説明

樹脂組成物及びこれを用いた成形体

【課題】着色性及び表面特性等の外観特性に優れ、良好な機械的特性を有し、成形加工性が良好であり、かつ難燃性に優れた樹脂組成物を得る。
【解決手段】(A)+(B)+(C)100質量%として(A)ポリフェニレンエーテル10〜90質量%、(B)ゴム変性ポリスチレン90〜10質量%、(C)難燃剤のリン化合物0〜40質量%とを含有し、(D)染料を含有する樹脂組成物であり、上記(B)はゴム粒子を含有するHIPS(a)、(b)からなり、HIPS(a)/HIPS(b)の質量比が98/2〜70/30である樹脂組成物を提供する。
HIPS(a):ゴム粒子の形態が、主として1個のポリスチレンコア(単一細胞構造)であり、平均粒子径は0.1〜0.45μmであり、ゴム含量が3〜20質量%である。
HIPS(b):ゴム粒子の形態が主としてサラミ構造であり、平均粒子径は1.1〜2.5μmであり、ゴム含量が3〜20質量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色性、外観特性に優れ、実用上十分な機械的特性を有し、かつ環境面でも好ましい難燃性ポリフェニレンエーテル樹脂組成物及びこれを用いた成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
易燃性合成樹脂を難燃化する方法としては、従来からハロゲン系化合物及び三酸化アンチモンを添加する等の手法が用いられてきたが、環境衛生上、好ましくないために、難燃化方法の改善が望まれている。
【0003】
ポリフェニレンエーテル(以下、PPEと記述する。)とスチレン系樹脂とをベースとする混合樹脂(以下、変性PPEと記述する。)は、ポリフェニレンエーテルとスチレン系樹脂との混合比率に応じて、スチレン系樹脂単独からポリフェニレンエーテル単独までの範囲において、所定の耐熱性を発揮し、さらには電気特性、寸法安定性、耐衝撃性、耐酸性、耐アルカリ性、低吸水性及び低比重等についても優れた特性を有している。
【0004】
また、変性PPE樹脂は、有害性が問題であるハロゲン系化合物や三酸化アンチモンを用いずに難燃化を図ることができ、環境面や安全衛生面にも優れている。
さらに、無機充填剤、無機補強剤を添加することにより、高強度、高剛性、高耐熱の材料が得られ、電気・電子関係部品、事務機器部品、各種外装材、工業用品等、多岐に亘って利用できる。
【0005】
ところで、一般的な変性PPE樹脂として知られているPPEとゴム変性ポリスチレンとを主成分とする樹脂組成物に関し、これを用いて製造した成形品の表面光沢等の外観特性は、主としてゴム変性ポリスチレン中のゴム粒子、特にその粒子径に影響されるものであり、従来から外観特性と耐衝撃性との向上を図った樹脂組成物が開示されている。
また、小粒子径ゴム粒子を含有するHIPS(ハイインパクトポリスチレン)を配合し、透明性と耐衝撃性とに優れた変性PPE樹脂組成物や、着色性に優れたポリスチレン樹脂組成物についての開示もなされている(例えば、特許文献1乃至5参照。)。
【0006】
一方、変性PPE樹脂の難燃化剤としては、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート等のモノリン酸エステル、レゾルシノールやビスフェノールA等の2官能フェノール及び多官能フェノールを原料とした縮合リン酸エステル等の有機リン酸エステルが知られている。
上記難燃化剤の中でも、縮合リン酸エステル系難燃剤を用いた樹脂組成物は、モノリン酸エステル系難燃剤を用いた樹脂組成物に比較して、耐熱性に優れ、射出成形時の発煙や金型への難燃剤の付着等の問題点が少ないという利点を有しており、さらにはモノリン酸エステル難燃性に比べて、引張り強度、曲げ強度及び弾性率等の剛性の向上が図られる反面、樹脂本来の耐衝撃性を低下させるという欠点を有している。また、モノリン酸エステルに比較して難燃効果が劣るため、より多量に添加する必要がある。
【0007】
また、近年、薄型テレビの普及から、特に装飾性に優れた色調、光沢等の外観特性、深みのあるピアノの外観の様な黒色が要望され、同時に、実用上十分な難燃性、部品取り付けのための機械特性、表面硬度等を有する外装用成形体も要求されているが、上記従来技術においては、いずれもこれらの特性を全て満足する樹脂組成物は得られていない。
【0008】
変性PPE樹脂を黒色に着色する材料としてはカーボンブラックが知られているが、従来、開示されている変性PPEを用いると、上記のような深みのある黒色は発現できず、フローマークや微妙な色むらが発生し易いため、優れた装飾性が要求される用途には不向きである。
一方、着色性及び表面特性に優れている樹脂としては、例えば、AS樹脂、MMA樹脂、ABS樹脂、MAS樹脂やそれらのポリマーアロイが知られているが、これらの樹脂やポリマーアロイは、難燃化を図るためにはリン化合物は不向きであり、ハロゲンや三酸化アンチモンによる難燃化を行う必要があるため、環境上の観点からは好ましくなく、用途が限定されてしまうという欠点を有している。
【0009】
【特許文献1】特開昭46−5085号公報
【特許文献2】特開昭49−86434号公報
【特許文献3】特表昭57−502003号公報
【特許文献4】特開昭63−112646号公報
【特許文献5】特開昭63−230754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明においては、従来有害性が問題とされているハロゲン化合物を含まず環境面や安全衛生面に優れ、着色性及び表面特性等の外観特性に優れ、実用上十分な機械的特性を有し、射出成形時に金型への難燃剤の付着等の問題がほとんど無く、成形加工性が良好であり、かつ優れた難燃性を有している樹脂組成物、及びこれを用いた成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を達成するべく鋭意研究を行った結果、ポリフェニレンエーテル、特定のHIPS、リン化合物及び特定の着色剤を組み合わせることにより、目的を達成できる樹脂組成物を提供するに至った。
【0012】
請求項1の発明においては、
下記(A)+(B)+(C)を100質量%として、(A)ポリフェニレンエーテル10〜90質量%と、(B)ゴム変性ポリスチレン90〜10質量%と、(C)難燃剤としてのリン化合物0〜40質量%とを含有し、さらに、(D)着色剤としての染料を含有する樹脂組成物であって、前記(B)ゴム変性ポリスチレンは、ゴム粒子を含有するHIPS(a)、HIPS(b)からなり、HIPS(a)/HIPS(b)の質量比が98/2〜70/30である樹脂組成物を提供する。
ここで、(B)ゴム変性ポリスチレンは、以下の特性を有している。
HIPS(a):ゴム粒子の形態は、主として1個のポリスチレンコア(単一細胞構造)からなり、当該ゴム粒子の平均粒子径は0.1〜0.45μmであり、HIPS(a)100質量%中のゴム含量が3〜20質量%である。ここで、「主として」とは、ゴム粒子の90%以上、好ましくは95%以上であることを意味する。
HIPS(b):ゴム粒子の形態は主としてサラミ構造からなり、当該ゴム粒子の平均粒子径は1.1〜2.5μmであり、HIPS(b)100質量%中のゴム含量が3〜20質量%である。ここで「主として」とは、ゴム粒子の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上であることを意味する。
【0013】
請求項2の発明においては、前記(A)+前記(B)+前記(C)の合計100質量部に対して、前記(D)着色剤としての染料を0.1質量部以上含有している、請求項1に記載の樹脂組成物を提供する。
【0014】
請求項3の発明においては、前記(A)+前記(B)+前記(C)の合計100質量部に対して、前記(D)着色剤としての染料を、0.2質量部以上含有しており、CIE基準表色系のL*が29以下である請求項1に記載の樹脂組成物を提供する。
【0015】
請求項4の発明においては、前記(A)+前記(B)+前記(C)の合計100質量部に対して、前記(D)着色剤としての染料を、0.3質量部以上含有しており、CIE基準表色系のL*、a*、b*が、それぞれ、L*が28以下、a*が−1.0以上0.5以下、b*が−3.0以上0.5以下である請求項1に記載の樹脂組成物を提供する。
【0016】
請求項5の発明においては、前記(A)+前記(B)+前記(C)の合計100質量部に対して、前記(D)着色剤としての染料を、0.5質量部以上含有しており、CIE基準表色系のL*、a*、b*が、それぞれ、L*が27.6以下、a*が−0.3以上0.2以下、b*が−2.0以上−0.3以下である請求項1に記載の樹脂組成物を提供する。
【0017】
請求項6の発明においては、前記(C)難燃剤が、下記式(I)
【0018】
【化1】

【0019】
又は、下記式(II)
【0020】
【化2】

【0021】
で示される縮合リン酸エステルを主成分とするものであり、当該難燃剤(C)を1〜35質量%含有している請求項1乃至5のいずれか一項に記載の樹脂組成物を提供する。
上記式(I)、(II)中、Q1、Q2、Q3、Q4は、水素又は炭素数1〜6のアルキル基、R1、R2、R3、R4は、水素又はメチル基を表す。nは1以上の整数を、n1、n2は0〜2の整数を示し、m1、m2、m3、m4は、1〜3の整数を示す。
前記「主成分」については、n=1の縮合リン酸エステルの含有率が50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは75質量%以上であり、n=2〜4の縮合リン酸エステルの合計含有率が数質量%〜10数質量%であるものとする。
【0022】
請求項7の発明においては、前記(C)難燃剤が、下記式(I)
【0023】
【化3】

【0024】
で示される縮合リン酸エステルを主成分とするものであり、当該難燃剤(C)を3〜30質量%含有している請求項1乃至5のいずれか一項に記載の樹脂組成物を提供する。
上記式(I)中、Q1、Q2、Q3、Q4は、水素又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R1、R2、R3、R4は、水素又はメチル基を表す。nは1以上の整数を、n1、n2は0〜2の整数を示し、m1、m2、m3、m4は、1〜3の整数を示す。
前記「主成分」については、n=1の縮合リン酸エステルの含有率が50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは75質量%以上であり、n=2〜4の縮合リン酸エステルの合計含有率が数質量%〜10数質量%であるものとする。
【0025】
請求項8の発明においては、(E)ポリオレフィン系樹脂を、前記(A)+前記(B)+前記(C)の合計100質量部に対して、0.1〜3質量部さらに含有する請求項1乃至7のいずれか一項に記載の樹脂組成物を提供する。
【0026】
請求項9の発明においては、(F)ビニル芳香族単量体単位からなる重合体ブロックを50質量%以上と、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロックを50質量%未満とを有する水添ブロック共重合体を、前記(A)+前記(B)+前記(C)の合計100質量部に対して、0.2〜5質量部さらに含有する請求項8に記載の樹脂組成物を提供する。
【0027】
請求項10の発明においては、 請求項1乃至9のいずれか一項に記載の樹脂組成物の射出成形した成形体であり、JIS−Z−8741に基づく光沢度が90%以上である成形体を提供する。
【0028】
請求項11の発明においては、テレビ外装用成形体である請求項10に記載の成形体を提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ハロゲン化合物を含まず環境面や安全衛生面に優れ、着色性、表面特性等の外観特性に優れ、機械的特性に優れ、射出成形時に金型への難燃剤の付着等の問題がほとんど無く、かつ優れた難燃性を有している樹脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、本実施形態)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できるものとする。
【0031】
〔樹脂組成物〕
本実施形態の樹脂組成物は、
下記(A)+(B)+(C)を100質量%として、(A)ポリフェニレンエーテル10〜90質量%と、(B)ゴム変性ポリスチレン90〜10質量%と、(C)難燃剤としてのリン化合物0〜40質量%とを含有し、さらに、(D)着色剤としての染料を含有する樹脂組成物であって、前記(B)ゴム変性ポリスチレンは、ゴム粒子を含有するHIPS(a)、HIPS(b)からなり、HIPS(a)/HIPS(b)の質量比が98/2〜70/30である樹脂組成物である。
ここで、(B)ゴム変性ポリスチレンは、以下の特性を有している。
HIPS(a):ゴム粒子の形態は、主として1個のポリスチレンコア(単一細胞構造)からなり、当該ゴム粒子の平均粒子径は0.1〜0.45μmであり、HIPS(a)100質量%中のゴム含量が3〜20質量%である。ここで、「主として」とは、ゴム粒子の90%以上、好ましくは95%以上を意味する。
HIPS(b):ゴム粒子の形態は主としてサラミ構造からなり、当該ゴム粒子の平均粒子径は1.1〜2.5μmであり、HIPS(b)100質量%中のゴム含量が3〜20質量%である。ここで「主として」とは、ゴム粒子の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上を意味する。
【0032】
<(A)ポリフェニレンエーテル>
(A)ポリフェニレンエーテルは、下記式(III)及び/又は(IV)で表される単位の繰り返しである単独重合体、又は共重合体である。
【0033】
【化4】

【0034】
【化5】

【0035】
前記式(III)、式(IV)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基のいずれかを表す。
但し、R5とR6とは、同時に水素ではないものとする。
【0036】
ポリフェニレンエーテルの単独重合体としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−14−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテルポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル等のホモポリマーが挙げられる。
【0037】
上記ポリフェニレンエーテルの単独重合体の中では、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが好ましく、特開昭63−301222号公報等に記載されている2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニットや2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニット等を部分構造として含んでいるポリフェニレンエーテルが特に好ましい。
【0038】
一方、ポリフェニレンエーテル共重合体とは、フェニレンエーテル構造を主単量単位とする共重合体である。
具体的には、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノール及びo−クレゾールとの共重合体等が挙げられる。
【0039】
実用上の観点からは、30℃のクロロホルム溶液で測定した還元粘度(ηsp/c)が0.3〜0.7の範囲、好ましくは0.4〜0.6の範囲にあり、かつゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算の分子量を基準とした重量平均分子量/数平均分子量が2.2〜5.0の範囲、好ましくは2.3〜3.5の範囲であるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが好ましい。
このような物性を有するポリフェニレンエーテルは、成形流動性の観点から好適である。
【0040】
本実施形態においては、(A)ポリフェニレンエーテルとして、ポリフェニレンエーテルの一部又は全部を不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性した変性ポリフェニレンエーテルを用いることができる。
このような変性ポリフェニレンエーテルは、特開平2−276823号公報、特開昭63−108059号公報、特開昭59−59724号公報等に記載されており、例えばラジカル開始剤の存在下又は非存在下で、ポリフェニレンエーテルに不飽和カルボン酸やその誘導体を溶融混練し、これらを反応させることによって得られる。また、ポリフェニレンエーテルと不飽和カルボン酸やその誘導体とを、ラジカル開始剤存在下又は非存在下で有機溶剤に溶かし、溶液下で反応させることによって得られる。
【0041】
ポリフェニレンエーテルを変性する不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ハロゲン化マレイン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンド−シス−ビシクロ(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等や、これらジカルボン酸の酸無水物、エステル、アミド、イミド等、さらにはアクリル酸、メタクリル酸等や、これらモノカルボン酸のエステル、アミド等が挙げられる。
また、飽和カルボン酸であるが変性ポリフェニレンエーテルを製造する際の反応温度でそれ自身が熱分解し、不飽和カルボン酸やその誘導体となり得る化合物も用いることができる。例えば、リンゴ酸、クエン酸等が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(A)ポリフェニレンエーテルの含有量は、当該(A)ポリフェニレンエーテル+下記(B)ゴム変性ポリスチレン+下記(C)難燃剤を100質量%として、10〜90質量%である。
当該(A)ポリフェニレンエーテルと、後述する(B)ゴム変性ポリスチレンとの比率は、最終的に得られる樹脂組成物の耐熱性及び難燃性に影響する。
耐熱性と難燃性とを確保するためには、(A)ポリフェニレンエーテルの含有量が多いことが好ましく、良好な成形流動性を得るためには、(B)ゴム変性ポリスチレンが多いことが好ましい。最終的に目的とする樹脂組成物の要求特性に応じて任意にこれらの比率を選択する。
【0043】
<(B)ゴム変性ポリスチレン>
本実施形態において用いる(B)ゴム変性ポリスチレン(ハイインパクトポリスチレン(HIPS))は、下記2種の形態を有するHIPS(a)、HIPS(b)から構成される混合物である。
HIPS(a)/HIPS(b)の質量比は、98/2〜70/30であり、好ましくは96/4〜80/20、より好ましくは94/6〜85/15の範囲である。この併用範囲により、着色性、光沢等の表面特性及び機械的特性とのバランスに優れたものとなる。
【0044】
HIPS(a):ゴム粒子の形態は、粒子の90%以上、好ましくは95%以上が1個のポリスチレンコア(単一細胞構造)からなり、直径が0.05〜0.5μmであり、平均粒子径が0.1〜0.45μm、好ましくは0.2〜0.4μmである。HIPS(a)100質量%中のゴム含有量は、3〜20質量%である。ゴム粒子の形態を上記の範囲に制御することにより、本願組成物において着色性、光沢などの表面特性に優れる。
HIPS(b):ゴム粒子の形態は,80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上がサラミ構造(多数の細胞)からなり、直径が1〜3μmであり、平均粒子径1.1〜2.5μmであり、好ましくは1.2〜2μmであり、HIPS(b)100質量%中のゴム含量3〜20質量%である。ゴム粒子の形態を上記の範囲に制御することにより、本願組成物において耐衝撃性に寄与する。
【0045】
上述したHIPSのゴム粒子の平均粒子径(重量平均粒子径)は、当該業者に周知である超薄切片を、四酸化オスミウム水溶液で染色して作製した試料を、透過型電子顕微鏡で撮影した写真(図1参照)を用いて観察し、下記式により求められる。
【0046】
【数1】

【0047】
上記式中、niはゴム粒子個数、Riはゴム粒子直径、粒子径測定間隔は0.1μmである。
なお、ゴム個数は1000個以上測定することが好ましく、写真でのゴム粒子形状が円とみなせない場合には、円相当にみなして測定する。
【0048】
(B)ゴム変性ポリスチレンは、スチレン系化合物と、スチレン系化合物と共重合可能な化合物とを、ゴム質重合体存在下で重合して得られる重合体である。
スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられ、スチレンが好ましい。
また、スチレン系化合物と共重合可能な化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物類;無水マレイン酸等の酸無水物等が挙げられ、上記スチレン系化合物とともに使用される。これらスチレン系化合物と共重合可能な化合物の使用量は、スチレン系化合物との合計量に対して20質量%以下が好ましく、さらに好ましくは15質量%以下である。
さらに、ゴム質重合体としては、例えば、共役ジエン系ゴム、共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体、エチレン−プロピレン共重合体系ゴム等が挙げられる。具体例としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、及びそれらを部分的あるいはほとんど全てを水素添加したゴム成分も挙げられる。特に、HIPS(a)を構成するゴム質重合体としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体が好適である。
【0049】
本実施の形態における、着色性、特に黒色性に優れ、光沢、表面硬度等の表面特性にも優れ、かつ機械的特性に優れたポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得るためには、上述した特性を有するHIPS(a)とHIPS(b)とを組み合わせた(B)ゴム変性ポリスチレンが必須である。
上記特性を有するゴム変性ポリスチレン(B)成分を用いることにより、本実施の形態における樹脂組成物は、光沢度が80以上であり、色むらやフローマークの少ない優れた着色性、表面特性が得られ、セルフタッピング性や表面硬度にも優れたものとなる。
さらには、光沢度90以上、特に光沢度95以上の場合には、色むらやフローマークが極めて少なく、装飾性用途としてきわめて有用である。
上記光沢度は、JIS−Z−8741に基づき、本実施形態の樹脂組成物を用いて成形品を作製し、この成形品に対して、入射角60度の条件下で測定を行うことにより求められる。
【0050】
また、光沢度80以上で、かつ上記諸特性に優れた樹脂組成物を得るためには、樹脂組成物中のゴム粒子径の他にゴム含量を制御することが重要である。
ゴム粒子径については、上述したHIPS(a)とHIPS(b)との組み合わせにより好ましい粒子径範囲に制御できる。
また、ゴム含量は、(B)ゴム変性ポリスチレンのゴム含量を調節すること、ホモポリスチレンを併用することによって制御できる。
【0051】
本実施形態における樹脂組成物を構成する(B)ゴム変性ポリスチレンの成分組成量については、併用されるホモポリスチレンをも包含する。樹脂組成物中におけるゴム含量は、1〜7質量%の範囲が好ましく、2〜5質量%の範囲がより好ましい。
【0052】
(B)ゴム変性ポリスチレンの含有量は、上記(A)ポリフェニレンエーテル+当該(B)ゴム変性ポリスチレン+下記(C)難燃剤を100質量%として、90〜10質量%である。
上述したように、(A)ポリフェニレンエーテルと(B)ゴム変性ポリスチレンとの比率は、最終的に得られる樹脂組成物の耐熱性及び難燃性に影響するため、最終的に目的とする樹脂組成物の要求特性に応じて任意に含有比率を選択する。
【0053】
上述した(A)ポリフェニレンエーテルと、(B)ゴム変性ポリスチレンとの比率は、質量比で、10/90〜90/10の範囲が好ましく、20/80〜80/20の範囲がより好ましく、特に、薄型テレビジョン筐体等の難燃性と成形流動性とが重要である大型成形用途としては、20/80〜50/50の範囲がさらに好ましい。
【0054】
<(C)難燃剤>
本実施形態における樹脂組成物を構成する(C)難燃剤としてのリン化合物としては、有機リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸塩類、ホスフォン酸塩類、ホスホルアミド化合物等が挙げられる。
(有機リン酸エステル化合物)
有機リン酸エステル化合物としては、例えば、トリフェニルホスフェート、フェニルビスドデシルホスフェート、フェニルビスネオペンチルホスフェート、フェニルビス(3,5,5’−トリメチル−ヘキシルホスフェート)、エチルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジ(p−トリル)ホスフェート、ビス−(2−エチルヘキシル)p−トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ビス−(2−エチルヘキシル)フェニルホスフェート、トリ−(ノニルフェニル)ホスフェート、ジ(ドデシル)p−トリルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、2−クロロエチルジフェニルホスフェート、pトリルビス(2,5,5’−トリメチルヘキシル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、ビスフェノールA・ビス(ジフェニルホスフェート)、ジフェニル−(3−ヒドロキシフェニル)ホスフェート、ビスフェノールA・ビス(ジクレジルホスフェート)、レゾルシン・ビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシン・ビス(ジキシレニルホスフェート)、2ナフチルジフェニルフォスフェート、1−ナフチルジフェニルフォスフェート、ジ(2ナフチル)フェニルフォスフェート等が挙げられる。
【0055】
上記(C)難燃剤としては、下記式(I)又は式(II)に示す芳香族縮合リン酸エステル化合物が好ましい。
【0056】
【化6】

【0057】
【化7】

【0058】
式中、Q1、Q2、Q3、Q4は、水素又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R1、R2、R3、R4は、水素又はメチル基を表す。nは1以上の整数を、n1、n2は0〜2の整数を示し、m1、m2、m3、m4は、1〜3の整数を示す。
【0059】
(C)難燃剤としては、従来市販されている材料も適用でき、例えば、大八化学(株)製 商品名CR−741、CR−747、CR733S、PX−200等が挙げられる。
【0060】
上記式(I)で示される縮合リン酸エステルは、上記式(II)で示される縮合リン酸エステルに比較すると、樹脂組成物の製造工程における溶融混練において、分解や脱水反応による黒色異物が発生し難く、また最終的に得られる樹脂組成物の吸水性が小さくなるため好ましい。
さらに、上記式(I)で示される縮合リン酸エステルは、他のリン酸エステルを使用した場合に比べて、最終的に得られる樹脂組成物の表面硬度、セルフタッピング特性が優れたものとなるため好ましい。
より好ましくは、上記式(I)におけるQ1、Q2、Q3、Q4が、水素又はメチル基であり、R1、R2が水素、R3、R4がメチル基であり、nの範囲が1〜3、特にnが1であるリン酸エステルを50%以上含有するものである。
さらに好ましくは、酸価が0.1未満のものである。
ここで、酸価とは、JIS K2501に準拠し、試料1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で表される値である。
縮合リン酸エステル酸価が大きい場合には、樹脂組成物の成形時に金型が腐食され易く、該化合物が分解しやすいために加工時のガスの発生が多くなり、更には樹脂組成物の電気特性が悪化する等の問題が起こる。
【0061】
(ホスファゼン化合物)
ホスファゼン化合物としては、下記式(IV)に示す環状及び直鎖状の構造を有するものが挙げられるが、環状構造化合物が好ましく、n=3及び4の6員環及び8員環のフェノキシホスファゼン化合物が特に好ましい。
【0062】
【化8】

【0063】
式(IV)中、Rは、それぞれ独立して炭素数1〜20の脂肪族基又は芳香族基を表し、nは3以上の整数である。
【0064】
さらに、ホスファゼン化合物は、フェニレン基、ビフェニレン基、及び下記式(V)で示される基から選ばれる架橋基によって架橋されていてもよい。
【0065】
【化9】

【0066】
式(V)中、Xは、−C(CH32−、−SO2−、−S−、−O−、から選ばれるいずれかを示す。
【0067】
一般式(IV)で示されるホスファゼン化合物は、公知の化合物であり、例えばJames E. Mark, Harry R. Allcock, Robert West著、”Ino-rganic Polymers”Pretice-Hall International, Inc., 1992, p61-p140に記載されている。
これらホスファゼン化合物を得るための合成例は、例えば、特公平373590号公報、特開平971708号公報、特開平9183864号公報及び特開平11181429号公報等に開示されている。
例えば、非架橋環状フェノキシホスファゼン化合物の合成については、H.R.Allcock著、“PhosphorusNitrogenCompounds“,Academic Press,(1972)に記載の方法に準じて行うことができ、ジクロルホスファゼンオリゴマー(3量体62%、4量体38%の混合物)1.0ユニットモル(115.9g)を含む20%クロルベンゼン溶液580gに、ナトリウムフェノラートのトルエン溶液を撹拌下で添加し、その後、110℃で4時間反応させ、精製することにより、非架橋環状フェノキシホスファゼン化合物が得られる。
【0068】
ホスファゼン化合物は、当該化合物中のリン含有量が通常のリン酸エステル化合物よりも高いため、少量の添加でも十分な難燃性を確保でき、耐加水分解性や耐熱分解性にも優れているため、樹脂組成物の物性低下が抑えられ、リン系難燃剤としては特に好ましい化合物である。
さらに、酸価が0.5以下のホスファゼン化合物は、難燃性、耐水性及び電気特性面からより好ましい。
【0069】
(ホスフィン酸塩類)
ホスフィン酸塩類としては、下記式(VI)で表されるホスフィン酸塩及び/又は下記式(VII)で表されるジホスフィン酸塩及び/又はこれらの縮合物(本明細書中では、ホスフィン酸塩類と略記)が挙げられる。
【0070】
【化10】

【0071】
【化11】

【0072】
上記式(VI)、(VII)中の、R1及びR2は、同一であっても異なっていてもよく、直鎖状又は分岐状のC1〜C6−アルキル及び/又はアリールもしくはフェニルである。
3は、直鎖状又は分岐状の、C1〜C10−アルキレン、C6〜C10−アリーレン、C6〜C10−アルキルアリーレン、又はC6〜C10−アリールアルキレンであり、Mはカルシウム(イオン)、マグネシウム(イオン)、アルミニウム(イオン)、亜鉛(イオン)、ビスマス(イオン)、マンガン(イオン)、ナトリウム(イオン)、カリウム(イオン)及びプロトン化された窒素塩基から選ばれる1種以上であり、mは2又は3であり、nは1〜3であり、xは1又は2である。
【0073】
ホスフィン酸塩類は、欧州特許出願公開第699708号公報や特開平08−73720号公報に記載されている公知の方法によって製造できる。
例えば、ホスフィン酸塩は、水溶液中にホスフィン酸を金属炭酸塩、金属水酸化物又は金属酸化物と反応させることにより製造できるが、この方法に限定されるものではなく、ゾル−ゲル法等によって製造してもよい。
ホスフィン酸塩類は、一般にモノマー性化合物であるが、反応条件に依存して、環境によっては縮合度が1〜3の縮合物であるポリマー性ホスフィン酸塩も含まれる。
前記ホスフィン酸塩類を構成するホスフィン酸としては好適なものとしては、例えば、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチル−n−プロピルホスフィン酸、メタンジ(メチルホスフィン酸)、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)、メチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、及びこれらの混合物等が挙げられる。
前記ホスフィン酸塩類を構成する金属成分としては、例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、ビスマスイオン、マンガンイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及び/又はプロトン化された窒素塩基から選ばれる1種以上が挙げられ、特に、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオンから選ばれる1種以上が好ましい。
【0074】
ホスフィン酸塩類の具体例としては、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル−n−プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸亜鉛、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)マグネシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)アルミニウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸亜鉛が挙げられる。
【0075】
特に、樹脂組成物において優れた難燃性を確保し、モールドデポジット(成形の際に難燃剤が金型表面に付着する現象)の抑制を図る観点から、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛が好ましい。
【0076】
ホスフィン酸塩類の平均粒子径(d50%)は、0.2μm以上40μm未満であるものとし、0.5μmを超え30μm以下が好ましく、0.5μmを超え20μm以下がより好ましく、1.0μmを超え10μm以下がさらに好ましい。
上記範囲の粒子径を得るための手法は、特に限定されるものではないが、例えば、上記粒子径以上のホスフィン酸塩類の塊を溶剤中に分散して湿式粉砕し、分級する方法が挙げられる。
特に、平均粒子径が0.5μmを超え20μm以下の微粉末を用いることにより、本実施形態における樹脂組成物において、高い難燃性が発揮され、成形品の耐衝撃性の向上効果が得られ、良好な流動性、成形加工性が確保でき、さらには外観特性が改善する。
【0077】
上述した(C)難燃剤成分の粒子径分布としては、粒子径の小さい方から25%の粒子径(d25%)と75%の粒子径(d75%)との比(d75%/d25%)が、1.0を超え5.0以下であることが好ましく、1.2〜4.0であることがより好ましく、1.5〜3.0であることがさらに好ましい。
d75%/d25%の値が1.0を超え5.0以下であるホスフィン酸塩類を使用することにより、本実施形態における樹脂組成物の面衝撃強度を著しい向上が図られる。
【0078】
上記平均粒子径(d50%)及び粒子径分布は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した体積基準の粒子径に基づいている。また、ホスフィン酸塩類の分散媒として3%イソプロパノール水溶液を用いて測定される値である。
具体的には、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910(堀場製作所(株)製)を用いて、3%イソプロパノール水溶液の分散媒でブランク測定を行った後、測定試料を規定の透過率(95%〜70%)になるように入れて測定することにより求められる。
なお、分散媒中への試料の分散は、超音波を1分間照射することにより行う。
【0079】
また、ホスフィン酸塩類は、本発明の効果を損なわなければ、未反応物や副生成物が残存していてもよい。
【0080】
本実施形態の樹脂組成物においては、(C)難燃剤として、ホスフィン酸塩類を単独で使用することが、射出成形時のモールドデポジットを抑制するため特に好ましいが、目的を損なわない範囲内で、メラミンとリン酸とから形成される付加物を併用してもよい。
【0081】
本実施形態の樹脂組成物においては、上述した(C)難燃剤としてのリン化合物は、単独で用いてもよく、2種以上併用することもできる。
また、(C)難燃剤としてのリン化合物は、必要な難燃性レベルに応じて添加され、前記(A)+前記(B)+前記(C)の合計量に対して0〜40質量%の範囲で用いられる。好ましくは1〜35質量%の範囲、より好ましくは3〜30質量%の範囲である。1質量%以上添加することにより難燃効果が得られ、40質量%以下とすることにより、樹脂組成物の機械的強度や耐熱性の低下を実用上十分な程度に抑制できる。
【0082】
<(D)着色剤>
本実施形態の樹脂組成物には、(D)着色剤として染料が含有されている。
(D)着色剤としては、プラスチックの着色剤として一般的に用いられる染料を適用でき、各種組み合わせにより所望の着色が可能であり、無機顔料、有機顔料を併用してもよい。
本実施形態の樹脂組成物は、着色性、特に黒着色性に優れている。三原色及び補色染料の組み合わせにより黒着色にできるが、その場合の添加量は、前記(A)+前記(B)+前記(C)の合計100質量部に対して、(D)着色剤としての染料を0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることがさらに好ましく、0.5質量部以上であることがさらにより好ましい。
染料の含有量を0.1質量部以上とすることにより良好な着色性が得られ、経済性及び組成物特性に対する影響の観点から、添加量の上限は3質量部とすることが好ましく、2質量部とすることがより好ましく、1質量部程度とすることがさらにより好ましい。
【0083】
また、黒着色剤として用いられるカーボンブラックは、染料と併用してもよいが、カーボンブラック単独又は染料0.1質量部以下の条件下では、黒色度に優れ、かつウェルド部の色むらや目立ちの少ない黒着色の樹脂組成物は得られにくい。
優れた黒色度を有し、かつウェルド部の色むらや目立ちが少ない黒着色性レベルについては、CIE(国際照明委員会)基準表色系によって定めることができる。本実施形態の樹脂組成物においては、CIE基準表色系のL*が29以下であることが好ましく、L*が28以下であり、a*が−1.0以上0.5以下、b*が−3.0以上0.5以下であることがより好ましく、L*が28以下、a*が−0.3以上0.2以下、b*が−2.0以上−0.5以下であることがさらに好ましく、L*が27.4以下、a*が−0.3以上0.2以下、b*が−2.0以上−0.3以下であることがさらにより好ましい。
【0084】
<(E)ポリオレフィン系樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、(E)ポリオレフィン系樹脂が、含有されているものであってもよい。
(E)ポリオレフィンとは、エチレンの単独共重合体又は共重合体であり、例えば、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体等のエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
上記のうちでも、線状低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、及びエチレン−エチルアクリレート共重合体が好ましく、エチレン−プロピレン共重合体及びエチレン−オクテン共重合体がより好ましい。
【0085】
また、上記ポリオレフィン系樹脂としては、メルトフローレイト(MFR)が0.1〜50g/10分の範囲、好ましくは0.2〜20g/10分の範囲の樹脂を用いることが好ましい。
エチレン−プロピレン共重合体及びエチレン−ブテン共重合体は、一般に非晶性又は低結晶性の共重合体であり望ましい。
これらの共重合体には、さらに性能に影響を与えない範囲でその他の成分が共重合されていてもよい。
エチレンとプロピレン又はブテンとの成分比率は、特に限定するものではないが、プロピレン又はブテン成分は、5〜50モル%の範囲が一般的である。これらは一般に市販されているものを入手でき、例えば三井化学(株)製「タフマー(商品名)」を適用できる。
【0086】
(E)ポリオレフィンは、本実施形態の樹脂組成物の成形加工時において離型効果を発揮する。(E)ポリオレフィンの含有量は、前記(A)+前記(B)+前記(C)の合計100質量部に対して、0.1〜3質量部が好ましく、0.2〜2質量部がより好ましく、0.3〜1質量部がさらに好ましい。
【0087】
<(F)水添ブロック共重合体>
本実施形態の樹脂組成物は、(F)水添ブロック共重合体が、含有されているものであってもよい。
(F)水添ブロック共重合体とは、ビニル芳香族単量体と共役ジエン単量体とのブロック共重合体を水素添加して得られる共重合体である。
例えば、ビニル芳香族単量体単位の重合体ブロックと共役ジエン単量体単位の重合体ブロックとを水素添加して得られる、基本的にランダム共重合体部分を含有しないかほとんど含有しないブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体が挙げられる。市販品としては、クレイトンポリマー社のクレイトンG(商品名)、旭化成社のタフテック(商品名)、クラレ社のセプトン(商品名)が知られている。
【0088】
その他の非ランダム水添ブロック共重合体としては、例えば、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなる(非水添)ランダム共重合体ブロックを水添して得られる水添共重合体が挙げられ、市販品としては、旭化成社のSOE(商品名)が知られている。
【0089】
本実施形態においては、(F)水添ブロック共重合体は、ビニル芳香族単量体単位成分をブロック共重合体の40質量%以上含有しているものとし、好ましくは50〜85質量%、より好ましくは55〜80質量%含有しているものとする。
すなわち本実施形態においては、(F)水添ブロック共重合体は、ビニル芳香族単量体単位からなる重合体ブロックを50質量%以上と、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロックを50質量%未満と、を有する水添ブロック共重合体であることが好ましい。
(F)水添ブロック共重合体におけるビニル芳香族単量体単位の重合体ブロック含有量が、上記範囲にあることにより、本実施形態の樹脂組成物が、優れた外観特性を有し、機械的強度と成形加工性とのバランスに優れたものとなる。良好な着色性と成形加工性を確保する観点からは、ビニル芳香族単量体単位成分をブロック共重合体の60〜80質量%とすることがさらに好ましい。
【0090】
(F)水添ブロック共重合体の重量平均分子量は3万〜100万であることが好ましい。これにより、本実施形態の樹脂組成物は機械的強度と成形加工性とのバランスが良好なものとなる。本実施形態の樹脂組成物において、高い機械的強度を確保し、衝撃吸収性と成形加工性とのバランスを良好なものとする観点からは、(F)水添ブロック共重合体の重量平均分子量は、4万〜50万が好ましく、5万〜30万がより好ましく、7万〜20万がさらに好ましい。
【0091】
(F)水添ブロック共重合体は、上記(E)ポリオレフィン系樹脂との併用において効果を発揮する。
本実施形態の樹脂組成物において、良好な着色性や表面特性を確保し、成形時における離型効果と耐衝撃性改良効果とを発揮するためには、(F)水添ブロック共重合体の含有量は、前記(A)+前記(B)+前記(C)の合計100質量部に対して、0.2〜5質量部が好ましく、0.5〜4質量部がより好ましく、1〜3質量部がさらに好ましい。
【0092】
上記(E)ポリオレフィン系樹脂と、上記(F)水添ブロック共重合体とを併用する場合、これらの併用比は、(E)/(F)の質量比で、1/10〜2/1、好ましくは1/5〜1/1、より好ましくは1/3〜2/3である。
【0093】
本実施形態の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、所定の添加剤、例えば、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤、帯電防止剤、離型剤、滑剤、その他の樹脂を添加してもよい。
特に、良好な成形性を確保する観点から、離型剤の添加は効果的である。離型剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸の金属塩、高級脂肪酸アミド及びビスアミド、高級脂肪酸の多価アルコールエステル及び高級アルコールエステル、ポリエチレンワックス類等が挙げられる。
また、従来から知られた各種難燃剤及び難燃助剤、例えばポリテトラフロロエチレン重合体及び共重合体、シリコンオイル、シリコンレジンを添加することにより、さらに難燃性の向上効果が得られる。
【0094】
〔樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態の樹脂組成物を製造する方法については、特に限定されるものではないが、一般的には、押出機を用いて溶融混練することにより製造できる。特に、原材料成分を製造工程の途中で添加可能な二軸押出機が、高い生産性を確保し、良質な樹脂組成物を得る観点から好ましい。
混練温度は、ベース樹脂(A)、(B)の好ましい加工温度に従えばよく、一般的には240〜360℃の範囲、好ましくは260〜320℃の範囲である。
【0095】
本実施形態の樹脂組成物は、全成分を一括溶融混練してもよいが、上記(A)及び(B)、又は上記(A)、(B)及び(C)を、予め溶融混練しておき、後工程で他の成分を添加してもよい。
予め溶融混練したペレット状の中間組成物を得、次工程で他の混練機器を用いて上記他の成分を添加する二段階で樹脂組成物を製造してもよい。
【0096】
〔樹脂組成物を用いた成形品〕
本実施形態の樹脂組成物は、射出成形法、押出成形法等の一般的な成形方法により成形品に加工できる。
特に、金型表面の温度を、射出樹脂の熱変形温度近傍以上に上げておき、樹脂の射出と保圧工程の間は熱変形温度以上に保ち、保圧工程終了後、短時間で金型温度を下げて、樹脂を冷却し、成形品を取り出すヒートサイクル成形法は、ウェルドラインが目立たず、外観特性が良好な成形品が得られる方法として優れている。
【0097】
従来公知のポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、ヒートサイクル成形法により成形品を得た場合においてもウェルドラインが目立ってしまい、またウェルド部での色むらが発生し、実用上十分な外観特性が得られず、商品としての価値も低くなるという欠点を有していた。
一方、本実施形態の樹脂組成物を用いることにより、ウェルドラインが全く目立たず、ウェルド部における色むらもほとんど無く、商品価値の高い成形品が得られる。
本実施形態の樹脂組成物を用いることにより、表面特性に優れた光沢度が90%以上の成形品が得られ、例えば美観に優れたテレビ外装用成形体が得られる。
【実施例】
【0098】
以下、具体的な実施例と比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0099】
(実施例及び比較例の樹脂組成物を構成する成分)
(A)ポリフェニレンエーテル(PPE)
ポリ−2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル(旭化成プラスチックス シンガポール社製、ザイロン S201A)。
【0100】
(B)ゴム変性ポリスチレン(HIPS)及びホモポリスチレン(GPPS)
HIPS(a):ゴム粒子の形態が粒子の95%以上が1個のポリスチレンコア(単細胞構造)からなり、ゴム粒子の平均粒子径が0.3μm、ゴム含量がスチレン−ブタジエンブロック共重合体15質量%
HIPS(b):ゴム粒子の形態が粒子の90%以上がサラミ構造(多数の細包)からなり、ゴム粒子の平均粒子径が1.3μm、ゴム含量がポリブタジエン12質量%
GPPS:スチレン単独重合体(PSジャパン社製、PSJポリスチレン 680)
【0101】
(C)難燃剤
BDP:ビスフェノールAのビスジフェニルホスフェートを主成分とする酸価=0.05の縮合リン酸エステル(大八化学(株)製、商品名 CR−741)
TPP:トリフェニルホスフェート(大八化学(株)製、商品名 TPP)
【0102】
(D)着色剤としての染料
赤系染料 ;SOLVENT RED 179
黄色系染料;DISPERSE YELLOW 160
緑色系染料;SOLVENT GREEN 3
紫色系染料;SOLVENT VIOLET 13
黒(青)系染料;SOLVENT BLACK 7
比較着色剤;カーボンブラック
【0103】
(E)ポリオレフィン系樹脂(EP)
エチレン−プロピレン共重合体(三井化学(株)のタフマー(登録商標)P−0680)
【0104】
(F)水添ブロック共重合体(SEBS)
スチレン含有量60質量%、スチレンブロック含有量60質量%のスチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加ブロック共重合体(旭化成ケミカルズ社製、タフテック(登録商標)H1081)
【0105】
(樹脂組成物の評価方法)
(1)色調
分光光度計(マクベス社製、MS2020型)を用い、キセノンランプD65光源、d/8受光、SCI(全反射測定)で色調を測定し、国際照明委員会(CIE)表色系に基づいて、L*、a*、b*で表した。
鏡面光沢を有し、90mm×50mm×2.5mmの平板作製用の金型を用い、加熱シリンダー温度240℃、金型温度60℃の条件下で射出成形して平板を作製し、平板の中央部を測定した。
【0106】
(2)色調異方性
鏡面光沢を有する150mm×150mm×2mmの平板の中央部にウェルドラインができる2点ピンゲートの平板金型を用い、加熱シリンダー温度240℃、金型温度60℃の条件下で射出成形して平板を作製し、目視によりウェルドラインの色調を判定した。
異方性確認できないものを○(良い)、やや目立つものを△(普通)、明らかに目立つものを×(悪い)の3段階で評価した。
【0107】
(3)フローマーク
鏡面光沢を有する150mm×150mm×2mmの平板の中央部にウェルドラインができる2点ピンゲートの平板金型を用い、加熱シリンダー温度240℃、金型温度60℃の条件下で射出成形して平板を作製し、目視によりゲート近辺部分、その他平板全体のフローマークを評価した。
フローマークがほとんど目立たないものを○(良い)、やや目立つものを△(普通)、明らかに目立つものを×(悪い)の3段階で評価した。
【0108】
(4)光沢度
JIS−Z−8741に基づき、下記の成形品に対して、入射角60度の条件下で測定を行った。
成形品1:鏡面光沢を有する90mm×50mm×2.5mmの平板作製用の金型を用い、加熱シリンダー温度240℃、金型温度60℃の条件下で射出成形して作製した平板の中央部を測定した。
成形品2:鏡面光沢を有するISO−527の引張試験片金型を用い、加熱シリンダー温度220℃、金型温度60℃の条件下で射出成形して得られた試験片の半ゲート側中央部を測定した。
【0109】
(5)シャルピー衝撃強度
ISO−179に基づいて評価した。
(6)曲げ強度、曲げ弾性率
ISO−178に基づいて評価した。
(7)鉛筆硬度
JIS−K−5600に基づいて、上記(1)色調評価に用いた平板と同一の平板を用いて引っ掻き硬度を評価した。
(8)難燃性
UL94 垂直燃焼試験に基づいて、厚さ1.6mmの射出成形試験片を用いて測定し、10回接炎時の合計燃焼時間と燃焼時の滴下物の有無を評価した。
【0110】
(9)セルフタッピング強度
150mm×150mm×3mmの平板に、肉厚3mm、内径3.6mmφのボスがついた成形品を射出成形し、ボス口に4mmφのタッピングネジを締め付け、トルク15kg・cmより1kg・cm刻みでトルクを上げて繰り返し締め付け、タッピング部が崩れて空回りしたときのトルク(kg・cm)で表した。
【0111】
(10)離型性
射出成形により試験片を成形した際の、試験片及びランナーの金型からの型離れのし易さの程度を目視判定した。
離型性が良いものは○、やや良くないものは△、離型がひどく悪いものは×の3段階で評価した。
【0112】
〔実施例1〜16〕、〔比較例1〜7〕
下記表1〜表3に示す割合で材料を配合し、スクリュー直径40mmのニーディングディスクを組み合わせた同方向回転二軸押出機を用いて、溶融混合を行い、樹脂組成物を作製した。
ポリフェニレンエーテル(PPE)、ホモポリスチレン(GPPS)又はHIPSの一部及び安定剤としてのトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト0.2質量部を、押出機の上流投入口からフィードし、HIPS、着色剤(染料)、ポリオレフィン樹脂及び水添ブロック共重合体を予備ブレンドして押出機中流投入口からサイドフィードし、難燃剤を押出機下流から圧入添加した。
着色剤としての染料は、黒色に着色するために、種類及び割合を組み合わせて配合した。
押出機の運転条件は、加熱シリンダーの上流温度を320℃、下流温度を270℃、スクリュー回転数300rpmとし、ベント口から真空脱揮しながら溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂組成物のペレットを得た。
次に、得られた樹脂組成物ペレットを用いて、射出成形により最高設定温度220℃、金型温度60℃の条件下で評価用の物性試験片を成形した。
上述した(1)〜(10)の試験法により評価した。評価結果を下記表1〜表3に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【0115】
【表3】

【0116】
表1に示すように、実施例1〜10においては、いずれも良好な外観特性を有し、実用上十分な機械的強度を有し、難燃性、成形加工性も良好であった。
表2に示すように、比較例1、2においては、HIPS(a)を含有しておらず、良好な外観特性が得られなかった。
比較例3、4においては、HIPS(b)を含有しておらず、実用上十分な機械的強度を有していなかった。
比較例5においては、HIPS(a)とHIPS(b)のバランスが悪いため、実施例1〜10に比較して外観特性が劣り、また、実用上十分な機械的強度も得られなかった。
比較例6、7においては、染料を用いず、顔料のみで着色したため、色調ムラが目立ち、外観特性が劣ったものとなった。
表3に示すように、実施例11〜13においては、(E)ポリオレフィン系樹脂(エチレン−プロピレン重合体)、(F)水添ブロック共重合体を配合したことにより、良好な外観特性、高い機械的強度及び離型性が極めて良好な優れた成形加工性を有する組成物が得られた。
実施例14においては、(E)ポリオレフィン系樹脂(エチレン−プロピレン重合体)を配合しなかったため、実施例11〜13に比較すると、若干離型性が劣ったものとなった。
実施例15においては、(F)水添ブロック共重合体を配合しなかったため、実施例11〜13に比較すると、若干外観特性が劣ったものとなった。
実施例16においては、(F)水添ブロック共重合体を配合しなかったため、実施例11〜13に比較すると、若干外観特性が劣ったものとなった。また、実施例16は、実施例15よりも(E)ポリオレフィン系樹脂の含有量が多く、相溶性が劣ったものとなったため、フローマークの特性が若干劣化した。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の樹脂組成物は、良好な外観特性をもち、環境面に優れ、高難燃性を有し、高強度、高剛性、高耐熱といった物性面に優れた成形品として加工可能であり、電気・電子関係部品、事務機器部品、各種外装材、工業用品として産業上の利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】透過型電子顕微鏡により観察した実施例15の樹脂組成物を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)+(B)+(C)を100質量%として、
(A)ポリフェニレンエーテル10〜90質量%と、
(B)ゴム変性ポリスチレン90〜10質量%と、
(C)難燃剤としてのリン化合物0〜40質量%と、
を含有し、
さらに、(D)着色剤としての染料を含有する樹脂組成物であって、
前記(B)ゴム変性ポリスチレンは、ゴム粒子を含有するHIPS(a)、HIPS(b)からなり、HIPS(a)/HIPS(b)の質量比が98/2〜70/30である樹脂組成物。
HIPS(a):ゴム粒子の形態は、主として1個のポリスチレンコア(単一細胞構造)からなり、当該ゴム粒子の平均粒子径は0.1〜0.45μmであり、HIPS(a)100質量%中のゴム含量が3〜20質量%である。
HIPS(b):ゴム粒子の形態は主としてサラミ構造からなり、当該ゴム粒子の平均粒子径は1.1〜2.5μmであり、HIPS(b)100質量%中のゴム含量が3〜20質量%である。
【請求項2】
前記(A)+前記(B)+前記(C)の合計100質量部に対して、前記(D)着色剤としての染料を0.1質量部以上含有している、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)+前記(B)+前記(C)の合計100質量部に対して、前記(D)着色剤としての染料を、0.2質量部以上含有しており、CIE基準表色系のL*が29以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)+前記(B)+前記(C)の合計100質量部に対して、前記(D)着色剤としての染料を、0.3質量部以上含有しており、CIE基準表色系のL*、a*、b*が、それぞれ、L*が28以下、a*が−1.0以上0.5以下、b*が−3.0以上0.5以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)+前記(B)+前記(C)の合計100質量部に対して、前記(D)着色剤としての染料を、0.5質量部以上含有しており、CIE基準表色系のL*、a*、b*が、それぞれ、L*が27.6以下、a*が−0.3以上0.2以下、b*が−2.0以上−0.3以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記(C)難燃剤が、
下記式(I)
【化1】

又は
下記式(II)
【化2】

で示される縮合リン酸エステルを主成分とするものであり、当該難燃剤(C)を1〜35質量%含有している請求項1乃至5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
(式中、Q1、Q2、Q3、Q4は、水素又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R1、R2、R3、R4は、水素又はメチル基を表す。nは1以上の整数を、n1、n2は0〜2の整数を示し、m1、m2、m3、m4は、1〜3の整数を示す。)
【請求項7】
前記(C)難燃剤が、下記式(I)
【化3】

で示される縮合リン酸エステルを主成分とするものであり、当該難燃剤(C)を、3〜30質量%含有している請求項1乃至5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
(式中、Q1、Q2、Q3、Q4は、水素又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R1、R2、R3、R4は、水素又はメチル基を表す。nは1以上の整数を、n1、n2は0〜2の整数を示し、m1、m2、m3、m4は、1〜3の整数を示す。)
【請求項8】
(E)ポリオレフィン系樹脂を、前記(A)+前記(B)+前記(C)の合計100質量部に対して、0.1〜3質量部さらに含有する請求項1乃至7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
(F)ビニル芳香族単量体単位からなる重合体ブロックを50質量%以上と、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロックを50質量%未満とを有する水添ブロック共重合体を、 前記(A)+前記(B)+前記(C)の合計100質量部に対して、0.2〜5質量部さらに含有する請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の樹脂組成物の射出成形した成形体であり、
JIS−Z−8741に基づく光沢度が90%以上である成形体。
【請求項11】
テレビ外装用成形体である請求項10に記載の成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2010−138356(P2010−138356A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318622(P2008−318622)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】