説明

樹脂組成物の製造方法

【課題】繊維及びポリオレフィン樹脂等を含有し、軽量でかつ、高い剛性及び硬度を有する成形体を製造することができる樹脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリエステル繊維(A)100質量部に対し、エチレン系共重合体(B)1質量部〜100質量部、変性ポリオレフィン樹脂(C)5質量部〜5000質量部とを含有する樹脂組成物の製造方法であって、前記エチレン系共重合体(B)及び前記変性ポリオレフィン樹脂(C)を溶融する溶融工程と、この溶融工程により得られる溶融樹脂と、前記ポリエステル繊維(A)とを前記ポリエステルの融点以下の温度で複合化する複合化工程とを有し、前記樹脂組成物中の前記エチレン系共重合体(B)の含有量と、前記変性ポリオレフィン樹脂(C)の含有量は、所定の関係式を満たす樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な繊維を配合して、ポリオレフィン樹脂の引張強度や剛性や表面硬さなどの機械的強度を向上させることが提案されている。例えば特許文献1には、ポリオレフィン、変性ポリオレフィン及び強化繊維を含有する樹脂組成物が記載され、樹脂組成物の機械的強度向上のため、繊維と樹脂の密着性改良が重要であることが記載されている。
また、特許文献2には、マトリックスポリマー、変性ポリマー及び有機高分子繊維を含有する樹脂組成物が記載されている。この特許文献2には、繊維と樹脂との密着性の改良の手段として、樹脂への改質剤添加と繊維表面への反応性官能基を導入する手法が記載されている。
また、特許文献3には、ポリアルキレンナフタレンジカルボキシレート繊維の表面に収束剤が付着した繊維及び不飽和カルボン酸等で変性されたポリオレフィン樹脂を含有する樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平03−121146号公報
【特許文献2】特開2009−292861号公報
【特許文献3】国際公開第2009/093748号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の樹脂組成物は全て、軽量ではあるものの、満足し得る剛性及び硬度を有していない。本発明の目的は、繊維及びポリオレフィン樹脂等を含有し、軽量でかつ、高い剛性及び硬度を有する成形体を製造することができる樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ポリエステル繊維(A)100質量部に対し、エチレン共重合体(B)0.1質量部〜600質量部、変性ポリオレフィン樹脂(C)0.3質量部〜500質量部とを含有する樹脂組成物の製造方法であって、前記エチレン共重合体(B)及び前記変性ポリオレフィン樹脂(C)を溶融する溶融工程と、この溶融工程により得られる溶融樹脂と、前記ポリエステル繊維(A)とを前記ポリエステルの融点未満の温度で複合化する複合化工程とを有し、
前記樹脂組成物中の前記エチレン共重合体(B)の含有量と、前記変性ポリオレフィン樹脂(C)の含有量は、下記の式(1)を満たす樹脂組成物の製造方法を提供するものである。
0.02≦Cx・Cy/Bx・By≦3.0・・・式(1)
Bx:エチレン共重合体(B)の含有量
By:エチレン共重合体(B)中のグリシジル基を有する単量体単位の含有量
Cx:変性ポリオレフィン樹脂(C)の含有量
Cy:変性ポリオレフィン樹脂(C)中の不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体に由来する単量体単位の含有量
また、本発明は、上記樹脂組成物の製造方法であって、前記エチレン共重合体(B)又は前記変性ポリオレフィン樹脂(C)を溶融する溶融工程と、この溶融工程により得られる溶融樹脂と、前記ポリエステル繊維(A)とを前記ポリエステルの融点未満の温度で複合化する複合化工程と、前記溶融工程で使用された前記エチレン共重合体(B)又は前記変性ポリオレフィン樹脂(C)のうち、使用されていない方の樹脂を添加して混練する混練工程とを有し、
前記樹脂組成物中の前記エチレン共重合体(B)の含有量と、前記変性ポリオレフィン樹脂(C)の含有量は、上記の式(1)を満たす樹脂組成物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、繊維及びポリオレフィン樹脂等を含有し、軽量でかつ、高い剛性及び硬度を有する成形体を製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
〔樹脂組成物の組成〕
本発明で用いられる樹脂組成物は、ポリエステル繊維(A)100質量部に対し、エチレン共重合体(B)0.1質量部〜600質量部、変性ポリオレフィン樹脂(C)0.3質量部〜500質量部とを含有する。以下、各成分について説明する。
<ポリエステル繊維(A)>
本発明で用いられるポリエステル繊維(A)は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンイソフタレート等のアルキレングリコールと芳香族ジカルボン酸より合成されるポリエステルから得られる繊維;テレフタル酸と1,4−シクロヘキサンジメタノールより得られるポリエステルから得られる繊維;ポリオキシエチレン(付加モル数2)ビスフェノールAとマレイン酸、フタール酸、アジピン酸等を縮合して得られるポリエステルから得られる繊維;芳香族ジカルボン酸及び芳香族ジヒドロキシ化合物及び/又は芳香族ヒドロキシカルボン酸を縮合して得られる全芳香族ポリエステル、より具体的にはテレフタル酸とビスフェノールAの縮合物、イソフタル酸とハイドロキルp−ヒドロキシ安息香酸の縮合物等から得られる繊維が挙げられる。
これらのうち、アルキレングリコールと芳香族ジカルボン酸により合成されるポリエステルから得られる繊維を用いることが好ましい。
【0008】
ポリエステル繊維(A)の単糸繊度は、好ましくは1〜30デニール、より好ましくは2〜18デニールである。ポリエステル繊維(A)の単糸繊度がこのような範囲にあることにより本発明の目的を達成しやすくなる。単糸繊度を1デニール以上とすることにより、製糸性が安定する。繊度を30デニール以下とすることにより繊維/樹脂間の界面強度を適切なものとすることができる。繊維の分散の面からすれば、繊度が2デニール以上であることが好ましく、補強効果の面では繊度が18デニール以下であることが好ましい。
【0009】
ポリエステル繊維(A)の表面には、該ポリエステル繊維(A)100質量部に対して、収束剤が0.1〜10質量部付着していることが好ましく、0.1〜3質量部付着していることがより好ましい。収束剤として、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、澱粉、植物油、及びこれらとエポキシ化合物の混合物が挙げられる。収束剤は、ポリオレフィン樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含むことが好ましい。なお、収束剤に含まれるポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂組成物に含有される以下に述べるポリオレフィン樹脂と同一であってもよい。
【0010】
<エチレン共重合体(B)>
本発明で用いられるエチレン共重合体(B)とは、エチレン単位と、グリシジル基を有する単量体の単位とを含有する共重合体を意味する。ここで「単位」とは単量体から誘導される重合単位を意味する。グリシジル基を有する単量体として、グリシジルメタクリレート及びグリシジルアクリレートのようなα,β−不飽和グリシジルエステル;ならびにアリルグリシジルエーテル及び2−メチルアリルグリシジルエーテルのようなα,β−不飽和グリシジルエーテルを例示することができる。中でも、好ましくはグリシジルメタクリレートである。
エチレン共重合体(B)は、後述する変性ポリオレフィン樹脂(C)との相溶分散性の観点から、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、クロロスチレン及び2,4−ジメチルスチレンのような芳香族ビニル化合物の単位を有していないことが好ましい。
【0011】
エチレン共重合体(B)は、他の単量体の単位を有していてもよい。他の単量体として、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル及びアクリル酸ブチルのような不飽和カルボン酸エステル;ならびに酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニルのような不飽和ビニルエステルを例示することができる。
【0012】
エチレン共重合体(B)のメルトフローレイト(MFR)は0.1g/10分〜500g/10分であり、好ましくは10g/10分〜400g/10分である。ここでいうメルトフローレイトとは、JIS K 7210(1995)に規定された方法によって、荷重21.18N、試験温度190℃の条件で測定される。
【0013】
エチレン共重合体の製造方法として、エチレンとグリシジル基を有する単量体とを、高圧ラジカル重合法、溶液重合法及び乳化重合法のような重合方法によって共重合させる方法や、ポリエチレンのようなエチレン単位を含有する重合体に、グリシジル基を有する単量体をグラフト重合させる方法を例示することができる。
【0014】
樹脂組成物中のエチレン共重合体(B)の含有量(Bx)は、ポリエステル繊維(A)100質量部に対し、0.1質量部〜600質量部であり、0.2質量部〜420質量部であることが好ましく、0.4質量部〜300質量部であることがより好ましい。エチレン共重合体(B)の含有量が0.1質量部未満であると、十分な補強効果が得られず、420質量部を超えると十分な機械的強度が得られない場合がある。
【0015】
エチレン共重合体中のグリシジル基を有する単量体の単位の含有量(By)は、エチレン単位と、グリシジル基を有する単量体単位との合計を100質量%として、好ましくは0.01質量%〜30質量%、より好ましくは0.1質量%〜25質量%である。該単位の含有量は、WO/2008/08179号公報に記載されている方法に準じて測定される。
【0016】
<変性ポリオレフィン樹脂(C)>
本発明で用いられる変性ポリオレフィン樹脂(C)は、ポリオレフィン樹脂を不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体で変性して得られた樹脂である。この変性ポリオレフィン樹脂(C)の原料となるポリオレフィン樹脂は、1種類のオレフィンの単独重合体又は2種類以上のオレフィンの共重合体からなる樹脂である。変性ポリオレフィン樹脂(C)は、換言すれば、1種類のオレフィンの単独重合体又は2種類以上のオレフィンの共重合体に不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体を反応させて生成した樹脂であって、分子中に不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸誘導体に由来する部分構造を有している樹脂である。具体的には、次の(C−a)〜(C−c)の変性ポリオレフィン樹脂が挙げられる。これらは単独又は2種以上を併用してもよい。
(C−a):オレフィンの単独重合体に、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体をグラフト重合して得られる変性ポリオレフィン樹脂。
(C−b):2種以上のオレフィンを共重合して得られる共重合体に、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体をグラフト重合して得られる変性ポリオレフィン樹脂。
(C−c):オレフィンを単独重合した後に2種以上のオレフィンを共重合して得られるブロック共重合体に、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体をグラフト重合して得られる変性ポリオレフィン樹脂。
【0017】
上記不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。
また、不飽和カルボン酸誘導体としては、不飽和カルボン酸の酸無水物、エステル化合物、アミド化合物、イミド化合物、金属塩等が挙げられる。不飽和カルボン酸誘導体の具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸モノアミド、マレイミド、N−ブチルマレイミド、メタクリル酸ナトリウム等が挙げられる
これらのうち、不飽和カルボン酸としてはマレイン酸、アクリル酸を用いることが好ましく、不飽和カルボン酸誘導体としては、無水マレイン酸、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを用いることが好ましい。
【0018】
上記変性ポリオレフィン樹脂(C)として、好ましくは、(C−c)である。(C−c)のうち、次の(C−d)を用いることがより好ましい。
(C−d):エチレン及び/又はプロピレンのオレフィンに由来する単位を主な単量体単位として含有するポリオレフィン樹脂に、無水マレイン酸又はメタクリル酸2−ヒドロキシエチルをグラフト重合することによって得られる変性ポリオレフィン樹脂
変性ポリオレフィン樹脂(C)に含有される不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体に由来する単量体単位の含有量は、剛性、硬度等の機械的強度という観点から、好ましくは0.1質量%〜20質量%、より好ましくは、0.1質量%〜10質量%である。なお、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体に由来する単量体単位の含有量は、赤外吸収スペクトル又はNMRスペクトルによって、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体に基づく吸収を定量して算出した値を用いる。
【0019】
変性ポリオレフィン樹脂(C)の不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体のグラフト効率は、得られる樹脂組成物の剛性及び硬度のような機械物性の観点から0.51以上であることが好ましい。不飽和カルボン酸及び/または不飽和カルボン酸誘導体のグラフト重合におけるグラフト効率は、以下の手順(1)〜(9)によって求めることができる。
(1)変性ポリオレフィン樹脂1.0gをキシレン100mlに溶解する;
(2)キシレン溶液をメタノール1000mlに攪拌しながら滴下して変性ポリオレフィン樹脂を再沈殿させる;
(3)再沈殿された変性ポリオレフィン樹脂を回収する;
(4)回収された変性ポリオレフィン樹脂を80℃にて8時間真空乾燥し、精製された変性ポリオレフィン樹脂を得る;
(5)精製された変性ポリオレフィン樹脂を熱プレスし、厚さ100μmのフィルムを作成する;
(6)フィルムの赤外吸収スペクトルを測定する;
(7)赤外吸収スペクトルから、不飽和カルボン酸及び/または不飽和カルボン酸誘導体に基づく吸収を定量し、変性ポリオレフィン樹脂中のポリオレフィン樹脂と反応した不飽和カルボン酸及び/または不飽和カルボン酸誘導体の含有量(X1)を算出する(X1は、上記Cyと同義である);
(8)別途、精製処理しない変性ポリオレフィン樹脂について、上記の手順(5)〜(6)を行ない、その赤外吸収スペクトルから、精製処理しない変性ポリオレフィン樹脂中の不飽和カルボン酸及び/または不飽和カルボン酸誘導体の含有量(X2)を算出する(X2は、ポリオレフィン樹脂と反応した不飽和カルボン酸及び/または不飽和カルボン酸誘導体の含有量(X1)と、ポリオレフィン樹脂と反応していない(つまり、遊離の)不飽和カルボン酸及び/または不飽和カルボン酸誘導体の含有量との合計である);
(9)グラフト効率=X1/X2を算出する。
【0020】
これらの変性ポリオレフィン樹脂(C)は、溶液法、バルク法、溶融混練法等によって製造することができる。また、2種以上の方法を併用しても良い。溶液法、バルク法、溶融混練法等の具体的な例としては、例えば、「実用ポリマーアロイ設計(井出文雄著、工業調査会(1996年発行))」、Prog. Polym. Sci., 24, 81−142(1999)、特開2002−308947号公報、特開2004−292581号公報、特開2004−217753号公報、特開2004−217754号公報等に記載されている方法が挙げられる。
【0021】
樹脂組成物中の変性ポリオレフィン樹脂(C)の含有量は、ポリエステル繊維(A)100質量部に対し、0.3質量部〜500質量部であり、0.5質量部〜360質量部であることが好ましく、1質量部〜250質量部であることがより好ましい。変性ポリオレフィン樹脂(C)の含有量が0.3質量部未満であると、十分な補強効果が得られず、500質量部を越えると十分な機械的強度が得られない場合がある。
【0022】
本発明に係る樹脂組成物中のエチレン共重合体(B)の含有量と、変性ポリオレフィン樹脂(C)の含有量は、高い剛性を有する成形体を得るという観点から、下記式(1)を満たすことが好ましく、
0.02≦Cx・Cy/Bx・By≦3.0・・・(1)
下記式(2)を満たすことがより好ましく、
0.02≦Cx・Cy/Bx・By≦0.8・・・(2)
下記式(3)を満たすことがさらに好ましい。
0.02≦Cx・Cy/Bx・By≦0.1・・・(3)
Bx:エチレン共重合体(B)の含有量
By:エチレン共重合体(B)中のグリシジル基を有する単量体単位の含有量
Cx:変性ポリオレフィン樹脂(C)の含有量
Cy:変性ポリオレフィン樹脂(C)中の不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体に由来する単量体単位の含有量
なお、Bx・By、Cx・Cyの値は、赤外吸収スペクトルから以下の方法により算出することができる。
【0023】
・Bx・Byの算出方法
下記の方法により得られたプレスシートを、赤外吸収スペクトルの特性吸収の吸光度を厚さで補正して、検量線法により樹脂部中のグリシジル基を有する単量体単位の含有率を求めた。なお、グリシジル基を有する単量体単位の特性吸収としては、910cm−1のピークを用いた。樹脂組成物の質量に、算出した含有率を乗じることでBx・Byを算出した。
・Cx・Cyの算出方法
下記の方法により得られたプレスシートを、赤外吸収スペクトルの特性吸収の吸光度を厚さで補正して、検量線法により樹脂部中の不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体に由来する単量体単位の含有量を求めた。なお、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体に由来する単量体単位の特性吸収としては、1780cm−1のピークを用いた。樹脂組成物の質量に、算出した含有率を乗じることでCx・Cyを算出した。
【0024】
赤外吸収スペクトル測定用には、本発明に係る樹脂組成物1.0gをキシレン100mlに溶解した後、サンプルのキシレン溶液をメタノール1000mlに攪拌しながら滴下してサンプルを再沈殿により回収し、回収したサンプルを真空乾燥した後(80℃、8時間)、熱プレスにより得られた厚さ100μmのフィルムを測定用試料として用いた。
【0025】
<ポリオレフィン樹脂(D)>
本発明では、前記エチレン共重合体(B)及び前記変性ポリオレフィン樹脂(C)以外のポリオレフィン樹脂(D)をさらに含有していてもよい。ポリオレフィン樹脂(D)は、オレフィンの単独重合体又は2種類以上のオレフィンの共重合体からなる樹脂であり、変性ポリオレフィン樹脂、例えば不飽和カルボン酸や不飽和カルボン酸誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂はこれに該当しない。ポリオレフィン樹脂(D)としては、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂(D)として好ましくは、ポリプロピレン樹脂である。ポリオレフィン樹脂(D)は、単一のポリオレフィン樹脂でも良く、2種以上のポリオレフィン樹脂の混合物でも良い。
【0026】
ポリプロピレン樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレンを単独重合してプロピレン単独重合体を生成させた後に、該プロピレン単独重合体の存在下にエチレンとプロピレンを共重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体等が挙げられる。耐熱性の観点から、ポリプロピレン樹脂として好ましくは、プロピレン単独重合体、プロピレンを単独重合した後にエチレンとプロピレンを共重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体である。
【0027】
プロピレン−エチレンランダム共重合体の、エチレンに由来する単量体単位の含有量(ただし、プロピレンとエチレンの合計量を100モル%とする)、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体の、α−オレフィンに由来する単量体単位の含有量(ただし、プロピレンとα−オレフィンの合計量を100モル%とする)、プロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体の、エチレンとα−オレフィンに由来する単量体単位の合計含有量(ただし、プロピレンとエチレンとα−オレフィンの合計量を100モル%とする)は、いずれも50モル%未満である。前記エチレンの含有量、α−オレフィンの含有量及びエチレンとα−オレフィンの合計含有量は、“新版 高分子分析ハンドブック”(日本化学会、高分子分析研究懇談会編 紀伊国屋書店(1995))に記載されているIR法又はNMR法を用いて測定される。
【0028】
ポリエチレン樹脂としては、例えば、エチレン単独重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体等が挙げられる。なお、エチレン−プロピレンランダム共重合体の、プロピレンに由来する単量体単位の含有量(ただし、エチレンとプロピレンの合計量を100モル%とする)、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体に含有されるα−オレフィンの含有量(ただし、エチレンとα−オレフィンの合計量を100モル%とする)、エチレン−プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体に含有されるプロピレンとα−オレフィンの合計含有量(ただし、エチレンとプロピレンとα−オレフィンの合計量を100モル%とする)は、いずれも50モル%未満である。
【0029】
ポリオレフィン樹脂(D)の構成成分であるα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−ヘプテン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等が挙げられる。好ましくは、炭素数4〜8のα−オレフィン(例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン)である。
【0030】
ポリオレフィン樹脂(D)は、溶液重合法、スラリー重合法、バルク重合法、気相重合法等によって製造することができる。また、これらの重合法を単独で用いても良く、2種以上の重合法を組み合わせても良い。ポリオレフィン樹脂(D)のより具体的な製造方法の例としては、例えば、“新ポリマー製造プロセス”(佐伯康治編集、工業調査会(1994年発行))、特開平4−323207号公報、特開昭61−287917号公報等に記載されている重合法が挙げられる。
【0031】
ポリオレフィン樹脂(D)の製造に用いられる触媒としては、マルチサイト触媒やシングルサイト触媒が挙げられる。好ましいマルチサイト触媒として、チタン原子、マグネシウム原子及びハロゲン原子を含有する固体触媒成分を用いて得られる触媒が挙げられ、また、好ましいシングルサイト触媒として、メタロセン触媒が挙げられる。ポリオレフィン樹脂(D)としてのポリプロピレン樹脂の製造に用いられる好ましい触媒として、上記のチタン原子、マグネシウム原子及びハロゲン原子を含有する固体触媒成分を用いて得られる触媒が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂(D)のメルトフローレイト(MFR)は、得られる樹脂組成物中のポリエステル繊維の分散性や、樹脂組成物の剛性及び硬度のような機械的強度の観点から好ましくは40〜200g/10分である。なお、MFRは、ASTM D1238に従い、230℃、21.2N荷重で測定した値である。
【0032】
ポリオレフィン樹脂(D)としてのプロピレン単独重合体のアイソタクチックペンタッド分率は、好ましくは0.95〜1.00、より好ましくは0.96〜1.00、さらに好ましくは0.97〜1.00である。アイソタクチックペンタッド分率とは、A. ZambelliらによってMacromolecules, 第6巻, 第925頁(1973年)に発表されている方法、すなわち13C−NMRを使用して測定されるプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。ただし、NMR吸収ピ−クの帰属は、Macromolecules, 第8巻, 第687頁(1975年)に基づいて行う。
ポリオレフィン樹脂(D)がプロピレンを単独重合した後にエチレンとプロピレンを共重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体の場合、前記プロピレン単独重合体部のアイソタクチックペンタッド分率は、好ましくは0.95〜1.00、より好ましくは0.96〜1.00、さらに好ましくは0.97〜1.00である。
プロピレンを単独重合した後にエチレンとプロピレンを共重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体中のエチレン−プロピレン共重合体の含有量は、好ましくは10質量%〜20質量%である。
プロピレンを単独重合した後にエチレンとプロピレンを共重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体中のエチレン−プロピレン共重合体に含まれるエチレンに由来する単量体単位の含有量は、好ましくは25質量%〜45質量%である。
【0033】
樹脂組成物中のポリオレフィン樹脂(D)の含有量は、ポリエステル繊維(A)100質量部に対し、30質量部〜850質量部であり、75質量部〜850質量部であることが好ましく、150質量部〜850質量部であることがより好ましい。ポリオレフィン樹脂(D)の含有量が30質量部未満であると重くなり、850質量部を超えると十分な機械的強度が得られない場合がある。
【0034】
<その他(E)>
本発明に係る樹脂組成物は、上記のポリオレフィン樹脂(D)以外に、1種以上のエラストマーを配合してもよい。エラストマーとしては、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、PVC系エラストマー等が挙げられる。
また、酸化防止剤、耐熱安定剤、中和剤、紫外線吸収剤等の安定剤、気泡防止剤、難燃剤、難燃助剤、分散剤、帯電防止剤、滑剤、シリカ等のアンチブロッキング剤、染料や顔料等の着色剤、可塑剤、造核剤や結晶化促進剤等を配合してもよい。
さらに、ガラスフレーク、マイカ、ガラス粉、ガラスビ−ズ、タルク、クレー、アルミナ、カーボンブラック、ウォールスナイト等の板状、粉粒状、ウィスカー状の無機化合物等を配合してもよい。
【0035】
〔樹脂組成物の製造方法〕
本発明に係る樹脂組成物は、溶融工程と、複合化工程と、場合によっては混練工程を有する。以下各工程について説明する。
<溶融工程>
溶融工程は、上記のエチレン共重合体(B)及び/又は変性ポリオレフィン樹脂(C)、必要に応じて、ポリオレフィン樹脂(D)を溶融する工程をいう。各成分の溶融は、バンバリーミキサー、プラストミル、ブラベンダープラストグラフ、一軸押出機、又は二軸押出機等を用いて行うことが好ましい。
溶融工程は1段階で行っても、多段階で行ってもよい。1段階での溶融工程とは、エチレン共重合体(B)、変性ポリオレフィン樹脂(C)、必要に応じてポリオレフィン樹脂(D)を一度に溶融させることをいい、多段階での溶融工程とは、これらの成分を複数回に分けて溶融させることをいう。
【0036】
本工程における溶融温度は、上記樹脂が溶融する温度であれば特に限定されるものではないが、170℃〜300℃であることが好ましく、180℃〜230℃であることがより好ましい。
また、溶融時間についても特に限定されるものではないが、樹脂の熱劣化を抑制するという観点から30分以下であることが好ましく、10分以下であることがより好ましい。
【0037】
<複合化工程>
複合化工程とは、溶融工程で得られる溶融樹脂とポリエステル繊維を一体化させる工程をいう。
複合化は樹脂成分とポリエステル繊維とが一体化できれば特に限定されるものではないが、溶融工程と同様に、バンバリーミキサー、プラストミル、ブラベンダープラストグラフ、一軸押出機、又は二軸押出機等を用いて行うことが好ましい。
【0038】
本工程において、複合化温度は樹脂を溶融させ繊維を溶融させないという観点から170℃〜260℃であることが好ましく、180℃〜230℃であることがより好ましい。また、複合化工程の時間は繊維の熱劣化を抑制するという観点から30分以下であることが好ましく、10分以下であることがより好ましい。
【0039】
複合化工程により得られる樹脂組成物は、ペレット状である。このペレットは射出成形に適用した場合、金型キャビティへの充填しやすさ、強度が高い成形体が得られるという観点から、重量平均長で2mm〜50mmであることが好ましい。より好ましい長さは、3mm〜20mmであり、特に好ましくは5mm〜15mmである。ペレットの全長を2mm以上とすることによって、ポリエステル繊維(A)を含有していない樹脂組成物から成形体を製造した場合と比較して、得られる成形体の剛性等の機械的強度を改良することが可能である。また、ペレットの全長を50mm以下とすることによって、成形しやすくなる。
【0040】
また、ペレットの長さとそのペレットに含有されるポリエステル繊維(A)の重量平均繊維長は等しくてもよい。ペレットの重量平均繊維長とペレットに含有されるポリエステル繊維(A)の重量平均繊維長とが等しいということは、ペレットに含有されるポリエステル繊維(A)の重量平均繊維長が、ペレットの全長の90%〜110%の範囲内にあることをいう。
【0041】
重量平均繊維長を算出するための各繊維の長さは、以下の手順(1)〜(4)で測定する。
(1)ペレットを、その重量の50倍以上のキシレン中に投入する。
(2)該キシレンを還流することで、樹脂組成物中の繊維を除く部分を完全にキシレンに溶解させる。
(3)ろ過により、該キシレン溶液から繊維を回収する。
(4)回収した繊維のうち50本以上について繊維長を測定する。
ペレット中の表面処理繊維の重量平均繊維長は、好ましくは2mm〜50mm、より好ましくは3mm〜20mm、さらに好ましくは5mm〜15mmである。また、このペレット中のポリエステル繊維は互いに平行に配列していることが好ましい。
【0042】
<混練工程>
本発明における混練工程とは、上記複合化工程でエチレン共重合体(B)及び変性ポリオレフィン樹脂(C)の両方を溶融させなかった場合において、複合化工程を経た後に
溶融工程で使用しなかった方の樹脂、及び必要に応じてその他の成分(E)を加えて混練する工程のことをいう。
混練温度は先の複合化工程で添加した繊維を溶融させないという観点から、複合化工程と同様に170℃〜260℃であることが好ましく、180℃〜230℃であることがより好ましい。また、混練時間は繊維の熱劣化を抑制するという観点から30分以下であることが好ましく、10分以下であることがより好ましい。
また、混練工程は他の工程と同様に、バンバリーミキサー、プラストミル、ブラベンダープラストグラフ、一軸押出機、又は二軸押出機等を用いて行うことが好ましく、溶融工程から混練工程までの一連の工程を一つの装置で連続して行うことが可能な一軸押出機又は二軸押出機を用いて行うことがより好ましい。
【0043】
<成形体>
上記のような方法により得られる樹脂組成物を用いて成形体を製造する際の成形方法としては、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法等が挙げられる。
本発明の成形体の用途としては、自動車用プラスチック部品が挙げられ、機械的強度、耐久性、振動減衰特性及び良好な外観が必要とされる外装部品、耐熱剛性の要求される内装部品、エンジン内の部品等が挙げられる。
外装部品としては、例えばフェンダー、オーバーフェンダー、グリルガード、カウルルーバー、ホイールキャップ、サイドプロテクター、サイドモール、サイドロアスカート、フロントグリル、サイドステップ、ルーフレール、リアスポイラー、バンパー等が挙げられ、内装部品としては、例えばインパネロア、トリム等が挙げられ、エンジン内の部品としては、例えばバンパービーム、クーリングファン、ファンシュラウド、ランプハウジング、カーヒーターケース、ヒューズボックス、エアクリーナーケース等が挙げられる。
また、本発明の成形体の用途としては、各種電気製品の部品、各種機械の部品、構造物等の部品等が挙げられ、各種電気製品の部品としては、例えば電動工具、カメラ、ビデオカメラ、電子レンジ、電気釜、ポット、掃除機、パーソナルコンピューター、複写機、プリンター、FDD、CRTの機械ハウジング等が挙げられ、各種機械の部品としては、例えばポンプケーシング等が挙げられ、構造物等の部品としては、例えばタンク、パイプ、建築用型枠等が挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例によって、本発明を説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例における評価方法を以下に示す。
(1)変性比(単位:−)
変性比は下記の式で示される値である。
変性比=Cx・Cy/Bx・By
Bx:エチレン共重合体(B)の含有量
By:エチレン共重合体(B)中のグリシジル基を有する単量体単位の含有量
Cx:変性ポリオレフィン樹脂(C)の含有量
Cy:変性ポリオレフィン樹脂(C)中の不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体に由来する単量体単位の含有量
【0045】
(2)成形体の比重、曲げ強度、引張破断強度、ロックウェル硬度
成形体の比重、曲げ強度、引張破断強度、ロックウェル硬度は得られたペレットを下記の成形機を用いて、下記の条件で射出成形したサンプル(80mm×80mm×3mm厚)で行った。
〔成形機〕
成形機:東洋機械金属株式会社製射出成形機Si−30III
型締力:30t
〔成形条件〕
シリンダ温度:190℃
金型温度:50℃
背圧:5MPa
射出速度:20mm/秒
(i)比重
A.S.T.M D792に従って、測定した。
(ii)曲げ強度(MPa)
サンプル厚みを4mmにした成形体を用い、A.S.T.M.D790に従って、下記条件で測定した。
測定温度:23℃
スパン(支点間距離):64mm
荷重速度:2mm/分
(iii)引張破断強度(MPa)
サンプル厚みを2mmにした成形体を用い、A.S.T.M.D638に従って、下記条件で測定した。
測定温度:23℃
引張速度:10mm/分
(iV)ロックウェル硬度(−)
サンプル厚みを4mmにした成形体を用い、A.S.T.M.D785に従って、下記条件で測定した。
測定温度:23℃
支持台:凸型アンビル(直径6mm)
試験荷重:60kg
【0046】
実施例に使用した各成分は以下の通りである。
(1)ポリエステル繊維(A)
ポリエステル繊維(A−1):150デニール/36フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維(南亜塑膠工業株式会社製 ポリエステル繊維 TARILIN DTY150/36/1 SET)
ポリエステル繊維(A−2):75デニール/36フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維(南亜塑膠工業株式会社製 ポリエステル繊維 TARILIN DTY75/36/1 SET)
(2)エチレン共重合体(B)
エチレン共重合体(B−1):エチレン−グリシジルメタアクリレート共重合体(住友化学製ボンドファースト、グレード:CG5001、MFR(荷重21.18N、試験温度190℃)=380g/10分、グリシジルメタアクリレート含量=19質量%)
【0047】
(3)変性ポリプロピレン(C)
変性ポリプロピレン(C−1):無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(MFR(230℃、21.2N荷重で測定)=70g/10分、無水マレイン酸グラフト量=0.6質量%)
なお、上記変性ポリオレフィン樹脂(C−1)は、特開2004−197068号公報の実施例1に記載された方法に従って作成した。このとき、未反応の無水マレイン酸の量は変性ポリプロピレン(C−1)に対して、0.3質量%であった。
(4)ポリプロピレン樹脂(D)
ポリプロピレン樹脂(D−1):プロピレン単独重合体(住友化学製ノーブレン、グレード:U501E1、MFR(230℃、21.2N荷重で測定)=120g/10分、アイソタクチックペンタッド分率=0.98)
【0048】
〔実施例1,2,比較例3〕
実施例1、2及び比較例3について、表1に示した組成の各成分を以下の通りに混練し、ペレットを得た。
東洋精機製ラボプラストミル(Cモデル)(スクリュ回転数:40rpm)を用い、混練温度190℃でポリエステル繊維とエチレン共重合体とポリオレフィン樹脂を4分間溶融させ、変性ポリオレフィンを添加して複合化を3分間行った。得られた組成物を190℃で熱プレスし、厚みが1mm程度のシートを作成した。厚みが1mm程度のシートを10mm角に裁断し、射出成形に用いた。
射出成形は上記10mm角ペレット(上記のシートを10mm角に裁断した樹脂組成物)を、射出成形機を用いて上記条件で射出成形し、評価用試験片を得た。
【0049】
〔比較例1,2〕
比較例1、2については、表1に示した組成の各成分を、上記と同様のラボプラストミル(スクリュ回転数:40rpm)を用い、温度190℃、混練時間7分で溶融混練した。得られた組成物を190℃で熱プレスし、厚みが1mm程度のシートを作成した。厚みが1mm程度のシートを10mm角に裁断し、実施例1と同様の方法で射出成形をし、評価用試験片を作成した。
【0050】
〔比較例4〕
比較例4については、表1に示した組成の各成分を混練温度280℃にした以外は実施例1と同様の方法でペレットを作成した。得られた混練物にはポリエステル繊維はなく、同繊維は完全に溶融して、その他の成分と溶融混練されていた。得られた組成物を実施例1と同様にして射出成形をし、評価用試験片を作成した。
【0051】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル繊維(A)100質量部に対し、エチレン共重合体(B)0.1質量部〜600質量部、変性ポリオレフィン樹脂(C)0.3質量部〜500質量部とを含有する樹脂組成物の製造方法であって、
前記エチレン共重合体(B)及び前記変性ポリオレフィン樹脂(C)を溶融する溶融工程と、
この溶融工程により得られる溶融樹脂と、前記ポリエステル繊維(A)とを前記ポリエステルの融点未満の温度で複合化する複合化工程と
を有し、
前記樹脂組成物中の前記エチレン共重合体(B)の含有量と、前記変性ポリオレフィン樹脂(C)の含有量は、下記の式(1)を満たす樹脂組成物の製造方法。
0.02≦Cx・Cy/Bx・By≦3.0・・・式(1)
Bx:エチレン共重合体(B)の含有量
By:エチレン共重合体(B)中のグリシジル基を有する単量体単位の含有量
Cx:変性ポリオレフィン樹脂(C)の含有量
Cy:変性ポリオレフィン樹脂(C)中の不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体に由来する単量体単位の含有量
【請求項2】
ポリエステル繊維(A)100質量部に対し、エチレン共重合体(B)0.1質量部〜600質量部、変性ポリオレフィン樹脂(C)0.3質量部〜500質量部とを含有する樹脂組成物の製造方法であって、
前記エチレン共重合体(B)又は前記変性ポリオレフィン樹脂(C)を溶融する溶融工程と、
この溶融工程により得られる溶融樹脂と、前記ポリエステル繊維(A)とを前記ポリエステルの融点未満の温度で複合化する複合化工程と、
前記溶融工程で使用された前記エチレン共重合体(B)又は前記変性ポリオレフィン樹脂(C)のうち、使用されていない方の樹脂を添加して混練する混練工程と
を有し、
前記樹脂組成物中の前記エチレン共重合体(B)の含有量と、前記変性ポリオレフィン樹脂(C)の含有量は、下記の式(1)を満たす樹脂組成物の製造方法。
0.02≦Cx・Cy/Bx・By≦3.0・・・式(1)
Bx:エチレン共重合体(B)の含有量
By:エチレン共重合体(B)中のグリシジル基を有する単量体単位の含有量
Cx:変性ポリオレフィン樹脂(C)の含有量
Cy:変性ポリオレフィン樹脂(C)中の不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体に由来する単量体単位の含有量
【請求項3】
前記ポリエステル繊維(A)100質量部に対し、前記エチレン共重合体(B)及び前記変性ポリオレフィン樹脂(C)以外のポリオレフィン樹脂(D)30質量部〜850質量部を更に含有する請求項1又は2に記載の樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2012−7158(P2012−7158A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117690(P2011−117690)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】