説明

樹脂組成物、光学フィルムおよび液晶表示装置

【課題】基材フィルム上に塗工して得られる光学フィルムに生じ得るヘイズのムラおよび気泡混入を効果的に抑制できる透光性微粒子含有樹脂組成物ならびにこれを用いた光学フィルムおよび液晶表示装置を提供する。
【解決手段】透光性樹脂またはこれを形成する樹脂成分および溶剤を含む混合物と、透光性微粒子とからなる樹脂組成物であって、該混合物の25℃における表面張力が18mN/m以上35mN/m以下であり、透光性微粒子は、その懸濁可能なメタノール水溶液のメタノール濃度の下限値が、25℃において1.0重量%以上15.0重量%未満の範囲内にある樹脂組成物ならびにこれを用いた光学フィルムおよび液晶表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム用途に有用な、透光性微粒子を含有する樹脂組成物に関する。また本発明は、当該樹脂組成物から形成される樹脂層(防眩層など)を備える光学フィルムおよびこれを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等の画像表示装置においては、外光の映り込みを防止するために、その視認側表面に防眩フィルムなどの光学フィルムを配置することがある。このような防眩フィルムは、たとえば、透光性微粒子(ビーズ)を含有する樹脂組成物(塗工液)を基材フィルム上に塗工し、透光性微粒子に基づく表面凹凸を有する樹脂層を形成することによって作製されている(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−79099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
透光性微粒子が混合分散された樹脂組成物を基材フィルム上に塗工することにより樹脂層を形成した従来の光学フィルムにおいては、樹脂組成物中における透光性微粒子の分散性が良好でないために、得られる光学フィルムにヘイズのムラが生じたり、樹脂層中に気泡が発生して外観品質を損なったりすることがあった。このようなヘイズのムラや気泡の発生は、光学フィルムの製品収率を低下させる。
【0005】
本発明の目的は、基材フィルム上に塗工して得られる光学フィルムに生じ得るヘイズのムラおよび気泡混入を効果的に抑制できる透光性微粒子含有樹脂組成物を提供することにある。また本発明の他の目的は、かかる樹脂組成物を用いて形成される、ヘイズのムラおよび気泡の発生が抑制された光学フィルムおよびこれを備える液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、透光性樹脂またはこれを形成する樹脂成分および溶剤を含む混合物と、透光性微粒子とからなる樹脂組成物であって、該混合物の25℃における表面張力が18mN/m以上35mN/m以下であり、透光性微粒子は、その懸濁可能なメタノール水溶液のメタノール濃度の下限値が、25℃において1.0重量%以上15.0重量%未満の範囲内にある樹脂組成物を提供する。
【0007】
透光性微粒子は、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレートおよびポリスチレン−ポリ(メタ)アクリレート共重合体からなる群から選択されるいずれかの重合体から構成されるものであることができる。
【0008】
透光性微粒子の含有量は、透光性樹脂またはこれを形成する樹脂成分の100重量部に対して25重量部以上50重量部未満であることが好ましい。また、透光性微粒子の重量平均粒径は、5μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0009】
また本発明は、基材フィルムと、該基材フィルム上に積層され、上記本発明の樹脂組成物から形成される防眩層とを有する光学フィルムを提供する。
【0010】
さらに本発明は、バックライト装置と、光偏向手段と、第1偏光板と、液晶セルと、第2偏光板と、上記本発明の光学フィルムとをこの順で備える液晶表示装置を提供する。光偏向手段は、第1偏光板に対向する表面に線状プリズムを複数有するプリズムフィルムを2枚積層したものであってもよい。この場合、一方のプリズムフィルムは、その線状プリズムの稜線の方向が第1偏光板の透過軸に略平行となるように配置され、他方のプリズムフィルムは、その線状プリズムの稜線の方向が第2偏光板の透過軸に略平行となるように配置されることが好ましい。なお、略平行とは、完全に平行の場合、および、±5度程度の角度範囲で平行からずれている場合も含む意味である。
【0011】
本発明の液晶表示装置は、バックライト装置と光偏向手段との間に、光拡散手段をさらに備えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、樹脂組成物中における透光性微粒子の分散性が良好であるため、ヘイズのムラおよび樹脂組成物から形成される樹脂層における気泡の発生が抑制された光学フィルムを提供することができる。本発明の光学フィルムは、ヘイズの均質性に優れるとともに外観品質にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】透光性微粒子が懸濁可能なメタノール水溶液のメタノール濃度の下限値を測定するための装置系を模式的に示す図である。
【図2】図1に示される装置系を用いて得られるメタノール濃度とレーザー光の透過率との関係を表すグラフである。
【図3】本発明の光学フィルムの好ましい一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の光学フィルムの好ましい他の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の光学フィルムの好ましい他の一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の防眩性偏光板の好ましい一例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の液晶表示装置の好ましい一例を示す概略断面図である。
【図8】プリズムフィルムが有する線状プリズムの稜線方向と、偏光板の透過軸方向との関係を説明するための概略斜視図である。
【図9】本発明の液晶表示装置の他の好ましい一例を示す概略断面図である。
【図10】(a)は、本発明に係る液晶表示装置の正面図、(b)は、図10(a)の平面4bをその垂線方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、各種光学フィルムが備え得る樹脂層(樹脂コーティング層)を形成するのに好適な、透光性微粒子を含有する樹脂組成物であり、具体的には、透光性樹脂またはこれを形成する樹脂成分および溶剤を少なくとも含む混合物と、透光性微粒子とからなる。本発明の樹脂組成物は、光重合開始剤、レベリング剤、分散剤、帯電防止剤、防汚剤等のその他の成分をさらに含んでいてもよい。本発明の樹脂組成物は透光性微粒子の分散性に優れており、これを基材フィルム上に塗工することによって形成される樹脂層を有する光学フィルムは、ヘイズの均質性に優れているとともに、樹脂層における気泡の発生が効果的に抑制されており外観品質に優れる。
【0015】
(1)樹脂
樹脂組成物に含有される透光性樹脂またはこれを形成する樹脂成分としては、たとえば、熱可塑性樹脂などの透光性樹脂や、透光性樹脂を形成する樹脂成分としての、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂などの活性エネルギー線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、金属アルコキシドなどを挙げることができる。なかでも、樹脂組成物の塗工および硬化によって高い硬度を示し、液晶表示装置表面に設ける光学フィルムとして高い耐擦傷性が付与された樹脂層を形成できることから、活性エネルギー線硬化型樹脂が好適である。
【0016】
熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体;酢酸ビニルおよびその共重合体、塩化ビニルおよびその共重合体、塩化ビニリデンおよびその共重合体等のビニル系樹脂;ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール系樹脂;アクリル樹脂およびその共重合体、メタクリル樹脂およびその共重合体等のアクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。
【0017】
活性エネルギー線硬化型樹脂は、多官能(メタ)アクリレート化合物を含有するものであることができる。多官能(メタ)アクリレート化合物とは、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。
【0018】
多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例を挙げれば、たとえば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート化合物、エポキシ(メタ)アクリレート化合物等の(メタ)アクリロイル基を2個以上含む多官能重合性化合物などである。
【0019】
多価アルコールとしては、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2’−チオジエタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのような2価のアルコール;トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、ジペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパンのような3価以上のアルコールが挙げられる。
【0020】
多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物として、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0021】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、1分子中に複数個のイソシアネート基を有するイソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体のウレタン化反応物を挙げることができる。1分子中に複数個のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレリンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の1分子中に2個のイソシアネート基を有する有機イソシアネート、それら有機イソシアネートをイソシアヌレート変性、アダクト変性、ビウレット変性した1分子中に3個のイソシアネート基を有する有機イソシアネート等が挙げられる。水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートが挙げられる。
【0022】
ポリエステル(メタ)アクリレート化合物として好ましいものは、水酸基含有ポリエステルと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレートである。好ましく用いられる水酸基含有ポリエステルは、多価アルコールとカルボン酸や複数のカルボキシル基を有する化合物および/またはその無水物のエステル化反応によって得られる水酸基含有ポリエステルである。多価アルコールとしては前述した化合物と同様のものが例示できる。また、多価アルコール以外にも、フェノール類としてビスフェノールA等が挙げられる。カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、ブチルカルボン酸、安息香酸等が挙げられる。複数のカルボキシル基を有する化合物および/またはその無水物としては、マレイン酸、フタル酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、テレフタル酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、トリメリット酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0023】
以上のような多官能(メタ)アクリレート化合物の中でも、硬化物(被膜)の強度向上や入手の容易性の点から、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のエステル化合物;ヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体;イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体;トリレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体;アダクト変性イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体;およびビウレット変性イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの付加体が好ましい。さらに、活性エネルギー線硬化型樹脂は、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。これらの多官能(メタ)アクリレート化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0024】
活性エネルギー線硬化型樹脂は、上記の多官能(メタ)アクリレート化合物のほかに、単官能(メタ)アクリレート化合物を含有していてもよい。単官能(メタ)アクリレート化合物としては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アセチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類を挙げることができる。これらの化合物はそれぞれ単独でまたは2種類以上を併用して用いることができる。
【0025】
活性エネルギー線硬化型樹脂は重合性オリゴマーを含有していてもよい。重合性オリゴマーを含有させることにより、樹脂層の硬度を調整することができる。重合性オリゴマーは、たとえば、前記多官能(メタ)アクリレート化合物、すなわち、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート化合物またはエポキシ(メタ)アクリレート等の2量体、3量体などのようなオリゴマーであることができる。
【0026】
また、その他の重合性オリゴマーとして、分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールとの反応により得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを挙げることができる。ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレリンジイソシアネートの重合物等が挙げられ、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化反応によって得られる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルであって、多価アルコールとして、たとえば、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等であるものが挙げられる。この少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールは、多価アルコールのアルコール性水酸基の一部が(メタ)アクリル酸とエステル化反応しているとともに、アルコール性水酸基が分子中に残存するものである。
【0027】
さらに、その他の重合性オリゴマーの例として、複数のカルボキシル基を有する化合物および/またはその無水物と、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールとの反応により得られるポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーを挙げることができる。複数のカルボキシル基を有する化合物および/またはその無水物としては、前記多官能(メタ)アクリレート化合物のポリエステル(メタ)アクリレートで記載したものと同様のものが例示できる。また、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールとしては、上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーで記載したものと同様のものが例示できる。
【0028】
以上のような重合性オリゴマーに加えて、さらにウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの例として、水酸基含有ポリエステル、水酸基含有ポリエーテルまたは水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの水酸基にイソシアネート類を反応させて得られる化合物が挙げられる。好ましく用いられる水酸基含有ポリエステルは、多価アルコールとカルボン酸や複数のカルボキシル基を有する化合物および/またはその無水物のエステル化反応によって得られる水酸基含有ポリエステルである。多価アルコールや、複数のカルボキシル基を有する化合物および/またはその無水物としては、それぞれ、多官能(メタ)アクリレート化合物のポリエステル(メタ)アクリレート化合物で記載したものと同様のものが例示できる。好ましく用いられる水酸基含有ポリエーテルは、多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドおよび/またはε−カプロラクトンを付加することによって得られる水酸基含有ポリエーテルである。多価アルコールは、前記水酸基含有ポリエステルに使用できるものと同じものであってよい。好ましく用いられる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、重合性オリゴマーのウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーで記載したものと同様のものが例示できる。イソシアネート類としては、分子中に1個以上のイソシアネート基を持つ化合物が好ましく、トリレンジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの2価のイソシアネート化合物が特に好ましい。
【0029】
これらの重合性オリゴマー化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0030】
熱硬化型樹脂としては、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化型ウレタン樹脂のほか、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。
【0031】
金属アルコキシドとしては、珪素アルコキシド系の材料を原料とする酸化珪素系マトリックス等を使用することができる。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等であり、加水分解や脱水縮合により無機系または有機無機複合系マトリックス(透光性樹脂)とすることができる。
【0032】
(2)光重合開始剤
透光性樹脂を形成する樹脂成分として紫外線硬化型樹脂を用いる場合、樹脂組成物は光重合開始剤(ラジカル重合開始剤)を含むことが好ましい。
【0033】
光重合開始剤としては、たとえば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、オキサジアゾール系光重合開始剤などが用いられる。また、光重合開始剤として、たとえば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアントラキノン、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、フェニルグリオキシル酸メチル、チタノセン化合物等も用いることができる。光重合開始剤の使用量は、通常、樹脂組成物に含有される樹脂成分100重量部に対して0.5〜20重量部であり、好ましくは、1〜5重量部である。
【0034】
(3)溶剤
樹脂組成物に含有される溶剤は有機溶剤であることが好ましい。有機溶剤としては、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル化グリコールエーテル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のセルソルブ類;2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等のカルビトール類などを用いることができる。
【0035】
溶剤は、1種のみを単独で用いてもよいし、必要に応じて数種類を混合して用いてもよい。樹脂組成物塗工後には、上記有機溶剤を蒸発させる必要がある。そのため、沸点は60℃〜160℃の範囲であることが望ましい。また、20℃における飽和蒸気圧は0.1kPa〜20kPaの範囲であることが好ましい。
【0036】
ここで、樹脂組成物を構成する透光性樹脂またはこれを形成する樹脂成分および溶剤を含む上述の混合物、すなわち、透光性微粒子を含まないこと以外は樹脂組成物と同一の組成である組成物(光重合開始剤、レベリング剤、分散剤、帯電防止剤、防汚剤等のその他の成分を含む場合には当該その他の成分も含む。)の25℃における表面張力は18mN/m以上35mN/m以下とされる。表面張力が18mN/m未満であると、樹脂組成物の基材フィルムへの濡れ性が高くなり過ぎて、塗工層表面の平滑性が過度に上昇し、樹脂層に一般的に付与される防汚機能が低下する。一方、表面張力が35mN/mを超えると、樹脂組成物の基材フィルムへの濡れ性が低くなり過ぎて、塗工層表面の平滑性が悪化する。上記混合物の表面張力は、好ましくは20mN/m以上30mN/m以下である。
【0037】
上記混合物の表面張力は、透光性樹脂またはこれを形成する樹脂成分の種類、溶剤の種類、あるいはこれらの混合比率よって調整可能である。レベリング剤などの添加剤を加えることにより表面張力を調整することもできる。たとえば、透光性樹脂またはこれを形成する樹脂成分として、上述したものの中から表面張力が25〜45mN/m程度のものを選択し、溶剤として、上述したものの中から表面張力が20〜40mN/m程度のものを選択し、これらの比率を調整して混合することによって所望の表面張力を有する混合物を得ることができる。
【0038】
上記混合物の表面張力の数値は、ペンダント・ドロップ法(懸滴法)により測定される数値である。
【0039】
(4)透光性微粒子
樹脂組成物に含有される透光性微粒子は、懸濁(分散)可能なメタノール水溶液のメタノール濃度の下限値(以下、懸濁メタノール濃度下限値ともいう)が、25℃において1.0重量%以上15.0重量%未満、好ましくは3.0重量%以上13.0重量%以下の範囲内にあるものである。武井他, 塗工工学, Vol. 32, No. 6, 1997, 218-223に記載されているように、懸濁メタノール濃度下限値(透光性微粒子の懸濁が始まるメタノール濃度)におけるメタノール溶液の表面張力は、透光性微粒子の表面張力とおよそ同等であるところ、懸濁メタノール濃度下限値が1.0重量%未満である(つまり、メタノール濃度が1.0重量%未満であるメタノール水溶液にも懸濁する)場合には、透光性微粒子の表面張力と、上記混合物の表面張力との差が大きくなることによって、上記混合物への透光性微粒子の分散性が不良となり、得られる光学フィルムにヘイズのムラが生じたり、樹脂層中に気泡が発生して外観品質を損なったりする。
【0040】
一方、懸濁メタノール濃度下限値が15.0重量%以上である(つまりメタノール濃度を15.0重量%以上とすることでメタノール水溶液にはじめて懸濁する)場合には、透光性微粒子の表面張力が低すぎて、同様に上記混合物への透光性微粒子の分散性が不良となり、得られる光学フィルムにヘイズのムラが生じたり、樹脂層中に気泡が発生して外観品質を損なったりする。
【0041】
懸濁メタノール濃度下限値が、25℃において1.0重量%以上15.0重量%未満である透光性微粒子を用いることにより、透光性微粒子の表面張力と、上記混合物の表面張力との差が十分に小さくなることから、透光性微粒子を上記混合物に良好に分散させることができ、これによりヘイズの均質性に優れるとともに、樹脂層における気泡の発生が効果的に抑制された光学フィルムを得ることができる。
【0042】
懸濁メタノール濃度下限値(透光性微粒子の懸濁が始まるメタノール濃度)は、図1に示されるような装置系を用いて測定される。図1に示される装置系は、純水80を収容するための容器10(たとえば胴外径55mm、高さ73mmの100mLビーカー);容器10内に収容される攪拌子50;攪拌子50を回転させるためのスターラー(マグネチックスターラー)40;He−Neレーザー光を容器10の側面から照射するための光源20;照射されるレーザー光の延長線上であって、レーザー光が照射される容器10の側面に対向する側面側に配置される検出器30;および、容器10内へメタノール90を滴下するためのポンプ60を備える。
【0043】
懸濁メタノール濃度下限値は、図1に示される装置系を用いて次のようにして測定される。まず、容器10に100mLの純水80(25℃)を入れる。次に、純水表面に100mgの透光性微粒子70を浮かべ、スターラー40および攪拌子50を用いて純水80を攪拌する(攪拌子50の回転速度200rpm)。以後、この攪拌を継続する。ついで、攪拌下の純水80に、ポンプ60を用いてメタノール90(25℃)を3mL/minの速度で滴下する。メタノール90の滴下と同時またはその前に、光源20を用いて、容器10の側面からHe−Neレーザー光の照射を開始するとともに、容器10を介して光源20と対向する位置にある検出器30により、透過したレーザー光の光強度を検出し、レーザー光の透過率をモニターする。
【0044】
上記のメタノールの滴下を進めていくと、図2に示されるように、容器10内のメタノール水溶液のメタノール濃度がある一定値に達したときに、透光性微粒子70の懸濁が始まる結果、レーザー光の透過率の急激な減少が観測される。本発明における懸濁メタノール濃度下限値とは、レーザー光の透過率が急激な減少を始めるメタノール濃度、より具体的には、図2を参照して、図1に示される装置系を用いて得られるメタノール濃度とレーザー光の透過率との関係を表すグラフ曲線における、透過率が急激な減少を始める前の曲線部分の接線と透過率が急激に減少している曲線部分の接線との交点におけるメタノール濃度Aである。
【0045】
上記所定の懸濁メタノール濃度下限値を有する透光性微粒子としては、市販品を用いることもできるが、所定の懸濁メタノール濃度下限値を有しない市販品を用いる場合には、純水などにより洗浄を行なうことにより懸濁メタノール濃度下限値を調整することが可能である。一般に、透光性微粒子(重合体からなる透光性微粒子)は乳化重合または懸濁重合によって製造されており、表面に乳化剤をはじめとする界面活性剤が残留している。透光性微粒子を純水などで洗浄し、界面活性剤の残留量を低減させることによって、懸濁メタノール濃度下限値を高くすることができる。この場合、洗浄条件の調整により懸濁メタノール濃度下限値の調整が可能である。逆に、透光性微粒子に界面活性剤を含有させることによって、懸濁メタノール濃度下限値を低くすることができる。この場合、含有させる界面活性剤の量の調整により懸濁メタノール濃度下限値の調整が可能である。
【0046】
透光性微粒子は、透光性を有する有機微粒子または無機微粒子であることができる。たとえば、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート〔ポリメタクリレート、ポリアクリレートおよびメタクリレート系モノマーとアクリレート系モノマーとの共重合体を含む〕、ポリスチレン−ポリ(メタ)アクリレート共重合体、メラミン樹脂、ポリエチレン、有機シリコーン樹脂等からなる有機微粒子や、炭酸カルシウム、シリカ、酸化アルミニウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、ガラス等からなる無機微粒子等が挙げられる。また、有機重合体のバルーンやガラス中空ビーズも使用できる。なかでも、所定の懸濁メタノール濃度下限値を示す微粒子が得られやすいことから、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレートまたはポリスチレン−ポリ(メタ)アクリレート共重合体のいずれかの重合体から構成されることが好ましい。
【0047】
なお、透光性微粒子として、1種類の微粒子のみを用いてもよいし、2種類以上の微粒子を用いてもよい。透光性微粒子の形状は、球状、扁平状、板状、針状、不定形状等いずれであってもよいが、球状または略球状が好ましい。
【0048】
透光性微粒子の重量平均粒径は、好ましくは5μm以上10μm以下であり、また、樹脂組成物中の透光性微粒子の含有量は、透光性樹脂またはこれを形成する樹脂成分の100重量部に対して25重量部以上50重量部未満であることが好ましい。透光性微粒子の重量平均粒径および含有量を上記範囲内とすることによって、樹脂組成物を基材フィルム上に塗工して防眩層を形成する場合に、広い視野角においてシンチレーション等の表示品位の低下を抑制できるとともに、高い正面コントラストおよび透過画像鮮明度を得ることができる。透光性微粒子の重量平均粒径は、より好ましくは6μm以上9μm以下であり、透光性微粒子の含有量は、透光性樹脂またはこれを形成する樹脂成分の100重量部に対して、より好ましくは25重量部以上40重量部以下である。
【0049】
なお、透光性微粒子の重量平均粒径は、コールター原理(細孔電気抵抗法)に基づくコールターマルチサイザー(ベックマンコールター社製)を用いて測定される。透光性微粒子として重量平均粒径の異なる2種以上の透光性微粒子を用いる場合、重量平均粒径は、透光性微粒子のうち最も大きな重量平均粒径を有する透光性微粒子の重量平均粒径である。
【0050】
透光性微粒子の屈折率は、樹脂層を構成する透光性樹脂の屈折率よりも大きくするのが好ましく、その差は0.04〜0.1の範囲が好ましい。透光性微粒子と透光性樹脂との屈折率差を上記範囲とすることによって、樹脂層が防眩層である場合において、防眩層に入射した光に対して、防眩層表面の凹凸による表面散乱だけでなく、当該屈折率差による適度な内部散乱を発現させることができ、シンチレーションの発生を抑制できる。また、上記の屈折率差が0.1以下であると、光学フィルムの白化を抑制する傾向があることから好ましい。
【0051】
<光学フィルム>
本発明の光学フィルムは、基材フィルムと、基材フィルム上に積層され、上述の樹脂組成物から形成される樹脂層(典型的には防眩層であるが、これ以外の光学機能を有する層であってもよい。)とを備えるものである。図3は、本発明の光学フィルムの好ましい例を示す概略断面図である。図3に示される光学フィルム100は、基材フィルム101と、基材フィルム101上に積層された防眩層102とを備える。防眩層102は、透光性樹脂103を基材とする層であって、透光性樹脂103中に透光性微粒子104が分散されてなり、上述の樹脂組成物を基材フィルム101上に塗工、乾燥した後、必要に応じて硬化することにより形成される。図3の光学フィルム100において防眩層102の表面には、分散混合された透光性微粒子104によって微細な凹凸が形成されている。
【0052】
本発明の光学フィルムは、透光性微粒子の分散性に優れる樹脂組成物を用いて樹脂層(防眩層102)が形成されているため、ヘイズの均質性に優れるとともに、樹脂層における気泡の発生が抑制されており外観品質に優れる。
【0053】
なお、本発明の光学フィルムは、基材フィルムと樹脂層(防眩層102)との間に他の層(接着剤層を含む)を有していてもよい。
【0054】
(1)基材フィルム
基材フィルム101は透光性のものであればよく、たとえばガラスやプラスチックフィルムなどを用いることができる。プラスチックフィルムとしては適度の透明性、機械強度を有していればよい。具体的には、たとえば、TAC(トリアセチルセルロース)等のセルロースアセテート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。基材フィルム101の厚みは、たとえば10〜500μmであり、光学フィルムの薄膜化等の観点から、好ましくは10〜300μmである。
【0055】
(2)防眩層
防眩層102は、透光性樹脂103を基材とする層であって、透光性樹脂103中に透光性微粒子104が分散されてなる。透光性樹脂103は、樹脂組成物が透光性樹脂を含有するものである場合には、その透光性樹脂それ自体であり、活性エネルギー線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、金属アルコキシド等の樹脂成分を含有するものである場合には、これらの硬化物である。すなわち、樹脂組成物が活性エネルギー線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂または金属アルコキシドを含有するものである場合は、活性エネルギー線の照射または加熱により当該樹脂を硬化させることにより透光性樹脂103が形成される。
【0056】
防眩層102の層厚Tは、好ましくは10μm以上20μm以下であり、より好ましくは12μm以上18μm以下である。これにより、広い視野角においてシンチレーション等の表示品位の低下を抑制できるとともに、高い正面コントラストおよび透過画像鮮明度を得ることができる。なお、防眩層102の層厚Tとは、防眩層の基材フィルムに対向する側の面から反対側の面までの最大厚みをいう(図3参照)。
【0057】
(3)光学フィルムの製造方法
本発明に係る図3に示される光学フィルム100は、次の工程を含む方法によって好適に製造することができる。
(A)基材フィルム101上に、透光性微粒子104を含有する上述の樹脂組成物を塗工して塗工層を形成する工程、および
(B)塗工層を基材フィルム101上に固着させることにより、防眩層102を形成する工程。
【0058】
樹脂組成物の基材フィルム101上への塗工は、たとえば、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、ロッドコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、キスコート法、ダイコート法などによって行なうことができる。
【0059】
樹脂組成物の塗工性の改良または防眩層102との接着性の改良を目的として、基材フィルム101の表面(防眩層側表面)には、各種表面処理を施してもよい。表面処理としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、酸表面処理、アルカリ表面処理、紫外線照射処理などが挙げられる。また、基材フィルム101上に、たとえばプライマー層等の他の層を形成し、この他の層の上に、樹脂組成物を塗工するようにしてもよい。
【0060】
また、光学フィルムを、後述する偏光フィルムの保護フィルムとして使用する場合には、基材フィルム101と偏光フィルムとの接着性を向上させるために、基材フィルム101の表面(防眩層とは反対側の表面)を各種表面処理(酸処理またはアルカリ処理など)によって親水化しておくことが好ましい。
【0061】
次に、上記工程(B)において、塗工層を基材フィルム101上に固着させて防眩層102を形成し、光学フィルムを得る。具体的には、樹脂組成物が活性エネルギー線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂または金属アルコキシドを含有する場合は、乾燥(溶媒の除去)を行なった後、塗工層に対し活性エネルギー線の照射を行なうか(活性エネルギー線硬化型樹脂を用いる場合)または加熱する(熱硬化型樹脂または金属アルコキシドを用いる場合)ことにより、塗工層を硬化させる。活性エネルギー線としては、樹脂組成物に含まれる樹脂成分の種類に応じて紫外線、電子線、近紫外線、可視光、近赤外線、赤外線、X線などから適宜選択することができるが、これらの中で紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが得られることから紫外線が好ましい。
【0062】
紫外線の光源としては、たとえば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。また、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、エキシマランプまたはシンクロトロン放射光等も用いることができる。これらの中でも、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンアーク、メタルハライドランプが好ましく用いられる。
【0063】
また、電子線としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線を挙げることができる。
【0064】
一方、樹脂組成物が熱可塑性樹脂等の透光性樹脂を含有する場合には、乾燥(溶媒の除去)を行なうか、または乾燥を行なった後、塗工層を軟化または溶融させ、その後塗工層を冷却することにより、光学フィルムを作製することができる。
【0065】
たとえば紫外線硬化型樹脂を用いる場合を例に挙げれば、ロール状に巻き付けられた基材フィルム101を連続的に送り出す工程、透光性微粒子104および紫外線硬化型樹脂を含有する樹脂組成物を塗工し、乾燥させる工程、塗工層を硬化させて防眩層102を形成する工程、および、得られた光学フィルムを巻き取る工程を含む方法により、光学フィルムを連続的に製造することができる。
【0066】
ここで、本発明の光学フィルムにおいて、防眩層102が有する表面凹凸は、鋳型(たとえばエンボスロール)の表面を転写することにより、あるいはサンドブラスト加工により形成されたものであってもよい。かかる方法により作製される光学フィルムの概略断面図を図4に示す。たとえば紫外線硬化型樹脂を用いる場合を例に挙げれば、所望の凹凸形状の転写構造を表面に有する鋳型を用い、塗工層の表面に鋳型の該表面を押し当てた状態で、基材フィルム101側から塗工層に対し紫外線を照射することによって、図4に示されるような光学フィルムを作製することができる。
【0067】
(4)光学フィルムの他の実施形態
本発明の光学フィルムは、防眩層102上(基材フィルム101とは反対側の面)に積層された透光性樹脂からなる透光性樹脂層を有するものであってもよい。図5に示される透光性樹脂層105のように、この透光性樹脂層は、鋳型(たとえばエンボスロール)の表面を転写することにより、あるいはサンドブラスト加工により形成された表面凹凸を有することができる。かかる透光性樹脂層を備える光学フィルムにおいて、防眩層102の表面は平滑面であってよい。このような平滑面は、たとえば鏡面を有する鋳型の該鏡面を塗工層の表面に押し当てた状態で塗工層を硬化させる方法などによって形成することができる。
【0068】
また、本発明の光学フィルムは、防眩層102上(基材フィルム101とは反対側の面)に積層された反射防止層をさらに備えていてもよい。反射防止層は防眩層102上に直接形成してもよく、透明フィルム上に反射防止層を形成した反射防止フィルムを別途用意し、これを粘着剤または接着剤を用いて防眩層102に積層してもよい。反射防止層は、反射率を限りなく低くするために設けられるものであり、反射防止層の形成により、表示画面への映り込みをより効果的に防止することができる。反射防止層としては、防眩層102の屈折率よりも低い材料から構成された低屈折率層;防眩層102の屈折率より高い材料から構成された高屈折率層と、この高屈折率層の屈折率より低い材料から構成された低屈折率層との積層構造などを挙げることができる。反射防止フィルムを粘着剤または接着剤を用いて防眩層102に積層する場合、市販の反射防止フィルムを使用できる。
【0069】
<防眩性偏光板>
上述した本発明の光学フィルムは、偏光板と組み合わせることにより防眩性偏光板とすることができる。防眩性偏光板は、偏光機能と防眩機能とを有する多機能フィルムである。本発明の防眩性偏光板は、少なくとも偏光フィルムを有する偏光板と、基材フィルム側が該偏光板に対向するように該偏光板上に粘着剤層または接着剤層を介して積層された上記本発明の光学フィルムとを備えるものである。偏光板は従来公知の構成であってよく、たとえば、偏光フィルムの片面または両面に保護フィルムを有するものが一般的である。また、偏光板は、偏光フィルムそれ自体であってもよい。
【0070】
図6は、本発明の防眩性偏光板の好ましい一例を示す概略断面図である。図6に示される防眩性偏光板400は、偏光フィルム401と、偏光フィルム401の一方の面に貼着された保護フィルム402と、他方の面に貼着された光学フィルム100とを備える。光学フィルム100は、その基材フィルム101側が偏光板の偏光フィルム401に対向するように貼着されている。光学フィルム100および保護フィルム402は、図示しない接着剤層を介して偏光フィルム401に貼着される。このような、偏光フィルムと光学フィルムとが接着剤層を介して貼着される構成、すなわち、光学フィルムを偏光フィルムの保護フィルムとして使用する構成は、防眩性偏光板の薄膜化に有利である。
【0071】
偏光フィルム401としては、たとえば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン/酢酸ビニル(EVA)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル系樹脂等からなるフィルムに、二色性染料またはヨウ素を吸着配向させたもの、分子的に配向したポリビニルアルコールフィルム中に、ポリビニルアルコールの二色性脱水生成物(ポリビニレン)の配向した分子鎖を含有するポリビニルアルコール/ポリビニレンコポリマー等が挙げられる。特に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性染料またはヨウ素を吸着配向させたものが偏光フィルムとして好適に使用される。偏光フィルムの厚さに特に限定はないが、一般には偏光板の薄型化等の観点から、100μm以下が好ましく、より好ましくは10〜50μmの範囲、さらに好ましくは25〜35μmの範囲である。
【0072】
偏光フィルム401に貼着される保護フィルム402としては、低複屈折性で、透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮蔽性などに優れるポリマーからなるフィルムが好ましい。このようなフィルムとしては、たとえば、TAC(トリアセチルセルロース)などのセルロースアセテート系樹脂;アクリル系樹脂;四フッ化エチレン/六フッ化プロピレン系共重合体のようなフッ素系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリオレフィン系樹脂もしくはポリアミド系樹脂等の樹脂をフィルム状に成形加工したものが挙げられる。これらの中でも、偏光特性や耐久性などの点から、表面をアルカリなどでケン化処理したトリアセチルセルロースフィルムや、ノルボルネン系熱可塑性樹脂フィルムが好ましく使用できる。ノルボルネン系熱可塑性樹脂フィルムは、耐湿熱性が高いため、偏光板の耐久性を大幅に向上させることができるとともに、吸湿性が少ないため、寸法安定性が高く、特に好適である。フィルムへの成形加工は、キャスティング法、カレンダー法、押出法の従来公知の方法を用いることができる。保護フィルム402の厚さに限定はないが、偏光板の薄膜化等の観点から500μm以下が好ましく、より好ましくは5〜300μmの範囲、さらに好ましくは5〜150μmの範囲である。
【0073】
以上のような構成の防眩性偏光板は、典型的には、液晶表示装置に適用される場合、光学フィルムが光出射側(視認側)となるように、粘着剤層等を介して液晶セルのガラス基板に貼着される。
【0074】
<液晶表示装置>
次に、本発明に係る液晶表示装置について説明する。本発明の液晶表示装置は、上記本発明の光学フィルムまたは防眩性偏光板を備えるものである。1つの好ましい実施形態において本発明の液晶表示装置は、バックライト装置と、光偏向手段と、第1偏光板(バックライト側偏光板)と、液晶セルと、第2偏光板(視認側偏光板)と、上記本発明の光学フィルムとをこの順で備える。図7は、本発明の液晶表示装置の好ましい一例を示す概略断面図である。図7に示される液晶表示装置500は、ノーマリーホワイトモードのTN方式の液晶表示装置であって、バックライト装置502、光拡散板503、光偏向手段としての2枚のプリズムフィルム504a、504b、第1偏光板505、一対の透明基板511a、511bの間に液晶層512が設けられてなる液晶セル501、および、第2偏光板506と本発明に係る光学フィルム507とからなる防眩性偏光板がこの順で配置されてなる。防眩性偏光板は、その偏光フィルム側が液晶セル501に対向するように配置されている。
【0075】
光拡散板503の光出射面の垂線は、Z軸と略平行とされている。なお、光拡散板503を設けない場合には、バックライト装置502の光出射面(開口部)の垂線が、Z軸と略平行とされる。また、プリズムフィルム504a、504bの光入射面の垂線は、Z軸と略平行とされている。
【0076】
図8に示すように、第1偏光板505と第2偏光板506とは、それらの透過軸(Y方向、X方向)が直交ニコルの関係となるように配置されている。また、2枚のプリズムフィルム504a,504bはそれぞれ、光入射面側(バックライト装置側)が平坦面であり、光出射面(第1偏光板505に対向する表面)側に、線状プリズム541a,541bが平行に複数形成されている。そして、プリズムフィルム504aは、その線状プリズム541aの稜線542aの方向が第1偏光板505の透過軸方向と実質的に平行となるよう配置され、プリズムフィルム504bは、その線状プリズム541bの稜線542bの方向が防眩性偏光板を構成する第2偏光板506の透過軸方向と実質的に平行となるように配置されている。ただし、プリズムフィルム504bの線状プリズム541bの稜線542bの方向が第1偏光板505の透過軸方向と実質的に平行となるよう配置し、プリズムフィルム504aの線状プリズム541aの稜線542aの方向が防眩性偏光板を構成する第2偏光板506の透過軸方向と実質的に平行となるように配置することも可能である。なお、液晶表示装置をノーマリーブラックモードとする場合には、第1偏光板505の透過軸方向と第2偏光板506の透過軸方向とが平行になるように設置すればよい。
【0077】
図7を参照して、このような構成の液晶表示装置500において、バックライト装置502から放射された光は、光拡散板503によって拡散された後、プリズムフィルム504aへ入射する。第1偏光板505の透過軸方向に直交する垂直断面(ZX面)において、プリズムフィルム504aの下面に対して斜めに入射した光は、正面方向に進路が変えられて出射する。次に、プリズムフィルム504bにおいて、第2偏光板506の透過軸方向に直交する垂直断面(ZY面)において、プリズムフィルム504bの下面に対して斜めに入射した光は、前記と同様に、正面方向に進路が変えられて出射する。したがって、2枚のプリズムフィルム504a,504bを通過した光は、いずれの垂直断面においても正面方向(Z方向)に集光されたものとなり、正面方向の輝度が向上する。
【0078】
そして、図10(a)、(b)に示すように、第1偏光板505の透過軸5aおよび第2偏光板506の透過軸6aに対して略45°の角度をなす方向と平行でかつ正面方向(Z方向)と平行な平面4b内において、正面方向(Z方向)に対して大きく傾斜する方向、たとえば、正面方向(Z方向)となす角度βが+35〜+60°、−35〜−60°となる範囲の方向における輝度が低下する。これにより、得られる液晶表示装置500においては、偏光板の透過軸から略45°方向における「黒浮き」が低減される。ここで「黒浮き」とは、黒表示のときに白っぽくなる現象を意味する。
【0079】
図7に戻って、正面方向に指向性が付与された光は、第1偏光板505によって円偏光から直線偏光とされて液晶セル501に入射する。液晶セル501に入射した光は、電場によって制御された液晶層512の配向によって画素ごとに偏光面が制御されて液晶セル501から出射する。そして、液晶セル501から出射した光は第2偏光板506および光学フィルム507を通って表示面側に出射する。
【0080】
このように、液晶表示装置500では、2枚のプリズムフィルム504a,504bを備えることにより、液晶セル501に入射する光の正面方向への指向性が高い。これによって、正面方向の輝度が向上するとともに、偏光板の透過軸から45°方向における「黒浮き」が低減される。また、本発明に係る光学フィルム507を使用しているので、正面コントラストの低下を招くことなく、広い視野角においてシンチレーション等の表示品位の不具合を起こしにくくなり、さらに、高い透過画像鮮明度が得られ得る。
【0081】
以下、本発明の液晶表示装置を構成する構成部材についてより詳細に説明する。
〔液晶セル〕
液晶セル501は、図示しないスペーサにより所定距離を隔てて対向配置された一対の透明基板511a、511bと、この一対の透明基板511a、511bの間に液晶を封入してなる液晶層512を備える。一対の透明基板511a、511bには、それぞれ透明電極や配向膜が積層形成されており、透明電極間に表示データに基づいた電圧が印加されることによって液晶が配向する。液晶セル501の表示方式は、上記の例ではTN方式であるが、IPS方式、VA方式などの表示方式も用いられる。
【0082】
〔バックライト装置〕
バックライト装置502は、上面開口の直方体形状のケース521と、ケース521内に複数本並列配置された、線状光源としての冷陰極管522とを備える。ケース521は、樹脂材料や金属材料から成形されてなり、冷陰極管522から放射された光をケース内周面で反射させる観点から、少なくともケース内周面は白色または銀色であることが望ましい。光源としては、冷陰極管の他、線状形状等の各種形状のLED等も使用できる。線状光源を用いる場合、配置する線状光源の本数に特に限定はないが、発光面の輝度ムラの抑制等の観点から、隣接する線状光源の中心間距離が15mmから150mmの範囲であることが好ましい。なお、バックライト装置502は、図7に示す直下型のものに限定されるものではなく、導光板の側面に線状光源または点状光源を配置したサイドライト型、あるいは平面状光源型などの各種のものが使用できる。
【0083】
〔光拡散手段〕
本発明の液晶表示装置は、バックライト装置502と光偏向手段との間に配置される光拡散手段としての光拡散板503を備えることができる。光拡散板503は、基材に拡散剤が分散混合されてなるフィルムまたはシートである。その基材としては、ポリカーボネート樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸メチルとスチレンの共重合体樹脂、アクリロニトリルとスチレンの共重合体樹脂、メタクリル酸とスチレンの共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレンやポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド系樹脂等が使用できる。なお、光拡散手段は、光拡散板と光拡散フィルムとを併用したものであってもよい。
【0084】
また、基材に混合分散させる拡散剤としては、基材の材料とは異なる種類のポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン−ポリ(メタ)アクリレート共重合体、メラミン樹脂、ポリエチレン、有機シリコーン樹脂等からなる有機微粒子、および炭酸カルシウム、シリカ、酸化アルミニウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、ガラスなどからなる無機微粒子等が挙げられる。使用する拡散剤の種類は、1種類または2種類以上であってよい。また、有機重合体のバルーンやガラス中空ビーズも拡散剤として使用できる。拡散剤の重量平均粒径は0.5〜30μmの範囲が好ましい。また、拡散剤の形状は球形、偏平、板状、針状等であってもよいが、好ましくは球形である。
【0085】
〔プリズムフィルム(光偏向手段)〕
プリズムフィルム504a,504bは、光入射面側(バックライト装置側)が平坦面で、光出射側の面(第1偏光板505に対向する表面)に、断面が先細の多角形状、好ましくは三角形状の線状プリズム541a,541bが平行に複数形成されている。プリズムフィルム504a、504bの材料としては、たとえば、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、メタクリル樹脂等のポリ(メタ)アクリレート、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、あるいは、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂などの電離放射線硬化型樹脂等が挙げられる。プリズムフィルムは、異形押出法、プレス成形法、射出成形法、ロール転写法、レーザブレーション法、機械切削法、機械研削法、フォトポリマープロセス法などの公知の方法で製造することができる。これらの方法は、それぞれ単独で使用されてもよいし、あるいは2種以上の方法を組み合わせてもよい。プリズムフィルム504a、504bの厚みは、通常、0.1〜15mmであり、好ましくは0.5〜10mmである。
【0086】
線状プリズム541a,541bの稜線542a,542bに直交する垂直断面での断面形状は、たとえば三角形である。この場合、その三角形の頂点のうち稜線を形成する頂点の頂角θ(図8参照)は、90〜110°の範囲であることが好ましい。また、この三角形は、各辺が等辺、不等辺の何れであってもよいが、正面方向(液晶表示装置の表示面の法線方向)に集光しようとする場合は、光出射側の二辺が等しい二等辺三角形であることが好ましい。線状プリズムの断面形状は、面光源からの出射光の特性に合わせて設定することもでき、曲線を持たせるなど、三角形以外の形状としてもよい。
【0087】
上記プリズムフィルム504a,504bは、たとえば三角形状の断面を有する複数の線状プリズム541a,541bが、三角形の頂角θに相対した底辺が互いに隣接するように順次配置され、複数の線状プリズム541a,541bの稜線542a,542bが互いにほぼ平行になるように配列された構造を有することが好ましい。この場合、集光能力が著しく減退しない限り、線状プリズム541a,541bの断面形状の三角形は、その各頂点が曲線形状となっていてもよい。各稜線間の距離は、通常、10〜500μmの範囲であり、好ましくは30〜200μmの範囲である。光出射面側から見て、線状プリズムの稜線は直線状であっても波曲線状であってもよい。光出射面側から見て、稜線が波曲線状の場合の、稜線の方向は、最小二乗法によって求めた回帰直線の方向をいうものとする。
【0088】
なお、光拡散板503とプリズムフィルム504a,504bとは一体に成形してもよいし、それぞれを独立して作製した後、接合してもよい。また、光拡散板503とプリズムフィルム504a,504bとの間に空気層が設けられていてもよい。
【0089】
〔偏光板〕
防眩性偏光板を構成する第2偏光板506は上述したものを用いることができる。また、第1偏光板505としては、従来公知のものを用いることができる。
【0090】
〔位相差フィルム〕
本発明の液晶表示装置は、図9に示されるように、位相差板508を備えることができる。図9において位相差板508は、第1偏光板505と液晶セル501との間に配置されている。この位相差板508は、液晶セル501の表面に対して垂直な方向に位相差がほぼゼロのものであり、真正面からは何ら光学的な作用を及ぼさず、斜めから見たときに位相差が発現し、液晶セル501で生じる位相差を補償するものである。これによって、より広い視野角が得られ、より優れた表示品位および色再現性が得られるようになる。位相差板508は、第1偏光板505と液晶セル501の間、および、第2偏光板506と液晶セル501の間の一方、または、両方に配置することができる。
【0091】
位相差板508としては、たとえば、ポリカーボネート樹脂や環状オレフィン系重合体樹脂をフィルムにし、このフィルムをさらに二軸延伸したものや、液晶性モノマーをフィルムに塗布し、光重合反応によってその分子配列を固定化したもの等が挙げられる。位相差板508は、液晶の配列を光学的に補償するものであるから、液晶配列と逆の屈折率特性のものを用いる。具体的にはTNモードの液晶セルには、たとえば、「WVフィルム」(富士フイルム株式会社製)、STNモードの液晶表示セルには、たとえば、「LCフィルム」(新日本石油株式会社製)、IPSモードの液晶表示セルには、たとえば、二軸性位相差フィルム、VAモードの液晶表示セルには、たとえば、AプレートおよびCプレートを組み合わせた位相差板や二軸性位相差フィルム、πセルモードの液晶表示セルには、たとえば、「OCB用WVフィルム」(富士フイルム株式会社製)等が好適に使用できる。
【実施例】
【0092】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。各種物性の測定方法は次のとおりである。
【0093】
(a)透光性微粒子を含有しない紫外線硬化性樹脂組成物の25℃における表面張力
英弘精機株式会社製「Contact Angle System OCA30L」を用い、ペンダント・ドロップ法(懸滴法)により測定した。
【0094】
(b)透光性微粒子の25℃における懸濁メタノール濃度下限値
図1に示される装置構成を有する株式会社レスカ製 粉体濡れ性試験機「WET−101P」を用い、上述の手順に従って懸濁メタノール濃度下限値を求めた。
【0095】
(c)透光性微粒子の重量平均粒径、粒度分布の標準偏差および変動係数
コールター原理(細孔電気抵抗法)に基づくコールターマルチサイザー(ベックマンコールター社製)を用いて測定した。
【0096】
(d)防眩層の層厚
得られた光学フィルムについて、接触式膜厚計〔NIKON社製 DIGIMICRO MH−15(本体)およびZC−101(カウンター)〕を用いて最大層厚を測定し、この値から、基材フィルムの厚み80μmを差し引くことにより防眩層の層厚を求めた。
【0097】
(e)光学フィルムのヘイズ
JIS K 7105に準拠し、ヘイズコンピュータ(スガ試験機社製HGM−2DP)を用いて、光学フィルムの任意の5点におけるヘイズを測定し、その平均値を光学フィルムのヘイズとした。なお、測定時におけるフィルムの反りを防止し、測定再現性を高めるため、測定用サンプルとして、光学的に透明な粘着剤を用いて、光学フィルムの基材フィルム側をガラス基板に貼合したものを用いた。
【0098】
<実施例1>
(1)防眩層形成用樹脂組成物の調製
ペンタエリスリトールトリアクリレート60重量部、および多官能ウレタン化アクリレート(ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応生成物)40重量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルに混合し、固形分濃度60重量%の紫外線硬化性樹脂組成物を得た。なお、該組成物からプロピレングリコールモノメチルエーテルを除去して紫外線硬化した後の硬化物の屈折率は1.53であった。
【0099】
次に、上記紫外線硬化性樹脂組成物の固形分100重量部に対して、透光性微粒子として架橋ポリスチレン系粒子「XX367K」(積水化成品工業株式会社製、重量平均粒径:7.0μm、粒度分布の標準偏差:0.55μm、変動係数:7.9%、屈折率:1.59)を25重量部、および光重合開始剤である「ルシリン TPO」(BASF社製、化学名:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)を5重量部添加し、固形分率が60重量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈して防眩層形成用樹脂組成物を調製した。
【0100】
架橋ポリスチレン系粒子「XX367K」の25℃における懸濁メタノール濃度下限値は、12.3重量%であった。また、透光性微粒子を含まないこと以外は当該樹脂組成物と同一の組成である組成物の25℃における表面張力は、28.2mN/mであった。
【0101】
(2)エンボス用金型の作製
直径200mmの鉄ロール(JISによるSTKM13A)の表面に銅バラードめっきが施されたものを用意した。銅バラードめっきは、銅めっき層/薄い銀めっき層/表面銅めっき層からなるものであり、めっき層全体の厚みは約200μmであった。その銅めっき表面を鏡面研磨し、さらにその研磨面に、ブラスト装置((株)不二製作所製)を用いて、第一の微粒子としてジルコニアビーズTZ−B125(東ソー(株)製、平均粒径:125μm)を、ブラスト圧力0.05MPa(ゲージ圧、以下同じ)、微粒子使用量16g/cm2(ロールの表面積1cm2あたりの使用量、以下同じ)でブラストし、表面に凹凸を形成した。その凹凸面に、ブラスト装置((株)不二製作所製)を用いて、第二の微粒子としてジルコニアビーズTZ−SX−17(東ソー(株)製、平均粒径:20μm)を、ブラスト圧力0.1MPa、微粒子使用量4g/cm2でブラストし、表面凹凸を微調整した。得られた凹凸つき銅めっき鉄ロールに対し、塩化第二銅液でエッチング処理を行なった(エッチング量:3μm)。その後、クロムめっき加工を行ない(クロムめっき厚み:4μm)、金型を作製した。得られた金型のクロムめっき面のビッカース硬度は1000であった。なお、ビッカース硬度は、超音波硬度計MIC10(Krautkramer社製)を用い、JIS Z 2244に準拠して測定した。
【0102】
(3)光学フィルムの作製
上記防眩層形成用樹脂組成物を、厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(基材フィルム)上に塗工し、80℃に設定した乾燥機中で1分間乾燥させた。乾燥後の基材フィルムを、上記(2)で作製した金型の凹凸面に、樹脂組成物層が金型側となるようにゴムロールで押し付けて密着させた。この状態で基材フィルム側より、強度20mW/cm2の高圧水銀灯からの光をh線換算光量で300mJ/cm2となるように照射して、樹脂組成物層を硬化させ、表面に凹凸を有する防眩層と基材フィルムとからなる、図4に示す構造の光学フィルムを得た。防眩層の層厚は14.0μmであった。
【0103】
<実施例2〜3、比較例1〜2>
透光性微粒子の種類および/または添加量を表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして防眩層形成用樹脂組成物を調製し、実施例1と同様にして光学フィルムを作製した。用いた透光性微粒子の詳細は次のとおりである。
【0104】
(1)SX713L−2:架橋ポリスチレン系粒子「SX713L−2」(綜研化学株式会社製、重量平均粒径:7.0μm、粒度分布の標準偏差:1.50μm、変動係数:21.4%、屈折率:1.59)。後述する「SX713L」を純水にて洗浄したものであり、25℃における懸濁メタノール濃度下限値は、8.5重量%であった。
【0105】
(2)XX366K:架橋ポリスチレン系粒子「XX366K」(積水化成品工業株式会社製、重量平均粒径:8.1μm、粒度分布の標準偏差:0.56μm、変動係数:6.9%、屈折率:1.59)。25℃における懸濁メタノール濃度下限値は、11.7重量%であった。
【0106】
(3)SX713L:架橋ポリスチレン系粒子「SX713L」(綜研化学株式会社製、重量平均粒径:7.0μm、粒度分布の標準偏差:1.50μm、変動係数:21.4%、屈折率:1.59)。25℃における懸濁メタノール濃度下限値は、0重量%であった(すなわち、純水に対して分散する)。
【0107】
(4)SX713L−3:架橋ポリスチレン系粒子「SX713L−3」(綜研化学株式会社製、重量平均粒径:7.0μm、粒度分布の標準偏差:1.50μm、変動係数:21.4%、屈折率:1.59)。上記「SX713L」をアセトンにて洗浄したものであり、25℃における懸濁メタノール濃度下限値は、23.6重量%であった。
【0108】
表1中、透光性微粒子の添加量は、紫外線硬化性樹脂組成物の固形分100重量部に対する重量部である。
【0109】
(ヘイズのムラおよび気泡混入の評価)
得られた光学フィルムにおける任意の1m2の範囲について、ヘイズのムラ(フィルムの濁りの程度のムラ)および防眩層における気泡混入の有無を目視で評価した。ヘイズのムラおよび気泡混入が確認されなかった場合を○、ヘイズのムラまたは気泡混入のいずれかが確認された場合を×とした。また、光学フィルムの上記測定方法に従うヘイズ値を表1に併せて示す。
【0110】
【表1】

【0111】
表1に示されるように、透光性微粒子不含有の樹脂組成物が所定の範囲内の表面張力を有し、かつ透光性微粒子の懸濁メタノール濃度下限値が所定の範囲内にある樹脂組成物によれば、光学フィルムのヘイズのムラおよび気泡混入を効果的に防止できることがわかる。一方、透光性微粒子の懸濁メタノール濃度下限値が所定の範囲内にない樹脂組成物を用いた比較例1および2においては、ヘイズのムラが発生した。
【符号の説明】
【0112】
10 容器、20 光源、30 検出器、40 スターラー、50 攪拌子、60 ポンプ、70 透光性微粒子、80 純水、90 メタノール、100,507 光学フィルム、101 基材フィルム、102 防眩層、103 透光性樹脂、104 透光性微粒子、105 透光性樹脂層、400 防眩性偏光板、401 偏光フィルム、402 保護フィルム、500 液晶表示装置、501 液晶セル、502 バックライト装置、503 光拡散板、504a,504b プリズムフィルム、505 第1偏光板、506 第2偏光板、508 位相差板、511a,511b 透明基板、512 液晶層、521 ケース、522 冷陰極管、541a,541b 線状プリズム、542a,542b 線状プリズムの稜線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性樹脂またはこれを形成する樹脂成分および溶剤を含む混合物と、透光性微粒子とからなる樹脂組成物であって、
前記混合物の25℃における表面張力は18mN/m以上35mN/m以下であり、
前記透光性微粒子は、その懸濁可能なメタノール水溶液のメタノール濃度の下限値が、25℃において1.0重量%以上15.0重量%未満の範囲内にある樹脂組成物。
【請求項2】
前記透光性微粒子が、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレートおよびポリスチレン−ポリ(メタ)アクリレート共重合体からなる群から選択されるいずれかの重合体から構成される請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記透光性微粒子の含有量が、前記透光性樹脂またはこれを形成する樹脂成分の100重量部に対して25重量部以上50重量部未満である請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記透光性微粒子の重量平均粒径が、5μm以上10μm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
基材フィルムと、前記基材フィルム上に積層され、請求項1〜4のいずれかの樹脂組成物から形成される防眩層とを有する光学フィルム。
【請求項6】
バックライト装置と、光偏向手段と、第1偏光板と、液晶セルと、第2偏光板と、請求項5に記載の光学フィルムとをこの順で備える液晶表示装置。
【請求項7】
前記光偏向手段は、前記第1偏光板に対向する表面に線状プリズムを複数有するプリズムフィルムを2枚有し、
一方のプリズムフィルムは、その線状プリズムの稜線の方向が前記第1偏光板の透過軸に略平行となるように配置され、他方のプリズムフィルムは、その線状プリズムの稜線の方向が前記第2偏光板の透過軸に略平行となるように配置される請求項6に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記バックライト装置と前記光偏向手段との間に、光拡散手段をさらに備える請求項6または7に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−224735(P2012−224735A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93134(P2011−93134)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】