説明

樹脂板及びその製造方法

【課題】
印象深い意匠を呈することを可能とするばかりでなく、その意匠を永続的に維持できるものであり、なおかつそれを得るための手法も複雑ではない、意匠性を付与した樹脂板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
第1樹脂による第1樹脂層と、第2樹脂による第2樹脂層と、よりなる樹脂板であって、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層との間に薄物による意匠層が挟装されてなり、前記第1樹脂と前記第2樹脂が同一又は異なる樹脂であって、前記第2樹脂が、前記第2樹脂層の可視光線透過率が50%以上となるように出来るものであり、前記薄物が前記意匠層として前記第1樹脂層と前記第2樹脂層とに挟装される前に、予め前記第1樹脂によって浸漬処理されてなる構成を有する樹脂板とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印象深い意匠性を備えた樹脂板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活において、樹脂板を加工した様々な物品が広く用いられており、また実際触れる機会も多いものである。例えば湯飲みや受け皿、その他食器類、花瓶やペンケース、筆立てなどのような日用品、家電の筺体部分、机や椅子などの家具、といった物品や部分等において樹脂板は幅広く用いられている。
【0003】
このように幅広く用いられている理由としては、耐久性がある、加工がしやすい、といったものが挙げられ、また加工する物品によっては軽量である、壊れにくい、割れにくい、等の理由も挙げることが出来る。
【0004】
しかし生活様式や生活嗜好の多様化に伴い、単純な、何ら変哲のない樹脂板を用いるのでは製品の差別化が出来ない、消費者の注目を集めることが出来ない、といった点が問題として認識されるようになってきた。
【0005】
そのため従来は、例えば家電製品に見られるように、無色又は白、グレー、といった樹脂板が主に用いられていた部分に関しても、赤や黒といった色彩を施した樹脂板が利用されるようになってきている。また高級感を呈するために、その表面に金属光沢を付与する、マット加工を施す、等の処理を行うものも見られるようになってきたが、より一層深い印象を与えることの出来る意匠性を備えた樹脂板が求められるようになってきた。
【0006】
このような市場の要望に応えられる樹脂板として、特許文献1に見られるような、その表面にレース生地を積層、貼着した板材が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開平10−309782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この特許文献1に記載の発明に記載された加工用板材であれば、樹脂板の表面にレースを積層し、固定した、という構成を有するため、レースの持つ触感的及び装飾的特徴を得ることが出来る、とされている。
【0009】
しかしこの特許文献1には、樹脂板の表面にレースを積層し固定するための手法が具体的に何ら開示されていないことより、実際にこれを積層し固定しようとしても非常に困難であると言わざるを得ない。また、特段の記載がないことより、例えば市販の接着剤を用いて積層し固定しようとしても、樹脂板の表面とレースの表面と、何れの表面にも良好に接着性を発揮するような接着剤は殆ど市販されておらず、又はいわゆる万能型とうたわれている市販の接着剤を用いても、積層そのものは出来るとしてもそれを固定することはほぼ不可能であり、即ち、接着剤が着いたままレースが剥がれてしまう、ある程度の時間を経た後であると密着力が著しく低下するため自然と剥がれてしまう、又は四六時中その表面にものを置く等の利用をすることで表面に剥き出しになっているレース自体が痛んでしまい、レースが剥がれてしまう、又は当初備わっていた美麗さが著しく損なわれてしまう、といったような種々の問題を呈するものであると言わざるを得ず、よって具体的に利用することが出来ない。
【0010】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、印象深い意匠を呈することを可能とするばかりでなく、その意匠を永続的に維持できるものであり、なおかつそれを得るための手法も複雑ではない、意匠性を付与した樹脂板及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するために、本願発明の請求項1に記載の樹脂板は、第1樹脂による第1樹脂層と、第2樹脂による第2樹脂層と、よりなる樹脂板であって、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層との間に薄物による意匠層が挟装されてなり、前記第1樹脂と前記第2樹脂が同一又は異なる樹脂であって、前記第2樹脂が、前記第2樹脂層の可視光線透過率が50%以上となるように出来るものであり、前記薄物が前記意匠層として前記第1樹脂層と前記第2樹脂層とに挟装される前に、予め前記第1樹脂によって浸漬処理されてなるものであること、を特徴とする。
【0012】
本願発明の請求項2に記載の樹脂板は、請求項1に記載の樹脂板であって、前記第1樹脂が、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、又は可塑性樹脂、の何れか又は複数を混合してなるものであること、を特徴とする。
【0013】
本願発明の請求項3に記載の樹脂板は、請求項1又は請求項2に記載の樹脂板であって、前記第2樹脂が、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、又は可塑性樹脂、の何れか又は複数を混合してなるものであること、を特徴とする。
【0014】
本願発明の請求項4に記載の樹脂板は、請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の樹脂板であって、前記薄物が、前記第1樹脂又は第2樹脂の何れか若しくは双方に浸漬可能な物質であること、を特徴とする。
【0015】
本願発明の請求項5に記載の樹脂板は、請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の樹脂板であって、前記薄物が織物、布帛、又は紙、の何れか若しくは複数によるものであること、を特徴とする。
【0016】
本願発明の請求項6に記載の樹脂板は、請求項5に記載の樹脂板であって、前記織物が京織物であること、を特徴とする。
【0017】
本願発明の請求項7に記載の樹脂板の製造方法は、固化することにより第1樹脂層となる第1樹脂が固化していない状態で、その表面に、予め前記第1樹脂にて浸漬処理されてなる薄物を意匠層として配置し、さらにその表面に、固化することにより第2樹脂層となる第2樹脂を固化させない状態で積層し、前記第1樹脂と前記第2樹脂が同一又は異なる樹脂であって、前記積層が完了した後に全体を固化することにより前記第2樹脂が可視光線透過率が50%以上となること、を特徴とする。
【0018】
本願発明の請求項8に記載の樹脂板の製造方法は、請求項7に記載の樹脂板の製造方法であって、前記第1樹脂が、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、又は可塑性樹脂、の何れか又は複数を混合してなるものであること、を特徴とする。
【0019】
本願発明の請求項9に記載の樹脂板の製造方法は、請求項7又は請求項8に記載の樹脂板の製造方法であって、前記第2樹脂が、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、又は可塑性樹脂、の何れか又は複数を混合してなるものであること、を特徴とする。
【0020】
本願発明の請求項10に記載の樹脂板の製造方法は、請求項7ないし請求項9の何れか1項に記載の樹脂板の製造方法であって、前記薄物が、前記第1樹脂又は第2樹脂の何れか若しくは双方に浸漬可能な物質であること、を特徴とする。
【0021】
本願発明の請求項11に記載の樹脂板の製造方法は、請求項7ないし請求項10の何れか1項に記載の樹脂板の製造方法であって、前記薄物が、織物、布帛、又は紙、の何れか若しくは複数によるものであること、を特徴とする。
【0022】
本願発明の請求項12に記載の樹脂板の製造方法は、請求項11に記載の樹脂板の製造方法であって、前記織物が京織物であること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本願発明に係る樹脂板であれば、樹脂板の中に例えば京織物の布地を挟装することで、単純に無色透明、又は無地の樹脂板とは全く異なり、非常に印象深い意匠を備えた樹脂板とすることが出来る。この印象深い意匠は、従来であると例えば何らかの柄を印刷したフィルムを樹脂板に貼着したり、若しくは京織物の意匠を複写したような印刷フィルムを貼着したり、さらには本願発明に係る樹脂板にかような印刷フィルムを挟装して得たものであったところ、本願発明に係る樹脂板においてはいわばそれら模造品や複写品ではなく本物の京織物や、その他の本物の織物を容易に挟装することが出来るので、本物のみが呈することの出来る印象深い意匠を提供することが出来る樹脂板とすることが出来る。さらには京織物に限らず、例えば従来であると美麗な反物とするような布地を挟装したり、布地以外であっても、レース等の布帛、織物、各種プリント生地などを容易にかつ簡潔に利用することが出来るので、挟装するものにより様々な印象を与えることが出来る樹脂板となせる。また樹脂板の表面に物品を積層・接着しさらにその表面に樹脂板を積層しこれを高圧によって圧着することにより得られる従来品であると容易に積層部分がずれたりして破損したり、挟装した物品が剥がれてしまう、といった問題が生じたところ、本願発明に係る樹脂板では全てが一体化・同質化しているので、このような積層部分でずれが生じるといったような破損が生じることがなくなり、即ち半永久的にその形状を維持できるものとなる。さらに、この半永久的に挟装した物品を維持・保持できる、という利点を生かして、例えば形見などのような所有者にとっては大切な思い出の着物や布地の切れ端を挟装したり、布地以外の物品であって、例えば和紙などの紙類でも挟装可能であるので、表彰状等の記念となるようなものを挟装することにより、半永久的にそれらを維持・保存する、即ち思い出の大切な品を半永久的に保存できる、という用途にも本願発明に係る樹脂板を用いることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本願発明の実施の形態について説明する。尚、ここで示す実施の形態はあくまでも一例であって、必ずもこの実施の形態に限定されるものではない。
【0025】
(実施の形態1)
本願発明に係る樹脂板に関し、以下第1の実施の形態として説明する。
この樹脂板は、第1樹脂による第1樹脂層と、第2樹脂による第2樹脂層と、よりなる樹脂板であって、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層との間に薄物による意匠層が挟装されてなる、という構成を有しているものである。
【0026】
以下、順に説明をする。
まず第1樹脂について説明すると、これは後述するように、本実施の形態に係る樹脂板を製造するに際して最初は固化していないが、準備が出来ると固化される、という用い方がされるものである。この第1樹脂は、後述の第2樹脂と同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。また肉眼視において透明であってもよいし、透明でなくともよい。さらに透明である場合、それが無色透明であってもよいし、有色透明であってもよい。
【0027】
この第1樹脂による第1樹脂層は、後述するように本実施の形態に係る樹脂板を製造するに際して、挟装される意匠層を念頭に、全体としてどのような目的に本実施の形態に係る樹脂板を用いるのか、ということを考えた上で、その素材を選択すればよい。つまり、意匠層に応じて透明な第1樹脂層が好適である、無色透明である、有色透明である、不透明な場合、白色の第1樹脂層とする、他の色の第1樹脂層とする、等、種々様々な全体としての意匠やその目的に応じて検討、考慮すればよいのである。又は、後述するように、意匠層に用いられる物品の性質に応じて第1樹脂を選択すればよいし、場合によってはその性質に応じて必然的に第1樹脂が定められる場合もあり得ることを断っておく。尚、本実施の形態においては、アクリル系樹脂を主とする樹脂を第1樹脂として利用するものとするが、それ以外にも、例えばポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、又は可塑性樹脂の何れかを用いてもよいし、複数を混合してなるものであっても構わない。
【0028】
次に第2樹脂について説明すると、これは本実施の形態に係る樹脂板を略側面視で観察すると、あたかも第1樹脂層の表面に第2樹脂による第2樹脂層が積層されているかのように位置しているものであり、その素材として用いられる第2樹脂は第1樹脂層を形作る第1樹脂に応じて取捨選択されるものであればよい。第2樹脂の選択において重要なことは、後述するように、本実施の形態に係る樹脂板を製造した結果、固化した第2樹脂による第2樹脂層の可視光線透過率が50%以上となるような樹脂を第2樹脂として選択することである。
【0029】
つまりこの第2樹脂は、最初は固化していない状態で利用され、本実施の形態に係る樹脂板の製造の準備が最終的に整うと固化されるのであるが、固化した結果得られる第2樹脂層は挟装される意匠層が見えるものでなければならず、即ち、第2樹脂層を通してその背景に存在する意匠層が肉眼視で容易に視認、判別できるものでなければならず、つまり視認、判別できなければそもそもの本実施の形態に係る樹脂板の効果である、挟装された意匠層によって得られる印象深い意匠感を与えることが出来なくなってしまうからであり、そのために固化した第2樹脂層の可視光線透過率が50%以上であることが必要とされるのである。
【0030】
尚、この際、可視光線透過率が50%以上であることとしたが、これは挟装された意匠層が視認できる程度に透明でなければならない、という意味である。この際の透明とは無色透明であってもよいし有色透明であっても構わない。無色透明の場合は、挟装された意匠層がほぼ直接的に意匠層そのものの印象を呈することが出来るし、有色透明とした場合は、挟装された意匠層に何らかの色がうっすらとかかったかのように見えるので、本来の意匠層の有
する印象とはまた異なった印象を呈することが出来るのである。
【0031】
この第2樹脂による第2樹脂層は、後述するように本実施の形態に係る樹脂板を製造するに際して、挟装される意匠層を念頭に、全体としてどのような目的に本実施の形態に係る樹脂板を用いるのか、ということを考えた上で、その素材を選択すればよい。つまり、意匠層に応じて透明な第2樹脂層が好適である、無色透明である、有色透明である、等、種々様々な全体としての意匠やその目的に応じて検討、考慮すればよいのである。又は、後述するように、意匠層に用いられる物品の性質に応じて第2樹脂を選択すればよいし、場合によってはその性質に応じて必然的に第2樹脂が定められる場合もあり得ることを断っておく。尚、本実施の形態においては、アクリル系樹脂を主とする樹脂を第2樹脂として利用するものとするが、このように第2樹脂を第1樹脂と同一の物質とした場合、後述するように本実施の形態に係る樹脂板を製造した結果、全体として単一の樹脂による樹脂板とすることとなり、即ち積層した第1樹脂層と第2樹脂層との間で剥離することがなくなるので、両方の樹脂を同一の物質とすることが好ましいと言える。尚、第1樹脂と同様に、第2樹脂がアクリル系樹脂以外のポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、又は可塑性樹脂の何れかであってもよく、又はこれらを混合したものであっても構わないことを断っておく。
【0032】
さらに第1樹脂及び第2樹脂は前述したように、挟装される意匠層を構成する物質に応じて選択すればよいし場合によっては選択せざるを得なくなることもあり得る、としたが、これは、例えば意匠層として用いるものが京織物のような生地である場合、きらびやかで豪華な印象をなしている染料と、第1樹脂及び第2樹脂を構成する高分子とが反応してしまい、本来求めていたきらびやかな印象を与える意匠が損なわれる場合があるからであり、そのような場合には、反応を起さないような物質を第1樹脂と第2樹脂の何れか若しくは双方に混入させて用いることも考えられるが、ここではこれ以上詳細な説明は省くこととする。ただ、あえて反応を起して、本来有する意匠層の印象を変形させる、という着想のもとに第1樹脂又は第2樹脂の何れか若しくは双方を選択する、ということも考えられることを付言しておく。
【0033】
次に意匠層に関して説明する。この意匠層は本実施の形態に係る樹脂板が完成した時に、あたかも第1樹脂層と第2樹脂層との間に挟装、即ちこれら2つの樹脂層の間で挟まれて備え付けられたかのような状態、に存在する層である。
【0034】
この意匠層として用いる物品は特段限定されるものではないが、本実施の形態においては第1樹脂又は第2樹脂の何れか若しくは双方に浸漬可能な物質であることが重要であって、それは例えば織物、布帛、又は紙、の何れか若しくは複数によるものであることが好ましく、本実施の形態では織物、特に京織物であるものとする。
【0035】
この意匠層は、本実施の形態に係る樹脂板が完成した時にはあたかも樹脂板の中に封じ込められているかのような印象を与えるものとなる。このように樹脂板の中に封じ込められたかのような構成としていることより、通常美麗な京織物の反物を装飾品として壁に掛けて飾っておくと、時間の経過とともに汚れやほこりが付着してしまい美麗さが損なわれてしまうし、自然劣化も伴っていつかは痛みきってしまい取り替えなければならないところ、本実施の形態に係る樹脂板であれば、汚れやほこりが京織物に付着することはあり得ないので、いつまでも京織物の本来有している豪華でかつ美麗な印象を保つことが出来る、といった装飾品として用いることが容易に可能となるのである。
【0036】
また樹脂板としていることより、通常のアクリルボードなどの樹脂板を加工して湯飲みや湯飲みの受け皿とするのと同様に、本実施の形態に係る樹脂板を同様に加工することで、京織物の意匠を保った状態の湯飲みや湯飲みの受け皿とすることが簡単に出来る。さらに従来家電の筺体に用いていたアクリルボードなどの樹脂板を本実施の形態に係る樹脂板に置き換えて加工しそれを用いることで、家電の筺体の意匠が京織物の意匠そのものとなり、非常に高級感を呈する家電とすることが出来る。ちなみに、従来でも京織物の意匠を複写した印刷層を貼付した樹脂板を用いることもあったが、本実施の形態に係る樹脂板では用いられている意匠は本物の京織物そのものであり、模造品と本物との違いによる意匠感の違いは説明するまでもないものであると言える。
【0037】
以上説明した本実施の形態に係る樹脂板の製造方法につき以下、簡単に説明する。
まず最初に固化させていない第1樹脂を型に挿入し、その表面を略均一面とする。次いでその表面に、予め第1樹脂にて浸漬処理されてなる薄物を意匠層として配置する。当然であるが、この際における薄物の大きさは、第1樹脂の型に入る大きさであればよく、必ずしも型と同一の大きさである必要はない。そしてさらにその表面に固化させていない第2樹脂を積層し、その表面を略均一とする。そしてかような状態を完成した上で、全体を均等に固化させ、樹脂板とする。
【0038】
この製造方法において重要な点は、意匠層たる薄物が第1樹脂又は第2樹脂の何れか若しくは双方に浸漬可能な物質であること、であり、上記製造方法において、固化前の第1樹脂の表面に配置する際には、すでに浸漬処理が完了していること、である。
【0039】
つまり、第1樹脂を固化させてなる第1樹脂層の表面に、接着剤等を用いて何ら処理の施されていない京織物などの薄物を積層し、さらにその表面に第2樹脂を固化させてなる第2樹脂層を積層し、全体を加圧することにより一体化させる、といった手法ではないことが重要なのである。
【0040】
これは、上記従来品であれば、挟装されてなる京織物がいわゆる異物となってしまい、いったんは一体化した樹脂板としたものであっても挟装されてなる京織物部分で第1樹脂層と第2樹脂層との密着性が阻害されることにより、この部分から2つの層が剥離してしまい、最終的には一体化していたはずの樹脂板が分離してしまう、という現象が容易に生じていたところ、本実施の形態に係る樹脂板を得る製造方法であれば、京織物を予め第1樹脂で浸漬してなることより、いわば京織物と第1樹脂層とを一体化させることが可能となるものであり、ひいては一体化することによりそれらが容易に分離することがない、これらが一体化していることよりその表面に第2樹脂を積層し、その上で全体を固化させることで、第1樹脂層と第2樹脂層との間に異物が存在しないも同然となるので、後はこれら2つの層の層間密着力のみを考慮すればよいのであり、さらにはこれら2つの層を構成する第1樹脂と第2樹脂とを全く同一のものとすれば、もはやかような層間密着力は全く考慮する必要がなくなり、単純かつ簡潔に一体化を容易に完了させられるのである。
【0041】
そしてかようにして得られる本実施の形態に係る樹脂板であれば、そもそも意匠層が外部から視認できなければ意味がないので、前述したように、少なくとも第2樹脂層はある程度の透明感が必要となるのである。また意匠層の呈する意匠感を変形させるために、第1樹脂層を有色不透明なものとした場合、例えば白色樹脂層とした場合、あたかも白色の台紙に京織物が配されたかのような意匠感を呈する樹脂板とすることが出来るのである。
【0042】
このように、最終的に全体を一体化させるために、意匠層は第1樹脂又は第2樹脂に浸漬可能なものであることが重要なのであり、その条件を達することが出来るものであれば自由に意匠層を選択すればよく、例えば織物、布帛、又は紙、の何れか若しくは複数によるものであるものとすることなどが考えられる。
【0043】
また、以上の説明において意匠層として京織物を用いることとしたが、これ以外の物品、例えば記念の表彰状などであっても、原紙が第1樹脂又は第2樹脂に浸漬可能であり、その表面に記載されている内容が浸漬処理によって判読不明にならない、といった処理が施されるのであれば、同様の製造手法により樹脂板とすることが可能であり、得られた樹脂板はあたかも記念盾のように半永久的に保存、管理することが容易に可能となることも考えられる。
【0044】
以上のように、本実施の形態に係る樹脂板であれば、最終的に得られた状態を見ると何らかの薄物がその中に挟装、即ち封じ込められたかのような状態で存在するので、その挟装された意匠層による独特の、かつ印象深い意匠感を呈する樹脂板とすることが出来るし、また得られた樹脂板は従来の単純な樹脂板と全く同一に種々加工、処理等が自在に出来るので、現在用いられている樹脂板及びその加工物において利用されている従来の樹脂板に置き換えて利用することが可能となり、その結果意匠的に非常に幅広い表現を可能とする樹脂板を得られるようになるのである。
【0045】
そして本実施の形態に係る樹脂板を加工して、例えば、欄間、長押、床の間の違い棚、雪見障子、間仕切り、衝立、襖、手掛け、コート又は帽子掛け、座卓、脇息、座椅子、花瓶卓、柱掛け、おしぼり皿、茶托、通い盆、箸箱、箸置き、灯籠、乱れ竜、衝立、間仕切り、等のような和室の建材や和室に用いられる小物類、ベルトバックル、帯締め、ボタン、雨下駄爪皮、懐紙入れ、袱紗敷台、等のような衣類小物、回覧書類受け、小袖斗、本立て、ペン皿、眼鏡立て、メモ帳ホルダー、等のような事務・文房具、といった部材に用いることで、従来とは全く違った印象深い意匠を伴う物品とすることが出来るのである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1樹脂による第1樹脂層と、
第2樹脂による第2樹脂層と、
よりなる樹脂板であって、
前記第1樹脂層と前記第2樹脂層との間に薄物による意匠層が挟装されてなり、
前記第1樹脂と前記第2樹脂が同一又は異なる樹脂であって、
前記第2樹脂が、前記第2樹脂層の可視光線透過率が50%以上となるように出来るものであり、
前記薄物が前記意匠層として前記第1樹脂層と前記第2樹脂層とに挟装される前に、予め前記第1樹脂によって浸漬処理されてなるものであること、
を特徴とする、樹脂板。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂板であって、
前記第1樹脂が、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、又は可塑性樹脂、の何れか又は複数を混合してなるものであること、
を特徴とする、樹脂板。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の樹脂板であって、
前記第2樹脂が、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、又は可塑性樹脂、の何れか又は複数を混合してなるものであること、
を特徴とする、樹脂板。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の樹脂板であって、
前記薄物が、前記第1樹脂又は第2樹脂の何れか若しくは双方に浸漬可能な物質であること、
を特徴とする、樹脂板。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の樹脂板であって、
前記薄物が織物、布帛、又は紙、の何れか若しくは複数によるものであること、
を特徴とする、樹脂板。
【請求項6】
請求項5に記載の樹脂板であって、
前記織物が京織物であること、
を特徴とする、樹脂板。
【請求項7】
固化することにより第1樹脂層となる第1樹脂が固化していない状態で、
その表面に、予め前記第1樹脂にて浸漬処理されてなる薄物を意匠層として配置し、
さらにその表面に、固化することにより第2樹脂層となる第2樹脂を固化させない状態で
積層し、
前記第1樹脂と前記第2樹脂が同一又は異なる樹脂であって、
前記積層が完了した後に全体を固化することにより前記第2樹脂が可視光線透過率が50%以上となること、
を特徴とする、樹脂板の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の樹脂板の製造方法であって、
前記第1樹脂が、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、又は可塑性樹脂、の何れか又は複数を混合してなるものであること、
を特徴とする、樹脂板の製造方法。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の樹脂板の製造方法であって、
前記第2樹脂が、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、又は可塑性樹脂、の何れか又は複数を混合してなるものであること、
を特徴とする、樹脂板の製造方法。
【請求項10】
請求項7ないし請求項9の何れか1項に記載の樹脂板の製造方法であって、
前記薄物が、前記第1樹脂又は第2樹脂の何れか若しくは双方に浸漬可能な物質であること、
を特徴とする、樹脂板の製造方法。
【請求項11】
請求項7ないし請求項10の何れか1項に記載の樹脂板の製造方法であって、
前記薄物が、織物、布帛、又は紙、の何れか若しくは複数によるものであること、
を特徴とする、樹脂板の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の樹脂板の製造方法であって、
前記織物が京織物であること、
を特徴とする、樹脂板の製造方法。

【公開番号】特開2008−296373(P2008−296373A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141327(P2007−141327)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(307017073)
【Fターム(参考)】