説明

樹脂組成物、発泡成形体、および、マスターバッチ

【課題】発泡成形した際に金型等の汚染が防止できる樹脂組成物を提供すること。さらに、前記樹脂組成物を用いて製造された発泡成形体、および、前記樹脂組成物に使用されるマスターバッチを提供すること。
【解決手段】ポリオレフィン樹脂(A) 100質量部と、発泡剤(B) 0.1〜10質量部と、(メタ)アクリル酸単独重合体、(メタ)アクリル酸エステル単独重合体、および、エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種の重合体(C) 0.1〜10質量部と、を含むことを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、発泡成形体、および、マスターバッチに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂は、機械的性質、耐薬品性等に優れ、経済性とのバランスにおいて極めて有用なため各成形分野に広く用いられている。
ポリオレフィン樹脂を発泡成形した発泡成形体は、自動車分野での緩衝材や、吸音材、透水用ドレン材、各種充填剤等に用いられている。ポリオレフィン樹脂の発泡成形体が得られる組成物またはポリオレフィン成形発泡体を得る手段として、例えばメタロセン担持型触媒を用いて製造されたプロピレンおよびα,ω−ジエンからなる共重合体、該共重合体に発泡剤が含有されたポリプロピレン系樹脂組成物、該組成物を加熱、溶融、混練、発泡成形した発泡体および該発泡体を成形した発泡成形体が開示されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献2には、熱可塑性樹脂に、(A)クエン酸モノナトリウム、またはクエン酸モノナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合物、および(B)エチレンアクリル酸共重合体、エチレンアクリル酸エステル共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体およびエチレンメタクリル酸エステル共重合体から選ばれる1種以上の共重合体を混合して樹脂混合物を得、該樹脂混合物を前記(A)クエン酸モノナトリウム、またはクエン酸モノナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合物の分解温度以上に加熱して成形する熱可塑性樹脂発泡成形品の製造方法であって、前記(B)共重合体の配合量が、前記(A)クエン酸モノナトリウム、またはクエン酸モノナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合物100質量部に対して、2〜400質量部であることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡成形品の製造方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−316510号公報
【特許文献2】特開2004−285345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発泡成形体を製造する際には発泡剤を使用するが、前記発泡剤およびその分解残渣が成形金型に付着し、発泡成形品の品質が悪化することがあった。
特許文献2に記載の製造方法は、クエン酸モノナトリウムの分解残渣を低減することができるものの、より高い金型等の汚染防止効果が求められている。
【0006】
本発明の目的は、発泡成形した際に金型等の汚染が防止できる樹脂組成物を提供することである。さらに本発明は、前記樹脂組成物を用いて製造された発泡成形体、および、前記樹脂組成物に使用されるマスターバッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は、以下の手段により達成される。
<1> ポリオレフィン樹脂(A) 100質量部と、発泡剤(B) 0.1〜10質量部と、(メタ)アクリル酸単独重合体、(メタ)アクリル酸エステル単独重合体、および、エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種の重合体(C) 0.1〜10質量部と、を含むことを特徴とする樹脂組成物、
<2> 上記<1>に記載の樹脂組成物を発泡させてなることを特徴とする発泡成形体、
<3> 発泡剤(B) 1〜99質量%と、(メタ)アクリル酸単独重合体、(メタ)アクリル酸エステル単独重合体、および、エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(C) 99〜1質量%と、を含むことを特徴とするマスターバッチ(I)、
<4> ポリオレフィン樹脂(A) 90〜99.9質量%と、(メタ)アクリル酸単独重合体、(メタ)アクリル酸エステル単独重合体、および、エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(C) 10〜0.1質量%と、を含むことを特徴とするマスターバッチ(II)。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発泡成形した際に金型等の汚染が防止できる樹脂組成物を提供することができる。さらに本発明によれば、前記樹脂組成物を用いて製造された発泡成形体、および、前記樹脂組成物に使用されるマスターバッチを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂(A) 100質量部と、発泡剤(B) 0.1〜10質量部と、(メタ)アクリル酸単独重合体、(メタ)アクリル酸エステル単独重合体、および、エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種の重合体(C) 0.1〜10質量部と、を含むことを特徴とする。
なお、数値範囲を示す「0.1〜10質量部」等の記載は、「0.1質量部以上、10質量部以下」と同義であり、特に断りのない限り他の数値範囲の記載も同様とする。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
<ポリオレフィン樹脂(A)>
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂(A)を含有する。
本発明に用いられるポリオレフィン樹脂(A)としては、高密度ポリエチレン、エチレンとα−オレフィンの共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン、高圧ラジカル重合法により製造される低密度ポリエチレン、プロピレンの単独重合体、ブテンの単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィン三元共重合体、少なくとも二段階以上の多段階で主にプロピレンからなる共重合体成分とプロピレンとエチレンおよび/または炭素数4〜12のα−オレフィンとからなる共重合体成分とを重合させることによって製造されるプロピレン−エチレン(−α−オレフィン)ブロック共重合体等が挙げられる。ここで、「プロピレン−エチレン(−α−オレフィン)ブロック共重合体」とは、主にプロピレンからなる共重合体成分と、プロピレンおよびエチレンからなる共重合体成分とを重合させることによって製造されるプロピレン−エチレンブロック共重合体、主にプロピレンからなる共重合体成分とプロピレンおよびα−オレフィンからなる共重合体成分とを重合させることによって製造されるプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体、並びに、主にプロピレンからなる共重合体成分と、プロピレン、エチレンおよびα−オレフィンからなる共重合体成分とを重合させることによって製造されるプロピレン−エチレン−α−オレフィンブロック共重合体の総称である。
α−オレフィンとしては、炭素数4〜12のα−オレフィンが好ましく、より好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。これらのポリオレフィン樹脂は単独で用いてもよく、2種以上をブレンドしてもよい。
【0011】
ポリオレフィン樹脂として、好ましくはポリプロピレン樹脂であり、より好ましくはプロピレンの単独重合体、エチレンから誘導される繰り返し単位の含有量が10質量%以下であるプロピレン−エチレンランダム共重合体、炭素数4〜12のα−オレフィンから誘導される繰り返し単位の含有量が30質量%以下であるプロピレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとのプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、またはエチレンから誘導される繰り返し単位の含有量が10質量%以下で炭素数4〜12のα−オレフィンから誘導される繰り返し単位の含有量が30質量%以下であるプロピレンとエチレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとのプロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、または少なくとも二段階以上の多段階で主にプロピレンからなる共重合体成分とプロピレンとエチレンおよび/または炭素数4〜12のα−オレフィンとからなる共重合体成分を重合させることによって製造されるプロピレン−エチレン(−α−オレフィン)ブロック共重合体である。なお、プロピレン−エチレン(−α−オレフィン)ブロック共重合体中のエチレンおよび/または炭素数4〜12のα−オレフィンの含有量の合計は、0.1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。
【0012】
以下に好ましいポリオレフィン樹脂について詳述する。
これらの中でも、ポリオレフィン樹脂(A)は、プロピレン重合体(A−a)、または、プロピレン重合体(A−a)とエチレン−α−オレフィン共重合体(A−b)との混合物であることが好ましい。
【0013】
〔プロピレン重合体(A−a)〕
前記プロピレン重合体(A−a)は、プロピレン単独重合体(A−1)および/またはプロピレン−エチレン共重合体(A−2)であることが好ましく、プロピレン単独重合体、または、プロピレン単独重合体とプロピレン−エチレン共重合体の混合物であることがより好ましい。
本発明に用いることができるプロピレン重合体(A−a)とは、プロピレン単独重合体(A−1)、プロピレン−エチレン共重合体(A−2)の他、プロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体を含む。
【0014】
プロピレン−エチレン共重合体(A−2)としては、プロピレン−エチレンランダム共重合体(A−2−1)、または、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)が挙げられる。プロピレン−エチレンブロック共重合体とは、プロピレン単独重合体成分と、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分とからなる共重合体である。
プロピレン−α−オレフィン共重合体としては、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、または、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体が挙げられる。プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体とは、プロピレン単独重合体成分と、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分とからなる共重合体である。なお、本発明におけるα−オレフィンとしては、炭素数4以上のα−オレフィンが挙げられる。
プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体としては、プロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、または、プロピレン−エチレン−α−オレフィンブロック共重合体が挙げられる。プロピレン−エチレン−α−オレフィンブロック共重合体とは、プロピレン単独重合体成分と、プロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体成分とからなる共重合体である。
プロピレン−α−オレフィン共重合体およびプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体で用いられるα−オレフィンとしては、炭素数が4〜20のα−オレフィンが挙げられ、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。プロピレン重合体(A−a)は2種類以上併用してもよい。
好ましくは本発明の樹脂組成物は、プロピレン重合体(A−a)として、プロピレン単独重合体(A−1)およびプロピレン−エチレン共重合体(A−2)を含む。
【0015】
プロピレン重合体(A−a)として好ましくは、剛性、耐熱性または硬度を高めるという観点から、プロピレン単独重合体(A−1)およびプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)である。
【0016】
プロピレン単独重合体(A−1)の13C−NMRによって測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率は0.95以上が好ましく、さらに好ましくは0.98以上である。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)のプロピレン単独重合体成分の、13C−NMRによって測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率は0.95以上が好ましく、さらに好ましくは0.98以上である。
【0017】
アイソタクチック・ペンタッド分率とは、プロピレン重合体分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率であり、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖(以下、mmmmと表す。)の中にあるプロピレンモノマー単位の分率である。アイソタクチック・ペンタッド分率の測定方法は、A.ZambelliらによってMacromolecules,6,925(1973)に記載されている方法、すなわち13C−NMRによって測定される方法である(ただし、NMR吸収ピークの帰属は、その後発刊されたMacromolecules,8,687(1975)に基づいて決定される。)。
【0018】
具体的には、13C−NMRスペクトルによって測定されるメチル炭素領域の吸収ピークの面積に対する、mmmmピークの面積の割合が、アイソタクチック・ペンタッド分率である。この方法によって測定された英国 NATIONAL PHYSICAL LABORATORYのNPL標準物質 CRM No.M19−14Polypropylene PP/MWD/2のアイソタクチック・ペンタッド分率は、0.944であった。
【0019】
上記プロピレン単独重合体(A−1)の135℃のテトラリン溶媒中で測定される極限粘度数(「固有粘度」と同じ)([η]P)、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)のプロピレン単独重合体成分の135℃のテトラリン溶媒中で測定される極限粘度数([η]P)、プロピレン−エチレンランダム共重合体(A−2−1)の135℃のテトラリン溶媒中で測定される極限粘度数([η])は、それぞれ好ましくは、0.7〜5.0dl/gであり、より好ましくは0.8〜4.0dl/gであり、さらに好ましくは0.8〜2.0dl/gである。
【0020】
また、プロピレン単独重合体(A−1)、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)のプロピレン単独重合体成分、プロピレン−エチレンランダム共重合体(A−2−1)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布(Q値、Mw/Mn)は、それぞれ好ましくは3〜7である。上記の数値の範囲内であると、得られる発泡成形体におけるシルバーストリークの発生量が少ないため好ましい。
【0021】
上記プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分に含有されるエチレン含有量は好ましくは20〜65質量%、より好ましくは25〜50質量%である(ただし、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分の全量を100質量%とする。)。上記の数値の範囲内であると、得られる発泡成形体のシルバーストリークの発生量が少ないため好ましい。
【0022】
上記プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分の135℃のテトラリン溶媒中で測定される極限粘度数([η]EP)は、好ましくは1.5〜12dl/gであり、より好ましくは2〜8dl/gであり、さらに好ましくは4〜6dl/gである。上記の数値の範囲内であると、発泡成形体のセルの微細性が高まるため好ましい。
【0023】
上記プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)を構成するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分の含有量は、好ましくは10〜60質量%であり、より好ましくは10〜40質量%である。
【0024】
上記プロピレン単独重合体(A−1)のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.1〜400g/10分であり、より好ましくは1〜300g/10分である。ただし、測定温度は230℃で、荷重は2.16kgである。本発明におけるメルトフローレート(MFR)の測定は、JIS K7210に規定された方法に準じて行うことが好ましく、以下同様である。なお、「(230℃、2.16kg荷重)」等の記載は、JIS K7210に規定された方法に準じて行ったメルトフローレートの測定における測定温度が230℃、測定荷重が2.16kgであることを意味し、特に断りのない限り以下同様とする。
【0025】
上記プロピレン−エチレン共重合体(A−2)のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.1〜200g/10分であり、より好ましくは5〜150g/10分である。ただし、測定温度は230℃で、荷重は2.16kgである。
また、プロピレン重合体(A−a)のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.1〜200g/10分であり、より好ましくは5〜150g/10分である。ただし、測定温度は230℃で、荷重は2.16kgである。上記の数値の範囲内であると、発泡成形性に優れるため好ましい。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂(A)の合計を100質量%として、プロピレン重合体(A−a)を30〜100質量%含むことが好ましく、40〜90質量%含むことがより好ましく、50〜80質量%含むことがさらに好ましい。プロピレン重合体(A−a)の含有量が30質量%以上であると、発泡成形体の剛性に優れるので好ましい。
【0027】
上記プロピレン重合体(A−a)の製造方法としては、例えば、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法によって製造する方法が挙げられる。
上記プロピレン重合体(A−a)の製造方法で用いられる公知の重合触媒としては、例えば、(1)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分、(2)有機アルミニウム化合物、および、(3)電子供与体成分からなる触媒系、が挙げられる。この触媒の製造方法としては、例えば、特開平1−319508号公報、特開平7−216017号公報や特開平10−212319号公報に記載されている製造方法が挙げられる。
【0028】
上記の製造方法で用いられる公知の重合方法としては、例えば、バルク重合法、溶液重合法、スラリー重合法、気相重合法等が挙げられる。これらの重合方法は、バッチ式、連続式のいずれでもよく、また、これらの重合方法を任意に組み合わせてもよい。
【0029】
上記のプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)の製造方法として、好ましくは、前記の固体触媒成分(1)と、有機アルミニウム化合物(2)と、電子供与体成分(3)とからなる触媒系の存在下に少なくとも2槽からなる重合槽を直列に配置し、上記プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)のプロピレン単独重合体成分を製造した後、製造された前記成分を次の重合槽に移し、その重合槽でプロピレン−エチレンランダム共重合体成分を連続して製造して、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)を製造する方法である。
上記の製造方法で用いられる固体触媒成分(1)、有機アルミニウム化合物(2)および電子供与体成分(3)の使用量や、各触媒成分を重合槽へ供給する方法は、適宜、決めればよい。
【0030】
重合温度は、−30〜300℃であることが好ましく、より好ましくは20〜180℃である。重合圧力は、好ましくは常圧〜10MPaであり、より好ましくは0.2〜5.0MPaである。分子量調整剤として、例えば、水素を用いてもよい。
【0031】
上記プロピレン重合体(A−a)の製造において、本重合を実施する前に、公知の方法によって、予備重合を行ってもよい。公知の予備重合の方法としては、例えば、固体触媒成分(1)および有機アルミニウム化合物(2)の存在下、少量のプロピレンを供給して溶媒を用いてスラリー状態で実施する方法が挙げられる。
【0032】
〔エチレン−α−オレフィン共重合体(A−b)〕
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂(A)として、エチレン−α−オレフィン共重合体(A−b)を含有することが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂(A)の合計を100質量%として、エチレン−α−オレフィン共重合体(A−b)を0〜70質量%含むことが好ましく、10〜60質量%含むことがより好ましく、20〜50質量%含むことがさらに好ましい。
【0033】
本発明で用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体(A−b)は、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、または、これらの混合物が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
エチレン−α−オレフィン共重合体(A−b)に用いられるα−オレフィンとしては、炭素数4〜20のα−オレフィンが挙げられ、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。α−オレフィンとして、好ましくは、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の炭素数4〜12のα−オレフィンである。
【0035】
エチレン−α−オレフィン共重合体(A−b)の製造方法としては、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等によって、所定のモノマーを、メタロセン系触媒を用いて重合する方法が挙げられる。
メタロセン系触媒としては、例えば、特開平3−163088号公報、特開平4−268307号公報、特開平9−12790号公報、特開平9−87313号公報、特開平11−80233号公報、特表平10−508055号公報等に記載されているメタロセン系触媒が挙げられる。
メタロセン系触媒を用いるエチレン−α−オレフィン共重合体(A−b)の製造方法として、好ましくは、欧州特許出願公開第1211287号明細書に記載されている方法が挙げられる。
【0036】
エチレン−α−オレフィン共重合体(A−b)に含有されるエチレン含量は、好ましくは20〜95質量%であり、より好ましくは30〜90質量%であり、α−オレフィン含量は、好ましくは80〜5質量%であり、より好ましくは70〜10質量%である。
【0037】
エチレン−α−オレフィン共重合体(A−b)の密度は、好ましくは0.85〜0.89g/cm3であり、より好ましくは0.85〜0.88g/cm3であり、さらに好ましくは0.86〜0.88g/cm3である。密度が0.85g/cm3以上であると、発泡成形性に優れるので好ましい。また、0.89g/cm3以下であると発泡成形体のセルの均一性、微細性に優れるので好ましい。
【0038】
エチレン−α−オレフィン共重合体(A−b)のメルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)は、0.1g/10分以上40g/10分以下であることが好ましく、1〜40g/10分がより好ましい。メルトフローレートが0.1g/10分以上であると、得られた発泡成形体のシルバーストリークが抑制できるので好ましい。
【0039】
<発泡剤(B)>
本発明の樹脂組成物は、発泡剤(B)を含有する。
本発明で使用される発泡剤(B)としては、化学発泡剤、物理発泡剤などの公知の発泡剤が挙げられる。
本発明で使用される発泡剤は特に限定されるものではなく、公知の化学発泡剤や物理発泡剤を用いることができる。発泡剤の添加量は、ポリオレフィン樹脂(A) 100質量部に対して0.1〜10質量部であり、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.1〜2.5質量部である。
発泡剤(B)の添加量がポリオレフィン樹脂(A) 100質量部に対して10質量部を超えると、成形体にシルバーマークやディンプルが発生し、外観が劣る場合がある。また、0.1質量部未満であると、十分な発泡性を得にくくなることがある。
また、化学発泡剤を添加する場合は、樹脂組成物に化学発泡剤をそのまま添加してもよいが、ポリオレフィン樹脂に化学発泡剤が混練され、化学発泡剤の含有量が20〜80重量%としたマスターバッチとして樹脂組成物に添加してもよい。
【0040】
化学発泡剤としては、無機化合物であっても有機化合物であってもよく、2種以上を併用してもよい。無機化合物としては、炭酸アンモニウム等の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素塩などが挙げられる。
有機化合物としては、(a)有機酸およびその塩:クエン酸、コハク酸、味ピン酸、酒石酸、安息香酸などのカルボン酸およびその塩、(b)N−ニトロソ化合物:N,N'−ジニトロソテレフタルアミド、N,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、(c)アゾ化合物:アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート、(d)スルフォニルヒドラジド化合物:ベンゼンスルフォニルヒドラジド、トルエンスルフォニルヒドラジド、p,p'−オキシビス(ベンゼンスルフェニルヒドラジド)、ジフェニルスルフォン−3,3'−ジスルフォニルヒドラジド、(e)アジド化合物:カルシウムアジド、4,4'−ジフェニルジスルフォニルアジド、p−トルエンスルフォニルアジド、等が挙げられる。
物理発泡剤としては、窒素、二酸化炭素等の不活性ガスや揮発性有機化合物などが挙げられる。中でも超臨界状態の二酸化炭素、窒素、あるいはこれらの混合物を使用することが好ましい。物理発泡剤は2種以上を併用してもよく、化学発泡剤と物理発泡剤とを併用してもよい。
【0041】
これらの中でも、本発明において発泡剤(B)は、化学発泡剤であることが好ましい。本発明の樹脂組成物は、化学発泡剤を使用した場合においても、成形金型への化学発泡剤残渣の堆積を防ぐことができる。
特に、本発明において発泡剤(B)は、クエン酸等の有機酸またはその塩、あるいは、クエン酸等の有機酸またはその塩と炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素塩との混合物であることがより好ましい。
【0042】
<(メタ)アクリル酸単独重合体、(メタ)アクリル酸エステル単独重合体、および、エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種の重合体(C)>
本発明の樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸単独重合体、(メタ)アクリル酸エステル単独重合体、および、エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種の重合体(以下、「特定重合体」ともいう。)(C)を含有する。
なお、本発明において「(メタ)アクリル酸」の表記は、メタクリル酸およびアクリル酸の両者を指す省略的な表記である。
以下、それぞれについて説明する。
【0043】
〔(メタ)アクリル酸単独重合体〕
本発明において、特定重合体として、メタクリル酸単独重合体、アクリル酸単独重合体を使用することができる。
前記メタクリル酸単独重合体およびアクリル酸単独重合体のMFR(230℃、3.8kg荷重)は0.1以上400以下であることが好ましく、0.1以上100以下であることがより好ましく、0.1以上20以下であることが特に好ましい。
【0044】
〔(メタ)アクリル酸エステル単独重合体〕
本発明において、特定重合体として、メタクリル酸エステル単独重合体、アクリル酸エステル単独重合体を使用することができる。
前記(メタ)アクリル酸エステル単独重合体は、下記式(1)で表されるモノマー単位を有することが好ましい。
【0045】
【化1】

【0046】
式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、を表す。
前記アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基は、直鎖状、分岐状および環状のいずれでもよい。また、前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、シアノ基が例示できる。該置換基は、さらに前記置換基、炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよい。
前記アリール基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基が例示できる。また、前記置換基はさらに前記置換基で置換されていてもよい。
【0047】
式(1)において、R2は、炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基が例示でき、これらの中でもメチル基およびエチル基がより好ましい。
すなわち、本発明において、(メタ)アクリル酸エステル単独重合体は、(メタ)アクリル酸メチルまたは(メタ)アクリル酸エチルであることが好ましい。
【0048】
(メタ)アクリル酸エステル単独重合体のMFR(230℃、3.8kg荷重)は、0.1以上400以下であることが好ましく、0.1以上100以下であることがより好ましく、0.1以上20以下であることが特に好ましい。
【0049】
〔エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体〕
本発明において、特定重合体として、エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体を使用することができる。
前記エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体を構成するカルボン酸ビニルエステルとしては、炭素数1〜4の短鎖脂肪族ビニル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等)、炭素数5〜20の長鎖脂肪酸ビニル(ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル等)、芳香族置換脂肪族ビニル(フェニル酢酸ビニル等)、芳香族モノカルボン酸ビニルエステル(安息香酸ビニル等)が例示でき、これらを2種以上使用してもよい。
これらの中でも、カルボン酸ビニルエステルとしては、炭素数1〜4の短鎖脂肪族ビニルが好ましく、特に好ましくは酢酸ビニルである。
【0050】
前記エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体において、エチレンとカルボン酸ビニルエステルの共重合比は、エチレン:カルボン酸ビニルエステル(質量比)=99.9:0.1〜50:50であることが好ましく、より好ましくは99:1〜60:40であり、さらに好ましくは95:5〜70:30である。
【0051】
前記エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体のMFR(190℃、2.16kg荷重)は、0.1以上400以下であることが好ましく、0.5以上100以下であることがより好ましく、1以上30以下であることが特に好ましい。
【0052】
これらの中でも、特定重合体としてより好ましくは(メタ)アクリル酸エステル単独重合体およびエチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体であり、メタクリル酸メチル単独重合体およびエチレン−酢酸ビニル共重合体がさらに好ましい。
【0053】
本発明の樹脂組成物は、特定重合体をポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部を含有する。好ましくは0.1〜5質量部であり、さらに好ましくは0.1〜3質量部である。
前記特定重合体の含有量がポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.1質量部未満であると、本発明の効果を奏することができず、金型への発泡剤の堆積を抑制することができない。また、前記含有量が10質量部を超えると、得られる成形体は十分な剛性得ることが困難となる。
【0054】
<有機過酸化物(D)>
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて前記ポリオレフィン樹脂(A)、発泡剤(B)および特定重合体(C)に加えて、有機過酸化物(D)を含有していてもよい。本発明の樹脂組成物は、前記ポリオレフィン樹脂(A)、特定重合体(C)および(D)有機過酸化物を含む組成物を熱処理して、さらに発泡剤(C)を添加して得られたものでもよい。
【0055】
本発明で用いる有機過酸化物としては、従来公知の有機過酸化物が挙げられ、例えば、半減期が1分となる分解温度が120℃未満である有機過酸化物や、半減期が1分となる分解温度が120℃以上である有機過酸化物を挙げることができる。
【0056】
半減期が1分となる分解温度が120℃未満である有機過酸化物としては、例えば、ジアシルパーオキサイド化合物、パーカーボネート化合物(分子骨格中に下記式(1)で表される構造を有する化合物(I))やアルキルパーエステル化合物(分子骨格中に下記式(2)で表される構造を有する化合物(II))等が挙げられる。
【0057】
【化2】

【0058】
上記式(1)で表される構造を有する化合物(I)としては、ジ(3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジミリスチルパーオキシカーボネート等が挙げられる。
【0059】
上記式(2)で表される構造を有する化合物(II)としては、1,1,3,3−テトラメチルブチルネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート等が挙げられる。
【0060】
また、半減期が1分となる分解温度が120℃以上である有機過酸化物としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブテン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレラート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が挙げられる。
【0061】
有機過酸化物の使用量は、前記ポリオレフィン樹脂(A) 100質量部に対して5質量部以下であることが好ましく、0.002〜1質量部であることがより好ましく、0.005〜0.5質量部であることがさらに好ましい。
【0062】
<添加剤>
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、添加剤を含有させてもよく、例えば、中和剤、酸化防止剤、耐光剤、紫外線吸収剤、銅害防止剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、分散剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、造核剤、難燃剤、気泡防止剤、架橋剤、着色剤、顔料等が挙げられる。
【0063】
<樹脂組成物のメルトフローレート>
本発明の樹脂組成物のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)は、40〜200g/10分であることが好ましく、40〜150g/10分であることがより好ましく、40〜120g/10分であることがさらに好ましい。上記の数値の範囲内であると、得られる発泡成形体におけるシルバーストリークの発生を効果的に抑制することができる。
【0064】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物の製造方法は、前記(A)ポリオレフィン樹脂、(B)発泡剤、および、(C)特定重合体を混合して調製される。
前記オレフィン樹脂の好ましい調製方法としては、プロピレン重合体(A−a)および前記エチレン−α−オレフィン共重合体(A−b)を溶融混練装置に供給する工程、ならびに、前記プロピレン重合体(A−a)および前記エチレン−α−オレフィン共重合体(A−b)を前記溶融混練装置により溶融混練(熱処理)する工程を含むことが好ましい。
また、必要に応じて前記オレフィン樹脂100質量部に対して、有機過酸化物(D)を2質量部以下供給する工程を、前記溶融混練(熱処理)する工程の前にさらに含んでいてもよく、例えば有機過酸化物(D)を、前記プロピレン重合体(A−a)および前記エチレン−α−オレフィン共重合体(A−b)と混合して同時に溶融混練装置に供給してもよい。上記の溶融混練(熱処理)により、樹脂組成物は均一に混合され、また、有機過酸化物(D)を含む場合には、有機過酸化物の分解が生じ、それに起因する反応(例えば、ポリオレフィン樹脂の分子鎖切断、等)が生じる。
【0065】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、各成分を混練する方法が挙げられ、混練に用いられる装置としては、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等が挙げられる。
溶融混練(熱処理)の温度は、好ましくは170〜250℃であり、時間は、好ましくは20秒〜20分である。また、各成分の混練は同時に行ってもよく、分割して行ってもよい。例えば樹脂組成物の各成分を所定量計量し、タンブラー等で均一に予備混合する工程と、予備混合物を溶融混練する工程とを含むことが好ましい。
【0066】
(マスターバッチ)
次に、本発明の樹脂組成物に好適に使用されるマスターバッチについて詳述する。
本発明の樹脂組成物は、以下のマスターバッチ(I)に(A)ポリオレフィン樹脂を添加して調製することもでき、マスターバッチ(II)に(B)発泡剤を添加して調製することもできる。
【0067】
<マスターバッチ(I)>
本発明のマスターバッチ(I)は、(B)発泡剤1〜99質量%と、(C)(メタ)アクリル酸単独重合体、(メタ)アクリル酸エステル単独重合体、および、エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(特定重合体)99〜1質量%と、を含むことを特徴とする。
マスターバッチ(I)は、(B)発泡剤20〜80質量%と、(C)特定重合体80〜20質量%とを含むことがより好ましく、(B)発泡剤20〜40質量%と、(C)特定重合体80〜60質量%とを含むことが、さらにより好ましい。
前記(B)発泡剤および(C)特定重合体としては、本発明の樹脂組成物で挙げた(B)発泡剤および(C)特定重合体を使用する。
【0068】
前記マスターバッチ(I)を所望のオレフィン樹脂(A)と混合することにより、本発明の樹脂組成物を調製することができる。
マスターバッチ(I)は、(A)オレフィン樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部添加することが好ましく、より好ましくは1〜8質量部であり、さらに好ましくは1〜5質量部である。なお、マスターバッチ(I)は、(A)オレフィン樹脂100質量部に対して、(B)発泡剤0.1〜10質量部、(C)特定重合体0.1〜10質量部となるように添加する。
【0069】
<マスターバッチ(II)>
本発明のマスターバッチ(II)は、(A)ポリオレフィン樹脂 90〜99.9質量%と、(C)(メタ)アクリル酸単独重合体、(メタ)アクリル酸エステル単独重合体、および、エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体10〜0.1質量%と、を含むことを特徴とする。
マスターバッチ(II)は、(A)ポリオレフィン樹脂90〜95質量%と、(C)特定重合体10〜5質量%とを含むことがより好ましい。
前記(A)ポリオレフィン樹脂および(C)特定重合体としては、本発明の樹脂組成物で挙げた(A)ポリオレフィン樹脂および(C)特定重合体を使用する。
【0070】
前記マスターバッチ(II)と発泡剤(B)とを混合することにより、本発明の樹脂組成物を調製することができる。
前記(B)発泡剤は、マスターバッチ100質量部に対して、0.1〜10質量部添加することが好ましく、より好ましくは1〜5質量部であり、さらに好ましくは1〜2.5質量部である。なお、発泡剤(B)は、マスターバッチ(II)が含有するオレフィン樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部となるように添加する。
【0071】
(発泡成形体)
本発明の発泡成形体は、本発明の樹脂組成物を発泡させてなることを特徴とする。
本発明の樹脂組成物を発泡成形する方法は、具体的には射出発泡成形法、プレス発泡成形法、押出発泡成形法、スタンパブル発泡成形法などの公知の方法が挙げられる。
【0072】
本発明の発泡成形体は、インサート成形、接着などの方法により表皮材を貼合して加飾発泡成形体とすることもできる。
前記の表皮材としては、公知の表皮材を使用できる。具体的な表皮材としては、織布、不織布、編布、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーからなるフィルム、シート等が例示される。さらに、これらの表皮材に、ポリウレタン、ゴム、熱可塑性エラストマー等のシートを積層した複合表皮材を使用してもよい。
表皮材には、さらにクッション層を設けることができる。かかるクッション層を構成する材料は、ポリウレタンフォーム、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)フォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリエチレンフォーム等が例示される。
【0073】
<発泡成形体の用途>
本発明の発泡成形体の用途としては、例えば、自動車内装部品および外装部品等の自動車部品、二輪車部品、家具や電気製品の部品等が挙げられ、中でも自動車部品用であることが好ましく、自動車内装用部品であることがより好ましい。
【0074】
自動車内装部品としては、例えば、インストルメンタルパネル、トリム、ドアーパネル、サイドプロテクター、コンソールボックス、コラムカバー等が挙げられ、自動車外装部品としては、例えば、バンパー、フェンダー、ホイールカバー等が挙げられ、二輪車部品としては、例えば、カウリング、マフラーカバー等が挙げられる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例および比較例によって、本発明を説明する。
実施例または比較例では、以下に示した樹脂および添加剤を用いた。
(1)プロピレン−エチレンブロック共重合体(a−1)
特開2004−182876号公報に記載のα−オレフィン重合用固体触媒成分、および、そのα−オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法に準拠して調製した固体触媒成分を用いて、気相重合法により製造した。
MFR:80g/10min
プロピレン−エチレンブロック共重合体全体の極限粘度[η]T:1.4dl/g
プロピレン単独重合体部分の極限粘度[η]P:0.8dl/g
プロピレン−エチレンランダム共重合体部分の共重合体全体に対する質量比率:12質量%
プロピレン−エチレンランダム共重合体部分の極限粘度[η]EP:7.0dl/g
プロピレン−エチレンランダム共重合体部分のエチレン単位含量:32質量%
【0076】
(2)エチレン−α−オレフィン共重合体(a−2)
エチレン−α−オレフィン共重合体として、エチレン−ブテン共重合体ゴムを使用した。
商品名:CX5505(住友化学(株)社製)
密度:0.878(g/cm3
MFR(190℃、2.16kg荷重):14(g/10分)
【0077】
(3)有機過酸化物(a−3)
有機過酸化物として、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンを使用した。
商品名:パーヘキサ25B(日本油脂(株)社製)
【0078】
(4)発泡剤マスターバッチ(B)
発泡剤マスターバッチとして、炭酸水素ナトリウム/クエン酸/低密度ポリエチレンからなる発泡剤マスターバッチを使用した。なお、それぞれの質量割合は11/14/75質量%である。
【0079】
(5)重合体(C)
重合体(C)として、以下の(C−1)〜(C−7)を使用した。
(C−1)ポリメチルメタアクリレート(PMMA)
商品名:スミペックス LG(住友化学(株)製)
(C−2)エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)
商品名:エバテート D3010(住友化学(株)製)
(C−3)エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)
商品名:アクリフト WD201(住友化学(株)製)
(C−4)エチレン−グリシジルメタアクリレート共重合体(EGMA)
商品名:ボンドファースト BF−E(住友化学(株)製)
(C−5)アクリル酸変性プロピレン重合体(AA−PP)
商品名:ポリボンド1001C(Chemtura社製)
(C−6)無水マレイン酸変性プロピレン重合体(MAH−PP)
商品名:ユーメックス1010(三洋化成(株)社製)
(C−7)ポリメチルメタアクリレート(PMMA)グラフト変性プロピレン重合体(PMMA−g−PP)
【0080】
(6)顔料マスターバッチ(D)
顔料マスターバッチとして、以下の顔料マスターバッチを使用した。
商品名:カラーマスターPPCM800Y−101 136B(東京インキ(株)社製)
【0081】
<製造例1:熱可塑性樹脂の製造>
プロピレン−エチレンブロック共重合体(a−1) 77質量部
エチレン−α−オレフィン共重合体(a−2) 23質量部
有機過酸化物(a−3) 0.008質量部
以上の成分を、均一に予備混合した後、二軸混練押出機((株)日本製鋼所製TEX44SS 30BW−2V型)を用いて、押出量30〜50kg/hr、スクリュー回転数300rpm、ベント吸引下で混練押出して、熱可塑性樹脂(A)を製造した。
【0082】
<実施例1〜2、比較例1〜6>
製造例1で得られた熱可塑性樹脂(A)100質量部、発泡剤マスターバッチ(B)6質量部(発泡剤量は1.5質量部)、重合体(C)1質量部、顔料マスターバッチ(D)3質量部を混合し、射出成形機((株)日本製鋼所製J100E−P/2M)に縦100mm×横200mm×厚み2.5mmのキャビティを有する金型を取り付けて、キャビティの一部に樹脂が充填されない状態となるように(ショートショットとなるように)射出成形を行った。シリンダ温度230℃、金型温度40℃に設定し、サイクル30秒で200ショット成形した。
【0083】
実施例および比較例で用いた樹脂成分および組成物の物性の測定法を以下に示した。
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS−K−6758に規定された方法に従って測定した。特に断りのない限り、測定温度は230℃で、荷重は2.16kgfで測定した。
【0084】
(2)プロピレン−エチレンブロック共重合体の構造分析
(2−1)プロピレン−エチレンブロック共重合体の極限粘度数
(2−1−a)プロピレン単独重合体部分(第1セグメント)の極限粘度数:[η]P
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体の第1セグメントであるプロピレン単独重合体部分の極限粘度数([η]P)はその製造時に、第1工程であるプロピレン単独重合体の重合後に重合槽内よりプロピレン単独重合体を取り出し、取り出されたプロピレン単独重合体の[η]Pを測定して求めた。
【0085】
(2−1−b)プロピレン−エチレンランダム共重合体部分(第2セグメント)の極限粘度数:[η]EP
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体の第2セグメントであるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分の極限粘度数([η]EP)は、プロピレン単独重合体部分の極限粘度数([η]P)とプロピレン−エチレンブロック共重合体全体の極限粘度数([η]T)をそれぞれ測定し、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分の結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する質量比率:Xを用いて次式から計算により求めた。
[η]EP=[η]T/X−(1/X−1)[η]P
[η]P:プロピレン単独重合体部分の極限粘度数(dl/g)
[η]T:ブロック共重合体全体の極限粘度数(dl/g)
【0086】
(2−2)プロピレン−エチレンランダム共重合体部分の結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する質量比率:X
プロピレン−エチレンランダム共重合体部分の結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する質量比率(X)はプロピレン単独重合体部分(第1セグメント)と結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体全体の結晶融解熱量をそれぞれ測定し、次式を用いて計算により求めた。結晶融解熱量は、示唆走査型熱分析(DSC)により測定した。
X=1−(ΔHfT/(ΔHfP
(ΔHfT:ブロック共重合体全体の融解熱量(cal/g)
(ΔHfP:プロピレン単独重合体部分の融解熱量(cal/g)
【0087】
(2−3)結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体中のプロピレン−エチレンランダム共重合体部分のエチレン含量:(C2’)EP
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体のプロピレン−エチレンランダム共重合体部分のエチレン含量((C2’)EP)は、赤外線吸収スペクトル法により結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体全体のエチレン含量(C2’)Tを測定し、次式を用いて計算により求めた。
(C2’)EP=(C2’)T/X
(C2’)T:ブロック共重合体全体のエチレン含量(質量%)
(C2’)EP:プロピレン−エチレンランダム共重合体部分のエチレン含量(質量%)
X:プロピレン−エチレンランダム共重合体部分の結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する質量比率
【0088】
(3)金型の汚染度評価
前記方法により200ショット成形した後、成形品のショートショットとなった部分に対応する金型キャビティ面の汚染度を目視で評価した。
成形前のキャビティ面は汚染されていない状態を評価5、最も汚染されている状態を評価1としてそれぞれ点数をつけた。
【0089】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂(A) 100質量部と、
発泡剤(B) 0.1〜10質量部と、
(メタ)アクリル酸単独重合体、(メタ)アクリル酸エステル単独重合体、および、エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種の重合体(C) 0.1〜10質量部と、を含むことを特徴とする
樹脂組成物。
【請求項2】
前記発泡剤(B)が化学発泡剤である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィン樹脂(A)がプロピレン重合体、または、プロピレン重合体とエチレン−α−オレフィン共重合体との混合物である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1つに記載の樹脂組成物を発泡させてなることを特徴とする発泡成形体。
【請求項5】
発泡剤(B) 1〜99質量%と、
(メタ)アクリル酸単独重合体、(メタ)アクリル酸エステル単独重合体、および、エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(C) 99〜1質量%と、を含むことを特徴とする
マスターバッチ(I)。
【請求項6】
ポリオレフィン樹脂(A) 90〜99.9質量%と、
(メタ)アクリル酸単独重合体、(メタ)アクリル酸エステル単独重合体、および、エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(C) 10〜0.1質量%と、を含むことを特徴とする
マスターバッチ(II)。

【公開番号】特開2010−43161(P2010−43161A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206917(P2008−206917)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】