説明

樹脂組成物

【課題】 成形外観および剛性を損なうことなく、優れた低温耐衝撃性および摺動性を有するポリオキシメチレン樹脂組成物、その成形体及びその部品を提供する。
【解決手段】 ポリオキシメチレン樹脂(A)100重量部及びエチレン系変性αオレフィン重合体(B)10〜50重量部を含み、(A)が分子末端にヒドロキシアルキル基を含み、かつそのヒドロキシアルキル基末端濃度がオキメチレン単位1モル当り5×10-5モル以上であるポリオキシメチレン共重合体(a−1)又は該ポリオキシメチレン共重合体(a−1)とオキシメチレン樹脂(a−2)とを含み、(B)がエチレン成分を65〜90モル%含有し、(A)中に(B)が平均粒子間距離8μm以下で分散していることを特徴とするポリオキシメチレン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオキシメチレン樹脂において熱安定性および剛性を保持し、優れた低温耐衝撃性および摺動性を有した組成物に関し、本組成物を用いた成形体、および精密機器、家電OA機器、自動車、工業材料および雑貨などにおける部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシメチレン樹脂はバランスのとれた機械的性質をもつエンジニアリング樹脂として、各種の機構部品をはじめ、OA機器などに広く用いられている。また、通常の使用温度領域に大きな転移点が存在しないことから、広い温度範囲で使用が可能である。しかし、ポリオキシメチレン樹脂は、低温で用いられる一部の用途においては、耐衝撃性が十分なレベルではなく、これを改善するために柔軟性を付与する成分を添加する方法がなされている。しかし、低温耐衝撃性を付与するために添加した柔軟成分により、本来ポリオキシメチレン樹脂の優れた特性の一つである摺動性が低下するという問題があった。
【0003】
例えば、柔軟性を付与する成分を添加する方法として、オレフィン系重合体やαオレフィン重合体を添加する技術(例えば、特許文献1参照)が知られている。しかしながら、使用されるオレフィン重合体やαオレフィン重合体とポリオキシメチレン樹脂とは親和性に欠けるため、得られた組成物は層状に剥離しやすく、成形品が得られたとしても、外観不良を生じることがあった。さらにこれにより、摩耗量は大きくなり、ポリオキシメチレン樹脂の優れた摺動性を損なうこととなっている。
【0004】
そこで、ポリオキシメチレン樹脂とオレフィン系重合体との親和性を改善するための種々の方法が提案されている。例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体など極性基含有のαオレフィン重合体を用いる技術(例えば、特許文献2参照)が知られている。しかしながら、それでも親和性の改善が不十分なため、低温耐衝撃性が改善されずに剛性が低下したり、ポリオキシメチレン樹脂の熱安定性を低下させ、造粒時にホルム臭がしたり、発泡したりするという問題があり、完全に課題を解決するには至っていない。
【0005】
また、親和性を高めるために液状αオレフィンやイソシアネート化合物を添加する技術(例えば、特許文献3参照)が知られている。しかしながら、添加量に対して低温耐衝撃性の改善が不十分なものであり、成形体にブリードが生じたり、成形体が着色したりという新たな問題が発生している。
【0006】
【特許文献1】特公昭41-2730号公報
【特許文献2】特公昭43-22669号公報
【特許文献3】特開2002-030197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ポリオキシメチレン樹脂組成物において成形外観および剛性を保持し、優れた低温耐衝撃性および摺動性を有した組成物を提供し、本組成物を用いた成形体、および精密機器、家電OA機器、自動車、工業材料および雑貨などにおける部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、ポリオキシメチレン樹脂とエチレン系αオレフィン重合体の組合せにおいて、末端にヒドロキシルアルキル基を有するポリオキシメチレン共重合体と、特定のエチレン系変性αオレフィン重合体とを用いると、安定的な混合が可能で、かつポリオキシメチレン共重合体とエチレン系変性αオレフィン重合体の親和性も改善されることを見出した。これにより低温耐衝撃性が向上したポリオキシメチレン共重合体組成物が得られ、かつその組成物は優れた摺動性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の通りのものである。
【0009】
[1] ポリオキシメチレン樹脂(A)100重量部及びエチレン系変性αオレフィン重合体(B)10〜50重量部を含み、(A)が分子末端にヒドロキシアルキル基を含み、かつそのヒドロキシアルキル基末端濃度がオキメチレン単位1モル当り5×10-5モル以上であるポリオキシメチレン共重合体(a−1)又は該ポリオキシメチレン共重合体(a−1)とオキシメチレン樹脂(a−2)とを含み、(B)がエチレン成分を65〜90モル%含有し、(A)中に(B)が平均粒子間距離8μm以下で分散していることを特徴とするポリオキシメチレン樹脂組成物。
[2] ポリオキシメチレン共重合体(a−1)が、エチレン系変性αオレフィン重合体(B)の2倍重量部以上からなることを特徴とする[1]記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
[3] ポリオキシメチレン共重合体(a−1)を下記[式1]で表される少なくとも一種の第4級アンモニウム化合物を用いて、熱的に不安定な末端を処理して安定化させたことを特徴とする[1]または[2]に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R、R、R、Rは、各々独立して、炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基が少なくとも1個の炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基が少なくとも1個の炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を表し、非置換アルキル基または置換アルキル基は直鎖状、分岐状、または環状である。上記非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基は水素原子がハロゲンで置換されてもよい。nは1〜3の整数を表す。Xは水酸基、又は炭素数1〜20のカルボン酸、水素酸、オキソ酸無機チオ酸もしくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を表す。)
【0012】
[4] ポリオキシメチレン共重合体(a−1)が、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、エステル基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種を少なくとも1個以上有する、数平均分子量400以上の重合体を連鎖移動させて得られたポリオキシメチレンブロック共重合体であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
[5] 該ポリオキシメチレンブロック共重合体が、下記[式2]で表される数平均分子量10000〜500000のポリオキシメチレン共重合体であることを特徴とする[4]記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、A以外(Bブロックという)は、m=2〜98モル%、n=2〜98モル%、m+n=100モル%であり、mはnに対してランダムあるいはブロックで存在し、数平均分子量500〜10000である両末端をヒドロキシアルキル化された水素添加液状ポリブタジエン残基。但し、Bブロックはヨウ素価20g-I/100g以下の不飽和結合をもつものであってもよい。k=2〜6から選ばれる整数であり、2つのkは各々同一であっても異なっていてもよい。Rは水素、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基より選ばれ各々同一であっても異なっていてもよい。Aブロックは、下記[式3]で表されるポリオキシメチレン共重合体残基である。
【0015】
【化3】

【0016】
(R’は水素、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基より選ばれ各々同一であっても異なっていてもよい。jは2〜6から選ばれる整数である。x=95〜99.9モル%、y=5〜0.1モル%、x+y=100モル%、yはxに対してランダムに存在する。)[式2]中、2つのAブロックの平均の数平均分子量5000〜250000である。)
【0017】
[6] エチレン系変性αオレフィン系重合体(B)が、カルボン酸又はその酸無水物で0.01〜8重量%変性されたエチレン系αオレフィン重合体を少なくとも20重量%以上含むことを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
[7] ポリオキシメチレン共重合体(a−1)、エチレン系変性αオレフィン重合体(B)を実質的に混合した後、オキシメチレン樹脂(a−2)を混合して得られたことを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
[8] [1]〜[7]のいずれか記載のポリオキシメチレン樹脂組成物が、射出成形、ガスインジェクション成形、多層射出成形、押出成形又はブロー成形することにより得られたことを特徴とする成形体。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、ポリオキシメチレン樹脂組成物において成形外観および剛性を保持し、優れた低温耐衝撃性および摺動性を有した組成物であり、本組成物を用いた成形体、および精密機器、家電OA機器、自動車、工業材料および雑貨などにおける部品に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明の詳細を説明する。
まず、本発明の樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
[成分(A)]
[成分(A):(a−1)ポリオキシメチレン共重合体]
(a−1)成分として用いられるポリオキシメチレン共重合体について説明する。
該ポリオキシメチレン共重合体は、ホルムアルデヒド、その3量体であるトリオキサンまたは4量体テトラオキサンなどの環状オリゴマーを重合し、オキシメチレン単位を80モル%以上含有するものであり、その他20モル%以下の成分として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1、3−ジオキソラン、グリコールのホルマール、ジグリコールのホルマールなどの環状エーテル、及び/又はヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、エステル基、アルコキシ基を有する重合体であり、それらを共重合及び/又はブロック共重合させて得られる。
【0020】
さらには、上記ポリオキシメチレン共重合体の分子末端が特にヒドロキシアルキル基を含むものであり、そのヒドロキシアルキル基末端濃度が、オキメチレン単位1モル当り5×10−5モル以上が好ましい。さらに好ましくは10×10−5モル以上であり、またさらに好ましくは30×10−5モル以上である。このポリオキシメチレン共重合体中のヒドロキシアルキル基末端濃度を調節するには種々の方法があり、例えば水、アルコール(例えばメタノールやエチレングリコール)、酸(例えば蟻酸)等を連鎖移動させてもよいし、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、エステル基、アルコキシ基を含む重合体を連鎖移動させてもよい。また、必要に応じてメチラールといったホルマールを同時に添加してもよい。
【0021】
特に好ましいものとしては、水酸基を含む分子量500〜10000である重合体を連鎖移動させたポリオキシメチレンブロック共重合体であり、例えば片末端または両末端水酸基のポリエチレン、水素添加ポリブタジエン、水素添加ポリイソプレンなどを用いたポリオキシメチレンブロック共重合体である。さらに好ましくは、下記[式2]で表される数平均分子量10000〜500000であるポリオキシメチレン共重合体である。
【0022】
【化4】

【0023】
(式中、A以外(Bブロックという)は、m=2〜98モル%、n=2〜98モル%、m+n=100モル%であり、mはnに対してランダムあるいはブロックで存在し、数平均分子量500〜10000である両末端をヒドロキシアルキル化された水素添加液状ポリブタジエン残基。但し、Bブロックはヨウ素価20g−I/100g以下の不飽和結合をもつものであってもよい。k=2〜6から選ばれる整数であり、2つのkは各々同一であっても異なっていてもよい。Rは水素、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基より選ばれ各々同一であっても異なっていてもよい。Aブロックは、下記[式3]で表されるポリオキシメチレン共重合体残基である。
【0024】
【化5】

【0025】
(R’は水素、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基より選ばれ各々同一であっても異なっていてもよい。jは2〜6から選ばれる整数である。x=95〜99.9モル%、y=5〜0.1モル%、x+y=100モル%、yはxに対してランダムに存在する。)[式2]中、2つのAブロックの平均の数平均分子量5000〜250000である。)
【0026】
ポリオキシメチレン共重合体中のヒドロキシアルキル基末端濃度は、熱可塑性エラストマーとの相溶性の観点からオキシメチレン1モル当り5×10−5モル未満である。
重合触媒としては、ルイス酸、プロトン酸及びそのエステル又は無水物等のカチオン活性触媒が好ましい。ルイス酸としては、例えば、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物が挙げられ、具体的には三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン及びその錯化合物又は塩が挙げられる。また、プロトン酸、そのエステルまたは無水物の具体例としては、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸−3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
中でも、三フッ化ホウ素;三フッ化ホウ素水和物;及び酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましく、具体的には、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルを好適例として挙げることができる、これら重合触媒の使用量はトリオキサンと環状エーテル及び/又は環状ホルマールの合計量1モルに対し1×10−6モル〜1×10−3モルが好ましく、5×10−6モル〜1×10−4モルが更に好ましい。
【0027】
重合方法としては、特に制限はないが、例えば、塊状重合を挙げることができ、この塊状重合はバッチ式、連続式いずれであってもよい。この塊状重合は、溶融状態にあるモノマーを用い、重合の進行とともに固体塊状のポリマーを得ることが一般的である。
【0028】
重合されたポリオキシメチレン共重合体中の重合触媒の失活は、前記の重合反応によって得られたポリオキシメチレン共重合体を、アンモニア、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン等のアミン類、又はアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、有機酸塩等の触媒中和失活剤の少なくとも一種を含む水溶液又は有機溶剤溶液中に投入し、スラリー状態で一般的には数分〜数時間攪拌することにより行われる。触媒中和失活後のスラリーはろ過、洗浄により、未反応モノマーや触媒中和失活剤、触媒中和失活塩が除去された後、乾燥される。
【0029】
また、アンモニア、トリエチルアミン等の蒸気とポリオキシメチレン共重合体とを接触させて重合触媒を失活させる方法や、ヒンダードアミン類、トリフェニルホスフィン及び水酸化カルシウム等のうちの少なくとも一種とポリオキシメチレン共重合体とを混合機で接触させて触媒を失活させる方法も用いることができる。
【0030】
次に、重合触媒失活後のポリオキシメチレン共重合体の末端安定化処理について述べる。不安定末端部の分解除去方法としては、例えば、ベント付き単軸スクリュー式押出機やベント付き2軸スクリュー式押出機等を用いて、アンモニアや、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族アミン、水酸化カルシウムに代表されるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物・無機弱酸塩・有機弱酸塩等の公知の不安定末端部を分解することのできる塩基性物質の存在下に、ポリオキシメチレン共重合体を溶融し、不安定末端部を分解除去することができる。
【0031】
中でも特に好ましいものは、下記[式1]で表される少なくとも一種の第4級アンモニウム化合物を用いて、熱的に不安定な末端を処理する方法であり、上記方法で安定化させたポリオキシメチレン共重合体中には、殆ど不安定な末端部が残っていない。
【0032】
【化6】

【0033】
(式中、R、R、R、Rは、各々独立して、炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基が少なくとも1個の炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;又は炭素数6〜20のアリール基が少なくとも1個の炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を表し、非置換アルキル基または置換アルキル基は直鎖状、分岐状、または環状である。上記非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基は水素原子がハロゲンで置換されてもよい。nは1〜3の整数を表す。Xは水酸基、又は炭素数1〜20のカルボン酸、水素酸、オキソ酸無機チオ酸もしくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を表す。)
【0034】
上記第4級アンモニウム塩の化合物については、具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクダデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等の水酸化物があげられる。
【0035】
また、アジ化水素などのハロゲン化以外の水素酸塩;硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、よう素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸などのオキソ酸塩;チオ硫酸などのチオ酸塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸などのカルボン酸塩等が挙げられる。中でも、水酸化物(OH)、硫酸(HSO、SO2−)、炭酸(HCO、CO2−)、ホウ酸(B(OH))、カルボン酸の塩が好ましい。カルボン酸の内、蟻酸、酢酸、プロピオン酸が特に好ましい。これら第4級アンモニウム化合物は、単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
第4級アンモニウム化合物の添加量は、ポリオキシメチレン共重合体に対して、下記[数式1]で表わされる第4級アンモニウム化合物由来の窒素の量に換算して、0.05〜50重量ppmである。
P×14/Q [数式1]
(式中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリオキシメチレン共重合体に対する濃度(重量ppm)を表わし、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を表わす。)
【0037】
溶融は、例えば、ベント付短軸スクリュー式押出機、ベント付二軸スクリュー式押出機等によって行われる。温度はポリオキシメチレン共重合体の融点以上260℃以下で行う。第4級アンモニウム化合物は、ポリオキシメチレン共重合体を溶融する前に予め添加してもよいし、また溶融させたポリオキシメチレン共重合体に添加してもよい。
本発明においては、公知の不安定末端部の安定化促進剤であるアンモニア、トリエチルアミン、ホウ酸化合物等を併用してもかまわない。
【0038】
[成分(A):(a−2)オキシメチレン樹脂]
(a−2)成分として用いられるオキシメチレン樹脂について説明する。
該オキシメチレン樹脂は、必ずしも必須成分ではないが、成形外観の向上や摺動性の向上のために配合することが好ましい。添加する場合、ポリオキシメチレン共重合体(a−1)の配合量が相溶性の観点から成分(B)に対し2倍重量部以上であることが好ましく、さらには3倍以上が好ましいため、ポリオキシメチレン樹脂(A)100重量部に対し残りが(a−2)成分である。
【0039】
(a−2)成分として用いられるオキシメチレン樹脂は、オキシメチレン単位を主たる繰り返し構成単位とする高分子化合物であり、ホルムアルデヒド、もしくはトリオキサン、テトラオキサンを単独重合した、いわゆるポリアセタールホモポリマー、又は該単量体とエチレンオキシド、プロピオンオキシド、1,3−ジオキソランなどとの共重合体、いわゆるポリアセタールコポリマーのどちらでもかまわない。ここでのオキシメチレン樹脂は、(a−1)成分と同様に公知の方法にしたがって、製造することができる。
(a−2)成分のオキシメチレン樹脂の溶融指数MFR(ASTM−D1238−57Tの条件で測定)は、0.5〜100.0g/10分、好ましくは1.0〜80.0g/10分である。
【0040】
配合する場合、熱安定性を保持するために(a−1)成分と同様の触媒失活や末端安定化処理を行うことが好ましい。
また、配合時は低温耐衝撃性および摺動性を向上するために、実質的に(a−1)成分と(B)成分が混合された後に、成分(a−2)を配合することが好ましい。
【0041】
[成分(B)]
(B)成分として用いられるエチレン系変性αオレフィン重合体について説明する。
エチレン系変性αオレフィン重合体とは、エチレン系αオレフィン重合体に対して変性基を有するエチレン系αオレフィン共重合体を20重量%以上含んだものが好ましく、有する変性基としては、カルボン酸またはその酸無水物が好ましく、その成分単位としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、エンドシス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3ジカルボン酸(ナジツク酸)、メチル−エンドシス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3ジカルボン酸(メチルナジツク酸)などの不飽和カルボン酸、該不飽和カルボン酸の無水物、具体的には無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ナジツク酸、無水メチルナジツク酸などがあげられる。これらの中では、不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物が好ましく、さらにはマレイン酸または無水マレイン酸が特に好ましい。その変性量は、ポリオキシメチレン樹脂との親和性の観点から、基材であるエチレン系αオレフィン重合体に対して0.01重量%以上であり、熱安定性の観点から8重量%以下が好ましい。また、これらの変性基は、相溶性改善のためにはブロックで挿入されたりや末端に位置するよりもグラフト形態で位置することが好ましい。
【0042】
エチレン系変性αオレフィン重合体の基材であるエチレン系αオレフィン重合体は、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテンー1、ノネン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1、トリデセン−1、テトラデセン−1、ペンタデセン−1、ヘキサデセン−1、ヘプタデセン−1、オクタデセン−1、ノナデセン−1、またはエイコセン−1、イソブチレンなどの脂肪族置換ビニルモノマーの1種以上と、エチレンとのランダム共重合体があげられる。基材となるエチレン系αオレフィン重合体は、エチレン単位が65〜90モル%、αオレフィン単位が35〜10モル%である必要がある。エチレン単位が少なすぎると成形外観や低温物性の低下につながり、多すぎると剛性の低下につながるため、本目的を達成するためには好ましくない。αオレフィンは、またさらにスチレン、置換スチレンなどの芳香族系ビニルモノマー、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、グリシジルアクリル酸エステル、グリシジルメタアクリル酸エステル、ヒドロキシエチルメタアクリル酸エステルなどのエステル系ビニルモノマー、アクリルアミド、アリルアミン、ビニル−p−アミノベンゼン、アクリロニトリルなどの窒素含有ビニルモノマー、ブタジエン、シクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、イソプレンなどのジエンにあげられる成分の1種または2種以上を含んだ共重合体であってもよい。
【0043】
さらにこのエチレン系αオレフィン重合体は、シングルサイト触媒を用いて製造されたものが好ましく、シングルサイト触媒とは、特公平4−12283号公報、特開昭60−35006号公報、特開昭60−35007号公報、特開昭60−35008号公報、特開昭63−280703号公報、特開平5−155930号公報、特開平3−163088号公報、米国特許第5272236号明細書に記載されているシクロペンタジエニル或いは置換シクロペンタジエニルを1〜3分子含有するメタロセン触媒及び幾何学的制御による触媒などの活性点の性質が均一である触媒である。
好ましいシクロペンタジエニル或いは置換シクロペンタジエニルの含有量は1〜2分子である。さらに、より好ましく使用される金属成分は、チタン、ジルコニウム、ケイ素、ハフニウムである。
【0044】
具体的に好ましい、メタロセン触媒としては、シクロペンタジエニルジルコニウムトリクロライド、ペンタメチルシクロペンタジエニルジルコニウムトリクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノメチルモノクロリド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジアルキル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジフェニル、ジメチルシリルジシクロペンタジエニルジルコニウムジメチル、メチルホスフィンジシクロペンタジエニルジルコニウムジメチルなどのジルコニウム化合物、ビス(インデニル)チタンジフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)チタンジアルキル、ビス(シクロペンタジエニル)チタンジフェニル、ビス(メチルシクロペンタジエニル)チタンジアルキル、ビス(1,2−ジメチルシクロペンタジエニル)チタンジフェニル、ビス(1,2−ジメチルシクロペンタジエニル)チタンジクロライドなどのチタン化合物、ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジメチルなどのハフニウム化合物、ビス(シクロペンタジエニル)バナジウムジクロライドなどのバナジウム化合物などがある。
【0045】
また、具体的に好ましい幾何学的制御による触媒としては、(第3級ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルジルコニウムジクロライド、(第3級ブチルアミド)−(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルチタンジクロライド、(メチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルジルコニウムジクロライド、(メチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルチタンジクロライド、(エチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)−メチレンチタンジクロライド、(第3級ブチルアミド)ジメチル−(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)シランチタンジクロライド、(第3級ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)シランジルコニウムジベンジル、(ベンジルアミド)ジメチル(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)シランチタンジクロライド、(フェニルホスフィド)ジメチル(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)シランジルコニウムジベンジルなどがある。
【0046】
また、本発明におけるシングルサイト触媒は助触媒を同時に用いることができる。具体的な助触媒については、前記の公報に記載されてあるものを用いることができる。好ましい助触媒としては、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサンなどのアルキルオキシアルミニウム単位を繰り返し単位として有する有機アルミニウムオキシ化合物、アルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物、[BuNH][B(CR)]、C13、水、ルイス酸、アンモニウム塩などの中から選ばれる1種以上である。
【0047】
上記シングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン系αオレフィン重合体の中で特に好ましいものは、エチレンと炭素数3〜20のαオレフィンの1種以上との共重合体である。
エチレン系変性αオレフィン重合体(B)の配合量は、成分(A)100重量部に対して、低温耐衝撃性付与の観点から10重量部以上であり、剛性の観点から50重量部以下が必要である。好ましくは15〜40重量部である。エチレン系変性αオレフィン重合体は2種以上併用してもかまわない。エチレン系変性αオレフィン重合体の配合量および変性量が適当でないと十分に本発明の効果が得られない。
【0048】
エチレン系変性αオレフィン重合体の流動性は、取り扱う上で常温固体であり、成形性の向上や分散粒子を微細にするために、樹脂との混練時には流動性が高いものが好ましい。ムーニー粘度でいうと、計量時の定量性を維持するために5ML1+4100℃〜50ML1+4100℃が好ましい。5ML1+4100℃以上にすることによりブロッキングが抑制され、ダスティング材を使用するにしても少量で済み、最終物性への影響が低減される。50ML1+4100℃以下にすることで、可塑性が優れ、分散粒子が微細になるため低温耐衝撃や成形外観が向上する。
【0049】
ここでムーニー粘度とはASTMで規定された試験で、表記単位ML1+4100℃は、100℃での評価時、予熱1分後にローターを回転させ4分後のゲージの読みにより、可塑度を評価したものである。
【0050】
エチレン系変性αオレフィン重合体のガラス転移温度(DSC法)は、低温耐衝撃性向上の観点から−30℃以下が好ましく、さらには−40℃以下が好ましい。また、安定性の点から、窒素気流中、10℃/分の昇温速度で、熱天秤を用いた熱分解による重量減少を測定した時、350℃で75%以上の重量保持率を持つエチレン系変性αオレフィン重合体が好ましい。
【0051】
本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物は、剛性を保持し、低温耐衝撃性・摺動性を向上するために、(a−2)成分やその他の配合、造粒条件の工夫などにより、ポリオキシメチレン樹脂(A)にエチレン系変性αオレフィン重合体(B)の粒子が球状または棒状に分散していなければならない。低温耐衝撃性や摺動性の観点から、分散粒子の平均粒子間距離は、8μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは5μm以下であり、またさらに好ましくは3μm以下である。ここで粒子間距離とは、ある任意の粒子の中心から別の粒子の中心までの距離をいい、例えば、平均粒子間距離が10μm以下とは、任意にサンプリングした代表粒子n個(n≧50)の粒子間距離の相加平均が10μm以下ということである。
【0052】
[その他の添加剤]
本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物には、従来のポリオキシメチレン樹脂に使用されている安定剤、例えば熱安定剤、耐候(光)安定剤を単独、またはこれらを組み合わせて用いることができる。
熱安定剤としては酸化防止剤、ホルムアルデヒドやぎ酸の捕捉剤およびこれらの併用が効果を発揮する。
【0053】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、例えば、n−オクタデシル−3−(3’5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、1,4−ブタンジオ−ル−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)である。
【0054】
また、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N’−ビス−3−(3’5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プリピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレンビス−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N’−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル)ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾ−ル、N,N’−ビス(2−(3−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)オキシアミド等がある。
【0055】
これらヒンダードフェノール系酸化防止剤のなかでもトリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタンが好ましい。
【0056】
ホルムアルデヒドやぎ酸の捕捉剤としては、(イ)ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物および重合体、(ロ)アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩またはアルコキシド等が挙げられる。
【0057】
(イ)ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物としては、(1)ジシアンジアミド、(2)アミノ置換トリアジン、(3)アミノ置換トリアジンとホルムアルデヒドとの共縮合物等が挙げられる。
【0058】
(2)アミノ置換トリアジンとしては、例えば、グアナミン(2,4−ジアミノ−sym−トリアジン)、メラミン(2,4,6−トリアミノ−sym−トリアジン)、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、N,N’,N’’−トリフェニルメラミン、N−メチロールメラミン、N,N’−ジメチロールメラミン、N,N’,N’’−トリメチロールメラミン、ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)である。
また、2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ベンジルオキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブトキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−シクロヘキシル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−クロロ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−sym−トリアジン、2,4−ジオキシ−6−アミノ−sym−トリアジン(アメライト)、2−オキシ−4,6−ジアミノ−sym−トリアジン(アメリン)、N,N’,N’−テトラシアノエチルベンゾグアナミンなどがある。
【0059】
(3)アミノ置換トリアジンとホルムアルデヒドとの共縮合物としては、例えば、メラミン−ホルムアルデヒド重縮合物、などがある。これらの中で、ジシアンジアミド、メラミンおよびメラミン−ホルムアルデヒド重縮合物が好ましい。
【0060】
さらに(イ)ホルムアルデヒド反応性窒素基を有する重合体としては、(1)ポリアミド樹脂、(2)アクリルアミドおよびその誘導体又はアクリルアミドおよびその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られる重合体、(3)アクリルアミドおよびその誘導体又はアクリルアミドおよびその誘導体と他のビニルモノマーとをラジカル重合の存在下で重合して得られる重合体、(4)アミン、アミド、尿素およびウレタン等窒素基を含有する重合体でも良い。
【0061】
(1)のポリアミド樹脂としてはナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12等およびこれらの共重合物、例えば、ナイロン6/6−6、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等が挙げられる。
【0062】
(2)のアクリルアミドおよびその誘導体又はアクリルアミドおよびその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られる重合体としては、ポリ−β−アラニン共重合体が挙げられる。これらのポリマーは特公平6−10259号公報(対応、米国特許5015707号明細書)、特公平5−87096号公報、特公平5−47568号公報および特開平3−234729号公報の各公報記載の方法で製造することができる。
【0063】
(3)アクリルアミドおよびその誘導体又はアクリルアミドおよびその誘導体と他のビニルモノマーとをラジカル重合の存在下で重合して得られる重合体は、特開平3−28260号公報(対応、米国特許5011890号明細書)記載の方法で製造することが出来る。
【0064】
(ロ)アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩またはアルコキシドとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムもしくはバリウムなどの水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、硼酸塩、カルボン酸塩が挙げられる。該カルボン酸塩のカルボン酸は、10〜36個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸等であり、これらのカルボン酸はヒドロキシル基で置換されていてもよい。飽和脂肪族カルボン酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、セロプラスチン酸が挙げられる。不飽和脂肪族カルボン酸は、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸などが挙げられる。又、アルコキシドとして、上記金属のメトキシド、エトキシドなどが挙げられる。
【0065】
中でも好ましくは、脂肪酸がミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸であり、金属化合物がカルシウムの水酸化物、酸化物及び塩化物である。具体的な脂肪酸金属塩の例としては、ジミリスチン酸カルシウム、ジパルミチン酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウム、(ミリスチン酸−パルミチン酸)カルシウム、(ミリスチン酸−ステアリン酸)カルシウム、(パルミチン酸−ステアリン酸)カルシウムである。中でも好ましくは、ジパルミチン酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウムである。
【0066】
本発明においては、2種以上の脂肪酸金属塩を同時に添加してもよく、何等制限するものではない。例えば、ステアリン酸カルシウムとパルミチン酸カルシウムを同時に添加しても良く、また異なる炭素数の脂肪酸からなる金属塩、例えば(パルミチン酸−ステアリン酸)カルシウムとが混在していても良い。脂肪酸金属塩の製造方法は、特に限定するものではなく、実質的に未反応の金属化合物が500重量ppm以下である脂肪酸金属塩が好ましい。
【0067】
例えば、脂肪酸と金属水酸化物との中和反応や、脂肪酸と金属塩化物との複分解反応、脂肪酸と金属酸化物との中和反応によって得られた粗脂肪酸金属塩を、更に水洗処理、乾燥処理を行うことで、本発明に用いる所望の脂肪酸金属塩を得ることができる。得られた脂肪酸金属塩中の未反応金属化合物は、脂肪酸金属塩を超音波処理し、この濾液に抽出された金属成分を原子吸光によって定量し、得られた定量値を原料の金属水酸化物、金属酸化物若しくは金属塩化物に換算し、求めることができる。
【0068】
また、さらに発生するホルムアルデヒド量を低減するために、ヒドラジド化合物を添加してもかまわない。本発明で用いられるヒドラジド化合物は、下記[式4]で表されるジカルボン酸ジヒドラジドが好ましく、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スペリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド等が挙げられる。
【0069】
【化7】

【0070】
(式中Rは炭素数2〜20の炭化水素)
これらのジカルボン酸ジヒドラジドのなかで好ましいのはセバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドであり、更に好ましいのはセバチン酸ジヒドラジドである。ヒドラジド化合物の添加量としては本発明のオキシメチレン樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部である。好ましくは0.03〜3重量部である。またヒドラジド化合物の融点は160〜250℃であり、好ましくは170〜230℃、更に好ましくは175〜225℃である。
【0071】
耐候(光)安定剤としては、(イ)ベンゾトリアゾール系物質、(ロ)シュウ酸アニリド系物質および(ハ)ヒンダードアミン系物質が好ましい。(イ)ベンゾトリアゾール系物質としては、例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−イソアミル−フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられ、好ましくは2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−フェニル]ベンゾトリアゾールである。
【0072】
(ロ)シュウ酸アニリド系物質としては、例えば、2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−3’−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリド等が挙げられる。これらの物質はそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0073】
(ハ)ヒンダードアミン系物質としては、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンが挙げられる。
また、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)−カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−マロネト、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−テレフタレートが挙げられる。
【0074】
さらにまた、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α,α’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)トリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート等が挙げられ、好ましくはビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケートである。
【0075】
上記ヒンダードアミン系物質はそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また上記ベンゾトリアゾール系物質およびシュウ酸アニリド系物質の少なくとも一種とヒンダードアミン系物質の組合せが最も好ましい。
【0076】
また、本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物には、従来のポリオキシメチレン樹脂に使用されているような滑剤を添加してもかまわない。溶融混練時エチレン系変性αオレフィン重合体とポリオキシメチレン共重合体との重合体間の流動性を向上させ、分散状態を調整し、摺動性を付与することから配合することが好ましい。またさらに、溶融混練時の樹脂温度を低下することができるため、剪断発熱によるポリオキシメチレン樹脂の熱安定性の低下が抑制されるという点からも配合することが好ましい。添加量としては、造粒時の安定性や剛性保持の点から5重量部以下が好ましい。滑剤としては、内部滑剤および外部滑剤のどちらでもよく、これらの1種又は2種以上を添加することが好ましい。ここでいう、内部滑剤とはエチレン系変性αオレフィン樹脂に溶け込み、樹脂分子間の摩擦を低下させ流動性を向上させるものである。外部滑剤とは、樹脂への溶け込みは少ないが、金属と樹脂および樹脂と樹脂の間に潤滑層を形成し流動性を向上させるものである。
【0077】
例えば、各種アルコール類やケトン類や脂肪族炭化水素類やハロゲン化炭化水素類といった溶剤類、ポリオキシアルキレングリコール類、平均重合度が10〜5000であるオレフィン化合物類およびそれらの変性物、パラフィンオイルやパラフィンワックス、シリコンオイルやシリコンガムやポリオレフィンにシリコンガムを緩やかにグラフトしたポリオレフィングラフトシリコンなどのシリコン化合物、その他各種オイル類、3級アミンもしくはその誘導体および4級アンモニウム塩もしくはその誘導体、脂肪族アルコールと脂肪酸のエステルや脂肪族アルコールとジカルボン酸のエステルやグリセリンおよび他の短鎖長脂肪族アルコールと脂肪酸のエステルやオリゴマー脂肪酸エステルといったエステル類、脂肪酸アミドやアミドワックス、高級脂肪酸金属塩などの金属石鹸類、酸化亜鉛もしくはその他亜鉛化合物、フッ素系ポリマー、水及び前記物質に水を添加したものなどがあげられる。この中で好ましいものとして、シリコンオイルがあげられる。
【0078】
さらに本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物は所望に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、従来ポリオキシメチレン樹脂で用いられる各種無機填剤、他の熱可塑性樹脂、柔軟剤、結晶核剤、離型剤、染料、顔料などを用いることが出来る。
【0079】
無機充填剤は、繊維状・粉末状・板状・中空状のいずれであってもかまわない。繊維状充填剤としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、さらにステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮、等の金属繊維等の無機質繊維があげられる。また、繊維長の短いチタン酸カリ、酸化亜鉛、酸化チタン等のウイスカーや針状ウォラストナイト(珪酸カルシウム)も含まれる。
【0080】
粉末状充填剤としては、カーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ネフェリンサイナイト、クリストバライト、ウォラストナイト(珪酸カルシウム)、酸化鉄、酸化チタン、アルミナ、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭化珪素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末等があげられる。
【0081】
板状充填剤としてはマイカ、ガラスフレーク、各種金属箔があげられる。中空状充填剤としては、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、金属バルーン等があげられ、これらの充填剤は1種又は2種以上を併用して使用することが可能である。
【0082】
また、これらの充填剤は表面処理されたもの、表面処理されていないもの、何れも使用可能であるが、成形品表面の平滑性、機械的特性の面から表面処理の施されたものの使用が好ましい場合がある。表面処理剤としては従来公知のものが使用可能である。例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等の各種カップリング処理剤が使用できる。具体的にはN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリスステアロイルチタネート、ジイソプロポキシアンモニウムエチルアセテート、n−ブチルジルコネート等があげられる。
【0083】
[製造方法・成形・用途]
本発明の組成物の製造方法は一般的に使用されている溶融混練機を用いることが可能で、例えば、ニーダー、ロールミル、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機等をあげることができる。中でも二軸押出機、多軸押出機が好ましく、エチレン系変性αオレフィン重合体を規定の粒子間距離に分散させるためには、それらの条件を適切に選ばなければならない。このときの加工温度は180〜230℃であることが好ましく、品質や作業環境の保持のためには不活性ガスによる置換や減圧脱気することが好ましい。
例えば、ベント付き2軸スクリュー式押出機(PCM30,L/D=32)を用いた場合、スクリューパターンは、順方向のフライトおよび順方向のニーディングディスクに加え、逆方向のフライトや逆方向のニーディングディスクを組み合わせて、溶融ゾーンの滞留時間を長く保ちかつ混練ゾーンのパターンは強練りタイプとした方が好ましい。滞留時間が長すぎると得られる組成物の熱安定性が低下し、短すぎると規定の粒子間距離に分散しないため、1分から4分が好ましい。さらに、これらを満たすために組成やスクリュ-パターンに合わせてQEやNSを調整することが必要となる。造粒温度は、低すぎると未溶融樹脂が混練ゾーンに供給されるため押出機のトルクが上昇し機器への負荷が大きくなり、温度が高すぎると樹脂劣化の原因となるため、180〜230℃であることが好ましい。また、品質や作業環境の保持のためには、一段および多段ベントで脱気することが好ましい。
【0084】
本発明の組成物は、ガスインジェクション成形による中空成形体やガス微分散成形体などを得ることができる。これにより寸法安定性、成形安定性の向上と、軽量化などが可能となる。
さらに、本組成物と各種樹脂との接着(超音波接着、高周波接着、熱板接着、熱プレス成形、多層射出成形、多層ブロー成形など方法は問わない)により、2層以上の成形品とすることで、各種樹脂の優れた性能(靱性、剛性、摺動性、耐薬品性、耐ガソリン透過性など)を付与し、ポリアセタール樹脂の優れた特性を維持することが可能となる。
【0085】
また、本発明の組成物は、成形、切削、または成形・切削加工されて得られる構造部品または機構部品、アウトサートシャーシの樹脂部品、シャーシ、トレー及び側板からなる群から選ばれる少なくとも一種の部品や該機構部品が、ギア、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、関節、軸、軸受け、キーステム、キートップからなる群から選ばれる少なくとも一種に用いられることが好ましい。
【0086】
さらに、これらの部品が用いられる用途としては、プリンターおよび複写機に代表されるOA機器、VTRおよびビデオムービーに代表されるビデオ機器、カセットプレーヤー、LD、MD、CD(含CD-ROM、CD-R、CD-RW)、DVD(含DVD-ROM、DVD-R、DVD-RAM、DVD-Audio)、ナビゲーションシステムおよびモバイルコンピューターに代表される音楽、映像、または情報機器、携帯電話およびファクシミリに代表される通信機器、クリップ、スルーアンカー、タング、燃料タンク、燃料タンク周辺部品に代表される自動車内外装部品、使い捨てカメラ、玩具、ファスナー、コンベア、バックル、および住設機器に代表される工業雑貨などがあげられる。
【実施例】
【0087】
本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
先ず実施例および比較例で使用する成分の内容、続いて用いた評価の方法、そして実施例・比較例を以下に示す。
【0088】
[使用成分の内容]
(A)成分
<A-1>
熱媒を通すことのできるジャケット付の二軸のパドル型連続重合装置を80℃に調整し、水+蟻酸=4ppmであるトリオキサンを40モル/Hrで供給し、同時に環状ホルマールとして1,3-ジオキソランを2モル/Hrで供給し、重合触媒としてシクロヘキサンに溶解した三フッ化ホウ素ジ-n-ブチルエーテラートをトリオキサン1モルに対し10×10-5モルになるように、また連鎖移動剤として下記[式5]の両末端ヒドロキシル基水素添加ポリブタジエン(Mn=3390)をトリオキサン1モルに対し2×10-3モルになるように連続的にフィードし重合を行った。
【0089】
【化8】

【0090】
重合機から排出されたポリマーをトリエチルアミン1%水溶液中に投入し重合触媒の失活を完全に行った後、そのポリマーを濾過、洗浄し、濾過洗浄後の粗ポリオキシメチレン共重合体1重量部に対し、第4級アンモニウム化合物として、トリエチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム蟻酸塩を前記[数式1]を用いて、窒素の量に換算して20重量ppmになるように添加し、均一に混合した後120℃で乾燥した。
【0091】
次に、上記乾燥粗ポリオキシメチレン共重合体100重量部に対し、酸化防止剤としてトリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を0.3重量部添加し、ベント付き2軸スクリュー式押出機に供給した。押出機中の溶融しているオキシメチレン共重合体に対し、水を0.5重量%添加し、押出機の設定温度200℃、滞留時間5分で不安定末端部の分解を行った。不安定末端部の分解されたポリオキシメチレン共重合体は21KPaの条件下で減圧脱気した後、押出機ダイス部よりストランドとして押し出されカッターでペレタイズし、サンプルを得た。こうして得られたサンプルは、分子量測定と末端ヒドロキシアルキル基の定量を行った。
【0092】
<A-2>
水+蟻酸=40ppmであるトリオキサン40モル/Hrで、同時に環状ホルマールとして1,3-ジオキソランを2モル/Hrで供給し、連鎖移動剤として両末端ヒドロキシル基ポリエチレン(Mn=5000)をトリオキサン1モルに対し1.0×10-3モルになるように連続的にフィードし重合を行う以外、<A-1>と同様の操作を行い、サンプルの作製・定量を行った。
【0093】
<A-3>
連鎖移動剤として、両末端ヒドロキシル基水素添加ポリブタジエン(Mn=3390)をトリオキサン1モルに対し1×10-3モルと更にメチラール[(CHO)CH]をトリオキサン1モルに対し1×10-3モルになるように連続的にフィードし重合を行う以外、<A-1>と同様の操作を行い、サンプルの作製・定量を行った。
【0094】
<A-4>
連鎖移動剤として、メチラール[(CHO)CH]をトリオキサン1モルに対し2×10-3モルになるように連続的にフィードし重合を行う以外、[A-1]と同様の操作を行い、サンプルの作製・定量を行った。
【0095】
<A-5>
連鎖移動剤として、メチラール[(CHO)CH]をトリオキサン1モルに対し3×10-3モルになるように連続的にフィードし重合を行う以外、<A-1>同様の操作を行い、サンプルの作製・定量を行った。
【0096】
<A-6>
第4級アンモニウム化合物添加をせずに、押し出し機にて、水に加えて、トリエチルアミンを前記[数式1]を用いて、窒素の量に換算して50重量ppmになるように添加した以外、<A-1>と同様の操作を行い、サンプルの作製・定量を行った。
【0097】
(B)成分
<B-1>
触媒として(第三級ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)−1、2−エタンジイルチタンジクロライドを用いて、特開平3-163088号公報記載の方法にてエチレン-オクテンのモル比80/20で製造したエチレン-オクテン共重合体100重量部に無水マレイン酸を1.0重量%グラフト重合した変性αオレフィン共重合体。
【0098】
<B-2〜5>
<B-1>と同様に表2に示す組成、割合で製造した変性αオレフィン共重合体。
【0099】
<B-6>
無水マレイン酸をグラフトすることなく、それ以外は<B-1>と同様に製造したエチレン-オクテン共重合体。
【0100】
[評価方法]
(1)成形外観
実施例および比較例で得られたペレットを100℃で3時間乾燥した後、シリンダー温度200℃に設定されたネスタール射出成形機(住友重金属工業(株)製)で、金型温度70℃で厚さ3mmの平板を成形し、この平板を外観目視にて評価した。使用する上で良好の場合を◎、光沢性、アバタなど使用する上で問題ない程度の場合を△とし、シルバー、異物など成形外観が明らかに低下した場合を×とした。
【0101】
(2)剛性
実施例および比較例で得られたペレットを80℃で3時間乾燥した後、シリンダー温度200℃に設定された5オンス成形機(東芝機械(株)製 IS-100E)を用いて、金型温度70℃、冷却時間30秒の条件で物性評価用試験片を成形した。ASTM D790に基づいて曲げ試験を行い、得られた弾性率により剛性の評価を行った。評価はn=5で行い、平均値を示した。
【0102】
(3)低温耐衝撃性
前述の(2)の曲げ試験用の成形品を用いて、ASTM D256に基づいて、−30℃でアイゾッド試験を行い、得られた結果により低温耐衝撃性の評価を行った。評価はn=5で行い、平均値を示した。
【0103】
(4)摺動性
前述の(2)の曲げ試験用の成形品を試験片とした。この試験片を、ピン/ディスク型往復動摩擦摩耗試験機(東洋精密(株)製 AFT−15MS型)を用いて荷重2kg、線速度30mm/sec、往復距離20mmおよび環境温度23℃の条件で5000回往復し、摩擦係数と摩耗量を測定した。相手材料としては、(A−4)をサンプルとしてピン(先端直径;5mm)を成形し用いた。
【0104】
(5)粒子間距離
前述の(2)の曲げ試験用の成形品を用いて、成形品の中心部を流動方向に対し直角に切削し、透過型電子顕微鏡を用いてエチレン系オレフィン重合体の分散状態を写真に撮った。この写真をもとに、任意に選び出した分散粒子50個について粒子間距離を調べ、粒子の平均粒子間距離を決定した。
【0105】
[実施例1]
ポリオキシメチレン共重合体として、<A-1>100重量部、エチレン系変性αオレフィン重合体として無水マレイン酸変性エチレン-オクテン共重合体、<B-1>15重量部をヘンシェルミキサーでブレンドし、ベント付き2軸スクリュー式押出機(PCM30,L/D=32,200℃)にて、押出し混練を行った(QE/NS=5(kg/h)/50(rpm))。押し出された樹脂はストランドカッターでペレットとし、80℃で3時間乾燥した。このペレットを射出成形機を用い目的の形状に成形し、成形外観、低温耐衝撃性、摺動性の評価・分散粒子の平均粒子間距離の測定を行った。その結果を表3に示す。造粒および成形は通常のポリオキシメチレン樹脂と同様に実施でき、発泡などは観察されなかった。
【0106】
[実施例2〜5]
表3または4に示す条件で、ポリオキシメチレン共重合体とエチレン系変性αオレフィン重合体を配合、ヘンシェルミキサーでブレンドした。この後、実施例1と同様な操作・評価を実施した。その結果を表3または4に示す。造粒および成形は通常のポリオキシメチレン樹脂と同様に実施でき、発泡などは観察されなかった。
【0107】
[実施例6]
表4に示す条件で、ポリオキシメチレン共重合体<A-1>とポリオキシメチレン樹脂<A-4>とエチレン系変性αオレフィン重合体<B-1>を同時に配合、ヘンシェルミキサーでブレンドした。この後、実施例1と同様な操作・評価を実施した。その結果を表4に示す。造粒および成形は通常のポリオキシメチレン樹脂と同様に実施でき、発泡などは観察されなかった。
【0108】
[実施例7]
表4に示す条件で、ポリオキシメチレン共重合体とエチレン系変性αオレフィン重合体を配合、ヘンシェルミキサーでブレンドした。この後、実施例1と同様な操作・評価を実施した。その結果を表4に示す。造粒および成形は通常のポリオキシメチレン樹脂と同様に実施でき、発泡などは観察されなかった。
【0109】
[実施例8]
表5に示す条件で、ポリオキシメチレン共重合体<A-1>とエチレン系変性αオレフィン重合体<B-1>とエチレン系αオレフィン重合体<B-6>を同時に配合、ヘンシェルミキサーでブレンドした。この後、実施例1と同様な操作・評価を実施した。その結果を表5に示す。造粒および成形は通常のポリオキシメチレン樹脂と同様に実施でき、発泡などは観察されなかった。
【0110】
[実施例9、10]
表5または6に示す条件で、ポリオキシメチレン共重合体とエチレン系変性αオレフィン重合体を配合、ヘンシェルミキサーでブレンドした。この後、実施例1と同様な操作・評価を実施した。その結果を表5または6に示す。造粒および成形は通常のポリオキシメチレン樹脂と同様に実施でき、発泡などは観察されなかった。
【0111】
[実施例11]
表6に示す条件で、ポリオキシメチレン共重合体<A-1>とオキシメチレン樹脂<A-5>とエチレン系変性αオレフィン重合体<B-1>を同時に配合し、ヘンシェルミキサーでブレンドした。この後、実施例1と同様な操作・評価を実施した。その結果を表6に示す。造粒および成形は通常のポリオキシメチレン樹脂と同様に実施でき、発泡などは観察されなかった。
【0112】
[実施例12]
表6に示す条件で、ポリオキシメチレン共重合体<A-1>70重量部とエチレン系変性αオレフィン重合体<B-1>25重量部を同時に配合、ヘンシェルミキサーでブレンドし、実施例1と同様にベント付き2軸スクリュー式押出機にて、押出し混練を行った。この後、再度このペレットとオキシメチレン樹脂<A-5>を95:30にて、同じ条件で押し出し混練を行った。これによって得られたペレットを実施例1と同様に評価を実施した。その結果を表6に示す。造粒および成形は問題なく実施でき、発泡などは観察されなかった。<A-5>を後から混合することで、一括造粒よりさらに低温耐衝撃性・摺動性が向上した。
【0113】
[実施例13]
表6に示す条件で、ポリオキシメチレン共重合体とエチレン系変性αオレフィン重合体を配合、ヘンシェルミキサーでブレンドした。この後、実施例1と同様な操作・評価を実施した。その結果を表6に示す。造粒および成形は通常のポリオキシメチレン樹脂と同様に実施でき、発泡などは観察されなかった。可塑性の高いエチレン系変性αオレフィン重合体を混合することで、粒子間距離が短くなりさらに低温耐衝撃性・摺動性が向上した。
【0114】
[実施例14]
表6に示す条件で、ポリオキシメチレン共重合体とエチレン系変性αオレフィン重合体と滑剤としてシリコンオイル(東レ・ダウコーニング製/SH100−100CS)を同時に配合、ヘンシェルミキサーでブレンドした。この後、実施例1と同様な操作・評価を実施した。その結果を表6に示す。造粒および成形は通常のポリオキシメチレン樹脂と同様に実施でき、発泡などは観察されなかった。可塑性の高いエチレン系変性αオレフィン重合体を混合し、シリコンオイルを添加することで、粒子間距離が短くなりさらに低温耐衝撃性・摺動性が向上した
【0115】
[比較例1]
エチレン系変性αオレフィン重合体を添加していないポリオキシメチレン共重合体<A-1>について、成形を行い実施例1と同様の評価を実施した。結果を表3に示す。剛性は優れているが、低温耐衝撃性が低かった。
【0116】
[比較例2]
表3に示す条件で実施例1と同様に操作を行い、評価を実施した。結果を表3に示す。エチレン系変性αオレフィン重合体を75質量部添加することで低温耐衝撃性は改善されているが、得られたポリオキシメチレン樹脂組成物は、オキシメチレン樹脂が本来もっている剛性を大きく低下させているため、樹脂としての物性バランスが悪くなった。
【0117】
[比較例3]
表4に示す条件で実施例1と同様に操作・評価を行った。変性していない通常のオキシメチレン樹脂を配合すると、ヒドロキシアルキル基末端濃度が不足しているため、造粒時発泡ぎみのストランドとなり、外観目視評価で通常のポリオキシメチレン樹脂に比べ劣っていた。
【0118】
[比較例4]
表5に示す条件で実施例1と同様に操作・評価を行った。結果を表5に示す。変性基を有していない変性オレフィン系重合体を配合した場合、親和性が劣るため十分な低温耐衝撃性が得られなかった。
【0119】
[比較例5]
表5に示す条件で実施例1と同様に操作・評価を行った。結果を表5に示す。エチレン成分のモル%が規定量より多いと、柔軟性が低下し十分な低温耐衝撃性が得られなかった。
【0120】
[比較例6]
表5に示す条件で実施例1と同様に操作・評価を行った。結果を表5に示す。エチレン成分のモル%が規定量より少ないと、十分な低温耐衝撃性が得られなかった。また、製造時の取り扱い性も低下した。
【0121】
[比較例7]
表6に示す条件で実施例1と同様に操作・評価を行った。結果を表6に示す。押出し混練の条件(QE/NS=12(kg/h)/120(rpm))が適正でなかったため、粒子間距離が大きくなり、十分な低温耐衝撃性が得られなかった。
【0122】
【表1】

【0123】
【表2】

【0124】
【表3】

【0125】
【表4】

【0126】
【表5】

【0127】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明は、ポリオキシメチレン樹脂組成物において成形外観および剛性を保持し、優れた低温耐衝撃性および摺動性を有した組成物であり、本組成物を用いた成形体、および精密機器、家電OA機器、自動車、工業材料および雑貨などにおける部品に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシメチレン樹脂(A)100重量部及びエチレン系変性αオレフィン重合体(B)10〜50重量部を含み、(A)が分子末端にヒドロキシアルキル基を含み、かつそのヒドロキシアルキル基末端濃度がオキメチレン単位1モル当り5×10-5モル以上であるポリオキシメチレン共重合体(a−1)又は該ポリオキシメチレン共重合体(a−1)とオキシメチレン樹脂(a−2)とを含み、(B)がエチレン成分を65〜90モル%含有し、(A)中に(B)が平均粒子間距離8μm以下で分散していることを特徴とするポリオキシメチレン樹脂組成物。
【請求項2】
ポリオキシメチレン共重合体(a−1)が、エチレン系変性αオレフィン重合体(B)の2倍重量部以上からなることを特徴とする請求項1記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
【請求項3】
ポリオキシメチレン共重合体(a−1)を下記[式1]で表される少なくとも一種の第4級アンモニウム化合物を用いて、熱的に不安定な末端を処理して安定化させたことを特徴とする請求項1または2に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
【化1】

(式中、R、R、R、Rは、各々独立して、炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基が少なくとも1個の炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基が少なくとも1個の炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を表し、非置換アルキル基または置換アルキル基は直鎖状、分岐状、または環状である。上記非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基は水素原子がハロゲンで置換されてもよい。nは1〜3の整数を表す。Xは水酸基、又は炭素数1〜20のカルボン酸、水素酸、オキソ酸無機チオ酸もしくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を表す。)
【請求項4】
ポリオキシメチレン共重合体(a−1)が、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、エステル基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種を少なくとも1個以上有する、数平均分子量400以上の重合体を連鎖移動させて得られたポリオキシメチレンブロック共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
【請求項5】
該ポリオキシメチレンブロック共重合体が、下記[式2]で表される数平均分子量10000〜500000のポリオキシメチレン共重合体であることを特徴とする請求項4記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
【化2】

(式中、A以外(Bブロックという)は、m=2〜98モル%、n=2〜98モル%、m+n=100モル%であり、mはnに対してランダムあるいはブロックで存在し、数平均分子量500〜10000である両末端をヒドロキシアルキル化された水素添加液状ポリブタジエン残基。但し、Bブロックはヨウ素価20g-I/100g以下の不飽和結合をもつものであってもよい。k=2〜6から選ばれる整数であり、2つのkは各々同一であっても異なっていてもよい。Rは水素、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基より選ばれ各々同一であっても異なっていてもよい。Aブロックは、下記[式3]で表されるポリオキシメチレン共重合体残基である。
【化3】

(R’は水素、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基より選ばれ各々同一であっても異なっていてもよい。jは2〜6から選ばれる整数である。x=95〜99.9モル%、y=5〜0.1モル%、x+y=100モル%、yはxに対してランダムに存在する。)[式2]中、2つのAブロックの平均の数平均分子量5000〜250000である。)
【請求項6】
エチレン系変性αオレフィン系重合体(B)が、カルボン酸又はその酸無水物で0.01〜8重量%変性されたエチレン系αオレフィン重合体を少なくとも20重量%以上含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
【請求項7】
ポリオキシメチレン共重合体(a−1)、エチレン系変性αオレフィン重合体(B)を実質的に混合した後、オキシメチレン樹脂(a−2)を混合して得られたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか記載のポリオキシメチレン樹脂組成物を、射出成形、ガスインジェクション成形、多層射出成形、押出成形又はブロー成形することにより得られたことを特徴とする成形体。

【公開番号】特開2006−306992(P2006−306992A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−130881(P2005−130881)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】