説明

樹脂組成物、及び樹脂成形体

【課題】ポリ乳酸及びポリヒドロキシアルカノエートを含む組成で、耐加水分解性を実現した樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】樹脂組成物全体に対する含有量が60質量%以上95質量%以下である(A)ポリ乳酸及び(B)ポリヒドロキシアルカノエートと、樹脂組成物全体に対する含有量が4質量%以上35質量%以下である(C)ポリリン酸アンモニウムと、樹脂組成物全体に対する含有量が1質量%以上5質量%以下である(D)フェノール変性エポキシ化合物と、を含み、前記(A)ポリ乳酸の樹脂組成物全体に対する含有量が40質量%以上90質量%以下であり、前記(B)ポリヒドロキシアルカノエートの樹脂組成物全体に対する含有量が5質量%以上55質量%以下であり、前記(A)ポリ乳酸の前記(B)ポリヒドロキシアルカノエートに対する含有比が0.7以上18以下である樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、及び樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂組成物としては種々のものが提供され、各種用途に使用されている。特に家電製品や自動車の各種部品、筐体等に使用されたり、また事務機器、電子電気機器の筐体などの部品にも樹脂組成物が使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「(A)ポリマーブレンドの総重量に基づき、約60〜約80重量%の、約0℃未満のガラス転移温度を有する少なくとも1種の軟質生分解性ポリマー(A);及び(B)ポリマーブレンドの総重量に基づき、約40〜約20重量%の、約10℃より高いガラス転移温度を有する少なくとも1種の硬質生分解性ポリマー(B)を含んでなり、且つASTM D256によるノッチ付きアイゾッド衝撃強さが少なくとも7.5ft−lbs/inであるポリマーブレンド」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−515543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、ポリ乳酸及びポリヒドロキシアルカノエートを含む組成で、耐加水分解性を実現した樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
樹脂組成物全体に対する含有量が60質量%以上95質量%以下である(A)ポリ乳酸及び(B)ポリヒドロキシアルカノエートと、
樹脂組成物全体に対する含有量が4質量%以上35質量%以下である(C)ポリリン酸アンモニウムと、
樹脂組成物全体に対する含有量が1質量%以上5質量%以下である(D)フェノール変性エポキシ化合物と、
を含み、
前記(A)ポリ乳酸の樹脂組成物全体に対する含有量が40質量%以上90質量%以下であり、
前記(B)ポリヒドロキシアルカノエートの樹脂組成物全体に対する含有量が5質量%以上55質量%以下であり、
前記(A)ポリ乳酸の前記(B)ポリヒドロキシアルカノエートに対する含有比が0.7以上18以下である樹脂組成物。
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリヒドロキシブチレートとポリヒドロキシヘキサレートとの共重合体である請求項1に記載の樹脂組成物。
【0008】
請求項3に係る発明は、
ポリ乳酸の重量平均分子量が、30,000以上260,000以下である請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【0009】
請求項4に係る発明は、
ポリヒドロキシアルカノエートの重量平均分子量が、10,000以上450,000以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【0010】
請求項5に係る発明は、
樹脂成形体全体に対する含有量が60質量%以上95質量%以下である(A)ポリ乳酸及び(B)ポリヒドロキシアルカノエートと、
樹脂成形体全体に対する含有量が4質量%以上35質量%以下である(C)ポリリン酸アンモニウムと、
樹脂成形体全体に対する含有量が1質量%以上5質量%以下である(D)フェノール変性エポキシ化合物と、
を含み、
前記(A)ポリ乳酸の樹脂成形体全体に対する含有量が40質量%以上90質量%以下であり、
前記(B)ポリヒドロキシアルカノエートの樹脂成形体全体に対する含有量が5質量%以上55質量%以下であり、
前記(A)ポリ乳酸の前記(B)ポリヒドロキシアルカノエートに対する含有比が0.7以上18以下である樹脂成形体。
【0011】
請求項6に係る発明は、
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリヒドロキシブチレートとポリヒドロキシヘキサレートとの共重合体である請求項5に記載の樹脂成形体。
【0012】
請求項7に係る発明は、
ポリ乳酸の重量平均分子量が、30,000以上260,000以下である請求項5又は6に記載の樹脂成形体。
【0013】
請求項8に係る発明は、
ポリヒドロキシアルカノエートの重量平均分子量が、10,000以上450,000以下である請求項5〜7のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明よれば、ポリ乳酸及びポリヒドロキシアルカノエートを含む組成で、耐加水分解性を実現した樹脂組成物を提供することができる。
請求項2に係る発明によれば、ポリヒドロキシブチレートとポリヒドロキシヘキサレートとの共重合体以外のポリヒドロキシアルカノエートを含む場合に比べ、優れた耐加水分解性を実現した樹脂組成物を提供することができる。
請求項3に係る発明によれば、ポリ乳酸の重量平均分子量が上記範囲外の場合に比べ、優れた耐加水分解性を実現した樹脂組成物を提供することができる。
請求項4に係る発明によれば、ポリヒドロキシアルカノエートの重量平均分子量が上記範囲外の場合に比べ、優れた耐加水分解性を実現した樹脂組成物を提供することができる。
【0015】
請求項5に係る発明よれば、ポリ乳酸及びポリヒドロキシアルカノエートを含む組成で、耐加水分解性を実現した樹脂成形体を提供することができる。
請求項6に係る発明によれば、ポリヒドロキシブチレートとポリヒドロキシヘキサレートとの共重合体以外のポリヒドロキシアルカノエートを含む場合に比べ、優れた耐加水分解性を実現した樹脂成形体を提供することができる。
請求項7に係る発明によれば、ポリ乳酸の重量平均分子量が上記範囲外の場合に比べ、優れた耐加水分解性を実現した樹脂成形体を提供することができる。
請求項8に係る発明によれば、ポリヒドロキシアルカノエートの重量平均分子量が上記範囲外の場合に比べ、優れた耐加水分解性を実現した樹脂成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る樹脂成形体を備える電子・電気機器の部品の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の樹脂組成物及び樹脂成形体の一例である実施形態について説明する。
【0018】
[樹脂組成物]
本実施形態に係る樹脂組成物は、樹脂組成物全体に対する含有量が60質量%以上95質量%以下である(A)ポリ乳酸及び(B)ポリヒドロキシアルカノエートと、樹脂組成物全体に対する含有量が4質量%以上35質量%以下である(C)ポリリン酸アンモニウムと、樹脂組成物全体に対する含有量が1質量%以上5質量%以下である(D)フェノール変性エポキシ化合物と、を含んで構成されている。
そして、(A)ポリ乳酸の樹脂組成物全体に対する含有量が40質量%以上90質量%以下であり、(B)ポリヒドロキシアルカノエートの樹脂組成物全体に対する含有量が5質量%以上55質量%以下であり、(A)ポリ乳酸の(B)ポリヒドロキシアルカノエートに対する含有比が0.7以上18以下である。
【0019】
本実施形態に係る樹脂組成物では、上記組成により、耐加水分解性が実現される。
この理由は定かではないが、以下に示す理由によるものと考えられる
【0020】
従来、植物由来の樹脂組成物の樹脂成分としては、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエートが共に知られている。
また、ポリ乳酸及びポリヒドロキシアルカノエートは、共に単独では耐加水分解性に乏しいことも知られている。
【0021】
ところが、ポリ乳酸とポリヒドロキシアルカノエートとを上記含有量で混合すると、耐加水分解性が発現する。この耐加水分解性が発現する理由は、ポリ乳酸とポリヒドロキシアルカノエートとが類似の構造を有するため、特に脂肪族エステル部位が親和することで、疑似的なIPN(Inter Polymer Network)構造を形成するためと考えられる。つまり、疑似的なIPN構造が形成されると、両者分子に高密度の絡み合いが生じ、IPN構造の緻密さのため、末端に位置する水酸基が環境水の攻撃を受けにくくなり、耐加水分解性が向上すると考えられる。
【0022】
また、ポリ乳酸とポリヒドロキシアルカノエートとの組成において、ポリリン酸アンモニウムが存在すると、大気中の水分がポリリン酸アンモニウムに選択的に吸水され、ポリ乳酸とポリヒドロキシアルカノエートへの影響(つまり吸水)が少なくなると考えられる。
【0023】
さらに、ポリリン酸アンモニウムと共にフェノール変性エポキシ化合物が存在すると、ポリリン酸アンモニウムとポリ乳酸及びポリヒドロキシアルカノエートの極性基とが、フェノール変性エポキシ化合物と化学反応またはイオン結合が形成され、ポリリン酸アンモニウムとポリ乳酸及びポリヒドロキシアルカノエートとが親和し易くなると考えられる。
このため、ポリリン酸アンモニウムの樹脂組成物中への分散性が向上し、ポリリン酸アンモニウムの上記選択的な吸水の作用が大きくなると考えられる。
【0024】
以上から、本実施形態に係る樹脂組成物では、ポリ乳酸及びポリヒドロキシアルカノエートを含む組成で、耐加水分解性が実現されると考えられる。
その結果、本実施形態に係る樹脂組成物により、ポリ乳酸及びポリヒドロキシアルカノエートを含む組成で、耐加水分解性を実現した樹脂成形体が得られる。
【0025】
なお、ポリ乳酸及びポリヒドロキシアルカノエートは、共に単独では耐熱性にも乏しいことも知られているが、上記の通り本実施形態に係る樹脂組成物では、両者に疑似的なIPN構造が形成されると、両者分子に高密度の絡み合いが生じることから、耐熱性の向上も実現されていると考えられる。
その結果、本実施形態に係る樹脂組成物により、ポリ乳酸及びポリヒドロキシアルカノエートを含む組成で、耐熱性を実現した樹脂成形体も得られる。
【0026】
以下、本実施形態に係る樹脂組成物の各成分について説明する。
なお、本実施形態においては、ポリ乳酸及びポリヒドロキシアルカノエートの合計の樹脂組成物全体に対する含有量は、60質量%以上95質量%以下であり、ポリ乳酸のポリヒドロキシアルカノエートに対する含有比(質量比)は0.7以上18以下である。
【0027】
(ポリ乳酸)
ポリ乳酸は、植物由来であり、環境負荷の低減、具体的にはCOの排出量削減、石油使用量の削減効果がある。
【0028】
ポリ乳酸としては、乳酸の縮合体であれば、特に限定されるものではなく、例えば、L乳酸であっても、D乳酸であっても、それらが共重合やブレンドにより交じり合ったものでもよい。
【0029】
ポリ乳酸は、例えば、合成したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、ユニチカ(株)製のテラマックTE4000、TE7000、TE8000、三井化学(株)製のレイシアH100等が挙げられる。
ポリ乳酸は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
なお、ポリ乳酸は、例えば、乳酸モノマーと他のモノマーとの共重合体であってもよい。乳酸モノマーと共重合し得る他のモノマーとしては、例えば、ジカルボン酸類として、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−ジシクロヘキサン−ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、およびこれらのエステル形成誘導体等が挙げられる。また、ジオール類として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジ−、トリ−、テトラ−プロピレングリコール等が挙げられる。他のモノマーは、1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0031】
ポリ乳酸の重量平均分子量は、例えば、30,000以上260,000以下がよく、望ましくは40,000以上150,000以下である。
ポリ乳酸の重量平均分子量を上記範囲とすることにより、樹脂組成物の耐加水分解性が向上し易くなる。
【0032】
特に、ポリ乳酸の重量平均分子量を30,000以上とすることにより、樹脂組成物の耐熱性が向上し易くなる。
一方、ポリ乳酸の重量平均分子量を260,000以下とすることにより、IPN構造が形成され易く、耐熱性も耐加水分解性も向上し易くなる。
【0033】
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミッションクロマトグラフィー装置(島津製作所製Prominence GPC型)を用い、測定カラムにはShim−pack GPC−80Mを使用して測定された値である。以下同様である。
【0034】
ポリ乳酸の含有量は、樹脂組成物全体に対し、40質量%以上90質量%以下であることがよく、望ましくは50質量%以上80質量%以下である。
ここで、ポリ乳酸の含有量は、ポリヒドロキシアルカノエートとの質量比(ポリ乳酸/ポリヒドロキシアルカノエート)で、0.7以上18以下であるが、40/55以上90/5以下であることがよく、望ましくは、50/60以上80/30以上以下である。
ポリ乳酸の含有量を40質量%以上とすることにより、樹脂組成物の耐熱性が実現される。
ポリ乳酸の含有量を90質量%以下とすることにより、樹脂組成物の耐加水分解性が実現される。
【0035】
(ポリヒドロキシアルカノエート)
ポリヒドロキシアルカノエートとしては、ヒドロキシアルカノエートの重合体であれば、特に限定されないが、例えば、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシヘキサレート、ポリヒドロキシバリレート、ポリヒドロキシオクチレート、及びこれら2種以上の共重合体等が挙げられる。
これらの中でも、ポリ乳酸とのIPN構造の形成能力が高く、耐加水分解性及び耐熱性が向上する観点から、ポリヒドロキシアルカノエートは、ポリヒドロキシブチレートとポリヒドロキシヘキサレートとの共重合体がよい。
ポリヒドロキシアルカノエートは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
ポリヒドロキシアルカノエートの重量平均分子量は、例えば、10,000以上450,000以下がよく、望ましくは50,000以上200,000以下である。
ポリヒドロキシアルカノエートの重量平均分子量を上記範囲とすることにより、耐加水分解性が向上し易くなる。
【0037】
特に、ポリヒドロキシアルカノエートの重量平均分子量を10,000以上とすることにより、樹脂組成物の耐熱性が向上し易くなる。
一方、ポリ乳酸の重量分子量を450,000以下とすることにより、IPN構造が形成され易く、耐熱性も耐加水分解性も向上し易くなる。
【0038】
ポリヒドロキシアルカノエートの含有量は、樹脂組成物全体に対し、5質量%以上55質量%以下であることがよく、望ましくは30質量以上50質量%以下である。
ポリヒドロキシアルカノエートの含有量を5質量%以上とすることにより、樹脂組成物の耐加水分解性が実現される。
一方、ポリヒドロキシアルカノエートの含有量を55質量%以下とすることにより、樹脂組成物の耐熱性が実現される。
【0039】
(ポリリン酸アンモニウム)
ポリリン酸アンモニウムは、リン酸アンモニウムの重合体であれば、特に制限はない。
ポリリン酸アンモニウムの重量平均分子量も、特に制限はないが、例えば、300以上10000以下がよく、望ましくは1000以上5000以下である。
【0040】
ポリリン酸アンモニウムの含有量は、樹脂組成物全体に対し、例えば、4質量%以上35質量%以下であることが望ましく、8質量%以上20質量%以下であることがより望ましい。
ポリリン酸アンモニウムの含有量を4質量%以上とすることにより、樹脂組成物の耐加水分解性が向上し易くなる。
一方、ポリリン酸アンモニウムの含有量を35質量%以下とすることにより、シャルピー衝撃強度が向上し易くなる。
【0041】
(フェノール変性エポキシ化合物)
フェノール変性エポキシ化合物は、フェノールの芳香環の水素原子をエポキシ基で置換した化合物である。
フェノール変性エポキシ化合物としては、例えば、フェノール変性モノエポキシ化合物(フェノールの芳香環の水素原子1つをエポキシ基で置換した化合物:例えば、2−エポキシフェノール、4−エポキシフェノール、2,6−ジヒドロキシメチル−4−エポキシフェノール、ビス(3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)−エポキシ−メタン等)、フェノール変性ジエポキシ化合物(フェノールの芳香環の水素原子2つをエポキシ基で置換した化合物:例えば、エポキシ基を一つ持つ化合物のフェノール変性体であって、例えば、2、5−ジエポキシフェノール、2,6−ジヒドロキシメチル−4、5−エポキシフェノール、ビス(3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)−ジエポキシ−メタン等)等が挙げられる。
これらの中でも、ポリリン酸アンモニウムの分散性を向上させる観点(つまり樹脂組成物の耐加水分解性を向上させる観点)から、フェノール変性エポキシ化合物は、フェノール変性ジエポキシ化合物がよい。
【0042】
フェノール変性エポキシ化合物の含有量は、樹脂組成物全体に対し、例えば、1質量%以上5質量%以下であることが望ましく、2質量%以上4質量%以下であることがより望ましい。
フェノール変性エポキシ化合物の含有量を1質量%以上とすることにより、樹脂組成物の耐加水分解性が向上し易くなる。
一方、フェノール変性エポキシ化合物の含有量を4質量%以下とすることにより、シャルピー衝撃強度低下を防ぎ易くなる。
【0043】
(その他成分)
本実施形態に係る樹脂組成物は、必要に応じて、その他成分を含んで構成されていてもよい。
その他成分としては、例えば、難燃剤、相溶化剤、可塑剤、酸化防止剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、ドリップ防止剤、帯電防止剤、耐加水分解防止剤、充填剤、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミナ、ボロンナイトライド等)等が挙げられる。
【0044】
その他成分の含有量は、例えば、樹脂組成物全体に対して、0質量%以上10質量%以下であることがよく、望ましくは0質量%以上5質量%以下である。ここで、「0質量%」とはその他成分を含まないことを意味する。
【0045】
(樹脂組成物の製造方法)
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記各成分の混合物を溶融混練することにより製造される。
ここで、溶融混練の手段としては公知の手段を用いることができ、例えば、二軸押出し、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
【0046】
[樹脂成形体]
本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物を含んで構成されている。つまり、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物と同じ組成で構成されている。
具体的には、本実施形態に係る樹脂成形体は、例えば、本実施形態に係る樹脂組成物を射出成形により得られる。
なお、成形方法は、射出成形に限られず、他の成形方法(例えば、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーテイング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形などの成形方法)を適用してもよい。
【0047】
ここで、射出成形は、例えば、日精樹脂工業製NEX150、日精樹脂工業製NEX70000、東芝機械製SE50D等の市販の装置を用いて行ってもよい。
この際、シリンダ温度としては、170℃以上280℃以下とすることが望ましく、180℃以上270℃以下とすることがより望ましい。また、金型温度としては、40℃以上110℃以下とすることが望ましく、50℃以上110℃以下とすることがより望ましい。
【0048】
本実施形態に係る樹脂成形体は、電子・電気機器、家電製品、容器、自動車内装材などの用途に好適に用いられる。より具体的には、家電製品や電子・電気機器などの筐体、各種部品など、ラッピングフィルム、CD−ROMやDVDなどの収納ケース、食器類、食品トレイ、飲料ボトル、薬品ラップ材などであり、中でも、電子・電気機器の部品に好適である。
【0049】
図1は、本実施形態に係る樹脂成形体を備える電子・電気機器の部品の一例である画像形成装置を、前側から見た外観斜視図である。
図1の画像形成装置100は、本体装置110の前面にフロントカバー120a,120bを備えている。これらのフロントカバー120a,120bは、操作者が装置内を操作するよう開閉自在となっている。これにより、操作者は、トナーが消耗したときにトナーを補充したり、消耗したプロセスカートリッジを交換したり、装置内で紙詰まりが発生したときに詰まった用紙を取り除いたりする。図1には、フロントカバー120a,120bが開かれた状態の装置が示されている。
【0050】
本体装置110の上面には、用紙サイズや部数等の画像形成に関わる諸条件が操作者からの操作によって入力される操作パネル130、及び、読み取られる原稿が配置されるコピーガラス132が設けられている。また、本体装置110は、その上部に、コピーガラス132上に原稿を搬送する自動原稿搬送装置134を備えている。更に、本体装置110は、コピーガラス132上に配置された原稿画像を走査して、その原稿画像を表わす画像データを得る画像読取装置を備えている。この画像読取装置によって得られた画像データは、制御部を介して画像形成ユニットに送られる。なお、画像読取装置、及び制御部は、本体装置110の一部を構成する筐体150の内部に収容されている。また、画像形成ユニットは、着脱自在なプロセスカートリッジ142として筐体150に備えられている。プロセスカートリッジ142の着脱は、操作レバー144を回すことによって行われる。
【0051】
本体装置110の筐体150には、トナー収容部146が取り付けられており、トナー供給口148からトナーが補充される。トナー収容部146に収容されたトナーは現像装置に供給されるようになっている。
【0052】
一方、本体装置110の下部には、用紙収納カセット140a,140b,140cが備えられている。また、本体装置110には、一対のローラで構成される搬送ローラが装置内に複数個配列されることによって、用紙収納カセットの用紙が上部にある画像形成ユニットまで搬送される搬送経路が形成されている。なお、各用紙収納カセットの用紙は、搬送経路の端部近傍に配置された用紙取出し機構によって1枚ずつ取り出されて、搬送経路へと送り出される。また、本体装置110の側面には、手差しの用紙供給部136が備えられており、ここからも用紙が供給される。
【0053】
画像形成ユニットによって画像が形成された用紙は、本体装置110の一部を構成する筐体152によって支持された相互に接触する2個の定着ロールの間に順次移送された後、本体装置110の外部に排紙される。本体装置110には、用紙供給部136が設けられている側と反対側に用紙排出部138が複数備えられており、これらの用紙排出部に画像形成後の用紙が排出される。
【0054】
画像形成装置100において、例えば、フロントカバー120a,120b、プロセスカートリッジ142の外装、筐体150、及び筐体152に、本実施形態に係る樹脂成形体が用いられている。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。尚、以下において「部」は、特に断りのない限り質量基準である。
【0056】
(実施例1〜19、比較例1〜9)
表1又は表2に示す組成比(表1又は表2中の数値は質量%である)で、2軸混練装置(東芝機械社、TEM3000)を用い、表3に示す混練条件のシリンダ温度にて混練し、樹脂組成物のペレットを得た。
【0057】
次に、このペレットを射出成形機(日精樹脂工業社製、NEX80)を用い、表2に示す成形条件のシリンダ温度及び金型温度にて射出成形し、ISO多目的ダンベル試験片(ISO527引張試験及びISO178曲げ試験に対応する試験部幅10mm、厚み4mm、長さ80mmのダンベル試験片)を得た。
【0058】
(評価)
各例において、得られた成形体(ISO多目的ダンベル試験片)について、以下の評価を行った。結果を表3に示す。
【0059】
−耐加水分解性−
ISO多目的ダンベル試験片をISO179の方法に準拠して加工し、ノッチ付シャルピー衝撃強度測定試験片を得た。
そして、この測定試験片を60℃/85%RHの環境下に暴露し、暴露前、500時間、及び1000時間暴露後のシャルピー衝撃強度を測定して、耐加水分解性として評価した。
なお、シャルピー衝撃強度は、ISO179に従い衝撃試験装置(東洋精機製、DG−5)にて測定した。
【0060】
−耐熱性−
得られたISO多目的ダンベル試験片を用い、ISO75の方法に準拠し、HDT測定装置(東洋精機社製、HDT6)にて、1.8MPaの荷重たわみ温度を測定し、耐熱性を評価した。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
【表3】

【0064】
上記結果から、本実施例は、比較例に比べ、耐加水分解性、及び耐熱性について、共に良好であることがわかる。
【0065】
ここで、各表中の材料種の詳細につき示す。
(ポリ乳酸)
・「テラマックTE2000」ユニチカ社製(重量平均分子量Mw=120,000)
・「3051D」ネイチャーワークス社製(重量平均分子量Mw=80,000)
・「3251D」ネイチャーワークス社製(重量平均分子量Mw=25,000)
・「4032D」ネイチャーワークス社製(重量平均分子量Mw=220,000)
【0066】
(ポリヒドロキシアルカノエート)
−PHBH(ポリ3−ヒドロキシブチレートとポリ3−ヒドロキシヘキサノエートとの共重合体)−
・合成品1:下記合成法による合成品(重量平均分子量Mw=250,000)
環状ヒドロキシブチレート二量体と環状ヒドロキシヘキサノエート二量体を89/11のモル比でクロロホルム中に溶解し、酸化錫を上記化合物合計100質量部に対して0.1質量部加え、40℃で200時間撹拌した。得られた高分子化合物を水中に再沈殿した。濾過物を160℃で1時間撹拌し、所望の分子量の合成品1(PHBH)を得た
・合成品2:下記合成法による合成品(重量平均分子量Mw=50,000)
濾過物の撹拌を170℃1時間とした以外は合成品1と同様にして合成品2を得た。
・合成品3:下記合成法による合成品(重量平均分子量Mw=8,000)
濾過物の撹拌を170℃2.5時間とした以外は合成品1と同様にして合成品2を得た。
・合成品4:下記合成法による合成品(重量平均分子量Mw=480,000)
濾過物の撹拌を150℃20分とした以外は合成品1と同様にして合成品2を得た。
【0067】
−PHB(ポリ3−ヒドロキシブチレート)−
・ポリヒドロキシブチレート:「バイオポール30」日本モンサント社製(重量平均分子量Mw=40,000)
【0068】
−PHBV(ポリ3−ヒドロキシブチレートとポリ3−ヒドロキシバレレートとの共重合体−
・合成品5:下記合成法による合成品(重量平均分子量Mw=85,000)
環状ヒドロキシブチレート二量体と環状ヒドロキバレレート二量体を89/11のモル比でクロロホルム中に溶解し、酸化錫を上記化合物合計100質量部に対して0.1質量部加え、40℃で200時間撹拌した。得られた高分子化合物を水中に再沈殿した。濾過物を150℃で10分撹拌し、所望の分子量の合成品5(PHBV)を得た。
【0069】
(ポリリン酸アンモニウム)
・「エクソリットAP422」クラリアント社製
・「テラージュC80」ブーデンハイム社製
【0070】
(フェノール変性エポキシ化合物)
・「エピコート828」日本ポリウレタン社製(ビスフェノールA型ジエポキシ化合物)
・「N−740」DIC社製(ノボラック型エポキシ化合物)
【符号の説明】
【0071】
100 画像形成装置
110 本体装置
120a、120b フロントカバー
136 用紙供給部
138 用紙排出部
142 プロセスカートリッジ
150、152 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物全体に対する含有量が60質量%以上95質量%以下である(A)ポリ乳酸及び(B)ポリヒドロキシアルカノエートと、
樹脂組成物全体に対する含有量が4質量%以上35質量%以下である(C)ポリリン酸アンモニウムと、
樹脂組成物全体に対する含有量が1質量%以上5質量%以下である(D)フェノール変性エポキシ化合物と、
を含み、
前記(A)ポリ乳酸の樹脂組成物全体に対する含有量が40質量%以上90質量%以下であり、
前記(B)ポリヒドロキシアルカノエートの樹脂組成物全体に対する含有量が5質量%以上55質量%以下であり、
前記(A)ポリ乳酸の前記(B)ポリヒドロキシアルカノエートに対する含有比が0.7以上18以下である樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリヒドロキシブチレートとポリヒドロキシヘキサレートとの共重合体である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
ポリ乳酸の重量平均分子量が、30,000以上260,000以下である請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
ポリヒドロキシアルカノエートの重量平均分子量が、10,000以上450,000以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂成形体全体に対する含有量が60質量%以上95質量%以下である(A)ポリ乳酸及び(B)ポリヒドロキシアルカノエートと、
樹脂成形体全体に対する含有量が4質量%以上35質量%以下である(C)ポリリン酸アンモニウムと、
樹脂成形体全体に対する含有量が1質量%以上5質量%以下である(D)フェノール変性エポキシ化合物と、
を含み、
前記(A)ポリ乳酸の樹脂成形体全体に対する含有量が40質量%以上90質量%以下であり、
前記(B)ポリヒドロキシアルカノエートの樹脂成形体全体に対する含有量が5質量%以上55質量%以下であり、
前記(A)ポリ乳酸の前記(B)ポリヒドロキシアルカノエートに対する含有比が0.7以上18以下である樹脂成形体。
【請求項6】
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリヒドロキシブチレートとポリヒドロキシヘキサレートとの共重合体である請求項5に記載の樹脂成形体。
【請求項7】
ポリ乳酸の重量平均分子量が、30,000以上260,000以下である請求項5又は6に記載の樹脂成形体。
【請求項8】
ポリヒドロキシアルカノエートの重量平均分子量が、10,000以上450,000以下である請求項5〜7のいずれか1項に記載の樹脂成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2013−82839(P2013−82839A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225044(P2011−225044)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】