説明

樹脂組成物

【課題】 剛性や耐熱性、成形性に優れ、実質的にさまざまな分野の成形体として利用することが可能であり、かつ、石油に代表される枯渇資源の使用比率が低減した樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 ポリアミド樹脂100質量部に0.1〜20質量部の膨潤性層状珪酸塩の珪酸塩層が分散されてなるポリアミド樹脂組成物(A)50〜95質量%と、生分解性ポリエステル樹脂(B)50〜5質量%とを溶融混練した樹脂組成物。生分解性ポリエステル樹脂(B)はポリ乳酸であることが好ましい。また、ポリアミド樹脂組成物(A)と生分解性ポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に、不飽和カルボン酸化合物及び/又は不飽和エポキシ化合物(C)0.05〜5質量部を配合することも好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨潤性層状珪酸塩の珪酸塩層が分散されたポリアミド樹脂と生分解性ポリエステル樹脂からなり、機械的強度や耐熱性、成形加工性に優れ、かつ石油系製品への依存度の低い樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ポリアミド樹脂は、優れた強度や耐熱性を生かして自動車や電気製品の部材として広く使用されている。しかしながら、ポリアミド樹脂から製造された成形体は、廃棄する際、ゴミの量を増すうえに、自然環境下で殆ど分解されないため、埋設処理しても半永久的に地中に残留する。また、石油を出発原料とした石油系の樹脂であるため、製造時の環境負荷が大きい。
【0003】
一方、近年、環境保全の見地からポリ乳酸をはじめとする生分解性ポリエステル樹脂が注目されている(例えば、特許文献1、2参照)。生分解性樹脂のうち、ポリ乳酸は最も耐熱性が高い樹脂の1つであり、大量生産可能なためコストも安く、有用性が高い。さらに、ポリ乳酸は、トウモロコシやサツマイモ等の植物を原料として製造することが可能であり、石油等の枯渇資源の節約に貢献できる。
【0004】
しかしながら、生分解性樹脂の中では耐熱性の高いポリ乳酸でも、結晶化速度が遅く、そのため成形性が悪く、また成形体の耐熱性も劣るため、自動車や電気部材としての実用に耐える成形体は得られなかった。
【特許文献1】特開平4−220456号公報
【特許文献2】特開平8−193165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題を解決し、剛性や耐熱性、成形性に優れ、実質的にさまざまな分野の成形体として利用することが可能であり、かつ、石油に代表される枯渇資源の使用比率が低減した樹脂組成物を提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、膨潤性層状珪酸塩の珪酸塩層が分散されてなるポリアミド樹脂組成物と生分解性ポリエステル樹脂とを特定範囲で混合した樹脂組成物が、機械的強度と耐熱性、成形時の取扱い性に優れることを見出して本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の構成を要旨とするものである。
(1)ポリアミド樹脂100質量部に0.1〜20質量部の膨潤性層状珪酸塩の珪酸塩層が分散されてなるポリアミド樹脂組成物(A)50〜95質量%と、生分解性ポリエステル樹脂(B)50〜5質量%とを溶融混練してなることを特徴とする樹脂組成物。
(2)ポリアミド樹脂組成物(A)と生分解性ポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に、不飽和カルボン酸化合物及び/又は不飽和エポキシ化合物(C)0.05〜5質量部を配合してなることを特徴とする上記(1)記載の樹脂組成物。
(3)生分解性ポリエステル樹脂(B)がポリ乳酸であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の樹脂組成物。
(4)生分解性ポリエステル樹脂(B)が、生分解性ポリエステル樹脂(B)100質量部に0.1〜20質量部の膨潤性層状珪酸塩の珪酸塩層が分散されていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた機械特性、耐熱性と成形性を有し、かつ、石油系製品への依存度の低い樹脂組成物が提供される。この樹脂組成物は、自動車、電機、その他の分野で実用に耐える有用な成形体とすることができ、また、天然物由来の生分解性樹脂を一部に利用しているので、石油等の枯渇資源の節約に貢献することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂組成物(A)と生分解性ポリエステル樹脂(B)とを溶融混練して得られるものであるが、まず、ポリアミド樹脂組成物(A)について説明する。
【0011】
本発明におけるポリアミド樹脂組成物(A)とは、ポリアミド樹脂マトリックス中に膨潤性層状珪酸塩の珪酸塩層が分子レベルで分散されたものである。ここで珪酸塩層とは、膨潤性層状珪酸塩を構成する基本単位であり、膨潤性層状珪酸塩の層構造を崩すこと(以下、「劈開」という。)によって得られる板状の無機結晶である。
【0012】
本発明における珪酸塩層とは、この珪酸塩層の一枚一枚、もしくは層間にポリアミド分子鎖が挿入されているが、その積層構造が完全には崩れていない状態を意味し、必ずしも一枚一枚にまで剥離されている必要はない。また分子レベルで分散されるとは、膨潤性層状珪酸塩の珪酸塩層がポリアミド樹脂マトリックス中に分散する際に、それぞれが平均1nm以上の層間距離を保ち、互いに塊を形成することなく存在している状態をいう。ここで塊とは、原料である膨潤性層状珪酸塩が全く劈開していない状態を指す。また、層間距離とは、対向する珪酸塩層間の距離である。このような状態は、ポリアミド複合材料の試験片について、例えば透過型電子顕微鏡観察を行うことにより確認することができる。
【0013】
また、本発明において用いる膨潤性層状珪酸塩とは、珪酸塩を主成分とする負に帯電した結晶層とその層間に介在するイオン交換能を有するカチオンとからなる構造を有するものであり、後述する方法で求めた陽イオン交換容量が50ミリ当量/100g以上であることが望ましい。この陽イオン交換容量が50ミリ当量/100g未満のものでは、膨潤能が低いためにポリアミド複合材料の製造時に実質的に未劈開状態のままとなり、性能の向上が認められない。本発明においては、陽イオン交換容量の値の上限に特に制限はなく、現実に調製可能な膨潤性層状珪酸塩の中から適当なものを選べばよい。
【0014】
このような膨潤性層状珪酸塩としては、天然に産出するものでも人工的に合成あるいは変成されたものでもよく、例えばスメクタイト族(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、ソーコナイト等)、バーミキュライト族(バーミキュライト等)、雲母族(フッ素雲母、白雲母、パラゴナイト、金雲母、レピドライト等)、脆雲母族(マーガライト、クリントナイト、アナンダイト等)、緑泥石族(ドンバサイト、スドーアイト、クッケアイト、クリノクロア、シャモナイト、ニマイト等)が挙げられるが、本発明においてはNa型あるいはLi型膨潤性フッ素雲母やモンモリロナイトが特に好適に用いられる。
【0015】
本発明において好適に用いられる膨潤性フッ素雲母は一般的に次式で示される構造式を有するものである。
【0016】
a(MgLib)Si
(式中で、Mはイオン交換性のカチオンを表し、具体的にはナトリウムやリチウムが挙げられる。また、a、b、X、YおよびZはそれぞれ係数を表し、0≦a≦0.5、0≦b≦0.5、2.5≦X≦3、10≦Y≦11、1.0≦Z≦2.0、である)
このような膨潤性フッ素雲母の製造法としては、例えば酸化珪素、酸化マグネシウム及び各種フッ化物を混合し、その混合物を電気炉あるいはガス炉中で1400〜1500℃の温度範囲で完全に溶融し、その冷却過程で反応容器内に膨潤性フッ素雲母の結晶を成長させる溶融法が挙げられる。
【0017】
一方、タルク〔Mg3Si4O10(OH)2〕を出発物質として用い、これにアルカリ金属イオンをインターカレーションして膨潤性を付与し、膨潤性フッ素雲母を得る方法もある(特開平2-149415号公報参照)。この方法では、所定の配合比で混合したタルクと珪フッ化アルカリとを、磁性ルツボ内で700〜1200℃の温度下に短時間加熱処理することによって、膨潤性フッ素雲母を得ることができる。
【0018】
この際、タルクと混合する珪フッ化アルカリの量は、混合物全体の10〜35質量%の範囲とすることが好ましい。この範囲をはずれる場合には、膨潤性フッ素雲母の生成収率が低下する傾向にある。
【0019】
次に、膨潤性層状珪酸塩として用いられるモンモリロナイトは次式で表されるもので、天然に産出するものを水ひ処理等を用いて精製することにより得ることができる。
【0020】
aSi(Al2-aMg)O10(OH)2・nH2
(式中で、Mはナトリウム等のカチオンを表し、0.25≦a≦0.6である。また層間のイオン交換性カチオンと結合している水分子の数はカチオン種や湿度等の条件によって様々に変わりうるので、式中ではnH2Oで表した)
また、モンモリロナイトにはマグネシアンモンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、鉄マグネシアンモンモリロナイト等の同型イオン置換体の存在が知られており、これらを用いてもよい。
【0021】
本発明において、上記した膨潤性層状珪酸塩の初期粒子径については特に制限はない。ここで初期粒子径とは、本発明において用いるポリアミド樹脂組成物(A)を製造するに当たって用いる原料としての膨潤性層状珪酸塩の粒子径であり、ポリアミド樹脂組成物(A)中の珪酸塩層の大きさとは異なるものである。しかし、この粒子径もまた得られるポリアミド樹脂組成物(A)の物性、特に剛性や耐熱性に少なからず影響を及ぼす。したがって、上記した膨潤性層状珪酸塩の混合比率を選択するに当たっては、この点も考慮するのが望ましく、必要に応じてジェットミル等で粉砕して粒子径をコントロールすることが好ましい。
【0022】
ここで、膨潤性フッ素雲母系鉱物をインターカレーション法により合成する場合には、原料であるタルクの粒子径を適切に選択することにより、初期粒子径を変更することができる。粉砕との併用により、より広い範囲で初期粒子径を調節することができる点で好ましい方法である。
【0023】
本発明におけるポリアミド樹脂組成物(A)中のポリアミド樹脂とは、アミノカルボン酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸(それらの一対の塩も含まれる。)を主たる原料とするアミド結合を主鎖内に有する重合体である。その原料の具体例としては、アミノカルボン酸としては、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等がある。またラクタムとしては、ε−カプロラクタム、ω−ウンデカノラクタム、ω−ラウロラクタム等がある。ジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、2,4-ジメチルオクタメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジン等がある。また、ジカルボン酸としては、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等がある。またこれらジアミンとジカルボン酸は一対の塩として用いることもできる。
【0024】
このようなポリアミド樹脂の好ましい例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリウンデカミド(ナイロン11)、ポリカプロアミド/ポリウンデカミドコポリマー(ナイロン6/11)、ポリドデカミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリドデカミドコポリマー(ナイロン6/12)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロンTMDT)、ポリビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンテレフタルアミド(ナイロンMXD6)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)及びこれらの混合物ないし共重合体等が挙げられる。中でもナイロン6、ナイロン66が特に好ましい。
【0025】
本発明において、ポリアミド樹脂の分子量(相対粘度)は特に制限はないが、96質量%濃硫酸を溶媒とし、温度25℃、濃度1g/dlの条件で測定した相対粘度が1.5〜5.0の範囲、特に2.0〜4.0の範囲にあることが望ましい。相対粘度が1.5未満のものは成形体の機械物性が低下する傾向を示し、5.0を超えるものは成形性が著しく低下する傾向を示す。
【0026】
本発明で使用するポリアミド樹脂組成物(A)の製造方法は、基本的には、適宜選択した膨潤性層状珪酸塩の存在下、所定量のモノマーをオートクレーブに仕込んだ後、水等の開始剤を用い、温度240〜300℃、圧力0.2〜3MPa、1〜15時間の範囲内で溶融重縮合を行えばよい。ナイロン6を樹脂マトリックスとする場合には、温度250〜280℃、圧力0.5〜2MPa、3〜5時間の範囲で重合することが好ましい。
【0027】
また、重合後のポリアミド樹脂組成物に残留しているポリアミドのモノマーを除去するために、ポリアミド樹脂組成物のペレットに対して熱水による精練を行うことが好ましい。この場合、好ましくは90〜100℃の熱水中で8時間以上の処理を行えばよい。
【0028】
このときの膨潤性層状珪酸塩の配合量は、ポリアミド樹脂成分100質量部に対して0.1〜20質量部とすることが好ましく、0.5〜10質量部とすることがより好ましい。この配合量が0.1質量部未満では、膨潤性層状珪酸塩の珪酸塩層による補強効果が乏しい。一方、この配合量が20質量部を超えると、オートクレーブから生成したポリアミド樹脂組成物(A)を払い出すことが困難となり、収率が大きく低下するため好ましくない。
【0029】
次に、ポリアミド樹脂組成物(A)とともに、本発明の樹脂組成物を形成する生分解性ポリエステル樹脂(B)について説明する。
【0030】
本発明において、生分解性ポリエステル樹脂(B)としては、ポリ(L−乳酸)、ポリ(D−乳酸)、ポリグルコール酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート等が挙げられる。なかでも耐熱性、成形性の面からポリ(L−乳酸)、ポリ(D−乳酸)、及びこれらの混合物又は共重合体を用いることができるが、生分解性の観点からは、ポリ(L−乳酸)を主体とするものが好ましい。
【0031】
ポリ(L−乳酸)を主体とするポリ乳酸の融点は、光学純度によって異なるが、本発明においては、成形体の機械的特性や耐熱性を考慮すると、融点が160℃以上のものが好ましい。ポリ(L−乳酸)を主体とするポリ乳酸において、融点を160℃以上とするためには、D−乳酸成分の割合を約3モル%未満とすればよい。
【0032】
生分解性ポリエステル樹脂(B)の190℃、荷重21.2Nにおけるメルトフローレートは0.1〜50g/10分、好ましくは0.2〜20g/10分、さらに好ましくは0.5〜10g/10分である。メルトフローレートが50g/10分を超えると、溶融粘度が低すぎて成形体の機械的特性や耐熱性が劣るものとなる。メルトフローレートが0.1g/10分未満になると、成形加工時の負荷が高くなりすぎ、操業性が低下する場合がある。
【0033】
生分解性ポリエステル樹脂(B)は、通常、公知の溶融重合法で、あるいはさらに固相重合法を併用して製造される。また、生分解性ポリエステル樹脂(B)のメルトフローレートを所定の範囲に調節する方法としては、メルトフローレートが大きすぎる場合は、少量の鎖長延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、ビスオキサゾリン化合物、エポキシ化合物、酸無水物等を用いて樹脂の分子量を増大させる方法が挙げられる。逆に、メルトフローレートが小さすぎる場合は、メルトフローレートの大きな生分解性ポリエステル樹脂や低分子量化合物と混合する方法が挙げられる。
【0034】
本発明における生分解性ポリエステル樹脂(B)には、機械的強度や耐熱性の向上を目的として膨潤性層状珪酸塩が含まれていてもよい。その配合量は、生分解性ポリエステル樹脂(B)100質量部に対して0.1〜20質量部とすることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜10質量部である。膨潤性層状珪酸塩の具体例は、前述したとおりである。
【0035】
生分解性ポリエステル樹脂(B)に配合する膨潤性層状珪酸塩は、予め有機カチオン処理しておくことが好ましい。有機カチオンとしては、1級ないし3級アミンのプロトン化によって生成するアンモニウムイオン、4級アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン等のオニウムイオンが挙げられる。1級アミンとしては、オクチルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミン等が挙げられる。2級アミンとしては、ジオクチルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジオクタデシルアミン等が挙げられる。3級アミンとしては、トリオクチルアミン、ジメチルドデシルアミン、ジドデシルモノメチルアミン等が挙げられる。4級アンモニウムイオンとしては、テトラエチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、ジヒドロキシエチルメチルオクタデシルアンモニウム、メチルドデシルビス(ポリエチレングリコール)アンモニウム、メチルジエチル(ポリプロピレングリコール)アンモニウム等が挙げられる。さらに、ホスホニウムイオンとしては、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、ヘキサデシルトリブチルホスホニウム、テトラキス(ヒドキシメチル)ホスホニウム、2−ヒドロキシエチルトリフェニルホスホニウム等が挙げられる。これらのうち、ジヒドロキシエチルメチルオクタデシルアンモニウム、メチルドデシルビス(ポリエチレングリコール)アンモニウム、メチルジエチル(ポリプロピレングリコール)アンモニウム、2−ヒドロキシエチルトリフェニルホスホニウム等の、分子内に水酸基を1つ以上有するアンモニウムイオンで処理した膨潤性層状珪酸塩は、ポリエステル樹脂、とりわけ生分解性ポリエステル樹脂との親和性が高く、膨潤性層状珪酸塩の分散性が向上するため特に好ましい。これらのカチオンは単独で使用してもよいが、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
また、膨潤性層状珪酸塩を上記有機カチオンで処理する方法としては、まず膨潤性層状珪酸塩を水又はアルコール中に分散させ、ここへ上記有機カチオンを塩の形で添加して撹拌混合することにより、膨潤性層状珪酸塩の無機イオンを有機オニウムイオンとイオン交換させた後、濾別・洗浄・乾燥する方法が挙げられる。
【0037】
膨潤性層状珪酸塩を用いる場合、生分解性ポリエステル樹脂(B)への分散性を向上させるために、相溶化剤を用いてもよい。その添加量は、生分解性ポリエステル樹脂(B)100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.02〜5質量部である。相溶化剤の添加量が10質量部を超えると、生分解性ポリエステル樹脂(B)の耐熱性や機械的強度が低下する場合がある。相溶化剤としては、ポリエステル樹脂、とりわけ生分解性ポリエステル樹脂(B)と、層状珪酸塩の双方と親和性があるポリアルキレンオキシド、脂肪族ポリエステル、多価アルコールエステル、多価カルボン酸エステル等の化合物が用いられる。
【0038】
ポリアルキレンオキシドの例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、及びこれらの共重合体が挙げられ、末端水酸基の1つ又は2つはアルコキシ封鎖されていてもよく、モノカルボン酸又はジカルボン酸によりエステル化されていてもよい。
【0039】
脂肪族ポリエステルの例としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(3−ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(3−ヒドロキシカプロン酸)等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(ε−カプロラクトン)やポリ(δ−バレロラクトン)に代表されるポリ(ω−ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート−co−ブチレンアジペート)等に代表されるジオールとジカルボン酸からなる脂肪族ポリエステル等が挙げられる。これらの脂肪族ポリエステルは、末端カルボキシル基がアルコールによりエステル化されていてもよく、ジオールにより水酸基置換されていてもよい。
【0040】
多価アルコールエステルの例としては、グリセリンと脂肪酸のエステルであるモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド等のグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル等が挙げられる。多価カルボン酸エステルの例としては、クエン酸トリブチルやクエン酸トリブチルアセテート等のクエン酸エステル等が挙げられる。
【0041】
上記の相溶化剤は、沸点が250℃以上のものが好ましい。沸点が250℃未満では、成形時にガスが発生したり、得られる成形体からブリードアウトを起こすことがある。また、数平均分子量は200〜50,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは500〜20,000である。相溶化剤の分子量が200未満になると、成形時にガスが発生したり、得られる成形体からブリードアウトしやすくなり、また、成形体の機械的強度や耐熱性を損ねることがある。また、分子量が50,000を超えると、層状珪酸塩の分散性向上の効果が小さくなる傾向を示す。
【0042】
相溶化剤の添加方法としては、予め膨潤性層状珪酸塩に直接上記化合物を含浸処理する方法、水又は有機溶剤の存在下で、上記化合物を混合した後に濾過等により水又は有機溶剤を除去する方法、ポリエステル樹脂と膨潤性層状珪酸塩の溶融混錬時に添加する方法、ポリエステル樹脂の合成時に膨潤性層状珪酸塩と共に添加する方法等が挙げられるが、ポリエステルとの混合に先立って、予め膨潤性層状珪酸塩に混合処理しておく方法が好ましく用いられる。
【0043】
本発明の樹脂組成物に耐加水分解性を付与するため、生分解性ポリエステル樹脂(B)100質量部に対してカルボジイミド 化合物を0.5〜10質量部の範囲内で添加することが効果的である。カルボジイミド 化合物の添加量が前記した範囲内であれば、耐加水分解性の改良効果が良好であり、カルボジイミド化合物のブリードアウトによる成形体の外観不良や、可塑化による機械物性の低下は生じない。
【0044】
本発明に好ましく使用されるカルボジイミド 化合物としては、具体的には、例えば、ポリ(4,4'−ジフェニルメタンカルボジイミド )、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド )、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド )、ポリ(トリルカルボジイミド )、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド )、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド )、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド )等や、これらの単量体が挙げられる。本発明において、カルボジイミド 化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂組成物(A)と、生分解性ポリエステル樹脂(B)とを溶融混練して得られるものであるが、両者の配合割合は、ポリアミド樹脂組成物(A)50〜95質量%と、生分解性ポリエステル樹脂(B)50〜5質量%であることが必要である。ポリアミド樹脂組成物(A)の配合量が95質量%を超え、生分解性ポリエステル樹脂(B)の配合量が5質量%未満になると、枯渇資源使用の低減という意味では満足できるものではなく、ポリアミド樹脂組成物(A)の配合量が50質量%未満、生分解性ポリエステル樹脂(B)の配合量が50質量%を超えると成形性が低下し、かつ十分な剛性や耐熱性を有する成形体を得ることができない。
【0046】
本発明の樹脂組成物においては、不飽和カルボン酸化合物及び/又は不飽和エポキシ化合物を同時に溶融混練することにより、衝撃強度などの機械的強度がさらに向上する。これらの不飽和カルボン酸化合物及び不飽和エポキシ化合物の少なくとも1種の化合物の配合量は、ポリアミド樹脂組成物(A)と生分解性ポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対して0.05〜5質量部、特に0.1〜3質量部が好ましい。
【0047】
本発明で用いられる不飽和カルボン酸化合物としては、アクリル酸、α−エチルアクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマール酸、ハロゲン化マレイン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ハロゲン化シトラコン酸、クロトン酸、ハロゲン化クロトン酸、イタコン酸、ハロゲン化イタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンド−ビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、メチル−エンド−シス−ビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、エンド−ビシクロ−(2,2,1)−1,2,2,2,7,7−ヘキサクロロ−2−ヘプテン−5,6−ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸や、これらの不飽和カルボン酸の無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩等を使用することができる。
【0048】
また、本発明で用いられる不飽和エポキシ化合物の具体例としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、イタコン酸モノグリシジルエステル、イタコン酸ジグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸モノグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸ジグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸トリグリシジルエステル、p−スチレンカルボン酸グリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ペンテン、5,6−エポキシ−1−ヘキセン及びビニルシクロヘキセンモノオキシド等を挙げることができる。
【0049】
本発明で最も好ましく用いられる不飽和カルボン酸化合物や不飽和エポキシ化合物の例としては、無水マレイン酸、エンド−ビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート等が挙げられる。
【0050】
また、本発明においては、不飽和カルボン酸化合物や不飽和エポキシ化合物と共に、溶融混練時に必要に応じてラジカル発生剤を添加することができる。ラジカル発生剤としては、ケトンオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類などの有機過酸化物、例えばパラクロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ターシャリーブチルクミルパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキサン、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイドや、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物を用いることができる。これらのラジカル発生剤の配合量は、ポリアミド樹脂組成物(A)と生分解性ポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対して3質量部未満が望ましい。
【0051】
本発明の樹脂組成物は、膨潤性層状珪酸塩を含有するポリアミド樹脂組成物(A)と生分解性ポリエステル樹脂(B)とを所定の割合で溶融混練することによって製造される。溶融混練装置としては、バンバリミキサー、ロールミキサー、ニーダー、単軸押出機、多軸押出機等を使用することができる。
【0052】
本発明の樹脂組成物には、その特性を大きく損なわない限り、必要に応じてさらに他の重合体を配合してもよい。この場合、その配合量は樹脂組成物100質量部に対して30質量部以下であることが望ましい。このような重合体としては、ポリスチレン、変性ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ABS、PMMA、ポリ塩化ビニル、フェノキシ樹脂、液晶ポリマー等が挙げられる。
【0053】
また、本発明の樹脂組成物には、その特性を大きく損なわない限りにおいて、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、他の強化材等を添加することもできる。このような熱安定剤や酸化防止剤としてはヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、イオウ化合物、銅化合物がある。耐候剤としては、一般的なベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類が用いられる。難燃剤としては、一般のリン系難燃剤やハロゲン系難燃剤が用いられる。強化材としては、例えばクレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、アスベスト、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、硫酸バリウム、カリウム明バン、ナトリウム明バン、鉄明バン、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ほう酸、ほう砂、ほう酸亜鉛、ゼオライト、ハイドロタルサイド、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウムウィスカー、チッ化ホウ素、マイカ、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。
【0054】
本発明によれば、耐熱性や成形性に優れ、かつ、枯渇資源の使用比率を低減した樹脂組成物が提供される。そして、その優れた性能を利用して、自動車、電機、その他の分野で有用な成形体として使用することが可能となる。
【実施例】
【0055】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0056】
なお、実施例並びに比較例で用いた原料及び物性試験の測定方法は、次の通りである。
1.原料
(1)膨潤性フッ素雲母(M-1)
ボールミルにより平均粒子径が4.0μmとなるように粉砕したタルクに対し、平均粒子径が10μmの珪フッ化ナトリウムを全量の15質量%となるように混合した。これを磁性ルツボに入れ、電気炉にて850℃で1時間反応させることにより、平均粒径4.0μmの膨潤性フッ素雲母(M-1)を得た。この膨潤性フッ素雲母の組成は、Na0.60Mg2.63Si4O10F1.77、後述する測定方法により得られた陽イオン交換容量は110ミリ当量/100gであった。
(2)膨潤性フッ素雲母(M−2)
M−1の層間を水中に分散させ、ジヒドロキシエチルメチルドデシルアンモニウム塩を添加し、攪拌混合した後、濾別し、乾燥することにより、層間イオンを置換した膨潤性フッ素雲母。
(3)ポリアミド樹脂(A−2)
ユニチカ社製ナイロン6樹脂「A1030BRL」を用いた。後述する粘度測定による相対粘度は2.5であった。
(4)生分解性ポリエステル樹脂:ポリ乳酸(L−2)
カーギルダウ社製NatureWorks4030D;MFR=3.0,融点166℃、を用いた。
(5)不飽和化合物
無水マレイン酸(日本油脂社製) を用いた。
(6)ラジカル発生剤
2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキシン(日本油脂製)を用いた。
2.測定方法
(1)陽イオン交換容量(ミリ当量/100g)
日本ベントナイト工業会標準試験方法によるベントナイト(粉状)の陽イオン交換容量測定方法(JBAS-106-77)に基づいて求めた。
【0057】
すなわち、浸出液容器、浸出管及び受器を縦方向に連結した装置を用いて、まず初めに、層状珪酸塩をpH=7に調製した1N酢酸アンモニウム水溶液により、その層間のイオン交換性カチオンの全てをNH4+に交換する。その後、水とエチルアルコールを用いて十分に洗浄してから、前記したNH4+型の層状珪酸塩を10質量%の塩化カリウム水溶液中に浸し、試料中のNH4+をK+へと交換する。引き続いて、前記したイオン交換反応に伴い浸出したNH4+を0.1N水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定することにより、原料である膨潤性層状珪酸塩の陽イオン交換容量(ミリ当量/100g)を求めた。
(2)ポリアミド樹脂と生分解性ポリエステル樹脂の無機灰分率(質量%)
ポリアミド樹脂および生分解性ポリエステル樹脂の乾燥ペレットを磁性ルツボに精秤し、500℃に保持した電気炉で15時間焼却処理した後の残渣を無機灰分として、次式に従って無機灰分率を求めた。
無機灰分(質量%)={無機灰分質量(g)}/{焼却処理前の試料の全質量(g)}×100
(3)ポリアミド樹脂の相対粘度
96質量%濃硫酸中に、ポリアミド樹脂組成物の乾燥ペレットを濃度が1g/dlになるように溶解させ、G-3ガラスフィルターにより無機成分を濾別した後、測定に供した。測定はウベローデ型粘度計を用い、25℃で行った。
(4)メルトフローレート(MFR)
JIS規格K−7210(試験条件4)に従い、190℃、荷重21.2Nで測定した。
(5)曲げ弾性率:
ASTM規格D−790に従い、変形速度1mm/分で荷重をかけ、曲げ弾性率を測定した。
(6)衝撃強度
ASTM規格D−256に従い、ノッチ(V字型切込み)付き試験片を用いてアイゾット衝撃強度を測定した。
(7)荷重たわみ温度
ASTM規格D−648に従い、荷重0.45MPaにおいて測定した。
(8)成形性
射出成形機にて、シリンダ温度230℃、金型温度80℃として、ASTM試験ダンベル片(厚さ3mmt)を成形し、離型時の変形を評価した。具体的には、成形サイクル40秒未満で良好に離型できたものを◎、40〜60秒で良好に離型できたものを○、60以上でも良好に離型できないものを×とした。
〔参考例1〕ポリアミド樹脂(A−1)
膨潤性フッ素雲母M-1 400g(全陽イオン交換容量は0.44molに相当する。)をε-カプロラクタム1kgと水1kgとを混合して得た溶液中に加え、室温下、ホモミキサーを用いて1.5時間撹拌した。この膨潤性フッ素雲母分散液の全量を、予めε-カプロラクタム9kgと85質量%リン酸水溶液50.7g(0.44mol)とを仕込み、これらを95℃で溶融させておいた内容積30リットルのオートクレーブに投入し、撹拌しながら260℃に加熱し、圧力0.7MPaまで昇圧した。その後、徐々に水蒸気を放出しつつ温度260℃、圧力0.7MPaの状態を1時間維持し、さらに1時間かけて常圧まで放圧し、さらに30分間重合した。
【0058】
重合が終了した時点で、上記反応生成物をストランド状に払い出し、冷却、固化した後、切断してポリアミド樹脂組成物からなるペレットを得た。次いでこのペレットを95℃の熱水で8時間精錬した後、乾燥した。
【0059】
無機灰分率の測定によるA-1中の珪酸塩層の含有量は、4.2質量%であった。また、相対粘度は2.7であった。
〔参考例2〕生分解性ポリエステル樹脂(L−1)
2軸押出機(東芝機械社製TEM−37BS)を用い、温度230℃でポリ乳酸(L−2)96%と膨潤性フッ素雲母(M−2)4%を溶融混錬し、ペレット化したのち、乾燥した。灰分測定によるL-1中の珪酸塩層の含有量は2.7質量%であった。
実施例1
表1に示す配合組成で原料を混合した後、2軸押出機(東芝機械社製TEM−37BS)を用い、温度230℃で溶融混錬し、ペレット化した。得られたペレットを乾燥し、東芝機械社製IS-100型成形機を用いて試験片を射出成形し、それぞれ試験に供した。各種物性の測定結果を表1に示す。
実施例2、3
生分解性ポリエステル樹脂、不飽和化合物およびラジカル発生を混合した原料を2軸押出機の基部から、ポリアミド樹脂をシリンダー中ほどに設けたサイドフィーダーから投入して、温度230℃で溶融混錬、ペレット化した。得られたペレットを乾燥し、東芝機械社製IS-100型成形機を用いて試験片を射出成形し、それぞれ試験に供した。各種物性の測定結果を表1に示す。配合組成は表1に示す。
比較例1、2
原料の配合組成を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして試験片を射出成形し、試験片の各種物性を評価した。比較例1、2で得られた試験片の各種物性の評価結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

表1から明らかなように、実施例1、2および3では、良好な剛性、耐熱性、成形性を有し、実使用に耐えうる成形体を得ることができた。
【0061】
一方、比較例1は、膨潤性層状珪酸塩を含まない通常のポリアミド樹脂を用いたため、耐熱性が劣り、成形性も若干劣るものであった。また、比較例2は、生分解性ポリエステル樹脂(B)の配合割合が本発明の範囲を超えたので、成形性とすべての物性において劣るものであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂100質量部に0.1〜20質量部の膨潤性層状珪酸塩の珪酸塩層が分散されてなるポリアミド樹脂組成物(A)50〜95質量%と、生分解性ポリエステル樹脂(B)50〜5質量%とを溶融混練してなることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
ポリアミド樹脂組成物(A)と生分解性ポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に、不飽和カルボン酸化合物及び/又は不飽和エポキシ化合物(C)0.05〜5質量部を配合してなることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
生分解性ポリエステル樹脂(B)がポリ乳酸であることを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
生分解性ポリエステル樹脂(B)が、生分解性ポリエステル樹脂(B)100質量部に0.1〜20質量部の膨潤性層状珪酸塩の珪酸塩層が分散されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。


【公開番号】特開2006−143772(P2006−143772A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331907(P2004−331907)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】