説明

樹脂組成物

【課題】レンズ用途として十分な透明性を持ち、屈折率を高くすることができる樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】エピスルフィド構造の化合物を有するA成分11、SH基を1分子あたり1個以上有するチオール化合物を有するB成分12、有機金属化合物を有するC成分13、水のD成分14、及び内部離型剤を有するE成分15を含む重合性組成物を重合硬化して樹脂組成物を得る。この樹脂組成物に有機金属化合物を有するC成分13が含まれているので、屈折率が高いものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡用プラスチックレンズ、その他のプラスチック製品を製造するための樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡用プラスチックレンズは、ガラスレンズに比べて軽量であり、成形性や加工性が良く、割れ難く安全性も高い等の様々なメリットを備えている。このため、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の分野で広く用いられている。
プラスチックレンズは、当初、屈折率が1.50の素材が広く使われていたが、近年、レンズの薄型化を目的として、高屈折率のプラスチックレンズの開発が進められ、高屈折率の樹脂素材としては、エピスルフィド化合物とチオール化合物とを重合してなる樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)が提案されている。
【0003】
また、カメラや光ピックアップ、その他の光学装置で使用されるレンズでは、高屈折率化が求められており、高屈折率化を目的とした樹脂組成物として、シクロオレフィン系樹脂と酸化ジルコニウム粒子とを含有する組成物(特許文献2)、フルオレフィン系化合物,その他の化合物と金属酸化物微粒子とを含有する組成物(特許文献3)、さらには、フルオレフィン系樹脂と酸化ジルコニウムとを含有する組成物(特許文献4)が知られている。これらの特許文献2〜4で示される組成物は、オレフィン系樹脂に金属酸化物微粒子、または金属酸化物微粒子と溶媒からなる分散液を添加し、混合・攪拌したのち、必要に応じて溶媒を除去する工程等を行った上で作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−298287号公報
【特許文献2】特開2008−24735号公報
【特許文献3】特開2008−81726号公報
【特許文献4】特開2008−133379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で示される従来例では、最高で1.708の屈折率が確保される。しかし、レンズの薄型化のために、特許文献1で示される屈折率の樹脂組成物よりも大きな屈折率を得られる樹脂組成物の開発が望まれている。
特許文献2〜4で示される従来例では、金属酸化物微粒子を樹脂に混合・攪拌して均一に分散する構成であるため、金属酸化微粒子が十分に分散されないと、白濁等の外観不良を生じさせ、透明性が失われることにより、レンズ用途にしようすることができなくなる。
【0006】
本発明は、レンズ用途として十分な透明性を持ち、屈折率を高くすることができる樹脂組成物を提供することにあることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の樹脂組成物は、
A成分:下記(1)式で表されるエピスルフィド構造を1分子中に1個以上有する化合物
【化1】

C成分:下記(2)式で表される有機金属化合物
mRpMX4−p−m (2)
(式中、Rは重合可能な反応基を有する有機基、Rは炭素数1〜6の炭化水素基、Xは加水分解基であり、Mは、Ti、Zr、Ge、Sn、Nb、Taから選ばれる金属原子を表し、mは0又は1、pは0又は1である。)
としたとき、A成分とC成分とを含む重合性組成物を重合硬化して得られることを特徴とする。
【0008】
この構成の本発明では、エピスルフィド構造を1分子中に1個以上有する化合物に有機金属化合物を混合して反応させることで、樹脂組成物の屈折率をより高いものにできる。さらに、金属酸化物微粒子を攪拌して分散する必要がないので、微粒子の分散が不十分であることに起因する白濁化がなくなり、外観が良好となる。
【0009】
本発明では、前記重合性組成物として、B成分:SH基を1分子あたり1個以上有する化合物、を含む構成が好ましい。
A成分のエピスルフィド化合物が増量されると、レンズ生地が黄変し易くなるが、この構成の発明では、B成分が含まれているので、樹脂の黄変対応に対応することができる。なお、B成分が増量されると、耐熱性が低下するが、この耐熱性の低下はC成分で補うことができる。従って、本発明では、黄変対応と耐熱性向上とを同時に達成することができる。
【0010】
本発明では、前記A成分と前記B成分との合計を100質量部とした場合、前記C成分を1〜50質量部添加する構成が好ましい。
この構成の発明では、A成分及びB成分の合計に対するC成分の比率が1質量部未満であると、C成分がほとんど含まれていないことになり、屈折率向上の効果を十分に達成することができず、50質量部を超えると、白濁等の外観異常が発生し易くなる。
【0011】
さらに、前記A成分中のエピスルフィド基のモル数をAmとし、前記B成分中のSH基のモル数をBmとした場合、0.05 ≦ Bm/Am ≦ 0.8 である構成が好ましい。
この構成の発明では、それぞれ、黄変対応と耐熱性向上とをより効率的に達成することができる。
【0012】
本発明では、前記C成分中のMが、TiまたはZrであることが好ましい。
この構成の本発明では、TiやZrは他の材料に比べて屈折率が高く、かつ、入手が比較的容易であるため、樹脂組成物の製造を安価に行うことができる。さらに、透明性も高いので、眼鏡用プラスチックレンズとして好適である。なお、TiとZrとを比べた場合には、ZrはTiよりアッベ数を高くし易いので、好ましい。
【0013】
本発明では、前記A成分が、下記(3)式で表されるエピスルフィド化合物である構成が好ましい。
【0014】
【化2】

さらに、前記A成分が、1分子中に1つ以上のジスルフィド結合を持つ構成が好ましい。
これらの構成の発明では、それぞれ、樹脂組成物で製造される製品を高屈折率なものとすることができる。
【0015】
前記重合性組成物に、さらに、内部離型剤を添加した後、重合硬化する構成が好ましい。
この構成の発明では、重合性組成物を重合するためにモールドを使用する際に、このモールドと重合硬化された製品との離型を円滑に行えるから、重合硬化された製品に離型に際して力が加わって欠けたり、ひびが入ったりすることがない。
【0016】
前記重合性組成物を重合する際に使用するモールドの使用面に離型剤を塗布、または離型効果を持つ表面処理加工をする構成が好ましい。
この構成の発明では、製品とモールドとの境界部分に離型剤を塗布したり、離型効果を持つ表面処理加工を施したりすることで、製品とモールドとの離型をより円滑に行うことができる。
【0017】
前記重合性組成物に、さらに、水を添加した後、重合硬化する構成が好ましい。
この構成の発明では、重合性組成物に水を添加することで、加水分解基の反応を促進することになり、耐熱性がより向上する。
【0018】
前記重合性組成物中のC成分の加水分解基のモル数をCmとし、添加する水のモル数をHmとした場合 0.1 ≦ (Hm/Cm) ≦ 3 である構成が好ましい。
この構成の発明では、水の量を適正な範囲とすることで、反応を進ませて耐熱性を向上させることができるとともに製品の白濁を防止して外観を良好にすることができる。
つまり、水の量が少ないと、反応が進まず、水の量が多すぎると、製品が白濁して外観が不良となる。
【0019】
前記樹脂組成物の用途が眼鏡用プラスチックレンズ用である構成が好ましい。
この構成の発明では、前述の効果を奏することができる眼鏡用プラスチックレンズを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る調合工程を示す図。
【図2】前記実施形態に係る注型重合用の凹型と凸型を示す図。
【図3】前記実施形態における注型重合用の成形モールドを示す図。
【図4】前記実施形態における原料供給装置と成形モールドを示す図。
【図5】前記実施形態における硬化工程を示す図。
【図6】前記実施形態におけるプラスチックレンズを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のプラスチックレンズの製造方法について実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態では、眼鏡用のプラスチックレンズを例示する。
[樹脂組成物]
本実施形態で製造される眼鏡レンズの樹脂組成物は、エピスルフィド構造を有する化合物からなるA成分、SH基を1分子あたり1個以上有する化合物からなるB成分、有機金属化合物を有するC成分、水を有するD成分、及び内部離型剤を有するE成分を含む重合性組成物を重合硬化して得られるものである。
ここで、A成分とB成分との合計を100質量部とした場合、C成分を1〜50質量部添加する。
A成分中のエピスルフィド基のモル数をAmとし、B成分中のSH基のモル数をBmとした場合、
0.05 ≦ Bm/Am ≦ 0.8 である。
C成分の加水分解基のモル数をCmとし、添加するD成分の水のモル数をHmとした場合
0.1 ≦ (Hm/Cm) ≦ 3 である。
【0022】
A成分:下記(1−1)式で表されるエピスルフィド構造を1分子中に1個以上有する化合物
【0023】
【化3】

【0024】
本実施形態で使用されるA成分は、(1−1)式で表される化合物のうち、特に、下記(1−2)式で表されるエピスルフィド化合物である。
【0025】
【化4】

【0026】
本実施形態で適用されるエピスルフィド化合物は次の化合物を例示できる。
エピスルフィド基を有する化合物として、ビス(2,3−エピチオプロピル)スルフィド,1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)エタン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルプロパン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルブタン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−3−チアペンタン、1,6−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ヘキサン、1,6−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルヘキサン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−3,6−ジチアオクタン、1,2,3−トリス(2,3−エピチオプロピルチオ)プロパン、2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、2,2−ビス(2、3−エピチオプロピルチオメチル)−1−(2,3−エピチオプロピルチオ)ブタン、1、5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−(2、3−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,4−ビス(2、3−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1−(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,2ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−4−チアヘキサン、1,5,6−トリス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4−(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアヘキサン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4−(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,4,5−トリス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,1,1−トリス{[2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エチル]チオメチル}−2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エタン、1,1,2,2−テトラキス{[2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エチル]チオメチル}エタン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4,7−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−5,7ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン等の鎖状脂肪族の2,3−エピチオプロピルチオ化合物、および、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス{[2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エチル]チオメチル}−1,4−ジチアン、2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン等の環状脂肪族の2,3−エピチオプロピルチオ化合物、および、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス[4−(2,3−エピチオプロピルチオ)フェニル]メタン、2,2−ビス[4−(2,3エピチオプロピルチオ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2,3−エピチオプロピルチオ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(2,3−エピチオプロピルチオ)フェニル]スルフォン、および4、4’−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ビフェニル等の芳香族2,3−エピチオプロピルチオ化合物等を挙げることができる。これらの1種を単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0027】
分子内に1つ以上のジスルフィド結合(S−S)を有し、かつ、エピスルフィド基を有する化合物としては、例えば、ビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィドなどの分子内に1つのジスルフィド結合を有する(チオ)エポキシ化合物、ビス(2,3−エピチオプロピルジチオ)メタン、ビス(2,3−エピチオプロピルジチオ)エタン、ビス(6,7−エピチオ−3,4−ジチアヘプタン)スルフィド、1,4−ジチアン−2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルジチオメチル)、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルジチオメチル)ベンゼン、1,6−ビス(2,3−エピチオプロピルジチオメチル)−2−(2,3−エピチオプロピルジチオエチルチオ)−4−チアヘキサン、1,2,3−トリス(2,3−エピチオプロピルジチオ)プロパンなどの分子内に2つ以上のジスルフィド結合を有するチオエポキシ化合物が挙げられる。これらの1種を単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
モノマー化合物としては、これらのうちから1つを選んで、単独で使用することも可能であるし、また、これらのうちから複数の化合物を選び、併用することも可能である。
【0028】
B成分:SH基を1分子あたり1個以上有するSH基を1つ以上有するチオール化合物
チオール化合物の具体例としては、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、1,2−エタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2,2−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,2,3−トリメルカプトプロパン、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、1,2−ジメルカプトシクロヘキサン、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトチオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロ−ルプロパントリス(2−メルカプトチオグリコレート)、トリメチロ−ルプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、1,1,1−トリメチルメルカプトエタン、1,1,1−トリメチルメルカプトプロパン、2,5−ジメルカプトメチルチオファン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、2,5−ビス[(2−メルカプトエチル)チオメチル]−1,4−ジチアン、1,3−シクロヘキサンジチオール、1,4−シクロヘキサンシチオール、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン等の脂肪族チオール、及び、ベンジルチオール、チオフェノール、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、2,2’−ジメルカプトビフェニル、4,4’−ジメルカプトビフェニル、ビス(4−メルカプトフェニル)メタン、ビス(4−メルカプトフェニル)スルフィド、ビス(4−メルカプトフェニル)スルフォン、2,2−ビス(4−メルカプトフェニル)プロパン、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,2,5−トリメルカプトベンゼン等の芳香族チオールが挙げられるが、これらの例示化合物のみに限定されるものではない。
【0029】
C成分:下記(2)式で表される有機金属化合物
mRpMX4−p−m (2)
(式中、Rは重合可能な反応基を有する有機基、Rは炭素数1〜6の炭化水素基、Xは加水分解基であり、Mは、Ti、Zr、Ge、Sn、Nb、Taから選ばれる金属原子を表し、mは0又は1、pは0又は1である。)
このような有機金属化合物の具体例としては、ジルコニウムエトキサイド、ジルコニウムn−ブトキサイド、ジルコニウム2−メチル−2−ブトキサイド、ジルコニウムイソプロポキサイド、ジルコニウムn−プロポキサイド、ジルコニウムトリメチルシロキサイド、チタニウムエトキサイド、チタニウムn−ブトキサイド、チタニウムイソプロポキサイド、チタニウムトリメチルシロキサイド、ゲルマニウムエトキサイド、ゲルマニウムイソプロポキサイド、その他の有機金属化合物を例示できる。
【0030】
E成分;内部離型剤
内部離型剤としては、例えば、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミドを例示することができる。また、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの、各種界面活性剤等の使用も可能である。また、前述の物質以外にも、次の物質を重合性組成物に添加してもよい。
例えば、(メタ)アクリレート系、アリル系、ビニル系などの、ラジカル重合性官能基を持つ化合物、水酸基、アミノ基等のチオール基以外の活性水素基を持つ化合物、エポキシ基、オキセタン基等を持つ化合物などを、必要に応じて、添加することも可能である。 また、重合反応における硬化触媒としては3級アミン類、ホスフィン類、ルイス酸類、ラジカル重合触媒類、カチオン重合触媒類等が通常用いられる。また、必要に応じて、鎖延長剤、架橋剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色防止剤、染料、充填剤、等の種々の物質を添加してもよい。
【0031】
[プラスチックレンズの製造]
ます、本実施形態のレンズを注型重合法によって製造する工程について、その概要を図1〜図6を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る調合工程を示す図である。まず、図1(A)で示される通り、A成分11、B成分12及びC成分13を投入攪拌し、組成物L1を調合し、その後、図1(B)で示される通り、D成分14及びE成分15を投入して組成物L2を調合し、最終的に、撹拌することで、図1(C)で示される通り、樹脂組成物Lを得る。なお、本実施形態では、これらの成分の投入のタイミングは前述のものに限定されるものではなく、例えば、全ての成分を同時に投入し、全体を攪拌するものであってもよい。また、図1ではA成分、B成分、C成分、D成分、E成分とも液体状に記載してあるが、液体に限定されるものではなく、固体(紛体等)の場合もある。
【0032】
図2は、本発明の実施形態に係る注型重合用の凹型と凸型を示す図である。図2に示される通り、レンズの凸面成形面111を有する凹型110と、レンズの凹面成形面121を有する凸型120について、それぞれ洗浄したものを準備する。
次に、図3は、本発明の実施形態における注型重合用の成形モールドを示す図である。図3に示される通り、これらの凸面成形面111と凹面成形面121を対向させ、凹型110と凸型120の周面に粘着テープ130を巻いてこれらの型の間のキャビティ140を封止して成形モールド150を組み立てる。
図4は、本実施形態における原料供給装置と成形モールドを示す図である。図4に示される通り、調合された樹脂組成物Lは原料調合槽から原料貯蔵供給装置160の圧力容器である貯蔵容器161に分配される。原料貯蔵供給装置160を成形モールドに注入する場所まで搬送し、貯蔵容器161の内部に圧力気体を導入して貯蔵容器161の中の硬化性組成物Lを注入配管162とバルブ163を介して注入ノズル164から組み立てた成形モールド150のキャビティ140内に押し出して充填する注入工程を行う。
【0033】
そして、図5は、本発明の実施形態における硬化工程を示す図である。図5に示される通り、成形モールド150を恒温室170内に配置し、所定の温度と時間に設定された環境下に成形モールド150を曝すことによって、充填された硬化性組成物Lを重合、硬化させる硬化工程を行う。
最後に、図6は、本実施形態におけるプラスチックレンズを示す図である。図6に示される通り、硬化したプラスチックレンズから凹型110と凸型120とを脱離することによってプラスチックレンズ180を得ることができる。この際、凹型110と凸型120の使用面に外部離型剤、例えば、IPAで1000ppmに希釈した界面活性剤をスピンコートにより塗布し、乾燥させてから使用してもよく、さらには、レンズ成形型110,120の使用面に、市販のガラス用撥水処理剤によって撥水処理加工を施すものでもよい。
【0034】
以下に、上記した各工程についてさらに詳細に説明する。
成形モールド150としては、例えば、図3に示したような粘着テープ130によって側面が保持された2枚のガラスよりなる成形モールド150やガスケットで側面が保持された成形モールドが好ましく用いられる。
注入工程では、まず、粘着テープ130の所定の位置に下穴加工を施し、図示しない下穴部に注入ノズル164を挿入する。凸レンズ用の成形モールド150は外周部における凹型110と凸型120との間隔が狭いので、その間に挿入が可能なように、先端が非常に細い注入ノズル164を使用する。貯蔵容器161内に圧力気体を導入して貯蔵容器161に充填されている硬化性組成物Lを注入配管162とバルブ163を介して注入ノズル164へ押し出すことにより注入し、キャビティ140内が硬化性組成物Lで満たされたのを検知してバルブ163を閉じて注入を終了させた後、注入口を封止する。
【0035】
次に、本実施形態のプラスチックレンズ180の製造方法では、所定の温度条件下に成形モールド150を曝すことによって成形モールド150に充填され樹脂組成物Lを重合し、硬化させる硬化工程を有する。
標準的な重合条件としては、約10〜30℃をスタート温度とし、その後、最高温度約100〜140℃まで約20〜40時間かけて昇温して重合を行う。重合後は、恒温室170から成形モールドを取り出し、成形モールドを分離して硬化したプラスチックを取り出してプラスチックレンズを得る。
ここで、プラスチックレンズ180の注型重合では、プラスチックレンズ180の両面が成形モールド150からの転写で所定の光学面に仕上げられたフィニッシュトレンズを製造する場合と、片面が成形モールド150からの転写で光学面に仕上げられ、反対側の面が研磨加工により光学面に削られるセミフィニッシュトレンズを製造する場合とがある。
【0036】
フィニッシュトレンズは、一般に薄く、凸レンズでも凹レンズでも最小の厚みは1mm程度である。これに対してセミフィニッシュトレンズはやや厚手で、凸レンズでも凹レンズでも最小の厚みは5〜20mm程度である。
成形モールドから重合したプラスチックレンズを取り出す温度は、例えば100℃以下であり、より好ましくは70℃以下であり、最高温度から降温させる時間は、1〜5時間程度であり、強制的に冷却して1時間程度の降温時間とすることができる。
【0037】
得られたプラスチックレンズ180のレンズ度数の安定化やレンズの光学歪みを取り除くためには、成形モールド150から取り出したプラスチックレンズ180を再加熱しアニール処理を行うことが好ましい。このときの処理温度は70℃〜160℃であり、好ましくは80℃〜130℃である。また処理時間は10分〜6時間であり、好ましくは1時間〜3時間である。
重合成形されたプラスチックレンズ180がフィニッシュトレンズの場合は、研磨加工せずに、染色、ハードコート膜の形成、反射防止膜の形成などの処理工程を必要により経て最終的なプラスチックレンズ180となる。
重合成形されたプラスチックレンズ180がセミフィニッシュレンズの場合は、一方の面を所定の光学面に削る研磨工程を行う。研磨工程後、染色、ハードコート膜の形成、反射防止膜の形成などの処理工程を必要により経て最終的なプラスチックレンズ180となる。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
A成分として、ビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィド(A1)を80g用意した。このA1は分子量が210.4であり、成分中のエピスルフィド基のモル数Amは0.760であり、エピスルフィド構造を1分子中に2つ有するものである。
B成分として、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンの混合物(B1)を20g用意した。このB1は分子量が366.7であり、SH基が4つであり、成分中のSH基のモル数Bmは0.218である。そのため、A成分とB成分とのモル比Bm/Amは0.287である。
C成分として、ジルコニウムエトキサイド(C1)を5g用意した。C1の分子量は271.5であり、加水分解基は4つである。
実施例1では、これらのA成分、B成分及びC成分からなる組成物を作成し、この組成物を注型重合用の成形モールドの内部に注入し、実施形態で示される方法でプラスチックレンズを製造した。
この時の重合条件は、25℃をスタート温度とし、最高温度130℃まで24時間かけて昇温して重合を行った。その後、70℃に冷却後、成形モールドを取り出し、離型してレンズとモールドを分離した後、レンズには、120℃×2時間のアニール処理を行った。なお、成形モールドの内部には外部離型剤等の離型処理をしていない。
【0039】
(実施例2)
実施例2は実施例1と比べてC成分の量が少ない。つまり、実施例2では、C成分の量は1gであり、他の条件は実施例1と同じである。
(実施例3)
実施例3は実施例1と比べて、C成分の量が少ない。つまり、実施例3では、C成分の量は3gであり、他の条件は実施例1と同じである。
(実施例4)
実施例4は実施例1と比べて、C成分の量が多く、E成分である内部離型剤を樹脂組成物に含めた点で異なる。つまり、実施例4では、C成分は10gであり、E成分としてテトラブチルアンモニウムブロミド(E1)を10ppm樹脂組成物に添加したものであり、他の条件は実施例1と同じである。
【0040】
(実施例5)
実施例5は実施例2に比べてA成分とB成分との量が異なる。つまり、実施例5では、A1成分は95gであり、そのエピスルフィド基のモル数Amは0.665である。B1成分は5gであり、その成分中のSH基のモル数Bmは0.327である。そのため、A成分とB成分
とのモル比Bm/Amは0.061である。実施例5は、その他の条件は実施例2と同じであ
る。
(実施例6)
実施例6は実施例1に比べてA成分とB成分との量が異なる。つまり、実施例6では、A1成分は70gであり、そのエピスルフィド基のモル数Amは0.665である。B1成分は30gであり、その成分中のSH基のモル数Bmは0.327である。そのため、A成分とB成分とのモル比Bm/Amは0.492である。実施例6は、その他の条件は実施例1と同じである。
【0041】
(実施例7)
実施例7は実施例4に比べてA成分とB成分との量が異なる。つまり、実施例7では、A1成分は60gであり、そのエピスルフィド基のモル数Amは0.570である。B1成分は40gであり、その成分中のSH基のモル数Bmは0.436である。そのため、A成分とB成分とのモル比Bm/Amは0.765である。実施例7は、その他の条件は実施例4と同じである。
(実施例8)
実施例8は実施例4に比べてD成分として水を樹脂組成物に含ませた点が異なる。つまり、実施例8では、D成分として水を0.3g樹脂組成物に含有させ、これにより、C成分
の加水分解基のモル数Cmと、添加する水のモル数Hmとの比(Hm/Cm)を0.11とした。実施例8は、その他の条件は実施例4と同じである。
【0042】
(実施例9)
実施例9は実施例4に比べて、D成分として水とを樹脂組成物に含ませた点並びに離型処理をする点が異なる。つまり、実施例9では、D成分として水を2.0g樹脂組成物に含有させ、これにより、C成分の加水分解基のモル数Cmと、添加する水のモル数Hmとの比(Hm/Cm)を0.75とした。さらに、内部離型剤E1を樹脂組成物に10ppm添加するとともに、外部離型剤E2として、IPAで1000ppmに希釈した界面活性剤(商品名:サーフロンS−141 AGCセイミケミカル株式会社製)を用意し、この外部離型剤E2を成形モールドの使用面に、スピンコートにより塗布し、乾燥させてから使用した。実施例9は、その他の条件は実施例4と同じである。
【0043】
(実施例10)
実施例10は実施例4に比べて、D成分として水を樹脂組成物に含ませた点並びに離型処理が異なる。つまり、実施例10では、D成分として水を4.0g樹脂組成物に含有させ、これにより、C成分の加水分解基のモル数Cmと、添加する水のモル数Hmとの比(Hm/Cm)を1.51とした。さらに、内部離型剤Eを樹脂組成物に含めない代わりに、成形モールドの使用面に、市販のガラス用撥水処理剤によって撥水処理加工を施し(E3処理)、その後、使用した。実施例10は、その他の条件は実施例4と同じである。
(実施例11)
実施例11は実施例10に比べて、C成分とD成分との量並びにE成分として内部離型剤E1を含ませた点で異なる。つまり、実施例11では、C1成分を30gとD成分として水を5g樹脂組成物に含有させ、これにより、C成分の加水分解基のモル数Cmと添加する水のモル数Hmとの比Hm/Cmを0.63とした。さらに、内部離型剤E1を10ppm添加した。実施例11は、その他の条件は実施例10と同じである。
【0044】
(実施例12)
実施例12は実施例11に比べて、C成分の量が異なる。つまり、実施例12では、C1成分を50gとし、これにより、C成分の加水分解基のモル数Cmと添加する水のモル数Hmとの比Hm/Cmを0.38とした。実施例12は、その他の条件は実施例11と同じである。
(実施例13)
実施例13は実施例1とはB成分の材料及び量が異なる。つまり、実施例13では、B成分として、4−メルカプトメチル−3,6−ジチア−1,8−オクタンジチオール(B2)を20g用意した。このB2は分子量が260.5であり、SH基が3つであり、成分中のSH基のモル数Bmは0.230である。そのため、A成分とB成分とのモル比Bm/Amは0.303である。実施例13は、その他の条件は実施例1と同じである。
【0045】
(実施例14)
実施例14は実施例13とは、C成分の量、D成分として水を樹脂組成物に含ませた点並びに離型処理をする点が異なる。つまり、実施例14では、C成分を10gとし、D成分として水を2.0g樹脂組成物に含有させ、これにより、C成分の加水分解基のモル数Cmと、添加する水のモル数Hmとの比(Hm/Cm)を0.75とした。さらに、内部離型剤E1を樹脂組成物に10ppm添加した。
実施例14は、その他の条件は実施例13と同じである。
【0046】
(実施例15)
実施例15は実施例1と比べてC成分の材料と量が異なる。つまり、実施例15では、C成分としてジルコニウム 2−メチル−2−ブトキサイド(C2)を用い、その量は5gであり、他の条件は実施例1と同じである。C2の分子量は439.8であり、加水分解基は4つである。
(実施例16)
実施例16は実施例1と比べてC成分の材料と量が異なる。つまり、実施例16では、C成分としてチタニウムエトキサイド(C3)を用い、その量は5gであり、他の条件は実施例1と同じである。C3の分子量は228.1であり、加水分解基は4つである。
【0047】
(実施例17)
実施例17は実施例1とはA成分及びB成分の材料と量、並びに、C成分の量が異なる。つまり、実施例17では、A成分として、ビス(2,3−エピチオプロピル)スルフィド(A2)を80g用意した。このA2は分子量が178.3であり、成分中のエピスルフィド基のモル数Amは0.897であり、エピスルフィド構造を1分子中に2つ有するものである。
B成分として、実施例13と同様にB2を20g用意した。A成分とB成分とのモル比Bm/Amは0.257である。
C成分の量は10gである。実施例17の他の条件は実施例1と同じである。
【0048】
(実施例18)
実施例18は実施例1と比べてC成分の材料と量が異なる。つまり、実施例18では、C成分として、ゲルマニウムエトキサイド(C4)を用い、その量は5gである。C4の分子量は252.8であり、加水分解基は4つである。実施例18の他の条件は実施例1と同じである。
(実施例19)
実施例19は実施例1と比べてA成分とB成分の量が異なる。つまり、実施例19では、A成分は97gであり、B成分は3gであり、A成分とB成分とのモル比Bm/Amは0.036である。実施例19は、その他の条件は実施例1と同じである。
【0049】
(実施例20)
実施例20は実施例1と比べてB成分を樹脂組成物に含有させない点で異なる。つまり、実施例20では、A成分は100gであり、B成分は0であり、C成分は5gである。そのため、A成分とB成分とのモル比Bm/Amは0である。実施例20の他の条件は実施例1と同じである。
(実施例21)
実施例21は実施例11とはA成分、B成分及びD成分の量が異なるものであり、他の条件は実施例11と同じである。実施例21では、A成分は50gであり、B成分は50gであり、A成分とB成分とのモル比Bm/Amは1.15である。D成分はない(0g)。
【0050】
(実施例22)
実施例22は実施例11とはC成分及びD成分の量が異なるものであり、他の条件は実施例11と同じである。実施例22では、C成分は55gであり、D成分はない(0g)。
(実施例23)
実施例23は実施例22とはA成分とB成分が異なり、他の条件は実施例22と同じである。実施例23では、A成分はA2であり、その量が80gである。B成分はB2であり、その量が20gである。A成分とB成分とのモル比Bm/Amは0.257である。
【0051】
(比較例1)
比較例1は実施例1とはC成分を樹脂組成物に含有させない点で相違し、他の条件は実施例1と同じである。
(比較例2)
比較例2は比較例1とはA成分とB成分が異なる。比較例2では、A成分はA2であり、その量が80gである。B成分はB2であり、その量が20gである。A成分とB成分とのモル比Bm/Amは0.257である。比較例2の他の条件は比較例1と同じである。
【0052】
以上の実施例1〜23及び比較例1〜2について、プラスチックレンズの耐熱性、黄色さ及び屈折率を試験した。
[耐熱性]:TMA試験器により、荷重50gでのTgを測定した。
なお、次の区分によって○、△、×の評価を行った。
× 60℃未満
△ 60℃以上70℃未満
○ 70℃以上
[外観]:作製したプラスチックレンズを、暗箱での目視評価を行い、レンズの外観(黄色さ、白濁等)を評価した。なお、次の区分によって○、△、×の評価を行った.
× 黄色さ、または白濁等が強く、眼鏡レンズとして使用不可
△ 黄色さ、または白濁等が若干目立つレベル
○ 黄色さ、または白濁等について、全くわからないか、極わずかにあるが問題のないレベル
[屈折率]:アッベ屈折率計により、20℃で589.3nmのD線の屈折率を測定した。
以上の実施例1〜23及び比較例1〜2の実験条件と試験結果とを表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
表1で示される通り、実施例1〜23では、C成分として、エピスルフィド構造を1分子中に1個以上有する化合物に有機金属化合物を含有させているので、屈折率が1.741以上となり、C成分がない比較例1の屈折率1.738や比較例2の屈折率1.714より高いことがわかる。さらに、比較例1,2では、C成分がないので、耐熱性も低いことがわかる。
なお、表1からは、A成分及びB成分の合計に対するC成分の割合が高いほど、屈折率が高くなることがわかる。つまり、実施例2では、C成分が1gであり、A成分とB成分との合計が100gであるから、A成分とB成分との合計を100質量部とした場合、C成分は1質量部となる。この実施例2では、屈折率が1.741である。同様に、実施例5では、C成分は1質量部であり、その屈折率は1.742である。実施例3では、C成分は3質量部であり、その屈折率が1.747である。実施例1,16では、C成分は5質量部であり、その屈折率が1.753である。実施例6,13では、C成分は5質量部であり、その屈折率が1.752である。実施例7では、C成分は10質量部であり、その屈折率が1.764であり、実施例8では、C成分は10質量部であり、その屈折率が1.768である。実施例11では、C成分は30質量部であり、その屈折率が1.805である。実施例12では、C成分は50質量部であり、その屈折率が1.821である。ただし、実施例12では、白濁化が若干目立つものとなる。さらに、実施例22,23では、C成分は55質量部であり、屈折率は1.826,1.827であるが、実施例12よりも白濁化は目立つものであった。
【0055】
実施例1〜18,21では、B成分が所定量含まれているので、黄色みがなく、外観が良好である。実施例20はB成分が全くなく、A成分中のエピスルフィド基のモル数をAm、B成分中のSH基のモル数をBmとした場合、Bm/Amが0であり、実施例19はBm/Amが0.036であるため、樹脂の黄色みが中程度である。これに対して、実施例21では、Bm/Amが1.15であるため、耐熱性は比較例1,2ほど悪くはないが、他の実施例に比べてよいとは言えない。
【0056】
実施例8〜12,14では、実施例1に比べてD成分の水を樹脂組成物に含有させたものであるが、水を含有させることで、耐熱性が向上する。つまり、ガラス転移温度Tgは実施例1では81℃であるが、実施例8では83℃であり、実施例9では87℃であり、実施例10では88℃であり、実施例11,12では91℃であり、実施例14では81℃である。
【0057】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本考案に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、樹脂組成物を眼鏡用プラスチックレンズ用としたが、本発明では防塵ガラス、コンデンサレンズ、プリズム、光ディスクを製造するために用いられる樹脂組成物であってもよい。
また、眼鏡レンズを製造する方法は前記実施形態のように成形モールド150を使用するものに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、眼鏡用プラスチックレンズに利用できる他、防塵ガラス、コンデンサレンズ、プリズム、光ディスクの樹脂組成物に利用できる。
【符号の説明】
【0059】
L…硬化性組成物、11…A成分、12…B成分、13…C成分、14…D成分、15…E成分、110…凹型、111…凸面成形面、120…凸型、121…凹面成形面、130…粘着テープ、140…キャビティ、150…成形モールド、180…プラスチックレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A成分:下記(1)式で表されるエピスルフィド構造を1分子中に1個以上有する化合物
【化1】

C成分:下記(2)式で表される有機金属化合物
mRpMX4−p−m (2)
(式中、Rは重合可能な反応基を有する有機基、Rは炭素数1〜6の炭化水素基、Xは加水分解基であり、Mは、Ti、Zr、Ge、Sn、Nb、Taから選ばれる金属原子を表し、mは0又は1、pは0又は1である。)
としたとき、前記A成分と前記C成分とを含む重合性組成物を重合硬化して得られることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載された樹脂組成物において、
前記重合性組成物として、B成分:SH基を1分子あたり1個以上有する化合物、を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項3】
請求項2に記載された樹脂組成物において、
前記A成分と前記B成分との合計を100重量部とした場合、前記C成分を1〜50重量部添加することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された樹脂組成物において、
前記C成分中のMが、TiまたはZrであることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載された樹脂組成物において、
前記A成分中のエピスルフィド基のモル数をAm、前記B成分中のSH基のモル数をBmとした場合、
0.05 ≦ Bm/Am ≦ 0.8
であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載された樹脂組成物において、
前記A成分が下記(3)式
【化2】

で表されるエピスルフィド化合物であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれかに記載された樹脂組成物において、
前記A成分が、1分子中に1つ以上のジスルフィド結合を持つことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載された樹脂組成物において、
前記重合性組成物に、さらに、内部離型剤を添加した後、重合硬化することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載された樹脂組成物において、
前記重合性組成物を重合する際に使用するモールドの使用面に、離型剤を塗布、または離型効果を持つ表面処理加工を施すことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載された樹脂組成物において、
前記重合性組成物に、さらに、水を添加した後、重合硬化することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項11】
請求項10に記載された樹脂組成物において、
重合性組成物中の前記C成分の加水分解基のモル数をCmとし、添加する水のモル数をHmとした場合
0.1 ≦ Hm/Cm ≦ 3
であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載された樹脂組成物において、
樹脂組成物の用途が眼鏡用プラスチックレンズ用であることを特徴とする樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−202783(P2010−202783A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50312(P2009−50312)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】