説明

樹脂被覆長尺体

【課題】合成樹脂をその表面に用いても蓄熱を抑えることができると共に、金属製の芯材を用いても不快な金属音を低減することができる樹脂被覆長尺体を提供する。
【解決手段】芯材1の前記表面13に複数の縦リブ3を長手方向に沿って形成すると共に、該縦リブ3が形成された前記表面13を合成樹脂2により被覆して縦リブ3を隠蔽し、且つ前記縦リブ3間に形成された溝部4に被覆樹脂21を充填しているため、縦リブ間3に形成される溝部4に合成樹脂2が充填された部分では合成樹脂2の見かけの厚みを大きくすることができので、金属製の芯材1に起因する金属音を低減することができるのに加えて、縦リブ3によって芯材1の表面積は増大することから、芯材1の表面に被覆された合成樹脂2に蓄熱される熱をこの金属製の縦リブ3によって効率よく放熱することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の芯材の表面に樹脂を被覆した樹脂被覆長尺体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、遊歩道や公園施設において設置されるベンチやテーブル、八ツ橋、ボードウォークの他、競技場の観覧席、或いは住宅のベランダやテラスのデッキ材や柱材、ビルや駅の周辺の通路や休憩スペース等に用いられる合成樹脂製の長尺体については、例えば、20質量%〜80質量%の木粉を含有した合成樹脂からなる硬質板状体11と、該硬質板状体11の一面に積層された樹脂発泡体1とからなる床材であって、前記樹脂発泡体1は、シート状の連続発泡層2の少なくとも一面に凸状に形成された発泡倍率の高い複数の高発泡部3を備え、該高発泡部3の全表面は前記連続発泡層2と共に発泡倍率の低い低発泡層4により被覆され、且つ、前記低発泡層4により被覆された相隣接する前記高発泡部3…間に凹部41が形成されることにより凹凸が形成されている床材が開示されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−166335号公報
【特許文献2】特開2006−45938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のような従来の床材である合成樹脂製の長尺体は、屋外で用いられ日光が照射された際、合成樹脂の熱伝導率が低いために、長尺体に蓄熱され、夏場においては表面温度が約60℃程度まで上昇し、長尺体上を素足で歩行したり、長尺体を素手で触ると、火傷をする恐れがあった。
【0005】
そこで本出願人は、中空部を備え金属材料からなる一体の芯材の、外周全体に合成樹脂を用いて被覆層が設けられ、該被覆層の少なくとも表面は木粉が10〜60重量%配合された熱可塑性合成樹脂を用いて形成されると共に、前記被覆層の厚みが1〜5mmとなされているデッキ材を提案している(特許文献2)。この提案したデッキ材である長尺体は、中空部を備えた金属材料からなる芯材の外周に合成樹脂を被覆することにより、合成樹脂製の被覆層を薄肉にすると共に、中空部を備え、且つ合成樹脂より熱伝導率の高い金属材料を芯材に用いることにより、日光が照射された際、合成樹脂に蓄熱される熱を放熱させる材料及び構造とし、更に表面には木の風合いを備えさせたたものである。
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載のデッキ材である長尺体においては、外周に設けられた被覆層が薄肉であり、芯材として中空部を備えた金属材料を用いているため、硬めの靴底の靴でその上を歩行したり、傘や杖等で突いたりすると、心地良いとは言い辛い金属音が発生してしまうと言う課題があった。
【0007】
本発明は上記の如き課題に鑑みてなされたものであり、合成樹脂をその表面に用いても蓄熱を抑えることができると共に、金属製の芯材を用いても不快な金属音を低減することができる樹脂被覆長尺体を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわち、本発明に係る樹脂被覆長尺体は、金属製の芯材の表面に合成樹脂を被覆した樹脂被覆長尺体であって、芯材の前記表面には複数の縦リブが長手方向に沿って形成されると共に、該縦リブが形成された前記表面が合成樹脂により被覆されて縦リブが隠蔽され、且つ前記縦リブ間に形成された溝部に被覆樹脂が充填されていることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明に係る樹脂被覆長尺体は、前記縦リブには横方向に突部が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る樹脂被覆長尺体は、前記縦リブが形成された金属製の芯材はアルミ合金製型材であることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明に係る樹脂被覆長尺体は、床材として使用されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、芯材の前記表面に複数の縦リブを長手方向に沿って形成すると共に、該縦リブが形成された前記表面を合成樹脂により被覆して縦リブを隠蔽し、且つ前記縦リブ間に形成された溝部に被覆樹脂を充填しているため、縦リブ間に形成される溝部に合成樹脂が充填されることにより、当該溝部では合成樹脂の厚みが大きくなる、すなわち縦リブが形成された表面を被覆する合成樹脂の見かけの厚みを大きくすることができので、金属製の芯材に起因する金属音を低減することができるのに加えて、縦リブによって芯材の表面積は増大することから、芯材の表面に被覆された合成樹脂に蓄熱される熱をこの金属製の縦リブによって効率よく放熱することができ、樹脂被覆長尺体上を素足で歩行したり素手で触ったりした際、火傷をする恐れを低減することができる。
【0013】
また、本発明によれば、縦リブに横方向に突部を形成しているため、前記溝部が蟻溝状になり、そこに合成樹脂が充填されるので、充填された合成樹脂は突部によって抜け難くなり、芯材の表面に被覆された合成樹脂が芯材から剥がれ難くなる。
【0014】
また、本発明によれば、縦リブが形成された金属製の芯材はアルミ合金製型材であるため、被覆樹脂に蓄熱された熱を高い熱伝導率を有するアルミ合金製型材によって放熱させることができ、好適である。
【0015】
また、本発明によれば、床材として使用される樹脂被覆長尺体であるため、合成樹脂をその表面に用いても蓄熱を抑えることができるので、床材上を素足で歩行してもやけどする恐れを低減できると共に、金属製の芯材を用いても不快な金属音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る樹脂被覆長尺体の実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る樹脂被覆長尺体の実施の一形態を示す縦断面図及び要部拡大図である。
【図3】図2に示す実施形態における突部の変形実施例を示す拡大縦断面図である。
【図4】図2に示す実施形態における突部の別の変形実施例を示す拡大縦断面図である。
【図5】図2に示す実施形態の変形実施例を示す縦断面図である。
【図6】図2に示す実施形態の別の変形実施例を示す縦断面図である。
【図7】本発明に係る樹脂被覆長尺体の実施の別の形態示す縦断面図である。
【図8】図5に示す実施形態の変形実施例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照し、具体的に説明する。
Pは樹脂被覆長尺体であって、横長の断面略矩形の形状となされ、金属製の芯材1の表面全周に亘り合成樹脂2が被覆されてなる。
【0018】
芯材1は、横長の断面略矩形の形状となされ、長手方向に沿って3個の横長の断面略矩形の中空部11が並列に形成され、該中空部11間は上下方向に設けられた2個の縦壁12によって仕切られている。そして、芯材1の上側の表面13には複数の縦リブ3が長手方向に沿って形成されると共に、該縦リブ3が形成された前記表面13が合成樹脂2により被覆されて縦リブ3が隠蔽され、且つ縦リブ3間に形成された溝部4に被覆樹脂21が充填されて、芯材1の表面が全周に亘り合成樹脂2により被覆されている。
【0019】
本形態においては、前記縦リブ3による表面積の増大と、空気の流通が可能な中空部11とにより、芯材1を被覆している合成樹脂2に蓄熱される熱が芯材1によって効果的に冷却される。
【0020】
また、前記縦リブ3の先端には横方向に左右両側に向けて突部31が形成されている。該突部31によって、前記溝部4が蟻溝状になり、すなわち溝部4は入口の幅が奥部の幅よりも狭くなり、そこに合成樹脂2が充填されるので、充填された合成樹脂2である被覆樹脂21は突部31によって外方に抜け難くなり、芯材1の表面全周に被覆された合成樹脂2が芯材1から剥がれ難くなされている。
【0021】
前記突部31は、縦リブ3の先端に横方向に左右両側に向けて形成されているが、この形態に限定されるものではなく、図3に示す如く、縦リブ3の中央部に形成してもよいし、図4に示す如く、縦リブ3の先端に横方向に片方のみ形成してもよい。要は、溝部4に充填される被覆樹脂21に対して、引っ掛りとなるように形成されればよく、突部31の形状や形成される位置については適宜設定すればよい。
【0022】
さらに、芯材1の左右の側面14の下端部には蟻溝状の凹部5が長手方向に沿って形成されており、当該凹部5にも合成樹脂2が充填されているため、芯材1の表面全周に亘り被覆されている合成樹脂2がより剥がれ難くなされている。
【0023】
また、芯材1については、図1,2に示す如く、上側の表面13のみに縦リブ3が形成されているものに限定されるものではなく、図5に示す如く、左右の側面14のうち少なくとも1面にも縦リブ3が形成されていてもよいし、図6に示す如く、芯材1の下面15にも縦リブ3が形成されていてもよい。かように縦リブ3を形成する面を増やすことによって、更に放熱効果を向上させることができる。
【0024】
更には、芯材1は断面略矩形のもののみならず、図7に示す如く、断面略円形状であってもよく、その場合、縦リブ3は略円形の芯材1の中心点に対して放射状に全周に亘って形成されてもよいし、図8に示す如く、芯材1の必要な部分のみに形成されてもよい。
【0025】
なお、図面に示す形態においては、芯材1の全周に亘り合成樹脂2が被覆されているが、必ずしも芯材1の全周に合成樹脂2が被覆されている必要はなく、例えば図1に示す如き床材として本発明を用いる場合、表面13及び両側面14を合成樹脂2で被覆し、下面15は被覆しないようにしてもよい。かようにすれば、外側からは見えない床材P1の下側の面は合成樹脂2により被覆されないため、外観を損なうことなく、且つ芯材1の下面15からの更なる放熱効果が発現され、好ましい。
【0026】
更には、図2及び図5に示す形態においては、芯材1の両側面14の下端部に設けられている凹部5を、側面14の中央部或いは上端部に設けて、芯材1の表面13から側面14中央部或いは上端部の凹部5にかけて合成樹脂2を被覆すれば、芯材1の側面14が露出する部分が形成されるため、更なる放熱効果が期待できる。つまり、樹脂被覆長尺体Pの用いられる場所や用途によって、芯材1の被覆が必要な面に合成樹脂2を被覆すればよい。
【0027】
本発明に係る樹脂被覆長尺体Pは、その外形によって様々な用途に用いることができる。例えば、横長の断面略矩形であれば床材や壁材等に適用でき、断面略正方形状であれば柱材等に適用でき、断面略円形状であれば柱材や手摺材等に適用できる。中でも図1,2に示す如く、樹脂被覆長尺体Pを横長の断面略矩形に形成して、下地材N上に並列に複数配置して床材P1として用いれば、合成樹脂2をその表面に用いても蓄熱を抑えることができるので、床材上を素足で歩行してもやけどする恐れを低減できると共に、金属製の芯材1を用いても、傘や杖等で突いたりされた際の不快な金属音を低減することができ、好ましい。
【0028】
芯材1の材質については、金属製であれば特に限定されるものではないが、中でも熱伝導性が高く、且つ軽量であるアルミ合金製型材が好適に用いられる。アルミ合金製型材を用いて芯材1を形成することによって、芯材1を被覆している合成樹脂2に蓄熱された熱を高い熱伝導率を有するアルミ合金製型材によって放熱させることができるので、樹脂被覆長尺体P上を素足で歩行したり素手で触ったりした際、火傷をする恐れを低減することができ、好ましい。
【0029】
そして、芯材1を被覆している合成樹脂2は、合成樹脂分のみから形成されてもよいし、フィラー等の添加剤が配合され形成されてもよい。合成樹脂2の種類は特に限定されるものではなく、例えばポリオレフィン系樹脂が用いられ、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブテン、ポリイソプレン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体金属中和物等、或いはそれらの2種以上の混合物等から適宜選択して使用することができる。中でも、床材等の人工木として要求される剛性や表面硬度、線膨張係数が小さく寸法安定性が良い点、耐候性等の面で、ポリエチレン樹脂が好適に用いられる。
【0030】
フィラーとしては、タンカル、タルク、マイカ、シリカ、水酸化アルミ、水酸化マグネシウム、ガラスまたはガラス繊維、クレー、木粉、炭素繊維、モンモリロナイト、フライアッシュの群の中から少なくとも1種類以上選択すればよいが、木粉をフィラーとして用いると、合成樹脂で形成しているにもかかわらず、木質感を備えるものとなり、強度を満足すると共に風合いの面でも好ましい。
【0031】
また芯材1を被覆する合成樹脂2は、必要に応じて発泡させても良い。発泡の手法としては、従来の公知の手法がいずれも利用できる。一般的には、熱分解や化学反応によってガスを発生する化学発泡と、低沸点の液体に熱をかけて気化させる物理発泡とに分類でき、化学発泡剤としては無機系の重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、ホウ化水素ナトリウム、軽金属、アジド化合物等、また有機発泡剤としてアゾ系、ニトロソ系、ヒドラジド系等が、任意の組合せで使用できる。また、特に2倍を越える高発泡倍率での発泡には主に物理発泡が用いられ、発泡剤としては炭酸ガスや脂肪族炭化水素が主に用いられる。また、物理発泡に際しても発泡体のセル形状を整えるため化学発泡剤を併用することが多い。
【0032】
また合成樹脂2には、必要に応じて例えば熱安定剤、酸中和剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料又は染料等の着色剤、充填剤、帯電防止剤、抗菌剤、防黴剤、滑剤、造核剤、難燃剤、ブロッキング防止剤、脱水剤、艶調整剤等を添加してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、縦リブによって形成される溝部に合成樹脂が充填された部分では合成樹脂の厚みを大きくなる、すなわち縦リブが形成された表面を被覆する合成樹脂の見かけの厚みを大きくすることができので、金属製の芯材に起因する金属音を低減することができるのに加えて、芯材の表面に被覆された合成樹脂に蓄熱される熱を金属製の縦リブによって放熱することができ、樹脂被覆長尺体上を素足で歩行したり素手で触ったりした際、火傷をする恐れを低減することができる床材や柱材としての用途に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 芯材
11 中空部
12 縦壁
13 表面
14 側面
15 下面
2 合成樹脂
21 被覆樹脂
3 縦リブ
31 突部
4 溝部
5 凹部
P 樹脂被覆長尺体
P1 床材
N 下地材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の芯材の表面に合成樹脂を被覆した樹脂被覆長尺体であって、芯材の前記表面には複数の縦リブが長手方向に沿って形成されると共に、該縦リブが形成された前記表面が合成樹脂により被覆されて縦リブが隠蔽され、且つ前記縦リブ間に形成された溝部に被覆樹脂が充填されていることを特徴とする樹脂被覆長尺体。
【請求項2】
前記縦リブには横方向に突部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂被覆長尺体。
【請求項3】
前記縦リブが形成された金属製の芯材はアルミ合金製型材であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂被覆長尺体。
【請求項4】
前記樹脂被覆長尺体は床材として使用されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂被覆長尺体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−161784(P2011−161784A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27092(P2010−27092)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】