説明

樹脂管継手

【課題】継手本体とユニオンナットとの2点で成る経済的なものとしながら、耐引抜性と良好なシール性との両立を図ることが可能となる樹脂管継手を提供する。
【解決手段】インナ筒4と雄ねじ5と周溝mと直胴筒部4Bから軸心方向に一体形成されての折り返しで成る抜止め環状部4Cとを備えるフッ素樹脂製継手本体1、雌ねじ8と拡径部3Aを押圧するシール用押圧部10と押え内周部13とを備えるフッ素樹脂製ユニオンナット2を有し、インナ筒4にチューブ3が挿入されて拡径部3Aが形成される状態でのユニオンナット2の締付けにより、抜止め環状部4Cが内周面側から食い込む拡径大径部12に押え内周部13が圧接外嵌され、拡径変化領域9の小径側端部分がシール用押圧部10で押圧される構成の樹脂管継手。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体移送路としてのチューブを拡径(フレア)させて接続させる構造の樹脂管継手に係り、詳しくは、半導体製造や医療・医薬品製造、食品加工、化学工業等の各種技術分野の製造工程で取り扱われる高純度液や超純水の配管にも好適であって、ポンプ、バルブ、フィルタ等の流体機器や流体移送路であるチューブの接続手段として用いられる樹脂管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の樹脂管継手としては、特許文献1において開示されるチューブ継手が知られている。即ち、合成樹脂製のチューブ1を継手本体4のインナ筒部5に強制的に押し込むか、又は特許文献1の図2に示されるように、予めチューブ端部2を拡径させてからインナ筒部5に嵌め込むかする。それから、予めチューブに嵌装されているユニオンナット6を継手本体に螺合させ、締込み操作して継手本体4の軸心方向に強制移動させることにより、チューブ1の拡径付け根部分2aをエッヂ部6aで軸心方向に強く押圧し、チューブ1とインナ筒部5との間をシールする構造である。
【0003】
上述の構造と同様なものとしては、特許文献2の図8,図9において開示されたものや、特許文献3の図6において開示された樹脂管継手が知られている。これらのように、チューブの先端を拡径(フレア)させて継手本体に嵌めてナット止めする継手構造は、特許文献2の図5や特許文献3の図5等において開示される構造、即ち、専用部品のインナーリングに拡径外嵌されているチューブ端を継手本体の筒状受口に内嵌させてユニオンナット止めする3部品構造の管継手に比べて、継手本体とユニオンナットという少ない部品点数(2点)で経済的に管継手を構成しながらも良好なシール機能が得られる利点がある。
【0004】
ところが、上述のように2点部品で成る従来の樹脂管継手では、チューブ端を拡径させて強固に嵌合させ、かつ、拡径根元部分をユニオンナットで締付けているが、その締付けはシール機能を出すためのものであるためか、チューブを継手本体から引抜こうとする力には比較的弱いという傾向があった。チューブが引抜き移動されること自体が問題であるが、それによってエッヂ部の押圧によるシールポイントもずれてしまい、シール性に悪影響が生じる問題もある。特に、100℃以上の高温流体を扱うべく樹脂管継手がフッ素樹脂等の大きな膨張係数を有する樹脂材料で形成されている場合には、それらの問題がより顕著化されてしまう。
【0005】
そこで、特許文献4にて開示されるように、チューブ拡径部とユニオンナットとの間にC字状の割リングをチューブ拡径部の周溝に嵌る状態で介装させる構造の耐引抜手段を設けることにより、シール機能だけでなくチューブの引抜に対しても強い樹脂管継手を得ることが知られている。しかしながら、その特許文献4で開示される樹脂管継手では、予めチューブ拡径部に周溝を形成する前処理が必要になるとともに、部品点数が増えて3部品となることから、元々有していた経済性の良さが損われてしまうという新たな問題が生じる。従って、継手本体とユニオンナットとの2点で成る樹脂管継手を、その新たな問題を招くことなく引抜に対しても強いものとするにはさらなる改善の余地が残されているものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実登3041899号公報
【特許文献2】特開平7−27274号公報
【特許文献3】特開2002−357294号公報
【特許文献4】実登2587449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記実情に鑑みて、継手本体とユニオンナットとの2点で成る経済的なものとしながら、耐引抜性と良好なシール性との両立を図ることが可能となる樹脂管継手を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、樹脂管継手において、合成樹脂製チューブ3を徐々に拡径させる先端先窄まり筒部4A、前記先端先窄まり筒部4Aの大径側に続いて形成される直胴筒部4B、及び前記直胴筒部4Bの先端先窄まり筒部側に前記直胴筒部4Bよりも大径の状態で形成される抜止め環状部4Cを有するインナ筒部4と、雄ねじ5とを備える合成樹脂製の継手本体1、及び
前記雄ねじ5に螺合可能な雌ねじ8と、前記チューブ3の拡径部3Aにおける拡径変化領域9に作用可能なシール用押圧部10と、前記拡径部3Aの前記直胴筒部4Bに外囲される拡径主部12に外嵌可能な押え内周部13と、を備える合成樹脂製のユニオンナット2を有し、
前記インナ筒部4に前記チューブ3が外嵌装着されて前記拡径部3Aが形成される状態における前記雌ねじ8を前記雄ねじ5に螺合させての前記ユニオンナット2の前記継手本体1の軸心P方向への螺進により、前記拡径主部12における前記抜止め環状部4Cに外囲される部分に前記押え内周部13が圧接外嵌され、かつ、前記拡径変化領域9が前記シール用押圧部10で前記軸心P方向に押圧されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の樹脂管継手において、前記押え内周部13が、前記拡径主部12における前記直胴筒部4Bに外囲される部分にも圧接外嵌するように構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の樹脂管継手において、前記抜止め環状部4Cが、前記直胴筒部4Bからこれと外径を同じくして前記先端先窄まり筒部4A側に延設される薄肉筒状部4Hの径外側へ向けて折り返されて形成されるものであることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の樹脂管継手において、前記薄肉筒状部4Hの径外側へ向けての折り返しが、前記チューブ3を前記インナ筒4へ外嵌装着する操作に伴って形成されるものであることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の樹脂管継手において、前記継手本体1に、前記拡径変化領域9の大径側部分に作用可能な抜止め用押圧部11が形成されており、前記ユニオンナット2の螺進によって前記拡径変化領域9の大径側部分が前記抜止め用押圧部11で前記軸心P方向に押圧されるように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、詳しくは実施形態の項にて説明するが、シール用押圧部が拡径変化領域を押すのでインナ筒部の先端箇所でシール部が形成されることになり、インナ筒部と拡径部との間に流体が入り込むことなくチューブと継手本体とが良好にシールされるようになる。インナ筒部に外嵌されている拡径大径部のうちのより大径となる抜止め環状部がインナ筒部と押え内周部とで圧接されるので、引抜力に強く抗することができるとともに、引抜力に起因して拡径大径部が、即ち抜止め環状部が拡径される構造に起因して径方向に膨張変形することで軸心方向にズリ動こうとすることも阻止されるようになり、拡径部が軸心方向でインナ筒部から抜け出る方向の移動が有効に規制される機能が生じる。
【0014】
そして、インナ筒部に外嵌されている抜止め環状部がインナ筒部の外周面と押え内周部とで圧接されて逃げ場所が無く(膨張変形等ができない)、押圧力が強化されてしっかりとホールドされるだけでなく、抜止め環状部が拡径大径部にその内周面側から食い込むようになるので、拡径部が軸心方向でインナ筒部から抜け出る方向への移動防止作用が強化され、耐引抜力がより一層向上する。その結果、継手本体とユニオンナットとの2点で成る経済的なものとしながら、かつ、耐引抜性と良好なシール性との両立を図ることが可能となる樹脂管継手を提供することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、抜止め環状部だけでなく拡径主部もインナ筒部の外周面と押え内周部とで圧接されるので、チューブの耐引抜力がさらに改善される利点がある。
【0016】
請求項3の発明によれば、チューブの耐引抜力向上に寄与する抜止め環状部が、インナ筒部と一体形成される張出し筒部の折り返しによって形成されるから、例えば切削による後加工で形成する手段に比べて、加工が楽で廉価に構成することが可能になる、という利点がある。
【0017】
請求項4の発明によれば、チューブのインナ筒部への強制外嵌操作に伴って張出し筒部が折り返されて抜止め環状部となるものであるから、予めの別作業で張出し筒部を折り返して抜止め環状部とさせておく場合に比べて、工数削減による組付効率向上やコストダウンが可能となる利点が得られる。
【0018】
請求項5の発明によれば、拡径大径部に押え内周部が圧接外嵌される状態で、抜止め用押圧部が拡径変化領域の大径側部分を押すので、ユニオンナットの締付に伴って拡径大径部を内奥側に積極的に押込むという好ましい作用も生じ、チューブをよりしっかりと奥まで差し込むことに寄与する効果がある。そして、押え内周部の圧接外嵌によってチューブは容易には内奥に動けない状況にあるから、抜止め用押圧部の前記押し込みで拡径大径部の厚みが増大しようとする作用が生まれ、それによって直胴筒部と押え内周部との間で拡径大径部がより強固に挟持されて、耐引抜力が一層向上することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1による樹脂管継手の構造を示す断面図
【図2】図1におけるシール部周辺を示す部分拡大図
【図3】継手本体の抜止め環状部が形成される工程を示す作用図
【図4】インナ筒部にチューブが外嵌装着された状態を示す要部の断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明による樹脂管継手の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0021】
〔実施例1〕
実施例1による樹脂管継手Aは、図1,図2に示すように、フッ素樹脂(PFA、PTFE等に代表される合成樹脂の一例)製のチューブ3をポンプ、バルブ等の流体機器や、異径又は同径のチューブに連通接続するものであり、フッ素樹脂(PFA、PTFE等に代表される合成樹脂の一例)製の継手本体1とフッ素樹脂(PFA、PTFE等に代表される合成樹脂の一例)製ユニオンナット2との2部品で構成されている。尚、図1,2はユニオンナット2を所定量締め込んだ組付状態を示している。
【0022】
継手本体1は、図1,図2に示すように、チューブ3の端部を拡径して外嵌装着可能な一端のインナ筒部4と、インナ筒部4の内奥側部分の外周側に拡径されたチューブ3先端の入り込みを許容すべく軸心P方向に延びる周溝mを有して被さるカバー筒部6と、台形ねじで成る雄ねじ5と、軸心Pを持つ円柱空間状の流体経路7とを備える筒状部材に形成されている。インナ筒部4は、チューブ3を徐々に拡径させる先端先窄まり筒部4A、先端先窄まり筒部4Aの大径側に続いて形成される直胴筒部4B、及び直胴筒部4Bの先端先窄まり筒部側に直胴筒部4Bよりも大径の状態で形成される抜止め環状部4Cを有して軸心P方向に突設されている。
【0023】
周溝mは、その径内側の周面である外周面は直胴筒部4Bの外周面4bであり、その径外側の周面である外周面はカバー筒部6の内周面6aである。周溝mの奥側周面18から軸心P方向に所定長さ離れた箇所に継手フランジ1Aが形成されており、その継手フランジ1Aの略根元部位からカバー筒部6の端部の外周面に亘って雄ねじ5が形成されている。インナ筒部4の先端面は、径方向で内側ほど内奥側(軸心P方向で奥側)に寄る逆テーパの角度が施される、即ち、先端ほど大径となるカット面16が形成されており、チューブ3の内周面が拡径部(フレア部)に向けて拡がり変位することに因る液溜り周部17の形状を内周側拡がり形状として、その流体が液溜り周部17に停滞し難くしてある。尚、カット面16は、その最大径が自然状態のチューブ3の外径と略等しくなるように形成されているが、それにはこだわらない。
【0024】
直胴筒部4Bの先端先窄まり筒部4A側に形成されている抜止め環状部4Cは、インナ筒部4とユニオンナット2とで径内外で挟まれるチューブ3の拡径部3Aを径内側から径外側に押圧する部分であり、直胴筒部4Bの先端先窄まり筒部側端部を大径化するような機能を有している。次に、抜止め環状部4Cの作り方について説明する。
【0025】
まず、図3(a)に示すように、継手本体1の形成時は、抜止め環状部4Cは、直胴筒部4Bの先端先窄まり筒部4A側端から直胴筒部4Bと同外径で軸心P方向に延設される薄肉の張出し筒部4Hとして一体形成されている。この顕著に肉厚の薄い張出し筒部4Hを、手指や工具等によってその付け根を軸として仮想線で示すように径外側に強制的に折り曲げ変形させることにより、図3(b)に示すように、直胴筒部4Bの外周面4bにへばり付くまで折り返されて抜止め環状部4Cが形成される。この場合、継手本体1の材料(フッ素樹脂)の持つ粘性(靭性)により、折り曲げ根元部分は小さな曲率による湾曲形状を呈している。
【0026】
そして、図3(b)に示す状態のインナ筒部4にチューブ3を強制外嵌させることにより、図3(c)に示すように、拡径部3A(拡径変化領域9を含む)が形成されてインナ筒部4に外嵌された装着状態が得られる。つまり、抜止め環状部4Cが、直胴筒部4Bからこれと外径を同じくして先端先窄まり筒部4A側に延設される張出し筒部(薄肉筒状部の一例)4Hの径外側へ向けて折り返されて形成されるものである。尚、図3(a)に示す張出し筒部4Hを有するインナ筒部4にチューブ3を強制外嵌する操作により、張出し筒部4Hを折り返しながらチューブ3を差し込み、図3(c)に示すように折り返された抜止め環状部4Cに外嵌する装着状態とすることも可能(白抜き矢印イ参照)である。
【0027】
図4は、チューブ3がインナ筒部4に外嵌装着された状態におけるチューブ3の抜止め環状部4C付近における外嵌状況を示す拡大断面図である。これから分かるように、チューブ3を強制外嵌させただけの状態では、チューブ3の材料が持つ粘性(靭性)により、図3(b)に示される状態よりは深く折り曲げられるが、依然として抜止め環状部4Cの根元湾曲部が維持されている。
【0028】
ユニオンナット2は、図1,図2に示すように、雄ねじ5に螺合可能な雌ねじ8と、チューブ3のインナ筒部4に外嵌される拡径部3Aにおける拡径変化領域9の小径側部分に作用可能なシール用周エッヂ(シール用押圧部の一例)10と、拡径変化領域9の大径側部分に作用可能な抜止め用周エッヂ(抜止め用押圧部の一例)11と、拡径部3Aにおける抜止め環状部4Cと直胴筒部4Bとに外囲される拡径大径部(拡径主部の一例)12に外嵌可能な押え内周部13と、シール用周エッヂ10に続いてチューブ3を軸心P方向の所定長さに亘って外囲するガイド筒部14とを備えて形成されている。
【0029】
シール用周エッヂ10は、その内径がチューブ3の外径に略等しく、その押圧面10aは軸心Pに直交する側周面とされている。抜止め用周エッヂ11は、その内周面の径が直胴筒部4Bの外径と略等しく設定されているが、それより大径又は小径でも良く、要は拡径変化領域9の大径側部分に作用するように構成されておれれば良い。抜止め用周エッヂ11の押圧面11aも軸心Pに直交する側周面である。
【0030】
押え内周部13は、これと拡径大径部12とに径方向の隙間が無く、かつ、ユニオンナット2の締込みによる拡径部3Aの連れ回りが生じない程度に拡径大径部12に圧入(圧接外嵌)される値に設定されて抜止め手段Nが構成されている。これにより、拡径部3Aにおける抜止め環状部4Cに外嵌される部分は、より強い径方向の圧接力が作用するようになっている。従って、ユニオンナット2の締込みにより、押え内周部13が拡径部3Aを強制縮径させて湾曲状態にある抜止め環状部4Cを直胴筒部4Bの外周面に全接触する根元からの屈曲状態にするとともに、その抜止め環状部4C及び直胴筒部4Bと押え内周部13とで拡径部3A(チューブ3)が強く圧接され、耐引抜力が高められている。
【0031】
次に、チューブ3の端部をインナ筒部4に外嵌挿入するには、常温下で強制的にチューブ3を押し込んで拡径させて装着するか、熱源を用いて暖めて膨張変形し易いようにしてから押し込むか、或いは拡径器(図示省略)を用いて予めチューブ端を拡径させておいてからインナ筒部4に押し込むかして、図1に示すように、抜止め環状部4Cを乗越えてチューブ端3tがカバー筒部6の端壁15よりも内奥に位置する状態となるまで差し込む。インナ筒部4に外嵌装着される拡径部3Aは、図1,図2に示すように、先端先窄まり筒部4Aの外周面4aに外嵌される拡径変化領域9と、直胴筒部分4Bの外周面4bに外嵌される拡径大径部12とで成る。拡径大径部12は、抜止め環状部4Cに外嵌される膨出径部12Aに外嵌される部分を含んでいる。
【0032】
つまり、図1,図2に示すように、インナ筒部4にチューブ3が外嵌装着された状態における雌ねじ8を雄ねじ5に螺合させての抜止め環状部4C及び直胴筒部分4Bに外囲される拡径大径部12に押え内周部13が外嵌され、かつ、拡径変化領域9の大径側部分が抜止め用周エッヂ11で軸心P方向に押圧され、かつ、拡径変化領域9の小径側部分がシール用周エッヂ10で軸心P方向に押圧されるように設定されている。尚、チューブ3の流体移送路3Wの径と流体経路7の径とは、円滑な流体の流れとすべく互いに同径に設定されているが、互いに異なっていても良い。
【0033】
さて、図1,図2に示すように、樹脂管継手Aの所定の組付け状態においては、シール用周エッヂ10はチューブ3の拡径変化領域9の小径側端部分を軸心P方向に押圧するので、先端先窄まり筒部4Aの外周面4aの小径側端と、その箇所に接するチューブ3(即ち拡径変化領域9)の内周面とが強く圧接されてシール部Sが形成される。このインナ筒部4の先端箇所でのシール部Sにより、インナ筒部4と拡径部3Aとの間に洗浄液、薬液等の流体が入り込むことなくチューブ3と継手本体1とが良好にシールされる。
【0034】
そして、拡径大径部12のうちの抜止め環状部4Cの径外側に位置する部分が、直胴筒部分4Bと押え内周部13とでより強く囲まれて、まず膨張変形できないようにホールドされており、かつ、抜止め用周エッヂ11がほぼその拡径大径部12に食い込むように位置している。これにより、拡径変化領域9の大径側端部分、即ち実質的に拡径大径部12に食い込むように押す抜止め用周エッヂ11の引掛かり、及び抜止め環状部4Cが拡径大径部12の始端側に径内側から食い込むようにしてより径方向で強く挟持することにより、拡径部3Aに作用する引抜力に強固に抗することができる。加えて、抜止め用周エッヂ11を基点として拡径大径部12が引抜力により、径方向に膨張変形できることに起因して拡径部3Aが抜き出る方向にずり動くことが牽制阻止されるようにもなる。
【0035】
拡径部3Aが軸心P方向に少しでもずり動くと、シール部Sにおけるシールポイントもずれてシール機能が不確実化するおそれがあるが、それが未然に防止されるようになる。従って、拡径部3Aが軸心P方向でインナ筒部4から抜け出る方向の移動が強固に規制される抜止め手段Nが構成されており、それによって優れた耐引抜力が実現されている。その結果、継手本体1とユニオンナット2とから成るフレア型の樹脂管継手Aを、チューブがインナ筒部に装着されている状態でのナット操作によって簡単に組付けできて組付性に優れるとともに、シール部Sによる優れたシール性と抜止め手段Nによる優れた耐引抜力との両立も図れる改善されたものとして実現できている。
【0036】
加えて、抜止め用周エッヂ11による拡径変化領域9の大径側部分の押圧が開始された後にシール用周エッヂ10による拡径変化領域9の小径側部分の押圧が開始される状態に設定、即ち押圧時差手段を盛り込めば、次のような作用や効果も追加される。即ち、ユニオンナット2を回して締め込んで(螺進させて)ゆくと、まず、抜止め用周エッヂ11が先に拡径変化領域9(詳しくは拡径変化領域9の大径側部分)に当接し、そのときはシール用周エッヂ10は拡径変化領域9にまだ達していない。これにより、抜止め用周エッヂ11のみが拡径変化領域9の大径側部分を軸心P方向に押すから、ユニオンナット2の締付操作によって拡径大径部12をインナ筒部4のより内奥側に押し込もうとする作用が生じる。
【0037】
直胴筒部4Bに圧入外嵌される拡径大径部12は押え内周部13にも圧接されるが、その圧接力が比較的弱い場合には拡径部3Aをズリ動かしてインナ筒部4のより内奥側に挿入させようとするから、より確実にチューブ3を継手本体1に差し込めるとか、それに加えて、軸心P方向に押される拡径大径部12が軸心P方向に動きに難いことに起因して径方向に膨張しようとして、より圧接力が高まってしっかりと挟持される作用が生じるといった好ましい効果が得られる。前記圧接力が比較的強い場合には、軸心P方向に押される拡径大径部12が軸心P方向にまず動けないことによって径方向に膨張しようとする強い作用が生じ、インナ筒部4と押え内周部13との間で拡径大径部12がより一層強固に保持される効果が得られる。
【0038】
また、拡径大径部12が抜止め環状部4Cで局部的により径方向に圧縮されるような状況になることにより、物理的にも拡径部3Aの抜け方向移動がより一層生じ難くなる。加えて、樹脂管継手Aに熱が加わったときに合成樹脂(継手本体1やユニオンナット2)の応力緩和が起こってチューブ3が抜け易くなることがあるが、拡径大径部12が抜止め環状部4Cの部分で引っ掛かって抜け規制が行われる作用が生じて抜け方向へのずれ動きが防止される利点もある。
【0039】
つまり、いずれにせよ、シール用周エッヂ10が拡径部3Aに刺さり込み作用していない状況で抜止め用周エッヂ11が拡径部3Aを軸心P方向に押すことにより、直胴筒部分4Bと押え内周部13とによる拡径大径部12の圧接保持力が強化されるという効果が得られる。以上のように、押圧時差手段により、チューブ3のインナ筒部4に対する圧接保持力も耐引抜力も一層向上する効果が得られるようになる。
【0040】
また、チューブ3の耐引抜力向上に寄与する抜止め環状部4Cが、インナ筒部4と一体形成(又は一体成形)される張出し筒部4Hの折り返しによって形成されるから、例えば切削による後加工で形成する手段に比べて、加工が楽で廉価に構成することが可能になる。これは、継手本体1の材料がフッ素樹脂等の粘性(靭性)を持つ材料であるが故に可能となる技術である。張出し筒部4Hの軸心P方向長さは、継手本体1の大きさやインナ筒部4の長さ等の緒元に応じて適宜に変更設定することが可能である。
【0041】
図1,2に示すように、継手フランジ1Aから軸心P方向に延びる複数の片持ち状で薄肉の弾かれ片19と、ユニオンナット2の先端外周部から軸心P方向に延びる複数の突起部20とを形成し、ユニオンナット2を回しての締め込み完了状態又はその付近にて、突起部20が弾かれ片19を弾いて音が出る構成としても良い。その弾かれ音にてユニオンナット2の締付が完了したことを作業者に知らしめることが可能となる利点がある。
【0042】
〔別実施例〕
拡径大径部12のうち、インナ筒部4と押え内周部13とで圧接される箇所が抜止め環状部4Cに外嵌される部分のみになる樹脂管継手Aでも良い。また、抜け止め用周エッヂ11を持たないユニオンナット2を用いた樹脂管継手Aでも良い。実施例1の樹脂管継手Aにおいては、押え内周部13が、拡径部3Aにおける直胴筒部4Bに外囲される部分にも圧接外嵌するように、即ち、抜止め環状部4C及びそれに続く拡径主部12との双方に圧接外嵌するように構成されているが、抜止め環状部4Cのみ圧接外嵌する構成としても良い。
【符号の説明】
【0043】
1 継手本体
2 ユニオンナット
3 チューブ
3A 拡径部
4 インナ筒部
4A 先端先窄まり筒部
4B 直胴筒部
4C 抜止め環状部
4H 薄肉筒状部
5 雄ねじ
8 雌ねじ
9 拡径変化領域
10 シール用押圧部
11 抜止め用押圧部
12 拡径主部
13 押え内周部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製チューブを徐々に拡径させる先端先窄まり筒部、前記先端先窄まり筒部の大径側に続いて形成される直胴筒部、及び前記直胴筒部の先端先窄まり筒部側に前記直胴筒部よりも大径の状態で形成される抜止め環状部を有するインナ筒部と、雄ねじとを備える合成樹脂製の継手本体、及び
前記雄ねじに螺合可能な雌ねじと、前記チューブの拡径部における拡径変化領域に作用可能なシール用押圧部と、前記拡径部の前記直胴筒部に外囲される拡径主部に外嵌可能な押え内周部と、を備える合成樹脂製のユニオンナットを有し、
前記インナ筒部に前記チューブが外嵌装着されて前記拡径部が形成される状態における前記雌ねじを前記雄ねじに螺合させての前記ユニオンナットの前記継手本体の軸心方向への螺進により、前記拡径主部における前記抜止め環状部に外囲される部分に前記押え内周部が圧接外嵌され、かつ、前記拡径変化領域が前記シール用押圧部で前記軸心方向に押圧されるように構成されている樹脂管継手。
【請求項2】
前記押え内周部が、前記拡径主部における前記直胴筒部に外囲される部分にも圧接外嵌するように構成されている請求項1に記載の樹脂管継手。
【請求項3】
前記抜止め環状部が、前記直胴筒部からこれと外径を同じくして前記先端先窄まり筒部側に延設される薄肉筒状部の径外側へ向けて折り返されて形成されるものである請求項1又は2に記載の樹脂管継手。
【請求項4】
前記薄肉筒状部の径外側へ向けての折り返しが、前記チューブを前記インナ筒へ外嵌装着する操作に伴って形成されるものである請求項3に記載の樹脂管継手。
【請求項5】
前記継手本体に、前記拡径変化領域の大径側部分に作用可能な抜止め用押圧部が形成されており、前記ユニオンナットの螺進によって前記拡径変化領域の大径側部分が前記抜止め用押圧部で前記軸心方向に押圧されるように構成されている請求項1〜4の何れか一項に記載の樹脂管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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