説明

樹脂被覆金属海苔簀の製造方法および樹脂被覆金属海苔簀を用いた海苔製造方法

【課題】
金属線材の外周面に樹脂材を確実に均一厚さに被覆することができるとともに、隣接する線材の樹脂同士が付着することも皆無となり、製造が容易で、コストも低廉な樹脂被覆金属海苔簀の製造方法を提供すること。
【解決手段】
金属を線状に引き出すとともに、線状に引き出された金属線材12の外周面に樹脂材13を被覆させて樹脂被覆金属線材11を製造し、海苔簀のひご幅の複数倍の長さに切断されたひご部材である少なくとも1本の前記樹脂被覆金属線材11および海苔簀端部材15を用いてひご幅方向に複数の海苔簀を並べた状態の海苔簀群16を連結糸17を用いて編成し、編成された海苔簀群16から個々の海苔簀を切断して海苔簀14を製造することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製のひごの外周面に樹脂を被覆した樹脂被覆金属海苔簀を製造する樹脂被覆金属海苔簀の製造方法および樹脂被覆金属海苔簀を用いた海苔製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、板海苔を効率よく製造する場合に、刈り取った海苔の原藻を全自動的に製造するための全自動海苔製造装置が多く用いられている。
【0003】
このような全自動海苔製造装置においては、細長い多数のひごを編簀して形成されている海苔簀上に、所定の大きさにミンチされた海苔の原藻を抄製し、その後に脱水し、その後に海苔簀と一緒に海苔を乾燥風が供給されている乾燥室内を巡回させて乾燥させ、乾燥室外において乾燥された海苔を海苔簀から剥離させることにより製造するようになっている。
【0004】
このような全自動海苔製造装置において高品質な板海苔を能率よく製造するためには、海苔簀の海苔に対する付着性を適正に保つことが1つの条件とされている。
【0005】
そのために、本出願人は海苔簀の海苔に対する付着性を容易に制御することができ、しかも、海苔の乾燥効率を著しく高めることのできる海苔簀を提案した(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平11−018731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この海苔の付着性を制御する海苔簀の1態様として、図4に示すような金属製のひごの外周面に樹脂を被覆した樹脂被覆金属海苔簀1がある。
【0008】
この海苔簀1は、両端の端部材2とその間の多数のひご3、3を並列配置するとともに、これらを連結糸4によって互いに連結することにより形成されている。
【0009】
各ひご3は、図5に示すように、内側の金属線材5の外周面に樹脂材6を被覆して形成されている。金属線材5としては、例えば、アルミニウム等の熱伝導率の高い材料により形成されている。表面の樹脂材6は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、フッ化ポリビニール、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、ポリアクリル酸、ポリ酢酸ビニル、メラミンポリビニルアルコール等の合成樹脂のように耐熱性を有するとともに付着性の制御可能な材料により形成されている。
【0010】
ところが、従来においては、内側の金属線材5の外周面に樹脂材6を被覆させるために、金属線罪を合成樹脂溶液に浸漬させるバッチ式のディップ方法により行っていた。
【0011】
そのために合成樹脂溶液から取り出した金属線材5を乾燥させる段階において、隣接する線材5の樹脂材6同士が互いに付着して乾燥不良が発生したり、乾燥途中に樹脂がたれて均一厚さに樹脂材6を被覆することが困難となったり、非常に手間のかかるものとなり、コストも高いという不都合があった。
【0012】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、金属線材の外周面に樹脂材を確実に均一厚さに被覆することができるとともに、隣接する線材の樹脂同士が付着することも皆無となり、製造が容易で、コストも低廉な樹脂被覆金属海苔簀の製造方法および高品質な海苔を全自動的に製造することのできる樹脂被覆金属海苔簀を用いた海苔製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するため請求項1に係る発明の樹脂被覆金属海苔簀の製造方法は、金属を線状に引き出すとともに、線状に引き出された金属線材の外周面に樹脂材を被覆させて樹脂被覆金属線材を製造し、海苔簀のひご幅の複数倍の長さに切断されたひご部材である少なくとも1本の前記樹脂被覆金属線材および海苔簀端部材を用いてひご幅方向に複数の海苔簀を並べた状態の海苔簀群を連結糸を用いて編成し、編成された海苔簀群から個々の海苔簀を切断して海苔簀を製造することを特徴とする。そして、このような構成を採用したことにより、金属を線状に引き出すとともに、線状に引き出された金属線材の外周面に樹脂材を被覆させて形成される樹脂被覆金属線材においては、樹脂材は均一厚さに被覆されるとともに、バッチ式の製造方法ではないので、線材同士が付着することも皆無となり、製造コストも低廉とすることができる。
【0014】
また、請求項2に係る発明の樹脂被覆金属海苔簀の製造方法は、金属を線状に引き出すとともに、線状に引き出された金属線材の外周面に樹脂材を被覆させて樹脂被覆金属線材を製造し、海苔簀のひご幅の複数倍の長さに切断されたひご部材である少なくとも1本の前記樹脂被覆金属線材および海苔簀端部材を用いてひご幅方向およびひご幅と直交方向にそれぞれ複数の海苔簀を並べた状態の海苔簀群を連結糸を用いて連続的に編成し、編成された海苔簀群から個々の海苔簀を切断して海苔簀を製造することを特徴とする。そして、このような構成を採用したことにより、金属を線状に引き出すとともに、線状に引き出された金属線材の外周面に樹脂材を被覆させて形成される樹脂被覆金属線材においては、樹脂材は均一厚さに被覆されるとともに、バッチ式の製造方法ではないので、線材同士が付着することも皆無となり、製造コストも低廉とすることができる。
【0015】
本発明の樹脂被覆金属海苔簀を用いた海苔製造方法は、海苔簀を少なくとも抄製位置、乾燥位置、剥離位置、洗浄位置を順に循環搬送させて海苔を製造する海苔製造方法において、海苔簀として請求項1または請求項2に記載の製造方法によって製造された海苔簀を用いることを特徴とする。そして、このような構成を採用したことにより、樹脂材が均一厚さに被覆されて海苔に対する付着性が適正に設定されている樹脂被覆金属海苔簀を容易に制御することができ、しかも、海苔の乾燥効率を著しく高めることのでき用いて海苔を全自動的に製造することができ、高品質の海苔を製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の樹脂被覆金属海苔簀の製造方法および樹脂被覆金属海苔簀を用いた海苔製造方法によれば、金属線材の外周面に樹脂材を確実に均一厚さに被覆することができるとともに、隣接する線材の樹脂同士が付着することも皆無となり、製造が容易で、コストも低廉とすることができ、高品質な海苔を全自動的に製造することのできる等の優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の樹脂被覆金属海苔簀の製造方法の実施の一形態を図面により説明する。
【0018】
本発明の樹脂被覆金属海苔簀の製造方法を図1および図2により工程順に説明する。
【0019】
図1は、樹脂被覆金属線材11の製造工程を示している。
【0020】
本実施形態においては、公知の金属線材成型機(図示せず)により金属を線状に引き出して金属線材12を形成するとともに、金属線材12を線状に引き出しつつ金属線材12を樹脂浴内を通過させてその外周面に樹脂材13を被覆させ、樹脂浴を通過した樹脂材13が被覆された金属線材12を80℃〜130℃と適宜な樹脂キュア温度に加熱して、樹脂材13を金属線材12の外周面に均一厚さ(数μm)に被覆させて樹脂被覆金属線材11を製造する。
【0021】
金属線材12としては、例えば、アルミニウム等の熱伝導率の高い材料により形成されている。樹脂材13は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、フッ化ポリビニール、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、ポリアクリル酸、ポリ酢酸ビニル、メラミンポリビニルアルコール等の合成樹脂のように耐熱性を有するとともに付着性の制御可能な材料により形成されている。
【0022】
図2は、樹脂被覆金属海苔簀14の編成工程および最終分離工程を示している。
【0023】
本実施形態においては、樹脂被覆金属海苔簀14のひご部材として樹脂被覆金属線材11と公知の樹脂製線材11aとを1:2の本数割合として製造する場合を示している。樹脂被覆金属線材11と樹脂製線材11aとの本数割合は、任意に選択変更することができ、また、全部を樹脂被覆金属線材11としてもよい。
【0024】
まず、樹脂被覆金属海苔簀14の構成要素であるひご部材としての樹脂被覆金属線材11と樹脂製線材11aとを1:2の本数割合で用意するとともに2本の端部材15を用意し、これらを海苔簀14のひご幅の複数倍の長さに切断した素材として用意する。そして、これらの素材を用いて、図2に示すように、ひご幅方向およびひご幅と直交方向にそれぞれ複数の海苔簀14を並べた状態の海苔簀群16を連結糸17を用いて連続的に編成する。この編成装置としては、公知の海苔簀編成機を用いることができる。
【0025】
次ぎに、このようにして編成された海苔簀群16を適当な切断具を用いて個々の海苔簀14の大きさに切断して海苔簀14を製造する。
【0026】
そして、このような構成を採用したことにより、金属を線状に引き出すとともに、線状に引き出された金属線材12の外周面に樹脂材13を被覆させて形成される樹脂被覆金属線材11においては、樹脂材13は均一厚さに被覆されるとともに、バッチ式の製造方法ではないので、線材同士が付着することも皆無となり、製造コストも低廉とすることができる。
【0027】
このように本実施形態においては、金属を線状に引き出すとともに、線状に引き出された金属線材12の外周面に樹脂材13を被覆させて樹脂被覆金属線材11を形成するので、樹脂材13は均一厚さに被覆されるとともに、従来のようなバッチ式の製造方法ではないので、線材11同士が付着することも皆無となり、製造コストも低廉とすることができる。そして、このような樹脂被覆金属線材11を用いて連続的に樹脂被覆金属海苔簀14を製造することにより、樹脂被覆金属海苔簀14自身の製造が容易となりコストも低廉なものとなる。
【0028】
次に、前記実施形態の樹脂被覆金属海苔簀14を用いて行なわれる海苔の製造方法を、図3に示す全自動海苔製造装置により行なう場合について説明する。
【0029】
この全自動海苔製造装置は機械部18と乾燥部19とに分割されている。一方の機械部18は、図1に示される樹脂被覆金属海苔簀14を展張した海苔簀ホルダ20を図3において反時計方向に巡回させる無端状の海苔簀ホルダ搬送手段21を設け、その巡回方向に抄製装置22、脱水装置23、剥離装置24および洗浄装置25を順に配設して形成されている。他方の乾燥部19は、乾燥室26内に前記海苔簀ホルダ20を図3において反時計方向に巡回させる無端状の海苔簀ホルダ搬送手段27を配設して形成されている。両方の海苔簀ホルダ搬送手段21、27の間には海苔簀ホルダ20を受渡す海苔簀ホルダ受渡し機構28が上下部にそれぞれ設けられている。
【0030】
この全自動海苔製造装置において、まず、抄製装置22により海苔簀ホルダ20に展張されている各樹脂被覆金属海苔簀14上に海苔の原藻を抄製する。次に、脱水装置23によって、抄製された海苔の原藻より水分をスポンジ等の脱水手段を用いて乾燥前に脱水する。続いて、脱水された海苔の原藻は海苔簀ホルダ20と一緒に、海苔簀ホルダ受渡し機構28により一方の海苔簀ホルダ搬送装置21から他方の海苔簀ホルダ搬送手段27に受渡され、その後乾燥室26内を所定時間掛けて一巡させられる。
【0031】
本実施形態においては、樹脂被覆金属線材11として金属線材12を樹脂材13により被覆した樹脂被覆金属線材11を編簀糸17により編簀した再生可能な樹脂被覆金属海苔簀14に抄製した海苔を乾燥室26内を巡回させて乾燥させるようにしているために、次のように乾燥効率が非常に高いものとなる。
【0032】
すなわち、樹脂被覆金属線材11として金属線材12を樹脂材13により被覆した樹脂被覆金属線材11と樹脂製線材11aを用いて形成されている樹脂被覆金属海苔簀14は熱伝導性がよいために乾燥風により容易に加温されて昇温する。この樹脂被覆金属海苔簀14に抄製されている海苔は表面側より乾燥風の熱を受け、背面側より乾燥に適した温度に加熱された樹脂被覆金属海苔簀14の熱を受けて乾燥される。従って、従来は乾燥風の保有する熱エネルギのみによって乾燥されていた海苔が、本実施例においては、更に樹脂被覆金属海苔簀14の保有する熱エネルギによっても乾燥されることとなる。
【0033】
このようにして乾燥された海苔は、乾燥室26から海苔簀ホルダ受渡し機構28により機械部18側に受渡され、その後剥離装置24によって樹脂被覆金属海苔簀14より剥離される。さらに、前記樹脂被覆金属線材11の表面には海苔の剥離性を良くするために、樹脂材13が金属線材12の熱伝導性を損なわない程度に薄く被膜してあるので、海苔の原藻の収穫時期によって変化する海苔の粘着力や付着力に応じて、樹脂被覆金属海苔簀14の付着力を適度に変化させるために、乾燥された海苔を樹脂被覆金属海苔簀14より破断することなく容易に剥離できるようにして乾燥させることができる。従って、剥離装置24による剥離作業の効率が良く海苔の破損を少なくすることができて歩留まりが良いものとなる。
【0034】
海苔を剥離された樹脂被覆金属海苔簀14は、洗浄装置25において洗浄され、再び次の抄製に供される。
【0035】
本実施形態によれば、金属材料を素材の一部(本実施形態においては、樹脂被覆金属線材11の金属線材12)として用いている樹脂被覆金属海苔簀14を使って海苔の乾燥を施すことができ、しかも当該金属線材12を溶融させて再生利用することができるので、高いアルミニウム系金属を素材としていてもトータルとして低コストの再生海苔簀を用いて海苔の製造を行うことができ、しかも損傷したり耐用期間の経過した樹脂被覆金属海苔簀14を再生処理に回して新たな再生海苔簀の金属材料として利用することができ、資源の無駄を省くことができ、また、従来のような不要となった海苔簀の処分に困ることもなくなる。
【0036】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る樹脂被覆金属海苔簀に用いる樹脂被覆金属線材を示す斜視図
【図2】本発明に係る樹脂被覆金属海苔簀の編成状態を示す斜視図
【図3】全自動海苔製造装置の概略を示す構成図
【図4】従来の海苔簀を示す斜視図
【図5】従来のひごの拡大斜視図
【符号の説明】
【0038】
11 樹脂被覆金属線材
12 金属線材
13 樹脂材
14 樹脂被覆金属海苔簀
15 端部材
16 海苔簀群
17 連結糸
18 機械部
19 乾燥部
20 海苔簀ホルダ
21 海苔簀ホルダ搬送手段
22 抄製装置
23 脱水装置
24 剥離装置
25 洗浄装置
26 乾燥室
27 海苔簀ホルダ搬送手段
28 海苔簀ホルダ受け渡し機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を線状に引き出すとともに、線状に引き出された金属線材の外周面に樹脂材を被覆させて樹脂被覆金属線材を製造し、
海苔簀のひご幅の複数倍の長さに切断されたひご部材である少なくとも1本の前記樹脂被覆金属線材および海苔簀端部材を用いてひご幅方向に複数の海苔簀を並べた状態の海苔簀群を連結糸を用いて編成し、
編成された海苔簀群から個々の海苔簀を切断して海苔簀を製造する
ことを特徴とする樹脂被覆金属海苔簀の製造方法。
【請求項2】
金属を線状に引き出すとともに、線状に引き出された金属線材の外周面に樹脂材を被覆させて樹脂被覆金属線材を製造し、
海苔簀のひご幅の複数倍の長さに切断されたひご部材である少なくとも1本の前記樹脂被覆金属線材および海苔簀端部材を用いてひご幅方向およびひご幅と直交方向にそれぞれ複数の海苔簀を並べた状態の海苔簀群を連結糸を用いて連続的に編成し、
編成された海苔簀群から個々の海苔簀を切断して海苔簀を製造する
ことを特徴とする樹脂被覆金属海苔簀の製造方法。
【請求項3】
海苔簀を少なくとも抄製位置、乾燥位置、剥離位置、洗浄位置を順に循環搬送させて海苔を製造する海苔製造方法において、海苔簀として請求項1または請求項2に記載の製造方法によって製造された海苔簀を用いることを特徴とする樹脂被覆金属海苔簀を用いた海苔製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−113(P2007−113A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186655(P2005−186655)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000110882)ニチモウ株式会社 (52)
【Fターム(参考)】