説明

樹脂組成物およびそれを用いた硬化体

【課題】紫外線(UV)光硬化性を有し、耐電解質液性に優れ、しかも接着性が良好で高い耐久性を備えたシールが可能となる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記の(A)を主成分とする樹脂組成物である。
(A)分子末端および分子側鎖の少なくとも一方に、(メタ)アクリロイル基を有するフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感型太陽電池等において、ガラス基板やプラスチックフィルム基板間を接着しシールする際に用いられるシール材料等として有用な樹脂組成物およびそれを用いた硬化体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
色素が担持されたTiO2 等の半導体膜付き透明導電基板と対向電極基板との間にレドックス系電解質を挟持した色素増感型太陽電池は、太陽光の変換効率が高いことから、次世代低価格太陽電池として有望視されている。しかし、ヨウ素やヨウ化リチウム等の液体電解質をガラス基板やプラスチックフィルム基板に挟持した場合、従来から使用されているエチレン−メタクリル酸共重合アイオノマー樹脂をシール材料として用いると、上記液体電解質の液漏れや外界からの吸湿を防止することができないため耐久性に劣るという問題があった。一方、液晶シール材料として、公知のエポキシ樹脂系シール材料やウレタン樹脂系シール材料、光硬化アクリル系シール材料が用いられているが、これらシール材料は、その極性構造に由来して液体電解質による膨潤を抑制することができないという問題があった。
【0003】
このようなことから、例えば、フッ素樹脂をシール材として用いることが検討されている。例えば、フルオロオレフィンとヒドロキシアルキルビニルエーテルとを共重合して得られるヒドロキシル基を有する含フッ素ポリマーを、多価イソシアネートやメチロールメラミンを硬化剤として架橋・硬化してなる硬化体が、可撓性,耐熱性,耐薬品性,耐候性,耐溶剤性,耐化学薬品性に優れているとして提案されている(特許文献1参照)。さらに、無溶剤一液性樹脂組成物として、含フッ素ポリマー中に光重合部位を導入し、(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を用いた一液無溶剤重合体組成物が提案されている(特許文献2参照)。また、ポリフルオロ炭化水素基含有(メタ)アクリロイルモノマーやオリゴマーを用いた無溶剤一液性樹脂組成物が提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開昭62−149764号公報
【特許文献2】特開2002−241446号公報
【特許文献3】特開2002−167503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のものは、シール材料として用いた場合、2液タイプとなることから使用(ハンドリング)性が悪く、しかも常温硬化の場合は、例えば、20℃で3日間、加熱硬化の場合では、例えば、100〜180℃で20〜60分間程度の条件を必要とするため、硬化作業性に著しく劣るという欠点を有している。また、上記特許文献2に記載の一液無溶剤重合体組成物は、液体電解質により容易に膨潤したり、さらに基板との接着が充分ではないという問題があった。そして、上記特許文献3に記載の無溶剤一液性樹脂組成物は、接着性が不充分であるという欠点があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、紫外線(UV)光硬化性を有し、耐電解質液性に優れ、しかも接着性の良好な高い耐久性を備えたシールが可能となる樹脂組成物およびそれを用いた硬化体の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、下記の(A)を主成分とする樹脂組成物を第1の要旨とする。
(A)分子末端および分子側鎖の少なくとも一方に(メタ)アクリロイル基を有するフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体。
【0007】
また、本発明は、上記樹脂組成物を共架橋して得られる硬化体を第2の要旨とする。
【0008】
すなわち、本発明者は、耐電解質液性および接着性に優れ、高い耐久性を備えたシールを可能とするシール材料となりうる樹脂組成物を得るために鋭意検討を重ねた。その結果、上記分子末端および分子側鎖の少なくとも一方に(メタ)アクリロイル基を有する特殊なフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体(A)を用いると、光重合開始剤の光ラジカル開裂作用により発生したラジカル活性種が、上記フルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体(A)の二重結合をラジカル架橋するという作用により、得られる硬化体において、優れた耐電解質液性と接着性を有し、良好な耐久性が得られることを見出し本発明に到達した。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明は、分子末端および分子側鎖の少なくとも一方に(メタ)アクリロイル基を有する特殊なフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体(A)を主成分とする樹脂組成物である。このため、優れた耐電解質性および接着性を備えている。したがって、本発明の樹脂組成物は、例えば、ガラス基板またはプラスチックフィルム基板間を接着しシールするためのシール材料として有用であり、このようなシール材料を用いることにより、耐久性に優れた色素増感型太陽電池を得ることができる。
【0010】
そして、上記特殊なフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体(A)に加えて、(メタ)アクリロキシシラン化合物類(B)、特に一般式(1)で表される(メタ)アクリロイル基含有オルガノアルコキシシランを用いると、透明導電基板や対向電極基板との接着性がさらに向上し、耐久性に優れた色素増感型太陽電池を得ることができる。
【0011】
また、上記特殊なフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体(A)に加えて、(メタ)アクリロイル基含有シロキサン類(C)、特に一般式(2)で表される(メタ)アクリロイル基含有オルガノシロキサンを用いると、上記と同様に透明導電基板や対向電極基板との接着性がさらに向上し、耐久性に優れた色素増感型太陽電池を得ることができる。
【0012】
そして、上記特殊なフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体(A)として、一般式(5)で表される(メタ)アクリロキシアルキルクロロシラン類とフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体の反応生成物を用いると、上記と同様に透明導電基板や対向電極基板との接着性がさらに向上し、耐久性に優れた色素増感型太陽電池を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の樹脂組成物は、特定の共重合体(A)を主成分として用いることにより得られる。なお、本発明において、主成分とは、樹脂組成物を構成する主たる成分のことであって、組成物の特性に大きな影響を与えるものであることを意味する。したがって、樹脂組成物全体に占める重量割合にのみ限定されるものではない。なお、本発明において、(メタ)アクリロイル基とは、メタクリロイル基またはアクリロイル基を意味し、(メタ)アクリロキシとは、メタクリロキシまたはアクリロキシを意味し、さらに(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸またはアクリル酸を意味する。
【0014】
上記特定の共重合体(A)は、分子末端および分子側鎖の少なくとも一方に(メタ)アクリロイル基を有するフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体である。
【0015】
上記基本構造となるフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体は、フルオロオレフィンとビニルエーテルを共重合することにより得られるものである。
【0016】
上記フルオロオレフィンとしては、パーフルオロオレフィン、クロロトリフルオロオレフィン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0017】
上記ビニルエーテルとしては、アルキルビニルエーテル、カルボキシル基置換アルキルビニルエーテル、ヒドロキシル基置換アルキルビニルエーテル等があげられる。
【0018】
そして、上記基本構造となるフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体の分子末端および分子側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入するためには、上記各モノマー成分に加えて、さらにモノマー成分としてヒドロキシアルキルビニルを用い共重合してもよい。
【0019】
上記ヒドロキシアルキルビニルとしては、炭素数2〜5の直鎖状または分岐状のヒドロキシアルキル基を有するものが好ましく、特にヒドロキシブチル基を用いることが好ましい。
【0020】
このような各モノマー成分を共重合させて得られるフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体としては、例えば、下記の一般式(3)で表される構造単位を備えたものがあげられる。下記の構造単位において、繰り返し単位a,b,c,dはブロック共重合であってもランダム共重合であってもいずれの態様の共重合であってもよい。
【0021】
【化1】

【0022】
そして、上記基本構造となるフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体において、フルオロオレフィンに由来する繰り返し構造単位の含有量は、全体の40〜70モル%の範囲に設定することが、耐熱性,耐薬品性,耐候性,耐溶剤性,耐化学薬品性を充分に発揮させるという観点から好ましい。
【0023】
また、上記各モノマー成分を共重合させて得られるフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体の分子量は、重量平均分子量(Mw)が1000〜200000の範囲であることが好ましい。より詳しくはその共重合体中にヒドロキシル基を1〜200個有するものが、可撓性,耐熱性,耐薬品性,耐候性,耐溶剤性,耐化学薬品性を充分に発揮させることが可能となり好ましい。
【0024】
つぎに、上記各モノマー成分を共重合させて得られるフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体の分子末端および分子側鎖の少なくとも一方に、(メタ)アクリロイル基を導入するために用いられる(メタ)アクリロイル基含有化合物としては、下記の一般式(4)で表されるアクリル酸化合物類が用いられる。そして、この(メタ)アクリロイル基含有化合物を、上記フルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体のヒドロキシル基に反応させることにより導入することが可能となる。
【0025】
【化2】

【0026】
このような(メタ)アクリロイル基含有化合物としては、単独でもしくは2種以上併せて用いられるが、なかでも、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、塩化アクリロイル、塩化メタクリロイルが好適に用いられる。特に、上記共重合体のヒドロキシル基との反応性に富む、塩化アクリロイル、塩化メタクリロイルが好適に用いられる。
【0027】
上記(メタ)アクリロイル基含有化合物として塩化アクリロイル、塩化メタクリロイルを用いる場合は、例えば、上記塩化アクリロイル、塩化メタクリロイルを溶剤に溶解した後、窒素気流下、アミン触媒により脱塩化水素反応を生起させることにより、容易にフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体に(メタ)アクリロイル基を導入することができる。
【0028】
また、上記(メタ)アクリロイル基含有化合物としてアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルを用いる場合は、例えば、上記アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルを溶剤に溶解した後、チタン,スズ等の金属や有機金属塩等を触媒として、エステル交換反応を生起させることにより、容易にフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体に(メタ)アクリロイル基を導入することができる。特に、上記触媒として、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のアルコキシチタネート化合物、ジブチルチンラウレート等が好適に用いられる。
【0029】
一方、上記各モノマー成分を共重合させて得られるフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体の分子末端および分子側鎖の少なくとも一方に、(メタ)アクリロイル基を導入するために用いられる(メタ)アクリロイル基含有化合物としては、下記の一般式(5)で表される(メタ)アクリロキシアルキルクロロシラン類も用いられる。そして、この(メタ)アクリロキシアルキルクロロシラン類を、上記フルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体のヒドロキシル基に反応させることにより導入することが可能となる。
【0030】
【化3】

【0031】
このような(メタ)アクリロキシアルキルクロロシラン類としては、単独でもしくは2種以上併せて用いられるが、なかでも、上記共重合体であるフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体のヒドロキシル基との反応性に富む、アクリロキシアルキルクロロシラン、メタクリロキシアルキルクロロシランが好適に用いられる。
【0032】
上記(メタ)アクリロキシアルキルクロロシラン類として、アクリロキシアルキルクロロシラン、メタクリロキシアルキルクロロシランを用いる場合は、例えば、上記アクリロキシアルキルクロロシラン、メタクリロキシアルキルクロロシランを溶剤に溶解した後、窒素気流下、水酸化ナトリウム(NaOH)、アミン触媒により脱塩化水素化反応を生起させることにより、容易にフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体に(メタ)アクリロイル基を導入することができる。
【0033】
このような(メタ)アクリロキシアルキルクロロシラン類としては、具体的には、3−アクリロキシプロピルジクロロメチルシラン、3−アクリロキシプロピルクロロジメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルジクロロメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルクロロジメチルシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルクロロシラン類等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0034】
上記反応に用いる反応溶媒としての溶剤には、活性水素が無くヒドロキシル基含有含フッ素ポリマーであるフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体や(メタ)アクリロイル基含有化合物を溶解するものが用いられるが、好適にはトルエン、キシレン等の有機溶剤が用いられる。
【0035】
上記反応の進行度合いは、例えば、赤外吸収スペクトルの水酸基由来の特性吸収帯と、(メタ)アクリロイル基由来の特性吸収帯を測定することにより確認することができる。
【0036】
そして、フルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体(ヒドロキシアルキルビニルを共重合してなる)の有するヒドロキシル基に対する(メタ)アクリロイル基の導入率は、0.1〜100%であることが好ましく、残存するヒドロキシル基の接着性効果を考慮すると、1〜90%であることが特に好ましい。すなわち、導入率が0.1%未満では、UV光硬化に劣る傾向がみられるからである。
【0037】
本発明の樹脂組成物においては、主成分である分子末端および分子側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体(A)とともに、共架橋可能な非極性光重合化合物を用いることができる。上記非極性とは、溶解性パラメーターが小さい値のものをいい、大きい値を示すものは極性という。例えば、色素増感型太陽電池の液体電解質に極性溶媒を用いる場合は、シール材料となる樹脂組成物では非極性なものが好ましい。
【0038】
上記共架橋可能な非極性光重合化合物としては、(メタ)アクリロキシシラン化合物類(B)、(メタ)アクリロイル基含有シロキサン類(C)が用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0039】
上記(メタ)アクリロキシシラン化合物類(B)としては、例えば、下記の一般式(1)で表される(メタ)アクリロイル基含有オルガノアルコキシシランがあげられる。
【0040】
【化4】

【0041】
上記(メタ)アクリロイル基含有オルガノアルコキシシランとしては、具体的には、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシシラン化合物類があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0042】
一方、上記(メタ)アクリロイル基含有シロキサン類(C)としては、例えば、下記の一般式(2)で表される(メタ)アクリロイル基含有オルガノシロキサンがあげられる。
【0043】
【化5】

【0044】
上記(メタ)アクリロイル基含有オルガノシロキサンとしては、より具体的には、下記の構造式(a)で表されるアクリロイル基含有オルガノシロキサン、下記の構造式(b)で表されるメタクリロイル基含有オルガノシロキサン等が好適に用いられる。
【0045】
【化6】

【0046】
【化7】

【0047】
例えば、上記構造式(a)において、n=1の場合における、1,3−ビス(3−アクリロキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが例示される。
【0048】
また、上記構造式(a),(b)において、光反応性官能基(二重結合)1個当たりの官能基当量は500〜3000の範囲が好ましい。
【0049】
上記(メタ)アクリロキシシラン化合物類(B)、(メタ)アクリロイル基含有シロキサン類(C)の配合割合は、これら化合物(B),(C)の合計量が樹脂組成物全体の5〜80重量%の範囲となるよう設定することが好ましい。特に好ましくは10〜50重量%である。このような範囲に設定することにより、UV光硬化性に優れ、かつシール作業性に優れた粘性を有する無溶剤一液性の樹脂組成物が得られるようになる。
【0050】
また、本発明の樹脂組成物の耐膨潤性を損なわない範囲で、上記共架橋可能な非極性光重合化合物以外に、さらに他の共架橋可能な非極性光重合化合物を併用することができる。このような非極性光重合化合物としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、ビニルエーテル化合物、スチレン、酢酸ビニル等のビニル化合物等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0051】
本発明においては、主成分である分子末端および分子側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体(A)および前述の各種共架橋可能な非極性光重合化合物とともに、光重合開始剤を用いることができる。
【0052】
上記光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等の各種公知の光ラジカル発生剤が用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0053】
上記光重合開始剤の含有量は、樹脂組成物全体中の0.1〜30重量%の範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは0.5〜20重量%の範囲である。
【0054】
さらに、本発明の樹脂組成物には、その用途等に応じて、他の添加剤である、酸化防止剤、消泡剤、安定剤、界面活性剤、着色剤、無機質充填剤、有機質充填剤、各種スペーサー、溶剤等を必要に応じて適宜に配合することができる。
【0055】
本発明の樹脂組成物は、例えば、つぎのようにして作製される。まず、前述のような反応により、主成分である分子末端および分子側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する特殊なフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体(A)を調製する。ついで、この特殊なフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体(A)とともに、任意成分である共架橋可能な非極性光重合化合物および光重合開始剤、さらに必要に応じて他の添加剤を用いて、所定の割合で配合し混合することにより得られる。
【0056】
このようにして得られる樹脂組成物は、例えば、UVランプ等により紫外線を照射した後、必要に応じて所定の温度でのポストキュアを行うことにより硬化させることができる。
【0057】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0058】
〔実施例1〕
フルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体〔旭硝子社製、ルミフロンLF200F、平均分子量12000、ガラス転移温度(Tg)35℃、水酸基価52mgKOH/g〕20gをトルエン80gに溶解した後、これにトリエチルアミン0.8ml、塩化アクリロイル8mlを添加し、不活性ガス(窒素ガス)雰囲気下、室温(25℃)にて2時間攪拌して反応させることにより生成物を調製した。ついで、この生成物をメタノールで再沈殿させ、乾燥させることにより無色固体を得た。得られた無色固体を核磁気共鳴分析装置(NMR:日本電子社製のFT−NMR、LA400)を用いて分析した結果、無色固体におけるアクリロイル基由来ピークを確認した。
【0059】
つぎに、得られた無色固体7gを3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(B)3gに溶解し、これに光ラジカル重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製、イルガキュア651)0.5gを添加して樹脂組成物を作製した。
【0060】
得られた樹脂組成物を2枚のガラス板で挟持し、これにUV照射(3000mJ/cm2 )しガラス板に接着した硬化体(厚み0.1mm)を作製した。
【0061】
〔実施例2〕
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(B)3gに代えて1,3−ビス(3−アクリロキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(C)3gを用いた。それ以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を作製した。そして、得られた樹脂組成物を2枚のガラス板で挟持し、これにUV照射(3000mJ/cm2 )しガラス板に接着した硬化体(厚み0.1mm)を作製した。
【0062】
〔実施例3〕
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(B)に代えて、前記構造式(b)で表される末端メタクリロイル基ジメチルシリコーン(動粘度58mm2 /s、官能基当量2370)(C)を3g用いて、無色固体7gを100℃で加熱相溶させた。その後、超音波をかけながら冷却してグリース状の樹脂組成物を作製した。そして、得られた樹脂組成物を2枚のガラス板で挟持し、これにUV照射(3000mJ/cm2 )しガラス板に接着した硬化体(厚み0.1mm)を作製した。
【0063】
〔実施例4〕
実施例1で使用したガラス板に代えて、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理した表面処理済みガラス板を用いた。それ以外は実施例1と同様にして表面処理済みガラス板に接着した硬化体(厚み0.1mm)を作製した。
【0064】
〔実施例5〕
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(B)の使用量を0.5gに代えた。それ以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を作製した。そして、得られた樹脂組成物を2枚のガラス板で挟持し、これにUV照射(3000mJ/cm2 )しガラス板に接着した硬化体(厚み0.1mm)を作製した。
【0065】
〔実施例6〕
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(B)の使用量を27gに代えた。それ以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を作製した。そして、得られた樹脂組成物を2枚のガラス板で挟持し、これにUV照射(3000mJ/cm2 )しガラス板に接着した硬化体(厚み0.1mm)を作製した。
【0066】
〔実施例7〕
前記構造式(b)で表される末端メタクリロイル基ジメチルシリコーン(動粘度58mm2 /s、官能基当量2370)(C)の使用量を0.5gに代えた。それ以外は実施例2と同様にして樹脂組成物を作製した。そして、得られた樹脂組成物を2枚のガラス板で挟持し、これにUV照射(3000mJ/cm2 )しガラス板に接着した硬化体(厚み0.1mm)を作製した。
【0067】
〔実施例8〕
前記構造式(b)で表される末端メタクリロイル基ジメチルシリコーン(動粘度58mm2 /s、官能基当量2370)(C)の使用量を27gに代えた。それ以外は実施例2と同様にして樹脂組成物を作製した。そして、得られた樹脂組成物を2枚のガラス板で挟持し、これにUV照射(3000mJ/cm2 )しガラス板に接着した硬化体(厚み0.1mm)を作製した。
【0068】
〔実施例9〕
フルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体〔旭硝子社製、ルミフロンLF200F、平均分子量12000、ガラス転移温度(Tg)35℃、水酸基価52mgKOH/g〕10.77gをトルエン80gに溶解した後、3−メタクリロキシプロピルジクロロメチルシラン2.4g、引き続き、20重量%水酸化ナトリウム水溶液0.4mlを添加し、不活性ガス(窒素ガス)雰囲気下、室温(25℃)にて2時間攪拌して反応させることにより生成物を調製した。ついで、この生成物をメタノールで再沈殿させ、乾燥させることにより無色固体を得た。得られた無色固体を核磁気共鳴分析装置(NMR:日本電子社製のFT−NMR、LA400)を用いて分析した結果、無色固体におけるアクリロイル基由来ピークを確認した。
【0069】
つぎに、得られた無色固体7gを3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(B)3gに溶解し、これに光ラジカル重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製、イルガキュア651)0.5gを添加して樹脂組成物を作製した。
【0070】
得られた樹脂組成物を2枚のガラス板で挟持し、これにUV照射(3000mJ/cm2 )しガラス板に接着した硬化体(厚み0.1mm)を作製した。
【0071】
〔実施例10〕
フルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体〔旭硝子社製、ルミフロンLF200F、平均分子量12000、ガラス転移温度(Tg)35℃、水酸基価52mgKOH/g〕10.77gをトルエン80gに溶解した後、3−メタクリロキシプロピルジクロロメチルシラン14.4g、引き続き、20重量%水酸化ナトリウム水溶液0.4mlを添加し、不活性ガス(窒素ガス)雰囲気下、室温(25℃)にて2時間攪拌して反応させることにより生成物を調製した。ついで、この生成物をメタノールで再沈殿させ、乾燥させることにより粘稠液体を得た。得られた粘稠液体を核磁気共鳴分析装置(NMR:日本電子社製のFT−NMR、LA400)を用いて分析した結果、粘稠液体におけるアクリロイル基由来ピークを確認した。
【0072】
つぎに、得られた粘稠液体10gに光ラジカル重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製、イルガキュア651)0.5gを添加して樹脂組成物を作製した。
【0073】
得られた樹脂組成物を2枚のガラス板で挟持し、これにUV照射(3000mJ/cm2 )しガラス板に接着した硬化体(厚み0.1mm)を作製した。
【0074】
〔比較例〕
フルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体〔旭硝子社製、ルミフロンLF200F、平均分子量12000、ガラス転移温度(Tg)35℃、水酸基価52mgKOH/g〕7gを3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(B)3gに溶解し、これに光ラジカル重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製、イルガキュア651)0.5gを添加して樹脂組成物を作製した。
【0075】
得られた樹脂組成物を2枚のガラス板で挟持し、これにUV照射(3000mJ/cm2 )しガラス板に接着した硬化体(厚み0.1mm)を作製した。
【0076】
〔耐電解質液性評価〕
このようにして得られた実施例品および比較例品であるガラス板で挟持した硬化体を、0.05モルのヨウ素を溶解したアセトニトリル液中に浸漬してガラス板が剥離する時間を測定した。
【0077】
その結果、全ての実施例品は500時間以上経過しても剥離することはなかった。これに対して、比較例品は12時間経過後に剥離した。
【0078】
〔接着性評価〕
このようにして得られた実施例品および比較例品であるガラス板で挟持した硬化体を、85℃/85%相対湿度雰囲気中に放置してガラス板が剥離する時間を測定した。
【0079】
その結果、全ての実施例品は500時間以上経過しても剥離することはなかった。これに対して、比較例品はわずか2時間経過後に剥離した。
【0080】
上記結果から、実施例品は、耐電解質液性および接着性ともに優れていることは明らかである。したがって、色素増感型太陽電池用シール材料として有用である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の樹脂組成物は、色素増感型太陽電池用シール材料の他、液晶用封止剤、有機EL用封止剤、有機太陽電池用シール材等の各種ガラス基板間やプラスチックフィルム基板間の接着シール材、センサーのガラス窓封止材料、CCDカメラのガラス窓封止材料、窓枠形状のパッケージ用シール材料等に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)を主成分とすることを特徴とする樹脂組成物。
(A)分子末端および分子側鎖の少なくとも一方に、(メタ)アクリロイル基を有するフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体。
【請求項2】
上記(A)に加えて、下記の(B)を含有する請求項1記載の樹脂組成物。
(B)(メタ)アクリロキシシラン化合物類。
【請求項3】
上記(B)の(メタ)アクリロキシシラン化合物類が、下記の一般式(1)で表される(メタ)アクリロイル基含有オルガノアルコキシシランである請求項2記載の樹脂組成物。
【化1】

【請求項4】
上記(A)に加えて、下記の(C)を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
(C)(メタ)アクリロイル基含有シロキサン類。
【請求項5】
上記(C)の(メタ)アクリロイル基含有シロキサン類が、下記の一般式(2)で表される(メタ)アクリロイル基含有オルガノシロキサンである請求項4記載の樹脂組成物。
【化2】

【請求項6】
光重合開始剤を含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
上記(A)である(メタ)アクリロイル基を有するフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体が、下記の一般式(5)で表される(メタ)アクリロキシアルキルクロロシラン類とフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体との反応生成物である請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【化3】

【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の樹脂組成物を共架橋して得られることを特徴とする硬化体。

【公開番号】特開2006−213907(P2006−213907A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227892(P2005−227892)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】