付けられることが解消されるとともに、前記ガイドピンには前記金型の重量が付加されないこととなり、型開閉動作の際に、前記ガイドピンが、それぞれのガイド穴にスムーズに出入りするので、ガイドピンとガイド穴が磨耗し難く、良好な状態となる。本発明によれば、前記可動型(又は前記固定型)には余分な力が働いておらず、また、前記可動型(又は前記固定型)を一点支持した点を基準点として前記可動型(又は前記固定型)の取付位置を微調整することによって、前記金型の取付位置の微調整がし易い。
したがって、これら本発明によって、より正確な位置で高い再現性で金型の位置合わせが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】金型を型締ユニット内に取り付けて、本発明の第1の実施形態の金型取付用冶具を可動プラテンに取り付けた状態を示す構造図である。
【図2】上記金型のうち可動型を締め付け直して固定し、型開きしたときの状態を示す構造図である。
【図3】上記第1の実施形態の金型取付用冶具が可動プラテンに配されており、上記可動型が可動プラテンに固定されている状態を示す構造図である。
【図4】上記第1の実施形態の金型取付用冶具を示す構造図であり、(a)は正面側から見た断面図であり、(b)は側面側から見た断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の金型取付用冶具を固定プラテンに取り付けた状態を示す構造図である。
【図6】上記金型のうち固定型を締め付け直して固定し、型開きしたときの状態を示す構造図である。
【図7】上記第2の実施形態の金型取付用冶具が固定プラテンに配されており、上記固定型が固定プラテンに固定されている状態を示す構造図である。
【図8】上記第1の実施形態又は第2の実施形態の金型取付用冶具を可動プラテンと固定プラテンにそれぞれ取り付けて、金型を型締ユニット内に取り付けた状態を示す構造図である。
【図9】本発明の実施形態の金型取付手順を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施形態の金型取付手順を示すフローチャートの他の例である。
【図11】本発明の実施形態の金型取付手順を示すフローチャートの他の例である。
【図12】上記第2の実施形態の金型取付用冶具の他の例が可動プラテンに配されている状態を示す構造図である。
【図13】既知の横型締め構造の型締ユニットを側面側から示す構造図である。
【図14】上記型締ユニットの金型が取り付けられた箇所を示す構造図である。
【図15】上記金型の固定型が固定プラテンに固定された状態を示す構造図である。
【図16】上記金型を吊っている状態を示す構造図である。
【図17】上記金型が僅かにこじれて取り付けられたときの状態を示す構造図である。
【図18】従来の方法で上記金型のうち可動型を再度締め付け直して固定し、型開きしたときの状態を示す構造図である。
【図19】従来の方法で上記金型のうち固定型を再度締め付け直して固定し、型開きしたときの状態を示す構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0037】
(第1の実施形態の金型取付用冶具)
図1は、金型200を型締ユニット100内に取り付けて、本発明の第1の実施形態の金型取付用冶具1を可動プラテン113に取り付けた状態を示す構造図である。本実施形態の金型取付用冶具1は、圧縮ばね(駆動手段)4の復元力で上昇するピストン2と、このピストン2の上方に配されてピストン上面からその頂部が突出したローラ(当接部材)3を備える。
図2は、前記金型200のうち可動型220を締め付け直して固定し、型開きしたときの状態を示す構造図である。図3は、図2のB1−B1線断面図であり、可動型220が可動プラテン113に固定された状態を正面側から示す構造図である。そして、図4(a)は、図2のB2−B2線断面図であり、金型取付用冶具1を正面側から見た構造図である。図4(b)は、図4(a)のC2−C2線断面図であり、金型取付用冶具1を側面側から見た構造図である。
【0038】
第1の実施形態の金型取付用冶具1は、可動プラテン113の下方側に配されており、可動型220の真下となる位置であって、P2−P2線上の位置に配され、ローラ3の頂部と可動型取り付け板221の下面とが符号R2の箇所でほぼ点接触している(図3)。前記P2−P2線は、前記可動プラテン113を正面視したときに左右方向に対する中心線であり、かつ、前記可動型220を正面視したときに左右方向に対する中心線である。なお、図1では、図示省略された金型温調用外部配管等の邪魔にならないことや金型取付用治具1の取り付け位置などの観点から、金型取付用治具1のローラ3を可動型下面のP2−P2線上の可動プラテン113の近く(符号R2の箇所)に当接させている。そのため、可動型220が、クランプ116による締め付け固定が解除され、かつ型締め状態が解除されて、型開き方向に僅かでもスライドさせられた状態になると、ローラ3との当接箇所(符号R2)を支点に可動型220が固定型210側に倒れ込む傾向にある。しかし、可動型220と固定型210のパーティング面同士が合わさった状態でかつそれら金型200が可動プラテン113と固定プラテン111の間に挟まれた状態、つまり、型閉じされ、型締めされる直前の状態においては、上記可動型220の倒れ込みが解消されている。また、その倒れ込んだ可動型220を起こすように型閉じされる際に、可動型220と固定型210のパーティング面の間に摩擦が発生して、それが可動型220と固定型210の相対的な位置ずれを生じさせる要因にもなり得るが、通常無視できる程度である。もちろん、ローラ3が下支えする可動型220の下面の位置は、図1とは逆に可動プラテンから離れた位置(この場合には、可動プラテン側に倒れ込む傾向にある)でも良いし、可動型220の重心位置に応じてバランスがとれる位置に変更されても構わない。このことは、固定型210の側に金型取付用治具1を配する場合も同じである。
【0039】
本実施形態の金型取付用冶具1は、横長で長方形のフレーム11の下方にU字形の支え12が一体的に取り付けられている。長方形のフレーム11には上下に貫通穴が形成されており、この貫通穴に円柱形状のピストン2が昇降可能に取り付けられ、回転防止キー21によってピストン2が回転しない構成となっている。長方形のフレーム11には回転防止キー21を上下に動かせるキー溝111が形成されている。そして、U字形の支え12には上下にねじ穴が形成されており、このねじ穴に対して、支え12の下面から調整ネジ7が取り付けられており、ダブルナット71にて調整ネジ7の押し込み位置を規制している(図4)。前記フレーム11は可動プラテン113の下方側にボルト固定されている。
【0040】
前記ピストン2の上方には、軸棒31を介してローラ3が取り付けられ、ローラ3の頂部がピストン2の上面から突出している(図4)。また、ローラ3は、前記型開閉方向に回動可能な構成となっている。また、ローラ3は、後述される微調整の際の型閉じや型締めあるいは型締めの解除や型開きの動作によって、前記ピストン2とそれに下支えされた可動型220の間に発生する摩擦を軽減して、可動型220を前後に動かし易くすることで、後述される微調整を容易にするとともに金型取付用冶具1の破損を防止する役割を果たす。
【0041】
前記ピストン2は、その下面側から上方に向かって中空の空洞部22が形成され、かつ、ピストン2の下面側から空洞部22の途中までねじ穴が形成されており、このねじ穴に対して、ピストン2の下面から六角ボルト5が取り付けられており、ダブルナット51にて六角ボルト5の押し込み位置を規制している(図4)。前記六角ボルト5には上下に貫通穴が形成されており、この貫通穴に円柱形状の予圧シャフト6が昇降可能に取り付けられている。予圧シャフト6は上方側(ヘッド)の径が下方側の径よりも大きく設定され、予圧シャフト6の上面が六角ボルト5の上面から突出し、六角ボルト5にて押し上げられた位置を保持する構成となっている。前記ピストン2の空洞部22には圧縮ばね4が配されており、この圧縮ばね4の上面がピストン2の空洞部22の上面に当接し、予圧シャフト6の上面が圧縮ばね4の下面に当接し、予圧シャフト6の下面が調整ネジ7の上面に当接している。よって、前記六角ボルト5のねじ締め量に応じて圧縮ばね4が縮む構成となっている。そして、前記調整ネジ7のねじ締め量に応じてピストン2が上昇するか、又は、圧縮ばね4が縮む構成となっている。
【0042】
前記ローラ3を当接させる圧縮ばね4は、市販のばねが適用でき、ばね荷重等の選択によって、1つの圧縮ばね4で、例えば数kgから百kg程度の範囲に対応できるようにして、複数種類の可動型220(又は固定型210)を下支えしてその重量を受け持つことが可能である。一般に、圧縮ばね4は、かかる重量(荷重)が大きくなると縮み量が大きくなり、全長が短くなる。しかし、前記ローラ3が可動型220(又は固定型210)の重量を下支えしている状態と下支えしていない状態とで、圧縮ばね4の全長が大きく変化すると、金型取付用治具1を取り扱う上で作業性が悪い場合がある。例えば、伸びきった状態の圧縮ばね4を可動型220の重量に見合う縮み量まで毎回縮ませる作業は、そのストロークも長く面倒である。また、例えば、可動型220の下面位置をローラ3やピストン2を介して圧縮ばね4で下支えした状態から、金型取付用治具1を取り付けた可動プラテン113を固定が解除された可動型220に対して離間する方向に移動させると、前記ローラ3が可動型220の下面から外れて、圧縮ばね4が伸びきった状態になる。そのため、ローラ3が可動型220下面の高さ位置を大きく超えた高い位置に上昇してしまうことから、再び可動型220を下支えさせるには、伸びきった圧縮ばね4を所定の縮み量まで最初から縮め直す作業が必要になる。そこで、本実施形態では、予め、前記六角ボルト5を回してある程度ねじを締めることで圧縮ばね4を所定量縮ませておき、前記ローラ3が可動型220(又は固定型210)を下支えするために必要な圧縮ばね4のストロークを短くしている。そして、前記調整ネジ7を回動させてねじ締め量を調節することで、フレーム11に取り付けられたピストン2を昇降させて、ローラ3の頂部(符号R2の箇所)を可動型取り付け板221の下面と当接させて、予め所定量縮ませておいた圧縮ばね4をさらに圧縮させることができる構成となっている(図3)。
【0043】
本実施形態の金型取付用冶具1の具体的な使用態様を、一例を挙げて説明する。例えば、可動型220を例に上げると、その可動型220の重量が32kgであるとするならば、荷重が2kgで全長が0.5mm縮む圧縮ばね4を使用し、荷重が30kgまで圧縮ばね4を予め圧縮しておく。そして、金型200を型締めしたあと、固定型210を固定プラテン111にクランプ手段115で締め付け固定するとともに可動型220を可動プラテン113にクランプ手段11116で締め付け固定してから、可動プラテン113に既に取り付けてある金型取付用冶具1(または、上記締め付け固定の直後に金型取付用冶具1を取り付けても良い)のピストン2を、調整ネジ7を回動させて上昇させ、ローラ3の頂部(符号R2の箇所)を可動型取り付け板221の下面と当接させ、さらに調整ネジ7を回動させることで圧縮ばね4の全長をさらに0.5mm縮ませて荷重が32kgまで圧縮ばね4を圧縮させる。これによって、前記可動型220の締め付け固定を解除し型締め状態を解除したときの可動型220を下支えする力が可動型220の重量と釣り合うこととなる。
【0044】
つまり、下支えされた可動型220(又は固定型210)は、クランプ手段115(又は、116)で締め付け固定されていた位置で可動型220(又は固定型210)の重量が下支えされるとともに、その重量を超えると下に移動することが許容され、その重量未満だと上に移動することを許容される。それによって、ガイドピン215にかかるこじり力が解消されるとともに、可動型220(又は固定型210)の重量に起因してガイドピン215にかかる負荷が非常に小さくなる。
したがって、固定型210と可動型220の相対的な位置をより正確な位置で高い再現性で位置合わせすることが可能となる。そして、前記固定型210のガイドピン215には前記可動型220又は固定型210自身の重量が付加されないこととなり、型閉じ動作や型締め動作や型開き動作の際に、前記ガイドピン215が、それぞれのガイド穴225にスムーズに出入りするので、ガイドピン215とガイド穴225が磨耗し難く、良好な状態となる。前記金型200の構成としては、例えば、ガイドピン215とガイド穴225とが4対設けられる構成や、ガイドピン215とガイド穴225とが2対設けられる構成等がある。
【0045】
上述の説明では、金型取付用冶具1を可動プラテン113に取り付ける例で説明したが、金型取付用冶具1を固定プラテン111に取り付けてもよいし、図8に示すように金型取付用冶具1を可動プラテン113と固定プラテン111にそれぞれ取り付けることもできる。いずれにしても、一般的な方法で型締ユニット100に金型200を取り付けて、型締めした状態において、可動型220又は固定型210のいずれか一方をクランプ手段115又は116で締め付け固定したまま、もう一方を金型取付用治具1で下支えしたうえで、その下支えした方の金型のクランプ手段116又は115による締め付け固定を解除する。そのあとは、型締め状態を解除するだけで、その締め付け固定が解除された側の金型が、最初に締め付け固定されていた高さ位置で上下に移動可能に下支えされて、ガイドピン215に負荷がかからない位置に微調整されることになる。
また、図8に示す例では、金型取付用冶具1と固定プラテン111の間には断熱板41が配されているので、固定プラテン111からの熱が金型取付用冶具1に加わり難い構成となっており、ローラ3の頂部と可動型取り付け板221の下面とが符号R2の箇所でほぼ点接触しているので、可動型220からの熱が金型取付用冶具1に加わり難い構成となっている。このように、金型200からの熱が金型取付用冶具1に加わり難くすることで、圧縮ばね4のばね荷重等の特性を安定なものとする。前記断熱板41の材質としては、セラミックス、シリコーンゴム、耐熱性樹脂等が挙げられる。前記ローラ3の材質としては、金属、セラミックス、シリコーンゴム、耐熱性樹脂等が挙げられる。なお、図8に示す例では、金型取付用冶具1と可動プラテン113の間にも、同様に断熱板41が配されている。
【0046】
(第2の実施形態の金型取付用冶具)
図5は、本発明の第2の実施形態の金型取付用冶具1を固定プラテン111に取り付けた状態を示す構造図である。本実施形態の金型取付用冶具1は、空圧源とレギュレータを有する空圧回路9を備えており、空圧回路9中の空圧源(図示省略)からの空圧力を予め設定した空圧力に調圧可能なレギュレータ(図示省略)を介して空圧シリンダ8に送圧して、固定型210の重量に見合う空圧力でピストン2を上昇させて、このピストン2の上方に配されてピストン上面からその頂部が突出した球体(当接部材)3を、その頂部(符号R1の箇所)を固定型取り付け板211の下面に当接させる構成である。前記レギュレータは、一時側(空圧源側)の空圧力を予め設定した空圧力に調圧して2次側(空圧シリンダ側)に送圧するものである。これにより、固定型210は、クランプ手段115による締め付け固定が解除されかつ型締め状態が解除されても、最初に締め付け固定されていた高さ位置で、その固定型210の重量に見合う空圧力で下支えされるとともに、その重量を超えると下に移動することが許容され、その重量未満だと上に移動することが許容される。なお、前記空圧シリンダ8と前記レギュレータの間に、前記ピストン2の上下の移動方向を切り換える切換バルブ(図示省略)を備えても良い。ここで、同一の符号は同じ機能を表しており、その説明を適宜省略する。
【0047】
本実施形態の金型取付用冶具1は、固定プラテン111の下方側に取り付けられており、固定型210の真下となる位置であって、P2−P2線上の位置に配され、球体3の頂部と固定型取り付け板211の下面とが符号R1の箇所で点接触している(図7)。前記P2−P2線は、前記固定プラテン111を正面視したときに左右方向に対する中心線であり、かつ、前記固定型210を正面視したときに左右方向に対する中心線である。本実施形態では、球体3の頂部と固定型取り付け板211の下面とが符号R1の箇所で点接触しているので、固定型210からの熱が金型取付用冶具1に加わり難い。前記球体3の材質としては、金属、セラミックス、シリコーンゴム、耐熱性樹脂等が挙げられる。
【0048】
本実施形態によれば、空圧力を利用しているので、工場配管のエアを引き出して利用することができ、固定型210(又は可動型220)の重量に見合う空圧力の調整範囲も広く設定可能である。もちろん、金型取付用冶具1を可動プラテン113に取り付ける場合には、可動型220の重量に見合う空圧力でピストン2を上昇させる。なお、本実施形態では空圧力を利用しているが、油圧力を利用したものとしてもよい。油圧力を利用すれば、固定型210(又は可動型220)の重量が大きい場合にも対応が容易である。
【0049】
図12は、上記第2の実施形態の金型取付用冶具1の他の例が、可動プラテン113に取り付けられている状態を示す構造図である。本実施形態では、空圧回路9中の空圧源(図示省略)からの空圧力を予め設定した空圧力に調圧可能なレギュレータ(図示省略)を介して空圧シリンダ8に送圧して、可動型220の重量に見合う空圧力でピストン2を上昇させて、このピストン2の上方に配されてピストン上面からその頂部が突出した球体3を、その頂部(符号R1の箇所)を可動型取り付け板221の下面に当接させる構成であり、かつ、電動モータM1の駆動力でピストン2が左右に移動する構成となっている。ここで、同一の符号は同じ機能を表しており、その説明を適宜省略する。
【0050】
本実施形態によれば、電動モータM1のの駆動力でピストン2を左右に移動させることで、球体3の頂部(符号R2の箇所)を可動型220の重心の真下となる位置に移動させ、点接触により下支えしてその重量を受け持つことが容易である。本実施形態の金型取付用冶具1では、可動型220の重量に見合う空圧力によって、可動型220の固定を解除し型締め状態を解除したときの可動型220を下支えする力が可動型220の重量と釣り合わせておき、下支えされた可動型220が、最初に可動型を締め付け固定していた位置で可動型220の重量が下支えされるとともに、その重量を超えると下に移動することが許容され、その重量未満だと上に移動することが許容される。それによって、可動型220の重量に起因してガイドピン215にかかる負荷が非常に小さくなる。もちろん、金型取付用冶具1を固定プラテン111に取り付ける場合には、固定型210の重量に見合う空圧力でピストン2を上昇させる。なお、上述の空圧力に代えて、電動モータの駆動力を利用することもでき、この場合は、下支えされた固定型210又は可動型220が、上述した実施態様と同じように、その重量を所定位置で下支えしながら、その重量を超えると下に移動することが許容され、その重量未満だと上に移動することが許容される機構とすることが必要である。
【0051】
(本発明の金型取付手順)
図9は本発明の実施形態の金型取付手順を例示するフローチャートである。図9(a)は金型取付用冶具1を可動プラテン113に取り付ける場合の手順を示しており、図9(b)は金型取付用冶具1を固定プラテン111に取り付ける場合の手順を示している。ここでは、図9(a)に示すフローチャートにしたがって、本発明の方法による金型の取付手順を以下に説明する。先ず、金型取付用冶具1を可動プラテン113に取り付けておく(符号S1)。
【0052】
上述の既知の方法によって、クレーン等の吊り下げ手段を用いて、可動型220と固定型210のパーティングPT(パーティング面PT)を合わせかつガイドピン215とガイド穴225とをスライド可能な嵌め合い状態とし、金型200を中心位置でバランスがとれるように吊って(図16)、ロケートリング121とロケートリング取り付け穴119とを位置合わせして、固定型210を固定プラテン111に取り付けるとともに可動プラテン113を固定プラテン111側にスライドさせてそれらのプラテン111、113の間に金型200を挟み込み、さらに型締めして(符号S2)、クランプ手段115によって固定型210を固定プラテン111に締め付け固定するとともに、クランプ手段116によって可動型220を可動プラテン113に締め付け固定する(符号S3)。ここで、固定型210は、固定型本体212が固定型取り付け板211に固定されており、固定型取り付け板211と固定プラテン111とがクランプ手段115にて固定される。可動型220は、可動型本体222が可動型取り付け板221に固定されており、可動型取り付け板221と可動プラテン113とがクランプ手段116にて固定される。
【0053】
前記可動型220を可動プラテン113に締め付け固定するとともに固定型210を固定プラテン111に締め付け固定した後(符号S3)、当接部材としてのローラ3の頂部(符号R2の箇所)を可動型210の下面の中央(図3のP2−P2線上)に当接させる。そして、金型200の温度を設定温度にする(符号S5)。これは、前記金型温度が設定温度で安定状態になってから前記可動型220の取り付け位置を微調整することで、設定温度における可動型220の構成部品同士の熱のびや熱収縮による歪みや位置ずれ、および、設定温度における可動型220からの熱の影響を受けた可動プラテン113の熱のびや熱収縮に起因する可動型220と固定型210の相対的な少なくとも上下方向の位置ずれを解消するためである。ここで、金型取付用冶具1の駆動手段が圧縮ばね4である場合には、可動型220や可動プラテン113の熱のび等を考慮して、金型温度が設定温度で安定状態になった後で、再度下支えするための重量調整を行うと尚良い。
【0054】
前記金型温度が設定温度となってから(符号S5)、可動型220の締め付け固定を解除し、型締め状態を解除(型締力の開放)し、ガイドピン215とガイド穴225とが嵌め合い状態で可動型220の位置を微調整し、再度型締めして(符号S6)、可動型220を可動プラテン113に再度締め付け固定する(符号S7)。その後、金型取付用冶具1は、可動プラテン113から取り外すか、又は、そのまま取り付けた状態のままでも良い。可動型220側に金型取付用冶具1を取り付けた場合には、成形作業中において可動型220が下に位置ズレすることを金型取付用冶具1によって防止させることも可能である。なお、その際には、固定型210側の位置ズレがロケートリング121で防止される。
【0055】
図9(a)や図9(b)に示す作業手順によれば、前記金型200(可動型220及び固定型210)がこじれて取り付けられることが解消されるとともに、前記ガイドピン215には前記可動型220の重量や前記固定型210の重量が付加されないこととなり、型開閉動作の際に、前記ガイドピン215が、それぞれのガイド穴225にスムーズに出入りするので、ガイドピン215とガイド穴225が磨耗し難く、良好な状態となる。
【0056】
図10は本発明の実施形態の金型取付手順を例示するフローチャートの他の例である。ここで、同一の符号は同じ機能を表しており、その説明を適宜省略する。図10(a)は金型取付用冶具1を可動プラテン113に取り付ける場合の手順を示しており、図10(b)は金型取付用冶具1を固定プラテン111に取り付ける場合の手順を示している。ここでは、図10(a)に示すフローチャートにしたがって、本発明の方法による金型の取付手順を以下に説明する。
【0057】
上述のように既知の方法で可動プラテン113と固定プラテン111の間に金型200を挟み込み、型締めして(符号S2)、クランプ手段115によって固定型210を固定プラテン111に締め付け固定するとともに、クランプ手段116によって可動型220を可動プラテン113に締め付け固定する(符号S3)。そして、前記可動型220を可動プラテン113に締め付け固定するとともに固定型210を固定プラテン111に締め付け固定した後(符号S3)、金型取付用冶具1を可動プラテン113に取り付ける(符号S11)。そして、当接部材としてのローラ3の頂部(符号R2の箇所)を可動型220の下面の中央(図3のP2−P2線上)に当接させる。そして、金型200の温度を設定温度にする(符号S5)。
【0058】
前記金型温度が設定温度となってから(符号S5)、可動型220の固定を解除し、型締め状態を解除(型締力の開放)し、ガイドピン215とガイド穴225とが嵌め合い状態で可動型220の位置を微調整し、再度型締めして(符号S6)、可動型220を可動プラテン113に再度締め付け固定する(符号S7)。その後、金型取付用冶具1は、可動プラテン113から取り外すか、又は、そのまま取り付けた状態のままでも良い。本実施形態の金型取付用冶具1は、既存の可動プラテン113や固定プラテン111の金型取付穴等を利用して取り付けることができるので、既に稼働中の射出成形装置に本発明の成形装置の金型取付方法を適用することが容易である。
【0059】
図11は本発明の実施形態の金型取付手順を例示するフローチャートの他の例である。ここで、同一の符号は同じ機能を表しており、その説明を適宜省略し、本発明の方法による金型の取付手順を以下に説明する。先ず、金型取付用冶具1を可動プラテン113と固定プラテン111にそれぞれ取り付けておく(符号S21)。
【0060】
上述のように既知の方法で可動プラテン113と固定プラテン111の間に金型200を挟み込み、型締めして(符号S2)、クランプ手段115によって固定型210を固定プラテン111に締め付け固定するとともに、クランプ手段115によって可動型220を可動プラテン113に締め付け固定する(符号S3)。そして、前記可動型220を可動プラテン113に締め付け固定するとともに固定型210を固定プラテン111に締め付け固定した後(符号S3)、金型取付用冶具1の当接部材としてのローラ3の頂部(符号R2の箇所)を固定型210および可動型220の下面の中央(図3のP2−P2線上)にそれぞれ当接させる(符号S4)。そして、金型200の温度を設定温度にする(符号S5)。ここで、符号S4と符号S5の順序を上記と逆の順序としても良い。
【0061】
前記金型温度が設定温度となってから(符号S5)、可動型220の固定を解除し、型締め状態を解除(型締力の開放)し、ガイドピン215とガイド穴225とが嵌め合い状態で可動型220の位置を微調整し、再度型締めして(符号S6)、可動型220を可動プラテン113に再度締め付け固定する(符号S7)。その後、固定型210の固定を解除し、型締め状態を解除(型締力の開放)し、ガイドピン215とガイド穴225とが嵌め合い状態で固定型210の位置をロケートリング121がロケートリング取り付け穴119に取り付けられた状態で僅かに微調整し、再度型締めして(符号S26)、固定型210を固定プラテン111に再度締め付け固定する(符号S27)。図11に示す作業手順によれば、上記よりも、より正確な位置で金型の位置合わせをすることも可能である。なお、固定型210の高さ位置を微調整する際には、型締めを解除する前にロケートリング取り付け穴119に挿入されたロケートリング121を取り外しておいても良い。
【0062】
以上、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。前記金型取付用冶具1のピストン2を駆動する駆動手段としては、油圧シリンダ、液圧シリンダ、空圧シリンダ、ばね、電動モータ等が適用できる。前記金型取付用冶具1を既存のプラテン(可動プラテン113や固定プラテン111)に後付けしてもよいし、前記金型取付用冶具1が組み込まれたプラテン(可動プラテンや固定プラテン)としてもよい。クランプ手段115や116は、固定型210や可動型220に一体的に形成されていてもよい。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0063】
1 金型取付用冶具、
3 当接部材(ローラ,球体)
4 駆動手段(圧縮ばね)、
111 固定プラテン、
113 可動プラテン、
115,116 クランプ手段(取り付け板)、
119 ロケートリング取り付け穴、
121 ロケートリング、
200 金型(可動型及び固定型)、
210 固定型、
211 固定型取り付け板、
220 可動型、
221 可動型取り付け板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動プラテンに締め付け固定された可動型と固定プラテンに締め付け固定された固定型とが対向して型開閉動作する横型締め構造の樹脂成形装置において、可動型と固定型との型開閉時における心出しガイドとしてガイドピンとガイド穴とが備わっている金型を、その取付位置を微調整して取り付ける際に使用される金型取付用冶具であって、
前記金型取付用冶具は、駆動手段と、駆動手段の駆動力で上昇する当接部材とを備えており、前記可動プラテンの下方側に取り付けられて、前記駆動手段の駆動力で前記当接部材を前記可動型に当接させて前記可動型を下支えするか、又は、前記固定プラテンの下方側に取り付けられて、前記駆動手段の駆動力で前記当接部材を前記固定型に当接させて前記固定型を下支えすることを特徴とする樹脂成形装置の金型取付用冶具。
【請求項2】
前記可動型の固定を解除し型締め状態を解除したときの前記当接部材が前記可動型を下支えする力が前記可動型の重量と釣り合っているか、又は、前記当接部材が前記固定型の固定を解除し型締め状態を解除したときの前記固定型を下支えする力が前記固定型の重量と釣り合っていることを特徴とする請求項1記載の樹脂成形装置の金型取付用冶具。
【請求項3】
前記当接部材が前記可動型を一点支持するか、又は、前記当接部材が前記固定型を一点支持することを特徴とする請求項1または2記載の樹脂成形装置の金型取付用冶具。
【請求項4】
前記当接部材を当接させる駆動手段が圧縮ばねであり、この圧縮ばねを予め所定量だけ縮ませておく予圧調節機構が備わっていることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載の樹脂成形装置の金型取付用冶具。
【請求項5】
前記当接部材がローラ又は球体であり、少なくとも前記型開閉方向に回動可能な構成であることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載の樹脂成形装置の金型取付用冶具。
【請求項6】
前記請求項1から5のうちいずれか一項に記載の金型取付用冶具が配されている射出成形装置。
【請求項7】
可動プラテンに締め付け固定された可動型と固定プラテンに締め付け固定された固定型とが対向して型開閉動作する横型締め構造の射出成形装置において、可動型と固定型との型開閉時における心出しガイドとしてガイドピンとガイド穴とが備わっている金型を、その取付位置を微調整して取り付ける金型取付方法において、前記可動プラテンに金型取付用冶具を配しておき、この金型取付用冶具によって前記可動型の固定を解除し型締め状態を解除したときに前記可動型を下支えしながら前記可動型の取付位置を微調整して、前記可動型を締め付け固定するか、又は、前記固定プラテンに金型取付用冶具を配しておき、この金型取付用冶具によって前記固定型の固定を解除し型締め状態を解除したときに前記固定型を下支えしながら前記固定型の取付位置を微調整して、前記固定型を締め付け固定することを特徴とする射出成形装置の金型取付方法。
【請求項8】
前記可動型の固定を解除し型締め状態を解除したときの前記金型取付用冶具が下支えする力を前記可動型の重量と釣り合わせるか、又は、前記固定型の固定を解除し型締め状態を解除したときの前記金型取付用冶具が下支えする力を前記固定型の重量と釣り合わせることを特徴とする請求項7記載の射出成形装置の金型取付方法。
【請求項9】
前記金型取付用冶具によって前記可動型を一点支持し、この一点支持した点を基準点として前記可動型の取付位置を微調整するか、又は、前記金型取付用冶具によって前記固定型を一点支持し、この一点支持した点を基準点として前記固定型の取付位置を微調整することを特徴とする請求項7または8記載の射出成形装置の金型取付方法。
【請求項10】
前記可動型を可動プラテンに締め付け固定するとともに前記固定型を固定プラテンに締め付け固定した後、前記可動型の固定を解除し型締め状態を解除してから、前記可動型の取付位置を微調整して、再度型締めして、前記可動型を可動プラテンに再度締め付け固定する手順とするか、又は、前記固定型の固定を解除し型締め状態を解除してから、前記固定型の取付位置を微調整して、再度型締めして、前記固定型を固定プラテンに再度締め付け固定する手順とすることを特徴とする請求項7から9のうちいずれか一項に記載の射出成形装置の金型取付方法。
【請求項11】
前記金型の温度を設定温度としてから、前記取付位置を微調整することを特徴とする請求項7から10のうちいずれか一項に記載の射出成形装置の金型取付方法。
【請求項1】
可動プラテンに締め付け固定された可動型と固定プラテンに締め付け固定された固定型とが対向して型開閉動作する横型締め構造の樹脂成形装置において、可動型と固定型との型開閉時における心出しガイドとしてガイドピンとガイド穴とが備わっている金型を、その取付位置を微調整して取り付ける際に使用される金型取付用冶具であって、
前記金型取付用冶具は、駆動手段と、駆動手段の駆動力で上昇する当接部材とを備えており、前記可動プラテンの下方側に取り付けられて、前記駆動手段の駆動力で前記当接部材を前記可動型に当接させて前記可動型を下支えするか、又は、前記固定プラテンの下方側に取り付けられて、前記駆動手段の駆動力で前記当接部材を前記固定型に当接させて前記固定型を下支えすることを特徴とする樹脂成形装置の金型取付用冶具。
【請求項2】
前記可動型の固定を解除し型締め状態を解除したときの前記当接部材が前記可動型を下支えする力が前記可動型の重量と釣り合っているか、又は、前記当接部材が前記固定型の固定を解除し型締め状態を解除したときの前記固定型を下支えする力が前記固定型の重量と釣り合っていることを特徴とする請求項1記載の樹脂成形装置の金型取付用冶具。
【請求項3】
前記当接部材が前記可動型を一点支持するか、又は、前記当接部材が前記固定型を一点支持することを特徴とする請求項1または2記載の樹脂成形装置の金型取付用冶具。
【請求項4】
前記当接部材を当接させる駆動手段が圧縮ばねであり、この圧縮ばねを予め所定量だけ縮ませておく予圧調節機構が備わっていることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載の樹脂成形装置の金型取付用冶具。
【請求項5】
前記当接部材がローラ又は球体であり、少なくとも前記型開閉方向に回動可能な構成であることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載の樹脂成形装置の金型取付用冶具。
【請求項6】
前記請求項1から5のうちいずれか一項に記載の金型取付用冶具が配されている射出成形装置。
【請求項7】
可動プラテンに締め付け固定された可動型と固定プラテンに締め付け固定された固定型とが対向して型開閉動作する横型締め構造の射出成形装置において、可動型と固定型との型開閉時における心出しガイドとしてガイドピンとガイド穴とが備わっている金型を、その取付位置を微調整して取り付ける金型取付方法において、前記可動プラテンに金型取付用冶具を配しておき、この金型取付用冶具によって前記可動型の固定を解除し型締め状態を解除したときに前記可動型を下支えしながら前記可動型の取付位置を微調整して、前記可動型を締め付け固定するか、又は、前記固定プラテンに金型取付用冶具を配しておき、この金型取付用冶具によって前記固定型の固定を解除し型締め状態を解除したときに前記固定型を下支えしながら前記固定型の取付位置を微調整して、前記固定型を締め付け固定することを特徴とする射出成形装置の金型取付方法。
【請求項8】
前記可動型の固定を解除し型締め状態を解除したときの前記金型取付用冶具が下支えする力を前記可動型の重量と釣り合わせるか、又は、前記固定型の固定を解除し型締め状態を解除したときの前記金型取付用冶具が下支えする力を前記固定型の重量と釣り合わせることを特徴とする請求項7記載の射出成形装置の金型取付方法。
【請求項9】
前記金型取付用冶具によって前記可動型を一点支持し、この一点支持した点を基準点として前記可動型の取付位置を微調整するか、又は、前記金型取付用冶具によって前記固定型を一点支持し、この一点支持した点を基準点として前記固定型の取付位置を微調整することを特徴とする請求項7または8記載の射出成形装置の金型取付方法。
【請求項10】
前記可動型を可動プラテンに締め付け固定するとともに前記固定型を固定プラテンに締め付け固定した後、前記可動型の固定を解除し型締め状態を解除してから、前記可動型の取付位置を微調整して、再度型締めして、前記可動型を可動プラテンに再度締め付け固定する手順とするか、又は、前記固定型の固定を解除し型締め状態を解除してから、前記固定型の取付位置を微調整して、再度型締めして、前記固定型を固定プラテンに再度締め付け固定する手順とすることを特徴とする請求項7から9のうちいずれか一項に記載の射出成形装置の金型取付方法。
【請求項11】
前記金型の温度を設定温度としてから、前記取付位置を微調整することを特徴とする請求項7から10のうちいずれか一項に記載の射出成形装置の金型取付方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−116100(P2012−116100A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268101(P2010−268101)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(301056270)株式会社ソディックプラステック (35)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(301056270)株式会社ソディックプラステック (35)
【Fターム(参考)】
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