説明

樹脂管の接続構造

【課題】樹脂管と金属パイプの間の密着性を向上させて、樹脂管と金属パイプの間に水や埃などが侵入し難くする。
【解決手段】金属パイプ10の端部の外表面に、金属パイプ10の全周にわたって延びる環状突起12を形成する。環状突起12よりも金属パイプ10の先端側に、環状突起12とともに第1環状溝15を区画形成する第1拡径部14を設ける。第1環状溝15にシールリング16を嵌着する。環状突起12よりも金属パイプ10の基部側に、環状突起12とともに第2環状溝18を区画形成する第2拡径部17を形成する。樹脂管30の先端31は第2拡径部17の最大径の部分の近傍に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属パイプの端部に樹脂管を接続する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属パイプと樹脂管の接続構造として、特許文献1に開示された接続構造が提案されている。この接続構造では、金属パイプの端部に少なくとも2つの拡径部を設けるとともに、拡径部の間に形成された周溝にシールリングを嵌着し、2つの拡径部を越える位置まで樹脂管を圧入している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−090416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上述した従来の接続構造では、樹脂管の金属パイプへの接続作業によって、樹脂管の先端が少し拡径する傾向にあり、このため樹脂管と金属パイプの間に隙間が生じて水や埃などがたまりやすくなる。このため金属パイプが錆びやすくなり、金属パイプとしてステンレス等のさびにくい材料を用いたり、金属パイプの外表面に塗装を施す等の作業が必要であった。
【0005】
本発明は、樹脂管と金属パイプの間の密着性を向上させて、樹脂管と金属パイプの間に水や埃などが侵入し難くすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る樹脂管の接続構造は、金属パイプの端部の外表面に形成され、金属パイプの全周にわたって延びる環状突起と、環状突起よりも金属パイプの先端側に設けられ、環状突起とともに第1環状溝を区画形成する第1拡径部と、第1環状溝に嵌着されたシールリングと、環状突起よりも金属パイプの基部側に形成され、環状突起とともに第2環状溝を区画形成する第2拡径部とを備え、樹脂管の先端が第2拡径部の最大径の部分の近傍に位置することを特徴としている。
【0007】
第1拡径部は金属パイプの先端に近いほど径が小さくなる第1テーパ面を有し、第2拡径部は第2環状溝に近いほど径が小さくなる第2テーパ面を有し、樹脂管の先端は第2テーパ面を越えた部分に位置することが好ましいが、第2テーパ面上に位置していてもよい。
【0008】
第2拡径部に対して第2環状溝とは反対側において、金属パイプの外表面の径が第2環状溝と略同じであってもよい。この構成において、第2拡径部の第2テーパ面とは反対側の面は、例えば、第2テーパ面と逆方向に傾斜する第3テーパ面であるか、あるいは金属パイプの外表面に対して略垂直である。この構成によれば、樹脂管を金属パイプに嵌め込むとき、第2拡径部の基部をジグ等で固定することができるので、金属パイプの樹脂管への挿入作業が容易になる。
【0009】
第2拡径部の第2テーパ面とは反対側の面は第2拡径部の最大径の部分と同じ径を有する円筒面であってもよい。
【0010】
第1テーパ面の傾斜角と第2テーパ面の傾斜角は同じ大きさであってもよい。
【0011】
金属パイプの外表面において、樹脂管の先端部分が密着する第2環状溝までの部分は塗装されるが、環状突起から先端までは塗装される必要がない。金属パイプは例えば、自動車用フューエルフィラー配管において使用される金属パイプである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、樹脂管と金属パイプの間の密着性を向上させて、樹脂管と金属パイプの間に水や埃などが侵入し難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態である樹脂管の接続構造を示す半断面図である。
【図2】第1の実施形態の金属パイプのみを示す半断面図である。
【図3】第2の実施形態の樹脂管の接続構造を示す半断面図である。
【図4】第3の実施形態の樹脂管の接続構造を示す半断面図である。
【図5】第4の実施形態の樹脂管の接続構造を示す半断面図である。
【図6】第5の実施形態の樹脂管の接続構造を示す半断面図である。
【図7】第6の実施形態の樹脂管の接続構造を示す半断面図である。
【図8】第7の実施形態の樹脂管の接続構造を示す半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の樹脂管の接続構造の実施形態を、図面を参照して説明する。各実施形態は、自動車に設けられ、給油口から燃料タンクへ燃料を導くためのフューエルフィラー配管において使用される金属パイプと樹脂管の接続構造を示している。
【0015】
図1は第1の実施形態を示し、金属パイプ10は図の左側から水平方向に延びて右側に開口11を向けている。樹脂管30は図の右側から水平方向に延びて、金属パイプ10の端部の外表面に密着して嵌合されている。
【0016】
金属パイプ10の端部の外表面には、金属パイプ10の全周にわたって延びる環状突起12が形成されている。本実施例において環状突起12はスプール加工によって成形される。環状突起12よりも金属パイプ10の先端13側には、環状突起12と平行に延びる第1拡径部14が設けられている。第1拡径部14は環状突起12とともに第1環状溝15を区画形成する。第1環状溝15は、断面の輪郭形状がコの字状であり、第1環状溝15の中はシールリング16が嵌着されている。シールリング16はOリングであり、例えばフッ素系樹脂により成形される。
【0017】
環状突起12よりも金属パイプ10の基部側には、環状突起12と平行に延びる第2拡径部17が形成されている。第2拡径部17は環状突起12とともに第2環状溝18を区画形成する。第2環状溝18は、第1環状溝15よりも広い幅を有し、シールリングは設けられていない。
【0018】
第1拡径部14はバルジ加工によって成形され、第2拡径部17はスプール加工によって成形される。第2拡径部17は、その近傍よりも膨出しており、第2拡径部17に対して第2環状溝18とは反対側における金属パイプ10の外表面19の径は、第1環状溝15および第2環状溝18と略同じである。
【0019】
図2に示すように、第1拡径部14の外表面は金属パイプ10の先端13に近いほど径が小さくなる第1テーパ面21である。第2拡径部17において、第2環状溝18側の外表面は、第2環状溝18に近いほど径が小さくなる第2テーパ面22であり、第2テーパ面22とは反対側の面は、第2テーパ面22と逆方向に傾斜する第3テーパ面23である。第2テーパ面22と第3テーパ面23の傾斜角の大きさは略同じであるが、第1テーパ面21よりも急である。
【0020】
環状突起12と第1および第2拡径部14、17の最外径は略同じであり、第1環状溝15に嵌着されたシールリング16の外径よりも少し小さい。
【0021】
樹脂管30は例えばナイロン系樹脂、フッ素系樹脂、あるいはオレフィン系樹脂により成形され、樹脂管30の内径は金属パイプ10の外表面19の外径よりも少し小さい。したがって、樹脂管30を金属パイプ10に圧入した状態では、樹脂管30は金属パイプ10に対して液密を保って嵌着される。すなわち樹脂管30の内表面は、第1拡径部14の第1テーパ面1と、シールリング16と、第2環状溝18と、第2拡径部17の第2テーパ面22と、第3テーパ面23の一部に密着している。樹脂管30の先端31は第2拡径部17の最大径の部分の近傍に位置しており、第2テーパ面22を越えて第3テーパ面23に達している。樹脂管30の先端31が第2拡径部17の頂部、すなわち第2テーパ面22と第3テーパ面23の境界から第3テーパ面23側にはみ出す量は、0.5mm〜5.0mmである。
【0022】
金属パイプ10の外表面は防錆のために塗装されるが、金属パイプ10の先端部分は樹脂管30が密着して装着されるので、塗装する部分を減らすことができる。具体的には、樹脂管30の先端部分が密着する第2環状溝18までの部分Aについては必ず塗装されるが、第2環状溝18において樹脂管18が離間している部位、すなわち環状突起12に近接した部位と環状突起12の第2環状溝18側の壁面の部分Bについては必要に応じて塗装される。一方、環状突起12から先端13までは塗装する必要がない。
【0023】
金属パイプ10と樹脂管30の接続作業では、金属パイプ10の先端13を樹脂管30の先端に合わせ、金属パイプ10を樹脂管30の中に徐々に押し込む。これにより、樹脂管30の先端は第1テーパ面21によって広げられ、シールリング16と環状突起12を乗り越えて、第2環状溝18まで進められる。金属パイプ10を樹脂管30に対してさらに押し込み、樹脂管30の先端31が第2テーパ面22の頂部24を少し(例えば0.5mm〜5.0mm)越えたところで接続作業は完了する。
【0024】
この接続作業において、第2拡径部17よりも基部側すなわち外表面19をジグ等で固定し、樹脂管30の中に押し込めばよい。ジグ等が第2拡径部17に係合するので、金属パイプ10を強く押し込むことができ、接続作業は容易である。
【0025】
また金属パイプ10に樹脂管30が接続された状態において、樹脂管30の先端31が金属パイプ10の第2拡径部17の頂部24を少し越えており、第3テーパ面23の端部に位置している。したがって、樹脂管30の先端31は第2拡径部17によって拡大されており、先端31には他の部分よりも大きい張力が発生している。すなわち先端31は第2拡径部17に液密を保って密着しており、金属パイプ10と樹脂管30の間に水や埃等が侵入することはなく、錆の原因となる物質が堆積する可能性が低くなる。したがって金属パイプ10が錆びにくくなり、金属パイプ10の先端部分において防錆のために塗装する領域を削減することができる。
【0026】
図3は第2の実施形態を示している。
第1の実施形態と異なる部分は第2拡径部41の形状である。この第2拡径部41の第2テーパ面42の傾斜角は、第1テーパ面21の傾斜角と略同じ大きさである。また第2拡径部41の第2テーパ面42とは反対側の面43は金属パイプ10の外表面19に対して略垂直である。樹脂管30の先端31は第2テーパ面42を越えて垂直面43の上端に達している。その他の構成は第1の実施形態と同じである。
【0027】
第2の実施形態によっても第1の実施形態と同様な効果が得られるが、第2拡径部41の垂直面43のため、金属パイプ10と樹脂管30の接続作業において、ジグ等が金属パイプ10の第2拡径部17に係合しやすくなり、金属パイプ10を押し込む作業がより容易になる。
【0028】
図4は第3の実施形態を示している。
第1および第2の実施形態と異なる部分は第2拡径部44と金属パイプ10の外表面である。第2拡径部44の第2テーパ面45は第2の実施形態と同様に、第1テーパ面21と略同じ傾斜角を有する。第2拡径部44の第2テーパ面45とは反対側の金属パイプの外表面46は第2拡径部44の最大径の部分と同じ径を有する円筒面である。樹脂管30の先端31は第2テーパ面45を越えて外表面46の端部に達している。その他の構成は第1および第2の実施形態と同じである。
【0029】
第3の実施形態では、金属パイプ10の第2拡径部44よりも基部の径が第2拡径部44の最大径と同じであるので、樹脂管30の先端31が第2拡径部44を越えた状態において、樹脂管30の先端31が縮径することはない。したがって、樹脂管30の先端31と金属パイプ10の間に隙間が生じることはない。
【0030】
図5は第4の実施形態を示している。
第4の実施形態は第1の実施形態に類似した構成を有している。第1の実施形態と異なる点は第1環状溝15内にシールリング16とバックリング47が嵌着されていることである。バックリング47は環状突起12に接し、シールリング16は第1拡径部14の側面に接している。その他の構成は第1の実施形態と同じであり、作用効果も第1の実施形態と同じである。
【0031】
図6は第5の実施形態を示している。
第5の実施形態は第2の実施形態に類似した構成を有している。第2の実施形態と異なる点は、第4の実施形態と同様に、第1環状溝15内にシールリング16とバックリング47が嵌着されていることである。その他の構成は第2の実施形態と同じであり、作用効果も第2の実施形態と同じである。
【0032】
図7は第6の実施形態を示している。
第6の実施形態は第3の実施形態に類似した構成を有している。第3の実施形態と異なる点は、第4の実施形態と同様に、第1環状溝15内にシールリング16とバックリング47が嵌着されていることである。その他の構成は第3の実施形態と同じであり、作用効果も第3の実施形態と同じである。
【0033】
図8は第7の実施形態を示している。
本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同じであるが、樹脂管30の先端31の位置が異なる。すなわち樹脂管30の先端31の位置は第2テーパ面22の最大径の部分の近傍に位置しているが、第2拡径部17の頂部24には達しておらず、第2テーパ面23上に位置している。樹脂管30の金属パイプ10に対する密着性は第1の実施形態よりは劣るが、従来技術の構成よりは優れており、樹脂管30と金属パイプ10の間に水や埃などが侵入することを防止できる。
【符号の説明】
【0034】
10 金属パイプ
12 環状突起
13 金属パイプの先端
14 第1拡径部
15 第1環状溝
16 シールリング
17、41、44 第2拡径部
18 第2環状溝
21 第1テーパ面
22 第2テーパ面
30 樹脂管
31 樹脂管の先端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属パイプの端部の外表面に樹脂管が密着して嵌合される、樹脂管の接続構造であって、
前記金属パイプの端部の外表面に形成され、前記金属パイプの全周にわたって延びる環状突起と、
前記環状突起よりも前記金属パイプの先端側に設けられ、前記環状突起とともに第1環状溝を区画形成する第1拡径部と、
前記第1環状溝に嵌着されたシールリングと、
前記環状突起よりも前記金属パイプの基部側に形成され、前記環状突起とともに第2環状溝を区画形成する第2拡径部とを備え、
前記樹脂管の先端が前記第2拡径部の最大径の部分の近傍に位置する
ことを特徴とする樹脂管の接続構造。
【請求項2】
前記第1拡径部は前記金属パイプの先端に近いほど径が小さくなる第1テーパ面を有し、前記第2拡径部は第2環状溝に近いほど径が小さくなる第2テーパ面を有し、前記樹脂管の先端が前記第2テーパ面を越えた部分に位置することを特徴とする請求項1に記載の樹脂管の接続構造。
【請求項3】
前記第1拡径部は前記金属パイプの先端に近いほど径が小さくなる第1テーパ面を有し、前記第2拡径部は第2環状溝に近いほど径が小さくなる第2テーパ面を有し、前記樹脂管の先端が前記第2テーパ面上に位置することを特徴とする請求項1に記載の樹脂管の接続構造。
【請求項4】
前記第2拡径部に対して前記第2環状溝とは反対側において、前記金属パイプの外表面の径が前記第2環状溝と略同じであることを特徴とする請求項2に記載の樹脂管の接続構造。
【請求項5】
前記第2拡径部の前記第2テーパ面とは反対側の面が、前記第2テーパ面と逆方向に傾斜する第3テーパ面であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂管の接続構造。
【請求項6】
前記第2拡径部の前記第2テーパ面とは反対側の面が、前記金属パイプの外表面に対して略垂直であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂管の接続構造。
【請求項7】
前記第2拡径部の前記第2テーパ面とは反対側の面が、前記第2拡径部の最大径の部分と略同じ径を有する円筒面であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂管の接続構造。
【請求項8】
前記第1テーパ面の傾斜角と前記第2テーパ面の傾斜角が略同じ大きさであることを特徴とする請求項2に記載の樹脂管の接続構造。
【請求項9】
前記金属パイプの外表面において、前記樹脂管の先端部分が密着する第2環状溝までの部分が塗装され、前記環状突起から前記金属パイプの先端までは塗装されないことを特徴とする請求項1に記載の樹脂管の接続構造。
【請求項10】
前記金属パイプが自動車用フューエルフィラー配管において使用される金属パイプであること特徴とする請求項1に記載の樹脂管の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−172825(P2012−172825A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38414(P2011−38414)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【出願人】(308039414)株式会社FTS (60)
【Fターム(参考)】