説明

樹脂組成物およびそれからなる成形品

【課題】 成形性、耐久性および耐薬品性に優れ、好ましい態様においては、靭性および耐熱性に優れた樹脂組成物およびそれからなる成形品の提供。
【解決手段】 ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂を100重量部未満配合してなる樹脂組成物であって、ポリ乳酸樹脂が分散相、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂が連続相となる相構造を有する樹脂組成物およびそれからなる成形品。温度190℃、剪断速度60秒―1の条件で測定したポリ乳酸樹脂の溶融粘度とポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の溶融粘度の比が、1以上であることが好ましく、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂が、オレフィン系樹脂であることが好ましく、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン樹脂を含むものであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸樹脂およびポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂を配合してなり、成形性、耐久性および耐薬品性に優れた樹脂組成物およびそれからなる成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸樹脂は、とうもろこしなどのバイオマスを原料として、微生物を利用した発酵法により、モノマーである乳酸を安価に製造できるようになり、また、融点もおよそ170℃と高く、溶融成形可能であるため、石油などの化石原料から製造される樹脂を代替できるバイオポリマーとして期待されている。
【0003】
しかしながら、ポリ乳酸樹脂は、結晶化速度が遅いため、結晶化させて成形品として用いるには限界があった。例えば、ポリ乳酸樹脂を射出成形する場合には、長い成形サイクル時間や成形後の熱処理を必要とするだけでなく、成形時や熱処理時の変形が大きいなど成形性や耐熱性に関して実用上の大きな問題があった。
【0004】
一方、複数の樹脂を配合する技術は、ポリマーアロイ技術として広く知られており、個々のポリマーの欠点を改良する目的で広く利用されている。例えば、特許文献1〜3においては、ポリ乳酸樹脂にオレフィン系樹脂を配合する方法が検討されている。しかし、環境に優しいバイオポリマーをできる限り多く使用することが強く望まれている中で、これらの方法を用いて、例えば、耐加水分解性を向上させるためには、オレフィン系樹脂をポリ乳酸樹脂よりも多く用いる必要があり、また、ポリ乳酸樹脂を多く使用した場合には耐加水分解性改良効果はほとんど期待できなかった。
【特許文献1】特開平5−179110号公報(第5,6頁)
【特許文献2】特開平9−316310号公報(第3,4頁)
【特許文献3】特開平10−251498号公報(第3,4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ポリ乳酸樹脂およびポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂を配合してなり、成形性、耐久性および耐薬品性に優れ、好ましい態様においては、靭性および耐熱性に優れた樹脂組成物およびそれからなる成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく検討した結果、ポリ乳酸樹脂とポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂を特定の条件において配合することで、得られる樹脂組成物およびそれからなる成形品の相構造を制御することができるようになり、その結果として、上記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち本発明は、
(1)ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂を100重量部未満配合してなる樹脂組成物であって、ポリ乳酸樹脂が分散相、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂が連続相となる相構造を有する樹脂組成物、
(2)温度190℃、剪断速度60秒―1の条件で測定したポリ乳酸樹脂の溶融粘度とポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の溶融粘度の比が、1以上である(1)に記載の樹脂組成物、
(3)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂が、オレフィン系樹脂である(1)に記載の樹脂組成物、
(4)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン樹脂を含むものである(1)に記載の樹脂組成物、
(5)さらに充填剤を配合してなる(1)に記載の樹脂組成物、
(6)さらに可塑剤を配合してなる(1)に記載の樹脂組成物、
(7)さらにカルボキシル基反応性化合物を配合してなる(1)に記載の樹脂組成物、
(8)(1)〜(7)のいずれかに記載の樹脂組成物からなる成形品、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、成形性、耐久性および耐薬品性に優れており、好ましい態様においては、靭性や耐熱性に優れている。この樹脂組成物からなる成形品は、上記特性を活かして、自動車部品、電気・電子部品、各種日用品など各種用途に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いるポリ乳酸樹脂とは、L−乳酸および/またはD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーであるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。かかる他の共重合成分単位としては、例えば、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが挙げられ、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの多価カルボン酸類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの多価アルコール類、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸類、およびグリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなどのラクトン類などから生成する単位が挙げられる。このような共重合単位は、全単量体単位を100モル%としたときに、通常0〜30モル%の含有量とするのが好ましく、0〜10モル%であることが好ましい。
【0010】
本発明においては、耐熱性の点から、乳酸成分の光学純度が高いポリ乳酸樹脂を用いることが好ましい。すなわち、ポリ乳酸樹脂の総乳酸成分の内、L体が80%以上含まれるかまたはD体が80%以上含まれることが好ましく、L体が90%以上含まれるかまたはD体が90%以上含まれることがさらに好ましく、L体が95%以上含まれるかまたはD体が95%以上含まれることが特に好ましく、L体が98%以上含まれるかまたはD体が98%以上含まれることが最も好ましい。また、L体またはD体の含有量の上限は通常100%以下である。
【0011】
ポリ乳酸樹脂の製造方法としては、公知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法およびラクチドを介する開環重合法などを用いることができる。
【0012】
ポリ乳酸樹脂の分子量や分子量分布は、実質的に成形加工が可能であれば、特に限定されるものではないが、相構造の制御性の観点から、重量平均分子量としては、好ましくは1万以上、より好ましくは5万以上、さらに好ましくは10万以上、特に好ましくは20万以上であるのがよい。上限は特に制限されないが、好ましくは80万以下、さらに好ましくは60万以下、より好ましくは40万以下であることが望ましい。ここでいう重量平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算の重量平均分子量である。
【0013】
本発明において、ポリ乳酸樹脂の融点については、特に限定されるものではないが、120℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。
【0014】
本発明において、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂とは、ポリ乳酸樹脂以外の樹脂であって、加熱すると流動性を示し、これを利用して成形加工できる樹脂のことである。
【0015】
この具体例としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン/α−オレフィン共重合体(“/”は共重合を示す。)等のオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン/アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、(メタ)アクリル酸メチル/スチレン共重合体などのスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂、ポリアクリル酸ブチル樹脂などのアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ乳酸樹脂以外のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、変性ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマー等のエラストマーなどが挙げられ、耐久性の観点から、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ乳酸樹脂以外のポリエステル系樹脂が好ましく、中でも、オレフィン系樹脂がより好ましく、後述する未変性ポリオレフィン樹脂であることがさらに好ましい。なお、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂は、一種のみでもよく、二種以上を併用して用いることもできる。
【0016】
二種以上併用する場合には、相構造の制御性の観点から、オレフィン系樹脂とスチレン系樹脂を併用することが得られる樹脂組成物の耐久性、靭性をよりいっそう改良し得る点で好ましく、スチレン系樹脂としては、スチレンと共重合可能なカルボニル基含有単量体を共重合した樹脂であることが好ましい。なかでもスチレン/(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が好ましく、そのような製品としては、東亞合成製“ARUFON”および日本油脂製“マープルーフ”などを挙げることができる。オレフィン系樹脂とスチレン系樹脂を併用する場合の配合比は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、オレフィン系樹脂99重量部未満であり、スチレン系樹脂10重量部未満であることが好ましい。なお、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の合計として、100重量部未満は越えないものとする。
【0017】
本発明において、オレフィン系樹脂とは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンなどのオレフィン、ビニルアルコールまたはその誘導体等のオレフィンアルコール等のオレフィン類を重合または共重合して得られる熱可塑性樹脂である。
【0018】
具体例としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ1−ブテン樹脂、ポリ1−ペンテン樹脂、ポリ4−メチル−1−ペンテン樹脂などの単独重合体、エチレン/α−オレフィン共重合体、[(エチレンおよび/又はプロピレン)と(不飽和カルボン酸および/又は不飽和カルボン酸エステル)との共重合体]、[(エチレンおよび/又はプロピレン)と(不飽和カルボン酸および/又は不飽和カルボン酸エステル)との共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属塩化した共重合体]、[(エチレンおよび/又はプロピレン)とカルボン酸ビニルエステルとの共重合体]、[(エチレンおよび/又はプロピレン)とビニルアルコールとの共重合体]、または、これらに1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、2,5−ノルボルナジエン、5−エチリデンノルボルネン、5−エチル−2,5−ノルボルナジエン、5−(1′−プロペニル)−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン、ビニルメチルエーテルなどのビニルエーテルやこれらのビニル系化合物の誘導体、アクリロニトリル、ビニルアルコールなどのモノマーを一種以上共重合させた共重合体などが挙げられ、この中で、未変性ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ1−ブテン樹脂、ポリ1−ペンテン樹脂、ポリ4−メチル−1−ペンテン樹脂などの単独重合体、エチレン/α−オレフィン共重合体を挙げることができる。
【0019】
本発明におけるエチレン/α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素原子数3以上、好ましくは炭素数3〜20のα−オレフィンの少なくとも一種以上との共重合体であり、上記の炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。これらα−オレフィンの中でも、炭素数3〜12のα−オレフィンを用いた共重合体が機械強度の向上の点から好ましい。このエチレン/α−オレフィン共重合体は、α−オレフィン含量が好ましくは1〜30モル%、より好ましくは2〜25モル%、さらに好ましくは3〜20モル%である。
【0020】
本発明においては、相構造の制御性の観点から、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ4−メチル−1−ペンテン樹脂が好ましく、耐熱性の観点から、ポリプロピレン樹脂がより好ましく、靭性の点から、ポリエチレン樹脂がより好ましい。
【0021】
さらに、本発明において、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ1−ブテン樹脂、ポリ1−ペンテン樹脂、ポリ4−メチル−1−ペンテン樹脂などの単独重合体もしくはエチレン/α−オレフィン共重合体のいずれかである未変性ポリオレフィン樹脂である場合には、不飽和カルボン酸またはその誘導体およびカルボン酸ビニルエステルなどの化合物で変性した変性ポリオレフィン樹脂を併用して配合することが得られる樹脂組成物の耐久性、靭性をよりいっそう改良し得る点で好ましい。この変性ポリオレフィン樹脂を用いると、ポリ乳酸樹脂と未変性ポリオレフィン樹脂の親和性を向上させる相溶化剤として働き、得られる樹脂組成物の相構造の制御性が向上するため好ましい。
【0022】
さらに、本発明において、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン樹脂である場合には、立体規則性の高いポリプロピレン樹脂を用いることが好ましく、高アイソタクチシチーのポリプロピレン樹脂を用いると、成形性、耐熱性に優れる樹脂組成物を得ることができ、高シンジオタクシチシーのポリプロピレン樹脂を用いると、耐衝撃性、透明性に優れる樹脂組成物を得ることができる。立体規則性としては、アイソタクチシチーもしくはシンジオタクチシチーが、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。ここでいうシンジオタクチシチーとは、溶媒として、重水素化o−ジクロロベンゼンを用い、110℃での13C−NMR測定において、シンジオタクチシチー、ヘテロタクチシチー、アイソタクチシチーとしてそれぞれ観察される20.2ppm、20.8ppm、21.5ppmの直鎖分岐のメチル基のピークの積分強度の合計を100%として、それぞれのピークの積分強度の割合を百分率で表すことにより算出できる値である。
【0023】
また、本発明において、立体規則性の異なるポリプロピレン樹脂を併用してもよい。例えば、アイソタクシチシーを主構造とする二種以上のポリプロピレン樹脂を用いることにより、流動性、成形性、耐熱性に優れる樹脂組成物を得られやすくなるため好ましく、高アイソタクチシチーのポリプロピレン樹脂と高シンジオタクシチシーのポリプロピレン樹脂をそれぞれ一種以上用いることにより、成形性、耐熱性、耐衝撃性に優れる樹脂組成物を得られやすくなるため好ましい。
【0024】
本発明において、高アイソタクチシチーのポリプロピレン樹脂は、触媒としてチーグラー・ナッタ触媒を用いた配位重合により得られやすく、高シンジオタクシチシーのポリプロピレン樹脂は、触媒としてメタロセン触媒を用いた配位重合により得られやすい。
【0025】
本発明において、変性ポリオレフィン樹脂とは、変性剤として不飽和カルボン酸またはその誘導体およびカルボン酸ビニルエステルなどのカルボニル基含有単量体を、グラフト共重合、ブロック共重合、ランダム共重合もしくは末端処理などにより、ポリオレフィン樹脂の主鎖もしくは側鎖に導入した樹脂のことを言う。
【0026】
変性ポリオレフィン樹脂において、変性剤として使用されるカルボニル基含有単量体の例を挙げると、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸およびこれらカルボン酸の金属塩、マレイン酸水素メチル、イタコン酸水素メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、エンドビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、酢酸イソプロペニル、酢酸1−ブテニル、ピバル酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル、モノクロル酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニルおよびソルビン酸ビニルなどである。これらの中で、耐久性、耐薬品性に優れるという点で、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、メタクリル酸グリシジル、酢酸ビニルが好ましく、靭性に優れるという点で、アクリル酸メチル、酢酸ビニルが好ましい。変性剤として使用されるカルボニル基含有単量体は、一種でもよく、二種以上を併用して用いてもよい。変性剤を用いない場合には、ポリ乳酸樹脂が粗大分散しやすくなり、ポリ乳酸樹脂の平均分散粒子径が5μm以上となるのに対し、好ましい変性剤を用いることにより、ポリ乳酸樹脂が微分散化しやくなり、ポリ乳酸樹脂の平均分散粒子径が1μm以下となるため、予想し得ない優れる効果を発現させることが可能となる。なお、ここでいうポリ乳酸樹脂の平均分散粒子径は、後述する相構造を観察する電子顕微鏡を用いた手法により、求めることができる。
【0027】
これらの変性剤をポリオレフィン樹脂に導入する方法は特に制限なく、予め主成分であるオレフィン化合物と変性剤を共重合せしめたり、未変性ポリオレフィン樹脂にラジカル開始剤を用いてグラフト化処理を行い変性剤を導入するなどの方法を用いることができる。変性剤の導入量は、相構造の制御性の観点から、変性ポリオレフィン樹脂中のオレフィンモノマー単位全体に対して、0.001〜80重量%が好ましく、1〜70重量%がより好ましく、10〜60重量%がさらに好ましく、15〜55重量%が特に好ましく、20〜50重量%が最も好ましい。好ましい変性剤の導入量を適用することにより、ポリ乳酸樹脂が微分散化しやすくなるため、予想し得ない優れる効果を発現させることが可能となる。
【0028】
本発明で用いることができる変性ポリオレフィン樹脂製品としては、住友化学工業製“ボンドファースト”、日本ポリエチレン製“レクスパール”、三井化学製“タフマー”、日本油脂製“モディパー”、三洋化成工業製“ユーメックス”、アトフィナ製“オレヴァック”、アトフィナ製“ロタダー”、アトフィナ製“ボンダイン”、住友化学工業製“エバテート”、東ソー“ウルトラセン”、バイエル製“レバプレン”、三井・デュポン・ポリケミカル製“エバフレックス”、アトフィナ製“エヴァダイン”、アトフィナ製“ロトリル”、三井・デュポン・ポリケミカル製“エバフレックスEEA”、住友化学工業製“アクリフト”、三井・デュポン・ポリケミカル製“ニュクレル”、ダウケミカル製“プリマコール”などを挙げることができる。
【0029】
本発明において、ポリ乳酸以外の熱可塑性樹脂が、未変性ポリオレフィン樹脂である場合の配合比は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、未変性ポリオレフィン樹脂99重量部未満であり、さらに変性ポリオレフィン樹脂を50重量部未満、好ましくは40重量部未満、より好ましくは30重量部未満配合することができる。なお、使用するポリ乳酸以外の熱可塑性樹脂の合計として100重量部未満は越えないものとする。
【0030】
また、本発明のポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂のメルトフローレート(MFR)は、0.1〜150g/10分であることが好ましく、1〜80g/10分がより好ましい。MFRが0.1g/10分未満の場合は流動性が悪くなる傾向にあり、150g/10分を超える場合は成形品の形状によっては衝撃強度が低くなることもあるため好ましくない。なお、本発明でのMFRは、JISK7210に準じて、測定した値である。
【0031】
本発明におけるポリ乳酸樹脂およびポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂樹脂の配合比は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂を100重量部未満配合することを特徴とする。さらに、相構造の制御性の観点から、ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂90重量部未満であることが好ましく、85重量部未満であることがより好ましい。ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂が100重量部以上であると、例えば、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂がオレフィン系樹脂である場合には、燃焼熱量が増加し、焼却廃棄時に焼却炉を損傷させやすくなるため、好ましくない。ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の配合量の下限は、特に限定されないが、相構造の制御性の観点から、1重量部以上が好ましく、30重量部以上がより好ましく、60重量部以上であることがさらに好ましい。
【0032】
本発明において、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の製造方法は、特に限定されものではなく、公知の方法を用いることができ、例えば、オレフィン系樹脂においては、ラジカル重合、チーグラー・ナッタ触媒を用いた配位重合、アニオン重合、メタロセン触媒を用いた配位重合などいずれの方法でも用いることができる。
【0033】
本発明においては、ポリ乳酸樹脂がポリ乳酸以外の熱可塑性樹脂より多量に配合するにもかかわらず、ポリ乳酸樹脂が分散相、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂が連続相(マトリックス相)となる相構造を有することを特徴とする。この相構造は、走査型電子顕微鏡(SEM)もしくは透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することで、確認できるものであり、本発明においては、TEMを用いて、倍率1万倍で確認したものである。なお、電子顕微鏡で相構造を観察する方法としては、相構造を明瞭に観察するために、超薄切片法、イオンエッチング法、電子染色法など各種公知の方法を用いて、前処理してもよい。
【0034】
このような相構造は、用いるポリ乳酸樹脂とポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の粘度の関係を適切な範囲とすることにより、制御することができる。すなわち、ポリ乳酸樹脂およびポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂のそれぞれの融点のうち、いずれか高い融点(Tp)に対して、(Tp+10)℃〜(Tp+100)℃の任意の温度で、剪断速度1〜500秒―1の任意の剪断速度で測定したポリ乳酸樹脂の溶融粘度とポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の溶融粘度の比が、1以上であるものを選択し、そのような関係を有する条件で溶融混練することが好ましい。溶融混練条件や成形条件に多少の変動があっても安定して相構造を制御できるという観点から、3以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましい。上限は特に限定されないが、加工性の観点から、1000以下であることが好ましい。さらに、本発明において、相構造の制御性の観点から、ポリ乳酸樹脂の溶融粘度とポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の溶融粘度の比は、温度150〜300℃、好ましくは160〜220℃、より好ましくは190℃の温度条件で、剪断速度10〜300秒―1、好ましくは20〜100秒―1、より好ましくは60秒―1の剪断下で測定される場合に上記範囲を有するポリ乳酸樹脂、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂を選択することが、溶融混練条件や成形条件に変動があっても安定して相構造を制御できるという観点から好ましい。
【0035】
上記溶融粘度比はプランジャー式キャピラリーレオメーターを用いて測定したそれぞれの溶融粘度を用いて、[ポリ乳酸樹脂の溶融粘度/ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の溶融粘度]から求めることができる。なお、本発明において、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂を二種以上併用する場合には、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の中で主成分となる熱可塑性樹脂の溶融粘度を用いて、ポリ乳酸樹脂とポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の溶融粘度比を求めるものとする。また、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂が二種以上、かつ、同量である場合には、それぞれのポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の溶融粘度のうち、最も低い値を用いて求めるものとする。なお、本発明において、融点は、示差走査型熱量計(DSC)にて昇温速度20℃/分で測定した値である。
【0036】
本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲で、充填剤、可塑剤、カルボキシル基反応性化合物、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤等)、滑剤、離形剤、難燃剤、染料および顔料を含む着色剤、結晶核剤、帯電防止剤などを添加することができる。
【0037】
本発明において、機械特性、成形性、耐熱性などに優れた樹脂組成物が得られるという観点から、充填剤を配合することが好ましい。充填剤としては、通常、熱可塑性樹脂の充填剤として用いられる繊維状、板状、粒状、粉末状のものを用いることができる。具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ウォラストナイト、セピオライト、アスベスト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維および硼素繊維などの繊維状無機充填剤、ガラスフレーク、非膨潤性雲母、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、タルク、クレイ、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトおよび白土などの板状や粒状の無機充填剤、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、綿繊維、麻繊維、竹繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナッツ繊維、絹、羊毛、アンゴラ、カシミヤもしくはラクダなどの動物繊維、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質、澱粉、籾殻、木材チップ、おから、古紙粉砕材、衣料粉砕材などの、繊維状、粉末状もしくはチップ状の有機充填剤が挙げられる。これらの充填剤の中では、繊維状無機充填剤、板状無機充填剤、有機充填剤が好ましく、特に、ガラス繊維、ウォラストナイト、ホウ酸アルミニウムウイスカー、チタン酸カリウムウイスカー、タルク、マイカ、カオリン、麻繊維、竹繊維、ケナフ繊維、ジュート繊維、紙粉、木粉が好ましい。繊維状充填剤のアスペクト比は5以上であることが好ましく、10以上であることがさらに好ましく、20以上であることがさらに好ましい。これらの充填剤は一種または二種以上で用いることができる。また、充填剤は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆または集束処理されていてもよく、アミノシランやエポキシシランなどのカップリング剤などで処理されていても良い。
【0038】
本発明において、充填剤の配合量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、1〜300重量部が好ましく、5〜150重量部がより好ましい。
【0039】
本発明において、機械特性、成形性、耐熱性などに優れた樹脂組成物が得られるという観点から、可塑剤を配合することが好ましい。可塑剤としては、一般によく知られているものを使用することができ、例えば、ポリアルキレングリコール系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ペンタエリスリトール、各種ソルビトール、ポリアクリル酸エステル、シリコーンオイルおよびパラフィン類などを挙げることができ、耐ブリードアウト性の観点から、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)ブロックおよび/またはランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のプロピレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体などのポリアルキレングリコールあるいはその末端エポキシ変性化合物、末端エステル変性化合物、および末端エーテル変性化合物などの末端封鎖化合物などのポリアルキレングリコール系可塑剤、ビス(ブチルジグリコール)アジペート、メチルジグリコールブチルジグリコールアジペート、ベンジルメチルジグリコールアジペート、アセチルトリブチルサイトレート、メトキシカルボニルメチルジブチルサイトレート、エトキシカルボニルメチルジブチルサイトレートなどの多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレートおよびグリセリンモノアセトモノモンタネートなどのグリセリン系可塑剤が好ましい。これらの可塑剤は一種または二種以上で用いることができる。
【0040】
本発明において、可塑剤の配合量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、0.01〜50重量部の範囲が好ましく、0.5〜20重量部の範囲がより好ましい。
【0041】
本発明において、カルボキシル基反応性化合物を配合することが得られる樹脂組成物の耐久性、靭性をよりいっそう改良し得る点で好ましい。カルボキシル基反応性化合物としては、ポリ乳酸樹脂のカルボキシル末端基と反応性のある化合物であれば特に限定されるものではないが、ポリ乳酸樹脂の熱分解や加水分解などで生成する乳酸やギ酸などの酸性低分子化合物のカルボキシル基とも反応性を有するものであればより好ましく、熱分解により生成する酸性低分子化合物のヒドロキシル基末端基とも反応性を有する化合物であることがさらに好ましい。
【0042】
このようなカルボキシル基反応性化合物としては、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物、グリシジルアミン化合物、グリシジルイミド化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ基含有化合物、2,2′−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)などのオキサゾリン化合物、オキサジン化合物、N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、2,6,2′,6′−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミド、ポリカルボジイミドなどのカルボジイミド化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物を使用することが好ましく、なかでもエポキシ基含有化合物および/またはカルボジイミド化合物が好ましい。上記カルボキシル基反応性化合物は、一種または二種以上の化合物を任意に選択して使用することができる。
【0043】
本発明において、カルボキシル基反応性化合物の量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、0.01〜10重量部が好ましく、0.05〜5重量部がより好ましい。
【0044】
本発明においては、さらにカルボキシル基反応性化合物の反応触媒を添加することが好ましい。ここで言う反応触媒とは、カルボキシル基反応性化合物と、ポリ乳酸樹脂の末端や酸性低分子化合物のカルボキシル基との反応を促進する効果のある化合物であり、少量の添加で反応を促進する効果のある化合物が好ましく、さらに、カルボキシル基反応性化合物の反応触媒は、熱分解により生成する酸性低分子化合物のヒドロキシル基との反応を促進する効果も有することが好ましい。このような反応触媒としては、例えば、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、リン酸エステルが好ましい。反応触媒の添加量は、特に限定されるものではないが、ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、0.001〜1重量部が好ましく、0.01〜0.2重量部がより好ましく、0.02〜0.1重量部が最も好ましい。
【0045】
本発明においては、使用する用途に応じて適度にカルボキシル末端基や酸性低分子化合物と反応を行えばよいが、具体的なポリ乳酸樹脂の末端や酸性低分子化合物のカルボキシル基もしくはヒドロキシル基との反応性の程度としては、耐加水分解性の観点から、樹脂組成物中の酸濃度が10当量/10g以下となるように反応させることが好ましく、5当量/10g以下となるように反応させることがより好ましく、1当量/10g以下となるように反応させることがさらに好ましい。樹脂組成物中の酸濃度は、樹脂組成物を適当な溶媒に溶解させた後、濃度既知の水酸化ナトリウムなどによるアルカリ化合物溶液での滴定や、核磁気共鳴法(NMR)により測定することができる。
【0046】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、本発明で規定する要件を満たす限り、特に限定されるものではないが、例えば、ポリ乳酸樹脂、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂および必要に応じてその他の添加剤を予めブレンドした後、融点以上において、単軸または二軸押出機などを用いて、均一に溶融混練する方法や、溶液中で混合した後に溶媒を揮発させ除去する方法などが好ましく用いられる。
【0047】
本発明において、単軸または二軸押出機などを用いて溶融混練する方法としては、好ましい相構造を有する樹脂組成物を得るために、例えば、ポリ乳酸樹脂とポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂を事前に溶融混練して樹脂組成物を得た後、必要に応じてその他の添加剤と溶融混練する方法、メインフィーダーからポリ乳酸樹脂とポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂を供給し、必要に応じてその他の添加剤を押出機の先端部分のサイドフィーダーから供給する方法などが挙げられる。
【0048】
本発明において、樹脂組成物を製造する際の、溶融混練温度は、170〜250℃が好ましく、175℃〜230℃がさらに好ましく、180〜220℃が特に好ましい。
【0049】
本発明の樹脂組成物は、公知の各種成形法により、成形品とすることができる。成形法としては、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形などが好ましく、射出成形品、押出成形品、プレス成形品およびブロー成形品など各種成形品に加工することにより特に有用に利用することができ、また、シート、フィルム、繊維などとして利用することができる。
【0050】
本発明において、成形法として、射出成形を選択する場合は、金型温度としては、結晶化の観点から、30℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、試験片の変形の観点から、120℃以下が好ましく、99℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましい。
【0051】
本発明の樹脂組成物からなる成形品は、自動車部品(内装・外装部品など)、電気・電子部品(各種ハウジング、歯車、ギアなど)、建築部材、土木部材、農業資材、および日用品など各種用途に利用することができる。
【0052】
具体的には、エアフローメーター、エアポンプ、サーモスタットハウジング、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブースター部品、各種ケース、各種チューブ、各種タンク、各種ホース、各種クリップ、各種バルブ、各種パイプなどの自動車用アンダーフード部品、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジング、スペアタイヤカバー、ドアトリムなどの自動車用内装部品、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドルなどの自動車用外装部品、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクターなど各種自動車用コネクターなどに代表される自動車部品を挙げることができる。また、ノートパソコンハウジングおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングおよび内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブのハウジングおよび内部部品、コピー機のハウジングおよび内部部品、ファクシミリのハウジングおよび内部部品、パラボラアンテナなどに代表される電気・電子部品を挙げることができる。さらに、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、などに代表される家庭・事務電気製品部品を挙げることができる。また、電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などのハウジングや内部部品、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、モーターケース、スイッチ、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドホン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子部品、サッシ戸車、ブラインドカーテンパーツ、配管ジョイント、カーテンライナー、ブラインド部品、ガスメーター部品、水道メーター部品、湯沸かし器部品、ルーフパネル、断熱壁、アジャスター、プラ束、天井釣り具、階段、ドアー、床などの建築部材、釣り糸、漁網、海藻養殖網、釣り餌袋などの水産関連部材、植生ネット、植生マット、防草袋、防草ネット、養生シート、法面保護シート、飛灰押さえシート、ドレーンシート、保水シート、汚泥・ヘドロ脱水袋、コンクリート型枠などの土木関連部材、歯車、ねじ、バネ、軸受、レバー、キーステム、カム、ラチェット、ローラー、給水部品、玩具部品、ファン、テグス、パイプ、洗浄用治具、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などの機械部品、マルチフィルム、トンネル用フィルム、防鳥シート、植生保護用不織布、育苗用ポット、植生杭、種紐テープ、発芽シート、ハウス内張シート、農業用塩ビフィルムの止め具、緩効性肥料、防根シート、園芸ネット、防虫ネット、幼齢木ネット、プリントラミネート、肥料袋、試料袋、土嚢、獣害防止ネット、誘因紐、防風網などの農業部材、紙おむつ、生理用品包材、綿棒、おしぼり、便座ふきなどの衛生用品、医療用不織布(縫合部補強材、癒着防止膜、人工器官補修材)、創傷被覆材、キズテープ包帯、貼符材基布、手術用縫合糸、骨折補強材、医療用フィルムなどの医療用品、カレンダー、文具、衣料、食品等の包装用フィルム、トレイ、ブリスター、ナイフ、フォーク、スプーン、チューブ、プラスチック缶、パウチ、コンテナー、タンク、カゴなどの容器・食器類、ホットフィル容器類、電子レンジ調理用容器類化粧品容器、ラップ、発泡緩衝剤、紙ラミ、シャンプーボトル、飲料用ボトル、カップ、キャンディ包装、シュリンクラベル、蓋材料、窓付き封筒、果物かご、手切れテープ、イージーピール包装、卵パック、HDD用包装、コンポスト袋、記録メディア包装、ショッピングバック、電気・電子部品等のラッピングフィルムなどの容器・包装、天然繊維複合、ポロシャツ、Tシャツ、インナー、ユニホーム、セーター、靴下、ネクタイなどの各種衣料、カーテン、イス貼り地、カーペット、テーブルクロス、布団地、壁紙、ふろしきなどのインテリア用品、キャリアーテープ、プリントラミ、感熱孔版印刷用フィルム、離型フィルム、多孔性フィルム、コンテナバッグ、クレジットカード、キャッシュカード、IDカード、ICカード、紙、皮革、不織布等のホットメルトバインダー、磁性体、硫化亜鉛、電極材料等粉体のバインダー、光学素子、導電性エンボステープ、ICトレー、ゴルフティー、ゴミ袋、レジ袋、各種ネット、歯ブラシ、文房具、水切りネット、ボディタオル、ハンドタオル、お茶パック、排水溝フィルター、クリアファイル、コート剤、接着剤、カバン、イス、テーブル、クーラーボックス、クマデ、ホースリール、プランター、ホースノズル、食卓、机の表面、家具パネル、台所キャビネット、ペンキャップ、ガスライターなどとして有用である。
【0053】
本発明の樹脂組成物およびそれからなる成形品は、耐薬品性に優れていることを特徴とする。ここで、耐薬品性とは、樹脂組成物およびそれからなる成形品の重量を測定した後、完全に溶剤に浸漬するようにして、1時間以上、好ましくは3時間以上浸漬した後、樹脂組成物およびそれからなる成形品を取り出し、乾燥させて溶剤を除去した後の重量を測定し、処理前後での重量残存率により判定することができるものである。重量残存率は、(処理後の重量/処理前の重量)×100(%)から求めることができ、重量残存率が、100%以上であることが最も好ましいが、実用上は50%以上が好ましく、75%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。本発明においては、溶剤は、特に限定されないが、ポリ乳酸樹脂を溶解させることのできるものが好ましく、中でも溶剤として一般的に入手可能なクロロホルムがより好ましい。
【実施例】
【0054】
次に、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。また、使用した原料および表中の符号を以下に示す。
【0055】
(a)ポリ乳酸樹脂
(a−1)ポリL乳酸樹脂(D体1.2%、Mw(PMMA換算)21万、融点168℃)
(a−2)ポリL乳酸樹脂(D体1.2%、Mw(PMMA換算)16万、融点168℃)。
【0056】
(b)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂
(b−1)ポリプロピレン樹脂(三井化学製S119、MFR60g/10分、融点165℃)
(b−2)ポリプロピレン樹脂(三井化学製E110G、MFR0.3g/10分、融点165℃)
(b−3)ポリプロピレン樹脂(製造例1、MFR150g/10分、融点170℃、アイソタクチシチー98%)
(b−4)ポリプロピレン樹脂(製造例2、MFR100g/10分、融点131℃、シンジオタククチシチー84%)
(b−5)ポリプロピレン樹脂(製造例3、MFR98g/10分、融点133℃、シンジオタククチシチー96%)
(b−6)ポリエチレン樹脂(プライムポリマー製“ネオゼックス”2024G、MFR25g/10分、融点115℃)
(b−7)ポリエチレン樹脂(プライムポリマー製“ネオゼックス”0134N、MFR1.2g/10分、融点117℃)
(b−8)エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合樹脂(住友化学製“ボンドファースト”E、融点88℃、メタクリル酸グリシジル12重量%)
(b−9)エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合樹脂(住友化学製“ボンドファースト”7M、融点51℃、アクリル酸メチル30重量%、メタクリル酸グリシジル6重量%)
(b−10)エチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合樹脂(日本油脂製“モディパー”A4200、融点72℃、メタクリル酸メチル30重量%、メタクリル酸グリシジル10重量%)
(b−11)エチレン/アクリル酸メチル共重合樹脂(アトフィナ製“ロトリル”29MA03、融点61℃、アクリル酸メチル29重量%)
(b−12)エチレン/酢酸ビニル共重合樹脂(バイエル製“レバプレン”700HV、融点(ガラス転移温度)−10℃、酢酸ビニル70重量%)
(b−13)エチレン/酢酸ビニル共重合樹脂(三井・デュポン・ポリケミカル製“エバフレックス”EV40LX、融点40℃、酢酸ビニル41重量%)
(b−14)エチレン/酢酸ビニル共重合樹脂(三井・デュポン・ポリケミカル製“エバフレックス”EV550、融点89℃、酢酸ビニル14重量%)
(b−15)エチレン/メタクリル酸メチル共重合樹脂(住友化学製“アクリフト”WK402、融点79℃、メタクリル酸メチル26重量%)
(b−16)エチレン/アクリル酸エチル共重合樹脂(三井・デュポン・ポリケミカル製“エバフレックスEEA”A−709、融点56℃、アクリル酸エチル34重量%)
(b−17)エポキシ基を含有したスチレン/アクリル酸エステル共重合体(東亞合成“ARUFON”UG4040、融点(ガラス転移温度)61℃)
(b−18)脂肪族ポリエステル樹脂(昭和高分子製“ビオノーレ”3001、融点95℃)。
【0057】
(c)充填剤
(c−1)タルク(日本タルク製SG−200)
(c−2)厚み3mmの板紙を粉砕した紙粉。
【0058】
(d)可塑剤
(d−1)ポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG6000S)
(d−2)脂肪族エステル系可塑剤(大八化学工業製“DAIFATTY”−101)。
【0059】
(e)カルボキシル基反応性化合物
(e−1)ポリカルボジイミド(日清紡製“カルボジライト”LA−1)。
【0060】
[製造例1]ポリプロピレン樹脂の製造
濃縮器を取り付けた反応装置に、窒素雰囲気下で、粉末マグネシウム80gおよびn−ヘキサン3Lを入れ、70℃で1時間撹拌後、マグネシウムを取り出し、真空乾燥機を用い60℃で8時間乾燥させた。このマグネシウムとn−ブチルエーテル1.5Lを反応装置に投入後、n−ブチルマグネシウムクロリドのn−ブチルエーテル溶液(2モル/L)0.4Lを1時間かけ滴下投入し、75℃で2.5時間反応させた。反応液を30℃にした後、トリエトキシメタン0.6Lを1時間かけ滴下投入し、滴下終了後60℃で30分間撹拌反応させ、得られた固体をn−ヘキサンで3回洗浄し、真空乾燥機を用い、40℃で1時間乾燥させマグネシウム含有固体250gを得た。このマグネシウム含有固体100gとn−ヘキサン1Lを反応装置に投入後、2,2,2−トリクロロエタノール0.2Lとn−ヘキサン0.1Lの混合溶液を1時間かけ滴下投入し、滴下終了後70℃で2時間撹拌反応させ、この反応物を濾過して得られる固体をn−ヘキサンで3回洗浄した。この固体とトルエン0.5Lを反応装置に投入後、四塩化チタン0.75Lを加え、90℃で10分撹拌後、フタル酸ジブチル0.1Lとトルエン0.1Lの混合溶液を投入し、130℃で1時間撹拌した。得られた固体を濾過した後、トルエンで3回洗浄し、四塩化チタン0.75Lを加え、130で1時間撹拌した後、室温まで温度を下げ、n−ヘキサンで5回洗浄した。得られた成分とn−ヘキサン3Lを反応装置に投入後、−5℃に冷却し、トリエチルアルミニウムのn−ヘキサン溶液(2モル/L)0.3Lとシクロヘキシルi−プロポキシジメトキシシラン0.1Lを添加後、5分間撹拌した
反応装置内を減圧にした後、プロピレンガスを連続的に導入しつつ、30℃で4時間予備重合を行った後、さらに50℃で2時間重合を行い、ポリプロピレン樹脂(b−3)を得た。
【0061】
[製造例2]ポリプロピレン樹脂の製造
イソプロピル(シクロペンタジエニル)(アロレニル)ジルコニウムジクロリド1gとメチルアンミノキサンのトルエン溶液(5モル/L)0.1Lを反応装置に投入し、10Lの液体プロピレンを添加した。30℃で30分間予備重合を行った後、50℃で1時間重合を行い、ポリプロピレン樹脂(b−4)を得た。
【0062】
[製造例3]ポリプロピレン樹脂の製造
液状プロピレン10Lを反応装置に投入し、メチルアルミノキサンのトルエン溶液(5モル/L)0.3Lを加え、30分間予備重合を行った後、ジメチルメチレン−(9−フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド1gとメチルアルミノキサンのトルエン溶液(5モル/L)0.2Lを混合した溶液を反応装置に投入し、70℃で1時間重合を行い、ポリプロピレン樹脂(b−5)を得た。
【0063】
また、本発明で用いた測定方法および判定方法を以下に示す。
【0064】
(1)相構造観察
引張試験片の中心部から一部を切り出し、ミクロトームを用いて超薄切片を作成し、日立製作所製透過型電子顕微鏡(TEM)H−7100を用いて、倍率1万倍で観察し、マトリックスおよび分散相を判定した。
【0065】
(2)溶融粘度比
東洋精機製キャピログラフ1C型を用いて、温度190℃、剪断速度60秒―1、オリフィス径1mmの条件で溶融粘度を測定し、[ポリ乳酸樹脂の溶融粘度/ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の溶融粘度]から溶融粘度比を求めた。
【0066】
(3)燃焼熱量測定
JIS K2279に準じて行った。
【0067】
(4)成形性
成形性について、引張試験に供することができる引張試験片を金型から取り出す際に、変形のない固化した成形品が得られる最短の時間を成形サイクル時間として計測した。成形サイクル時間が短いほど成形性に優れているといえる。
【0068】
(5)引張強度および引張破断伸度
ASTM法D638に準じて引張試験を行った。
【0069】
(6)耐久性
引張試験片を用い、恒温恒湿槽中で、60℃もしくは70℃、相対湿度95%の条件で300時間もしくは500時間処理した後、引張強度を測定し、引張強度保持率((処理後の引張強度/処理前の引張強度)×100(%))を求めた。引張強度保持率が大きいほど耐久性に優れているといえる。
【0070】
(7)耐薬品性
溶剤として、クロロホルムを用い、曲げ試験片が完全に浸漬した状態で3時間静置した後、曲げ試験片を取り出し、熱風乾燥機を用い、70℃、24時間の条件で乾燥させて溶剤を除去した後、重量残存率((処理後の重量/処理前の重量)×100(%))を求めた。重量残存率が大きいほど耐薬品性に優れているといえる。
【0071】
(8)耐熱性
曲げ試験片を用いて、ASTM法D648に準じて荷重たわみ温度(0.45MPa)測定を行った。
【0072】
[実施例1〜7、比較例1〜4]
表1に示すようにポリ乳酸樹脂およびポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂を配合し、30mm径の二軸押出機を用い、シリンダー温度190℃、回転数100rpmの条件で溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。
【0073】
得られた樹脂組成物を住友重工業製射出成形機SG75H−MIVを用い、シリンダー温度190℃、金型温度40℃で射出成形を行い、厚み3mmの成形品(ASTM引張試験片、ASTM曲げ試験片)を得た。
【0074】
得られた成形品を用いて、各種評価を行った結果を表1に示す。なお、耐久性は、恒温恒湿槽中で、60℃、相対湿度95%の条件で300時間処理を行ったものである。
【0075】
【表1】

【0076】
表1の結果から、本発明の樹脂組成物および成形品は、ポリ乳酸樹脂が分散相、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂が連続相を形成することがわかる。その結果として、燃焼熱量を低く抑えながら、成形性、耐久性、耐薬品性に優れていることがわかる。
【0077】
[実施例8〜20、比較例5]
表2に示すようにポリ乳酸樹脂、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂を配合し、30mm径の二軸押出機を用い、シリンダー温度190℃、回転数100rpmの条件で溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。
【0078】
得られた樹脂組成物を住友重工業製射出成形機SG75H−MIVを用い、シリンダー温度190℃、金型温度90℃で射出成形を行い、厚み3mmの成形品(ASTM引張試験片、ASTM曲げ試験片)を得た。
【0079】
得られた成形品を用いて、各種評価を行った結果を表2に示す。なお、耐久性は、恒温恒湿槽中で、70℃、相対湿度95%の条件で500時間処理を行ったものである。
【0080】
【表2】

【0081】
表2の結果から、本発明の樹脂組成物および成形品は、ポリ乳酸樹脂が分散相、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂が連続相を形成することがわかる。その結果として、成形性、耐久性、耐薬品性に優れていることわかる。また、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂として、立体規則性の高い樹脂を併用することにより、成形性もしくは靭性に優れた樹脂組成物が得られることがわかる。さらに、未変性オレフィン系樹脂に変性オレフィン系樹脂を併用することにより、靭性、耐熱性にも優れた樹脂組成物が得られることがわかる。
【0082】
[実施例21〜29、比較例6〜9]
表3に示すようにポリ乳酸樹脂、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂、充填剤、可塑剤、カルボキシル基反応性化合物を配合し、30mm径の二軸押出機を用い、シリンダー温度190℃、回転数100rpmの条件で溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。
【0083】
得られた樹脂組成物を住友重工業製射出成形機SG75H−MIVを用い、シリンダー温度190℃、金型温度90℃で射出成形を行い、厚み3mmの成形品(ASTM引張試験片、ASTM曲げ試験片)を得た。
【0084】
得られた成形品を用いて、各種評価を行った結果を表2に示す。なお、耐久性は、恒温恒湿槽中で、70℃、相対湿度95%の条件で500時間処理を行ったものである。
【0085】
【表3】

【0086】
表3の結果から、本発明の樹脂組成物および成形品は、ポリ乳酸樹脂が分散相、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂が連続相を形成することがわかる。その結果として、成形性、耐久性、耐薬品性に優れていることわかる。さらに、未変性オレフィン系樹脂に変性オレフィン系樹脂、或いはスチレン系樹脂を併用することで、もしくはさらに充填剤、可塑剤を配合することで、靭性、耐熱性にも優れた樹脂組成物が得られることがわかる。
【0087】
[実施例30〜34、比較例10〜12]
表4に示すようにポリ乳酸樹脂およびポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂を配合し、30mm径の二軸押出機を用い、シリンダー温度190℃、回転数100rpmの条件で溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。
【0088】
得られた樹脂組成物を住友重工業製射出成形機SG75H−MIVを用い、シリンダー温度190℃、金型温度40℃で射出成形を行い、厚み3mmの成形品(ASTM引張試験片、ASTM曲げ試験片)を得た。
【0089】
得られた成形品を用いて、各種評価を行った結果を表4に示す。なお、耐久性は、恒温恒湿槽中で、60℃、相対湿度95%の条件で300時間処理を行ったものである。
【0090】
【表4】

【0091】
表4の結果から、本発明の樹脂組成物および成形品は、ポリ乳酸樹脂が分散相、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂が連続相を形成することがわかる。その結果として、成形性、耐久性、耐薬品性、靭性に優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂を100重量部未満配合してなる樹脂組成物であって、ポリ乳酸樹脂が分散相、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂が連続相となる相構造を有する樹脂組成物。
【請求項2】
温度190℃、剪断速度60秒―1の条件で測定したポリ乳酸樹脂の溶融粘度とポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の溶融粘度の比が、1以上である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂が、オレフィン系樹脂である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン樹脂を含むものである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
さらに充填剤を配合してなる請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
さらに可塑剤を配合してなる請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
さらにカルボキシル基反応性化合物を配合してなる請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物からなる成形品。

【公開番号】特開2006−321988(P2006−321988A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115102(P2006−115102)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】